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特開2022-141809単離胎盤細胞を使用した脳卒中の治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141809
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】単離胎盤細胞を使用した脳卒中の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/50 20150101AFI20220921BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220921BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 38/49 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 31/185 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A61K35/50
A61P9/10
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K38/49
A61K31/185
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114202
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2020016260の分割
【原出願日】2009-08-20
(31)【優先権主張番号】61/090,565
(32)【優先日】2008-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ジップロック
(71)【出願人】
【識別番号】520169074
【氏名又は名称】セルラリティ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(72)【発明者】
【氏名】ザイトリン,アンディ
(72)【発明者】
【氏名】パル,アジャイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】脳内または脳周辺の血流の混乱を有する個体を治療する方法を提供する。
【解決手段】CD10、CD34、およびCD105;CD200、およびHLA-G;CD73、CD105、およびCD200;CD200、およびOCT-4;CD73、CD105、およびHLA-G;である、胎盤幹細胞、胎盤幹細胞を含む細胞の集団、および/または胎盤幹細胞を含む組成物を投与することを含む、方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書および/または図面に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2008年8月20日に出
願された米国特許仮出願第61/090,565号の利益を主張するものである。
【0002】
低酸素障害または脳内または脳周辺の血流の混乱、例えば、脳内または脳周辺の血流の
混乱が原因の症状または欠陥、例えば、神経障害を有する個体の治療における、単離胎盤
細胞、例えば、胎盤多分化能細胞、このような単離胎盤細胞の集団、および/または細胞
を含む組成物の使用方法が本明細書で提供される。
【背景技術】
【0003】
脳卒中は、「脳発作」、脳血管障害(CVA)または急性虚血性脳血管症候群としても
知られ、脳または脳幹に血液を供給する血管の混乱が原因である、通常急速に進行する(
1つまたは複数の)脳機能の喪失である。この混乱は、例えば血栓症または塞栓症によっ
て引き起こされる虚血(血液の欠如)である可能性があり、または出血が原因である可能
性がある。世界保健機構によれば、脳卒中は、「24時間を超えて持続する、または24
時間以内の死によって中断される、脳血管が原因の神経障害」である。24時間を超える
症状の持続によって、症状が24時間未満で持続する一過性脳虚血発作(TIA)と脳卒
中は分けられる。
【0004】
現在、虚血性脳卒中の治療は、虚血を引き起こす閉塞を低減または緩和するための、ア
スピリン、クロピドグレル、ジピリダモールなどの抗血小板薬、ワルファリンなどの抗凝
固薬を典型的に含む。さらに、血糖レベルを可能な限り正常にし、脳卒中患者には十分な
酸素および静脈内輸液を与える。出血性脳卒中の治療は、血圧降下剤の1回または複数回
の投与、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)以外の鎮痛薬の投与、カルシウムチャネ
ルブロッカー(例えば、ニモジピン)の投与、および示される場合、出血の原因である血
管破裂を修復するための外科手術を一般に含む。
【0005】
しかしながら、このような治療は進行中の神経損傷の軽減を試みるだけで、失われた機
能の回復とは全く関係がない。N-メチル-D-アスパラギン酸受容体アンタゴニスト、
ナルメフェン、ルベルゾール、クロメチアゾール、カルシウムチャネルブロッカー(a-
アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチルイソキサゾール-4-プロピオン酸アンタゴニスト
、セロトニンアゴニスト(例えば、レピノタン)、および膜貫通カリウムチャネルモジュ
レーターを含む)、チリラザド、抗ICAM-1抗体、ヒト抗白血球抗体(Hu23F2
G)、抗血小板抗体(例えば、アブシキシマブ)、シチコリン(シチジン-5’-ジホス
ホコリンの外因型)、および塩基性線維芽細胞増殖因子を含めた、多数の非細胞性神経保
護薬が脳卒中の治療における有効性に関して試験されており、失敗している。
【0006】
脳卒中に有効な治療法は存在しない。したがって、いずれかの状態から生じる神経損傷
を軽減するだけでなく、神経機能および予後を改善する療法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、個体の中枢神経系(CNS)、例えば脳または脊髄内または周辺の血流の
混乱を有する個体の治療における、単離胎盤細胞、単離胎盤細胞の集団、単離胎盤幹細胞
を含む細胞の集団、および単離胎盤細胞を含む組成物の使用方法が本明細書で提供される
。これらの方法は、例えば、低酸素障害、酸素欠乏障害、脳卒中(例えば、虚血性または
出血性脳卒中)、非脳卒中出血またはTIAなどの、個体の脳内または脳周辺の血流の混
乱が原因の個体中の症状または神経障害の治療を含む。本明細書で企図するように、個体
の脳内または脳周辺の血流の混乱が原因の個体中の症状または神経障害の治療は、このよ
うな個体の脳内または脳周辺の血流の混乱を伴う可能性がある、再灌流障害が原因の症状
または神経障害の治療を含む。虚血性脳卒中、例えば酸素欠乏障害または低酸素障害の成
功した治療は、承認された動物脳卒中モデルで本明細書において実証している。実施例1
および実施例2を参照。
【0008】
一態様では、個体の脳内または脳周辺の血流の混乱を有する個体、例えば個体の脳また
は中枢神経系(CNS)内またはその周辺の血流の混乱が原因の症状または神経障害を有
する個体を治療する方法であって、治療有効量の単離組織培養プラスチック接着性ヒト胎
盤細胞を前記個体に投与することを含み、前記単離胎盤細胞が多分化能細胞または幹細胞
の特性を有する方法が本明細書で提供される。特定の実施形態では、血流の混乱は、個体
の脳またはCNSに酸素欠乏障害または低酸素障害をもたらす。
【0009】
特定の実施形態では、単離胎盤細胞は単離胎盤幹細胞である。特定の他の実施形態では
、単離胎盤細胞は単離胎盤多分化能細胞である。具体的な実施形態では、単離胎盤細胞は
フローサイトメトリーによって検出されるCD34、CD10およびCD105
ある。より具体的な実施形態では、単離CD34、CD10およびCD105胎盤
細胞は胎盤幹細胞である。別のより具体的な実施形態では、単離CD34、CD10
およびCD105胎盤細胞は多分化能胎盤細胞である。別の具体的な実施形態では、単
離CD34、CD10およびCD105胎盤細胞は、骨形成原の表現型の細胞、ま
たは軟骨形成の表現型の細胞に分化する能力を有する。別の実施形態では、単離CD34
、CD10およびCD105胎盤細胞は、神経系の表現型の細胞に分化する能力を
有する。より具体的な実施形態では、単離CD34、CD10、CD105胎盤細
胞はさらにCD200である。別のより具体的な実施形態では、単離CD34、CD
10およびCD105胎盤細胞はさらにフローサイトメトリーによって検出されるC
D90またはCD45である。別のより具体的な実施形態では、単離CD34、C
D10およびCD105胎盤細胞はさらにフローサイトメトリーによって検出される
CD90またはCD45である。より具体的な実施形態では、CD34、CD10
、CD105、CD200胎盤細胞はさらにフローサイトメトリーによって検出さ
れるCD90またはCD45である。別のより具体的な実施形態では、CD34
CD10、CD105、CD200細胞はさらにフローサイトメトリーによって検
出されるCD90およびCD45である。別のより具体的な実施形態では、CD34
、CD10、CD105、CD200、CD90、CD45細胞はさらにフ
ローサイトメトリーによって検出されるCD80およびCD86である。
【0010】
より具体的な実施形態では、CD34、CD10、CD105細胞はさらにCD
29、CD38、CD44、CD54、CD80、CD86、SH3また
はSH4の1つまたは複数である。別のより具体的な実施形態では、細胞はさらにCD
44である。別の具体的な実施形態では、CD34、CD10、CD105胎盤
細胞は、さらにCD13、CD29、CD33、CD38、CD44、CD4
、CD54、CD62E、CD62L、CD62P、SH3(CD73
)、SH4(CD73)、CD80、CD86、CD90、SH2(CD1
05)、CD106/VCAM、CD117、CD144/VE-カドヘリン
CD184/CXCR4、CD200+、CD133、OCT-4、SSEA3
、SSEA4、ABC-p、KDR(VEGFR2)、HLA-A、B、C
HLA-DP、DQ、DR、HLA-G、もしくはプログラム死-1リガンド(PD
L1)、またはこれらの任意の組合せの1つまたは複数である。さらに具体的な実施形
態では、CD34、CD10、CD105胎盤細胞は、さらにCD13、CD2
、CD33、CD38、CD44、CD45、CD54/ICAM、C
D62E、CD62L、CD62P、SH3(CD73)、SH4(CD7
)、CD80、CD86、CD90、SH2(CD105)、CD106
/VCAM、CD117、CD144/VE-カドヘリン、CD184/CXCR
、CD200、CD133、OCT-4、SSEA3、SSEA4、AB
C-p、KDR(VEGFR2)、HLA-A、B、C、HLA-DP、DQ、
DR、HLA-G、およびプログラム死-1リガンド(PDL1)である。
【0011】
他の実施形態では、単離胎盤細胞はCD200およびHLA-G;CD73、C
D105、およびCD200;CD200およびOCT-4;CD73、CD
105およびHLA-G;CD73およびCD105であり、胚様体またはOC
T-4の形成を可能にする条件下で集団を培養すると、前記単離胎盤細胞を含む胎盤細
胞の前記集団中の1つまたは複数の胚様体の形成を容易にし、胚様体またはその任意の組
合せの形成を可能にする条件下で集団を培養すると、前記単離胎盤細胞を含む胎盤細胞の
前記集団中の1つまたは複数の胚様体の形成を容易にする。他の実施形態では、単離胎盤
細胞はCD34、CD10、CD105であり、さらにCD200およびHLA
-G;CD73、CD105、およびCD200;CD200およびOCT-
;CD73、CD105、およびHLA-G;集団を胚様体の形成を可能にす
る条件下で培養すると、前記単離胎盤細胞を含む前記胎盤細胞の集団中の1つまたは複数
の胚様体の形成を容易にするCD73およびCD105;または集団を胚様体の形成
を可能にする条件下で培養すると、単離胎盤細胞を含む前記胎盤細胞の集団中の1つまた
は複数の胚様体の形成を容易にするOCT-4;またはそれらの任意の組合せである。
【0012】
具体的な実施形態では、前記CD200、HLA-G胎盤細胞はCD34、CD
38、CD45、CD73およびCD105である。別の具体的な実施形態では
、前記単離CD73、CD105およびCD200胎盤細胞はCD34、CD3
、CD45、およびHLA-Gである。別の具体的な実施形態では、前記CD2
00、OCT-4幹細胞はCD34、CD38、CD45、CD73、CD
105、およびHLA-Gである。別の具体的な実施形態では、前記単離CD73
、CD105およびHLA-G胎盤細胞はCD34、CD45、OCT-4
よびCD200である。別の具体的な実施形態では、前記単離CD73およびCD1
05胎盤細胞はOCT-4、CD34、CD38およびCD45である。別の
具体的な実施形態では、前記細胞はCD73、CD105、CD200、CD34
、CD38およびCD45である。
【0013】
特定の実施形態では、単離胎盤細胞はCD10、CD29、CD34、CD38
、CD44、CD45、CD54、CD90、SH2、SH3、SH4
、SSEA3、SSEA4、OCT-4、MHC-I、またはABC-pの1
つまたは複数であり、この場合ABC-pは胎盤特異的ABC輸送タンパク質(乳癌耐性
タンパク質(BCRP)としておよびミトキサントロン耐性タンパク質(MXR)として
も知られる)である。具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はCD10、CD29
CD34、CD38、CD44、CD45、CD54、CD90、SH2
、SH3、SH4、SSEA3、SSEA4、およびOCT-4である。別の
実施形態では、単離胎盤細胞はCD10、CD29、CD34、CD38、CD
45、CD54、SH2、SH3、およびSH4である。別の実施形態では、
単離胎盤細胞はCD10、CD29、CD34、CD38、CD45、CD5
、SH2、SH3、SH4およびOCT-4である。別の実施形態では、単
離胎盤細胞はCD10、CD29、CD34、CD38、CD44、CD45
、CD54、CD90、HLA-1、SH2、SH3、SH4である。別
の実施形態では、単離胎盤細胞はOCT-4およびABC-pである。別の実施形態
では、単離胎盤細胞はSH2、SH3、SH4およびOCT-4である。別の実
施形態では、単離胎盤細胞はOCT-4、CD34、SSEA3、およびSSEA
である。具体的な実施形態では、前記OCT-4、CD34、SSEA3、お
よびSSEA4細胞はさらにCD10、CD29、CD34、CD44、CD
45、CD54、CD90、SH2、SH3、およびSH4である。別の実
施形態では、単離胎盤細胞はOCT-4およびCD34、およびSH3またはSH
のいずれかである。別の実施形態では、単離胎盤細胞はCD34、およびCD10
、CD29、CD44、CD54、CD90、またはOCT-4のいずれか
である。特定の実施形態では、単離胎盤細胞はCD10、CD34、CD105
よびCD200である。
【0014】
別の実施形態では、本明細書に記載の治療法に有用である単離胎盤細胞は、CD10
、CD29、CD44、CD45、CD54/ICAM、CD62-E、CD
62-L、CD62-P、CD80、CD86、CD103、CD104
CD105、CD106/VCAM、CD144/VE-カドヘリン、CD184
/CXCR4、β2-マイクログロブリン、MHC-I、MHC-II、HLA
-G、および/またはPDL1の1つまたは複数である。具体的な実施形態では、単
離胎盤細胞は少なくともCD29およびCD54である。別の具体的な実施形態では
、単離胎盤細胞は少なくともCD44およびCD106である。別の具体的な実施形
態では、単離胎盤細胞は少なくともCD29である。
【0015】
別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は、同数の骨髄由来間葉系幹細胞より検
出可能に高いレベルで1つまたは複数の遺伝子を発現し、前記1つまたは複数の遺伝子は
、ACTG2、ADARB1、AMIGO2、ARTS-1、B4GALT6、BCHE
、C11またはf9、CD200、COL4A1、COL4A2、CPA4、DMD、D
SC3、DSG2、ELOVL2、F2RL1、FLJ10781、GATA6、GPR
126、GPRC5B、ICAM1、IER3、IGFBP7、IL1A、IL6、IL
18、KRT18、KRT8、LIPG、LRAP、MATN2、MEST、NFE2L
3、NUAK1、PCDH7、PDLIM3、PKP2、RTN1、SERPINB9、
ST3GAL6、ST6GALNAC5、SLC12A8、TCF21、TGFB2、V
TN、およびZC3H12Aの1つまたは複数であり、前記骨髄由来間葉系幹細胞は、前
記単離胎盤細胞が経ている継代数と等しい培養の継代数を経ている。より具体的な実施形
態では、前記単離胎盤細胞は、(例えばGibcoからの)60%のDMEM-LGおよ
び(例えばSigmaからの)40%のMCDB-201;(例えばHyclone L
abs.からの)2%ウシ胎児血清;1×インシュリン-トランスフェリン-セレン(I
TS);1×リノール酸-ウシ血清アルブミン(LA-BSA);(例えばSigmaか
らの)10-9Mのデキサメタゾン;(例えばSigmaからの)10-4Mのアスコル
ビン酸2-ホスフェート;(例えばR&D Systemsからの)表皮増殖因子10n
g/mL;および(例えばR&D Systemsからの)血小板由来増殖因子(PDG
F-BB)10ng/mLを含む培地において約3~約35の集団倍加で培養すると、前
記1つまたは複数の遺伝子を発現する。より具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は
、(例えばGibcoからの)60%のDMEM-LGおよび(例えばSigmaからの
)40%のMCDB-201;(例えばHyclone Labs.からの)2%ウシ胎
児血清;1×インシュリン-トランスフェリン-セレン(ITS);1×リノール酸-ウ
シ血清アルブミン(LA-BSA);(例えばSigmaからの)10-9Mのデキサメ
タゾン;(Sigma)10-4Mのアスコルビン酸2-ホスフェート;(例えばR&D
Systemsからの)表皮増殖因子10ng/mL;および(例えばR&D Sys
temsからの)血小板由来増殖因子(PDGF-BB)10ng/mLを含む培地にお
いて約3~約35の集団倍加で培養すると、前記1つまたは複数の遺伝子を発現する。
【0016】
治療方法の別の具体的な実施形態では、前記胎盤幹細胞は、神経栄養増殖因子グリア細
胞由来神経栄養因子(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、肝細胞増殖因子(
HGF)、胎盤増殖因子(PGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)を発現する。
【0017】
別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は、その細胞の少なくとも50%が前記
単離胎盤細胞である細胞の集団内に含有される。別の具体的な実施形態では、前記単離胎
盤細胞は、その細胞の少なくとも70%が前記単離胎盤細胞である細胞の集団内に含有さ
れる。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は、その細胞の少なくとも80%が
前記単離胎盤細胞である細胞の集団内に含有される。別の具体的な実施形態では、前記単
離胎盤細胞は、その細胞の少なくとも90%が前記単離胎盤細胞である細胞の集団内に含
有される。特定の他の実施形態では、前記細胞集団中の胎盤細胞は、母方の遺伝子型を有
する細胞は実質的に含まず、例えば、前記集団中の少なくとも40%、45%、50%、
55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%ま
たは99%の胎盤細胞が胎児の遺伝子型を有する、すなわち胎児起源である。特定の他の
実施形態では、前記胎盤細胞を含む細胞の集団は、母方の遺伝子型を有する細胞は実質的
に含まず、例えば、前記集団中の少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、
65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の細胞
が胎児の遺伝子型を有する、すなわち胎児起源である。
【0018】
特定の実施形態では、本明細書に記載の任意の胎盤細胞、例えば、胎盤幹細胞または胎
盤多分化能細胞は、レシピエント、例えば脳卒中を有する個体、または脳卒中の症状を有
する個体と同種である。特定の他の実施形態では、本明細書に記載の任意の胎盤細胞、例
えば、胎盤幹細胞または胎盤多分化能細胞は、レシピエント、例えば脳卒中を有する個体
、または脳卒中の症状を有する個体と異種である。
【0019】
治療方法の別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は前記投与前に凍結保存する
。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は胎盤幹細胞塊から得る。
【0020】
単離胎盤細胞の任意の前述の実施形態では、単離胎盤細胞は、増殖培地、すなわち増殖
を促進するように処方した培地における培養中に、例えば増殖培地における増殖中に一般
に分化しない。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は、増殖するためのフィー
ダー層を必要としない。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は、フィーダー細
胞層の不在下での培養の結果として培養中に分化しない。
【0021】
別のより具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は、血液が流出しており灌流させて
残留血液を除去した、血液が流出しているが灌流させて残留血液を除去することはない、
または血液が流出しておらず灌流させて残留血液を除去することもない産後胎盤の灌流に
よって得る。別のより具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は、胎盤組織の物理的お
よび/または酵素による破壊によって得る。
【0022】
本明細書で提供する方法に有用である、胎盤細胞の細胞表面、分子および遺伝子マーカ
ーは、以下のセクション5.4.2に詳細に記載する。
【0023】
別の具体的な実施形態では、前記血流の混乱は脳卒中である。より具体的な実施形態で
は、前記脳卒中は虚血性脳卒中である。別のより具体的な実施形態では、前記脳卒中は出
血性脳卒中、例えば頭蓋内出血または自然発症くも膜下出血である。別の具体的な実施形
態では、前記混乱は血腫である。より具体的な実施形態では、前記血腫は硬膜血腫、硬膜
下血腫またはくも膜下血腫である。別の具体的な実施形態では、前記血腫は、頭蓋骨にお
ける外力、例えば頭部外傷によって引き起こされる。別の具体的な実施形態では、前記混
乱は一過性脳虚血発作(TIA)、例えば再発性TIAである。別の具体的な実施形態で
は、前記混乱は血管痙攣、例えば出血性脳卒中後の血管痙攣である。
【0024】
方法の別の具体的な実施形態では、前記治療有効量が、前記個体によって示される脳も
しくはCNS内またはその周辺の血流の混乱が原因の神経障害、例えば、酸素欠乏障害も
しくは低酸素障害、またはその1つまたは複数の症状の排除、検出可能な改善、重度の低
下、または進行遅延をもたらす単離胎盤細胞の数である。別の具体的な実施形態では、前
記治療有効量の単離胎盤細胞を、例えば、前記血流の混乱後に、脳もしくはCNS内また
はその周辺の第2または後の血流の混乱によって引き起こされる神経障害を低減または排
除するために、予防的に前記個体に投与する。
【0025】
別の具体的な実施形態では、脳内または脳周辺の血流の混乱の前記症状、例えば脳卒中
、酸素欠乏障害または低酸素障害は、片麻痺(身体の片側の麻痺)、片側不全麻痺(身体
の片側の弱化)、顔面の筋力低下、しびれ、感覚の低下、嗅覚、味覚、聴覚、または視覚
の変化、嗅覚、味覚、聴覚、または視覚の消失、眼瞼下垂(下垂症)、眼筋の検出可能な
低下、咽頭反射の低下、飲み込む能力の低下、光に対する瞳孔反応性の低下、顔面の感覚
低下、バランスの低下、眼振、呼吸数の変化、心拍数の変化、頭部を片側に向ける能力が
低いまたはそれが不可能な胸鎖乳突筋の弱化、舌の弱化、失語症(言語を話すまたは理解
することができないこと)、失行症(随意運動の変化)、視野欠損、記憶障害、半側無視
または半側空間無視(損傷反対の視野側の空間に対する配慮の障害)、支離滅裂な思考、
混乱状態、性欲過剰行為の発生、疾病失認(障害の存在が絶えず認識できないこと)、歩
行困難、運動協調の変化、めまい、不均衡、意識失調、頭痛、および/または嘔吐の1つ
または複数である。
【0026】
前に記載した治療方法の別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞をボーラス注射
によって投与する。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞を静脈内注入によって
投与する。具体的な実施形態では、前記静脈内注入は約1~約8時間にわたる静脈内注入
である。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞を頭蓋内に投与する。別の具体的
な実施形態では、前記単離胎盤細胞を腹腔内に投与する。別の具体的な実施形態では、前
記単離胎盤細胞を動脈内に投与する。より具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞を虚
血領域内に投与する。別のより具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞を虚血周辺領域
に投与する。治療方法の別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞を筋肉内、皮内、
皮下、または眼内に投与する。
【0027】
前に記載した治療方法の別の実施形態では、前記単離胎盤細胞を、前記単離胎盤細胞を
含む組成物の前記個体への外科的移植によって投与する。より具体的な実施形態では、前
記組成物はマトリクスまたは骨格である。別のより具体的な実施形態では、前記マトリク
スまたは骨格はヒドロゲルである。別のより具体的な実施形態では、前記マトリクスまた
は骨格は脱細胞化組織である。別のより具体的な実施形態では、前記マトリクスまたは骨
格は合成生分解性組成物である。別のより具体的な実施形態では、前記マトリクスまたは
骨格は発泡体である。
【0028】
前に記載した治療方法の別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞を前記個体に1
回投与する。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞を前記個体に2回以上の別個
の投与で投与する。別の具体的な実施形態では、前記投与は、前記個体1キログラム当た
り約1×10個と1×10個の間の単離胎盤細胞、例えば胎盤幹細胞を投与すること
を含む。別の具体的な実施形態では、前記投与は、前記個体1キログラム当たり約1×1
個と1×10個の間の単離胎盤細胞を投与することを含む。別の具体的な実施形態
では、前記投与は、前記個体1キログラム当たり約1×10個と1×10個の間の単
離胎盤細胞を投与することを含む。別の具体的な実施形態では、前記投与は、前記個体1
キログラム当たり約1×10個と1×10個の間の単離胎盤細胞を投与することを含
む。他の具体的な実施形態では、前記投与は、前記個体1キログラム当たり約1×10
個と約2×10個の間の単離胎盤細胞、前記個体1キログラム当たり約2×10個と
約3×10個の間の単離胎盤細胞、前記個体1キログラム当たり約3×10個と約4
×10個の間の単離胎盤細胞、前記個体1キログラム当たり約4×10個と約5×1
個の間の単離胎盤細胞、前記個体1キログラム当たり約5×10個と約6×10
個の間の単離胎盤細胞、前記個体1キログラム当たり約6×10個と約7×10個の
間の単離胎盤細胞、前記個体1キログラム当たり約7×10個と約8×10個の間の
単離胎盤細胞、前記個体1キログラム当たり約8×10個と約9×10個の間の単離
胎盤細胞、または前記個体1キログラム当たり約9×10個と約1×10個の間の単
離胎盤細胞を投与することを含む。別の具体的な実施形態では、前記投与は、前記個体1
キログラム当たり約1×10個と約2×10個の間の単離胎盤細胞を前記個体に投与
することを含む。別の具体的な実施形態では、前記投与は、前記個体1キログラム当たり
約1.3×10個と約1.5×10個の間の単離胎盤細胞を前記個体に投与すること
を含む。別の具体的な実施形態では、前記投与は、前記個体1キログラム当たり最大約3
×10個の単離胎盤細胞を前記個体に投与することを含む。具体的な実施形態では、前
記投与は、約5×10個と約2×10個の間の単離胎盤細胞を前記個体に投与するこ
とを含む。別の具体的な実施形態では、前記投与は、溶液約20ミリリットル中の約15
0×10個の単離胎盤細胞を前記個体に投与することを含む。
【0029】
具体的な実施形態では、前記投与は、約5×10個と約2×10個の間の単離胎盤
細胞を前記個体に投与することを含み、前記細胞は10%デキストラン、例えばデキスト
ラン-40、5%ヒト血清アルブミン、および場合によっては免疫抑制剤を含む溶液中に
含有される。
【0030】
別の具体的な実施形態では、前記投与は、約5×10個と3×10個の間の単離胎
盤細胞を静脈内に投与することを含む。より具体的な実施形態では、前記投与は、約9×
10個の単離胎盤細胞または約1.8×10個の単離胎盤細胞を静脈内に投与するこ
とを含む。別の具体的な実施形態では、前記投与は、約5×10個と1×10個の間
の単離胎盤細胞を頭蓋内に投与することを含む。より具体的な実施形態では、前記投与は
、約9×10個の単離胎盤細胞を頭蓋内に投与することを含む。
【0031】
別の具体的な実施形態では、前に記載した治療方法は、第2の治療剤を前記個体に投与
することを含む。より具体的な実施形態では、前記第2の治療剤は神経保護薬である。よ
り具体的な実施形態では、前記第2の治療剤は、NXY-059(フェニルブチルニトロ
ンのジスルホニル誘導体:2ナトリウム4-((tert-ブチリミノ)-メチル)ベン
ゼン-1,3-ジスルホネートN-オキシド、または2ナトリウム4-((オキシド-t
ert-ブチル-アザニウミリデン)メチル)ベンゼン-1,3-ジスルホネート;ジス
フェントンとしても知られる)である。別のより具体的な実施形態では、第2の治療剤は
血栓溶解薬である。より具体的な実施形態では、前記血栓溶解薬は組織プラスミノーゲン
アクチベーター(tPA)である。脳内または脳周辺の血流の混乱が出血である実施形態
では、第2の治療剤は、降圧薬、例えばβ遮断薬または利尿薬、利尿薬とカリウム保持性
利尿薬の組合せ、β遮断薬と利尿薬の組合せ、アンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害
剤と利尿薬、アンギオテンシン-IIアンタゴニストおよび利尿薬、および/またはカル
シウムチャネルブロッカーとACE阻害剤の組合せであってよい。別のより具体的な実施
形態では、第2の治療剤は、カルシウムチャネルブロッカー、グルタミン酸アンタゴニス
ト、ガンマアミノ酪酸(GABA)アゴニスト、抗酸化剤またはフリーラジカルスカベン
ジャーである。
【0032】
治療方法の別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞を、前記個体における1つま
たは複数の脳内または脳周辺の血流の混乱症状の発生の21~30日以内、例えば第21
日に、例えば脳卒中、酸素欠乏障害または低酸素障害の症状の発生の21~30日以内、
例えば第21日に、前記個体に投与する。治療方法の別の具体的な実施形態では、前記単
離胎盤細胞を、前記個体における1つまたは複数の脳内または脳周辺の血流の混乱症状の
発生の14日以内に、前記個体に投与する。治療方法の別の具体的な実施形態では、前記
単離胎盤細胞を、前記個体における1つまたは複数の脳内または脳周辺の血流の混乱症状
の発生の7日以内に、前記個体に投与する。治療方法の別の具体的な実施形態では、前記
単離胎盤細胞を、前記個体における1つまたは複数の脳内または脳周辺の血流の混乱症状
の発生の48時間以内に、前記個体に投与する。別の具体的な実施形態では、前記単離胎
盤細胞を、前記個体における1つまたは複数の脳内または脳周辺の血流の混乱症状の発生
の24時間以内に、前記個体に投与する。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞
を、前記個体における1つまたは複数の脳内または脳周辺の血流の混乱症状の発生の12
時間以内に、前記個体に投与する。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞を、前
記個体における1つまたは複数の脳内または脳周辺の血流の混乱症状の発生の3時間以内
に、前記個体に投与する。
【0033】
3.1 定義
本明細書で使用する用語「約」は、言及する数値を指すとき、その言及する数値のプラ
スマイナス20%以内の値を示す。
【0034】
本明細書で使用する用語「酸素欠乏障害」は、脳またはCNSの領域への酸素の全体的
欠如によって引き起こされる障害、例えば神経障害または症状障害を指す。
【0035】
本明細書で使用する用語「低酸素障害」は、脳またはCNSの領域への酸素の部分的欠
如によって引き起こされる障害、例えば神経障害または症状障害を指す。
【0036】
本明細書で使用する用語「SH2」は、細胞マーカーCD105上のエピトープと結合
する抗体を指す。したがって、SH2と呼ぶ細胞はCD105である。
【0037】
本明細書で使用する用語「SH3」および「SH4」は、細胞マーカーCD73上のエ
ピトープと結合する抗体を指す。したがって、SH3および/またはSH4と呼ぶ細
胞はCD73である。
【0038】
胎盤はその中で発育する胎児の遺伝子型を有するが、妊娠中母親の組織とも物理的に近
接している。このように、本明細書で使用する用語「胎児の遺伝子型」は、胎児の遺伝子
型、例えば胎児を有する母親の遺伝子型ではなく、そこから本明細書に記載の特定の単離
胎盤細胞を得る胎盤と関係がある胎児の遺伝子型を意味する。本明細書で使用する用語「
母方の遺伝子型」は、胎児、例えばそこから本明細書に記載の特定の単離胎盤細胞を得る
胎盤と関係がある胎児を有する母親の遺伝子型を意味する。
【0039】
本明細書で使用する用語「単離細胞」、例えば「単離幹細胞」は、幹細胞が由来する組
織、例えば胎盤の、他の異なる細胞から実質的に分離された細胞を意味する。細胞、例え
ば幹細胞と本来結合していた非幹細胞、または異なるマーカープロファイルを示す幹細胞
の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または少なくとも99
%が、幹細胞の回収および/または培養中にその幹細胞から除去される場合、細胞は「単
離」されている。
【0040】
本明細書で使用する「多分化能」は、細胞を指すとき、細胞が、必ずしも全てではない
がいくつかの身体の細胞型、または全てではないがいくつかの身体の細胞型の特性を有す
る細胞に、分化する能力を有することを意味する。特定の実施形態では、例えば、神経形
成、軟骨形成または骨形成原細胞の特性を有する細胞に分化する能力を有する単離胎盤細
胞が、多分化能細胞である。
【0041】
本明細書で使用する用語「単離細胞の集団」は、細胞の集団が由来する組織、例えば胎
盤の他の細胞から実質的に分離された細胞の集団を意味する。
【0042】
本明細書で使用する用語「胎盤幹細胞」は、形態、細胞表面マーカー、または初代培養
後の継代数とは無関係に、哺乳動物の胎盤に由来する幹細胞または前駆細胞を指す。しか
しながら、本明細書で使用する用語「胎盤幹細胞」は、栄養膜細胞、血管芽細胞、血液芽
細胞、胚生殖細胞、胚幹細胞、胚盤胞の内部細胞塊から得られる細胞、または後期胚の胚
生殖隆起から得られる細胞、例えば胚生殖細胞を指さず、しかしながら、胎盤幹細胞はこ
れらではない。細胞が幹細胞の属性、例えば、1つまたは複数の型の幹細胞と関係がある
マーカーまたは遺伝子発現プロファイル、培養中に少なくとも10~40回複製する能力
、および3つの生殖層の1つまたは複数の分化細胞の特性を示す細胞に分化する能力を示
す場合、細胞は「幹細胞」であると考えられる。用語「胎盤幹細胞」と「胎盤由来幹細胞
」は交互に使用することができる。本明細書で他に記さない限り、用語「胎盤」は臍帯を
含む。本明細書で開示する単離胎盤細胞は、特定の実施形態では、分化条件下でのin
vitroで分化する、in vivoで分化する、または両方である。
【0043】
本明細書で使用するように、胎盤細胞は、そのマーカーがバックグラウンドを超えて検
出可能であるとき特定のマーカーに「陽性」である。例えば、胎盤細胞は例えばCD73
に陽性である。CD73は、(例えば、アイソタイプ対照と比較して)バックグラウンド
を超える検出可能な量で、胎盤細胞において検出可能であるからである。マーカーを使用
して少なくとも1つの他の細胞型と細胞を区別することができるとき、または、存在時ま
たは細胞によって発現されるとき、マーカーを使用して細胞を選択または単離することが
できるときも、細胞はそのマーカーに陽性である。例えば抗体仲介の検出の状況で、特定
の細胞表面マーカーが存在する指標としての「陽性」は、そのマーカーに特異的な抗体、
例えば蛍光標識抗体を使用してマーカーが検出可能であることを意味する。「陽性」は、
例えばサイトメーターにおいて、バックグラウンドを超えて検出可能であるシグナルを生
成する量で、そのマーカーを示す細胞も指す。例えば、CD200に特異的な抗体で細胞
が検出可能に標識され、抗体からのシグナルが対照(例えば、バックグラウンドまたはア
イソタイプ対照)のそれより検出可能に高い場合、細胞は「CD200」である。逆に
、同じ状況での「陰性」は、対照(例えば、バックグラウンドまたはアイソタイプ対照)
と比較して、そのマーカーに特異的な抗体を使用して細胞表面マーカーが検出不能である
ことを意味する。例えば、対照(例えば、バックグラウンドまたはアイソタイプ対照)よ
り高い程度でCD34に特異的な抗体を用いて細胞を再現的に検出可能に標識できない場
合、細胞は「CD34」である。抗体を使用して検出されない、または検出不能なマー
カーは、適切な対照を使用する同様の形式で、陽性または陰性であると決定する。例えば
、RT-PCR、スロットブロットなどのRNAを検出する方法によって決定される、細
胞または細胞集団由来のRNA中で検出されるOCT-4のRNAの量が、バックグラウ
ンドを超えて検出可能である場合、その細胞または細胞集団はOCT-4であると決定
することができる。本明細書で他に記さない限り、分化集団(「CD」)マーカーは抗体
を使用して検出する。特定の実施形態では、OCT-4がRT-PCRを使用して検出可
能である場合、OCT-4が存在すると決定され、細胞は「OCT-4」である。
【0044】
本明細書で使用する「治療」は、疾患、障害または状態、またはその任意のパラメータ
ーもしくは症状の治癒、修復、改善、重度低下、または経時変化の低減を含む。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】高度身体変動試験の結果の図である。垂直軸:バイアス率の変動活性。水平軸:変動活性を評価する日にち。ベースラインは、虚血誘導前のバイアス率の変動活性である。バイアス率の変動活性は、単離胎盤細胞を頭蓋内に投与する前に梗塞後第2日で、ならびに再度梗塞後第7日および第14日でも評価した。生存400K:4×10個の生存単離胎盤細胞。非生存:非生存胎盤幹細胞。CsA:シクロスポリンA。
図2】ベダーソン試験の結果の図である。垂直軸:平均神経障害値。水平軸:神経障害を評価する日にち。ベースラインは虚血誘導前の神経障害であり、0は障害がないことを示す。平均神経活性は、単離胎盤細胞投与時の梗塞後第2日で、ならびに再度梗塞後第7日および第14日でも評価した。生存400K:4×10個の生存単離胎盤細胞。非生存:非生存胎盤幹細胞。CsA:シクロスポリンA。
図3】高度身体変動試験の結果の図である。垂直軸:バイアス率の変動活性。水平軸:変動活性を評価する日にち。ベースラインは、虚血誘導前のバイアス率の変動活性である。バイアス率の変動活性は、単離胎盤細胞を静脈内に投与時の梗塞後第2日で、ならびに再度梗塞後第7日および第14日でも評価した。非生存:非生存胎盤幹細胞。4×10、1×10、4×10または8×10個の生存単離胎盤細胞を投与した(凡例)。
図4】ベダーソン試験の結果の図である。垂直軸:平均神経障害値。水平軸:神経障害を評価する日にち。ベースラインは虚血誘導前の神経障害であり、0は障害がないことを示す。平均神経活性は、単離胎盤細胞の静脈内投与時の梗塞後第2日で、ならびに再度梗塞後第7日および第14日でも評価した。非生存:非生存胎盤幹細胞。4×10、1×10、4×10または8×10個の生存単離胎盤細胞を投与した(凡例)。
図5】修正神経系重度値の試験の結果の図である。Y軸:値(スコアリング法に関しては表1参照)。X軸:中大脳動脈閉塞(MCAO)外科手術後の日数。PDA:胎盤幹細胞;FBC-対照:線維芽細胞対照;デキストラン、細胞を含まない対照;1PDA、1×10個の細胞;4PDA、4×10個の細胞;8PDA、8×10個の細胞。Rx:細胞またはデキストランの投与。
図6】接着性除去の体性感覚試験の結果の図である。Y軸:接着性被験物質の除去に関する秒数。X軸:中大脳動脈閉塞(MCAO)外科手術後の日数。PDA:胎盤幹細胞;FBC-対照:線維芽細胞対照;デキストラン、細胞を含まない対照;1PDA、1×10個の細胞;4PDA、4×10個の細胞;8PDA、8×10個の細胞。Rx:細胞またはデキストランの投与。
図7】フットフォルト試験の結果の図である。Y軸:金属製グリッド上での100ステップ中のフットフォルト率。X軸:治療(Rx)、フットフォルト試験実施後の日数。:4×10個の胎盤幹細胞(PDA-4M)および賦形剤対照を与えた動物に関するフットフォルト試験の有意な(p<0.05)改善。#:4×10個の胎盤幹細胞(PDA-4M)および線維芽細胞対照を与えた動物に関するフットフォルト試験の有意な(p<0.05)改善。
図8】中大脳動脈閉塞後、治療後第56日での血管新生測定の図である。胎盤幹細胞治療は、虚血境界域(IBZ)中の内皮細胞増殖、ならびに血管密度および血管周辺の長さを有意に増大させる。N=10/群。 (A)パラフィン処理した脳切片で検出した抗BrdU抗体染色の図である。Y軸:虚血性病変の境界域におけるBrdU陽性内皮細胞(EC)の割合。X軸:実験条件(MCAo-Dex:中大脳動脈閉塞-デキストラン(初期条件、前治療);細胞-対照:線維芽細胞の投与;PDA-4M:4×10個の胎盤幹細胞の投与)。#:PDA-4M条件および線維芽細胞対照における内皮細胞増殖の有意な(p<0.05)増大。:PDA-4M条件およびデキストラン(賦形剤)対照における内皮細胞増殖の有意な(p<0.05)増大。 (B)胎盤幹細胞を用いた治療後の、虚血境界域中の血管密度の図である。Y軸:1mm当たりの血管数。X軸:実験条件(MCAo-Dex:中大脳動脈閉塞-デキストラン(初期条件、前治療);細胞-対照:線維芽細胞の投与;PDA-4M:4×10個の胎盤幹細胞の投与)。#:PDA-4M条件および線維芽細胞対照における血管密度の有意な(p<0.05)増大。:PDA-4M条件およびデキストラン(賦形剤)対照における血管密度の有意な(p<0.05)増大。 (C)虚血境界域近辺の血管周辺の長さの増大の図である。Y軸:血管周辺の長さ、ミリメートル単位;X軸:実験条件(MCAo-Dex:中大脳動脈閉塞-デキストラン(初期条件、前治療);細胞-対照:線維芽細胞の投与;PDA-4M:4×10個の胎盤幹細胞の投与)。#:PDA-4M条件および線維芽細胞対照における血管周辺の長さの有意な(p<0.05)増大。:PDA-4M条件およびデキストラン(賦形剤)対照における血管周辺の長さの有意な(p<0.05)増大。
図9】胎盤幹細胞治療が、虚血脳の虚血境界域におけるシナプトフィジン発現を有意に増大させる図である。N=10/群。Y軸:シナプトフィジンを検出するパラフィン処理した脳切片中の調べた領域の割合。X軸:実験条件。MCAo:中大脳動脈閉塞時のシナプトフィジン発現;細胞-対照:線維芽細胞の投与;PDA-4M:4×10個の胎盤幹細胞の投与)。:PDA-4Mおよび線維芽細胞対照におけるシナプトフィジン発現領域の有意な増大。
【発明を実施するための形態】
【0046】
5.詳細な説明
5.1 脳内または脳周辺の血流の混乱の治療
個体の脳内または脳周辺の血流の混乱を有する個体を治療する方法、例えば個体の脳内
または脳周辺の血流の混乱が原因の1つまたは複数の症状または神経障害を治療する方法
であって、治療有効量の単離組織培養プラスチック接着性ヒト胎盤細胞を個体に投与する
ことを含み、前記単離胎盤細胞が多分化能細胞または幹細胞の特性を有し、前記単離胎盤
細胞が骨髄由来間葉系細胞、脂肪由来間葉系幹細胞、または臍帯血、胎盤血、または末梢
血から得られる間葉系細胞ではない方法が本明細書で提供される。特定の実施形態では、
障害は低酸素障害または酸素欠乏障害である。特定の実施形態では、本明細書で提供する
ように、前記治療有効量は、前記個体によって示される個体の脳内または脳周辺の血流の
混乱が原因の1つまたは複数の症状または神経障害の症状の排除、検出可能な改善、重度
の低下、または進行遅延をもたらす量である。
【0047】
具体的な実施形態では、1つまたは複数の症状または神経障害、例えば脳卒中、低酸素
障害または酸素欠乏障害の症状は、少なくとも部分的に、または完全に、血流の混乱後の
再灌流障害が原因である。本明細書で使用する「再灌流障害」は、中断された血液供給が
虚血期後に組織に戻るときに引き起こされる組織損傷を指す。虚血中の血液によって運ば
れる酸素および栄養素の不在は、循環の回復が正常機能の回復ではなく、炎症および酸化
ストレスの誘導による酸化損傷をもたらす条件を生み出す。
【0048】
本明細書で使用する用語「脳内または脳周辺の血流の混乱」は、このような混乱の治療
の文脈において、混乱を有する個体によって示される1つまたは複数の症状の治療、およ
び混乱が原因である個体における神経障害、例えば脳卒中、低酸素障害または酸素欠乏障
害の1つまたは複数の症状の治療を含む。特定の実施形態では、1つまたは複数の症状は
、虚血自体が主に、または完全に原因である1つまたは複数の症状である。特定の他の実
施形態では、1つまたは複数の症状は、例えば虚血と関係がある再灌流障害が、主に、ま
たは完全に原因である1つまたは複数の症状である。
【0049】
5.2 脳卒中
本明細書で提供する方法によって治療可能である、脳またはCNS内またはその周辺の
血流の混乱は、罹患した個体において1つまたは複数の検出可能な症状または神経障害を
引き起こす任意の血流の混乱であり得る(以下参照)。特定の実施形態では、血流の混乱
は、脳卒中、例えば虚血性脳卒中または出血性脳卒中、例えば頭蓋内出血である。特定の
他の実施形態では、血流の混乱は、脳の外側の出血、例えば硬膜血腫、硬膜下血腫または
くも膜下血腫である。特定の他の実施形態では、血流の混乱は一過性、例えば一過性脳虚
血発作(TIA)である。特定の他の実施形態では、血流の混乱は血管痙攣である。具体
的な実施形態では、脳内の血流の混乱は大脳内で起こる。より具体的な実施形態では、混
乱は大脳の頭頂葉、前頭葉、側頭葉、または後頭葉内で起こる。別の具体的な実施形態で
は、混乱は小脳内で起こる。別の具体的な実施形態では、混乱は脳幹または脊柱内で起こ
る。特定の実施形態では、混乱は低酸素障害または酸素欠乏障害を引き起こす。
【0050】
一実施形態では、本明細書、例えば以下のセクション5.4.2に記載の、治療有効量
の単離組織培養プラスチック接着性胎盤細胞を前記個体に投与することを含む、低酸素障
害または酸素欠乏障害、例えば脳卒中(例えば、脳卒中犠牲者)に罹患した個体を治療す
る方法が本明細書で提供される。具体的な実施形態では、前記治療有効量は、前記個体に
よって示される脳卒中の1つまたは複数の症状の排除、検出可能な改善、重度の低下、ま
たは進行遅延をもたらす量である。単離胎盤細胞、例えば、複数の単離胎盤細胞または単
離胎盤細胞の単離集団は、本明細書の他の箇所、例えば以下のセクション5.4.2に記
載の任意の単離胎盤細胞であってよい。
【0051】
本明細書で提供する方法によって治療可能である脳卒中は、任意の原因に起因し得る脳
卒中であってよい。具体的な実施形態では、脳卒中は虚血性脳卒中である。より具体的な
実施形態では、虚血性脳卒中は血栓性脳卒中または塞栓性脳卒中である。別の具体的な実
施形態では、脳卒中は全身灌流低下、すなわち身体の全部分への血流の低下によるもので
あり、または静脈血栓症によるものである。他の具体的な実施形態では、虚血性脳卒中は
、心臓の細動、例えば心房細動、発作性心房細動、リウマチ性疾患、僧帽弁または大動脈
弁疾患、人工心臓弁、心臓の心房または心室血栓、洞不全症候群、持続性心房細動、心筋
梗塞、28パーセント未満の駆出率を伴う慢性心筋梗塞、30パーセント未満の駆出率を
伴う症候性うっ血性心不全、心筋症、心内膜炎、例えばリブマンサックス心内膜炎、マラ
ンティック心内膜炎または感染性心内膜炎、乳頭状弾性線維腫、左房粘液腫、冠動脈バイ
パス移植術、僧帽弁輪石灰化、卵円孔開存症、心房中隔動脈瘤、血栓がない左心室動脈瘤
、僧帽弁狭窄症または心房細動がない心エコー検査における単離左心房の「スモーク」、
および/または上行大動脈または近位大動脈における複合アテロームによって引き起こさ
れる。
【0052】
別の具体的な実施形態では、脳卒中は出血性脳卒中である。より具体的な実施形態では
、出血性脳卒中は、脳実質内出血(脳内の血液漏出)によって引き起こされる。別のより
具体的な実施形態では、前記出血性脳卒中は、脳実質外出血(頭蓋骨内、ただし脳外の出
血)によって引き起こされる。より具体的な実施形態では、脳卒中は、実質内出血、脳室
内出血(心室系における出血)、硬膜外血腫(硬膜と頭蓋骨の間の出血)、硬膜下血腫(
硬膜下腔における出血)、またはくも膜下出血(くも膜と軟膜の間)によって引き起こさ
れる。大部分の出血性脳卒中症候群は特異的症状(例えば、頭痛、前頭障害)を有する。
他のより具体的な実施形態では、出血性脳卒中は、高血圧、外傷、出血障害、アミロイド
血管症、違法薬物使用(例えば、アンフェタミンまたはコカイン)、または血管奇形によ
って引き起こされる、またはそれらと関係がある。
【0053】
別の実施形態では、個体の脳またはCNS内またはその周辺の血流の混乱を有する個体
を治療する方法、例えば個体の脳またはCNS内またはその周辺の血流の混乱が原因の1
つまたは複数の症状または神経障害を治療する方法であって、治療有効量の単離胎盤細胞
、例えば胎盤幹細胞または胎盤多分化能細胞を前記個体に投与することを含み、前記血流
の混乱が、脳卒中以外の直接原因、例えば閉鎖性頭部外傷または非衝撃関連血腫から生じ
る方法が本明細書で提供される。具体的な実施形態では、前記治療有効量は、前記個体に
よって示される1つまたは複数の混乱の症状の排除、検出可能な改善、重度の低下、また
は進行遅延をもたらす量である。脳卒中に関して、単離胎盤細胞は、本明細書の他の箇所
、例えば以下のセクション5.4.2に記載の任意の胎盤細胞、例えば胎盤幹細胞または
胎盤多分化能細胞であってよい。
【0054】
前述のように、特定の実施形態では、本明細書で提供する治療方法は、脳もしくはCN
S内またはその周辺の血流の混乱、または脳もしくはCNS内またはその周辺の血流の混
乱が原因の神経障害、例えば、脳卒中、例えば低酸素障害もしくは酸素欠乏障害を引き起
こす血腫の1つまたは複数の症状の排除、検出可能な改善、重度の低下、または進行遅延
をもたらす。具体的な実施形態では、前記症状または神経障害は、片麻痺(身体の片側の
麻痺)、片側不全麻痺(身体の片側の弱化)、顔面の筋力低下、しびれ、感覚の低下、嗅
覚、味覚、聴覚、または視覚の変化、嗅覚、味覚、聴覚、または視覚の消失、眼瞼下垂(
下垂症)、眼筋の弱化、咽頭反射の低下、飲み込む能力の低下、光に対する瞳孔反応性の
低下、顔面の感覚低下、バランスの低下、眼振、呼吸数の変化、心拍数の変化、頭部を片
側に向ける能力が低いまたはそれが不可能な胸鎖乳突筋の弱化、舌の弱化、失語症(言語
を話すまたは理解することができないこと)、失行症(随意運動の変化)、視野欠損、記
憶障害、半側無視または半側空間無視(損傷反対の視野側の空間に対する配慮の障害)、
支離滅裂な思考、混乱状態、性欲過剰行為の発生、疾病失認(障害の存在が絶えず認識で
きないこと)、歩行困難、運動協調の変化、めまい、不均衡、意識失調、頭痛、および/
または嘔吐を含む。
【0055】
脳もしくはCNS内またはその周辺の血流の混乱の重度、例えば脳卒中、または脳卒中
症状および/または脳卒中が原因である神経障害の重度は、1つまたは複数の広く容認さ
れている神経機能スケールを使用して評価することができる。
【0056】
例えば、一実施形態では、本明細書で提供するのは、個体の脳またはCNS内またはそ
の周辺の血流の混乱を有する個体、例えば個体の脳内または脳周辺の血流の混乱が原因の
症状または神経障害、例えば低酸素障害または酸素欠乏障害を有する個体を治療する方法
であって、治療有効量の単離ヒト接着性胎盤細胞を前記個体に投与することを含み、前記
治療有効量は、修正ランキンスケール、NIH脳卒中スケール、カナダ神経スケール(C
NS)、グラスゴーコーマスケール(GCS)、ヘンピスフェリック脳卒中スケール、H
unt & Hessのスケール、マシュー脳卒中スケール、ミニメンタルステート検査
(MMSE)、オルゴゴゾ脳卒中スケール、オクスフォードシャーコミュニティ脳卒中プ
ロジェクト分類(Bamford)、スカンジナビア脳卒中スケール、日本式昏睡尺度(
JCS)、バーセルインデックスおよび/または日本脳卒中スケール(JSS)の1つま
たは複数により評価して、個体の神経機能の検出可能な、または検出可能かつ持続的な改
善をもたらすのに十分な胎盤細胞の量である方法が本明細書で提供される。具体的な実施
形態では、改善は、初期評価後、および単離胎盤細胞の1回または複数回の投与後、1、
2、3、4、5、または6日以内、または1、2、3、4、5、6、8、9、10、11
または12週間以内に検出可能である。他の具体的な実施形態では、前記初期評価は、脳
卒中の1つまたは複数の症状の発生後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、1
1、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23時
間以内、または1、2、3、4または5日以内に実施する。しかしながら他の実施形態で
は、測定される改善は、例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、
11または12ヶ月、または1、2、3、4、5年以上にわたり持続する。
【0057】
5.3 単離胎盤細胞の投与
本明細書で提供する治療方法において使用する単離胎盤細胞は、任意の医学的に認めら
れている方法または経路によって、個体の脳もしくはCNS内またはその周辺の血流の混
乱によって引き起こされる、またはそれが原因である1つまたは複数の症状または神経障
害を示す個体に投与することができる。一実施形態では、治療有効量の単離胎盤細胞を個
体の頭蓋内、例えば個体の罹患した脳またはCNS中の虚血または出血部位に投与する。
頭蓋内投与用に、脳卒中部位(例えば患部)を、例えばCTスキャン、磁気共鳴映像法(
MRI)(例えばT1-、T2-、拡散-および/または灌流加重MR)、コバルト-5
5ポジトロン放射断層撮影法、または類似の技法によって目に見える状態にすることがで
きる。別の実施形態では、前記単離胎盤細胞を個体に静脈内または動脈内投与する。他の
実施形態では、治療有効量の単離胎盤細胞を個体に筋肉内、腹腔内、皮内、皮下、眼内ま
たは非経口投与する。単離胎盤細胞はボーラス注射によって、または静脈内注入によって
投与することができる。具体的な実施形態では、前記静脈内注入は約1~約8時間にわた
る静脈内注入である。特定の実施形態では、経路の組合せ、例えば頭蓋内と静脈内注入に
よって単離胎盤細胞を個体に投与する。
【0058】
単離胎盤細胞の治療有効量は、個体の年齢および/または大きさ、および虚血領域の概
算体積に応じて変わる可能性がある。虚血領域の概算体積および位置は、例えば、一連の
磁気共鳴映像法の映像またはコンピュータ断層撮影法(CT)スキャンによって推定する
ことができる。
【0059】
例えば一回用量で投与する単離胎盤細胞の数は、投与当たり、例えば約、または少なく
とも1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×
10、5×10、1×10、5×10、1×1010、5×1010、1×10
11もしくは5×1011個またはそれより多くの単離胎盤細胞であってよい。具体的な
実施形態では、脳またはCNS内またはその周辺の血流の混乱に罹患した個体、例えば脳
卒中、酸素欠乏障害または低酸素障害に罹患した個体に、約5×10個と約3×10
個の間の単離胎盤細胞を静脈内投与することができる。より具体的な実施形態では、脳ま
たはCNS内またはその周辺の血流の混乱に罹患した個体、例えば脳卒中、低酸素障害ま
たは酸素欠乏障害に罹患した個体に、約9×10個の単離胎盤細胞、約3.6×10
個の単離胎盤細胞、約9×10個の単離胎盤細胞、または約1.8×10個の単離胎
盤細胞を静脈内投与することができる。別の具体的な実施形態では、一回用量の約2×1
個の単離胎盤細胞を個体に静脈内投与する。別の具体的な実施形態では、一回用量の
約8×10個の単離胎盤細胞を個体に静脈内投与する。別の具体的な実施形態では、そ
れぞれが約2×10個の単離胎盤細胞を含む二回用量を、個体に静脈内投与する。別の
具体的な実施形態では、それぞれが約8×10個の単離胎盤細胞を含む二回用量を、個
体に静脈内投与する。他のより具体的な実施形態では、脳またはCNS内またはその周辺
の血流の混乱に罹患した個体、例えば脳卒中、低酸素障害または酸素欠乏障害に罹患した
個体に、約5×10個と1×10個の間の単離胎盤細胞を頭蓋内投与することができ
る。より具体的な実施形態では、約9×10個の単離胎盤細胞を前記個体に頭蓋内投与
する。
【0060】
脳またはCNS内またはその周辺の血流の混乱、混乱、および/または混乱が原因であ
る神経障害の症状に罹患した個体には、治療の行程中1回、または1回より多く、例えば
2回以上、単離胎盤細胞を投与することができる。単離胎盤細胞は、例えば約100μL
、200μL、300μL、400μL、500μL、600μL、700μL、800
μL、900μL、1000μL、1.5mL、2mL、2.5mL、3mL、3.5m
L、4mL、4.5mL、5mL、5.5mL、6.0mL、6.5mL、7mL、7.
5mL、8mL、8.5mL、9mL、9.5mL、10mL、11mL、12mL、1
3mL、14mL、15mL、16mL、17mL、18mL、19mL、20mL、2
1mL、22mL、23mL、24mL、25mL、26mL、27mL、28mL、2
9mL、または約30mLの薬剤として許容される溶液中に、頭蓋内投与に適した体積で
投与することができる。静脈内投与用に、複数の単離胎盤細胞(例えば、約1×10
5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10
、1×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011もしくは5×
1011個の)単離胎盤細胞を、例えば静脈内注入によって、例えば約、または最大10
0mL、150mL、200mL、250mL、300mL、350mL、400mL、
450mL、500mL、550mL、600mL、650mL、700mL、750m
L、800mL、850mL、900mL、950mL、1000mL、1.1L、1.
2L、1.3L、1.4L、または1.5L中に送達することができる。
【0061】
他の実施形態では、個体(例えば、脳もしくはCNS内またはその周辺の血流の混乱、
または再灌流障害によって引き起こされる、またはそれが原因である1つまたは複数の症
状または神経障害を有する個体)1キログラム当たり約1×10個と約2×10個の
間の単離胎盤細胞、前記個体1キログラム当たり約2×10個と約3×10個の間の
単離胎盤細胞、前記個体1キログラム当たり約3×10個と約4×10個の間の単離
胎盤細胞、前記個体1キログラム当たり約4×10個と約5×10個の間の単離胎盤
細胞、前記個体1キログラム当たり約5×10個と約6×10個の間の単離胎盤細胞
、前記個体1キログラム当たり約6×10個と約7×10個の間の単離胎盤細胞、前
記個体1キログラム当たり約7×10個と約8×10個の間の単離胎盤細胞、前記個
体1キログラム当たり約8×10個と約9×10個の間の単離胎盤細胞、または前記
個体1キログラム当たり約9×10個と約1×10個の間の単離胎盤細胞を、前記個
体に投与する。別の具体的な実施形態では、前記投与は、前記個体1キログラム当たり約
1×10個と約2×10個の間の単離胎盤細胞を前記個体に投与することを含む。別
の具体的な実施形態では、前記投与は、前記個体1キログラム当たり約1.3×10
と約1.5×10個の間の単離胎盤細胞を前記個体に投与することを含む。別の具体的
な実施形態では、前記投与は、前記個体1キログラム当たり最大約3×10個の単離胎
盤細胞を前記個体に投与することを含む。別の具体的な実施形態では、前記投与は、約2
0ミリリットル溶液中に約15×10個の単離胎盤細胞を前記個体に投与することを含
む。好ましい実施形態では、単離胎盤細胞の投与は、最大約1リットル溶液中にレシピエ
ント1キログラム当たり最大7.5×10個の単離胎盤細胞を投与することを含む。具
体的な実施形態では、前記投与は、約5×10個と約2×10個の間の単離胎盤細胞
を前記個体に、例えば頭蓋内投与することを含む。具体的な実施形態では、前記投与は、
1キログラム当たり約5×10個と約3×10個の間の単離胎盤細胞を前記個体に例
えば頭蓋内投与することを含み、前記細胞は10%デキストラン、5%ヒト血清アルブミ
ン、および場合によっては免疫抑制剤、例えばシクロスポリンAを含む溶液中に含有され
る。別の具体的な実施形態では、前記投与は、約1×10個と約3×10個の間の胎
盤多分化能細胞を前記個体に投与することを含み、前記細胞は10%デキストラン、5%
ヒト血清アルブミン、および場合によっては免疫抑制剤、例えばシクロスポリンAを含む
溶液中に含有される。別の具体的な実施形態では、前記投与は、約20ミリリットル溶液
中に約15×10個と約25×10個の間の単離胎盤細胞を前記個体に投与すること
を含む。任意の前述の実施形態では、例えばボーラスまたは点滴として、単離胎盤細胞を
静脈内または頭蓋内投与することができる。さらに別の具体的な実施形態では、前記投与
は、約20ミリリットル溶液中に約2億個の細胞を前記個体に投与することを含む。
【0062】
単離胎盤細胞は、任意の医学的に認められている時間の間注入することができる。様々
な実施形態では、例えば、前に記載した数の単離胎盤細胞を、約、または最大15、20
、25、30、35、40、45、50または55分の行程にわたり、または約、または
最大1時間、または1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5もしくは
6時間の行程にわたり、例えば静脈内または頭蓋内投与、例えば注入することができる。
【0063】
単離胎盤細胞は、個体中の個体の混乱が原因である、神経障害、例えば低酸素障害また
は酸素欠乏障害の1つまたは複数の症状の発生後の任意の時間で、脳またはCNS内また
はその周辺の血流の混乱を有する個体に投与することができる。様々な実施形態では、単
離胎盤細胞は、個体によって示される第一の症状または神経障害発生の最初の21、20
、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5
、4、3または2日以内に投与し、好ましくは、単離胎盤細胞は、個体における第一の検
出可能な症状または神経障害発生の最初の48、47、46、45、44、43、42、
41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、21、30、29、2
8、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15
、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、もしくは2時間以内、
または個体における第一の検出可能な症状または神経障害発生の最初の1時間以内に投与
する。
【0064】
他の実施形態では、単離胎盤細胞を予防的に、例えば脳またはCNS内またはその周辺
の血流の前記混乱の1つまたは複数の症状、脳卒中、低酸素障害または酸素欠乏障害の症
状の前に投与する、または検出可能である。
【0065】
個体に単離胎盤細胞を投与することを含む、個体の脳またはCNS内またはその周辺の
血流の混乱を有する個体の治療は、1つまたは複数の第2の治療剤を個体に投与すること
をさらに含むことができる。このような第2の治療剤は、単離胎盤細胞の投与前、単離胎
盤細胞の投与中、または単離胎盤細胞の投与後に投与することができる。前記第2の治療
剤は、単離胎盤細胞を投与する回数より少ない、より多い、または同数を投与することが
できる。
【0066】
第2の治療剤は、脳またはCNS内またはその周辺の血流の混乱を有する個体に対して
治療的有効性がある、任意の作用物質であってよい。一実施形態では、治療剤は、脳卒中
、低酸素障害または酸素欠乏障害を治療するために使用する作用物質、例えば薬剤である
。具体的な実施形態では、第2の治療剤は神経保護薬である。具体的な実施形態では、神
経保護薬はジスフェントンナトリウム(NXY-059;フェニルブチルニトロンのジス
ルホニル誘導体)であり、その構造は以下に示す:
【0067】
【化1】
【0068】
個体が出血性脳卒中に罹患している別の実施形態では、第2の治療剤は、前記個体の血
圧を低下させる治療剤である。別の実施形態では、第2の治療剤は血栓溶解薬である。具
体的な実施形態では、血栓溶解薬は組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)であ
る。tPAは天然源由来または組換え体であってよい。より具体的な実施形態では、個体
における1つまたは複数の症状または神経障害の発生後の、最初の3時間以内にtPAを
投与する。別のより具体的な実施形態では、脳卒中犠牲者における脳卒中の1つまたは複
数の症状の発生後の、最初の3時間後にtPAを投与する。特定の実施形態では、血栓溶
解薬の使用は、例えば脳卒中犠牲者が頭部障害を有するとき、または脳卒中が頭部障害に
よって引き起こされるとき禁忌である。別の具体的な実施形態では、第2の治療剤は抗凝
固薬または抗血小板薬である。脳またはCNS内またはその周辺の血流の混乱が出血であ
る実施形態では、第2の治療剤は、降圧薬、例えばβ遮断薬または利尿薬、利尿薬とカリ
ウム保持性利尿薬の組合せ、β遮断薬と利尿薬の組合せ、アンギオテンシン転換酵素(A
CE)阻害剤と利尿薬、アンギオテンシン-IIアンタゴニストおよび利尿薬、および/
またはカルシウムチャネルブロッカーとACE阻害剤の組合せであってよい。別の実施形
態では、第2の治療剤を投与して頭蓋内圧を低下させる。より具体的な実施形態では、第
2の治療剤は利尿薬である。
【0069】
投与する単離胎盤細胞が脳またはCNS内またはその周辺の血流の混乱を有する個体と
同種ではない実施形態では、第2の治療剤は免疫抑制剤であってよい。免疫抑制剤は当技
術分野でよく知られており、例えば、抗T細胞受容体抗体(モノクローナルもしくはポリ
クローナル、またはその抗体断片もしくは誘導体、例えばムロモナブ-CD3)、抗IL
-2受容体抗体(例えばバシリキシマブ(SIMULECT(登録商標))またはダクリ
ズマブ(ZENAPAX)(登録商標))、アザチオプリン、コルチコステロイド、シク
ロスポリン、タクロリムス、ミコフェノレートモフェチル、シロリムス、カルシニューリ
ン阻害剤などを含む。具体的な実施形態では、免疫抑制剤は、マクロファージ炎症性タン
パク質(MIP)-1αまたはMIP-1βに対する中和抗体である。好ましくは、抗M
IP-1αまたはMIP-1β抗体は、例えば投与時に、前記個体中のMIP-1αおよ
び/またはMIP-1βの量の検出可能な低減を引き起こすのに十分な量で投与する。
【0070】
5.4 単離胎盤細胞および単離胎盤細胞集団
血流の混乱が原因の症状および神経障害を含めた、脳もしくはCNS内またはその周辺
の血流の混乱を有する個体の治療に有用な単離胎盤細胞は、組織培養基質と接着し多分化
能細胞または幹細胞の特性を有するが、トロホブラストではない、胎盤またはその一部分
から入手可能な細胞である。特定の実施形態では、本明細書で開示する方法において有用
な単離胎盤細胞は、非胎盤細胞型に分化する能力を有する。本明細書で開示する方法にお
いて有用な単離胎盤細胞は、胎児起源または母方起源のいずれかであってよい(すなわち
、それぞれ胎児または母親のいずれかの遺伝子型を有してよい)。単離胎盤細胞および単
離胎盤細胞の集団は胎児起源であることが好ましい。本明細書で使用する語句「胎児起源
」または「非母方起源」は、単離胎盤細胞または単離胎盤細胞の集団が、胎児と関係があ
る、すなわち胎児の遺伝子型を有する臍帯または胎盤構造から得られることを示す。本明
細書で使用する語句「母方起源」は、細胞または細胞の集団が、母親と関係がある、例え
ば母方の遺伝子型を有する胎盤構造から得られることを示す。単離胎盤細胞、または単離
胎盤細胞を含む細胞の集団は、胎児または母方起源のみである単離胎盤細胞を含むことが
でき、または胎児と母方両方の起源の単離胎盤細胞の混合集団を含むことができる。単離
胎盤細胞、および単離胎盤細胞を含む細胞の集団は、以下で論じる形態、マーカー、およ
び培養特性によって同定および選択することができる。特定の実施形態では、本明細書に
記載の任意の胎盤細胞、例えば、胎盤幹細胞または胎盤多分化能細胞は、レシピエント、
例えば脳卒中を有する個体、または脳卒中の症状を有する個体と同種である。特定の他の
実施形態では、本明細書に記載の任意の胎盤細胞、例えば、胎盤幹細胞または胎盤多分化
能細胞は、レシピエント、例えば脳卒中を有する個体、または脳卒中の症状を有する個体
と異種である。
【0071】
5.4.1 物理的および形態特性
本明細書に記載の単離胎盤細胞は、初代培養または細胞培養において培養すると、組織
培養基質、例えば組織培養容器表面(例えば、組織培養プラスチック)、または細胞外マ
トリクスまたはラミニン、コラーゲン(例えば、天然または変性)、ゼラチン、フィブロ
ネクチン、オルニチン、ビトロネクチンなどのリガンド、および細胞外膜タンパク質(例
えば、MATRIGEL(登録商標))(BD Discovery Labware、
Bedford、Mass.)でコーティングした組織培養表面と接着する。培養中の単
離胎盤細胞は一般に線維芽細胞様、星状の外見を呈し、いくつかの細胞質突起が中心細胞
体から広がる。しかしながら、これらの細胞は、同じ条件下で培養した線維芽細胞と形態
学的に区別することができる。単離胎盤細胞は、線維芽細胞より多数のこのような突起を
示すからである。形態学的に、単離胎盤細胞は、一般に培養中により円形の、または敷石
状の形態を呈する造血幹細胞とも区別することができる。
【0072】
特定の実施形態では、本明細書で開示する治療方法に有用な単離胎盤細胞は、増殖培地
で培養すると、胚様体を発生する。胚様体は、増殖する単離胎盤細胞の接着層の上部で増
殖することができる不連続な細胞塊である。細胞の塊、胚性幹細胞の培養物から増殖する
細胞の塊は胚様体と似ているので、用語「胚様」を使用する。増殖する単離胎盤細胞の培
養物において胚様体が発生し得る増殖培地には、例えば、(例えばGibcoからの)D
MEM-LG、(例えばHyclone Labsからの)2%ウシ胎児血清、1×イン
シュリン-トランスフェリン-セレン(ITS)、1×リノール酸-ウシ血清アルブミン
(LA-BSA)、(例えばSigmaからの)10-9Mのデキサメタゾン、(例えば
Sigmaからの)10-4Mのアスコルビン酸2-ホスフェート、(例えばR&D S
ystemsからの)表皮増殖因子10ng/mL、および(例えばR&D Syste
msからの)血小板由来増殖因子(PDGF-BB)10ng/mLを含む培地がある。
【0073】
5.4.2 細胞表面、分子および遺伝子マーカー
本明細書で開示する治療方法に有用な、単離胎盤細胞、例えば多分化能細胞または幹細
胞、および単離胎盤細胞の集団は、多分化能細胞または幹細胞の特性を有する組織培養プ
ラスチック接着性ヒト胎盤細胞であり、細胞、または幹細胞を含む細胞の集団を同定およ
び/または単離するために使用することができる複数のマーカーを発現する。本明細書に
記載の単離胎盤細胞、および胎盤細胞集団(すなわち、2つ以上の単離胎盤細胞)は、胎
盤、またはその任意の一部分(例えば、羊膜、絨毛膜、胎盤葉など)から直接得られる、
胎盤細胞および胎盤細胞含有細胞集団を含む。単離胎盤細胞集団は、培養中の単離胎盤細
胞の集団(すなわち、2つ以上)、および容器、例えばバッグ中の集団も含む。本明細書
に記載の単離胎盤細胞は、骨髄由来間葉系細胞、脂肪由来間葉系幹細胞、または臍帯血、
胎盤血、または末梢血から得られる間葉系細胞ではない。
【0074】
特定の実施形態では、単離胎盤細胞は単離胎盤幹細胞である。特定の他の実施形態では
、単離胎盤細胞は単離胎盤多分化能細胞である。一実施形態では、単離胎盤細胞はフロー
サイトメトリーによって検出されるCD34、CD10およびCD105である。
具体的な実施形態では、単離CD34、CD10、CD105胎盤細胞は胎盤幹細
胞である。別の具体的な実施形態では、単離CD34、CD10、CD105胎盤
細胞は多分化能胎盤細胞である。別の具体的な実施形態では、単離CD34、CD10
、CD105胎盤細胞は、神経系の表現型の細胞、骨形成原の表現型の細胞、または
軟骨形成の表現型の細胞に分化する能力を有する。別の具体的な実施形態では、単離CD
34、CD10、CD105胎盤細胞はさらにCD200である。別の具体的な
実施形態では、単離CD34、CD10、CD105胎盤細胞はさらにCD45
またはCD90である。別の具体的な実施形態では、単離CD34、CD10、C
D105胎盤細胞はさらにフローサイトメトリーによって検出されるCD45および
CD90である。より具体的な実施形態では、単離CD34、CD10、CD10
、CD200胎盤細胞はさらにフローサイトメトリーによって検出されるCD90
またはCD45である。別のより具体的な実施形態では、単離CD34、CD10
、CD105、CD200胎盤細胞はさらにフローサイトメトリーによって検出さ
れるCD90およびCD45である、すなわち、細胞はCD34、CD10、C
D45、CD90、CD105およびCD200である。より具体的な実施形態
では、前記CD34、CD10、CD45、CD90、CD105、CD20
細胞はさらにCD80およびCD86である。
【0075】
具体的な実施形態では、前に記載したCD34、CD10、CD105細胞のい
ずれかはさらにCD29、CD38、CD44、CD54、SH3またはSH
の1つまたは複数である。別のより具体的な実施形態では、細胞はさらにCD44
である。前述の単離CD34、CD10、CD105胎盤細胞のいずれかの別の具
体的な実施形態では、細胞はさらにCD117、CD133、KDR(VEGFR
)、HLA-A、B、C、HLA-DP、DQ、DR、もしくはプログラム死-
1リガンド(PDL1)、またはこれらの任意の組合せの1つまたは複数である。
【0076】
別の実施形態では、CD34、CD10、CD105細胞は、さらにCD13
、CD29、CD33、CD38、CD44、CD45、CD54、CD6
2E、CD62L、CD62P、SH3(CD73)、SH4(CD73
)、CD80、CD86、CD90、SH2(CD105)、CD106/V
CAM、CD117、CD144/VE-カドヘリン、CD184/CXCR4
、CD200、CD133、OCT-4、SSEA3、SSEA4、ABC-
、KDR(VEGFR2)、HLA-A、B、C、HLA-DP、DQ、DR
、HLA-G、またはプログラム死-1リガンド(PDL1)、またはこれらの任
意の組合せの1つまたは複数である。別の実施形態では、CD34、CD10、CD
105細胞はさらにCD13、CD29、CD33、CD38、CD44
CD45、CD54/ICAM、CD62E、CD62L、CD62P、SH
(CD73)、SH4(CD73)、CD80、CD86、CD90
SH2(CD105)、CD106/VCAM、CD117、CD144/VE
-カドヘリン、CD184/CXCR4、CD200、CD133、OCT-4
、SSEA3、SSEA4、ABC-p、KDR(VEGFR2)、HLA
-A、B、C、HLA-DP、DQ、DR、HLA-G、およびプログラム死-1
リガンド(PDL1)である。
【0077】
特定の実施形態では、細胞はSSEA3-、SSEA4-またはABC-pの1つま
たは複数である。単離胎盤細胞は、HLA-ABC(MHC-1)を発現することもでき
る。これらのマーカーは任意の組合せで使用して、単離胎盤細胞、例えば、単離胎盤幹細
胞または単離多分化能細胞を同定すること、および単離胎盤細胞と他の細胞型を区別する
ことができる。単離胎盤細胞はCD73およびCD105を発現することができるので、
それらは間葉系幹細胞様の特性を有する可能性がある。例えばCD34、CD38および
/またはCD45の発現の欠如によって、非造血幹細胞として単離胎盤細胞を同定する。
【0078】
本明細書でさらに提供するのは、本明細書で開示する治療方法に有用である、単離胎盤
細胞の集団、または単離胎盤細胞を含む、例えばそれらが豊富である細胞の集団、例えば
、胎盤細胞の集団である。単離胎盤細胞を含む好ましい細胞集団であって、本明細書で開
示する治療方法に有用である細胞集団は、例えば、少なくとも10%、15%、20%、
25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、
75%、80%、85%、90%、95%または98%の単離CD10、CD105
およびCD34胎盤細胞を含む、すなわち、前記集団中の少なくとも10%、15%、
20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、
70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%の細胞が単離CD10
、CD105およびCD34胎盤細胞である。具体的な実施形態では、単離CD34
、CD10、CD105胎盤細胞はさらにCD200である。より具体的な実施
形態では、単離CD34、CD10、CD105、CD200胎盤細胞はさらに
フローサイトメトリーによって検出されるCD90またはCD45である。別のより
具体的な実施形態では、単離CD34、CD10、CD105、CD200胎盤
細胞はさらにフローサイトメトリーによって検出されるCD90およびCD45であ
る。より具体的な実施形態では、前に記載したCD34、CD10、CD105
胞のいずれかはさらにCD29、CD38、CD44、CD54、SH3また
はSH4の1つまたは複数である。別のより具体的な実施形態では、単離CD34
CD10、CD105胎盤細胞、または単離CD34、CD10、CD105
、CD200胎盤細胞はさらにCD44である。前述の単離CD34、CD10
、CD105胎盤細胞を含む細胞集団のいずれかの具体的な実施形態では、単離胎盤細
胞はさらにCD13、CD29、CD33、CD38、CD44、CD45
、CD54、CD62E、CD62L、CD62P、SH3(CD73)、
SH4(CD73)、CD80、CD86、CD90、SH2(CD105
)、CD106/VCAM、CD117、CD144/VE-カドヘリン、CD
184/CXCR4、CD200、CD133、OCT-4、SSEA3、S
SEA4、ABC-p、KDR(VEGFR2)、HLA-A、B、C、HL
A-DP、DQ、DR、HLA-G、またはプログラム死-1リガンド(PDL1)
、またはこれらの任意の組合せの、1つまたは複数である。より具体的な実施形態では
、CD34、CD10、CD105細胞はさらにCD13、CD29、CD3
、CD38、CD44、CD45、CD54/ICAM、CD62E、C
D62L、CD62P、SH3(CD73)、SH4(CD73)、CD8
、CD86、CD90、SH2(CD105)、CD106/VCAM
CD117、CD144/VE-カドヘリン、CD184/CXCR4、CD20
、CD133、OCT-4、SSEA3、SSEA4、ABC-p、KD
(VEGFR2)、HLA-A、B、C、HLA-DP、DQ、DR、HLA
-G、およびプログラム死-1リガンド(PDL1)である。
【0079】
特定の実施形態では、本明細書に記載の治療方法に有用である単離胎盤細胞は、CD1
、CD29、CD34、CD38、CD44、CD45、CD54、C
D90、SH2、SH3、SH4、SSEA3、SSEA4、OCT-4
、およびABC-pの1つまたは複数、または全部である単離胎盤細胞であり、前記単
離胎盤細胞は、胎盤組織の物理的および/または酵素による破壊によって得る。具体的な
実施形態では、単離胎盤細胞はOCT-4およびABC-pである。別の具体的な実
施形態では、単離胎盤細胞はOCT-4およびCD34であり、前記単離胎盤細胞は
、以下の特性、CD10、CD29、CD44、CD45、CD54、CD9
、SH3、SH4、SSEA3、およびSSEA4の少なくとも1つを有す
る。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はOCT-4、CD34、CD10
、CD29、CD44、CD45、CD54、CD90、SH3、SH4
、SSEA3、およびSSEA4である。別の実施形態では、単離胎盤細胞はOCT
-4、CD34、SSEA3、およびSSEA4である。より具体的な実施形態
では、単離胎盤細胞はOCT-4およびCD34であり、かつSH2またはSH3
のいずれかである。より具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はOCT-4、CD3
、SH2、SH3である。別のより具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はOC
T-4、CD34、SSEA3、およびSSEA4であり、かつSH2または
SH3のいずれかである。別のより具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はOCT-4
およびCD34であり、SH2またはSH3のいずれかであり、かつCD10
、CD29、CD44、CD45、CD54、CD90、SSEA3、また
はSSEA4の少なくとも1つである。別のより具体的な実施形態では、単離胎盤細胞
はOCT-4、CD34、CD10、CD29、CD44、CD45、CD
54、CD90、SSEA3、およびSSEA4であり、かつSH2またはS
H3のいずれかである。
【0080】
別の実施形態では、本明細書で開示する治療法に有用である単離胎盤細胞は、SH2
、SH3、SH4およびOCT-4である。より具体的な実施形態では、単離胎盤
細胞は、CD10、CD29、CD44、CD54、CD90、CD34
CD45、SSEA3、またはSSEA4である。別の実施形態では、単離胎盤細
胞は、SH2、SH3、SH4、SSEA3、およびSSEA4である。より
具体的な実施形態では、単離胎盤細胞は、SH2、SH3、SH4、SSEA3
、およびSSEA4、CD10、CD29、CD44、CD54、CD90
、OCT-4、CD34、またはCD45である。
【0081】
別の実施形態では、本明細書で開示する治療法に有用である単離胎盤細胞は、CD10
、CD29、CD34、CD44、CD45、CD54、CD90、SH
、SH3、およびSH4であり、前記単離胎盤細胞は、さらにOCT-4、S
SEA3、またはSSEA4である。
【0082】
特定の実施形態では、本明細書で開示する治療方法、例えば、脳もしくはCNS内また
はその周辺の血流の混乱の治療、脳卒中の治療に有用な単離胎盤細胞は、CD200
たはHLA-Gである。具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はCD200およびH
LA-Gである。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はさらにCD73および
CD105である。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はさらにCD34、C
D38またはCD45である。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はさらにC
D34、CD38およびCD45である。別の具体的な実施形態では、前記幹細胞
はCD34、CD38、CD45、CD73およびCD105である。別の具
体的な実施形態では、前記単離CD200またはHLA-G胎盤細胞は、胚様体の形
成を可能にする条件下での、単離胎盤細胞を含む胎盤細胞の集団中での胚様体の形成を容
易にする。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞は、幹細胞または多分化能細胞では
ない胎盤細胞から単離する。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は、これらの
マーカーを示さない胎盤幹細胞から単離する。
【0083】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である細胞集団は、CD200
、HLA-G幹細胞を含む、例えばそれらが豊富である細胞の集団である。具体的な
実施形態では、前記集団は、胎盤細胞の集団である。様々な実施形態では、前記細胞集団
中の細胞の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも
約40%、少なくとも約50%、または少なくとも約60%が、単離CD200、HL
A-G胎盤細胞である。前記細胞集団中の細胞の少なくとも約70%が、単離CD20
、HLA-G胎盤細胞であることが好ましい。前記細胞の少なくとも約90%、9
5%、または99%が、単離CD200、HLA-G胎盤細胞であることがより好ま
しい。単離集団の具体的な実施形態では、前記単離CD200、HLA-G胎盤細胞
はさらにCD73およびCD105である。別の具体的な実施形態では、前記単離C
D200、HLA-G胎盤細胞はさらにCD34、CD38またはCD45
ある。より具体的な実施形態では、前記単離CD200、HLA-G胎盤細胞はさら
にCD34、CD38、CD45、CD73およびCD105である。別の実
施形態では、前記細胞集団は、胚様体の形成を可能にする条件下で培養したとき1つまた
は複数の胚様体を生成する。別の具体的な実施形態では、前記単離CD200、HLA
-G胎盤細胞集団は幹細胞ではない胎盤細胞から単離する。別の具体的な実施形態では
、前記単離CD200、HLA-G胎盤細胞集団は、これらのマーカーを示さない胎
盤細胞から単離する。
【0084】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である単離胎盤細胞は、CD7
、CD105、およびCD200である。別の具体的な実施形態では、単離胎盤
細胞はHLA-Gである。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はCD34、C
D38またはCD45である。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はCD34
、CD38およびCD45である。より具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はC
D34、CD38、CD45、およびHLA-Gである。別の具体的な実施形態
では、単離CD73、CD105、およびCD200胎盤細胞は、胚様体の形成を
可能にする条件下でその集団を培養すると、単離胎盤細胞を含む胎盤細胞の集団中での1
つまたは複数の胚様体の形成を容易にする。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞は
単離胎盤細胞ではない胎盤細胞から単離する。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞
は、これらのマーカーを示さない胎盤細胞から単離する。
【0085】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である細胞集団は、単離CD7
、CD105、CD200胎盤細胞を含む、例えばそれらが豊富である細胞の集
団である。様々な実施形態では、前記細胞集団中の細胞の少なくとも約10%、少なくと
も約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、または少
なくとも約60%が、単離CD73、CD105、CD200胎盤細胞である。別
の実施形態では、前記細胞集団中の細胞の少なくとも約70%が、単離CD73、CD
105、CD200胎盤細胞である。別の実施形態では、前記細胞集団中の細胞の少
なくとも約90%、95%、または99%が、単離CD73、CD105、CD20
胎盤細胞である。前記集団の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はHLA-G
ある。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はさらにCD34、CD38または
CD45である。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はさらにCD34、CD
38およびCD45である。より具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はさらにCD
34、CD38、CD45、およびHLA-Gである。別の具体的な実施形態で
は、前記細胞集団は、胚様体の形成を可能にする条件下で培養すると1つまたは複数の胚
様体を生成する。別の具体的な実施形態では、前記胎盤細胞集団は、幹細胞ではない胎盤
細胞から単離する。別の具体的な実施形態では、前記胎盤幹細胞集団は、これらの特性を
示さない胎盤細胞から単離する。
【0086】
特定の他の実施形態では、単離胎盤細胞は、CD10、CD29、CD34、C
D38、CD44、CD45、CD54、CD90、SH2、SH3、S
H4、SSEA3、SSEA4、OCT-4、MHC-IおよびABC-p
の1つまたは複数である。具体的な実施形態では、単離胎盤細胞は、CD10、CD2
、CD34、CD38、CD44、CD45、CD54、CD90、S
H2、SH3、SH4、SSEA3、SSEA4、およびOCT-4である
。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞は、CD10、CD29、CD34
CD38、CD45、CD54、SH2、SH3、およびSH4である。別
の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞は、CD10、CD29、CD34、CD
38、CD45、CD54、SH2、SH3、SH4およびOCT-4
ある。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞は、CD10、CD29、CD34
、CD38、CD44、CD45、CD54、CD90、HLA-G、S
H2、SH3、SH4である。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞は、OC
T-4およびABC-pである。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞は、SH
、SH3、SH4およびOCT-4である。別の実施形態では、単離胎盤細胞
は、OCT-4、CD34、SSEA3、およびSSEA4である。具体的な実
施形態では、前記単離OCT-4、CD34、SSEA3、およびSSEA4
盤細胞はさらにCD10、CD29、CD34、CD44、CD45、CD5
、CD90、SH2、SH3、およびSH4である。別の実施形態では、単
離胎盤細胞はOCT-4およびCD34であり、かつSH3またはSH4のいず
れかである。別の実施形態では、単離胎盤細胞はCD34であり、かつCD10、C
D29、CD44、CD54、CD90、またはOCT-4のいずれかである
【0087】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である単離胎盤細胞は、CD2
00およびOCT-4である。具体的な実施形態では、単離胎盤細胞はCD73
よびCD105である。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞はHLA-G
である。別の具体的な実施形態では、前記単離CD200、OCT-4胎盤細胞はC
D34、CD38またはCD45である。別の具体的な実施形態では、前記単離C
D200、OCT-4胎盤細胞はCD34、CD38およびCD45である。
別の具体的な実施形態では、前記単離CD200、OCT-4胎盤細胞はCD34
、CD38、CD45、CD73、CD105およびHLA-Gである。別の
具体的な実施形態では、単離CD200、OCT-4胎盤細胞は、胚様体の形成を可
能にする条件下で単離細胞を含む胎盤細胞の集団を培養すると、この集団による1つまた
は複数の胚様体の生成を容易にする。別の具体的な実施形態では、前記単離CD200
、OCT-4胎盤細胞は、幹細胞ではない胎盤細胞から単離する。別の具体的な実施形
態では、前記単離CD200、OCT-4胎盤細胞は、これらの特性を示さない胎盤
細胞から単離する。
【0088】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である細胞集団は、CD200
、OCT-4胎盤細胞を含む、例えばそれらが豊富である細胞の集団である。様々な
実施形態では、前記細胞集団中の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも
約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、または少なくとも約60%の細胞
が、単離CD200、OCT-4胎盤細胞である。別の実施形態では、前記細胞の少
なくとも約70%の細胞が、前記単離CD200、OCT-4胎盤細胞である。別の
実施形態では、前記細胞集団中の少なくとも約80%、90%、95%、または99%の
細胞が、前記単離CD200、OCT-4胎盤細胞である。単離集団の具体的な実施
形態では、前記単離CD200、OCT-4胎盤細胞はさらにCD73およびCD
105である。別の具体的な実施形態では、前記単離CD200、OCT-4胎盤
細胞はさらにHLA-Gである。別の具体的な実施形態では、前記単離CD200
OCT-4胎盤細胞はさらにCD34、CD38およびCD45である。別の具
体的な実施形態では、前記単離CD200、OCT-4胎盤細胞はさらにCD34
、CD38、CD45、CD73、CD105およびHLA-Gである。別の
具体的な実施形態では、細胞集団は、胚様体の形成を可能にする条件下で培養すると1つ
または複数の胚様体を生成する。別の具体的な実施形態では、前記細胞集団は、単離CD
200、OCT-4胎盤細胞ではない胎盤細胞から単離する。別の具体的な実施形態
では、前記細胞集団は、これらのマーカーを示さない胎盤細胞から単離する。
【0089】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である単離胎盤細胞は、CD7
、CD105およびHLA-Gである。別の具体的な実施形態では、単離CD7
、CD105およびHLA-G胎盤細胞はさらにCD34、CD38または
CD45である。別の具体的な実施形態では、単離CD73、CD105およびH
LA-G胎盤細胞はさらにCD34、CD38およびCD45である。別の具体
的な実施形態では、単離CD73、CD105およびHLA-G胎盤細胞はさらに
OCT-4である。別の具体的な実施形態では、単離CD73、CD105、HL
A-G胎盤細胞はさらにCD200である。より具体的な実施形態では、単離CD7
、CD105およびHLA-G胎盤細胞はさらにCD34、CD38、CD
45、OCT-4およびCD200である。別の具体的な実施形態では、単離CD
73、CD105、HLA-G胎盤細胞は、胚様体の形成を可能にする条件下でそ
の集団を培養すると、前記細胞を含む胎盤細胞の集団中の胚様体の形成を容易にする。別
の具体的な実施形態では、前記単離CD73、CD105、HLA-G胎盤細胞は
、単離CD73、CD105、HLA-G胎盤細胞ではない胎盤細胞から単離する
。別の具体的な実施形態では、前記単離CD73、CD105、HLA-G胎盤細
胞は、これらのマーカーを示さない胎盤細胞から単離する。
【0090】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である細胞集団は、単離CD7
、CD105およびHLA-G胎盤細胞を含む、例えばそれらが豊富である細胞
の集団である。様々な実施形態では、前記細胞集団中の少なくとも約10%、少なくとも
約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、または少な
くとも約60%の細胞が、単離CD73、CD105、HLA-G胎盤細胞である
。別の実施形態では、前記細胞集団の少なくとも約70%の細胞が、単離CD73、C
D105、HLA-G胎盤細胞である。別の実施形態では、前記細胞集団中の少なく
とも約90%、95%、または99%の細胞が、単離CD73、CD105、HLA
-G胎盤細胞である。前述の集団の具体的な実施形態では、前記単離CD73、CD
105、HLA-G胎盤細胞はさらにCD34、CD38またはCD45であ
る。別の具体的な実施形態では、前記単離CD73、CD105、HLA-G胎盤
細胞はさらにCD34、CD38およびCD45である。別の具体的な実施形態で
は、前記単離CD73、CD105、HLA-G胎盤細胞はさらにOCT-4
ある。別の具体的な実施形態では、前記単離CD73、CD105、HLA-G
盤細胞はさらにCD200である。より別の具体的な実施形態では、前記単離CD73
、CD105、HLA-G胎盤細胞はさらにCD34、CD38、CD45
、OCT-4およびCD200である。別の具体的な実施形態では、前記細胞集団は
、単離CD73、CD105、HLA-G胎盤細胞ではない胎盤細胞から単離する
。別の具体的な実施形態では、前記細胞集団は、これらのマーカーを示さない胎盤細胞か
ら単離する。
【0091】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である単離胎盤細胞は、CD7
およびCD105であり、胚様体の形成を可能にする条件下で前記集団を培養する
と、前記CD73、CD105細胞を含む単離胎盤細胞の集団中の1つまたは複数の
胚様体の形成を容易にする。別の具体的な実施形態では、前記単離CD73、CD10
胎盤細胞はさらにCD34、CD38またはCD45である。別の具体的な実
施形態では、前記単離CD73、CD105胎盤細胞はさらにCD34、CD38
およびCD45である。別の具体的な実施形態では、前記単離CD73、CD10
胎盤細胞はさらにOCT-4である。より具体的な実施形態では、前記単離CD7
、CD105胎盤細胞はさらにOCT-4、CD34、CD38およびCD
45である。別の具体的な実施形態では、前記単離CD73、CD105胎盤細胞
は、前記細胞ではない胎盤細胞から単離する。別の具体的な実施形態では、前記単離CD
73、CD105胎盤細胞は、これらの特性を示さない胎盤細胞から単離する。
【0092】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である細胞集団は、CD73
、CD105である単離胎盤細胞を含む、例えばそれらが豊富である細胞の集団であり
、胚様体の形成を可能にする条件下で前記集団を培養すると、前記細胞を含む単離胎盤細
胞の集団中の1つまたは複数の胚様体の形成を容易にする。様々な実施形態では、前記細
胞集団中の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも
約40%、少なくとも約50%、または少なくとも約60%の細胞が、前記単離CD73
、CD105胎盤細胞である。別の実施形態では、前記細胞集団の少なくとも約70
%の細胞が、前記単離CD73、CD105胎盤細胞である。別の実施形態では、前
記細胞集団中の少なくとも約90%、95%、または99%の細胞が、前記単離CD73
、CD105胎盤細胞である。前述の集団の具体的な実施形態では、前記単離CD7
、CD105胎盤細胞はさらにCD34、CD38またはCD45である。
別の具体的な実施形態では、前記単離CD73、CD105胎盤細胞はさらにCD3
、CD38およびCD45である。別の具体的な実施形態では、前記単離CD7
、CD105胎盤細胞はさらにOCT-4である。別の具体的な実施形態では、
前記単離CD73、CD105胎盤細胞はさらにCD200である。より具体的な
実施形態では、前記単離CD73、CD105胎盤細胞はさらにCD34、CD3
、CD45、OCT-4およびCD200である。別の具体的な実施形態では
、前記細胞集団は、前記単離CD73、CD105胎盤細胞ではない胎盤細胞から単
離する。別の具体的な実施形態では、前記細胞集団は、これらのマーカーを示さない胎盤
細胞から単離する。
【0093】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である単離胎盤細胞は、OCT
-4であり、胚様体の形成を可能にする条件下で培養すると、前記細胞を含む単離胎盤
細胞の集団中の1つまたは複数の胚様体の形成を容易にする。具体的な実施形態では、前
記単離OCT-4胎盤細胞はさらにCD73およびCD105である。別の具体的
な実施形態では、前記単離OCT-4胎盤細胞はさらにCD34、CD38、また
はCD45である。別の具体的な実施形態では、前記単離OCT-4胎盤細胞はさら
にCD200である。より具体的な実施形態では、前記単離OCT-4胎盤細胞はさ
らにCD73、CD105、CD200、CD34、CD38、およびCD4
である。別の具体的な実施形態では、前記単離OCT-4胎盤細胞は、OCT-4
胎盤細胞ではない胎盤細胞から単離する。別の具体的な実施形態では、前記単離OCT
-4胎盤細胞は、これらの特性を示さない胎盤細胞から単離する。
【0094】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である細胞集団は、OCT-4
である単離胎盤細胞を含む、例えばそれらが豊富である細胞の集団であり、胚様体の形
成を可能にする条件下で前記集団を培養すると、前記細胞を含む単離胎盤細胞の集団中の
1つまたは複数の胚様体の形成を容易にする。様々な実施形態では、前記細胞集団中の少
なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少
なくとも約50%、または少なくとも約60%の細胞が、前記単離OCT-4胎盤細胞
である。別の実施形態では、前記細胞集団の少なくとも約70%の細胞が、前記単離OC
T-4胎盤細胞である。別の実施形態では、前記細胞集団中の少なくとも約80%、9
0%、95%、または99%の細胞が、前記単離OCT-4胎盤細胞である。前述の集
団の具体的な実施形態では、前記単離OCT-4胎盤細胞はさらにCD34、CD3
またはCD45である。別の具体的な実施形態では、前記単離OCT-4胎盤細
胞はさらにCD34、CD38およびCD45である。別の具体的な実施形態では
、前記単離OCT-4胎盤細胞はさらにCD73およびCD105である。別の具
体的な実施形態では、前記単離OCT-4胎盤細胞はさらにCD200である。より
具体的な実施形態では、前記単離OCT-4胎盤細胞はさらにCD73、CD105
、CD200、CD34、CD38、およびCD45である。別の具体的な実
施形態では、前記細胞集団は、前記細胞ではない胎盤細胞から単離する。別の具体的な実
施形態では、前記細胞集団は、これらのマーカーを示さない胎盤細胞から単離する。
【0095】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である、単離胎盤細胞は、単離
HLA-A、B、C、CD45、CD133およびCD34胎盤細胞である。別
の実施形態では、脳またはCNS中、またはその周りの血流の中断の治療に有用である細
胞集団は、単離胎盤細胞を含む細胞の集団であり、前記単離細胞集団の少なくとも約70
%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約
99%の細胞が単離HLA-A、B、C、CD45、CD133およびCD34
胎盤細胞である。具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞または単離胎盤細胞の集団は
、HLA-A、B、C、CD45、CD133およびCD34胎盤細胞ではない
胎盤細胞から単離する。他の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は非母方起源であ
る。他の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞の集団は母方の構成成分は実質的に含
まず、例えば、前記単離胎盤細胞の集団中の少なくとも約40%、45%、50%、55
%、60%、65%、70%、75%、90%、85%、90%、95%、98%または
99%の前記細胞が非母方起源である。
【0096】
別の実施形態では、本明細書に記載治療方法に有用である、単離胎盤細胞は、単離CD
10、CD13、CD33、CD45、CD117およびCD133胎盤細
胞である。別の実施形態では、脳またはCNS中、またはその周りの血流の中断の治療に
有用である細胞集団は、単離胎盤細胞を含む細胞の集団であり、前記細胞集団の少なくと
も約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少な
くとも約99%の細胞が単離CD10、CD13、CD33、CD45、CD1
17およびCD133胎盤細胞である。具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞ま
たは単離胎盤細胞の集団は、前記単離胎盤細胞ではない胎盤細胞から単離する。別の具体
的な実施形態では、前記単離CD10、CD13、CD33、CD45、CD1
17およびCD133胎盤細胞は非母方起源である、すなわち胎児の遺伝子型を有す
る。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞の集団中の少なくとも約40%、45
%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95
%、98%または99%の前記細胞が非母方起源である。別の具体的な実施形態では、前
記単離胎盤細胞または単離胎盤細胞の集団は、これらの特性を示さない胎盤細胞から単離
する。
【0097】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である、単離胎盤細胞は、単離
CD10、CD33、CD44、CD45、およびCD117胎盤細胞である
。別の実施形態では、脳またはCNS中、またはその周りの血流の中断の治療に有用であ
る細胞集団は、単離胎盤細胞を含む、例えばそれらが豊富である細胞の集団であり、前記
細胞集団の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも
約95%または少なくとも約99%の細胞が単離CD10、CD33、CD44
CD45、およびCD117胎盤細胞である。具体的な実施形態では、前記単離胎盤
細胞または単離胎盤細胞の集団は、前記細胞ではない胎盤細胞から単離する。別の具体的
な実施形態では、前記単離胎盤細胞は非母方起源である。別の具体的な実施形態では、前
記細胞集団中の少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%
、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の前記細胞が非母方起
源である。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞または単離胎盤細胞の集団は、
これらのマーカーを示さない胎盤細胞から単離する。
【0098】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である単離胎盤細胞は、単離C
D10、CD13、CD33、CD45、およびCD117胎盤細胞である。
別の実施形態では、脳またはCNS中、またはその周りの血流の中断の治療に有用である
細胞集団は、単離CD10、CD13、CD33、CD45、およびCD117
胎盤細胞を含む、例えばそれらが豊富である細胞の集団であり、前記細胞集団の少なく
とも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少
なくとも約99%の細胞がCD10、CD13、CD33、CD45、およびC
D117胎盤細胞を含む。具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞または単離胎盤細
胞の集団は、前記細胞ではない胎盤細胞から単離する。別の具体的な実施形態では、前記
単離胎盤細胞は非母方起源である。別の具体的な実施形態では、前記細胞集団中の少なく
とも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、8
5%、90%、95%、98%または99%の前記細胞が非母方起源である。別の具体的
な実施形態では、前記単離胎盤細胞または単離胎盤細胞の集団は、これらの特性を示さな
い胎盤細胞から単離する。
【0099】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である単離胎盤細胞はHLA-
A、B、C、CD45、CD34、およびCD133であり、さらにCD10
、CD13、CD38、CD44、CD90、CD105、CD200およ
び/またはHLA-G、および/またはCD117に陰性である。別の実施形態では、
脳またはCNS中、またはその周りの血流の中断の治療に有用である細胞集団は、単離胎
盤細胞を含む細胞の集団であり、前記集団中の少なくとも約20%、25%、30%、3
5%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、8
5%、90%、95%、98%または約99%の細胞が、HLA-A、B、C、CD4
、CD34、CD133であり、さらにCD10、CD13、CD38、CD4
4、CD90、CD105、CD200および/またはHLA-Gに陽性であり、および
/またはCD117に陰性である単離胎盤細胞である。具体的な実施形態では、前記単離
胎盤細胞または単離胎盤細胞の集団は、前記細胞ではない胎盤細胞から単離する。別の具
体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は非母方起源である。別の具体的な実施形態では
、前記細胞集団中の少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、7
0%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の前記細胞が非母
方起源である。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞または単離胎盤細胞の集団
は、これらのマーカーを示さない胎盤細胞から単離する。
【0100】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である単離胎盤細胞は、抗体結
合により決定してCD200およびCD10である単離胎盤細胞、ならびに抗体結合
とRT-PCRの両方により決定してCD117である単離胎盤細胞である。別の実施
形態では、脳またはCNS中、またはその周りの血流の中断の治療に有用である単離胎盤
細胞は、CD10、CD29、CD54、CD200、HLA-G、HLAク
ラス1およびβ-2-マイクログロブリンである単離胎盤細胞、例えば胎盤幹細胞ま
たは胎盤多分化能細胞である。別の実施形態では、脳またはCNS中、またはその周りの
血流の中断の治療に有用である単離胎盤細胞は、少なくとも1つの細胞マーカーの発現が
間葉系幹細胞(例えば、骨髄由来間葉系幹細胞)より少なくとも2倍高い胎盤細胞である
。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は非母方起源である。別の具体的な実施
形態では、前記細胞集団中の少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、6
5%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の前記細
胞が非母方起源である。
【0101】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である単離胎盤細胞は、CD1
、CD29、CD44、CD45、CD54/ICAM、CD62-E
CD62-L、CD62-P、CD80、CD86、CD103、CD104
、CD105、CD106/VCAM、CD144/VE-カドヘリン、CD1
84/CXCR4、β2-マイクログロブリン、MHC-I、MHC-II、H
LA-G、および/またはPDL1の1つまたは複数である単離胎盤細胞、例えば胎
盤幹細胞または胎盤多分化能細胞である。具体的な実施形態では、単離胎盤細胞は少なく
ともCD29およびCD54である。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細胞は少
なくともCD44およびCD106である。別の具体的な実施形態では、単離胎盤細
胞は少なくともCD29である。
【0102】
別の実施形態では、本明細書に記載する治療方法に有用である細胞集団は単離胎盤細胞
を含み、かつ前記細胞集団中の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、9
5%、98%または99%の細胞が、CD10、CD29、CD44、CD45
、CD54/ICAM、CD62-E、CD62-L、CD62-P、CD80
、CD86、CD103、CD104、CD105、CD106/VCAM
、CD144/VE-カドヘリン、CD184/CXCR4、β2-マイクログロブ
リン、HLA-I、HLA-II、HLA-G、および/またはPDL1の1
つまたは複数である単離胎盤細胞である。より具体的な実施形態では、前記細胞集団中の
少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%の細
胞が、CD10、CD29、CD44、CD45、CD54/ICAM、CD
62-E、CD62-L、CD62-P、CD80、CD86、CD103
、CD104、CD105、CD106/VCAM、CD144/VE-カドヘリ
、CD184/CXCR4、β2-マイクログロブリン、MHC-I、MHC
-II、HLA-G、およびPDL1である。
【0103】
別の実施形態では、脳もしくはCNS内またはその周辺の血流の混乱の治療において有
用である単離胎盤細胞は、CD10、CD29、CD34、CD38、CD44
、CD45、CD54、CD90、SH2、SH3、SH4、SSEA3
、SSEA4、OCT-4、およびABC-pの1つまたは複数、または全部で
ある単離胎盤細胞であり、ABC-pは胎盤特異的ABC輸送タンパク質(乳癌耐性タン
パク質(BCRP)としておよびミトキサントロン耐性タンパク質(MXR)としても知
られる)であり、前記単離胎盤細胞は、哺乳動物、例えばヒト、臍帯血が流出しており灌
流させて残留血液を除去した胎盤の灌流によって得られる。
【0104】
遺伝子プロファイリングによって、単離胎盤細胞、および単離胎盤細胞の集団は、他の
細胞、例えば間葉系幹細胞、例えば骨髄由来間葉系幹細胞と区別することができることを
確認する。本明細書で記載する単離胎盤細胞は、1つまたは複数の遺伝子の発現に基づい
て、例えば間葉系幹細胞と区別することができ、その発現は、骨髄由来間葉系幹細胞と比
較して、単離胎盤細胞中、または特定の単離臍帯幹細胞中において有意に高い。特に、本
明細書で提供す治療方法に有用である単離胎盤細胞は、1つまたは複数の遺伝子の発現に
基づいて間葉系幹細胞と区別することができ、その発現は、同数の骨髄由来間葉系幹細胞
より単離胎盤細胞中で有意に高く(すなわち、少なくとも2倍高い)、細胞を同等条件下
で増殖するとき、1つまたは複数の遺伝子は、ACTG2、ADARB1、AMIGO2
、ARTS-1、B4GALT6、BCHE、C11またはf9、CD200、COL4
A1、COL4A2、CPA4、DMD、DSC3、DSG2、ELOVL2、F2RL
1、FLJ10781、GATA6、GPR126、GPRC5B、HLA-G、ICA
M1、IER3、IGFBP7、IL1A、IL6、IL18、KRT18、KRT8、
LIPG、LRAP、MATN2、MEST、NFE2L3、NUAK1、PCDH7、
PDLIM3、PKP2、RTN1、SERPINB9、ST3GAL6、ST6GAL
NAC5、SLC12A8、TCF21、TGFB2、VTN、ZC3H12Aまたは前
述の任意の組合せである。例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米
国特許出願公開第2007/0275362号を参照のこと。より具体的な実施形態では
、前記単離胎盤細胞は、DMEM-LG(例えばGibcoからの)、2%ウシ胎児血清
(例えばHyclone Labs.からの)、1×インシュリン-トランスフェリン-
セレン(ITS)、1×リノール酸-ウシ血清アルブミン(LA-BSA)、10-9
のデキサメタゾン(例えばSigmaからの)、10-4Mのアスコルビン酸2-ホスフ
ェート(例えばSigmaからの)、表皮増殖因子10ng/mL(例えばR&D Sy
stemsからの)、および血小板由来増殖因子(PDGF-BB)10ng/mL(例
えばR&D Systemsからの)を含む培地において約3~約35の集団倍加で培養
すると、前記1つまたは複数の遺伝子を発現する。具体的な実施形態では、単離胎盤細胞
特異的または単離臍帯細胞特異的な遺伝子はCD200である。
【0105】
これらの遺伝子に関する具体的な配列は、GenBankアクセッション番号NM_0
01615(ACTG2)、BC065545(ADARB1)、(NM_181847
(AMIGO2)、AY358590(ARTS-1)、BC074884(B4GAL
T6)、BC008396(BCHE)、BC020196(C11またはf9)、BC
031103(CD200)、NM_001845(COL4A1)、NM_00184
6(COL4A2)、BC052289(CPA4)、BC094758(DMD)、A
F293359(DSC3)、NM_001943(DSG2)、AF338241(E
LOVL2)、AY336105(F2RL1)、NM_018215(FLJ1078
1)、AY416799(GATA6)、BC075798(GPR126)、NM_0
16235(GPRC5B)、AF340038(ICAM1)、BC000844(I
ER3)、BC066339(IGFBP7)、BC013142(IL1A)、BT0
19749(IL6)、BC007461(IL18)、(BC072017)KRT1
8、BC075839(KRT8)、BC060825(LIPG)、BC065240
(LRAP)、BC010444(MATN2)、BC011908(MEST)、BC
068455(NFE2L3)、NM_014840(NUAK1)、AB006755
(PCDH7)、NM_014476(PDLIM3)、BC126199(PKP-2
)、BC090862(RTN1)、BC002538(SERPINB9)、BC02
3312(ST3GAL6)、BC001201(ST6GALNAC5)、BC126
160またはBC065328(SLC12A8)、BC025697(TCF21)、
BC096235(TGFB2)、B0005046(VTN)、およびB000500
1(ZC3H12A)(2008年3月現在)において見ることができる。
【0106】
より具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は、細胞を同等条件下で増殖するとき、
ACTG2、ADARB1、AMIGO2、ARTS-1、B4GALT6、BCHE、
C11またはf9、CD200、COL4A1、COL4A2、CPA4、DMD、DS
C3、DSG2、ELOVL2、F2RL1、FLJ10781、GATA6、GPR1
26、GPRC5B、HLA-G、ICAMI、IER3、IGFBP7、IL1A、I
L6、IL18、KRT18、KRT8、LIPG、LRAP、MATN2、MEST、
NFE2L3、NUAK1、PCDH7、PDLIM3、PKP2、RTN1、SERP
INB9、ST3GAL6、ST6GALNAC5、SLCI2A8、TCF21、TG
FB2、VTN、およびZC3H12Aのそれぞれを、同数の骨髄由来間葉系幹細胞より
検出可能に高いレベルで発現する。
【0107】
前述の遺伝子の発現は、標準的な技法によって評価することができる。例えば、(1つ
または複数の)遺伝子の配列に基づくプローブを個別に選択することができ、従来の技法
によって構築することができる。遺伝子の発現は、例えば、1つまたは複数の遺伝子に対
するプローブを含むマイクロアレイ、例えば、Affymetrix GENECHIP
(登録商標)Human Genome U133A 2.0アレイ、またはAffym
etrix GENECHIP(登録商標)Human Genome U133 Pl
us 2.0(Santa Clara、California)で評価することができ
る。これらの遺伝子の発現は、特定のGenBankアクセッション番号の配列が改正さ
れる場合でさえ評価することができる。改正された配列に特異的なプローブは、よく知ら
れている標準的な技法を使用して容易に作製することができるからである。
【0108】
これらの遺伝子の発現レベルを使用して、単離胎盤細胞の集団の同一性を確認すること
ができ、少なくとも複数の単離胎盤細胞を含む細胞の集団などを同定することができる。
その同一性が確認される単離胎盤細胞の集団は、クローン、例えば単一の単離胎盤細胞か
ら拡大した単離胎盤細胞の集団、または幹細胞の混合集団、例えば、多数の単離胎盤細胞
から拡大した単離胎盤細胞のみを含む細胞の集団、または本明細書に記載する単離胎盤細
胞、および少なくとも1つの他型の細胞を含む細胞の集団であり得る。
【0109】
これらの遺伝子の発現レベルを使用して、単離胎盤細胞の集団を選択することができる
。例えば、前述の1つまたは複数の遺伝子の発現が、同等の間葉系幹細胞の集団中よりそ
の細胞集団由来のサンプル中で有意に高い場合、細胞、例えばクローン増殖細胞の集団を
選択することができる。このような選択は、複数の単離胎盤細胞集団由来、その同一性が
知られていない複数の細胞集団由来の集団などの選択であってよい。
【0110】
単離胎盤細胞は、前記1つまたは複数の遺伝子、例えば間葉系幹細胞対照中での発現レ
ベル、例えば、同数の骨髄由来間葉系幹細胞中での前記1つまたは複数の遺伝子の発現レ
ベルと比較して、1つまたは複数のこのような遺伝子の発現レベルに基づいて選択するこ
とができる。一実施形態では、同数の間葉系幹細胞を含むサンプル中の前記1つまたは複
数の遺伝子の発現レベルを、対照として使用する。別の実施形態では、特定条件下で試験
する単離胎盤細胞の対照は、前記条件下における間葉系幹細胞中での前記1つまたは複数
の遺伝子の発現レベルを表す数値である。
【0111】
本明細書に記載する単離胎盤細胞は、例えば、DMEM-LG(Gibco)、2%ウ
シ胎児血清(FCS)(Hyclone Laboratories)、1×インシュリ
ン-トランスフェリン-セレン(ITS)、1×リノール酸-ウシ血清アルブミン(LA
-BSA)、10-9Mのデキサメタゾン(Sigma)、10-4Mのアスコルビン酸
2-ホスフェート(Sigma)、表皮増殖因子(EGF)10ng/mL(R&D S
ystems)、血小板由来増殖因子(PDGF-BB)10ng/mL(R&D Sy
stems)、および100Uペニシリン/1000Uストレプトマイシンを含む培地中
での初代培養中、または増殖中に、前述の特性(例えば、細胞表面マーカーおよび/また
は遺伝子発現プロファイルの組合せ)を示す。
【0112】
前記単離胎盤細胞または単離胎盤細胞を含む細胞の集団の別の具体的な実施形態では、
前記細胞または集団は拡大状態であり、例えば、少なくとも、約、または最大1、2、3
、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、
19、または20回継代しており、少なくとも、約、または最大1、2、3、4、5、6
、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、
32、34、36、38または40の集団倍化で増殖状態である。本明細書で開示する、
単離胎盤細胞、または単離胎盤細胞を含む細胞の集団の別の具体的な実施形態では、前記
単離胎盤細胞は胎児起源である(すなわち胎児の遺伝子型を有する)。
【0113】
単離胎盤細胞の特定の実施形態では、前記単離胎盤細胞は、増殖培地、すなわち増殖を
促進するように処方した培地における培養中に、例えば増殖培地における増殖中に分化し
ない。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は、増殖するためのフィーダー層を
必要としない。別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は、単にフィーダー細胞層
の欠如のため、フィーダー層の不在下での培養中に分化しない。
【0114】
別の実施形態では、脳またはCNS中、またはその周りの血流の中断の治療に有用であ
る細胞は単離胎盤細胞であり、複数の前記単離胎盤細胞が、アルデヒドデヒドロゲナーゼ
活性アッセイにより評価してアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)に陽性である。こ
のようなアッセイは当技術分野で知られている(例えば、Bostian and Be
tts、Biochem.J.、173、787、(1978)を参照)。具体的な実施
形態では、前記ALDHアッセイは、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性のマーカーとして
ALDEFLUOR(登録商標)(Aldagen、Inc.、Ashland、Ore
gon)を使用する。具体的な実施形態では、前記複数の細胞は、前記細胞集団中の約3
%と約25%の間の細胞である。別の実施形態では、単離臍帯細胞、例えば多分化能単離
臍帯細胞の集団が本明細書で提供され、複数の前記単離臍帯細胞が、アルデヒドデヒドロ
ゲナーゼ活性の指標としてALDEFLUOR(登録商標)を使用するアルデヒドデヒド
ロゲナーゼ活性アッセイにより評価して、アルデヒドデヒドロゲナーゼに陽性である。具
体的な実施形態では、前記複数の細胞は、前記細胞集団中の約3%と約25%の間の細胞
である。別の実施形態では、単離胎盤細胞または単離臍帯細胞の前記集団は、ほぼ同じ数
の細胞を有し同じ条件下で培養した骨髄由来間葉系幹細胞の集団より、少なくとも3倍、
または少なくとも5倍高いALDH活性を示す。
【0115】
本明細書に記載の単離胎盤細胞を含む任意の細胞集団の特定の実施形態において、前記
細胞集団中の胎盤細胞は、母方の遺伝子型を有する細胞を実質的に含まない、例えば、前
記集団中の少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75
%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の胎盤細胞が胎児の遺伝子型
を有する。本明細書に記載の単離胎盤細胞を含む任意の細胞集団の特定の他の実施形態で
は、前記胎盤細胞を含む細胞集団は、母方の遺伝子型を有する細胞を実質的に含まない、
例えば、前記集団中の少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、7
0%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の細胞が胎児の遺
伝子型を有する。
【0116】
前述の単離胎盤細胞または単離胎盤細胞の細胞集団のいずれかの具体的な実施形態では
、前記集団中の細胞、または少なくとも約95%もしくは約99%の細胞の核型は正常で
ある。前述の胎盤細胞または細胞集団のいずれかの別の具体的な実施形態では、細胞、ま
たは細胞の集団中の細胞は非母方起源である。
【0117】
任意の前述のマーカーの組合せを有する、単離胎盤細胞、または単離胎盤細胞の集団は
、任意の比で組み合わせることができる。任意の2つ以上の前述の単離胎盤細胞集団を組
合せて、1つの単離胎盤細胞集団を形成することができる。例えば、単離胎盤細胞の集団
は、前に記載したマーカーの組合せの1つによって定義される単離胎盤細胞の第1集団、
および前に記載した別のマーカーの組合せによって定義される単離胎盤細胞の第2集団を
含むことができ、前記第1集団と第2集団は約1:99、2:98、3:97、4:96
、5:95、10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、60:4
0、70:30、80:20、90:10、95:5、96:4、97:3、98:2、
または約99:1の比で組み合わせる。同様の形式で、任意の3個、4個、5個またはそ
れより多くの前に記載した単離胎盤細胞または単離胎盤細胞集団を組み合わせることがで
きる。
【0118】
脳またはCNS中、またはその周りの血流の中断の治療に有用である単離胎盤細胞は、
例えば、酵素による消化(セクション5.4.3参照)または灌流(セクション5.4.
4参照)ありまたはなしで、胎盤組織の破壊によって得ることができる。例えば、単離胎
盤細胞の集団は、臍帯血が流出しており灌流させて残留血液を除去した哺乳動物胎盤を灌
流するステップ、灌流溶液で前記胎盤を灌流するステップ、および前記灌流溶液を回収す
るステップであって、灌流後の前記灌流溶液が単離胎盤細胞を含む胎盤細胞の集団を含む
ステップ、および前記細胞集団から複数の前記単離胎盤細胞を単離するステップを含む方
法に従って生成することができる。具体的な実施形態では、灌流溶液は臍静脈と臍動脈の
両方を通過させ、それが胎盤から滲出した後に回収する。別の具体的な実施形態では、灌
流溶液は臍静脈と臍動脈を通過させ臍動脈から回収し、または臍動脈を通過させ臍静脈か
ら回収する。
【0119】
様々な実施形態では、胎盤の灌流から得る細胞の集団中に含有される単離胎盤細胞は、
前記胎盤細胞集団の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99
%または少なくとも99.5%である。別の具体的な実施形態では、灌流によって回収さ
れる単離胎盤細胞は、胎児および母親細胞を含む。別の具体的な実施形態では、灌流によ
って回収される単離胎盤細胞は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、
95%、99%または少なくとも99.5%胎児細胞である。
【0120】
別の具体的な実施形態では、本明細書で提供するのは、灌流によって回収される、本明
細書で記載する単離胎盤細胞の集団を含む組成物であり、前記組成物は、単離胎盤細胞を
回収するために使用する灌流溶液の少なくとも一部分を含む。
【0121】
本明細書で記載する単離胎盤細胞の単離集団は、組織破壊酵素で胎盤組織を消化して細
胞を含む胎盤細胞の集団を得ること、および前記胎盤細胞の残りから複数の胎盤細胞を単
離、または実質的に単離することによって生成することができる。胎盤の全部、または任
意の一部分を消化して、本明細書で記載する単離胎盤細胞を得ることができる。具体的な
実施形態では、例えば、前記胎盤組織は、胎盤全体、羊膜、絨毛膜、羊膜と絨毛膜の組合
せ、または任意の前述の組合せであってよい。他の具体的な実施形態では、組織破壊酵素
はトリプシンまたはコラゲナーゼである。様々な実施形態では、胎盤の消化から得る細胞
の集団中に含有される単離胎盤細胞は、前記胎盤細胞集団の少なくとも50%、60%、
70%、80%、90%、95%、99%または少なくとも99.5%である。
【0122】
前に記載した単離細胞の単離集団、および単離胎盤細胞の集団は、約、少なくとも、ま
たは最大1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10
1×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、5×1010、1×
1011またはそれより多くの単離胎盤細胞を一般に含むことができる。本明細書に記載
する治療方法に有用である単離胎盤細胞の集団は、例えばトリパンブルー色素排除試験法
により測定して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%
、85%、90%、95%、98%、または99%の生存状態の単離胎盤細胞を含む。
【0123】
5.4.3 培養中の増殖
本明細書のセクション5.4.2に記載する単離胎盤細胞の増殖は、任意の哺乳動物細
胞に関して、増殖用に選択する個々の培地に一部分は依存する。最適条件下において、単
離胎盤細胞は、典型的には約1日で数が倍になる。培養中、本明細書で記載する単離胎盤
細胞は、培養基質、例えば、組織培養容器の表面(例えば、組織培養皿プラスチック、フ
ィブロネクチンコーティングプラスチックなど)に接着し、単層を形成する。
【0124】
本明細書で記載する単離胎盤細胞を含む胎盤細胞の集団は、適切な条件下で培養すると
、胚様体、すなわち接着性細胞層上で増殖した細胞の三次元集合体を形成することができ
る。胚様体内の細胞は、非常に初期の幹細胞、例えばOCT-4、Nanog、SSEA
3およびSSEA4と関係があるマーカーを発現する。胚様体内の細胞は、本明細書で記
載する単離胎盤細胞と同様に、典型的には培養基質に接着しないが、培養中に接着性細胞
に接着した状態である。胚様体細胞は生存が接着性単離胎盤細胞に依存する。胚様体は、
接着性単離胎盤細胞の不在下で形成しないからである。したがって接着性単離胎盤細胞は
、接着性単離胎盤細胞を含む胎盤細胞の集団中での1つまたは複数の胚様体の増殖を容易
にする。理論によって縛られることは望まずに、胚様体の細胞は、胚幹細胞が細胞のフィ
ーダー層で増殖するのと同程度に接着性単離胎盤細胞で増殖すると考えられる。
【0125】
5.5 単離胎盤細胞を得る方法
5.5.1 幹細胞回収組成物
本明細書でさらに提供するのは、胎盤細胞、例えば前のセクション5.4.2に記載し
た単離胎盤細胞を回収および単離する方法である。一般に、このような細胞は、生理的に
許容される溶液、例えば幹細胞回収組成物を使用して哺乳動物胎盤から得る。例示的な細
胞回収組成物は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Improve
d Medium for Collecting Placental Stem C
ells and Preserving Organs」という表題の関連米国特許出
願公開第2007/0190042号中に詳細に記載される。
【0126】
細胞回収組成物は、細胞、例えば本明細書に記載する単離胎盤細胞の回収および/また
は培養に適した任意の生理的に許容される溶液、例えば生理食塩水溶液(例えば、リン酸
緩衝生理食塩水、クレブス液、改変クレブス液、イーグル液、0.9%のNaClなど)
、培養培地(例えば、DMEM、H.DMEMなど)などを含むことができる。
【0127】
細胞回収組成物は、回収時から培養時まで、単離胎盤細胞を保存する傾向がある、すな
わち、単離胎盤細胞が死ぬのを防ぐ、または単離胎盤細胞の死を遅延させる、死滅する細
胞集団中の単離胎盤細胞の数を減らすなどの、1つまたは複数の構成成分を含むことがで
きる。このような構成成分は、例えば、アポトーシス阻害剤(例えば、カスパーゼ阻害剤
またはJNK阻害剤)、血管拡張剤(例えば、硫酸マグネシウム、抗高血圧薬、心房性ナ
トリウム利尿ペプチド(ANP)、アドレノコルチコトロピン、コルチコトロピン放出ホ
ルモン、ニトロプルシドナトリウム、ヒドララジン、アデノシン三リン酸、アデノシン、
インドメタシンまたは硫酸マグネシウム、ホスホジエステラーゼ阻害剤など)、壊死阻害
剤(例えば、2-(1H-インドール-3-イル)-3-ペンチルアミノ-マレイミド、
ピロリジンジチオカルバメート、またはクロナゼパム)、TNF-α阻害剤、および/ま
たは酸素含有ペルフルオロカーボン(例えば、臭化ペルフルオロオクチル、臭化ペルフル
オロデシルなど)であってよい。
【0128】
細胞回収組成物は、1つまたは複数の組織分解酵素、例えば、メタロプロテアーゼ、セ
リンプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、RNase、またはDNaseなどを含むことが
できる。このような酵素には、コラゲナーゼ(例えば、コラゲナーゼI、II、IIIま
たはIV、Clostridium histolyticum由来のコラゲナーゼなど
)、ディスパーゼ、テルモリシン、エラスターゼ、トリプシン、LIBERASE、ヒア
ルロニダーゼなどがあるが、これらだけには限られない。
【0129】
細胞回収組成物は、殺菌的または静菌的に有効な量の抗生物質を含むことができる。特
定の非制限的な実施形態では、抗生物質はマクロライド(例えばトブラマイシン)、セフ
ァロスポリン(例えばセファレキシン、セファラジン、セフロキシム、セフプロジル、セ
ファクロル、セフィキシムまたはセファドロキシル)、クラリスロマイシン、エリスロマ
イシン、ペニシリン(例えばペニシリンV)またはキノロン(例えばオフロキサシン、シ
プロフロキサシンまたはノルフロキサシン)、テトラサイクリン、ストレプトマイシンな
どである。特定の実施形態では、抗生物質はグラム(+)および/またはグラム(-)細
菌、例えばPseudomonas aeruginosa、Staphylococc
us aureusなどに対して活性がある。一実施形態では、抗生物質は例えば培養培
地中に約0.005%~約0.01%(w/v)のゲンタマイシンである。
【0130】
細胞回収組成物は、1つまたは複数の以下の化合物、アデノシン(約1mM~約50m
M)、D-グルコース(約20mM~約100mM)、マグネシウムイオン(約1mM~
約50mM)、一実施形態では、内皮完全性および細胞生存性を維持するのに十分な量で
存在する、分子量20,000ダルトン超えの高分子(例えば、約25g/l~約100
g/l、または約40g/l~約60g/lで存在する、合成または天然に存在するコロ
イド、デキストランまたはポリエチレングリコールなどの多糖)、抗酸化剤(例えば、約
25μM~約100μMで存在する、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキ
シトルエン、グルタチオン、ビタミンCまたはビタミンE)、還元剤(例えば、約0.1
mM~約5mMで存在するN-アセチルシステイン)、細胞へのカルシウムの進入を妨げ
る作用物質(例えば、約2μM~約25μMで存在するベラパミル)、ニトログリセリン
(例えば、約0.05g/L~約0.2g/L)、一実施形態では、残留血液の凝固の妨
げを手助けするのに十分な量で存在する、抗凝固剤(例えば、約1000単位/l~約1
00,000単位/lの濃度で存在するヘパリンまたはヒルジン)、またはアミロリド含
有化合物(例えば、約1.0μM~約5μMで存在する、アミロリド、エチルイソプロピ
ルアミロリド、ヘキサメチレンアミロリド、ジメチルアミロリドまたはイソブチルアミロ
リド)を含むこともできる。
【0131】
5.5.2 胎盤の回収および処理
一般に、ヒト胎盤は生後のその娩出直後に回収する。好ましい実施形態では、胎盤は、
インフォームドコンセント後に患者から、および患者の完全な病歴を得て胎盤と関連付け
た後に回収する。病歴は送達後に続くことが好ましい。このような病歴を使用して、胎盤
またはそこから採取した単離胎盤細胞の二次的使用を調節することができる。例えば、病
歴を鑑みて、胎盤に関する幼児のオーダーメイド医療に、または幼児の両親、兄弟または
他の親戚に、単離ヒト胎盤幹細胞を使用することができる。
【0132】
単離胎盤細胞を回収する前に、臍帯血および胎盤血を除去することが好ましい。特定の
実施形態では、送達後、胎盤中の臍帯血を回収する。胎盤には従来の臍帯血回収プロセス
を施すことができる。典型的には、流注下でニードルまたはカニューレを使用して胎盤か
ら採血する(例えば、Anderson、米国特許第5,372,581号;Hesse
lら、米国特許第5,415,665号を参照)。ニードルまたはカニューレは通常臍静
脈中に配置し、胎盤を軽くマッサージして胎盤からの臍帯血の流出を容易にすることがで
きる。このような臍帯血の回収は市販用に実施することができる、例えば、LifeBa
nk USA、Cedar Knolls、N.J。胎盤はさらなる操作なしで流注によ
り出血して、臍帯血回収中の組織破壊を最小にすることが好ましい。
【0133】
典型的には、胎盤は、例えば灌流または組織解離による臍帯血の回収および幹細胞の回
収のため、分娩室または出生室から別の場所、例えば実験室に運ばれる。胎盤は、例えば
、胎盤、および固定した近位臍帯を滅菌状態のジップロック式プラスチックバッグ中に置
き、次いでそれを断熱容器中に置くことによって、(胎盤の温度を20℃と28℃の間に
維持する)滅菌状態の、断熱輸送デバイスに運ばれることが好ましい。別の実施形態では
、その開示が参照により本明細書に組み込まれる係属中の米国特許第7,147,626
号に実質的に記載されたように臍帯血回収キットに胎盤を運ぶ。送達後4~24時間で胎
盤は実験室に送達することが好ましい。特定の実施形態では、近位臍帯を、好ましくは臍
帯血回収前に胎盤ディスクの挿入の4~5cm(センチメートル)以内に固定する。他の
実施形態では、近位臍帯を、臍帯血回収後ただし胎盤のさらなる処理前に固定する。
【0134】
胎盤は細胞回収前に、滅菌条件下において、室温または5℃~25℃の温度のいずれか
で保存することができる。胎盤は、胎盤を灌流させて任意の残留臍帯血を除去する前に、
4~24時間、最大48時間、または48時間より長い時間の間保存することができる。
一実施形態では、娩出後約0時間と約2時間の間に胎盤を採取する。胎盤は5℃~25℃
の温度で抗凝固剤溶液中に保存することが好ましい。適切な抗凝固剤溶液は当技術分野で
よく知られている。例えば、ヘパリンまたはワルファリンナトリウムの溶液を使用するこ
とができる。好ましい実施形態では、抗凝固剤溶液はヘパリンの溶液を含む(例えば、1
:1000溶液中に1%w/w)。採血した胎盤は、胎盤細胞を回収する前に最大36時
間保存することが好ましい。
【0135】
哺乳動物胎盤またはその一部分は、概して前述のように回収し調製した後、任意の当技
術分野で知られている方法で処理することができる、例えば、灌流または破壊することが
でき、例えば、1つまたは複数の組織破壊酵素で消化して単離胎盤細胞を得ることができ
る。
【0136】
5.5.3 胎盤組織の物理的破壊および酵素による破壊
一実施形態では、器官の一部または全部の物理的破壊によって、哺乳動物胎盤から幹細
胞を回収する。例えば、胎盤、またはその一部分は、例えば、破砕する、せん断する、細
分する、さいの目に切る、細切れにする、細かく砕くなどすることができる。次いで組織
を培養して、単離胎盤細胞の集団を得ることができる。典型的には、胎盤組織は、例えば
、培地、生理食塩水、または幹細胞回収組成物に使用して破壊する(セクション5.5.
1および以下参照)。
【0137】
物理的破壊および/または酵素による消化および幹細胞回収の前に、胎盤をいくつかの
成分に切断することができる。単離胎盤細胞は、完全胎盤由来のものを含めて、羊膜、絨
毛膜、臍帯、胎盤葉、またはこれらの任意の組合せの全部または一部から得ることができ
る。単離胎盤細胞は、羊膜および絨毛膜を含む胎盤組織から得ることが好ましい。典型的
には、単離胎盤細胞は、胎盤組織の小さな塊、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、
8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、3
00、400、500、600、700、800、900または約1000立方ミリメー
トル体積である胎盤組織の塊の破壊によって得ることができる。例えばトリパンブルー色
素排除試験法により測定して、破壊法が複数、より好ましくは大部分、およびより好まし
くは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、または99%の前記
器官中の細胞を生存状態にするという条件で、任意の物理的破壊法を使用することができ
る。
【0138】
単離接着性胎盤細胞は一般に、娩出後の最初の約3日以内の任意の時間で、胎盤、また
はその一部分から回収することができるが、娩出後約8時間と約18時間の間が好ましい
【0139】
特定の実施形態では、単離胎盤細胞の増殖に適した組織培養培地中で、破壊した組織を
培養する(例えば、胎盤幹細胞の培養を記載する以下のセクション5.5を参照)。
【0140】
別の特定の実施形態では、単離胎盤細胞は胎盤組織の物理的破壊によって回収し、この
場合物理的破壊は酵素による消化を含み、これは1つまたは複数の組織消化酵素を使用す
ることによって実施することができる。胎盤、またはその一部分は物理的に破壊し、1つ
または複数の酵素で消化し、次いで生成した物質を細胞回収組成物に含浸、または混合す
ることもできる。
【0141】
好ましい細胞回収組成物は、1つまたは複数の組織破壊酵素を含む。胎盤組織を破壊す
るために使用することができる酵素には、パパイン、デオキシリボヌクレアーゼ、セリン
プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、ディスパーゼまたはエラス
ターゼなどがある。セリンプロテアーゼは血清中でアルファ2マイクログロブリンによっ
て阻害される可能性があり、したがって、消化に使用する培地は通常無血清である。一般
にEDTAおよびDNaseを酵素による消化の手順中で使用して、細胞回収の効率を増
大させる。消化剤を希釈して、粘性消化物内の細胞の捕捉を避けることが好ましい。
【0142】
組織消化酵素の任意の組合せを使用することができる。トリプシンを使用する消化に関
する典型的な濃度は、トリプシン0.1%~約2%、例えば、トリプシン約0.25%を
含む。プロテアーゼは組合せで、すなわち2つ以上のプロテアーゼを同じ消化反応中で使
用することができ、または同時に使用して胎盤細胞、例えば胎盤幹細胞および胎盤多分化
能細胞を切り離すことができる。例えば、一実施形態では、胎盤、またはその一部分を、
例えば30分間約1~約2mg/mlで適量のコラゲナーゼIを用いて最初に消化して、
次に37℃において例えば10分間約0.25%の濃度で、トリプシンを用いて消化する
。セリンプロテアーゼは、他の酵素の使用後に連続して使用することが好ましい。
【0143】
別の実施形態では、幹細胞を含む幹細胞回収組成物に、または幹細胞回収組成物を用い
た幹細胞の単離前に、その中で組織を破壊および/または消化する溶液に、キレート剤、
例えば、エチレングリコールビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’N’-四
酢酸(EGTA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を加えることによって、組
織をさらに破壊することができる。
【0144】
消化後、消化物を例えば培養培地で三回洗浄し、洗浄した細胞は培養フラスコに接種す
る。次いで細胞は差次的接着によって単離し、例えば、生存性、細胞表面マーカー、分化
などを特徴付ける。
【0145】
胎盤全体、または胎盤の一部分が胎児細胞と母親細胞の両方を含む場合(例えば、この
場合胎盤の一部分は絨毛膜または胎盤葉を含む)、単離する胎盤細胞は、胎児源と母親源
の両方由来の胎盤細胞の混合物を含み得ることを理解することができる。胎盤の一部分が
、母親細胞を含まない、または無視できる程度数の母親細胞を含む場合(例えば羊膜)、
そこから単離する胎盤細胞は、ほぼ胎児胎盤細胞(つまり、胎児の遺伝子型を有する胎盤
細胞)のみを含み得る。
【0146】
胎盤細胞、例えば上のセクション5.4.2に記載した胎盤細胞は、差次的トリプシン
処理(以下のセクション5.5.5を参照)、次に1つまたは複数の新たな培養容器、新
たな増殖培地中での培養、場合によって、次に第2の差次的トリプシン処理ステップによ
って、破壊した胎盤組織から単離することができる。
【0147】
5.5.4 胎盤灌流
胎盤細胞、例えば上のセクション5.4.2で記載した胎盤細胞は、哺乳動物胎盤の灌
流によって得ることもできる。胎盤細胞を得るための哺乳動物胎盤の灌流法は、例えば、
それぞれその開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hariri、米国特許
第7,045,148号および米国特許第7,255,729号、および米国特許出願公
開第2007/0275362号および第2007/0190042号に開示されている
【0148】
例えば灌流溶液として細胞回収組成物を使用する、例えば胎盤血管系を介した灌流によ
って、胎盤細胞を回収することができる。一実施形態では、臍動脈と臍静脈の一方または
両方を介して灌流溶液を通すことにより哺乳動物胎盤を灌流する。胎盤を介した灌流溶液
の流入は、例えば胎盤への流注を使用して実施することができる。灌流溶液は、ポンプ、
例えば蠕動ポンプを使用して胎盤に送ることが好ましい。例えば臍静脈は、滅菌済みチュ
ーブなどの滅菌済み接続装置に接続した、カニューレ、例えばTEFLON(登録商標)
またはプラスチックカニューレでカニューレ処理することができる。滅菌済み接続装置は
灌流マニホールドに接続する。
【0149】
灌流のための調製では、臍動脈と臍静脈が胎盤の最高点に位置するような形式で、胎盤
を配向する(例えば懸垂状態にする)ことが好ましい。胎盤血管系および周辺組織を介し
て灌流液を通すことにより、胎盤を灌流することができる。臍静脈への灌流液の通過およ
び臍動脈からの回収、または臍動脈への灌流液の通過および臍静脈からの回収によって、
胎盤を灌流することもできる。
【0150】
一実施形態では、例えば、臍動脈と臍静脈を、例えば灌流溶液の貯蔵容器と柔軟なコネ
クターを介して接続したピペットに同時に接続する。灌流溶液は臍静脈および臍動脈に通
す。灌流溶液は血管壁から胎盤の周辺組織に滲出および/またはそこを介して通過し、妊
娠中の母親の子宮と結合した胎盤の表面から適切な開放容器中で回収する。灌流溶液を臍
帯の隙間に導入し、母親の子宮壁と連結した胎盤壁中の隙間から流出または浸透させるこ
とも可能である。「パンニング」法と呼ぶことができるこの方法によって回収される胎盤
細胞は、典型的には胎児細胞と母親細胞の混合物である。
【0151】
別の実施形態では、灌流溶液は臍静脈を通過させ臍動脈からの回収し、または臍動脈を
通過させ臍静脈から回収する。「閉回路」法と呼ぶことができるこの方法によって回収さ
れる胎盤細胞は、典型的にはほぼ全てが胎児細胞である。
【0152】
それによって灌流液が母親側の胎盤から滲出した後にそれを回収する、すなわちパンニ
ング法を使用する灌流は、胎児細胞と母親細胞の混合物をもたらすことは理解されよう。
結果として、この方法によって回収される細胞は、胎児と母親の両方の起源の胎盤細胞、
例えば胎盤幹細胞または胎盤多分化能細胞の混合集団を含むことができる。対照的に、そ
れによって灌流液を1つまたは2つの胎盤血管に通し(1つまたは複数の)残りの血管を
介してのみ回収する、閉回路法での胎盤血管系のみを介した灌流は、ほぼ全てが胎児起源
である胎盤細胞集団の回収をもたらす。
【0153】
閉回路灌流法は、一実施形態では、以下のように実施することができる。出生後約48
時間以内に産後の胎盤を得る。臍帯は固定しクランプで切断する。臍帯は廃棄することが
でき、または処理して例えば臍帯血幹細胞を回収することができ、および/または生体材
料の生成用に臍帯膜を処理することができる。羊膜は灌流中に保持することができ、また
は例えば指による鈍的剥離を使用して、絨毛膜から分離することができる。灌流前に羊膜
を絨毛膜から分離する場合、それを例えば廃棄、または処理して、例えば酵素による消化
によって幹細胞を得ることができ、または例えば羊膜の生体材料、例えば、その開示の全
体が参照により本明細書に組み込まれる米国出願公開第2004/0048796号に記
載された生体材料を生成することができる。例えば滅菌済みガーゼを使用して、胎盤の全
ての目に見える血塊および残留血液を清掃した後、臍帯血管を、例えば臍帯膜を部分的に
切断して臍帯の断面を露出させることによって露出させる。血管を確認し、例えば各血管
の切断末端に閉鎖型アリゲータクランプを挿入することによって開く。灌流デバイスまた
は蠕動ポンプと接続した装置、例えばプラスチックチューブを、次いで胎盤動脈のそれぞ
れに挿入する。ポンプは目的に適した任意のポンプ、例えば蠕動ポンプであってよい。滅
菌済み回収貯蔵容器、例えば250mL回収バッグなどの血液バッグと接続したプラスチ
ックチューブを、次いで胎盤静脈に挿入する。あるいは、ポンプと接続したチューブを胎
盤静脈に挿入し、(1つまたは複数の)回収貯蔵容器に対するチューブを胎盤動脈の一方
または両方に挿入する。次いで胎盤を一定体積の灌流溶液、例えば約750mlの灌流溶
液で灌流する。次いで灌流液中の細胞を、例えば遠心分離によって回収する。特定の実施
形態では、胎盤細胞、例えば、胎盤幹細胞および/または胎盤多分化能細胞を回収するた
めの灌流前に、胎盤を灌流溶液、例えば100~300mLの灌流溶液で灌流して残留血
液を除去する。別の実施形態では、胎盤細胞を回収するための灌流前に、胎盤を灌流溶液
で灌流して残留血液を除去することはない。
【0154】
一実施形態では、近位臍帯を灌流中に固定し、およびより好ましくは胎盤ディスク中へ
の胎盤挿入の4~5cm(センチメートル)以内に固定する。
【0155】
採血プロセス中の哺乳動物胎盤からの灌流液の最初の回収は、一般に臍帯血および/ま
たは胎盤血の残留赤血球細胞の着色である。灌流液は灌流が進行するとさらに無色になり
、残留臍帯血細胞は胎盤から洗浄除去する。一般に30~100ml(ミリリットル)の
灌流液は胎盤から最初に採血するのに十分であるが、観察する結果に応じて、より多いま
たは少ない灌流液を使用することができる。
【0156】
胎盤細胞を単離するために使用する灌流液の体積は、回収する細胞の数、胎盤の大きさ
、1つの胎盤から行う回収の数などに応じて変わる可能性がある。様々な実施形態では、
灌流液の体積は、50mL~5000mL、50mL~4000mL、50mL~300
0mL、100mL~2000mL、250mL~2000mL、500mL~2000
mL、または750mL~2000mLであってよい。典型的には、胎盤は採血後に70
0~800mLの灌流液で灌流する。
【0157】
数時間または数日間の行程にわたり複数回、胎盤を灌流することができる。胎盤を複数
回灌流する場合、それを容器または他の適切な器中で無菌条件下に維持または培養するこ
とができ、抗凝固剤(例えば、ヘパリン、ワルファリンナトリウム、クマリン、ビスヒド
ロキシクマリン)を含むまたは含まない、および/または抗菌剤(例えば、β-メルカプ
トエタノール(0.1mM);ストレプトマイシン(例えば、40~100μg/mlで
)、ペニシリン(例えば、40U/mlで)、アンホテリシンB(例えば、0.5μg/
mlで)などの抗生物質)を含むまたは含まない、細胞回収組成物、または標準的な灌流
溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(「PBS」などの正常生理食塩水溶液))で灌流
することができる。一実施形態では、灌流および灌流液の回収前に1、2、3、4、5、
6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20
、21、22、23、または24時間、または2もしくは3日間以上、胎盤が維持または
培養されるように、灌流液を回収せずに単離胎盤を一定時間維持または培養する。灌流胎
盤はさらに1回または複数回、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11
、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または
24時間より長く維持することができ、例えば700~800mLの灌流液で2回目に灌
流することができる。胎盤は1、2、3、4、5回以上、例えば、1、2、3、4、5ま
たは6時間毎に一度灌流することができる。好ましい実施形態では、胎盤の灌流および灌
流溶液、例えば細胞回収組成物の回収を、回収する有核細胞の数が100細胞/ml未満
の範囲になるまで繰り返す。異なる時間地点における灌流液をさらに個別に処理して、時
間依存性の細胞集団、例えば幹細胞を回収することができる。異なる時間地点からの灌流
液をプールすることもできる。好ましい実施形態では、娩出後約8時間と約18時間の間
に1回または複数回胎盤細胞を回収する。
【0158】
灌流は、前記溶液で灌流せず、かつ胎盤細胞を得るために(例えば、組織破壊、例えば
酵素による消化によって)他に処理しなかった哺乳動物胎盤から入手可能な数より、有意
に多い胎盤細胞の回収をもたらすことが好ましい。この文脈において、「有意に多い」は
少なくとも10%を超えることを意味する。灌流は、例えば胎盤、またはその一部分を培
養した培養培地から単離可能な胎盤細胞の数より、有意に多い胎盤細胞をもたらす。
【0159】
1つまたは複数のプロテアーゼまたは他の組織破壊酵素を含む溶液での灌流によって、
胎盤から胎盤細胞を単離することができる。具体的な実施形態では、胎盤またはその一部
分(例えば、羊膜、羊膜および絨毛膜、胎盤小葉または胎盤葉、臍帯、または前述の任意
の組合せ)を25~37℃にし、30分間200mLの培養培地中で1つまたは複数の組
織破壊酵素と共にインキュベートする。灌流液からの細胞を回収し、4℃にし、5mMの
EDTA、2mMのジチオスレイトールおよび2mMのβ-メルカプトエタノールを含む
低温の阻害剤混合物で洗浄する。胎盤細胞は、低温の(例えば4℃)幹細胞回収組成物で
数分後に洗浄する。
【0160】
5.5.5 胎盤細胞の単離、選別、および特徴付け
単離胎盤細胞、例えば、前のセクション5.4.2に記載した細胞は、灌流によって、
または物理的破壊によって、例えば酵素による消化によって得ようと、Ficoll密度
勾配遠心分離によって他の細胞から初期に精製する(すなわち、それらから単離する)こ
とができる。このような遠心分離は、遠心分離速度などに関する任意の標準的なプロトコ
ルに従うことができる。一実施形態では、例えば、胎盤から回収した細胞を、室温で15
分間5000×gでの遠心分離によって灌流液から回収し、これは例えば汚染細胞片およ
び血小板から細胞を分離する。別の実施形態では、胎盤灌流液を約200mlに濃縮し、
Ficollで軽く層状にし、22℃において室温で20分間約1100×gで遠心分離
にかけ、細胞の低密度界面層をさらなる処理用に回収する。
【0161】
細胞ペレットは、新たな幹細胞回収組成物、または細胞の維持、例えば幹細胞の維持に
適した培地、例えば2U/mlのヘパリンおよび2mMのEDTAを含有するIMDM無
血清培地(GibcoBRL、NY)中に再懸濁することができる。全単核細胞分画は、
例えば製造者の勧める手順に従いLymphoprep(Nycomed Pharma
、Oslo、Norway)を使用して単離することができる。
【0162】
灌流または消化によって得られる胎盤細胞は、例えばさらに、または初期に、例えば0
.05%トリプシンおよび0.2%EDTAの溶液(Sigma、St.Louis M
O)を使用して、差次的トリプシン処理によって単離することができる。組織培養プラス
チック接着性の単離胎盤細胞は典型的には約5分以内にプラスチック表面から脱着し、一
方他の接着性集団は典型的には20~30分を超えるインキュベーションを必要とするの
で、差次的トリプシン処理は可能である。脱着した胎盤細胞は、トリプシン処理、および
例えばトリプシン中和溶液(TNS、Cambrex)を使用したトリプシン中和後に採
取することができる。接着性細胞の単離の一実施形態では、例えば約5~10×10
の細胞のアリコートを、いくつかのT-75フラスコ、好ましくはフィブロネクチンコー
ティングT75フラスコのそれぞれに置く。このような実施形態では、細胞は市販の間葉
系幹細胞増殖培地(MSCGM)(Cambrex)で培養し、組織培養インキュベータ
ー(37℃、5%CO)中に置くことができる。10~15日後、PBSで洗浄するこ
とにより非接着性細胞をフラスコから除去する。次いでPBSをMSCGMと交換する。
フラスコは様々な接着性細胞型の存在に関して、特に線維芽細胞様細胞の塊の同定および
増殖用に毎日調べることが好ましい。
【0163】
哺乳動物胎盤から回収する細胞の数および型は、例えば、フローサイトメトリー、細胞
選別、免疫組織化学法(例えば、組織特異的または細胞マーカー特異的抗体を用いた染色
)蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)などの標準的な細
胞検出技法を使用して形態および細胞表面マーカーの変化を測定すること、光学または共
焦点顕微鏡を使用して細胞の形態を調べることによって、および/またはPCRおよび遺
伝子発現プロファイルなどの当技術分野でよく知られている技法を使用して、遺伝子発現
の変化を測定することによってモニターすることができる。これらの技法を使用して、1
つまたは複数の特定マーカーに陽性である細胞を同定することもできる。例えば、CD3
4に対する抗体を使用して、前述の技法を使用して、細胞が検出可能な量のCD34を含
むかどうか決定することができ、その場合細胞はCD34である。同様に、細胞がRT
-PCRによって検出するのに十分なOCT-4のRNA、または成体細胞より有意に多
いOCT-4のRNAを生成する場合、その細胞はOCT-4である。細胞表面マーカ
ー(例えば、CD34などのCDマーカー)に対する抗体、およびOCT-4などの幹細
胞特異的遺伝子の配列は、当技術分野でよく知られている。
【0164】
胎盤細胞、特にFicoll分離、差次的接着、または両方の組合せによって単離した
細胞は、蛍光活性化細胞選別器(FACS)を使用して選別することができる。蛍光活性
化細胞選別(FACS)は、粒子の蛍光性に基づいて細胞を含めた粒子を分離するための
、よく知られている方法である(Kamarch、1987、Methods Enzy
mol、151:150~165)。個々の粒子における蛍光成分のレーザー励起はわず
かな電荷をもたらし、混合物からのプラスの粒子とマイナスの粒子の電磁気的分離を可能
にする。一実施形態では、細胞表面マーカー特異的抗体またはリガンドを異なる蛍光標識
で標識する。細胞は細胞選別器によって処理し、使用する抗体と結合するそれらの能力に
基づく細胞の分離を可能にする。FACSにより選別した粒子は、96ウエルまたは38
4ウエルプレートの個々のウエル中に直接置いて、分離およびクローニングを容易にする
ことができる。
【0165】
一選別スキームでは、胎盤由来の細胞を、例えばマーカーCD34、CD38、CD4
4、CD45、CD73、CD105、OCT-4および/またはHLA-Gの1つまた
は複数の発現に基づいて選別する。培養中のそれらの接着性に基づいてこのような細胞を
選択するための手順と関連して、これを実施することができる。例えば、組織培養プラス
チック接着性に基づく選択は、マーカーの発現に基づいた選別の前後に実施することがで
きる。一実施形態では、例えば、それらのCD34の発現に基づき細胞を最初に選別し、
CD34細胞は保持し、さらにCD200HLA-GであるCD34細胞は全て
の他のCD34細胞から分離する。別の実施形態では、胎盤由来の細胞をそれらのマー
カーCD200および/またはHLA-Gの発現に基づいて選別し、例えば、これらのマ
ーカーのいずれかを示す細胞はさらなる使用のために単離する。例えば、CD200およ
び/またはHLA-Gを発現する細胞は、具体的な実施形態では、それらのCD73およ
び/またはCD105の発現、または抗体SH2、SH3もしくはSH4によって認識さ
れるエピトープ、またはCD34、CD38またはCD45の発現の欠如に基づいてさら
に選別することができる。例えば、別の実施形態では、胎盤細胞は、CD200、HLA
-G、CD73、CD105、CD34、CD38およびCD45の発現、またはその欠
如によって選別し、CD200、HLA-G、CD73、CD105、CD34
、CD38、およびCD45である胎盤細胞は、さらなる使用のため他の胎盤細胞
から単離する。
【0166】
選別胎盤細胞の前述の実施形態のいずれかの具体的な実施形態では、選別後に残った細
胞集団中の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%の細胞が前
記単離胎盤細胞である。前のセクション5.4.2に記載の1つまたは複数の任意のマー
カーによって、胎盤細胞を選別することができる。
【0167】
具体的な実施形態では、(1)組織培養プラスチックに接着し、かつ(2)CD10
、CD34、およびCD105である胎盤細胞を、他の胎盤細胞から選別する(すな
わち、それらから単離する)。別の具体的な実施形態では、(1)組織培養プラスチック
に接着し、かつ(2)CD10、CD34、CD105およびCD200である
胎盤細胞を、他の胎盤細胞から選別する(すなわち、それらから単離する)。別の具体的
な実施形態では、(1)組織培養プラスチックに接着し、かつ(2)CD10、CD3
、CD45、CD90、CD105およびCD200である胎盤細胞を、他
の胎盤細胞から選別する(すなわち、それらから単離する)。
【0168】
胎盤細胞、例えば胎盤幹細胞または胎盤多分化能細胞の抗体介在の検出および選別に関
して、特定マーカーに特異的な任意の抗体を、細胞の検出および選別に適した任意のフル
オロフォアまたは他の標識と組み合わせて使用することができる(例えば、蛍光活性化細
胞選別)。特異的マーカーに対する抗体/フルオロフォアの組合せには、HLA-Gに対
するフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合モノクローナル抗体(Sero
tec、Raleigh、North Carolinaから入手可能)、CD10(B
D Immunocytometry Systems、San Jose、Calif
orniaから入手可能)、CD44(BD Biosciences Pharmin
gen、San Jose、Californiaから入手可能)、およびCD105(
R&D Systems Inc.、Minneapolis、Minnesotaから
入手可能)、CD44、CD200、CD117、およびCD13に対するフィコエリス
リン(PE)結合モノクローナル抗体(BD Biosciences Pharmin
gen)、CD33およびCD10に対するフィコエリスリン-Cy7(PECy7)結
合モノクローナル抗体(BD Biosciences Pharmingen)、アロ
フィコシアニン(APC)結合ストレプトアビジンおよびCD38に対するモノクローナ
ル抗体(BD Biosciences Pharmingen)、およびビオチニル化
CD90(BD Biosciences Pharmingen)があるが、これらだ
けには限られない。使用することができる他の抗体には、CD133-APC(Milt
enyi)、KDR-ビオチン(CD309、Abeam)、サイトケラチンK-FIT
C(SigmaまたはDako)、HLAABC-Fitc(BD)、HLADR、DQ
、DP-PE(BD)、β-2-マイクログロブリン-PE(BD)、CD80-PE(
BD)およびCD86-APC(BD)があるが、これらだけには限られない。
【0169】
使用することができる他の抗体/標識の組合せには、CD45-PerCP(ペリジン
クロロフィルタンパク質)、CD44-PE、CD19-PE、CD10-F(フルオレ
セイン);HLA-G-Fおよび7-アミノ-アクチノマイシン-D(7-AAD)、H
LA-ABC-Fなどがあるが、これらだけには限られない。
【0170】
本明細書で提供する単離胎盤細胞は、例えばCD117またはCD133に対するフィ
コエリスリン-Cy5(PECy5)結合ストレプトアビジンおよびビオチン結合モノク
ローナル抗体を使用して、CD117またはCD133に関してアッセイすることができ
るが、しかしながら、このシステムを使用すると、比較的高いバックグラウンドのため、
細胞がそれぞれCD117またはCD133に関して陽性に見える可能性がある。
【0171】
単離胎盤細胞は、1つのマーカーに対する抗体で標識し、検出および/選別することが
できる。胎盤細胞は、異なるマーカーに対する多数の抗体で同時に標識することもできる
【0172】
別の実施形態では、磁気ビーズを使用して細胞を分離することができる。細胞は、磁気
活性化細胞選別(MACS)技法、磁気ビーズ(0.5~100μm径)と結合するそれ
らの能力に基づいて粒子を分離するための方法を使用して選別することができる。特定の
細胞表面分子またはハプテンを特異的に認識する抗体の共有結合的付加を含めた、様々な
有用な修飾を磁性ミクロスフェアに実施することができる。次いでビーズを細胞と混合し
て結合を可能にする。次いで細胞を磁場に通して、特異的細胞表面マーカーを有する細胞
を分離する。一実施形態では、これらの細胞を次いで単離して、他の細胞表面マーカーに
対する抗体と結合した磁気ビーズと再度混合することができる。再度細胞を磁場に通して
、両抗体と結合した細胞を単離する。次いでこのような細胞を、クローン単離用のマイク
ロタイター皿などの別々の皿中に希釈することができる。
【0173】
単離胎盤細胞は、細胞形態および増殖特性に基づいて特徴付けおよび/または選別する
こともできる。例えば、単離胎盤細胞は、例えば培養中の線維芽細胞様の外見を有すると
して特徴付けすることができ、および/またはそれに基づいて選択することができる。単
離胎盤細胞は、胚様体を形成するその能力を有するとして特徴付けすることができ、およ
び/またはそれに基づいて選択することもできる。一実施形態では、例えば、線維芽細胞
様の形状である胎盤細胞はCD73およびCD105を発現し、培養中に1つまたは複数
の胚様体を生成し、他の胎盤細胞から単離する。別の実施形態では、培養中に1つまたは
複数の胚様体を生成するOCT-4胎盤細胞を、他の胎盤細胞から単離する。
【0174】
別の実施形態では、コロニー形成単位アッセイによって、単離胎盤細胞を同定および特
徴付けすることができる。MESENCULT(商標)培地(Stem Cell Te
chnologies、Inc.、Vancouver British Columb
ia)などのコロニー形成単位アッセイは当技術分野で一般に知られている。
【0175】
単離胎盤細胞は、トリパンブルー色素排除アッセイ、フルオレセイン二酢酸取り込みア
ッセイ、ヨウ化プロピジウム取り込みアッセイ(生存率を評価するため)およびチミジン
取り込みアッセイ、MTT細胞増殖アッセイ(増殖を評価するため)などの、当技術分野
で知られている標準的な技法を使用して、生存率、増殖能力、および寿命に関して評価す
ることができる。長期培養中の集団倍化の最大数の決定などの、当技術分野でよく知られ
ている方法によって寿命を決定することができる。
【0176】
単離胎盤細胞、例えば上のセクション5.4.2で記載する単離胎盤細胞は、当技術分
野で知られている他の技法、例えば望ましい細胞の選択的増殖(陽性選択)、望ましくな
い細胞の選択的破壊(陰性選択)、例えばダイズ凝集素を用いた混合集団中の差次的細胞
凝集に基づいた分離、凍結-解凍手順、濾過、従来型およびゾーン遠心分離、遠心分離洗
浄(カウンターストリーミング遠心分離)、単位重力による分離、向流分配、電気泳動な
どを使用して、他の胎盤細胞から分離することもできる。
【0177】
5.6 単離胎盤細胞の培養
5.6.1 培養培地
単離胎盤細胞、または単離胎盤細胞の集団、またはそこから胎盤幹細胞が増殖する細胞
もしくは胎盤組織を使用して、細胞培養を開始する、または接種することができる。細胞
は一般に、非コーティング状態、または細胞外マトリクスまたはラミニン、コラーゲン(
例えば、天然または変性)、ゼラチン、フィブロネクチン、オルニチン、ビトロネクチン
などのリガンド、および細胞外膜タンパク質(例えば、MATRIGEL(登録商標))
(BD Discovery Labware、Bedford、Mass.)でコーテ
ィング状態のいずれかの滅菌済み組織培養容器に移す。
【0178】
単離胎盤細胞は、細胞、例えば幹細胞を培養するのに許容できるとして当技術分野で認
められている、任意の培地中、および任意の条件下で培養することができる。培養培地は
血清を含むことが好ましい。単離胎盤細胞は、例えば、ITS(インシュリン-トランス
フェリン-セレン)、LA+BSA(リノール酸-ウシ血清アルブミン)、デキサメタゾ
ンL-アスコルビン酸、PDGF、EGF、IGF-1、およびペニシリン/ストレプト
マイシンを含有するDMEM-LG(ダルベッコ改変最小培地、低グルコース)/MCD
B201(ヒヨコ線維芽細胞基礎培地)、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むDMEM
-HG(高グルコース)、15%FBSを含むDMEM-HG、1%~20%FBS、1
0%ウマ血清、およびヒドロコルチゾンを含むIMDM(Iscoveの改変ダルベッコ
培地)、10%FBS、EGF、およびヘパリンを含むM199、10%FBS、GLU
TAMAX(商標)およびゲンタマイシンを含むα-MEM(最小必須培地)、10%F
BS、GLUTAMAX(商標)およびゲンタマイシンを含むDMEMなどにおいて培養
することができる。
【0179】
胎盤細胞を培養するために使用することができる他の培地には、DMEM(高または低
グルコース)、イーグルの基礎培地、HamのF10培地(F10)、HamのF-12
培地(F12)、Iscoveの改変ダルベッコ培地、間葉系幹細胞増殖培地(MSCG
M)、LiebovitzのL-15培地、MCDB、DMEM/F12、RPMI16
40、最新DMEM(Gibco)、DMEM/MCDB201(Sigma)、および
CELL-GRO FREEがある。
【0180】
例えば、血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS)、好ましくは約2~15%(v/v)
;ウマ(馬)血清(ES);ヒト血清(HS))、β-メルカプトエタノール(BME)
、好ましくは約0.001%(v/v)、1つまたは複数の増殖因子、例えば、血小板由
来増殖因子(PDGF)、表皮増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFG
F)、インシュリン様増殖因子-1(IGF-1)、白血病抑制因子(LIF)、血管内
皮増殖因子(VEGF)、およびエリスロポイエチン(EPO)、L-バリンを含めたア
ミノ酸、および細菌汚染を調節するための1つまたは複数の抗菌剤および/または抗真菌
剤、例えば、ペニシリンG、硫酸ストレプトマイシン、アンホテリシンB、ゲンタマイシ
ン、およびニスタチンなどを含めた1つまたは複数の成分を、単独または組合せで培養培
地に補充することができる。
【0181】
単離胎盤細胞は、標準的な組織培養条件において、例えば組織培養皿またはマルチウエ
ルプレートにおいて培養することができる。単離胎盤細胞は、懸滴法を使用して培養する
こともできる。この方法では、単離胎盤細胞を約5mLの培地に1mL当たり約1×10
個の細胞で懸濁し、一滴または複数滴の培地を、組織培養容器、例えば100mLペト
リ皿の蓋の内側に置く。滴は、例えばマルチチャネルピペッターからの、一滴、または複
数滴であってよい。蓋を注意深く反転させ、一定体積の液体、例えば皿雰囲気中の水分含
量を維持するのに十分な滅菌済みPBSを含有する、皿の底部表面に置き、幹細胞を培養
する。
【0182】
一実施形態では、単離胎盤細胞は、単離胎盤細胞において未分化状態の表現型を維持す
るように作用する化合物の存在下で培養する。具体的な実施形態では、化合物は置換3,
4-ジヒドロピリジモール[4,5-d]ピリミジンである。より具体的な実施形態では
、化合物は、以下の化学構造を有する化合物である:
【0183】
【化2】
【0184】
化合物は、例えば、約1μM~約10μMの濃度で、単離胎盤細胞、または単離胎盤細
胞の集団と接触させることが可能である。
【0185】
5.6.2 胎盤細胞の拡大および増殖
単離胎盤細胞、または単離胎盤細胞の集団(例えば、幹細胞または幹細胞の集団と通常
in vivoで関係がある胎盤細胞の、少なくとも50%から分離した胎盤細胞または
胎盤細胞の集団)を得た後、細胞または細胞の集団をin vitroで増殖および拡大
することができる。例えば、単離胎盤細胞の集団を、細胞が70~90%の集合状態に増
殖するのに十分な時間、すなわち細胞およびそれらの子孫が組織培養容器の培養表面積の
70~90%を占めるまで、組織培養容器、例えば皿、フラスコ、マルチウエルプレート
などにおいて培養することができる。
【0186】
単離胎盤細胞は、細胞増殖を可能にする密度で培養容器に接種することができる。例え
ば、細胞は低密度(例えば、約1,000~約5,000個の細胞/cm)~高密度(
例えば、約50,000個以上の細胞/cm)で接種することができる。好ましい実施
形態では、空気中に約0~約5体積パーセントのCOの存在下で細胞を培養する。いく
つかの好ましい実施形態では、空気中に約2~約25体積パーセントのO、好ましくは
空気中に約5~約20体積パーセントのOで細胞を培養する。細胞は好ましくは約25
℃~約40℃、好ましくは37℃で培養する。細胞はインキュベーター内で培養するのが
好ましい。培養培地は固定状態であってよく、または例えばバイオリアクターを使用して
攪拌してよい。胎盤細胞、例えば胎盤幹細胞または胎盤多分化能細胞は、(例えば、グル
タチオン、アスコルビン酸、カタラーゼ、トコフェロール、N-アセチルシステインなど
を加えて)低い酸化ストレス下で増殖させるのが好ましい。
【0187】
100%未満、例えば70~90%の集合状態を得た後、細胞を継代することができる
。例えば、当技術分野でよく知られている技法を使用して、細胞を酵素により処理、例え
ばトリプシン処理して、組織培養表面からそれらを分離することができる。除去後、細胞
をピペッティングし、細胞を計数し、約10,000~100,000個の細胞/cm
を、新たな培養培地を含有する新しい培養容器に継代する。典型的には、新しい培地は、
そこから単離胎盤細胞を除去した同じ型の培地である。単離胎盤細胞は、約、少なくとも
、またはせいぜい1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18
、または20回以上継代することができる。
【0188】
5.6.3 単離胎盤細胞の集団
本明細書でさらに提供するのは、脳もしくはCNS内またはその周辺の血流の混乱の治
療において有用である、単離胎盤細胞、例えば前のセクション5.4.2に記載の単離胎
盤細胞の集団である。単離胎盤細胞の集団は1つまたは複数の胎盤から直接単離すること
ができ、すなわち、細胞集団は単離胎盤細胞を含む胎盤細胞の集団であってよく、単離胎
盤細胞は、灌流液から得られる、もしくはその中に含有される、または混乱胎盤組織、例
えば胎盤組織消化物から得られる、もしくはその中に含有される(すなわち、胎盤または
その一部分の酵素による消化によって得られた細胞の回収)。本明細書に記載の単離胎盤
細胞を培養および増殖して、単離胎盤細胞の集団を生成することもできる。単離胎盤細胞
を含む胎盤細胞の集団を培養および増殖して、胎盤細胞集団を生成することもできる。
【0189】
本明細書で提供する治療方法に有用である胎盤細胞集団は、単離胎盤細胞、例えば本明
細書のセクション5.4.2に記載の単離胎盤細胞を含む。様々な実施形態において、胎
盤細胞集団中の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、
80%、90%、95%、または99%の細胞が単離胎盤細胞である。すなわち、単離胎
盤細胞の集団は、例えば、単離胎盤細胞ではない最大1%、5%、10%、20%、30
%、40%、50%、60%、70%、80%、90%の細胞を含むことができる。
【0190】
脳もしくはCNS内またはその周辺の血流の混乱の治療において有用である単離胎盤細
胞集団は、例えば、特定マーカーおよび/または特定培養もしくは形状特性を発現する、
酵素による消化または灌流のいずれかに由来する単離胎盤細胞を選択することによって生
成することができる。一実施形態では、例えば、(a)基質に接着し、かつ(b)CD2
00およびHLA-Gを発現する胎盤細胞を選択すること、および他の細胞から前記細胞
を単離して細胞集団を形成することによって、細胞集団を生成する。別の実施形態では、
CD200およびHLA-Gを発現する胎盤細胞を選択すること、および他の細胞から前
記細胞を単離して細胞集団を形成することによって、細胞集団を生成する。別の実施形態
では、(a)基質に接着し、かつ(b)CD73、CD105、およびCD200を発現
する胎盤細胞を選択すること、および他の細胞から前記細胞を単離して細胞集団を形成す
ることによって、細胞集団を生成する。別の実施形態では、CD73、CD105、およ
びCD200を発現する胎盤細胞を同定すること、および他の細胞から前記細胞を単離し
て細胞集団を形成することによって、細胞集団を生成する。別の実施形態では、(a)基
質に接着し、かつ(b)CD200およびOCT-4を発現する胎盤細胞を選択すること
、および他の細胞から前記細胞を単離して細胞集団を形成することによって、細胞集団を
生成する。別の実施形態では、CD200およびOCT-4を発現する胎盤細胞を選択す
ること、および他の細胞から前記細胞を単離して細胞集団を形成することによって細胞集
団を生成する。別の実施形態では、(a)基質に接着し、(b)CD73およびCD10
5を発現し、かつ(c)集団を胚様体の形成を可能にする条件下で培養すると、前記幹細
胞を含む前記胎盤細胞の集団中の1つまたは複数の胚様体の形成を容易にする胎盤細胞を
選択すること、および他の細胞から前記細胞を単離して細胞集団を形成することによって
、細胞集団を生成する。別の実施形態では、CD73およびCD105を発現し、集団を
胚様体の形成を可能にする条件下で培養すると、前記幹細胞を含む前記胎盤細胞の集団中
の1つまたは複数の胚様体の形成を容易にする胎盤細胞を選択すること、および他の細胞
から前記細胞を単離して細胞集団を形成することによって、細胞集団を生成する。別の実
施形態では、(a)基質に接着し、かつ(b)CD73、CD105およびHLA-Gを
発現する胎盤細胞を選択すること、および他の細胞から前記細胞を単離して細胞集団を形
成することによって、細胞集団を生成する。別の実施形態では、CD73、CD105お
よびHLA-Gを発現する胎盤細胞を選択すること、および他の細胞から前記細胞を単離
して細胞集団を形成することによって、細胞集団を生成する。別の実施形態では、細胞集
団を生成する方法は、(a)基質に接着し、(b)OCT-4を発現し、かつ(c)集団
を胚様体の形成を可能にする条件下で培養すると、前記幹細胞を含む前記胎盤細胞の集団
中の1つまたは複数の胚様体の形成を容易にする胎盤細胞を選択すること、および他の細
胞から前記細胞を単離して細胞集団を形成することを含む。別の実施形態では、OCT-
4を発現し、集団を胚様体の形成を可能にする条件下で培養すると、前記幹細胞を含む前
記胎盤細胞の集団中の1つまたは複数の胚様体の形成を容易にする胎盤細胞を選択するこ
と、および他の細胞から前記細胞を単離して細胞集団を形成することによって、細胞集団
を生成する。
【0191】
別の実施形態では、(a)基質に接着し、かつ(b)CD10およびCD105を発現
し、CD34は発現しない胎盤細胞を選択すること、および他の細胞から前記細胞を単離
して細胞集団を形成することによって、細胞集団を生成する。別の実施形態では、CD1
0およびCD105を発現し、CD34は発現しない胎盤細胞を選択すること、および他
の細胞から前記細胞を単離して細胞集団を形成することによって、細胞集団を生成する。
別の実施形態では、(a)基質に接着し、かつ(b)CD10、CD105およびCD2
00を発現し、CD34は発現しない胎盤細胞を選択すること、および他の細胞から前記
細胞を単離して細胞集団を形成することによって、細胞集団を生成する。別の実施形態で
は、CD10、CD105およびCD200を発現し、CD34は発現しない胎盤細胞を
選択すること、および他の細胞から前記細胞を単離して細胞集団を形成することによって
、細胞集団を生成する。別のより具体的な実施形態では、(a)基質に接着し、かつ(b
)CD10、CD90、CD105およびCD200を発現し、CD34およびCD45
は発現しない胎盤細胞を選択すること、および他の細胞から前記細胞を単離して細胞集団
を形成することによって、細胞集団を生成する。別のより具体的な実施形態では、CD1
0、CD90、CD105およびCD200を発現し、CD34およびCD45は発現し
ない胎盤細胞を選択すること、および他の細胞から前記細胞を単離して細胞集団を形成す
ることによって、細胞集団を生成する。
【0192】
このような細胞集団、またはその組合せを使用して、脳もしくはCNS内またはその周
辺の血流の混乱、例えば混乱の症状またはこのような混乱が原因である神経障害を治療す
ることができる。
【0193】
任意の前述の実施形態において、単離細胞集団の選択は、ABC-p(胎盤特異的AB
C輸送タンパク質、例えば、Allikmetsら、Cancer Res.58(23
):5337~9(1998)を参照)を発現する胎盤細胞を選択することをさらに含む
ことができる。方法は、例えば間葉系幹細胞に特異的な少なくとも1つの特性、例えばC
D44の発現、CD90の発現、または前述の組合せの発現を示す細胞を選択することも
含むことができる。
【0194】
前述の実施形態において、基質はその上で細胞、例えば単離胎盤細胞の培養および/ま
たは選択を実施することができる任意の表面であってよい。典型的には、基質はプラスチ
ック、例えば組織培養皿またはマルチウエルプレートプラスチックである。組織培養プラ
スチックは、生物分子、例えばラミニンまたはフィブロネクチンでコーティングすること
ができる。
【0195】
細胞、例えば単離胎盤細胞を、細胞選択の当技術分野で知られている任意の手段によっ
て、胎盤細胞集団用に選択することができる。例えば、例えばフローサイトメトリーまた
はFACSにおいて、1つまたは複数の細胞表面マーカーに対する1つまたは複数の抗体
を使用して、細胞を選択することができる。磁気ビーズと共に抗体を使用して選択を実施
することができる。特定の幹細胞関連マーカーに特異的である抗体は当技術分野で知られ
ている。例えば、OCT-4(Abeam、Cambridge、MA)、CD200(
Abeam)、HLA-G(Abeam)、CD73(BD Biosciences
Pharmingen、San Diego、CA)、CD105(Abeam;Bio
Design International、Saco、ME)などに対する抗体。他の
マーカーに対する抗体も市販されており、例えばCD34、CD38およびCD45は、
例えばStemCell TechnologiesまたはBioDesign Int
ernationalから市販されている。
【0196】
単離胎盤細胞集団は、幹細胞ではない胎盤細胞、または胎盤細胞ではない細胞を含むこ
とができる。
【0197】
本明細書で提供する単離胎盤細胞集団は、非幹細胞または非胎盤細胞の1つまたは複数
の集団と組み合わせることができる。例えば、単離胎盤細胞の集団は、血液(例えば、胎
盤血または臍帯血)、血液由来幹細胞(例えば、胎盤血または臍帯血由来の幹細胞)、臍
帯幹細胞、の集団、血液由来有核細胞、骨膜由来間葉系細胞、骨由来幹細胞集団、粗製骨
髄、成体(体性)幹細胞、組織内に含有される幹細胞の集団、培養幹細胞、完全に分化し
た細胞の集団(例えば、軟骨細胞、線維芽細胞、羊膜細胞、破骨細胞、筋肉細胞、心臓細
胞など)などと組み合わせることができる。具体的な実施形態では、脳もしくはCNS内
またはその周辺の血流の混乱の治療に有用な細胞の集団は、単離胎盤細胞および単離臍帯
細胞を含む。単離胎盤細胞集団中の細胞は、各集団中の全有核細胞の数と比較して、約1
00,000,000:1,50,000,000:1,20,000,000:1,1
0,000,000:1,5,000,000:1,2,000,000:1,1,00
0,000:1,500,000:1,200,000:1,100,000:1,50
,000:1,20,000:1,10,000:1,5,000:1,2,000:1
,1,000:1,500:1,200:1,100:1,50:1,20:1,10:
1,5:1,2:1,1:1;1:2;1:5;1:10;1:100;1:200;1
:500;1:1,000;1:2,000;1:5,000;1:10,000;1:
20,000;1:50,000;1:100,000;1:500,000;1:1,
000,000;1:2,000,000;1:5,000,000;1:10,000
,000;1:20,000,000;1:50,000,000;または約1:100
,000,000の比で他型の複数の細胞と組み合わせることができる。単離胎盤細胞集
団中の細胞は、複数の細胞型の複数の細胞とも組み合わせることができる。
【0198】
一実施形態では、胎盤細胞の単離集団は複数の造血幹細胞と組み合わせる。このような
造血幹細胞は、例えば、未処理胎盤、臍帯血または末梢血内、胎盤血、臍帯血または末梢
血由来の全有核細胞中、胎盤血、臍帯血または末梢血由来のCD34細胞の単離集団中
、未処理骨髄中、骨髄由来の全有核細胞中、骨髄由来のCD34細胞の単離集団などに
含有され得る。
【0199】
5.7 胎盤細胞塊の生成
産後胎盤から単離した細胞、例えば、前のセクション5.4.2に記載した単離胎盤細
胞をいくつかの異なる方法で培養して、例えば、ロットが一組の個別に投与可能な用量の
単離胎盤細胞である一組のロットを生成することができる。このようなロットは、例えば
、胎盤灌流液由来の細胞から、または酵素により消化した胎盤組織由来の細胞から得るこ
とができる。複数の胎盤から得た数組の胎盤細胞のロットは、例えば長期の貯蔵用に、単
離胎盤細胞の塊に並べることができる。一般に、組織培養プラスチック接着性胎盤細胞を
胎盤材料の初期培養から得て接種培養物を形成し、それを制御条件下で増殖してほぼ同数
の倍化から細胞の集団を形成する。ロットは一胎盤の組織に由来することが好ましいが、
複数の胎盤の組織に由来してよい。
【0200】
一実施形態では、胎盤細胞のロットを以下のように得る。最初に胎盤組織を、例えば切
断によって破壊し、適切な酵素、例えばトリプシンまたはコラゲナーゼで消化する(前の
セクション5.5.3を参照)。胎盤組織は、例えば一胎盤由来の羊膜全体、絨毛膜全体
、または両方を含むことが好ましいが、羊膜または絨毛膜のいずれかの一部分のみを含む
ことができる。消化した組織は、例えば、約1~3週間、好ましくは約2週間培養する。
非接着性細胞を除去した後、形成する高密度コロニーは、例えばトリプシン処理によって
回収する。これらの細胞を回収し、好都合な体積の培養培地に再懸濁し、次いでこれらを
使用して増殖培養物を接種する。増殖培養物は、別の細胞培養装置、例えばNUNC(商
標)によるCell Factoryの任意の配列であってよい。細胞は例えば1×10
、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×
10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10
6×10、7×10、8×10、9×10、または10×10個/cmで増
殖培養物を接種する任意の程度に細分することができる。約1×10~約1×10
の細胞/cmを使用して、それぞれの増殖培養物を接種することが好ましい。増殖培養
物の数は、そこから細胞を得る個々の(1つまたは複数の)胎盤に応じて、これより多数
または少数であってよい。
【0201】
増殖培養物は、培養中の細胞の密度が特定の値、例えば約1×10個の細胞/cm
に達するまで増殖する。細胞はこの時点で回収および凍結保存のいずれかが可能であり、
または前に記載したように新しい増殖培養物に継代することができる。細胞は使用前に例
えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、1
7、18、19または20回継代することができる。集団倍化の累積数の記録は(1回ま
たは複数回の)増殖培養中維持されることが好ましい。培養物からの細胞は2、3、4、
5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、
30、32、34、36、38または40の倍化、または最大60の倍化で増殖すること
ができる。しかしながら、細胞集団を個々の用量に分ける前の集団倍化の数は、約15~
約30であることが好ましい。細胞は増殖プロセスを通じて連続的に培養することができ
、または増殖中に1つまたは複数の地点で凍結することができる。
【0202】
個々の用量で使用する細胞は、後の使用のために凍結、例えば凍結保存することができ
る。個々の用量は、例えば1ml当たり約100万個~約5000万個の細胞を含むこと
ができ、合計で約10個と約1010個の間の細胞を含むことができる。
【0203】
一実施形態では、したがって胎盤細胞塊は、第1の複数集団倍化でヒト産後胎盤由来の
初代培養胎盤細胞を増殖すること、前記胎盤細胞を凍結保存してマスター細胞塊を形成す
ること、第2の複数集団倍化でマスター細胞塊から複数の胎盤細胞を増殖すること、前記
胎盤細胞を凍結保存して作業用細胞塊を形成すること、第3の複数集団倍化で作業用細胞
塊から複数の胎盤細胞を増殖すること、および前記胎盤細胞を個々の用量で凍結保存する
ことを含み、前記個々の用量が胎盤細胞塊を集合的に構成する方法によって作製すること
ができる。場合によっては、前記第三の複数集団倍化から複数の胎盤細胞は第四の複数集
団倍化用に増殖し、個々の用量で凍結保存することができ、前記個々の用量は胎盤幹細胞
バンクを集合的に構成する。
【0204】
別の具体的な実施形態では、前記初代培養胎盤細胞は、胎盤灌流液由来の胎盤細胞を含
む。別の具体的な実施形態では、前記初代培養胎盤細胞は、消化胎盤組織由来の胎盤細胞
を含む。別の具体的な実施形態では、前記初代培養胎盤細胞は、胎盤灌流液由来および消
化胎盤組織由来の胎盤細胞を含む。別の具体的な実施形態では、前記胎盤細胞初代培養物
中の前記胎盤細胞の全てが同じ胎盤に由来する。別の具体的な実施形態では、この方法は
、前記作業用細胞塊由来の前記複数の前記胎盤細胞からCD200もしくはHLA-G
胎盤細胞を選択して、個々の用量を形成するステップをさらに含む。別の具体的な実施
形態では、前記個々の用量は約10個~約10個の胎盤細胞を含む。別の具体的な実
施形態では、前記個々の用量は約10個~約10個の胎盤細胞を含む。別の具体的な
実施形態では、前記個々の用量は約10個~約10個の胎盤細胞を含む。別の具体的
な実施形態では、前記個々の用量は約10個~約10個の胎盤細胞を含む。別の具体
的な実施形態では、前記個々の用量は約10個~約10個の胎盤細胞を含む。別の具
体的な実施形態では、前記個々の用量は約10個~約1010個の胎盤細胞を含む。
【0205】
好ましい実施形態では、そこから胎盤を得るドナー(例えば母親)を少なくとも1つの
病原体に関して試験する。母親が試験病原体に陽性反応を示す場合、胎盤由来の全ロット
を廃棄する。このような試験は、胎盤細胞ロットの生成中、例えば増殖培養中の任意の時
間で実施することができる。その存在に関して試験する病原体は、A型肝炎、B型肝炎、
C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(IおよびII型)、サイトメガ
ロウイルス、ヘルペスウイルスなどを非制限的に含むことができる。
【0206】
5.8 胎盤細胞の保存
単離胎盤細胞、例えば前のセクション5.4.2に記載した単離胎盤細胞は、保存する
ことができる、すなわち、長期の貯蔵を可能にする条件下、または例えばアポトーシスま
たは壊死による細胞死を抑制する条件下に置くことができる。
【0207】
胎盤細胞は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる関連米国出願公開第2
007/0190042号に記載されたように、例えばアポトーシス阻害剤、壊死阻害剤
および/または酸素含有ペルフルオロカーボンを含む組成物を使用して保存することがで
きる。一実施形態では、脳またはCNS中、またはその周りの血流の中断の治療に有用な
細胞集団を保存する方法は、アポトーシス阻害剤および酸素含有ペルフルオロカーボンを
含む細胞回収組成物と前記細胞集団を接触させることを含み、前記アポトーシス阻害剤は
、アポトーシス阻害剤と接触していない細胞集団と比較して、前記細胞集団中のアポトー
シスを低減または予防するのに十分な量および時間存在する。具体的な実施形態では、前
記アポトーシス阻害剤はカスパーゼ阻害剤である。別の具体的な実施形態では、前記アポ
トーシス阻害剤はJNK阻害剤である。より具体的な実施形態では、前記JNK阻害剤は
前記細胞の分化または増殖を調節しない。別の実施形態では、前記細胞回収組成物は、前
記アポトーシス阻害剤および前記酸素含有ペルフルオロカーボンを分離相で含む。別の実
施形態では、前記細胞回収組成物は、前記アポトーシス阻害剤および前記酸素含有ペルフ
ルオロカーボンをエマルジョン中に含む。別の実施形態では、前記細胞回収組成物は、乳
化剤、例えばレシチンをさらに含む。別の実施形態では、前記アポトーシス阻害剤および
前記ペルフルオロカーボンは細胞との接触時は約0℃と約25℃の間である。別のより具
体的な実施形態では、前記アポトーシス阻害剤および前記ペルフルオロカーボンは、細胞
との接触時は約2℃と10℃の間、または約2℃と約5℃の間である。別のより具体的な
実施形態では、前記接触は前記細胞集団の輸送中に実施する。別のより具体的な実施形態
では、前記接触は、前記細胞集団の凍結および解凍中に実施する。
【0208】
胎盤細胞の集団は、例えば、アポトーシス阻害剤および臓器保存用化合物と前記細胞集
団を接触させることを含む方法によって保存することができ、前記アポトーシス阻害剤は
、アポトーシス阻害剤と接触していない細胞集団と比較して、前記細胞集団中のアポトー
シスを低減または予防するのに十分な量および時間存在する。具体的な実施形態では、臓
器保存用化合物は、UW溶液(米国特許第4,798,824号に記載される;ViaS
panとしても知られる;Southardら、Transplantation49(
2):251~257(1990)も参照)またはStemら、米国特許第5,552,
267号に記載される溶液である。別の実施形態では、前記臓器保存用化合物は、ヒドロ
キシエチルスターチ、ラクトビオン酸、ラフィノース、またはこれらの組合せである。別
の実施形態では、細胞回収組成物は、2相中またはエマルジョンとしてのいずれかで酸素
含有ペルフルオロカーボンをさらに含む。
【0209】
方法の別の実施形態では、灌流中に、アポトーシス阻害剤および酸素含有ペルフルオロ
カーボン、臓器保存用化合物、またはこれらの組合せを含む細胞回収組成物と胎盤細胞を
接触させる。別の実施形態では、前記細胞は、組織破壊、例えば酵素による消化のプロセ
ス中に接触させる。別の実施形態では、灌流による回収後、または組織破壊、例えば酵素
による消化による回収後に、胎盤細胞を前記細胞回収化合物と接触させる。
【0210】
典型的には、胎盤細胞の回収、濃縮および単離中は、低酸素および機械的ストレスによ
る細胞ストレスを最小化または排除することが好ましい。したがって、方法の別の実施形
態では、細胞、または細胞集団を、前記保存中に6時間未満、回収、濃縮または単離中に
低酸素状態に曝し、低酸素状態は正常血中酸素濃度未満である酸素濃度である。より具体
的な実施形態では、前記細胞集団を、前記保存中に2時間未満前記低酸素状態に曝す。別
のより具体的な実施形態では、前記細胞集団を、回収、濃縮または単離中に1時間未満、
または30分未満前記低酸素状態に曝す、または低酸素状態に曝さない。別の具体的な実
施形態では、前記細胞集団を、回収、濃縮または単離中にせん断応力に曝さない。
【0211】
胎盤細胞は、小容器、例えばアンプル内の凍結保存培地中に、例えば凍結保存すること
ができる。適切な凍結保存培地には、例えば増殖培地を含めた培養培地、または細胞凍結
培地、例えば市販の細胞凍結培地、例えばC2695、C2639またはC6039(S
igma)があるが、これらだけには限られない。凍結保存培地は、約2%~約15%(
v/v)、例えば約10%(v/v)の濃度でDMSO(ジメチルスルホキシド)を含む
ことが好ましい。凍結保存培地は追加的な作用物質、例えばメチルセルロースおよび/ま
たはグリセロールを含むことができる。胎盤細胞は、凍結保存中約1℃/分で冷却するこ
とが好ましい。好ましい凍結保存温度は約-80℃~約-180℃、好ましくは約-12
5℃~約-140℃である。凍結保存した細胞は、使用するために解凍直前に液体窒素に
移すことができる。いくつかの実施形態では、例えば、アンプルが約-90℃に達した後
、それらを液体窒素貯蔵領域に移す。速度制御フリーザーを使用して凍結保存を行うこと
もできる。凍結保存した細胞は、好ましくは約25℃~約40℃の温度で、好ましくは約
37℃の温度まで解凍する。
【0212】
5.9 単離胎盤細胞を含む組成物
本明細書、例えばセクション5.4.2に記載の胎盤細胞は、脳もしくはCNS内また
はその周辺の血流の混乱の治療において使用するための、任意の生理的に許容されるまた
は医学的に許容される化合物、組成物またはデバイスと組み合わせることができる。本明
細書で提供する治療方法に有用な組成物は、本明細書に記載の任意の1つまたは複数の胎
盤細胞を含むことができる(前のセクション5.4.2を参照)。特定の実施形態では、
組成物は薬剤として許容される組成物、例えば薬剤として許容される担体中に胎盤細胞を
含む組成物である。以下のセクション5.9.2を参照。
【0213】
特定の実施形態では、単離胎盤細胞を含む組成物はマトリクス、例えば脱細胞化マトリ
クスまたは合成マトリクスをさらに含む。より具体的な実施形態では、前記マトリクスは
三次元骨格である。別のより具体的な実施形態では、前記マトリクスは、コラーゲン、ゼ
ラチン、ラミニン、フィブロネクチン、ペクチン、オルニチンまたはビトロネクチンを含
む。別のより具体的な実施形態では、マトリクスは、羊膜または羊膜由来生体材料である
。別のより具体的な実施形態では、前記マトリクスは細胞外膜タンパク質を含む。別のよ
り具体的な実施形態では、前記マトリクスは合成化合物を含む。別のより具体的な実施形
態では、前記マトリクスは生物活性化合物を含む。別のより具体的な実施形態では、前記
生物活性化合物は、増殖因子、サイトカイン、抗体、または5,000ダルトン未満の有
機分子である。
【0214】
別の実施形態では、本明細書で提供する治療方法に有用な組成物は、任意の前述の胎盤
細胞、または任意の前述の胎盤細胞集団によって条件付けした培地を含む。
【0215】
5.9.1 凍結保存した単離胎盤細胞
脳もしくはCNS内またはその周辺の血流の混乱の治療に有用である単離胎盤細胞集団
は、後の使用のために保存、例えば凍結保存することができる。幹細胞などの細胞を凍結
保存するための方法は、当技術分野でよく知られている。単離胎盤細胞集団は、個体に容
易に投与可能である形、例えば、医学用途に適した容器内に含有される単離胎盤細胞集団
に調製することができる。このような容器は、例えば、シリンジ、滅菌済みプラスチック
バッグ、フラスコ、ジャー、またはそこから胎盤幹細胞集団を容易に分配することができ
る他の容器であってよい。例えば容器は、レシピエントへの液体の静脈内投与に適した、
血液バッグ、または他のプラスチック製の、医学的に許容されるバッグであってよい。容
器は、組合せ細胞集団の凍結保存を可能にする容器であることが好ましい。
【0216】
凍結保存した単離胎盤細胞集団は、1ドナー由来、または複数のドナー由来の単離胎盤
細胞を含むことができる。単離胎盤細胞は、目的のレシピエントと完全にHLA適合状態
、または部分的もしくは完全にHLAミスマッチであってよい。
【0217】
したがって、一実施形態では、単離胎盤細胞は、容器中で組織培養プラスチック接着性
胎盤細胞集団を含む組成物の形で、脳もしくはCNS内またはその周辺の血流の混乱の治
療に使用することができる。具体的な実施形態では、単離胎盤細胞を凍結保存する。別の
具体的な実施形態では、容器はバッグ、フラスコ、またはジャーである。より具体的な実
施形態では、前記バッグは滅菌済みプラスチックバッグである。より具体的な実施形態で
は、前記バッグは、例えば、静脈内注入による前記単離胎盤細胞集団の静脈内投与に適し
ている、それを可能にするまたは容易にする。バッグは、相互接続して投与前または最中
の単離胎盤細胞と1つまたは複数の他の溶液、例えば薬剤の混合を可能にする、多数の内
腔または区画を含むことができる。別の具体的な実施形態では、組成物は、組合せ細胞集
団の凍結保存を容易にする1つまたは複数の化合物を含む。別の具体的な実施形態では、
前記単離胎盤細胞集団は生理的に許容される水溶液中に含有される。より具体的な実施形
態では、前記生理的に許容される水溶液は0.9%のNaCl溶液である。別の具体的な
実施形態では、前記単離胎盤細胞集団は、前記細胞集団のレシピエントとHLA適合状態
である胎盤細胞を含む。別の具体的な実施形態では、前記組合せ細胞集団は、前記細胞集
団のレシピエントと少なくとも部分的にHLAミスマッチである胎盤細胞を含む。別の具
体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は複数のドナーに由来する。
【0218】
特定の実施形態では、容器中の単離胎盤細胞は単離CD10、CD34、CD10
胎盤細胞であり、前記細胞は凍結保存されており、かつ容器内に含有される。具体的
な実施形態では、前記CD10、CD34、CD105胎盤細胞はさらにCD20
である。より具体的な実施形態では、前記CD10、CD34、CD105
CD200胎盤細胞はさらにCD45またはCD90である。より具体的な実施形
態では、前記CD10、CD34、CD105、CD200胎盤細胞はさらにC
D45およびCD90である。別の具体的な実施形態では、CD34、CD10
、CD105胎盤細胞はさらにCD13、CD29、CD33、CD38、C
D44、CD45、CD54、CD62E、CD62L、CD62P、SH
(CD73)、SH4(CD73)、CD80、CD86、CD90
SH2(CD105)、CD106/VCAM、CD117、CD144/VE
-カドヘリン、CD184/CXCR4、CD200、CD133、OCT-4
、SSEA3、SSEA4、ABC-p、KDR(VEGFR2)、HLA
-A、B、C、HLA-DP、DQ、DR、HLA-G、またはプログラム死-1
リガンド(PDL1)、またはこれらの任意の組合せの、1つまたは複数である。より
具体的な実施形態では、CD34、CD10、CD105胎盤細胞はさらにCD1
、CD29、CD33、CD38、CD44、CD45、CD54/IC
AM、CD62E、CD62L、CD62P、SH3(CD73)、SH4
(CD73)、CD80、CD86、CD90、SH2(CD105)、
CD106/VCAM、CD117、CD144/VE-カドヘリン、CD184
/CXCR4、CD200、CD133、OCT-4、SSEA3、SSEA
、ABC-p、KDR(VEGFR2)、HLA-A、B、C、HLA-D
P、DQ、DR、HLA-G、およびプログラム死-1リガンド(PDL1)であ
る。
【0219】
特定の他の実施形態では、前に参照した単離胎盤細胞は単離CD200、HLA-G
胎盤細胞であり、前記細胞は凍結保存されており、かつ容器内に含有される。別の実施
形態では、単離胎盤細胞は、凍結保存されており、かつ容器内に含有されるCD73
CD105、CD200細胞である。別の実施形態では、単離胎盤細胞は、凍結保存
されており、かつ容器内に含有されるCD200、OCT-4幹細胞である。別の実
施形態では、単離胎盤細胞は、凍結保存されており、容器内に含有されるCD73、C
D105細胞であり、かつ前記単離胎盤細胞は、胚様体の形成を可能にする条件下で胎
盤細胞の集団と培養すると1つまたは複数の胚様体の形成を容易にする。別の実施形態で
は、単離胎盤細胞は、凍結保存されており、かつ容器内に含有されるCD73、CD1
05、HLA-G細胞である。別の実施形態では、単離胎盤細胞は、凍結保存されて
おり、容器内に含有されるOCT-4胎盤細胞であり、かつ前記細胞は、胚様体の形成
を可能にする条件下で胎盤細胞の集団と培養すると1つまたは複数の胚様体の形成を容易
にする。
【0220】
別の具体的な実施形態では、前に参照した単離胎盤細胞は、フローサイトメトリーによ
って検出されるCD34、CD10およびCD105である、胎盤幹細胞または胎
盤多分化能細胞である。より具体的な実施形態では、単離CD34、CD10および
CD105胎盤細胞は胎盤幹細胞である。別のより具体的な実施形態では、単離CD3
、CD10およびCD105胎盤細胞は多分化能胎盤細胞である。別の具体的な
実施形態では、単離CD34、CD10およびCD105胎盤細胞は、神経系の表
現型の細胞、骨形成原の表現型の細胞、または軟骨形成の表現型の細胞に分化する能力を
有する。より具体的な実施形態では、単離CD34、CD10およびCD105
盤細胞はさらにCD200である。別のより具体的な実施形態では、単離CD34
CD10およびCD105胎盤細胞はさらにフローサイトメトリーによって検出され
るCD90またはCD45である。別のより具体的な実施形態では、単離CD34
、CD10およびCD105胎盤細胞はさらにフローサイトメトリーによって検出さ
れるCD90またはCD45である。より具体的な実施形態では、CD34、CD
10、CD105、CD200胎盤細胞はさらにフローサイトメトリーによって検
出されるCD90またはCD45である。別のより具体的な実施形態では、CD34
、CD10、CD105、CD200細胞はさらにフローサイトメトリーによっ
て検出されるCD90およびCD45である。別のより具体的な実施形態では、CD
34、CD10、CD105、CD200、CD90、CD45細胞はさら
にフローサイトメトリーによって検出されるCD80およびCD86である。別の具
体的な実施形態では、CD34、CD10、CD105細胞はさらにCD29
CD38、CD44、CD54、CD80、CD86、SH3またはSH4
の1つまたは複数である。別のより具体的な実施形態では、細胞はさらにCD44
ある。前述の単離CD34、CD10、CD105胎盤細胞のいずれかの具体的な
実施形態では、細胞はさらにCD117、CD133、KDR(VEGFR2
、HLA-A、B、C、HLA-DP、DQ、DR、および/またはPDL1の1
つまたは複数である。
【0221】
前述の凍結保存単離胎盤細胞のいずれかの具体的な実施形態では、前記容器はバッグで
ある。様々な具体的な実施形態では、前記容器は、約、少なくとも、または最大1×10
個の前記単離胎盤細胞、5×10個の前記単離胎盤細胞、1×10個の前記単離胎
盤細胞、5×10個の前記単離胎盤細胞、1×10個の前記単離胎盤細胞、5×10
個の前記単離胎盤細胞、1×10個の前記単離胎盤細胞、5×10個の前記単離胎
盤細胞、1×1010個の前記単離胎盤細胞、1×1010個の前記単離胎盤細胞を含む
。任意の前述の凍結保存集団の他の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は、約、少
なくとも、または最大5回、最大10回、最大15回、または最大20回継代した。任意
の前述の凍結保存単離胎盤細胞の別の具体的な実施形態では、前記単離胎盤細胞は前記容
器内で増殖させた。
【0222】
5.9.2 医薬組成物
単離胎盤細胞の集団、または単離胎盤細胞を含む細胞の集団は、例えば本明細書で提供
する治療方法において、in vivoで使用するための医薬組成物に製剤化することが
できる。このような医薬組成物は、薬剤として許容される担体、例えば生理食塩水溶液ま
たは他のin vivo投与に認められる生理的に許容される溶液中に、単離胎盤細胞の
集団、または単離胎盤細胞を含む細胞の集団を含む。本明細書に記載の単離胎盤細胞を含
む医薬組成物は、本明細書で他の箇所に記載する、任意の単離胎盤細胞集団、または単離
胎盤細胞、または任意の組合せを含むことができる。医薬組成物は、胎児、母親、または
胎児と母親両方の胎盤細胞を含むことができる。本明細書で提供する医薬組成物は、一個
体または胎盤から、または複数の個体または胎盤から得る単離胎盤細胞をさらに含むこと
ができる。
【0223】
本明細書で提供する医薬組成物は、任意の数の単離胎盤細胞を含むことができる。例え
ば、単離胎盤細胞の1回の単位用量は、様々な実施形態において、約、少なくとも、また
は最大1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1
×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1
11またはそれより多くの単離胎盤細胞を含むことができる。
【0224】
本明細書で提供する医薬組成物は、50%以上生存状態である細胞(すなわち、集団中
の少なくとも50%の細胞が機能的または生存している)を含む細胞の集団を含む。集団
中の少なくとも60%の細胞が生存状態であることが好ましい。医薬組成物内の集団中の
少なくとも70%、80%、90%、95%、または99%の細胞が生存状態であること
がより好ましい。
【0225】
本明細書で提供する医薬組成物は、例えば生着を容易にする1つまたは複数の化合物(
例えば、抗T細胞受容体抗体、免疫抑制剤など)、例えばアルブミン、デキストラン40
、ゼラチン、ヒドロキシエチルスターチ、Plasmalyteなどの安定剤を含むこと
ができる。
【0226】
注射溶液として製剤化するとき、一実施形態において、医薬組成物は、約1%~1.5
%のHSAおよび約2.5%のデキストランを含む。好ましい実施形態において、医薬組
成物は、5%HSAおよび10%デキストランを含み、場合によっては免疫抑制剤、例え
ばシクロスポリンAを、例えば10mg/kgで含む溶液中に、1ミリリットル当たり約
5×10個の細胞~1ミリリットル当たり約2×10個の細胞を含む。
【0227】
他の実施形態では、医薬組成物、例えば溶液は、複数の細胞、例えば単離胎盤細胞、例
えば胎盤幹細胞または胎盤多分化能細胞を含み、前記医薬組成物は1ミリリットル当たり
約1.0±0.3×10個の細胞~1ミリリットル当たり約5.0±1.5×10
の細胞を含む。他の実施形態では、医薬組成物は1ミリリットル当たり約1.5×10
個の細胞~1ミリリットル当たり約3.75×10個の細胞を含む。他の実施形態では
、医薬組成物は約1×10個の細胞/mL~約50×10個の細胞/mL、約1×1
個の細胞/mL~約40×10個の細胞/mL、約1×10個の細胞/mL~約
30×10個の細胞/mL、約1×10個の細胞/mL~約20×10個の細胞/
mL、約1×10個の細胞/mL~約15×10個の細胞/mL、または約1×10
個の細胞/mL~約10×10個の細胞/mLを含む。特定の実施形態では、医薬組
成物は目に見える細胞塊を含まない(すなわち、マクロ細胞塊を含まない)、またはこの
ような目に見える塊を実質的に含まない。本明細書で使用する「マクロ細胞塊」は、拡大
せずに目に見える、例えば裸眼で見える細胞の凝集を意味し、一般に約150ミクロンよ
り大きい細胞凝集を指す。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約2.5%、3.0
%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0
%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%または10%のデキストラン、
例えばデキストラン-40を含む。具体的な実施形態では、前記組成物は約7.5%~約
9%のデキストラン-40を含む。具体的な実施形態では、前記組成物は約5.5%のデ
キストラン-40を含む。特定の実施形態では、医薬組成物は約1%~約15%のヒト血
清アルブミン(HSA)を含む。具体的な実施形態では、医薬組成物は約1%、2%、3
%、4%、5%、65、75、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%ま
たは15%のHSAを含む。具体的な実施形態では、前記細胞は凍結保存および解凍済み
である。別の具体的な実施形態では、前記細胞は70μM~100μMフィルターによっ
て濾過済みである。別の具体的な実施形態では、前記組成物は目に見える細胞塊を含まな
い。別の具体的な実施形態では、前記組成物は10個の細胞当たり約200未満の細胞
塊を含み、前記細胞塊は顕微鏡、例えば光学顕微鏡下でのみ目に見える。別の具体的な実
施形態では、前記組成物は10個の細胞当たり約150未満の細胞塊を含み、前記細胞
塊は顕微鏡、例えば光学顕微鏡下でのみ目に見える。別の具体的な実施形態では、前記組
成物は10個の細胞当たり約100未満の細胞塊を含み、前記細胞塊は顕微鏡、例えば
光学顕微鏡下でのみ目に見える。
【0228】
具体的な実施形態では、医薬組成物は1ミリリットル当たり約1.0±0.3×10
個の細胞、約5.5%デキストラン-40(w/v)、約10%のHSA(w/v)、お
よび約5%のDMSO(v/v)を含む。
【0229】
他の実施形態では、医薬組成物は、10%デキストラン-40を含む溶液中に複数の細
胞、例えば複数の単離胎盤細胞を含み、医薬組成物は、1ミリリットル当たり約1.0±
0.3×10個の細胞~1ミリリットル当たり約5.0±1.5×10個の細胞を含
み、かつ前記組成物は、肉眼で見える細胞塊を含まない(すなわち、マクロ細胞塊を含ま
ない)。いくつかの実施形態では、医薬組成物は1ミリリットル当たり約1.5×10
個の細胞~1ミリリットル当たり約3.75×10個の細胞を含む。具体的な実施形態
では、前記細胞は凍結保存および解凍済みである。別の具体的な実施形態では、前記細胞
は70μM~100μMフィルターによって濾過済みである。別の具体的な実施形態では
、前記組成物は10個の細胞当たり約200未満のミクロ細胞塊(すなわち、拡大して
のみ目に見える細胞塊)を含む。別の具体的な実施形態では、医薬組成物は10個の細
胞当たり約150未満のミクロ細胞塊を含む。別の具体的な実施形態では、医薬組成物は
10個の細胞当たり約100未満のミクロ細胞塊を含む。別の具体的な実施形態では、
医薬組成物は15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6
%、5%、4%、3%、もしくは2%未満のDMSO、または1%、0.9%、0.8%
、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、もしくは0.1%未
満のDMSOを含む。
【0230】
本明細書でさらに提供するのは細胞を含む組成物であり、前記組成物は本明細書で開示
する方法の1つによって生成する。例えば、一実施形態では、医薬組成物は細胞を含み、
医薬組成物は、胎盤細胞、例えば胎盤幹細胞または胎盤多分化能細胞を含む溶液を濾過し
て濾過済み細胞含有溶液を形成すること、例えば凍結保存前に、濾過済み細胞含有溶液を
、第1の希釈溶液で1ミリリットル当たり約1~50×10、1~40×10、1~
30×10、1~20×10、1~15×10、または1~10×10個の細胞
に希釈すること、および生成した濾過済み細胞含有溶液をデキストランは含むがヒト血清
アルブミン(HSA)は含まない第2の溶液で希釈して前記組成物を生成することを含む
方法によって生成する。特定の実施形態では、前記希釈は1ミリリットル当たり約15×
10個の細胞である。特定の実施形態では、前記希釈は1ミリリットル当たり約10±
3×10個の細胞である。特定の実施形態では、前記希釈は1ミリリットル当たり約7
.5×10個の細胞である。他の特定の実施形態では、希釈前に濾過済み細胞含有溶液
が1ミリリットル当たり約15×10個未満の細胞を含む場合、濾過は任意選択である
。他の特定の実施形態では、希釈前に濾過済み細胞含有溶液が1ミリリットル当たり約1
0±3×10個未満の細胞を含む場合、濾過は任意選択である。他の特定の実施形態で
は、希釈前に濾過済み細胞含有溶液が1ミリリットル当たり約7.5×10個未満の細
胞を含む場合、濾過は任意選択である。
【0231】
具体的な実施形態では、第1の希釈溶液を用いた前記希釈と前記第2の溶液を用いた前
記希釈の間に、細胞を凍結保存する。別の具体的な実施形態では、第1の希釈溶液はデキ
ストランおよびHSAを含む。第1の希釈溶液または第2の希釈溶液中のデキストランは
、任意の分子量のデキストラン、例えば約10kDa~約150kDaの分子量を有する
デキストランであってよい。いくつかの実施形態では、前記第1の希釈溶液または前記第
2の希釈溶液中の前記デキストランは、約2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4
.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8
.5%、9.0%、9.5%または10%のデキストランを含む。別の具体的な実施形態
では、前記第1の希釈溶液または前記第2の希釈溶液中のデキストランはデキストラン-
40である。別の具体的な実施形態では、前記第1の希釈溶液および前記第2の希釈溶液
中のデキストランはデキストラン-40である。別の具体的な実施形態では、前記第1の
希釈溶液中の前記デキストラン-40は5.0%デキストラン-40である。別の具体的
な実施形態では、前記第1の希釈溶液中の前記デキストラン-40は5.5%デキストラ
ン-40である。別の具体的な実施形態では、前記第2の希釈溶液中の前記デキストラン
-40は10%デキストラン-40である。別の具体的な実施形態では、HSAを含む前
記溶液中の前記HSAは1~15%のHSAである。別の具体的な実施形態では、HSA
を含む前記溶液中の前記HSAは約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、
9%、10%、11%、12%、13%、14%または15%のHSAである。別の具体
的な実施形態では、HSAを含む前記溶液中の前記HSAは10%のHSAである。別の
具体的な実施形態では、前記第1の希釈溶液はHSAを含む。より具体的な実施形態では
、前記第1の希釈溶液中の前記HSAは10%のHSAである。別の具体的な実施形態で
は、前記第1の希釈溶液は凍結保護剤を含む。より具体的な実施形態では、前記凍結保護
剤はDMSOである。別の具体的な実施形態では、前記第2の希釈溶液中の前記デキスト
ラン-40は約10%のデキストラン-40である。別の具体的な実施形態では、細胞を
含む前記組成物は約7.5%~約9%のデキストランを含む。別の具体的な実施形態では
、医薬組成物は、1ミリリットル当たり約1.0±0.3×10個の細胞~1ミリリッ
トル当たり約5.0±1.5×10個の細胞を含む。別の具体的な実施形態では、医薬
組成物は、1ミリリットル当たり約1.5×10個の細胞~1ミリリットル当たり約3
.75×10個の細胞を含む。
【0232】
別の実施形態では、医薬組成物は、(a)凍結保存前に胎盤細胞、例えば胎盤幹細胞ま
たは胎盤多分化能細胞を含む細胞含有溶液を濾過して、濾過済み細胞含有溶液を生成する
ステップ、(b)1ミリリットル当たり約1~50×10、1~40×10、1~3
0×10、1~20×10、1~15×10、または1~10×10個の細胞で
濾過済み細胞含有溶液中に細胞を凍結保存するステップ、(c)細胞を解凍するステップ
、および(d)デキストラン40溶液を用いて約1:1~約1:11(v/v)に濾過済
み細胞含有溶液を希釈するステップを含む方法によって作製する。特定の実施形態では、
ステップ(a)前に細胞数が1ミリリットル当たり約10±3×10個未満の細胞であ
る場合、濾過は任意選択である。より具体的な実施形態では、ステップ(b)中の細胞は
1ミリリットル当たり約10±3×10個の細胞で凍結保存する。より具体的な実施形
態では、ステップ(b)中の細胞は、約5%~約10%のデキストラン40およびHSA
を含む溶液中に凍結保存する。特定の実施形態では、ステップ(b)中の前記希釈は1ミ
リリットル当たり約15×10個の細胞である。
【0233】
別の実施形態では、医薬組成物は、(a)胎盤細胞、例えば胎盤幹細胞または胎盤多分
化能細胞を、10%HSAを含む5.5%デキストラン40溶液に懸濁して細胞含有溶液
を形成するステップ、(b)細胞含有溶液を70μMフィルターで濾過するステップ、(
c)細胞含有溶液を、5.5%デキストラン40、10%HSA、および5%DMSOを
含む溶液で、1ミリリットル当たり約1~50×10、1~40×10、1~30×
10、1~20×10、1~15×10、または1~10×10個の細胞に希釈
するステップ、(d)細胞を凍結保存するステップ、(e)細胞を解凍するステップ、お
よび(f)細胞含有溶液を10%デキストラン40で1:1~1:11(v/v)に希釈
するステップを含む方法によって作製する。特定の実施形態では、ステップ(c)の前記
希釈は、1ミリリットル当たり約15×10個の細胞である。特定の実施形態では、ス
テップ(c)の前記希釈は、1ミリリットル当たり約10±3×10個の細胞である。
特定の実施形態では、ステップ(c)の前記希釈は、1ミリリットル当たり約7.5×1
個の細胞である。
【0234】
別の実施形態では、細胞を含む組成物は、(a)複数の細胞を遠心分離にかけて細胞を
回収するステップ、(b)細胞を5.5%デキストラン40に再懸濁するステップ、(c
)細胞を遠心分離にかけて細胞を回収するステップ、(d)細胞を、10%HSAを含む
5.5%デキストラン40溶液に再懸濁するステップ、(e)細胞を70μMフィルター
で濾過するステップ、(f)、細胞を5.5%デキストラン40、10%HSA、および
5%DMSOで、1ミリリットル当たり約1~50×10、1~40×10、1~3
0×10、1~20×10、1~15×10、または1~10×10個の細胞に
希釈するステップ、(g)細胞を凍結保存するステップ、(h)細胞を解凍するステップ
、および(i)細胞を10%デキストラン40で1:1~1:11(v/v)に希釈する
ステップを含む方法によって作製する。特定の実施形態では、ステップ(f)の前記希釈
は、1ミリリットル当たり約15×10個の細胞である。特定の実施形態では、ステッ
プ(f)の前記希釈は、1ミリリットル当たり約10±3×10個の細胞である。特定
の実施形態では、ステップ(f)の前記希釈は、1ミリリットル当たり約7.5×10
個の細胞である。他の特定の実施形態では、細胞数が1ミリリットル当たり約10±3×
10個未満の細胞である場合、濾過は任意選択である。
【0235】
本明細書に記載の組成物、例えば単離胎盤細胞を含む医薬組成物は、本明細書に記載の
任意の単離胎盤細胞を含むことができる
【0236】
細胞製品の投与に適した他の注射可能な製剤を使用することができる。
【0237】
一実施形態では、医薬組成物は、実質的、または完全に非母型起源である、すなわち胎
児の遺伝子型を有する、例えば少なくとも約90%、95%、98%、99%または約1
00%が非母型起源である、単離胎盤細胞を含む。例えば、一実施形態では、医薬組成物
は単離胎盤細胞の集団を含み、それらはCD200およびHLA-G;CD73
CD105、およびCD200、CD200およびOCT-4;CD73、C
D105およびHLA-G;CD73およびCD105であり、胚様体またはO
CT-4の形成を可能にする条件下で前記胎盤細胞集団を培養すると、前記単離胎盤細
胞集団を含む胎盤細胞の前記集団中の1つまたは複数の胚様体の形成を容易にし、胚様体
または前述の任意の組合せの形成を可能にする条件下で前記胎盤細胞集団を培養すると、
前記単離胎盤細胞を含む胎盤細胞の前記胎盤細胞集団中の1つまたは複数の胚様体の形成
を容易にし、少なくとも70%、80%、90%、95%、または99%の前記胎盤細胞
は非母型起源である。別の実施形態では、医薬組成物は単離胎盤細胞の集団を含み、それ
らはCD10、CD105およびCD34;CD10、CD105、CD20
およびCD34;CD10、CD105、CD200、CD34およびC
D90またはCD45の少なくとも1つ;CD10、CD90、CD105
CD200、CD34およびCD45;CD10、CD90、CD105
CD200、CD34およびCD45;CD200およびHLA-G;CD7
、CD105、およびCD200;CD200およびOCT-4;CD73
、CD105、およびHLA-G;CD73およびCD105であり、胚様体
;OCT-4の形成を可能にする条件下で前記胎盤細胞集団を培養すると、前記単離胎
盤細胞を含む胎盤細胞の前記集団中の1つまたは複数の胚様体の形成を容易にし、胚様体
;CD117、CD133、KDR、CD80、CD86、HLA-A,B,
、HLA-DP,DQ,DRおよび/またはPDL1の1つまたは複数;または
前述の組合せの形成を可能にする条件下で前記胎盤細胞集団を培養すると、前記単離胎盤
細胞を含む胎盤細胞の前記集団中の1つまたは複数の胚様体の形成を容易にし、少なくと
も70%、80%、90%、95%、または99%の前記単離胎盤細胞は非母型起源であ
る。具体的な実施形態では、医薬組成物は、胎盤から得られない幹細胞をさらに含む。
【0238】
本明細書で提供する組成物、例えば医薬組成物中の単離胎盤細胞は、1ドナー由来、ま
たは複数のドナー由来の胎盤細胞を含むことができる。単離胎盤細胞は、目的のレシピエ
ントと完全にHLA適合状態、または部分的もしくは完全にHLAミスマッチであってよ
い。
【0239】
5.9.3. 単離胎盤細胞を含むマトリクス
本明細書でさらに提供するのは、マトリクス、ヒドロゲル、骨格などを含み、単離胎盤
細胞、または単離胎盤細胞の集団を含む組成物である。このような組成物は、脳もしくは
CNS内またはその周辺の血流の混乱の治療用に、液体懸濁液中の細胞の代わりに、また
はそれらに加えて使用することができる。
【0240】
本明細書に記載の単離胎盤細胞は、天然マトリクス、例えば羊膜材料などの胎盤生体材
料に接種することができる。このような羊膜材料は、例えば、哺乳動物胎盤から直接切開
した羊膜、固定または熱処理した羊膜、実質的に乾燥した(すなわち20%未満のH
)羊膜、絨毛膜、実質的に乾燥した絨毛膜、実質的に乾燥した羊膜および絨毛膜などであ
ってよい。その上に単離胎盤細胞を接種することができる好ましい胎盤生体材料は、参照
によりその開示が全て本明細書に組み込まれる、Hariri、米国出願公開第2004
/0048796号に記載されている。
【0241】
本明細書に記載の単離胎盤細胞は、例えば注射に適したヒドロゲル溶液中に懸濁するこ
とができる。このような組成物に適したヒドロゲルには、RAD16などの自己集合性ペ
プチドがある。一実施形態では、これらの細胞を含むヒドロゲル溶液は、例えばモールド
中に硬化させて、移植用にその中に分散した細胞を有するマトリクスを形成することが可
能である。このようなマトリクス中の単離胎盤細胞は、移植前に細胞が分裂によって増殖
するように培養することもできる。ヒドロゲルは、例えば、共有、イオン、または水素結
合を介して架橋してゲルを形成する水分子を捕捉する三次元開放面格子構造を生成する有
機ポリマー(天然または合成)である。ヒドロゲル形成物質には、イオンによって架橋す
る、アルギン酸およびその塩、ペプチド、ポリホスファジン、およびポリアクリレートな
どの多糖、またはそれぞれ温度またはpHによって架橋する、ポリエチレンオキシド-ポ
リプロピレングリコールブロックコポリマーなどのブロックポリマーがある。いくつかの
実施形態では、ヒドロゲルまたはマトリクスは生分解性である。
【0242】
いくつかの実施形態では、製剤はin situ重合ゲルを含む(例えば、参照により
その開示が全て本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開2002/0022676、
Ansethら、J Control Release、78(1~3):199~20
9(2002);Wangら、Biomaterials、24(22):3969~8
0(2003を参照)。
【0243】
いくつかの実施形態では、荷電側基を有するポリマー、その一価イオン塩は、水、緩衝
塩溶液、またはアルコール水溶液などの水溶液に少なくとも一部分が溶ける。カチオンと
反応することができる酸性側基を有するポリマーの例は、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(
アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、ポ
リ(酢酸ビニル)、およびスルホン化ポリスチレンなどのスルホン化ポリマーである。ア
クリル酸またはメタクリル酸とビニルエーテルモノマーまたはポリマーの反応によって形
成される酸性側基を有するコポリマーを使用することもできる。酸性基の例は、カルボン
酸基、スルホン酸基、ハロゲン化(好ましくはフッ素化)アルコール基、フェノールOH
基、および酸性OH基である。
【0244】
本明細書に記載の単離胎盤細胞またはその同時培養物は、三次元構造または骨格に接種
しin vivoに移植することができる。例えば組織形成を刺激する、任意の1つまた
は複数の増殖因子、細胞、薬剤または他の成分と組み合わせて、このような構造に移植す
ることができる。
【0245】
使用することができる骨格の例には、不織マット、多孔質発泡体、または自己集合性ペ
プチドがある。不織マットは、グリコール酸と乳酸の合成吸収性コポリマー(例えば、P
GA/PLA)(VICRYL、Ethicon、Inc.、Somerville、N
.J.)からなる線維を使用して形成することができる。凍結-乾燥、または凍結乾燥(
例えば、米国特許第6,355,699号参照)などの方法によって形成される、ポリ(
ε-カプロラクトン)/ポリ(グリコール酸)(PCL/PGA)コポリマーで構成され
る発泡体を、骨格として使用することもできる。
【0246】
別の実施形態では、単離胎盤細胞を、例えばPGA、PLA、PCLコポリマーまたは
ブレンド、またはヒアルロン酸などの生体吸収性材料からできたマルチフィラメント糸で
あってよいフェルトに接種する、またはそれと接触させることが可能である。
【0247】
本明細書に記載の単離胎盤細胞は、別の実施形態において、複合構造であってよい発泡
体骨格に接種することができる。このような発泡体骨格は、修復、交換または増強される
身体中の特異的構造の一部分の形状などの、有用な形状に成形することができる。いくつ
かの実施形態では、細胞の接種の前に、構造を例えば0.1Mの酢酸、次にポリリシン、
PBS、および/またはコラーゲンでのインキュベーションで処理して細胞接着性を高め
る。マトリクスの外部表面を修飾して、マトリクスをプラズマコーティングすること、ま
たは1つまたは複数のタンパク質(例えば、コラゲナーゼ、弾性線維、細網線維)、糖タ
ンパク質、グリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン硫酸、コンドロイチン-4-硫酸、
コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸など)、細胞マトリクス、お
よび/またはゼラチン、アルギン酸塩、寒天、アガロース、および植物ゴムなどだけには
限らないが、これらなどの他の物質の添加などによって、細胞の接着もしくは増殖および
組織の分化を改善することができる。
【0248】
いくつかの実施形態では、骨格は、それを非血液凝固性にする物質を含む、またはそれ
らで処理する。これらの処理および物質は、内皮増殖、移動、および細胞外マトリクス沈
着を促進および持続することもできる。これらの物質および処理の例には、ラミニンおよ
びIV型コラーゲンなどの基底膜タンパク質などの天然物質、EPTFE、およびPUR
SPAN(商標)(The Polymer Technology Group、In
c、Berkeley、Calif.)などのセグメント化ポリウレタンウレアシリコー
ンなどの合成物質があるが、これらだけには限られない。骨格はヘパリンなどの抗血栓剤
を含むこともでき、単離胎盤細胞を接種する前に、骨格を処理して表面電荷を変えること
もできる(例えば、プラズマコーティング)。
【0249】
一実施形態では、単離胎盤細胞を、約0.5×10個~約8×10個の細胞/mL
で適切な骨格に接種する、またはそれと接触させる。
【0250】
5.10 不死化胎盤細胞系
哺乳動物胎盤細胞は、増殖促進遺伝子、すなわち適切な条件下で、増殖促進タンパク質
の生成および/または活性が外部因子により制御可能であるように、トランスフェクト細
胞の増殖を促進するタンパク質をコードする遺伝子を含有する、任意の適切なベクターを
用いたトランスフェクションによって、条件付きで不死化することができる。好ましい実
施形態では、増殖促進遺伝子は、v-myc、N-myc、c-myc、p53、SV4
0高分子T抗原、ポリオーマ高分子T抗原、E1aアデノウイルスまたはヒトパピローマ
ウイルスのE7タンパク質だけには限られないが、これらなどの癌遺伝子である。
【0251】
増殖促進タンパク質の外部制御は、外部制御可能なプロモーター、例えばトランスフェ
クト細胞の温度または細胞と接触する培地の組成を改変することによって、その活性を制
御することができるプロモーターの制御下に、増殖促進遺伝子を置くことによって実施す
ることができる。一実施形態では、テトラサイクリン(tet)制御遺伝子発現系を利用
することができる(Gossenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA8
9:5547~5551、1992;Hoshimaruら、Proc.Natl.Ac
ad.Sci.USA93:1518~1523、1996を参照)。tetの不在下に
おいて、このベクター内のtet制御転写活性化因子(tTA)は、phCMV-1、t
etオペレーター配列と融合したヒトサイトメガロウイルス由来の最小プロモーターから
の転写を強く活性化する。tTAは、Escherichia coilのトランスポゾ
ン-10由来tet耐性オペロンのリプレッサー(tetR)と単純ヘルペスウイルスの
VP16の酸性ドメインの融合タンパク質である。低い、非毒性濃度のtet(例えば、
0.01~1.0μg/mL)は、tTAによる転写活性化をほぼ完全になくす。
【0252】
一実施形態では、ベクターは、選択可能マーカー、例えば薬剤耐性を与えるタンパク質
をコードする遺伝子をさらに含有する。細菌ネオマイシン耐性遺伝子(neo)は、本
発明の方法内で利用することができる1つのこのようなマーカーである。neoを有す
る細胞は、例えば増殖培地に100~200μg/mLのG418を加えることなどの、
当業者に知られている手段によって選択することができる。
【0253】
レトロウイルス感染だけには限らないが、これを含めた当業者に知られている様々な手
段のいずれかによって、トランスフェクションを実施することができる。一般に、ベクタ
ー用に生産者細胞系から回収した条件付き培地とN2サプリメントを含有するDMEM/
F12の混合物とのインキュベーションによって、細胞培養物をトランスフェクトするこ
とができる。例えば、前に記載したように調製した胎盤細胞培養物は、1体積の条件付き
培地および2体積のN2サプリメント含有DMEM/F12における約20時間のインキ
ュベーションによって、例えば5日後にin vitroで感染させることが可能である
。次いで選択可能マーカーを有するトランスフェクト細胞を、前に記載したように選択す
ることができる。
【0254】
トランスフェクション後、増殖を可能にする、例えば少なくとも30%の細胞が24時
間の間に倍化するのが可能である表面で培養物を継代する。基質は、ポリオルニチン(1
0μg/mL)および/またはラミニン(10μg/mL)でコーティングされた組織培
養プラスチックからなるポリオルニチン/ラミニン基質、ポリリシン/ラミニン基質また
はフィブロネクチンで処理した表面であることが好ましい。次いで培養物を3~4日毎に
増殖培地に供給し、増殖培地には1つまたは複数の増殖促進因子を補充してよい、または
補充しなくてよい。培養物が50%未満の集合状態であるとき、増殖促進因子を増殖培地
に加えることができる。
【0255】
条件付き不死化胎盤細胞系は、80~95%の集合状態時に、標準的な技法を使用して
、トリプシン処理などによって継代することができる。いくつかの実施形態では、約20
代の継代まで、(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子を含有する細胞にG418を加えるこ
とによって)選択を維持することが有益である。細胞は長期の貯蔵用に液体窒素中に凍結
することもできる。
【0256】
クローン細胞系は、前に記載したように調製した条件付き不死化ヒト胎盤細胞系から単
離することができる。一般に、このようなクローン細胞系は、標準的な技法を使用して、
限界希釈またはクローニングリングの使用などによって単離し、増殖することができる。
クローン細胞系は、一般に前に記載したように供給し継代することができる。
【0257】
必要はないがクローンであってよい、条件付き不死化ヒト胎盤細胞系は、分化を容易に
する培養条件下で増殖促進タンパク質の生成および/または活性を抑制することによって
、一般に分化を誘導することができる。例えば、増殖促進タンパク質をコードする遺伝子
が外部制御可能なプロモーターの制御下にある場合、条件、例えば温度または培地の組成
を改変して、増殖促進遺伝子の転写を抑制することができる。前に論じたテトラサイクリ
ン制御型遺伝子発現系に関して、テトラサイクリンを加えて増殖促進遺伝子の転写を抑制
することによって、分化を実施することができる。一般に、4~5日間で1μg/mLの
テトラサイクリンが分化を開始するのに十分である。さらなる分化を促進するために、追
加的な作用物質を増殖培地に含めることができる。
【0258】
5.11 キット
別の態様において、本明細書で提供するのは、CNS内またはその周辺の血流の混乱を
有する個体、例えば脳卒中を有する個体の治療に適したキットであって、残りのキット含
有物とは別に容器中に、組織培養プラスチック接着性多分化能胎盤細胞、例えば胎盤幹細
胞または胎盤多分化能細胞、およびそれらの単離集団、例えば、前のセクション5.4.
2に記載の細胞、および使用説明書を含むキットである。胎盤幹細胞は、薬剤として許容
される溶液、例えば頭蓋内投与に適した溶液または静脈内投与に適した溶液中に与えるこ
とが好ましい。特定の実施形態では、胎盤幹細胞または胎盤多分化能細胞は、本明細書に
記載のCD10、CD34、CD105胎盤細胞のいずれか、例えばCD10
CD34、CD105、CD200胎盤細胞である。
【0259】
特定の実施形態では、キットは、個体への胎盤細胞の送達を容易にする1つまたは複数
の成分を含む。例えば、特定の実施形態では、キットは、個体への胎盤細胞の頭蓋内送達
を容易にする成分を含む。このような実施形態では、キットは、例えば、個体への細胞の
送達に適したシリンジおよびニードル、罹患したCNS組織を目に見える状態にすること
ができる放射性または非放射性化合物(例えばコバルト55)などを含むことができる。
このような実施形態では、胎盤細胞はバッグ中のキット内、または1つまたは複数のバイ
アル中に含有することができる。特定の他の実施形態では、キットは、個体への胎盤細胞
の静脈内または動脈内送達を容易にする成分を含む。このような実施形態では、胎盤細胞
は例えばボトルまたはバッグ(例えば、最大約1.5Lの細胞含有溶液を含有することが
できる血液バッグまたは類似のバッグ)内に含有することができ、キットはさらに、個体
への細胞の送達に適したチューブおよびニードルを含む。
【0260】
さらにキットは、個体における痛みまたは炎症を低減する1つまたは複数の化合物(例
えば、鎮痛剤、ステロイドまたは非ステロイド系抗炎症化合物など)を含むことができる
。キットは、抗菌または抗ウイルス化合物(例えば、1つまたは複数の抗生物質)、個体
における不安を低減する化合物(例えば、アルプラゾラム)、個体における免疫応答を低
減する化合物(例えば、シクロスポリンA)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、ロ
ラタジン、デスロラタジン、クエチアピン、フェキソフェナジン、セチリジン、プロメタ
ジン、クロルフェニラミン、レボセチリジン、シメチジン、ファモチジン、ラニチジン、
ニザチジン、ロキサチジン、ラフチジンなど)を含むこともできる。
【0261】
さらにキットは、送達用の個体の調製を容易にする、または胎盤細胞を投与する結果と
しての個体における感染の可能性を低減する、使い捨て、例えば滅菌ワイプ、使い捨て紙
製品、グローブなどを含むことができる。
【実施例0262】
6.1 頭蓋内投与する単離胎盤細胞を使用する脳卒中の治療
この実施例は、脳もしくはCNS内またはその周辺の血流の混乱と関係がある症状の治
療において投与した、単離胎盤細胞の投与の有効性を実証する。
【0263】
CD34、CD10、CD105、CD200組織培養プラスチック接着性胎
盤細胞を、例えば30分間約1~約2mg/mlでコラゲナーゼIを使用した酵素による
消化、次に37℃において10分間約0.25%の濃度でトリプシンを用いた消化によっ
て得た。Sprague-Dawleyラットを脳卒中モデルとして使用した。ラットは
、脳卒中の影響および脳卒中症状に対する様々な療法の影響を試験するための、確立した
モデル動物である。例えば、Chenら、「A Model of Focal Isc
hemic Stroke in the Rat:Reproducible Ext
ensive Cortical Infarction」、Stroke17(4):
738~743(1986)を参照。10匹の動物を実験当たりで使用した。
【0264】
MCA脳卒中外科手術:全ての外科手術手順は無菌条件下で行った。動物にはエクテシ
ンで麻酔をかけ(300mg/kg、腹腔内)、反射痛に関して調べた。MCA閉塞外科
手術は深い麻酔の下で動物に実施した。MCA縫合技法は、頸動脈を通してフィラメント
を挿入しMCAの接合部に到達させ、それによって総頸動脈から、およびウィリス輪から
の血流を遮断することを含む。右総頸動脈を確認し、腹側正中頸部切開によって単離した
。縫合糸サイズは4-0であり、滅菌済み、非吸収性の糸でできており(Ethicon
、Inc.、Somerville、NJ)、縫合糸先端の直径はラバーセメントを使用
して24~26ゲージサイズまで細めた。約15~17mmのフィラメントを、外部頸動
脈と内部頸動脈の接合部からに挿入してMCAを遮断する。右MCAを1時間閉塞した。
公開済みの試験に基づくと、MCAの1時間の閉塞は最大の梗塞をもたらす。Borlo
nganら、Neurorep.9(16):3615~3621(1998);Bor
longanら、Pharmacol.Biochem.Behav.52(1):22
5~229(1995);Borlonganら、Physiol.Behav.58(
5):909~917(1995)を参照。加熱パッドおよび直腸温度計を使用して正常
限界内に体温を維持した。首尾良い閉塞および再灌流を決定するため、レーザードロップ
を使用した。レーザードロッププローブをMCAの遠位端に置いて、閉塞前、最中および
後の脳の血流を測定した。
【0265】
接着性胎盤細胞を、虚血後第2日に虚血部位への直接頭蓋内注射(5マイクロリットル
中に約400,000個の細胞)によって投与した。ラットには、賦形剤(10%デキス
トランおよび5%ヒト血清アルブミン)単独、4×10個の生存細胞、10mg/kg
シクロスポリンAと併用して4×10個の生存細胞、または4×10個の非生存細胞
およびシクロスポリンAを投与した。
【0266】
虚血後第7および14日に、動物を脳卒中誘導型運動非対称性に関してアッセイした。
運動非対称性は高度身体変動試験(EBST)またはベダーソン試験を使用して評価した
。Borlongan & Sanberg、J.Neurosci15(7):537
2~5378(1995)を参照。EBST中、その尾に触れることによって動物を持ち
上げ、変動挙動の頻度および方向を記録した。ラットはプレキシガラス箱中に置き、約2
分間馴化させた。ラットの鼻が表面から約1インチであるように、ラットは尾基底部から
約1インチに保った。ラットは垂直軸、または右または左への頭部の変動が10°を超え
ないとして定義した中立位置に保った。ラットが垂直軸から右または左にその頭部を動か
したときは常に変動を記録し、動物の頭部が垂直軸からそれぞれ右または左に10°以上
動いたとき、右の変動または左の変動を数えた。ラットが特定の側にその試みを強めたと
きは、1回の変動のみを記録した。1回の変動後、動物を再度プレキシガラス箱中に置き
、再試験前に30秒間自由に運動させた。これらのステップはそれぞれの動物に20回繰
り返した(条件当たり10匹の動物)。
【0267】
右および左の変動数と同様に、変動の合計数を数えた。変動数が70%以上であったと
き、変動挙動は偏りがあると考えた。結果は二元配置分散分析(ANOVA)を使用して
分析し、Tukey HSD(純有意差)検定を使用して事後検定を実施した。
【0268】
ラットにおける胎盤細胞誘導型の神経障害の修復も、感覚運動課題を測定するベダーソ
ン神経試験を使用して評価した。Bedersonら、Stroke17:472~6(
1986);Altumbabic、Stroke29:1917~22(1998)を
参照。
【0269】
ベダーソン試験用に、それぞれのラットの神経値を、(a)自発性同側旋回の観察、0
(旋回なし)~3(連続的旋回)で等級付け、(b)反対側後肢後退、それを2~3cm
側方に動かした後に後肢を入れ替える動物の能力を測定、0(すぐに入れ替え)~3(数
分後に入れ替えまたは入れ替えなし)で等級付け、(c)平均台歩行能力、ラットが2.
4cm幅、80cm長の平均台を容易に横断する0~ラットが10秒間平均台上に留まる
ことができない3で等級付け、および(d)両前肢の握力、2mm径の鋼棒をつかむ能力
を測定、ラットが正常な前肢の握力挙動を有する0~ラットが前肢で握ることができない
3で等級付けを含む4試験を使用して得た。評価第7日および第14日に約15分の間に
わたり実施した全4試験からの値を加えて、低い値が神経学的に正常なラットを示す0~
12の神経障害値を得た。
【0270】
結果
第0日、虚血誘導の直前に、全ての動物はほぼ正常な(偏りがない)変動挙動を示した
図1、ベースライン)。虚血後第2日、胎盤細胞投与の日に、全ての動物は、予想通り
、ほぼ100%の変動挙動の虚血誘導性の偏りを示した(図1)。第7日および第14日
に、生存胎盤細胞を与えた動物は有意な改善を示し、それぞれ約65%および60%の変
動の偏りを実証した(図1、第7日および第14日)。非生存胎盤細胞およびシクロスポ
リンA、または賦形剤のみを与えた動物は統計上有意な改善を示さなかった。
【0271】
第0日、虚血誘導前に評価したラットは、いずれも神経学的に正常であり、ベダーソン
試験においてゼロの障害値を与えた(図2、ベースライン)。虚血誘導後第2日、単離胎
盤細胞を投与した日に、賦形剤のみを与えたラットは約2.5の全体平均障害値を示した
図2、第2日)。第7日および第14日までに、胎盤細胞を与えたラットは神経障害値
の統計上有意な改善を示し、約2.5の値からそれぞれ約1.7および1.1の値に改善
した。EBSTと同様に、賦形剤のみ、または非生存胎盤細胞およびシクロスポリンAを
与えたラットは神経障害値の統計上有意な改善を示さなかった。
【0272】
結論として、神経障害の2つの試験によって、虚血の承認された動物モデルにおける虚
血誘導後第2日での4×10個のヒト胎盤細胞の投与は、モデル動物における神経機能
を有意に改善することが実証された。胎盤細胞に対する任意の宿主免疫反応を抑制するた
めのシクロスポリンAの投与は、胎盤細胞による神経学的改善に必要であるようではなか
った。
【実施例0273】
6.2 静脈内投与する単離胎盤細胞を使用する脳卒中の治療
この実施例は、脳もしくはCNS内またはその周辺の血流の混乱と関係がある症状、例
えば低酸素障害もしくは酸素欠乏障害の治療において静脈内投与した、単離胎盤細胞の投
与の有効性を実証する。例えば、本明細書に示す結果は、胎盤細胞の静脈内投与は、非生
存ヒト胎盤細胞を与えた動物と比較して生存ヒト胎盤細胞を投与した動物において、運動
試験と神経試験の両方での用量依存的挙動回復を促進することを示す。
【0274】
単離CD34、CD10、CD105、CD200組織培養プラスチック接着
性胎盤細胞を、本明細書で他の箇所に記載するように酵素による消化によって得た。Sp
rague-Dawleyラットを脳卒中モデルとして使用し、中大脳動脈閉塞を前の実
施例1に記載したのと同様に実施した。閉塞後第2日に、対象ラットに、約5μL賦形剤
(10%デキストランおよび5%ヒト血清アルブミン)中の4×10、1×10、4
×10、または8×10個の胎盤細胞、または対照として賦形剤中の非生存細胞を投
与した。ラットは外科手術前の第0日、および外科手術後第2、14、28、56および
84日に、前の実施例1に記載したのと同様に高度身体変動試験(EBST)によって評
価した。改変型ベダーソン試験を実施し、その中で対象ラットは、(1)前肢後退、それ
を2~3cm側方に動かした後に前肢を入れ替える動物の能力を測定、0(すぐに入れ替
え)~3(数分後に入れ替えまたは入れ替えなし)で等級付け、(2)平均台歩行能力、
ラットが2.4cm幅、80cm長の平均台を容易に横断する0~ラットが10秒間平均
台上に留まることができない3で等級付け、および(3)両前肢の握力、2mm径の鋼棒
をつかむ能力を測定、ラットが正常な前肢の握力挙動を有する0~ラットが前肢で握るこ
とができない3で等級付けに関して評価した。それぞれの評価日に約15分の間にわたり
実施した全3試験からの値を加えて、平均神経障害値を得た(最大可能値、3試験で割っ
た9ポイント=3)。EBSTおよびベダーソン試験の結果は、前の実施例1に記載した
のと同様に二元配置分散分析(ANOVA)Tukey HSD検定によって評価した。
【0275】
ラットは第84日に検死用に屠殺し、胎盤細胞の生着および分化を評価した。簡単に言
うと、20μmの低温保持切片組織を40倍の倍率で調べ、PCベースのイメージツール
コンピュータプログラムを使用してデジタル化した。脳切片はブラインドコード化した。
組織切片は標準的なABC法を使用して処理した。ヒト胎盤由来幹細胞移植片生着に関す
る細胞の生着および分化指数を、げっ歯類細胞表面マーカーまたは他のげっ歯類タンパク
質と交差反応しないヒト特異的抗体HuNuを使用して評価した。細胞移植片における神
経表現型の発現を検出するために、神経マーカーMAP2を使用する免疫組織化学分析を
使用した。他の脳切片をGFAPおよびO4に関して処理し移植細胞のグリアおよび稀突
起神経膠細胞の表現型の発現を明らかにした。
【0276】
ヒト胎盤由来細胞の静脈内移植は免疫抑制を必要としなかった。
【0277】
この試験中に含めた全ての動物はベースラインで正常な挙動を示し、移植前の脳卒中後
第2日で首尾良い脳虚血誘導の基準に達した。移植後試験の最も初期の時間地点、脳卒中
後第7日で開始し、挙動試験は、非生存ヒト胎盤由来細胞を与えた脳卒中動物と比較して
、生存ヒト胎盤由来細胞を与えた脳卒中動物において運動機能と神経機能の両方の用量依
存的な有意な改善を明らかにした。脳卒中後第84日までの時間にわたり、生存ヒト胎盤
由来細胞を与えた脳卒中動物において両機能のさらなる改善が増大する傾向があった。非
生存細胞を与えた動物を含めていずれの移植動物においても、脳卒中誘導型挙動障害の検
出可能な悪化はなかった。移植成熟期中、非生存細胞を与えた動物において一般的な自然
挙動回復の傾向があったが、これは非特異的であり、移植外科手術前(すなわち、脳卒中
後第2日)と比較して非移植仲介の機能改善は統計的有意に達しなかった。
【0278】
高用量の800万個の生存細胞を与えた脳卒中動物は、移植後初期と同様に運動機能と
神経機能の両方の最も確かな改善を明らかに示した。しかしながら、経時的に、低用量の
生存細胞を与えた脳卒中動物は、高用量の800万個の生存細胞に概して匹敵する挙動障
害の全体的な低下も示した。
【0279】
第0日、虚血誘導前に評価したラットは、いずれも神経学的に正常であり、ゼロの障害
値を与えた(図3、ベースライン)。虚血後第2日、胎盤幹細胞投与の日に、全ての動物
は、予想通り、ほぼ100%の変動挙動の虚血誘導性の偏りを示した(図3)。生存単離
胎盤細胞を与えた動物は、対照と比較して第7、14、28、56および84日のそれぞ
れに関してEBSTにおいて有意な用量依存性の改善を示し、全ての日に関して4×10
と8×10個の単離胎盤細胞、および第7日に関して4×10×1×10個の単
離胎盤細胞以外(p=0.0454)、用量間で有意な改善(p<0.01)をさらに示
した。図3参照。非生存単離胎盤細胞を与えた動物は、対照と比較して統計上有意な改善
を示さなかった。
【0280】
ベダーソン試験に関して、第0日、虚血誘導前に評価したラットは、いずれも神経学的
に正常であり、ゼロの障害値を与えた(図4、ベースライン)。虚血誘導後第2日、単離
胎盤細胞を投与した日に、非生存細胞のみを与えたラットは約2.5~3.0の全体平均
障害値を示した(図2、第2日)。第7、14、28、56および84日で、単離胎盤細
胞を与えたラットは、非生存細胞を与えたラットと比較して神経障害値の統計上有意な改
善を示した(それぞれの場合p<0.01)。改善は第7日(4×10と8×10
よび1×10と8×10)、およびそれぞれ第14および28日(4×10と4×
10および4×10と8×10)で、さらに有意に(p<0.01)用量依存性で
あった。EBSTと同様に、賦形剤のみ、または非生存胎盤細胞およびシクロスポリンA
を与えたラットは神経障害値の統計上有意な改善を示さなかった。
【0281】
したがって、単離胎盤細胞の静脈内投与は、運動試験と神経試験の両方において用量依
存性の挙動回復を促進する。機能改善は投与後第7日までの初期は明らかであり、3ヶ月
の投与後期間にわたりより良い回復の傾向が増大した。対象ラットのいずれにおいても、
明らかな悪影響の挙動副作用は観察しなかった。
【0282】
したがって、本明細書に示す結果は、脳内または脳周辺の血流の混乱と関係がある症状
を治療するための、単離胎盤細胞の静脈内投与の安全性および有効性を実証する。例えば
、いずれの移植動物も、脳卒中誘導型の挙動異常のいかなる悪化も示さない。非生存ヒト
胎盤由来細胞を与えた動物と比較して、生存細胞を与えた動物は、虚血領域中で脳卒中誘
導型の挙動障害の有意な改善および宿主細胞の有意なレスキューを示した。さらに、移植
動物のいずれにおいても腫瘍または異所性組織形成は検出しなかった。
【実施例0283】
6.3 静脈内経路により胎盤細胞を使用する脳卒中の治療-他の神経試験による評価
この実施例は、高度変動試験およびベダーソン試験以外の神経試験によって評価した、
胎盤幹細胞を使用する脳卒中の治療の有効性を実証する。
【0284】
6.3.1 神経試験
中大脳動脈閉塞外科手術を、以下のようにウィスターラットにおいて実施した。オスの
ウィスターラット(270~300g、2~3m)に、外科手術用ナイロンフィラメント
を内頸動脈(ICA)に入れてMCAの起点を遮断することによって誘導した、2時間の
中大脳動脈閉塞(MCAo)を施した。簡単に言うと、ジャー内において前麻酔薬2%イ
ソフルランでラットに麻酔をかけ、改変型FLUOTEC3吸入器(Fraser Ha
rlake、Orchard Park、New York)と結びつきそれと共に調節
されるフェースマスクを使用して、2:1NO:O混合物中の1.5%イソフルラン
を自然吸入させた。フィードバック制御温水システム(再循環パッドおよびKモジュール
、直腸内T型熱電対によってモニタリングした)を使用して、外科手術手順中は直腸温度
を37℃に保った。首の中心部を1cm切開し、右総頸動脈(CCA)、外部頸動脈(E
CA)、および内部頸動脈(ICA)は手術用顕微鏡(Carl Zeiss、Inc、
Thornwood、NY)下に曝した。CCAとICAは顕微鏡手術用クリップ(Co
dman & Shurtleff、Inc、Randolf、MA)を使用して一時的
に固定した。炎付近での加熱によってその先端が丸くなっている4-0ナイロン縫合糸を
、小穴を通してECAに挿入した。顕微鏡手術用クリップは除去した。動物の重量に従い
決定した長さのナイロン縫合糸を、縫合糸がMCAの起点を遮断するまでECAからIC
Aの内腔へ軽く入れた。ナイロンフィラメントはICA内に2時間(h)保持し、首の切
開部分を閉じた。動物はそれらのケージに移して目覚めさせた。2時間のMCAo後、動
物にイソフルランでラットに再度麻酔をかけ、先端がECAの内腔から出るまでフィラメ
ントを離脱させることによって、血流の回復を実施した。次いで切開部分を閉じた。
【0285】
接着性CD10、CD34、CD105、CD200組織培養プラスチック接
着性胎盤細胞を静脈内経路(尾静脈注射)によって投与した。MCAoを施した動物を、
5群:(1)細胞対照としてヒト皮膚線維芽細胞、(2)デキストラン対照、(3)1×
10個の胎盤細胞用量、(4)4×10個および(5)8×10個の細胞の1つに
無作為化し、MCAo後第1日で投与した。挙動試験(接着性試験、フットフォルト試験
およびmNSS)は、試験治療前にMCAo後第1日(ベースライン)、およびMCAo
後第7、14、21、28、42、および56日で実施した。機能回復に対する胎盤細胞
の用量応答の影響は、以下に記載した3つの挙動試験から測定した。
【0286】
修正神経系重度値(mNSS、表1)を0~18(正常値0;最大障害値18、表1)
のスケールで等級付けする。試験を実施することができない、または反射試験がない1つ
のスコアポイントを観察する。したがって値が高いほど、障害はより重度である。
【0287】
【表1】
【0288】
接着性除去の体性感覚試験:全てのラットは試験環境に打ち解けていた。最初の試験で
は、接着剤付き紙片の2つの小さな塊(等しい大きさ、1ヶ月以内の試験用に113.1
mm、1ヶ月後の試験用に56.6mm)を、それぞれの前脚の手根関節上の末端放
射状領域を占める両面触刺激として使用した。次いでラットはそれらのケージに戻した。
前脚からそれぞれの刺激を除去する時間は、1日当たり5回記録した。
【0289】
フットフォルト試験:2.5cm×2.5cm径の開口部を有する、固いベースフロア
より2.5cm高い、グリッドフロア(45cm×30cm)に動物を置いた。動物はそ
れらの脚をワイヤーフレーム上に置きながらグリッドに移動する傾向がある。動物が不正
確に脚を置いたとき、前脚はグリッド中の開口部の1つを介して落ちる。脚がワイヤー間
に落ちるまたは滑るとき、フットフォルトとしてこれを記録した。合計100のステップ
(それぞれの前脚の動き)を数え、左前脚に関するフットフォルトの合計数を記録し、合
計ステップに対する左脚のフットフォルトの割合を決定した。
【0290】
結果:
修正神経系重度値(mNSS):4.0×10個の細胞で治療した動物群は、第7~
56日に賦形剤対照と比較してmNSS値の改善を実証した(p<0.05)(図5)。
【0291】
接着性除去の体性感覚試験:4.0×10個の細胞で治療した動物群は、治療後第1
4日に賦形剤対照または細胞対照と比較して、接着性除去の体性感覚試験において改善を
示し(p<0.05)、改善は試験期間を通じて持続した(図6)。さらに、8.0×1
個の細胞で治療した動物は、治療後第42日と56日に改善を示した(p<0.05
)。
【0292】
フットフォルト試験:4.0×10個の細胞で治療した動物群は、治療後第7日に賦
形剤対照または細胞対照と比較して改善を実証し、改善は試験期間を通じて続いた(図7
)。
【0293】
前述の試験に基づいて、脳卒中の治療は、線維芽細胞対照およびデキストラン対照と比
較して、ラットにおける脳卒中後の機能転帰を用量依存的に改善すると決定した。この試
験で使用したラットにおける胎盤幹細胞治療の最適用量は4×10であると決定した。
【0294】
6.3.2 増殖およびシナプス可塑性試験
胎盤幹細胞の投与が新血管新生を容易にしたかどうかを評価するために、5-ブロモ-
2-デオキシウリジン(BrdU;50mg/kg、0.007N NaOH生理食塩水
中、Sigma、St、Louis MO))を、MCAo後24時間から開始して、1
4日間毎日実験動物に注射した。実験動物を屠殺し、閉塞領域の脳組織切片を得て、Br
dUで染色した。実験動物にはケタミン(80mg/kg)およびキシラジン(13mg
/kg、腹膜内注射)で再度麻酔をかけ、脚をつねったときの反射によって麻酔の深さを
モニタリングした。麻酔後、2mLの血液を心臓から回収した。血清を調製し-20℃に
保存した。次いでSimon Varistalticポンプを使用して、動物を生理食
塩水(ラット用約200ml)灌流および4%パラホルムアルデヒド(ラット用約50m
l)灌流で心穿刺した。
【0295】
脳を切断し、48時間~72時間4%パラホルムアルデヒド中に固定し、次に免疫染色
用にパラフィン包埋した。ラット用ブレインマトリクス(Activational S
ystems Inc.、Warren、MI)を使用して、それぞれの前脳を2mm厚
の冠状ブロック、動物当たり合計7個のブロックに切断した。最適用量(4×10個の
細胞)の胎盤幹細胞治療、デキストランMCAo対照およびFBC対照群から得た脳切片
は、免疫染色用に使用した。標準パラフィン切片を病変の中心から得た(ブレグマ-1m
m~+1mm)。一連の6μm厚切片をブロックから切断した。3個の冠状脳切片をそれ
ぞれの免疫組織化学染色用に使用した。BrdU、増殖細胞マーカー(1:100、Bo
ehringer Mannheim、Indianapolis、IN)、フォンビル
ブランド因子(vWF、1:400;Dako、Carpenteria、CA)、ダブ
ルコルチン(DCX、移動する神経芽細胞のマーカー)(C-18、ヤギポリクローナル
IgG抗体、1:200希釈、Santa Cruz)およびシナプトフィジン(Boe
hringer Mannheim Biochemica、モノクローナル抗体、クロ
ーンSY38、1:40)に対する抗体で免疫染色を実施した。BrdU免疫染色切片は
、MCIDコンピュータ画像分析システム(Imaging Research、St.
Catharines、Canada)によって40倍対物レンズ(Olympus B
X40)を使用してデジタル化した。虚血病変の境界領域内に位置する合計10の拡大お
よび薄壁血管内のBrdU陽性細胞を、それぞれの切片において計数した。
【0296】
シナプトフィジンの免疫反応性の半定量化用に、それぞれの切片における虚血領域(皮
質および線条)からの免疫染色冠状切片および8視野を20倍対物レンズ下でデジタル化
した。陽性領域を測定した。データは陽性領域の割合として表した。
【0297】
結果:
4×10個の胎盤幹細胞の投与は、FBC-対照およびデキストラン対照と比較し、
虚血脳内の内皮細胞増殖および血管密度の増大により測定して血管新生を有意に増大する
ことが分かった(図8)。さらに、4×10個の胎盤幹細胞の投与は、FBC-対照と
比較し、虚血脳内のシナプトフィジン発現の増大により測定してシナプス可塑性を有意に
増大する。
【実施例0298】
6.4 多分化能胎盤細胞を使用する脳卒中の治療
62才の個体は、左側の片麻痺、顔面左側の筋力低下、およびしびれ、および身体左側
の感覚の低下を示す。症状は提示前の2時間の行程にわたり発生した。脳卒中の診断を行
う。診断1時間以内の個体に、1ミリリットル当たり約1×10個の細胞の濃度で10
0~200ミリリットルの多分化能、組織培養プラスチック接着性胎盤細胞を投与する。
投与した多分化能胎盤細胞は90%以上CD34、CD10、CD105およびC
D200であるとアッセイする。個体は、左側の筋肉強度またはしびれの認識可能な改
善に関して、投与後12時間、24時間、48時間、4日、および7日で評価する。第2
の投与を場合によっては行う。
【実施例0299】
6.5 脳卒中、低酸素障害または酸素欠乏障害の治療用の胎盤細胞製剤
多分化能CD34、CD10、CD105およびCD200胎盤細胞を濾過し
て塊を除去し、5.5%(w/v)デキストラン-40、10%(w/v)ヒト血清アル
ブミン、および5%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む水溶液中に1ミ
リリットル当たり10±3×10個の細胞にする。製剤中の細胞の合計数は約4~7×
10個の細胞である。
【0300】
このように製剤化した細胞は、50mL凍結容器中に20mLアリコートに分け、凍結
する。等分した細胞は、1000mL輸液バッグ中に10%デキストラン-40塩化ナト
リウムで使用のため希釈する。
【0301】
均等物:
本明細書で開示する組成物および方法は、本明細書で記載する具体的な実施形態によっ
て範囲が制限されない。実際、記載したもの以外に組成物および方法の様々な変更形態が
、前述の記載および添付の図面から当業者に明らかとなる。このような変更形態は、添付
の特許請求の範囲の範疇にあるものとする。
【0302】
様々な刊行物、特許および特許出願を本明細書で引用し、それらのそれぞれの開示全体
は参照により本明細書に組み込まれる。

本出願は例えば以下の発明も提供する。
[1]脳内または脳周辺の血流の混乱を有する個体を治療する方法であって、
CD10、CD34、およびCD105
CD200およびHLA-G
CD73、CD105、およびCD200
CD200およびOCT-4
CD73、CD105、およびHLA-G
集団を胚様体の形成を可能にする条件下で培養すると、前記幹細胞を含む前記胎盤細胞
の集団中の1つまたは複数の胚様体の形成を容易にするCD73およびCD105
または
集団を胚様体の形成を可能にする条件下で培養すると、幹細胞を含む前記胎盤細胞の集
団中の1つまたは複数の胚様体の形成を容易にするOCT-4;または
それらの任意の組合せ
である有効量の単離ヒト接着性胎盤細胞を前記個体に投与することを含む方法。
[2]前記CD10、CD34、CD105細胞がさらにCD200である、[
1]に記載の方法。
[3]前記CD10、CD34、CD105、CD200細胞がさらにCD45
またはCD90である、[2]に記載の方法。
[4]前記CD10、CD34、CD105、CD200細胞がCD45また
はCD90である、[3]に記載の方法。
[5]前記治療有効量が、前記個体によって示される、重症の排除、検出可能な改善、低
下、または脳内または脳周辺の血流の混乱の1つまたは複数の症状の進行遅延をもたらす
前記細胞の数である、[1]に記載の方法。
[6]前記症状が片麻痺または片側不全麻痺である、[5]に記載の方法。
[7]前記症状が、顔面の筋力弱化、しびれ、感覚の低下、嗅覚、味覚、聴覚、または視
覚の変化、嗅覚、味覚、聴覚、または視覚の消失、眼瞼下垂(下垂症)、眼筋の検出可能
な弱化、咽頭反射の低下、飲み込む能力の低下、光に対する瞳孔反応性の低下、顔面の感
覚低下、バランスの低下、眼振、呼吸数の変化、心拍数の変化、頭部を片側に向ける能力
が低いまたはそれが不可能な胸鎖乳突筋の弱化、舌の弱化、失語症(言語を話すまたは理
解することができないこと)、失行症(随意運動の変化)、視野欠損、記憶障害、半側無
視または半側空間無視(損傷反対の視野側の空間に対する配慮の障害)、支離滅裂な思考
、混乱状態、性欲過剰行為の発生、疾病失認(障害の存在が絶えず認識できないこと)、
歩行困難、運動協調の変化、めまい、不均衡、意識失調、頭痛、または嘔吐であり、前記
症状が脳内または脳周辺の血流の混乱によって引き起こされる、[5]に記載の方法。
[8]前記単離ヒト接着性胎盤細胞がCD10、CD34、CD105、CD20
である、[1]に記載の方法。
[9]前記単離ヒト接着性胎盤細胞がさらにCD45及びCD90である、[8]に
記載の方法。
[10]前記単離ヒト接着性胎盤細胞がCD200およびHLA-Gである、[1]
に記載の方法。
[11]前記CD200、HLA-G細胞がさらにCD34、CD38、CD4
、CD73およびCD105である、[10]に記載の方法。
[12]前記単離ヒト接着性胎盤細胞がCD73、CD105、およびHLA-G
である、[1]に記載の方法。
[13]前記CD73、CD105、およびHLA-G細胞がさらにCD34
CD45、OCT-4およびCD200である、[11]に記載の方法。
[14]前記CD73、CD105、およびCD200細胞がさらにCD34
CD38、CD45、およびHLA-Gである、[1]に記載の方法。
[15]前記CD200、OCT-4細胞がさらにCD34、CD38、CD4
、CD73、CD105およびHLA-Gである、[1]に記載の方法。
[16]前記CD73およびCD105細胞がさらにOCT-4、CD34、C
D38およびCD45である、[1]に記載の方法。
[17]前記OCT-4細胞がさらにCD73、CD105、CD200、CD
34、CD38およびCD45である、[1]に記載の方法。
[18]前記単離ヒト接着性胎盤細胞が、その少なくとも80%が単離ヒト接着性胎盤細
胞である細胞の集団内に含有される、[1]に記載の方法。
[19]前記単離ヒト接着性胎盤細胞が、その少なくとも90%が単離ヒト接着性胎盤細
胞である細胞の集団内に含有される、[1]に記載の方法。
[20]脳内または脳周辺の血流の混乱を有する個体を治療する方法であって、有効量の
単離ヒト接着性胎盤細胞を前記個体に投与することを含み、前記細胞が骨髄由来間葉系幹
細胞より検出可能に高いレベルで1つまたは複数の遺伝子を発現し、
前記1つまたは複数の遺伝子が、ACTG2、ADARB1、AMIGO2、ARTS
-1、B4GALT6、BCHE、C11orf9、CD200、COL4A1、COL
4A2、CPA4、DMD、DSC3、DSG2、ELOVL2、F2RL1、FLJ1
0781、GATA6、GPR126、GPRC5B、ICAM1、IER3、IGFB
P7、IL1A、IL6、IL18、KRT18、KRT8、LIPG、LRAP、MA
TN2、MEST、NFE2L3、NUAK1、PCDH7、PDLIM3、PKP2、
RTN1、SERPINB9、ST3GAL6、ST6GALNAC5、SLC12A8
、TCF21、TGFB2、VTN、およびZC3H12Aの1つまたは複数であり、
かつ前記骨髄由来間葉系幹細胞が、前記単離胎盤細胞が経ている継代数と等しい培養の
継代数を経ている方法。
[21]前記血流の混乱が脳卒中である、[1]または[20]に記載の方法。
[22]前記脳卒中が虚血性脳卒中である、[21]に記載の方法。
[23]前記脳卒中が出血性脳卒中である、[21]に記載の方法。
[24]前記混乱が血腫である、[1]または[20]に記載の方法。
[25]前記血腫が硬膜血腫、硬膜下血腫、またはくも膜下血腫である、[24]に記載
の方法。
[26]前記混乱が血管痙攣である、[1]または[20]に記載の方法。
[27]前記単離胎盤細胞をボーラス注射によって投与する、[1]または[20]に記
載の方法。
[28]前記単離胎盤細胞を静脈内注入によって投与する、[1]または[20]に記載
の方法。
[29]前記単離胎盤細胞を頭蓋内に投与する、[1]または[20]に記載の方法。[
30]前記単離胎盤細胞を虚血領域内に投与する、[29]に記載の方法。
[31]前記単離胎盤細胞を虚血周辺領域に投与する、[29]に記載の方法。
[32]前記単離胎盤細胞を腹腔内、筋肉内、皮内または眼内に投与する、[1]または
[20]に記載の方法。
[33]前記単離接着性胎盤細胞を、前記単離ヒト接着性胎盤細胞を含む組成物の外科的
移植によって投与する、[1]または[20]に記載の方法。
[34]前記組成物がマトリクスまたは骨格(スキャフォールド)である、[33]に記
載の方法。
[35]前記マトリクスまたは骨格がヒドロゲルである、[34]に記載の方法。
[36]前記マトリクスまたは骨格が脱細胞化組織である、[34]に記載の方法。
[37]前記マトリクスまたは骨格が合成生分解性組成物である、[34]に記載の方法

[38]前記単離胎盤細胞を前記個体に1回投与する、[1]または[20]に記載の方
法。
[39]前記単離胎盤細胞を前記個体に複数回投与する、[1]または[20]に記載の
方法。
[40]前記投与が前記個体1キログラム当たり約1×10個と1×10個の間の単
離胎盤細胞を投与することを含む、[1]または[20]に記載の方法。
[41]前記投与が前記個体1キログラム当たり約1×10個と1×10個の間の単
離胎盤細胞を投与することを含む、[1]または[20]に記載の方法。
[42]前記投与が前記個体1キログラム当たり約1×10個と1×10個の間の単
離胎盤細胞を投与することを含む、[1]または[20]に記載の方法。
[43]前記投与が前記個体1キログラム当たり約1×10個と1×10個の間の単
離胎盤細胞を投与することを含む、[1]または[20]に記載の方法。
[44]前記投与が約5×10個と3×10個の間の単離胎盤細胞を静脈内に投与す
ることを含む、[1]または[20]に記載の方法。
[45]前記投与が約9×10個の単離胎盤細胞を投与することを含む、[44]に記
載の方法。
[46]前記投与が約1.8×10個の単離胎盤細胞を投与することを含む、[44]
に記載の方法。
[47]前記投与が約5×10個と1×10個の間の単離胎盤細胞を頭蓋内に投与す
ることを含む、[1]または[20]に記載の方法。
[48]前記投与が約9×10個の単離胎盤細胞を投与することを含む、[47]に記
載の方法。
[49]第2の治療剤を前記個体に投与することを含む、[1]または[20]に記載の
方法。
[50]前記第2の治療剤が神経保護薬である、[49]に記載の方法。
[51]前記第2の治療剤がNXY-059(フェニルブチルニトロンのジスルホニル誘
導体)である、[50]に記載の方法。
[52]前記第2の治療剤が血栓溶解薬である、[49]に記載の方法。
[53]前記血栓溶解薬が組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)である、[5
2]に記載の方法。
[54]前記単離胎盤細胞を、前記個体における1つまたは複数の脳内または脳周辺の血
流の混乱症状の発生の48時間以内に前記個体に投与する、[1]または[21]に記載
の方法。
[55]前記単離胎盤細胞を、前記個体における1つまたは複数の脳内または脳周辺の血
流の混乱症状の発生の24時間以内に前記個体に投与する、[1]または[21]に記載
の方法。
[56]前記単離胎盤細胞を、前記個体における1つまたは複数の脳内または脳周辺の血
流の混乱症状の発生の12時間以内に前記個体に投与する、[1]または[21]に記載
の方法。
[57]前記単離胎盤細胞を、前記個体における1つまたは複数の脳内または脳周辺の血
流の混乱症状の発生の3時間以内に前記個体に投与する、[1]または[21]に記載の
方法。
[58]前記単離胎盤細胞を前記投与前に凍結保存した、[1]または[21]に記載の
方法。
[59]前記単離ヒト接着性胎盤細胞を胎盤幹細胞塊から得る、[1]または[20]に
記載の方法。
[60]前記単離ヒト接着性胎盤細胞が、60%DMEM-LGおよび40%MCDB-
201、2%ウシ胎児血清、1×インシュリン-トランスフェリン-セレン(ITS)、
1×リノール酸-ウシ血清アルブミン(LA-BSA)、10-9Mのデキサメタゾン、
10-4Mのアスコルビン酸2-ホスフェート、表皮増殖因子10ng/mL、および血
小板由来増殖因子(PDGF-BB)10ng/mLを含む培地において約3~約35の
集団倍加で培養すると、前記1つまたは複数の遺伝子を発現する、[21]に記載の方法

[61]前記単離ヒト接着性胎盤細胞が、60%DMEM-LG(Gibco)および4
0%MCDB-201(Sigma)、2%ウシ胎児血清(Hyclone Labs.
)、1×インシュリン-トランスフェリン-セレン(ITS)、1×リノール酸-ウシ血
清アルブミン(LA-BSA)、10-9Mのデキサメタゾン(Sigma)、10-4
Mのアスコルビン酸2-ホスフェート(Sigma)、表皮増殖因子10ng/mL(R
&D Systems)、および血小板由来増殖因子(PDGF-BB)10ng/mL
(R&D Systems)を含む培地において約3~約35の集団倍加で培養すると、
前記1つまたは複数の遺伝子を発現する、[21]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9