IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソネンド インコーポレイテッドの特許一覧

特開2022-141886歯および歯根管を洗浄する装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141886
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】歯および歯根管を洗浄する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/40 20170101AFI20220921BHJP
   A61C 19/06 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A61C5/40
A61C19/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117567
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2020133689の分割
【原出願日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】62/017,208
(32)【優先日】2014-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/986,016
(32)【優先日】2014-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512125116
【氏名又は名称】ソネンド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100138357
【弁理士】
【氏名又は名称】矢澤 広伸
(72)【発明者】
【氏名】ハクプール,メールザド
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】デシェレット,アレクシス
(72)【発明者】
【氏名】ベルクハイム,ビャーネ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歯を治療する装置を提供する。
【解決手段】アクセスポートを有するチャンバ6を含むことができ、アクセスポートは、チャンバが歯に結合されると歯の治療領域と流体連通するようにチャンバを配置する。チャンバに流体運動発生器を結合することができる。流体運動発生器は、チャンバ内に流体運動を発生させるように、アクセスポートの向こう側に流体を方向付けるように構成することができる。さまざまな実施形態では、歯根管またはう蝕領域等の歯の治療領域にまたはその近くで流体運動(たとえば、渦、渦巻流等)を引き起こすことができる。
【選択図】図21B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯を治療する装置であって、
アクセスポートを有するチャンバであって、前記アクセスポートは、前記チャンバが前記歯に結合されると前記歯の治療領域と流体連通するように前記チャンバを配置し、前記アクセスポートが中心軸を有する、チャンバと、
前記チャンバ内に回転流体運動を発生させるように構成された流体運動発生器と、
吸引ポートであって、前記チャンバの前記アクセスポートとは反対側において前記チャンバと連通し、かつ前記アクセスポートに対して前記アクセスポートの前記中心軸が前記吸引ポートを通過するように配置されている吸引ポートと
を備える装置。
【請求項2】
前記吸引ポートは、前記チャンバの上壁の中心にまたはその近くに配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記吸引ポートは、前記中心軸を中心に対称である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記吸引ポートの中心が前記中心軸に位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記流体運動発生器は、前記中心軸の周囲に渦巻流入流体路を発生させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記吸引ポートに吸引力が加えられた状態で、前記渦巻流入流体路の内部を流れる経路において流出流体を前記治療領域から前記吸引ポートに引き出すように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記中心軸は前記吸引ポートに対して実質的に垂直に位置する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記吸引ポートは、前記アクセスポートの主寸法以下の主寸法を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記吸引ポートは前記アクセスポートより小さい、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記流体運動発生器は、前記チャンバの側壁に配置され、かつ前記アクセスポートの前記中心軸を略横切るように位置する流れ方向に液体を方向付けるように向けられている、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記流れ方向は前記中心軸と交差しない、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記流体方向は、前記チャンバの壁に略接している、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記吸引ポートは、前記アクセスポートと対向する前記チャンバの上壁に配置されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記チャンバは、前記アクセスポートを画定する先端部分を備え、前記先端部分は、前記歯のアクセス開口部内に挿入されるサイズおよび形状であり、かつ前記中心軸に向かっ
て先端側にテーパ状である、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記先端部分の内面は、前記中心軸に向かって先端側にテーパ状である、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記先端部分の外面は、前記中心軸に向かって先端側にテーパ状である、請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記チャンバは、前記先端部分に結合されるかまたは前記先端部分とともに形成された円筒状部分を備え、前記円筒状部分が、前記先端部分と前記吸引ポートとの間に位置している、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記先端部分は、約0.5°~約20°の範囲の角度でテーパ状である、請求項14~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記先端部分は、約1°~約10°の範囲の角度でテーパ状である、請求項13に記載の装置。
【請求項20】
前記流体運動発生器は液体ジェット装置を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記液体ジェット装置は、加圧液体を受け取る入口と、前記加圧液体をコヒーレントな平行液体ジェットに変換するように構成されたノズルとを備える、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
少なくとも1つの通気孔をさらに備え、前記通気孔は、前記吸引ポートが前記吸引ポートから延在する出口通路に沿って前記チャンバと前記通気孔との間に位置するように、前記吸引ポートの下流に配置されている、請求項1~21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記吸引ポートの下流に、前記出口通路と連通する少なくとも1つの追加の通気孔をさらに備える、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
各通気孔は、前記出口通路に沿って配置され、かつ前記出口通路において流体流出方向に向かって角度が付けられている、請求項22または23に記載の装置。
【請求項25】
ハンドピースと、前記ハンドピースの先端部分の歯結合器とをさらに備え、前記チャンバは、前記歯結合器内に配置されている、請求項1~24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記歯結合器から延在する封止部材をさらに備え、前記封止部材は、前記治療領域を封止するように構成されている、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記チャンバと流体連通する操作盤をさらに備え、前記操作盤は、流体を前記チャンバに押し込みかつ前記チャンバから吸引する1つまたは複数のポンプを備える、請求項1~26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記流体運動発生器は、前記治療領域を通して圧力波を伝播させて前記治療領域を実質的に洗浄するように構成された圧力波発生器である、請求項1~27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記アクセスポートの外径または主寸法は、約0.5mm~約5mmの範囲である、請
求項1~28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記アクセスポートの前記外径または主寸法は、約0.5mm~約3mmの範囲である、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記アクセスポートの前記外径または主寸法は、約1mm~約2mmの範囲である、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記アクセスポートの内径または主寸法は、約0.3mm~約5mmの範囲である、請求項1~31のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
前記アクセスポートの前記内径または主寸法は、約0.5mm~約3mmの範囲である、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記アクセスポートの前記内径または主寸法は、約1mm~約2mmの範囲である、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記吸引ポートの直径または主寸法は、約0.1mm~約5mmの範囲である、請求項1~34のいずれか一項に記載の装置。
【請求項36】
前記吸引ポートの前記直径または主寸法が、約0.1mm~約2mmの範囲である、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記吸引ポートから前記チャンバ内に延在するフランジをさらに備える、請求項1~36のいずれか一項に記載の装置。
【請求項38】
前記チャンバの先端部分が、前記治療領域との流体連通を提供するように、前記チャンバの側壁に1つまたは複数の側部開口部を備える、請求項1~37のいずれか一項に記載の装置。
【請求項39】
歯を治療する装置であって、
アクセスポートを画定する先端部分を有するチャンバであって、前記アクセスポートが、前記チャンバが前記歯に結合されると前記歯の治療領域と流体連通するように前記チャンバを配置し、前記アクセスポートが中心軸を有する、チャンバと、
前記チャンバに結合された流体運動発生器であって、前記チャンバ内に回転流体運動を発生させるように構成された流体運動発生器と
を備え、
前記先端部分は、前記歯のアクセス開口部内に挿入されるサイズおよび形状であり、前記先端部分が前記中心軸に向かって先端側にテーパ状である、装置。
【請求項40】
前記先端部分の内面が前記中心軸に向かって先端側にテーパ状である、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記先端部分の外面は、前記中心軸に向かって先端側にテーパ状である、請求項39または40に記載の装置。
【請求項42】
前記チャンバおよび前記治療領域から流体を除去する、前記チャンバと連通している吸引ポートをさらに備える、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記アクセスポートの前記中心軸は前記吸引ポートを通って延在している、請求項42
に記載の装置。
【請求項44】
前記吸引ポートは、前記チャンバの上壁の中心にまたはその近くに配置されている、請求項42または43に記載の装置。
【請求項45】
前記中心軸は前記吸引ポートに対して略垂直に位置する、請求項42~44のいずれか一項に記載の装置。
【請求項46】
前記吸引ポートは、前記アクセスポートの主寸法以下の主寸法を有する、請求項42~45のいずれか一項に記載の装置。
【請求項47】
前記吸引ポートは前記アクセスポートより小さい、請求項42~46のいずれか一項に記載の装置。
【請求項48】
前記吸引ポートは、前記アクセスポートと対向する前記チャンバの上壁に配置されている、請求項42~47のいずれか一項に記載の装置。
【請求項49】
前記吸引ポートの直径または主寸法は、約0.1mm~約5mmの範囲である、請求項42~48のいずれか一項に記載の装置。
【請求項50】
前記吸引ポートの前記直径または主寸法は、約0.1mm~約2mmの範囲である、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記吸引ポートは前記中心軸を中心に対称である、請求項42~50のいずれか一項に記載の装置。
【請求項52】
前記吸引ポートの中心は前記中心軸に位置する、請求項42~51のいずれか一項に記載の装置。
【請求項53】
前記流体運動発生器は、前記中心軸の周囲に渦巻流入流体路を発生させる、請求項39~52のいずれか一項に記載の装置。
【請求項54】
前記吸引ポートに吸引力が加えられた状態で、前記渦巻流入流体路内部を流れる経路において流出流体を前記治療領域から前記吸引ポートに引き出すように構成されている、請求項53に記載の装置。
【請求項55】
前記流体運動発生器は、前記アクセスポートの前記中心軸を略横切る流路に沿って液体を方向付けるように、前記チャンバに対して向けられている、請求項39~54のいずれか一項に記載の装置。
【請求項56】
前記流路は前記中心軸と交差しない、請求項55に記載の装置。
【請求項57】
前記流体運動発生器は、前記チャンバの壁に対して略接線である方向に液体を方向付けるように向けられている、請求項55または56に記載の装置。
【請求項58】
前記チャンバは、前記先端部分に結合されるかまたは前記先端部分とともに形成された円筒状部分を有し、前記円筒状部分が、前記先端部分と前記吸引ポートとの間に位置している、請求項42~57のいずれか一項に記載の装置。
【請求項59】
前記先端部分は、約0.5°~約20°の範囲の角度でテーパ状である、請求項39~
58のいずれか一項に記載の装置。
【請求項60】
前記先端部分は、約1°~約10°の範囲の角度でテーパ状である、請求項59に記載の装置。
【請求項61】
前記流体運動発生器は液体ジェット装置を含む、請求項39~60のいずれか一項に記載の装置。
【請求項62】
前記液体ジェット装置は、加圧液体を受け取る入口と、前記加圧液体を前記チャンバ内へと方向付けられるコヒーレントな平行液体ジェットに変換するように構成されたノズルとを備える、請求項61に記載の装置。
【請求項63】
少なくとも1つの通気孔をさらに備え、前記通気孔は、前記吸引ポートが前記吸引ポートから延在する出口通路に沿って前記チャンバと前記通気孔との間に位置するように、前記吸引ポートの下流に配置されている、請求項42~62のいずれか一項に記載の装置。
【請求項64】
少なくとも1つの追加の通気孔をさらに備える、請求項63に記載の装置。
【請求項65】
各通気孔は、前記出口通路に沿って配置され、前記出口通路において流体流出方向に向かって角度が付けられている、請求項63または64に記載の装置。
【請求項66】
ハンドピースと、前記ハンドピースの先端部分の歯結合器とをさらに備え、前記チャンバは、前記歯結合器内に配置されている、請求項39~65のいずれか一項に記載の装置。
【請求項67】
前記歯結合器から延在する封止部材をさらに備え、前記封止部材は、前記治療領域を封止するように構成されている、請求項66に記載の装置。
【請求項68】
前記チャンバと流体連通する操作盤をさらに備え、前記操作盤は、流体を前記チャンバに押し込みかつ前記チャンバから吸引する1つまたは複数のポンプを備える、請求項39~67のいずれか一項に記載の装置。
【請求項69】
前記流体運動発生器は圧力波発生器を含む、請求項39~68のいずれか一項に記載の装置。
【請求項70】
前記アクセスポートの外径または主寸法は、約0.5mm~約5mmの範囲である、請求項39~69のいずれか一項に記載の装置。
【請求項71】
前記アクセスポートの前記外径または主寸法は、約0.5mm~約3mmの範囲である、請求項70に記載の装置。
【請求項72】
前記アクセスポートの前記外径または主寸法は、約1mm~約2mmの範囲である、請求項71に記載の装置。
【請求項73】
前記アクセスポートの内径または主寸法は、約0.3mm~約5mmの範囲である、請求項39~72のいずれか一項に記載の装置。
【請求項74】
前記アクセスポートの前記内径または主寸法は、約0.5mm~約3mmの範囲である、請求項73に記載の装置。
【請求項75】
前記アクセスポートの前記内径または主寸法は、約1mm~約2mmの範囲である、請求項74に記載の装置。
【請求項76】
前記流体運動発生器は、前記治療領域に実質的に脱気された液体を送達するように構成されている、請求項39~75のいずれか一項に記載の装置。
【請求項77】
前記実質的に脱気された液体を前記流体運動発生器に供給するリザーバをさらに備える、請求項76に記載の装置。
【請求項78】
前記流体運動発生器は、前記歯の前記治療領域において広帯域音響出力を発生させるように構成された圧力波発生器である、請求項39~77のいずれか一項に記載の装置。
【請求項79】
前記吸引ポートから前記チャンバ内に延在するフランジをさらに備える、請求項39~78のいずれか一項に記載の装置。
【請求項80】
前記チャンバの先端部分は、前記治療領域との流体連通を提供するように、前記チャンバの側壁に1つまたは複数の側部開口部を備える、請求項39~79のいずれか一項に記載の装置。
【請求項81】
歯を治療する装置であって、
アクセスポートを有するチャンバであって、前記アクセスポートは、前記チャンバが前記歯に結合されると前記歯の治療領域と流体連通するように前記チャンバを配置し、前記アクセスポートが中心軸を有する、チャンバと、
前記チャンバに結合された流体運動発生器であって、前記中心軸の周囲に渦巻流入流体路を発生させるように構成された流体運動発生器と、
前記治療領域および前記チャンバから流体を除去するように構成された吸引ポートと
を備え、
前記吸引ポートに吸引力が加えられた状態で、前記渦巻流入流体路内部を流れる経路において流出流体を前記治療領域から前記吸引ポートに引き出すように構成されている、装置。
【請求項82】
前記アクセスポートの前記中心軸は前記吸引ポートを通過する、請求項81に記載の装置。
【請求項83】
前記吸引ポートは前記中心軸を中心に対称である、請求項81または82に記載の装置。
【請求項84】
前記吸引ポートの中心は前記中心軸に位置する、請求項81~83のいずれか一項に記載の装置。
【請求項85】
前記吸引ポートは、前記チャンバの上壁の中心にまたはその近くに配置されている、請求項81~84のいずれか一項に記載の装置。
【請求項86】
前記中心軸は前記吸引ポートに対して略垂直に位置する、請求項81~85のいずれか一項に記載の装置。
【請求項87】
前記吸引ポートは、前記アクセスポートの主寸法以下の主寸法を有する、請求項81~86のいずれか一項に記載の装置。
【請求項88】
前記吸引ポートは前記アクセスポートより小さい、請求項81~87のいずれか一項に
記載の装置。
【請求項89】
前記吸引ポートは、前記アクセスポートと対向する前記チャンバの上壁に配置されている、請求項81~88のいずれか一項に記載の装置。
【請求項90】
前記吸引ポートの直径または主寸法は、約0.1mm~約5mmの範囲である、請求項81~89のいずれか一項に記載の装置。
【請求項91】
前記吸引ポートの前記直径または主寸法は、約0.1mm~約2mmの範囲である、請求項90に記載の装置。
【請求項92】
前記流体運動発生器は、前記チャンバの側壁に配置され、かつ前記アクセスポートの前記中心軸を略横切るように位置する流れ方向に液体を方向付けるように向けられている、請求項81~91のいずれか一項に記載の装置。
【請求項93】
前記流れ方向は前記中心軸と交差しない、請求項92に記載の装置。
【請求項94】
前記流体方向は、前記チャンバの壁に略接している、請求項92または93に記載の装置。
【請求項95】
前記チャンバは、前記アクセスポートを画定する先端部分を備え、前記先端部分は、前記歯のアクセス開口部内に挿入されるサイズおよび形状であり、前記先端部分は、前記中心軸に向かって先端側にかつ内側にテーパ状である、請求項81~94のいずれか一項に記載の装置。
【請求項96】
前記先端部分の内面は、前記中心軸に向かって先端側にテーパ状である、請求項95に記載の装置。
【請求項97】
前記先端部分の外面は、前記中心軸に向かって先端側にテーパ状である、請求項95または96に記載の装置。
【請求項98】
前記チャンバは、前記先端部分に結合されるかまたは前記先端部分とともに形成された円筒状部分を備え、前記円筒状部分は、前記先端部分と前記吸引ポートとの間で前記先端部分に対して基端側である、請求項95に記載の装置。
【請求項99】
前記先端部分は、約0.5°~約20°の範囲の角度でテーパ状である、請求項95~98のいずれか一項に記載の装置。
【請求項100】
前記先端部分は、約1°~約10°の範囲の角度でテーパ状である、請求項99に記載の装置。
【請求項101】
前記流体運動発生器は液体ジェット装置を含む、請求項81~100のいずれか一項に記載の装置。
【請求項102】
前記液体ジェット装置は、加圧液体を前記チャンバに搬送する入口と、ノズルとを備え、前記ノズルは、前記加圧液体をコヒーレントな平行液体ジェットに変換するように構成されている、請求項101に記載の装置。
【請求項103】
少なくとも1つの通気孔をさらに備え、前記通気孔は、前記吸引ポートが前記吸引ポートから延在する出口通路に沿って前記チャンバと前記通気孔との間に位置するように、前
記吸引ポートの下流に配置されている、請求項81~102のいずれか一項に記載の装置。
【請求項104】
前記吸引ポートの下流で前記出口通路と連通する少なくとも1つの追加の通気孔をさらに備える、請求項103に記載の装置。
【請求項105】
各通気孔は、出口に沿って配置され、かつ前記出口通路において流体流出方向に向かって角度が付けられている、請求項103または104に記載の装置。
【請求項106】
ハンドピースと、前記ハンドピースの先端部分の歯結合器とをさらに備え、前記チャンバは、前記歯結合器内に配置されている、請求項81~105のいずれか一項に記載の装置。
【請求項107】
前記歯結合器から延在する封止部材をさらに備え、前記封止部材は、前記治療領域を封止するように構成されている、請求項106に記載の装置。
【請求項108】
前記チャンバと流体連通する操作盤をさらに備え、前記操作盤は、流体を前記チャンバに押し込みかつ前記チャンバから吸引する1つまたは複数のポンプを備える、請求項81~107のいずれか一項に記載の装置。
【請求項109】
前記流体運動発生器は、前記治療領域を通して圧力波を伝播させて前記治療領域を実質的に洗浄するように構成された圧力波発生器である、請求項81~108のいずれか一項に記載の装置。
【請求項110】
前記アクセスポートの外径または主寸法は、約0.5mm~約5mmの範囲である、請求項81~109のいずれか一項に記載の装置。
【請求項111】
前記アクセスポートの前記外径または主寸法は、約0.5mm~約3mmの範囲である、請求項110に記載の装置。
【請求項112】
前記アクセスポートの前記外径または主寸法は、約1mm~約2mmの範囲である、請求項111に記載の装置。
【請求項113】
前記アクセスポートの内径または主寸法は、約0.3mm~約5mmの範囲である、請求項81~112のいずれか一項に記載の装置。
【請求項114】
前記アクセスポートの前記内径または主寸法は、約0.5mm~約3mmの範囲である、請求項113に記載の装置。
【請求項115】
前記アクセスポートの前記内径または主寸法は、約1mm~約2mmの範囲である、請求項114に記載の装置。
【請求項116】
前記アクセスポートの前記内径または主寸法は、約0.5mm~約3mmの範囲である、請求項115に記載の装置。
【請求項117】
前記アクセスポートの前記内径または主寸法は、約1mm~約2mmの範囲である、請求項116に記載の装置。
【請求項118】
前記流体運動発生器は、前記治療領域に実質的に脱気された液体を送達するように構成されている、請求項81~117のいずれか一項に記載の装置。
【請求項119】
前記実質的に脱気された液体を前記流体運動発生器に供給するリザーバをさらに備える、請求項118に記載の装置。
【請求項120】
前記流体運動発生器は、前記歯の前記治療領域において広帯域音響出力を発生させるように構成された圧力波発生器である、請求項81~119のいずれか一項に記載の装置。
【請求項121】
前記吸引ポートから前記チャンバ内に延在するフランジをさらに備える、請求項81~120のいずれか一項に記載の装置。
【請求項122】
前記チャンバの先端部分は、前記治療領域との流体連通を提供するように、前記チャンバの側壁に1つまたは複数の側部開口部を備える、請求項81~121のいずれか一項に記載の装置。
【請求項123】
歯を治療する方法であって、
チャンバが、前記治療領域と流体連通するように前記チャンバを配置するアクセスポートを有し、前記アクセスポートが中心軸を有し、前記歯の治療領域に前記チャンバをあてがうことと、
前記中心軸の周囲の流体路に沿って流入流体を渦巻流にすることと、
渦巻流の前記流入流体の流体路内部を流れる経路において、流出流体を前記治療領域から吸引ポートに引き出すことと、
を含む方法。
【請求項124】
前記流入流体を渦巻流にすることは、流体運動発生器を作動させることを含む、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記流体運動発生器を作動させることは、前記チャンバと流体連通する操作盤によって前記流体運動発生器を作動させることを含む、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
流出流体を引き出すことは、出口通路によって前記吸引ポートと流体連通している真空ポンプを作動させることを含む、請求項123~125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
流入流体を渦巻流にすることは、前記中心軸を横切る軸に沿って液体を方向付けることを含む、請求項123~126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項128】
前記液体を方向付けることは、前記中心軸からずれている前記横方向軸に沿って前記液体を方向付けることを含む、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
前記流体運動発生器を作動させることは、液体ジェット装置を作動させることを含む、請求項124~128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
前記チャンバは、前記アクセスポートを画定する先端部分を備え、前記先端部分は前記中心軸に向かって先端側にかつ内側にテーパ状であり、前記チャンバをあてがうことは、テーパ状の前記先端部分を前記歯のアクセス開口部に挿入することを含む、請求項123~129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項131】
前記チャンバをあてがうことは、前記歯に対して前記チャンバを押圧することを含む、請求項123~130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項132】
前記チャンバをあてがうことは、前記歯に前記チャンバを取り付けることを含む、請求
項123~130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項133】
前記歯に実質的に脱気された液体を供給することをさらに含む、請求項123~132のいずれか一項に記載の方法。
【請求項134】
前記治療領域において圧力波を発生させることをさらに含む、請求項123~133のいずれか一項に記載の方法。
【請求項135】
圧力波を発生させることは、複数の音響周波数を発生させることを含む、請求項134に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年12月20日に出願された米国仮特許出願第61/740,351号明細書と、2013年11月21日に出願された米国仮特許出願第61/907,345号明細書とに対する優先権を主張する、2013年12月20日に出願された米国特許出願第14/137,937号明細書の一部継続出願であり、それらの各々の内容は、全体としてかつすべての目的で参照により本明細書に組み込まれる。本出願はまた、2014年4月29日に出願された米国仮特許出願第61/986,016号明細書と、2014年6月25日に出願された米国仮特許出願第62/017,208号明細書とに対する優先権も主張し、それらの各々の内容は、全体としてかつすべての目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して歯科学および歯内治療学と、歯を治療する装置、方法および組成物とに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の歯科処置および歯内治療処置では、ドリル、ヤスリ、ブラシ等の機械的器具を用いて、歯から非健全物質を取り除く。たとえば、歯科医は、歯の表面のう蝕領域(たとえば虫歯)を機械的に破壊するためにドリルを用いることが多い。こうした処置は、患者には苦痛であることが多く、多くの場合、すべての罹患物質を除去することはできない。さらに、従来の歯根管治療では、罹患歯の歯冠を通して開口部が開けられ、歯根管系に歯内治療用ヤスリが挿入されて根管空間が開口され、その中の有機物質が除去される。その後、歯根管にガッタパーチャまたは流動性閉塞材等の固体物が充填され、歯が修復される。しかしながら、この処置では、根管空間からすべての有機物質が除去されるとは限らず、それによって感染等、処置後合併症に至る可能性がある。さらに、歯内治療用ヤスリの動きおよび/または他の正圧源が、有機物質を、根尖開口部を通して根尖周囲の組織内に押し込み得る。場合によっては、歯内治療用ヤスリ自体の端部が根尖開口部を貫通し得る。こうした事象により、根尖開口部の近くの軟組織に外傷がもたらされ、処置後感染症に至る可能性がある。したがって、改善された歯科治療および歯内治療が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ここで、開示する装置、方法および組成物の特徴を例示するために、本開示のさまざまな非限定的態様が提示される。歯内治療用の装置、方法および組成物の例が提示される。
【0005】
一の実施形態では、歯を治療する装置が開示される。本装置は、アクセスポートを有するチャンバを含むことができ、アクセスポートは、チャンバが歯に結合されると歯の治療領域と流体連通するようにチャンバを配置し、アクセスポートは中心軸を有する。本装置は、チャンバ内に回転流体運動を発生させるように構成された流体運動発生器を含むことができる。本装置は、チャンバのアクセスポートとは反対の側においてチャンバと連通し、かつアクセスポートに対してアクセスポートの中心軸が吸引ポートを通過するように配置されている吸引ポートを含むことができる。
【0006】
他の実施形態では、歯を治療する装置が開示される。本装置は、アクセスポートを画定する先端部分を有するチャンバを備えることができ、アクセスポートは、チャンバが歯に結合されると歯の治療領域と流体連通するようにチャンバを配置し、アクセスポートは中
心軸を有する。本装置は、チャンバに結合された流体運動発生器を備えることができ、流体運動発生器は、チャンバ内に回転流体運動を発生させるように構成されている。先端部分は、歯のアクセス開口部内に挿入されるようなサイズおよび形状とすることができ、先端部分は、中心軸に向かって先端側にテーパ状である。
【0007】
他の実施形態では、歯を治療する装置が開示される。本装置は、アクセスポートを有するチャンバを含むことができ、アクセスポートは、チャンバが歯に結合されると歯の治療領域と流体連通するようにチャンバを配置し、アクセスポートは中心軸を備える。本装置は、チャンバに結合された流体運動発生器を含むことができ、流体運動発生器は、中心軸の周囲に渦巻流入流体路を発生させるように構成されている。本装置は、治療領域およびチャンバから流体を除去するように構成された吸引ポートを含むことができる。本装置は、吸引ポートに吸引力が加えられた状態で、渦巻流入流体路内部を流れる経路において流出流体を治療領域から吸引ポートに引き出すように構成することができる。
【0008】
さらに他の実施形態では、歯を治療する方法が開示される。本方法は、歯の治療領域にチャンバをあてがうことを含み、チャンバは、治療領域と流体連通するようにチャンバを配置するアクセスポートを有し、アクセスポートが中心軸を備える。本方法は、中心軸の周囲を流体路に沿って流入流体を渦巻流にすることを含み得る。本方法は、渦巻流入流体路内部を流れる経路において、流出流体を治療領域から吸引ポートに引き出すことを含み得る。
【0009】
一の実施形態では、歯を治療する装置が開示される。本装置は、チャンバを備えることができ、チャンバは、チャンバが歯に結合されると歯の治療領域と流体連通するようにチャンバを配置するアクセスポートを有する。本装置は、チャンバに結合された流体運動発生器を含むことができ、流体運動発生器は、チャンバ内に流体運動を発生させるように、アクセスポートの向こう側に流体を方向付けるように構成されている。
【0010】
他の実施形態では、歯を治療する装置が開示される。本装置は、歯に結合するように構成されたチャンバを備えることができる。チャンバ内に流体運動発生器を配置することができ、流体運動発生器は、チャンバ内に流体の回転運動を発生させるように構成することができる。チャンバが歯に結合されるとき、流体運動発生器を歯の外側に配置することができる。
【0011】
他の実施形態では、歯を治療する方法が開示される。本方法は、歯のアクセス開口部の近くに流体運動発生器を配置することを含み得る。歯のアクセス開口部の向こう側に流体の流れを通すように、流体運動発生器を作動させることができる。歯の治療領域において流体運動を発生させることができる。
【0012】
他の実施形態では、歯を治療する方法が開示される。本方法は、歯にチャンバを結合することを含み得る。チャンバは、内部に配置された流体運動発生器を有することができる。流体運動発生器は歯の外側に配置することができる。チャンバ内に流体の回転運動を発生させるように流体運動発生器を作動させることができる。
【0013】
他の実施形態では、歯を治療する装置が開示される。装置は、歯に結合するように構成されたチャンバを含むことができる。本装置は、チャンバ内に配置されかつチャンバ内に流体の回転運動を発生させるように構成された流体運動発生器を含むことができる。
【0014】
さらに他の実施形態では、歯を治療する装置が開示される。本装置は、歯に結合するように構成されたチャンバを備えることができる。チャンバ内に複数の流体運動発生器を配置することができる。
【0015】
他の実施形態では、歯を治療する方法が開示される。本方法は、歯にチャンバを結合することを含み得る。チャンバは、本明細書に開示する複数の流体運動発生器を含むことができる。歯を洗浄するように複数の流体運動発生器を作動させることができる。
【0016】
他の実施形態では、歯を治療する方法が開示される。本方法は、歯にアクセス開口部を形成することを含み得る。本方法は、アクセス開口部の外周部の周囲に歯シール剤を施すことを含み得、歯シール剤は周囲境界を有する。本方法は、歯シール剤にチャンバを固定するため、歯シールの周囲境界内にチャンバを位置決めすることを含み得る。
【0017】
この概要を示す目的で開示されるいくつかの発明において、いくつかの態様、利点および新規の特徴が要約される。本発明のいかなる特定の実施形態によっても、こうした利点の必ずしもすべてを達成し得るとは限らないことが理解されるべきである。したがって、たとえば、当業者は、本明細書に教示されている1つの利点または一群の利点を、本明細書に教示または示唆され得る他の利点を必ずしも達成することなく、具現化または実施し得ることを理解するであろう。さらに、上述したことは、いくつかの開示される発明を要約するように意図されており、本明細書に開示される発明の範囲を限定するようには意図されていない。
【0018】
歯を洗浄する装置および方法の実施形態の上述したおよび他の特徴、態様および利点について、本発明の実施形態を限定するのではなく例示するように意図されているさまざまな実施形態の図面を参照して、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】歯根管歯から非健全または望ましくない物質を除去することができる構成要素を含むシステムの概略図である。
図1B】歯の外面の治療領域から非健全または望ましくない物質を除去することができる構成要素を含むシステムの概略図である。
図2A】歯に結合された結合部材と歯の外側のチャンバ内に配置された先端部分を有する圧力波発生器との概略側断面図である。
図2B】歯に結合された結合部材と歯の内側に配置された先端部分を有する圧力波発生器との概略側断面図である。
図3A】歯科処置に使用するために流体の高速ジェットを発生させるように適合されたシステムの実施形態を概略的に示すブロック図である。
図3B】歯の一部に液体ジェットを送達するガイドチューブを備えたハンドピースの実施形態を示す概略側面図である。
図4A】本明細書に開示する圧力波発生器の異なる実施形態によって発生する出力のあり得る例を概略的に示すグラフである。
図4B】本明細書に開示する圧力波発生器の異なる実施形態によって発生する出力のあり得る例を概略的に示すグラフである。
図4C】複数の周波数で発生する音響出力スペクトル1445のグラフである。
図5】貫通する流体入口を有する結合部材の概略側断面図である。
図6】貫通する流体入口および流体出口を有する結合部材の概略側断面図である。
図7A】流体入口と、流体出口と、チャンバおよび/または歯の内部の圧力を調節するように構成された通気孔とを有する結合部材の概略側断面図である。
図7B】結合部材に結合された複数の圧力波発生器の概略側断面図である。
図8A】係止歯シール剤によって歯に取り付けられたまたは結合された結合部材の概略側断面図である。
図8B】歯シール剤の湾曲面と嵌合するような形状である湾曲先端部分を有する結合部材の概略側断面図である。
図8C】歯に形成されたアクセス開口部を通して適合するサイズおよび形状である嵌合チューブを備える位置合わせの特徴を有する結合部材の概略側断面図である。
図9A】結合部材と液体ジェット装置を備える圧力波発生器との概略側断面図である。
図9B】結合部材と発光素子を備える圧力波発生器との概略側断面図である。
図9C】結合部材と振動する機械的構成要素を備える圧力波発生器との概略側断面図である。
図9D】結合部材3と攪拌構成要素を備える圧力波発生器との概略側断面図である。
図10A】結合部材であって、結合部材のチャンバ内に回転流体運動を発生させるように構成された流体入口を備える圧力波発生器を有する結合部材の側断面図である。
図10B】結合部材であって、結合部材のチャンバ内に回転流体運動を発生させるように構成された液体ジェット装置を備える圧力波発生器を有する結合部材の側断面図である。
図10C】結合部材であって、結合部材のチャンバ内に回転流体運動を発生させるように構成された発光素子を備える圧力波発生器を有する結合部材の側断面図である。
図10D】歯根管の中心軸Zと実質的に位置合わせされた圧力波発生器を有する結合部材の側断面図である。
図10E】第1圧力波発生器および第2圧力波発生器を有する結合部材の側断面図である。
図10F】チャンバ内に少なくとも部分的に配置されかつチャンバ内に渦巻流を発生させるように構成された圧力波発生器の概略上面図である。
図10G】チャンバ内に少なくとも部分的に配置されかつチャンバ内に逆渦巻流流体運動を発生させるように構成された複数の圧力波発生器の概略上面図である。
図11A】さまざまな歯洗浄装置の出力電力を測定するように設計された実験設備の概略図である。
図11B】試験される各装置に対して経時的な(秒単位)水中聴音器による電圧(ボルト単位)出力をプロットしたグラフである。
図12A】開示される圧力波発生器における非脱気液体および脱気液体の使用を比較する歯根管の画像を示す。
図12B】非脱気液体および脱気液体を使用する技法に対して出力電力を比較するグラフである。
図13】異なる治療流体および組成に対して、本出願人の装置対他の装置に対する組織溶解の速度(%/秒の単位)を比較するグラフである。
図14A】治療中の歯根管の根尖開口部でまたは根尖開口部の近くで測定された圧力をプロットしたものである。
図14B】治療中の歯根管の根尖開口部でまたは根尖開口部の近くで測定された圧力をプロットしたものである。
図14C】本出願人のシステムおよびさまざまな針に対するさまざまなシミュレーションされた根尖周囲圧力に対する、根尖を通して押し出される材料の質量をプロットしたものである。
図15】一の実施形態による、歯科治療システムの概略側断面図である。
図16図15に示すシステムの概略上面断面図である。
図16A】流入流体流路および流出流体流路を示す、図15に示す歯の拡大側断面図である。
図16B】流入流体流路および流出流体流路を示す、図15に示す歯の拡大側断面図である。
図17】複数の根管を有する歯を治療するように構成された歯結合器の概略側断面図である。
図17A図17に示す歯結合器の上面断面図である。
図18】複数の根管を有する歯を治療するように構成された歯結合器の概略側断面図である。
図18A図18に示す歯結合器の上面断面図である。
図19】他の実施形態による、歯を治療するように構成された歯結合器の概略側断面図である。
図20】ノズルを通ってチャンバに入る加圧液体を示す、図19に示す歯結合器の概略上面断面図である。
図21A】歯の治療領域を洗浄するように構成されたハンドピースの概略斜視図である。
図21B】切断面21B-21Bに沿った図21Aに示すハンドピースの概略側断面図である。
図22図21Bの拡大側断面図である。
図23】切断面23-23に沿った図21Aのハンドピースの概略側断面図である。
図24A】切断面24A-24Aに沿った、図21Aに示すハンドピースの一部の概略斜視上面断面図である。
図24B図24Aに示す部分の上面図である。
図24C】切断面24C-24Cに沿った、図21Aに示すハンドピースの一部の上面断面図である。
図24D】他の実施形態による、図21A図24Cに示すハンドピースの側断面図である。
図25A図21A図24Cに示すハンドピースを用いる治療処置の完了後の歯の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図25B図21A図24Cに示すハンドピースを用いる治療処置の完了後の歯の走査型電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を通して、参照する要素間の概略的な対応関係を示すために参照番号を再使用する場合がある。図面は、本明細書に記載する実施形態例を例示するために提供され、本開示の範囲を限定するようには意図されていない。
【0021】
本開示は、歯科処置および/または歯内治療処置を行う装置、方法および組成物について記載する。本明細書に開示するさまざまな実施形態は、歯の治療領域から、たとえば歯の中からかつ/または歯の外面から、非健全物質を有効にかつ安全に除去することができる。特に、本明細書に開示する実施形態は、非健全有機物、無機物、歯髄組織、う蝕、ステイン、歯石、歯垢、バイオフィルム、細菌、膿、う蝕歯質および食べかす等の非健全物質を、健全な象牙質およびエナメルに実質的に損傷を与えることなく、治療領域から除去することができる。たとえば、開示する装置、方法および組成物は、歯根管洗浄処理とともに使用するのが有利で、たとえば、歯根系から有機物および/または無機物等の非健全または望ましくない物質を効率的に除去し、かつ/または歯根管系を消毒することができる。有機物質(または有機物)は、たとえば、生きているか、炎症を起こしているか、感染しているか、罹患しているか、壊死しているかまたは腐敗しているかに関わらず、軟組織、歯髄、血管、神経、結合組織、細胞物質、膿および微生物等、健全な歯もしくは罹患歯または歯根管系に通常見られる有機物質を含む。無機物は、歯根管系に頻繁に存在する石灰化組織および石灰化構造を含む。いくつかの実施形態では、歯根管の治療の後に、歯根管を閉塞材(たとえば、固体もしくは半固体状態に硬化させることができる流動性閉塞材、ガッタパーチャまたは他の固体もしくは半固体材料)で充填することができる。
【0022】
I.開示するさまざまな実施形態の概説
A.システム概説
図1Aは、歯10から非健全または望ましくない物質を除去することができる構成要素を含むシステム1の概略図である。図1Aに示す歯10は、小臼歯、たとえば、ヒト等の哺乳類の犬歯と大臼歯との間に位置する歯である。歯10は、象牙質16の硬質層とエナメル17の非常に硬質の外層とを含む、硬質の構造的な保護層を含む。象牙質16内に、歯髄腔11が画定されている。歯髄腔11は、各歯根12の根尖14に向かって延在する1つまたは複数の歯根管13を備える。歯髄腔26および歯根管13は歯髄を収容し、歯髄は、神経、血管、結合組織、象牙芽細胞、ならびに他の組織および細胞構成要素を備える、軟質の血管組織である。血管および神経は、歯根12の根尖14の先端近くの小さい開口部、すなわち根尖孔または根尖開口部15を通って、歯根管13に入り/歯根管13から出る。本明細書に示す歯10は小臼歯であるが、本明細書に開示する実施形態は、有利には、大臼歯、犬歯、門歯等を含む、任意の好適なタイプの歯を治療するために使用することができる。
【0023】
図1Aに示すように、システム1を用いて、歯10の内部から、たとえば歯10の歯根管13から非健全物質(有機物または無機物等)を除去することができる。たとえば、歯10に、たとえば、咬合面、頬側面または舌側面に、歯内治療用アクセス開口部18を形成することができる。アクセス開口部18は、歯10の歯髄腔11の一部に通じる。システム1は、操作盤2、圧力波発生器5、および歯10に結合するように適合された結合部材3を含むことができる。結合部材3は、内部に流体を保持するように構成されたチャンバ6を画定することができる。いくつかの実施形態では、臨床医により、歯に対して結合部材3を保持または押圧することができる。いくつかの実施形態では、たとえば接着剤を用いて、歯に結合部材3を取り付けることができる。1つまたは複数の導管4が、操作盤2を結合部材3および圧力波発生器5に電気的、機械的かつ/または流体的に接続することができる。操作盤2は、治療処置中に圧力波発生器5を動作させるように構成された、制御システムおよびさまざまな流体管理システムを含むことができる。
【0024】
本明細書で説明するように、洗浄処置においてシステム1を用いて、歯根管系全体を実質的に洗浄することができる。閉塞処置等、他の実施形態では、システム1を用いて、歯根管全体を閉塞材または充填材で実質的に充填することができる。たとえば、本明細書に開示するさまざまな実施形態では、圧力波発生器5は、チャンバ6内に流体運動24をもたらすのに十分な出力および比較的低い周波数の圧力波23を発生させることができ(それにより、本明細書に開示する圧力波発生器5は流体運動発生器として作用することができる)、歯の内側または外側のいずれかの歯の表面に表面効果キャビテーションをもたらすのに十分な出力および比較的高い周波数の圧力波を発生させることができる。すなわち、たとえば、本明細書に開示する圧力波発生器5は、流体運動発生器として作用して、歯10の中または歯10の近くに大規模またはバルク流体運動24を発生させ、また、より高い周波数でより小規模の流体運動を発生させることができる。いくつかの構成では、チャンバ6内の流体運動24は、歯10および歯根管13内に、歯根管13を洗浄しかつ/または充填することができる、渦75、渦巻流76(図2Bを参照)等の誘導流体運動を発生させることができる。
【0025】
図1Bは、歯の外面の治療領域91から非健全または望ましくない物質を除去することができる構成要素を含むシステム1の概略図である。たとえば、図1Aにおけるように、システム1は、結合部材3および圧力波発生器5を含むことができる。結合部材3は、1つまたは複数の導管4によって操作盤2と連通することができる。しかしながら、図1Aのシステム1とは異なり、結合部材3は、歯10の外面の治療領域91に結合される。たとえば、図1Bのシステム1は、歯10の外面、たとえば歯10のう蝕領域を洗浄するように作動させることができる。他の実施形態では、システム1は、歯10の外面の治療済み領域を充填するように作動させることができる。図1Aの実施形態と同様に、結合部材3およびチャンバ内に流体運動24を発生させることができ、それが、歯10の治療領域
91を洗浄しかつ/または充填するように作用することができる。
【0026】
図2Aは、歯10に結合された結合部材3と、歯10の外側のチャンバ6内に配置された先端部分25を有する圧力波発生器5との概略側断面図である。結合部材3は、歯10に結合するように適合させ、歯科処置中に安定したプラットフォームを提供することができる。結合部材3は、流体22を保持するように構成されたチャンバ6を画定し、または含むことができる。たとえば、チャンバ6を流体22で実質的に充填して伝播媒体を提供することができ、伝播媒体上かつ/または伝播媒体を通じて、圧力波発生器5が作用する。流体22は、さまざまな洗浄処理における治療流体であって、(歯根管治療、う蝕領域の治療、歯石および他の非健全沈着物の治療等において)歯の治療領域を実質的に洗浄することができる。代替手段として、閉塞処理において、流体22は、固体状態に硬化させることができる流動可能状態を有する流動性閉塞材を含むことができ、治療領域を実質的に充填するかまたは閉塞するように、圧力波発生器5を作動させることができる。閉塞材は、治療領域を充填すると、熱、光または化学物質のいずれでもよい触媒によって、硬化させることができる。
【0027】
さらに、チャンバ6および結合部材3は、流体22および/または廃棄物が歯10から出るのを防止することができる。さまざまな実施形態では、結合部材3はまた、圧力が所定閾値を超えて上昇した場合に液体がチャンバ6から流出することができるように、歯10の中の流体圧を調節するように構成することも可能である。図2Aの実施形態では、結合部材3は、ハンドピース20(たとえば、図3Bを参照)の先端部分21を含む。たとえば、ハンドピース20の先端部分21は、チャンバ6を密閉する壁を画定するような形状とすることができる。他の実施形態では、機械的にクラスプもしくはクランプにより、歯科用接着剤により、または患者が結合部材3を噛むことによって加えられる圧力により、歯10に結合部材3をあてがうことができる。さらに他の実施形態では、ハンドピース20の先端部分21に、別個のキャップまたは流体保持器を取外し可能に結合することができる。
【0028】
歯科治療中、臨床医は、歯10に結合部材3をあてがうことができる。図1Aおよび図2Aに示すように、たとえば、臨床医は、アクセス開口部18の上に結合部材3をあてがうことができる。臨床医は、歯シール剤26を用いて歯10に結合部材3を固定することができる。いくつかの実施形態では、歯10の治療領域に結合部材3を位置合わせするため、1つまたは複数の位置合わせのための特徴を付与することができる(たとえば、図8A図8Cを参照)。いくつかの実施形態では、臨床医が、結合部材3および圧力波発生器5を歯10に対して所望の向きに回転させるかまたは向けることができるように、歯10に結合部材3を取り付けることができる(たとえば、図8Bを参照)。さらに他の実施形態では、臨床医は、歯10の外面に結合部材3および圧力波発生器5をあてがうことができる。たとえば、臨床医は、歯10の外面の近くに形成されたう蝕領域の上に結合部材3をあてがうことができる。さらに他の実施形態では、臨床医または使用者は、歯垢、歯石、バイオフィルム等の望ましくない歯科沈着物を除去するように、歯10の外面の上に結合部材3をあてがうことができる。
【0029】
結合部材3に、圧力波発生器5を結合するかまたは一体的に形成することができる。いくつかの実施形態では、圧力波発生器5は、結合部材3からチャンバ6の一部を通って延在する細長い部材を備えることができる。図1Aおよび図2Aに示すように、圧力波発生器5の先端部分25を、結合部材3によって画定されたチャンバ5内に配置することができる。図2Aに示すように、圧力波発生器5の先端部分25を、歯10の外側、たとえば歯髄腔11の外側に配置することができる。他の実施形態では、圧力波発生器5の先端部分25は、歯10の内部空間、たとえば歯髄腔11内に延在することができる。たとえば、図2Bは、歯10に結合された結合部材3と、歯10の内側、たとえば歯髄腔11の一
部の内側に配置された先端部分25を有する圧力波発生器5との概略側断面図である。
【0030】
洗浄処置中、圧力波発生器5の先端部分25を、結合部材3によってチャンバ6内に保持される治療流体に浸漬することができる。圧力波発生器5を作動させることができ、歯10から、非健全物質(たとえば、非健全有機物、無機物、歯髄組織、う蝕、ステイン、歯石、歯垢、バイオフィルム、細菌、膿、う蝕歯質および食べかす)を安全にかつ効率的に除去することができる。たとえば、図1A図2Bに示す実施形態では、歯髄腔11および歯10の歯根管13から、罹患歯髄および他の望ましくない物質を除去することができる。
【0031】
圧力波発生器5は、圧力波発生器5から離れた歯10の治療領域を洗浄することができる。たとえば、歯根管処置では、圧力波発生器は、歯10に形成される横方向に延在する細管ならびにさまざまな小さい亀裂および裂け目を含め、実質的に歯根管13全体を洗浄することができる。同様に、う蝕領域、歯垢、他の歯科沈着物等を洗浄する処置等、他の洗浄処置では、本明細書に開示する圧力波発生器5は、実質的に歯の治療領域全体を洗浄することができる。したがって、本明細書に開示する圧力波発生器5は、治療領域全体から非健全物質を除去することにより、患者の転帰を改善することができ、それにより、治療領域における非健全物質の感染または再発のリスクが低減する。
【0032】
他の実施形態では、圧力波発生器5は、洗浄後に歯の治療領域(たとえば、洗浄済みの歯根管空間、歯の外面の洗浄済みのう蝕領域等)を充填するかまたは閉塞することができる。たとえば、歯根管処置では、開示する圧力波発生器5は、主根管、横方向に延在する細管、およびさまざまな小さい亀裂、空間、裂け目等を含む歯根管系全体を実質的に充填することができる。本明細書に開示する圧力波発生器5によって閉塞処置は改善され、洗浄された根管内の非閉塞空間からの感染のリスクを低減させることによって、患者の転帰を改善することができる。
【0033】
本明細書に開示する圧力波発生器5のさまざまな実施形態は、いくつかの異なる現象の組合せを用いて歯10を洗浄し、かつ/または充填することができる。たとえば、圧力波発生器5は、流体22を通って歯10の内側に伝播する圧力波23を発生させることができ、圧力波発生器5はまた、チャンバ6内で流体22の運動24を発生させる流体運動発生器として作用することも可能である。
【0034】
本明細書に開示する流体運動発生器(たとえば、圧力波発生器5)によって発生する流体運動24は、チャンバ6および/または結合部材3のアクセスポートの向こう側に流体を流すことによって引き起こすことができる。たとえば、アクセスポートの平面に対して実質的に平行でありかつ/または歯根管13の中心軸に対して垂直な方向において、アクセスポートの向こう側に流体22を流すことができる。本明細書に開示する各実施形態に記載する流体運動24は、チャンバ6内における回転流パターンまたは非回転流パターンを含むことができる。流体運動24は、層流または乱流であり得る。たとえば、層流の流体運動24では、相対的に大きいまたはバルク流体運動を発生させることができる。乱流の流体運動24では、相対的に小さい流体運動または擾乱を発生させることができる。いくつかの構成では、層流および乱流の組合せを発生させることができる。チャンバ内の流体流24と、歯の中の誘導された流れ(たとえば、渦、渦巻流等)を、実質的に連続して発生させることができ、またはそれは断続的であるかもしくは周期的であり得る。いくつかの実施形態では、流体運動24は、回転運動を含むことができ、たとえば、流体は、歯根管13の中心軸を横切る軸に沿って回転することができる(たとえば、図2Aを参照)。いくつかの構成では、流体運動24は、歯根管13の中心軸に対して実質的に垂直な軸に沿って流れる渦75を引き起こすことができる(たとえば、図2Aを参照)。他の実施形態では、歯根管13の中心軸を中心に、流体運動24を発生させることができ、その流
体運動24は、根管13を通って伝播することができる渦巻流76を発生させることができる(たとえば、図2Bを参照)。さらに他の実施形態では、流体運動24は、平面流体流、たとえば、平面波面を含む流体流を含むことができる。いくつかの実施形態では、流体運動24は、不規則な流れまたはカオス流を含むことができる。
【0035】
本明細書で説明するように、圧力波23は、歯10から非健全物質を安全かつ効率的に分離することを可能にするように、治療流体と非健全物質との間でもたらされる化学反応を促進することができる。たとえば、歯10を通して音響キャビテーションを引き起こすように、圧力波発生器5を構成することができ、それは、主歯根管13等の歯の比較的広い空間から、かつ歯10に形成され得る細管ならびにさまざまな亀裂および裂け目等、歯10のきわめて小さい空間から、非健全物質を除去するのに役立つことができる。
【0036】
歯洗浄処置において、流体22の運動24はまた、流体22と歯の中の非健全物質との間の化学反応を加速させるように作用することができる、流体22で使用される化学反応物質を補給することにより、歯10の洗浄を改善することも可能である。さらに、流体22の運動24は、歯10において、歯10から非健全または望ましくない物質を取り除き、取り除かれた物質を歯10の外側に洗い流すのに役立つ推進力を与えることができる。本明細書で説明するように、流体22の運動24はまた、歯10の根尖開口部15におけるまたはその近くの根尖圧力を低減させることも可能である。
【0037】
したがって、本明細書に開示するシステムによって発生する圧力波23および運動24は、歯の大きい空間および小さい空間両方から非健全物質を洗浄することにより、かつ流体22と歯10から除去される非健全物質との間の化学反応を促進することにより、他の治療と比較して患者の転帰を改善することができる。さらに、歯10は、ヤスリ、ドリル、ブラシまたは他の研磨器具を使用することなく洗浄されるため、本明細書に開示するシステムおよび方法は、患者にとって不快感がほとんどまたはまったくなく歯を洗浄することができる。さらに、閉塞処置では、本明細書に記載する実施形態は、後により詳細に説明するように、実質的に根管および/または根管からの分岐構造全体を有利に閉塞するかまたは充填することができる。
【0038】
さまざまな実装形態では、圧力波発生器5は、本明細書に記載するさまざまな装置の1つまたは複数の実施形態を備える。たとえば、圧力波発生器5は、液体ジェット装置を含むことができる。いくつかの実施形態では、液体ジェット装置は、流路または内腔を有する位置決め部材(たとえば、ガイドチューブ)を備え、その流路または内腔に沿ってまたはそこを通って、液体ジェットが伝播することができる。位置決め部材の先端部分は衝突面を含むことができ、そこに、液体ジェットが衝突し、偏向して複数のジェットまたは噴霧になる。位置決め部材の先端部分は、1つまたは複数の開口部を含むことができ、それにより、ジェットが周囲環境の流体(たとえば、歯室内の流体)と相互作用することができ、また、偏向した液体が位置決め部材から出て、周囲環境ならびにチャンバ6および/または歯10の中の流体22と相互作用することができる。これらの相互作用の結果、歯10の中の圧力波および流体運動が発生し、少なくとも部分的に歯10を洗浄することができる。歯10の中に流体運動24を発生させることにより、圧力波発生器5は、流体運動発生器として作用することができる。いくつかの治療方法では、位置決め部材の先端部分またはその近くに配置された開口部は、結合部材3により、チャンバ6に保持されている流体22に浸漬される。
【0039】
いくつかの実施形態では、圧力波発生器5は、音波、超音波またはメガソニック装置(たとえば、音波、超音波もしくはメガソニックパドル、ホーンまたは圧電変換器)、機械によって動作する撹拌機(たとえば、伝導プロペラもしくはパドルまたは回転/振動/脈動ディスクもしくはシリンダ)、チャンバ6に光エネルギーを提供することができる光学
システム(たとえば、チャンバ6内にレーザ光を伝播させる光ファイバ)、または歯の中にもしくは歯の中の伝播媒体(たとえば、歯室内に保持されている流体)の中に、十分な回転流体運動および音波を発生させることができる他の任意の装置を含むことができる。
【0040】
B.歯の治療の促進
本明細書に開示する実施形態は、患者にもたらす不快および/または苦痛を最小限にするかまたはまったくなくす一方で、歯から望ましくないまたは非健全物質を、実質的にすべて除去されるように有利に除去することができる。たとえば、臨床医が作動させると、圧力波発生器5は、歯の治療領域、たとえば、除去されるべき非健全または望ましくない物質を含む歯の領域から、離れた位置に配置された場合であっても、除去されるべき非健全物質と相互作用するさまざまな流体効果を引き起こすことができる。圧力波発生器5は、チャンバ6および歯10の中の液体の比較的大規模なまたはバルク循環または移動24を引き起こし、かつ流体22および歯10を通って伝播する圧力波23も発生させるエネルギーを、流体22に与えることができる。発生した流体運動24および圧力波23は、歯10の洗浄を促進するように流体22の特性を拡大または強化することができる。いくつかの実施形態では、圧力波発生器5を用いて、歯根管および/または歯の他の治療済み領域を閉塞するかまたは充填することができる。
【0041】
(1)さまざまな治療流体の化学的性質
上で説明したように、洗浄処置では、流体22は、歯10から非健全または望ましくない物質を除去するのに役立つように歯10およびチャンバ6内に導入することができる治療流体を含むことができる。治療流体は、歯10から除去されるべき望ましくないまたは非健全物質と反応しているときの流体の化学的特性に基づいて選択することができる。本明細書に開示する治療流体は、たとえば、水、生理食塩水等を含む任意の好適な流体を含むことができる。たとえば、組織溶解剤(たとえばNaOClもしくは漂白剤)、消毒剤(たとえばクロルヘキシジン)、麻酔、フッ素療法剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸および他の任意の好適な化学物質を含むさまざまな化学物質を、さまざまな目的に対して治療流体に添加することができる。たとえば、他の任意の脱灰液、消毒液、鉱化液または漂白液を同様に使用することができる。臨床医は、1つまたは複数の処理サイクルでさまざまな流体を歯に供給することができ、逐次または同時に異なる流体を供給することができる。
【0042】
いくつかの治療サイクル中、漂白剤系溶液(たとえば、NaOClを含む溶液)を用いて、罹患組織(たとえば、歯根管13内の罹患有機物)を解離し、かつ/または歯10から細菌を除去することができる。治療液の一例は、0.3%~6%の漂白剤(NaOCl)を含む水または生理食塩水を含む。いくつかの方法では、漂白剤濃度が1%未満である場合、漂白剤の存在下での組織溶解および歯科沈着物除去は発生しないことがあり得る。本明細書に開示するいくつかの処理方法では、組織溶解および歯科沈着物除去は、より低い(またははるかに低い)濃度で発生し得る。
【0043】
他の処理サイクル中、臨床医は、EDTA系溶液を供給して、歯10から望ましくないまたは非健全石灰化物質を除去することができる。たとえば、歯10および/または歯根管13の一部が形成されるか、または、処置中に形成された場合、根管13の壁にスミア層が形成され得る。スミア層は、歯髄の残存物、細菌、象牙質および他の物質を含み得る、残がいの半結晶層を含み得る。EDTAを含む治療流体を用いて、スミア層および/または歯10の石灰化沈着物の一部またはすべてを除去することができる。
【0044】
さらに他のサイクル中、たとえば、臨床医は、実質的に水を含む治療流体を供給することができる。水は、治療の前、治療中および/または治療の後に、歯を洗浄するために用いることができる。たとえば、治療サイクルの間に他の治療流体(たとえば、漂白剤また
はEDTA)の残存物を除去するために、水を供給することができる。漂白剤は塩基傾向のpHを有するため、かつEDTAは酸であるため、化学反応に悪影響を及ぼす可能性を回避するために、漂白剤による処置とEDTAによる処置との間に歯10およびチャンバ6を洗浄することが重要であり得る。さらに、治療中に粉砕される分離した物質の除去に役立つように十分な推進力で、水を供給することができる。たとえば、水を用いて、歯10から廃棄物を搬送することができる。
【0045】
さまざまな溶液を組み合わせて好適な濃度で、同時にまたは逐次使用することができる。いくつかの実施形態では、化学物質および化学物質の濃度は、臨床医により、かつ/またはシステムにより、患者の転帰を改善するように処置を通して変更することができる。たとえば、治療処置例の間、臨床医は、水、漂白剤およびEDTAの使用を、これらの化学物質の各々に関連する利点を活かすために交互にすることができる。一例では、臨床医は、水サイクルで開始して、あらゆる初期の残がいを一掃し、その後、漂白剤サイクルに進んで、歯から罹患組織および細菌を解離することができる。次に、水サイクルを用いて、歯10から漂白剤およびあらゆる残っている分離した物質を除去することができる。その後、臨床医は、歯にEDTAを供給して、歯10から石灰化沈着物および/またはスミア層の一部を除去することができる。次に、水を供給して、後続する漂白剤サイクルの前に、歯10からEDTAおよびあらゆる残っている分離した物質を除去することができる。臨床医は、処置を通して、治療流体のサイクルを絶えず変更することができる。上記例は、単に例示を目的とするものである。治療液のサイクルの順序は、任意の好適な方法および順序で変更することができる。
【0046】
したがって、本明細書に開示する実施形態で使用する治療流体は、望ましくないまたは非健全物質と化学的に反応して、歯10の健全な部分から非健全物質を解離することができる。治療流体を用いて、歯10から廃棄流体および/または分離したもしくは剥離した物質を洗い流すことも可能である。いくつかの実施形態では、本明細書のセクションVIIIでより詳細に説明するように、(任意の好適な組成を含む)治療液を脱気することができ、それにより、いくつかの処理においてキャビテーションを促進しかつ/または気泡の存在を低減させることができる。いくつかの実施形態では、溶存ガス含有量は、約1容量%未満とすることができる。治療流体22の追加の特性および特徴については、本明細書のセクションVIIにおいてより詳細に提示する。
【0047】
(2)圧力波を用いる洗浄の促進
本明細書で説明するように、圧力波発生器5は、伝播媒体(たとえば治療流体)を介して、1つもしくは複数の歯および/または歯肉を含み得る治療領域まで圧力波23を伝播させることにより、歯から非健全物質を除去することができる。理論によって限定されないが、本明細書では、圧力波23が望ましくない物質を除去するいくつかのあり得る方法について提示する。これらの原理および上述した原理は、概して、本明細書に開示する各実施形態に対して適用可能であり得ることに留意されたい。
【0048】
いくつかの構成では、発生した圧力波23によってキャビテーションを引き起こすことができる。液体(たとえば、水または他の治療流体)に高強度の圧力または圧力波23を放射すると、音響キャビテーションが発生し得る。小さいキャビテーション気泡の発振または爆縮的崩壊によって、たとえば、強度の小規模局所化熱、衝撃波、ならびに/またはマイクロジェットおよびせん断流を生成することにより、洗浄プロセスをさらに促進することができる、局所化効果をもたらすことができる。したがって、いくつかの治療方法では、音響キャビテーションは、化学反応、ソノケミストリ、ソノポレーション、軟組織/細胞/細菌の解離、剥離およびバイオフィルムの破壊を促進することを担うかまたはそれに関与することができる。
【0049】
たとえば、治療液が、特定の標的物質(たとえば、罹患有機物または無機物、ステイン、う蝕、歯石、歯垢、細菌、バイオフィルム等)に対して作用する化学物質を含む場合、圧力波23(音場)および/または後続する音響キャビテーションは、攪拌および/またはソノケミストリ超音波により化学反応を促進することができる。実際には、圧力波23は、各組成物が歯から除去されるべき非健全物質に対して与える化学的効果を促進することができる。たとえば、漂白剤系治療流体では、発生した圧力波23は、歯科細管における、歯10の小さい亀裂および裂け目を通る等、歯10全体を通して組織を解離するように、伝播することができる。別の例として、EDTA系治療流体では、発生した圧力波23は、細管における、かつ/または歯10に形成された小さい亀裂および裂け目における等、歯10からスミア層および/または石灰化沈着物を除去するように、伝播することができる。水系治療流体では、発生した圧力波23は、細管ならびに小さい亀裂および裂け目における等、歯から望ましくない材料を洗い流し、かつ/または洗浄するように、伝播することができる。したがって、発生した圧力波23は、特定の治療サイクル中にいかなる治療流体の組成が使用されてもその化学的効果を拡大することにより、歯10からの望ましくないまたは非健全物質の除去を促進することができる。
【0050】
さらに、細菌細胞原形質膜の浸透性を変更するように圧力波および/または後続する音響キャビテーションを用いるプロセスであるソノポレーションもまた、歯から微生物を除去する化学反応を促進することができる。発生した圧力波および/またはいくつかの周波数の後続する音響キャビテーションにより、細胞および細菌の破裂および死(たとえば、溶解)とともに、う蝕し脆弱化した象牙質およびエナメルの除去をもたらし得ることも理解されるべきである。細胞および細菌の崩壊現象により、本来、歯肉ポケットおよび/または口腔に再感染させ得る細胞を死滅させることができる。
【0051】
発生した圧力波および/または後続する音響キャビテーションはまた、非健全物質(たとえば、罹患組織、歯石、バイオフィルム、う蝕等)の構造の結合を緩めることも可能であり、かつ/または圧力波は、歯10から非健全物質を解離することができる。場合によっては、圧力波および/または音響キャビテーションは、細胞と象牙質との間の結合を緩め、かつ/または歯から組織を剥離することができる。さらに、圧力波および/または後続する音響キャビテーションは、振動および/もしくは衝撃波、ならびに/またはキャビテーション気泡爆縮の結果として生成されるマクロジェットを通して、(比較的脆弱であり緩く接続され得る)う蝕した硬組織に対して作用して、歯の他の健全な部分からう蝕した硬組織を除去することができる。
【0052】
本明細書に開示する圧力波発生器によってもたらされる音響効果のさらなる詳細については、本明細書のセクションVIIにおいてより詳細に見ることができる。
【0053】
(3)大規模流体運動を用いる洗浄の促進
いくつかの構成では、バルク流体運動24(たとえば、流体回転、対流、平面流、カオス流等)は、罹患歯から非健全物質を取り除くことを促進することができる。たとえば、チャンバ6および/または歯10の中で発生した流体運動24は、歯に対して比較的大きい促進力を与えることができ、それは、歯からの非健全物質を解離しかつ洗い流すのに役立つことができる。さらに、流体運動24は、歯10の中に渦75および/または渦巻流76を引き起こすことができ、それにより、歯10の根尖開口部15の近くに負圧(または低い正圧)をもたらすことができる。根尖開口部15における結果としての負圧は、物質が根尖開口部15を通って患者の顎の中に押し込まれるのを防止するかまたはその量を低減させることができる。物質が押し込まれるのを防止するかまたはその量を低減させることにより、感染のリスクを低下させるかまたはなくすことができ、患者の転帰を実質的に改善することができる。
【0054】
さらに、拡散機構と比較して流体22と非健全物質との間の化学反応プロセスの時間尺度が比較的短いため、「巨視的」液体循環等の反応物質送達のより高速な機構は、本明細書に開示する実施形態のうちのいくつかにおいて有利であり得る。たとえば、化学反応の時間尺度に対して匹敵する(好ましくはそれより高速である)時間尺度での液体循環は、化学反応領域において反応物質を補給するのに役立つことができ、かつ/または反応部位から反応副生成物を除去するのに役立つことができる。対流プロセスの有効性に関連し得る比較的大きい対流時間尺度は、たとえば循環源の位置および特性に応じて、調整しかつ/または最適化することができる。さらに、液体循環または他の流体運動24の導入により、一般に、拡散プロセスはなくならず、それは、化学反応領域において薄い微視的層内で依然として有効であり続け得ることが理解されるべきである。液体循環はまた、治療部位に強力な洗浄効果(たとえば、根管13ならびに/または歯10の細管および小さい空間および亀裂の深いところの罹患組織を除去する)ももたらすことができ、したがって、それにより、治療部位から残がいの大きい切片および小さい切片を緩めかつ/または除去することができる。
【0055】
いくつかの構成では、バルク流体運動および/または流体循環、たとえばチャンバ6内の流体運動を促進するように、さまざまな特性を調整することができる。たとえば、治療部位の位置に対する圧力波発生器5の位置を調整することができる。本明細書で説明するように、いくつかの実施形態では、圧力波発生器5は、アクセス開口部18の向こう側に液体の流れを通すように配置される。たとえば、圧力波発生器5は、歯根管13の中心軸に対して横切る軸を中心に流体運動24を引き起こすように配置することができ、それにより、根管13を通して伝播する渦75を発生させることができる。いくつかの実施形態では、歯根管13の中心軸を中心に流体運動24を発生させることができ、それにより、歯根管13内に渦巻流運動76を引き起こすことができる。歯10のアクセスポートまたはアクセス開口部にわたる流体流24を変更することができる。たとえば、歯根管13内に所望の流れを生成するように、流体24の推進力を変更することができる。さらに、根管13内の根尖圧力を制御するため、たとえば、より正である、より負である等の根尖圧力を引き起こすように、アクセスポートに対する流体流24の角度を変更することができる。圧力波発生器5および治療部位を包囲する空間の形状(たとえば、結合部材3の形状)も変更することができる。流体22の粘度および/または圧力波発生器5の作用の機構によって循環に影響を与え得ることも理解されるべきである。たとえば、治療流体の流体運動を促進するように、入口開口部を通して噴出される液体ジェット、プロペラ等の撹拌機または振動物体等の圧力波発生器5を選択することができる。いくつかの態様では、いくつかの実施形態において液体ジェットを駆動するポンプの電源等、液体循環源の入力電力も調整することができる。
【0056】
(4)他の歯科処置および歯内処置の促進
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する圧力波発生器5は、他の歯科処置および歯内治療処置を促進することができる。たとえば、歯(たとえば、歯の内側の歯根管、歯の外面またはその近くのう蝕領域等)を洗浄した後、閉塞材または充填材でその治療領域を充填することができる。いくつかの実施形態では、充填材は、流動性材料として治療領域に供給することができ、治療領域(たとえば、洗浄済みの歯根管またはう蝕領域等)を充填するように硬化させることができる。いくつかの実施形態では、圧力波発生器5を作動させて、治療領域を通して閉塞材を供給することができる。
【0057】
たとえば、歯根管処置の後、圧力波発生器は、歯および歯根管内に流動性閉塞材を供給することができる。圧力波発生器5によって発生する大規模流体移動は、主歯根管または複数の根管等、比較的大きい空間を通して閉塞材を伝播させるのに役立つことができる。たとえば、圧力波発生器5は、流動性閉塞材が、歯の中に追加の器具類を導入することなく根管空間を通して伝播するように、十分な促進力を導入することができる。たとえば、
根管内への閉塞材のバルク流体運動は、臨床医が、根管を拡大する必要がないかまたはそのように望まない可能性があるといったものであり得る。根管拡大を低減させるかまたはなくすことにより、患者の転帰および苦痛レベルを改善することができる。いくつかの構成では、流動性閉塞材のバルク流体運動は、圧力波発生器によって生成される比較的低い周波数で発生させることができる。
【0058】
根管を通して閉塞材の大規模なまたはバルク流体運動を発生させることに加えて、本明細書に開示する圧力波発生器5は、歯の小さい亀裂、空間および裂け目に閉塞材を伝播させる高周波数の摂動を発生させることができる。たとえば、音響キャビテーション等のより高周波数の効果は、歯を通して充填材を伝播させるのに役立つことができる。
【0059】
したがって、本明細書に開示する圧力波発生器は、歯根管、歯のう蝕領域等の治療領域の充填を促進することができる。たとえば、閉塞材は、(歯の外側に配置することができる)遠隔圧力波発生器5から治療流体に流れ込むような距離で伝播させることができる。閉塞材の大規模またはバルク流体運動は、治療領域をさらに拡大することなくより大きい根管領域または他の治療領域を充填することができる。圧力波発生器5による、より小規模のかつ/またはより高周波数の攪拌は、歯のより小さい亀裂および空間内に閉塞材を伝播させることができる。歯の実質的にすべての洗浄済み空間を充填することにより、開示する方法は、閉塞材によって充填されていない空間における感染のリスクを低減させることにより、他の方法に対して患者の転帰を改善することができる。
【0060】
II.開示するシステムの特徴の概説
A.圧力波発生器
さまざまな開示する実施形態において、たとえば、歯10および/または歯肉の内部または外部から歯10を洗浄するために、圧力波歯圧制器5を使用することができる。他の実施形態では、圧力波発生器5を用いて、洗浄済みの歯根管または歯10の他の治療領域を充填するかまたは閉塞することができる。いくつかの実施形態では、圧力波発生器5は、能動的先端部分25を有する細長い部材を備えることができる。能動的先端部分25は、歯10から非健全または望ましくない物質を除去するように治療歯10にエネルギーを印加するように、使用者が作動させることができる。
【0061】
本明細書で説明するように、開示する圧力波発生器5は、歯10から望ましくない物質を取り除くのに十分なエネルギーで圧力波23および流体運動24を発生させるように構成することができる。圧力波発生器5は、一形態のエネルギーを流体22内における音波およびバルク流体運動(たとえば回転運動)に変換する装置であり得る。圧力波発生器5は、他の現象もあるが特に、流体22内(たとえばチャンバ6内)の圧力波およびバルク流体動的運動の両方、流体循環、乱流、渦、および歯の洗浄を可能にすることができる他の状態を引き起こすことができる。本明細書に記載する図の各々に開示される圧力波発生器5は、任意の好適なタイプの圧力波発生器であり得る。
【0062】
圧力波発生器5を用いて、流体22を通して、たとえば、チャンバ6内に少なくとも部分的に保持される治療流体を介して伝播する圧力波を生成することにより、歯10を洗浄することができる。いくつかの実装形態では、圧力波発生器5はまた、キャビテーション、音響流、乱流等を生成することも可能である。さまざまな実施形態において、圧力波発生器5は、広帯域出力スペクトルを有する圧力波または音響エネルギーを発生させることができる(たとえば、図4A図4Cを参照)。たとえば、圧力波発生器5は、1つまたは数種の周波数だけではなく、複数の異なる周波数で圧力波を発生させることができる。理論によって限定されないが、複数の周波数での出力の発生は、異なる材料または物理特性を有するさまざまなタイプの有機物質および/または無機物質を、さまざまな周波数で除去するのに役立つことができる。
【0063】
圧力波発生器5(たとえば、高速液体ジェット、超音波変換器、レーザファイバ等)は、歯10の中または歯10の上の所望の治療位置に配置することができる。圧力波発生器5は、実質的に密閉されたチャンバ6内部の流体22内に圧力波23および流体運動24を生成することができる。概して、圧力波発生器5は、歯10から有機組織および/または無機組織等の非健全物質を除去するのに十分強力であり得る。いくつかの実施形態では、圧力波発生器5は、天然の象牙質および/またはエナメルを実質的に破壊するかまたは傷付けるのを回避するように構成することができる。
【0064】
(1)液体ジェット装置
たとえば、いくつかの実施形態では、圧力波発生器5は液体ジェット装置を備えることができる。液体ジェットは、高圧液体を開口部に通すことによって生成することができる。液体ジェットは、治療液内に圧力波を生成することができる。いくつかの実施形態では、圧力波発生器5は、液体のコヒーレントで平行なジェットを含む。液体のジェットは、実質的密閉空間(たとえばチャンバおよび/または使用者の口)内の液体および/または衝突部材と相互作用して音波を生成することができる。さらに、ジェットと治療流体との相互作用とともに衝突部材に衝突することからもたらされる噴霧と治療流体との相互作用は、キャビテーションおよび/または他の音響効果をもたらして歯を洗浄するのに役立つことができる。
【0065】
さまざまな実施形態では、液体ジェット装置は、液体ジェットがそれに沿ってまたはそれを通って伝播することができる流路または内腔を有する位置決め部材(たとえばガイドチューブ)を備えることができる。位置決め部材の先端部分は、偏向した液体が位置決め部材から出てチャンバ6または歯10の中の周囲環境と相互作用するのを可能にする1つまたは複数の開口部を含むことができる。いくつかの治療方法では、位置決め部材の先端部分にまたはその近くに配置された開口部を、歯10の一部に取り付けられるかまたは歯10の一部を密閉するチャンバ6内に少なくとも部分的に封入することができる液体に浸漬することができる。いくつかの実施形態では、液体ジェットは、ガイドチューブを通過することができ、衝突面に衝突することができる。ジェットが周囲の治療流体を通過しかつジェットが衝突面に衝突することにより、いくつかの実装形態では音波を発生させることができる。液体ジェットの浸漬部分の流れが、治療流体内にキャビテーションクラウドを発生させることができる。キャビテーションクラウドの生成および崩壊は、場合によっては、歯の中にまたはその近くに実質的な水中音場を発生させることができる。キャビテーション気泡の成長、振動および崩壊を含む、さらなるキャビテーション効果が可能であり得る。さらに、上で説明したように、回転流等のバルク流体運動を引き起こすことができる。引き起こされる回転流は、分離された物質を除去し、洗浄反応のための反応物質を補給することによって、洗浄プロセスを促進することができる。これらの(および/または他の)効果により、歯の効率的な洗浄をもたらすことができる。
【0066】
図3Aは、歯科処置で使用する流体の高速ジェット60を発生させるように適合されたシステム38の実施形態を概略的に示すブロック図である。システム38は、モータ40、モータコントローラ54、流体源44、ポンプ46、圧力センサ48、システムコントローラ51、ユーザインタフェース53、およびジェット60を患者の口内の所望の位置に向けるように歯科医が作動させることができるハンドピース20を備えている。ポンプ46は、流体源44から受け取る流体を加圧することができる。ポンプ46は、ピストンがモータ40によって作動可能であるピストンポンプを備えることができる。モータコントローラ54によってモータ40を制御することができる。ポンプ46からの高圧液体は、圧力センサ48に供給され、その後たとえば高圧管49の長さの差をつけて、ハンドピース20に供給され得る。圧力センサ48を用いて、液体の圧力を検知し、圧力情報をシステムコントローラ51に通信することができる。システムコントローラ51は、圧力情
報を用いて、ハンドピース20に送達される流体に対する目標圧力を提供するように、モータ40および/またはポンプ46を調整することができる。たとえば、ポンプ46がピストンポンプを備える実施形態では、システムコントローラ51は、圧力センサ48からの圧力情報に応じて、ピストンをより迅速にまたはより低速に駆動するようにモータ40に信号を送ることができる。いくつかの実施形態では、ハンドピース20に送達することができる液体の圧力は、約500psi~約50,000psi(1psiは、1ポンド/平方インチであり、約6895パスカル(Pa)である)の範囲内で調整することができる。いくつかの実施形態では、約2,000psi~約15,000psiの圧力範囲により、歯内治療に特に有効なジェットが生成されることが分かった。いくつかの実施形態では、圧力は約10,000psiである。
【0067】
流体源44は、本明細書に記載する治療流体のうちの任意のものを保持する流体容器(たとえば、静脈内バッグ)を備えることができる。治療流体は、通常の(たとえば非脱気)流体より溶存ガス含有量が少ないように、脱気することができる。治療流体の例としては、滅菌水、医療グレード生理食塩水、消毒液もしくは抗生物質液(たとえば、次亜塩素酸ナトリウム)、化学物質もしくは薬剤を含む溶液、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。2種以上の流体源を用いることができる。いくつかの実施形態では、流体源44によって提供される液体に、ジェットおよび圧力波発生の有効性を低減させ得る溶存ガスが実質的にない場合、ジェット形成に対して有利である。したがって、いくつかの実施形態では、流体源44は、たとえば脱気蒸留水等、脱気液体を含む。液体内の気泡を検出しかつ/または流体源44からの液体流が中断されたかもしくは容器が空になったか判断するために、流体源44とポンプ46との間に気泡検出器(図示せず)を配置することができる。また、上述したように、脱気流体を用いることができる。気泡検出器を用いて、流体に、ジェット形成または音波伝播に悪影響を与え得る小さい気泡が存在するか否かを判断することができる。したがって、いくつかの実施形態では、液体から小さい気泡を除去するために、フィルタまたは脱気機(図示せず)を使用することができる。流体源44内の液体は、室温であり得、または異なる温度に加熱および/または冷却することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、流体源44内の液体を、システム38によって発生する高速ジェット60の温度を低下させるように冷蔵することができ、それにより、歯10内部の流体の温度を低下させるかまたは制御することができる。いくつかの治療方法では、流体源44内の液体を加熱することができ、それにより、治療中に歯10の中で発生し得る化学反応の速度を上昇させることができる。
【0068】
ハンドピース20は、高圧液体を受け取るように構成することができ、先端部において、歯科処置で使用する液体の高速ビームまたはジェット60を発生させるように適合させることができる。いくつかの実施形態では、システム38は、液体のコヒーレントな平行ジェットを生成することができる。ハンドピース20は、ジェット60を歯10のさまざまな部分に向かってまたはそこから離れるように向けることができるように、患者の口内で操縦可能であるようなサイズおよび形状であり得る。いくつかの実施形態では、ハンドピース20は、歯10に結合することができる先端ハウジングまたは結合部材を備えている。
【0069】
システムコントローラ51は、マイクロプロセッサ、専用または汎用コンピュータ、浮動小数点ゲートアレイおよび/またはプログラマブルロジックデバイスを備えることができる。システムコントローラ51を用いて、たとえば、システム圧を安全閾値未満に制限することにより、かつ/またはジェット60がハンドピース20から流れるのを可能にする時間を制限することにより、システム38の安全性を制御することができる。システム38はまた、関連するシステムデータを出力するかまたはユーザ入力(たとえば目標圧力)を受け入れるユーザインタフェース53も含むことができる。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース53は、タッチスクリーングラフィックディスプレイを備える。
いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース53は、歯科医が液体ジェット装置を操作するためのコントローラを含むことができる。たとえば、コントローラは、ジェットを作動させるかまたは停止させるフットスイッチを含むことができる。いくつかの実施形態では、モータ40、モータコントローラ54、ポンプ46、流体源44、圧力センサ48、システムコントローラ51およびユーザインタフェース53を、図1Aおよび図1Bに概略的に示す操作盤2に組み込むことができる。
【0070】
システム38は、追加のかつ/または異なる構成要素を含むことができ、図3Aに示すものとは異なるように構成することができる。たとえば、システム38は、口または歯10からの有機物の吸引を可能にするようにハンドピース20(または吸引カニューレ)に結合される吸引ポンプを含むことができる。他の実施形態では、システム38は、高速ビームまたはジェット60を発生させるように適合された他の空気圧および/または液圧システムを備えることができる。
【0071】
圧力波発生器および/または液体ジェット装置を含む圧力波発生器のさらなる詳細は、少なくとも、2011年5月19日に公開された米国特許出願公開第2011/0117517号明細書の段落番号[0045]~[0050]、[0054]~[0077]および他のさまざまな部分に、かつ2012年9月20日に公開された米国特許出願公開第2012/0237893号明細書の段落番号[0136]~[0142]および他のさまざまな部分に見ることができ、それらの各々は、全体としてかつすべての目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
記載したように、圧力波発生器は、一形態のエネルギーを治療流体内で音波に変換し、チャンバ6および/または歯10の中に回転流体運動を引き起こす、任意の物理的装置または現象であり得る。本明細書に開示するシステムおよび方法の実施形態とともに、多くの異なるタイプの圧力波発生器(または圧力波発生器の組合せ)が使用可能である。
【0073】
(2)機械的エネルギー
機械的エネルギー圧力波発生器はまた、回転物体、たとえば、小型プロペラ、偏心的に閉じ込められた回転シリンダ、穿孔された回転ディスク等を含むことも可能である。これらのタイプの圧力波発生器はまた、圧電気、磁気ひずみ等を介して圧力波を生成するソニケーション装置等、振動、発振または脈動物体を含むことも可能である。いくつかの圧力波発生器では、圧電変換器に移送される電気エネルギーは、治療流体内で音波を生成することができる。場合によっては、圧電変換器を使用して、広帯域の周波数を有する音波を生成することができる。
【0074】
(3)電磁エネルギー
電磁放射ビーム(たとえばレーザビーム)は、チャンバ内にエネルギーを伝播させることができ、電磁ビームエネルギーを、治療流体に入る際に音波に変換することができる。いくつかの実施形態では、レーザビームを、光の平行かつコヒーレントビームとしてチャンバ6に向けることができる。平行レーザビームは、レーザビームが流体にエネルギーを送達する際に圧力波を発生させるのに十分であり得る。さらに、さまざまな実施形態では、治療流体の位置に光エネルギーを集中させるように1つもしくは複数のレンズまたは他の集束装置を使用して、レーザビームを集束させることができる。集束したエネルギーを、望ましくない物質を洗浄するのに十分な圧力波に変換することができる。一実施形態では、レーザビームまたは電磁源の波長を、チャンバまたは口の中の治療流体(たとえば水)によって、かつ/または治療流体内の添加剤(たとえばナノ粒子等)によって大きく吸収可能であるように選択することができる。たとえば、電磁エネルギーのうちの少なくとも一部は、チャンバ内の流体(たとえば水)によって吸収され得、それは、流体内を伝播する局所加熱および圧力波を発生させることができる。電磁ビームによって発生する圧力
波は、流体内に光誘起または光音響キャビテーション効果を発生させることができる。いくつかの実施形態では、局所加熱により、チャンバ6および/または歯10の中に、歯10の洗浄をさらに促進する回転流体流を引き起こすことができる(たとえば、図10Cを参照)。放射線源からの電磁放射線(たとえばレーザ)を、光導波路(たとえば光ファイバ)によってチャンバに伝播させ、導波路の先端部(たとえば、ファイバの成形された先端、たとえば円錐状先端)において流体内に分散させることができる。他の実装形態では、ビーム走査システムによって放射線をチャンバに向けることができる。
【0075】
電磁エネルギーの波長は、水分子によって強力に吸収される範囲であり得る。波長は、約300nm~約3000nmの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、波長は、約400nm~約700nm、約700nm~約1000nmの範囲(たとえば、790nm、810nm、940nmまたは980nm)、約1ミクロン~約3ミクロンの範囲(たとえば、約2.7ミクロンまたは2.9ミクロン)、または約3ミクロン~約30ミクロンの範囲(たとえば、9.4ミクロンまたは10.6ミクロン)である。電磁エネルギーは、紫外、可視、近赤外、中赤外、マイクロ波またはそれより長い波長であり得る。
【0076】
電磁エネルギーは、たとえば約1Hz~約500kHzの範囲の繰返し率で、(たとえばパルス状レーザを介して)パルス状にするかまたは変調することができる。パルスエネルギーは、約1mJ~約1000mJの範囲であり得る。パルス幅は、約1μs~約500μs、約1ms~約500msの範囲、または他の何らかの範囲であり得る。場合によっては、約100ns~約500nsの範囲のパルスレートでナノ秒パルス状レーザを使用することができる。上述したことは、放射パラメータの非限定的な例であり、他の実施形態では、他の繰返し率、パルス幅、パルスエネルギー等を使用することができる。
【0077】
レーザは、ダイオードレーザ、固体レーザ、ファイバレーザ、Er:YAGレーザ、Er:YSGGレーザ、Er,Cr:YAGレーザ、Er,Cr:YSGGレーザ、Ho:YAGレーザ、Nd:YAGレーザ、CTE:YAGレーザ、COレーザまたはTi:サファイアレーザのうちの1つまたは複数を含むことができる。他の実施形態では、電磁放射線源は、1つまたは複数の発光ダイオード(LED)を含むことができる。電磁放射線を使用して、治療流体内部でナノ粒子(たとえば光吸収性金ナノロッドまたはナノシェル)を励起することができ、それによって、流体内の光誘起キャビテーションの効率が上昇し得る。治療流体は、電磁放射線による励起に影響を受け易い場合があり、かつ圧力波発生の効率を(たとえば放射線の吸収の増大により)向上させることができる、励起可能な官能基(たとえば、ヒドロキシル官能基)を含むことができる。いくつかの治療中、第1波長(たとえば、液体たとえば水によって強力に吸収される波長)を有する放射線を使用した後、第1の波長とは異なるが、別の要素、たとえば象牙質または溶液に添加されたナノ粒子によって強力に吸収される第2の波長(たとえば、水によってそれほど強力に吸収されない波長)を有する放射線を使用することができる。たとえば、いくつかのこうした処理では、第1波長は、流体内に気泡を生成するのに役立つことができ、第2波長は、組織を破壊するのに役立つことができる。
【0078】
電磁エネルギーは、約1秒~数秒間、最大約1分間以上の範囲であり得る処理時間、チャンバ6に印加することができる。治療処置は、歯に対して電磁エネルギーを印加する1サイクル~10サイクル(またはそれより多く)を含むことができる。治療プロセス中、チャンバ内で流体を循環させるかまたは他の方法で移動させることができ、それにより、有利には、歯10の加熱(患者に不快をもたらし得る)を阻止することができる。チャンバ6内の治療流体(たとえば、組織溶解剤を含む水)の移動または循環により、新たな治療流体を組織および有機物に送ることができるとともに、治療部位から溶存物質を流し出すことができる。電磁放射線を使用するいくつかの処理では、治療流体の移動により、(流体循環がほとんどまたはまったくない処理と比較して)洗浄の有効性を向上させること
ができる。
【0079】
いくつかの実装形態では、他の流体運動波発生モダリティに電磁エネルギーを追加することができる。たとえば、音波を発生させるために別の圧力波発生器(たとえば液体ジェット)が使用されるチャンバに、電磁エネルギーを送達することができる。
【0080】
(4)音響エネルギー
たとえば、治療流体内に音波を生成する超音波変換器もしくは他の変換器または超音波チップ(またはヤスリもしくは針)に移送される電気エネルギーから、音響エネルギー(たとえば超音波周波数、音波周波数、可聴周波数、および/または低周波数)を発生させることができる。超音波変換器または他のタイプの音響変換器は、電気信号に応答して物理的に発振する圧電結晶、または電磁エネルギーを機械エネルギーに変換する磁歪素子を備えることができる。変換器は、治療流体内に、たとえばチャンバ内部の流体内に配置することができる。本明細書において図4A図4Cを参照して説明するように、たとえば、本明細書に開示する実施形態で使用される超音波装置または他の音響装置は、好ましくは、広帯域および/または多周波装置である。たとえば、図4Bに示す従来の超音波変換器の出力スペクトルとは異なり、開示する実施形態で使用される超音波装置または他の音響装置は、好ましくは、図4Aおよび図4Bの出力スペクトルのものと類似する広帯域特性(液体ジェット装置の音響出力)を有している。
【0081】
(5)いくつかの圧力波発生器のさらなる特性
歯10に対して所望の位置に圧力波発生器5を配置することができる。圧力波発生器5は、チャンバ6の内部の流体22内に圧力波を生成する(音波の発生によって、キャビテーションが生成されるかまたはもたらされる場合もあればそうでない場合もある)。音波または圧力波23は、チャンバ6内部の流体22を通って伝播し、チャンバ6内の流体22は、圧力波23の伝播媒体としての役割を果たす。圧力波23はまた、歯の材質(たとえば象牙質)を通って伝播することも可能である。必須ではないが、十分に高強度の音波を印加する結果、音響キャビテーションが発生し得ると考えられる。キャビテーション気泡の崩壊により、たとえば、ソノケミストリ、組織解離、組織剥離、ソノポレーションおよび/または石灰化構造の除去等、本明細書に記載する複数のプロセスを引き起こすか、もたらすか、またはそれに関与することができる。いくつかの実施形態では、音波(および/またはキャビテーション)が歯110の天然の象牙質を実質的に破壊しないように、圧力波発生器を構成することができる。上述したプロセスのうちの1つまたは複数に、音波場を単独でまたはキャビテーションに加えて関与させることができる。
【0082】
いくつかの実装形態では、圧力波発生器5は、一次キャビテーションを発生させ、それが音波を生成し、それによって二次キャビテーションを引き起こすことができる。二次キャビテーションは、一次キャビテーションより弱いことがあり得、非慣性キャビテーションであり得る。他の実装形態では、圧力波発生器5は、音波を直接発生させ、それによって二次キャビテーションを引き起こすことができる。
【0083】
圧力波発生器5のためのエネルギーを提供するエネルギー源は、ハンドピース20の外側に配置する、ハンドピース20の内側に配置する、ハンドピース20等に組み込むこと等が可能である。
【0084】
本明細書に開示する実施形態で使用するのに好適であり得る(たとえば、圧力波発生器を含むことができる)圧力波発生器のさらなる詳細は、たとえば、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2012年9月20日に公開された米国特許出願公開第2012/0237893号明細書の段落番号[0191]~[0217]および他のさまざまな部分に見ることができる。
【0085】
開示する実施形態で使用するために、他の圧力波発生器が好適であり得る。たとえば、いくつかの構成では、ハンドピースの先端部分に流体入口を配置することができ、かつ/または流体プラットフォームにそれを結合することができる。流体入口は、チャンバ6内の流体の移動をもたらし、チャンバ内の流体に乱流をもたらし、チャンバ6内に流体22の流体運動24をもたらし、かつ/またはチャンバ6r内の流体に他の動力学を生成するように構成することができる。たとえば、流体入口は、治療すべき歯の内部または上に流体を注入することができる。さらに、機械的撹拌機および他の装置を用いて、流体運動および洗浄を促進することができる。流体入口は、チャンバ内の治療流体の循環を促進することができ、それにより、歯10からの非健全物質の除去を促進することができる。たとえば、本明細書で説明するように、本明細書に開示する実施形態のうちのいくつかでは、「巨視的」液体循環等、反応物質送達のより高速な機構が有利であり得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、チャンバ6の中またはチャンバ6上に複数の圧力波発生器を配置することができる。本明細書で説明するように、複数の圧力波発生器の各々を、異なる周波数または周波数の範囲で音波を伝播させるように構成することができる。たとえば、異なる音響周波数を用いて、異なるタイプの物質を除去することができる。さまざまな構成において、複数の圧力波発生器を、同時にかつ/または逐次作動させることができる。
【0087】
B.結合部材
本明細書に開示する結合部材3は、歯10に対して圧力波発生器5を結合するかまたは向けるように適合させることができる。本明細書に開示するいくつかの実施形態では、治療チャンバ6内に流体22を保持するように、結合部材3を構成することができる。いくつかの実施形態では、ハンドピース20の先端部分21に結合部材3を結合するかまたは先端部分21とともに形成することができる。結合部材3は、流体22を保持するように構成されたチャンバ6を含むかまたは画定することができる。ハンドピース20に接続された、またはハンドピース20の中もしくは上に配置された流体入口を通して、チャンバ6内に液体を導入することができる。廃棄治療液体は、流体出口により結合部材3を通して、ハンドピース20内にさらに除去することができる。さまざまな構成では、歯の一部、歯の表面全体および/または複数の歯を覆うように、結合部材3を構成することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、機械的クラスプもしくはクランプ、歯科用接着剤、または患者が結合部材3を噛むことによって加えられる圧力により、歯10に結合部材3をあてがうことができる。さらに他の実施形態では、ハンドピース20の先端部分21に、別個のキャップまたは流体保持器を取外し可能に結合することができる。
【0089】
結合部材3のさらなる詳細は、たとえば、2011年5月19日に公開された米国特許出願公開第2011/0117517号明細書の段落番号[0052]~[0053]、[0115]~[0117]および他のさまざまな部分に、かつ2012年9月20日に公開された米国特許出願公開第2012/0237893号明細書の段落番号[0040]~[0043]、[0170]~[01[0293]~[0299]、[0316]~「0319]および他のさまざまな部分に開示されている流体保持器、流れ制限器またはキャップと同様とすることができ、それらの出願の各々は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
結合部材3はまた、治療処置の前、治療処置中および/または治療処置の後、吸引および洗浄を促進するさまざまな構成要素を含むことも可能である。いくつかの実施形態では、流体22は、治療液流入導管等の流体入口を介してチャンバ6に入ることができる。流
体入口は、ハンドピース20を通ってまたはハンドピース20に沿って進むことができる。安定状態での動作中、少なくとも部分的に密閉されたチャンバ6に入る液体の量は、流体出口を通ってチャンバ6から出る液体の量と実質的に同じであり得る。いくつかの実施形態では、操作盤2によって制御することができるポンプによって、流体入口を駆動することができる。さらに、流体入口は、液体ジェット装置を採用する実施形態における等、いくつかの実施形態における圧力波発生器5と同じであり得る。本明細書に開示する実施形態で使用するのに好適であり得る流体入口のさらなる詳細は、たとえば、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2012年9月20日に公開された米国特許出願公開第2012/0237893号明細書の段落番号[0075]~[0078]および他のさまざまな部分に見ることができる。
【0091】
上で説明したように、結合部材3は、流体出口、たとえば、処置中にチャンバ6から出るように液体を移送する流出導管も有することができる。いくつかの実施形態では、廃棄治療液を、患者の口の中に直接流すことができる場合がある。しかしながら、他の実施形態では、廃棄治療液を(除去された物質および副生成物ガスとともに)流体出口を通るように移送することができ、それは、ハンドピース20を通ってまたはハンドピース20に沿って進むことができる。流体出口は能動的または受動的であり得る。受動的流体出口の場合、廃棄治療液は、毛管力により、重力により、または密閉されたチャンバ6内に生成されたわずかな過圧により、流体出口を通って移動することができる。能動的にポンピングされる流体出口の場合、ポンプ、吸引、または出口を通して液体を引き出す他の装置を用いて、廃液を移送することができる。一例では、流体出口は、臨床医の診療所の吸引システムおよび/または真空ラインに接続される。たとえば、いくつかの実施形態では、結合部材3内に平衡した量の流体を維持するように、入口および出口を調整することができる。本明細書に開示する実施形態で使用するのに好適であり得る流体出口のさらなる詳細は、たとえば、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2012年9月20日に公開された米国特許出願公開第2012/0237893号明細書の段落番号[0079]~[0081]および他のさまざまな部分に見ることができる。
【0092】
本明細書で説明するように、結合部材3はまた、流体22の圧力を調節する1つまたは複数の通気孔も含むことができる。廃棄物ラインまたは流体出口に沿う等、いくつかの構成ではハンドピース20の一部に通気孔を配置することができる。通気孔は、透過性または半透過性材料(たとえばスポンジ)、開口部、細孔または穴等の形態を取ることができる。本明細書に開示する実施形態で使用するのに好適であり得る通気孔のさらなる詳細は、たとえば、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2012年9月20日に公開された米国特許出願公開第2012/0237893号明細書の段落番号[0071]~[0073]、[0082]~[0086]、[0177]~[0194]および他のさまざまな部分に見ることができる。
【0093】
C.ハンドピース
本明細書に開示するシステムは、ハンドピース20を含むことができる。結合部材3を歯10にあてがい、かつ/または治療部位に対して圧力波発生器5を位置決めするように、ハンドピース20を構成することができる。治療液を、ハンドピース20によってチャンバ6内にかつチャンバ6から移送することができる。
【0094】
ハンドピース20は、操作者、使用者または臨床医に、処置中に保持するように手持ち式装置を提供することができる。たとえば、ハンドピース20は、使い易いグリップおよび把持するのに使い易い形状を含むことができる。臨床医は、ハンドピース20を操作して、結合部材3および/または圧力波発生器5を歯10の上の所望の位置に正確に位置決めすることができる。さらに、ハンドピース20によって、臨床医は、圧力波発生器5を歯10の治療領域に対して望ましい位置に配置するように、処置中に結合部材3および圧
力波発生器5を移動または回転させることができる。別法として、ハンドピース20はまた、操作者が歯10に締め付けるかまたは取り付ける装置も提供することができ、それにより、ハンドピース20は、処置中に実質的な使用者の介入を必要としない。ハンドピース20は、使い捨て(たとえば単回使用)とすることができ、または再使用可能とすることができる。一実施形態では、ハンドピース20は使い捨てであるが、圧力波発生器5は再使用可能である。ハンドピース20を任意の好適な材料から形成することができる。いくつかの実施形態では、ハンドピース20をプラスチック材料から形成することができる。他の実施形態では、ハンドピース20を金属から形成することができる。本明細書に開示する実施形態で使用するのに好適であり得るハンドピースのさらなる詳細は、たとえば、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2012年9月20日に公開された米国特許出願公開第2012/0237893号明細書の段落番号[0107]、[0138]~[0142]、[0156]~[0161]および他のさまざまな部分に見る
ことができる。
【0095】
たとえば、図3Bは、歯10の一部に液体ジェットを送達するためのガイドチューブ27の実施形態を備えたハンドピース20の実施形態を示す概略側面図である。ハンドピース20は、システム38からの管32と係合するように適合される基端部31と、歯10に結合されるかまたは取り付けられるように適合された先端部21とを有する、細長い管状円筒部29を備えている。円筒部29は、操作者の指でのハンドピース20の把持を容易にする特徴または凹凸28を含むことができる。ハンドピース20を手持ち式であるように構成することができる。場合によっては、ハンドピース20を患者に対して携帯可能、移動可能、方向付け可能または操縦可能であるように構成することができる。いくつかの実装形態では、位置決め装置(たとえば、操縦可能または調整可能なアーム)に結合されるようにハンドピース20を構成することができる。ハンドピース20の先端部21は、歯10に結合することができる結合部材3を備えることができる。
【0096】
ハンドピース20は、流体22をチャンバ6に送達するための流体入口、歯10から流体(たとえば廃棄流体)を除去するための流体出口、圧力波発生器5、(たとえば、圧力波発生器にエネルギーを提供する)電源ライン、または上述したもののうちのいくつかもしくはすべての組合せを含むことができる。ハンドピース20は、たとえば歯領域を洗浄する洗浄ライン、歯領域を照明する光源等、他の構成要素を含むことができる。場合によっては、圧力波発生器5(たとえば液体ジェット)は、流体入口(たとえばジェット)を備える。ハンドピース20を用いて、歯10に対して圧力波発生器5をあてがうことができる。ハンドピース20の先端部21が歯10に係合する際に実質的に閉鎖した流体回路を生成するように、歯10にハンドピース20をあてがうことができ、それにより、患者の口内への実質的なこぼれまたは漏れなしに、流体をチャンバ6内にかつチャンバ6から送達することができる。本明細書に記載するように、ハンドピース20および/または結合部材3は、流体の漏れの可能性を低減させかつ/または流体がチャンバ6から流れるのを可能にする(たとえば、過加圧または加圧不足を阻止するため)流体保持部材(たとえば、スポンジまたは通気孔)を含むことができる。流体保持部材は、空気が流体出口(たとえば吸引ライン)に入るのを可能にしながら、空気がチャンバ6および歯10に入る(それによりキャビテーションの有効性が低減し得る)のを阻止するように構成することができる。
【0097】
D.歯シール剤および位置決め特徴
本明細書に開示する歯シール剤26は、歯10に結合部材3を一時的に固定するように構成することができる。歯の咬合面の上またはその近くに流動可能状態で流れるように、歯シール剤26を構成することができる。治療中にその形状を保持するように固化および/または硬化するように、歯シール剤26を構成することができる。さらに、歯シール剤26を使用後に歯10から容易に取り除くかまたは引き離すことができる。いくつかの構
成では、封止材は、歯科用バー、ナイフ等の器具を用いて容易に形状を変えることができる。たとえば、さまざまな実施形態では、封止材を、平面結合面(たとえば、座金、1つまたは複数の支持磁石等)を支持するような形状とする(たとえば、平坦化するかまたは湾曲させる)ことができる。結合部材3および/またはハンドピース3を結合面に結合することができ、圧力波発生器5(たとえば液体ジェット装置)は、圧力波発生器5の先端部分25が結合部材3のチャンバ6内に配置されるように、結合面を通して延在することができる。
【0098】
歯シール剤26は、任意の好適なシーラントを含むことができる。たとえば、歯シール剤26は、約30秒未満で固化または硬化することができる実質的に半可撓性の材料であり得る。歯シール剤26は、結合部材3を歯10に封止することができるが、歯10から容易に除去することができる、任意の好適な材料であり得る。好適な封止材の例としては、シリコーン、印象材、咬合採得材等を挙げることができる。いくつかの実施形態では、たとえば、封止材としては、3M ImprintTMBite、Coltene Whaledent(登録商標)のJet Blue Bite、DMG AmericaのLuxaBite咬合採得材、Alpha-DamTMLC Gingival Dam
Materialまたは他のあらゆる好適なシーラントを挙げることができる。しかしながら、他の実施形態では、歯シール剤を使用しない場合もある。
【0099】
いくつかの実施形態では、歯シール剤26は、廃棄流体が歯10および/またはチャンバ6内から歯シール剤6を通って歯10の外側に流れることができるように、透過性または半透過性材料を含むことができる。さまざまな実施形態では、歯シール剤26は、チャンバ6および/または結合部材3を歯シール剤26に固定するような形状である周囲境界を備えることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、歯シール剤26は、歯に対して上方に延在する係止壁を備えることができる。係止壁は、治療中に結合部材3を横方向に制限するような形状とすることができる。いくつかの実施形態では、嵌合チューブがチャンバ6から外側に延在することができ、チャンバ6のアクセスポートを包囲することができる。結合部材3および圧力波発生器5を歯10の治療領域と実質的に位置合わせするように、歯10のアクセス開口部18内に嵌合チューブを配置することができる。
【0100】
さまざまな実施形態では、歯シール剤26は、圧力波発生器5および結合部材3を歯10の治療領域に対して所望の向きに位置決めするように、使用者が歯10に対して結合部材3を回転させることができるような形状とすることができる。たとえば、歯シール剤26は凹状面を備えることができ、ハンドピース20の先端部分21を凹状面に対して押圧しかつ/または凹状面に結合することができる。ハンドピース20の湾曲した先端部分21は、湾曲した歯シール剤26の形状に対して相補的な形状を有することができる。
【0101】
III.圧力波発生器によって発生する出力の例
図4Aおよび図4Bは、圧力波発生器5の異なる実施形態によって発生させることができる出力のあり得る例を概略的に示すグラフである。これらのグラフは、水平軸の音響周波数(kHz単位)の関数として垂直軸に音響出力(任意の単位)を概略的に示す。歯における音響出力は、歯の中または歯の上の有機物質を解離し、望ましくない物質、たとえば望ましくない有機物質および/または無機物質ならびに沈着物を有効に取り除くように作用することができ、たとえば音響キャビテーション(たとえばキャビテーション気泡形成および崩壊、マイクロジェット形成)、音響流、微細侵食、流体撹拌、流体循環および/または回転運動、ソノポレーション、ソノケミストリ等を含む効果に影響を与え、そうした効果をもたらし、またはそうした効果の強度を増大させることができる。いくつかの実施形態では、これらの効果は、治療済みの歯根管または歯の他の治療領域の閉塞または充填を促進しまたは可能にすることができる。たとえば、本明細書に開示する実施形態は、上でより詳細に説明したように、実質的に根管および/またはそこからの分岐構造全体
を有利に閉塞しまたは充填することができる。さまざまな実施形態において、圧力波発生器は、(少なくとも)約1Hz、約0.5kHz、約1kHz、約10kHz、約20kHz、約50kHz、約100kHzまたはそれより大きい周波数を超える周波数での音響出力を含む圧力波を生成することができる。圧力波は、同様に他の周波数(たとえば、上に列挙した周波数未満の周波数)の音響出力を有することができる。
【0102】
図4Aのグラフは、液体ジェットが、実質的に液体が充填されている歯の上または周囲のチャンバ内に配置された面に衝突することにより、かつ液体ジェットのチャンバ内の流体との相互作用により発生する、音響出力の概略例を表す。この概略例は、たとえば約1kHz~約1000kHzの範囲の著しい出力(たとえば、帯域幅は約1000kHzであり得る)を含む、約1Hz~約1000kHzの範囲の著しい出力を有する音響出力の広帯域スペクトル190を示す。音響エネルギースペクトルの帯域幅は、場合によっては、3デシベル(3-dB)帯域幅(たとえば、音響出力スペクトルの半値全幅すなわちFWHM)に関して測定することができる。さまざまな例では、広帯域音響出力スペクトルは、約1Hz~約500kHzの範囲、約1kHz~約500kHzの範囲、約10kHz~約100kHzの範囲、または他の何らかの範囲の周波数の帯域幅の著しい出力を含むことができる。いくつかの実装形態では、広帯域スペクトルは、約1MHzを超える音響出力を含むことができる。いくつかの実施形態では、圧力波発生器は、約10kHzのピーク出力および約100kHzの帯域幅の広帯域音響出力を生成することができる。さまざまな実施形態では、広帯域音響出力スペクトルの帯域幅は、約10kHzを超えるか、約50kHzを超えるか、約100kHzを超えるか、約250kHzを超えるか、約500kHzを超えるか、約1MHzを超えるか、または他の何らかの値である。洗浄方法によっては、約1Hz~約200kHz、たとえば、約20kHz~約200kHzの範囲の音響出力が、歯の洗浄に特に有効であり得る。音響出力は、約1kHzを超えるか、約10kHzを超えるか、約100kHzを超えるか、または約500kHzを超える周波数の実質的な出力を有することができる。実質的な出力は、たとえば、総音響出力(たとえば、全周波数にわたって積分された音響出力)の10%を超えるか、25%を超えるか、35%を超えるかまたは50%を超える量の出力を含むことができる。いくつかの構成では、広帯域スペクトル190は、1つまたは複数のピーク、たとえば、可聴周波数範囲、超音波周波数範囲および/またはメガソニック周波数範囲のピークを含むことができる。
【0103】
図4Bのグラフは、実質的に液体が充填される、歯の上または周囲のチャンバ内に配置された、超音波変換器によって発生する音響出力の概略例を表す。この概略例は、約30kHzの基本周波数の近くに最高ピーク192aがある音響出力の比較的狭帯域スペクトル192を示し、最初の数個の高調波周波数の近くのピーク192bも示す。ピークの近くの音響出力の帯域幅は約5kHz~10kHzであり得、図4Aに概略的に示す音響出力の帯域幅よりはるかに狭いことがわかる。他の実施形態では、音響出力の帯域幅は、約1kHz、約5kHz、約10kHz、約20kHz、約50kHz、約100kHzまたは他の何らかの値であり得る。例としてのスペクトル192の音響出力は、基本周波数および最初の数個の高調波にその出力の大部分を有し、したがって、この例の超音波変換器は、比較的狭い範囲の周波数(たとえば、基本周波数および高調波周波数の近く)で音響出力を提供することができる。例としてのスペクトル190の音響出力は、比較的広帯域出力(スペクトル192に比較して比較的高い帯域幅を有する)を示し、例としての液体ジェットは、例としての超音波変換器より大幅に多くの周波数で音響出力を提供することができる。たとえば、例としてのスペクトル190の比較的広帯域出力は、例示するジェット装置が、う蝕領域から腐食物質を実質的に除去するように腐食物質と健全な物質との間の結合を破壊するのに十分なエネルギーで、これらの多数の周波数で音響出力を提供することを示す。
【0104】
必須ではないが、広帯域音響出力を有する圧力波(たとえば、図4Aに示す例を参照)は、狭帯域音響出力スペクトルを有する圧力波(たとえば図4Bに示す例を参照)によって発生するキャビテーションよりも、歯を洗浄する(たとえば歯の中または上の非健全物質を取り除くことを含む)のにより有効な洗浄および消毒の音響キャビテーションまたは他の手段を発生させることができると考えられる。さらに、広帯域音響出力はまた、歯根管または他の治療領域(歯の外面の治療済みのう蝕領域等)を閉塞するかまたは充填することができる周波数で、十分なエネルギーを発生させることも可能である。たとえば、音響出力の広帯域スペクトルは、キャビテーションクラウド内にかつ歯の表面上に比較的広範囲の気泡サイズを生成することができ、これらの気泡の爆縮は、狭いサイズ範囲である気泡より組織を崩壊するのにより有効であり得る。比較的広帯域の音響出力は、音響エネルギーが、ある範囲の長さスケール、たとえば細胞スケールから組織スケールまで作用することも可能にすることができる。したがって、広帯域音響出力スペクトルを生成する圧力波発生器(たとえば、液体ジェットのいくつかの実施形態)は、狭帯域音響出力スペクトルを生成する圧力波発生器より、いくつかの治療では、歯の洗浄においてより有効であり得る。いくつかの実施形態では、複数の狭帯域圧力波発生器を使用して、比較的広範囲の音響出力を生成することができる。たとえば、各々が異なるピーク周波数で音響出力を生成するように調整された複数の超音波チップを使用することができる。本明細書で用いる広帯域周波数および広帯域周波数スペクトルは、主周波数の高調波等の副次的効果に関わらず、かつ測定またはデータ処理によって導入されるいかなる雑音(たとえばFFT)にも関わらず定義され、すなわち、これらの用語は、圧力波発生器によって活性化されるすべての主周波数を考慮するときにのみ理解されるべきである。
【0105】
図4Cは、本明細書に開示する圧力波発生器によって複数の周波数で発生した音響出力スペクトル1445のグラフである。たとえば、図4Cのスペクトル1445は、実質的に液体が充填される歯の上、中または周囲のチャンバ内に配置された表面に衝突する液体ジェットにより、かつチャンバ内の液体との液体ジェットの相互作用により発生する音響出力の例である。図4Cのスペクトル1445は、音響エネルギー源、たとえば圧力波発生器から間隔を空けて配置されたセンサによって検出された音響出力を表す。データは、出力波発生器と水中聴音器(たとえばセンサ)との間の距離が約8インチであるときに、絶縁された水タンクデータの内部で収集された。プロットの垂直軸は、本明細書では「出力単位」と呼ぶ音響出力Log(Pacoustic )の測定値を表す。測定におけるPacousticの単位はμPa(マイクロパスカル)であった。したがって、センサは音響出力発生器から間隔を空けて配置されているため、エネルギー源における実際の出力は、大きさが異なり得ることが理解されるべきである。しかしながら、エネルギー源における出力スペクトルの全体的なプロファイルは、センサにおいて検出されかつ図4Cにプロットされたスペクトル1445と同じであるべきである。プロットは100KHzまでの周波数しか示していないが、100KHzを超える出力はゼロより大きく、すなわち、データは単にプロットされていないことも理解されるべきである。当業者には理解されるように、プロットおよび値は、たとえば、データが収集されたタンクのサイズおよび形状、タンクの内面の絶縁材、エネルギー源(たとえば出力波発生器)とタンクの自由水面との間の相対的な距離等、他のパラメータによっても決まることがさらに留意されるべきである。
【0106】
図4Cに示すように、スペクトル1445は、複数の周波数1447、たとえば複数の離散した周波数での音響出力を含むことができる。特に、図4Cに示すスペクトル1445は、約1Hz~約100KHzの範囲の周波数での音響出力を含む。音響出力は、これらの周波数では約10出力単位~約80出力単位の範囲であり得る。いくつかの構成では、音響出力は、約1Hz~約10kHzの範囲の周波数で約30出力単位~約75出力単位の範囲であり得る。いくつかの構成では、音響出力は、約1KHz~約100kHzの範囲の周波数で約10出力単位~約30出力単位の範囲であり得る。いくつかの実施形態
では、たとえば、本明細書に開示する圧力波発生器によって発生する圧力波の広帯域周波数範囲は、周波数の実質的に白色雑音の分布を含み得る(たとえば、図11Bおよび関連する開示を参照)。
【0107】
図4Cのスペクトル1445に関連する音響出力を発生させる圧力波発生器は、有利にはかつ意外なことに、歯から望ましくない物質を取り除くことができる。上で説明したように、複数の周波数での出力の発生は、異なる物質もしくは物理特性、および/または異なる結合強度を有するさまざまなタイプの有機物質および/または無機物質をさまざまな周波数で除去するのに役立つことができる。たとえば、いくつかの望ましくない物質は、相対的に低い音響周波数で歯および/または歯肉から除去することができ、他の物質は、相対的に高い音響周波数で歯および/または歯肉から除去することができ、さらに他の物質は、相対的に高い周波数と相対的に低い周波数との間の中間周波数で除去することができる。図4Cに示すように低い方の周波数での洗浄段階を高い方の出力で始動させることができ、高い方の周波数での洗浄段階は、低い方の出力で始動させることができる。他の実施形態では、低周波数洗浄段階は、相対的に低い出力で始動させることができ、高周波数洗浄段階は、相対的に高い出力で始動させることができる。複数の周波数(たとえば複数の離散した周波数)で音響出力を発生させる圧力波発生器は、歯の内部および/または外部から望ましくない物質およびう蝕物を取り除くことができる。
【0108】
本明細書に開示する実施形態では、治療処置を、さまざまな周波数範囲で音響出力を発生させるように始動させることができる。たとえば、いくつかの処理段階は、低い方の周波数で始動させることができ、他の治療段階は、高い方の周波数で始動させることができる。本明細書に開示する圧力波発生器を、スペクトル1445の任意の好適な周波数1447で音響出力を制御可能に発生させるように適合させることができる。たとえば、本明細書に開示した圧力波発生器を、複数の周波数1447で出力を同時に発生させるように適合させることができ、たとえば、それにより、特定の治療処置における送達された音響出力が、個々の周波数の所望の組合せを含むことができる。たとえば、いくつかの処置では、周波数スペクトル1445全体にわたって出力を発生させることができる。本明細書で説明したように、いくつかの処理段階では、圧力波発生器は、相対的に低周波数でのみ音響出力を送達することができ、他の処理段階では、圧力波発生器は、相対的に高周波数でのみ出力を送達することができる。さらに、所望の治療処置に応じて、圧力波発生器は、所望のパターンに従って周波数1447間で自動的にまたは手動で遷移することができ、または周波数1447間でランダムに遷移することができる。いくつかの構成では、大規模バルク流体移動に相対的に低い周波数を関連付けることができ、小規模の高エネルギー振動に相対的に高い周波数を関連付けることができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、治療処置は1つまたは複数の処理段階を含むことができる。各処理段階では、異なる周波数または周波数帯域でエネルギーを印加することができる。たとえば、一段階では、相対的に低い周波数(または周波数の帯域)で伝播するエネルギー(たとえば圧力波または音波)を発生させることができる。低周波数圧力波は、チャンバ内の治療流体と相互作用することができ、大規模な歯の沈着物または物質の除去を引き起こすことができる。理論によって限定されないが、低周波数圧力波は、歯の中の非健全物質の実質的な部分を除去することができる。たとえば、低周波数波は、歯から大きい沈着物または物質を除去するのに十分低い周波数で充分高いエネルギーを有することができる。相対的に低周波数での音響出力は、圧力波発生器の出力スペクトル(たとえば図4Aを参照)の任意の好適な低周波数帯域での音響出力を含むことができる。たとえば、いくつかの実施形態では、第1の低周波数範囲における音響出力は、約0.1Hz~約100Hzの範囲、たとえばいくつかの構成では約1Hz~約50Hzの範囲の1つまたは複数の周波数を含むことができる。
【0110】
別の段階では、相対的に高い周波数で音響エネルギーを発生させることができる。周波数が高いほど、より小さい沈着物および残がいを除去するように、圧力波発生器を構成することができる。たとえば、相対的に高い周波数では、圧力波は治療流体を通って伝播することができる。高い周波数の波ほど、歯の割れ目、亀裂、空間および不規則な表面等、相対的に小さい位置からより小さい部分を除去することができる。いくつかの実施形態では、脱気液体を使用して、これらの小さい空間からの物質の除去を促進することができる。低い方の周波数での洗浄の後に高い方の周波数での洗浄が行われる場合、いくつかの実施形態では、高周波数波(および/または中間周波数波)は、低周波数洗浄から残された非健全物質の残りを取り除くことができる。相対的に高周波数の段階では、約10kHz~約1000kHzの範囲で、たとえば約100kHz~約500kHzの範囲で、音響エネルギーを発生させることができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、治療処置は、相対的に低い周波数(または周波数の帯域)からより高い周波数(または周波数の帯域)に向かって進行することができる。たとえば、処置は、相対的に低い周波数の段階から中間周波数段階を通して、高周波数段階に達するまで進行することができる。したがって、いくつかの実施形態では、治療処置は、相対的に低い周波数と相対的に高い周波数との間に漸進的なかつ/または実質的に連続した段階で提供することができる。処置が周波数を通して進行するため、圧力波発生器によって、サイズおよびタイプの異なる非健全な歯の沈着物または物質を除去することができる。しかしながら、他の実施形態では、治療処置は、不連続のレベルで、周波数(または周波数の帯域)または段階の間(たとえば、高、低および/または中間の周波数または周波数の帯域の間)で遷移するかまたは切り替わることができる。さまざまな中間周波数範囲では、約100Hz~約10kHzの範囲で音響エネルギーを発生させることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、使用者または臨床医によって上述した治療処置のさまざまな段階を始動させることができ、または、段階の間で自動的に遷移するように圧力波発生器を構成することができる。いくつかの実施形態では、たとえば、圧力波発生器は、高周波数、低周波数および中間周波数の間でランダムに切り替わることができる。
【0112】
さまざまな治療処置は、さまざまな異なる周波数での任意の好適な数の処理段階を含むことができる。さらに、さまざまな低周波数段階および高周波数段階を、特定の順序で発生するものとして上述している場合があるが、他の実施形態では、低周波数段階および高周波数段階ならびに/またはあらゆる中間周波数段階を始動させる順序は、任意の好適な順序であり得る。さらに、本明細書に記載する治療処置および段階を用いて、歯の治療領域を洗浄の後に充填または閉塞することも可能である。閉塞処置では、本明細書に開示する実施形態は、本明細書においてより詳細に説明するように、実質的に象牙質および/またはそこからの分岐構造全体を有利に閉塞するかまたは充填することができる。
【0113】
IV.結合部材の例
図5は、内部を貫通している流体入口61を有する結合部材3の概略側断面図である。図5において、結合部材3は、ハンドピース20の先端部分21を構成している。結合部材3に圧力波発生器5を結合するかまたは一体的に形成することができる。図5に示すように、結合部材3のチャンバ6の内側および歯10の外側に、圧力波発生器5を配置することができる。歯10のアクセス開口部18の上に結合部材3をあてがうことができる。たとえば、結合部材3を固定することができる安定した結合面を提供するように、歯10の上(たとえば咬合)面の上に、歯シール剤26を流動可能形態で施すことができる。いくつかの実施形態では、歯シール剤26を硬化させて、実質的に固体の材料を形成することができる。
【0114】
結合部材3が歯10に固定されると、結合部材3のチャンバ6を好適な流体22で、少なくとも部分的に、いくつかの構成では実質的に充填することができる。たとえば、上で
説明したように、洗浄処理において治療流体を使用することができる。充填または閉塞処置において閉塞材を使用することができる。流体入口61は、ハンドピース20を通るかまたはハンドピース20に沿って進む流体入口ラインと流体連通する孔またはポートを備えることができる。流体22は、操作盤2からハンドピース20の入口ラインを通してチャンバ6内に能動的に(たとえば、ポンプを用いて)または受動的に(たとえば、重力もしくは他のポテンシャル流によって)供給することができる。歯肉腔11および/または結合部材3のチャンバ6を流体22で実質的に充填することができる。たとえば、操作盤2のコントローラは、流体入口61を通してチャンバ6内に流体22を制御可能に向けることができる。
【0115】
治療処置中、歯10から、たとえば歯髄腔11および歯根管13から、非健全物質を取り除くために十分な流体運動24および/または圧力波23を発生させるように、圧力波発生器6を作動させることができる。流体運動24は、歯10の中の望ましくない物質を分離するかまたは破壊するように作用することができ、歯10から物質を除去することができる。たとえば、いくつかの構成では、流体運動24は、罹患組織の大きい粒子または沈着物を除去することができる。流体運動24はまた、流体22とともに供給される化学反応物質を補給するように作用することも可能である。圧力波23は、流体22の歯10の中の非健全物質との反応性を向上させるように、流体22および歯を通って伝播することができる。たとえば、圧力波23は、細管、亀裂、裂け目等、歯10の小さい空間から非健全または望ましくない物質を除去するのを可能にすることができる、本明細書に記載する音響キャビテーションおよび他の流体効果を引き起こすことができる。図5の圧力波発生器5は、液体ジェット装置等、本明細書に開示する任意の好適な圧力波発生器であり得る。他の実施形態では、上で説明したように、圧力波発生器5を用いて、歯根管13を充填するかまたは閉塞することも可能である。こうした構成では、流体22は、流動性閉塞材を含むことができる。本明細書に開示する実施形態は、本明細書においてさらに詳細に説明するように、実質的に根管全体および/または根管からの分岐構造全体を有利に閉塞するかまたは充填することができる。
【0116】
歯シール剤26は、図5の実施形態では流体浸透性材料を含むことができる。たとえば、歯シール剤26は、廃棄流体が流れることができる細孔または他の空間を含むことができる。したがって、治療処置の間、流体22は、流体入口61を通って歯10およびチャンバ6に入ることができ、廃棄流体は、浸透性の歯シール剤26を通って歯10および/またはチャンバ6から出ることができる。
【0117】
図6は、内部を貫通している流体入口61および流体出口62を有する結合部材3の概略側断面図である。図5と同様に、圧力波発生器5を、結合部材3に結合するかまたは一体的に形成することができ、結合部材3のチャンバ6内に配置することができる。本明細書で説明するように、圧力波発生器5を用いて、歯10を洗浄および/または充填することができる。さらに、図5の実施形態と同様に、チャンバ6および歯10に流体22を供給するために、ハンドピース20および結合部材3を通して流体入口61を形成することができる。上述したように、歯10から非健全物質を取り除くために圧力波23および流体運動24を引き起こすように、圧力波発生器5を作動させることができる。図6の圧力波発生器5は、液体ジェット装置等、本明細書に開示する任意の好適な圧力波発生器であり得る。
【0118】
さらに、歯10およびチャンバ6から流体を搬送するために、ハンドピース20を通して流体出口62を配置することができる。たとえば、流体出口62は、廃棄物ラインとして作用することができ、その中で、チャンバ6および歯10から廃棄流体を排出することができる。廃液が、チャンバ6を出て接続キャニスタまたはドレンに接続することができるホース内に入ることができるように、流体出口62を組み込むことができる。流体出口
62は、能動的な出口または受動的な出口であり得る。受動的流体出口62では、場合によっては、廃棄治療液は、毛管力、重力により、または密閉空間内で生成されるわずかな過圧のために、導管を通って移動する。能動的にポンピングされる流体出口62の場合、ポンプ、吸引、または流出導管を通して液体を引き出す他の装置を用いて、廃液を移送することができる。いくつかの構成では、たとえば、臨床医の診療所の吸引システムおよび/または真空ラインに流体出口62を接続することができる。図6の実施形態では、歯シール剤26は、流体に対して浸透性である場合もあれば浸透性でない場合もある。
【0119】
したがって、図6に開示する実施形態は、入口ポート61および出口ポート62両方を含むことができ、それらは、所与の時点で歯10の中の流体22の量を平衡させることができる。たとえば、入口ポート61を通って歯10および/またはチャンバ6に入る流体の量が、出口ポート62通って歯10および/またはチャンバ6から出る流体の量と実質的に同じであるように、操作盤2をプログラムすることができる。
【0120】
図7Aは、流体入口61と、流体出口62と、チャンバ6および/または歯10内部の圧力を調節するように構成された通気孔63とを有する結合部材3の概略側断面図である。図6Aおよび図6Bの実施形態と同様に、歯10を洗浄しかつ/または充填するように適合された圧力波発生器5に、結合部材3を結合するかまたはそれとともに形成することができる。結合部材3は、ハンドピース20の先端部分21の一部であり得る。結合部材3は、歯シール剤26を用いて歯に結合することができる。
【0121】
歯10の外側のチャンバ6内部に、圧力波発生器5を配置することができる。図7Aの圧力波発生器5は、液体ジェット装置等、本明細書に開示する任意の好適な圧力波発生器であり得る。流体入口61を用いて、歯10およびチャンバ6に流体22を供給することができる。たとえば、流体22は、チャンバ6を実質的に充填することができる。歯10から非健全物質を取り除くように、圧力波発生器5を作動させることができる。たとえば、本明細書で説明したように、圧力波発生器5は、歯10を洗浄および/または充填するために十分な圧力波23および流体運動24を発生させることができる。
【0122】
図7Aに示すように、結合部材3および/またはハンドピース20の先端部分21に、1つまたは複数の通気孔63を設けるかまたは形成することができる。通気孔63は、結合部材3のチャンバ6内部の流体22の圧力を少なくとも部分的に調節するように作用することができる。たとえば、流体出口62(たとえば廃棄物ライン)に沿って通気孔63を配置することができる。通気孔63は、外部環境と流体連通することができ、外部環境からの空気を流体出口ライン62によって連行することができる。
【0123】
いくつかの通気孔を備える構成では、独立した駆動力によって入口流量および出口流量を駆動することができる。たとえば、いくつかの実装形態では、流体入口61は、圧力ポンプと流体連通しかつ圧力ポンプによって駆動することができ、流体出口62は、排気システム(たとえば、吸引ポンプまたは真空ポンプ)に流体連通しかつ排気システムを介して制御することができる。他の実装形態では、シリンジポンプによって流体入口61または出口62を制御することができる。流体入口61および流体出口62の圧力は、チャンバ6内に正味負圧が維持されるようなものであり得る。こうした正味負圧は、流体入口61から治療流体をチャンバ6内に送達するのに役立つことができる。
【0124】
本明細書に記載するさまざまな実施形態では、通気孔63は、浸透性もしくは半浸透性材料(たとえばスポンジ)、開口部、細孔または穴等の形態を取ることができる。制御された流体システムにおいて通気孔を用いることにより、1つまたは複数の望ましい利点をもたらすことができる。たとえば、排気システムは、利用可能なものがある限り、チャンバ6から廃棄流体を収集することができる。処理に中断(たとえば、処理サイクルの間の
時間)がある場合、廃棄流体流は停止し得、排気システムは、チャンバ6を減圧するのではなく、排気システムに供給される流体がないことを少なくとも部分的に保障するように、1つまたは複数の通気孔63を通して空気を引き出し始めることができる。排気システムが何らかの理由で機能を停止した場合、廃棄流体は、1つまたは複数の通気孔63を通って患者の口内にまたはラバーダム(使用される場合)の上に流出することができ、そこで、外部排気ラインによって収集することができる。したがって、通気孔の使用により、結果的に、印加される圧力差の影響を抑制することができ、したがって、負圧または正圧の蓄積を阻止または防止することができる。また、チャンバ6内部の正圧または負圧が、封止材に対して幾分かの力をかけ得、したがって、場合によってはこうした力に耐えるようにより強力なシールが必要な場合があることも留意されたい。いくつかの通気孔が設けられたシステムのあり得る利点としては、通気孔は、チャンバ6内部の圧力上昇(または低下)を緩和し、歯シール剤26に作用している力を低減させるかまたはなくし、したがって、封止をより実現可能かつ有効にするのに役立つことが挙げられる。
【0125】
図7Bは、結合部材3に結合された複数の圧力波発生器5A、5B、5Cの概略側断面図である。図5図7Aの実施形態と同様に、歯10の外側の結合部材3のチャンバ6内に圧力波発生器5A、5B、5Cを配置することができる。たとえば、結合部材3の壁に圧力波発生器5A、5B、5Cを結合することができる。図7Bの圧力波発生器5A、5B、5Cは、液体ジェット装置等、本明細書に開示する任意の好適な圧力波発生器であり得る。いくつかの実施形態では、圧力波発生器5A、5B、5Cのうちの少なくとも1つは、音響エネルギー源を含むことができる。圧力波発生器5A、5B、5Cは、同じタイプの圧力波発生器とすることができ、または異なるタイプの圧力波発生器とすることができる。図7Bには3つの圧力波発生器5A、5B、5Cを示すが、1つ、2つ、4つ、5つまたはそれより多くの任意の好適な数の圧力波発生器があり得ることが理解されるべきである。
【0126】
上述したように、歯シール剤26を用いて歯10に結合部材3を結合することができる。流体入口61によってチャンバ6に流体22を供給することができる。たとえば、流体22は、チャンバ6を実質的に充填することができる。流体出口62は、歯10およびチャンバ6から廃棄流体を搬送することができる。図7Bには示さないが、チャンバ6および歯10の中の圧力を調節するために、1つまたは複数の通気孔を設けることも可能である。
【0127】
治療処置中、圧力波発生器5A、5B、5Cは、逐次または同時に作動させることができる。有利には、いくつかの実施形態では、異なる周波数および/または出力を有する対応する圧力波23A、23Bおよび23Cを発生させるように、圧力波発生器5A、5B、5Cを構成することができる。たとえば、圧力波発生器5Aは、第1周波数または第1周波数範囲を有する対応する圧力波23Aを発生させることができる。圧力波発生器5Bは、第1周波数または第1範囲とは異なる第2周波数または第2周波数範囲を有する対応する圧力波23Bを発生させることができる。圧力波発生器5Cは、第1周波数/範囲および第2周波数/範囲とは異なる第3周波数または第3周波数範囲を有する対応する圧力波23Cを発生させることができる。いくつかの実施形態では、周波数範囲は部分的に重なる場合がある。さらに他の実施形態では、周波数および周波数範囲は略同じであり得る。たとえば、いくつかの実施形態では、各圧力波発生器5A、5B、5Cは、図4Aまたは図4Cに示す全スペクトルにわたって圧力波23A、23B、23Cを発生させることができる。
【0128】
本明細書で説明するように、圧力波の異なる周波数は、異なるタイプの組織を分離するかまたは崩壊するのに有効であり得る。たとえば、いくつかの周波数は、歯10から非健全物質の比較的大きい部分を分離するのにより有効であり得、他の周波数は、歯10から
非健全物質の比較的小さい部分を分離するのにより有効であり得る。さらに他の周波数は、歯10から中間のサイズの部分を分離するのに特に有効であり得る。いくつかの実施形態では、歯10から物質を分離するのに有効な音響周波数は、除去される非健全物質の組成に関連することができる。たとえば、いくつかの周波数は、罹患歯髄組織を除去するのにより有効であり得、他の周波数は、石灰化した沈着物を除去するのにより有効であり得る。細菌、バイオフィルム、う蝕、歯垢、歯石等を除去するのに、さらに他の周波数が有効であり得る。
【0129】
歯10を完全に洗浄するために、歯10からすべてのタイプの非健全または望ましくない物質を除去することが望ましい場合がある。たとえば、細菌、バイオフィルム、およびスミア層の一部(あてはまる場合)に加えて、歯根管13から有機組織および無機組織を除去することが望ましい場合がある。歯10の外面または外部に対して、歯垢、歯石等の歯科沈着物に加えて、う蝕領域を除去することが望ましい場合がある。したがって、治療処置中、すべてのタイプの非健全物質の有効な分離に対応する全範囲の周波数にわたって圧力波23A、23B、23Cを伝播させることが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、全範囲の周波数を実質的に同時に適用することができる。たとえば、歯10からすべての非健全部分を取り除くために、歯10に周波数のランダムなまたは雑音を含む分布を含む音響信号を適用することができる。
【0130】
他の実施形態では、歯10からさまざまなタイプおよび/またはサイズの非健全物質を逐次除去するために、周波数の特定の範囲に対応する圧力波発生器5A、5B、5Cを逐次適用することができる。たとえば、第1処理段階中、最初に、第1周波数または第1周波数範囲に対応する圧力波23Aを伝播させるように、圧力波発生器5Aを作動させることができる。第2処理段階中、次に、第2周波数または第2周波数範囲に対応する圧力波23Bを伝播させるように、圧力波発生器5Bを作動させることができる。第3処理段階中、第3周波数または第3周波数範囲に対応する圧力波23Cを伝播させるように、圧力波発生器5Cを作動させることができる。いくつかの実施形態では、臨床医は、必要に応じて、たとえば所定タイプまたはサイズの非健全物質を標的にするために、処理段階を選択することができる。他の実施形態では、複数の圧力波発生器の各々を作動させるために、処理段階が自動的に循環するように、システムを構成することができる。いくつかの構成では、処理段階がランダムに循環するように、システムを構成することができる。
【0131】
さらに、圧力波発生器5A、5B、5Cは、本明細書に記載するような、バルク流体移動、たとえばチャンバ6内の流体運動24を引き起こすように作用することができる。さらに、いくつかの実施形態では、圧力波発生器5A、5B、5Cは、治療済みの歯または治療領域を閉塞するかまたは充填するように作用することができる。したがって、図7Bの実施形態では、歯10またはその治療領域を実質的に洗浄しかつ/または充填するために、複数の周波数帯域の音波を伝播させるように、複数の圧力波発生器5A、5B、5Cを逐次かつ/または同時に使用することができる。
【0132】
V.歯シール剤および位置合わせ特徴の例
図8Aは、係止歯シール剤26を用いて歯10に取り付けられるかまたは結合された結合部材3の概略側断面図である。結合部材3を結合する安定した結合面を提供することが重要であり得る。たとえば、結合部材3および圧力波発生器5が歯10に対して著しく移動することができる場合、処置の結果は、一貫せず好適でないことがあり得る。
【0133】
したがって、臨床医は、歯10にアクセス開口部18を形成することができる。歯シール剤26が周囲境界を含むように、アクセス開口部18の外周部の周囲に歯シール剤26を施すことができる。チャンバ6および位置決め部材3を歯シール剤26に固定するように、歯シール剤26の周囲境界内にチャンバ6および位置決め部材3を配置することがで
きる。さらに、歯10に対する位置決め部材3の横方向移動、たとえば、歯根管13の中心軸Zを横切る移動を防止しまたは低減させることが重要であり得る。たとえば、歯シール剤26の周縁部に沿って係止壁64を画定することができる。係止壁64は、位置決め部材3の横方向移動を防止し、歯10に結合部材3を固定するのに役立つように、歯10に対して上方に延在することができる。結合部材3の対応する幅または直径よりわずかに大きい幅または直径を有するように側方壁64を画定することができる。シール26と結合部材3とが嵌合するような許容範囲内において、側方壁64を画定することができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、臨床医は、モールドを用いて歯シール剤26および係止壁64を形成することができる。モールドは、シール26および係止壁64の最終的な輪郭に対応するような形状とすることができる。たとえば、臨床医は、歯10の周囲にモールドをあてがい、モールド内部に封止材を流動状態で流すことができる。封止材は、固体または半固体状態に固まるように、硬化させる(たとえば、加熱する、紫外線に露出させる等)ことができる。他の実施形態では、臨床医は、所望の寸法および形状を有するように、歯シール剤26および係止壁64を手作業で成形することができる。
【0135】
臨床医は、係止壁64によって画定される境界の間および/または境界内でシール26に結合部材3をあてがうことができる。シール26は、結合部材3の先端部が載る実質的に平面の面を備えることができる。上で説明したように、係止壁64は、結合部材3の横方向移動を防止することができる。いくつかの実施形態では、シール26に結合部材3を取り付けることができ、他の実施形態では、臨床医は、結合部材3をシール26に対して押圧することができる。
【0136】
チャンバ6が流体22で少なくとも部分的にまたは実質的に充填されるように、流体入口61によってチャンバ6に流体22を供給することができる。歯10を実質的に洗浄しかつ/または充填するように、圧力波発生器5を作動させることができる。たとえば、本明細書で説明したように、圧力波発生器5は、チャンバ6および/または歯10の中に、歯10を洗浄しかつ/または充填するのに十分な圧力波23および流体運動24を引き起こすことができる。上述したように、図8Aの圧力波発生器5は、液体ジェット装置等、任意の好適な圧力波発生器であり得る。廃棄流体は、ハンドピース20に沿った流体出口62により歯10およびチャンバ6から流出することができる。歯10および/またはチャンバ6内の圧力を調節するために通気孔63を設けることができる。図8Aに示すように、たとえば、外部環境、たとえば空気との流体連通を提供するように、結合部材3の壁を通して通気孔63を形成することができる。
【0137】
図8Bは、歯シール剤26の湾曲面66と嵌合するような形状である湾曲した先端部分65を有する結合部材3の概略側断面図である。図8Bに示すように、結合部材3は、いくつかの実施形態ではボール形状であり得る。いくつかの処置では、臨床医が、結合部材3および圧力波発生器5を歯10に対して所望の向きに回転させることが望ましい場合がある。たとえば、臨床医は、歯10のアクセス開口部18に対して特定の位置および/または向きで圧力波発生器5を位置決めしたい場合がある。本明細書で説明したように、いくつかの構成では、歯根管13の中心軸Zを横切るアクセス開口部18の向こう側に流体を向けるかまたは通すことが有利であり得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、歯シール剤26が、湾曲面66、たとえば結合部材3に面する凹状部分を画定する面を含むように、アクセス開口部18の周囲で歯10に歯シール剤26を施すことができる。上述したように、いくつかの実施形態では、モールドを用いてシール26を形成することができる。他の実施形態では、臨床医は、歯シール剤26の湾曲面66を手作業で成形することができる。歯シール剤26の湾曲面66は、結合部材3の湾曲先端部分65とおよそ同じである曲率(たとえば曲率半径)を有するように画定す
ることができる。
【0139】
歯シール剤26を形成した後、臨床医は、結合部材3の湾曲先端部分65がシール26の相補的な湾曲面66と嵌合するように、歯シール剤26の対応する湾曲面66に、結合部材3の湾曲先端部分65をあてがうことができる。いくつかの実施形態では、歯シール剤26は歯10に対して固定され、湾曲先端部分65は、シール26に対して自由に回転移動することができる。他の実施形態では、歯シール剤26の湾曲面66と湾曲先端部分65とは互いに結合され、歯10およびアクセス開口部18に対して自由に回転することができる。
【0140】
上で説明したように、流体入口61によってチャンバ6および歯10に流体22が供給される。たとえば、チャンバ6を流体22で実質的に充填することができる。歯10を実質的に洗浄するように、たとえば歯から非健全物質を除去するように、圧力波発生器5を作動させることができる。圧力波発生器5は、歯10を洗浄するのに十分な圧力波23および流体運動24を発生させることができる。流体出口62によって、歯10およびチャンバ6から廃棄流体を除去することができる。歯10および/またはチャンバ6内の圧力を調節するように、結合部材3に通気孔63を設けることができる。
【0141】
治療処置中、臨床医は、圧力波発生器5を所望の向きおよび/または位置に向けるように、結合部材3および/または圧力波発生器5を操作したい場合がある。図8Bの実施形態では、たとえば、臨床医はハンドピース20を手動で回転させることができ、それにより、結合部材3および結合部材3の湾曲先端部分65が回転する。結合部材3および圧力波発生器5が歯10に対して所望の向きに向けられるまで、湾曲先端部分65は歯シール剤26の湾曲面66に対して回転することができる。したがって、臨床医は、歯10に対して結合部材3を回転させるように、歯シール剤26および湾曲結合部材3を有利に使用することができる。
【0142】
図8Cは、歯10に形成されたアクセス開口部18に嵌合するようなサイズおよび形状である嵌合チューブ67を備える位置合わせの特徴を有する結合部材3の概略側断面図である。図8Cに示すように、結合部材3は、チャンバ6と歯10との間で流体連通するように構成された開口部を画定するアクセスアパーチャ70を備えることができる。嵌合チューブ67は、結合部材3のアクセスアパーチャ70を包囲しかつそこから延在することができる。
【0143】
小臼歯に適用される治療処置等、いくつかの実施形態では、歯10のアクセス開口部18に結合部材3を位置合わせすることが難題であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、臨床医は、アクセス開口部18を形成することができ、歯10のアクセス開口部18の周囲に歯シール剤26をあてがうことができる。臨床医は、嵌合チューブ67がアクセス開口部18を通して歯10の一部に挿入されるように、歯シール剤26に結合部材3をあてがうことができる。図8Cに示すように、嵌合チューブ67は、臨床医が処理にアクセス開口部18を見付けるのに役立つことができる。さらに、嵌合チューブ67は、歯10に対して結合部材3を横方向に固定するのに役立つことができる。たとえば、嵌合チューブ67は、結合部材3が、治療中に歯根管13の中心軸Zを横切る方向に並進するのを防止することができる。シール26に結合部材3を取り付けることができ、または臨床医は、歯シール剤26に対して結合部材3を押圧することができる。
【0144】
上述したように、チャンバ6を、流体入口61によって供給される流体22で実質的に充填することができる。チャンバ6および/または歯10の中に圧力波23および流体運動24を発生させるように、圧力波発生器5を作動させることができる。圧力波発生器5は、歯10を実質的に洗浄しかつ/または充填するように作用することができる。流体出
口62によって廃棄流体を除去することができる。歯10および/またはチャンバ6内の圧力を調節するために通気孔63を設けることができる。したがって、図8Cに開示する実施形態は、結合部材3を歯10のアクセス開口部18に有利に位置合わせすることができ、歯10に対して結合部材3を固定するのに役立つことができる。
【0145】
VI.圧力波発生器の例
図9Aは、結合部材3と液体ジェット装置を備える圧力波発生器5との概略側断面図である。図5図8Cの実施形態と同様に、結合部材3は、歯シール剤26によって歯10に結合することができる。歯10の外側の結合部材3のチャンバ6内に圧力波発生器5を配置することができる。流体入口61は歯10に流体を供給することができ、圧力波発生器5は、歯10を洗浄するように作動させることができる。
【0146】
図9Aに示すように、圧力波発生器5は、液体ジェット装置を備えている。液体ジェット装置は、ガイドチューブ60と、ガイドチューブ60の先端部に配置された衝突部材69とを含むことができる。ハンドピースの先端部分21に配置されたノズルまたはオリフィスによって、液体ジェット60を形成することができる。ジェット60は、ガイドチューブ27の流路を通して伝播することができる。ガイドチューブ27の1つまたは複数の開口部により、ジェット60は、チャンバ6を充填する流体22と相互作用することができる。ジェット60は、衝突部材69に衝突することができ、チャンバ6内の流体22を通して分散する流体の噴霧68を形成することができる。図9Aに開示する液体ジェット装置のさらなる詳細は、少なくとも、2011年5月19日に公開された米国特許出願公開第2011/0117517号明細書の段落番号[0045]~[0050]、[0054]~[0077]および他のさまざまな部分に、かつ2012年9月20日に公開された米国特許出願公開第2012/0237893号明細書の段落番号[0136]~[0142]および他のさまざまな部分に見ることができ、それらの出願の各々は、全体としてかつすべての目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0147】
流体入口61は、歯10に流体22を供給することができる。図9Aの実施形態では、液体ジェット装置は流体入口61を構成することができる。本明細書で説明したように、流体22および衝突部材69との液体ジェット60の相互作用により、歯10を洗浄する(または、閉塞処理では歯を充填するかまたは閉塞する)のに十分である圧力波23および流体運動24を生成することができる。上述したように、流体出口62によって、チャンバ6および歯10から廃棄流体を除去することができる。歯10および/またはチャンバ6内の圧力を調節するために、1つまたは複数の通気孔63を設けることができる。
【0148】
図9Bは、結合部材3と発光素子71を備える圧力波発生器5との概略側断面図である。別段の定めがない限り、図9Bに示す構成要素は、図9Aにおける同様に番号が付された構成要素と同様であるかまたは同じである。結合部材3のチャンバ6内に発光素子71を配置することができる。レーザビームまたは他の好適な光源が、チャンバ6内に電磁エネルギーを伝播させることができ、電磁エネルギーは、流体22に入る際に、圧力波23になるように変換され得る。いくつかの実施形態では、レーザビームは、光の平行なコヒーレントビームとしてチャンバ6内に向けることができる。平行なレーザビームは、光が流体22にエネルギーを送達する際に圧力波23を発生させるのに十分であり得る。濃縮エネルギーを、望ましくない歯質を取り除くために十分な圧力波23に変換することができる。いくつかの実施形態では、レーザビームまたは電磁源の波長は、チャンバまたは口の中の治療流体(たとえば水)によって、かつ/または治療流体中の添加剤(たとえばナノ粒子等)によって非常に吸収可能であるように選択することができる。たとえば、電磁エネルギーのうちの少なくとも一部は、チャンバ内の流体(たとえば水)によって吸収することができ、それにより、流体内を伝播する局所化加熱および圧力波23を発生させることができる。電磁ビームによって発生する音波は、流体内に光誘起または光音響キャビ
テーション効果を発生させることができる。いくつかの実施形態では、局所化加熱により、チャンバ6および/または歯10の中に、歯10の洗浄をさらに促進する回転流体流24を引き起こすことができる。閉塞処置では、図9Bの圧力波発生器5を用いて、治療済みの歯根管13を実質的に充填することができる。
【0149】
図9Cは、結合部材3と、機械的振動構成要素72を備える圧力波発生器5との概略側断面図である。別段の定めがない限り、図9Cに示す構成要素は、図9Aおよび図9Bにおける同様に番号が付された構成要素と同様であるかまたは同じである。機械的振動構成要素72は、印加される電気信号に応答して振動する圧電素子を備えることができる。本明細書に開示する圧力波発生器5と同様に、チャンバ6内に機械的振動構成要素72を配置することができる。起動されると、機械的振動構成要素72は、流体22および歯10を通して圧力波23を伝播させることができ、チャンバ6内に流体運動24を引き起こすことができる。したがって、図9Cの圧力波発生器5は、本明細書で説明したように、歯10を洗浄しかつ/または充填するように作用することができる。
【0150】
図9Dは、結合部材3と、攪拌構成要素73を備える圧力波発生器5との概略側断面図である。別段の定めがない限り、図9Dに示す構成要素は、図9A図9Cにおける同様に番号が付された構成要素と同様であるかまたは同じである。攪拌構成要素73は、回転駆動軸と駆動軸に結合されたプロペラとを備えることができる。回転するとき、駆動軸は、攪拌構成要素73のプロペラを回転させて、チャンバ6および/または歯10の中に圧力波23および/または流体運動24を発生させて、歯10を洗浄しかつ/または充填することができる。
【0151】
図10Aは、結合部材3の側断面図であり、結合部材3は、結合部材3のチャンバ6内に流体運動24を発生させかつ/または流体22内に圧力波23を発生させるように構成された圧力波発生器5を有している。上述したように、ハンドピース20の先端部分21に結合部材3を形成するかまたは結合することができる。図10Aの実施形態では、結合部材3は、歯シール剤26によって歯10に結合される。嵌合チューブ67を用いて、位置決め部材3を歯10に位置合わせしかつ/または固定することができる。嵌合チューブ67は、結合部材3のアクセスアパーチャすなわちポート70の周囲に延在しかつそれを画定することができ、アクセスアパーチャすなわちポート70は、チャンバ6と歯10との間に流体連通を提供する。図10Aに示すように、歯根管13は、歯根管13の長い方の長さすなわち主寸法に沿って延在する中心軸Zを有することができる。嵌合チューブ67は、結合部材3が中心軸Zを横切る方向Xに並進するのを防止することができる。
【0152】
図10Aの実施形態では、歯10の外側であり得るチャンバ6内に圧力波発生器5を配置することができる。圧力波発生器5は、結合部材3の中心領域からずらして、たとえば、結合部材3の壁に沿って配置することができる。図10Aに示すように、圧力波発生器5は、結合部材3のチャンバ6に流体22を供給するように構成された流体入口61を備えることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、治療流体を供給するように流体入口61を構成することができる。治療流体を用いる実施形態では、歯を洗浄するように圧力波発生器5を構成することができる。本明細書で説明したように、圧力波発生器5は、相対的に大きい根管空間と歯のより小さい亀裂および裂け目との両方を洗浄するように、治療液の効果を向上させることができる。歯10のサイズが異なる空間から異なるタイプの物質を取り除くために、音響周波数の広域スペクトルを発生させるように、圧力波発生器5を作動させることができる。
【0153】
他の実施形態では、流動性閉塞材を供給するように流体入口61を構成することができる。上で説明したように、これらの実施形態では、圧力波発生器は、流動性閉塞材を流動可能状態で供給することができ、歯根管を通して、たとえば相対的に大きい歯根管空間と
歯のより小さい亀裂、空間、裂け目、細管等との両方を通して、流動性閉塞材を伝播させることができる。歯根管系全体を実質的に充填することにより、圧力波発生器5は、未充填空間または未閉塞空間内の細菌の成長を防止することにより、感染または他の否定的な患者の転帰を防止することができる。
【0154】
流体入口61は、操作盤2と流体連通することができ、コントローラは、入口61を通る流動性材料22の流れを制御することができる。本明細書で説明したように、コントローラは、処置の処理段階中、さまざまな周波数で、入口61を通して流体22(たとえば、治療流体または流動性閉塞材)を供給することができる。いくつかの実施形態では、チャンバ6を、治療流体または閉塞材等の流動性材料22で充填するかまたは実質的に充填することができ、チャンバ6が流動性材料22によって所望のレベルで充填されると、圧力波発生器5を作動させることができ、かつ/または、チャンバ6を実質的に充填するように圧力波発生器5を作動させることができる。
【0155】
図10Aに示すように、流体入口61は、チャンバ内に流体運動24を引き起こすように、チャンバ6内に流体22を供給することができる。図10Aに示すように、たとえば、流体運動24は、チャンバ6内の流体の回転流を含む。流体運動24は、実質的に、歯根管13の中心軸Zを横切る軸を中心とする回転流路または場を画定することができる(たとえば、流体は、中心軸Zを横切る軸を中心に方向ωに流れる)。
【0156】
たとえば、図10Aに示す流体運動24を引き起こす1つの方法は、結合部材3のアクセスポート70に隣接して圧力波発生器5の先端部分25を位置決めすることである。本明細書で説明したように、圧力波発生器5は、チャンバ6内に流体運動24を発生させる流体運動発生器として作用することができる。流体入口61の先端部分25は、歯根管13の中心軸Zを横切るX方向に沿って歯10のアクセス開口部18の向こう側に(かつ/または結合部材3およびチャンバ6のアクセスポート70の向こう側に)、流体の流れまたはビームを向けることができる。たとえば、いくつかの実施形態は、流体入口61は、歯根管13の中心軸Zに対して実質的に垂直な方向に、たとえば、根管13の主軸に対して略直交する方向に、流体22の流れを向けることができる。さらに、図10Aに示す流体運動24を引き起こすように、流体(たとえば、流体流の推進力)を、アクセスポート70の最基端部に近い平面に沿ってかつ/またはそれに対して実質的に平行に向けることができる。歯10の根尖の近くの所望の根尖圧力を制御するように、アクセスポート70を横切る流体流24を変更することができる。たとえば、流体運動24の推進力を、システムコントローラ51によって制御可能に調整することができる。さらに、中心軸Zに対する角度も根尖圧力を制御するように調整することができる。実際には、患者の転帰を改善するように根尖圧力を上昇させ、低下させ、かつ/または維持するように、圧力波発生器5のパラメータを調整することができる。
【0157】
図10Aに示す回転方向ωに流れを引き起こすことができる)ポート70を横切るチャンバ6内の流体22の運動24により、歯根管13を通して渦75を引き起こすことができる。たとえば、回転流24によって引き起こされる流体22におけるせん断力により、(たとえば、図10Aに示すように右回りおよび左回りの)反対方向に回転または循環する渦75を発生させることができる。たとえば、いくつかの構成では、アクセスポート70の近くにより強力な渦75を生成することができ、根尖開口部15に近いほど弱い渦75を生成することができる。いくつかの実施形態では、アクセスポート70に近い箇所から根尖開口部15まで根管の長さに沿って渦75を徐々に弱めることができる。根尖開口部15に近いほど渦75が弱いことは、歯の根尖を通して物質が押し出されるリスクを防止するかまたは低減させるのに役立つことができ、それにより、治療処置をより安全にすることができる。圧力波発生器5および圧力波発生器5によって発生する流体運動24のパラメータを制御することにより、渦75を調整することができる。いくつかの実施形
態では、渦75は、サイズ、形状および/または方向が不変であり得る。他の実施形態では、渦75は不規則であるかまたはカオスであり得る。
【0158】
さらに、歯根管13に沿った渦の交互の方向により、歯10の根尖開口部15の近くに負圧(または低い正圧)を有利に生成することができる。たとえば、歯根管13の中心軸Zを横切る軸を中心にも回転する渦75により、アクセス開口部18に向かって上方にマイクロ流をもたらすことができ、それにより、流体22は、根尖開口部15の近くがわずかに負圧になる傾向がある(たとえば、根管13を通ってアクセス開口部18に向かって上方に流れるわずかな傾向)。図14A図14Cに関して後に説明するように、根尖開口部15の近くの負圧により、歯10の中の物質が歯根尖開口部15を通って押し出されるのを防止することができる。他の処理では、たとえば、根尖開口部15の近くの圧力は、物質が根尖開口部15を通って患者の顎内に送り出されるか、または押し出されるように、正であり得る。こうした押出しにより、感染、高度の苦痛等、望ましくない患者の転帰に至る可能性がある。
【0159】
いくつかの実施形態では、チャンバ6内に圧力波発生器5を配置し、可能な限り大きいアクセスポート70を備えた結合部材3を使用することが有利である場合がある。アクセスポート70の直径または主寸法を増大させることにより、歯10の中により多くのエネルギーを向けることができ、それにより歯洗浄処置を促進することができる。直径または主寸法を増大させることはまた、こうした実施形態で使用される場合の閉塞処置を促進することも可能である。いくつかの実施形態では、たとえば、嵌合チューブ67の壁の厚さを約2倍にすることで、アクセスポート70のサイズを増大させるために、嵌合チューブ67を使用しない場合がある。したがって、さまざまな実施形態では、結合部材3のアクセスポート70は、歯10に形成されたアクセス開口部18の直径または主寸法と少なくとも同じ程度であり得る。いくつかの実施形態では、たとえば、アクセスポート70は、歯10に形成されたアクセス開口部18と略同じサイズであり得る。
【0160】
上述したように、流体22および歯10を通して圧力波23を発生させるように、圧力波発生器5を構成することも可能である。本明細書で説明したように、洗浄処理では、圧力波23、流体運動24および治療流体の化学的性質の組合せが、歯10の小さい空間、亀裂および裂け目における等、歯10から非健全物質を実質的に除去するように作用できる。流体出口62により、歯10および/またはチャンバ6から廃棄流体および分離した物質を除去することができる。上で説明したように、チャンバ6内の圧力を調節するように、結合部材3を通して1つまたは複数の通気孔63を設けることができる。充填処置または閉塞処置では、圧力波23、流体運動24、および閉塞材の化学的性質は、歯根管系全体を実質的に充填するように作用することができる。
【0161】
図10Bは、結合部材3の側断面図であって、結合部材3は、結合部材3のチャンバ6内に流体運動24を発生させるように構成された液体ジェット装置を備える圧力波発生器5を有している。別段の定めがない限り、図10Bに示す構成要素は、図9Aおよび図10Aの同様に番号が付された構成要素と同様であるかまたは同じである。図10Aの圧力波発生器5と同様に、結合部材3の壁に沿って液体ジェット装置を配置することができる。液体ジェット装置は、ジェット60が伝播するガイドチューブ27を含むことができる。ガイドチューブ27は、チャンバ6内のジェット60と流体22との間の流体連通を可能にする1つまたは複数の開口部を含むことができる。いくつかの実施形態では、ジェット60以外の流体22を入口によって供給することができる。他の実施形態では、ジェット60は、流体22を含むことができ、チャンバ6に流体22を供給することができる。いくつかの実施形態では、チャンバ6を流体22で充填するかまたは実質的に充填することができる。
【0162】
圧力波発生器5を作動させることができ、ジェット60は衝突部材69に衝突することができ、衝突部材69は、ジェット60を噴霧69になるように偏向させることができる。たとえば、図10Aに関して上で説明したように、噴霧69は、アクセスポート70を横切って流体運動24を発生させることができる。液体ジェット装置は、たとえば、歯根管の中心軸Zを横切る軸を中心に回転方向ωに、チャンバ内に流体運動24を引き起こすことができる。たとえば、噴霧68は、結合部材3のアクセスアパーチャ70を横切って、たとえば、歯根管13の中心軸Zおよび/またはチャンバの中心軸を横切る(たとえば、実質的に垂直な)方向Xに沿って進む流体の流れを引き起こすことができる。噴霧69は、アクセスポート70の平面、たとえば、チャンバ6と歯との間に開口部を画定するアクセスポートの最基端平面に対して平行な方向に流体流24を引き起こすことができる。流体流24は、歯根管13を通して対向する渦75を引き起こすことができる。歯10によって(場合によっては圧力波23を組み合わせて)引き起こされる流体運動24は、歯10から非健全物質を除去するように作用することができる。さらに、図10Aに関して上で説明したように、引き起こされる渦75は、根尖開口部15にまたはその近くに負圧を生成することができ、それにより、根尖開口部15を通って物質が押し出されるのを有利に防止することができる。さらに、図10Aと同様に、結合部材3のアクセスポート70の直径は、少なくとも歯10に形成されたアクセス開口部18と同じ程度であり、たとえば、アクセス開口部18と略同じサイズであり得る。さらに、閉塞処理では、図10Bの圧力波発生器5は、歯根管系全体を実質的に充填するように作用することができる。
【0163】
図10Cは、結合部材3の側断面図であり、結合部材3は、結合部材3のチャンバ6内に流体運動24を発生させるように構成された発光素子72を備える圧力波発生器5を有している。別段の定めがない限り、図10Cに示す構成要素は、図9Bならびに図10Aおよび図10Bの同様に番号が付された構成要素と同様であるかまたは同じである。図9Bの実施形態と同様に、圧力波発生器5は、レーザまたは他の光源を備えることができる。発光素子72は、治療流体、閉塞材等の流体22の局所化リザーバ78の上に高強度の光を伝播させることができる。たとえば、ゲート77は、流体22がチャンバ6から局所化リザーバ78内に流れ込むのを選択的に可能にすることができる。発光素子72から伝播する光は、リザーバ78内の流体22に衝突することができ、リザーバ78内の流体22を局所的に加熱することができる。リザーバ78内の流体22を十分な程度まで加熱することにより、流体22は、歯10の歯根管13の中心軸Zを横切る方向Xに沿ってリザーバから出るように移動することができる。たとえば、流体22は、歯根管の中心軸Zに対して実質的に垂直に、かつ/またはアクセスポート70の最基端面に対して実質的に平行な方向に、リザーバ78から出るように移動することができる。
【0164】
図10Aおよび図10Bに関して上で開示した実施形態と同様に、リザーバ78からの流動性材料22の流れにより、回転方向ωを中心とする回転流体流24を引き起こすことができる。回転流24により、歯根管13を通して渦75を引き起こすことができ、それにより、歯10の根尖開口部15にまたはその近くに負圧を引き起こすことができる。さらに、いくつかの実施形態では、アクセスポート70の直径は、少なくともアクセス開口部18と同程度であり得る。上述したように、洗浄処置では、流体運動24および圧力波23は、歯10を実質的に洗浄するように作用することができる。閉塞処置では、圧力波発生器5は、実質的に歯根管系全体を充填するように作用することができる。
【0165】
図10Dは、歯根管13の中心軸Zと実質的に位置合わせされる圧力波発生器5を有する結合部材3の側断面図である。図10Dの圧力波発生器5は、チャンバ6内に流体22を出力するように構成されたノズル、または本明細書に開示する他の圧力波発生器のうちの任意のものであり得る。別段の定めがない限り、図10Dに示す構成要素は、図10A図10Cの同様に番号が付された構成要素と同様であるかまたは同じである。圧力波発生器5は、液体ジェット装置、流体入口、発光素子等、本明細書に開示する任意の好適な
圧力波発生器であり得る。Z軸からずれていることができる図10A図10Cの実施形態とは異なり、図10Dの圧力波発生器5は、Z軸に略位置合わせされる。
【0166】
さらに、図10A図10Cの実施形態とは異なり、図10Dの圧力波発生器5は、Z軸を中心に流動性材料22の流体運動24を発生させるように構成することができる。実質的にZ軸の周囲の流体運動24により、歯根管23を通って伝播することができる流体の渦巻流76を発生させることができる。上記実施形態と同様に、治療処置を促進する渦巻流76の量を制御するように、流体運動24の回転出力を調整することができる。上述したように、洗浄処理では、圧力波発生器5は、実質的に歯根管13全体を洗浄することができる。閉塞処理では、本明細書においてより詳細に説明するように、圧力波発生器5は、実質的に分岐構造を含む歯根管13全体を充填するかまたは閉塞することができる。
【0167】
図10Eは、第1圧力波発生器5aおよび第2圧力波発生器5bを有する結合部材3の側断面図である。別段の定めがない限り、図10Eに示す構成要素は、図10Dの同様に番号が付された構成要素と同様であるかまたは同じである。しかしながら、図10Dの実施形態とは異なり、中心軸Zからずらして、2つの圧力波発生器5a、5bを配置することができる。図示する実施形態では、Z軸(たとえば、歯根管の中心軸および/またはチャンバ6の中心軸)に対して同心状に圧力波発生器5a、5bを配置することができ、たとえば、圧力波発生器5a、5bは、Z軸から略同じ距離にあり得る。図10Dの実施形態と同様に、各圧力波発生器は、Z軸の方向を中心に対応する流体運動24を発生させることができるが、回転は、図10Eに示すように、Z軸からずれている。さらに、図示する実施形態では、圧力波発生器5aは、Z軸を中心に流体運動24aを一方向に発生させることができ、圧力波発生器5bは、Z軸方向を中心に流体運動24bを反対方向に発生させることができる。2つの圧力波発生器によって引き起こされる逆の流れ24a、24bは、協働して、歯根管13を通って伝播する渦巻流76を引き起こすことができる。上で説明したように、引き起こされた渦巻流76および圧力波23は、洗浄処理において実質的に歯根管13全体を洗浄することができる。閉塞処理では、引き起こされた渦および圧力波23は、実質的に歯根管系全体を充填するかまたは閉塞することができる。
【0168】
図10Fは、少なくともチャンバ6内に部分的に配置されかつチャンバ6内に渦巻流76を発生させるように構成された流体運動発生器5の概略上面図である。図10Fの流体運動発生器5は、チャンバ6内に流体23を供給するように構成されたノズルまたは出口を備えることができる。図10Fの実施形態では、歯根管の中心Z軸は、ページから出てくるように位置する。図10Fに示すように、流体運動発生器5は、歯根管の主軸を横切る(たとえば実質的に垂直な)方向において、たとえばアクセスポート70の向こう側に流体運動24を向けることができる。流体運動24は、チャンバ6の壁に衝突することができ、渦巻流運動76を生成するように内側に突き進むことができる。上で説明したように、渦巻流76は、歯根管13を通って伝播し、歯根管13を洗浄しかつ/または充填することができる。流体運動発生器5は、チャンバ6の高さに沿った任意の場所に配置することができる。さらに、本明細書で説明するように、流体運動発生器5はまた、液体ジェット、流体入口等も備えることができる。
【0169】
図10Gは、チャンバ6内に少なくとも部分的に配置され、かつチャンバ6内の逆渦巻流流体運動76a、76bを発生させるように構成された、複数の流体運動発生器5a、5bの概略上面図である。図10Gに示すように、たとえば、流体運動発生器は、歯根管の中心軸Zおよび/またはチャンバ6の中心軸に対して(たとえば、ページから出るように)同心状に配置することができる。各流体運動発生器5a、5bは、中心軸Zを横切る(たとえば、実質的に垂直な)方向にアクセスポート70を越えて流体運動24を伝播させることができる。各逆渦巻流76a、76bは、歯根管のZ軸を中心に反対方向に回転することができ、互いに相互作用して、歯根管を通して渦巻流76を発生させて、歯根を
洗浄しかつ/または充填することができる。
【0170】
VII.歯の促進された洗浄に関するさらなる詳細
必須ではないが、本明細書に記載する効果のうちのいくつかまたはすべてが、本明細書に記載する処理方法およびシステムのさまざまな実装形態によって提供される有利な効果、利益または結果を少なくとも部分的に担い得ることが考えられる。したがって、本明細書に開示するシステムのさまざまな実施形態は、これらの効果のうちのいくつかまたはすべてを提供するように構成することができる。
【0171】
以下の記載において、異なる意味が示されていない限り、以下の用語は、それらの通常のかつ通例の意味を有する。たとえば、化学反応領域は、概して、組織と、組織溶解剤等の化学物質を含有する溶液との間の界面を指すものとする。組織は、歯に存在するすべてのタイプの細胞とともに細菌およびウイルスを指すものとする。石灰化組織は、石灰化した歯髄、歯髄結石および第三象牙質を指すものとする。気泡は、限定されないが、化学反応によって生成された気泡、脱気(使用された場合)後に流体に残っており流体内の気泡として放出される溶存ガス、および不完全な封止のために歯の中に導入されるあらゆる気泡を含む。
【0172】
組織洗浄処理は、本明細書に記載する生理化学的効果のうちの1つまたは複数を利用して、歯の内部から組織および/または石灰化組織を洗浄して除去することができる。いくつかの洗浄処理では、(1)音波または圧力波(たとえば、音響キャビテーションの発生)、(2)チャンバ内の流体の循環(たとえば、巨視的渦および流れ)および(3)化学物質(たとえば、組織溶解剤の使用、脱気流体の使用)の組合せにより、非常に有効な洗浄を提供することができる。したがって、本明細書に開示するシステムのいくつかの実施形態は、音波を発生させる圧力波発生器と、歯の内部に治療流体を保持し治療流体の循環を可能にする流体プラットフォーム(たとえば流体保持器)と、脱気されるかまたは組織溶解剤等の化学薬品を含む治療流体とを利用する。
【0173】
A.圧力波
圧力波発生器を用いて、チャンバ6(および歯)の中の流体を通して伝播する圧力波を発生させることができる。流体が高強度圧力波(たとえば、広帯域周波数)で放射されると、音響キャビテーションが発生し得る。本明細書に記載したように、キャビテーション気泡の爆縮的崩壊により、寿命の短い強力な局所加熱および高圧が発生し得る。したがって、いくつかの処理方法では、音響キャビテーションは、化学反応、ソノケミストリ、ソノポレーション、組織解離、組織剥離を促進することとともに、歯根管および細管から細菌および/またはスミア層を除去することを担いまたはそれに関与することができる。振動またはソノケミストリを介して化学反応を促進する効果については、化学物質に関するセクションにおいて後述する。
【0174】
ソノポレーションは、音場を用いて細胞原形質膜の透過性を変更するプロセスである。このプロセスにより、化学反応を大幅に促進することができる。それは、音場が、比較的広帯域幅(たとえば、何100kHz~何1000kHz)を有する場合、有利であり得る。いくつかの周波数(たとえば、低周波数超音波)によって、細胞の破壊および死(たとえば溶解)ももたらすことができる。この現象により、本来は歯を再感染させ得る細菌を死滅させることができる。音波および/または音響キャビテーションにより、細胞間の結合を緩めることができ、かつ/または細胞を解離することができる。音波および/または音響キャビテーションにより、細胞と象牙質との間の結合を緩め、かつ/または象牙質から細胞を剥離することができる。
【0175】
石灰化細胞を除去するために、音波は、キャビテーション気泡の爆縮の結果として生成
される衝撃波および/またはマイクロジェットにより、ソノケミストリおよび石灰化構造の微視的除去を引き起こすことができる。圧力波または音波は、構造的振動を通して微視的石灰化構造を破壊することができる。この処置に対して化学物質(たとえば、例としてEDTA等のキレート剤)が使用される場合、音波により化学反応を促進することができる。
【0176】
音波の効果を促進するように、システムのいくつかの特性を調整することができる。たとえば、例として表面張力、沸騰もしくは蒸気温度、または飽和圧力を含む流体の特性を調整することができる。溶存ガス含有量が低減した脱気流体を使用することができ、それにより、流体力学的キャビテーションまたは他の任意の発生源によって発生させることができる音波のエネルギー損失を低減させることができる。流体を脱気することができ、それは、音波のエネルギーを保存するのに役立つことができ、システムの効率を向上させることができる。
【0177】
B.流体循環
いくつかの処理システムおよび方法は、化学反応領域に対するかつ化学反応領域からの反応物質および副生成物の拡散および/または音響的に促進された拡散を使用する。しかしながら、反応プロセスの時間尺度が比較的短いため、本明細書に開示する実施形態のうちのいくつかでは、「巨視的」流体運動、循環、対流、渦巻運動状態または乱流等、反応物質送達のより高速な機構が有利であり得る。たとえば、歯の内部への流体流入により、歯髄腔において巨視的循環を引き起こすことができる(たとえば、図1Aおよび図10A図10Cを参照)。液体ジェット装置は、音波を生成することができるだけでなく、ジェットおよび/または噴霧がチャンバ6に入る際に循環を引き起こすこともできる。他の圧力波発生器は、それらの周囲流体との相互作用を介して(たとえば、対流および循環を引き起こすことができる流体の局所加熱を介して)流体循環を生成することができる。
【0178】
時間尺度が化学反応の時間尺度に匹敵する(好ましくはそれより高速である)流体循環は、化学反応領域において反応物質を補給するのに役立つことができ、かつ/または反応部位から反応副生成物を除去するのに役立つことができる。対流または循環プロセスの有効性に関連し得る対流時間尺度は、たとえば循環源の位置および特性に応じて調整することができる。対流時間尺度は、およそ、チャンバの物理的サイズをチャンバ内の流体速度で割った値である。循環の導入により、概して、拡散プロセスはなくならず、それは、化学反応領域において薄い微視的層内で依然として有効なままであり得る。流体循環により、歯根管内部に流動励起圧力振動をもたらすことができ、それは、歯根管から相対的に大きい切片の組織を剥離し、緩め、かつ/または除去するのに役立つことができる。
【0179】
石灰化組織を除去するために、流体循環により、歯根管内部に流動励起圧力振動をもたらすことができ、それは、歯根管から石灰化構造の相対的に大きい切片を除去するのに役立つことができる。
【0180】
歯の中の循環の効果を向上させるように、システムのいくつかの特性を調整することができる。たとえば、歯の内部における循環源の位置、形状(たとえば平面ジェット対円形ジェット)または流体流の速度および/もしくは方向等の流体源の流れ特性、ならびに流体動粘度を調整することができる。循環はまた、歯の解剖学的構造または根管口もしくは歯根管サイズによっても影響を受け得る。たとえば、狭窄のある幅の狭い歯根管は、狭窄のない幅の広い根管より溶液補給速度が低いことがあり得る。対流/循環源が歯髄腔床の近くに配置される場合、歯髄腔が小さい歯ほど、歯髄腔が大きい歯より強力な循環を有することができる。歯の根尖周囲においてかけられる対流誘導圧力は、根尖周囲組織内への治療流体の押出しを低減させるかまたは回避するように制御することができる。歯の中の大きい真空および低圧は、患者によっては不快をもたらし得る。したがって、チャンバ6
および/または歯10の中に所望の作動圧力範囲を提供するように、結合部材3の特性(たとえば、通気孔、スポンジ、流れ制限器等)を調整することができる。
【0181】
C.化学物質
本明細書で説明したように、洗浄プロセスを促進するようにさまざまな反応化学物質を調整または設計することができる。たとえば、有機組織の溶解を促進するために、治療液に組織溶解剤(たとえば、石灰化治療剤、EDTA、次亜鉛素酸ナトリウム-NaOCl)を、添加することができる。組織溶解剤は、治療部位においてさまざまな成分と反応し得る。場合によっては、組織溶解は多段プロセスであり得る。組織溶解剤は、有機物および/または無機物を溶解し、脆弱にし、剥離または解離し得、それにより、よりよい患者の転帰をもたらすことができる。化学反応は、処理溶液の物理特性を局所的に変更する(たとえば、けん化を介して局所表面張力を低減させる)ことができ、それは、治療部位における間隙および小さい空間内に治療液が浸透するのに役立つか、または化学反応中に形成された気泡を除去するのに役立つことができる。治療流体に、組織と反応するように組織溶解剤(たとえば、次亜塩素酸ナトリウムまたは漂白剤)を添加することができる。組織溶解は、多段かつ複雑なプロセスであり得る。水中の次亜塩素酸ナトリウムの溶解は、次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)反応、トリグリセリドとのけん化反応、アミノ酸中和反応および/またはクロラミンを生成するクロラミン処理反応等、複数の反応を含むことができる。次亜塩素酸ナトリウムおよびその副生成物は、有機化合物、脂肪およびタンパク質の溶解剤(たとえば溶剤)として作用することができ、それにより、いくつかの処理では有機組織を分解する。
【0182】
次亜塩素酸ナトリウムは、漂白反応に基づく可逆的な化学的平衡を示し得る。化学反応は、有機組織と次亜塩素酸ナトリウムとの間で発生し得る。たとえば、次亜塩素酸ナトリウム反応から水酸化ナトリウムを発生させることができ、それは、有機化合物および脂肪(トリグリセリド)分子と反応して、けん化反応において石鹸(脂肪酸塩)およびグリセロール(アルコール)を生成することができる。これにより、残っている溶液の表面張力を低下させることができる。水酸化ナトリウムは、アミノ酸中和反応においてアミノ酸塩を形成するアミノ酸および水を中和することができる。水酸化ナトリウムの消費により、残っている溶液のpHを低減させることができる。次亜塩素酸、すなわち次亜塩素酸ナトリウム溶液に存在し得る物質は、タンパク質およびアミノ酸のアミノ基と反応してさまざまなクロラミン誘導体を生成することができる塩素を放出することができる。たとえば、次亜塩素酸は、組織の中の自由アミノ酸と反応して、N-クロロアミノ酸を形成することができ、それは、次亜塩素酸より高い防腐作用を有することができる強力な酸化剤として作用することができる。
【0183】
流体内の化学物質は、それらのタイプに応じて、溶液の表面張力に影響を与えることができ、それにより、キャビテーション現象を変化させ得る。たとえば、例として次亜塩素酸ナトリウムの水溶液等、無機化学物質の溶液は、溶液の表面張力を増大させ得る溶液内のイオン濃度を上昇させることができ、それによってキャビテーションがより強力になり得る。場合によっては、キャビテーション発生閾値の大きさは、表面張力の増大によって増大し得、キャビテーション誘発機構(たとえば圧力波発生器)は、キャビテーション気泡の発生を提供するために、閾値を超えるように十分強力であり得る。必須ではないが、キャビテーション閾値を超えると、表面張力の増大により、キャビテーションがより強力になり得ると考えられる。流体の溶存ガス含有量を(たとえば脱気を介して)低減させることにより、流体の表面張力を増大させることができ、また、キャビテーションがより強力になり得る。化学物質、薬剤または物質(ヒドロキシル官能基、ナノ粒子等)を処理に追加することにより、圧力波のキャビテーションへの変換の効率を向上させることができ、こうした化学音響効果は、いくつかの治療処置において望ましいことがあり得る。
【0184】
いくつかの方法では、次亜塩素酸ナトリウム等の化学物質によりけん化をもたらすことができる。歯根管(または細管)内部に生成されるかまたは閉じ込められた気泡の除去は、けん化の結果、化学反応領域における表面張力が局所的に低減することにより、加速させることができる。方法によっては、(たとえば歯髄腔内部における)圧力波源において表面張力が比較的高いことが望ましい場合があるが、根管内部では、気泡除去を加速させるために局所的に表面張力が低減することが有益である場合がある。この現象は、組織溶解剤が組織と反応する際に発生し得る。たとえば、次亜塩素酸ナトリウムは、脂肪酸を分解し、それらを、化学反応領域において残りの溶液の表面張力を低減させることができる脂肪酸塩(石鹸)およびグリセロール(アルコール)に変換する溶媒として、作用することができる。
【0185】
有効な洗浄を提供するように、複数の変量または要素を調整することができる。たとえば、各化学反応は、反応の速度を決める反応速度を有する。反応速度は、温度を含むいくつかのパラメータによって決まり得る。反応物質の濃度は、要素であり得、反応が完了する時間に影響を与え得る。たとえば、5%次亜塩素酸ナトリウム溶液は、一般に、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液より強力であり得、組織をより高速に溶解する傾向があり得る。
【0186】
以下のうちのいくつかまたはすべてによって、反応物質の再生速度に影響を与えることができる。化学反応領域に(たとえば表面張力のために)気泡が発生し留まることができ、化学反応領域において、新たな反応物質が反応領域に達するのを妨げるかまたは阻止するバリアとして作用し得る。したがって、治療液の循環は、気泡および反応副生成物を除去するのに役立つことができ、それらを新たな治療液および新たな反応物質に置き換えることができる。したがって、歯の内部に流体循環を有利に提供することができる流体プラットフォームの実施形態の使用により、洗浄プロセスを促進することができる。
【0187】
熱が、化学反応速度を上昇させることができ、それは、種々の熱源によって導入することができる。たとえば、治療液を、歯の内部に送達する前に予熱することができる。キャビテーション、発熱化学反応、または他の内部もしくは外部放散源が、流体に熱を生成することができ、それにより、反応速度を促進、維持または上昇させることができる。
【0188】
流体のソニケーションが、化学反応速度を上昇させまたは有効性を向上させることができる。たとえば、流体(たとえば水)に(たとえば音波もしくは超音波、または液体ジェットによって生成される広域スペクトル音響出力を含む)高強度圧力波を放射すると、音響キャビテーションが発生し得る。キャビテーション気泡の爆縮的崩壊により、寿命の短い強力な局所加熱および高圧が発生し得る。実験結果が、気泡崩壊の部位で、温度および圧力が、それぞれ約5000Kおよび1000atmに達し得ることを示した。ソノケミストリとして知られるこの現象が、本来は低温の液体に、極限の物理的状態および化学的状態をもたらすことができる。ソノケミストリは、場合によっては、100万倍ほど化学反応度を促進することが報告されている。音響キャビテーションが発生しない(または比較的低振幅で発生する)場合、圧力波による反応物質の振動が、副生成物を新たな反応物質に置き換えるのに役立つため、化学反応を促進することができる。
【0189】
石灰化組織を除去するために、治療流体に脱灰剤(たとえば、例としてEDTAまたはクエン酸等の酸)を添加することができる。脱灰剤は、歯の象牙質からカルシウムまたはカルシウム化合物を除去することができる。脱灰剤による処理の後に残っている物質は、処理前より比較的軟質(たとえば粘着性)であり、流体循環および音波によってより容易に除去可能であり得る。
【0190】
VIII.脱気された治療流体
後述するように、治療流体(および/または治療流体に添加される溶液のうちの任意のもの)を、歯科診療所で使用される通常の液体に比較して脱気することができる。たとえば、脱気した蒸留水を(化学薬品または溶質を添加してもしなくても)使用することができる。
【0191】
A.治療流体における溶存ガスのあり得る影響の例
処置によっては、治療流体は、溶存ガス(たとえば空気)を含み得る。たとえば、歯科診療所で使用される流体は、一般に、(たとえば、ヘンリーの法則に基づいて流体の温度および圧力から求められる)通常の溶存ガス含有量を有している。圧力波発生器を用いる洗浄処置中、圧力波発生器の音場および/またはチャンバ内の流体の流れもしくは循環により、溶存ガスのうちの幾分かが溶液から出て気泡を形成し得る。
【0192】
気泡は、歯の小さい通路または亀裂もしくは表面の凹凸を閉塞し得、こうした閉塞は、小さい通路に「ベーパロック」があるかのように作用し得る。いくつかのこうした処置では、気泡の存在が、気泡を通過する音波の伝播を少なくとも部分的に閉塞し、妨げ、または方向を変える場合があり、洗浄作用がたとえば、歯10の細管および小さい空間内の非健全歯科物質に達するのを少なくとも部分的に阻止するかまたは妨げる場合もある。気泡は、流体の流れまたは循環が、これらの届き難い領域かまたは他の小さい領域に達するのを阻止する場合があり、それにより、処理溶液が歯のこれらの領域に達するのが妨げられるかまたは阻止され得る。
【0193】
所定の処置においては、キャビテーションは、歯を洗浄する役割を果たすと考えられる。いかなる特定の理論によっても束縛されることを望まないが、キャビテーション発生の物理的プロセスは、ある意味で沸騰に類似し得る。キャビテーションと沸騰との1つのあり得る相違は、流体内の蒸気の形成に先立つ熱力学的経路である。沸騰は、液体の局所蒸気圧が液体における局所周囲圧力を超えて上昇し、液体から気体への相変化をもたらすのに十分なエネルギーが存在する場合に発生することができる。液体における局所周囲圧力が、部分的には局所温度での液体の引張強度によって与えられる値を有する飽和蒸気圧より十分低下する場合に、キャビテーションが発生することができると考えられる。したがって、必須ではないが、キャビテーションの発生は、蒸気圧によってではなく、代りに最大核の圧力によって、または蒸気圧と最大核の圧力との差によって決まると考えられる。したがって、蒸気圧よりわずかに低い圧力に流体をさらすことにより、一般にキャビテーションの発生はもたらされないと考えられる。しかしながら、液体における気体の溶解度は、圧力に比例し、したがって、圧力を低下させることは、流体内部の溶存ガスのうちの幾分かが、キャビテーションの発生で形成される気泡のサイズに比較して相対的に大きい気泡の形態で放出されるようにする傾向があり得る。これらの相対的に大きい気泡は、蒸気キャビテーション気泡であるものとして間違って解釈される場合があり、流体内にそれらが存在することは、文献のいくつかの報告において、キャビテーションが存在しなかった可能性がある場合に、キャビテーションによってもたらされているものとして間違って記載されていた可能性がある。
【0194】
蒸気キャビテーション気泡の崩壊の最後の段階では、気泡壁の速度が、音速さえも超え、流体内部に強力な衝撃波を生成することがある。蒸気キャビテーション気泡は幾分かの量の気体を含む場合もあり、それは、緩衝材として作用し崩壊の速度を低下させ、衝撃波の強度を低減させることがある。したがって、歯の洗浄用にキャビテーション気泡を利用するいくつかの処置では、こうした損失を防止するために流体内の溶存空気の量を低減させることが有利であり得る。
【0195】
治療流体からの溶液から出てきた気泡の存在により、いくつかの処置中に他の不都合がもたらされ得る。たとえば、圧力波発生器がキャビテーションを生成する場合、キャビテ
ーションを引き起こすために使用される撹拌(たとえば圧力降下)により、水分子がキャビテーション気泡を形成し得る前に含有溶存空気の放出がもたらされ得る。すでに形成された気泡は、(キャビテーション気泡を形成するように意図された)状態変化中に水分子に対する核生成部位として作用し得る。撹拌が終了すると、キャビテーション気泡は、崩壊して圧力波を生成するように期待される。しかしながら、キャビテーション気泡崩壊は、効率の低下をともなって発生し得、それは、気体充填気泡は崩壊しないことができ、代りに気泡として残り得るためである。したがって、治療流体内に気体が存在することにより、キャビテーション気泡の多くが気体充填気泡に溶け込むことによって無駄になり得るため、キャビテーションプロセスの有効性が低減し得る。さらに、流体内の気泡は、気泡を含む流体の領域内を伝播する圧力波を減衰させる緩衝物として作用する場合があり、それにより、気泡を通過する圧力波の有効な伝播が阻害され得る。幾分かの気泡は、歯の表面上または歯の表面間に発生するか、歯内の流体の流れまたは循環によってそこに移送され得る。気泡は、表面張力が比較的高いため、除去することが困難であり得る。これにより、化学物質および/または圧力波が歯の中および間の不規則な表面および小さい空間内に移送されることが阻止され得、したがって、処理の効力が阻害されるかまたは低減し得る。
【0196】
B.脱気された治療流体の例
したがって、いくつかのシステムおよび方法では、脱気流体を使用することが有利である場合があり、脱気流体は、通常の(たとえば非脱気)流体を使用するシステムおよび方法に比較して、治療中に溶液から気泡が出て来るのを阻止し、低減させまたは防止することができる。(通常の流体に比較して)治療流体の気体含有量が低減した歯科処置では、歯の表面または歯の小さい空間には、溶液から出てきた気泡はないことがあり得る。圧力波発生器によって発生する音波は、脱気流体内を伝播して、表面、亀裂ならびに歯の空間および空洞に達してそれを洗浄することができる。いくつかの処置では、脱気流体は、約500ミクロン、200ミクロン、100ミクロン、10ミクロン、5ミクロン、1ミクロンまたはそれ未満程度の空間に浸透することができ得、それは、(通常の溶存ガス分を含む流体の使用に比較して)気泡が溶液から出てこれらの空間を閉塞するのが阻止されるほど、脱気流体に十分に気体がないためである。
【0197】
たとえば、システムおよび方法によっては、脱気流体は、水の「通常の」気体含有量に比較した場合に低減する溶存ガス含有量を有することができる。たとえば、ヘンリーの法則に従って、水(25Cおよび1気圧)における溶存空気の「通常の」量は約23mg/Lであり、それは、約9mg/Lの溶存酸素と約14mg/Lの溶存窒素とを含む。いくつかの実施形態では、脱気流体は、溶存ガス含有量が、流体源から送達される際に(たとえば脱気する前に)その「通常の」量のおよそ10%~40%まで低減している。他の実施形態では、脱気流体の溶存ガス含有量を、流体の通常の気体含有量のおよそ5%~50%または1%~70%まで低減させることができる。治療によっては、溶存ガス含有量は、通常の気体量の約70%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満または約1%未満であり得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、脱気流体における溶存ガスの量を、(溶存空気の量ではなく)溶存酸素の量に関して測定することができ、それは、溶存酸素の量を、流体内の溶存空気の量より(たとえば滴定または光学センサもしくは電磁センサを介して)容易に測定することができるためである。したがって、流体内の溶存酸素の測定は、流体内の溶存空気の量に対する代用物としての役割を果たすことができる。いくつかのこうした実施形態では、脱気流体における溶存酸素の量は、約1mg/L~約3mg/Lの範囲、約0.5mg/L~約7mg/Lの範囲、または他の何らかの範囲であり得る。脱気流体における溶存酸素の量は、約7mg/L未満、約6mg/L未満、約5mg/L未満、約4mg/L未満、約3mg/L未満、約2mg/L未満または約1mg/L未満であり得る。
【0199】
いくつかの実施形態では、脱気流体における溶存ガスの量は、約2mg/L~約20mg/Lの範囲、約1mg/L~約12mg/Lの範囲、または他の何らかの範囲であり得る。脱気流体における溶存ガスの量は、約20mg/L未満、約18mg/L未満、約15mg/L未満、約12mg/L未満、約10mg/L未満、約8mg/L未満、約6gm/L未満、約4mg/L未満または約2mg/L未満であり得る。
【0200】
他の実施形態では、溶存ガスの量を、単位体積当りの空気または酸素の割合に関して測定することができる。たとえば、溶存酸素(または溶存空気)の量は、約5体積%未満、約1体積%未満、約0.5体積%未満または約0.1体積%未満であり得る。
【0201】
液体内の溶存ガスの量を、たとえば流体粘度または表面張力等の物理特性に関して測定することができる。たとえば、水の脱気は、その表面張力を増大させる傾向がある。非脱気水の表面張力は、20℃で約72mN/mである。いくつかの実施形態では、脱気水の表面張力は、非脱気水より約1%、5%または10%大きくなり得る。
【0202】
処理方法によっては、1種または複数種の二次流体を一次脱気流体に追加することができる(たとえば、脱気された蒸留水に消毒液を追加することができる)。いくつかのこうした方法では、二次溶液を、一次脱気流体に追加する前に脱気することができる。他の用途では、(通常の溶存ガス含有量を有し得る)二次流体を含むことにより、結合した流体の気体含有量を、特定の歯科治療に対して望ましい量を越えて増大させないように、一次脱気流体を十分に脱気することができる。
【0203】
さまざまな実装形態では、封止したバッグまたは容器内部の脱気液体として、治療流体を提供することができる。流体貯蔵容器に追加する前に治療室における別の設備で、流体を脱気することができる。「インライン」の実装形態の例では、たとえば流体ライン(たとえば流体入口)に沿って取り付けられた脱気ユニットを通過させることによって、システムを通して流れる際に流体を脱気することができる。さまざまな実施形態で使用することができる脱気ユニットの例としては、Membrana-Charlotte(Charlotte、North Carolina)から入手可能なLiqui-Cel(登録商標)MiniModule(登録商標)Membrane Contactor(たとえばモデル1.7×5.5または1.7×8.75)、MedArray,Inc.(Ann Arbor、Michigan)から入手可能なPermSelect(登録商標)シリコーン膜モジュール(たとえばモデルPDMSXA-2500)、およびMar
Cor Purification(Skippack、Pennsylvania)から入手可能なFiberFlo(登録商標)中空ファイバカートリッジフィルタ(0.03ミクロン絶対値)が挙げられる。脱気を、以下の脱気技法またはその組合せのうちの任意のものを用いて行うことができる。すなわち、加熱、ヘリウム散布、真空脱気、ろ過、凍結-ポンプ-解凍およびソニケーションである。
【0204】
いくつかの実施形態では、流体の脱気は、流体を脱泡して、流体内で生じるかまたは存在し得るあらゆる小さい気泡を除去することを含み得る。脱泡は、流体をろ過することによって提供することができる。いくつかの実施形態では、流体を、(たとえば、分子レベルで溶存した気体を除去して)脱気しない場合があるが、脱泡機を通過させて流体から小さい気泡を除去することができる。
【0205】
いくつかの実施形態では、脱気システムは、特定の処理に対して治療流体が十分に脱気されているか否かを判断する溶存ガスセンサを含むことができる。溶存ガスセンサを、混合システムの下流に配置して、溶質の混合によって、ある場合に溶質の添加の後に治療流体の溶存ガス含有量を増大させたか否かを判断するために使用することができる。溶質源
は、溶存ガスセンサを含むことができる。たとえば、溶存ガスセンサは、流体における溶存ガスの総量に対する代用物として、流体における溶存酸素の量を測定することができ、それは、溶存酸素は溶存ガス(たとえば窒素またはヘリウム)より容易に測定することができるためである。少なくとも部分的に空気内の全気体に対する酸素の比に基づいて(たとえば、酸素は空気の約21体積%である)、溶存酸素含有量から溶存ガス含有量を推測することができる。溶存ガスセンサは、電気化学センサ、光センサ、または溶存ガス解析を行うセンサを含むことができる。本明細書に開示するさまざまなシステムの実施形態で使用することができる溶存ガスセンサの例としては、Pro-Oceanus Systems Inc.(Nova Scotia、Canada)から入手可能なPro-Oceanus GTD-ProまたはHGTD溶存ガスセンサと、Zebra-Tech
Ltd.(Nelson、New Zealand)から入手可能なD-Opto溶存酸素センサとを挙げることができる。いくつかの実装形態では、処理のサンプルを得ることができ、サンプルにおける気体を、真空ユニットを用いて抽出することができる。抽出された気体を、ガスクロマトグラフィを用いて解析して、流体の溶存ガス含有量(および場合によっては気体の組成)を求めることができる。
【0206】
したがって、流体入口から歯に送達される流体および/または液体ジェット装置においてジェットを発生させるために使用される流体は、通常の流体より溶存ガス含有量が少ない脱気流体を含むことができる。脱気流体を使用して、たとえば、圧力波を発生させる高速液体ビームを発生させ、チャンバを実質的に充填するかまたは洗浄し、音波用の伝播媒体を提供し、チャンバにおける空気(または気体)の気泡の形成を阻止し、かつ/または歯の中の小さい空間(たとえば、亀裂、不規則な表面、細管等)に脱気流体の流れを提供することができる。液体ジェットを利用する実施形態では、脱気流体の使用により、液体ジェットが形成されるノズルオリフィスにおいて圧力が降下するため、気泡がジェット内で生じるのを阻止することができる。
【0207】
したがって、歯科治療および/または歯内治療方法の例は、歯もしくは歯の表面上にまたはチャンバ内に脱気流体を流すことを含む。脱気流体は、組織溶解剤および/または脱灰剤を含むことができる。脱気流体は、約9mg/L未満、約7mg/L未満、約5mg/L未満、約3mg/L未満、約1mg/L未満または他の何らかの値の溶存酸素含有量を有することができる。処理用の流体は、脱気酸素含有量が約9mg/L未満、約7mg/L未満、約5mg/L未満、約3mg/L未満、約1mg/L未満または他の何らかの値である脱気流体を含むことができる。流体は、組織溶解剤および/または脱灰剤を含むことができる。たとえば、脱気流体は、組織溶解剤が約6体積%未満でありかつ/または脱灰剤が約20体積%未満である水溶液を含むことができる。
【0208】
IX.開示したシステムおよび方法のさまざまな性能特性
開示する方法、組成物およびシステム(たとえば、開示する圧力波発生器、治療流体等)は、歯の外面および内面を他のシステムより十分に洗浄し、他のシステムより安全にそれを行うことができる。
【0209】
図11Aは、さまざまな歯洗浄装置の出力電力を測定するように設計された実験設備の概略図である。図11Aに示すように、タンクを液体(たとえば水)で充填し、試験する装置の先端を液体の表面下に配置した。動作状態下で各装置の出力を測定するために、タンク内に水中聴音器を配置した。電圧増幅器、回路基板、DC電源およびワークステーションを用いて、各測定に対して水中聴音器からの電圧出力を測定した。
【0210】
図11Bは、各装置に対する経時的な(秒単位)水中聴音器による電圧(ボルト単位)出力のプロットである。図11Bには、4つの実験に対する測定値を示す。特に、左上隅のプロットは、大臼歯を洗浄するように適合された、本出願に開示されているシステム(
本明細書では、「本出願人の大臼歯洗浄装置」と呼ぶ)に対する経時的な電圧出力の測定値である。特に、図11Aの実験設備で使用される本出願人の大臼歯洗浄装置は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0237893号明細書の図15A図15Cに関連して記載されているハンドピース50と略同様である。ガイドチューブの先端部分に、同様に参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0117517号明細書の図12A図12Cに関連して記載されている衝突部材110と同様の凹状衝突面を有する衝突部材を配置することができる。さらに、本出願人の大臼歯洗浄装置は、約9000psi±約1000psiの圧力で液体ジェットビームを形成するように構成されたジェット装置を含むことができる。ジェットは、約63ミクロン±約5ミクロンの直径を有するノズルに加圧液を通すことによって形成することができる。概して、ノズルおよびガイドチューブに対するパラメータは、少なくとも約1mmの長さのコヒーレントな平行ジェットが生成されるように、米国特許出願公開第2012/0237893号明細書および米国特許出願公開第2011/0117517号明細書に記載されているものと同様であり得る。右上隅のプロットは、小臼歯を洗浄するように適合された、本出願に開示されるシステム(本明細書では、「本出願人の小臼歯洗浄装置」と呼ぶ)に対する経時的な電圧出力の測定値である。本出願人の小臼歯洗浄装置では、大臼歯洗浄装置に対して記載したものと同様のジェットを使用することができる。図10Bに示すもの等の小臼歯ハンドピースとともに、小臼歯洗浄装置用のジェット装置を使用することができる。左下隅のプロットは、Fotonaの光子誘導光音響流(photon induced photoacoustic streaming)(PIPS(登録商標))装置に対する経時的な電圧出力の測定値である。右下隅のプロットは、Piezon(登録商標)Master超音波装置に対する経時的な電圧出力の測定値である。
【0211】
図11Bに示すように、本出願人の大臼歯洗浄装置および小臼歯洗浄装置は、複数の周波数を含む電圧出力(電力を表す)を経時的に発生させる。実際には、図11Bに示すように、本出願人の大臼歯洗浄装置および小臼歯洗浄装置は、著しい量の雑音を含む信号を発生させ得る。たとえば、信号の周波数は、(たとえば、いくつかの構成では白色雑音を近似する)複数の実質的にランダムな周波数を含み得る。対照的に、PIPS装置によって生成される信号は、実質的に規則的な間隔で発生するパルスを含み、超音波装置によって生成される信号は、実質的に規則的な信号、たとえば1つの周波数またはわずかな周波数を含み得る。本明細書で説明したように、本出願人の大臼歯装置および小臼歯装置によって発生する広帯域信号は、歯から異なるタイプの物質を有利に洗浄することができ、それを迅速かつ有効に行うことができる。たとえば、異なる周波数は、異なるタイプおよび/またはサイズの物質を有効に取り除くことができる。
【0212】
図12Aは、開示する圧力波発生器における非脱気液体および脱気液体の使用を比較する歯根管の画像を示す。図12Aの左側の画像1201に示すように、非脱気液体の使用により、根管内に気泡が形成され得、それは、いくつかの構成ではエネルギーの伝播を阻止し得る。図12Aの右側の画像1202に示すように、脱気液体の使用により、広帯域音波または圧力波にさらされたときに歯根管内の気泡の形成を実質的に防止することができる。図12Bは、非脱気液体および脱気液体を用いる技法に対する出力電力を比較するプロットである。図12Bにプロットした出力電力は、本出願人の大臼歯洗浄装置に関して上述した液体ジェット装置に基づいて測定されている。図12Bに示すように、音響周波数が高いほど、開示するシステムにおける脱気液体の使用により、非脱気液体を用いる技法より著しく多い電力を発生させることができる。図12Bに示すように、たとえば、高い音響周波数では、脱気液体および非脱気液体によって発生する電力の間の差は、ΔPによって与えることができ、それは、約20kHz~約200kHzの範囲の周波数では約5dB~25dBの範囲であり得る。たとえば、約70kHz~約200kHzの範囲の周波数では、ΔPは、約10dB~約25dBの範囲であり得る。より低い周波数では
、脱気液体および非脱気液体によって発生する電力の差は顕著ではないことがあり得る。周波数が低いほど、非脱気液体であっても比較的高い電力を発生させることができ、それは、周波数の低い大規模な流体運動により、歯の洗浄に寄与する実質的な推進力を生成することができるためである。
【0213】
図13は、異なる治療流体および組成に対して、本出願人の装置対他の装置に対する組織溶解の速度(%/秒単位)を比較するプロットである。本明細書で用いる、「本出願人のシステム」と標識されたデータは、本出願人の大臼歯洗浄装置に関連して上述したものと同様のシステムから取得した。図13において、プロットは、純水、0.5%NaOCl、3%NaOClおよび6%NaOClの組織溶解速度を比較する。たとえば、図13は、本出願人の装置と、10mL/分の速度で洗浄流体を供給する27G洗浄針と、起動されたPiezon Master装置と、幾分かの流体洗浄に加え撹拌を伴う起動されたPiezon Master装置と、起動されたPIPS装置とに対する、室温での組織溶解速度を比較する。図13に示すように、各治療流体および濃度に対して、本出願人のシステムは、他の試験された装置より実質的に高速に洗浄する。たとえば、本出願人のシステムを用いる各処理溶液に対する組織溶解速度は、他の試験された装置に対する溶解速度の少なくとも8倍~10倍であり得る。
【0214】
図14Aおよび図14Bは、治療中の歯根管の根尖開口部においてまたはその近くで測定された圧力に関するプロットである。本明細書で用いる「本出願人のシステム」と標識されたデータは、本出願人の大臼歯洗浄装置に関して上述したものと同様のシステムから取得した。本明細書で説明するように、高い根尖圧力は患者に害を与え得ることが理解されるべきである。たとえば、高い根尖圧力により、流体または他の物質が根尖を通って患者の顎の中に押し出され得る。根尖を通って押出されることにより、患者に実質的な苦痛がもたらされ、かつさまざまな健康問題がもたらされ得る。したがって、歯内治療処理に対して根尖圧力は低いかまたは負であることが望ましいことがあり得る。図14Aは、根尖を拡大するために使用される平ヤスリサイズに対する平均根尖圧力のプロットである。図14Aに示すように、本出願人のシステムは、各ヤスリサイズに対して負圧を発生させる。こうした負圧は、根尖を通る押出しを有利に防止することができる。たとえば、上で説明したように、引き起こされる渦により、根尖開口部におけるまたはその近くの圧力がわずかに負になり得る。たとえば、平均根尖圧力は、約-5mmHg~約-15mmHgの範囲であり得る。
【0215】
図14Bは、開放通気孔を備える針のさまざまなサイズおよびそこから分配される流量等、本出願人のシステムおよびさまざまな他の装置を用いる治療中の根尖圧力を比較するプロットである。図14Bのプロットは、遠心頬側根管に対するデータを含み、プロットは、異なる量の根管形成(たとえば、形成なし、最小形成、従来の形成、根尖拡大)に対する圧力を比較する。図14Bに示すように、本出願人の技法およびシステムは、他のプロットされた装置によって発生する高い正の根尖圧力に比較して、負の根尖圧力を生成する。
【0216】
本出願人のシステムによって発生する負の根尖圧力により、根尖を通る物質の押出しを防止しかつ/または低減させることにより、患者の転帰を有利に改善することができる。図14Cは、本出願人のシステムに対するかつさまざまな針に対するさまざまなシミュレーションされた根尖周囲圧力に対する、根尖を通して押し出された物質の質量のプロットである。本明細書で用いる「本出願人のシステム」と標識されたデータは、本出願人の大臼歯洗浄装置に関して上述したものと同様のシステムのシミュレーションから取得した。図14Cに示すように、本出願人のシステムおよび方法が歯根を洗浄するために使用されるときに押し出された物質の質量は、他の装置のものより小さい。実際に、開示するシステムおよび方法は、根尖を通して押し出される物質が最小限であるかまたはまったくなし
に歯根管を洗浄することができる。
【0217】
X.流体運動発生器のさらなる例
図15図24Cは、歯および歯根管を治療するシステムのさらなる例を示す。図15は、一実施形態によるシステム1の概略側断面図である。図16は、図15に示すシステム1の概略上面断面図である。上で説明したように、歯10の治療領域にあてがわれる(たとえば、それに対して押圧されるかまたは取り付けられる)ように、歯結合器3を構成することができる。(圧力波発生器であり得る)流体運動発生器5を作動させて、治療領域を洗浄(または充填)することができる。システム1は、システム1の動作を制御するように構成された操作盤2(上述した実施形態に記載した操作盤2と同様)と、歯結合器3と操作盤2との間に流体連通(および/または電気もしくは無線/電子通信)を提供する1つまたは複数の導管4とを含むことができる。操作盤2は、歯10の治療領域に治療液を供給することができる1つまたは複数の流体ポンプおよびリザーバを含むことができる。操作盤2はまた、導管4を用いて歯10から液体および廃棄物質を除去する吸引ポンプおよび廃棄物リザーバを含む流体除去システムも備えることができる。操作盤2は、排気および/または送達ポンプの動作を電子的に制御して、歯への液体の送達および歯からの液体の除去を制御するように構成された1つまたは複数のプロセッサも含むことができる。
【0218】
図15に示すシステム1は、歯10の治療領域に結合するようなサイズおよび形状である歯結合器3を含むことができる。たとえば、上で説明したように、歯結合器3は、臨床医によって歯に対して手動で押圧されるハンドピースの先端部分を構成することができる。さまざまな実施形態では、歯結合器3は、治療処置のために歯10に取り付けることができる。図15の歯結合器3は、歯根管治療処置に関連して示されているが、図1Bに示すう蝕治療処置等、他の治療処置で使用することも可能であることが理解されるべきである。歯結合器3はチャンバ6を備えることができ、それは、上壁232と上壁232から横方向に延在する側壁220とによって少なくとも部分的に画定されている。歯10に結合される(たとえば、歯に対して押圧されるかまたは歯に取り付けられる)と、チャンバ6は、治療処置中に液体および他の物質を保持することができる。いくつかの実施形態では、上壁232および側壁220を単一構成要素として一体的に形成することができ、他の実施形態では、上壁232および側壁220は、合わせて接続されるかまたは接合される別個の構成要素を含んでも良い。側壁220は、チャンバ6を少なくとも部分的に画定するように上壁232に対して環状に延在することができる。本明細書で用いる上壁232は、チャンバ6の基端部の近くの壁を指すように理解されるべきであり、したがって、(上歯の治療等)いくつかの治療の間、上壁232を下向きに配置することができる。
【0219】
さらに、歯結合器3またはチャンバ6は、歯の治療領域(またはその一部)と接触するように構成された先端部分227を含むことができる。先端部分227は、チャンバ6と歯10の治療領域(たとえば、歯根管13)との間の流体連通を提供するアクセスポート231を画定することができる。さまざまな構成では、先端部分227は、歯結合器3および/またはチャンバ6の中心軸Zに向かって半径方向内側にテーパ状であり得る。中心軸Zは、アクセスポート231の中心軸に対して垂直でありかつそれを含むことができる。たとえば、側壁220は、内側にかつ先端側に連続的にかつ実質的に直線状にテーパ状である実質的に円錐状のテーパを含むことができる。したがって、図15に示すように、チャンバ6の基端部分は、内径D(または他の主寸法)を有することができ、先端部分227のアクセスポート231は、Dより小さい内径D(または他の主寸法)を有することができる。チャンバ6は、高さhを有することも可能である。チャンバ6の高さhは、さまざまな実施形態では約5cm未満、たとえば約2cm未満であり得る。さらに、図15には示さないが、チャンバ6および歯結合器3の周囲に、(図21Aに示す封止部材105と同じかまたは同様であり得る)封止部材を配置することができる。封止部材は
、臨床医によって歯に押圧されるときに治療領域を封止することができる圧縮性材料(発泡体等)を備えることができる。歯に対して押圧されるとき、封止部材が歯結合器3の先端部に対して基端側であるように、歯の中に歯結合器3を押し込むことができる。
【0220】
歯根管治療の場合、図15に示すように、歯10のアクセス開口部の中または上に先端部分227を挿入し、歯根管13との流体連通を提供することができる。先端部分227と歯10との間に封止材225をあてがって、流体シールを生成または強化することができ、それにより、液体、空気および/または残がいが、チャンバ6および/または歯10にまたはそこから漏れ出ない。図15に示すように、先端部分227をテーパ状にすることができ、テーパは、歯結合器3の中間部分または基端部分から歯結合器3の最先端部まで延在する。たとえば、図15に示すように、歯結合器3の側壁220は、略直線状または円筒状部分203(それに沿って、Dは実質的に一定のままである)と、内径Dが先端方向に沿って(たとえば、図15における歯10に向かって)低減するように直線状部分203から内側にかつ先端側にテーパ状である、テーパ状または円錐状部分204とを備えることができる。直線状部分203の先端側にテーパ状部分204を配置することができ、テーパ状部分204は、歯結合器3の先端部分227および最先端部を含むことができる。図15に示すように歯結合器3をテーパ状にすることにより、臨床医が、非常に小さい歯、または非常に小さい歯根管空間を有する歯、たとえば、システム1によって治療される最小のヒトの歯を含む、任意のサイズの歯に対する治療処置を行うことを有利に可能にすることができる。たとえば、先端部分227は、約0.5mm~約5mmの範囲のサイズ(たとえば、直径または他の主寸法)を有する歯内治療用アクセス開口部で歯を治療するようなサイズとすることができる。
【0221】
アクセスポート231の内径Dは、歯のアクセス開口部(たとえば、臨床医が歯の内部にアクセスするために形成する開口部)より小さく、アクセス開口部より大きく、またはアクセス開口部と同じサイズであり得る。いくつかの実施形態では、有利には、アクセスポート231の外径(および内径D)は、先端部分227をアクセス開口部内に挿入することができるように、アクセス開口部より小さい場合がある。他の実施形態では、先端部分227の外径は、アクセス開口部と同じサイズであるかまたはそれより大きい場合がある。したがって、アクセスポート231およびアクセス開口部が実質的に位置合わせされかつ/または部分的に重なるように、歯結合器3の先端部分227を歯内治療用アクセス開口部内に挿入することができる。
【0222】
先端部分227によって画定される開口部の内径Dは、約0.3mm(±0.05mm)~約5mm(±1mm)の範囲、たとえば、約0.5mm(±0.1mm)~約3mm(±0.5mm)の範囲、または約1mm(±0.1mm)~約2mm(±0.1mm)の範囲であり得る。歯結合器3の先端部分227は、約0.001mm(±0.0001mm)~約5mm(±1mm)の範囲、たとえば、約0.01mm(±0.001mm)~約1mm(±0.1mm)の範囲の壁厚さを有することができる。さらに、先端部分227の外径(たとえば、内径D+先端部分227の壁厚さの2倍)は、約0.5mm(±0.1mm)~約5mm(±1mm)の範囲、たとえば、約1mm(±0.1mm)~約2mm(±0.1mm)の範囲であり得る。チャンバ6の基端部分の内径Dは、約5cm(±1cm)未満、たとえば約1cm(±0.1cm)未満であり得る。たとえば、内径Dは、約0.5cm(±0.1cm)~約1.5cm(±0.3cm)の範囲、または約0.7cm(±0.1cm)~約1cm(±0.1cm)の範囲であり得る。さらに、図15に示すように、歯結合器3の円錐形状は、側壁220の外面が内側にかつ歯結合器3の最先端部の先端側にテーパ状になる量を画定するテーパ角度αを有することができる。図15において、側壁220の内面は内側にテーパ状になっていないことがあり得る。しかしながら、他の実施形態では、側壁220の内面は、図23に示す実施形態と同様に内側にテーパ状になっている場合がある。テーパ角度αは、約0°(±1°)~約
45°(±1°)の範囲、またはより詳細には約0.5°(±0.1°)~約45°(±1°)、たとえば約0.5°(±0.1°)~約20°(±1°)の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、テーパ角度αは、約1°(±0.1°)~約15°(±1°)の範囲、または約1°(±0.1°)~約10°(±1°)の範囲であり得る。
【0223】
(上述したように圧力波発生器でもあり得る)流体運動発生器5は、歯結合器3の側壁220にかつ/または側壁220を通して配置することができる。流体運動発生器5は、チャンバ6内に回転液体運動を発生させるように、チャンバ6に液体221を供給することができる。供給される液体221は、本明細書で説明したように脱気液体を含むことができる。供給される液体221は、たとえば水、EDTA、漂白剤、閉塞材(充填処置のため)等を含む、任意の好適なタイプの治療流体であり得る。たとえば、流体入口61は、チャンバ6に加圧液体221を供給することができる。図15において、加圧液体221は、上壁232の近くの位置で歯結合器3(たとえば封止キャップ)の側壁220の位置でノズル210を通過することができる。図16の上面断面図に示すように、流体運動発生器5は、歯結合器3または封止キャップに対して中心がはずれているかまたは非対称であり得る。たとえば、流体入口61およびノズル210を、歯結合器3の中心軸Zに対してずらすことができる。図16において、流体運動発生器を、中心軸Zに対して半径方向にずらすことができ、中心軸Zを横切る方向Xに向けることができる。図15に示すように、中心軸Zは、アクセスポート231の中心を通って歯結合器3の高さhに沿って先端側に進むことができ、たとえば、中心軸Zは、アクセスポート231の中心でまたはその近くでアクセスポート231を横切ることができる。中心軸Zは、たとえば円錐形状の半径方向に対して横切って、歯結合器3の円錐形状の中心長手方向軸も画定することができる。
【0224】
流体運動発生器5によって供給される加圧液体221は、歯結合器3のチャンバ6内に液体循環を引き起こすことができる。たとえば、流体運動発生器5(たとえば、入口61および/またはノズル210)は、チャンバの中心軸Zを中心に流入液体222の渦巻回転運動を発生させることができ、それは、液体が歯結合器3内に導入される方向に延びるX軸を横切ることができる(たとえば、いくつかの構成では実質的に垂直であり得る)。いくつかの構成では、他の方向を中心に、たとえば流体導入の方向に対して平行な軸を中心に、回転または循環運動を引き起こすことも可能である。図15に示すように、流入液体222は、回転する液体222が根管空間13に入る際に根管空間13の壁205の近くにかつ/または壁205に沿って回転流を導入することができる。
【0225】
いくつかの実施形態では、加圧液体221は、ノズル210を通過することができ、コヒーレントな平行液体ジェットとして現れることができ、それは、上で説明したように、流体運動発生器および/または圧力波発生器として作用することができる。ノズル210のさまざまな実施形態では、ノズルのオリフィスまたは開口部は、約5ミクロン~約1000ミクロンの範囲であり得る、入口における直径dまたは出口における直径dを有することができる。他の直径範囲が可能である。さまざまな実施形態では、ノズル開口部の直径dまたはdの一方または両方は、約10ミクロン~約100ミクロンの範囲、約100ミクロン~約500ミクロンの範囲、または約500ミクロン~約1000ミクロンの範囲であり得る。他のさまざまな実施形態では、オリフィス径dまたはdの一方または両方は、約40ミクロン~80ミクロンの範囲、約45ミクロン~70ミクロンの範囲、または約45ミクロン~65ミクロンの範囲であり得る。一実施形態では、オリフィス径dは約60ミクロンである。直径dに対する軸方向長さLの比、直径dに対する軸方向長さL2の比、もしくは直径d、dに対する合計軸方向長さL+Lの比、または平均直径(d+d)/2は、さまざまな実施形態において、約50:1、約20:1、約10:1、約5:1、約1:1またはそれ未満であり得る。一実施形態では、軸方向長さLは約500ミクロンである。ノズルのさらなる例は、参照により
本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0117517号明細書に見ることができる。
【0226】
いくつかの実施形態では、液体221は、ジェットではないかまたは円形ジェットではない液体の流れを含むことができる。チャンバ6に入った後、液体221は、歯結合器3の側壁220に衝突することができる。いくつかの構成では、ジェットは、チャンバに入る前に衝突面、たとえばチャンバ6に通じる入口経路内の表面に衝突することができる。衝突時のジェットの角度は、衝突することによって推進力の損失が最小になるように調整することができる。流体運動発生器5は、液体221が壁220に対して衝突した時、回転する流入液体222の広がりが発生し、そこでは、流入液体222の広がりは、中心軸Zを中心とする渦巻運動で回転し、チャンバ6内で側壁220に沿って歯結合器の開口部227に向かって先端側に進む。回転する流入液体222の広がりは、歯10の根尖開口部15に向かって歯根管13の内壁205に沿って下方に続くことができる。回転する液体222は、歯根管空間13全体を有効にかつ効率的に洗浄することができる。たとえば、流入液体222の高速なバルク流体運動は、歯根管13内の罹患物と相互作用することができ、歯根管13から罹患物を分離しまたは他の方法で除去することができる。
【0227】
図16に示すように、チャンバ6および治療領域に十分な回転流入流222が提供されるように、流体運動発生器5を向けることが有利であり得る。たとえば、入口61およびノズル210を、中心軸Zを横切ることができる(たとえば垂直であり得る)X方向に向けることができる。液体が向けられるX方向は、中心軸Zに対して80°~100°、またはより詳細には85°~95°の角度で向けることができる。X方向は、側壁220の外縁に対して略接線であり得る。入口221およびノズル210がチャンバ6の壁220と交差する位置で、X方向を側壁220の接線Tに対してわずかに角度を付けることができる。たとえば、流入液体222が向けられるX軸は、接線Tに対して入口角度θであり得る。入口角度θは、ゼロまたはゼロに近いことができる。たとえば、θは、約0°~約15°の範囲、または約0°~約10°の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、角度θは、約1°~約10°の範囲、または約1°~約5°の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、角度θは、約1°~約10°の範囲、または約1°~約5°の範囲であり得る。流入流222の中心が壁220の最外縁から距離δでチャンバ6に入るように、流体運動発生器5を配置することも可能である。距離δは、比較的小さく、たとえば約5μm~約2mmの範囲、または約15μm~約40μmの範囲であり得る。図15および図16に示すように、X軸がチャンバ6に対して実質的に水平であるように、X軸が中心軸Zに対して垂直に向けられるように、流体運動発生器5を向けることができる。いくつかの実施形態では、X軸は、治療領域内への下向きまたは上向きの回転する流入流222を発生させるのに役立つように、先端側にまたは基端側に向けることができる。場合によっては、処置の効力に影響を与え得る流れ特性を調整するように、衝突角度θ、先端/基端バイアスの角度、および/または表面上の衝突領域の形状を調整することができる。チャンバ6に入る流れは、以下のうちの1つまたは複数を含むことができる。すなわち、回転する流体の広がりになる、チャンバ6の表面に衝突するジェット、チャンバに入る前の表面にジェットが衝突する結果としての流体の広がり(平面流)、スリットを通るように流体を流すことによって発生する平面流、および/または流体の広がりを発生させる他の任意の好適な技法である。
【0228】
さらに、図15に示す実施形態では、液体ジェットは、ノズル210から現れるとき、ノズル210とチャンバ6との間のインタフェースの近くの相互作用ゾーン230において治療液と相互作用することができる。本明細書で説明するように、液体ジェットは、チャンバ6および歯10の歯根管13内の液体を通過することができ、その液体を通って伝播する圧力波23を発生させることができる。図15に示すように、かつ上で説明したように、圧力波23は、相互作用ゾーン230から歯10の根管13内に先端側に伝播する
ことができる。圧力波23は、液体が歯10の小さい空間、亀裂および細管内に流れ込んで歯10を実質的に洗浄するのを可能にする複数の周波数を含むことができる。いくつかの構成では、流入液体222のバルク流または大規模流体運動は、歯の比較的広い空間からより大量の罹患物質を除去するように作用することができ、圧力波23は、液体222のバルク流または大規模流体運動にさらされないことがあり得るより小さい空間に流れ込むことができる。回転する流入液体222および圧力波23の組合せは、異なるタイプおよびサイズの有機物および無機物を含み得る歯の大きい空間および小さい空間を含む歯を実質的に洗浄するように作用することができる。
【0229】
廃棄物質(たとえば分離した残がい等)が歯10から洗い流されるのを確実にするため、および/または治療領域における流体の回転を促進するために、流入液体222を治療領域から除去し得ることが重要であり得る。したがって、歯結合器3の上壁232内にかつ/またはそれを通って、流体出口62を設けることができる。流体出口62は、チャンバ6と吸引ポンプを用いて流出流体を廃棄システムに搬送する(上述した導管4のうちの1つであり得る)出口通路209との間に開口部を画定する吸引ポート233を備えることができる。吸引ポンプは、出口通路209および出口62に吸引を与えることにより、チャンバ6からかつ歯結合器3の外側のリザーバに向かって流体を引き出すことができる。
【0230】
流体出口62は、歯結合器3のチャンバ6の先端部分227の内径Dに等しいかまたはそれより小さい内径Dを有することができる。他の実施形態では、流体出口62は、先端部分227の内径Dより大きい内径Dを有することができる。DおよびDの相対的なサイズは、流体流の所望のタイプおよび速度に基づいて選択することができる。図15において、内径DはDより小さい。内径Dは、流れがよどんで、歯根管の壁に沿ったらせん状の下向きの運動から流入流222の内部を通るらせん状の上向きの運動に方向を変える深さ(たとえば、戻り位置V)に影響を与え得る。たとえば、いくつかの実施形態では、吸引ポート233の内径Dは、約0.1mm~約5mmの範囲、たとえば約0.1mm~約2mmの範囲であり得る。歯結合器3の上壁232の中心にまたはその近くに流体出口62を配置することができる。図15に示すように、歯結合器3およびアクセスポート231の中心軸Zは、先端部分227のアクセスポート231および出口62の吸引ポート233の両方を通過するものであってもよい。中心軸Zは、吸引ポート233に対して垂直、または実質的に垂直であり得る。たとえば、中心軸Zを、吸引ポート233に対して約90°の角度(70°~110°、またはより詳細には80°~100°、またはより詳細には85°~95°)に配置することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、アクセスポート231は、中心軸Zを横切る(たとえば垂直な)平面を画定することができ、中心軸Zは、アクセスポート231の中心と、吸引ポート233の少なくとも一部とを通過することができる。いくつかの実施形態では、吸引ポート233は、中心軸Zを横切る(たとえば垂直な)平面を画定することができ、中心軸Zは、吸引ポート233の中心とアクセスポート231の少なくとも一部とを通過することができる。いくつかの実施形態では、アクセスポート231および吸引ポート233は、ともに中心軸Zを横切る(たとえば垂直な)それぞれの平面を画定し、中心軸Zは、アクセスポート231および吸引ポート233の両方を通過し得る。いくつかの実施形態では、中心軸Zは、アクセスポート231および吸引ポート233の両方の中心を通過することができる。吸引ポート233は、いくつかの実施形態では中心軸Zを中心に対称であり得る。いくつかの実施形態では、吸引ポート233の中心は、中心軸Zに位置することができる。いくつかの実施形態では、出口62のフランジ62Aは、チャンバ6内に長さpだけ部分的に延在することができる。チャンバ6および/または歯10の中の流体流出および/または流体回転を促進するように、長さpを調整することができる。フランジ62Aの長さpもまた、戻り位置Vの深さ、たとえば、流れがよどんで、壁に沿ったらせん状の下向きの運動から中心を通るらせん状の上向きの運動に方向を変える深さに影響を与え得る。
たとえば、フランジ62Aの長さpは、約0.1mm~約10mmの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、フランジ62Aがアクセスポート231の近くまで下方に延在するように、長さpはチャンバ6の長さhと略同じであり得る。
【0231】
出口62およびチャンバ6は、流入液体222が戻り位置Vで基端側に折り返してチャンバ6から引き出されるように構成することができる。(根尖開口部15またはその近くであり得る)戻り位置Vにおいて、治療液は、流出流体路224において歯結合器3に向かって折り返すことができる。流出流体路224は、流入液体222の流路またはパターンとは異なり得る。たとえば、戻りまたは流出流路224は、根管空間の中心の近くにかつ/または渦巻流入流路222内に回転(または準平面)流を含むことができる。いくつかの実施形態では、流出流224は、回転流入液体222の内部を通るらせん状流路を含むことができる。引き起こされた外向きの流れ224を治療領域の外側に搬送して、治療領域から(たとえば根管13および歯10の外側に)廃棄物および他の物質を搬送することができる。さらに、出口62および/または回転流入液体222によって提供される吸引は、根尖開口部15に負圧を提供することができ、そこでは、治療液および/または廃棄物は、根尖開口部15を通過することが防止され、それにより、患者に対する感染および/または苦痛のリスクを低減させることができる。流出液体224は、吸引ポート233を通過することができ、吸引ポンプによって出口ライン209を通って廃棄物リザーバに引き込むことができる。さらに、図15には示さないが、システムからの廃棄流体の除去を促進するように、通気孔アセンブリを設けることができる。たとえば、吸引ポート233の下流に歯結合器3を通して1つまたは複数の通気孔を設けることができる。さらに、いくつかの実施形態では、歯結合器3に補助ポートを設けることができる。補助ポートは、ダックビル弁等の一方向弁を含むことができる。チャンバ6内の圧力が、たとえば出口通路209における詰まりのために上昇する場合、チャンバ6内部の上昇する圧力は、弁が圧力を軽減することができるように安全弁のクラッキング圧力を超えることができる。補助安全弁は、チャンバ6への少なくとも1つの開口部があって歯結合器3の任意の場所に配置することができる。通気孔アセンブリの例は、たとえば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0237893号明細書に見ることができる。
【0232】
図16Aおよび図16Bは、流入流体流路222および流出流体流路224を例示する図15に示される歯10の拡大側断面図である。図16Aおよび図16Bは、図15および図17図24Cの実施形態によって発生させることができる流れパターンを示す。本明細書で説明したように、流体運動発生器5、チャンバ6の形状および/または出口62を、流入回転流222が大きい容積の歯根管13または他の治療領域を有効に洗浄するように構成することが、重要であり得る。たとえば、歯10内に先端側に流れる治療液の薄い広がりを含む流入回転流222を発生させることが重要であり得る。図16Aでは、流入液体222の広がりは、根管13の壁205に対して広がり厚さSを有する。図16Aに示すように、壁205に沿った液体222の広がりは、戻り位置Vにおいて収束することができる。
【0233】
戻り位置Vで収束すると、液体は基端側に折り返し、流出液体224は歯結合器3に向かって戻る。図16Aに示すように、流出液体224は、出口62に向かって流れる際に回転流入流222内またはその内側を通過する回転流体流を含むことができる。広がり厚さSにより、戻り位置Vは、歯10の根尖開口部15から距離wであり得る。距離wは、ゼロ程度に小さいことができ、それにより、回転流入流222が、歯の根尖開口部に達し、根尖開口部で方向を変える。回転する流入液体222の広がりが位置Vで収束するため、流入液体222のバルク流体運動の有効性は、位置Vの下方または基端側の位置で低減し得る。しかしながら、図16Aに示すように、圧力波23は、戻り位置Vを通過して液体を通って伝播して、戻り位置222の下方または先端側である歯10の領域を洗
浄することができる。
【0234】
図16Bでは、流体運動発生器5、チャンバ6および/または出口62は、図16Aに示す広がり厚さSより小さい広がり厚さSを有する、回転流入液体222の広がりを発生させるように構成されている。低減した厚さSにより、戻り位置Vは、図16Aに示す例より歯根管13に沿ってさらに先に配置され得る。たとえば、流入液体222は、図16Aにおける戻り位置Vより根尖開口部15に近い距離wにおける位置Vで収束することができる。戻り位置Vを根尖開口部15に近付けることにより、流入液体222のバルク流体運動は、根管13内をより深く洗浄することができる。さらに、上で説明したように、圧力波23は、流入液体222のバルク運動にさらされないことがあり得る歯10のより小さい空間および亀裂を洗浄することができる。戻り位置Vに対して先端側の領域を洗浄するのに役立つことができる他の現象としては、歯の根尖領域から歯の歯冠領域に向かって組織溶解を通して発生する気泡の拡散を介するかつ/またはそうした気泡の移動による流体変位を介する、物質移動を挙げることができる。
【0235】
さまざまなパラメータが、図15図16Bに示す流入流パターン222および流出流パターン224を改善することができる。たとえば、上壁232に沿った中心に位置する出口62は、流体224が回転流入液体222内を通過するようにする流れパターンで、チャンバ6および歯10から流出流体224を有利に引き出すことができる。こうした流れパターンにより、治療領域の有効な除去および洗浄を可能にすることができる。さらに、内径Dが先端アクセスポート231の内径Dより小さい吸引ポート233を提供することは、中心の流出液体流路224を可能にするのにも役立つことができる。たとえば、相対的に大きい先端アクセスポート231により、回転流入液体222がチャンバ6の壁220および根管壁205に沿って先端側に流れることができ、相対的に小さい吸引ポートは、回転流入流222内で流出液体224を基端側に引くことができる。本明細書で説明したように、排気装置(たとえば真空ポンプ)は、回転(たとえば渦巻)流入液体222内で流出液体224を吸引ポート233から引き出すように、吸引ポートに吸引力を加えることができる。さらに、所望の回転および流出経路を生成するように、吸引ポート233の内径Dを選択することができる。たとえば、吸引ポート233は、戻り位置Vが根管空間13内で十分な深さに位置し、回転流入液体222がより深く侵入するのに十分な程度の狭さであるが、出口62における過加圧を防止する程度に広くすることができる。
【0236】
さらに、根管空間13を通して流入流222および流出流224を促進するように、流入流体221の特性(速度、流量、流入流の断面形状、チャンバおよび壁に対する流入流の角度等)を選択することができる。たとえば、流入液体222の薄い広がりを少なくとも部分的に可能にするために、ジェットは、比較的小さい流量を提供するように比較的小さい直径を有することができる。いくつかの実施形態では、システムの作動圧力は、1000psi~20000psi、たとえば、5000psi~15000psiの範囲、たとえば約9000psi(±1000psi)であり得る。いくつかの実施形態では、たとえば、ジェットの直径(または他の主寸法)は、約30μm~約90μmの範囲、たとえば約45μm~約70μmの範囲、たとえば約55μmであり得る。システムの作動圧力に応じて、他のジェット(たとえばノズル)径を使用することができる。作動流量は、10cc/分~150cc/分の範囲、たとえば、30cc/分~70cc/分の範囲、たとえば40cc/分(±5cc/分)であり得る。圧力および流量は処置中一定であり得るか、または変化することができる。さらに、循環を促進するように、歯結合器3によって画定されるチャンバ6の形状および寸法を選択することができる。たとえば、洗浄を促進するように、歯結合器3または封止キャップの円筒状部分203の高さ、円錐状部分204の高さ、チャンバの主寸法(たとえば直径)、表面品質、円錐状部分204のテーパ(たとえば角度α)および他のパラメータを構成することができる。いくつかの実施
形態では、チャンバ6のアクセスポート231と歯のアクセス開口部との間の接合部分は、実質的に防水および/または気密シールであり得る。アクセス開口部と(ハンドピースの一部であり得る)封止キャップの先端部分または底部との間の接合部分に流体シールを設けることにより、本明細書に開示する実施形態の流体理力学的効果および圧力波効果を向上させることができる。廃棄物質の除去を促進するように、通気孔および廃棄物収集システムも構成することができる。たとえば、物質除去を促進するように、チャンバ6の吸引ポート233のサイズを構成することができる。有利には、本明細書に開示する実施形態により、使用される流体の容量を低減させ、製造コストを低下させることができる。さらに、歯根管壁205にかけられるせん断応力は強くなり得、流入する新しい治療流体22の量を損なうことなく、出口を通る流体の流出224を促進することができる。さらに、図15の側断面図は、説明を容易にするために入口61および出口62を同一平面にあるように示すが、代わりに、図16の上面断面図に示すように、入口61は出口62および中心軸Zに対してずれていることが理解されるべきである。
【0237】
図15に示す歯結合器3は円錐形状を含みが、他の実施形態では、歯結合器3は他の好適な形状を有することができる。たとえば、歯結合器3は、直線状とすることができ、直線状セクションと直線状セクションから延在する円錐状セクションとを備えることができ(またはその逆も可)、または直線状セクション、円錐状セクションおよび直線状セクションを含むことができる。円錐状セクションは、単一のテーパ角度または複数のテーパ角度を有することができる。さまざまな実施形態において、歯結合器3は単一の壁厚さおよび複数の壁厚さを有することができる。図15の実施形態では、歯結合器3は、中心軸Zを中心に軸対称であり得るが、他の実施形態では、歯結合器3は非対称である場合もあり、それは、歯10の封止を制御するのに役立つことができる。チャンバの内面は、推進力損失を最小限にし、流入流を実質的に層流でかつ妨げられないように維持する、平滑仕上げを有することができる。壁220の内面は、平滑である場合もあれば粗い場合もあり、または平滑部分および粗い部分の両方を有することができる。壁220の内面は、回転流を向けるのに役立つ流路も含むことができる。たとえば、流路は所定ピッチを有することができる。流路は、約0.001mm~約10mm深さの範囲、たとえば約0.01mm~約1mmの範囲の深さを有することができる。流路は、約0.001mm~約10mmの範囲、たとえば、約0.01mm~約1mmの範囲の幅を有することができる。
【0238】
図15に示すシステムは、さまざまな解剖学的特徴および/または形態学的特徴によって歯を治療するように構成することができる。たとえば、システム1を用いて、小臼歯、前歯、大臼歯、さまざまな咬合構造(たとえば、さまざまな数の咬頭、う蝕しているか否か、傾斜しているか否か)を有する歯、円形の歯内治療用アクセス開口部を有する歯、楕円形の歯内治療用アクセス開口部を有する歯、不規則な歯内治療用開口部を有する歯、直線状の歯内治療用アクセスを有する歯、湾曲した歯内治療用アクセスを有する歯、歯根管の軸に位置合わせされない軸を有する歯内治療用アクセス開口部を有する歯、複数の歯根を有する歯、単一の歯根を有する歯、湾曲した歯根を有する歯(たとえば、最大約90度の曲率を有する歯)、さまざまな長さ(たとえば、約5mm~約30mmの範囲の長さ)の歯根を有する歯、円形および/または大きい断面アスペクト比を有する根管を有する歯、根管狭窄がある歯、根管収縮がある歯、副根管を有する歯、複数の島を有する歯、単一の島を有する歯、二又を有する歯、三又を有する歯、複数の分岐を有する歯、根尖三角部を有する歯、および/または複数の最根尖を有する歯を治療することができる。
【0239】
図15図16Bに関して上述したように回転流入流222を発生させることができるが、回転チャンバ、部分的回転チャンバ、回転チャンバ上壁232および/または回転側壁220によって流入回転流を発生させることができる。チャンバ6の回転構成要素は、平滑である場合もあれば粗い場合もあり、流体取込みを促進する機構(たとえば、歯、ブレード等)を備えることができる。回転流は、回転廃棄機構、たとえば回転出口62によ
って発生させることも可能である。回転廃棄機構は、平滑である場合もあれば粗い場合もあり、回転廃棄機構は、流体取込みを促進する機構(たとえば、歯、ブレード等)を有することができる。
【0240】
図15の実施形態では、チャンバ6内への液体の注入により、回転流体流(たとえば、流入流222)を発生させることができる。単一の入口61または複数の入口があり得る。0度~+90度の衝突角度で流体を注入することができる。-45°~+45°の緯度で注入することができ、たとえば-10°~+10°の緯度が好ましい。図15に示すように、チャンバ6の頂部の近くから流体を注入することができる。(円筒状または平面であり得る)バルク流またはジェットによって、流入液体221を注入することができる。流体入口61は、矩形、楕円形、正方形、円形等を含む任意の好適な断面形状であり得る。入口61の内径は、チャンバ6の直径Dの約半分以下であり得る。
【0241】
回転流入流222は、チャンバ6の壁220に沿って渦巻くかまたは回転する広がりを含むことができる。チャンバ6の内側の流体の外層に下向き回転流を引き起こすことができる。他の実施形態では、流体チャンバの内部軸に下向きの流れを引き起こすことができる。流入流222は、約0.1回転/秒~約100,000回転/秒の範囲、たとえば約1回転/分~50,000回転/分の範囲の速度で回転することができる。流入液体221を、入口61を通してチャンバ6内に、約0.1mL/分~約100mL/分の範囲の流量で注入することができる。
【0242】
チャンバ6に供給される治療流体は、洗浄液または閉塞材等、任意の好適な治療流体を含むことができる。たとえば、洗浄処置では、供給される洗浄液は、図16Aおよび図16Bに示すように回転することができ、罹患物と相互作用して歯を洗浄することができる。閉塞処置では、供給される閉塞材は、図16Aおよび図16Bに示すものと同様に回転することができ、治療領域(たとえば、治療済み歯根管、治療済みのう蝕領域等)を実質的に充填することができる。さらに、図15には示さないが、歯結合器3は、治療領域に閉塞材を供給することができる1つまたは複数のさらなる開口部を有することができる。
【0243】
図17および図18は、複数の根管13A、13Bを有する歯10(たとえば、いくつかの構成では大臼歯)を治療するように構成された歯結合器3の概略側断面図である。図17Aおよび図18Aは、図17および図18にそれぞれ示す構成の上面断面図である。別段の定めがない限り、歯結合器3は、図15図16Bに関連して例示し上述した歯結合器3と同じであるかまたは実質的に同様である。図17および図18に示す構成は、歯結合器3を用いて、さまざまな内部形状を有する歯、たとえば異なる数および形状の歯根を有する歯を治療することができる。図17に示すように、歯結合器3は、回転流入液体222が2つの根管13A、13Bに分離して各根管を洗浄するように構成することができる。流入液体222は、渦巻流路において(たとえば、根管13A、13Bの中心軸を中心に)回転することができ、かつ/または中心根管軸を横切る軸を中心とする回転成分を含むことができる。流出または戻り液体224は、歯髄腔215の床214に達した後に主根管の中心の近くの(通気システムを含む場合がある)出口62を通って戻ることができる。したがって、図17では、液体は、根管13A、13B内ではなく歯髄腔215の床214において向きを変えることができる。図18に示すように、流出または戻り液体224が、根管13A、13Bの各々において根管戻り経路224および複数の戻り経路224A、224Bによって出口62を通って戻るように、システムを構成することができる。上で説明したように、図17および図18の流れパターンを達成するように、流入流体、出口、チャンバの形状等のさまざまなパラメータを選択することができる。したがって、特定の治療歯の形状に応じて、流体流路を変更することができるが、歯結合器3は、治療領域の十分な洗浄および灌注を依然として提供することができる。図17および図18には圧力波23は示されていないが、図15図16Bの実施形態におけるように
、液体ジェットのチャンバ6内の液体との相互作用により、圧力波を依然として発生させ得ることが理解されるべきである。
【0244】
図19は、歯10を治療するように構成された歯結合器3の概略側断面図である。図20は、ノズル210を通ってチャンバ6に入る加圧液体221を例示する図19に示す歯結合器3の概略上面断面図である。別段の定めのない限り、図19および図20に示す歯結合器3は、図15図16Bに関連して上述した歯結合器3と実質的に同様である。たとえば、歯結合器3は、チャンバ6を少なくとも部分的に画定する側壁220および上壁232を含むことができる。歯結合器3は、入口61によってチャンバ6に液体221を供給する流体運動発生器5を備えることができる。ノズル210は、液体221を、チャンバ6および歯10内で流体運動および/または圧力波を発生させることができるジェットに変換することができる。歯結合器3の寸法および他の特性は、ここに示す場合を除き、図15図16Bに関連して上述したものと実質的に同様であり得る。
【0245】
図19に示すように、(図19ではページ内に入ってくるように示す)流入流体221は、歯結合器3のチャンバ6、歯髄腔を通って対応する根管空間13A、13B内に入る2つの流入回転流路222A、222Bを発生させることができる。しかしながら、図15図16Bの実施形態とは異なり、流体運動発生器5および入口61は、チャンバ6の中心軸Zを横切りかつ中心軸Zを通って進むことができる。図20に示すように、液体222は、チャンバの中心部分を通過することができ、チャンバ6の中または上の壁220の位置Iにおいて対向する表面に衝突することができる。衝突は、チャンバ6内に2つの同時に存在する流入回転流222A、222Bをもたらすことができる二又流を引き起こすことができる。2つの回転流は、歯10の複数(たとえば2つ)の歯根管空間13A、13Bを洗浄するように作用することができる。2つの流入回転流路222A、222Bは、歯根管空間13A、13Bを通過することができ、(根尖開口部15A、15Bまたはその近くであり得る)それぞれの戻り位置V、Vに達すると、歯根管空間13A、13Bの中心の近くのそれぞれの中心経路224A、224Bに沿って、流入流路222A、222B内で戻ることができる。流出または出ていく流体224A、224Bは、1つまたは複数の対応する出口を通って出ることができる。図19に示すように、たとえば、歯結合器3は、廃棄物リザーバに向かって流出液体224A、224Bを引くことができる2つの出口62A、62Bを含むことができる。出口62A、62Bの間に中心軸Zを配置することができる。本明細書に開示する回転流体流は、歯10を有効に処理する(たとえば洗浄する)ように作用することができる。
【0246】
図21A図24Cは、歯を洗浄するように構成されたシステムの他の実施形態を示す。図21A図24Cの実施形態は、図15図16Bに関連して上述したものと同様であり得る。図21Aは、歯の治療領域(たとえば歯根管)を洗浄するように構成されたハンドピース3Aの概略斜視図である。図21Bは、切断面21B-21Bに沿った図21Aに示すハンドピース3Aの概略側断面図である。図22は、図21Bの拡大側断面図である。図23は、切断面23-23に沿った図21Aのハンドピース3Aの概略側断面図である。図24Aは、切断面24A-24Aに沿った図21Aに示すハンドピース3Aの一部の概略斜視上面断面図である。図24Bは、図24Aに示す部分の上面図である。図24Cは、切断面24C-24Cに沿った、図21Aに示すハンドピース3Aの一部の上面断面図である。図15図16Bに関連して上述した実施形態と同様に、歯の歯根管を洗浄するように図21A図24Cに示すハンドピース3Aを構成することができる。
【0247】
ハンドピース3Aは、本体部分201およびインタフェース部材202を含むことができる。治療処置中、臨床医は、自らの手で本体部分201を保持することができ、歯に対して封止部材105を押圧して治療領域を実質的に封止することができる。他の実施形態では、臨床医は、治療処置のために歯の封止部材105を取り付けることができる。封止
部材105は、歯にあてがわれると変形し得る発泡体等の圧縮性材料を含むことができる。チャンバ6の周囲に封止キャップ105を配置することができる。臨床医が歯に対してハンドピース3Aを押圧すると、封止キャップ105は圧縮されて、チャンバ6および/または歯の中に実質的に封止された環境を生成することができる。インタフェース部材202は、操作盤(図示せず)から延在する、たとえばハンドピース3Aに治療液を供給する高圧供給ラインを含む流体導管と取外し可能に結合することができる。(インタフェース部材202を含む)ハンドピース3Aのさらなる詳細は、米国特許出願公開第2015/0010882号明細書に記載されているものと同様とすることができ、その出願の内容は、全体としてかつすべての目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0248】
図21B図23に示すように、ハンドピース3Aの先端部分に、(図15図16Bに関連して記載した歯結合器3と同じかまたは同様であり得る)封止キャップ3Bを結合することができる。図15図16Bの歯結合器3と同様に、封止キャップ3Bは、内側かつ先端側に細くなるテーパ状部分を含むことができる。歯根管のアクセス開口部内に、封止キャップ3Bの最先端部を挿入することができる。たとえば、臨床医が歯に対して封止部材105を押圧すると、封止キャップ3Bをアクセス開口部内に押し込むことができる。封止キャップ3Bの先端部分227が歯の中に配置されると、封止部材105の先端部は、封止キャップ3Bの先端部の基端側に配置される。さらに、中心軸Zは、封止キャップ3Bの中心と、ハンドピース3Aの先端部分の中心とを垂直に通過することができる。特に、中心軸Zは、図23の断面図が得られる平面に位置する。図15図16Bの実施形態と同様に、中心軸Zを略横切り(たとえば垂直であり)かつ中心軸Zからずれていることが可能なX方向に沿って、チャンバ6に液体を供給することができる。液体が向けられるX方向は、中心軸Zに対して80°~100°、またはより詳細には85°~95°の角度で向けることができる。X軸または方向は、図21Bの断面図が得られる平面に位置することができる。
【0249】
封止キャップ3Bは、上壁232と上壁232から横方向に延在する側壁220とによって少なくとも部分的に画定されるチャンバ6を備えることができる。チャンバ6は、歯に結合される(たとえば、歯に押圧されるかまたは歯に取り付けられる)と、治療処置中に液体および他の物質を保持することができる。いくつかの実施形態では、上壁232および側壁220を単一構成要素として一体的に形成することができ、他の実施形態では、上壁232および側壁220は、合わせて接続されるかまたは接合される別個の構成要素を含んでも良い。側壁220は、チャンバ6を少なくとも部分的に画定するように上壁232に対して環状に(たとえば円錐形状に)延在することができる。本明細書で用いる上壁232は、チャンバ6の基端部の近くの壁を指し、したがって、(上歯の処理等)いくつかの治療中では、上壁232は下向きに配置し得ることが理解されるべきである。
【0250】
さらに、図23に示すように、封止キャップ3Bまたはチャンバ6は、歯の治療領域(またはその一部)と接触するように構成された先端部分227を含むことができる。先端部分227は、チャンバ6と歯の治療領域(たとえば、歯根管)との間に流体連通を提供するアクセスポート231を画定することができる。さまざまな構成では、先端部分227は、封止キャップ3Bおよび/またはチャンバ6の中心軸Zに向かって半径方向内側にテーパ状であり得る。中心軸Zは、アクセスポート231に対して垂直でありかつアクセスポート231の中心軸を含むことができる。たとえば、側壁220は、内側かつ先端側に連続的かつ実質的に直線状に細くなり実質的に円錐形のテーパを含むことができる。さらに、いくつかの実施形態では、側壁220は、厚い壁部分から厚い壁部分の遠位側の薄い壁部分への遷移を画定する肩部分220Aを備えることができる。したがって、図23に示すように、チャンバ6の基端部分は、内径D(または他の主寸法)を有することができ、先端部分227のアクセスポート231は、Dより小さい内径D(または他の主寸法)を有することができる。チャンバ6は、高さhも有することができる(図15
参照)。チャンバ6の高さhは、さまざまな実施形態では約5cm未満、たとえば約2cm未満であり得る。
【0251】
歯根管処理の場合、歯根管との流体連通を提供するために、歯のアクセス開口部内に先端部分227を挿入することができる。液体および/または残がいがチャンバ6および/または歯から漏れ出ないように、流体シールを生成するかまたは強化するように、先端部分227と歯との間に封止材を施すことができる。図23に示すように、テーパが封止キャップ3Bの中間部分または基端部分から封止キャップ3Bの最先端部まで延在するように、先端部分27をテーパ状にすることができる。たとえば、図23に示すように、封止キャップ3Bの側壁220は、略直線状または円筒状部分203(それに沿って、Dは実質的に一定のままである)と、内径Dが先端方向に沿って低減するように直線状部分203から内側かつ先端側に細くなるテーパ状または円錐状部分204とを備えることができる。テーパ状部分204は、直線状部分203の先端側に配置することができ、封止キャップ3Bの先端部分227および最先端部を含むことができる。図23に示すように封止キャップ3Bをテーパ状にすることにより、臨床医が、非常に小さい歯、または非常に小さい歯根管空間を有する歯、たとえば、システムによって治療される最小のヒトの歯を含む、任意のサイズの歯に対する治療処置を行うことを有利に可能にすることができる。たとえば、先端部分227は、約0.5mm~約5mmの範囲のサイズ(たとえば、直径または他の主寸法)を有する歯内治療用アクセス開口部で歯を治療するようなサイズとすることができる。いくつかの実施形態では、図23に示す先端部分227に拡張部分を取り付けることができ、拡張部分は先端部分227から先端側に延在することができる。拡張部分は、いくつかの構成では、(たとえばより小さい歯に適合するように)さらにテーパ状とすることができる。他の構成では、拡張部分は、小さいチャンバ開口部を有する歯に、または隣接する歯に比較してくぼんでいる歯に対して使用されるように直線状または円筒状(テーパなし)であり得る。
【0252】
アクセスポート231の内径Dは、歯のアクセス開口部(たとえば、臨床医が歯の内部にアクセスするために形成する開口部)より小さく、アクセス開口部より大きく、またはアクセス開口部と同じサイズであり得る。いくつかの実施形態では、有利には、アクセスポート231の外径(および内径D)は、先端部分227をアクセス開口部内に挿入することができるように、アクセス開口部より小さい場合がある。他の実施形態では、先端部分227の外径は、アクセス開口部と同じサイズであるかまたはそれより大きい場合がある。したがって、アクセスポート231およびアクセス開口部が実質的に位置合わせされかつ/または部分的に重なるように、歯結合器3の先端部分227を歯内治療用アクセス開口部内に挿入することができる。
【0253】
先端部分227によって画定されるアクセスポート231の内径Dは、約0.3mm(±0.05mm)~約5mm(±1mm)の範囲、たとえば、約0.5mm(±0.1mm)~約3mm(±0.5mm)の範囲、または約1mm(±0.1mm)~約2mm(±0.1mm)の範囲であり得る。封止キャップ3Bの先端部分227は、約0.001mm(±0.0001mm)~約5mm(±1mm)の範囲、たとえば、約0.01mm(±0.001mm)~約1mm(±0.1mm)の範囲の壁厚さを有することができる。さらに、先端部分227の外径(たとえば、内径D+先端部分227の厚さの2倍)は、約0.5mm(±0.1mm)~約5mm(±1mm)の範囲、または約0.5mm(±0.1mm)~約3mm(±1mm)の範囲、たとえば、約1mm(±0.1mm)~約2mm(±0.1mm)の範囲であり得る。チャンバ6の基端部分の内径Dは、約5cm(±1cm)未満、たとえば約1cm(±0.1cm)未満であり得る。たとえば、内径Dは、約0.5cm(±0.1cm)~約1.5cm(±0.3cm)の範囲、または約0.7cm(±0.1cm)~約1cm(±0.1cm)の範囲であり得る。
【0254】
さらに、図23に示すように、封止キャップ3Bの円錐形状は、側壁220の外面が内側にかつ歯結合器3の最先端部の先端側に細くなる量を規定するテーパ角度αを有することができる。外面テーパ角度αは、約0.5°(±0.1°)~約65°(±1°)の範囲、たとえば、約0.5°(±0.1°)~約20°(±1°)の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、外側テーパ角度αは、約1°(±0.1°)~約15°(±1°)の範囲、または約1°(±0.1°)~約10°(±1°)の範囲であり得る。外側テーパ角度αは、有利には、封止キャップ3Bが最小アクセス開口部内に適合するのを可能にすることができる。たとえば、臨床医は、テーパ状外面が歯根管の壁と接触するまで、アクセス開口部内にテーパ状先端部分227を挿入することができる。さらに、封止キャップ3Bの円錐形状は、壁220の内面がテーパ状である角度を画定する内側テーパ角度βを有することができる。有利には、内側テーパ角度βは、(内径Dを有する)アクセス開口部231がチャンバの基端部分の内径(たとえばD)より小さくなることを可能にし得る。こうしたより小さい開口部により、チャンバ6の基端部分(たとえば部分203)から先端部分227への流れの遷移を平滑にすることができる。たとえば、チャンバの基端部分において空間が増大することにより、流入流222に対して、歯に入る前に平滑になるためのより多くの空間を与えることができ、流入流222と流出流224との間の干渉を防止するかまたは低減させることができる。内面テーパ角度βは、約0.5°(±0.1°)~約65°(±1°)の範囲、たとえば、約0.5°(±0.1°)~約20°(±1°)の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、内側テーパ角度βは、約1°(±0.1°)~約15°(±1°)の範囲、または約1°~約10°(±1°)の範囲であり得る。
【0255】
図21Bおよび図22に示すように、ハンドピース3Aは、治療領域に加圧治療流体を搬送するように構成された高圧供給ライン26を含む流体入口61を備えることができる。ハンドピース3Aの先端部分の近くに、かつ供給ライン26と流体連通して(圧力波発生器でもあり得る)流体運動発生器5を配置することができる。流体運動発生器5は、加圧流体を液体ジェット、たとえばコヒーレントな平行ジェットまたは平面ジェットに変換するように構成されたノズル210を備えることができる。流体運動発生器5の先端側にチャンバ6を配置することができる。供給ライン26に沿って流体運動発生器5に治療流体を押し込むように、ポンピングシステム(たとえば操作盤内)を構成することができる。さらに、ノズル210の基端側の高圧供給ライン26の周囲に、第1流体シール211Aおよび第2流体シール211Bを配置することができる。シール211A、211Bにより、ジェットを形成する液体に空気が取り込まれることを防止することができ、かつ/または液体がハンドピースから漏れるのを防止することができる。
【0256】
封止キャップ3Bの側壁220の上にかつ/または側壁220を通して、(上述したように圧力波発生器でもあり得る)流体運動発生器5を配置することができる。流体運動発生器5は、チャンバ6内に回転流体運動を発生させるようにチャンバ6に液体を供給することができる。供給される液体は、本明細書で説明するような脱気液体を含むことができる。供給される液体は、たとえば水、EDTA、漂白剤、閉塞材(充填処置のため)等を含む、任意の好適なタイプの治療流体であり得る。たとえば、流体入口61は、チャンバ6に加圧液体を供給することができる。図15の実施形態と同様に、加圧液体は、ノズル210を通過してコヒーレントな平行液体ジェットを発生させることができる。ノズル210のさまざまな実施形態では、ノズルのオリフィスまたは開口部は、約5ミクロン~約1000ミクロンの範囲であり得る、入口における直径dまたは出口における直径dを有することができる。他の直径範囲が可能である。さまざまな実施形態では、ノズル開口部の直径dまたはdの一方または両方は、約10ミクロン~約100ミクロンの範囲、約100ミクロン~約500ミクロンの範囲、または約500ミクロン~約1000ミクロンの範囲であり得る。他のさまざまな実施形態では、オリフィス径dまたはdの一方または両方は、約40ミクロン~80ミクロンの範囲、約45ミクロン~70ミク
ロンの範囲、または約45ミクロン~65ミクロンの範囲であり得る。一実施形態では、オリフィス径dは約60ミクロンである。直径dに対する軸方向長さLの比、直径dに対する軸方向長さLの比、もしくは直径d、dに対する合計軸方向長さL+Lの比、または平均直径(d+d)/2は、さまざまな実施形態において、約50:1、約20:1、約10:1、約5:1、約1:1またはそれ未満であり得る。一実施形態では、軸方向長さLは約500ミクロンである。ノズルのさらなる例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0117517号明細書に見ることができる。
【0257】
図24Cの上面断面図に示すように、流体運動発生器5は、封止キャップ3Bに対して中心がずれているかまたは非対称であり得る。たとえば、流体入口61およびノズル210を、歯結合器3の中心軸Zに対してずらすことができる。図24Cでは、流体運動発生器5を、中心軸Zに対して半径方向にずらずことができ、中心軸Zを横切るX方向に向けることができる。図23に示すように、中心軸Zは、アクセスポート231の中心を通って封止キャップ3Bの高さに沿って先端側に進むことができ、たとえば、中心軸Zは、アクセスポート231の中心においてまたはその近くでアクセスポート231を横切ることができる。中心軸Zはまた、封止キャップ3Bの円錐形状の、たとえば円錐形状の半径方向に対して横切る中心長手方向軸も画定することができる。
【0258】
流体運動発生器5によって供給される加圧液体は、封止キャップ3Bのチャンバ6内に液体循環を引き起こすことができる。たとえば、図15図16Bの実施形態と同様に、流体運動発生器5(たとえば入口61および/またはノズル210)は、液体が封止キャップ3B内に導入される方向に延びるX軸を横切ることができる(たとえば、いくつかの構成では実質的に垂直であり得る)チャンバの中心軸Zを中心に、流入液体222の渦巻く回転運動を発生させることができる。いくつかの構成では、他の方向を中心に、たとえば流体導入方向に対して平行な軸を中心に、回転運動または循環運動を引き起こすことも可能である。図15図16Bの実施形態と同様に、回転する液体が根管空間に入る際、流入液体は、根管空間の壁の近くでかつ/またはその壁に沿って回転流を引き起こすことができる。
【0259】
図15図16Bの実施形態と同様に、いくつかの実施形態では、加圧液体は、本明細書で説明したように、ノズル210を通過することができ、流体運動発生器および/または圧力波発生器として作用することができるコヒーレントな平行液体ジェットとして現れることができる。いくつかの実施形態では、供給される液体は、ジェットではない液体の流れを含むことができる。液体は、チャンバ6に入った後、封止キャップ3Bの側壁220に衝突しかつ/または側壁220に沿って摺動することができる。壁220に対して液体が衝突すると、回転する流入液体の広がりが発生し、そこでは、流入液体の広がりは、中心軸Zを中心に渦巻流運動で回転し、封止キャップ3Bの開口部227に向かってチャンバ6内を側壁220に沿って先端側に進む。回転する流入液体の広がりは、歯根管の内壁に沿って歯の根尖開口部に向かって下方に続くことができる。回転する液体は、根管空間全体を有効にかつ効率的に洗浄することができる。たとえば、流入液体の迅速なバルク流体運動は、歯根管内の罹患物と相互作用することができ、歯根管から罹患物を分離しまたは他の方法で除去することができる。
【0260】
図16および図23に示すように、チャンバ6および治療領域に十分な回転流入流222(図15および図16を参照)が提供されるように、流体運動発生器5を向けることが有利であり得る。たとえば、入口61およびノズル210を、中心軸Zを横切る(たとえば垂直であり得る)X方向に沿って向けることができる。X方向は、側壁220の外縁に対して略接線であり得る。入口221およびノズル210がチャンバ6の壁220と交差する位置で、X方向を側壁220の接線Tに対してわずかに角度を付けることができる(
図16を参照)。たとえば、流入液体222が向けられるX方向は、接線Tに対して入口角度θであり得る(図16を参照)。入口角度θは、ゼロまたはゼロに近くすることができる。たとえば、θは、約0°~約15°の範囲、または約0°~約10°の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、角度θは、約1°~約10°の範囲、または約1°~約5°の範囲であり得る。流入流222の中心が壁220の最外縁から距離δでチャンバ6に入るように、流体運動発生器5を配置することも可能である(図15および図16ならびにその記載を参照)。距離δは、比較的小さく、たとえば約5μm~約2mmの範囲、または約15μm~約40μmの範囲であり得る。図15図16図23および図24Cに示すように、X軸がチャンバ6に対して実質的に水平であるように、X軸が中心軸Zに対して垂直に向けられるように、流体運動発生器5を向けることができる。いくつかの実施形態では、X軸は、治療領域内への下向きまたは先端側の回転流入流を発生させるのに役立つように、先端側に向けることができる。
【0261】
さらに、図15に示す実施形態と同様に、図21A図14Cの実施形態では、液体ジェットは、ノズル210から現れるとき、ノズル210とチャンバ6との間のインタフェースの近くの相互作用ゾーンにおいて治療液と相互作用することができる。本明細書で説明したように、液体ジェットは、液体を通過することができ、チャンバ6および歯の歯根管内の液体を通って伝播する圧力波を発生させることができる(図15図16Bを参照)。圧力波は、相互作用ゾーンから歯の根管内に先端側に伝播することができる。圧力波は、液体が歯の小さい空間、亀裂および細管内に流れ込みエネルギーを送達して歯を実質的に洗浄するのを可能にする複数の周波数を含むことができる。いくつかの構成では、流入液体のバルク流が、歯の比較的広い空間からより大量の罹患物質を除去するように作用することができ、圧力波は、液体のバルク流にさらされないことがあり得るより小さい空間に流れ込むことができる。回転流入液体および圧力波の組合せは、異なるタイプおよびサイズの有機物および無機物を含み得る歯の大きい空間および小さい空間を有する歯を実質的に洗浄するように作用することができる。閉塞処置または充填処置中、回転流および/または圧力波は、治療領域を実質的に充填するように作用することができる。
【0262】
図23は、封止キャップ3Bおよびチャンバ6の中心軸Zに沿って延在する出口62の断面図を示す。図15図16Bの実施形態と同様に、廃棄物質(たとえば分離した残がい等)が歯から洗い流されるのを確実にしかつ/または治療領域における流体の回転を促進するために、流入液体を治療領域から除去し得ることが重要であり得る。したがって、封止キャップ3Bの上壁232内にかつ/またはそれを通って、流体出口62を配置することができる。流体出口62は、チャンバ6と吸引ポンプを用いて流出流体を廃棄システムに搬送する(上述した導管4のうちの1つであり得る)出口通路209との間に開口部を画定する吸引ポート233を備えることができる。吸引ポンプは、出口通路209および出口62に対する吸引により、チャンバ6からかつ封止キャップ3Bの外側のリザーバに向かって流体を引き出すことができる。
【0263】
流体出口62または吸引ポート233は、封止キャップ3Bの先端部分227の内径Dに等しいかまたはそれより小さい内径D(または他の主寸法)を有することができる。図23では、内径DはDより小さい。たとえば、いくつかの実施形態では、吸引ポート233の内径Dは、約0.1mm~約5mmの範囲、たとえば約0.1mm~約2mmの範囲であり得る。封止キャップ3Bの上壁232の中心にまたはその近くに流体出口62を配置することができる。図23に示すように、封止キャップ3Bおよびアクセスポート231の中心軸Zは、先端部分227のアクセスポート231および出口62の吸引ポート233の両方を通過することができる。中心軸Zは、吸引ポート233に対して垂直、または実質的に垂直であり得る。たとえば、中心軸Zを、吸引ポート233に対して約90°の角度(70°~110°、またはより詳細には80°~100°、またはより詳細には85°~95°)に配置することができる。たとえば、いくつかの実施形態で
は、アクセスポート231は、中心軸Zを横切る(たとえば垂直な)平面を画定することができ、中心軸Zは、アクセスポート231の中心と吸引ポート233の少なくとも一部とを通過することができる。いくつかの実施形態では、吸引ポート233は、中心軸Zを横切る(たとえば垂直な)平面を画定することができ、中心軸Zは、吸引ポート233の中心とアクセスポート231の少なくとも一部とを通過することができる。いくつかの実施形態では、アクセスポート231および吸引ポート233は、ともに中心軸Zを横切る(たとえば垂直な)それぞれの平面を画定し、中心軸Zは、アクセスポート231および吸引ポート233の両方を通過することができる。いくつかの実施形態では、中心軸Zは、アクセスポート231および吸引ポート233の両方の中心を通過することができる。吸引ポート233は、いくつかの実施形態では中心軸Zを中心に対称であり得る。吸引ポート233の中心は、中心軸Zに位置することができる。
【0264】
図16Aおよび図16Bに関連して上で説明したように、出口62およびチャンバ6は、流入液体が戻り位置で基端側に折り返してチャンバ6から引き出されるように構成することができる。(根尖開口部またはその近くであり得る)戻り位置Vにおいて、治療液は、流出流体路を封止キャップ3Bに向かって折り返すことができる。流出流体路は、流入液体の流路またはパターンとは異なり得る。たとえば、戻りまたは流出流路は、根管空間の中心の近くにかつ/または渦巻流入流路内に回転(または準平面)流を含むことができる。いくつかの実施形態では、流出流は、回転流入液体の内部を通るらせん状流路を含むことができる。引き起こされた外向きの流れを治療領域の外側に搬送して、治療領域から(たとえば根管および歯の外側に)廃棄物および他の物質を搬送することができる。さらに、出口62および/または回転流入液体によって提供される吸引は、根尖開口部に負圧を提供することができ、そこでは、治療液体および/または廃棄物は、根尖開口部を通過することが防止され、それにより、患者に対する感染および/または苦痛のリスクを低減させることができる。流出液体は、吸引ポート233を通過することができ、吸引ポンプによって出口ライン209を通って廃棄物リザーバに引き込むことができる。
【0265】
さらに、図23の側断面図かつ図24Aおよび図24Bの上面断面図に示すように、ハンドピース3Aは、1つまたは複数の通気孔213を含むことができる。たとえば、チャンバ6内で流体圧が大きくなりすぎた場合、チャンバ6からの流体が通気孔213から流出することができるように、通気孔213を構成することができる。通気孔213は、チャンバ6の過加圧を阻止する逃し弁として作用することも可能であり、通気孔73は、空気が流体出口72に入り歯の内部65から除去された流体に取り込まれるのを可能にするように構成することができる。たとえば、図24Aおよび図24Bに示すように、周囲空気が流体出口62内に、出口62における流体流の方向に流れ込むように、通気孔213を位置決めしかつ向けることができる。こうした実施形態では、流体出口72における流れは、チャンバ6からの流体および周囲空気をともに含む。いくつかの実装形態では、通気孔213は、流体の出口62への入口点の近く、たとえば数ミリメートル以内に配置され、それにより、チャンバ6内の圧力が上昇しすぎた場合に、流体がチャンバ6から流れ出るのをより容易にすることができる。さまざまな実施形態では、2つ、3つ、4つまたはそれより多くの通気孔等、複数の通気孔213を使用することができる。通気孔213に対して、空気がチャンバ6に入るのを阻止しながら、流体がチャンバ6から流れ出るのを可能にするようなサイズとし、形状とし、そのように位置決めし、かつ/または向けることができる。図21A図24Cのハンドピース3Aに関連して使用することができる通気孔アセンブリのさらなる例は、たとえば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0237893号明細書に記載されている通気孔73と同様であり得る。
【0266】
図24Aおよび図24Bに示す実施形態では、2つの通気孔213が示されている。空気がチャンバ6に向かうのではなく流体の外向きの流れに向けられるように、通気孔21
3は出口通路209において流れの方向に向かって角度が付けられる。吸引ポート233がチャンバ6と通気孔213との間に配置されるように、吸引ポート233の下流に通気孔213を位置決めすることができる。さらに、図24Aおよび図24Bに示すように、通気孔213は、ハンドピース3Aの外面から出口通路209まで延在する流路または内腔を備えることができる。通気孔213は、出口通路209に対して対称とすることができ、または出口通路209に沿って分散させることができる。通気孔の数は、偶数または奇数の組合せ(たとえば、2、3、4等)であり得る。通気孔軸と出口通路209との間の角度は、0.1度~90度(垂直)、または0.1度~179.1度で変化することができる。
【0267】
図24Dは、他の実施形態による図21A図24Cに示すハンドピース3Aの側断面図である。ハンドピース3Aは、図21A図24Cに関連して示しかつ記載するものと同じであり得るが、図24Dでは、歯結合器3の側壁220に1つまたは複数の壁開口部265が設けられている点が異なる。図示するように、先端部分227にまたはその近くに壁開口部265を配置することができる。治療処置中、幾分かの治療流体は、チャンバ6から出て壁開口部265を通って歯根管の壁に沿って流れることができ、一方で流体の残りは、アクセスポート231によってチャンバ6から治療領域に進む。アクセスポート231に加えて壁開口部265を通して治療領域に流体を分配することにより、洗浄処置の有効性を向上させることができる。たとえば、開口部265を通過する流体によって、チャンバの壁220に隣接する歯の部分を洗浄することができる。さらに、図15に関連して記載し例示した歯結合器3の先端部分227に、開口部265を設けることも可能である。
【0268】
したがって、本明細書に開示するさまざまな実施形態では、ノズル210によって形成することができる高速治療流体流により、流体チャンバ6の頂部に高推進力流体を導入することができる。液体の流れは、チャンバ6の中心軸、たとえば治療中に歯に向けられる軸に対して横切る(たとえば、略または実質的に垂直な)方向において、進むことができる。流れは、チャンバ6の長手方向軸を横切ることができ、流れがチャンバ6に対して偏心的に流れるように、チャンバ6の中心に対してずらすことも可能である。高推進力の薄い治療流体流は、その後、チャンバ6の内部で回転しながら歯に向かって下方に進むことができる。チャンバ6は、直線状であるか、またはチャンバ6の直径を低減させるようにわずかに先細りであり得る。たとえば、さまざまな実施形態では、チャンバ6をテーパ状にすることができる。回転高推進力流体は、底部アクセスポート231を通って、チャンバ6から出ていき、底部アクセスポート231は、高推進力流体の歯の中への効率的な送達を確実にし、かつ排出を可能にする程度の大きさであるが、歯が有し得るすべてのあり得る解剖学的構造および幾何学的形状に対して適切な相互作用および封止が確実となる程度に小さい。インタフェース機構(たとえば封止部材105)により、回転流体が最小の中断または損失で歯に入り、かつ治療の安全性および効力を維持するのを可能にするように、封止キャップ3Bおよびチャンバ6が歯にあてがわれるのを可能にすることができる。封止部材105は、空気が歯およびチャンバ6に入るのを防止するとともに、チャンバおよび歯から漏れ出る液体の量を最小限にするために、シールを提供する。流体チャンバ6を出た後、高推進力治療流体は、歯根管腔または治療領域内部に高せん断応力回転流を発生させる。歯髄組織および象牙質壁において発生した高いせん断応力は、歯根管の効率的な洗浄に寄与する。歯内に導入される流体によって伝達される推進力は、安全な送達を確実にしながら歯根管系内の深い浸透を確実にするように選択することができる。最深浸透点では、回転流は回転の中心線に収束することができ、戻り点Vで流れの反転が発生し、それにより、流入回転流の中心を通る残がいおよび廃棄流体の排出が可能になる。チャンバ6の頂部の中心に位置する排出開口部を通って流れる内部渦を形成することができる。廃棄流体の収集で使用される外部吸引装置に排出開口部を接続することができる。排出吸引装置はまた、流体チャンバ6と、したがって治療歯との内部で安全な圧力を維持する
ためにサイズが決められている一連の通気孔213と結合することができる。
【0269】
高推進力、高せん断応力流体が歯に供給されることに加えて、高速液体ジェットの相互作用を通して広域スペクトル(帯域幅)圧力波を発生させることができる。治療流体は、脱気され、洗浄の速度を加速させるように化学物質を含むことができる。治療領域の閉塞または充填のための機構も使用することができる。
【0270】
図21A図24Dにおいてチャンバ6に供給される治療流体は、洗浄液または閉塞材等の任意の好適な治療流体を含むことができる。たとえば、洗浄処置では、供給される洗浄液は、図16Aおよび図16Bに示すように回転することができ、罹患物と相互作用して歯を洗浄することができる。閉塞処置では、供給される閉塞材は、図16Aおよび図16Bに示すものと同様に回転することができ、治療領域(たとえば、治療済みの歯根管、治療済みのう蝕領域等)を実質的に充填することができる。さらに、図21A図24Dに示すように、チャンバ6または封止キャップ3Bは、治療領域に閉塞材(または閉塞材の成分)を供給することができる1つまたは複数の追加の開口部を有することができる。追加の開口部を用いて治療領域を充填することができる。
【0271】
図25Aおよび図25Bは、図21A図24Cに示すハンドピース3Aを用いる治療処置の完了後の歯の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図25Aに示すように、たとえば、ハンドピース3Aは、歯根管13から罹患物質を実質的に取り除いている。図25Bでは、細管305も実質的に清浄であるように示されている。本明細書で説明したように、回転流体運動および圧力波の組合せにより、治療領域全体を実質的に洗浄することができる。
【0272】
XI.さまざまな実施形態の例
一実施形態では、歯を治療する装置が開示される。本装置は、アクセスポートを有するチャンバを含むことができ、アクセスポートは、チャンバが歯に結合されると歯の治療領域と流体連通するようにチャンバを配置し、アクセスポートは中心軸を有する。本装置は、チャンバ内に回転流体運動を発生させるように構成された流体運動発生器を含むことができる。本装置は、チャンバのアクセスポートとは反対の側においてチャンバと連通し、かつアクセスポートの中心軸が吸引ポートを通過するようにアクセスポートに対して配置されている吸引ポートを含むことができる。いくつかの実施形態では、チャンバの上壁の中心にまたはその近くに吸引ポートを配置することができる。吸引ポートは、中心軸を中心に対称であり得る。吸引ポートの中心は中心軸に位置することができる。流体運動発生器は、中心軸の周囲に渦巻流入流体路を発生させることができる。本装置は、吸引ポートに吸引力が加えられた状態で、渦巻流入流体路内部を流れる経路において流出流体を治療領域から吸引ポートに引き出すように構成することができる。中心軸は、吸引ポートに対して実質的に垂直に位置することができる。吸引ポートは、アクセスポートの主寸法以下の主寸法を有することができる。吸引ポートを、アクセスポートより小さくすることができる。流体運動発生器を、チャンバの側壁に配置し、アクセスポートの中心軸に対して略横切るように位置する流れ方向に液体を方向付けるように向けることができる。流れ方向は中心軸と交差しないようにすることができる。流体方向は、チャンバの壁に対して略接線であり得る。アクセスポートと対向するチャンバの上壁に、吸引ポートを配置することができる。チャンバは、アクセスポートを画定する先端部分を備えることができ、先端部分は、歯のアクセス開口部内に挿入されるようなサイズおよび形状であり、かつ中心軸に向かって先端側にテーパ状である。先端部分の内面は、中心軸に向かって先端側にテーパ状であり得る。先端部分の外面は、中心軸に向かって先端側にテーパ状であり得る。チャンバは、先端部分に結合されるかまたは先端部分とともに形成された円筒状部分を備えることができ、円筒状部分は、先端部分と吸引ポートとの間に位置している。先端部分は、約0.5°~約20°の範囲の角度でテーパ状であり得る。先端部分は、約1°~約10
°の範囲の角度でテーパ状であり得る。流体運動発生器は、液体ジェット装置を含むことができる。液体ジェット装置は、加圧液体を受け取る入口と、加圧液体をコヒーレントな平行液体ジェットに変換するように構成されたノズルとを備えることができる。吸引ポートの下流に少なくとも1つの通気孔を配置することができ、吸引ポートは吸引ポートから延在する出口通路に沿ってチャンバと通気孔との間に位置する。出口通路と連通する少なくとも1つの追加の通気孔が、吸引ポートの下流にあり得る。各通気孔を、出口通路に沿って配置することができ、かつ出口通路において流体流出方向に向かって角度を付けることができる。ハンドピースおよび歯結合器がハンドピースの先端部分にある場合があり、チャンバは、歯結合器内に配置されている。封止部材が歯結合器から延在することができ、封止部材は、治療領域を封止するように構成されている。操作盤がチャンバと流体連通することができ、操作盤は、流体をチャンバに押し込みかつチャンバから吸引する1つまたは複数のポンプを備える。流体運動発生器は、治療領域を通して圧力波を伝播させて治療領域を実質的に洗浄するように構成された圧力波発生器であり得る。アクセスポートの外径または主寸法は、約0.5mm~約5mmの範囲であり得る。アクセスポートの外径または主寸法は、約0.5mm~約3mmの範囲であり得る。アクセスポートの外径または主寸法は、約1mm~約2mmの範囲であり得る。アクセスポートの内径または主寸法は、約0.3mm~約5mmの範囲であり得る。アクセスポートの内径または主寸法は、約0.5mm~約3mmの範囲であり得る。アクセスポートの内径または主寸法は、約1mm~約2mmの範囲であり得る。吸引ポートの直径または主寸法は、約0.1mm~約5mmの範囲であり得る。吸引ポートの直径または主寸法は、約0.1mm~約2mmの範囲であり得る。フランジが、吸引ポートからチャンバ内に延在することができる。チャンバの先端部分は、治療領域との流体連通を提供するように、チャンバの側壁に1つまたは複数の側部開口部を備えることができる。
【0273】
他の実施形態では、歯を治療する装置が開示される。本装置は、アクセスポートを画定する先端部分を有するチャンバを備えることができ、アクセスポートは、チャンバが歯に結合されると歯の治療領域と流体連通するようにチャンバを配置し、アクセスポートは中心軸を有する。本装置は、チャンバに結合された流体運動発生器を備えることができ、流体運動発生器は、チャンバ内に回転流体運動を発生させるように構成されている。先端部分は、歯のアクセス開口部内に挿入されるようなサイズおよび形状とすることができ、先端部分は、中心軸に向かって先端側にテーパ状である。いくつかの実施形態では、チャンバの上壁の中心にまたはその近くに吸引ポートを配置することができる。吸引ポートは、中心軸を中心に対称であり得る。吸引ポートの中心は中心軸に位置することができる。流体運動発生器は、中心軸の周囲に渦巻流入流体路を発生させることができる。本装置は、吸引ポートに吸引力が加えられた状態で、渦巻流入流体路内部を流れる経路において流出流体を治療領域から吸引ポートに引き出すように構成することができる。中心軸は、吸引ポートに対して実質的に垂直に位置することができる。吸引ポートは、アクセスポートの主寸法以下の主寸法を有することができる。吸引ポートを、アクセスポートより小さくすることができる。流体運動発生器を、チャンバの側壁に配置し、アクセスポートの中心軸に対して略横切るように位置する流れ方向に液体を方向付けるように向けることができる。流れ方向は中心軸と交差しないようにすることができる。流体方向は、チャンバの壁に対して略接線であり得る。アクセスポートと対向するチャンバの上壁に、吸引ポートを配置することができる。先端部分の内面は、中心軸に向かって先端側にテーパ状である得る。先端部分の外面は、中心軸に向かって先端側にテーパ状であり得る。チャンバは、先端部分に結合されるかまたは先端部分とともに形成された円筒状部分を備えることができ、円筒状部分は、先端部分と吸引ポートとの間に位置している。先端部分は、約0.5°~約20°の範囲の角度でテーパ状であり得る。先端部分は、約1°~約10°の範囲の角度でテーパ状であり得る。流体運動発生器は、液体ジェット装置を含むことができる。液体ジェット装置は、加圧液体を受け取る入口と、加圧液体をコヒーレントな平行液体ジェットに変換するように構成されたノズルとを備えることができる。吸引ポートの下流に少
なくとも1つの通気孔を配置することができ、吸引ポートは吸引ポートから延在する出口通路に沿ってチャンバと通気孔との間に位置する。出口通路と連通する少なくとも1つの追加の通気孔が、吸引ポートの下流にあり得る。各通気孔を、出口通路に沿って配置することができ、かつ出口通路において流体流出方向に向かって角度を付けることができる。ハンドピースおよび歯結合器がハンドピースの先端部分にある場合があり、チャンバは、歯結合器内に配置されている。封止部材が歯結合器から延在することができ、封止部材は、治療領域を封止するように構成されている。操作盤がチャンバと流体連通することができ、操作盤は、流体をチャンバに押し込みかつチャンバから吸引する1つまたは複数のポンプを備える。流体運動発生器は、治療領域を通して圧力波を伝播させて治療領域を実質的に洗浄するように構成された圧力波発生器であり得る。アクセスポートの外径または主寸法は、約0.5mm~約5mmの範囲であり得る。アクセスポートの外径または主寸法は、約0.5mm~約3mmの範囲であり得る。アクセスポートの外径または主寸法は、約1mm~約2mmの範囲であり得る。アクセスポートの内径または主寸法は、約0.3mm~約5mmの範囲であり得る。アクセスポートの内径または主寸法は、約0.5mm~約3mmの範囲であり得る。アクセスポートの内径または主寸法は、約1mm~約2mmの範囲であり得る。吸引ポートの直径または主寸法は、約0.1mm~約5mmの範囲であり得る。吸引ポートの直径または主寸法は、約0.1mm~約2mmの範囲であり得る。フランジが、吸引ポートからチャンバ内に延在することができる。チャンバの先端部分は、治療領域との流体連通を提供するように、チャンバの側壁に1つまたは複数の側部開口部を備えることができる。
【0274】
他の実施形態では、歯を治療する装置が開示される。本装置は、アクセスポートを有するチャンバを含むことができ、アクセスポートは、チャンバが歯に結合されると歯の治療領域と流体連通するようにチャンバを配置し、アクセスポートは中心軸を備える。本装置は、チャンバに結合された流体運動発生器を含むことができ、流体運動発生器は、中心軸の周囲に渦巻流入流体路を発生させるように構成されている。本装置は、治療領域およびチャンバから流体を除去するように構成された吸引ポートを含むことができる。本装置は、吸引ポートに吸引力が加えられた状態で、渦巻流入流体路内部を流れる経路において流出流体を治療領域から吸引ポートに引き出すように構成することができる。いくつかの実施形態では、チャンバの上壁の中心にまたはその近くに吸引ポートを配置することができる。吸引ポートは、中心軸を中心に対称であり得る。吸引ポートの中心は中心軸に位置することができる。流体運動発生器は、中心軸の周囲に渦巻流入流体路を発生させることができる。中心軸は、吸引ポートに対して実質的に垂直に位置することができる。吸引ポートは、アクセスポートの主寸法以下の主寸法を有することができる。吸引ポートを、アクセスポートより小さくすることができる。流体運動発生器を、チャンバの側壁に配置し、アクセスポートの中心軸を略横切るように位置する流れ方向に液体を方向付けるように向けることができる。流れ方向は中心軸と交差しないようにすることができる。流体方向は、チャンバの壁に対して略接線であり得る。アクセスポートと対向するチャンバの上壁に、吸引ポートを配置することができる。先端部分の内面は、中心軸に向かって先端側にテーパ状であり得る。先端部分の外面は、中心軸に向かって先端側にテーパ状であり得る。チャンバは、先端部分に結合されるかまたは先端部分とともに形成された円筒状部分を備えることができ、円筒状部分は、先端部分と吸引ポートとの間に位置している。先端部分は、約0.5°~約20°の範囲の角度でテーパ状であり得る。先端部分は、約1°~約10°の範囲の角度でテーパ状であり得る。流体運動発生器は、液体ジェット装置を含むことができる。液体ジェット装置は、加圧液体を受け取る入口と、加圧液体をコヒーレントな平行液体ジェットに変換するように構成されたノズルとを備えることができる。吸引ポートの下流に少なくとも1つの通気孔を配置することができ、吸引ポートは吸引ポートから延在する出口通路に沿ってチャンバと通気孔との間に位置する。出口通路と連通する少なくとも1つの追加の通気孔が、吸引ポートの下流にあり得る。各通気孔を、出口通路に沿って配置することができ、かつ出口通路において流体流出方向に向かって角度を付け
ることができる。ハンドピースおよび歯結合器がハンドピースの先端部分にある場合があり、チャンバは、歯結合器内に配置されている。封止部材が歯結合器から延在することができ、封止部材は、治療領域を封止するように構成されている。操作盤がチャンバと流体連通することができ、操作盤は、流体をチャンバに押し込みかつチャンバから吸引する1つまたは複数のポンプを備える。流体運動発生器は、治療領域を通して圧力波を伝播させて治療領域を実質的に洗浄するように構成された圧力波発生器であり得る。アクセスポートの外径または主寸法は、約0.5mm~約5mmの範囲であり得る。アクセスポートの外径または主寸法は、約0.5mm~約3mmの範囲であり得る。アクセスポートの外径または主寸法は、約1mm~約2mmの範囲であり得る。アクセスポートの内径または主寸法は、約0.3mm~約5mmの範囲であり得る。アクセスポートの内径または主寸法は、約0.5mm~約3mmの範囲であり得る。アクセスポートの内径または主寸法は、約1mm~約2mmの範囲であり得る。吸引ポートの直径または主寸法は、約0.1mm~約5mmの範囲であり得る。吸引ポートの直径または主寸法は、約0.1mm~約2mmの範囲であり得る。フランジが、吸引ポートからチャンバ内に延在することができる。チャンバの先端部分は、治療領域との流体連通を提供するように、チャンバの側壁に1つまたは複数の側部開口部を備えることができる。
【0275】
さらに他の実施形態では、歯を治療する方法が開示される。本方法は、歯の治療領域にチャンバをあてがうことを含み、チャンバは、治療領域と流体連通するようにチャンバを配置するアクセスポートを有し、アクセスポートが中心軸を備える。本方法は、中心軸の周囲に流体路に沿って流入流体を渦巻流にすることを含み得る。本方法は、渦巻流入流体路内部を流れる経路において、流出流体を治療領域から吸引ポートに引き出すことを含み得る。いくつかの実施形態では、流入流体を渦巻流にすることは、流体運動発生器を作動させることを含み得る。流体運動発生器を作動させることは、チャンバと流体連通する操作盤によって流体運動発生器を作動させることを含み得る。流出流体を引き出すことは、出口通路によって吸引ポートと流体連通している真空ポンプを作動させることを含み得る。流入流体を渦巻流にすることは、中心軸を横切る軸に沿って液体を方向付けることを含み得る。液体を方向付けることは、中心軸からずれている横方向軸に沿って液体を方向付けることを含み得る。流体運動発生器を作動させることは、液体ジェット装置を作動させることを含み得る。チャンバは、アクセスポートを画定する先端部分を備えることができ、先端部分は、中心軸に向かって先端側にかつ内側にテーパ状であり、チャンバをあてがうことは、テーパ状先端部分を歯のアクセス開口部に挿入することを含み得る。チャンバをあてがうことは、歯に対してチャンバを押圧することを含み得る。チャンバをあてがうことは、歯にチャンバを取り付けることを含み得る。本方法は、歯に実質的に脱気された液体を供給することをさらに含み得る。本方法は、治療領域において圧力波を発生させることを含み得る。圧力波を発生させることは、複数の音響周波数を発生させることを含み得る。
【0276】
図のうちのいくつかに概略的に示す歯は小臼歯であるが、本処置は、切歯、犬歯、小臼歯(bicuspid)、小臼歯(pre-molar)、大臼歯等、任意のタイプの歯に対して行うことができる。さらに、図では、歯を下側(下顎)歯として示し得るが、これは、例示のためであって限定するものではない。本システム、方法および組成物は、下方(下顎)歯または上側(上顎)歯に適用することができる。また、開示した装置および方法は、歯根管、歯髄腔等の内部空間および/または歯の外面を含む歯の任意の部分が可能である。さらに、開示した装置、方法および組成物は、ヒトの歯(子どもの歯を含む)にかつ/または動物の歯に適用することができる。
【0277】
本明細書を通して「いくつかの実施形態」または「実施形態」と言及する場合、それは、その実施形態に関連して記載する特定の特徴、構造、要素、行為または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通してさまざま
な場所で「いくつかの実施形態では」または「実施形態では」という句が現れる場合、それは、必ずしも同じ実施形態を指しているとは限らず、同じかまたは異なる実施形態のうちの1つまたは複数を指し得る。さらに、他の実施形態では、特定の特徴、構造、要素、行為または特性を、(図示するかまたは記載するものとは異なるものを含む)任意の好適な方法で組み合わせることができる。さらに、さまざまな実施形態において、特徴、構造、要素、行為または特性を、組み合せ、併合し、配置を変え、順序を変え、または完全に除外することができる。したがって、各実施形態に対して、いかなる単一の特徴、構造、要素、行為もしくは特性または特徴、構造、要素、行為もしくは特性群も、必要であるとも必須であるとも限らない。すべてのあり得る組合せおよび部分的組合せは、本開示の範囲内にあるように意図されている。
【0278】
本明細書で使用する「備える」、「含む」、「有する」等の用語は、同義であり、包括的に、非限定的に使用され、追加の要素、特徴、行為、動作等を排除しない。また、「または」という用語は、その包括的な意味で(その排他的な意味ではなく)使用され、そのため、たとえば要素のリストを接続するために使用される場合、「または」と言う用語は、リストにおける要素の1つ、いくつかまたはすべてを意味する。
【0279】
同様に、実施形態の上記説明において、さまざまな特徴が、本開示を効率化しさまざまな発明の態様のうちの1つまたは複数の理解に役立つ目的で、単一の実施形態、図またはその説明において合わせてグループ化されている場合があることが理解されるべきである。しかしながら、この開示方法は、いかなる請求項もその請求項において明示的に列挙されているもの以外の特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、発明の態様は、任意の単一の上に開示した実施形態のすべての特徴より少ない特徴の組合せにある。
【0280】
上述した説明は、本明細書に開示した発明のさまざまな実施形態例と他の例示的なただし非限定的な実施形態とを示す。本説明は、開示した発明の組合せ、態様および使用に関する詳細を提供する。本明細書を読んだときに当業者に明らかとなるものを含む、実施形態の開示した特徴および態様の他の変形形態、組合せ、変更形態、均等物、態様、使用、実装形態および/または適用も本開示の範囲内にある。さらに、本発明のいくつかの目的および利点が本明細書に記載されている。こうした目的または利点の必ずしもすべてが、いかなる特定の実施形態においても達成され得るとは限らないことが理解されるべきである。したがって、たとえば、当業者は、本明細書において教示されるかまたは示唆され得る他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書に教示されるような1つの利点または利点群を達成するかまたは最適化する方法で、本発明を具体化するかまたは実行し得ることを理解するであろう。また、本明細書に開示するいかなる方法またはプロセスにおいても、その方法またはプロセスを構成する行為または動作を、任意の好適な順序で行うことができ、必ずしも任意の特定の開示した順序に限定されるものではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図16A
図16B
図17
図17A
図18
図18A
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23
図24A
図24B
図24C
図24D
図25A
図25B
【手続補正書】
【提出日】2022-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯を治療する装置であって、
アクセスポートを有するチャンバであって、前記アクセスポートは、前記チャンバが前記歯に結合されると前記歯の治療領域と流体連通するように前記チャンバを配置し、前記アクセスポートが中心軸を有する、チャンバと、
前記チャンバ内に回転流体運動を発生させるように構成された流体運動発生器と、
吸引ポートであって、前記チャンバの前記アクセスポートとは反対側において前記チャンバと連通し、かつ前記アクセスポートに対して前記アクセスポートの前記中心軸が前記吸引ポートを通過するように配置されている吸引ポートと
を備える装置。