(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142016
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】海洋生分解促進添加剤及びこれを含む海洋生分解性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220922BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L101/16
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041970
(22)【出願日】2021-03-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】521110655
【氏名又は名称】株式会社グリーンテクノプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100152180
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 秀人
(72)【発明者】
【氏名】常盤 豊
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AB051
4J002CF181
4J002CL021
4J002DG036
4J002DH037
4J002DH047
4J002EN116
4J002FD196
4J002FD197
4J200AA04
4J200AA05
4J200BA12
4J200BA14
4J200BA29
4J200BA36
4J200EA11
4J200EA21
(57)【要約】
【課題】プラスチックごみ等の海洋廃棄物問題を解決するために海洋生分解促進添加剤を提供し、効率的な海洋汚染防止への有効利用を図ることを課題とする。
【解決手段】本発明は、窒素化合物及びリン化合物を含有する海洋生分解促進添加剤、当該添加剤を含む海洋生分解性樹脂組成物、並びに、窒素化合物及びリン化合物を添加して行う生分解性樹脂組成物の分解処理方法であることを特徴とする。この方法は、分離された特定の微生物や微生物濃度の高い特定の海水などを使用する必要がない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素化合物およびリン化合物を有効成分として含有することを特徴とする海洋生分解促進添加剤。
【請求項2】
窒素化合物中の窒素の重量が、リン化合物中のリンの重量の、2~15倍であることを特徴とする請求項1に記載の海洋生分解促進添加剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の海洋生分解促進添加剤を含むことを特徴とする海洋生分解性樹脂組成物。
【請求項4】
窒素及びリンの含量が、炭素重量に対して、それぞれ3~30%、0.3~10%であることを特徴とする海洋生分解性樹脂組成物。
【請求項5】
被処理水中の窒素及びリンの濃度が、それぞれ1~2000ppm、0.1~400ppmになるように、被処理水に窒素及びリンを添加することを特徴とする海洋生分解性樹脂組成物の分解処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海洋生分解促進添加剤、海洋生分解性樹脂組成物および海洋生分解性高分子素材・樹脂組成物の分解処理方法に関するものである。より詳細には、本発明は、有効成分として窒素化合物及びリン化合物を含有することを特徴とする海洋生分解促進添加剤、海洋生分解促進添加剤を含む海洋生分解性樹脂組成物および海洋生分解性高分子素材・樹脂組成物の分解処理方法に関するものである。
【0002】
近年、プラスチック廃棄物による海洋汚染が問題になっている。海洋汚染を防ぐために、プラスチックの代替品やリサイクルの技術開発が行われているが、コスト高や機能低下等の問題を抱えている。さらに、5mm以下の大きさのマイクロプラスチックと言われる繊維状、粒状、フィルム状等の微細なプラスチックが海洋の生態系への脅威だと言われている。
【0003】
そこで最近、海洋において生物学的に分解する海洋生分解性プラスチックの研究開発が盛んに行われている。すでに、生分解性プラスチックとしては、ポリポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、PBSとポリブチレンアジペートの共重合体(PBSA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエステルカーボネート(PEC)、デンプンあるいは化学修飾デンプンとPCLのブレンド体、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)およびその共重合体等々が開発され、一部は市場にも出回っている。
【0004】
しかし、従来から開発されてきた生分解性プラスチックは、海洋での生分解性が大変遅いという問題を抱えている。そこで最近、サンゴ礁など沿岸や外洋において優れた生分解性を有する海洋生分解性プラスチックの開発が注目されている。一部、微生物由来のポリヒドロキシ酪酸やその共重合体が海水において生分解されることが報告されているが、都市に近く汚濁が進んだ東京湾、大阪湾、伊勢湾、瀬戸内海など微生物数が多い特定の海域に限られている。
【0005】
三井化学株式会社は特開2001-270793号公報「生分解促進剤及び生分解方法」において、生分解促進剤として、ポリアミノ酸(ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリジン、ポリコハク酸イミド)を一般廃棄物や産業廃棄物、コンポストに添加すると分解が促進されることを開示している。
JIS K0102には、工場排水などのBOD(生物化学的酸素要求量)を測定する場合、微生物の植種として市街地の廃水等を10%程添加するとともに、微生物の増殖に必要な一般的な栄養源として、0.025%塩化鉄溶液、2.75%塩化カルシウム、2.25%硫酸マグネシウム、0.85%リン酸二水素一カリウム溶液、3.34%リン酸一水素二カリウム溶液、2.17%リン酸一水素二カリウム、0.17%塩化アンモニウム等を含む栄養塩液を加えることが記載されている。
竹本修明らは、陸上からの汚濁物質の海域における生分解性を評価するため、海水を用いて種々の有機物のBODを測定している。この場合もJIS K0102に従って、微生物の植種として大阪府の大津川の河川水を添加するとともに、微生物の一般的な栄養源を添加している。しかし、海水を用いたBOD測定の場合の栄養源の添加効果については記載が見当たらない。
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)の中山らは、大和川河口の大阪南港海域の海水を用いたBOD試験(27℃、28日間)により、PHB、PCLおよびPBSAは生分解が認められたが、PCLとPBSAについては海水の採取時期により分解率が大きく変動したことを報告している。
一方、株式会社カネカと産総研は、大阪南港海域の海水を用いたBOD試験(27℃、28日間)により、3-ヒドロキシ酪酸89モル%と3-ヒドロキシヘキサン酸11モル%からなる微生物由来の共重合体(PHBHH)が31%分解されたが、PBS、PBSAおよびPLAについては生分解に基づく酸素吸収が認められなかったことを報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】JIS K0102(1971)
【非特許文献2】竹本修明、久下芳生,中本雅雄「海水のBOD測定」水質汚濁研究 4(2)、80-90 (1981)
【非特許文献3】磯辺篤彦「マイクロプラスチックによる海洋汚染」高分子、70、8-11 (2021)
【非特許文献4】A. Nakayama、N. Yamano、N. Kawasaki、Polymer Degradation and Stability 166, 290-299 (2019)
【非特許文献5】H. Sashiwa、R. Fukuda、T. Okura、S. Sato、A. Nakayama、Marin Drugs 2018,16,34; doi:10.3390/md16010034
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、生分解性プラスチックのほとんどが海水中で生分解されない点である。生分解性プラスチックの中でも、PHBやその共重合体は、東京湾や瀬戸内海など汚濁が進み微生物数が比較的多い特定の海域において分解することが報告されている。しかし、PHBやその共重合体でも、汚濁が進んでいないサンゴ礁などの沿岸での海水中では分解は非常に遅いか、まったく生分解されないことが明らかになってきた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、海洋プラスチックごみ問題を解決するために、都市部に近い海域だけでなく、多くのサンゴ礁が分布する熱帯・亜熱帯の沿岸海域や亜熱帯循環流などの外洋の海水中においても、生分解性素材を速やかに生分解するため、海洋生分解促進添加剤、海洋生分解性樹脂組成物および海洋生分解性高分子素材・樹脂組成物の分解処理方法を提供する。
すなわち、本発明は有効成分として窒素化合物およびリン化合物を含有することを特徴とする海洋生分解促進添加剤、海洋生分解促進添加剤を含む海洋生分解性樹脂組成物および海洋生分解促進添加剤を用いた生分解性素材の海水中の分解方法に関する。
【0010】
生分解性素材には天然素材と人工的に化学合成された素材が含まれる。天然素材としては、炭水化物、ペプチド、脂肪、核酸、リグニンなどが代表的なものとしてあげられる。それぞれは単糖、アミノ酸、脂肪酸、一価~多価の飽和・不飽和アルコール類等の低分子量のものから構成されているものや、デンプンやセルロース、キチン、カラギーナン、ザンサンガム、グルコマンナン、グアーガム、スピノガム、ローカストビーンガム、寒天、ペクチン酸などの多糖類およびその化学修飾物、スベリンやクチン、ポリヒドロキシアルカノエートなどのポリエステル、シルク、ウール、グルテン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、ケラチンなどのタンパク質およびその化学修飾物等の高分子量のものがある。天然物系の生分解性素材には、親水性を示すものや疎水性を示すものがある。
【0011】
化学合成素材としては、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)において生分解性が認められた種々の人工的に化学合成された低分子量の化合物があげられる。また、人工的に化学合成された高分子素材としては、国際標準化機構((ISO)が定めた高分子化合物の土壌、活性汚泥、嫌気汚泥、コンポストなどによる生分解性評価法ISO 17556 (JIS K6955土壌生分解試験)、ISO 14851 (JIS K6950活性汚泥生分解試験)、ISO 14852 (JIS K6951活性汚泥生分解試験)、ISO (JIS K6960嫌気汚泥生分解試験)、ISO 13975 (JIS K6961)、ISO 14855-1 (JIS K6953-1)、ISO 14855-2 (JIS K6953-2など)等によって生分解性が認められた高分子化合物があげられる。
【0012】
例えば、ポリエステル類としては脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールからなるポリエステル、ヒドロキシカルボン酸なるポリエステル、カプロラクトンやプロピオラクトンなどラクトン類や酸無水物からなるポリエステルなどがある。具体的には、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)およびその共重合体、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、PBSとポリブチレンアジペートの共重合体(PBSA)、ポリ乳酸(PLA)、等の脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステルのポリエチレンテレフタレートと脂肪族ポリエステルトの共重合体があげられるが、これらに限定するものではない。
【0013】
ポリアミド類としては、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジアミドからなるポリアミド、ヒドロキシアミドなるポリアミド、脂肪族ラクタムからなるポリアミド、各種のアミノ酸重合体などがある。具体的には、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド4,6、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミドやα-ポリアラニン、α-ポリグルタミン酸などのα-ポリアミノ酸があげられるが、これらに限定するものではない。
さらに、ポリウレタン、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルあるいはポリアミドとの共重合体、ビニル結合を含む脂肪族ポリエステル、ポリエーテルやエーテル結合を含むポリエステルなどがあげられる。
その他、2種以上の高分子を化学的に結合した共重合高分子や2種以上の高分子を物理的に混合した高分子ブレント体もあげられる。
【0014】
生分解性を有する親水性高分子素材としては、ポリグルタミン酸、ポリリジン、ポリアスパラギン酸、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビルアルコール(PVA)、ポリリンゴ酸、ポリグリセリン酸およびそれらの共重合体等がある。γ-ポリグルタミン酸やε-ポリリジンは微生物により生産される天然物高分子でもある。さらに、各種の糖類(スクロース、グルコース等)や糖アルコール(グリセロール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール等)を用いた親水性ポリエステルなどもある。
生分解性を有する親水性高分子素材の用途としては、衛生用品、紙コーティング剤、農業・園芸資材、土木・建築資材などの他に、塗工紙(ポスター、カレンダー、雑誌のグラビア、折り込み広告等)や塗料などに添加される防汚剤や顔料の分散剤としても期待される。また、海洋生分解性素材の利用が期待できる分野として、船底や漁網、養殖基材、浮標、海水構造物などに海洋生物が付着するのを防止するための海洋生物付着防止塗料がある。
従来、防汚剤や顔料の分散剤として非生分解性の高分子量ポリアクリル酸系ポリマーが広く使用されてきたが、環境への影響が懸念されている。今後は生分解性を有する低・中分子量領域のポリアクリル酸(Na塩)系の素材や、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどの代替品の開発が注目される。
【0015】
海洋生分解促進剤添加物としては、硫酸アンモニウムやリン酸二水素カリウム以外にも無機系および有機系の窒素化合物やリン化合物があげられる。また、窒素とリンの両方を含む化合物もあげられる。
例えば、無機系の窒素化合物としては硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の各種アンモニウム塩、有機系の窒素化合物としては各種アミノ酸およびそれらの誘導体、各種アミノ酸の重合体、ペプチド類、タンパク質、尿素などがあげられるが、これらに限定するものではない。
無機系のリン化合物としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム等の各種リン酸塩及びポリリン酸など各種重合体、有機系のリン化合物としては各種のアルキルおよびアルケニルリン酸エステル、フィチン酸などの糖リン酸エステル、酵母エキス、ペプトン、核酸、などがあげられるがこれらに限定するものではない。
窒素とリンの両方を含む化合物としては、リン酸二水素アンモニウムやリン酸水素二アンモニウムなどの無機系化合物の他に、リボ核酸、デオキシリボ核酸などの核酸類、酵母エキス、肉エキス、海藻エキスやペプトン、トリプトン、など微生物や動植物の抽出液などがあげられるがこれらに限定するものではない。
海洋生分解促進添加剤は、粉末やペレット状の固体の他に、親水性あるいは親油性の液体・ゾル・ゲルに溶かした状態や分散させた状態で使用することも想定される。また、海洋生分解促進添加剤を天然や化学合成した低分子・高分子素材や樹脂などと混合して粉末・粒状・ペレット状・繊維状・棒状・フィルム状・板状に加工して各種のプラスチック製品等に溶融混合して使用することもできる。
【0016】
本発明の海洋生分解性樹脂組成物には、機能性を向上させる目的や更に新たな機能を付加する目的で、必要に応じて、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、艶消剤、劣化防止剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、滑り剤、フィラー、カーボンブラック、増粘剤、鎖長延長剤、架橋剤、結晶核剤、可塑剤、安定剤、粘度安定剤等を任意の割合で添加することができる。具体例として、タルク、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタンなどもあげられる。
本発明の海洋生分解性樹脂組成物は、海洋生分解促進添加剤と生分解性高分子素材を加熱溶融混合することによっても調整することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、海洋ゴミ問題を解決するための有望な技術を提供するものである。窒素およびリンが不足している海域では、生分解性プラスチックだけでなく、グルコースやアミノ酸も短期間では、ほとんど分解されないこと明らかにして、種々の有機物の海水での生分解技術を開発した。具体的には、海水中に適度な窒素とリンを供給できる海洋生分解促進添加剤、海洋生分解促進添加剤を混ぜて分解速度がたいへん速くなった生分解性プラスチック、海水中の有機性廃棄物を微生物で効率的に分解処理する方法の3つの技術である。太平洋やインド洋、大西洋においても窒素とリンは不足しており、本発明の3つの技術の利用範囲はたいへん広いと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】褐色のガラス瓶に炭酸ガス吸収剤の入ったゴム製ホルダーと酸素用の圧力センターをセットしたBOD測定装置の構成を示す概要図
【発明を実施するための形態】
【0019】
海水250 mlと被試験試料の入ったBOD測定装置(株式会社アクタック製B.O.D.センサーシステム)を27℃に保持し、炭酸ガス吸収剤の入ったゴム製ホルダーと酸素用の圧力センサーをセットして、試料の生分解にともなって発生する二酸化炭素を吸収剤に吸収させると同時に、ボトル内部の圧力変化にともなう酸素消費量をppm値で表示させる。
図1は、BOD測定装置の構成を示した概要図である。500ml容量の褐色瓶の上部には圧力の変化により酸素消費量を検知してppmで表示する圧力センサーがセットされている。瓶の口部分には瓶と圧力センサーの間のパッキングも兼ねたゴム製のホルダーがセットしてある。ホルダーの中には被試験試料の生分解にともなって発生する二酸化炭素を吸収するソーダ石灰が入っている。被試験試料の分解率は、炭素C、水素H、窒素NおよびイオウSが、それぞれ二酸化炭素CO
2、水H
2O、硝酸HNO
3、酸化イオウSO
3に変換されるとして求めた理論的酸素要求量(ThOD)を100%として求めた値である。
【0020】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例0021】
天然の糖の代表としてグルコース、海洋の代表的な天然有機物としてピルピン酸、グリシンおよびメチオンニンを選び、海水による生分解試験を行った。海水は2020年2月1日に沖縄県読谷村残波ビーチで採取して、採取翌日から使用した。海洋生分解促進添加剤として、硫酸アンモニウム(試薬特級)とリン酸二水素カリウム(試薬特級)を重量比5:1で混合したものをメノウ鉢で細かく粉砕したもの(以下、海洋生分解促進添加剤NPと称す)を用いた。
【0022】
海水250 mlが入った各BOD瓶にグルコース、ピルビン酸、グリシンおよびメチオニンをそれぞれ40 mg添加したグループと、グルコース、ピルビン酸、グリシンおよびメチオニンをそれぞれ40 mgに加えて海洋生分解促進添加剤NPをそれぞれ4 mg添加したグループの2グループに分けて生分解性を27℃で14日間測定した。その結果を表1に示した。海水のみの場合や海水に海洋生分解促進添加剤NPを加えた場合にはBOD値が0ppmで酸素消費は認められなかった。また、海水にそれぞれグルコース、ピルビン酸、グリシンおよびメチオニンを添加した場合も酸素消費は認められなかった。一方、グルコース、ピルビン酸、グリシンおよびメチオニンに加えて、海洋生分解促進添加剤NPを添加した場合には、グルコース、ピルビン酸、グリシンおよびメチオニンの分解率は、それぞれ85.0%、82.8%、39.7%、52.5%であった。
【表1】
生分解性プラスチック素材として、微生物が生産するポリD-3-ヒドロキシ酪酸(PHB)の粉末(アルドリッチ製)、ダウ・ケミカル(旧ユニオンカーバイド)の化学合成系のポリカプロラクトン(PCL)の粉末(Tone P-767P)、p-トルエンスルフォン酸を触媒に用いて化学合成したポリL-乳酸およびL-乳酸(またはD-乳酸)とD-3-ヒドロキシ酪酸(D-3HB)の共重合体を選び、海水による生分解試験を行った。なお、乳酸とD-3HBの共重合体およびポリL-乳酸の分子量はゲルパーミエ―ションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。海水は2020年11月6日に沖縄県うるま市の中城湾で採取して、採取当日から使用した。海洋生分解促進添加剤としては、実施例1で使用した固体状の海洋生分解促進添加剤NPを使用した。