(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014192
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】噴霧ノズル
(51)【国際特許分類】
B05B 7/04 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
B05B7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116397
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】500270572
【氏名又は名称】株式会社麻場
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智
(72)【発明者】
【氏名】荒井 裕紀
【テーマコード(参考)】
4F033
【Fターム(参考)】
4F033QA05
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB17
4F033QC02
4F033QD02
4F033QD04
4F033QD15
4F033QD16
4F033QE09
(57)【要約】
【課題】少量の液体であっても広範囲に気液混合体として噴霧させることが可能な噴霧ノズルを提供すること。
【解決手段】液体供給管70から供給された液体に空気を導入する空気導入部17、空気導入部17と外部空間とで連通する導入路14Cおよび液体と外部空気とを混合する混合室19を有するノズルホルダ10と、ノズルホルダ10の先端に装着されスリット56が形成された先噴板50と、気液混合体を先噴板50に案内する複数の案内流路36を有するノズルコア30と、液体供給管70からの液体を空気導入部17に噴射するピンホール23が形成されたオリフィス板20を備え、案内流路36は流路断面積が徐々に縮小する形状に形成されていると共に、ノズルコア30と先噴板50との間に気液混合体がスリット56から噴射される前に一時貯留されるバッファ空間39が形成されていることを特徴とする噴霧ノズル100である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と空気の気液混合体を噴霧する噴霧ノズルであって、
前記液体を供給する液体供給管との連結部側である基端側に配置され、前記液体に前記空気を取り込む空気導入部、前記空気導入部と外部空間とで連通し前記空気導入部に外部空気を導入する導入路および前記空気導入部により取り込まれた前記液体および前記外部空気を混合させて前記気液混合体を生成する混合室を有するノズルホルダと、
前記ノズルホルダの先端側に装着され、前記混合室から供給された前記気液混合体の噴射口であるスリットが形成された先噴板と、
前記ノズルホルダと前記先噴板の間に配設され、前記混合室から供給された前記気液混合体を前記スリットに向けて案内する案内流路が形成されたノズルコアと、
前記ノズルホルダの前記基端側に収容され、前記液体供給管から供給された前記液体を前記空気導入部に噴射するピンホールが形成されたオリフィス板と、を具備し、
前記案内流路は、前記基端側から前記先端側に進むにつれて流路断面積が徐々に縮小する形状に形成されており、
前記ノズルコアと前記先噴板との間には、前記案内流路から供給された前記気液混合体が前記スリットから噴射される前に一時貯留されるバッファ空間が形成されていることを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項2】
前記スリットは、前記先噴板の前記先端側が凸形状となる絞り部に形成されていて、
前記ノズルコアは、前記ノズルホルダに載置される円板と、前記円板に形成された前記案内流路と、前記案内流路よりも外側領域に設けられ、前記絞り部に進入する突起部とを有し、
前記バッファ空間は、前記ノズルコアの前記円板および前記突起部と、前記先噴板の前記絞り部とにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の噴霧ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体と気体との混合物である気液混合体を噴霧するための噴霧ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
液体と気体との混合物である気液混合体を噴霧するための噴霧ノズルとしては、非特許文献1に開示されているような構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】株式会社麻場″スーパー25(人力用・動力用―株式会社麻場)″、[online]、株式会社麻場、[令和2年5月8日検索]、インターネット<URL:https://www.asaba-mfg.com/part/スーパー25%e3%80%80g14/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示されている噴霧ノズルを用いることにより、液体と気体との混合が安定し、噴霧ノズルから噴霧された気液混合体の漂流飛散を抑えることができ、農薬散布等作業において好適であるが、低量低圧で気液混合体を噴霧した際には噴霧幅が狭くなってしまうといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、低量低圧で気液混合体を噴霧した際であっても広範囲に噴霧させることが可能な噴霧ノズルを提供することにある。
【0006】
上記課題を解決するために発明者が鋭意研究した結果、以下の構成に想到した。すなわち本発明は、液体と空気の気液混合体を噴霧する噴霧ノズルであって、前記液体を供給する液体供給管との連結部側である基端側に配置され、前記液体に前記空気を取り込む空気導入部、前記空気導入部と外部空間とで連通し前記空気導入部に外部空気を導入する導入路および前記空気導入部により取り込まれた前記液体および前記外部空気を混合させて前記気液混合体を生成する混合室を有するノズルホルダと、前記ノズルホルダの先端側に装着され、前記混合室から供給された前記気液混合体の噴射口であるスリットが形成された先噴板と、前記ノズルホルダと前記先噴板の間に配設され、前記混合室から供給された前記気液混合体を前記スリットに向けて案内する案内流路が形成されたノズルコアと、前記ノズルホルダの前記基端側に収容され、前記液体供給管から供給された前記液体を前記空気導入部に噴射するピンホールが形成されたオリフィス板と、を具備し、前記案内流路は、前記基端側から前記先端側に進むにつれて流路断面積が徐々に縮小する形状に形成されており、前記ノズルコアと前記先噴板との間には、前記案内流路から供給された前記気液混合体が前記スリットから噴射される前に一時貯留されるバッファ空間が形成されていることを特徴とする噴霧ノズルである。
【0007】
これにより、気液混合体をスリットから噴出させる前にバッファ空間内に蓄圧させた状態で一時貯留させることができるので、低量低圧で気液混合体を噴霧した際であっても広範囲に噴霧することができる。したがって、農薬散布等に代表される気液混合体の噴霧作業時における労務負担を大幅に軽減することが可能になる。
【0008】
前記スリットは、前記先噴板の前記先端側が凸形状となる絞り部に形成されていて、前記ノズルコアは、前記ノズルホルダに載置される円板と、前記円板に形成された前記案内流路と、前記案内流路よりも外側領域に設けられ、前記絞り部に進入する突起部とを有し、前記バッファ空間は、前記ノズルコアの前記円板および前記突起部と、前記先噴板の前記絞り部とにより形成されていることが好ましい。
【0009】
これにより、従来の噴霧ノズルを構成する部品の組み合わせで形成することができ、高性能な噴霧ノズルを安価に提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明における噴霧ノズルの構成を採用することにより、気液混合体をスリットから噴出させる前にバッファ空間内に蓄圧させた状態で一時貯留させることができるので、低量低圧で気液混合体を噴霧した際であっても広範囲に噴霧することができる。したがって、人力により農薬散布等に代表される気液混合体の噴霧作業を行う際において、作業者が運搬する液体容量を大幅に削減することができ、作業労務の負担を大幅に軽減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態における噴霧ノズルの分解図である。
【
図2】本実施形態における噴霧ノズルの正面図である。
【
図3】本実施形態における噴霧ノズルの平面図である。
【
図4】
図3中のIV-IV線における断面図である。
【
図7】
図6中のVII-VII線における断面図である。
【
図8】
図6中のVIII-VIII線における断面図である。
【
図11】
図9中のXI-XI線における断面図である。
【
図12】ノズルコアおよび先噴板の部分における内部構造を示す説明図である。
【
図13】案内流路の変形例を示す説明断面図である。
【
図14】ノズルコアおよび先噴板の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかる噴霧ノズル100の実施形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態における噴霧ノズル100は、ノズルホルダ10、オリフィス板20、ノズルコア30、シール部材としてのOリング40、先噴板50およびノズルキャップ60を具備している。
【0013】
ノズルホルダ10は、本体部11、第1リブ12、第2リブ13、ベース部14および雄ねじ部15を有している。本体部11は、高さ方向に貫通する内部空間を有する筒状体に形成されている。本体部11の外周面には、本体部11の径外方向に直交方向に起立すると共に本体部11の高さ方向に沿って第1リブ12が配設されている。この第1リブ12は、本体部11の外周面の周方向に沿って所要間隔をあけて複数箇所に配設されている。また、第1リブ12の高さ方向の中間位置には、本体部11の外周面から径外方向に直交方向に起立すると共に本体部11の周方向に沿って第2リブ13が配設されている。このような第1リブ12および第2リブ13を本体部11に設けることで本体部11に十分な強度を持たせ、かつ、軽量化することができる。
【0014】
本体部11の基端側(液体供給管70との連結側)にはベース部14が形成されている。ベース部14は、フランジ部14A、小径部14B、導入路14C、連結部14Dおよびベース部内側空間14Eを有している。フランジ部14Aは、液体供給管70をノズルホルダ10に連結する連結体80を保持するためのものである。小径部14Bは、フランジ部14Aよりも小径に形成された部分であり、第1リブ12の下端部と一体化されている。また、小径部14Bの外周面には、外部空気を本体部11の内部に形成された後述する空気導入部17に導入するための導入路14Cが形成されている。本実施形態における導入路14Cは、本体部11の中心軸周りに180度間隔をあけた2箇所において本体部11の中心軸から径外方向に直交方向に延設されており、外部空間と空気導入部17とを連通させている。
【0015】
また、ベース部14の底部側には、フランジ部14Aよりも小径寸法に形成され、液体供給管70が連結される連結部14Dが形成されている。また、連結部14Dの底面には凹部状のベース部内側空間14Eが形成されている。ベース部内側空間14Eには、後述するオリフィス板20が収容される。
【0016】
本体部11の先端側(上端側)には筒状体をなし、外周面にねじ山を有する雄ねじ部15が形成されている。雄ねじ部15の内側には雄ねじ部内空間15Aが形成されており、雄ねじ部内空間15Aの外周面(雄ねじ部15の内周面)には、周方向に均等間隔をあけた2箇所に位置決め用凸部16が雄ねじ部内空間15Aの内側(雄ねじ部15の中心軸線(不図示))に向かって突設されている。
【0017】
図4および
図5に示すように、本体部11には、液体供給管70から供給された液体を通過させるための流路空間が形成されている。この流路空間は、本体部11の基端側からベース部内側空間14E、空気導入部17、流路18、拡径流路19Aおよび雄ねじ部内空間15Aの順に形成されている。ベース部内側空間14Eは液体供給管70の内部空間に連通し、拡径流路19Aは雄ねじ部内空間15Aに連通している。なお、本実施形態においては、流路方向に連続する拡径流路19Aと雄ねじ部内空間15Aとにより混合室19が形成されている。
【0018】
ベース部内側空間14Eに連通する空気導入部17は、導入路14Cの連通部14Fが形成される導入路連通空間17Aと、導入路連通空間17Aの下流側に設けられ、流下方向に進むにつれて徐々に縮径する縮径部17Bを有している。導入路連通空間17Aの高さ位置は、導入路14Cの導入路連通空間17Aにおける開口部分である連通部14Fの高さ位置と同一に形成されており、導入路連通空間17Aの内径寸法は高さ方向において同一寸法(寸胴)に形成されている。縮径部17Bは、導入路連通空間17Aに噴射された水の進路の中心軸が、本体部11の中心軸に一致しなかった場合でも、導入路14Cから取り込まれた外部空気と共に確実に流路18に誘導させるためのものである。
【0019】
ベース部内側空間14Eに収容されているオリフィス板20は、平面視円形をなす円板部21と、円板部21の中央部分から円板部21の上面(先端側面)に起立する起立噴射部22と、起立噴射部22の上面(先端側面)に形成されたピンホール23を有している。このようなオリフィス板20を液体供給管70との連結部分であるベース部内側空間14Eに嵌め込んだ状態で収容することで、液体供給管70から供給される液体の流速がベース部内側空間14Eにおいて高められ、ベース部内側空間14Eに連通する空気導入部17にピンポイントで液体を高速噴射することができる。
【0020】
また、本実施形態においては、起立噴射部22のピンホール23の開口面高さ位置と導入路14C(連通部14F)の中心軸の高さ位置を同一にしている。また導入路14Cは、先述にもあるように噴霧ノズル100を平面視した際にベース部14(ノズルホルダ10、本体部11)の周方向において均等間隔をあけて2箇所に配設されている。
【0021】
空気導入部17につながる寸胴な流路18は、縮径部17Bの最縮部の内径寸法と同一の内径寸法に形成されている。このような流路18により、導入路14Cから取り込まれた外部空気の流路18内における逆流を防止し、連通先である拡径流路19A(混合室19)に十分な外部空気を供給している。また、拡径流路19Aからの気液混合体の逆流を防止することもできる。
【0022】
拡径流路19Aは流下方向に進むにつれて徐々に拡径する逆円錐台状に形成され、雄ねじ部内空間15Aに連続している。拡径流路19Aの最縮径部(始端部)の径寸法は流路18の内径寸法よりも大径に形成されている。気液混合体の噴霧開始時においては、流路18を通過してきた水と外部空気は混合室19を通過し、ノズルコア30の下面に衝突して跳ね返ることで水と外部空気との混合が行われ、混合室19において一時的に貯留されることになる。そして混合室19が水と外部空気で充満した状態になってもなお、流路18からは水と外部空気が追加供給され、追加供給された水と外部空気が混合室19に貯留されている気液混合体に衝突することで追加供給された水と外部空気との混合が行われることにもなる。このようにして水と外部空気が十分に混合された気液混合体を生成することができる。
【0023】
また、本実施形態のようにノズルコア30の直前位置である雄ねじ部内空間15Aで気泡が微細化された気液混合体を貯留させることにより、低量低圧噴霧であってもノズルコア30の案内流路36を通じて先噴板50に供給される気液混合体の流速を高めることができる。
【0024】
本実施形態におけるノズルコア30は、
図6~
図8に示すように、本体である円板32、位置決め用凹部34、案内流路36および突起部38を有している。円板32は雄ねじ部内空間15Aの開口部径寸法よりも大径寸法に形成され、円板32の下面側には位置決め用凹部34が位置決め用凸部16の位置に合わせて形成され、位置決め用凸部16と位置決め用凹部34が凹凸嵌合するようになっている。位置決め用凸部16の配設位置によりノズルホルダ10(雄ねじ部15の上面)に対するノズルコア30の装着向きを所定の方向にすることができる。
【0025】
また本実施形態における案内流路36は、
図1に示すように円板32の板厚方向に貫通する2つの貫通孔によって形成されている。2つの案内流路36は円板32の直径線上に配設されており、ノズルコア30を平面視した際、案内流路36どうしを結んだ第1直線L1(
図1、
図3および
図6中の破線)は、導入路連通空間17Aの側における導入路14Cの開口部である連通部14Fどうしを結んだ第2直線L2(
図1および
図3中の一点鎖線)と平行(同一直線上)となるように配設されている。このような案内流路36と導入路14C(連通部14F)の配置を採用することで、スリット56からの噴霧幅を広げることができることが出願人の実験により明らかになっている。
【0026】
また、本実施形態における案内流路36は、
図1、
図4等に示すように、先噴板50に供給する気液混合体の流速を高めるために、円板32の底面側(基端側)における開口部よりも上面側(先端側)における開口部を小さく形成している。より詳細に説明すると、本実施形態における案内流路36は、流路断面積が基端側から先端側に進むにつれて徐々に縮小する形状(等脚台形断面形状)に形成されている。なお、ここでは、案内流路36を等脚台形断面形状に形成しているが、案内流路36は等脚台形断面形状に限定されるものではない。
【0027】
そして突起部38は円板32の上面(先端側)における案内流路36よりも外側領域における2箇所に第1直線L1と同一直線上の位置に立設されており、突起部38の上側部分が後述する先噴板50の内側に当接するようになっている。本実施形態における突起部38は、円板32の外周縁位置から円板32の中心点に向かって徐々に突出高さを増す放物線状に形成されており、円板32の外周縁位置から案内流路36の外周縁位置の直前位置までの所要径範囲に形成されている。突起部38の内側起立面38Aは、円板32の上面に対して直交する起立面に形成されており、案内流路36の外周縁に沿った平面視円弧面部が形成されている。
【0028】
このように形成されたノズルコア30は、雄ねじ部15の上面とノズルコア30の外周縁にそれぞれ当接するシール部材としてのOリング40と位置決め用凸部16および位置決め用凹部34により、雄ねじ部15の上面にシールされた状態で装着されている。平面視円弧面部は案内流路36を形成する際の成形ピンの逃げ部である。
【0029】
ノズルコア30の上には、
図9~
図11に示すような先噴板50が載置されている。本実施形態における先噴板50は、円板状に形成された基部52に絞り部54、スリット56および薄肉部58が形成されている。絞り部54は、基部52の直径線上(案内流路36の配設方向と同一直線上)において絞り加工等により基部52の他の平面部分よりも上側に突出(噴霧ノズル100の先端側に突出)する凸形状に形成されている。本実施形態における絞り部54の内側面にはノズルコア30の突起部38が進入可能になっている。また本実施形態における絞り部54は、
図10に示すように、基部52からの立ち上がり部分54Aの形状がノズルコア30の突起部38の外表面形状に倣った形状に形成されており、絞り部54の内側面に突起部38が嵌合するように互いの形状が成形されている。
【0030】
絞り部54の長手方向(第1直線L1の方向)中央部には、絞り部54の長手方向に直交する配置で気液混合体の噴射口であるスリット56が形成されている。また、絞り部54におけるスリット56の形成部分を含む所要範囲部分が絞り部54の他の部分における肉厚よりも薄肉化された薄肉部58に形成されている。このような薄肉部58を形成することでスリット56の開口端縁における板厚が薄くなり、この部分における気液混合体の滴化頻度を低減させることができる。これにより、スリット56の開口端縁部分からの滴の垂れ落ちを防止すると共に、仮に滴が生じたとしても、小さい滴の段階でスリット56の開口端縁から離脱するため、噴霧ムラを軽減させることが可能になる。
【0031】
また、本実施形態における薄肉部58は、
図10に示すように、先端側に対して凹状の(正面視形状が円弧状の)湾曲面に形成されており、湾曲面の底部でスリット56が絞り部54を直交方向に横切る配置で設けられている。これにより先噴板50は、スリット56の開口端縁部分において最薄部になっている。このような薄肉部58は、ワイヤー放電加工により形成されていることが好ましい。ワイヤー放電加工により形成された薄肉部58によれば、スリット56の開口端縁におけるバリの発生をなくすことができ、気液混合体の噴霧範囲の低減を防止すると共に、滴化をより低減させることができる点で好都合である。
【0032】
図12はノズルコア30に先噴板50を凹凸嵌合させた状態を示す要部断面図である。ノズルコア30の突起部38に先噴板50の絞り部54を進入(嵌合)させると、円板32、内側起立面38A(突起部38)、絞り部54により囲まれた部分に空間が形成される。この空間は、スリット56から噴霧させる気液混合体の流速を高めるために所定量の気液混合体を貯留させるためのバッファ空間39として用いられる。先噴板50とノズルコア30との間にバッファ空間39を設けることで、案内流路36から供給された気液混合体を直接的にスリット56から噴霧させないようにしている。このようにバッファ空間39に所定容量の気液混合体を貯留することで、スリット56から噴霧される気液混合体の勢いを増すことができると共に、気液混合体のさらなる混合をすることもできる。
【0033】
ノズルキャップ60は、
図1,
図4に示すように先端部が細径部62に形成された筒状体をなしており、ノズルキャップ60の内周面には雄ねじ部15に螺合する雌ねじ64が形成されている。ノズルキャップ60の雌ねじ64に雄ねじ部15を螺着させることで、細径部62が先噴板50の基部52を雄ねじ部15の上面に押圧し、Oリング40を弾性変形させてノズルコア30と先噴板50を雄ねじ部15にシールした状態で固定保持させることができる。
【0034】
連結体80は、
図2~
図4に示すように内周面に雌ねじ部82が形成され、外周面に滑り止め用の凸部84が形成された筒状体をなしている。ベース部14の連結部14Dに接続された液体供給管70の接続端部72に形成された雄ねじ74を雌ねじ部82に螺合させることにより、ノズルホルダ10と液体供給管70を抜け止めした状態で連結することができる。連結体80をノズルホルダ10に螺合させても、連結体80の上端部86の内径寸法がベース部14の外径寸法よりもわずかに大きく形成されているので、導入路14Cが閉塞されず、かつ、導入路14Cからの異物の吸い込みを防ぐことができる。
【0035】
以上に本実施形態における噴霧ノズル100の構造について説明した。続いて、本実施形態における噴霧ノズル100に液体として水を、気体として外部空気をそれぞれ供給し、これらの気液混合体を噴霧する機構について説明する。上水等から提供された水は液体供給管70からノズルホルダ10に供給される。ノズルホルダ10に供給された水は、オリフィス板20の起立噴射部22により流路断面積が縮小され、起立噴射部22に形成されたピンホール23を通過させることでノズルホルダ10を通過する水の流速が高められ、水が通過する周辺空間の圧力を低下させる。
【0036】
ピンホール23の開口面の高さ位置は、
図4,
図5に示すように外部空気を取り込む導入路14Cの導入路連通空間17Aの開口部である連通部14Fと同じ高さ位置に設けられている。また、連通部14Fはベース部14(ノズルホルダ10、本体部11)を平面視した際に向かい合わせに配設されているので、導入路14C(連通部14F)から取り込まれた外部空気は導入路連通空間17Aにおいて水平方向の速度成分が相殺される。これにより、ピンホール23から噴射された水による減圧効果によって導入路連通空間17Aに取り込まれた外部空気は、効率的に水と共に縮径部17Bおよび流路18に取り込まれ、供給された水量に対して十分な外部空気を取り込むことができる。
【0037】
このようにしてノズルホルダ10に取り込まれた水と外部空気は、縮径部17Bから寸胴の流路18を経由して逆流することなく混合室19の一部である拡径流路19Aに確実に供給される。導入路連通空間17Aにより取り込まれた水と外部空気は縮径部17Bおよび流路18により流速を高めた状態で混合室19に送り出される。拡径流路19Aに送り出された気液混合体は、混合室19の一部である雄ねじ部内空間15Aに収容されているノズルコア30に衝突することで水と外部空気との混合が行われ、気液混合体として雄ねじ部内空間15Aで一旦貯留されることになる。
【0038】
また、流路18と拡径流路19Aとの接続部分は拡径流路19Aの内径寸法の方が大径寸法に形成され、拡径流路19Aは下流側に向けて徐々に内径寸法が拡大する形状に形成されている。このような形状に形成された拡径流路19Aの内部空間では、流路18から追加供給された水と外部空気が既に貯留されている気液混合体との衝突や、急拡損失による混合も行われる。さらに流路18から水と外部空気が供給されると混合室19内の気液混合体は順次ノズルコア30の案内流路36から先噴板50の絞り部54の内部に形成されたバッファ空間39に流入することになる。
【0039】
そしてバッファ空間39に気液混合体が充満すると、スリット56から気液混合体が扇状に噴霧される。本実施形態における噴霧ノズル100から噴霧される気液混合体は、上述のようにバッファ空間39に一旦貯留され、圧力が高められた状態でスリット56から噴霧されることになる。すなわち、スリット56から十分に混合された気液混合体を勢いよく扇状に噴霧させることができる。
【0040】
このように本実施形態における噴霧ノズル100を用いることにより、噴霧される気液混合体の単位体積当たりにおける気泡体積を従来に比較して大幅に向上させることができるため、薬液散布時における水の使用量を大幅に削減することができる。すなわち、少量の水で気液混合体を単頭式ノズル構造で広範囲に噴霧させることができ作業効率が大幅に向上する。また、特に除草剤の散布時においては、噴霧される気液混合体の粒径が過剰に小さくならないため、散布時の風による意図しない範囲への飛散を防止することができる点において特に好都合である。
【0041】
そして、スリット56の形成部分を含む所要範囲には薄肉部58が形成されているので、気液混合体の噴霧を行っても、スリット56の開口縁に気液混合体の粒子の集合量を可及的に少なくすることができる。このため、スリット56からの滴の垂れ落ちが防止され、噴霧範囲における気液混合体の噴霧密度の均一性を高めることができる点においても好都合である。
【0042】
以上、本発明にかかる噴霧ノズル100について実施形態に基づいて説明したが、本発明にかかる噴霧ノズル100の構成は以上に説明した実施形態に限定されるものではない。例えば以上に説明した実施形態における噴霧ノズル100においては、気液混合体として外部空気と水の混合体を例示しているが、気液混合体は外部空気と水の混合体に限定されるものではなく、外部空気と除草剤とによる気液混合体の他、公知の気体および液体を混合させた気液混合体とすることもできる。
【0043】
また、本実施形態においては、ノズルコア30に2つの案内流路36を配設しているが、案内流路36は3つ以上配設することもできる。また、これらの案内流路36は一直線上配置され、流路方向において流路断面積が徐々に減少する形状をなしていればよい。本実施形態における案内流路36は
図8に示すようないわゆる直線的なテーパ形状に形成した形態について説明しているが、
図13(A)に示すようなベルマウス形状や
図13(B)に示すような大径部と小径部とを直接連結した凸形状を採用することもできる。
【0044】
また、本実施形態におけるスリット56は、複数配設された案内流路36どうしを結んだ直線を水平方向に直交する形態について説明したがこの形態に限定されるものではない。スリット56は、複数配設された案内流路36どうしを結んだ直線に対して水平方向に横切る配置であればよい。
【0045】
また、本実施形態においてはノズルコア30の突起部38が先噴板50の絞り部54に嵌合する形態について説明しているがこの形態に限定されるものではない。突起部38は絞り部54に進入して絞り部54の基端部側に当接することができればよく、突起部38を絞り部54に嵌合させずにバッファ空間39を形成する形態を採用することもできる。
【0046】
また、本体部11の外周面に第1リブ12および第2リブ13を配設した形態について説明しているが、本体部11に十分な機械的強度がある場合には第1リブ12および第2リブ13の少なくとも一方の配設を省略することもできる。
【0047】
また、本実施形態における導入路14Cは、導入路14Cの軸線が導入路連通空間17Aの周方向に均等間隔をあけた2箇所において導入路連通空間17Aの流体の流れ方向に対して直交方向に形成された形態について説明しているが、この形態に限定されるものではない。2箇所の導入路14Cを導入路連通空間17Aの外周面に対する接線上に配設することもできる。
【0048】
さらに導入路14Cは、小径部14Bの外表面における開口部の高さと導入路連通空間17Aにおける開口部である連通部14Fの高さが同一であるが、導入路14Cはベース部14内において水平方向に形成されていなくてもよい。また、導入路連通空間17Aの流体の流れ方向に対して導入路14Cを傾斜させた状態(非直交状態)で連通させるように導入路14Cのベース部14内における高さ位置を導入路14Cの延長方向において異ならせた形態を採用することもできる。さらにはそれぞれの導入路14Cの連通部14Fの高さ位置を異ならせた形態を採用することもできる。これにより空気導入部17に取り込ませる外部空気が渦巻き状になり、下流側に位置する混合室19における液体と外部空気との混合を促進させることができる点において好都合である。
【0049】
また、本実施形態におけるノズルコア30には先噴板50の絞り部54に進入する突起部38が形成された形態について説明しているがこの形態に限定されるものではない。
図14に示すように先噴板50の基部52に貫通孔からなる突起部進入部52Aを形成し、ノズルコア30には突起部進入部52Aに進入可能な突起部38を形成した形態を採用することもできる。この場合におけるバッファ空間39は、ノズルコア30の円板32と先噴板50の絞り部54により囲まれた空間で形成される。さらに
図14に示す貫通孔からなる突起部進入部52Aを凹状部からなる突起部進入部52Aに変更した形態を採用することもできる。
【0050】
また、本実施形態においては、単頭式の噴霧ノズル100について説明しているが、薬液散布車の多頭式ノズルのそれぞれに本発明にかかる噴霧ノズル100を適用することもできる。
【0051】
また、以上に説明した実施形態における各種変形例どうしを適宜組み合わせた構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 ノズルホルダ,
11 本体部,12 第1リブ,13 第2リブ,
14 ベース部,14A フランジ部,14B 小径部,14C 導入路,
14D 連結部,14E ベース部内側空間,14F 連通部,
15 雄ねじ部,15A 雄ねじ部内空間,
16 位置決め用凸部,
17 空気導入部,17A 導入路連通空間,17B 縮径部,
18 流路,
19 混合室,19A 拡径流路,
20 オリフィス板,
21 円板部,22 起立噴射部,23 ピンホール,
30 ノズルコア,
32 円板,34 位置決め用凹部,36 案内流路,
38 突起部,38A 内側起立面,
39 バッファ空間,
40 Oリング(シール部材),
50 先噴板,
52 基部,52A 突起部進入部,
54 絞り部,54A 立ち上がり部分,
56 スリット,58 薄肉部,
60 ノズルキャップ,
62 細径部,64 雌ねじ,
70 液体供給管,
72 接続端部,74 雄ねじ,
80 連結体,
82 雌ねじ部,84 凸部,86 上端部,
100 噴霧ノズル,
L1 第1直線,L2 第2直線