(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141863
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】チャンファを有するゴルフクラブヘッド及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20220921BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20220921BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B53/04 C
A63B102:32
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022116655
(22)【出願日】2022-07-21
(62)【分割の表示】P 2020083464の分割
【原出願日】2016-01-22
(31)【優先権主張番号】62/107,269
(32)【優先日】2015-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591086452
【氏名又は名称】カーステン マニュファクチュアリング コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティン アール. ジャーツソン
(72)【発明者】
【氏名】エリック ジェイ. モラレス
(72)【発明者】
【氏名】ライアン エム. ストック
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゴルフクラブヘッドに関する。ボールスピン及び飛距離等の性能特性を最適化する。
【解決手段】中空ボディを有するゴルフクラブヘッド10を含み、中空ボディは、打撃フェース26を有するフロント部30と、ヒール部と、ヒール部の反対のトウ部と、ソールと、リアと、クラウン部34と、フロント部30とクラウン部34との間に延び、内面及び外面を有するチャンファ500と、を備え、チャンファ500は、クラウン部30のヒンジ点を画定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空ボディを備え、
前記中空ボディは、
打撃フェースを有するフロント部と、
ヒール部と、
前記ヒール部の反対側のトウ部と、
ソール部と、
リア部と、
クラウン部と、
前記フロント部と前記クラウン部との間に延び、内面及び外面を有するチャンファと、を備え、前記チャンファは、前記クラウン部のヒンジ点を画定する、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記ゴルフクラブヘッドは、ドライバであり、前記チャンファは、
約0.75インチ乃至約4.50インチの幅と、
約0.15インチ乃至約0.25インチの長さと、
約0.095インチ乃至約0.150インチの最大厚さと、を有し、
前記最大厚さは、前記チャンファの内面と外面との間で測定される、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記ゴルフクラブヘッドは、フェアウェイウッドであり、前記チャンファは、
約0.75インチ乃至約3.50インチの幅と、
約0.05インチ乃至約0.25インチの長さと、
約0.025インチ乃至約0.070インチの最大厚さと、を有し、前記最大厚さは、前記チャンファの内面と外面との間で測定される、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記チャンファに隣接する部分で測定される前記クラウンの厚さに対する前記最大厚さの比率は、約1.15乃至3.00である、請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記チャンファに隣接する部分で測定される前記クラウンの厚さに対する前記最大厚さの比率は、約1.15乃至4.00である、請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記打撃フェースは、ロフト面を画定し、前記ヒンジ点は、前記ロフト面に垂直な方向に少なくとも約0.16インチだけ前記ロフト面から離間されている、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記チャンファは、前記チャンファの前記内面に接する平面を画定し、前記チャンファ面と前記ロフト面との間の角度は、約45°である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記チャンファは、ゴルフボールの100乃至400rpmのスピン低減を提供する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記打撃フェースの表面粗さは、110Ra乃至190Raである、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
中空ボディヘッドであって、
打撃フェースを有するフロント部と、
ヒール部と、
前記ヒール部の反対側のトウ部と、
ソール部と、
リア部と、
クラウン部と、
前記フロント部と前記クラウン部との間に延び、内面と外面とを有し、前記クラウン部のヒンジ点を画定するチャンファと、を備える前記中空ボディヘッドと、
前記中空ボディヘッドに連結されているシャフトと、を備えるゴルフクラブ。
【請求項11】
前記ゴルフクラブは、ドライバであり、前記チャンファは、
約0.75インチ乃至約4.50インチの幅と、
約0.15インチ乃至約0.25インチの長さと、
約0.095インチ乃至約0.150インチの最大厚さと、を有し、
前記最大厚さは、前記チャンファの内面と外面との間で測定される、請求項10に記載のゴルフクラブ。
【請求項12】
前記ゴルフクラブは、フェアウェイウッドであり、前記チャンファは、
約0.75インチ乃至約3.50インチの幅と、
約0.05インチ乃至約0.25インチの長さと、
約0.025インチ乃至約0.070インチの最大厚さと、を有し、
前記最大厚さは、前記チャンファの内面と外面との間で測定される、請求項10に記載のゴルフクラブ。
【請求項13】
前記チャンファに隣接する部分で測定される前記クラウンの厚さに対する前記最大厚さの比率は、約1.15乃至3.00である、請求項11に記載のゴルフクラブ。
【請求項14】
前記チャンファに隣接する部分で測定される前記クラウンの厚さに対する前記最大厚さの比率は、約1.15乃至4.00である、請求項12に記載のゴルフクラブ。
【請求項15】
前記打撃フェースは、ロフト面を画定し、前記ヒンジ点は、垂直方向に少なくとも約0.16インチだけ前記ロフト面から離間されている、請求項10に記載のゴルフクラブ。
【請求項16】
前記チャンファは、前記チャンファの前記内面に接する平面を画定し、前記チャンファ面と前記ロフト面との間の角度は、約45°である、請求項10に記載のゴルフクラブ。
【請求項17】
前記チャンファがないクラブヘッドに比べて、インパクト時のゴルフボールのスピンが200乃至400rpm低減される、請求項10に記載のゴルフクラブ。
【請求項18】
前記打撃フェースの表面粗さは、110Ra乃至190Raである、請求項10に記載のゴルフクラブ。
【請求項19】
ゴルフクラブヘッドを製造する方法であって、
ボディを準備する工程であって、前記ボディは、
打撃フェースを有するフロント部と、
ヒール部と、
前記ヒール部の反対側のトウ部と、
ソール部と、
リア部と、
クラウン部と、
前記フロント部と前記クラウン部との間に延び、内面及び外面を有するチャンファと、を備え、前記チャンファは、前記クラウン部のヒンジ点を画定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2015年1月23日に出願された米国仮特許出願第62/107,269号の優先権を主張するものであり、この全内容は、参照により本明細書に援用される。
技術分野
【0002】
本開示は、包括的には、スポーツ用具に関し、詳しくは、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0003】
ゴルフクラブヘッドは、ボールスピン及び飛距離等の性能特性を最適化するように設計されている。低ロフトクラブ(例えば、ドライバ、フェアウェイウッド、ハイブリッド等の中空ボディクラブヘッド)では、ボールを空中に保持するのに十分なリフトを発生させるためには、一定量のバックスピンが必要であるが、バックスピンが大きすぎると、全体の飛距離に悪影響が生じることがある。例えば、同一のクラブで打たれたバックスピンの量が異なる2つのボール飛行を比較すると、バックスピンが大きすぎるボールは、より高い頂点に向かってより急速に上方に曲がり、これに続いて、バックスピンが比較的小さい(より最適な)ボールのボール飛行よりも急峻に(より鋭い降下角度で)落下する。したがって、バックスピンが大きすぎるボールは、飛距離が短くなる。ゴルフクラブは、様々な周知の設計を有しているが、飛距離を最大にするために、より低ロフトのゴルフクラブにおいてゴルフボールスピン又はスピン率を更に低減する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】本発明の一実施形態によるゴルフクラブヘッドの正面図である。
【0005】
【
図1A】
図1のゴルフクラブヘッドの上面図である。
【0006】
【0007】
【
図3】
図1のIII-III線に沿ったゴルフクラブヘッドの側断面図である。
【0008】
【0009】
【
図4】リア部を取り外した
図1のゴルフクラブヘッドを示す。
【0010】
【
図5】
図1のゴルフクラブヘッドの一部の有限要素解析を示す。
【0011】
【
図5A】従来のゴルフクラブヘッドの一部の有限要素解析を示す。
【0012】
【0013】
【0014】
【
図6】本開示の他の実施形態によるゴルフクラブヘッドの一部の第1の位置における有限要素解析を示す。
【0015】
【
図6A】従来のゴルフクラブヘッドの一部の第1の位置おける有限要素解析を示す。
【0016】
【
図7】
図6のゴルフクラブヘッドの一部の第2の位置における有限要素解析を示す。
【0017】
【
図7A】
図6Aのゴルフクラブヘッドの一部の第2の位置における有限要素解析を示す。
【0018】
【
図8】本開示の他の実施形態によるゴルフクラブヘッドの上面図である。
【0019】
【0020】
【
図10】ソール部を除去した
図8のゴルフクラブヘッドの底面図である。
【0021】
【
図11】
図8のゴルフクラブヘッドの背面図である。
【0022】
【
図12】一実施形態によるタービュレータの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の他の側面は、詳細な説明及び添付の図面を考慮することによって明らかとなる。
【0024】
説明を簡潔かつ明瞭にするために、図面は、構造を包括的に示しており、本開示を不必要に不明瞭にすることを避けるために、周知の特徴及び技術については、説明及び詳細を省略する場合がある。更に、図面の要素は、必ずしも実際の縮尺を反映していない。例えば、図面の幾つかの要素の寸法は、本発明の実施形態を明瞭にするために、他の要素に対して誇張して示している場合がある。異なる図面における同じ参照符号は、同じ要素を示す。
【実施例0025】
一実施形態は、打撃フェースを有するフロント部と、クラウン部と、フロント部とクラウン部との間に延びるチャンファ(chamfer)を有する中空ボディを備えるゴルフクラブヘッドを備え、チャンファは、クラウン部のヒンジ点を画定する。チャンファは平面を画定し、チャンファ面とロフト面との間の角度は、約45度とすることができる。チャンファは、ヒンジ点をクラブヘッドのリア部にシフトさせ、チャンファのない同様のクラブヘッドと比較して、ゴルフボールとの打撃時のクラブヘッドのクラウン部と打撃フェースとの曲がりを大きくすることができる。クラウン及び打撃フェースの曲がりが大きくなると、ゴルフボールに伝えられるエネルギが大きくなり及び/又はゴルフボールのスピンが低減され、この結果、飛距離を長くすることができる。
【0026】
明細書及び特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」、及び「第4」等の用語は、類似の要素を区別するために使用しており、必ずしも特定の順序又は時系列を示すものではない。このように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、例えば、本明細書に記載する実施形態は、本明細書に図示し又は他の手法で記載している順序以外の順序で実行してもよい。更に、「含む」、「有する」及びこの活用形は、非排他的な包含を意図しており、要素のリストを備えるプロセス、方法、システム、物品、装置、又は機器は、必ずしもこれらの要素に限定されるものではなく、明示的に列挙されていない要素又はこのようなプロセス、方法、システム、物品、装置、又は機器に固有の他の要素を含むことができる。
【0027】
明細書及び特許請求の範囲における「左」、「右」、「前」、「後」、「頂部」、「底部」、「上」、「下」等の用語は、説明を目的とし、必ずしも恒久的な相対位置を記述するものではない。これらの用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載する装置、方法、及び/又は物品の実施形態は、例えば、本明細書に例示又は記載した向きとは異なる向きで動作することができる。
【0028】
「接続」、「接続された」、「接続する」、「接続されている」等の用語は、広義に解釈され、2つ以上の要素が機械的又は他の手法で接続されていることを指す。接続は(機械的であるか否かを問わず)、任意の期間に亘って、例えば、永久又は半永久的であってもよく、又は一時的なものであってもよい。
【0029】
「接続された」という用語は、「取り外し可能に」、「取り外し可能な」等の用語を伴っていなくても、その接続が取り外し可能又は取り外し不能の何れかを限定する意図はない。
【0030】
本明細書では、「一体」という用語の定義は、2つ以上の要素が同じ材料片からなることを意味する。一方、本明細書では、2つ以上の要素がそれぞれ異なる材料片から構成される場合、これらを「非一体」とする。
【0031】
以下では、本発明の任意の実施形態を詳細に説明するが、本発明は、以下の説明に記載し又は添付の図面に示す構成及び部品の配置の詳細に限定されるわけではない。本発明の他の実施形態も可能であり、本発明は、様々な手法で実施又は実現することができる。
【0032】
幾つかの実施形態は、ゴルフクラブヘッドを含み、ゴルフクラブヘッドは、打撃フェースを有するフロント部と、ヒール部と、ヒール部の反対側のトウ部と、ソール部と、リア部と、クラウン部と、フロント部とクラウン部との間に延び、内面及び外面を有するチャンファとを有する中空ボディを備え、チャンファは、クラウン部のヒンジ点を画定する。これらの又はこの他の実施形態では、打撃フェースは、ロフト面を画定し、ヒンジ点は、ロフト面に垂直な方向に最小約0.16インチだけロフト面から離間している。更に、これらの又はこの他の実施形態では、チャンファは、チャンファの内面に接する平面を画定し、チャンファ面とロフト面との間の角度は、約45度とすることができる。これらの又はこの他の実施形態では、チャンファは、ゴルフボールのスピンを100~400回転毎分(rpm)低減することができる。これらの又はこの他の実施形態では、打撃フェースは、100Ra~190Raの間の表面粗さを有することができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、チャンファを有し、チャンファは、約0.75インチ~約4.50インチの幅、約0.15インチ~約0.25インチの長さ、及び約0.095インチ~約0.150インチの最大厚さを有し、最大厚さは、チャンファの内面と外面との間で測定される。これらの又はこの他の実施形態では、チャンファに隣接する部分で測定されるクラウンの厚さに対する最大厚さの比は、約1.15~3.00とすることができる。
【0034】
幾つかの実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、チャンファを有するフェアウェイウッドであり、チャンファは、約0.75インチ~約3.50インチの幅、約0.05インチ~約0.25インチの長さ、約0.025インチ~約0.070インチの最大厚さを有し、最大厚さは、チャンファの内面と外面との間で測定される。これらの又はこの他の実施形態では、チャンファに隣接する部分で測定されるクラウンの厚さに対する最大厚さの比は、約1.15~4.00とすることができる。
【0035】
幾つかの実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、ゴルフクラブの一部であってもよく、このクラブヘッドは、打撃フェースを有するフロント部と、ヒール部と、ヒール部の反対にあるトウ部と、ソール部と、リア部と、クラウン部と、フロント部及びクラウン部の間に延び、内面及び外面を有するチャンファとを備え、チャンファは、クラウン部のヒンジ点を画定する。これらの又はこの他の実施形態では、打撃フェースは、ロフト面を画定し、ヒンジ点は、ロフト面に垂直な方向に最小約0.16インチだけロフト面から離間している。更に、これらの又はこの他の実施形態では、チャンファは、チャンファの内面に接する平面を画定し、チャンファ面とロフト面との間の角度は、約45度とすることができる。これらの又はこの他の実施形態では、チャンファは、ゴルフボールのスピンを100~400回転毎分(rpm)低減することができる。これらの又はこの他の実施形態では、打撃フェースは、100Ra~190Raの表面粗さを有することができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、ゴルフクラブは、チャンファを有するクラブヘッドを備えるドライバであり、チャンファは、約0.75インチ~約4.50インチの幅、約0.15インチ~約0.25インチの長さ、及び約0.095インチ~約0.150インチの最大厚さを有し、最大厚さは、チャンファの内面と外面との間で測定される。これらの又はこの他の実施形態では、チャンファに隣接する部分で測定されるクラウンの厚さに対する最大厚さの比は、約1.15~3.00とすることができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、ゴルフクラブは、チャンファを有するクラブヘッドを備えるフェアウェイウッドであり、チャンファは、約0.75インチ~約3.50インチの幅、約0.05インチ~約0.25インチの長さ、約0.025インチ~約0.070インチの最大厚さを有し、最大厚さは、チャンファの内面と外面との間で測定される。これらの又はこの他の実施形態では、チャンファに隣接する部分で測定されるクラウンの厚さに対する最大厚さの比は、約1.15~4.00とすることができる。
【0038】
幾つかの実施形態は、ゴルフクラブヘッドを製造する方法を含み、この方法は、ボディを準備することを含み、ボディは、打撃フェースを有するフロント部と、ヒール部と、ヒール部の反対にあるトウ部と、ソール部と、リア部と、クラウン部と、フロント部とクラウン部との間に延び、クラウン部のヒンジ点を画定するチャンファとを備える。
【0039】
図1~
図5は、ゴルフクラブヘッド10を示し、これは、如何なるタイプの中空ボディゴルフクラブヘッドであってもよく、例えば、ウッドタイプのゴルフクラブヘッド(フェアウェイウッドタイプのゴルフクラブヘッド)、ドライバタイプのゴルフクラブヘッド、又はハイブリッドタイプのゴルフクラブヘッド等であってもよい。また、
図1及び
図3は、ゴルフクラブヘッド10を地面12に対するアドレス位置で示している。ゴルフクラブヘッド10は、打撃フェース26、フロント部30、クラウン部34、ソール部38、ヒール部42、トウ部46、及びリア部50を有するボディ14を含む。フロント部30は、打撃フェース26を含む。リア部50は、ヒール部42とトウ部46との間で少なくとも部分的に延びる後縁52を含む。後縁52とソール部34との間には、スカート部54が延びている。
図3は、
図1のIII-III線に沿ったフェース部18側のゴルフクラブヘッド10の側断面図を示している。
図2は、ゴルフクラブヘッド10の平面図を示している。ボディ14及び打撃フェース26は、例えば、溶接加工によって結合された個別の材料片であってもよく、一体部品として形成してもよい。
【0040】
図1に示すように、打撃フェース26は、中心点70と、外周74と、フェース高さ78とを有する。1つの構成では、中心点70は、外周74の幾何学的中心点及びフェース高さ78の中点に位置する。同一又は他の構成では、中心点70は、設計されたインパクトゾーン82に対して中心合わせしてもよく、インパクトゾーン82は、打撃フェース26上の溝86の領域によって画定してもよい。なお、中心点70は、クラブヘッド10の中心を表していてもよく、これを表していなくてもよい。他の構成では、中心点70は、ゴルフ運営体、例えば、全米ゴルフ協会(United States Golf Association:USGA)等の定義に従って配置してもよい。例えば、中心点70は、USGAのゴルフクラブヘッド柔軟性測定手順(USGA-TPX3004、Rev.1.0.0、2008年5月1日)(http://www.usga.org/equipment/testing/protocols/ Procedure-For-Measuring-The-
Flexibility-Of-A-Golf-Club-Head/)(”Flexibility Procedure”)セクション6.1に従って決定することができる。
【0041】
図1及び
図3に示すように、ゴルフクラブヘッド10は、少なくとも打撃フェース26の中心点70に接するロフト面100(
図3)を有する。ロフト面100は、地面12に対して角度βを形成し、地面12に垂直な軸102に対して角度εを形成するように方向付けられている。フェース高さ78は、打撃フェース26の第1の端部104と打撃フェース26の第2の端部108との間で、ロフト面100と平行に測定することができる。フェース高さ78は、クラブの種類によって異なる。例えば、フェアウェイウッドのフェース高さ78は、約35ミリメートル(mm)であってもよく、ドライバのフェース高さ78は、約50mmであってもよい。更なる又はこれに代わるフェアウェイウッドのフェース高さ78は、本例又は他の例では25~50mmの範囲であってもよく、更なる又はこれに代わるドライバのフェース高さ78は、他の例では40~80mmの範囲であってもよい。更なる又はこれに代わる構造では、フェース高さ78を画定する少なくとも第1の端部104及び第2の端部108を含む打撃フェース26の外周74は、ここに開示する構成に代わる構成を含んでいてもよい。
【0042】
引き続き
図1を参照して説明すると、ゴルフクラブヘッド10のボディ14は、ホーゼル120を備える。ホーゼル120は、ホーゼル120の穴の中心に沿って延びるホーゼル軸124を有する。この例では、ゴルフクラブヘッド10のホーゼル連結機構は、ホーゼル120とシャフトスリーブ(図示せず)とを備え、シャフトスリーブは、ゴルフシャフト(図示せず)の一端に連結することができる。シャフトスリーブは、複数の構成でホーゼル120と連結することができ、これによって、ホーゼル軸124に対して複数の角度でゴルフシャフトをホーゼル120に固定することができる。なお、軸がホーゼル120に調節不能に固定される他の例もあり得る。図に示す実施形態では、ホーゼル軸124は、ゴルフクラブヘッド10の正面に関して地面12と角度αを形成する(
図1)。図に示す角度αは、約60度であるが、他の構造では、角度αは、約40~80度(例えば、約40度、約45度、約50度、約55度、約60度、約65度、約70度、約75度、又は約80度等)であってもよい。
【0043】
また、
図2及び
図3に示すように、ゴルフクラブヘッド10は、錘154を有する錘アセンブリ150を含み、錘154は、取り外し可能であってもよく、打撃フェース26に対して整列させることができるクロックグリッド160に対して位置決めしてもよい。例えば、クロックグリッド160は、それぞれ時計の1時間に対応する放射状の線を備える。放射状の各線は、クロックグリッド中心点164を通過する。図に示すように、クロックグリッド160は、12時の線200、1時の線204、2時の線208、3時の線212、4時の線216、5時の線220、6時の線224、7時の線228、8時の線232、9時の線236、10時の線240、及び11時の線244を含む。本実施形態では、
図2に示すように、12時の線200は、底面から見て、打撃フェース26の中心点70と位置合わせされている。12時の線200は、ロフト面100(
図2~
図3)と地面12(
図1~
図3)との交差によって画定される前面交差線250と直交している。クロックグリッド160は、12時の線200に沿って、フロント部30の前端とリア部50の後端との中間点に中心合わせすることができる。
図2に示すように、3時の線212は、ヒール部42に向かって延び、9時の線236は、トウ部46に向かって延びている。同じ又は他の例では、クロックグリッドの中心点164は、ゴルフクラブヘッド10の幾何学的中心点の近くに中心合わせしてもよい。
【0044】
錘アセンブリ150は、本実施形態ではリア部50の側に配置され、クロックグリッド160の4時の線216と8時の線232との間に少なくとも部分的に限定された外周260を含み、錘154の中心264は、5時の線220と7時の線228との間に位置する。このような例では、外周260は、4時の線216と8時の線232との間に完全に限定されている。本例では、外周260は、ゴルフクラブヘッド10の外部で画定されているが、他の例として、錘の外周は、ゴルフクラブヘッド10の内部に延びていてもよく、ゴルフクラブヘッド10内で画定されていてもよい。幾つかの例では、錘150の位置は、より広い領域に対して定めてもよい。例えば、このような例では、錘アセンブリ150の錘外周260は、クロックグリッド160の4時の線216と9時の線236との間に少なくとも部分的に限定されて、リア部50側に配置することができ、錘154の中心264は、5時の線220と8時の線232との間に位置させることができる。
【0045】
同じ又はこの他の実施形態では、錘アセンブリ150を、ヒール部42に向かって延ばしてもよく、又はヒール部42に向かってシフトさせてもよい。例えば、錘154の外周260及び/又は中心264を、4時の線216に向かってシフトさせてもよい。
【0046】
図3を用いて説明すると、錘154の中心264は、地面12と、錘中心264及び地面12の間に延びる錘中心仰角軸(weight center elevation axis)268とに対して位置決めすることができる。錘中心仰角軸268は、ゴルフクラブヘッド10がアドレス位置にあるとき、地面12に直交する。したがって、錘154の中心264の錘中心高さ272は、錘中心264と地面12との間で、錘中心仰角軸264に沿って測定することができる。更に、錘154の中心264の錘中心深さ276は、地面12に平行に、交点280、284の間で測定することができる。この例では、交点280は、地面12とフロント面290との間の交差によって画定され、フロント面290は、打撃フェース26上の位置310(以下に詳述する)を通って延び、ホーゼル軸124(
図1)に平行であり、ゴルフクラブヘッド10がアドレス位置にあるとき、地面12に直交する。交点284は、ゴルフクラブヘッド10がアドレス位置にあるときに、地面12と錘仰角軸268との交点によって画定される。
【0047】
図3に示すように、ゴルフクラブヘッド10は、更に、重心(center of gravity:CG)300、深さ面(depth plane)304、及びCG高さ軸308を備える。深さ面304は、CG300と、打撃フェース中心点70からオフセットされ、ロフト面100に垂直である打撃フェース26上の位置310とを通って延びる。CG高さ軸308は、CG300を通って延び、交点312において深さ面304と垂直に交差する。この実施形態又はこの他の実施形態において、錘154の中心264は、錘154の中心264からCG300までの錘距離288(
図3)が約25mm~約102mmとなるように配置することができる。
【0048】
図3に示すように、平面311は、打撃フェース中心点70を通って延び、ヘッド深さ面304に平行な平面である。CG300は、平面311の上にCG高さ320を備える。更に、ゴルフクラブヘッド10に関して、CG深さ324も、CG300の位置を特定する。この例では、CG高さ320は、CG高さ軸308に沿って、CG300と平面311との間で測定することができる。CG深さ324は、地面12に平行に、地面12と垂直軸350との間の交差によって画定される交点280と交点332との間で測定することができ、垂直軸350は、CG300を通って延び、ゴルフクラブヘッド10がアドレス位置にあるとき、地面12に直交する。CG300の位置は、また、地面12に対しても位置を特定でき、この場合、CG300のCG高さ354は、CG300と地面12との間の垂直軸350に沿って測定することができる。
【0049】
図3~
図5に示すように、ゴルフクラブヘッド10は、更に、フロント部30とクラウン部34との間の少なくとも一部に形成されたチャンファ500を含む。例えば、
図3に示すように、チャンファ500は、打撃フェース26の第1の端部104とクラウン部34との間に延びる。チャンファ500は、外面504及び内面503を含み、これらの間が厚さと定義される。厚さは、一様であってもよく、チャンファ500の長さに沿って変化してもよい。
図3及び
図3Aに示すように、外面504と内面503との間の厚さは、フロント部30とクラウン部34との間のボディ14の厚肉部505を画定する。チャンファ500は、フロント部30とクラウン部34との間に延びる緩傾斜の外面504を画定する。内面503は、チャンファ面506、すなわちロフト面100に対して角度θを形成する平面を画定する。図に示す実施形態における角度θは、約45度であるが、他の又は更なる実施形態では、角度θは、約30度及び60度の範囲(例えば、約31度、約32度、約33度、約34度、約35度、約36度、約37度、約38度、約39度、約40度、約41度、約42度、約43度、約44度、約45度、約46度、約47度、約48度、約49度、約50度、約51度、約52度、約53度、約54度、約55度、約56度、約57度、約58度、又は約59度)であってもよい。例えば、幾つかの実施形態では、角度θは、約30度~45度、約45度~60度、約30度~40度、約40度~50度、又は約50度~60度であってもよい。
【0050】
図5及び5Aに示すように、チャンファ500は、フロント部30とクラウン部34との間のヒンジ点510(
図5)をリア部50に向かって、及び打撃フェース26から離れるように移動させる。
図5B及び
図5Cに示すように、ヒンジ点510、510’(例えば、塑性ヒンジ)は、それぞれ、ロフト面100、100’から垂直な方向に測定される距離D、D’によってそれぞれのロフト面100、100’から離間している。チャンファ500を有するゴルフクラブヘッド10の距離Dは、従来のゴルフクラブヘッド10’の距離D’よりも大きい。図に示す実施形態では、距離Dは、約0.18インチである。しかしながら、更なる又はこれに代わる実施形態では、距離Dは、約0.10インチ(2.54mm)から約0.5インチ(12.7mm)の範囲の最小距離である。例えば、距離は、約0.10インチ(2.54mm)、約0.11インチ(2.79mm)、約0.12インチ(3.05mm)、約0.13インチ(3.3mm)、約0.14インチ(3.56mm)、約0.15インチ(3.81mm)、約0.16インチ(4.06mm)、約0.17インチ(4.32mm)、約0.18インチ(4.57mm)、約0.19インチ(4.83mm)、約0.20インチ(5.08mm)、約0.21インチ(5.33mm)、約0.22インチ(5.59mm)、約0.23インチ(5.84mm)、約0.24インチ(6.10mm)、約0.25インチ(6.35mm)、約0.26インチ(6.60mm)、約0.27インチ(6.86mm)、約0.28インチ(7.11mm)、約0.29インチ(7.37mm)、約0.30インチ(7.62mm)、約0.31インチ(7.87mm)、約0.32インチ(8.12mm)、約0.33インチ(8.38mm)、約0.34インチ(8.64mm)、約0.35インチ(8.89mm)、約0.36インチ(9.14mm)、約0.37インチ(9.40mm)、約0.38インチ(9.65mm)、約0.39インチ(9.91mm)、約0.40インチ(10.2mm)、約0.41インチ(10.4mm)、約0.42インチ(10.7mm)、約0.43インチ(10.9mm)、約0.44インチ(11.2mm)、約0.45インチ(11.4mm)、約0.46インチ(11.7mm)、約0.47インチ(11.9mm)、約0.48インチ(12.2mm)、約0.49インチ(12.4mm)、又は約0.50インチ(12.7mm)であってもよい。
【0051】
また、
図5及び
図5Aは、ゴルフボールを打撃したときのような力の衝撃の間のチャンファ500を有するゴルフクラブヘッド10とチャンファを有さないゴルフクラブヘッド500’と、の有限要素比較を示している。ゴルフクラブヘッド10と同様に、ゴルフクラブヘッド10’は、フロント部30’とクラウン部34’との間に内面503’を含む。内面503’は、ロフト面100’に対して角度θ’を形成するように方向付けられている。角度θ’は、角度θより小さい。
【0052】
図5と
図5Aとの比較から分かるように、衝撃から生じる応力は、ゴルフクラブヘッド10のヒンジ点510の領域に集中するように再分布する。比較すると、クラブヘッド10のヒンジ点510における応力は、ゴルフクラブヘッド500’のフロント部30’とクラウン部34’との間に形成されるクラブヘッド10’の同等の領域510’よりも著しく大きい。また、
図5は、チャンファ500が支点528を形成することを示している。支点528は、実質的に応力を有さず、これも、クラブヘッド10の新規な特徴によって提供される応力の分布を示している。
【0053】
チャンファ500は、衝撃時により大きい内部エネルギをゴルフクラブヘッド10に伝達し、これにより、ゴルフクラブヘッド10のより大きい内部エネルギがボールに戻される。これは、ヒンジ点510に応力をより集中させた効果によって、クラウン部34の反り又はピーク曲がり(例えば、524の方向への移動)が、ゴルフクラブヘッド500’よりも大きくなるためである。クラウン部34の反りが大きくなると、ソール部38の反りに対して、反りが非一様になる効果が生じる。他の言い方をすれば、チャンファ500は、ピーク曲がりにおいて「塑性ヒンジ」(例えば、ヒンジ点510)として機能し、ゴルフボールとの衝突による変形をより局所化する。チャンファ500は、クラブの高いMOIを維持したままCG300からのスピンの影響を分離する。このように、チャンファ500は、ボール衝突中の動的な面せん断(dynamic face shearing)及びネットロフトのために、スピンを低減する。チャンファ500は、スピン低減ヒンジを提供する。換言すれば、ここに開示したように、フロント部30とクラウン部34との間にチャンファ500を追加することにより、フェース応答のタイミングが変化し、100~400rpmのスピン低減が実現される。チャンファ500を導入することにより、MOIを低下させるCG300の前方移動の必要性をなくすことができる。すなわち、チャンファ500によって、CG300をリア部50に近付けることができ、MOIを高く維持することができ、これにより、最大の寛容性(forgiveness)が提供されると共に、ボールのスピンが低減される。
【0054】
図6及び
図6Aを参照すると、クラブヘッド10のチャンファ500は、ヒンジ点510をリア部50に向かって、及び打撃フェースから離れるように移動させ、これにより、クラブヘッド10は、ゴルフボールとの衝突時に、従来のゴルフクラブヘッド10’よりも大きく外方に反ることができる。クラブヘッド10の反りを増加させることにより、ゴルフボールとの衝突時の打撃フェース26の曲がりを増加させることができる。打撃フェース26の曲がりを増加させると、ゴルフボールに伝達されるエネルギが大きくなり、ボールスピードを高めることができる。更に、打撃フェース26の曲がりを増加させると、ゴルフボールのスピンを低減させ、飛距離を伸ばすことができる。
図6及び
図6Aは、インパクト時のクラウン部34、34’の反りの違いを示している。また、
図6及び
図6Aは、
図7及び
図7Aに示された反りの比較のための基礎として、クラウン部34、34’のそれぞれの初期形状を示している。
【0055】
図に示す実施形態では、チャンファ500は、打撃フェース26の外周74の上に配置され、その寸法は、クラブヘッドのタイプに応じて変更される。例えば、ヒール部42からトウ部46の方向に測定されるチャンファ500の幅Wは、フェアウェイウッドの場合、約0.75インチ~3.50インチ(例えば、約19mm~90mm)であってもよく、ドライバの場合、約0.75インチ~4.50インチ(例えば、約19mm~115mm)であってもよい。幾つかの実施形態では、チャンファ500の幅Wは、クラブヘッドのヒール部42からトウ部46まで延びていてもよい。図に示す実施形態では、チャンファは、幅Wに沿って連続的である。他の実施形態では、チャンファは不連続であってもよい。例えば、チャンファは、幅Wに沿って1つ以上の空隙を含むことができる。
【0056】
また、
図3Aに示すように、チャンファ500は、フロント部30とクラウン部34との間で測定される長さLを有する。長さLは、幅Wと同様に、クラブヘッドのタイプによって異なる。例えば、チャンファ500の長さLは、フェアウェイウッドの場合、約0.05インチ~0.25インチ(例えば、1.2mm~7.0mm)であってもよく、ドライバの場合、約0.15インチ~0.25インチ(例えば、約4mm~7mm)であってもよい。1つの構成例では、フェアウェイウッドのチャンファ500の長さLは、約0.10インチ~0.15インチ(例えば、約2.5インチ~7mm)の範囲であり、ドライバのチャンファ500の場合、約0.18インチ~0.22インチ(例えば、約4.5mm~6mm)である。また、チャンファ500は、内面503から外面504までに亘る最大厚さTを有する。最大厚さTは、長さL及び幅Wと同様に、クラブヘッドのタイプによって異なる。例えば、チャンファ500の最大厚さTは、フェアウェイウッドの場合、約0.025~0.070インチ(例えば、0.63~1.78mm)であってもよく、ドライバの場合、約0.095インチ~0.150インチ(例えば、約2.41mm~3.81mm)であってもよい。図に示す実施形態では、チャンファ500は、矩形状の断面を有しているが、他の実施形態では、断面は、任意の数の辺を有する三角形又は多角形(例えば、五角形、六角形、八角形等)であってもよい。これに代えて、断面は、半円形であってもよい。
【0057】
多くの実施形態では、チャンファ500の最大厚さTと、チャンファ500に隣接する部分で測定されるクラウンの厚さ502との比は、1.15を超えることができる。例えば、チャンファ500の最大厚さTと、チャンファ500に隣接する部分で測定されるクラウンの厚さ502との比は、1.15より大きくてもよいし、1.20より大きくてもよいし、1.25より大きくてもよいし、1.30より大きくてもよいし、又は1.35より大きくてもよい。多くの実施形態では、ドライバ型クラブヘッドのチャンファ500に隣接する部分で測定されるクラウンの厚さ502に対するチャンファ500の最大厚さTの比は、約1.15~3.00であってもよく、フェアウェイウッドタイプのクラブヘッドのチャンファ500に隣接する部分で測定されるクラウンの厚さ502に対するチャンファ500の最大厚さTの比は、約1.15~4.00の間であってもよい。例えば、幾つかの実施形態では、チャンファ500の最大厚さTと、チャンファ500に隣接する部分で測定されるクラウンの厚さ502との比は、約1.25、約1.50、約1.75、約2.00、約2.25、約2.50、約2.75、約3.00、約3.25、約3.50、約3.75、又は約4.00であってもよい。
【0058】
図に示す実施形態では、外面504と内面503との間のチャンファ500の厚さは、チャンファ500の幅Wに沿って実質的に一定である。更に、図に示す実施形態では、チャンファ500の最大厚さ502は、チャンファ500の幅Wに沿って実質的に一定である。他の実施形態では、外面504と内面503との間のチャンファ500の厚さは、チャンファ500の幅Wに沿って変化させてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、外面504と内面503との間のチャンファ500の厚さは、ヒール部42の近く及びトウ部46の近くからチャンファの中心に向かって増加させてもよい。更に、他の実施形態では、最大厚さ502は、チャンファ500の幅Wに沿って変化させてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、最大厚さ502は、ヒール部42の近く及びトウ部46の近くからチャンファの中心に向かって増加させてもよい。これらの又はこの他の実施形態では、最大厚さ502及び/又は外面504と内面503との間のチャンファ500の厚さは、チャンファ500の中心部分からクラブヘッド10のヒール部42及びトウ部46に向かって傾斜又は減少させてもよい。
【0059】
多くの実施形態において、チャンファ500は、約0.50g~2.0gの質量をクラブヘッド10に追加する。例えば、図に示す実施形態では、チャンファは、ドライバタイプのクラブヘッドに約1.3gの質量、及びフェアウェイウッドタイプのクラブヘッドに約0.5gの質量を追加する。他の実施形態では、チャンファ500は、約0.5gより大きい、約0.75gより大きい、約1.0gより大きい、約1.25gより大きい、又は約1.5gより大きい質量をクラブヘッド10に追加することができる。
【0060】
ここに説明するチャンファ500は、打撃フェース26を補強し、これにより、従来のゴルフクラブヘッドと比較してクラブヘッド10の耐久性が向上する。例えば、多くの実施形態では、チャンファ500を有するクラブヘッド10は、チャンファのない従来のクラブヘッドよりも多くの衝撃に耐えることができる。
【0061】
角度ε(
図3に示す)が35度以下(より好ましくは20度以下)であるゴルフクラブヘッド10では、打撃フェース26に150±40の平均粗さ(R
a)値を与えることによって、ボールのスピンを低減させることができる。150±40のR
a値は、0~180±最適化のRA値を許容するUSGAが要求する仕様を満たす。上述のロフト角εの範囲と組み合わされた上述のR
a値は、ボールの回転毎分(RPM)を1R
a単位当たり1RPM低減させる。したがって、打撃フェース26のR
a値が150であり、角度εが35度以下であれば、ボールスピンが150RPM低減される。
【0062】
また、
図3及び
図5に示すように、ゴルフクラブヘッド10は、内径遷移部(internal radius transition)又はカスケードソール(cascading sole)600を含むことができる。内径遷移部600は、ゴルフクラブヘッド10のソールのピーク曲がり及び曲がりが発生する位置に影響を及ぼすことができる。更に、内径遷移部600により、クラブヘッド10のボディのより多くの部分が、ゴルフボールからの衝撃時の曲がりプロセスに関わることができる。図に示す実施形態では、内径遷移部600は、第1の層604、第2の層608、第3の層610、第1の層604と第2の層608との間の第1の層遷移領域614、第2の層608と第3の層610との間の第2の層遷移領域616、及び第3の層遷移領域630を有する。ここに示すように、内側ソールの厚さ620は、内径遷移部600における隣接する層又は最後の層よりも厚い。打撃フェース26がゴルフボールと衝突することによって生じる応力は、最も薄いセクションに主に集中するよりも、層604、608、610、612のそれぞれに付与され、これにより、ゴルフクラブヘッド10の信頼性及び耐久性が向上する。幾つかの実施形態では、内径遷移部600は、内径遷移部600の打撃フェース端の反対側に他の塑性ヒンジ624を生成し、塑性ヒンジ位置においてより局所的な変形を促す。また、この構造により、例えば、クラウン部34及び/又はソール部38に、より多くの位置エネルギを蓄積することができる。ソール部38及び/又はクラウン部34におけるソール方向へのクラウンの追加的な反りにより、打撃フェース26は、ゴルフボールによる同じ負荷又は衝撃で更に曲がることができる。したがって、この構造は、クラブヘッド10の打撃フェース26に、より多くの応力及び曲がりを生じさせることができる。
【0063】
図3及び
図5に示すように、内径遷移部600は、それぞれ第1、第2及び第3の厚さを有する3つの層604、608、610を有する階層状遷移領域である。また、層604、608、610は、それぞれ第1、第2、第3の勾配を有する。図に示すように、第1及び第3の層604、610の第1及び第3の厚さは、打撃フェース26に近いほど厚く、それぞれ、層遷移領域614、630に近いほど薄くなるように形成されている。一方、第2の勾配は、ほぼゼロである。他の実施形態では、何れか又は全ての厚さが一定であってもよく又は傾斜していてもよい。図に示す層遷移領域614、616、620は、隣接する層604、608、610よりも急な勾配を有する。図に示すように、層遷移領域614、616、620は、90度未満の角度で直線的に傾斜して隣接する層604、608、610から遷移し、或いはこれに代えて、約90度の段(図示せず)を備えることができる。
【0064】
また、更なる実施形態では、層の数は、ここに示すものより多くても少なくてもよい。例えば、1つの層、2つの層、4つの層、5つの層、又は6つの層を設けてもよい。更に他の実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、ゴルフクラブヘッドの外周の周囲に単一の連続した階層状遷移領域リングを備えることができ、例えば、打撃フェースからクラウン、トウ領域、ヒール領域、及びソール領域のそれぞれへの階層状遷移領域リングを備えることができる。他の実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、クラウン及び/又はソールのみに階層状遷移領域を備える。幾つかの実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、トウ領域及び/又はヒール領域のみに階層状遷移領域を備える。他の例では、階層状遷移領域は、打撃フェースからスカート部までのみに配置される。他の実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、打撃フェースからクラウンのトウ領域、クラウンのヒール領域、ソールのトウ領域、及び/又はソールのヒール領域への別個の又は独立した階層状遷移領域を含む。
【0065】
図3、
図4及び
図5に示す実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、チャンファ500及び内径遷移部600の両方を含む。これらを共に使用すると、クラウン部34及びソール部38の反りが更に大きくなり、これにより、チャンファ500及び内径遷移部600に関して上述した結果が向上する。なお、他の実施形態では、
図6及び
図7に示すように、ゴルフクラブヘッドは、チャンファ500のみを含んでいてもよい。これに代えて、ゴルフクラブヘッドは、内径遷移部600の1つを含んでいてもよい。
【0066】
図1及び
図1Aに示すように、ゴルフクラブヘッド10は、クラウン部34の上に配置された1つ又は複数のタービュレータ650を含んでいてもよい。クラウンタービュレータ650の隣接する対は、分離されて離間され、隣接する一対のクラウンタービュレータ650の間に空間を画定する。クラウンタービュレータ650の各隣接する対の間の空間は、空間を画定するクラウンタービュレータ650の隣接する対のそれぞれの幅よりも実質的に大きい。図に示す実施形態における各クラウンタービュレータ650は、ヒール部42とトウ部46との間に延びて、幅を規定し、フェース部30とリア部50との間に延びて、長さを規定する。タービュレータ650の長さは、タービュレータの幅よりも大きい。
【0067】
図1及び
図12に示すように、各タービュレータ650は、境界層658(
図12)の内側で、クラウン部34の表面から高さ654だけ上方に突出している(
図1及び
図12)。具体的には、クラウン部34の表面上の最も高い点を頂部とする。少なくとも1つのクラウンタービュレータの少なくとも一部は、フェース部40と頂部との間に配置される。
図12は、更に、タービュレータ650がクラウン部34を流れる空気の進路を変更し、境界層658内に乱流668を発生させる様子を流線662によって示している。乱流は、境界層658を付勢してクラウン部34上の空気流の分離を遅らせ、分離領域をクラウン部34のリア部50に向かって移動させる。タービュレータを有するゴルフクラブヘッドの詳細な説明は、参照により本願に援用される「GOLF CLUB HEADS WITH TURBULATORS AND METHODS TO MANUFACTURE GOLF CLUB HEADS WITH TURBULATORS」と題された米国特許第8,608,587号に開示されている。
【0068】
図8~
図11に示すゴルフクラブヘッド710は、
図1~
図5に示すゴルフクラブヘッド10に類似している。したがって、同様の構造には、同様の参照符号に「700」を足した符号を付し、以下では、相違点のみを説明する。図には示していないが、
図8~
図11は、以下で説明する特徴に加えて、チャンファ又は内径遷移又はこの両方を含むことができる。
【0069】
図11に示すように、ゴルフクラブヘッド710は、打撃フェース726から離れた一に配置されているボディ714内のキャビティ1500を含む。図に示すように、後縁752は、クラウン部734とソール部738との間に1つ以上のキャビティを含むことができる。図に示す実施形態では、キャビティ1500は、リア部750に隣接する打撃フェース726の反対側に配置される。他の実施形態では、キャビティは、クラウン部734とソール部738との間で、打撃フェース726に対する他の位置に配置してもよい。換言すれば、図に示す実施形態では、キャビティ1500は、バックキャビティであるが、他の実施形態ではサイドキャビティであってもよい。また、幾つかの実施形態では、複数のキャビティ1500を配置してもよい。例えば、リア部750にトウ側キャビティ及びヒール側キャビティを設けてもよい。他の例として、クラウン部734とソール部738との間に積層された2つ以上のキャビティを配置してもよい。
【0070】
流体力学によれば、ゴルフクラブヘッド710のような物体が空気を通過するとき、振動する流れ内に渦が発生する。発生する渦は、物体のサイズ及び形状、すなわち、ゴルフクラブヘッド710のサイズ及び形状に依存する。多くの実施形態では、キャビティ1500は、ゴルフクラブヘッド710の背後に生成される渦をより小さい渦に分割し、抗力を低減するように設計することができる。幾つかの実施形態では、渦をより小さい渦に分割することにより、ゴルフクラブヘッド710の背後に高圧領域を生成することができる。この高圧領域は、ゴルフクラブヘッド710を前方に押し進め、空気力学的設計を強化することができる。多くの実施形態では、渦を小さくし及び抗力を低減することの正味の効果は、ゴルフクラブヘッド710の速度の増加である。これにより、インパクトの後に、打撃フェース726からゴルフボールをより速い速度で飛ばすことができる。
【0071】
ゴルフクラブヘッド710がアドレス位置にあるとき、ゴルフクラブヘッド710は、クローズのクラブフェースアングルにあり、例えば、抗力に対して90度である。クローズのクラブフェースアングル、すなわち抗力に対して90度では、キャビティ1500は、抗力を約6%~約12%低減することができる。ダウンスイングの間、ゴルフクラブヘッド710は、抗力に対して約0度~約89度のオープンのクラブフェースアングルにある。幾つかの実施形態では、約50度では、キャビティ1500は、抗力を約0.1パーセント~約3パーセント低減することができる。幾つかの実施形態では、ゴルフクラブヘッド710の背後の渦発生は、オープンのクラブフェースアングルの場合、トウ部746に向かってシフトされる。これらの実施形態では、オープンのクラブフェースアングルでの抗力を低減するために、キャビティ1500をトウ部746に向かって延ばすことができる。例えば、キャビティ1500は、トウ領域746に向かって延ばすことができる。
【0072】
幾つかの実施形態では、キャビティ1500は、約1.75インチ~約8インチの最大ヘッド-トウ幅を有することができる。幾つかの実施形態では、キャビティ1500は、約1.75インチ~約3.0インチの幅を有することができる。キャビティ1500は、約0.19インチ~約0.21インチのソール-クラウン高さを有することができる。2つ以上のキャビティが積層されている場合、キャビティ1500のそれぞれは、約0.19インチ~約0.21インチの最大高さを有することができる。他の実施形態では、1つ又は複数のキャビティ1500は、約0.19インチ~約0.21インチまでの合計最大高さを有することができる。幾つかの実施形態では、キャビティ1500は、約0.050インチ~約0.250インチの最大深さを有することができる。幾つかの実施形態では、
図1のキャビティ1500は、
図1に示されたものとは異なる幅、高さ及び/又は長さを有することができる。幾つかの実施形態では、キャビティ1500の高さを変化させてもよい。例えば、キャビティ1500のトウ側のトウ側高さを、キャビティ1500のヒール側のヒール側高さより高くしてもよい。幾つかの実施形態では、ヒール側高さを、トウ側高さより高くしてもよい。幾つかの実施形態では、キャビティ1500の高さは、キャビティ1500の全長に亘って、又はキャビティ1500の全長のうちの一部のみで変化させてもよい。他の実施形態では、キャビティ1500は、キャビティ1500の中央で最大の高さを有し、端部において、同じ又は異なるより低い高さを有していてもよい。幾つかの実施形態では、キャビティ1500の深さを変化させてもよい。例えば、キャビティ1500のトウ側深さをヒール側深さより深くしてもよい。幾つかの実施形態では、ヒール側深さは、トウ側深さより深くてもよい。他の実施形態では、キャビティ1500の全長に亘ってキャビティ1500の深さを変化させてもよい。他の実施形態では、キャビティ1500は、中央に最大深さを有し、キャビティ1500の端部において浅い深さを有することができる。
【0073】
図11に示すように、キャビティ1500は、丸みを帯びた内側輪郭形状を有することができる。他の実施形態では、キャビティ1500は、例えば、他の内側輪郭形状、例えば、三角形又は多角形の内側輪郭形状を有していてもよい。
【0074】
図8~
図11に示すように、ゴルフクラブヘッド710は、クラウン部734に外側リブ1530を含む。図に示すリブ1530は、後述するように、ゴルフクラブヘッド700と一体に形成されている。具体的には、リブ1530は、それぞれがクラウン部734の凹部1534の外周を形成する多角形のリブである。凹部1534は、リブ1530よりも薄く形成されたクラウン部734の部分である。ヘッドを薄く鋳造し、内面の化学エッチングによって更に重量を軽減することにより、0.020インチ未満の寸法が達成される。凹部もゴルフクラブヘッドの金型に含めることができる。
【0075】
ゴルフクラブヘッド710の他の特徴は、クラウン部734の表面の裏側に付加されたリブ1540である。ここでは図示していないが、リブ1540をソール部738及び/又はスカート部740に追加してもよい。リブ1540は、鋳造品質及び補強性能を向上させる。リブ1540は、クラウン部の各凹部1534の裏側で、実質的にこの中央に配置され、鋳造品質を向上させる。したがって、リブ1540は、凹部1534のセクションのための補強領域を提供する。また、リブ1540は、凹部1540の感触、音及び耐久性を向上させる。更に、リブの寸法は、様々であるが、0.030インチ~0.250インチの幅と、0.005インチ~0.030インチの高さとを備える。
【0076】
したがって、凹部1534は、ゴルフクラブヘッド734から材料を取り除き、これにより重量を軽減し、リブ1530は、ゴルフクラブヘッド734に必要な構造的安定性を提供する。図に示す実施形態では、4つの凹部1534が存在するが、他の実施形態では、凹部1534の数は、これより多くても少なくてもよい。同様に、4つのリブ1540が背骨状のリブ(spine-like rib)によって接続されている。なお、リブ1540は、任意の適切な構成又は数を有していてもよい。具体的には、ゴルフクラブヘッド710は、様々な非対称又は対称のパターン、形状、及びサイズを有する外側リブ1530及び/又は内側リブ1540を有していてもよい。
【0077】
外部又は内側リブ1530、1540の何れか又は両方は、ゴルフクラブヘッド10がボールに衝突したときの音に影響を及ぼす可能性がある。
【0078】
ここに説明した特徴の全て又はここに説明した特徴の任意の組み合わせを有するゴルフクラブヘッドは、本開示の範囲内である。
【0079】
特許請求される要素の置き換えは、再構成に含まれ、改修とはみなされない。更に、特定の実施形態に関連して、効果、他の利点、及び問題に対する解決策を説明した。これらの効果、利点、解決策、又は要素が、請求項に明示的に記載されている場合を除き、このような効果、利点、及び問題の解決、並びに効果、利点、又は解決を生じる可能性を有し又はこれらをより顕著にする何れかの又は複数の要素は、特許請求の範囲の何れか又は全ての不可欠な、必要な、又は本質的な特徴又は要素として解釈されるべきではない。
【0080】
ゴルフの規則は、時々変更されることがあるため(例えば、全米ゴルフ協会(United States Golf Association:USGA)、ロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュース(Royal and Ancient Golf Club of St.Andrews:R&A)等のゴルフ標準化組織及び/又は運営組織によって、新しい規則が採択され、古い規則が廃止されることがあるため)、ここに説明する装置、方法、及び物品に関連するゴルフ用品は、任意の特定の時期のゴルフの規則に準拠していても、準拠していなくてもよい。したがって、ここに説明する装置、方法、及び物品に関連するゴルフ用品は、適合又は不適合のゴルフ用品として広告し、販売目的で陳列し、及び/又は販売することができる。ここに説明する装置、方法、及び物品は、これに限定されない。
【0081】
上述の例では、ドライバタイプのゴルフクラブを説明した場合もあるが、ここに説明する装置、方法、及び物品は、他のタイプのゴルフクラブ、例えば、フェアウェイウッドタイプのゴルフクラブ、ハイブリッドタイプのゴルフクラブ、アイアンタイプのゴルフクラブ、ウェッジタイプのゴルフクラブ、又はパタータイプのゴルフクラブ等にも適用できる。これに代えて、ここに説明する装置、方法、及び物品は、他のタイプのスポーツ用具、例えば、ホッケースティック、テニスラケット、釣り竿、スキーポール等にも適用できる。
【0082】
更に、ここに説明する実施形態及び限定は、実施形態及び/又は限定が、(1)請求項において明示的に特許請求されていない場合、及び(2)均等論の下で請求項中の明示的な要素及び/又は限定の均等物であり、又は潜在的に均等物である場合、公有の原則(doctrine of dedication)の下で公に提供されることはない。
【0083】
本開示の様々な特徴及び利点は、特許請求の範囲に記載される。