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特開2022-141948抗細菌性薬剤併用物の組成物及び使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141948
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】抗細菌性薬剤併用物の組成物及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/407 20060101AFI20220921BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220921BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 31/424 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 31/431 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 31/43 20060101ALI20220921BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20220921BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
A61K31/407
A61P31/04 ZNA
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/496
A61K31/424
A61K31/431
A61K31/43
C12N1/20 A
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022120438
(22)【出願日】2022-07-28
(62)【分割の表示】P 2021019647の分割
【原出願日】2016-07-08
(31)【優先権主張番号】62/190,588
(32)【優先日】2015-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597025806
【氏名又は名称】ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Washington University
(71)【出願人】
【識別番号】518161352
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・ノートル・ダム・デュ・ラック
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF NOTRE DAME DU LAC
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ゴータム・ダンタス
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ゴンザレス
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・フォースバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル・ペセスキー
(72)【発明者】
【氏名】メイランド・チャン
(72)【発明者】
【氏名】シャフリアール・モバシェリー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗細菌性組成物、及び耐性細菌が原因となる細菌感染の処置方法を提供する。
【解決手段】抗生物質耐性細菌が原因となる感染の処置に有用な組成物であって、前記耐性が、ペニシリン結合タンパク質2a(PBP2a)駆動機序によるものであり、前記組成物が、
i)少なくとも1種の、PBP2aのアロステリック部位と結合可能なカルバペネムまたは他の好適なβラクタム、
ii)少なくとも1種のβラクタマーゼ阻害薬、及び
iii)少なくとも1種の、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタム
を含む、前記組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗生物質耐性細菌が原因となる感染の処置に有用な組成物であって、前記耐性が、ペニシリン結合タンパク質2a(PBP2a)駆動機序によるものであり、前記組成物が、
i)少なくとも1種の、PBP2aのアロステリック部位と結合可能なカルバペネムまたは他の好適なβラクタム、
ii)少なくとも1種のβラクタマーゼ阻害薬、及び
iii)少なくとも1種の、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタム
を含む、前記組成物。
【請求項2】
前記抗生物質耐性細菌がStaphylococcus属由来である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗生物質耐性細菌が、S.aureus、S.epidermidis、S.hominis、S.lugdunensis、S.xylosus、及びS.felisからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗生物質耐性細菌が、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の、PBP2aのアロステリック部位と結合可能なカルバペネムまたは他の好適なβラクタムが、メロペネム、イミペネム、トモペネム、セフタロリン、及びセフトビプロールからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の、PBP2aのアロステリック部位と結合可能なカルバペネムまたは他の好適なβラクタムが、メロペネム及びイミペネムからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種のβラクタマーゼ阻害薬が、クラブラン酸(クラブラネート)、スルバクタム、タゾバクタム、及びアビバクタムからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のβラクタマーゼ阻害薬が、タゾバクタム及びクラブラネートからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムが、カルバペネム、アミノペニシリン、カルボキシペニシリン、ウレイドペニシリン、オキサシリン、メチシリン、及び一部のセファロスポリンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記カルバペネムが、メロペネム、イミペネム、ドリペネム、エルタペネム、ファロペネム、及びテビペネムからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記オキサシリンまたはメチシリンが、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、オキサシリン、メチシリン、及びナフシリンからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記セファロスポリンが、セフェピム、セフォゾプラン、セフピロム、セフキノム、セフタロリン、及びセフトビプロールからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記アミノペニシリンが、アモキシシリン、アンピシリン、ピバンピシリン、ヘタシリン、バカンピシリン、メタンピシリン、タランピシリン、及びエピシリンからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記カルボキシペニシリンが、カルベニシリン、カリンダシリン、チカルシリン、及びテモシリンからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記ウレイドペニシリンが、アズロシリン、メズロシリン、及びピペラシリンからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種の、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムが、メシリナム、セフラジン、及びチエナマイシンではない、請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種の、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムが、ピペラシリン及びアモキシシリンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記カルバペネムがメロペネムであり、前記βラクタマーゼ阻害薬がタゾバクタムであり、PBP2aの活性部位の開放構造と結合する前記βラクタムがピペラシリンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記カルバペネムがイミペネムであり、前記βラクタマーゼ阻害薬がクラブラネートであり、PBP2aの活性部位の開放構造と結合する前記βラクタムがピペラシリンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記カルバペネムがメロペネムであり、前記βラクタマーゼ阻害薬がタゾバクタムであり、PBP2aの活性部位の開放構造と結合する前記βラクタムがアモキシシリンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
(i)、(ii)、及び(iii)の比が1:1:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が、前記組成物に対する耐性の進化を抑制する、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
対象における、抗生物質耐性細菌が原因となる感染を処置する方法であって、前記耐性が、ペニシリン結合タンパク質2a(PBP2a)駆動機序によるものであり、前記方法が、前記対象に、有効量の、請求項1から22のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)が原因となる感染を処置する方法であって、前記対象に、有効量の、請求項1から22のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
本発明は、NIGMS、NSF、NHGRI、NIDDK、NIAID、及びNIHにより授与されたGM:007067、DGE-1143954、T32HG000045、T32GM007067、DP2DK098089、R01GM099538、AI90818、及びAI104987の下、政府支援によりなされたものである。政府は、本発明にある一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年7月9日に出願された米国仮出願番号第62/190,588号の利益を主張し、その全体が参照により本書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本開示は、抗細菌性組成物及び、耐性細菌が原因となる細菌感染の処置方法に関する。
【背景技術】
【0004】
多剤耐性(MDR)病原体は、ヒトの健康に対する増大する脅威となっており、実際上、多くの感染性疾患が抗生物質以前の時代に向かって退行している。その典型例として、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)の市中感染が劇的に上昇していることが挙げられる。メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)は、世界中で最も蔓延している多剤耐性病原体の1つであり、このような多剤耐性病原体感染の処置に使用される最新抗生物質による単剤療法に対し、耐性の増加を示している。MRSAの出現により、S.aureusに対する治療選択肢としてのβラクタムを使用は事実上排除された。最近開発されたβラクタム剤のセフタロリンは、MRSA感染の処置において、PBP2aのアロステリック部位に結合することにより活性を示し、薬剤による不活性化のために活性部位の開放を誘発する。しかし、セフタロリンに対する耐性や、MRSAの処置に使用される他の抗生物質(リネゾリド、バンコマイシン、及びダプトマイシンを含む)に対する耐性が報告されている。したがって、当技術分野では、MDR病原体を処置し、かつ既存の抗生物質を再利用するための新しい戦略が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本開示は、抗生物質耐性細菌が原因となる感染の処置に有用な組成物であって、この耐性が、ペニシリン結合タンパク質2a(PBP2a)駆動機序によるものである、組成物を提供する。この組成物は、(i)少なくとも1種の、PBP2aのアロステリック部位と結合可能なカルバペネムまたは他の好適なβラクタムと、(ii)少なくとも1種のβラクタマーゼ阻害薬と、(iii)PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムと、を含む。ある特定の実施形態では、この抗生物質耐性細菌は、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)である。一実施形態では、カルバペネムはメロペネムであり、βラクタマーゼ阻害薬はタゾバクタムであり、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムはピペラシリンである。別の実施形態では、カルバペネムはイミペネムであり、βラクタマーゼ阻害薬はクラブラネートであり、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムはピペラシリンである。なお別の実施形態では、カルバペネムはメロペネムであり、βラクタマーゼ阻害薬はタゾバクタムであり、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムはアモキシシリンである。具体的には、この組成物は、組成物に対する耐性の進化を抑制する。
【0006】
別の態様では、本開示は、対象における、抗生物質耐性細菌が原因となる感染を処置する方法であって、この耐性がペニシリン結合タンパク質2a(PBP2a)駆動機序によるものである、方法を提供する。この方法は、対象に、有効量の本開示における組成物を投与することを含む。
【0007】
なお別の態様では、本開示は、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)が原因となる感染を処置する方法を提供する。この方法は、対象に、有効量の本開示における組成物を投与することを含む。
【0008】
本出願ファイルには、カラーで制作された図面が少なくとも1点含まれている。カラー図面による本特許出願発行物のコピーは、要請時及び必要料金の支払時に特許商標庁から提供されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】3Dチェッカーボードの相乗作用判定を示す図である。ME/PI/TZの単剤、2剤、または3剤条件下で最小阻害濃度(MIC)及びインビトロで増殖させたアイソボールを示している。各パネル内の色の付いた線/アイソボールは、併用した2種の薬剤のMICを示す。破線は、相加的相互作用の理論濃度を示す。点は、メロペネム(ME)、ピペラシリン(PI)、及びタゾバクタム(TZ)の各試験条件における最高阻害未満濃度を示す。赤色の三角は、併用した全3種の薬剤(各2μg/ml)のMICを示す。
図2】MRSA N315が抗細菌剤併用物による攻撃を受けた際の経時的な増殖速度の変化を示すグラフである。11日間にわたるMRSA N315の増殖速度を、MICを下回る1段階3倍希釈で試験した各抗細菌性併用物について計算した。1日目(初期増殖速度)とアッセイの最後の6日間における平均速度(最終増殖速度)との間の増殖速度の差(Δr)を計算した。増殖速度Δrの変化が0.2超の条件にあるMRSA N315を、適応されたものとみなした。適応時間パラメーターt-adaptを、増殖速度の変化が最大半量である時間として計算した。この基準を満たす株について、適応速度α=(Δr/2)t-adapt(1/h)を計算した。結果は、2回の反復実験によるものである。ME/PIの速度:α=8.23×10-3-2;ME/TZ:α=8.68×10-4-2;PI/TZ:α=4.32×10-3-2。MICを下回るある3倍希釈におけるME/PI/TZ(各1.2μg/ml)及び薬剤なし対照のみが増殖速度増加を示さず、適応しなかった。
図3】MRSA N315の抗細菌性併用物に対する適応を抑制する基礎となる付帯感受性を例示する図である。(図3A)ME/PI/TZ、その単一構成要素及び2重構成要素、ならびに様々なサブクラスの他の13ラクタム化合物(セファロスポリン、ペニシリン、カルバペネム、及び13ラクタマーゼ阻害薬)の間の付帯感受性及び耐性における、MRSA N315の相互作用ネットワークである。ノードの色は、13ラクタム、13ラクタマーゼ阻害薬、または併用物のサブクラスを示す。青色の矢印は、付帯感受性を示す。黒色の線は、付帯耐性を示す。例えば、ピペラシリンに対する適応により、MRSA N315はメロペネム及びイミペネムに対し感作される。セファロスポリンは、試験を行ったいずれの化合物に対しても付帯感受性を有しなかった。対が試験されなかった場合、または付帯効果が見られなかった場合、接続矢印は示されない。(図3B)ME/PI/TZならびにその単一及び2重の構成要素のみの間の付帯感受性及び耐性における、MRSA N315の相互作用ネットワークである。太い青色の矢印は、2つのノード(例えば、ピペラシリン及びメロペネム/タゾバクタム)間の相互的付帯感受性を示す。
図4】相乗作用及び付帯感受性の機序についてのゲノム的根拠を示すグラフである。(図4A)MRSA N315のメロペネム/タゾバクタムまたはタゾバクタム単体に対する適応により、プラスミドpN315が不安定になる。タゾバクタムを含有する薬剤併用物(TZ)またはタゾバクタムを含有しない薬剤併用物(non-TZ)に適応させたMRSA N315において、pN315にアライメントするリードカバレッジ(試料当たりの総リードとの対比で)。所与の条件下の適応日数が示されており、例えばD-2は、分離菌が適応から2日後にシークエンスされたことを示す。(図4B図4C)qRT-PCRは、bla及びmecオペロンの調節不全をMRSA N315におけるいくつかの付帯感受性の原因機序として裏付けている。野生型MRSA N315または適応株(TZ 100μg/mlに適応させたN315及びPI 33.3μg/mlまたは100μg/mlに適応させたN315)において、gyrBと比較して示されるblaZまたはmecAの発現、次にブロス単独またはブロス+MIC未満 PIまたはTZ中での増殖。N.D.=測定されず。「-」は、発現なしを示す。TZに適応させたMRSA N315におけるblaZ発現の喪失は、blaZ及びblaオペロンの喪失を裏付けるものであり、かつmecA発現の調節不全にも合致する。データは、3回の反復実験によるものである。誤差バーは、測定値の標準誤差を示す。
図5】MRSA N315の好中球減少マウス腹膜炎モデルにおけるME/PI/TZ処置の有効性を示すグラフである。マウス(n=6)における各薬剤処置からの相対的生存が示されている。ME/PI/TZ、ME/PI、及びリネゾリドによる処置は、ビヒクルに対し有意差がある。(*p=0.02)誤差バーは、試験条件ごとの生存割合の標準誤差を示す。
図6】細菌プレートの増殖を示す写真であり、MRSA COLアンチセンス(AS)株についてのPBPキシロース誘導を例示するものである。(図6A図6B図6C)pbp2a/mecAアンチセンス(AS)株。PBP2aの標的化抑制により、キシロース誘導下でメロペネムの増加した感受性が示された。増加した感受性が、ピペラシリンについても観察された。増加した感受性が、全ての併用物について観察された。(図6D図6E)pbpAアンチセンス(AS)株。PBP1の標的化抑制により、メロペネム及びピペラシリンに対する増加した感受性が示された。感受性増加が、ME/PI、ME/TZ、及びME/PI/TZの併用物について観察された。(図6F図6G)pbp2アンチセンス(AS)株。PBP2の標的化抑制により、メロペネム及びピペラシリンに対する感受性増加が示された。感受性増加は、全ての組み合わせについて観察された。(図6H図6I)pbp3アンチセンス(AS)株。PBP3の標的化抑制により、単一薬剤のいずれに対しても感受性増加が示されなかった。ME/PI併用物についてはわずかな感受性の増加が観察されたが、他の併用物はいずれについても感受性の変化が観察されなかった。
図7】MRSA N315のβラクタム併用物に対する適応を抑制する基礎となる、付帯感受性を例示するプロットである。青の陰影は、株を単一薬剤及び2重薬剤併用物に対し事前に適応させた後の、株の単一薬剤及び併用物に対する付帯感受性を示す。赤の陰影は、付帯耐性を示す。薄い陰影=1段階のMIC希釈の変化。濃い陰影=2段階以上のMIC希釈の変化。例えば、ピペラシリンに対する適応によりメロペネムに対する付帯感受性がもたらされ、逆も同様である。ME=メロペネム、PI=ピペラシリン、TZ=タゾバクタム、AX=アモキシシリン、CF=セフジニル、CP=セフェピム、CX=セフォキシチン、DC=ジクロキサシリン、IM=イミペネム。
図8】ピペラシリン/タゾバクタムに適応させたMRSA N315におけるゲノム複製を例示するヒストグラムである。ヒストグラムは、N315のゲノムにわたる総リードカバレッジを示しており、図8Aはメロペネム/タゾバクタムに5日間、図8Bはタゾバクタム単独に2日間、図8Cはピペラシリン/タゾバクタムに6日間、図8Dはピペラシリン/タゾバクタムに11日間、それぞれ適応させたN315についてのものである。塩基毎のリードカバレッジの全ゲノムにわたる平均及び赤色の四角が示す領域のみにおける塩基リードカバレッジ当たりの平均は、それぞれ、a)116.6リード/bp及び126.6リード/bp、b)124.5リード/bp及び128.9リード/bp、c)157.8リード/bp及び302.2リード/bp、ならびにd)120.1リード/bp及び230.6リード/bpである。図8A及び図8Bのクローンを、全ての非ピペラシリン/タゾバクタム適合を代表するものとして選択した。
図9】MRSAに対するメロペネム/ピペラシリン/タゾバクタム(ME/PI/TZ)の相乗作用の機序を提案する図である。発明者らのデータは、発明者らが提案するMRSAにおける細胞壁合成に対する相乗的作用様式を支持するものであり、この作用様式は以下を伴う:I)カルバペネムによる、PBP1の分裂隔壁におけるペプチド転移の抑制、II)ペナム(ペニシリン)による、PBP2のペプチド転移の抑制、III)βラクタマーゼ阻害薬による、ペナムに対するβ-ラクタマーゼ活性の抑制、及びIV)メロペネムまたは他のβラクタムによる阻害を可能にする、メロペネムによる、PBP2aの活性部位のアロステリックな開放。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では、抗生物質の併用物を含む組成物が開示される。これらの抗生物質は、βラクタム抗生物質の3つのサブクラスからのものであり、いずれも細胞壁合成を標的とする。この療法は、以下のものを使用する:1)同じ細胞系の複数のノードを標的とする抗生物質、2)薬剤の相乗作用の利用により薬剤の効力を増加させるようなこれらの抗生物質の併用物、及び3)耐性の進化を抑制するための、当該併用物における構成要素間の付帯感受性。理論に拘泥されることは望まないが、当該組成物は、ペニシリン結合タンパク質-1(PBP1)を阻害し、かつ併用物における抗生物質の別の分子が阻害できるようにするためにPBP2aの活性部位をアロステリックに開放するカルバペネムまたは他の好適なβラクタムと、PBP2及びPBP2aと結合するβラクタムと、βラクタマーゼからβラクタム(複数可)を保護するβラクタマーゼ阻害薬と、を含む。この結果、細胞壁合成機構の複数の構成要素を同時に攪乱することによる相乗的応答がもたらされる。発明者らは、この併用物が相乗的に作用し、PBP2aを含む細菌、具体的にはメチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)に対し殺細菌性であることを示した。
【0011】
I.組成物
一態様では、抗生物質耐性細菌が原因となる感染の処置に有用な組成物であって、この耐性がペニシリン結合タンパク質2a(PBP2a)駆動機序によるものである、組成物が、本明細書で提供される。この組成物は、少なくとも1種の、PBP2aのアロステリック部位と結合可能なカルバペネムまたは他の好適なβラクタムと、少なくとも1種のβラクタマーゼ阻害薬と、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムと、を含む。
【0012】
発明者らは、本開示の組成物が、記載されている抗生物質併用物に曝露した後の耐性細菌の進化を低減または消去することを発見した。本開示の組成物においては、1つの抗生物質がPBP2aのアロステリック部位と結合し、別の抗生物質がPBP2aの活性部位と結合することが不可欠である。理論に拘泥されることは望まないが、PBP2aのアロステリック部位と結合する抗生物質は、PBP2aのトランスペプチダーゼ活性部位を開放し、PBP2aの活性部位と結合する抗生物質がPBP2aの別の部位にも結合できるようにする。これら抗生物質の両方が結合するには、生命に必要となるPBP2aのトランスペプチダーゼ機能を完全に停止する必要がある。PBP2aのトランスペプチダーゼ機能を停止することにより、PBP2a駆動機序に依存する抗生物質耐性細菌が死滅することになる。このような細菌の一具体例に、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)がある。当該組成物におけるβラクタマーゼ阻害薬は、併用物におけるβラクタム(複数可)を、耐性細菌が産生するβ-ラクタマーゼによる酵素分解から保護することにより、耐性細菌の死滅をさらに促進する。
【0013】
本開示によれば、当該組成物は、耐性がペニシリン結合タンパク質2a(PBP2a)駆動機序によるものである抗生物質耐性細菌に対し、有効である。当業者であれば、抗生物質耐性細菌がPBP2a駆動機序による耐性を示すかを判定できるであろう。例えば、このような細菌は、PBP2aをコードするmecAを含み得る。概して、Staphylococcus属内の種は、現時点ではmecA遺伝子を所持することが知られており、S.aureus、S.epidermidis、S.hominis、S.lugdunensis、S.xylosus、及びS.felisが挙げられる(Petinaki et al. Detection of mecA,mecR1 and mecI genes among clinical isolates of methicillin-resistant staphylococci by combined polymerase chain reactions. J.Antimicrob.Chemother.47,297-304(2001))、(Nascimento et al. Potential spread of multidrug-resistant coagulase-negative staphylococci through healthcare waste. J.Infect.Dev.Ctries.9,(2015))。したがって、一実施形態では、抗生物質耐性細菌は、Staphylococcus属に由来する。別の実施形態では、抗生物質耐性細菌は、S.aureus、S.epidermidis、S.hominis、S.lugdunensis、S.xylosus、及びS.felisからなる群から選択される。特定の実施形態では、この抗生物質耐性細菌は、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)である。PBPはペニシリン結合タンパク質であり、これは、細菌におけるペプチドグリカン細胞壁の合成に必要なトランスペプチダーゼ酵素である。Staphylococcus aureusには4種の未変性PBPが存在し、このうちPBP2は、細胞の生存能に不可欠なPBPである。メチシリン耐性S.aureus(MRSA)は、PBP2の所持に加えて、細胞壁合成のための全ての重要なトランスペプチダーゼ活性を実施することができる補助的PBP(PBP2a)を獲得している。PBP2aは、βラクタム(典型的には、未変性PBP2を阻害することによって機能する)が多く存在する場合であっても、トランスペプチダーゼ活性を有する。βラクタム薬剤はPBPを特定的に標的とし、いくつかのサブクラスから構成されている。これらのサブクラスはいずれもβラクタムの「弾頭」を含有し、様々なPBP親和性を有する。非限定的な例としては、ペニシリン、カルバペネム、セファロスポリン、及びモノバクタムが挙げられる。しかし、PBP2aは、未変性の閉構造において、一部のβラクタムとの親和性が低く、PBP2aを含有する生命体は、この薬剤クラスに対し高い耐性を有することになる。したがって、本開示は、PBP2aのアロステリック部位に結合する1つのβラクタムを用いて、PBP2aを開放したまま保持しながら、第2のβラクタムが活性部位の開放構造に結合してPBP2aの機能を実際上阻害することにより、この弱い結合を克服する。
【0014】
本開示の組成物は、部分的には、PBP2aのアロステリック部位と結合可能なカルバペネムまたは他の好適なβラクタムを含む。したがって、本開示のカルバペネムまたは他の好適なβラクタムは、PBP2aのアロステリック部位に結合しなければならない。PBP2aのアロステリック部位に結合するカルバペネムまたは他の好適なβラクタムの非限定的な例としては、メロペネム、イミペネム、トモペネム、セフタロリン、及びセフトビプロールが挙げられる。特定の実施形態では、カルバペネムは、メロペネム及びイミペネムからなる群から選択される。別の特定の実施形態では、カルバペネムはメロペネムである。なお別の特定の実施形態では、カルバペネムはイミペネムである。
【0015】
本開示の組成物は、部分的には、βラクタマーゼ阻害薬を含む。好適なβラクタマーゼ阻害薬は、組成物中にも存在するβラクタムを、細菌が産生するβ-ラクタマーゼによる酵素分解から保護する。したがって、βラクタマーゼ阻害薬は、β-ラクタマーゼの活性を阻害する。β-ラクタマーゼは、ペニシリンに類する抗生物質を機能させるβラクタム環を破壊する酵素のファミリーである。βラクタマーゼ阻害薬の非限定的な例としては、クラブラン酸(クラブラネート)、スルバクタム、タゾバクタム、及びアビバクタムが挙げられる。特定の実施形態では、βラクタマーゼ阻害薬は、タゾバクタム及びクラブラネートからなる群から選択される。別の特定の実施形態では、βラクタマーゼ阻害薬はタゾバクタムである。なお別の特定の実施形態では、βラクタマーゼ阻害薬はクラブラネートである。
【0016】
本開示の組成物は、部分的には、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムを含む。したがって、本開示のβラクタムは、PBP2aの活性部位の開放構造に結合しなければならない。PBP2aの活性部位の開放構造に結合するβラクタムの非限定的な例としては、カルバペネム、アミノペニシリン、カルボキシペニシリン、ウレイドペニシリン、オキサシリン、メチシリン、及び一部のセファロスポリンが挙げられる。カルバペネムの非限定的な例としては、メロペネム、イミペネム、ドリペネム、エルタペネム、ファロペネム、及びテビペネムが挙げられる。オキサシリン及びメチシリンの非限定的な例としては、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、オキサシリン、メチシリン、及びナフシリンが挙げられる。PBP2aの活性部位の開放構造に結合するセファロスポリンの非限定的な例としては、セフェピム、セフォゾプラン、セフピロム、セフキノム、セフタロリン、及びセフトビプロールが挙げられる。注目すべきことに、ほとんどのペニシリン型βラクタム(例えば、アミノペニシリン、カルボキシペニシリン、ウレイドペニシリン)は、PBP2aの活性部位の開放構造に結合する。アミノペニシリンの非限定的な例としては、アモキシシリン、アンピシリン、ピバンピシリン、ヘタシリン、バカンピシリン、メタンピシリン、タランピシリン、及びエピシリンが挙げられる。カルボキシペニシリンの非限定的な例としては、カルベニシリン、カリンダシリン、チカルシリン、及びテモシリンが挙げられる。ウレイドペニシリンの非限定的な例としては、アズロシリン、メズロシリン、及びピペラシリンが挙げられる。PBP2aの活性部位の開放構造に結合せず、本開示の組成物においては機能しないβラクタムの非限定的な具体例としては、メシリナム、セフラジン、及びチエナマイシンが挙げられる。特定の実施形態では、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムは、ピペラシリン及びアモキシシリンからなる群から選択される。別の特定の実施形態では、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムは、ピペラシリンである。なお別の特定の実施形態では、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムは、アモキシシリンである。
【0017】
特定の実施形態では、PBP2aのアロステリック部位と結合可能なカルバペネムまたは他の好適なβラクタムはメロペネムであり、βラクタマーゼ阻害薬はタゾバクタムであり、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムはピペラシリンである。別の特定の実施形態では、PBP2aのアロステリック部位と結合可能なカルバペネムまたは他の好適なβラクタムはイミペネムであり、βラクタマーゼ阻害薬はクラブラネートであり、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムはピペラシリンである。なお別の実施形態では、PBP2aのアロステリック部位と結合可能なカルバペネムまたは他の好適なβラクタムはメロペネムであり、βラクタマーゼ阻害薬はタゾバクタムであり、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムはアモキシシリンである。
【0018】
併用物における各抗生物質の量の比は、当技術分野で公知の方法を介して実験的に決定することができる。例えば、図1に示すように、3Dチェッカーボードグラフを使用して、併用物における各抗生物質の比を決定することができる。このような方法体系を使用して、当業者は抗生物質併用物の最適な比を決定でき得る。発明者らが実証するように、併用物における抗生物質の比は、64:1:1、1:64:1、及び1:1:64~1:1:1の範囲とすることができる。特定の実施形態では、PBP2aのアロステリック部位と結合可能なカルバペネムまたは他の好適なβラクタム:β-ラクタマーゼ阻害剤:PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムの比は、1:1:1である。ただし、これらの比は様々なものとすることができ、依然として本開示における有効な併用物となり得ることを理解されたい。
【0019】
有利なことに、本開示の組成物は、上記組成物に対する耐性の進化を抑制する。特定の抗生物質による処置を受けた患者は、様々な理由によりかかる抗生物質に対する耐性を発達させることが多い。この耐性の発達及び伝播は、抗微生物療法の有効性及び寿命を劇的に減じる恐れがある。驚くべきことに、発明者らは、本開示の併用物が耐性の進化を抑制することを示した。言い換えれば、本開示の併用物に細菌を長時間曝露した後に、上記併用物に耐性を有する細菌は観察されなかった。このことは、単剤及び二剤併用物のいずれとも全く対照的である。
【0020】
(a)医薬組成物
本開示は、医薬組成物も提供する。この医薬組成物は、活性成分としての本開示における1つ以上の抗生物質と、少なくとも1種の医薬的に許容される添加剤とを含む。
【0021】
医薬的に許容される添加剤は、賦形剤、結合剤、充填剤、緩衝剤、pH改変剤、崩壊剤、分散剤、保存料、滑沢剤、食味マスキング剤、香味剤、または着色剤とすることができる。医薬組成物の形成に利用される添加物の量及び型は、薬学における既知の原理に従って選択され得る。
【0022】
一実施形態では、添加物は賦形剤であり得る。賦形剤は、圧縮性(すなわち、可塑的に変形可能)であっても摩耗的に脆く(abrasively brittle)てもよい。好適な圧縮性賦形剤の非限定的な例としては、微結晶性セルロース(MCC)、セルロース誘導体、セルロース粉末、セルロースエステル(すなわち、アセテート及びブチレートの混合エステル)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トウモロコシデンプン、リン酸化トウモロコシデンプン、アルファ化トウモロコシデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、デンプン-乳糖、デンプン-炭酸カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ブドウ糖、果糖、乳糖、乳糖一水和物、スクロース、キシロース、ラクチトール、マンニトール、マリトール、ソルビトール、キシリトール、マルトデキストリン、及びトレハロースが挙げられる。好適な摩耗的に脆い賦形剤の非限定的な例としては、第二リン酸カルシウム(無水物または二水和物)、第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウムが挙げられる。
【0023】
別の実施形態では、添加物は結合剤であり得る。好適な結合剤としては、以下に限定するものではないが、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキサゾリドン、ポリビニルアルコール、C12~C18脂肪酸アルコール、ポリエチレングリコール、ポリオール、糖、オリゴ糖、ポリペプチド、オリゴペプチド、及びこれらの併用物が挙げられる。
【0024】
別の実施形態では、添加物は充填剤であり得る。好適な充填剤としては、以下に限定するものではないが、炭水化物、無機化合物、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。非限定的な例として、充填剤は、硫酸カルシウム(二塩基性及び三塩基性の両方)、デンプン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、微結晶性セルロース、二塩基性リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、タルク、修飾デンプン、乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールであり得る。
【0025】
なお別の実施形態では、添加物は緩衝剤であり得る。好適な緩衝剤の代表例としては、以下に限定するものではないが、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、トリス緩衝液、及び緩衝食塩液塩(例えば、トリス緩衝食塩液またはリン酸緩衝食塩液)が挙げられる。
【0026】
様々な実施形態では、添加物はpH改変剤であり得る。非限定的な例として、pH改変剤は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、またはリン酸であり得る。
【0027】
別の実施形態では、添加物は崩壊剤であり得る。崩壊剤は、非発泡性であっても発泡性であってもよい。非発泡性崩壊剤の好適な例としては、以下に限定するものではないが、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、これらのアルファ化デンプン及び修飾デンプン)、甘味料、ベントナイトなどの粘土、微結晶性セルロース、アルギン酸塩、デンプングリコール酸ナトリウム、ガム(例えば、寒天、グアー、イナゴマメ、カラヤ、ペシチン(pecitin)、及びトラガント)が挙げられる。好適な発泡性崩壊剤の非限定的な例としては、重炭酸ナトリウムとクエン酸との組み合わせ及び重炭酸ナトリウムと酒石酸との組み合わせが挙げられる。
【0028】
さらに別の実施形態では、添加物は分散剤または分散強化剤であり得る。好適な分散剤としては、以下に限定するものではないが、デンプン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、グアーガム、カオリン、ベントナイト、精製木材セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、イソアモルファスシリケート(isoamorphous silicate)、及び微結晶性セルロースが挙げられ得る。
【0029】
別の代替実施形態では、添加物は保存料であり得る。好適な保存料の非限定的な例としては、酸化防止剤(例えば、BHA、BHT、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、またはパルミチン酸レチニル、クエン酸、クエン酸ナトリウム)、キレート化剤(例えば、EDTAまたはEGTA)、及び抗微生物剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、またはフェノール)が挙げられる。
【0030】
さらなる実施形態では、添加物は滑沢剤であり得る。好適な滑沢剤の非限定的な例としては、鉱物(例えば、タルクまたはシリカ)及び脂肪(例えば、植物性ステアリン、ステアリン酸マグネシウム、またはステアリン酸)が挙げられる。
【0031】
さらに別の実施形態では、添加物は食味マスキング剤であり得る。食味マスキング物質としては、セルロースエーテル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマー、モノグリセリドまたはトリグリセリド、アクリルポリマー、アクリルポリマーとセルロースエーテルとの混合物、酢酸フタル酸セルロース、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
代替実施形態では、添加物は香味剤であり得る。香味剤は、合成香味油及び合成香味料ならびに/または天然油、植物、葉、花、果実からの抽出物、ならびにこれらの組み合わせから選択することができる。
【0033】
なおさらなる別の実施形態では、添加物は着色剤であり得る。好適な着色添加物としては、以下に限定するものではないが、食品、薬剤、及び化粧品着色料(FD&C)、薬剤及び化粧品着色料(D&C)、または外用薬剤及び化粧品着色料(Ext.D&C)が挙げられる。
【0034】
当該組成物における添加剤または添加剤の組み合わせの重量分率は、組成物の総量の約99%以下、約97%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約2%、または約1%以下とすることができる。
【0035】
当該組成物は、様々な剤形に製剤化し、治療有効量の活性成分を送達する複数の異なる手段により投与することができる。このような組成物は、経口的、非経口的、または局所的に、従来の無毒な医薬的に許容される担体、アジュバント、及びビヒクルを所望に応じて含有する投与単位製剤において、投与することができる。また、局所投与は、経皮投与(例えば、経皮パッチまたはイオン導入デバイス)の使用も伴う場合がある。本明細書で使用される非経口という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、または胸骨内の注入、または輸液手法を含む。薬剤の製剤は、例えば、Gennaro,A.R.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(18th ed,1995)、及びLiberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker Inc.,New York,N.Y.(1980)で論じられている。
【0036】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル、錠剤、カプレット、丸剤、粉末、ペレット、及び顆粒が挙げられる。そのような固体剤形では、通常、活性成分は1つ以上の医薬的に許容される添加剤と配合する。この添加剤の例は、上に詳述されている。また、経口調製物は、水性懸濁液、エリキシル剤、またはシロップとして投与することもできる。これらに関しては、活性成分は、様々な甘味剤または香味剤、着色剤、ならびに所望の場合は乳化剤及び/または懸濁化剤、さらに賦形剤(例えば、水、エタノール、グリセリン、及びそれらの組み合わせ)と配合することができる。
【0037】
非経口投与(皮下、皮内、静脈内、筋肉内、及び腹腔内を含む)に関しては、調製物は水性溶液であっても油系溶液であってもよい。水性溶液としては、以下のものを挙げることができる:滅菌賦形剤、例えば、水、食塩液、医薬的に許容されるポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、または他の合成溶媒)、抗微生物剤及び/または抗真菌剤、例えば、ベンジルアルコール、メチルパラベン、クロロブタノール、フェノール、チメロサールなど、酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸または重硫酸ナトリウム、キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸、緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩、ならびに/あるいは張度調整用の薬剤、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖、またはポリアルコール(例えば、マンニトールもしくはソルビトール)。水溶液のpHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。油系の溶液または懸濁液は、ゴマ油、ピーナツ油、オリーブ油、または鉱物油をさらに含んでもよい。
【0038】
局所(例えば、経皮または経粘膜)投与に関しては、概して、バリアに対する透過に適切な透過剤が調製物に含まれる。経粘膜投与は、点鼻スプレー、エアロゾルスプレー、錠剤、または座薬の使用を通じて遂行することができ、経皮投与は、当技術分野で広く知られている軟膏、膏薬、ゲル、パッチ、またはクリームを介して遂行することができる。
【0039】
II.方法
一態様では、本開示は、対象における、抗生物質耐性細菌が原因となる感染を処置する方法であって、この耐性がペニシリン結合タンパク質2a(PBP2a)駆動機序によるものである、方法を包含する。この方法は、対象に、有効量の本開示における組成物を投与することを含む。
【0040】
別の態様では、本開示は、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)が原因となる感染を処置する方法を包含する。この方法は、対象に、有効量の本開示における組成物を投与することを含む。
【0041】
本明細書で使用される「感染」という用語には、対象の表面上または中に存在し、増殖を阻害すれば対象に利益がもたらされるような、細菌を含めた微生物の存在が含まれる。そのため、「感染」という用語は、細菌の存在を指すことに加えて、望ましくない正常細菌叢も指す。「感染」という用語には、細菌が原因となる感染も含まれる。
【0042】
本明細書で使用される「処置する」、「処置すること」、または「処置」という用語は、本開示の医薬組成物を予防的目的及び/または治療的目的のために投与することを指す。「予防的処置」という用語は、まだ感染していないが感染しやすい、または感染のリスクがある対象に処置することを指す。「治療的処置」という用語は、既に感染にかかっている対象に処置を投与することを指す。また、本明細書で使用される「処置する」、「処置すること」、または「処置」という用語は、追加の医薬的に活性または不活性の成分を伴ってまたは伴わずに、以下の目的で本開示の組成物を投与することも指す:(i)細菌感染もしくは細菌感染の1つ以上の症状のいずれかを低減または除去する、または(ii)細菌感染もしくは細菌感染の1つ以上の症状の進行を遅らせる、または(iii)細菌感染もしくは細菌感染の1つ以上の症状の重症度を低減する、または(iv)細菌感染の臨床的徴候を抑制する、または(v)細菌感染の有害症状の徴候を抑制する。
【0043】
本明細書で使用される「制御する」または「制御すること」という用語は、概して、感染の防止、低減、もしくは根絶、またはそのような感染の割合及び程度の阻害、または微生物個体数(例えば、身体または構造、面、液体、対象などの表面上または中に存在する微生物個体数)の低減であって、このような感染または微生物個体数の防止または低減が、未処置の感染または個体数に対して統計的に有意である、低減を指す。概して、そのような制御は、微生物個体数における死亡率の増加によって達成され得る。
【0044】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、治療効果を有する量を指し、あるいは対象において治療効果をもたらすのに必要とされる量である。例えば、抗生剤または医薬組成物の治療有効量または医薬的有効量は、臨床試験結果、モデル動物感染研究、及び/または(例えば、寒天またはブロス培地における)インビトロ試験によって判断され得る所望の治療効果をもたらすのに必要とされる、抗生剤または医薬組成物の量である。有効量または医薬的有効量は、いくつかの要因に依存し、この要因には、以下に限定するものではないが、関連する微生物(例えば、細菌)、対象の特徴(例えば、身長、体重、性別、年齢、及び病歴)、感染の重症度、使用する抗生物質の詳細な型が含まれる。予防的処置に関しては、治療有効量または予防的有効量は、微生物(例えば、細菌)感染を防止するのに有効となるであろう量である。注目すべきことに、本明細書で開示される併用物は、活性薬剤の併用物の有効量を、単独の場合の有効量よりも低量とすることができ、その結果、総濃度がより低い抗生物質を対象に投与することができる。
【0045】
「投与」または「投与すること」という用語には、組成物または1つ以上の医薬的活性成分を対象に送達することが含まれ、例えば、組成物もしくはその活性成分または他の医薬的活性成分を感染部位に送達する働きをする任意の適切な方法により送達することが含まれる。投与方法は、様々な要因、例えば、医薬組成物の構成成分、または医薬的活性成分もしくは非活性成分の型/性質、潜在的または実際的感染部位、関連する微生物、感染の重症度、対象の年齢及び健康状態などに応じて様々なものとなり得る。本開示による組成物または医薬的活性成分を対象に投与する方法のいくつかの非制限的な例としては、経口、静脈内、局所、呼吸器内、腹腔内、筋肉内、非経口、舌下、経皮、鼻腔内、エアロゾル、眼内、気管内、膣内、遺伝子銃、経皮パッチ、点眼、点耳、または洗口剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、この組成物またはその活性成分は、経口投与される。
【0046】
本開示による組成物は様々な剤形に製剤化することができ、活性成分は、剤形中で共に(例えば、混合物として)存在しても別々の構成成分として存在してもよい。組成物中の様々な成分が混合物として製剤化される場合、そのような組成物は、そのような混合物を(例えば、タブレット、カプセル、溶液、粉末などの好適な単位剤形の形態で)投与することによって送達させることができる。代替方法として、諸成分は、有益な治療レベルに達し全体として組成物が相乗的効果をもたらす限りにおいて、別々に(同時または順次に)投与することもできる。組成物または剤形において、諸成分が混合物ではなく別々の構成成分としてもたらされる場合、このような組成物/剤形は、いくつかの方法で投与され得る。可能性がある一方法では、諸成分を所望の割合で混合することができ、次にこの混合物を必要に応じて投与する。代替方法として、構成成分を別々に投与することができ、構成成分は、同等の混合物の投与により達成されるであろう治療レベルまたは効果と同じまたは同等の治療レベルまたは効果が達成できるような適切な割合にする。
【0047】
対象は、ヒト、家畜動物、ペット動物、実験動物、または動物園の動物とすることができる。一実施形態では、この対象は、げっ歯類、例えば、マウス、ラット、モルモットなどとすることができる。別の実施形態では、この対象は、家畜動物とすることができる。好適な家畜動物の非限定的な例としては、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ラマ、及びアルパカを挙げることができる。さらに別の実施形態では、この対象は、ペット動物とすることができる。ペット動物の非限定的な例としては、イヌ、ネコ、ウサギ、及び鳥類などのペットを挙げることができる。さらに別の実施形態では、この対象は、動物園の動物とすることができる。本明細書で使用する「動物園の動物」とは、動物園で見いだされ得る動物を指す。そのような動物には、非ヒト霊長類、大型ネコ、オオカミ、及びクマが含まれ得る。ある特定の実施形態では、この動物は実験動物である。実験動物の非限定的な例としては、げっ歯類、イヌ、ネコ、及び非ヒト霊長類を挙げることができる。ある特定の実施形態では、この動物はげっ歯類である。げっ歯類の非限定的な例としては、マウス、ラット、モルモットなどを挙げることができる。
【0048】
概して、本明細書で開示される医薬組成物及び方法は、抗生物質耐性細菌が原因となる細菌感染であって、この耐性がペニシリン結合タンパク質2a(PBP2a)駆動機序によるものである、細菌感染の処置または制御に有用である。PBP2aが起因となり耐性を発達させたことが知られているこのような細菌のいくつかの非限定的な例としては、S.aureus、S.epidermidis、S.hominis、S.lugdunensis、S.xylosus、及びS.felisが挙げられる(Petinaki et al. Detection of mecA,mecR1 and mecI genes among clinical isolates of methicillin-resistant staphylococci by combined polymerase chain reactions. J.Antimicrob.Chemother.47,297-304(2001))、(Nascimento et al. Potential spread of multidrug-resistant coagulase-negative staphylococci through healthcare waste. J.Infect.Dev.Ctries.9,(2015))。特定の実施形態では、この抗生物質耐性細菌は、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)である。本開示の組成物及び/または方法を用いて防止または処置され得る感染の非限定的な例としては、皮膚及び軟部組織の感染、発熱性好中球減少症、尿路感染、腹腔内感染、呼吸器感染、肺炎(院内)、菌血症、髄膜炎、ならびに外科的感染が挙げられる。
【実施例0049】
本開示の様々な実施形態を実証するために以下の実施例を含める。当業者は、次の実施例に開示されている手法が、発明者によって発見された、本発明の実施で十分に機能するための手法を表し、したがってこの手法が本発明を実施するための好ましい様式を構成するものとみなされ得ることを、理解するはずである。ただし、当業者は、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態に多くの変更がなされ得て、それでもなお、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、類似のまたは同様の結果が得られ得ることも理解するはずである。
【0050】
実施例に向けての序論
多剤耐性(MDR)病原体は、ヒトの健康に対する増加している脅威となっており、実際上、多くの感染性疾患が抗生物質以前の時代に向かって退行している1~3。その典型例として、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)の市中感染が劇的に増加していることが挙げられる。1940年代、S.aureus感染は、主として第1世代βラクタム(ペニシリン)により処置されたが、これは、細胞壁の合成に重要なトランスペプチダーゼであるペニシリン結合タンパク質(PBP)、標的とするものである。S.aureusにおいては、4種のPBP(PBP1~PBP4)がこれらの機能を果たしている。βラクタマーゼ産生株の出現により、βラクタマーゼ耐性第2世代ペニシリンの開発につながった。メチシリンがこれに含まれる。1959年にメチシリンが導入されてから間もなく、最初のMRSA株が報告された。これらの株は、βラクタム抗生物質に対する誘導耐性を産生する非S.aureus供与源から、高度に調節された複数の遺伝子を獲得した。これらの遺伝子の1つであるmecAは、ペニシリン結合タンパク質2a(PBP2a)をコードする。PBP2aは、細胞壁を架橋するという重要なトランスペプチダーゼ反応を行い、βラクタム抗生物質による攻撃下、他のPBPが阻害されている場合であってもこれを行う6~8。この結果をもたらす機構的基盤は複雑であり、活性部位のための閉構造に関連があり、その機能はアロステリック性により調節されている9、10。MRSAの出現により、S.aureusに対する治療選択肢としてのβラクタムを使用は事実上排除された。最近開発されたβラクタム剤のセフタロリンは、MRSA感染の処置において、PBP2aのアロステリック部位に結合することにより活性を示し、薬剤による不活性化のために活性部位の開放を誘発する10、11。しかし、セフタロリンに対する耐性12や、MRSAの処置に使用される他の抗生物質(リネゾリド、バンコマイシン、及びダプトマイシンを含む)に対する耐性が報告されている13~15
【0051】
直交的な細胞プロセスを標的とする多剤併用療法の使用は、Mycobacterium tuberculosis、Helicobacter pylori、及び他の感染の処置で奏効している16、17。しかし、これらの療法に対しても耐性が増加している18~20。発明者らは、MRSAに対し可能性が見込まれる新たな療法を特定した。この療法は、3つの別個の世代及びβラクタム抗生物質サブクラスからの、臨床的に承認された薬剤の併用物からなり、いずれも細胞壁合成を標的とする。これらの薬剤は、すなわち、メロペネム、ピペラシリン、及びタゾバクタム(ME/PI/TZ)である。この療法は、以下の3つの戦略からの構成要素を使用する:1)同じ細胞系の複数のノードを標的とする半合成抗生物質誘導体の使用12、21、2)薬剤の相乗作用の利用により薬剤の効力を増加させるようなこれらの抗生物質の併用物の使用22、23、及び3)耐性の進化を抑制するための、当該併用物における構成要素間の付帯感受性の使用24,25。これらの方法のそれぞれは、主なMDRグラム陰性及びグラム陽性のヒト病原体に対し用いられ、成功している26、27。しかし、これらの戦略を個別に使用すると、しばしばMDR病原体の新たな耐性進化による妨害を受け、これらの感染の処置に対する選択肢の減少につながった5、14、21、28、29
【0052】
発明者らは、ME/PI/TZが以下を通じて機能するものと仮定している:メロペネムによるPBP1阻害、ピペラシリンによるPBP2の標的化、タゾバクタムによるPC1クラスA βラクタマーゼからのピペラシリンの保護6、30~34、及び当該併用物における抗生物質の別の分子が阻害を行うための、メロペネムによるPBP2aの活性部位のアロステリックな開放11。この結果、MRSAにおける細胞壁合成機構の複数の構成要素を同時に攪乱することによる相乗的応答がもたらされる。発明者らは、ME/PI/TZの構成成分をMRSA N315に曝露することにより、この相乗作用の高い3重併用物内で、耐性進化を抑制する相互的付帯感受性が示されることを見いだしている。これは、逆に耐性進化を加速させてしまう一部の相乗的併用療法23、35とは対照的である。この効果は、付帯感受性がEscherichia coliの非病原性実験室株における耐性進化を遅らせることを示す最近の研究24、36に合致している。発明者らによる結果は、付帯感受性構成成分の相乗的併用物で使用する場合に、旧型βラクタム抗生物質をMRSAに対し再び臨床的に使用することを支持し、ヒト用に承認済の既存の薬剤を用いた新たな処置パラダイムを開くものである。
【0053】
実施例1 インビトロのMRSA株におけるメロペネム、ピペラシリン、及びタゾバクタム間の相乗作用
23種の様々な抗生物質(表1)に対する高い耐性レベルを有することに基づき、全ゲノムが配列決定されているMRSAのMDR株の群からS.aureus MRSA N31537を本試験用に選択した。MRSA N315は、ブドウ球菌染色体カセットのmec(SCCmec)II型を含有し、これはmecメチシリン耐性オペロン38をコードし、さらにbla βラクタマーゼオペロン39を含有するペニシリナーゼプラスミドpN315をコードする。あらゆる主な薬剤クラスからの代表的薬剤が含まれるこれら23種の抗生物質化合物に対する集中的な組み合わせスクリーニングから(表1)、発明者らは、インビトロでMRSA N315に対し高度に相乗的な殺細菌活性を示すME/PI/TZの組み合わせを特定した。分画阻害濃度指数(fractional inhibitory concentration index)(FICI)の測定基準を使用すると、FICI=0.11だった40、41(表2A)。任意の数の薬剤併用について、1未満のFICIは相乗作用を示し、1に等しいFICIは相加性を示し、1を越えるFICIは無関連または拮抗作用を示す。注目すべきことには、これらの3種の薬剤全てが、βラクタム薬剤の異なるサブクラスに属し、典型的にはMRSA株はほとんどのβラクタムに対し高耐性であるにもかかわらず、これらの薬剤は細胞壁合成における重要なトランスペプチダーゼ酵素を標的とする。個々のβラクタムに対する全般的な耐性は、これらの薬剤がPBP2aのトランスペプチダーゼ活性部位を阻害できないことに起因し、これによりS.aureusにおける他のトランスペプチダーゼのβラクタム阻害が相殺される
【0054】
ME/PI/TZは、MRSA N315に対し、臨床的に意義のある濃度で、この3種構成要素のうちの2重併用物であるメロペネム/ピペラシリン(ME/PI)、メロペネム/タゾバクタム(ME/TZ)、及びピペラシリン/タゾバクタム(PI/TZ)と比較して、増加した相乗作用を示す(図1、表2B~C)。3種全てのβラクタム化合物の最終MIC及びFICIを、3Dチェッカーボードを用いて、各化合物につき128~2μg/mlの2倍希釈系列及び薬剤なしで試験した。これらの希釈系列により、構成成分の比を最大64倍の差にして最大相乗作用を探ることが可能になり、さらに、それぞれの単一化合物、全構成要素の2重併用物及び3重併用物について単独の結果を得ることができた。発明者らは、3Dチェッカーボードを使用して、MRSA N315に対する最小薬剤投入及び最大相乗作用のためのME/PI/TZの最適比を1:1:1と判定した。併用物における3種の構成成分のMRSA N315に対する最小阻害濃度(MIC)(それぞれ2μg/ml)は、これらの薬剤のそれぞれが単独の場合のメチシリン感受性S.aureusに対する臨床的感受性ブレイクポイント(4~8μg/ml)42を下回る。構成要素の2重併用物であるME/PI及びPI/TZも、それぞれFICI=0.44及び0.22でN315に対し相乗的であるが、一方ME/TZは0.67と相乗性が低い。Loeweによる相乗の相加モデルに基づけば、薬剤は自らに対し相乗的になることができない36。βラクタムは全て細胞壁経路を標的とするが、発明者らによるFICI法(Loewe相加性)の使用は、これらの相互作用の非相加的性質を裏付けるものである。MRSA N315においてME/PI/TZの高い相乗作用が見られるのに対し、当該併用物は、メチシリン感受性S.aureus(MSSA)参照株ATCC2921342、43では相加活性をわずかに下回り(FICI=1.12)(表2B~C)、発明者らは、相乗作用が生じるにはPBP2aが必要であると仮定する。
【0055】
発明者らは、ME/PI/TZについて観察される相乗作用の機序が、セフタロリンに関する報告10、11と同様に、その構成要素によるPBP2aのアロステリックなトリガーに起因することを提唱する。実際に、発明者らは、メロペネムがPBP2aのアロステリック部位に270±80μM(104±31μg/mlに相当)の解離定数(Kd)で結合すると判定した。健康なヒトの場合、メロペネムを1gの推奨用量でボーラス静脈内注入した後の平均ピーク血漿濃度は112μg/mlである44。臨床的に達成されるメロペネムの濃度はKを上回るため、これらの濃度において、PBP2aのアロステリック部位に結合するメロペネムはPBP2aの活性部位を開放するトリガーとなり、それにより、メロペネムの別の分子または当該併用物における他のβラクタムがアシル化/非活性化のためにそのトランスペプチダーゼ活性部位にアクセスすることが可能になると考えられる8、10、45
【0056】
ME/PI/TZのMRSA N315に対する高度に相乗的な活性を、複数のSCCmecの型を表す72種の臨床的MRSA分離菌のパネルの全てに対して再現させた(表3A~B)。臨床的分離菌に対する当該併用物のMICは、各構成要素につき0.4~33.3μg/mlの範囲であり、平均が9.7μg/ml、MIC50及びMIC90がそれぞれ3.7μg/ml及び33.3μg/mlであった(表4A)。
【0057】
実施例2 MRSAに対し代替的カルバペネム、ペニシリン、及びβラクタマーゼ阻害薬を用いた相乗作用における機構的頑健性
発明者らは、MRSA N315及び代表的な臨床的MRSA分離菌を他のカルバペネム/ペニシリン/βラクタマーゼ阻害薬併用物に対し試験することによって、観察された相乗作用がアッセイ対象の抗生物質に限定されるのではなく、これらのそれぞれのβラクタムクラスに対し一般化可能であると判定した。発明者らは、イミペネム/ピペラシリン/クラブラネート(IM/PI/CV)によるMRSA N315の処置が、ME/PI/TZと同じまたはそれより高い相乗作用を示すことを見いだした。メロペネム/アモキシシリン/タゾバクタム(ME/AX/TZ)は、MRSA N315のみにおいて高い相乗作用(FICI=0.04)を維持し、臨床的MRSA分離菌では低い相乗作用(FICI=0.55)が示された(表2B)。これらの代用3剤の構成成分についてのMICは全て、インビボにおけるこれらの平均ピークヒト血漿濃度46、47を下回っている。ME/PI/TZと同様、IM/PI/CVもMSSA ACTT 29213に対し相加未満の活性(FICI=1.14)を示している(表2B~C)。これらの結果は、相乗作用のためには、mecA遺伝子産物であるPBP2aがそのアロステリズムと共に存在する必要があることをさらに支持するものである。その理由は、メチシリン感受性S.aureusの場合には、カルバペネム/ペニシリン/βラクタマーゼ阻害薬の併用物の相乗性が欠如するためである。
【0058】
また、当該併用物におけるカルバペネム構成成分を、2種の他の後世代βラクタム誘導体であるモノバクタム系またはセファロスポリン系のいずれかと置き換えた場合の影響についても試験した。ME/PI/TZとは対照的に、アズトレオナム/ピペラシリン/タゾバクタム(AZ/PI/TZ)及びセフェピム/ピペラシリン/タゾバクタム(CP/PI/TZ)の3重併用物における相乗作用レベル(共にFICI=0.33)は、PI/TZのみの場合(FICI=0.22)よりも低かった(表2B)。考えられる理由としては、アズトレオナム(モノバクタム系)がグラム陰性PBP活性を有する48のに対し、セフェピム(セファロスポリン系)はPBP1よりもPBP2を優先的に標的とすることが挙げられる。
【0059】
MRSA COL株バックグラウンドにおいてキシロース誘導型アンチセンスRNA戦略を用いてPBP1、PBP2、PBP2a、またはPBP3の発現を低減することにより、ME/PI/TZの構成要素の標的を確認した。PBP2aの発現レベルを減弱すると、株は、メチシリン感受性S.aureusとしてふるまい、全ての試験βラクタムに対し感作された(図6A~C)。メロペネム、ピペラシリン、及びタゾバクタムをpbpAアンチセンス株に対し試験したところ、メロペネムのみがキシロース誘導下で広い阻害ゾーンを示した。これは、PBP1がメロペネムの標的であることを確認するものである(図6D~E)。pbp2アンチセンス株に関しては、メロペネム及びピペラシリンの療法がキシロース誘導下で有効性の増加を示した。これは、メロペネム及びピペラシリンがそれぞれPBP2に対する一定の活性を有することを実証するものである(図6F~G)。pbp3アンチセンス株についてはいかなる影響も観察されなかった。これは、ME/PI/TZ活性がPBP1、PBP2、及びPBP2aの攪乱に集中的に向けられているという発明者らの仮説に合致した(図6H~I)。pbp3株を除く全ての場合におけるアンチセンス株は、当該3重併用物に対する感作を示し、観察された相乗作用を強調するものだった。
【0060】
実施例3 MRSA N315における10日超にわたるメロペネム/ピペラシリン/タゾバクタムに対する適応欠如
耐性の発達及び伝播は、抗微生物療法の有効性及び寿命を劇的に減じる恐れがある。発明者らは、阻害未満抗生物質濃度の当該3重併用物及びその構成要素のそれぞれにおいて連続継代を行うことで、ME/PI/TZがMRSAにおける耐性進化を抑制することを実証した。インビボ及びインビトロの臨床的処置をより正確にモデル化するため、発明者らは、これらの薬剤を、経時的に用量を増加させて適用するのではなく、臨床的処置で生じるのと同様に、長期間にわたって固定した用量で適用した。11日の実験の間、MRSA N315のME/PI/TZに対する耐性進化は観察されなかった。これに対し、全ての2重併用物及び単一構成要素に対する耐性進化は1~8日以内に観察され、これは先行研究23、50に合致する結果であった(図2)。2重併用物及び単一構成要素については、最初に決定したMICを上回る全条件で生細胞が観察されたが、ME/PI/TZについては、初期MICまたはそれを上回る条件で生細胞が観察されなかった。全ての2重併用物及び単一構成要素において経時的な増殖速度の増加が注目されたが、一方MIC未満のME/PI/TZにおいては、N315の増殖速度は実験全体を通して変化せず、薬剤なし対照と同等であった(図223。また、ME/PIの2重併用物に曝露したN315は、1日目の後に3倍のMIC増加を示したが、これは1日目の後に生細胞が存在していたが、さらなる継代及び適応が行われるまで増殖しなかったことを示すものである。最小殺細菌濃度(MBC)の決定により、ME/PI/TZの3重併用物がMRSA N315に対し殺細菌性であることが裏付けられた(表4B)。同時に、これらの結果は、MRSA N315のME/PI/TZに対する新たな耐性出現の抑制を実証するものである。
【0061】
実施例4 これらの併用物の構成成分における相互的付帯感受性が適応抑制の基礎となる
付帯感受性がME/PI/TZの適応抑制における因子であるかどうかを判定するため、MRSA N315を様々なβラクタムに事前に曝露することが他の構成成分に対する感受性に及ぼす影響について解析した(図3及び図7)。メロペネムとピペラシリンとの間、及びピペラシリンとME/TZとの間には強力な相互的付帯感受性の存在が観察され、一方PI/TZはMRSA N315をメロペネムに対し感作させたが相互的ではなかった。ピペラシリンに対する付帯感受性もタゾバクタムに対する事前曝露により付与されたが、逆のことは生じなかった。興味深いことに、タゾバクタムに対しては、いずれの単一または2重の化合物に曝露した後も付帯感受性は見いだされなかった。アモキシシリン及びピペラシリンの付帯感受性及び耐性プロファイルはほぼ同一であり、メロペネムに対する適応により、MRSA N315はアモキシシリンに対し感作される(図3及び図7)。また、ピペラシリンは、MRSA N315に対するなおいっそう強力なカルバペネムであるイミペネムに対する付帯感受性も示した。しかし、カルバペネム/ペニシリン/βラクタマーゼ阻害薬の併用物または構成要素により付帯感受性を試験したいずれのセファロスポリンについても感受性を示す結果は得られず、むしろ耐性の増加または無関連が注目された。これらの結果は、観察された付帯感受性による耐性抑制がME/PI/TZの構成要素薬剤クラスに特有であることを裏付けるものである。
【0062】
実施例5 適応MRSA N315は大規模なゲノム改変を経る
発明者らは、全ゲノム配列決定を使用して、感受性のゲノム基盤ならびに野生型MRSA N315及び適応MRSA N315株の耐性表現型について調べた。いずれの適応MRSA N315分離菌内にもPBPまたはβ-ラクタマーゼ遺伝子の変異は見いだされなかった。しかし、リードカバレッジの不在により、タゾバクタム単独(100μg/ml)及びME/TZ(各11.1μg/ml)に適応させた分離菌において、ペニシリナーゼプラスミドpN315が喪失していることが特定された(図4A)。このプラスミド喪失は、過去に報告されたMRSAからプラスミドを除去する手法(例えば、高熱及びSDS処置)51による場合よりもはるかに急速に生じた。PI/TZ適応分離菌においては、約400kbのMRSA N315染色体(GenBank ID:BA000018.3)がリードカバレッジ深度の解析後に、適切なゲノム位置2,100,000から2,550,000bpに複製されることが観察された。興味深いことに、この間隔は、ddlA D-Ala-D-Alaリガーゼを含めた、細胞壁合成に関わるいくつかの推定遺伝子及び確認済遺伝子を含有する(図8)。
【0063】
MRSA N315におけるpN315の喪失は、ピペラシリン及びアモキシシリンに対する感受性の増加と相関する。これらはいずれも、当該プラスミド上でコードされるblaZ(PC1)クラスA β-ラクタマーゼに感受性であるはずのペニシリンである。しかし、pN315の喪失は、タゾバクタム単独及びME/PI/TZに対する耐性の増加ももたらす(図3図7、表5A)。pN315の存在とME/PI/TZ活性との間に考えられる結びつきの1つは、既知の、MecI及びBlaIリプレッサーとこれらの共有mecオペロン標的との間で行われる調節性クロストークである52~54。pN315の喪失が、ME/PI/TZ活性に重要であると知られている遺伝子の発現に及ぼす影響を試験するため、適応MRSA N315株及び野生型MRSA N315株のqRT-PCR解析を実施した(図4B)。発明者らは、野生型MRSA N315内のpN315プラスミドにおけるblaZ β-ラクタマーゼの発現が常在的であると判定したが、タゾバクタムに適合させたクローンではblaZの発現が観測されず、これらのクローンにおけるpN315の喪失に合致した。また、発明者らは、100μg/mlのタゾバクタムに適合させたblaZ欠損MRSA N315分離菌におけるmecAの発現が常在的であることも見いだした。これはpN315及びblaオペロンの喪失を介してのmecオペロンの調節不全に合致した。最終的に、発明者らは、タゾバクタムが、blaz欠損条件下で見られたmecAの常在的発現と同様のレベルで、野生型MRSA N315におけるmecAの強力な誘導物質であることを見いだした。
【0064】
実施例6 MRSA N315が構成要素に対する耐性を進化させた場合におけるME/PI/TZの相乗作用
次に、発明者らは、ME/PI/TZの構成成分に対する耐性がMRSAに対する有効性について有する役割について調べた(表5A)。MRSA N315を事前に33.3μg/mlまたは100μg/mlいずれかのピペラシリンに曝露することにより、次にME/PI/TZに対する株の感作が示され、各構成成分につき3.7μg/mlから1.2μg/mlに減少した。しかし、MRSA N315を事前にME/TZ(各11.1μg/ml)またはメロペネム単独(33.3μg/ml)に曝露することでは、ME/PI/TZに対する耐性レベルにおいて9倍の増加が示された(各構成部分につき3.7μg/mlから33.3μg/mlに増加)。タゾバクタム単独に曝露すると、ME/PI/TZに対する耐性は、7日目までは中程度の耐性がもたらされ(各11.1μg/ml)、11日目にはより高い耐性がもたらされた(各33.3μg/ml)。ME/PIまたはPI/TZに対する事前曝露は、11日にわたりMICの3倍の増加(3.7μg/ml~11.1μg/ml)をもたらすにとどまった。
【0065】
構成成分薬剤に適応させた分離菌においてME/PI/TZに対するMICの上昇があったものの、この3剤併用物は依然として、全ての適応分離菌において相乗作用を維持した(表5B)。このことは、単剤MICとの比較で、72種の臨床的MRSA分離菌において観察されたME/PI/TZのMICの範囲内における相乗的薬剤活性(表4)に合致する。これらの結果は、サブ構成成分耐性を有効にするゲノム的変化が選択され得る場合であっても、3剤併用物による全体的な相乗的活性は維持されるということを示している。発明者らは、非病原性E.coli株についての最近の研究36とは対照的に、任意の構成成分薬剤に対する耐性の増加を伴っても、相乗作用に関するME/PI/TZの全体的な薬剤相互作用プロファイルにおける変化を観察しなかった。
【0066】
実施例7 ME/PI/TZはリネゾリドと同程度にインビボでMRSAに対し有効である
次に発明者らは、腹膜炎の好中球減少マウスモデルを用いて、ME/PI/TZまたはその構成要素が、インビボのMRSA感染の処置において有効であり得るかについての試験を行った。ME/PI/TZ、ME/PI(各67mg/kg)、またはリネゾリド(30mg/kg)で処置したマウスから感染11時間後に血液を採取したところ、蒔かれたコロニーが0で液体培養中の増殖はないという、感染の排除を示す結果となった(図5、表7)。これらの処置のそれぞれを受けた全マウス(n=6/群)が感染後6日間(マウス研究の総期間)生存した。ME/PI/TZ及びME/PIの有効性は、ビヒクルと比較しての全ての処置マウスにおけるMRSA感染の排除及び生存(p=0.02、フィッシャーの正確確率検定)に基づいて、リネゾリド単剤療法に類似するものであった。
【0067】
ME/PI/TZ、ME/PI、またはリネゾリドにより感染マウスが完全に救助されたこととは対照的に、ME/TZ、PI/TZ、またはメロペネム単体で処置した一部のマウス、及びピペラシリンまたはタゾバクタムのみで処置した全てのマウスは、(ほとんどが48時間以内に)感染によって死んだ(図5、表7)。これらの他の薬剤レジメンによる処置は、ビヒクルによる処置と有意差はなく(p>0.05、フィッシャーの正確確率検定)(表6A)、ビヒクル処置の全てのマウスも48時間以内に感染で死んだ。
【0068】
発明者らは、メロペネム、ピペラシリン、またはビヒクルで処置したマウスから採取した血液からのMRSA N315培養物を、ME/PI/TZ及びその構成要素単剤に対するインビトロMICについて試験し、インビボの継代中に適応が生じるかどうかを判定した。全ての4つの試験対象MRSA N315分離菌は、3重ME/PI/TZ及び全ての構成成分薬剤に対して同一のMICを有し、そのため同一の相乗作用を有した(表6B)。これらのデータは、インビボ継代11時間以内では、これらの株内で試験対象の3重ME/PI/TZを克服するための適応が生じなかったことを示唆する。
【0069】
実施例に対する考察
カルバペネム、ペニシリン、及びβラクタマーゼ阻害薬を含有する抗細菌性3剤併用物が、同じ細胞系における複数のノード(細胞壁合成)を標的とし、また、インビトロの様々なMRSA株に対し、臨床的に達成可能な濃度で高度に相乗的かつ殺細菌性であることを示した。これは、付帯感受性及び相乗作用が、非病原性の実験室株のみで、直交的な細胞標的に対し機能する薬剤クラスの併用物から生じると示している細菌の研究25、36とは対照的である。高濃度のカルバペネム及び他の薬剤は毒性効果を有する可能性が考えられるため、相乗作用を介して薬剤当たりの用量を低減することによって、潜在的な毒性が緩和される55。発明者らによる3Dチェッカーボード試験は、MRSA N315に対するME/PI/TZの最適投入濃度が1:1:1の比(各2μg/ml)で与えられることを裏付けたが、この濃度は、これら化合物のメチシリン感受性S.aureusに対する感受性ブレイクポイントを下回り、この高耐性MRSA株に対し以前は不活性だったこれらの薬剤の投入濃度は、8~64倍の低減となる。発明者らの機構的解析は、発明者らの仮説、すなわちメロペネムによるPBP1の標的化、ピペラシリンによるPBP2の標的化、タゾバクタムによるβ-ラクタマーゼ切断からのピペラシリン保護、及び併用物中の抗生物質の別の分子が阻害するようにするための、メロペネムによるPBP2aの活性部位のアロステリックな開放が、MRSAの細胞壁合成システムの複数の構成成分を同時に攪乱することにより相乗効果をもたらす、という仮説を支持するものである(図9)。
【0070】
また発明者らは、予備的に、この併用物がインビボモデルで、高致死性の好中球減少性MRSAにおける活性を有することも示した。これは、この臨床的に承認されたβラクタムの3重併用物が、リネゾリドのような大幅に高額の単剤療法と同様に感染を排除する可能性があることを実証するものである。マウスで観察されたメロペネムの血漿レベルは、健康なヒトにおける薬剤の血漿レベルと十分な相関があり56、メロペネムはこれらの臨床的に達成可能な濃度で、PBP2aの活性部位を開放するアロステリック性のトリガーとなるKdを獲得し、当該併用物におけるメロペネム及び他のβラクタムが阻害のためにアクセスできるようになる。
【0071】
注目すべきことに、ME/PIの2重併用物は、ME/PI/TZ及びリネゾリドと同様に、インビボのMRSA N315感染を11時間以内に排除した。インビトロでは、この併用物について、ME/PI/TZで見られたのと同様に、高い相乗性スコア及び相互的付帯感受性が観察された。ただし、ME/PIは、ME/PI/TZと同じ程度には耐性進化を抑制しなかった。この特性は、今回の攻撃的感染モデルには関連性がなかった可能性があるが、ヒトのMRSA感染で見られる、より長い処置時間にとっては重要であり得る。また、ME/PI/TZは、その高い相乗作用のため、ME/PIより低い総濃度でも有効である可能性がある。N315株をインビボでME/PI/TZのタゾバクタム構成成分に対し長く曝露させても、付帯感受性及び適応の抑制についてのインビトロの結果と一致して、ペニシリン構成成分に対する同時感作によるpN315プラスミドの放出が促進される可能性がある。実際、より適切にこの問題に対処するには、潜在的な長期間のインビボ耐性進化の試験を、薬剤の致死未満濃度下で重要なマウスの追跡実験において行う必要があるであろう。
【0072】
発明者らによる、ME/PI/TZ活性についてのロバスト機構のインビトロ結果及び予備的なインビボ結果から、この併用物が臨床で即時に使用可能であり得ることが示唆される。それは、この併用物には、MRSAに対する単剤療法としては数十年前に陳腐化したものの現時点でFDA承認されている薬剤が含まれているためである。しかし、インビトロで示された当該併用物のさらなる機構的特徴(相乗作用、長期間の投与にわたる耐性抑制、付帯感受性など)は、発明者らによる高度に攻撃的な好中球減少マウスモデルで観察された、有望ではあるが予備的な活性を支持するためには、相当に多くのインビボ試験を必要とするであろう。
【0073】
発明者らは、メロペネムまたはタゾバクタムに対する高耐性により、ME/PI/TZの有効性が相乗作用を維持しながらもわずかに低減することに注目する。発明者らによる耐性進化の解析では、メロペネム、ピペラシリン、及びタゾバクタムの間の関係を破壊する可能性が考えられる、水平方向に獲得された耐性遺伝子を説明することができない。このような注意点があるものの、発明者らは、ME/PI/TZ併用物が即時に実行可能な抗MRSA治療法であり、かつ、この併用物により、相乗的であると同時に付帯感受性を有する構成要素によってコードされる高次の抗生物質併用物について想定される優れた有効性をさらに機構的に探ることが保証されるものと考えている。MRSAに対しリネゾリドと同様の活性を有するME/PI/TZの潜在的有効性により、staphylococciに対するβラクタムの臨床使用の広範な見通しが再び開かれる。また、この系統の、慎重に設計された相乗的併用物で既存の抗生物質を別の目的に再利用するという研究は、このような薬剤が既にヒト用に承認されていることから、即時的な臨床需要に対処するであろうことも示唆される。いずれかの抗生物質またはいずれかの抗生物質併用物に対し耐性が出現することは避けられない。それでも、発明者らの研究で証明されたように、主要な薬物間相互作用の特徴から構成される併用物は、薬理学設備内で使用可能な既存薬剤の有用さを保つことにより、抗生物質耐性の出現を軽減する上でのツールとなり得る。
【0074】
実施例のための方法
微生物学的試験:MRSA N315は、Dr.Steven Gill,University of Rochester,Rochester,NY,USAから寄贈された。S.aureus ATCC29213は、American Type Culture Collectionから取得した。Barnes-Jewish Hospital,St.Louis,MO,USAの臨床的分離菌株バンクから、匿名化された臨床的MRSA分離菌をランダムに選択した。Clinical and Laboratory Standards Institute(CSLI)の勧告43に基づき、増殖阻害のための最小阻害濃度(MIC)アッセイを実施した。簡潔に述べると、23種の抗細菌性化合物(補足表1)を、全ての主な薬剤クラスの範囲に基づき選択した。この中には、ヒト用の抗生物質としては分類されないが既知の抗細菌特性を有する3種の化合物が含まれる。化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、50mg/mlのストック濃度にした。例外:スルホメツロンはDMSO中20mg/ml、トブラマイシン、D-シクロセリン、及びコリスチンはH2O中50mg/ml、2μmにて濾過。23種の化合物を、固定の比でかつ溶媒中100倍濃度で、考えられる253種の固有の対での併用物になるよう製剤化した。考えられる相乗的または拮抗的薬剤相互作用を検査する濃度範囲を広げるため(2,000倍超)、薬剤ストックを3倍希釈系列にし、BioMek Fx自動分注機(Beckman Coulter,Inc.)を用いて、96ウェルのCostarマスター薬剤プレートに8列で配列した。次に、薬剤を1:100で混合し、200μl/ウェルのカチオン調整Mueller-Hintonブロス(CAMHB)を含有する96ウェルプレートに入れた。全ての薬剤感受性アッセイウェルに、約1μlの中間対数期の細菌培養物を0.5マクファーランド標準(約2x10CFU/ml)で接種し、37℃で24時間増殖させた。37℃で24時間後のエンドポイント増殖を、Synergy H1リーダー(BioTek,Inc.)を用いて600nm≧0.1の光学濃度により決定した。
【0075】
抗生物質併用物の相乗作用を分画阻害濃度指数(FICI)法57、58を用いて決定した。この方法により、併用での抗生化合物のMICを化合物単体のMICで除算し、この併用物における各薬剤構成成分の分画寄与を得た。併用物における商を全て加算し、薬剤相互作用を以下の式を用いてスコア化する:FICI=(MIC AA、B、C併用物)/MIC薬剤A+(MIC BA、B、C併用物)/MIC薬剤B+(MIC C C併用物)/MIC薬剤C。次に、選択したMRSAに対する対の併用物を残りの21種の単一薬剤のそれぞれと組み合わせて3重併用物を作製し、製剤化し、2重併用物と同一の方法で試験した。MICでの薬物条件の3重反復測定を介して、併用物の相乗作用を確認した。スパースなスクリーニングでのMRSA N315に対する高い相乗作用に基づき、ME/PI/TZ及びその構成要素をさらなる特性解析のために選択した。ME/PI/TZ及びその構成要素に対する最終的な感受性試験を、各構成成分につき128~2μg/mlの2倍希釈を用いて実施した。
【0076】
重複ウェルのCAMHB媒体中指示濃度のME/PI/TZを約5X10CFU/mlの中間対数期にあるMRSA N315に接種し、37℃で24時間インキュベートすることにより、MRSA N315におけるME/PI/TZの最小殺細菌濃度(MBC)を決定した。重複ME/PI/TZウェルから採取した50μlを1:100希釈したものの100μlを、ミューラー・ヒントン寒天培地(MHA)プレートに播種し、終夜24時間インキュベートした。CLSIにより定義されるように59、MIC、またはMICを2段階上回る希釈においてコロニー増殖のないことが殺細菌活性を確認した。メロペネム(CAS 96036-03-2)及びクラブラネート(CAS 61177-45-5)はAK Scientific,Inc.(Union City,CA,USA)から入手した。ピペラシリン(CAS 59703-84-3)、タゾバクタム(CAS 89786-04-9)、イミペネム(CAS 74431-23-5)、及びアモキシシリン(CAS 26787-78-0)はSigma-Aldrich Co.(St.Louis,MO,USA)から入手した。
【0077】
適応及び交差耐性アッセイ:414MRSA N315を150μl/ウェルのCAMHB中、37℃で絶え間なく振とうして増殖させ、継代を11日にわたりME/PI/TZ、ME/PI、ME/TZ、PI/TZ、ME、PI、及びTZの反復3倍希釈液を含有する同一の96ウェルプレート中で行った。薬剤併用物の最高濃度は各構成成分につき33.3μg/mlであり、単一薬剤の最高濃度は100μg/mlであった。細胞生存能を試験するため、11日目のアッセイ終了時、プレートの全ウェルを滅菌済96ピンレプリケーターでピン差しし、CAMHB単独に移した。継代後、プレートに1:1の30%CAMHB/グリセロールを満たし、後の解析のために-80℃で冷凍した。
【0078】
各条件下の継代にわたる分離菌の増殖速度を、対数変換した指数増殖期の線形適合により決定した。Hegreness et al23に従い、薬物条件下で1日目と最後の6日間の増殖の平均との間で増殖速度が0.2h-1超であった細胞を含有するウェルを、顕著に条件に適応しているとみなし、適応速度αを生成した。MICまたは増殖速度の増加を示すウェル中の各併用物または単一化合物から、適応分離菌を遡及的に選択し、冷凍した分離菌を寒天プレート上に縞状に並べて単一のコロニーを取得し、当初の増殖時と同一のブロス条件下で分離菌を再増殖させ、次に、11日間実施した当初の431プレートと同一の滅菌済96ウェルプレートに再接種した。
【0079】
qRT-PCRによる発現プロファイリング:野生型及び適応MRSA N315分離菌を、100mlのフラスコにおいて3重反復で、CAMHB+/-11.1μg/mlのピペラシリンまたは33.3μg/mlのタゾバクタム中で中間対数期まで増殖させた。中間対数期で細胞を採取するため、各培養フラスコを2x50mlのスクリューキャップ管に分割し、4℃で、10分間3500rpmで遠心沈降させ、上清を除去し、沈渣を2mlの血清学的ピペットで慎重に合わせた。1mlのRNAprotect Bacteria Reagent(Qiagen,Valencia,CA,USA)を沈渣に添加してRNAを安定化させ、軽くボルテックスし、室温で5分間インキュベートした。インキュベート後、管を再び4℃で、10分間3500rpmで遠心沈降させ、上清を除去し、沈渣を-80℃で保管した。以下のプロトコールにより全RNAを抽出した。
(1)細胞沈渣を500μlの緩衝液B(200mM NaCl、20mM EDTA)に再懸濁させる。
(2)210μlの20%SDSを添加する。
(3)約250μlの体積の酸洗浄滅菌済ガラスビーズ(Sigma,Inc.)を添加する。
(4)500μlのフェノール:クロロホルム:IAAを添加する。
(5)ビーズビーティングを「高(high)」で5分間行う。
(6)4℃で、3分間8000rpmで遠心する(相分離させるため)。
(7)上面の水相を除去し、新たな管に移す。
(8)700μlのイソプロパノールを添加する。
(9)70μlの3M NaOAcを添加し、反転により十分に混合する。
(10)4℃、最大rpmで10分間遠心する。
(11)上清を吸引する。
(12)750μlの氷冷70%EtOHを添加し、最大rpm、4℃で5分間遠心する。
(13)上清を吸引し、EtOHを乾燥させ、RNアーゼのない場所で管を開けたままにする。
(14)100μlの無ヌクレアーゼ水を各管に添加し、再懸濁させる(50℃ヒートブロックに管を入れ、定期的にボルテックスする)。
(15)12μlのTURBO-DNアーゼ懸濁液(Ambion,Inc.)及び10μlの無RNアーゼTURBO-DNアーゼを各試料に添加し、37℃で30分間インキュベートする。
(16)製造業者のプロトコールによりMEGAClearカラム及びキットを用いて試料を精製する。
(17)製造業者のプロトコールに従って、Baseline-ZERO DNアーゼ懸濁液(Epicentre,Inc.)及び10μlのBaseline-ZERO DNアーゼを用いて試料を再精製する。
(18)最終RNA試料を30μlのTE懸濁液、pH7.0で溶出させる。
【0080】
SuperScript First-Strand Synthesis System for RT-PCR (Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)を用いて第1ストランドcDNAを合成した。CFX96 Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad Laboratories,Inc,Hercules,CA,USA)上のSYBR Select Master Mix for CFX(Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)を用いて、MRSA N315におけるpbp2、mecA、及びblaZのqRT-PCRをgyrBに対して実施した。使用したプライマー配列(各0.3μM):
pbp2_F: CGTGCCGAAATCAATGAAAGACGC、配列番号1
pbp2_R: GGCACCTTCAGAACCAAATCCACC、配列番号2
mecA_F: TGGAACGATGCCTATCTCATATGC、配列番号3
mecA_R: CAGGAATGCAGAAAGACCAAAGC、配列番号4
blaZ_F: TTTATCAGCAACCTTATAGTCTTTTGGAAC、配列番号5
blaZ_R: CCTGCTGCTTTCGGCAAGAC、配列番号6
gyrB_F: CGATGTGGATGGAGCGCATATTAG、配列番号7
gyrB_R: ACAACGGTGGCTGTGCAATATAC、配列番号8
CFXプロトコール:50℃で2分、95℃で2分、(95℃で15秒、60℃で1分)x40サイクル。正規化定量60のΔΔCt法を用いて遺伝子発現を決定した。ここで、Ctは指数増殖期が閾値の蛍光シグナルを上回って増加したときのサイクル数を示す。
【0081】
配列決定ライブラリーの調製:下記のようにして、リソスタフィン消化及びフェノール:クロロホルム:IAA抽出を用いて、野生型及び適応MRSA N315からゲノムDNA(gDNA)を抽出した。
(1)終夜振とうした5mlのS.aureus株培養物から1mlのアリコートを採取し、13,000rpmで3分間遠心沈降させ、培地を捨て、追加の1mlの培養物を添加し、これを繰り返す。
(2)500μlの2X緩衝液A(NaCl 200mM、トリス200mM、EDTA20mM)を4℃でペレット状の細胞に添加し、軽くボルテックスして細胞を再懸濁させる。
(3)2.5μlの10mg/ml(200x)リソスタフィン(Sigma-Aldrich,Inc.)を管に添加する。
(4)管を叩いて混合し遠心沈降させ、37℃のドライバスに1時間入れる。
(5)高速冷却マイクロ遠心処理で4℃にする。
(6)約250μlの0.1mmジルコニウムビーズ(BioSpec Products、カタログ番号1107910)を添加する。
(7)210μlの20%SDSを添加する。
(8)500μlのフェノール:クロロホルム:IAA(25:24:1、pH7.9)を添加し、試料を氷上で冷やす。
(9)ビードビーティングを「均質化(homogenize)」設定で4分間行う(ビーティング2分、氷冷2分、ビーティング2分)。
(10)6800rcf(4℃)で3分間遠心する。
(11)待機の間、PLGカラム(5Prime,cat#2302820)を最大速度(20,800rcf)、室温で30秒間、遠心沈降させる。
(12)水相(約500μl)を、事前遠心したフェーズロックゲル管に移す。
(13)等量(500μl)のフェノール:クロロホルム:IAA(25:24:1、pH7.9)を管に添加し、反転により(ボルテックスはしないこと)混合する。
(14)管を最大速度(20,800rcf)(室温)で5分間遠心する。
(15)水相(約500μl)を、新しいEppendorf管に移す。
(16)500μlの-20℃イソプロパノールを添加する。
(17)50μl(1/10の体積)の3M NaOAc、pH5.5(Ambion,AM9740)を添加し、反転により十分に混合する。
(18)-20℃で少なくとも1時間(終夜が好ましいが必須ではない)保管する。
(19)最大速度、4℃で20分間遠心する。
(20)沈渣を500μlの100% EtOH(室温)で洗浄し、4℃で3分間遠心沈降させる。
(21)EtOHからピペットで慎重に取り、15分超風乾する。
(22)30μlのTE(Ambion,AM9861)を添加し、50℃で5分間インキュベートする。
(23)QIAGEN QIAQuick PCR精製カラムを通じて以下の変更を伴ってDNAを実行する:カラムクリーンアップ開始時のRNアーゼ処理。使用する全てのPB緩衝液300μlごとに4μlのQuiagenRNアーゼ(100mg/ml)と合わせ、PB緩衝液/NRアーゼ中室温で15分間インキュベートする。
(24)PE洗浄緩衝液を室温で2分間カラム内に静置させ、55℃に事前加熱した35μlのEB緩衝液でgDNAを溶出させ、最終スピンの前に1分間静置させる。
【0082】
発明者らは、各ゲノムからの500ngの全長DNAを、10分での切断を9ラウンドそれぞれBioRuptor XLで行い、約300bpの断片に切断した。各ラウンドにおいてパワー設定は「H」であり、試料を30秒処理し30秒休ませた。各試料をQiagen MinElute PCR精製キットを用いて製造業者のプロトコールにより濃縮した。2.5μlのT4 DNAリガーゼ緩衝液を10mM ATP(NEB,B0202S)、1μlの1mM dNTP(NEB)、0.5μlのT4ポリメラーゼ(NEB,M0203S)、0.5μlのT4 PNK(NEB M0201S)、及び0.5μlのTaqポリメラーゼ(NEB,M0267S)と共に添加することで、切断DNA断片の末端修復を開始した。この混合物を25℃で30分間、次に75℃で20分間インキュベートした。次にこの溶液に、バーコード付きアダプターを0.8μlのT4 DNAリガーゼ(NEB,M0202M)と共に添加した。これはアダプターをDNA断片に連結させることが目的である。次に、この溶液を16℃で40分間、次に65℃で10分間インキュベートした。次に、このアダプター連結DNAを、Qiagen MinElute PCR精製キットを用いて製造業者のプロトコールにより精製した。
【0083】
次に、Biotium GelGreen色素(Biotium)で染色した1X TBE緩衝液中2%アガロースゲル上でDNA断片をサイズ選択した。ゲルにロードする前に、DNA断片を2.5μlの6xOrange loading色素と合わせた。QIAGEN MinEluteゲル抽出キットを用いて製造業者のプロトコールにより、アダプター連結DNAを250~300bpのDNAに相当するゲルスライスから抽出した。精製したDNAの濃縮を、PCRにより25μl反応液中12.5μlの2x Phusion HF Master Mix及び1μlの10μM Illumina PCR Primer Mixを用いて、1μlの精製したDNAをテンプレートとして用いて行った。DNAの増幅を、98℃で30秒、次に98℃で10秒を18サイクル、65℃で30秒、72℃で30秒、そして最後の伸長を72℃で5分行った。次に、Qubitフルオロメーターを用いてDNA濃度を測定し、10nmolの各試料(シークエンシングのレーン当たり最大106試料)をプールした。次に、試料をGTAC(Genome Technology Access Center,Washington University in St.Louis)にあるIllumina HiSeq-2500 Paired-End(PE)の101bp配列決定のために提出した。
【0084】
DNA配列解析:アライメント及びバリアント呼び出し。野生型及び適応MRSA N315について、各ゲノムの全ての配列決定リードをバーコードにより逆多重化して別々のゲノムビンにした。リードをクオリティトリミングして、品質スコアが19を下回るいずれの末端のアダプター配列及び塩基も除去した。クオリティトリミング後に31bpより短いリードは、いずれもさらなる解析に使用しなかった。全てのリードをStaphylococcus aureus subsp. aureus N315染色体(GenBank ID:BA000018.3)及びpN315プラスミド(GenBank ID:AP003139)にマッピングした(コマンド:owtie2 -x <reference_genome_index_name> -1 <forward_read_file> -2 <reverse_read_file> -q --phred33 --very-sensitive-local -I 200 -X 1000 -S <sam_output>)。参照からのバリアントをsamtools61を用いて呼び出した(コマンド:samtools view -buS <sam_file> | samtools sort -m 4000000000 - <sample_prefix> ### samtools index <bam_file> ### samtools mpileup -uD -f reference_genome> <bam_file> | bcftools view -bcv - > <bcf_file> ### bcftools view <bcf_file>)。次にバリアントコールフォーマット(VCF)ファイルをフィルタリングして、品質スコアが70より低い、またはカバレッジが塩基当たり予想される平均カバレッジの2倍より大きいSNPを除去した。リードカバレッジの不在または過剰なリードカバレッジは、それぞれプラスミドの喪失または大きな重複を示した。野生型のアライメントから見いだされた任意のバリアント位置は、アライメントエラーの結果であるか、またはN315におけるラボ固有のドリフトに由来するものと判定し、全ての他のVCFファイルから除去した。次に各バリアント位置を既知のN315のORFロケーションと比較して原因バリアントを探索した。
【0085】
MRSA感染のインビボマウスモデル:動物。非近交系のICR雌マウス(6~8週齢、体重17~25g;Harlan Laboratories,Inc.,Indianapolis,IN,USA)を使用した。マウスにTeklad 2019 Extruded Rodent Diet(Harlan Laboratories,Inc.,Indianapolis,IN,USA)及び水を自由に与えた。マウスを、コーンコブ(The Andersons, Inc.,Maumee,OH,USA)及びアルファドライ(Shepherd Specialty Papers,Inc.,Richland,MI,USA)の床敷を収容するポリカーボネート製の靴箱サイズのケージ内で、明周期12時間/暗周期12時間、22±1℃で維持した。動物に関わる全ての手順は、University of Notre Dame Institutional Animal Care and Use Committeeによる承認を受けた。
【0086】
MRSA感染の好中球減少マウス腹膜炎モデル。シクロホスファミド(200mg/kgに相当する0.9%食塩液中100μlの50mg/ml;Alfa Aesar,Ward Hill,MA,USA)の用量を感染の4日及び1日前に腹腔内(IP)投与した。S.株N315をブレイン-ハートインフュージョン(BHI;Becton Dickson and Company,Sparks,MD,USA)寒天培地に縞状に並べ、36℃で終夜増殖させた。MRSA N315細菌接種物を約1x10CFU/ml(OD540=0.5に相当)に調整し、次に希釈して2x10CFU/mlを得た。10%ブタムチン(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)懸濁液を調製し、pH7に調整した。感染直前に、細菌接種物を10%ムチンと1:1希釈して、最終濃度を5%ムチン中1x10CFU/mlにした。次に、0.5mlのこの接種物を用いてマウスにIP感染させた。マウスにおけるインビボ化合物投与を、研究されているβラクタムの平均または範囲ピークヒト血漿濃度44、46、47、62、63と比較した。
【0087】
抗生物質の調製。メロペネムはAK Scientific, Inc. (Union City,CA,USA)から入手し、ピペラシリン及びタゾバクタムはSigma-Aldrich Co.(St.Louis,MO,USA)から入手した。リネゾリド(CAS 165800-03-3)はAmplaChem(Carmel,IN,USA)から入手した。抗生物質を16.67mg/mlの濃度で30%DMSO/30%プロピレングリコール/40%水に溶解した。リネゾリドを陽性対照として使用し、7.5mg/mlで調製した。ビヒクル(30%DMSO/30%プロピレングリコール/40%水)を陰性対照として含めた。投与製剤を注入前に0.2μmフィルターに通すことにより滅菌した。
【0088】
血液からの細菌分離。血液試料の細菌増殖を播種及び液体培養により調べた。全血(100μl、群当たり3試料)をブレイン-ハートインフュージョン(BHI)寒天培地プレートに広げ、36℃で終夜インキュベートした。コロニーを計数し、3つのコロニーを選択し、液体BHI中で36℃で終夜増殖させ、次に30%のLB-グリコールと1:1混合し、-80℃で保管した。残りの各群の3つの血液試料(50μl)を5mlのBHIブロスに添加し、36℃で終夜インキュベートした。増殖が認められたら、培養物を30%のLB-グリコールと1:1混合し、-80℃で保管した。
【0089】
統計的解析:最小阻害濃度(MIC)のデータは3重反復による測定値から得る。適応データは、各薬剤併用条件について2回の反復実験から得る。qRT-PCR発現プロファイリングのデータは、それぞれ3回の生物学的反復から得られた3回の反復実験から得、測定値の標準誤差が算出される。マウスを6匹からなる群で処置し、細菌の増殖判定は、3回反復においてプレート及びブロスを介し決定した。ボンフェローニ補正を伴うフィッシャーの正確確率検定を8回の独立した試験に使用した(各処置を610ビヒクルと比較)。
【表1】



【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】














【0090】
実施例の参考文献
1.Walsh,T.R.,Weeks,J.,Livermore,D.M.& Toleman,M.A.Dissemination of NDM-1 positive bacteria in the New Delhi environment and its implications for human health: an environmental point prevalence study.The Lancet Infectious Diseases,doi:10.1016/s1473-3099(11)70059-7(2011).
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図1
図2
図3A
図3B
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【配列表】
2022141948000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチシリン耐性細菌が原因となる感染の処置における使用のための経口または非経口投与用医薬組成物であって、前記耐性が、ペニシリン結合タンパク質2a(PBP2a)駆動機序によるものであり、前記組成物が、
i)少なくとも1種の、PBP2aのアロステリック部位と結合可能なカルバペネムまたは他の好適なβラクタム、
ii)少なくとも1種のβラクタマーゼ阻害薬、及び
iii)少なくとも1種の、PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタム
を含むものであって、下記抗生物質の組み合わせ:
a)メロペネム/ピペラシリン/タゾバクタム(ME/PI/TZ)、
b)セフェピム/ピペラシリン/タゾバクタム(CP/PI/TZ)、
c)アズトレオナム/ピペラシリン/タゾバクタム(AZ/PI/TZ)、
d)メロペネム/アモキシリン/タゾバクタム(ME/AX/TZ)、
e)メロペネム/アモキシリン/クラブラネート(ME/AX/CV)、および
f)イミペネム/ピペラシリン/クラブラネート(IM/PI/CV)
からなる群から選択されるものの有効な量を含み、前記組成物が、カプセル、錠剤、粉末、水性溶液、または油系溶液の形態である、前記組成物。
【請求項2】
(i)、(ii)、及び(iii)の量の比が1:1:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、前記組成物に対する耐性の進化を抑制する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記(i)カルバペネムまたは他の好適なβラクタムの前記(ii)βラクタマーゼ阻害薬に対する量の比が、64:1~1:64の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記(i)カルバペネムまたは他の好適なβラクタムの前記(iii)PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムに対する量の比が、64:1~1:64の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記(ii)βラクタマーゼ阻害薬の前記(iii)PBP2aの活性部位の開放構造と結合するβラクタムに対する量の比が、64:1~1:64の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組み合わせ中の抗生物質の量の比が、64:1:1、1:64:1、または1:1:64から1:1:1までの範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
カプセルの形態である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
錠剤または粉末の形態である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
水性溶液または油系溶液の形態である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【外国語明細書】