▶ 山本 浩右の特許一覧
特開2022-142018空調装置の汚損判定システム、汚損判定方法およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142018
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】空調装置の汚損判定システム、汚損判定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/32 20180101AFI20220922BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20220922BHJP
F24F 11/50 20180101ALI20220922BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
F24F11/32
F24F11/64
F24F11/50
G01N21/88 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041972
(22)【出願日】2021-03-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】521110666
【氏名又は名称】山本 浩右
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100179729
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 一美
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩右
【テーマコード(参考)】
2G051
3L260
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB01
2G051EB01
2G051EC01
3L260AB02
3L260BA32
3L260BA34
3L260BA35
3L260BA51
3L260BA61
3L260BA64
3L260CB90
3L260EA07
3L260HA01
3L260JA13
3L260JA18
3L260JA22
(57)【要約】
【課題】空調装置へのカメラの設置が不要でありながら確実に汚損判定に利用可能な吹出口の画像を取得することで精度の高い汚損判定が可能となり、しかも一般家庭で利用され易い空調装置の汚損判定システム、汚損判定方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】汚損判定システム1は、判定対象の対象吹出口を撮像して得られた対象画像を含む対象情報を、通信端末50から取得する取得部2と、対象画像が対象吹出口の汚損判定に利用可能である否かを判断し、適否判断結果を作成する適否判断部3と、対象画像に基づいて、対象吹出口の汚損状態を判定し、汚損判定結果を作成する汚損判定部4と、適否判断結果及び汚損判定結果を含む結果情報を通知する通知部5を備え、適否判断結果が適の場合に、汚損判定部4が、汚損状態の判定を開始し、適否判断結果が否の場合に、通知部5が、対象吹出口の再撮像を促す案内を通知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
判定対象である対象空調装置の対象吹出口を撮像して得られた対象画像を含む対象情報を、通信端末から取得する取得部と、
前記対象画像が前記対象吹出口の汚損判定に利用可能である否かを判断し、適否判断結果を作成する適否判断部と、
前記対象画像に基づいて、前記対象吹出口の汚損状態を判定し、汚損判定結果を作成する汚損判定部と、
前記適否判断結果及び前記汚損判定結果を含む結果情報を通知する通知部を備え、
前記適否判断結果が適の場合に、前記汚損判定部が、前記汚損状態の判定を開始し、
前記適否判断結果が否の場合に、前記通知部が、前記対象吹出口の再撮像を促す案内を通知することを特徴とする空調装置の汚損判定システム。
【請求項2】
型式に関して異なる複数の空調装置の各吹出口をそれぞれ撮像した複数の吹出口画像が、対応する前記型式と関連付けられて生成される、複数のマスター画像を記憶するマスター画像記憶部を備え、
前記対象情報は、前記対象画像に加えて、前記対象空調装置の型式を識別可能な識別情報を含み、
前記適否判断部は、
前記識別情報に基づき、複数の前記マスター画像から前記対象画像に対応する対応マスター画像を抽出して、前記対象画像における前記対象吹出口の形状である対象形状と、前記対応マスター画像における前記吹出口の形状である対応マスター形状を比較し、
前記対象形状と、前記対応マスター形状が一致する場合に、前記適否判断結果を適とし、
前記対象形状と、前記対応マスター形状が一致しない場合に、前記適否判断結果を否とすることを特徴とする請求項1に記載の空調装置の汚損判定システム。
【請求項3】
汚損の程度が複数の段階に区分されてなる汚損区分を記憶する汚損区分記憶部を備え、
前記汚損判定部は、前記対象吹出口の前記汚損状態を、前記汚損区分と比較して判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調装置の汚損判定システム。
【請求項4】
判定対象である対象空調装置の対象吹出口を撮像する撮像工程と、
前記対象吹出口を撮像して得られた対象画像を含む対象情報を、通信端末から取得する取得工程と、
前記対象画像が前記対象吹出口の汚損判定に利用可能である否かを判断し、適否判断結果を作成する適否判断工程と、
前記対象画像に基づいて、前記対象吹出口の汚損状態を判定し、汚損判定結果を作成する汚損判定工程と、
前記適否判断結果及び前記汚損判定結果を含む結果情報を通知する通知工程を備え、
前記適否判断結果が適の場合に、前記汚損判定工程において、前記汚損状態の判定を開始し、
前記適否判断結果が否の場合に、前記通知工程において、前記対象吹出口の再撮像を促す案内を通知することを特徴とする空調装置の汚損判定方法。
【請求項5】
コンピューターに、請求項4に記載の空調装置の汚損判定方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置の一部を撮像した画像から、空調装置の汚損の程度を判定する空調装置の汚損判定システム、汚損判定方法およびプログラムに係り、特に、ユーザーに対し、このユーザーが撮像した吹出口の画像の適否を判断した結果を通知することで、確実に汚損判定に利用可能な画像を取得することができる空調装置の汚損判定システム、汚損判定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
空調装置の内部や吹出口は、埃の付着やカビの増殖等による汚損が生じて不衛生となるため、適切なタイミングで清掃することが望ましい。また、汚損は変色を伴うことから、空調装置の内部と比べて視認容易な吹出口での変色の発生に注意を払うことで、ユーザーが清掃の必要性を認識することができる。
しかし、ユーザーは、変色を発見しても汚損の進行の程度を判断できず、清掃の適切なタイミングを逃すことが多い。そのため、空調装置をユーザー自身が清掃する場合や、メンテナンスの専門業者に清掃を依頼する場合のいずれにおいても、汚損の進行によって多大な手間と費用がかかったり、直ちに清掃する必要がない場合にも専門業者へ依頼をしてしまい、やはり費用がかかったりするという課題があった。
このような課題を解決するため、定期的に空調装置の汚損箇所を撮像して、汚損の程度を認識するための技術が開発されており、それに関してすでに発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には、「汚れ情報推定システム」という名称で、空気処理装置の構成部品の1つであるドレンパンを撮像して、現在以降の汚れ度合いを推定可能な発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、空気処理装置のケーシング内部の構成部品の、現在の状態を撮像する撮像部と、この撮像部が撮像した現在の画像データに基づいて、構成部品の現在以降の汚れ度合いに関する状況を推定する推定部と、を備え、推定部は、現在の画像データに基づいて、構成部品の現在以降の汚れ度合いに関する特徴量を求め、この特徴量に応じた推定画像データを作成することを特徴とする。
このような特徴を有する発明においては、構成部品として、ケーシングの内部の底部に設置されたドレンパンが選択されている。また、ケーシングの側壁に設けられた点検蓋の内面に設置されたカメラが、所定時間毎に自動で、またはサービス業者の操作に従って、ドレンパンの底面を撮像する。そして、カメラが撮像した画像データは演算装置に逐次送信され、演算装置においてドレンパンの汚れに関する情報が推定される。この推定された汚れに関する情報は、ネットワークを介してユーザーの通信端末に報知される。
したがって、ユーザーは、受け取った情報により、ドレンパンの汚れの度合いをイメージし易くなり、メンテナンスの重要性を認識し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発明においては、カメラを空気処理装置に常時設置しておくことで、撮像毎に均一の画質を有する画像データを得ることができる。しかし、例えば一般家庭内の空気処理装置にカメラを設置することは、機種によっては設置スペースがない、改造費用や手間がかかる、といった理由から、容易であるとはいえない。よって、特許文献1に開示された発明は、汚損判定に利用可能な均一の画質を有する画像データを取得できるものの、一般家庭で利用され難いおそれがある。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、空調装置へのカメラの設置が不要でありながら、確実に汚損判定に利用可能な吹出口の画像を取得することで精度の高い汚損判定が可能となり、しかも一般家庭で利用され易い空調装置の汚損判定システム、汚損判定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の発明は、判定対象である対象空調装置の対象吹出口を撮像して得られた対象画像を含む対象情報を、通信端末から取得する取得部と、対象画像が対象吹出口の汚損判定に利用可能である否かを判断し、適否判断結果を作成する適否判断部と、対象画像に基づいて、対象吹出口の汚損状態を判定し、汚損判定結果を作成する汚損判定部と、適否判断結果及び汚損判定結果を含む結果情報を通知する通知部を備え、適否判断結果が適の場合に、汚損判定部が、汚損状態の判定を開始し、適否判断結果が否の場合に、通知部が、対象吹出口の再撮像を促す案内を通知することを特徴とする。
【0008】
このような構成の発明において、対象画像は、例えばユーザーが所有するディジタルカメラや、スマートフォン、タブレットといった撮像機能付きの通信端末を用いて撮像される。また、取得部は、例えばネットワークを介して通信端末から対象画像を取得する。
さらに、適否判断部は、取得部が取得した対象画像が、対象吹出口の汚損判定に利用可能である否かを判断する。このような適否判断は、対象画像が、例えば撮像時の光量不足によって対象画像が暗かったり、ブレを含んでいたりすることで汚損箇所を正確に特定できないものや、撮像方向や撮像範囲が不適切であるために対象吹出口の形状を認識できないものになることを防止するために行われる。
【0009】
適否判断部により、対象画像が対象吹出口の汚損判定に利用可能であると判断された場合は、通知部が、例えばネットワークを介し、適否判断結果をユーザーが所有する通信端末に通知するとともに、汚損判定部が対象画像を利用して汚損状態の判定を開始する。
一方、対象画像が対象吹出口の汚損状態の判定に利用可能でないと判断された場合は、通知部が、例えばネットワークを介し、対象吹出口の再撮像を促す案内をユーザーが所有する通信端末に通知する。
【0010】
上記のうち、対象画像が汚損判定部における汚損状態の判定に利用可能な場合では、対象画像のうち、例えば汚損箇所が対象吹出口に占める面積の比率や、任意に設定した関心領域の画素値から、汚損の程度が判定される。このような汚損判定結果は、通知部が、例えばネットワークを介してユーザーが所有する通信端末に通知する。
【0011】
次に、第2の発明は、第1の発明において、型式に関して異なる複数の空調装置の各吹出口をそれぞれ撮像した複数の吹出口画像が、対応する型式と関連付けられて生成される、複数のマスター画像を記憶するマスター画像記憶部を備え、対象情報は、対象画像に加えて、対象空調装置の型式を識別可能な識別情報を含み、適否判断部は、識別情報に基づき、複数のマスター画像から対象画像に対応する対応マスター画像を抽出して、対象画像における対象吹出口の形状である対象形状と、対応マスター画像における吹出口の形状である対応マスター形状を比較し、対象形状と、対応マスター形状が一致する場合に、適否判断結果を適とし、対象形状と、対応マスター形状が一致しない場合に、適否判断結果を否とすることを特徴とする。
【0012】
このような構成の発明は、空調装置の吹出口の形状が空調装置の型式毎に既知であることを利用して、適否判断部が適否判断を行うものである。また、対象空調装置の型式を識別可能な識別情報とは、例えば空調装置の筐体表面に表示された、メーカー名、製造番号等が含まれる文字列やコードである。
上記構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、取得部が、対象画像に加えて対象空調装置の型式を識別可能な識別情報を取得することによって、適否判断部が、複数のマスター画像のうちから、対象画像に対応する対応マスター画像を抽出する。
【0013】
次に、適否判断部は、対象画像における対象吹出口の対象形状と、抽出した対応マスター画像における吹出口の対応マスター形状を比較する。この比較方法として、例えば画像中に示される物体のエッジを検出するエッジ検出処理を行って、対象形状と、対応マスター形状を検出し、両者を比較することが考えられる。
比較の結果、対象形状と、対応マスター形状が一致する場合、適否判断部は適否判断結果を適とするから、汚損判定部において、汚損判定が行われる。これに対し、対象形状と、対応マスター形状が一致しない場合には、適否判断部は適否判断結果を否とするから、通知部において対象吹出口の再撮像を促す案内が通知される。
【0014】
さらに、第3の発明は、第1又は第2の発明において、汚損の程度が複数の段階に区分されてなる汚損区分を記憶する汚損区分記憶部を備え、汚損判定部は、対象吹出口の汚損状態を、汚損区分と比較して判定することを特徴とする。
このような構成の発明においては、第1又は第2の発明の作用に加えて、汚損判定部は、対象吹出口の汚損状態を、複数の段階に区分して判定するため、現在の汚損状態が詳細に認識される。
【0015】
続いて、第4の発明は、判定対象である対象空調装置の対象吹出口を撮像する撮像工程と、対象吹出口を撮像して得られた対象画像を含む対象情報を、通信端末から取得する取得工程と、対象画像が前記対象吹出口の汚損判定に利用可能である否かを判断し、適否判断結果を作成する適否判断工程と、対象画像に基づいて、対象吹出口の汚損状態を判定し、汚損判定結果を作成する汚損判定工程と、適否判断結果及び汚損判定結果を含む結果情報を通知する通知工程を備え、適否判断結果が適の場合に、汚損判定工程において、汚損状態の判定を開始し、適否判断結果が否の場合に、通知工程において、対象吹出口の再撮像を促す案内を通知することを特徴とする。
このような構成の発明においては、第1の発明の作用と同様の作用を有する。
【0016】
さらに、第5の発明は、コンピューターに、第4の発明に記載の空調装置の汚損判定方法の各工程を実行させるためのプログラムである。このプログラムは、通信端末として使用されるコンピューターにインストールされる通信端末用プログラムと、空調装置の汚損判定システムとして使用されるコンピューターにインストールされる汚損判定システム用プログラムを備える。
このような構成の発明は、請求項4に記載の空調装置の汚損判定方法の作用を発揮させる。詳細には、通信端末用プログラムが、ユーザーに対して撮像工程を実行させる。また、汚損判定システム用プログラムが、取得工程と、適否判断工程と、汚損判定工程と、通知工程を自動的に実行する。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、対象画像は、例えばユーザーが所有する撮像機能付きの通信端末等を用いて撮像されるため、空調装置にカメラを設置する必要がない。よって、一般家庭で空調装置の汚損判定システムを利用し易い。
さらに、適否判断部により、対象画像が対象吹出口の汚損判定に利用可能であるか否かを判断し、その適否判断結果が適と判断された場合に限り、対象画像が汚損判定部における汚損状態の判定に利用されるため、精度の高い汚損判定が可能となる。
【0018】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、対象形状と、対応マスター形状が一致する場合に限り、汚損判定が行われるため、型式が異なる空調装置毎に精度の高い汚損判定が可能となる。これに対し、対象形状と、対応マスター形状が一致しない場合には、対象吹出口の再撮像を促す案内が通知されるため、汚損判定を実施可能な対象画像を確実に取得することができる。
【0019】
第3の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、対象吹出口の現在の汚損状態が詳細に認識されるため、ユーザーや専門業者が清掃の適切なタイミングを把握し易くなるとともに、専門業者が清掃の内容を決定し易くなる。
【0020】
第4の発明によれば、第1の発明の効果と同様の効果を有する。
【0021】
第5の発明によれば、第4の発明を構成する各工程のうち、撮像工程以外の工程をプログラムが自動的に実行するため、人の負担を大きく軽減できる。また、撮像工程においても、ユーザーはプログラムにしたがって手持ちの通信端末等で撮像するという簡単な作業を行えばよいから、その負担は少ないものとなる。
さらに、適否判断工程と、汚損判定工程をプログラムが実行することによれば、人が適否判断及び汚損判定をする場合と比較して、適否判断結果及び汚損判定結果の人の主観に基づくバラツキを排除し、再現性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1に係る空調装置の汚損判定システムの構成図である。
【
図2】実施例2に係る空調装置の汚損判定方法のフロー図である。
【
図3】実施例2に係る空調装置の汚損判定方法を構成する適否判断工程のうちの、画質判断工程のフロー図である。
【
図4】実施例2に係る空調装置の汚損判定方法を構成する適否判断工程のうちの、形状判断工程のフロー図である。
【
図5】実施例2に係る空調装置の汚損判定方法を構成する汚損判定工程のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0023】
本発明の第1の実施の形態に係る空調装置の汚損判定システムの構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、実施例1に係る空調装置の汚損判定システムの構成図である。
なお、実施例1に係る空調装置の汚損判定システム1(以下、汚損判定システム1という。)は、空調装置のメンテナンスを行う専門業者が所有しており、ユーザーが空調装置の清掃をこの専門業者へ依頼した際に、専門業者が依頼したユーザーに対して汚損判定システム1の機能の一部を利用させることを想定したものである。また、実施例1における空調装置及び対象空調装置とは、いずれも壁掛け型の空調装置であって、例えば一般家庭や事業所に設置されているものである。
【0024】
図1に示すように、実施例1に係る汚損判定システム1は、取得部2と、適否判断部3と、汚損判定部4と、通知部5と、記憶部6を備える。具体的には、汚損判定システム1は、パーソナルコンピューターである。
また、取得部2と、通知部5は、それぞれネットワーク51を介し、ユーザーの通信端末50と通信可能に構成される通信手段である。なお、
図1では、1台の通信端末50のみが示されているが、汚損判定システム1は複数の通信端末50とそれぞれ通信可能である。
【0025】
次に、汚損判定システム1は、CPU(中央処理装置)7を内蔵している。このCPU7は、適否判断部3と、汚損判定部4を演算部として備えている。さらに、CPU7は、これらの取得部2と、適否判断部3と、汚損判定部4と、通知部5と、記憶部6の動作を制御可能な制御部(図示せず)を備えている。
【0026】
一方、通信端末50は、対象画像を撮像する撮像部50aと、送受信部50bと、記憶部50cと、操作画面50dと、これらの動作を制御するCPU50eを備える携帯型コンピューターである。
このうち、記憶部50cには、通信端末50の動作を制御するための通信端末用プログラムが記憶される。この通信端末用プログラムは、ユーザーが予め通信端末50の操作画面50dを操作し、例えば専門業者のホームページ上で汚損判定システム1に対してダウンロードを要求することで記憶部50cにダウンロードされ、さらに通信端末50の所定のインストール先フォルダ(図示せず)にインストールされたものである。
【0027】
ユーザーが通信端末用プログラムを実行すると、操作画面50dには、撮像部50aを用いて対象画像を撮像し、この対象画像を含む対象情報を送信するように案内する案内メッセージが表示される。この案内メッセージに従って、ユーザーが撮像及び送信を行うと、対象情報が送受信部50bから取得部2へ送信される。なお、対象情報の詳細な内容については、後述する。
次に、取得部2は、通信端末50から送信された対象情報を取得し、適否判断部3に伝達する。すると、適否判断部3が動作を開始し、その適否判断結果に対応して汚損判定部4及び通知部5がそれぞれ動作を開始する。以下、取得部2等の構成及び動作について、順に説明する。
【0028】
まず、取得部2について、詳細に説明する。取得部2は、通信端末50から対象情報を取得すると、これを適否判断部3へ伝達するほか、後述する記憶部6の主記憶部6aへ伝達し記憶させる。この対象情報には、ユーザーが対象吹出口を撮像した対象画像と、対象空調装置の型式を識別可能な識別情報と、ユーザーの個人情報が含まれる。
このうち、識別情報とは、型式そのもののほか、メーカー名と製造番号といった型式を特定し得る情報をいい、対象空調装置の筐体の表面に表示されているものや、取扱説明書に記載されているものをいう。これ以外にも、識別情報は型式を特定し得る情報であれば特に限定されず、そのデータ形式は、操作画面から入力されるテキストデータや、画像ファイル中の文字列、バーコード及び二次元コードのいずれであってもよい。
さらに、対象画像及び識別情報は、具体的には、1枚の画像ファイルにまとめて含まれていてもよく、又はそれぞれ別の画像ファイル若しくはそれぞれ画像ファイルとテキストデータに分けられていてもよい。
【0029】
次に、適否判断部3について、詳細に説明する。適否判断部3は、対象情報のうちの対象画像が、対象吹出口の汚損判定に利用可能である否かを判断し、適否判断結果を作成する。
また、適否判断部3は、画像ファイル中の文字列やコードから、必要な情報を読み出し可能な公知の処理方法を実行できるよう構成されている。そのため、適否判断部3は、対象情報のうち、例えば画像ファイル中の文字列やコードからなる識別情報から、自動的に型式等を認識できる。
【0030】
次に、適否判断部3が、適否判断結果を適と判断した場合、適否判断結果を汚損判定部4と、通知部5と、主記憶部6aへ伝達する。
すると、汚損判定部4が、対象吹出口の汚損状態の判定を開始する。これと同時に、通知部5は、適否判断結果を通信端末50へネットワーク51を介して送信する。なお、通知部5が通信端末50へ通知する適否判断結果、後述する汚損判定結果及び各種の案内メッセージは、結果情報を構成する。また、通知部5は、この通知部5が行った通知の事実とその内容及び日時を主記憶部6aへ伝達して記憶させる。
【0031】
これに対し、適否判断部3が、適否判断結果を否と判断した場合、適否判断結果を、通知部5と、主記憶部6aへ伝達する。
これにより、通知部5は、主記憶部6aに記憶されている対象吹出口の再撮像を促す案内メッセージを読み出し、これをネットワーク51を介してユーザーの通信端末50へ通知する。また、再撮像を促す案内メッセージは、文字情報のほか、再撮像を促す旨の画像情報や音声情報で構成されてもよい。
そして、通信端末50は、案内メッセージを操作画面50dに表示する。ユーザーは、この案内メッセージに従って、再び対象吹出口の撮像を行い、対象画像を含む対象情報を取得部2へ送信する。
【0032】
さらに、記憶部6は、主記憶部6aと、マスター画像記憶部6bと、汚損区分記憶部6cを備える。このうち、主記憶部6aは、前述の通信端末用プログラム、汚損判定システム1の動作を制御するための汚損判定システム用プログラム、対象情報、適否判断部3による適否判断結果及び汚損判定部4による汚損判定結果、通知部5が通知する際のメッセージとして使用される定型の説明文、適否判断部3と汚損判定部4がそれぞれ適否判断と汚損判定を行う過程で生じた様々な情報、通知部5が行った通知の事実とその内容及び日時等、複数のマスター画像及び汚損区分以外のデータやプログラムを記憶する。
【0033】
また、マスター画像記憶部6bは、複数のマスター画像を記憶する。この複数のマスター画像とは、予め、型式に関して異なる複数の空調装置の各吹出口をそれぞれ撮像した複数の吹出口画像が、対応する型式と関連付けられることによって作成されたデータセットである。
さらに、汚損区分記憶部6cは、汚損の程度が複数の段階に区分されてなる汚損区分を記憶する。この汚損区分として、例えば、予め架空の吹出口の画像を想定し、この想定した画像を画素値の閾値で二値化し、この閾値以下を有する領域の総面積と、閾値を超える領域の総面積との比率を指標として作成されたものが考えられる。
なお、マスター画像記憶部6bや汚損区分記憶部6cは、取得部2等とともに1台のコンピューターに設けられるほか、ネットワーク51を介して取得部2等と通信可能なサーバーに設けられてもよい。
【0034】
上記構成の汚損判定システム1によれば、対象画像は、ユーザーが所有する通信端末50を用いて撮像されるため、空調装置にカメラを設置する必要がない。よって、一般家庭や事業所で汚損判定システム1を利用し易い。
また、通信端末50に通信端末用プログラムをインストールすることで、ネットワーク51を介して対象画像を取得部2へ送信したり、通知部5から汚損判定結果や汚損判定結果を受信したりすることができる。そのため、ユーザーが通信端末50を操作して手軽に対象画像の撮像や、汚損判定結果等の閲覧をすることができる。よって、この点からも、一般家庭や事業所で空調装置の汚損判定システムを利用し易い。
【0035】
さらに、適否判断部3の適否判断結果の適否にかかわらず、この適否判断結果が通知部5を介してユーザーに通知されるため、ユーザーは自身が撮像した対象画像の適否について、リアルタイムで知ることができる。
また、適否判断結果が否である場合は、通知部5が対象吹出口の再撮像を促す案内メッセージを通知することから、汚損判定を実施可能な対象画像を確実に取得することができる。
【実施例0036】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る空調装置の汚損判定方法の処理工程について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施例2に係る空調装置の汚損判定方法のフロー図である。なお、
図1で示した構成要素については、
図2においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図2に示すように、実施例2に係る空調装置の汚損判定方法10(以下、汚損判定方法10という。)は、ステップS1の撮像工程と、ステップS2の取得工程と、ステップS3の適否判断工程と、ステップS4の汚損判定工程と、ステップS5,S5´の通知工程を備える。さらに、図示は省略するが、ステップS3の適否判断工程とステップS5´の通知工程の間、及びステップS4の汚損判定工程とステップS5の通知工程の間に、適否判断結果及び汚損判定結果を主記憶部6aに記憶させる記憶工程をそれぞれ備える。
これらの工程のうち、ステップS1の撮像工程は、通信端末50にインストールされた通信端末用プログラムに基づいて実行される。また、ステップS2の取得工程乃至ステップS5の通知工程は、汚損判定システム1にインストールされた汚損判定用プログラムに基づいて実行される。以下、各工程について、順に説明する。
【0037】
まず、ステップS1の撮像工程は、判定対象である対象空調装置の対象吹出口を撮像する工程であって、通信端末50によって実行される。詳細には、ステップS1の撮像工程は、通信端末50が、ユーザーに対し、対象空調装置の対象吹出口を撮像するように案内するステップS1-1の撮像案内工程と、ユーザーが、通信端末50を用いて、撮像の案内に従って対象吹出口の撮像を実施するステップS1-2の撮像実施工程を備える。
【0038】
このうち、ステップS1-1の撮像案内工程においては、ユーザーの通信端末50が、ユーザーへ対象情報を送信するように案内する案内メッセージを、操作画面50dに表示する。
また、操作画面50dには、この撮像時の案内メッセージとともに、対象画像と、複数のマスター画像を比較できるように、対象吹出口を撮像する際の撮像方向や撮像範囲についての適切なアドバイスの文章、又は、撮像位置及び撮像範囲を示す図形等を表示することが望ましい。
具体的には、後述する複数のマスター画像中の各吹出口が、いずれも共通した撮像方向及び撮像範囲によって撮像されている場合、この共通した撮像方向等に則っての撮像を求める旨のアドバイス又は図形を表示するとよい。詳細には、共通した撮像方向についてのアドバイスは、例えば、対象吹出口の最奥面や横ルーバーを最も広く撮像できる方向からの撮像を求めるもの、共通した撮像範囲についてのアドバイスは、対象画像を撮像画面の特定範囲内に収めるために、撮像範囲を指定する枠線からなる図形を操作画面50d上に表示するものが考えられる。
【0039】
次に、ステップS1-2の撮像実施工程においては、ユーザーが撮影時の案内メッセージに従って、撮像部50aを用いて対象画像を撮影する。そして、ユーザーは、対象画像を識別情報及び個人情報等とともに、対象情報として取得部2へ送信する。この後、通信端末50は、ユーザーに対しそのまま待機してもらうように案内する別のメッセージを、操作画面50dに表示したままとしてもよい。
【0040】
続いて、ステップS2の取得工程においては、ユーザーが送信した対象情報を取得部2が取得し、適否判断部3に伝達する。
これにより、適否判断部3が、ステップS3の適否判断工程を実行する。この工程において、適否判断部3は、まず、対象情報に含まれる対象画像と、識別情報と、個人情報を互いに関連付けて対象関連情報とし、この対象関連情報を主記憶部6aに伝達して記憶させる。
そして、適否判断部3は、対象関連情報のうちの対象画像が、例えば撮像時の光量不足によって対象画像が暗かったり、焦点がずれて画像がボケてしまったりするために、汚損箇所を特定できないものであるか否かの判断と、撮像方向や撮像範囲が不適切であるために、対象吹出口の形状を認識できないものであるか否かの判断を行う。
【0041】
このうち、後者の対象吹出口の形状に関する判断には、マスター画像記憶部6bに記憶された後述する複数のマスター画像が利用される。なお、上記の2種類の判断方法については、それぞれ
図3及び
図4を用いながら後述する。
そして、適否判断部3が、対象画像が汚損箇所を特定でき、かつ対象吹出口の形状を認識できるものであると判断した場合は、適否判断結果を適とし、さらに適否判断結果を対象関連情報と関連付けて対象適否情報を作成する。そして、適否判断部3は、対象適否情報を、汚損判定部4と、主記憶部6aへ伝達する。
【0042】
汚損判定部4に対象適否情報が伝達されることにより、汚損判定部4がステップS4の汚損判定工程の実行を開始する。この工程において、汚損判定部4は、対象画像中の対象吹出口の汚損状態が、汚損区分記憶部6cに記憶された汚損区分のうちの、いずれの区分に該当しているかを判定し、汚損判定結果を作成する。
さらに、汚損判定部4は、汚損判定結果を、主記憶部6aから読み出した対象適否情報と関連付けて対象汚損情報を作成し、この対象汚損情報を通知部5と、主記憶部6aへ伝達する。なお、この汚損区分を用いた汚損状態の判定方法については、
図5を用いながら後述する。
通知部5に対象汚損情報が伝達されることにより、通知部5は、ステップS5の通知工程を実行し、ユーザーの通信端末50に、対象汚損情報または汚損判定結果を通知する。さらに、通知部5は、これを説明するメッセージを通知してもよい。
【0043】
また、適否判断部3は、対象適否情報を通知部5に伝達してもよい。この場合、通知部5は、ステップS5の通知工程を実行し、例えば、ユーザーの通信端末50に、対象適否情報または適否判断結果と、途中経過を説明する経過メッセージを通知することができる。
この通知に基づき、通信端末50は、例えば、適否判断結果が適であったから汚損判定を開始できる旨の経過メッセージを、操作画面50dに表示させることができる。さらに、この経過メッセージに加えて、通信端末50は、ユーザーに対して汚損判定が完了するまで再度の待機を求める旨のメッセージを操作画面50dに表示させてもよい。ただし、このようなステップS3の適否判断工程とステップS4の汚損判定工程の間のステップS5の通知工程は、省略されてもよい。
【0044】
これに対し、ステップS3の適否判断工程において、適否判断部3が、対象画像が、(1)汚損箇所を特定できない、(2)対象吹出口の形状を認識できない、または(3)汚損箇所を特定できず、かつ対象吹出口の形状を認識できない、のうちのいずれかであると判断した場合は、適否判断結果を否とし、さらにこの適否判断結果を対象関連情報と関連付けて対象適否情報を作成する。この対象適否情報は、通知部5と、主記憶部6aへ伝達されるものの、汚損判定部4へは伝達されなくてよい。また、上記の(1)乃至(3)からなる判断理由が対象適否情報に含まれてもよい。
【0045】
対象適否情報が通知部5に伝達されることにより、通知部5は、ステップS5´の通知工程を実行する。この工程においても、通知部5は、ユーザーの通信端末50に、ネットワーク51を介して適否判断結果と、対象画像の再撮像等を促す案内メッセージを通知する。通信端末50は、この通知に基づき、ステップS1-1の撮像案内工程を実行する。そして、通信端末50は、例えば、適否判断結果が不適であったため対象吹出口の再撮像と再送信を求める旨の案内メッセージを、操作画面50dに表示させる。
また、判断理由が対象適否情報に含まれて通知部5へ伝達される場合では、再撮像等を促す案内メッセージに、ユーザーが撮像した対象画像が不適である理由の説明文が添付されてもよい。この説明文は、例えば、上記の(1)乃至(3)のいずれかとすることができる。
そして、上記の案内メッセージを確認したユーザーは、ステップS1-2の撮像実施工程として、再び、対象吹出口の撮像を行って対象画像を含む対象情報を取得部2へ送信する。このとき、識別番号やユーザーの個人情報等の再送信は省略できるようにしてもよい。
【0046】
次に、ステップS3の適否判断工程について、
図3及び
図4を用いて詳細に説明する。
図3は、実施例2に係る空調装置の汚損判定方法を構成する適否判断工程のうちの、画質判断工程のフロー図である。また、
図4は、実施例2に係る空調装置の汚損判定方法を構成する適否判断工程のうちの、形状判断工程のフロー図である。なお、
図1及び
図2で示した構成要素については、
図3及び
図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3及び
図4に示すように、ステップS3の適否判断工程は、ステップS3-1の画質判断工程と、ステップS3-2の形状判断工程を備える。
また、
図3に示すように、ステップS3-1の画質判断工程は、ステップS3-1-1の明度判断工程と、ステップS3-1-2の鮮鋭度判断工程を備える。
【0047】
ステップS3-1-1の明度判断工程は、対象画像中で、所定の閾値以上の明度を有する領域の総面積SWに対する、閾値未満の明度を有する領域の総面積SBの比率を指標として、対象画像が対象吹出口の汚損判定に利用可能であるか否かを判断する工程である。
これは、汚損は対象吹出口で変色が発生した箇所、すなわち対象画像上で明度が低下した箇所として認識されるところ、対象画像を撮像した際の光量が不足していると、対象画像上で汚損が発生していない部分の明度が低下し、汚損箇所との判別精度が低下することを防止するためである。
【0048】
具体的には、明度は、対象画像に対し公知のモノクロ二値化処理を行った後の、画素の輝度値によって与えられる。なお、対象画像がカラー画像である場合には、対象画像を公知の処理方法によってグレースケール画像へ変換した後に二値化してもよい。また、総面積SW,SBも、公知の処理方法によって算出するとよい。
さらに、対象画像中の対象吹出口は、通常、縦ルーバーや溝構造といった、汚損箇所の検出に不要な構造物を備えている。そのため、モノクロ二値化処理をする前に、専門業者が不要な構造物を対象画像から選択して消去するための消去工程が実行されてもよい。
【0049】
よって、ステップS3-1-1の明度判断工程においては、適否判断部3は、面積に関する比率(SB/SW)(以下、(SB/SW)を明度比率RLという。)が、例えば、任意に設定する明度判断値k(ただし、kは0.0以上、かつ1.0以下の定数)以下の場合、対象画像を撮像した際の光量が不足しておらず、対象画像が対象吹出口の汚損判定に利用可能であると判断する。そして、適否判断部3は、モノクロ二値化処理を行った後の対象画像、明度比率RL及び明度判断値kを対象適否情報の一部として主記憶部6aに伝達した後、ステップS3-1-2の鮮鋭度判断工程を実行する。
これに対し、明度比率RLが明度判断値kを超える場合、適否判断部3が、対象画像を撮像した際の光量が不足しており、対象画像が対象吹出口の汚損判定に利用可能でないと判断する。そして、適否判断部3がモノクロ二値化処理を行った後の対象画像と、明度比率RL及び明度判断値kを対象適否情報の一部として、通知部5と、主記憶部6aにそれぞれ伝達した後、通知部5がステップS5´の通知工程を実行する。
【0050】
次に、ステップS3-1-2の鮮鋭度判断工程は、対象画像中のボケや手ブレの程度が許容範囲内である場合に、対象吹出口の汚損判定に利用可能であると判断する工程である。これは、ボケ等によって対象画像の鮮鋭度が不足していることで、汚損箇所の判別精度が低下することを防止するためである。
具体的には、対象画像が鮮鋭であるか否かは、画像に対するエッジ処理を行って、ボケ等を含む画像を検出可能な公知の処理方法によって判断される。
よって、ステップS3-1-2の鮮鋭度判断工程において、適否判断部3が、対象画像が鮮鋭であると判断した場合、この判断結果を対象適否情報の一部として主記憶部6aに伝達する。その後、適否判断部3がステップS3-2の形状判断工程を実行する。
これに対し、適否判断部3が、対象画像が鮮鋭でないと判断した場合、この判断結果を対象適否情報の一部として主記憶部6aに伝達した後、通知部5がステップS5´の通知工程を実行する。
【0051】
続いて、
図4に示すように、ステップS3-2の形状判断工程は、ステップS3-2-1の読込工程と、ステップS3-2-2の抽出工程と、ステップS3-2-3の検出工程と、ステップS3-2-4の形状比較工程を備える。
【0052】
ステップS3-2-1の読込工程は、適否判断部3が、主記憶部6aから対象画像を読み込むとともに、マスター画像記憶部6bから複数のマスター画像を読み込む工程である。
次に、ステップS3-2-2の抽出工程は、適否判断部3が複数のマスター画像から対象画像に対応する対応マスター画像を抽出する工程である。
ここで、対象画像は、対象関連情報の一部であり、適否判断部3によって対象空調装置の型式を識別可能な識別情報と関連付けされている。また、複数のマスター画像は、複数の吹出口画像が、対応する空調装置の型式と関連付けられて作成されたものである。よって、型式を指標とすることで、複数のマスター画像から、対象画像に写された対象空調装置の型式と一致する型式を有する空調装置の画像、すなわち対応マスター画像を抽出できる。
【0053】
さらに、ステップS3-2-3の検出工程は、対象画像における対象吹出口の形状である対象形状と、対応マスター画像における吹出口の形状である対応マスター形状をそれぞれ検出する。このような形状検出の方法として、例えば、モノクロ二値化によって検出されたエッジのうち、最大面積を有する長方形を形成しているものを検出する方法や、幾何学形状サーチ方法が考えられる。
前者の形状検出方法では、適否判断部3は、対象画像及び対応マスター画像上で検出した長方形状をなすエッジ部分を、対象形状及び対応マスター形状であるとそれぞれ認識し、対象適否情報の一部として主記憶部6aに伝達した後、ステップS3-2-4の形状比較工程を実行する。
【0054】
次いで、ステップS3-2-4の形状比較工程は、それぞれ検出された対象形状と、対応マスター形状を比較する工程である。適否判断部3は、対象形状と、対応マスター形状が一致する場合に適否判断結果を適とし、対象形状と、対応マスター形状が一致しない場合に適否判断結果を否とする。なお、形状が一致するとは、対象画像上の対象形状と、対応マスター画像上の対応マスター形状が、大きさを含めて同一である場合のほか、対象形状と、対応マスター形状が大きさの異なる相似関係にある場合も含む。
【0055】
適否判断結果が適の場合、適否判断部3が、適否判断結果を対象適否情報の一部として主記憶部6aと、汚損判定部4に伝達する。その後、汚損判定部4がステップS4の汚損判定工程を実行する。
また、適否判断部3が、適否判断結果を対象適否情報の一部として通知部5に伝達してもよい。この場合、通知部5が、例えば、ユーザーが送信した対象画像の適否判断結果が適となったため、引き続き汚損判定を実行しているというメッセージを、ネットワーク51を介してユーザーの通信端末50に通知してもよい。ただし、このような通知は省略されてもよい。
これに対し、適否判断結果が否の場合、適否判断部3が、適否判断結果を対象適否情報の一部として主記憶部6aと、通知部5に伝達する。その後、通知部5がステップS5´の通知工程を実行する。
【0056】
さらに、ステップS4の汚損判定工程について、
図5を用いて詳細に説明する。
図5は、実施例2に係る空調装置の汚損判定方法を構成する汚損判定工程のフロー図である。なお、
図1乃至
図4で示した構成要素については、
図5においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図5に示すように、ステップS4の汚損判定工程は、ステップS4-1の明度比率読込工程と、ステップS4-2の汚損比較工程を備える。
ステップS4-1の明度比率読込工程は、ステップS3-1-1の明度判断工程において求められた対象画像の面積に関する明度比率R
L(S
B/S
W、S
Wは所定の閾値以上の明度を有する領域の総面積、S
Bは閾値未満の明度を有する領域の総面積)と、明度判断値kを、汚損判定部4が主記憶部6aから読み込む工程である。
ただし、この工程の代わりに、汚損箇所の検出に最適な明度の閾値を選択して対象画像を再度モノクロ二値化処理し、新たな明度比率R
Lを求めてもよい。
【0057】
次に、ステップS4-2の汚損比較工程は、対象吹出口の汚損状態を、汚損の程度が複数の段階に区分されてなる汚損区分と比較して判定する工程である。この汚損区分は、具体的には、明度判断値k以下の明度比率RLを5段階に区分したものであり、汚損区分記憶部6cに記憶されている。
詳細には、明度比率RLの区分[1]から区分[5]は、区分毎の明度比率RLの増加量Kを(k/n、nは区分数5)とすると、[1]0.0≦RL<K、[2]K≦RL<2K、[3]2K≦RL<3K、[4]3K≦RL<4K、[5]4K≦RL≦k、に設定されている。すなわち、区分[1]から区分[5]になるにつれて、汚損状態が悪化することを意味している。
【0058】
そして、汚損判定部4は、対象画像の明度比率RLを、上記の汚損区分と比較し、対象画像の明度比率RLが該当する区分[1]から区分[5]のうちのいずれかを汚損判定結果とする。そして、汚損判定部4は、汚損判定結果を対象適否情報と関連付けて、主記憶部6aと、通知部5へ伝達する。
これにより、通知部5が汚損判定結果を通信端末50へ送信すると、通信端末50は、ステップS5の通知工程として、汚損判定結果を操作画面50dに表示する。なお、操作画面50dに表示される汚損判定結果は、例えば、対象画像の明度比率RLが、区分[1]に該当する場合は「汚れていない」、区分[2]に該当する場合は「わずかに汚れているが清掃するほどではない」、区分[3]に該当する場合は「少し汚れており清掃してもよい」、区分[4]に該当する場合は「汚れており清掃したほうがよい」、区分[5]に該当する場合は「ひどく汚れており清掃が必要である」のように、ユーザーが汚損状態を理解し易い文章で表示されるとよい。
【0059】
また、汚損判定結果がユーザーに通知された後に、ユーザーからの清掃依頼を取得する清掃依頼取得工程が設けられてもよい。この工程では、ユーザーが専門業者に対して希望する清掃作業の日時等や、ユーザーが対象空調装置全体を含む周辺部分を撮像した周辺情報画像を、取得部2に送信できるようにすると、専門業者が清掃の準備を開始することができる。
【0060】
上記構成の汚損判定方法10によれば、ユーザーが対象画像等を送信することによって迅速に対象吹出口の汚損状態を知ることが可能である。そのため、清掃の適切なタイミングを知るためにメンテナンスの専門業者の訪問を待つ必要がなく、ユーザーにとって利便性が高い。
また、専門業者にとっても、汚損状態の判断のみのためにユーザー宅へ出向く手間を省くことができる。これにより、実際に清掃作業に取り掛かる前の経費と時間を節減できるので、業務効率を向上させることが可能となる。
【0061】
さらに、ステップS3-1-1の明度判断工程と、ステップS3-1-2の鮮鋭度判断工程という二重の適否判断を行うことにより、確実に汚損判定に利用可能な対象画像を選別することができる。そのため、不適切な対象画像に基づく汚損判定を防止可能であるから、ステップS4の汚損判定工程による汚損判定の精度を向上させることにつながる。
加えて、ステップS4の汚損判定工程において、対象画像の汚損箇所を汚損区分と照らし合わせることで汚損判定を行うため、人が判断するよりも客観的な汚損判定結果を得ることができる。よって、例えば、1台の対象空調装置における汚損状態の経時変化を正確に追跡できるとともに、複数台の対象空調装置間においても汚損判定結果のバラツキが無く、汚損判定結果の信頼性を高めることが可能である。
【0062】
そして、ステップS3の適否判断工程やステップS4の汚損判定工程毎に、それぞれの結果等を通知するメッセージが通信端末50の操作画面50dに表示されるため、ユーザーはリアルタイムで適否判定や汚損判定についての状況を知ることができる。
このうち、ステップS3の適否判断工程において通知される再撮像を促す案内メッセージに、ユーザーが撮像した対象画像についての不適理由の説明文等が添付される場合では、ユーザーが撮像する際の注意点をより深く理解できるので、不適切な対象画像の撮像と送信が繰り返されることを防止可能である。
また、ステップS4の汚損判定工程後に汚損判定結果が通知されるため、ユーザーが汚損の程度と、清掃の適切なタイミングを認識可能である。そのため、汚損の進行によって多大な手間と費用がかかったり、直ちに清掃する必要がない場合にも専門業者へ依頼をしてしまい、やはり費用がかかったりするという課題を解決できる。
【0063】
なお、本発明に係る汚損判定システム1、汚損判定方法10及びプログラムは、実施例に示すものに限定されない。例えば、汚損判定システム1では、汚損区分記憶部6cに記憶される汚損区分が、面積に関する明度比率RLの代わりに、画素値に関する明度比率を指標として作成されてもよい。この場合、対象画像の対象吹出口上で設定した関心領域の画素値に関する明度比率(詳細には、対象吹出口上の関心領域の平均画素値から対象吹出口の外側の汚損のない関心領域の平均画素値を差し引いた値を、汚損のない関心領域の平均画素値で除した値)を、同様の画素値に関する明度比率を指標とした複数の区分のいずれに含まれるかによって、汚損の程度を判定できる。
また、ステップS3-1の画質判断工程においては、ステップS3-1-1の明度判断工程と、ステップS3-1-2の鮮鋭度判断工程の順序が入れ替わってもよい。このほか、ステップS5の通知工程によって汚損判定結果が送信されてから一定期間が経過した後、通知部5が、通信端末50に対して対象吹出口の清掃を案内する案内メッセージを送信してもよい。
さらに、汚損判定システム1として、パーソナルコンピューターのほかにも、スマートフォンやタブレットが使用されてもよい。
1…汚損判定システム 2…取得部 3…適否判断部 4…汚損判定部 5…通知部 6…記憶部 6a…主記憶部 6b…マスター画像記憶部 6c…汚損区分記憶部 7…CPU 10…汚損判定方法 50…通信端末 50a…撮像部 50b…送受信部 50c…記憶部 50d…操作画面 50e…CPU 51…ネットワーク