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特開2022-141968散策支援システム、散策支援方法、および散策支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141968
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】散策支援システム、散策支援方法、および散策支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20220921BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121095
(22)【出願日】2022-07-29
(62)【分割の表示】P 2020101342の分割
【原出願日】2020-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】504440133
【氏名又は名称】株式会社ポケモン
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河本 拓
(72)【発明者】
【氏名】大木 健至
(57)【要約】      (修正有)
【課題】参加者を適切に誘導しつつ行動選択の自由を確保する散策支援システム、散策支援方法、および散策支援プログラムを提供する。
【解決手段】散策支援システム1において、演出制御装置10は、参加者PA1,PA2が携行する演出装置30P1、30P2により、参加者の検出を実行する。そして、検出された参加者が進路を選択して散策可能な空間において、参加者に対する推奨進路を決定する。更に、推奨進路とは異なる進路である非推奨進路への参加者の進入を制限することなく推奨進路に参加者を誘導する情報を、演出装置30P1、30P2へ送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
参加者が進路を選択して散策可能な空間において、前記参加者の推奨進路を決定する手段と、
前記推奨進路とは異なる進路である非推奨進路への前記参加者の進入を制限することなく前記推奨進路に前記参加者を誘導する手段と
を具備する、散策支援システム。
【請求項2】
前記推奨進路を決定する手段は、前記空間内の参加者の分布に基づいて前記参加者の推奨進路を決定する、
請求項1に記載の散策支援システム。
【請求項3】
前記推奨進路を決定する手段は、前記空間内に定められた複数の進路に亘って参加者が分散するように前記参加者の推奨進路を決定する、
請求項1または請求項2に記載の散策支援システム。
【請求項4】
前記推奨進路を決定する手段は、前記参加者に関する情報に基づいて前記参加者の推奨進路を決定する、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の散策支援システム。
【請求項5】
前記参加者に関する情報は、前記参加者の履歴情報、前記参加者の登録情報、前記参加者の属性情報、および前記参加者の状態情報の少なくとも1つを含む、
請求項4に記載の散策支援システム。
【請求項6】
前記推奨進路を決定する手段は、前記参加者の履歴情報の示す前記参加者が過去に選択した進路とは異なる進路を前記推奨進路として決定する、
請求項5に記載の散策支援システム。
【請求項7】
前記推奨進路を決定する手段は、前記参加者の登録情報の示すコードを割り当てられた特定の進路を前記推奨進路として決定する、
請求項5に記載の散策支援システム。
【請求項8】
前記空間は、第1の分岐エリアと第2の分岐エリアとを含む複数の分岐エリアを含み、
前記散策支援システムは、前記参加者の状態を判定する手段を備え、
前記推奨進路を決定する手段は、前記参加者が到達した分岐エリアにおいて前記参加者の当該分岐エリアの推奨進路を決定し、
前記推奨進路を決定する手段は、前記参加者が前記第1の分岐エリアから第1の進路を通って前記第2の分岐エリアに到達した場合に、前記第1の進路が前記参加者の前記第1の分岐エリアの推奨進路および非推奨進路のいずれであったかの情報を参照することなく、前記参加者の前記第2の分岐エリアの推奨進路を決定する、
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の散策支援システム。
【請求項9】
前記参加者を誘導する手段は、前記参加者に感覚刺激を与えることのできる演出装置の動作を前記推奨進路に応じて制御することで、前記参加者を誘導する、
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の散策支援システム。
【請求項10】
前記演出装置は、前記参加者に携行される演出装置、および前記空間に設置された演出装置の少なくとも1つを含む、
請求項9に記載の散策支援システム。
【請求項11】
前記演出装置は、発光する手段を備え、
前記参加者を誘導する手段は、前記演出装置を発光させることにより、前記参加者を誘導する、
請求項9または請求項10に記載の散策支援システム。
【請求項12】
前記演出装置は、音声を出力する手段を備え、
前記参加者を誘導する手段は、前記演出装置に所定の音声を出力させることにより、前記参加者を誘導する、
請求項9乃至請求項11のいずれかに記載の散策支援システム。
【請求項13】
前記演出装置は、映像を前記空間に投射する手段を備え、
前記参加者を誘導する手段は、前記演出装置に所定の映像を投射させることにより、前記参加者を誘導する、
請求項9乃至請求項12のいずれかに記載の散策支援システム。
【請求項14】
前記参加者の状態を判定する手段を備え、
前記参加者を誘導する手段は、前記参加者が第1の状態である場合に前記参加者に第1の感覚刺激を与えるように前記演出装置を制御する、
請求項9乃至請求項13のいずれかに記載の散策支援システム。
【請求項15】
前記第1の状態は、前記参加者が前記推奨進路を向いている状態である、
請求項14に記載の散策支援システム。
【請求項16】
前記参加者を誘導する手段は、前記参加者が第2の状態である場合に前記参加者に前記第1の感覚刺激よりも弱い第2の感覚刺激を与えるように前記演出装置を制御することにより、前記参加者を誘導する、
請求項14または請求項15に記載の散策支援システム。
【請求項17】
コンピュータが、
参加者が進路を選択して散策可能な空間において、前記参加者の推奨進路を決定することと、
前記推奨進路とは異なる進路である非推奨進路への前記参加者の進入を制限することなく前記推奨進路に前記参加者を誘導することと
を具備する、散策支援方法。
【請求項18】
コンピュータを、
参加者が進路を選択して散策可能な空間において、前記参加者の推奨進路を決定する手段、
前記推奨進路とは異なる進路である非推奨進路への前記参加者の進入を制限することなく前記推奨進路に前記参加者を誘導する手段
として機能させる、散策支援プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、散策支援システム、散策支援方法、および散策支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナイトウォークと呼ばれる体験型イベントが注目を集めている。典型的なナイトウォークでは、参加者は、夜間にイルミネーションで装飾された屋外施設を散策する。
【0003】
非特許文献1に記載のナイトウォークでは、参加者は所定の進路を散策することでデジタルアートを楽しむことができる。具体的には、進路上にはいくつかのポイントが設定されている。各ポイントでは、レーザー光線またはプロジェクションマッピングを用いて木、岩などを装飾することでデジタルアートが表現される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“Tonga Lumina Tremblant | A night walk in search of the giant”,[online],[2020年5月21日検索],インターネット<URL:https://www.tongalumina.ca/en/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載のナイトウォークでは、参加者が散策する進路は一本道である。故に、参加者は、どこに進むべきかについて頭を悩ませる必要がない反面、参加者の行動選択の自由度が殆どない。また、このようなイベントでは、参加者の得られる体験が安定している反面、繰り返し参加したとしても未知の発見や予想外の出来事に遭遇することへの期待が抱き難い。故に、参加者に反復利用してもらうように動機付けることは容易でない。
【0006】
他方、参加者の行動選択の自由を確保しようとすると、参加者が道に迷ったり、適切な進路を選んだのか不安になったりするおそれがある。
【0007】
本開示の目的は、参加者を適切に誘導しつつ行動選択の自由を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る散策支援システムは、参加者が進路を選択して散策可能な空間において、参加者の推奨進路を決定する手段と、推奨進路とは異なる進路である非推奨進路への参加者の進入を制限することなく推奨進路に参加者を誘導する手段とを具備する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、参加者を適切に誘導しつつ行動選択の自由を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の散策支援システムの構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態の演出制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態の概要の説明図である。
図4】本実施形態の概要の説明図である。
図5】本実施形態の概要の説明図である。
図6】本実施形態の分岐エリアデータベースのデータ構造を示す図である。
図7】本実施形態の進路データベースのデータ構造を示す図である。
図8】本実施形態の参加者データベースのデータ構造を示す図である。
図9】本実施形態の散策支援処理を示すフローチャートである。
図10図9の参加者の誘導処理の例を示すフローチャートである。
図11】変形例1の参加者の誘導処理の例を示すフローチャートである。
図12】誘導のための演出内容の一例を示す図である。
図13】誘導のための演出内容の一例を示す図である。
図14】誘導のための演出内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
(1)散策支援システムの構成
散策支援システムの構成について説明する。図1は、本実施形態の散策支援システムの構成を示すブロック図である。
【0013】
本実施形態の散策支援システムは、空間を散策するイベントに参加する人間(以降、「参加者」と称する)に対して散策の支援を行う。
図1に示すように、散策支援システム1は、演出制御装置10と、演出装置30(例えば、演出装置30S1、演出装置30P1、および演出装置30P2)と、状態検出装置50(例えば、状態検出装置50B1)とを備える。
演出制御装置10は、演出装置30および状態検出装置50と、ネットワーク(例えば、インターネット又はイントラネット)NWを介して接続される。
【0014】
演出制御装置10は、例えばコンピュータである。
演出制御装置10は、演出装置30の動作を制御する。演出制御装置10は、状態検出装置50から参加者、演出装置30、または空間の状態に関する情報を取得する。
【0015】
演出装置30は、参加者に感覚刺激を与えることにより演出を行うことのできる装置である。演出装置30は、演出制御装置10の制御に従って動作する。
感覚刺激は、例えば、参加者の視覚、聴覚、触覚、嗅覚、および味覚の少なくとも1つに対する刺激である。
演出は、空間を装飾する目的、または参加者の散策を支援する目的で行われる。参加者の散策の支援は、例えば、後述される推奨進路を示す、選択可能な進路を示す、進入禁止を示す、またはそれらの組み合わせである。
演出装置30は、参加者に携行される演出装置(例えば、参加者PA1に携行される演出装置30P1、および参加者PA2に携行される演出装置30P2)と、空間に設置された演出装置(例えば、演出装置30S1)とのうち少なくとも1つを含む。
参加者に携行される演出装置30は、モバイルコンピュータ(例えば、スマートフォン)、ウェアラブルデバイス(スマートグラス、透過型HMD(Head Mounted Display)、スマートウォッチ)、などであってもよい。参加者に携行される演出装置30は、イベント主催者から提供(例えば、貸与または譲渡)されてもよいし、参加者の私物を利用してもよいし、参加者の私物にイベント主催者から提供されるパーツ(例えばUSB(Universal Serial Bus)接続可能なペンライト)またはアプリケーションを組み合わせることで構成されてもよい。
【0016】
演出装置30の具体例を以下に示すが、演出装置30は以下に例示するものに限られない。
・演出装置30は、発光する手段を備える(例えば光源)。
・演出装置30は、画像を表示する手段を備える(例えば表示器)。一例として、参加者に携行される演出装置30は、AR(Augmented Reality)画像、MR(Mixed Reality)画像、またはSR(Substitutional Reality)画像を表示してもよい。
・演出装置30は、映像を投射する手段を備える(例えばプロジェクタ)。
・演出装置30は、音を出力する手段を備える(例えばスピーカ)
・演出装置30は、振動を発生させる手段を備える(例えばハプティクスデバイス)。
・演出装置30は、匂いを発生させる手段を備える(例えばアロマデバイス)。
・演出装置30は、参加者の味覚を刺激する手段を備える(例えば、参加者の舌に味覚刺激液を供給可能なマウスピース型のデバイス)。
・演出装置30は、それ自身を移動し、またはそれ自身の姿勢を変更する手段を備える(例えば、ロボット)。
・演出装置30は、電動制御可能な機械を作動させる手段を備える。
・演出装置30は、参加者が知覚可能な物理現象(例えば、霧、煙、水流、気流、熱、火、または放電)を発生する手段を備える。
【0017】
状態検出装置50は、参加者、演出装置30、または空間の状態を検出し、検出結果を演出制御装置10へ送信する。
参加者の状態は、例えば、参加者の位置、参加者の姿勢、参加者の視線方向、参加者の総散策距離、参加者の総散策時間、参加者の散策速度、参加者のバイタル、またはそれらの組み合わせである。
演出装置30の状態は、例えば、参加者によって携行される演出装置30の位置、参加者によって携行される演出装置30の姿勢、またはそれらの組み合わせである。
空間の状態は、例えば、温度、湿度、気流、照度、またはそれらの組み合わせである。
状態検出装置50は、典型的には空間に設置されるが、参加者に携行されてもよい(一例として、参加者に携行される演出装置30に備えられてもよい)。
【0018】
状態検出装置50の具体例を以下に示すが、状態検出装置50は以下に例示するものに限られない。
・人感センサ
・測距センサ
・GPS受信機
・ビーコンを利用した測位システム
・光学センサ(例えばカメラ)
・タイマ
・マイクロフォン
・加速度センサ
・角速度センサ
・バイタルセンサ
・温度センサ
・湿度センサ
・気流センサ
・照度センサ
【0019】
(1-1)演出制御装置の構成
本実施形態の演出制御装置の構成について説明する。図2は、本実施形態の演出制御装置の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、演出制御装置10は、記憶装置11と、プロセッサ12と、入出力インタフェース13と、通信インタフェース14とを備える。
【0021】
記憶装置11は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0022】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、散策支援アプリケーション)のプログラム
【0023】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0024】
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶されたプログラムを起動することによって、演出制御装置10の機能を実現するように構成される。プロセッサ12は、コンピュータの一例である。
【0025】
入出力インタフェース13は、演出制御装置10に接続される入力デバイスからユーザの指示を取得し、かつ、演出制御装置10に接続される出力デバイスに情報を出力するように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイである。
【0026】
通信インタフェース14は、演出制御装置10と外部装置(例えば、演出装置30、および状態検出装置50)との間の通信を制御するように構成される。
【0027】
(2)実施形態の概要
本実施形態の概要について説明する。図3は、本実施形態の概要の説明図である。図4は、本実施形態の概要の説明図である。図5は、本実施形態の概要の説明図である。
【0028】
図3に示すように、空間SPには、複数の進路が用意されており、参加者PA1は自由に進路を選択して散策することができる。各進路は、参加者PA1が進行方向を示すものとして容易に地形として認識できるもの(例えば、自然にできた通路または整備された通路として視覚的に認識できるもの)であってもよいし、参加者PA1にとって明確に進行方向を認識できないもの(例えば通路として明確に形成されていない、整備されていないもの)であってもよい。空間SPは、屋内であってもよいし、屋外であってもよいし、屋外と屋内が交互に区画されていてもよい。視覚的な演出効果(例えば、映像の投射、または発光)を高める観点から、空間SPは典型的には暗環境(例えば、暗室、または夜間)に設定されるが、暗環境に設定することは必須でない。
以降の説明では、空間SPは、夜間の森林であることとする。参加者PA1は、発光する手段を備える演出装置30P1を携行し、自らの周囲を照らしながら散策を進める。
【0029】
空間SP内には、演出装置30および状態検出装置50B1が設置され得る。図3の例では、空間SP内に、演出装置30C11~30C14と、演出装置30C21~30C24と、状態検出装置50B1とが設置される。
【0030】
演出制御装置10は、空間SP内に用意された分岐エリアを始点とする2つの進路C1および進路C2のうち参加者PA1に推奨する進路(以降、「推奨進路」と称する)を決定する。分岐エリアとは、参加者が進入可能な複数の進路に接続する場所である。参加者は、各分岐エリアにおいて、当該分岐エリアから分岐する複数の進路のいずれかを選択する。演出制御装置10は、推奨進路は、例えば、空いている(つまり、混雑していない)進路、参加者のニーズに合致すると予測された進路、参加者にとって未体験の演出を楽しめる進路、または参加者が支払った対価に応じた演出を楽しめる進路、などである。
演出制御装置10は、誘導単位毎に個別に推奨進路を決定する。誘導単位は、1人の参加者に限られず、複数の参加者(例えば、友人、家族、カップル、または同時期に分岐エリアに到達した複数の参加者)であってもよい。
一例として、演出制御装置10は、状態検出装置50B1を介して、参加者PA1が分岐エリアに到達したことを検出した場合に、当該参加者PA1の推奨進路を決定してもよい。
【0031】
演出制御装置10は、演出装置30の動作を制御することで、参加者PA1について決定した推奨進路に当該参加者PA1を誘導する。
一例として、演出制御装置10は、状態検出装置50B1を介して、参加者PA1が分岐エリアに到達したことを検出した場合に、当該参加者PA1の誘導を開始してもよい。
【0032】
図4に示すように、演出制御装置10は、進路C1を推奨進路として決定した場合に、当該進路C1に関連付けられる演出装置30C11~30C14を動作させることで、参加者PA1を進路C1に誘導する。
一例として、演出制御装置10は、進路C1の入り口付近に設置された演出装置30C11~30C13を発光させることで、参加者PA1の視覚を刺激して進路C1に注意を向けさせる。
また、演出制御装置10は、演出装置30C14に、所定の映像VEを進路C1の入り口付近に投射することで、参加者PA1の視覚を刺激して進路C1に注意を向けさせる。
所定の映像VEは、例えば動物をモチーフとしたキャラクタの映像であってもよい。所定の映像VEは、静止画であってもよいし、動画であってもよい。さらに、演出制御装置10、映像VEの投射位置を進路C1に沿って移動させることで、参加者PA1の注意をいっそう引き付けるようにしてもよい。
【0033】
図5に示すように、演出制御装置10は、進路C2を推奨進路として決定した場合に、当該進路C2に関連付けられる演出装置30C21~30C24を動作させることで、参加者PA1を進路C2に誘導する。
一例として、演出制御装置10は、進路C2の入り口付近に設置された演出装置30C21~30C23を発光させることで、参加者PA1の視覚を刺激して進路C2に注意を向けさせる。
また、演出制御装置10は、進路C2の入り口付近に設置された演出装置30C24に、所定の音声を出力させることで、参加者PA1の聴覚を刺激して進路C2に注意を向けさせる。所定の音声は、例えば、例えば動物をモチーフとしたキャラクタの鳴き声の音声であってもよい。
【0034】
このように、散策支援システム1は、参加者が進路を自由に選択して散策可能な空間において参加者の推奨進路を決定し、推奨進路に参加者を誘導する。故に、散策支援システム1によれば、参加者の行動選択の自由(例えば、推奨進路として進路C1が決定された場合に進路C2を選択する自由、または推奨進路として進路C2が決定された場合に進路C1を選択する自由)を確保しながらも、参加者に推奨進路に無意識のうちに注意が引かれるように仕向けることで適切に誘導することができる。
【0035】
なお、前述のように、参加者は進路を自由に選択して空間を散策可能なので、散策支援システム1は参加者の非推奨進路への進入を制限しない。すなわち、参加者は、推奨進路以外の進路(以降、「非推奨進路」と称する)を選択する自由を保証される。
具体的には、散策支援システム1は、以下の動作の少なくとも1つを行わない。
・非推奨進路を物理的に進入不能にする。
・参加者が非推奨進路を見つけられないような演出をする(例えば、演出制御装置10が、非推奨進路の入り口付近の演出装置30を完全に消灯する)。
・参加者が非推奨進路を散策が禁止される領域(以降、「禁止領域」と称する)であると錯覚させるような演出をする(例えば、演出制御装置10が、非推奨進路の入り口付近で演出装置30に警報音を出力させる)。
【0036】
さらに、散策支援システム1が所与の進路を推奨進路と決定したか否かは、当該進路において参加者に提供される体験の内容を左右しない。具体的には、進路に関する演出のうち推奨進路への誘導に関わらない演出(例えば、進路選択の確定後の演出)は、参加者の選択に関わらず同一に定められてよい。つまり、所与の進路を推奨進路と決定された参加者、および当該進路を非推奨進路と決定された参加者のいずれが当該進路を通行する場合にも、演出制御装置10は、当該進路に関連付けられる演出装置30に同一の演出を行わせてよい。
【0037】
(3)データベース
本実施形態のデータベースについて説明する。以下のデータベースは、記憶装置11に記憶される。
【0038】
(3-1)分岐エリアデータベース
本実施形態の分岐エリアデータベースについて説明する。図6は、本実施形態の分岐エリアデータベースのデータ構造を示す図である。
【0039】
図6に示すように、分岐エリアデータベースは、「エリアID」フィールドと、「進路」フィールドと、「状態検出装置」フィールドとを含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
分岐エリアデータベースには、分岐エリア情報が格納される。分岐エリア情報は、空間SP内に設定された分岐エリアに関する情報である。
【0040】
「エリアID」フィールドには、エリアIDが格納される。エリアIDは、分岐エリアを識別する情報である。
【0041】
「進路」フィールドには、接続進路情報が格納される。接続進路情報は、分岐エリアから分岐可能な進路(つまり、分岐エリアを始点とする進路)に関する情報である。
【0042】
「状態検出装置」フィールドには、状態検出装置情報が格納される。状態検出装置情報は、分岐エリアに関連付けられる状態検出装置50(例えば、分岐エリア内に設置された状態検出装置50)に関する情報である。
【0043】
(3-2)進路データベース
本実施形態の進路データベースについて説明する。図7は、本実施形態の進路データベースのデータ構造を示す図である。
【0044】
図7に示すように、進路データベースは、「進路ID」フィールドと、「始点」フィールドと、「終点」フィールドと、「演出装置」フィールドと、「状態検出装置」フィールドと、「混雑状況」フィールドとを含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
進路データベースには、進路情報が格納される。進路情報は、空間SP内に設定された進路に関する情報である。
【0045】
「進路ID」フィールドには、進路IDが格納される。進路IDは、進路を識別する情報である。
【0046】
「始点」フィールドには、始点情報が格納される。始点情報は、進路の始点に関する情報である。進路の始点は、分岐エリア、または空間SPの入り口に定められ得る。なお、空間SPの入り口は、分岐エリアの1つであってもよい。
【0047】
「終点」フィールドには、終点情報が格納される。終点情報は、進路の終点に関する情報である。進路の終点は、分岐エリア、または空間SPの出口に定められ得る。
【0048】
「演出装置」フィールドには、演出装置情報が格納される。演出装置情報は、進路に関連付けられる演出装置30(例えば、進路内に設置された演出装置30、または当該進路の始点もしくは終点に設置された演出装置30)に関する情報である。
【0049】
「状態検出装置」フィールドには、状態検出装置情報が格納される。状態検出装置情報は、進路に関連付けられる状態検出装置50(例えば、進路内に設置された状態検出装置50、または当該進路の始点もしくは終点に設置された状態検出装置50)に関する情報である。
【0050】
「混雑状況」フィールドには、混雑状況情報が格納される。混雑状況情報は、進路の混雑状況に関する情報である。
混雑状況情報は、例えば、進路に関連付けられる状態検出装置50の検出結果を参照して、動的に更新され得る。
【0051】
(3-3)参加者データベース
本実施形態の参加者データベースについて説明する。図8は、本実施形態の参加者データベースのデータ構造を示す図である。
【0052】
図8に示すように、参加者データベースは、「参加者ID」フィールドと、「散策履歴」フィールドと、「属性」フィールドと、「登録情報」フィールドと、「状態」フィールドとを含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
参加者データベースには、参加者情報が格納される。参加者情報は、参加者に関する情報である。
【0053】
「参加者ID」フィールドには、参加者IDが格納される。参加者IDは、参加者を識別する情報である。
参加者IDは、例えば参加者によって携行される演出装置30または他のデバイスから送信されるデータに含まれていてもよい。
【0054】
「履歴」フィールドには、履歴情報が格納される。履歴情報は、参加者の過去の体験の履歴に関する情報である。
一例として、履歴情報は、参加者が過去に選択した進路に関する情報、参加者が過去に体験した演出に関する情報、またはそれらの組み合わせを含む。
履歴情報は、例えば参加者の自己申告により取得可能である。一例として、参加者が空間SPの散策を終える度に、当該参加者の選択した進路、または当該参加者が体験した演出を示すコード(例えば、QRコード(登録商標)または他の2次元バーコード)が発行されてよい。参加者は、空間SPを再度散策する際に、発行済みのコードをコード読み取り機に対して提示することで、自らの履歴情報を容易に申告できる。コード読み取り機は、例えば空間SPの入り口、分岐エリア、または進路の途中に設置される。
【0055】
「属性」フィールドは、属性情報が格納される。属性情報は、参加者の属性に関する情報である。
一例として、属性情報は、参加者の年齢層、性別、参加形態(例えば、単独参加か、グループ参加か、または子連れ参加か)、またはそれらの組み合わせを含む。
属性情報は、参加者の自己申告により取得されてもよいし、状態検出装置50の検出結果を参照して推定されてもよい。
【0056】
「登録情報」フィールドには、登録情報が格納される。登録情報は、参加者による登録内容に関する情報である。
一例として、登録情報は、参加者によって登録された、特定の進路に割り当てられたコードである。
特定の進路に割り当てられたコードは、例えば空間SPを舞台としたイベントの関連商品に付帯してもよいし、当該コードそのものが商品として販売されてもよい。コードは、不正使用を防ぐ観点から1度の使用に限って有効となるように定められてもよい。
一例として、参加者は、自らの取得した商品(例えば、イベントのパンフレット冊子)に付されたコードをコード読み取り機に対して提示することで、特定の進路に割り当てられたコードを容易に登録できる。コード読み取り機は、例えば空間SPの入り口、分岐エリア、または進路の途中に設置される。
【0057】
「状態」フィールドには、状態情報が格納される。状態情報は、参加者の状態に関する情報である。
前述のように、参加者の状態は、例えば、参加者の位置、参加者の姿勢、参加者の総散策距離、参加者の総散策時間、参加者の散策速度、参加者のバイタル、またはそれらの組み合わせである。
状態情報は、状態検出装置50の検出結果を参照して、動的に更新され得る。
【0058】
(4)散策支援処理
本実施形態の散策支援処理について説明する。図9は、本実施形態の散策支援処理を示すフローチャートである。図10は、図9の参加者の誘導処理の例を示すフローチャートである。
【0059】
図9に示すように、演出制御装置10は、参加者の検出(S110)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、状態検出装置50の検出結果を参照して、参加者が分岐エリアに到着したことを検出する。
さらに、分岐エリアに到着した参加者の個体識別が行われてもよい。一例として、参加者によって携行される演出装置30または他のデバイスから参加者IDを含むデータを送信することで、参加者の個体識別を可能としてもよい。或いは、参加者の顔、または他の特徴を事前に登録しておくことで、例えば画像認識により参加者の個体識別を可能としてもよい。
【0060】
ステップS110の後に、演出制御装置10は、推奨進路の決定(S111)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、ステップS110において検出された参加者(以降、「対象参加者」と称する)に対する推奨進路を決定する。
【0061】
ステップS111の第1の例では、プロセッサ12は、空間SP内の人間の分布に基づいて、対象参加者の推奨進路を決定する。
一例として、プロセッサ12は、分岐エリアデータベース(図6)を参照し、ステップS110において検出された分岐エリア(以降、「対象分岐エリア」と称する)に関連付けられる進路を特定する。プロセッサ12は、進路データベース(図7)を参照し、特定した進路の混雑状況情報を取得する。
プロセッサ12は、取得した混雑状況情報を参照して、特定した複数の進路に亘って参加者が分散するように対象参加者の推奨進路を決定する。具体的には、以下のいずれかの進路を推奨進路として決定してもよい。
・最も混雑していない進路(例えば、散策中の参加者数が最小である進路、または散策中の参加者の人口密度(面積当たりの参加者数)が最小である進路)
・最後に推奨進路として決定した時刻が最も古い進路
・対象分岐エリアに最も近い他の参加者までの距離が最大である(つまり、先行する他の参加者と対象参加者との間隔が最大となる)進路
ステップS111の第1の例によれば、混雑が少なく安全快適にイベントを楽しむことのできる進路が推奨進路として決定される。
【0062】
ステップS111の第2の例では、プロセッサ12は、対象参加者に関する情報に基づいて、当該対象参加者の推奨進路を決定する。
一例として、プロセッサ12は、分岐エリアデータベース(図6)を参照し、対象分岐エリアに関連付けられる進路を特定する。
プロセッサ12は、参加者データベース(図8)を参照し、対象参加者に関する情報を取得する。プロセッサ12は、取得した対象参加者に関する情報を参照して、特定した複数の進路のいずれかを対象参加者の推奨進路として決定する。具体的には、以下のいずれかの進路を推奨進路として決定してもよい。
・対象参加者が過去に選択した進路(履歴情報を参照)とは異なる進路
・対象参加者が過去に選択した進路に関連する進路(例えば、過去に選択した進路に関連する体験ができる進路)
・対象参加者が登録したコード(登録情報を参照)を割り当てられた特定の進路
・対象参加者の散策速度に応じた進路(例えば、対象参加者の散策速度が速い場合には総距離の大きい進路、対象参加者の散策速度が遅い場合には総距離の短い進路)
・対象参加者の参加形態に応じた進路(例えば、対象参加者が子連れ参加である場合には子供向けの進路)
【0063】
ステップS111の第3の例では、プロセッサ12は、所定のパターンに従って、対象参加者の推奨進路を決定する。
プロセッサ12は、分岐エリアデータベース(図6)を参照し、対象分岐エリアに関連付けられる進路を特定する。プロセッサ12は、所定のパターンに従って、特定した複数の進路のいずれかを対象参加者の推奨進路として決定する。一例として、プロセッサ12は、誘導単位毎に進路IDの降順または昇順に変化するように推奨進路を決定する。
【0064】
ステップS111の第4の例は、上記第1の例乃至第3の例の少なくとも2つの組み合わせである。
例えば、プロセッサ12は、対象参加者の履歴情報または登録情報が存在する場合には上記第2の例に従って推奨進路を決定し、対象参加者の履歴情報および登録情報が存在しない場合には上記第1の例または第3の例に従って推奨進路を決定する。
【0065】
ステップS111の後に、演出制御装置10は、参加者の誘導(S112)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、ステップS111において決定した推奨経路に応じて、参加者を当該推奨経路に誘導する。
【0066】
ステップS112が開始すると、図10に示すように、演出制御装置10は、誘導演出の開始(S1121)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、進路データベース(図7)を参照し、推奨進路に関連付けられる演出装置30を特定する。プロセッサ12は、特定した演出装置30の動作を制御して参加者に感覚刺激を与える。
【0067】
ステップS1121の後に、演出制御装置10は、参加者の状態判定(S1122)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、状態検出装置50(例えば、対象分岐エリアに関連付けられる状態検出装置50)の検出結果(例えば、対象参加者の位置)を参照して、対象参加者の進路選択が確定したか否かを判定する。
一例として、プロセッサ12は、対象参加者が分岐エリア内に留まっている場合には対象参加者の進路選択は確定していないと判定し、対象参加者が分岐エリアに関連付けられる進路のいずれかに入った場合には対象参加者の進路選択は確定したと判定する。
【0068】
ステップS1122において対象参加者の進路選択が確定したと判定した場合に、演出制御装置10は誘導演出の終了(S1123)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、ステップS1121において制御した演出装置30の動作を停止、またはステップS1121の開始前の動作状態に復帰させる。
前述のように、進路に関する演出のうち推奨進路への誘導に関わらない演出(例えば、進路選択の確定後の演出)は、参加者の選択に関わらず同一に定められてよい。つまり、所与の進路を推奨進路と決定された参加者、および当該進路を非推奨進路と決定された参加者のいずれが当該進路を通行する場合にも、演出制御装置10は、当該進路に関連付けられる演出装置30に同一の演出を行わせてよい。一例として、プロセッサ12は、演出装置30の発光強度、または発光色をステップS1121の開始前の状態に復帰させてもよい。
【0069】
ステップS1122において対象参加者の進路選択が確定していないと判定した場合に、演出制御装置10は参加者の状態判定(S1122)を再実行する。
【0070】
(5)小括
以上説明したように、本実施形態の散策支援システムは、参加者が進路を自由に選択して散策可能な空間において参加者の推奨進路を決定し、推奨進路に参加者を誘導する。故に、この散策支援システムによれば、参加者の行動選択の自由を確保しながらも、参加者に推奨進路に無意識のうちに注意が引かれるように仕向けることで適切に誘導することができる。
【0071】
(6)変形例
本実施形態の変形例について説明する。
【0072】
(6-1)変形例1
変形例1について説明する。変形例1は、誘導のための演出内容を対象参加者の状態に応じて動的に制御する例である。
【0073】
変形例1の散策支援処理について説明する。図11は、変形例1の参加者の誘導処理の例を示すフローチャートである。図12は、誘導のための演出内容の一例を示す図である。図13は、誘導のための演出内容の一例を示す図である。図14は、誘導のための演出内容の一例を示す図である。
【0074】
図9と同様に、演出制御装置10は、参加者の検出(S110)、および推奨進路の決定(S111)を実行する。
ステップS111の後に、演出制御装置10は、参加者の誘導(S112)を実行する。
【0075】
ステップS112が開始すると、図11に示すように、演出制御装置10は、誘導演出の開始(S1121)を実行する(図10と同様)。
【0076】
ステップS1121の後に、演出制御装置10は、参加者の状態判定(S1122a)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、状態検出装置50(例えば、対象分岐エリアに関連付けられる状態検出装置50)の検出結果(例えば、対象参加者の位置)を参照して、対象参加者の進路選択が確定したか否かを判定する。さらに、プロセッサ12は、対象参加者の進路選択が確定していない場合には、対象参加者が以下に説明する第1乃至第3の状態のいずれであるかを判定する。
第1の状態は、対象参加者が推奨進路を向いている状態である。一例として、プロセッサ12は、対象参加者の身体または視線が推奨進路を向いている場合、対象参加者によって携行される演出装置30または他のデバイスを推奨進路に向けている場合、または対象参加者が推奨進路に近づく方向に移動している場合に、対象参加者が第1の状態であると判定し得る。
第2の状態は、対象参加者が対象分岐エリアに関連付けられる進路のうち推奨進路以外の非推奨進路を向いている状態である。一例として、プロセッサ12は、対象参加者の身体または視線が非推奨進路を向いている場合、対象参加者によって携行される演出装置30または他のデバイスを非推奨進路に向けている場合、または対象参加者が非推奨進路に近づく方向に移動している場合に、対象参加者が第2の状態であると判定し得る。
第3の状態は、対象参加者がいずれの進路とも異なる方向に向いている状態である。一例として、プロセッサ12は、対象参加者の身体または視線がいずれの進路とも異なる方向に向いている場合、対象参加者によって携行される演出装置30または他のデバイスをいずれの進路とも異なる方向に向けている場合、または対象参加者がいずれの進路とも異なる方向に移動している場合に、対象参加者が第3の状態であると判定し得る。
【0077】
ステップS1122aにおいて対象参加者の進路選択が確定したと判定した場合に、図10と同様に、演出制御装置10は誘導演出の終了(S1123)を実行する。
【0078】
ステップS1122aにおいて対象参加者の進路選択が確定していないと判定した場合に、演出制御装置10は演出内容の制御(S1124)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、ステップS1122aの判定結果に応じて、演出装置30の動作を制御する。
一例として、プロセッサ12は、対象参加者が第1の状態である場合に、当該対象参加者に第1の感覚刺激を与えるように演出装置30を制御する。また、プロセッサ12は、対象参加者が第2の状態である場合に、当該対象参加者に第1の感覚刺激よりも弱い第2の感覚刺激を与えるように演出装置30を制御してもよい。さらに、プロセッサ12は、対象参加者が第3の状態である場合に、当該対象参加者に第1の感覚刺激および第2の感覚刺激のいずれとも異なる感覚刺激を与える、または動作を停止するように演出装置30を制御してもよい。
【0079】
プロセッサ12は、推奨進路が進路C1である場合に、対象参加者PA1の携行する演出装置30P1の演出内容を図12乃至図14に示されるように動的制御できる。
【0080】
図12に示すように、プロセッサ12は、対象参加者PA1が進路C2を向いている(つまり第2の状態である)場合には、演出装置30P1を第1の発光強度よりも弱い第2の発光強度で発光させる。これにより、対象参加者PA1に進路C2が存在することを意識付けられる。
【0081】
図13に示すように、プロセッサ12は、対象参加者PA1が進路C1および進路C2のいずれも向いていない(つまり第3の状態である)場合には、演出装置30P1を消灯させる。これにより、対象参加者PA1に先に進めないことを認識させることができる。
【0082】
図14に示すように、プロセッサ12は、対象参加者PA1が進路C1を向いている(つまり第1の状態である)場合には、演出装置30P1を第1の発光強度で発光させる。これにより、対象参加者PA1に進路C1が存在することを進路C2に比べて強く意識付けられる。
【0083】
感覚刺激の強弱は、以下に例示する種々の技法により調整可能である。
・発光強度を高くすることにより感覚刺激を強められる。
・人間の注意を引きやすい発光色(例えば警告色)を設定することにより感覚刺激を強められる。
・間欠的に発光させる場合に、発光を停止する時間を長くすることにより感覚刺激を弱めることができる。
・画像または映像の輝度を高くすることにより感覚刺激を強められる。
・音圧を大きくすることにより感覚刺激を強められる。
・振動振幅を大きくすることにより感覚刺激を強められる。
・より多くの感覚刺激を併用する(例えば、発光、音声および振動を併用する)ことにより感覚刺激を強められる。
【0084】
以上説明したように、変形例1の散策支援システムは、誘導のための演出内容を対象参加者の状態に応じて動的に制御する。故に、この散策支援システムによれば、本実施形態の効果に加えて、
参加者に分岐エリアにおいて周囲を観察して進路を見つけ出す興趣性を高めることができる。
【0085】
(7)その他の変形例
記憶装置11は、ネットワークNWを介して、記憶装置11と接続されてもよい。
【0086】
演出制御装置10の機能の一部または全部が、参加者の携行するデバイス(例えば、演出装置30、状態検出装置50、またはそれらの組み合わせ)に組み込まれてもよい。
【0087】
実施形態では、推奨進路に関連付けられる演出装置30の動作を制御することで誘導を実現する例を説明した。しかしながら、演出制御装置10は、さらに、非推奨進路に関連付けられる演出装置30の動作を制御してもよい。
具体的には、演出制御装置10は、推奨進路に関連付けられる演出装置30を参加者にある感覚刺激を与えるように制御するとともに、非推奨進路に関連付けられる演出装置30を参加者により弱い感覚刺激を与えるように制御してもよい。
一例として、演出制御装置10は、推奨進路に関連付けられる演出装置30をある発光強度で発光させ、非推奨進路に関連付けられる演出装置30をより弱い発光強度で発光させてもよい。これにより、参加者の注意を推奨進路に引き付けつつ、非推奨進路の存在も意識させることができる。すなわち、参加者に、能動的に進路を選択できる感覚を与えることができる。
この変形例において、安全の観点から、参加者による非推奨進路の選択が確定した場合に、演出制御装置10は、参加者が選択した非推奨進路に関連付けられる演出装置30を、参加者に進路の選択が確定する前に比べて強い感覚刺激を与えるように制御してもよい。一例として、演出制御装置10は、参加者が選択した非推奨進路に関連付けられる演出装置30の発光強度を上昇させてもよい。これにより、路面や周囲の状態が把握し易くなるので、参加者は安全快適に散策を続行できる。
【0088】
参加者の分岐エリア到達が検知されたことに応答して、当該参加者の推奨進路を決定する例を説明した。しかしながら、参加者の推奨進路は、他のトリガに応答して決定されてもよい。
一例として、参加者の推奨進路は、散策開始時に一括で決定されてもよいし、対象の分岐エリアを終点とする進路を選択した時に決定されてもよいし、参加者、または空間が所定の状態にあることが検出されたことに応答して決定されてもよい。
この変形例では、参加者の分岐エリア到達が検知されたことに応答して、誘導演出が開始され得る。
【0089】
参加者によって携行される演出装置30の動作を当該参加者の状態に応じて制御する例を説明した。しかしながら、特定の属性を持つ参加者の携行する演出装置30の動作は当該参加者の状態に関わらず一定としてもよい。
例えば、子供、高齢者、または障碍者の携行する演出装置30の発光強度は当人の状態に関わらず高レベルに維持する一方で、空間SP内に設置された演出装置30の動作を制御(例えば発光強度の強弱を制御)することで参加者を推奨進路に誘導するようにしてもよい。これにより、参加者の安全に配慮した誘導を実現できる。
【0090】
参加者によって携行される演出装置30の動作を当該参加者の状態に応じて制御する例を説明した。しかしながら、複数の参加者がまとまって散策をする場合に、当該複数の参加者の一部の携行する演出装置30に限ってかかる制御を行い、残りの参加者の携行する演出装置30の動作は当該参加者の状態に関わらず一定としてもよい。
例えば、大人と子供がまとまって散策する場合に、大人の携行する演出装置30の発光強度を当人の状態に応じて高くしたり低くしたりしつつ、子供の携行する演出装置30の発光強度は当人の状態に関わらず高レベルに維持するようにしてもよい。これにより、参加者の安全に配慮した誘導を実現できる。
【0091】
複数の参加者がまとまって散策をする場合に、参加者によって携行される演出装置30同士の距離に応じて演出を行うことで、参加者がはぐれるのを防止してもよい。
例えば、大人と子供がまとまって散策する場合に、子供の携行する演出装置30が大人の携行する演出装置30から閾値を超えて離れた場合に、一方または両方の演出装置30が、警報音を出力したり、通常と異なる色で発光したりしてもよい。これにより、参加者の注意を喚起して、自発的に再集合するよう促すことができる。
【0092】
空間において、参加者の散策が許容される領域(以降、「許容領域」と称する。例えば、入り口、出口、進路、および分岐エリア)と禁止領域とは、物理的に区別されてもよいし、仮想的に区別されてもよい。
許容領域および禁止領域を物理的に区別する例として、柵、または壁などの人工物を設置することで両領域の境界を定めたり、木や川などの自然物の位置を両領域の境界として定めたり、それらを組み合わせたりすることができる。
許容領域および禁止領域を仮想的に区別する例として、参加者が許容領域に居る場合と禁止領域に居る場合とで参加者によって携行される演出装置30の動作を異ならせてもよい。一例として、参加者が禁止領域に居る場合に、当該参加者によって携行される演出装置30が、警報音を出力したり、通常と異なる色で発光したりしてもよい。これにより、参加者の注意を喚起して、許容領域への復帰を促すことができる。また、参加者が禁止領域に居る場合に、イベント運営者に通報を行ってもよい。これにより、イベント運営者が現場に駆けつけて参加者を許容領域に復帰させることができる。
許容領域および禁止領域を仮想的に区別することは、人工物の設置に伴う負担および空間が醸成する雰囲気への悪影響(例えば、開放感の低下)が生じない、許容領域および禁止領域を自然物の配置に左右されずに設計可能となる、などの利点がある。
【0093】
進路は、通行可能な方向が定められてもよいし、定められなくてもよい。
一例として、進路は、空間の入り口から出口に向かう方向(順方向)に限って通行可能に定められる。
別の例として、進路は、順方向、およびその逆方向のいずれも通行可能に定められてもよい。この例において、参加者は、無条件で、または条件付きで、一度選択した進路を逆行して直前の分岐エリアに戻ることができる。
【0094】
実施形態において、推奨進路を決定する、と説明したが、非推奨進路を先に決定するようにしてもよい。この例においても、複数の進路のうち非推奨進路として決定されなかった進路が推奨進路として事実上決定される。
【0095】
演出制御装置10は、参加者が到達した分岐エリアにおいて参加者の当該分岐エリアの推奨進路を決定できる。ここで、参加者が所与の分岐エリア(以降、「第2の分岐エリア」と称する)に到達するために使用した(つまり、参加者が通った)進路(以降、「第1の進路」と称する)が第2の分岐エリアの直前の分岐エリア(以降、「第1の分岐エリア」と称する)における推奨進路および非推奨進路のいずれであったかの情報は、当該参加者の第2の分岐エリアの推奨進路の決定に影響してもよいし、しなくてもよい。後者の例として、演出制御装置10は、参加者が第1の分岐エリアから第1の進路を通って第2の分岐エリアに到達した場合に、第1の進路が参加者の第1の分岐エリアの推奨進路および非推奨進路のいずれであったかの情報を参照することなく、参加者の第2の分岐エリアの推奨進路を決定してもよい。
【0096】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例は、組合せ可能である。
【0097】
(8)付記
実施形態で説明した事項を、以下に付記する。
【0098】
(付記1)
参加者が進路を選択して散策可能な空間において、参加者の推奨進路を決定する手段(S111)と、
推奨進路とは異なる進路である非推奨進路への参加者の進入を制限することなく推奨進路に参加者を誘導する手段(S112)と
を具備する、散策支援システム(1)。
【0099】
(付記2)
推奨進路を決定する手段は、空間内の参加者の分布に基づいて参加者の推奨進路を決定する、
付記1に記載の散策支援システム。
【0100】
(付記3)
推奨進路を決定する手段は、空間内に定められた複数の進路に亘って参加者が分散するように参加者の推奨進路を決定する、
付記1または付記2に記載の散策支援システム。
【0101】
(付記4)
推奨進路を決定する手段は、参加者に関する情報に基づいて参加者の推奨進路を決定する、
付記1乃至付記3のいずれかに記載の散策支援システム。
【0102】
(付記5)
参加者に関する情報は、参加者の履歴情報、参加者の登録情報、参加者の属性情報、および参加者の状態情報の少なくとも1つを含む、
付記4に記載の散策支援システム。
【0103】
(付記6)
推奨進路を決定する手段は、参加者の履歴情報の示す参加者が過去に選択した進路とは異なる進路を推奨進路として決定する、
付記5に記載の散策支援システム。
【0104】
(付記7)
推奨進路を決定する手段は、参加者の登録情報の示すコードを割り当てられた特定の進路を推奨進路として決定する、
付記5に記載の散策支援システム。
【0105】
(付記8)
空間は、第1の分岐エリアと第2の分岐エリアとを含む複数の分岐エリアを含み、
散策支援システムは、参加者の状態を判定する手段(S1122)を備え、
推奨進路を決定する手段は、参加者が到達した分岐エリアにおいて参加者の分岐エリアの推奨進路を決定し、
推奨進路を決定する手段は、参加者が第1の分岐エリアから第1の進路を通って第2の分岐エリアに到達した場合に、第1の進路が参加者の第1の分岐エリアの推奨進路および非推奨進路のいずれであったかの情報を参照することなく、参加者の第2の分岐エリアの推奨進路を決定する、
付記1乃至付記7のいずれかに記載の散策支援システム。
【0106】
(付記9)
参加者を誘導する手段は、参加者に感覚刺激を与えることのできる演出装置(30)の動作を推奨進路に応じて制御することで、参加者を誘導する、
付記1乃至付記8のいずれかに記載の散策支援システム。
【0107】
(付記10)
演出装置は、参加者に携行される演出装置、および空間に設置された演出装置の少なくとも1つを含む、
付記9に記載の散策支援システム。
【0108】
(付記11)
演出装置は、発光する手段を備え、
参加者を誘導する手段は、演出装置を発光させることにより、参加者を誘導する、
付記9または付記10に記載の散策支援システム。
【0109】
(付記12)
演出装置は、音声を出力する手段を備え、
参加者を誘導する手段は、演出装置に所定の音声を出力させることにより、参加者を誘導する、
付記9乃至付記11のいずれかに記載の散策支援システム。
【0110】
(付記13)
演出装置は、映像を空間に投射する手段を備え、
参加者を誘導する手段は、演出装置に所定の映像を投射させることにより、参加者を誘導する、
付記9乃至付記12のいずれかに記載の散策支援システム。
【0111】
(付記14)
参加者の状態を判定する手段(S1122a)をさらに具備し、
参加者を誘導する手段は、参加者が第1の状態である場合に参加者に第1の感覚刺激を与えるように演出装置を制御する、
付記9乃至付記13のいずれかに記載の散策支援システム。
【0112】
(付記15)
第1の状態は、参加者が推奨進路を向いている状態である、
付記14に記載の散策支援システム。
【0113】
(付記16)
参加者を誘導する手段は、参加者が第2の状態である場合に参加者に第1の感覚刺激よりも弱い第2の感覚刺激を与えるように演出装置を制御することにより、参加者を誘導する、
付記14または付記15に記載の散策支援システム。
【0114】
(付記17)
コンピュータが、
参加者が進路を選択して散策可能な空間において、参加者の推奨進路を決定すること(S11)と、
推奨進路とは異なる進路である非推奨進路への参加者の進入を制限することなく推奨進路に参加者を誘導すること(S112)と
を具備する、散策支援方法。
【0115】
(付記18)
コンピュータを、
参加者が進路を選択して散策可能な空間において、参加者の推奨進路を決定する手段(S111)、
推奨進路とは異なる進路である非推奨進路への参加者の進入を制限することなく推奨進路に参加者を誘導する手段(S112)
として機能させる、散策支援プログラム。
【符号の説明】
【0116】
1 :散策支援システム
10 :演出制御装置
11 :記憶装置
12 :プロセッサ
13 :入出力インタフェース
14 :通信インタフェース
30 :演出装置
50 :状態検出装置


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14