(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141923
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】眼疾患を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220921BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220921BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220921BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220921BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P27/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P9/00
A61K9/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119423
(22)【出願日】2022-07-27
(62)【分割の表示】P 2020138531の分割
【原出願日】2015-11-06
(31)【優先権主張番号】62/076,770
(32)【優先日】2014-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/088,061
(32)【優先日】2014-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】サルスティグ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】スケミッド,ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】ゲキエバ,マルガリータ
(72)【発明者】
【氏名】ウォーバートン,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ウェルチセルベルガー,アンドレアス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】眼内新生血管障害を有する患者の処置負担を軽減する、処置方法を提供する。
【解決手段】a)4週間の間隔でVEGFアンタゴニストの3回の個別の用量を前記哺乳動物に投与すること、b)12週目に、最高矯正視力(BCVA)、視力(VA)、中心窩亜領域厚(CSFT)および網膜内の嚢胞/液体の存在に関して前記哺乳動物を評価すること、c)16週目に、BCVA、VA、CSFT、および網膜内の嚢胞/液体の存在に関して前記哺乳動物を評価すること、ならびにd)設定した基準が満たされる場合には8週間毎に1回(q8レジメン)、設定した基準が満たされない場合には12週間毎に1回(q12レジメン)、前記VEGFアンタゴニストの追加用量を前記哺乳動物に投与する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)を処置する方法であって、
a)4週間の間隔でVEGFアンタゴニストの3回の個別の用量を前記哺乳動物に投与
すること、
b)12週目に、最高矯正視力(BCVA)、視力(VA)、中心窩亜領域厚(CSF
T)および網膜内の嚢胞/液体の存在に関して前記哺乳動物を評価すること、
c)16週目に、BCVA、VA、CSFT、および網膜内の嚢胞/液体の存在に関し
て前記哺乳動物を評価すること、ならびに
d)下記の基準が満たされる場合には8週間毎に1回(q8レジメン)、下記の基準が
満たされない場合には12週間毎に1回(q12レジメン)、前記VEGFアンタゴニス
トの追加用量を前記哺乳動物に投与すること:
a)ベースラインと比較して16週目での、nAMD疾患活動性に起因する≧5文字
のBCVAの低下、
b)12週目と比較して16週目での、nAMD疾患活動性に起因する≧5文字のB
CVAの低下、
c)12週目と比較して16週目での≧3文字のVA低下および≧75μmのCSF
T増加、ならびに
d)12週目と比較して16週目での新たなまたは悪化している網膜内嚢胞(IRC
)/網膜内液(IRF)
を含む、方法。
【請求項2】
BCVAに関して、20週目、32週目および44週目に、q12レジメンのために選
択された哺乳動物を評価すること、ならびに、更なる評価の後に、12週目と比較してn
AMD疾患活動性に起因してBCVAが≧5文字である場合に、q8レジメンのために選
択された哺乳動物に投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
BCVAおよび網膜内の嚢胞/液体(IRC/IRF)の存在に関して、20週目、3
2週目および48週目に、q8レジメンのために選択された哺乳動物を評価すること、な
らびに、48週目の評価の後に、32週目と比較して48週目にnAMD疾患活動性に起
因して≧5文字のBCVAの低下が起こらない場合に、および32週目と比較して48週
目に新たなまたは悪化しているIRC/IRFがない場合に、12週間毎に前記VEGF
アンタゴニストの追加用量を前記哺乳動物に投与することを更に含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項4】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗VEGF抗体が配列番号3の配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記VEGFアンタゴニストが硝子体内注射で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
新生血管AMD(nAMD)を処置する方法であって、4週間の間隔でVEGFアンタ
ゴニストの3回の個別の用量を哺乳動物に投与すること、その後、最初の個別の用量の投
与から12週目、16週目、20週目、32週目および44週目に評価された予め定義さ
れた視覚的基準および解剖学的基準を使用する疾患活動性評価の結果に応じて、12週間
毎(q12)および/または8週間毎(q8)に追加用量を投与することを含む、方法。
【請求項9】
48週目、56週目、68週目および80週目に追加評価が行なわれる、請求項8に記
載の方法。
【請求項10】
前記疾患活動性評価が、BCVA、VA、中心窩亜領域厚(CSFT)および/または
網膜内の嚢胞/液体(IRC/IRF)の存在を評価すること含む、請求項8に記載の方
法。
【請求項11】
前記哺乳動物が、下記の基準が満たされる場合には8週間毎(q8)に処置され、下記
の基準が満たされない場合には12週間毎(q12)に処置される、請求項10に記載の
方法:
a)ベースラインと比較して16週目での、新生血管AMD(nAMD)疾患活動性
に起因する≧5文字のBCVAの低下、
b)1週目と比較して16週目での、nAMD疾患活動性に起因する≧5文字のBC
VAの低下、
c)12週目と比較して16週目での≧3文字のVA低下および≧75μmのCSF
T増加、ならびに
d)12週目と比較して16週目での新たなまたは悪化している網膜内嚢胞(IRC
)/網膜内液(IRF)。
【請求項12】
BCVAに関して、20週目、32週目および44週目に、q12レジメンのために選
択された哺乳動物を評価すること、ならびに、更なる評価の後に、12週目と比較してn
AMD疾患活動性に起因してBCVAが≧5文字である場合に、q8レジメンのために選
択された哺乳動物に投与することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
BCVAおよび網膜内の嚢胞/液体(IRC/IRF)の存在に関して、20週目、3
2週目および48週目に、q8レジメンのために選択された哺乳動物を評価すること、な
らびに、48週目の評価の後に、32週目と比較して48週目にnAMD疾患活動性に起
因して≧5文字のBCVAの低下が起こらない場合に、および32週目と比較して48週
目に新たなまたは悪化しているIRC/IRFがない場合に、12週間毎に前記VEGF
アンタゴニストの追加用量を前記哺乳動物に投与することを更に含む、請求項11に記載
の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物がヒトである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記抗VEGF抗体が配列番号3の配列を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記VEGFアンタゴニストが硝子体内注射で投与される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年11月7日に出願された米国仮出願第62/076,770号お
よび2014年12月5日に出願された米国仮出願第62/088,061号に対する優
先権を主張し、これらの開示は参照により本明細書に具体的に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、VEGFアンタゴニストで眼疾患を処置する方法に関する。具体的には、本
発明は、現在認可されている処置レジメンと比べて低い頻度の投与で眼新生血管疾患(oc
ular neovascular disease)を処置することに関する。8週間または12週間の投与レジ
メンにてVEGFアンタゴニストで処置することができる患者を同定する方法であって、
この患者は、4週間の間隔で投与される3回の個別の用量の負荷段階(loading phase)
を受けている、方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
加齢黄斑変性症(AMD)は、北米、欧州および豪州での65歳超の個体の10%~1
3%に影響を及ぼしている、人々の重度の視力喪失の主因である(Kawasaki 2010, Rein
et al., Arch Ophthalmol. 2009;127:533-40, Smith 2001)。この疾患の発病において、
遺伝的、環境的および健康的な要因が重要な役割を果たす。
【0004】
AMDは、下記の2種の臨床亜型:非新生血管(萎縮)型または乾燥型、および新生血
管(滲出)型または湿潤型に分類される(Ferris et al., Arch Ophthalmol. 1984;102:1
640-2、Lim et al., Lancet. 2012;379:1728-38、Miller et al., Am J Ophthalmol. 201
3;155:1-35)。新生血管AMD(neovascular AMD)(nAMD)は、脈絡膜新生血管(
CNV)と呼ばれる、下脈絡膜からのRPE下でのまたは網膜下腔下での異常な新規血管
の成長(新生血管形成)を特徴とする(Ferris et al., Arch Ophthalmol. 1984;102:164
0-2)。この新たに形成された血管は、血液および血清を漏出させる可能性が高く、炎症
および瘢痕組織形成を刺激することにより網膜に損傷を与える。この網膜への損傷により
、進行性の、重度のおよび不可逆的な視力喪失が起こる(Shah et al., Am J Ophthalmol
. 2007;143:83-89、Shah et al., Am J Ophthalmol. 2009;116:1901-07)。処置を施さな
いと、ほとんどの罹患した眼は12カ月以内に中心視野が悪化する(20/200)と予
想される(TAP2003)。この疾患の新生血管型は全AMD症例の約10%に存在す
るにすぎないが、抗血管内皮増殖因子(VEGF)処置の導入前には、AMDに由来する
重度の視力喪失の約90%を占めていた(Ferris et al., Am J Ophthalmol. 1983;118:1
32-51、Sommer et al., N Engl J Med. 1991;14:1412-17、Wong et al., Ophthalmology.
2008;115:116-26)。
【0005】
VEGFはnAMDを有する患者では上昇することが分かっており、新生血管形成プロ
セスにおいて重要な役割を果たすと考えられる(Spilsbury et al., Am J Pathol. 2000;
157:135-44)。VEGFを標的とする硝子体内(IVT)薬物療法の使用により、nAM
Dを有する患者において視覚転帰が有意に改善されている(Bloch et al., Am J Ophthal
mol. 2012;153:209-13、Campbell et al., Arch Ophthalmol. 2012;130:794-5)。ラニビ
ズマブ(LUCENTIS(登録商標))およびアフリバーセプト(EYLEA(登録商
標))等の抗VEGF処置は、VEGFシグナル伝達経路を阻害し、新生血管病変の成長
を停止させることおよび網膜浮腫を消散させることが分かっている。
【0006】
ラニビズマブの2つの第3相試験では、毎月の投与レジメンにより、ラニビズマブで処
置された対象の約95%が視力の安定化(15ETDRS文字未満の喪失と定義される)
を経験した、または12カ月目に視力の改善を経験したが、コントロール群では62%お
よび64%であった(Rosenfeld et al., N Engl J Med. 2006;355:1419-31、Brown et a
l., N Engl J Med. 2006;355:1432-44)。ラニビズマブ群の対象の25~40%が12カ
月目に≧15文字を得たが、2つのコントロール群では5~6%であった。平均して、ラ
ニビズマブで処置された対象は12カ月後に7~11文字の視力(vision)を得たが、コ
ントロール対象は、平均して約10文字を喪失した。この視力(visual acuity)の上昇
は両方の第3相試験の2年目の間中において本質的に維持されたが、コントロール群にお
いて視力は平均して低下し続けた。nAMDの進行の減速よりもむしろnAMDの停止を
示す、この視力の利点は、病変解剖所見による同様の効果および転帰を報告する対象によ
って支持された。後者は、National Eye Institute Visua
l Functioning Questionnaire-25(VFQ-25)によ
り測定された場合に、近位活動性、遠位活動性および視力に特定の依存性(vision speci
fic dependency)での統計的におよび臨床的に有意義な改善を示した。
【0007】
アフリバーセプトの2種の並列第3相試験では、処置を受けてない(treatment naive
)、nAMDを有する対象が、2種の用量(dose)(0.5mgおよび2.0mg)なら
びに2種のレジメン(2.0mgで4週間毎および8週間毎)またはコントロール群(4
週間毎にラニビズマブ0.5mg)に無作為化された。52週目に、用量およびレジメン
とは無関係に、全てのアフリバーセプト群はラニビズマブ群に対して非劣勢であり、眼の
95%において視力が同等に維持された(Heier et al., Ophthalmology. 2012;119:2537
-48)。平均して8.7文字改善されたコントロール群と比較して、4週間毎に2mgの
アフリバーセプトの群ではBCVAが平均して9.3文字改善され、8週間毎に2mgの
アフリバーセプトの群では8.4文字改善された。この試験の2年目では、対象を、上限
を定めた臨機応変な(PRN)レジメン(capped pro-re-nata (PRN) regimen)に切り替
えた。BCVAを維持する対象の割合は全ての群で91%~92%の範囲であった。平均
BCVA改善は、7.9(4週間毎にラニビズマブ0.5mg)、7.6(4週間毎にお
よび8週間毎にアフリバーセプト2mg)~6.6(アフリバーセプト0.5mg)の範
囲であった。全ての群で、固定レジメンから上限を定めたPRNレジメンへと切り替えた
後に、平均して0.8~1.7文字の低下が見られた。上限を定めたPRNの年の間中、
再処置の頻度はアフリバーセプトの群とラニビズマブの群との間で類似しており、4週間
毎にアフリバーセプト2mgの群の場合には4.1回の注射であり、8週間毎にアフリバ
ーセプト2mgの群の場合には4.2回の注射であり、4週間毎にラニビズマブア0.5
mgの群の場合には4.7回の注射であった(Schmidt-Erfurth et al., Br J Ophthalmo
l 2014;98:1144-1167 2014;98:1144-1167)。
【0008】
毎月の処置または2カ月毎の処置は、一般に高齢の患者だけでなく、この患者の介護者
および医師にとってもかなりの負担となる。また、この処置は肯定的なベネフィット/リ
スク比を有することが証明されているが、リスクがないわけではない。各注射には、疼痛
、結膜下出血、硝子体出血、網膜裂孔、網膜剥離、医原性の白内障および眼内炎の可能性
があり(Ohr et al., Expert Opin. Pharmacother. 2012;13:585-591)、抗VEGF剤の
連続注射により眼内圧(IOP)が持続的に上昇する可能性もある(Tseng et al., J Gl
aucoma. 2012;21:241-47)。加えて、毎月のIVT注射によっても、患者の60~70%
が15文字未満の視力になる。明らかに、現在入手可能な製品と比較して、より多くの患
者での視力のより大きな上昇を達成するおよび/または長期の治療効果を有する製品を開
発する医学的必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
発明の要旨
本発明は、眼疾患(具体的には眼新生血管疾患)を処置するために治療用VEGFアン
タゴニストを投与する改善された方法を提供する。ある特定の態様では、本発明は、眼新
生血管疾患を処置する方法であって、4週間の間隔で(即ち1カ月に1回で)VEGFア
ンタゴニストの3回の個別の用量(three individual dose)を哺乳動物に投与すること
、その後、予め定義された視覚的基準および解剖学的基準を使用する疾患活動性評価の結
果に応じて、12週間毎(q12)および/または8週間毎(q8)に追加用量を投与す
ることを含む、方法を提供する。
【0010】
ある特定の態様では、本発明の方法で使用するVEGFアンタゴニストは、抗VEGF
抗体である。特定の態様では、この抗VEGF抗体は、一本鎖抗体(scFv)またはF
ab断片である。具体的には、この抗VEGF抗体はRTH258である。
【0011】
本発明の特定の好ましい実施形態は、ある特定の好ましい実施形態に関する下記のより
詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、RTH258によりnAMDを処置するための投与スケジュール(dosing schedule)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
定義
下記の定義および説明は、下記の実施例において明確に疑義なく変更されない限り、ま
たは意味を適用することで任意の解釈が無意味にまたは本質的に無意味になる場合を除き
、あらゆる将来的な解釈を制御することを意味し、意図するものである。用語の解釈がこ
の用語を無意味にまたは本質的に無意味にする場合、定義は、Webster's Dictionary, 3r
d Editionまたは当業者公知の辞書(例えばOxford Dictionary of Biochemistry and Mol
ecular Biology (Ed. Anthony Smith, Oxford University Press, Oxford, 2004))に基
づいてなされるものとする。
【0014】
本明細書で使用する場合、別途規定しない限り、パーセンテージは全て重量パーセンテ
ージである。
【0015】
本明細書で使用する場合および別途指示しない限り、用語「1つの(a)」および「1
つの(an)」は、「1つの」、「少なくとも1つの」または「1つもしくは複数」を意
味する。別途文脈により必要とされない限り、本明細書で使用する単数の用語は複数を含
むものとし、複数の用語は単数を含むものとする。
【0016】
本明細書全体を通して引用されるあらゆる特許、特許出願および参考文献の内容は、そ
の全体が参照により本明細書に援用される。
【0017】
用語「VEGF」は、Leung et al., Science 246:1306 (1989)およびHouck et al., M
ol. Endocrin. 5:1806 (1991)により説明されているように、165アミノ酸の血管内皮
細胞増殖因子ならびに関連する121、189および206アミノ酸の血管内皮細胞増殖
因子を意味し、これらの増殖因子の天然に存在するアレル形態およびプロセシング形態も
意味する。
【0018】
用語「VEGF受容体」または「VEGFr」は、通常は血管内皮細胞上で見出される
細胞表面受容体であるVEGF用の細胞受容体と、この細胞受容体の、hVEGFに結合
する能力を保持するバリアントとを意味する。VEGF受容体の一例は、チロシンキナー
ゼファミリの膜貫通受容体であるfms様チロシンキナーゼ(flt)である。DeVries
et al., Science 255:989 (1992); Shibuya et al., Oncogene 5:519 (1990)。このfl
t受容体は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、およびチロシンキナーゼ活性を有する細
胞内ドメインを含む。この細胞外ドメインはVEGFの結合に関与し、この細胞内ドメイ
ンはシグナル伝達に関与する。VEGF受容体の別の例はflk-1受容体(KDRとも
称される)である。Matthews et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 88:9026 (1991)、Terman
et al., Oncogene 6:1677 (1991)、Terman et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 18
7:1579 (1992)。VEGFのflt受容体への結合により、205,000ダルトンおよ
び300,000ダルトンの見掛けの分子量を有する、少なくとも2種の高分子量複合体
が形成される。300,000ダルトンの複合体は、単一分子のVEGFに結合している
2個の受容体分子を含む二量体であると考えられる。
【0019】
本明細書で使用する場合、「VEGFアンタゴニスト」は、in vivoでVEGF
活性を低減させることができるまたは阻害することができる化合物を意味する。VEGF
アンタゴニストは、VEGF受容体に結合することができる、またはVEGFタンパク質
のVEGF受容体への結合を阻止することができる。VEGFアンタゴニストは、例えば
、1種もしくは複数種のVEGFタンパク質または1種もしくは複数種のVEGF受容体
に特異的に結合することができる小分子、抗VEGF抗体またはこの抗原結合断片、融合
タンパク質(例えばアフリバーセプト)、アプタマー、アンチセンス核酸分子、干渉RN
A、受容体タンパク質および同様なものであることができる。いくつかのVEGFアンタ
ゴニストが国際公開第2006/047325号パンフレットで説明されている。
【0020】
好ましい実施形態では、VEGFアンタゴニストは、抗VEGF抗体である。
【0021】
用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、全抗体および任意の抗原結合断片(即ち、
「抗原結合部分」、「抗原結合ペプチド」もしくは「イムノバインダー」)またはこれら
の一本鎖を含む。「抗体」は、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2本の
重(H)鎖および2本の軽(L)鎖またはこれらの抗原結合部分を含む糖タンパク質を含
む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと省略する)および重鎖定常領域で構成
されている。重鎖定常領域は3種のドメイン、即ちCH1、CH2およびCH3で構成さ
れている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略する)および軽鎖定常領域
で構成されている。軽鎖定常領域は1種のドメイン、即ちCLで構成されている。VH領
域およびVL領域を、より保存されておりフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が
点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変の領域に更に分類することができ
る。各VHおよびVLは、下記の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、
CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置されている3種のCDRおよ
び4種のFRで構成されている。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合
ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)お
よび古典的な補体系の第1の成分(Clq)等の宿主の組織または因子への免疫グロブリ
ンの結合を媒介することができる。
【0022】
抗体の用語「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)は、抗原(例えばVEGF)
に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1個または複数個の断片を意味する。抗体の
抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって行なわれ得ることが分かっている。抗体の用
語「抗原結合部分」に包含される結合断片の例として、(i)VLドメイン、VHドメイ
ン、CLドメインおよびCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片、(ii)
ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結されている2個のFab断片を含む二価の断片
であるF(ab’)2断片、(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd
断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、
(v)VHドメインからなる単一ドメインまたはdAb断片(Ward et al., (1989) Natu
re 341:544-546)、ならびに(vi)単離相補性決定領域(CDR)または(vii)合
成リンカーにより任意選択で連結され得る複数個の単離CDRの組合せが挙げられる。更
に、Fv断片の2個のドメインVLおよびVHは別々の遺伝子によりコードされているが
、これらのドメインを一本のタンパク質鎖として作ることができる合成リンカーにより、
組換え法を使用して、これらのドメインを連結させることができ、このタンパク質鎖では
、VL領域およびVH領域が対となって一価の分子を形成する(一本鎖Fv(scFv)
として知られている。例えばBird et al. (1988) Science 242:423-426およびHuston et
al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)。そのような一
本鎖抗体も抗体の用語「抗原結合部分」に包含されることが意図されている。これらの抗
体断片は当業者公知の従来の技術を使用して得られ、これらの断片は、インタクトな抗体
の場合と同様に有用性に関してスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技
術により、またはインタクトな免疫グロブリンの酵素もしくは化学的な切断により、生成
され得る。抗体は様々なアイソタイプであることができ、例えば、IgG(例えばIgG
1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプまたはIgG4サブタイプ)抗
体、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体またはIgM抗体であること
ができる。
【0023】
本明細書で使用する場合、「哺乳動物」は、哺乳動物と分類されるあらゆる動物を含み
、哺乳動物として、ヒト、飼育動物、家畜およびコンパニオンアニマル等が挙げられるが
これらに限定されない。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「対象」または「患者」はヒトおよび非ヒト哺乳動物を
意味しており、非ヒト動物として、霊長類、ウサギ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジお
よびウシが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、対象または患者はヒトであ
る。
【0025】
本発明の方法を使用して処置することができる「眼疾患」または「新生血管眼疾患」と
して、眼の新生血管形成を伴う状態、疾患または障害が挙げられ、これらの状態、疾患お
よび障害として、異常な血管新生、脈絡膜新生血管形成(CNV)、網膜血管透過、網膜
浮腫、糖尿病性網膜症(特に増殖糖尿病網膜症)、糖尿病黄斑浮腫、新生血管(滲出)加
齢黄斑変性症(AMD)、例えばnAMD(新生血管AMD)を伴うCNV、網膜虚血を
伴う続発症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)および後区新生血管形成が挙げられるがこ
れらに限定されない。
【0026】
処置レジメンの選択
本発明は、眼疾患をVEGFアンタゴニストで処置している患者を、8週間毎に処置し
得るか12週間毎に処置し得るかを決定する方法を提供する。
【0027】
本発明は、哺乳動物の眼新生血管疾患(例えば新生血管加齢黄斑変性症(nAMD))
を処置する方法であって、少なくとも2年にわたり、様々な間隔で哺乳動物にVEGFア
ンタゴニストの複数の用量(multiple doses)を投与することを含む、方法を提供する。
ある特定の実施形態では、これらの用量を、合計で3回の用量で4週間の間隔にて投与し
、その後、8週間の間隔、12週間の間隔または8週間の間隔と12週間の間隔との組合
せで追加用量を投与する。本発明は、8週間の間隔をいつ使用すべきかおよび12週間の
間隔をいつ使用すべきかを決定するための、疾患活動性評価に基づいて本発明者らによっ
て確立された特定の基準を提供する。本発明は更に、処置間隔を他の処置間隔へといつ切
り替えるべきかを決定する方法を提供する。例えば、(本明細書で説明する最初の3回の
用量負荷段階後に)12週間の間隔で用量を患者に投与すると選択する場合、本発明の方
法を使用して、患者に12週間の間隔レジメンを続けるべきか8週間の間隔レジメンに切
り替えるべきかを決定することができ、本発明の方法を使用して、患者に8週間の間隔レ
ジメンを続けるべきか12週間の間隔レジメンに切り替えるべきかを決定することができ
る。一部の場合では、患者は、しばらくの間は12週間の間隔レジメンであり、次いで8
週間の間隔へと切り替えられ、次いで12週間の間隔へと再度切り替えられる可能性があ
る。そのため、患者は、1種の間隔レジメンを続けなくてもよく、本明細書に記載する基
準に従った評価に応じて行き来することができる。
【0028】
一実施形態では、本発明は、眼疾患(具体的には眼新生血管疾患)を処置する方法であ
って、下記のスケジュール:
4週間の間隔(例えば0週、4週、8週)で投与する3回の用量の「負荷段階」、な
らびに
本明細書で更に説明する選択基準に応じる、8週(q8)および/または12週(q
12)の間隔での追加用量
に従って、それを必要とする哺乳動物にVEGFアンタゴニストを投与することを含む、
方法を提供する。
【0029】
ある特定の実施形態では、疾患活動性評価を、例えば、VEGFアンタゴニストの最初
の注射後の16週目、20週目、32週目および44週目に行って、処置の1年目の終わ
りまでに(48週)、4つの時点でq12の対象をq8処置へと再度割り当てることがで
きる。16週目でq8投与レジメンにより適した対象を早期決定することにより、後の時
点(20週目、32週目または44週目にも再割り当てが可能である)で再割り当てを必
要とするであろうq12対象のパーセンテージを最小限に抑えることができることが予想
される。PIERおよびEXCITEの研究からの分析により、負荷段階中のおよび負荷
段階直後の視覚的および解剖学的な応答が、処置の1年目の残りにわたって視力の結果と
関連することが示されている。EXCITE研究からの最近の分析により、初期負荷段階
中に視力が低下する対象は、q12処置と比べて頻繁な処置により、より良好な視覚的結
果を有することができることも示されている。CATTおよびEXCITEからの最近の
分析により、新たな網膜内の液体/嚢胞(intra-retinal fluid/cysts)、およびより小
さい程度のCSFT増加が視力低下に関連することが示されている。これらの動的基準は
、16週目の疾患活動性評価でのこれらの使用を支持する。
【0030】
一実施形態では、VEGFアンタゴニストの最初の3回の用量で処置した患者を、12
週目、16週目、20週目、32週目および44週目に評価して、この患者に更なる用量
を8週間の間隔で投与すべきか12週間の間隔で投与すべきかを決定する。
【0031】
別の実施形態では、VEGFアンタゴニストの最初の3回の用量で処置した患者を、4
8週目、56週目、68週目および80週目での処置の2年目に評価して、この患者に更
なる用量を8週間の間隔で投与すべきか12週間の間隔で投与すべきかを決定する。
【0032】
評価の週に、患者はその時点で8週間または12週間の間隔レジメンであることができ
る。そのため、この評価により、患者がその時点での間隔を続けるか他の間隔に切り替え
るかを決定することができる。
【0033】
本明細書で説明する評価として、最高矯正視力(best-corrected visual acuity)(B
CVA)、視力(VA)、SD/OCTにより測定する中心窩亜領域厚(central subfie
ld thickness)(CSFT)、および/または新たなもしくは悪化している網膜内嚢胞/
網膜内液(intraretinal cysts/intraretinal fluid)(IRC/IRF)の存在を決定
することが挙げられる。
【0034】
VA、BCVA、CSFTおよびIRC/IRFを決定する手段およびモニタリングす
る手段は、当業者に十分に理解されており一般に使用されている。例えば、ベースライン
から所望の時間までの(BCVA)の平均変化(mean change)である患者の文字の数の
変化を評価することにより、患者の視機能(visual performance)をモニタリングするこ
とができる。このベースラインは、例えば治療的処置の開始時のVAまたは処置の開始後
の特定の時点でのVAであることができる。
【0035】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、ベースラインから特定の時間(例えば12
週目から16週目)までのBCVAの平均変化を決定すること、および対象が、ベースラ
インと比較して、特定の時間(例えば12週目から16週目)での視力において、ある特
定の数未満の文字を失うかどうかを評価することを含む。
【0036】
ある特定の実施形態では、4週間の間隔で投与した最初の3回の用量の後に、患者を8
週間毎に処置すべきか12週間毎に処置すべきかを決定するための選択基準は、下記の通
りである:
0週~48週
満たされる場合、患者を、最大48週まで、8週間(q8)毎のVEGFアンタゴニス
トの注射に割り当てる。
16週目:
・ベースラインと比較して16週目での、新生血管AMD(nAMD)疾患活動性に
起因する≧5文字のBCVAの低下。
・12週目と比較して16週目での、nAMD疾患活動性に起因する≧5文字のBC
VAの低下。
・12週目と比較して16週目での≧3文字のVA低下および≧75μmのCSFT
増加。
・12週目と比較して16週目での新たなまたは悪化している網膜内嚢胞(IRC)
/網膜内液(IRF)。
20週目、32週目および44週目:
・12週目と比較してnAMD疾患活動性に起因する≧5文字のBCVAの低下。
【0037】
その他の実施形態では、本発明の方法は、下記の通りの処置の開始から48週後の追加
評価を含む:
48週~96週
16週目および20週目にq8処置に割り当てた患者が下記の基準のいずれかを満たさ
ない場合、処置の2年目に、この患者をq12処置レジメンへと再度割り当てる:
48週目:
・32週目と比較して48週目での、nAMD疾患活動性に起因する≧5文字のBC
VAの低下。
・32週目と比較して48週目での新たなまたは悪化しているIRC/IRF。
【0038】
q12処置レジメンでの処置の2年目に入っている対象は、下記の訪問時のいずれかで
下記の基準を満たさない限り、q12レジメンで維持される:
56週目、68週目および80週目:
・48週目と比較して、nAMD疾患活動性に起因する≧5文字のBCVAの低下。
【0039】
抗VEGF抗体
ある特定の実施形態では、本発明の方法で使用するVEGFアンタゴニストは抗VEG
F抗体であり、具体的には、国際公開第2009/155724号パンフレットで説明さ
れている抗VEGF抗体であり、このパンフレットの内容全体が参照により本明細書に援
用される。
【0040】
一実施形態では、本発明の抗VEGF抗体は、配列番号1に記載されている配列を有す
る可変重鎖と、配列番号2に記載されている配列を有する可変軽鎖とを含む。
【数1】
【0041】
別の実施形態では、本発明の方法で使用する抗VEGF抗体は、配列番号3に記載され
ている配列を含む。
【数2】
【0042】
好ましい実施形態では、本発明の方法で使用する抗VEGF抗体はRTH258(配列
番号3を含む)である。RTH258は、分子量が約26kDaであるVEGFのヒト化
一本鎖Fv(scFv)抗体断片インヒビターである。RTH258はVEGF-Aのイ
ンヒビターであり、VEGF-A分子の受容体結合部位に結合することにより作用し、そ
れにより、VEGF-Aの、内皮細胞の表面上にあるVEGF-Aの受容体VEGFR1
およびVEGFR2との相互作用を防止する。VEGF経路を介したシグナル伝達のレベ
ルの増加は、病的な眼の血管新生および網膜浮腫と関連している。VEGF経路の阻害に
より、nAMDを有する患者の新生血管病変の成長が阻害されることおよび網膜浮腫が消
散することが分かっている。
【0043】
医薬製剤
一態様では、本発明の方法は、抗VEGF抗体を含む医薬製剤の使用を含む。用語「医
薬製剤(pharmaceutical preparation)」は、抗体または抗体誘導体の生物学的活性を明
白に有効にする形態の製剤を意味しており、この製剤は、この製剤を投与する対象に対し
て毒性である追加成分を含まない。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)
は、用いる活性成分の有効用量を与えるために対象哺乳動物に適度に投与され得るもので
ある。
【0044】
「安定した」製剤は、この製剤中の抗体または抗体誘導体が、保存時に物理的安定性お
よび/または化学的安定性および/または生物学的活性を本質的に保持する製剤である。
タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技術が当分野で利用可能であり、例えば
Peptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee Ed., Marcel Dekker, Inc.
, New York, N.Y., Pubs. (1991)およびJones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29-90
(1993)で概説されている。選択した期間にわたり選択した温度で安定性を測定することが
できる。好ましくは、この製剤は、少なくとも1週間にわたり室温(約30℃)もしくは
40℃で安定している、および/または少なくとも3カ月~2年にわたり約2~8℃で安
定している。更に、この製剤は好ましくは、この製剤の(例えば-70℃への)凍結およ
び解凍の後に安定している。
【0045】
抗体または抗体誘導体は、色および/もしくは透明性の目視検査時に、またはUV光散
乱もしくはサイズ排除クロマトグラフィーもしくはその他の適切な当分野で認められてい
る方法により測定した場合に、医薬製剤が、凝集、分解、沈殿および/または変性に関し
て規定されたリリース規格を満たす場合に、この医薬製剤中で「物理的安定性を保持する
」。
【0046】
抗体または抗体誘導体は、所与の時間での化学的安定性が、タンパク質が下記で定義す
る生物学的活性を保持したままであると考えられるようなものである場合、医薬製剤中で
「化学的安定性を保持する」。化学的に改変された形態のタンパク質を検出することによ
りおよび定量化することにより、化学的安定性を評価することができる。化学的改変とし
て、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGEおよび/またはマトリック
ス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間質量分析(MALDI/TOF MS)を使用し
て評価することができるサイズ変更(例えばクリッピング)を挙げることができる。その
他のタイプの化学的改変として、例えばイオン交換クロマトグラフィーにより評価するこ
とができる電荷変化(例えば脱アミド化の結果として起こる)が挙げられる。
【0047】
抗体または抗体誘導体は、例えば抗原結合アッセイで測定した場合に、所与の時間での
抗体の生物学的活性が、医薬製剤を調製した時点で示される生物学的活性の約10%内(
アッセイの誤差内)である場合に、この医薬製剤中で「生物学的活性を保持する」。抗体
用のその他の「生物学的活性」アッセイを、本明細書において下記で詳述する。
【0048】
「等張」は、目的の製剤がヒト血液と同じ浸透圧を本質的に有することを意味する。等
張製剤は、約250~350mOsmの浸透圧を通常は有することができる。例えば蒸気
圧型のまたは氷凍結(ice-freezing)型の浸透圧計を使用して等張性を測定することがで
きる。
【0049】
「ポリオール」は複数のヒドロキシル基を有する物質であり、糖(還元糖および非還元
糖)、糖アルコールおよび糖酸を含む。本明細書において好ましいポリオールは分子量が
約600kDa未満である(例えば、約120~約400kDの範囲である)。「還元糖
」は、金属イオンを還元することができるまたはタンパク質中のリシン基およびその他の
アミノ基と共有結合的に反応することができるヘミアセタール基を含むものであり、「非
還元糖」は、還元糖のこれらの特性を有しないものである。還元糖の例は、フルクトース
、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノ
ース、ガラクトースおよびグルコースである。非還元糖として、スクロース、トレハロー
ス、ソルボース、メレジトースおよびラフィノースが挙げられる。糖アルコールの例は、
マンニトール、キシリトール、エリスリトール、トレイトール、ソルビトールおよびグリ
セロールである。糖酸として、これらのL-グルコネートおよび金属塩が挙げられる。製
剤が凍結融解安定性であることが望ましい場合、ポリオールは、凍結温度(例えば-20
℃)で結晶化して製剤中の抗体を不安定にしないものが好ましい。本明細書では、非還元
糖(例えばスクロースおよびトレハロース)が好ましいポリオールであり、トレハロース
の優れた溶液安定性のためにトレハロースがスクロールよりも好ましい。
【0050】
本明細書で使用する場合、「緩衝液」は、酸-塩基共役成分の作用によるpHの変化に
抵抗する緩衝溶液を意味する。本発明の緩衝液はpHが約4.5~約8.0の範囲であり
、好ましくは約5.5~約7である。pHをこの範囲内で調節することができる緩衝液の
例として、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えばコハク酸ナトリウム)
、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩およびその他の有機酸の緩衝液が挙げられる。
凍結融解安定製剤が望ましい場合、この緩衝液は好ましくはリン酸塩ではない。
【0051】
薬学的意味において、本発明の文脈では、抗体または抗体誘導体の「治療上有効な量」
は、抗体または抗体誘導体が有効である処置に関して障害の予防または処置で有効な量を
意味する。「疾患/障害」とは、抗体または抗体誘導体による処置から利益を得るであろ
うあらゆる状態のことである。これには、哺乳動物を問題の障害にかかりやすくする病的
状態等の慢性のおよび急性の障害または疾患が含まれる。
【0052】
「防腐剤」とは、製剤中で細菌の活動を本質的に低減させ、それにより例えば多用途の
製剤の製造を容易にするために製剤中に含まれ得る化合物のことである。潜在的な防腐剤
の例として、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、
塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルア
ンモニウムの混合物)および塩化ベンゼトニウムが挙げられる。その他の種類の防腐剤と
して、芳香族アルコール、例えばフェノールアルコール、ブチルアルコールおよびベンジ
ルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベン、カテ
コール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノールならびにm-クレゾー
ルが挙げられる。本明細書において最も好ましい防腐剤はベンジルアルコールである。
【0053】
本発明で使用する医薬組成物は、VEGFアンタゴニスト(好ましくは抗VEGF抗体
)を、少なくとも1種の生理学的に許容される担体または賦形剤と一緒に含む。医薬組成
物は、例えば水、緩衝液(例えば中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)、エ
タノール、鉱油、植物油、ジメチルスルホキシド、炭水化物(例えばグルコース、マンノ
ース、スクロースもしくはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、アジュバント、
ポリペプチドまたはグリシン等のアミノ酸、抗酸化剤、EDTAもしくはグルタチオン等
のキレート剤および/または防腐剤の内の1種または複数種を含むことができる。上記し
たように、本明細書で提供する医薬組成物にその他の活性成分が含まれてもよいが必ずし
も含まれる必要はない。
【0054】
担体とは、多くの場合は化合物の安定性または生物学的利用能を制御する目的で、患者
への投与前に抗体または抗体誘導体に関連し得る物質のことである。そのような製剤内で
の使用を目的とする担体は通常、生体適合性を有し、生分解性も有することができる。担
体として、例えば一価分子または多価分子、例えば血清アルブミン(例えばヒトまたはウ
シ)、卵アルブミン、ペプチド、ポリリシン、および多糖、例えばアミノデキストラン、
およびポリアミドアミンが挙げられる。担体として、例えばポリラクテート ポリグリコ
レート、ポリ(ラクチド-コ-グリコシド)、ポリアクリレート、ラテックス、デンプン
、セルロースまたはデキストランを含む固体支持体(例えばビーズおよびマイクロ粒子)
も挙げられる。担体は様々な方法で化合物を担持することができ、この方法として、(直
接的なまたはリンカー基を介した)共有結合、非共有結合的な相互作用または混合が挙げ
られる。
【0055】
医薬組成物を、あらゆる適切な投与方式(例えば局所投与、眼内投与、経口投与、経鼻
投与、直腸投与または非経口投与)用に製剤化することができる。ある特定の実施形態で
は、硝子体内注射等の眼内注射に適した形態の組成物が好ましい。その他の形態として、
例えば丸剤、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性の懸濁液、分散性の粉末もし
くは顆粒、乳濁液、硬質もしくは軟質のカプセル、またはシロップもしくはエリキシル剤
が挙げられる。更にその他の実施形態では、本明細書で提供する組成物を凍結乾燥物とし
て製剤化することができる。用語非経口は、本明細書で使用する場合、皮下注射、皮内注
射、血管内(例えば静脈内)注射、筋肉内注射、脊髄注射、頭蓋内注射、髄腔内注射およ
び腹腔内注射を含み、あらゆる類似の注射技術または注入技術も含む。
【0056】
本医薬組成物を、活性薬剤(即ちVEGFアンタゴニスト)が、使用するビヒクルおよ
び濃度に応じてビヒクル中に懸濁されているまたは溶解している、無菌注射用の水性また
は油性の懸濁液として調製することができる。そのような組成物を、上述したもの等の適
切な分散剤、湿潤剤および/または懸濁化剤を使用して公知の技術に従って製剤化するこ
とができる。採用され得る許容されるビヒクルおよび溶媒として、水、1,3-ブタンジ
オール、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。加えて、無菌の固定油
を溶媒または懸濁媒体として採用することができる。この目的のために、あらゆる無菌の
固定油(例えば合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリド)を採用することができる。
加えて、オレイン酸等の脂肪酸を注射用組成物の調製で使用することができ、アジュバン
ト、例えば局所麻酔薬、防腐剤および/または緩衝剤をビヒクルに溶解させることができ
る。
【0057】
投与量(dosage)
本発明の方法で使用する用量は、処置する具体的な疾患または状態に基づく。用語「治
療上有効な用量」を、所望の効果を達成するのにまたは少なくとも部分的に達成するのに
十分な量と定義する。疾患に関連する症状または状態の漸進的変化さえ生じさせることが
できれば、治療上有効な用量で十分である。治療上有効な用量は、疾患を完全に治癒する
必要はない、または症状を完全に除去する必要はない。好ましくは、治療上有効な用量は
、既に疾患に罹患している患者の疾患およびこの疾患の合併症を少なくとも部分的に抑止
することができる。この使用に有効な量は、処置する障害の重症度および患者自身の免疫
系の全身状態によって決まると予想される。
【0058】
疾患または状態の処置において通常の技能を有する医師が公知の投与量調整技術を使用
することにより、用量(dose amount)を容易に決定することができる。例えば所望の用
量体積および投与様式を考慮して、本発明の方法で使用するVEGFアンタゴニストの治
療上有効な量を決定する。典型的には、治療上有効な組成物を、1回の用量当たり0.0
01mg/ml~約200mg/mlの範囲の投与量で投与する。好ましくは、本発明の
方法で使用する投与量は、約60mg/ml~約120mg/ml(即ち、約60、70
、80、90、100、110または120mg/ml)である。好ましい実施形態では
、本発明の方法で使用する抗VEGF抗体の投与量は、60mg/mlまたは120mg
/mlである。
【0059】
本発明の方法で使用する抗VEGF抗体の水性製剤(aqueous formulation)はpH緩
衝溶液中で調製されている。好ましくは、そのような水性製剤の緩衝液は、pHが約4.
5~約8.0の範囲であり、好ましくは約5.5~約7.0の範囲であり、最も好ましく
は約6.75である。pHをこの範囲内で制御することができる緩衝液の例として、酢酸
塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えばコハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩
、ヒスチジン、クエン酸塩およびその他の有機酸の緩衝液が挙げられる。この緩衝液の濃
度は、例えば緩衝液に応じて、およびこの製剤の所望の等張性に応じて、約1mM~約5
0mMであることができ、好ましくは約5mM~約30mMであることができる。
【0060】
等張化剤(tonicifier)として機能するポリオールを使用して、水性製剤中で抗体を安
定化させることができる。好ましい実施形態では、このポリオールは非還元糖であり、例
えばスクロースまたはトレハロースである。必要に応じて、このポリオールを、製剤の所
望の等張性に対して変化し得る量で製剤に添加する。好ましくは、水性製剤は等張であり
、この場合、製剤中でのポリオールの適切な濃度は例えば約1重量/体積%~約15重量
/体積%の範囲であり、好ましくは約2重量/体積%~約10重量/体積%の範囲である
。しかしながら、高張性製剤または低張性製剤が適切である場合もある。添加するポリオ
ールの量を、ポリオールの分子量に対して変更することもできる。例えば、二糖(例えば
トレハロース)と比較して少量の単糖(例えばマンニトール)を添加することができる。
【0061】
水性抗体製剤に界面活性剤も添加されている。代表的な界面活性剤として、非イオン性
界面活性剤、例えばポリソルベート(例えばポリソルベート20、80等)またはポロク
サマー(例えばポロクサマー188)が挙げられる。添加されている界面活性剤の量は、
製剤化されている抗体/抗体誘導体の凝集を低減するような、および/または製剤中での
粒子の形成を最小限に抑えるような、および/または吸着を低減するような量である。例
えば、この界面活性剤は、約0.001%~約0.5%の量で、好ましくは約0.005
%~約0.2%の量で、最も好ましくは約0.01%~約0.1%の量で、製剤中に存在
することができる。
【0062】
一実施形態では、本発明の方法で使用する水性抗体製剤は、1種または複数種の防腐剤
、例えばベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノールおよびベ
ンゼトニウムClを本質的には含まない。別の実施形態では、特に製剤が複数回用量製剤
である場合、この製剤中に防腐剤が含まれてもよい。防腐剤の濃度は約0.1%~約2%
の範囲であることができ、最も好ましくは約0.5%~約1%の範囲であることができる
。1種または複数種のその他の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤、例えばRe
mington's Pharmaceutical Sciences 21st edition, Osol, A. Ed. (2006)で説明されて
いるものを、製剤の所望の特性に悪影響を及ぼさないという条件で、この製剤に含めるこ
とができる。許容される担体、賦形剤または安定剤は、用いる用量および濃度でレシピエ
ントに対して無毒であり、これらとして、追加の緩衝剤、共溶媒、抗酸化剤、例えばアス
コルビン酸およびメチオニン、キレート剤、例えばEDTA、金属錯体(例えばZn-タ
ンパク質錯体)、生分解性ポリマー、例えばポリエステルおよび/または塩形成対イオン
、例えばナトリウムが挙げられる。
【0063】
in vivoでの投与に使用する製剤は無菌でなければならない。このことは、製剤
の調製前にまたは調製後に無菌ろ過膜に通すろ過により容易に達成される。
【0064】
一実施形態では、眼内送達のための公知の方法に従って、処置を必要とする哺乳動物の
眼にVEGFアンタゴニストを投与する。好ましくは、この哺乳動物はヒトであり、VE
GFアンタゴニストは抗VEGF抗体であり、この抗体を眼に直接投与する。患者への投
与は、例えば硝子体内注射により達成することができる。
【0065】
本発明の方法では、VEGFアンタゴニストを、唯一の処置として、または問題の状態
の処置で有用なその他の薬剤もしくは治療と組み合わせて、投与することができる。
【0066】
硝子体内注射用のRTH258の好ましい製剤を下記の表に示す。RTH258の好ま
しい濃度は6mg/50μLおよび3mg/50μLである。
【0067】
【0068】
下記の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。下記の実施例
で開示される技術は、本発明の実施において良好に機能するように本発明者によって発見
された技術を表し、そのため、本発明の実施の好ましい様式を構成すると考えられ得るこ
とを当業者は認識すべきである。しかしながら、本開示を考慮して、本発明の趣旨および
範囲から逸脱することなく、開示されている特定の実施形態で多くの変更を行なうことが
でき、これらの変更により同様のまたは類似の結果を依然として得ることができることを
当業者は認識すべきである。
【0069】
下記の実施例は、2年間の処置期間にわたる本発明の好ましい方法を表す。しかしなが
ら、下記の変更は本発明の範囲内であり、ある特定の変更およびその他の好ましい実施形
態が本明細書で説明されていることを理解すべきである。更に、この処置期間は2年超で
あってもよく、医師の裁量でまたは2年の期間に関して説明されているのと同じスケジュ
ールで評価を行なうことができる(即ち、3年目の開始は0週と考えられ、3年0週から
数えて数週目に評価を行なう)ことを理解すべきである。
【実施例0070】
AMDに起因する未処置の活性CNVを有する対象の2つの処置群に、RTH258を
複数回注射する。下記の訪問のいずれかで0週~48週にわたり対象が下記に記載する基
準のいずれかを満たさない限り、1年目(48週)の間に、最初に4週間の間隔で3回(
0日目、4週目および8週目)注射して、続いて12週間毎(q12)に(硝子体内)注
射して、一方の群に3mg/50μLを投与して他方の群にRTH258 6mg/50
μLを投与する。この基準が満たされる場合、対象を、最大48週まで、8週間(q8)
毎の注射に割り当てる。16週目から、対象が積極的に注射されていない訪問時に、偽注
射を行なう。偽注射のために、注射シリンジの先端(針が付いていないハブ)を使用する
。全ての用量を50μL(0.05mL)で送達する。
【0071】
注射/偽の前に、注射/偽の直後(0~5分)に、および各注射/偽から30(±15
)分後に研究用眼を評価し、手順および/または研究用薬物療法(study medication)が
眼の健康に危険を及ぼさないことを確認する。
【0072】
全ての対象の研究用眼の評価を、6回目の訪問/16週目、7回目の訪問/20週目、
10回目の訪問/32週目、13回目の訪問/44週目、16回目の訪問/56週目、1
9回目の訪問/68週目および22回目の訪問/80週目に行なう。下記で具体的に概説
する基準で定義するように、新たなまたは悪化している疾患活動性を対象が示す場合、こ
の対象を8q処置レジメンに再度割り当てる。
【0073】
48週目に、対象の研究用眼を、新たなまたは悪化している疾患活動性がないことにつ
いて評価する。対象を16週目または20週目にq8処置へと切り替えており、下記で定
義するように、新たなまたは悪化している疾患活動性がない場合、この対象をq12処置
レジメンへと再度割り当てる。
【0074】
疾患活動性評価を、16週目、20週目、32週目および44週目に行なって、研究の
主要エンドポイント(48週目)までに4回の時点でq12の対象をq8処置へと再度割
り当てることができる。16週目でq8投与レジメンにより適した対象を早期決定するこ
とにより、後の時点(20週目、32週目または44週目にも再割り当てが可能である)
で再割り当てを必要とするであろうq12対象の割合を最小限に抑えることができること
が予想される。
【0075】
早期処置糖尿病性網膜症研究(early treatment diabetic retinopathy study)(ET
DRS)視力検査を、眼を拡張させるために点眼薬の投与を必要とするあらゆる検査また
は眼との接触を必要とするあらゆる検査の前に使用する。視力検査を屈折(refraction)
後に実施し、標準的な手順に従って完了する。
【0076】
SD-OCTを使用して中心窩亜領域厚(CSFT)を測定する。
【0077】
1年目および2年目に下記の基準を使用して、この研究での各対象の投薬投与レジメン
決定する。
【0078】
0日~44週
下記の基準が満たされる場合、最初に4週間の間隔で3回(0日目、4週目および8週
目)注射した対象を、最大48週まで8週(q8)毎の注射に割り当てる。
16週目:
・(0日目に評価した)ベースラインと比較して16週目での、新生血管AMD(n
AMD)疾患活動性に起因する≧5文字のBCVAの低下。
・12週目と比較して16週目での、nAMD疾患活動性に起因する≧5文字のBC
VAの低下。
・12週目と比較して16週目での≧3文字のVA低下および≧75μmのCSFT
増加。
・12週目と比較して16週目での新たなまたは悪化している網膜内嚢胞(IRC)
/網膜内液(IRF)。
20週目、32週目および44週目:
・12週目と比較してnAMD疾患活動性に起因する≧5文字のBCVAの低下。
【0079】
48週~96週
16週目および20週目にq8処置に割り当てた患者は、下記の基準のいずれかを満た
さない場合に、処置の2年目にq12処置レジメンへと再度割り当てることができる:
48週目:
・32週目と比較して48週目での、nAMD疾患活動性に起因する≧5文字のBC
VAの低下。
・32週目と比較して48週目での新たなまたは悪化しているIRC/IRF。
【0080】
q12処置レジメンでの処置の2年目に入っている患者は、下記の訪問時のいずれかで
下記の基準を満たさない限り、q12レジメンで維持され得る:
56週目、68週目および80週目:
・48週目と比較して、nAMD疾患活動性に起因する≧5文字のBCVAの低下。
【0081】
対象は、新生血管目疾患を有する対象の処置に利用可能な現在の処置レジメンと比較し
てある特定の対象にとって有益で低頻度の処置レジメンを決定しつつ、48週目のベース
ラインからのBCVAの有益な変化および96週以下の研究期間にわたり対象が報告する
結果の改善を有すると期待される。
【0082】
本発明および本発明の実施形態を詳細に説明した。しかしながら、本発明の範囲は、本
明細書で説明するいかなるプロセス、製造、組成物、化合物、手段、方法および/または
ステップの特定の実施形態に限定することを意図されていない。本発明の趣旨および/ま
たは本質的な特徴から逸脱することなく、開示した事項に対して様々な改変、置換および
変形を行なうことができる。従って、本明細書で説明する実施形態と実質的に同じ機能を
発揮するまたは実質的に同じ結果を達成する後の改変、置換および/または変形が本発明
のそのような関連実施形態に従って利用され得ることを、当業者は本開示から容易に認識
することができる。そのため、下記の特許請求の範囲は、この範囲内に、本明細書で開示
したプロセス、製造、組成物、化合物、手段、方法および/またはステップに対する改変
、置換および変形を包含することが意図される。特許請求の範囲は、その効果を述べない
限り、記載した順序または要素に限定されると解釈すべきではない。添付した特許請求の
範囲から逸脱することなく形態および詳細の様々な変更を行なうことができることを理解
すべきである。
本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
哺乳動物の新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)を処置する方法であって、
a)4週間の間隔でVEGFアンタゴニストの3回の個別の用量を前記哺乳動物に投与
すること、
b)12週目に、最高矯正視力(BCVA)、視力(VA)、中心窩亜領域厚(CSF
T)および網膜内の嚢胞/液体の存在に関して前記哺乳動物を評価すること、
c)16週目に、BCVA、VA、CSFT、および網膜内の嚢胞/液体の存在に関し
て前記哺乳動物を評価すること、ならびに
d)下記の基準が満たされる場合には8週間毎に1回(q8レジメン)、下記の基準が
満たされない場合には12週間毎に1回(q12レジメン)、前記VEGFアンタゴニス
トの追加用量を前記哺乳動物に投与すること:
a)ベースラインと比較して16週目での、nAMD疾患活動性に起因する≧5文字
のBCVAの低下、
b)12週目と比較して16週目での、nAMD疾患活動性に起因する≧5文字のB
CVAの低下、
c)12週目と比較して16週目での≧3文字のVA低下および≧75μmのCSF
T増加、ならびに
d)12週目と比較して16週目での新たなまたは悪化している網膜内嚢胞(IRC
)/網膜内液(IRF)
を含む、方法。
[2]
BCVAに関して、20週目、32週目および44週目に、q12レジメンのために選
択された哺乳動物を評価すること、ならびに、更なる評価の後に、12週目と比較してn
AMD疾患活動性に起因してBCVAが≧5文字である場合に、q8レジメンのために選
択された哺乳動物に投与することを更に含む、上記[1]に記載の方法。
[3]
BCVAおよび網膜内の嚢胞/液体(IRC/IRF)の存在に関して、20週目、3
2週目および48週目に、q8レジメンのために選択された哺乳動物を評価すること、な
らびに、48週目の評価の後に、32週目と比較して48週目にnAMD疾患活動性に起
因して≧5文字のBCVAの低下が起こらない場合に、および32週目と比較して48週
目に新たなまたは悪化しているIRC/IRFがない場合に、12週間毎に前記VEGF
アンタゴニストの追加用量を前記哺乳動物に投与することを更に含む、上記[1]に記載
の方法。
[4]
前記哺乳動物がヒトである、上記[1]に記載の方法。
[5]
前記VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、上記[1]に記載の方法。
[6]
前記抗VEGF抗体が配列番号3の配列を含む、上記[5]に記載の方法。
[7]
前記VEGFアンタゴニストが硝子体内注射で投与される、上記[1]に記載の方法。
[8]
新生血管AMD(nAMD)を処置する方法であって、4週間の間隔でVEGFアンタ
ゴニストの3回の個別の用量を哺乳動物に投与すること、その後、最初の個別の用量の投
与から12週目、16週目、20週目、32週目および44週目に評価された予め定義さ
れた視覚的基準および解剖学的基準を使用する疾患活動性評価の結果に応じて、12週間
毎(q12)および/または8週間毎(q8)に追加用量を投与することを含む、方法。
[9]
48週目、56週目、68週目および80週目に追加評価が行なわれる、上記[8]に
記載の方法。
[10]
前記疾患活動性評価が、BCVA、VA、中心窩亜領域厚(CSFT)および/または
網膜内の嚢胞/液体(IRC/IRF)の存在を評価すること含む、上記[8]に記載の
方法。
[11]
前記哺乳動物が、下記の基準が満たされる場合には8週間毎(q8)に処置され、下記
の基準が満たされない場合には12週間毎(q12)に処置される、上記[10]に記載
の方法:
a)ベースラインと比較して16週目での、新生血管AMD(nAMD)疾患活動性
に起因する≧5文字のBCVAの低下、
b)1週目と比較して16週目での、nAMD疾患活動性に起因する≧5文字のBC
VAの低下、
c)12週目と比較して16週目での≧3文字のVA低下および≧75μmのCSF
T増加、ならびに
d)12週目と比較して16週目での新たなまたは悪化している網膜内嚢胞(IRC
)/網膜内液(IRF)。
[12]
BCVAに関して、20週目、32週目および44週目に、q12レジメンのために選
択された哺乳動物を評価すること、ならびに、更なる評価の後に、12週目と比較してn
AMD疾患活動性に起因してBCVAが≧5文字である場合に、q8レジメンのために選
択された哺乳動物に投与することを更に含む、上記[11]に記載の方法。
[13]
BCVAおよび網膜内の嚢胞/液体(IRC/IRF)の存在に関して、20週目、3
2週目および48週目に、q8レジメンのために選択された哺乳動物を評価すること、な
らびに、48週目の評価の後に、32週目と比較して48週目にnAMD疾患活動性に起
因して≧5文字のBCVAの低下が起こらない場合に、および32週目と比較して48週
目に新たなまたは悪化しているIRC/IRFがない場合に、12週間毎に前記VEGF
アンタゴニストの追加用量を前記哺乳動物に投与することを更に含む、上記[11]に記
載の方法。
[14]
前記哺乳動物がヒトである、上記[8]に記載の方法。
[15]
前記VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、上記[8]に記載の方法。
[16]
前記抗VEGF抗体が配列番号3の配列を含む、上記[15]に記載の方法。
[17]
前記VEGFアンタゴニストが硝子体内注射で投与される、上記[8]に記載の方法。