(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014198
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】電動弁およびロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
F16K31/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116408
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】志水 亮介
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA14
3H062BB04
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF07
(57)【要約】
【課題】電動弁におけるセンサマグネットの位置決め精度を向上させる。
【解決手段】電動弁1は、弁体34を軸線方向に支持する作動ロッド32と、作動ロッド32を同軸状に回転させるロータ60と、ロータ60の変位量を検出する磁気センサ119と、ロータ60の回転運動を作動ロッド32の軸線運動に変換するねじ送り機構109と、を備える。ロータ60は、ロータコア102と、ロータコア102の外周面に設けられたロータマグネット104と、ロータコア102の軸端部に設けられ、磁気センサ119と対向するセンサマグネット106と、を含む。磁気センサ119は、センサマグネット106の磁束を検出することでロータ60変位量を検出する。ロータマグネット104およびセンサマグネット106は、いずれもロータコア102を母材として一体成型されたマグネット部が着磁されたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を軸線方向に支持する作動ロッドと、
前記作動ロッドを同軸状に回転させるロータと、
前記ロータの変位量を検出する磁気センサと、
前記ロータの回転運動を前記作動ロッドの軸線運動に変換するねじ送り機構と、
を備え、
前記ロータは、
ロータコアと、
前記ロータコアの外周面に設けられたロータマグネットと、
前記ロータコアの軸端部に設けられ、前記磁気センサと対向するセンサマグネットと、
を含み、
前記磁気センサは、前記センサマグネットの磁束を検出することで前記ロータの前記変位量を検出し、
前記ロータマグネットおよび前記センサマグネットが、いずれも前記ロータコアを母材として一体成型されたマグネット部が着磁されたものであることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記ロータコアが磁性体であることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記ロータを内包する筒状部材であって、流体の圧力が作用する内部空間と作用しない外部空間とを画定するキャンをさらに備え、
前記磁気センサが前記外部空間に配置され、
前記センサマグネットと前記磁気センサとが、前記キャンの端壁を介して対向することを特徴とする請求項1又は2に記載の電動弁。
【請求項4】
電動弁に設けられた磁気センサと対向配置され、前記磁気センサにより変位量が検出されるロータの製造方法であって、
ロータコアを成形するコア成形工程と、
前記ロータコアを母材として磁性材料を付着させる金型成形により、前記ロータコアの外周面にロータマグネット部を形成し、前記ロータコアの軸端部にセンサマグネット部を形成するマグネット部成形工程と、
前記ロータマグネット部および前記センサマグネット部に着磁する着磁工程と、
を備えることを特徴とするロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動弁に関し、特にロータの構造および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、圧縮機、凝縮器、膨張装置、蒸発器等を冷凍サイクルに配置して構成される。冷凍サイクルには、膨張装置としての膨張弁など、冷媒の流れを制御するために各種制御弁が設けられている。近年の電気自動車等の普及に伴い、駆動部としてモータを備える電動弁が広く採用されつつある。
【0003】
このような電動弁として、弁開度を検出するための磁気センサを備えるものが知られている(例えば特許文献1)。ロータとともに回転する作動ロッドの一端に弁体が設けられ、他端にマグネット(センサマグネット)が設けられる。そのセンサマグネットと軸線方向に対向するように磁気センサが設けられる。ロータの回転運動は、ねじ送り機構により弁体の軸線運動に変換される。ロータの回転に伴う磁束の変化を磁気センサで捉えることによりセンサマグネットの回転角度ひいては弁体の軸線方向位置を検出でき、弁開度を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電動弁において弁開度を高精度に求める場合、ロータのマグネット(ロータマグネット)の位相とセンサマグネットの位相との対応関係を正確に設定しておかなければならない。つまり、ロータマグネットに対するセンサマグネットの位置決めを正確に行う必要がある。この点、特許文献1の電動弁では、両マグネットが作動ロッドに対して個別に組み付けられるため、その組み付け誤差等によるずれが生じやすい点で改善の余地があった。なお、このような問題は、冷凍サイクルに限らず種々の用途に用いられる電動弁について同様に生じ得る。
【0006】
本発明の目的の一つは、電動弁におけるセンサマグネットの位置決め精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は電動弁である。この電動弁は、弁体を軸線方向に支持する作動ロッドと、作動ロッドを同軸状に回転させるロータと、ロータの変位量を検出する磁気センサと、ロータの回転運動を作動ロッドの軸線運動に変換するねじ送り機構と、を備える。ロータは、ロータコアと、ロータコアの外周面に設けられたロータマグネットと、ロータコアの軸端部に設けられ、磁気センサと対向するセンサマグネットと、を含む。磁気センサは、センサマグネットの磁束を検出することでロータの変位量を検出する。ロータマグネットおよびセンサマグネットは、いずれもロータコアを母材として一体成型されたマグネット部が着磁されたものである。
【0008】
この態様によれば、ロータコアを母材としてマグネット部が一体成型されたものに対して着磁がなされることで、ロータマグネットおよびセンサマグネットが形成されている。すなわち、ロータマグネットとセンサマグネットは、それぞれが着磁された状態でロータコアに個別に組み付けられたものではなく、予めロータコアにマグネット部が形成されたものに着磁がなされることで得られたものである。このため、両マグネットの位置関係にずれは生じ難い。
【0009】
本発明の別の態様は、電動弁に設けられた磁気センサと対向配置され、磁気センサにより変位量が検出されるロータの製造方法である。この製造方法は、ロータコアを成形するコア成形工程と、ロータコアを母材として磁性材料を付着させる金型成形により、ロータコアの外周面にロータマグネット部を形成し、ロータコアの軸端部にセンサマグネット部を形成するマグネット部成形工程と、ロータマグネット部およびセンサマグネット部に着磁する着磁工程と、を備える。
【0010】
この態様によれば、ロータコアにロータマグネット部およびセンサマグネット部が一体成型された後、各マグネット部に着磁がなされてロータマグネットおよびセンサマグネットが形成される。すなわち、ロータマグネットとセンサマグネットとの位置関係が着磁工程で決まるため、両マグネットの位置関係にずれが生じ難い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電動弁におけるセンサマグネットの位置決め精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】ステータおよびその周辺の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0014】
図1は、実施形態に係る電動弁を表す断面図である。
電動弁1は、図示しない自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用される。この冷凍サイクルには、循環する冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された冷媒を絞り膨張させて霧状に送出する膨張弁、霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却する蒸発器等が設けられている。電動弁1は、その冷凍サイクルの膨張弁として機能する。
【0015】
電動弁1は、弁本体2とモータユニット3とを組み付けて構成される。弁本体2は、弁部を収容したボディ5を有する。ボディ5は、「バルブボディ」として機能する。ボディ5は、第1ボディ6と第2ボディ8とを同軸状に組み付けて構成される。第1ボディ6および第2ボディ8は、ともにステンレス鋼(以下「SUS」と表記する)からなる。第2ボディ8には弁座24が設けられるため、耐摩耗性に優れた材質が選定されている。第1ボディ6は第2ボディ8よりも溶接性に優れ、第2ボディ8は第1ボディ6よりも加工性に優れている。
【0016】
第1ボディ6は、外径が下方に向けて段階的に縮径する段付円筒状をなす。第1ボディ6の上端部の外径がやや縮径され、段差による係止部52が構成されている。第1ボディ6の下部外周面には、電動弁1を図示しない配管ボディに組み付けるための雄ねじ10が形成されている。なお、配管ボディには、凝縮器側から延びる配管や、蒸発器につながる配管などが接続されるが、その詳細については説明を省略する。第1ボディ6における雄ねじ10のやや上方の外周面には、環状溝からなるシール収容部12が形成され、シールリング14(Oリング)が嵌着されている。
【0017】
第1ボディ6の下部には、円穴状の凹状嵌合部16が設けられている。第2ボディ8は有底円筒状をなし、その上部が凹状嵌合部16に圧入されている。第2ボディ8の下部外周面には環状溝からなるシール収容部18が形成され、シールリング20が嵌着されている。第2ボディ8の底部を軸線方向に貫通するように弁孔22が設けられ、その弁孔22の上端開口部に弁座24が形成されている。第2ボディ8の側部に入口ポート26が設けられ、下部に出口ポート28が設けられている。第1ボディ6および第2ボディ8の内方に弁室30が形成されている。入口ポート26と出口ポート28とは、弁室30を介して連通している。
【0018】
ボディ5の内方には、モータユニット3のロータ60から延びる作動ロッド32が挿通されている。作動ロッド32は、弁室30を貫通する。作動ロッド32は、非磁性金属からなる棒材を切削加工して得られ、その下部にニードル状の弁体34が一体に設けられている。弁体34が弁室30側から弁座24に着脱することにより弁部を開閉する。
【0019】
第1ボディ6の上部中央には、ガイド部材36が立設されている。ガイド部材36は、非磁性金属からなる管材を段付円筒状に切削加工して得られ、その軸線方向中央部の外周面に雄ねじ38が形成されている。ガイド部材36の下端部が大径となっており、その大径部40が第1ボディ6の上部中央に圧入され、同軸状に固定されている。ガイド部材36は、その内周面により作動ロッド32を軸線方向に摺動可能に支持する一方、その外周面によりロータ60の回転軸62を回転摺動可能に支持する。
【0020】
作動ロッド32における弁体34のやや上方にばね受け42が設けられ、ガイド部材36の底部にもばね受け44が設けられている。ばね受け42,44間に、弁体34を閉弁方向に付勢するスプリング46(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0021】
一方、モータユニット3は、ロータ60とステータ64とを含む三相ステッピングモータとして構成されている。モータユニット3は、有底円筒状のキャン66を有し、そのキャン66の内方にロータ60を配置し、外方にステータ64を配置して構成されている。キャン66は、弁体34およびその駆動機構が配置される空間を覆うとともにロータ60を内包する有底円筒状の部材であり、冷媒の圧力が作用する内方の圧力空間(内部空間)と作用しない外方の非圧力空間(外部空間)とを画定する。
【0022】
キャン66は、非磁性金属(本実施形態ではSUS)からなり、その下部が第1ボディ6の上端部に外挿されるようにして同軸状に組み付けられている。キャン66は、その下端が係止部52に係止されることによりその挿入量が規制される。キャン66の下端と第1ボディ6との境界に沿って全周溶接が施されることにより(図示略)、ボディ5とキャン66との固定およびシールが実現されている。ボディ5とキャン66とに囲まれた空間が、上記圧力空間を形成している。
【0023】
ステータ64は、積層コア70の内周部に複数の突極を等間隔に配置して構成される。積層コア70は、環状のコアが軸線方向に積層されて構成される。各突極には、コイル73(電磁コイル)が装着されたボビン74が組み付けられている。これらコイル73およびボビン74により「コイルユニット75」が構成される。本実施形態では、三相電流を供給するための3つのコイルユニット75が、積層コア70の中心軸に対して120度ごとに設けられている(詳細後述)。
【0024】
ステータ64は、モータユニット3のケース76と一体に設けられている。すなわち、ケース76は、耐食性を有する樹脂材の射出成形(「インサート成形」又は「モールド成形」ともいう)により得られる。ステータ64は、その射出成形によるモールド樹脂によって被覆されている。ケース76は、そのモールド樹脂からなる。以下、ステータ64とケース76とのモールド成形品を「ステータユニット78」とも称する。
【0025】
ステータユニット78は、中空構造を有し、キャン66を同軸状に挿通しつつボディ5に組み付けられている。第1ボディ6における係止部52のやや下方の外周面には、環状溝からなるシール収容部80が形成され、シールリング82(Oリング)が嵌着されている。第1ボディ6の上部外周面とケース76の下部内周面とに間にシールリング82が介装されることにより、キャン66とステータ64との間隙への外部雰囲気(水など)の侵入が防止されている。
【0026】
ロータ60は、回転軸62に組み付けられた円筒状のロータコア102と、ロータコア102の外周面に設けられたロータマグネット104と、ロータコア102の上端面に設けられたセンサマグネット106を備える。ロータコア102は、回転軸62に組み付けられている。ロータマグネット104は、その周方向に複数極に磁化(着磁)されている。センサマグネット106も複数極に磁化(着磁)されている。ロータマグネット104およびセンサマグネット106は、ロータコア102に一体成型されたマグネット部に後工程で着磁して得られたものであるが、その詳細については後述する。
【0027】
回転軸62は、有底円筒状の円筒軸であり、その開口端を下にしてガイド部材36に外挿されている。回転軸62の下部内周面に雌ねじ108が形成され、ガイド部材36の雄ねじ38と噛合している。これらのねじ部によるねじ送り機構109によって、ロータ60の回転運動が作動ロッド32の軸線運動に変換される。それにより弁体34が軸線方向、つまり弁部の開閉方向に移動(昇降)する。
【0028】
作動ロッド32の上部が縮径され、その縮径部110が回転軸62の底部112を貫通している。縮径部110の先端部には環状のストッパ114が固定されている。一方、縮径部110の基端と底部112との間には、作動ロッド32を下方(つまり閉弁方向)に付勢するスプリング116が介装されている。このような構成により、開弁時には、ストッパ114が底部112に係止される態様で作動ロッド32がロータ60と一体変位する。一方、閉弁時には、弁体34が弁座24から受ける反力によりスプリング116が押し縮められる。このときのスプリング116の弾性反力により弁体34を弁座24に押し付けることができ、弁体34の着座性能(弁閉性能)を高められる。
【0029】
モータユニット3は、キャン66の外側に回路基板118を有する。回路基板118は、ケース76の内方に固定されている。本実施形態では、回路基板118の下面に制御部や通信部として機能する各種回路が実装されている。具体的には、モータを駆動するための駆動回路、駆動回路に制御信号を出力する制御回路(マイクロコンピュータ)、制御回路が外部装置と通信するための通信回路、各回路およびモータ(コイル)に電力を供給するための電源回路等が実装されている。ケース76の上端は、蓋体77により閉止されている。ケース76における蓋体77の下方の空間に回路基板118が配設されている。
【0030】
回路基板118におけるセンサマグネット106との対向面には、磁気センサ119が設けられている。磁気センサ119は、キャン66の底部端壁を介してセンサマグネット106と軸線方向に対向する。ロータ60の回転に伴ってセンサマグネット106による磁束が変化する。磁気センサ119は、この磁束の変化を捉えることでロータ60の変位量(本実施形態ではロータ60の回転角度)を検出する。制御部は、そのロータ60の変位量に基づいて弁体34の軸線方向位置ひいては弁開度を算出する。
【0031】
それぞれのボビン74からはコイル73につながる一対の端子117が延出し、回路基板118に接続されている。回路基板118からは電源端子、グランド端子および通信端子(これらを総称して「接続端子81」ともいう)が延出し、それぞれケース76の側壁を貫通して外部に引き出されている。ケース76の側部にコネクタ部79が一体に設けられ、そのコネクタ部79の内方に接続端子81が配置されている。
【0032】
図2は、ステータ64およびその周辺の構成を表す図である。(A)は
図1のA-A矢視断面に対応し、ステータユニット78の断面図である。(B)はステータ64のみ(樹脂モールド前の状態)を表す図である。なお、
図2(A)には参考のため、キャン66およびロータ60を示している(二点鎖線参照)。
【0033】
モータユニット3が三相のモータであるため、
図2(A)に示すように、ロータ60の軸線Lの周りに等間隔でコイルユニット75が設けられている。
図2(B)にも示すように、積層コア70の内周部に軸線Lに対して120度の間隔でスロット120a~120c(これらを特に区別しないときは「スロット120」と総称する)が設けられている。各スロット120には、その中央から半径方向内向きに突出する突極122a~122c(「突極122」と総称する)が形成され、それぞれU相コイル73a、V相コイル73b、W相コイル73c(「コイル73」と総称する)が組み付けられている。互いに隣接するスロット120の間にも、横断面U字状のスリット124が形成され、磁路の最適化が図られている。
【0034】
ロータマグネット104は、キャン66を介して突極122a~122cと対向する。本実施形態では
図2(A)に示すように、ロータマグネット104が10極に磁化されているが、その極数については適宜設定できる。
【0035】
次に、ロータ60におけるマグネットの構成について詳細に説明する。
図3は、ロータ60の構成を表す図である。(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は平面図、(D)は(C)のB-B矢視断面図である。図中の「N」はN極、「S」はS極を示す。なお、同図においては、説明の便宜上、回転軸62(
図1参照)の表記を省略している。
【0036】
ロータ60は、ロータコア102の外周面に沿ってロータマグネット104を有し、ロータコア102の軸端部にセンサマグネット106を有する(
図3(A),(D))。ロータマグネット104は円筒状をなし、外周面10極着磁とされている(
図3(B),(C))。一方、センサマグネット106は環状をなし、平面2極着磁とされている。
【0037】
図4は、ロータコア102の構成を表す図である。(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は平面図、(D)は(C)のC-C矢視断面図である。
ロータコア102は、円筒状の磁性金属(磁性体)からなる。ロータコア102の軸線方向中央には、その外周面に沿って環状溝140が形成されている(
図4(A),(B))。ロータコア102の軸端部142(上端開口部)の内径がやや縮小されており、回転軸62(
図1参照)に組み付ける際の軸線方向のストッパを構成している(
図4(D))。軸端部142の上面にも環状溝144が形成されている(
図4(C),(D))。
【0038】
図3(D)に示したように、ロータマグネット104の内周面が環状溝140に嵌合し、センサマグネット106の下面が環状溝144に嵌合している。すなわち、環状溝140は、ロータコア102からのロータマグネット104の脱落を防止する脱落防止構造として機能する。同様に、環状溝144は、ロータコア102からのセンサマグネット106の脱落を防止する脱落防止構造として機能する。
【0039】
次に、ロータ60の製造工程を中心に電動弁1の製造方法について説明する。
図5~
図7は、電動弁1の製造方法を概略的に表す図である。
図5(A)~(C)は、ロータ60の製造過程におけるマグネット部成形工程を示す。
図6は、ロータ60の製造過程における着磁工程を示す。
図7(A)~(C)は、電動弁1の組付工程を示す。
【0040】
電動弁1の製造においては、ステータユニット78と内機部品130とが個別に組み立てられる(
図7(C)参照)。内機部品130は、冷媒の圧力が作用する部品であり、ボディ5、キャン66およびそれらに収容されるロータ60等の部品を含む。
【0041】
ロータ60の製造においては、まず、ロータコア102を作製する。ロータコア102は、SUS430等の磁性体を切削加工して得られる(コア成形工程)。
【0042】
続いて、ロータコア102を母材として磁性材料を付着させる金型成形により、マグネット部を形成する(マグネット部成形工程:
図5)。具体的には、金型150にロータコア102をセットし、ボンド磁石を射出成形する。ボンド磁石は、例えば希土類系の磁性粉末を樹脂バインダ(熱可塑性樹脂)にて結合するなどして得られるものである。
【0043】
金型150は、第1金型152および第2金型154を含む。第1金型152には、ロータコア102の内周面と相補形状の外周面を有する支持部156が突設されている。ロータコア102は、その支持部156を軸芯として挿通しつつ第1金型152に取り付けられる(
図5(A))。そして、第1金型152に第2金型154を組み付ける。
【0044】
第1金型152と第2金型154とにより形成されるチャンバは、ロータマグネット部成形領域160とセンサマグネット部成形領域162を含む(
図5(B))。第2金型154には、これらのマグネット部成形領域につながる射出通路158が設けられている。
ボンド磁石の射出成形により、ロータコア102に対してマグネット部170(つまりロータマグネット部172およびセンサマグネット部174)が一体に形成される(
図5(C))。
【0045】
図示のように、ロータマグネット部成形領域160とセンサマグネット部成形領域162とは軸線方向に離隔している。そのため、ロータマグネット部172とセンサマグネット部174とが、ロータコア102を介して軸線方向に離隔する。環状溝140,144に入り込んだ磁性材料(ボンド磁石)が硬化することで、ロータマグネット部172およびセンサマグネット部174がロータコア102にしっかりと固定される。
【0046】
続いて、ロータコア102のマグネット部170に着磁する(着磁工程:
図6)。この着磁工程では、ロータマグネット部172に半径方向に対向するように10極分の着磁ヨーク180が配置され、センサマグネット部174と軸線方向に対向するように2極分の着磁ヨーク182が配置される。これらの着磁ヨーク180,182に通電して磁界を印加することにより着磁がなされ、ロータマグネット部172がロータマグネット104となり、センサマグネット部174がセンサマグネット106となる。なお、本実施形態では、着磁ヨーク180,182の一方を先に通電し、他方を後に通電する。それにより、着磁工程における磁気干渉を防止している。その後、ロータコア102と回転軸62とを組み付けることによりロータ60が得られる。
【0047】
電動弁1の組付工程では、ボディ5に作動ロッド32とガイド部材36を組み付けた組立体に対し、ロータ60を組み付ける(
図7(A))。ロータ60をガイド部材36に組み付けた状態で、作動ロッド32の上端部にストッパ114を圧入する。そして、ロータ60を覆うようにキャン66を取り付け、キャン66の下端部をボディ5の上端部に溶接することで内機部品130を得る(
図7(B),(C))。さらに、ステータユニット78をキャン66に被せるようにしてボディ5に組み付けることにより電動弁1が得られる(
図7(C))。
【0048】
図1に戻り、以上のように構成された電動弁1は、モータユニット3の駆動制御によってその弁開度を調整可能な電動膨張弁として機能する。すなわち、図示しない外部装置からの指令に基づき、制御部は、目標開度を実現するための制御量(モータの駆動ステップ数)を設定し、これを実現するための駆動信号を駆動回路に出力する。駆動回路は、各コイル73に設定されたタイミングで三相の駆動電流(駆動パルス)を供給する。それにより、ロータ60が高分解能にて回転する。このとき、弁体34が弁座24から離間した開弁状態であれば、スプリング116の付勢力によりストッパ114が回転軸62に当接し、作動ロッド32ひいては弁体34が、ロータ60と一体に動作する。
【0049】
ロータ60は、ガイド部材36との間のねじ送り機構109により上下方向に動作する。つまり、弁体34が弁部の開閉方向に並進し、弁部の開度が設定開度に調整される。このねじ送り機構109は、ロータ60の軸線周りの回転運動を作動ロッド32の軸線運動(直進運動)に変換し、弁体34を弁部の開閉方向に駆動する。電動弁1が配管ボディに取り付けられて膨張弁として機能するとき、弁部は小開度に制御される。
【0050】
制御部は、磁気センサ119の検出信号に基づいてセンサマグネット106の回転角度(ロータ60の回転角度)を検出し、弁開度を算出できる。なお、磁気センサによりセンサマグネットの回転角度を検出する原理については、例えば特許文献1にも記載のように公知であるため、その詳細な説明は省略する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、ロータコア102を母材としてロータマグネット部172およびセンサマグネット部174が一体成型される。その後、各マグネット部に着磁がなされてロータマグネット104およびセンサマグネット106が形成される。すなわち、従来のようにセンサマグネットをロータコアに位置決めしながら固定するといった工程がなくなり、ロータマグネット104とセンサマグネット106との位置関係が、共通の着磁工程で決まる。このため、ロータマグネット104に対するセンサマグネット106の位置決め精度を簡易に向上できる。
【0052】
また、センサマグネット部をボンド磁石の射出成形にて得るため、複雑な形状であっても成形し易い。すなわち、センサマグネットの形状を自由に設計できる。さらに、ロータマグネット104とセンサマグネット106とをロータコア102を介して軸線方向に離隔させることで、ロータマグネット104が無用に大きくならないようにされている。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0054】
上記実施形態では、ロータ60においてロータコア102と回転軸62とを別部材にて構成する例を示した。変形例においては、ロータコアと回転軸とを一体成形し、その内周面にねじ部(雌ねじ108)を設けてもよい。その場合、ロータコアがねじ送り機構としても機能する。ただし、ロータコアにマグネット部を一体成型することを考慮すると、ロータコアを金型にセットする際にねじ部が邪魔になる可能性がある。そのため、上記実施形態のように両者は別体であるほうが好ましい。
【0055】
上記実施形態では、開弁状態においてロータ60と作動ロッド32とを軸線方向に一体変位させる構成を示した。すなわち、ロータ60が作動ロッド32を同軸状に支持し、ロータ60そのものが軸線方向に変位する構成とした。変形例においては、特許文献1にも記載のように、ロータの位置を軸線方向に固定する構成を採用してもよい。すなわち、ロータと一体に回転するシャフトと、弁体を一体に有するドライバとを軸線方向に接続し、作動ロッドを構成してもよい。ドライバは、シャフトと一体に回転するが、軸線方向には相対変位可能とされる。ロータの回転運動は、ねじ送り機構によってドライバの軸線運動に変換される。
【0056】
上記実施形態では、磁気センサがロータの回転量(回転角度)を検出し、制御部がその回転量に基づき作動ロッドの軸線方向変位(弁体のストローク、つまり弁部の開度)を算出する例を示した。変形例においては、磁気センサがロータの軸線方向変位(つまり作動ロッドの軸線方向変位)を直接検出し、制御部がその変位に基づき弁体のストローク(つまり弁部の開度)を算出してもよい。すなわち、磁気センサはロータの変位量(つまりセンサマグネットの変位量)を検出するものであればよい。
【0057】
上記実施形態では、マグネット部成形工程において磁性材料を射出成形する例を示したが、鍛造や押出成形その他の金型成形を採用してもよい。すなわち、磁性材料を一体成型するものであればよい。
【0058】
上記実施形態では、センサマグネット106を上下1層の平面2極着磁とする構成を例示した。変形例においては、センサマグネット106を上下2層着磁とし、上層と下層で磁極を反転させてもよい。このような構成により、磁力の強化を図ることができる。
【0059】
上記実施形態では、マグネット部170の着磁工程(
図6参照)において、着磁ヨーク180,182の一方を先に通電し、他方を後に通電する例を示した。変形例においては、これらを同時に通電してもよい。
【0060】
上記実施形態では、磁気センサ119をセンサマグネット106と軸線方向に対向させる構成を例示した(
図1参照)。変形例においては、センサマグネットの側方(径方向外側)に磁気センサを配置してもよい。すなわち、両者を径方向に対向させてもよい。センサマグネットの外周面に着磁してもよい。その極数については、例えば2極とするなど適宜設定できる。
【0061】
上記実施形態では、ロータマグネット104とセンサマグネット106とが軸線方向に離隔する構成を例示した。変形例においては、ロータマグネットとセンサマグネットとを一体に構成してもよい。マグネット部成形工程において、ロータマグネット部とセンサマグネット部とを一体成形してもよい。その場合、磁気センサが磁束を確実に検出できるよう、センサマグネットの面積(外径)を大きくしてもよい。センサマグネットがロータコアの外周にはみ出すことになるため、センサマグネットとロータマグネットを射出成形しやすくなる。
【0062】
上記実施形態では述べなかったが、バルブボディと配管ボディとを合わせて「電動弁のボディ」としてもよい。
【0063】
各実施形態では、ステータのコアとして積層コア(積層磁心)を例示した。変形例においては、圧粉コアその他のコアを採用してもよい。圧粉コアは、「圧粉磁心」とも呼ばれ、軟磁性材料を粉末にし、非導電性の樹脂等でコーティングした紛体と、樹脂バインダとを混練し、圧縮成型・加熱することで得られる。
【0064】
各実施形態では、回路基板の下面に駆動回路、制御回路、通信回路および電源回路が実装される構成を例示したが、実装される回路については適宜変更できる。例えば、駆動回路および電源回路を実装する一方、制御回路を電動弁の外部に設置してもよい。また、各回路を回路基板の上面に実装してもよい。
【0065】
各実施形態では、モータユニットとして、PM型ステッピングモータを採用したが、ハイブリッド型ステッピングモータを採用してもよい。また、上記実施形態では、モータユニットを三相モータとしたが、二相,四相、五相などその他のモータとしてもよい。ステータにおける電磁コイルの数も3つや6つに限らず、モータの相数に合わせて適宜設定してよい。
【0066】
各実施形態の電動弁は、冷媒として代替フロン(HFC-134a)など使用する冷凍サイクルに好適に適用されるが、二酸化炭素のように作動圧力が高い冷媒を用いる冷凍サイクルに適用することも可能である。その場合には、冷凍サイクルに凝縮器に代わってガスクーラなどの外部熱交換器が配置される。
【0067】
各実施形態では、上記電動弁を膨張弁として構成したが、膨張機能を有しない開閉弁や流量制御弁として構成してもよい。
【0068】
各実施形態では、上記電動弁を自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用する例を示したが、車両用に限らず電動膨張弁を搭載する空調装置に適用可能である。また、冷媒以外の流体の流れを制御する電動弁として構成することもできる。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 電動弁、2 弁本体、3 モータユニット、5 ボディ、22 弁孔、30 弁室、32 作動ロッド、34 弁体、36 ガイド部材、60 ロータ、62 回転軸、64 ステータ、66 キャン、75 コイルユニット、76 ケース、78 ステータユニット、102 ロータコア、104 ロータマグネット、106 センサマグネット、109 ねじ送り機構、118 回路基板、119 磁気センサ、122 突極、130 内機部品、140 環状溝、142 軸端部、144 環状溝、150 金型、152 第1金型、154 第2金型、156 支持部、158 射出通路、160 ロータマグネット部成形領域、162 センサマグネット部成形領域、170 マグネット部、172 ロータマグネット部、174 センサマグネット部、180 着磁ヨーク、182 着磁ヨーク。