(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142006
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】ウォームホイール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16H 55/06 20060101AFI20220922BHJP
F16H 55/17 20060101ALI20220922BHJP
F16H 55/22 20060101ALI20220922BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20220922BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
F16H55/06
F16H55/17 Z
F16H55/22
B29C45/14
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041956
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清田 晴彦
【テーマコード(参考)】
3J030
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
3J030AA06
3J030BA01
3J030BC01
3J030BC08
3J030BD06
4F202AA29
4F202AD03
4F202AG13
4F202AH12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK25
4F202CQ03
4F202CQ05
4F206AA29
4F206AD03
4F206AG13
4F206AH12
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ウォーム歯に対するウォームホイール歯の接触面圧を小さく抑えて、前記ウォームホイール歯の摩耗を抑えることができる構造を提供する。
【解決手段】金属製のハブ4は、外径側筒部7の軸方向中間部外周面に、全周にわたって同じ断面形状を有するハブ側凹部9を備える。合成樹脂製のギヤ部5は、外周面のうち、ハブ側凹部9の径方向外側に位置する部分を含む軸方向中間部に、軸方向両側に隣接する部分よりも凹んだギヤ側凹部15を全周にわたって有する。ギヤ側凹部15は、ギヤ部5の射出成形後、成形収縮に伴って、ギヤ部5の軸方向中間部外周面に、ヒケと呼ばれる窪みを生じさせることで形成される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径側筒部と、外周面に、全周にわたって同じ断面形状を有するハブ側凹部を備え、かつ、前記内径側筒部の周囲に該内径側筒部と同軸に配置された外径側筒部と、前記内径側筒部と前記外径側筒部とを接続する接続部と、を含むハブと、
円周方向に等間隔に配置された複数のウォームホイール歯を有し、前記ハブの径方向外側の端部を覆うように該ハブに結合固定された合成樹脂製のギヤ部と、
を備え、
前記ギヤ部は、外周面のうちの少なくとも前記ウォームホイール歯のそれぞれの歯面の、前記ハブ側凹部の径方向外側に位置する部分を含む軸方向中間部に、軸方向両側に隣接する部分よりも凹んだギヤ側凹部を有する、
ウォームホイール。
【請求項2】
前記ギヤ側凹部は、前記ギヤ部の外周面に全周にわたって形成されている、
請求項1に記載のウォームホイール。
【請求項3】
前記ハブ側凹部の軸方向両側の側面のうち、少なくとも一方の側面の少なくとも径方向外側部分が、前記ハブの中心軸に対し傾斜した直線状の母線形状を有する円すい台面により構成されている、
請求項1又は2に記載のウォームホイール。
【請求項4】
前記ハブ側凹部の底面が、前記ハブの中心軸を中心とする円筒面により構成されている、
請求項1~3のいずれかに記載のウォームホイール。
【請求項5】
前記ハブ側凹部が、円弧形の断面形状を有する、
請求項1又は2に記載のウォームホイール。
【請求項6】
前記外径側筒部の外周面のうちで前記ハブ側凹部よりも軸方向片側に位置する部分の外径と、前記外径側筒部の外周面のうちで前記ハブ側凹部よりも軸方向他側に位置する部分の外径とが互いに異なる、
請求項1~5のいずれかに記載のウォームホイール。
【請求項7】
前記ギヤ部は、ポリアミド66を主成分とする合成樹脂により構成されている、
請求項1~6のいずれかに記載のウォームホイール。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のウォームホイールの製造方法であって、
前記ハブの径方向外側の端部を、内周面に歯成形用凹凸部を有する金型装置のキャビティ内にセットして、該キャビティ内に溶融した合成樹脂を充填する工程と、
前記合成樹脂を冷却することにより、該合成樹脂を収縮させつつ固化させることに伴い、前記ギヤ部の軸方向中間部外周面にヒケを生じさせることで、前記ギヤ側凹部を形成する工程と、
を備える、ウォームホイールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブの径方向外側の端部に、合成樹脂製のギヤ部を結合固定してなるウォームホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の操舵輪に舵角を付与する際に、ステアリングホイールの操作に要する力の軽減を図るための装置として、電動モータを補助動力源に使用する電動パワーステアリング装置が広く使用されている。電動パワーステアリング装置は、電動モータの取付位置により大別される。具体的には、ステアリングコラムの内側に回転自在に支持されたステアリングシャフトに補助動力を付与するコラムアシスト式、ステアリングギヤユニットの入力軸であるピニオン軸に補助動力を付与するピニオンアシスト式、および、ステアリングギヤユニットに、入力軸であるピニオン軸とは別のピニオン軸を設け、該ピニオン軸に補助動力を付与するデュアルピニオン式など、種々の構造が提案されている。いずれの構造においても、ステアリングホイールの操作によって回転又は直線運動する軸部材に、電動モータの補助動力が、減速機を介して付与される。このような減速機としては、ウォーム減速機が広く使用されている。電動パワーステアリング装置を構成するウォーム減速機は、電動モータにより回転駆動されるウォームと、該ウォームと噛合するウォームホイールとを備える。
【0003】
ウォーム減速機では、ステアリングホイールの操作時や悪路走行時に、ウォームとウォームホイールとの噛合部で発生する歯打ち音の抑制、軽量化及び/又は低コスト化などを目的として、ウォームホイールのうちで回転軸に外嵌される径方向内側部分を金属材料により構成し、かつ、ウォームと噛合する径方向外側部分を合成樹脂材料により構成することが提案されている。
【0004】
図20は、径方向内側部分を金属材料により構成し、かつ、径方向外側部分を合成樹脂材料により構成したウォームホイールの1例として、国際公開第2017/135140号パンフレット(特許文献1)に記載の構造を示している。ウォームホイール100は、金属製のハブ101と、合成樹脂製のギヤ部102とを備える。
【0005】
ハブ101は、内径側筒部103と、内径側筒部103の周囲に該内径側筒部103と同軸に配置された外径側筒部104と、内径側筒部103と外径側筒部104とを接続する中空円形板状の接続部105とを備える。このうちの内径側筒部103が、ステアリングホイールの回転に伴って回転するステアリングシャフト若しくはピニオン軸、又は、ラック軸と噛合するピニオン軸などの回転軸に外嵌固定される。
【0006】
ギヤ部102は、径方向外側の端部に複数のウォームホイール歯106を有し、ハブ101の径方向外側の端部を覆うように該ハブ101に結合固定されている。すなわち、ギヤ部102は、射出成形に伴って(インサート成形により)、ハブ101の外径側筒部104と接続部105の径方向外側の端部とを包埋している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2017/135140号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
国際公開第2017/135140号パンフレットに記載のウォームホイール100は、ウォームホイール歯106の摩耗を抑える面からは改良の余地がある。
【0009】
国際公開第2017/135140号パンフレットに記載のウォームホイール100では、複数のウォームホイール歯106のそれぞれの歯面は、軸方向に関して凹凸がない平坦面又は凸曲面により構成されている。
【0010】
このようなウォームホイール100のウォームホイール歯106を、ウォームに備えられたねじ状のウォーム歯と噛合させると、ウォームホイール歯106の歯面とウォーム歯の歯面との接触は点接触となり、接触面圧が高くなるため、ウォームホイール歯106が摩耗しやすくなる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ウォーム歯に対するウォームホイール歯の接触面圧を小さく抑えて、前記ウォームホイール歯の摩耗を抑えることができる、ウォームホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様のウォームホイールは、ハブと、合成樹脂製のギヤ部と、を備える。
前記ハブは、内径側筒部と、外周面に、全周にわたって同じ断面形状を有するハブ側凹部を備え、かつ、前記内径側筒部の周囲に該内径側筒部と同軸に配置された外径側筒部と、前記内径側筒部と前記外径側筒部とを接続する接続部と、を備える。
前記ギヤ部は、円周方向に等間隔に配置された複数のウォームホイール歯を有し、前記ハブの径方向外側の端部を覆うように該ハブに結合固定されている。
特に本発明の一態様のウォームホイールでは、前記ギヤ部は、外周面のうちの少なくとも前記ウォームホイール歯のそれぞれの歯面の、前記ハブ側凹部の径方向外側に位置する部分を含む軸方向中間部に、軸方向両側に隣接する部分よりも凹んだギヤ側凹部を有する。
【0013】
本発明の一態様では、前記ギヤ側凹部を、前記ギヤ部の外周面に全周にわたって形成することができる。すなわち、前記ギヤ側凹部を、前記ウォームホイール歯のそれぞれの歯面及び歯先面と、円周方向に隣り合う1対のウォームホイール歯同士の間の歯底面とのうち、軸方向に関して前記ハブ側凹部の径方向外側に位置する部分を含む部分に全周にわたって形成することができる。
【0014】
本発明の一態様では、前記ハブ側凹部の軸方向両側の側面のうち、少なくとも一方の側面の少なくとも径方向外側部分を、前記ハブの中心軸に対し傾斜した直線状の母線形状を有する円すい台面により構成することができる。
【0015】
本発明の一態様では、前記ハブ側凹部の底面を、前記ハブの中心軸を中心とする円筒面により構成することができる。
【0016】
本発明の一態様では、前記ハブ側凹部が、円弧形の断面形状を有することができる。
【0017】
本発明の一態様では、前記外径側筒部の外周面のうちで前記ハブ側凹部よりも軸方向片側に位置する部分の外径と、前記外径側筒部の外周面のうちで前記ハブ側凹部よりも軸方向他側に位置する部分の外径とを互いに異ならせることができる。
あるいは、前記外径側筒部の外周面のうちで前記ハブ側凹部よりも軸方向片側に位置する部分の外径と、前記外径側筒部の外周面のうちで前記ハブ側凹部よりも軸方向他側に位置する部分の外径とを互いに同じとすることができる。
【0018】
本発明の一態様では、前記ギヤ部を、ポリアミド66を主成分とする合成樹脂により構成することができる。この場合、前記合成樹脂に、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、カーボン繊維、及び/又は、アラミド繊維などの強化繊維を混入することが好ましい。
あるいは、前記ギヤ部を、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド9T、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、フェノールなどを主成分とする合成樹脂により構成することができる。この場合も、前記合成樹脂に、強化繊維を混入することが好ましい。
【0019】
本発明の一態様のウォームホイールの製造方法は、
前記ハブの径方向外側の端部を、内周面に歯成形用凹凸部を有する金型装置のキャビティ内にセットして、該キャビティ内に溶融した合成樹脂を充填する工程と、
前記合成樹脂を冷却することにより、該合成樹脂を収縮させつつ固化させることに伴い、前記ギヤ部の軸方向中間部外周面にヒケを生じさせることで、前記ギヤ側凹部を形成する工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様のウォームホイールによれば、ウォーム歯に対するウォームホイール歯の接触面圧を小さく抑えて、前記ウォームホイール歯の摩耗を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施の形態の第1例のウォームホイールを備えるウォーム減速機を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態の第1例のウォームホイールを備えるウォーム減速機を、ウォームの中心軸とウォームホイールの中心軸とに直交する方向から見た図である。
【
図4】
図4は、実施の形態の第1例のウォームホイールを示す斜視図である。
【
図5】
図5(A)は、実施の形態の第1例のウォームホイールを軸方向から見た図であり、
図5(B)は、
図5(A)のB-B断面図である。
【
図7】
図7(A)は、実施の形態の第1例のウォームホイールを径方向から見た図であり、
図7(B)は、
図7(A)のC-C断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態の第1例について、ハブを取り出して示す斜視図である。
【
図9】
図9は、実施の形態の第1例のウォームホイールの製造方法を示す断面図である。
【
図12】
図12は、実施の形態の第2例について、ハブを取り出して示す斜視図である。
【
図13】
図13は、実施の形態の第2例のウォームホイールの製造方法を示す断面図である。
【
図20】
図20は、ウォームホイールの従来構造の1例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、
図1~
図9を用いて説明する。本例のウォームホイール1は、ウォーム2と組み合わされてウォーム減速機3を構成する。ウォーム2は、軸方向中間部外周面に、ねじ状のウォーム歯(
図1~
図3では省略)を有する。ウォーム減速機3を電動パワーステアリング装置に組み込んで使用する場合には、ウォーム2の基端部(
図2の左下側の端部)に、電動モータの出力軸が、スプライン係合などにより、又は、継手などを介して接続される。すなわち、ウォーム2は、電動モータにより回転駆動可能に構成される。本例のウォーム減速機3においては、ウォームホイール1の中心軸とウォーム2の中心軸とに直交する方向から見た場合に、ウォームホイール1の中心軸とウォーム2の中心軸とが斜交している(鋭角をなしている)。
【0023】
ウォームホイール1は、金属製のハブ4と、合成樹脂製のギヤ部5とを備える。
【0024】
ハブ4は、内径側筒部6と、内径側筒部6の周囲に該内径側筒部6と同軸に配置された外径側筒部7と、内径側筒部6と外径側筒部7とを接続する接続部8とを備える。
【0025】
外径側筒部7は、軸方向中間部外周面に、全周にわたって同じ断面形状を有するハブ側凹部9を備える。すなわち、ハブ側凹部9は、内面を構成する底面10及び軸方向両側の側面11のいずれにも、円周方向に関する凹凸が存在しない。本例では、ハブ側凹部9は、略U字形の断面形状を有する。
【0026】
本例では、ハブ側凹部9の底面10は、軸方向両側の側面11と接続される軸方向両側の端部を除き、ハブ4の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。又、ハブ側凹部9の軸方向両側の側面11は、径方向両側の端部を除き、ハブ4の中心軸に直交する平坦面により構成されている。
【0027】
なお、本例では、外径側筒部7の外周面のうちでハブ側凹部9よりも軸方向片側(
図5(B)及び
図6の左側)に位置する部分の外径と、外径側筒部7の外周面のうちでハブ側凹部9よりも軸方向他側(
図5(B)及び
図6の右側)に位置する部分の外径とは、互いに同じとなっている。
【0028】
さらに、外径側筒部7は、軸方向片側部分の内周面に全周にわたって備えられた凹溝12と、凹部と凸部とを交互に全周にわたって配置してなる歯車状のハブ側凹凸部13とを有する。
【0029】
凹溝12は、略V字形の断面形状を有し、かつ、外径側筒部7の内周面のうち、接続部8の径方向外側の端部が接続された部分の軸方向片側に位置する部分に、径方向外側に向けて凹むように全周にわたって形成されている。
【0030】
ハブ側凹凸部13は、外径側筒部7の内周面のうち、凹溝12の軸方向片側に隣接する部分に備えられている。
【0031】
接続部8は、内径側筒部6の軸方向他側部分と外径側筒部7の軸方向他側部分とを接続する。本例では、接続部8の径方向外側の端部は、外径側筒部7の軸方向他側の端部ではなく、軸方向片側に寄った部分に接続されている。すなわち、外径側筒部7は、軸方向他側の端部内周面に、径方向内側を向いた段部37を有する。又、本例では、接続部8は、中空円形板状に構成されている。なお、接続部は、スポークのように、円周方向に離隔して放射状に配置された複数の接続片により構成することもできる。
【0032】
ハブ4は、炭素鋼若しくは合金鋼などの鉄鋼、あるいは、アルミニウム若しくはマグネシウム又はこれらの合金などの軽合金などの金属材料により構成される。ハブ4は、前記金属材料に、切削加工及び/又は塑性加工を施すことにより成形される。材料の歩留まり良く低コストに成形する面からは、ハブ4を、前記金属材料に、鍛造加工、プレス加工又はフローフォーミング加工などの塑性加工を施すことにより成形することが好ましい。
【0033】
ギヤ部5は、円周方向に等間隔に配置された複数のウォームホイール歯14を有し、ハブ4の径方向外側の端部を覆うように該ハブ4に結合固定されている。すなわち、ギヤ部5は、射出成形に伴って(インサート成形により)、ハブ4の外径側筒部7と接続部8の径方向外側の端部とを全周にわたり包埋することで、ハブ4に結合固定されている。ウォームホイール歯14のそれぞれは、歯筋がハブ4の中心軸と平行な直歯により構成されている。
【0034】
ギヤ部5は、ウォームホイール歯14のそれぞれの歯先面及び歯面を含む外周面のうち、ハブ側凹部9の径方向外側に位置する部分を含む軸方向中間部に、軸方向両側に隣接する部分よりも凹んだギヤ側凹部15を全周にわたって有する。換言すれば、ギヤ部5は、ウォームホイール歯14のそれぞれの歯先面(径方向外側の端面)及び歯面(円周方向側面)と、円周方向に隣り合う1対のウォームホイール歯14同士の間の歯底面とのうち、軸方向に関してハブ側凹部9と一致する部分を含む軸方向中間部に、軸方向両側に隣接する部分よりも凹んだギヤ側凹部15を全周にわたって有する。すなわち、ギヤ側凹部15は、ウォームホイール歯14のそれぞれの歯面に備えられた歯面凹部15aと、ウォームホイール歯14のそれぞれの歯先面に備えられた歯先面凹部15bと、円周方向に隣り合う1対のウォームホイール歯14同士の間の歯底面に備えられた歯底面凹部15cとからなる。ギヤ側凹部15は、軸方向中間部に、深さが一定又はほぼ一定の部分を有し、当該部分から軸方向両側に向かうにしたがって深さが漸次浅くなっている。
【0035】
ギヤ側凹部15は、後述するように、ギヤ部5の射出成形後、成形収縮に伴って、ギヤ部5の軸方向中間部外周面に、ヒケと呼ばれる窪みを生じさせることで形成される。すなわち、本例では、ギヤ側凹部15を含むギヤ部5の外周面は、射出成形面により構成されている。
【0036】
ギヤ部5は、ハブ4の外径側筒部7の外周面を覆う外径側覆い部5aに、ハブ側凹部9と係合するギヤ側凸部16を全周にわたって有する。ギヤ側凸部16は、ギヤ部5を射出成形により造る際に、ギヤ部5を構成する合成樹脂の一部をハブ側凹部9に送り込み、冷却固化させることで形成される。
【0037】
さらに、ギヤ部5は、ハブ4の外径側筒部7の軸方向片側部分の内周面を覆う第1内径側覆い部5bに、凹溝12と係合する突条17と、ハブ側凹凸部13と係合するギヤ側凹凸部18とを有する。突条17は、ギヤ部5を射出成形により造る際に、ギヤ部5を構成する合成樹脂の一部を凹溝12に送り込み、冷却固化させることで形成される。ギヤ側凹凸部18は、ギヤ部5を射出成形により造る際に、ギヤ部5を構成する合成樹脂の一部を、ハブ側凹凸部13を構成する凹部に送り込み、冷却固化させることで形成される。
【0038】
なお、本例では、ハブ4の外径側筒部7の軸方向他側の端部内周面(段部37)を覆う第2内径側覆い部5cと、外径側筒部7の段部37とが、径方向に係合している。要するに、ギヤ部5をハブ4に対し、該ハブ4の径方向外側の端部を包み込むようにして結合することで、ハブ4に対するギヤ部5の結合強度を確保している。
【0039】
ギヤ部5は、ポリアミド66を主成分とする合成樹脂により構成される。ギヤ部5を構成する合成樹脂には、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、カーボン繊維、及び/又は、アラミド繊維などの強化繊維を混入することが好ましい。あるいは、ギヤ部5を、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド9T、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、フェノールなどを主成分とする合成樹脂により構成することもできる。この場合でも、ギヤ部5を構成する合成樹脂には、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、カーボン繊維、及び/又は、アラミド繊維などの強化繊維を混入することが好ましい。
【0040】
ウォームホイール1は、ハブ4の内径側筒部6を回転軸に外嵌固定される。具体的には、例えばウォーム減速機3を、コラムアシスト式の電動パワーステアリング装置に組み込んで使用する場合、ウォームホイール1は、ハブ4の内径側筒部6をステアリングシャフトに外嵌固定することにより該ステアリングシャフトに支持固定される。これにより、コラムアシスト式の電動パワーステアリング装置は、電動モータから出力される補助動力を、ウォーム減速機を介してステアリングシャフトに付与可能に構成される。
【0041】
ウォーム減速機3を、ピニオンアシスト式の電動パワーステアリング装置に組み込んで使用する場合、ウォームホイール1は、ハブ4の内径側筒部6を、ステアリングシャフトに、自在継手や中間シャフトを介してトルク伝達可能に接続されたピニオンシャフトに外嵌固定することにより該ピニオンシャフトに支持固定される。これにより、ピニオンアシスト式の電動パワーステアリング装置は、電動モータから出力される補助動力を、ウォーム減速機を介してピニオンシャフトに付与可能に構成される。
【0042】
ウォーム減速機3を、デュアルピニオン式の電動パワーステアリング装置に組み込んで使用する場合、ウォームホイール1は、ハブ4の内径側筒部6を、ステアリングシャフトにトルク伝達可能に接続されたピニオンシャフトとは別で、かつ、ラック軸に噛合する第2のピニオンシャフトに外嵌固定することにより該第2のピニオンシャフトに支持固定される。これにより、電動モータから出力される補助動力を、デュアルピニオン式の電動パワーステアリング装置は、ウォーム減速機及び第2のピニオンシャフトを介してラック軸に付与可能に構成される。
【0043】
ハブ4の径方向外側の端部にギヤ部5をインサート成形してウォームホイール1を造る工程では、
図9に示すような金型装置19を使用する。金型装置19は、固定金型20と、固定金型20に対する軸方向の遠近動を可能に配置された可動金型21とを備える。
【0044】
固定金型20は、中央部に、固定金型20及び可動金型21とハブ4との間に画成されるキャビティ22内に、溶融した合成樹脂を送り込むためのランナー23を有する。ランナー23は、例えば、周囲に図示しないヒータが備えられたホットランナーにより構成することができる。
【0045】
可動金型21は、3個の金型部品24a、24b、24cから構成されている。
【0046】
第1金型部品24aは、段付円柱形状を有する。具体的には、第1金型部品24aは、軸方向片側の大径部25と、軸方向他側の小径部26とを備える。
【0047】
第2金型部品24bは、円筒形状を有し、第1金型部品24aの大径部25にがたつきなく外嵌される。第2金型部品24bは、軸方向他側の端部の径方向内側部分に、径方向外側部分よりも軸方向他側に突出した凸部27を有する。
【0048】
第3金型部品24cは、円筒形状を有し、内周面に、ギヤ部5の複数のウォームホイール歯14を成形するための歯成形用凹凸部28を有する。歯成形用凹凸部28は、成形するギヤ部5の外周面形状に、おおよそ見合う表面形状を有する。ただし、歯成形用凹凸部28は、完成状態でギヤ側凹部15が備えられる部分に、該ギヤ側凹部15に沿う表面形状を有する凸部を備えていない。すなわち、歯成形用凹凸部28の表面には、軸方向に関する凹凸が存在しない。具体的には、歯成形用凹凸部28のうち、ウォームホイール歯14のそれぞれの歯先面を成形する部分は、軸方向に関する凹凸が存在しない平坦面又は部分円筒面により構成され、ウォームホイール歯14のそれぞれの歯面を成形する部分は、軸方向に関する凹凸が存在しない平坦面又は凹曲面により構成され、及び、円周方向に隣り合うウォームホイール歯14同士の間の歯底面を成形する部分は、軸方向に関する凹凸が存在しない平坦面又は部分円筒面により構成されている。
【0049】
本例では、可動金型21は、3個の金型部品24a、24b、24cから構成されているが、可動金型は、全体を一体に(一部品として)構成することもできるし、2個又は4個以上の金型部品から構成することもできる。
【0050】
金型装置19を使用して、ハブ4の径方向外側の端部にギヤ部5をインサート成形する際には、第1金型部品24aの小径部26の軸方向他側の端部に、ハブ4の内径側筒部6をがたつきなく外嵌する。また、第2金型部品24bの凸部27の先端面(軸方向他側の端面)を、ハブ4の接続部8の軸方向片側の側面の径方向中間部に当接させる。さらに、第3金型部品24cを、ハブ4の外径側筒部7の周囲に配置し、固定金型20と第2金型部品24bとの間で軸方向に挟持する。すなわち、固定金型20の径方向外側部分の軸方向片側の側面を、第3金型部品24cの軸方向他側の端面に当接させ、かつ、第2金型部品24bの径方向外側部分の軸方向他側の側面を、第3金型部品24cの軸方向片側の端面に当接させる。
【0051】
ハブ4を金型装置19の内側にセットした状態で、固定金型20の径方向中間部の軸方向片側の側面と、第2金型部品24bの径方向中間部の軸方向他側の側面及び凸部27の外周面、並びに、第3金型部品24cの内周面と、ハブ4の径方向外側部分とにより、ギヤ部5を成形するためのキャビティ22が画成される。さらに、固定金型20の径方向内側部分の軸方向片側の側面と、ハブ4の接続部8の軸方向他側の側面との間に、ディスクゲート29が画成される。
【0052】
上述のように、ハブ4を金型装置19の内側にセットした状態で、ランナー23及びディスクゲート29を通じて、キャビティ22内に溶融した合成樹脂(溶融樹脂)を送り込む。キャビティ22内に送り込まれた合成樹脂は、ハブ4の径方向外側部分の軸方向他側に位置する部分から外径側筒部7の径方向外側に位置する部分を経由して、ハブ4の径方向外側部分の軸方向片側に位置する部分に向けて流れることで、キャビティ22内の全体に充填される。合成樹脂をキャビティ22内の全体に充填した直後の状態では、ギヤ部5の外周面には、ギヤ側凹部15は備えられていない。
【0053】
合成樹脂をキャビティ22内の全体に充填した後、合成樹脂を冷却する。冷却は、例えば自然冷却、又は、金型装置19内に水などの冷却液を循環させる液冷により行うことができる。冷却に伴い、キャビティ22内に充填された合成樹脂が収縮(成形収縮)しつつ固化することで、ギヤ部5が成形されると同時に、該ギヤ部5をハブ4に対して結合固定される。
【0054】
ここで、ギヤ部5のうちで外径側筒部7の径方向外側、かつ、ハブ側凹部9の径方向外側に存在する部分の径方向厚さは、ギヤ側凸部16が備えられている分、ギヤ部5のうちで外径側筒部7の径方向外側、かつ、ハブ側凹部9から軸方向両側に隣接する部分の径方向厚さよりも厚い。換言すれば、ギヤ部5のうちで外径側筒部7の径方向外側、かつ、ハブ側凹部9の径方向外側に存在する部分の体積は、ギヤ部5のうちで外径側筒部7の径方向外側、かつ、ハブ側凹部9から軸方向両側に隣接する部分の体積よりも大きい。このため、合成樹脂の冷却に伴う収縮量は、ギヤ部5のうちで外径側筒部7の径方向外側、かつ、ハブ側凹部9の径方向外側に存在する部分において、ギヤ部5のうちで外径側筒部7の径方向外側、かつ、ハブ側凹部9から軸方向両側に隣接する部分よりも多くなる。
【0055】
したがって、キャビティ22内に充填された合成樹脂を冷却することで、合成樹脂を収縮させつつ固化させると、ギヤ部5の軸方向中間部外周面に、ヒケと呼ばれる窪みが生じる。これにより、ギヤ部5の外周面のうち、ハブ側凹部9の径方向外側に位置する部分を含む軸方向中間部に、軸方向両側に隣接する部分よりも凹んだギヤ側凹部15が形成される。特に本例では、ハブ側凹部9の底面10を円筒面により構成しているため、ギヤ側凹部15の軸方向中間部には、深さが一定又はほぼ一定の部分が形成される。
【0056】
キャビティ22内に充填された合成樹脂を冷却して固化させた後、可動金型21を固定金型20から離れる方向に軸方向に移動させることで金型装置19を開き、ウォームホイール1を取り出す。そして、ランナー23及びディスクゲート29内で固化した合成樹脂を除去する。その後、必要に応じて、ギヤ部5の表面や角部に仕上加工を施して、ウォームホイール1を得る。
【0057】
本例のウォームホイール1は、複数のウォームホイール歯14の歯先面及び歯面を含むギヤ部5の軸方向中間部外周面に、軸方向両側に隣接する部分よりも凹んだギヤ側凹部15を有する。したがって、ウォームホイール1のウォームホイール歯14を、ウォーム2に備えられたウォーム歯と噛合させると、ウォーム歯の歯面は、ウォームホイール歯14の歯面のうちでギヤ側凹部15が備えられた部分、すなわち歯面凹部15aに接触する。このため、ウォームホイール歯14の歯面と、ウォーム2に備えられたねじ状のウォーム歯の歯面との接触状態を、線接触又は面接触とすることができ、国際公開第2017/135140号パンフレットに記載の構造と比較して、ウォームホイール歯14の歯面とウォーム歯の歯面との接触面圧を低く抑えることができる。この結果、ウォームホイール歯14の摩耗を少なく抑えることができて、ウォームホイール1の耐久性を良好に確保することができる。
【0058】
又、ギヤ部5は合成樹脂により構成されているため、ウォーム減速機3で伝達するトルクが大きくなり、ウォームホイール歯14の歯面に加わる力(面圧)が大きくなると、ウォームホイール歯14が弾性変形して、ウォームホイール歯14の歯面とウォーム歯の歯面との接触範囲が幅方向(軸方向)に広がるように大きくなっていく。本例では、ギヤ側凹部15の軸方向両側部分の深さが、軸方向両側に向かうにしたがって浅くなっている。このため、ウォーム減速機3が伝達するトルクが比較的小さい段階から、ウォームホイール歯14の歯面とウォーム歯の歯面との接触範囲を大きく確保することができる。この面からも、ウォームホイール歯14の歯面とウォーム歯の歯面との接触面圧を低く抑えて、ウォームホイール1の耐久性を確保することができる。
【0059】
本例では、ギヤ側凹部15は、軸方向中間部に、深さが一定又はほぼ一定の部分を有する。このため、ウォームホイール歯14の歯面とウォーム歯の歯面との接触位置が、ウォームホイール1の軸方向に関して多少ずれた場合でも、ウォームホイール歯14とウォーム歯との噛み合い状態を適正な状態に維持することができる。
【0060】
本例のウォームホイール1では、ハブ4の内径側筒部6の軸方向中間部外周面に全周にわたって備えられたハブ側凹部9と、ギヤ部5のギヤ側凸部16とを係合させている。したがって、ウォームホイール歯14とウォーム歯との噛合部からギヤ部5に軸方向の力が加わった場合でも、ハブ側凹部9とギヤ側凸部16との軸方向の係合により、ハブ4に対するギヤ部5の軸方向の相対変位を防止することができる。また、ハブ側凹部9の1対の側面11と、ギヤ側凸部16の軸方向両側の側面との接触部の分、ハブ4とギヤ部5との接触面積を増やすことができ、ハブ4とギヤ部5とが相対回転することに対する摩擦を大きくすることができる。要するに、ハブ側凹部9とギヤ側凸部16との係合により、ハブ4に対するギヤ部5の保持力を向上させることができる。
【0061】
なお、本例では、ハブ4の外径側筒部7の軸方向片側部分の内周面に全周にわたって備えられた凹溝12と、ギヤ部5の突条17とを係合させている。したがって、ウォームホイール歯14とウォーム歯との噛合部からギヤ部5に軸方向の力が加わった場合に、凹溝12と突条17との軸方向の係合によっても、ハブ4に対するギヤ部5の軸方向の相対変位を防止することができる。
【0062】
さらに本例では、ハブ4の外径側筒部7の軸方向片側部分の内周面に備えられた歯車状のハブ側凹凸部13と、ギヤ部5のギヤ側凹凸部18とを係合させている。したがって、ハブ側凹凸部13とギヤ側凹凸部18との円周方向の係合によっても、ハブ4にギヤ部5に対する回転(クリープ)を防止することができる。
【0063】
ただし、ハブ4に対するギヤ部5の保持力を十分確保できる限り、凹溝と突条との係合、及び/又は、ハブ側凹凸部とギヤ側凹凸部との係合は省略することができる。
【0064】
本例の製造方法によれば、上述のように、ウォーム歯に対するウォームホイール歯14の接触面圧を小さく抑えて、ウォームホイール歯14の摩耗を抑えることができるウォームホイール1を、低コストで効率よく造ることができる。
【0065】
本例では、内周面に歯成形用凹凸部28を有するキャビティ22内に、溶融した合成樹脂を充填した後、冷却固化させることで、外周面に複数のウォームホイール歯14を有するギヤ部5を成形すると同時に、該ギヤ部5をハブ4に対して結合固定している。すなわち、ハブの周囲に合成樹脂を射出成形した後、ウォームホイール歯を形成するための歯切り加工を行う必要がない。このため、ウォームホイール1を低コストで造ることができる。
【0066】
特に本例では、ギヤ部5を構成する合成樹脂を射出成形した後、冷却する際に、成形収縮に伴い、ギヤ部5の軸方向中間部外周面にヒケと呼ばれる窪みを生じさせることで、ギヤ側凹部15を形成している。すなわち、金型装置19は、キャビティ22の内周面のうち、歯成形用凹凸部28の軸方向中間部に、ギヤ側凹部15の表面形状に沿った表面形状を有する凸部を備えていない。換言すれば、歯成形用凹凸部28には、軸方向に関する凹凸が存在しない。したがって、金型装置19、特に、内周面に歯成形用凹凸部28を有する第3金型部品24cを低コストで造ることができる。又、ギヤ部5を成形した後、金型装置19からウォームホイール1を取り出す際には、可動金型21を軸方向に変位させるだけで、ウォームホイール1の周囲から可動金型21を容易に取り除くことができる。このため、ウォームホイール1を低コストで効率よく造ることができる。
【0067】
本例では、ハブ4の外径側筒部7の外周面に備えられたハブ側凹部9は、全周にわたって同じ断面形状を有する。換言すれば、ハブ側凹部9は、底面10及び軸方向両側の側面11のいずれにも、円周方向に関する凹凸が存在しない。したがって、ギヤ部5の成形時、該ギヤ部5の軸方向中間部外周面にヒケと呼ばれる窪みを生じさせることでギヤ側凹部15を形成した場合でも、ヒケを均一に発生させる(成形収縮量を均一にする)ことができる。要するに、ウォームホイール歯14の形状を安定させることができて、ウォームホイール歯14のピッチを安定させることができる。この結果、ウォームホイール歯14とウォーム歯との噛合状態を安定させることができる。
【0068】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、
図10~
図13を用いて説明する。本例のウォームホイール1aでは、ハブ4aの外径側筒部7aの軸方向中間部外周面に備えられたハブ側凹部9aの断面形状を、実施の形態の第1例と異ならせている。本例では、ハブ側凹部9aは、略台形で、軸方向に関して非対称の断面形状を有する。なお、ハブ側凹部9aの断面形状は、全周にわたって同じである。
【0069】
すなわち、本例では、ハブ側凹部9aの底面10aは、軸方向両側の側面11a1、11a2と接続される軸方向両側の端部を除き、ハブ4aの中心軸を中心とする円筒面により構成されている。なお、底面10aは、外径側筒部7aの軸方向中央位置よりも軸方向片側に寄った部分に備えられている。
【0070】
ハブ側凹部9aの軸方向片側の側面11a1は、径方向両側の端部を除き、径方向外側に向かうほど軸方向片側に向かう方向に傾斜した直線状の母線形状を有する円すい台面により構成され、かつ、軸方向他側の側面11a2は、径方向両側の端部を除き、径方向外側に向かうほど軸方向他側に向かう方向に傾斜した直線状の母線形状を有する円すい台面により構成されている。本例では、底面10aに対する軸方向片側の側面11a1の傾斜角度θ1は、底面10aに対する軸方向他側の側面11a2の傾斜角度θ2よりも大きい(θ1>θ2)。
【0071】
本例でも、ギヤ部5は、外周面のうち、ハブ側凹部9aの径方向外側に位置する部分を含む軸方向中間部に、軸方向両側に隣接する部分よりも凹んだギヤ側凹部15を全周にわたって有する。
【0072】
本例によれば、ギヤ側凹部15の断面形状を、所望の形状に規制しやすい。
【0073】
すなわち、ギヤ部5の成形時、キャビティ22内に充填された合成樹脂のうち、外径側筒部7aの径方向外側部分に充填された合成樹脂は、ディスクゲート29から遠い軸方向片側部分とディスクゲート29に近い軸方向他側部分とで、ディスクゲート29内に充填された合成樹脂を含む合成樹脂の体積や、キャビティ22内の温度分布などに応じて、ヒケの発生度合いが変化する。具体的には、ヒケの発生度合いは、ディスクゲート29内に充填された合成樹脂の存在に基づいて、ディスクゲート29から遠い軸方向片側部分よりも、ディスクゲート29に近い軸方向他側部分で大きくなる傾向がある。そこで、本例では、ハブ側凹部9aの断面形状を軸方向に関して非対称とする、具体的には、底面10aを、外径側筒部7aの軸方向中央位置よりも軸方向片側に寄った部分に配置し、かつ、軸方向片側の側面11a1の傾斜角度θ1を、軸方向他側の側面11a2の傾斜角度θ2よりも大きくすることで、ヒケの発生度合いを調整している。すなわち、ヒケの発生度合いが、ディスクゲート29から遠い軸方向片側部分と、ディスクゲート29に近い軸方向他側部分とで、より均等に近づくようにしている。これにより、成形収縮に基づいて、所望の断面形状を有するギヤ側凹部15を形成できるようにしている。
【0074】
なお、ギヤ側凹部15の断面形状を所望の形状とすることができれば、ハブ側凹部9aの断面形状を軸方向に関して対称とすることもできる。
【0075】
又、本例では、ハブ側凹部9aの軸方向両側の側面11a1、11a2を、直線状の母線形状を有する円すい台面により構成している。したがって、ハブ4を金型装置19の内側にセットし、キャビティ22内に溶融した合成樹脂を充填する際に、ハブ側凹部9aに沿った合成樹脂の流れを円滑にすることができる。このため、ウェルドラインや気泡の発生を抑えることができて、ウォームホイール1aの強度を良好に確保しやすい。その他の部分の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【0076】
[実施の形態の第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、
図14及び
図15を用いて説明する。本例のウォームホイール1bでは、ハブ4bの外径側筒部7bの軸方向中間部外周面に備えられたハブ側凹部9bは、円弧形の断面形状を有する。ハブ側凹部9bの断面形状は、全周にわたって同じである。
【0077】
本例でも、ギヤ部5は、外周面のうち、ハブ側凹部9bの径方向外側に位置する部分を含む軸方向中間部に、軸方向両側に隣接する部分よりも凹んだギヤ側凹部15を全周にわたって有する。
【0078】
本例によれば、ギヤ側凹部15の内面に、隅角部が形成されることを確実に防止できる。
【0079】
実施の形態の第1例では、ハブ側凹部9の内面は、ハブ4の中心軸を中心とする円筒面により構成された底面10と、ハブ4の中心軸に直交する平坦面により構成される1対の側面11とを備える。このため、ギヤ部5の成形時、該ギヤ部5の外周面のうちで、ハブ側凹部9の径方向外側に位置する部分を含む軸方向中間部にヒケを生じさせることで、ギヤ側凹部15を形成すると、該ギヤ側凹部15の内面に、隅角部が形成されてしまう可能性がある。
【0080】
本例では、ハブ側凹部9bの断面形状を円弧形としているため、ギヤ部5の成形時、該ギヤ部5の外周面のうち、ハブ側凹部9bの径方向外側に位置する部分を含む軸方向中間部にヒケを生じさせることでギヤ側凹部15を形成する際に、ギヤ側凹部15をハブ側凹部9bに沿って滑らかに凹ませることができる。要するに、ギヤ側凹部15の内面に、隅角部が形成されることを確実に防止できて、ウォームホイール歯14を、ウォーム歯と噛合させた場合に、ウォームホイール歯14の歯面とウォーム歯の歯面とが局所的に接触することを確実に防止できて、ウォームホイール歯14の歯面とウォーム歯の歯面との歯面を面接触させることができる。
【0081】
又、ハブ側凹部9bの断面形状を円弧形としているため、ハブ4を金型装置19(
図9参照)の内側にセットし、キャビティ22内に溶融した合成樹脂を充填する際に、ハブ側凹部9bに沿った合成樹脂の流れを円滑にすることができる。このため、ウェルドラインや気泡の発生を抑えることができて、ウォームホイール1bの強度を良好に確保しやすい。その他の部分の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【0082】
[実施の形態の第4例]
本発明の実施の形態の第4例について、
図16及び
図17を用いて説明する。本例のウォームホイール1cでは、ハブ4cの外径側筒部7cの軸方向中間部外周面に備えられたハブ側凹部9cの断面形状を、実施の形態の第1例と異ならせている。
【0083】
ハブ側凹部9cの内面を構成する底面10は、軸方向両側の側面11b1、11b2と接続される軸方向両側の端部を除き、ハブ4の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。
【0084】
ハブ側凹部9cの内面を構成する軸方向両側の側面11b1、11b2のそれぞれは、径方向内側の平坦面部30a、30bと、径方向外側の傾斜面部31a、31bとを有する。すなわち、軸方向片側の側面11b1は、径方向内側に備えられ、ハブ4cの中心軸に直交する平坦面部30aと、径方向外側に備えられ、径方向外側に向かうほど軸方向片側に向かう方向に傾斜した直線状の母線形状を有する円すい台面により構成された傾斜面部31aとを有する。又、軸方向他側の側面11b2は、径方向内側に備えられ、ハブ4cの中心軸に直交する平坦面部30bと、径方向外側に備えられ、径方向外側に向かうほど軸方向他側に向かう方向に傾斜した直線状の母線形状を有する円すい台面により構成された傾斜面部31bとを有する。
【0085】
本例でも、ギヤ部5は、外周面のうち、ハブ側凹部9cの径方向外側に位置する部分を含む軸方向中間部に、軸方向両側に隣接する部分よりも凹んだギヤ側凹部15を全周にわたって有する。
【0086】
又、ギヤ部5は、ハブ4cの外径側筒部7cの外周面を覆う部分に、ハブ側凹部9cと係合するギヤ側凸部16aを全周にわたって有する。ギヤ側凸部16aの軸方向両側の側面32a、32bのそれぞれは、ハブ側凹部9cの軸方向両側の側面11b1、11b2と隙間なく当接する。すなわち、軸方向両側の側面32a、32bのそれぞれは、径方向内側の平坦面部33a、33bと、径方向外側の傾斜面部34a、34bとを有する。
【0087】
軸方向片側の側面32aは、径方向内側に備えられ、ハブ4cの中心軸に直交する平坦面部33aと、径方向外側に備えられ、径方向外側に向かうほど軸方向片側に向かう方向に傾斜した直線状の母線形状を有する円すい台面により構成された傾斜面部34aとを有する。又、軸方向他側の側面32bは、径方向内側に備えられ、ハブ4cの中心軸に直交する平坦面部33bと、径方向外側に備えられ、径方向外側に向かうほど軸方向他側に向かう方向に傾斜した直線状の母線形状を有する円すい台面により構成された傾斜面部34bとを有する。
【0088】
本例のウォームホイール1cによれば、ハブ4cに対するギヤ部5の保持力の確保と、ギヤ部5の強度の確保とを、高レベルで両立させることができる。
【0089】
すなわち、ウォームホイール歯14とウォーム歯との噛合部からギヤ部5に軸方向の力が加わった場合でも、ハブ側凹部9cとギヤ側凸部16aとの軸方向の係合、特にハブ側凹部9cの側面11b1(又は11b2)のうちの平坦面部30a(又は30b)と、ギヤ側凸部16aの側面32a(又は32b)のうちの平坦面部33a(又は33b)との当接部により、ハブ4cに対するギヤ部5の軸方向の相対変位を防止することができる。これにより、ハブ4cに対するギヤ部5の保持力を向上させることができる。
【0090】
又、ハブ側凹部9cの軸方向両側の側面11b1、11b2のそれぞれのうちの径方向外側に、直線状の母線形状を有する円すい台面により構成された傾斜面部31a、31bを配置している。したがって、ハブ4を金型装置19(
図9参照)の内側にセットし、キャビティ22内に溶融した合成樹脂を充填する際に、ハブ側凹部9cに沿った合成樹脂の流れを円滑にすることができる。このため、ウェルドラインや気泡の発生を抑えることができて、ウォームホイール1cの強度を良好に確保しやすい。その他の部分の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【0091】
[実施の形態の第5例]
本発明の実施の形態の第5例について、
図18及び
図19を用いて説明する。本例のウォームホイール1dは、ハブ4dの外径側筒部7dの外周面のうち、ハブ側凹部9dよりも軸方向片側に位置する部分の外径と、外径側筒部7dの外周面のうち、ハブ側凹部9dよりも軸方向他側に位置する部分の外径とが互いに異なる。具体的には、外径側筒部7dの外周面のうち、ハブ側凹部9dよりも軸方向片側に備えられた第1円筒面部35の外径D
35が、外径側筒部7dの外周面のうち、ハブ側凹部9dよりも軸方向他側に備えられた第2円筒面部36の外径D
36よりも小さい(D
35<D
36)。
【0092】
ハブ側凹部9dの内面を構成する軸方向両側の側面11c1、11c2は、径方向外側に向かうほど軸方向に関して互いに離れる方向に傾斜した直線状の母線形状を有する円すい台面により構成されている。本例では、底面10に対する軸方向片側の側面11c1の傾斜角度と、底面10に対する軸方向他側の側面11c2の傾斜角度とは、互いに等しい。一方、軸方向片側の側面11c1の径方向高さを、軸方向他側の側面11c2の径方向高さよりも低くしている。これにより、軸方向片側の第1円筒面部35の外径D35を、軸方向他側の第2円筒面部36の外径D36よりも小さくしている。
【0093】
本例でも、ギヤ部5は、外周面のうち、ハブ側凹部9dの径方向外側に位置する部分を含む軸方向中間部に、軸方向両側に隣接する部分よりも凹んだギヤ側凹部15を全周にわたって有する。
【0094】
本例によれば、ギヤ側凹部15の断面形状を、所望の形状に規制しやすい。
【0095】
すなわち、実施の形態の第2例で説明したように、キャビティ22内に充填された合成樹脂のうち、外径側筒部7dの径方向外側部分に充填された合成樹脂は、ディスクゲート29から遠い軸方向片側部分とディスクゲート29に近い軸方向他側部分とで、ヒケの発生度合いが変化する。本例では、外径側筒部7dの外周面のうち、ハブ側凹部9dよりも軸方向片側に備えられた第1円筒面部35の外径D35が、外径側筒部7dの外周面のうち、ハブ側凹部9dよりも軸方向他側に備えられた第2円筒面部36の外径D36よりも小さくすることで、ヒケの発生度合いを調整している。これにより、成形収縮に基づいて、所望の断面形状を有するギヤ側凹部15を形成できるようにしている。その他の部分の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例及び第2例と同様である。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。又、実施の形態の第1例~第5例は、矛盾を生じない範囲で、適宜組み合わせて実施することができる。すなわち、ハブ側凹部の断面形状は、ギヤ部の成形時に、所望の断面形状を有するギヤ側凹部を得られ、かつ、必要に応じて、ハブに対するギヤ部の保持力の向上及び/又はギヤ部の強度を確保することができるように、適宜変更することができる。
【0097】
又、本発明のウォームホイールは、電動パワーステアリング装置を構成するウォーム減速機に限らず、各種機械の減速機を構成するウォーム減速機に組み込んで使用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1、1a、1b、1c、1d ウォームホイール
2 ウォーム
3 ウォーム減速機
4、4a、4b、4c、4d ハブ
5 ギヤ部
5a 外径側覆い部
5b 第1内径側覆い部
5c 第2内径側覆い部
6 内径側筒部
7、7a、7b、7c、7d 外径側筒部
8 接続部
9、9a、9b、9c、9d ハブ側凹部
10、10a 底面
11、11a1、11a2、11b1、11b2、11c1、11c2 側面
12 凹溝
13 ハブ側凹凸部
14 ウォームホイール歯
15 ギヤ側凹部
15a 歯面凹部
15b 歯先面凹部
15c 歯底面凹部
16、16a ギヤ側凸部
17 突条
18 ギヤ側凹凸部
19 金型装置
20 固定金型
21 可動金型
22 キャビティ
23 ランナー
24a 第1金型部品
24b 第2金型部品
24c 第3金型部品
25 大径部
26 小径部
27 凸部
28 歯成形用凹凸部
29 ディスクゲート
30a、30b 平坦面部
31a、31b 傾斜面部
32a、32b 側面
33a、33b 平坦面部
34a、34b 傾斜面部
35 第1円筒面部
36 第2円筒面部
37 段部
100 ウォームホイール
101 ハブ
102 ギヤ部
103 内径側筒部
104 外径側筒部
105 接続部
106 ウォームホイール歯