(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142072
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】車両用検出装置
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20220922BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220922BHJP
B60R 1/00 20220101ALI20220922BHJP
【FI】
B60R11/02 Z
G08G1/16 D
B60R1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042066
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 秀治
【テーマコード(参考)】
3D020
5H181
【Fターム(参考)】
3D020BA01
3D020BA20
3D020BB01
3D020BC13
3D020BD03
3D020BD08
3D020BD09
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】車両の下部に設けられるセンサを保護する。
【解決手段】車両用検出装置10は、車両の下部に設けられるセンサ22と、センサ22を被覆可能なカバーと、センサ22がカバーにより被覆される保護状態と、センサがカバーから露出する非保護状態とを切り替えるカバー変位機構28と、車両に関する車両情報を取得する車両情報取得部32と、車両情報取得部32が取得した車両情報に基づいて、カバー変位機構28を動作させ、保護状態と非保護状態を切り替える保護状態切替部38と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の下部に設けられるセンサと、
前記センサを被覆可能なカバーと、
前記センサがカバーにより被覆される保護状態と、前記センサが前記カバーから露出する非保護状態とを切り替えるカバー変位機構と、
前記車両に関する車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両情報取得部が取得した車両情報に基づいて、前記カバー変位機構を動作させ、前記保護状態と前記非保護状態を切り替える保護状態切替部と、を備えることを特徴とする車両用検出装置。
【請求項2】
前記車両情報取得部が取得した車両情報に基づいて、前記車両の周囲の死角を検出する死角検出部をさらに備え、
前記保護状態切替部は、前記死角検出部が死角を検出した場合、前記保護状態から前記非保護状態に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の車両用検出装置。
【請求項3】
前記車両に対する前記センサの位置および向きの少なくとも一方を変化させるセンサ変位機構と、
前記死角検出部により検出された死角が前記センサの検出範囲に含まれるように、前記センサ変位機構を制御する検出範囲制御部と、をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の車両用検出装置。
【請求項4】
前記車両情報取得部は、前記車両の挙動を示す車両挙動情報を取得し、
前記保護状態切替部は、前記車両情報取得部が取得した車両挙動情報に基づいて、前記保護状態と前記非保護状態を切り替えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用検出装置。
【請求項5】
前記車両情報取得部は、前記車両が走行する路面に関する路面情報を取得し、
前記保護状態切替部は、前記車両情報取得部が取得した路面情報に基づいて、前記保護状態と前記非保護状態を切り替えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の周囲の状況を確認するために、車両にカメラなどのセンサを設けられることが一般的となっている。例えば、周辺車両の陰となって直接視認できない歩行者や自転車を確認するため、カメラの視点を低くすることで周辺車両の最低地上高の下からのぞき見るようにした構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周辺車両の最低地上高よりも下の領域にある障害物を検出するために、センサを車両の下部に設けた場合、車両が走行する路面の状態によっては、センサに何らかの物体が接触して、センサが汚れたり破損したりするおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、車両の下部に設けられるセンサを保護するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の車両用検出装置は、車両の下部に設けられるセンサと、センサを被覆可能なカバーと、センサがカバーにより被覆される保護状態と、センサがカバーから露出する非保護状態とを切り替えるカバー変位機構と、車両に関する車両情報を取得する車両情報取得部と、車両情報取得部が取得した車両情報に基づいて、カバー変位機構を動作させ、保護状態と非保護状態を切り替える保護状態切替部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、車両の下部に設けられるセンサを保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る車両用検出装置が設けられる車両を模式的に示す図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、センサユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図4】実施の形態に係る車両用検出装置の機能構成を模式的に示す図である。
【
図5】車両用検出装置の動作例を模式的に示す図である。
【
図6】実施の形態に係る検出方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
実施の形態を詳細に説明する前に概要を述べる。本実施の形態は、車両の下部に設けられるセンサを備える車両用検出装置である。センサの一例は、カメラやレーザレーダなどである。車両の下部にセンサを設けることで、車両の周囲に存在する周辺車両の陰になって歩行者や自転車、道路上の落下物などの障害物が見えない場合であっても、周辺車両の最低地上高よりも下の領域を通じて障害物をセンサで検出できる。
【0012】
車両の下部にセンサを設けた場合、車両が走行する路面の状態によっては、センサが何らかの物体と接触してセンサが汚れたり、破損したりするおそれがある。そこで、本実施の形態では、センサを被覆するカバーを設け、センサがカバーにより被覆される保護状態と、センサがカバーから露出する非保護状態とを切り替えできるようにする。例えば、センサが汚れたり破損したりする可能性が高い場合には保護状態とし、車両の周囲の死角を確認する必要性が高い場合には非保護状態とする。
【0013】
図1は、実施の形態に係る車両用検出装置10が設けられる車両50を模式的に示す図である。車両用検出装置10は、センサユニット12と、センサ変位機構14と、制御装置16とを備える。センサユニット12およびセンサ変位機構14は、車両50の下部に設けられ、例えば、車両50のフロントバンパー52の下部に設けられる。センサユニット12は、車両50の周囲の障害物を検出するための第1センサを含む。センサ変位機構14は、センサユニット12の位置や向きを変化させ、センサユニット12に含まれる第1センサの検出範囲を変化させるように構成される。
【0014】
車両50には、センサユニット12に含まれる第1センサとは別の第2センサ54が設けられる。第2センサ54は、車両の周囲の障害物を検出するためのセンサであり、カメラやレーザレーダなどである。第2センサ54は、センサユニット12とは別の位置に設けられ、センサユニット12よりも上側に設けられる。第2センサ54は、例えば、車室内に設けられ、リアビューミラーの近傍に設けられる。この場合、第2センサ54は、車室によって保護されており、第1センサに生じうるような汚れや破損を懸念する必要性は少ない。
【0015】
第2センサ54は、車両50の前後左右方向を同時に撮影する複数のカメラで構成されてもよいし、360度を撮影する全周カメラで構成されてもよい。第2センサ54は、車両50の搭乗者を撮影し、搭乗者の視線を検出する機能を有していてもよい。例えば、車両の運転者の視線を公知の技術を用いて検出することにより、第2センサ54が撮影する車両50の周囲の画像のうち、運転者の視界に含まれる範囲が切り出し可能であってもよい。その他、車両50の運転者の視線を検出することにより、第2センサ54が撮影する車両50の周囲の画像のうち、運転者の視界に含まれない死角となる範囲が切り出し可能であってもよい。
【0016】
図面において、車両50の左右方向をx方向とし、車両50の前後方向をy方向とし、車両50の上下方向をz方向としている。車両50の右方は+x方向であり、左方は-x方向である。車両50の前方は+y方向であり、後方は-y方向である。車両50の上方は+z方向であり、下方は-z方向である。
【0017】
図2は、
図1の車両50の底部を模式的に示す図である。センサ変位機構14は、フロントバンパー52の下部において左右方向に延在する。センサ変位機構14は、矢印Xで示されるように、センサユニット12の左右方向の位置を変化させるように構成される。センサ変位機構14は、例えば、センサユニット12を左右方向に直線移動させるためのリニアアクチュエータを含む。センサ変位機構14は、矢印Rで示されるように、センサユニット12の向きを変化させ、センサユニット12に含まれる第1センサの検出軸Aの向きを変化させるように構成される。センサ変位機構14は、例えば、センサユニット12をz軸まわりに回動させるためのモータを含む。
【0018】
図示する例では、センサ変位機構14がセンサユニット12を左右方向に直線移動させるよう構成されるが、センサ変位機構14は、センサユニット12を前後方向に移動させるよう構成されてもよい。センサ変位機構14は、車両50の底部に前後方向(y方向)に延在するように設けられてもよく、センサユニット12を前後方向に直線移動させるためのリニアアクチュエータを含んでもよい。
【0019】
図3(a)~(c)は、センサユニット12の構成を模式的に示す図である。センサユニット12は、ベースプレート20と、第1センサ22と、第1カバー24と、第2カバー26と、カバー変位機構28とを含む。
【0020】
ベースプレート20は、センサ変位機構14に取り付けられる部分である。ベースプレート20の車両50に対する位置または向きは、センサ変位機構14の動作によって変化する。ベースプレート20は、第1センサ22を被覆するための保護部材の一部である。
【0021】
第1センサ22は、車両50の周囲の障害物を検出するためのセンサであり、カメラやレーザレーダなどである。第1センサ22は、ベースプレート20に固定される。ベースプレート20の位置または向きが変化すると、第1センサ22の位置または向きが変化する。例えば、センサ変位機構14によってベースプレート20の向きが変化すると、第1センサ22の検出軸Aの向きが矢印Rで示されるように変化する。なお、センサ変位機構14によってベースプレート20の左右方向の位置が変化すると、第1センサ22の左右方向の位置が変化する(不図示)。
【0022】
第1カバー24は、第1センサ22を被覆するための保護部材の一部である。第1カバー24は、ベースプレート20に対して変位可能となるようにベースプレート20に取り付けられる。第1カバー24は、ベースプレート20に対してz軸まわりに回動可能となるよう構成される。第1カバー24は、第1センサ22の検出軸Aを通過させるための開口30を有する。第1カバー24が回動すると、開口30の周方向の位置が変化する。
【0023】
第2カバー26は、第1センサ22を被覆するための保護部材の一部である。第2カバー26は、ベースプレート20に固定されており、ベースプレート20に対して変位しない。第2カバー26は、第1センサ22の検出軸Aから周方向にずれた位置に設けられており、例えば、第1センサ22の検出軸Aから周方向に90度ずれた位置に設けられる。
【0024】
カバー変位機構28は、第1カバー24を変位させるよう構成される。カバー変位機構28は、例えば、第1カバー24をz軸まわりに回動するためのモータを有する。カバー変位機構28は、第1カバー24を変位させることで、
図3(a)に示される非保護状態と、
図3(b)に示される保護状態とを切り替える。
図3(b)は、
図3(a)に示す第1カバー24を矢印R1で示されるように90度回転させた状態を示す。
【0025】
図3(a)の非保護状態では、第1カバー24の開口30と第2カバー26の周方向の位置がずれている。第1センサ22は、第1カバー24および第2カバー26によって完全に被覆されておらず、開口30において外部に露出する状態となっている。非保護状態では、第1センサ22が車両50の周囲に存在する障害物を検出可能となる。
【0026】
図3(b)の保護状態では、第1カバー24の開口30と第2カバー26の周方向の位置が一致しており、第1カバー24の開口30が第2カバー26によって塞がれている。保護状態では、第1センサ22が第1カバー24および第2カバー26によって完全に被覆された状態となり、第1センサ22が車両50の周囲に存在する障害物を検出できない。
【0027】
図3(c)は、非保護状態の一例を示す。第1センサ22を矢印R2で示すように回動させることで、第1センサ22の検出軸Aがy方向に対して斜めになっている。第1センサ22の検出軸Aの向きは、例えば、センサ変位機構14がベースプレート20を回動させることによって変化する。このとき、第1カバー24はベースプレート20に対して変位しておらず、第1カバー24の開口30は、第1センサ22の検出軸Aに対応する位置にある。
【0028】
図示する例では、第1カバー24を回動させることで、センサユニット12の保護状態と非保護状態を切り替えるよう構成される。なお、回動するカバーの代わりに、スライドするカバーを用いてもよいし、回動またはスライドするシャッターなどを用いてもよい。その他、カバーを変位させる代わりに、第1センサ22を変位させることで、センサユニット12の保護状態と非保護状態を切り替えるよう構成されてもよい。また、第1センサ22を上下方向(z方向)に変位させることで、センサユニット12の保護状態と非保護状態を切り替えるよう構成してもよい。この場合、第1センサ22をカバーから下方に突出させることで非保護状態にし、第1センサ22を上方に移動させてカバー内に収容することで保護状態にしてもよい。
【0029】
図4は、実施の形態に係る車両用検出装置10の機能構成を模式的に示すブロック図である。図示する各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0030】
制御装置16は、車両に搭載される装置であり、車両に設けられる電子制御ユニット(ECU;Electronic Control Unit)などによって構成される。制御装置16は、車両に備えられるナビゲーションシステムなどを用いて構成されていてもよい。制御装置16は、ビデオカメラ装置や、スマートフォン等の可搬型の装置で実現されてもよい。
【0031】
制御装置16は、車両情報取得部32と、検出情報取得部34と、死角検出部36と、保護状態切替部38と、検出範囲制御部40とを含む。
【0032】
車両情報取得部32は、第2センサ54などの第1センサ22とは異なる車載装置56から車両50に関する車両情報を取得する。車載装置56は、車両50に設けられる任意の機器を含んでもよい。車載装置56は、カメラ、レーザレーダ、車速センサ、舵角センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、位置情報(例えば、GNSS;Global Navigation Satellite System)センサ、音声センサ(例えばマイク)などの各種センサを含んでもよい。各種センサ情報は、車両50の運転者などのユーザが所有している携帯端末などを介して取得されてもよい。車載装置56は、インターネットなどのネットワーク上で共有されている周辺道路の路面情報や、周囲の他車両の情報、走行地点の天候に関する情報(雪、雨などの天気情報、雹などの氷粒、凍結、風による砂埃などの予測情報)等を、無線通信装置(不図示)などを介して車両情報として取得してもよい。車載装置56は、これらのセンサを含むドライブレコーダであってもよい。車載装置56は、車両50の走行位置や車両50が走行する道路に関する情報などを提供するナビゲーション装置であってもよい。
【0033】
車両情報取得部32は、車両情報として、車両50の周辺状況に関する車両周辺情報を取得する。車両周辺情報は、例えば、車両の周辺に存在する物体の位置および距離に関する情報を含む。車両周辺情報は、第2センサ54などのカメラやレーザレーダから取得できる。車両周辺情報は、マイクなどの音声センサにて取得される車両50の周辺の音声情報を含んでもよい。
【0034】
車両情報取得部32は、車両情報として、車両50の挙動に関する車両挙動情報を取得する。車両挙動情報は、例えば、車両50の速度や加速度を示す情報、車両50のアクセル、ブレーキ、ハンドルなどの操作情報を含む。車両挙動情報は、車載装置56から取得できる。
【0035】
車両情報取得部32は、車両情報として、車両50が走行する路面に関する路面情報を取得する。路面情報は、例えば、車両が走行する路面がアスファルトなどで舗装されているか、舗装されていない砂利道などであるか否かを示す情報を含む。路面情報は、例えば、路面の勾配を示す情報や、路面にある凹凸や段差を示す情報などを含む。路面情報は、路面に存在する水たまりや落石といった障害物の位置を示す情報を含んでもよい。路面情報は、例えば、ナビゲーション装置が備える地図情報から取得できる。路面情報は、第2センサ54などから取得できる車両周辺情報に基づいて生成されてもよく、第2センサ54を含むドライブレコーダなどの車載装置56にて生成されてもよい。路面情報は、ネットワークなどから高精度3Dマップのデータを入手することにより取得されてもよい。
【0036】
検出情報取得部34は、センサユニット12に含まれる第1センサ22が検出した情報を取得する。検出情報取得部34は、第1センサ22がカメラであれば、第1センサ22から画像情報を取得する。検出情報取得部34は、第1センサ22がレーザレーダであれば、車両50の周辺に存在する物体までの距離や方位、移動速度などを示す距離画像情報を取得する。検出情報取得部34は、公知の画像認識技術により画像情報や距離画像情報に含まれる物体を解析し、例えば前方の車両、道路、道路上の落下物などを認識し、車両50の走行などの障害となる可能性のある物体を障害物として識別可能な情報として取得してもよい。
【0037】
死角検出部36は、車両50の周囲の死角を検出する。死角検出部36が検出する死角は、車両50の周辺に存在する物体の陰になって、車両50の運転者が直接視認できない領域のことをいう。例えば、車両50の前方に別の車両が存在する場合、別の車両の前方の領域が死角となる。また、車両50が走行する道路に駐停車車両が存在する場合、駐停車車両の陰になって見えない領域が死角となる。
【0038】
死角検出部36は、車両情報取得部32が取得した車両情報に基づいて死角を検出する。死角検出部36は、例えば、第2センサ54が取得する車両周辺情報に基づいて、車両50の周辺に存在する物体を検出し、検出した物体の陰となる領域が存在する場合、死角を検出する。死角検出部36は、車両50の周辺に存在する周辺車両に起因する死角を検出してもよい。死角検出部36は、運転者の視線(つまり、視界)を考慮することにより、運転者の死角を検出してもよい。
【0039】
保護状態切替部38は、カバー変位機構28の動作を制御し、センサユニット12の保護状態と非保護状態を切り替える。保護状態切替部38は、車両情報取得部32が取得した車両情報に基づいて、センサユニット12の保護状態と非保護状態を切り替える。保護状態切替部38は、第1センサ22が何らかの物体と接触して汚れたり破損したりする可能性が高いと考えられる状況において、センサユニット12を保護状態にする。保護状態切替部38は、第1センサ22が何らかの物体と接触して汚れたり破損したりする可能性が低いと考えられる状況において、センサユニット12を非保護状態にする。
【0040】
保護状態切替部38は、例えば、車両情報取得部32が取得する車両挙動情報に基づいて、センサユニット12の保護状態と非保護状態を切り替える。保護状態切替部38は、例えば、車両50の速度が所定値(例えば時速10km/h)以上である場合、センサユニット12を非保護状態とし、車両50の速度が所定値未満である場合、センサユニット12を保護状態とする。第1センサ22の汚れや破損の原因となりうる凹凸、段差、水たまり、砂利、落石などが路面に存在する場合、車両50の速度を所定値未満にして徐行することが通常である。徐行中は低速であるため、第1センサ22が検出する障害物などが車両走行上の直接的な危険となる可能性は低い。そこで、車両50の走行速度が所定値未満であれば、第1センサ22の汚れや破損の原因となる物体が路面に存在する可能性を考慮してセンサユニット12を保護状態とする。一方、車両50の走行速度が所定値以上であれば、第1センサ22の汚れや破損の原因となる物体が路面に存在する可能性が低いと考えられるため、センサユニット12を非保護状態とする。その他、加速度センサの値から車両50の上下動を検出し、車両50の上下動が大きい場合にはセンサユニット12を保護状態としてもよい。
【0041】
保護状態切替部38は、車両情報取得部32が取得する路面情報に基づいて、センサユニット12の保護状態と非保護状態を切り替えてもよい。例えば、路面に凹凸、段差、水たまり、砂利、落石などが存在する可能性が高い道路を車両50が走行している場合、センサユニット12を保護状態とする。例えば、市街地から離れた山道、工事中の道路、踏切や急勾配のある場所では、センサユニット12を保護状態にする。一方、路面に凹凸、段差、水たまり、砂利、落石などが存在する可能性が低い道路を車両50が走行している場合、センサユニット12を非保護状態とする。例えば、市街地や高速道路を車両50が走行している場合、センサユニット12を非保護状態とする。
【0042】
保護状態切替部38は、車両情報取得部32が取得する車両周辺情報に基づいて、センサユニット12の保護状態と非保護状態を切り替えてもよい。例えば、第1センサ22から取得する画像に路面上の凹凸、段差、水たまり、砂利、落石などが含まれる場合、センサユニット12を保護状態としてもよい。その他、車両50のタイヤから発生するロードノイズを集音し、音声解析によって水たまりや砂利などの物体の有無を解析し、センサユニット12の保護状態と非保護状態を切り替えてもよい。
【0043】
保護状態切替部38は、死角検出部36の検出結果に基づいて、センサユニット12の保護状態と非保護状態を切り替えてもよい。例えば、死角検出部36が死角を検出した場合、検出した死角に存在する障害物を第1センサ22にて検出可能となるように、センサユニット12を非保護状態に切り替えてもよい。一方、死角検出部36により死角が検出されていない場合、センサユニット12を保護状態に切り替えてもよい。
【0044】
検出範囲制御部40は、センサ変位機構14を制御して、センサユニット12の位置および向きの少なくとも一方を変化させる。検出範囲制御部40は、死角検出部36が死角を検出した場合、死角検出部36により検出された死角が第1センサ22の検出範囲に含まれるようにセンサ変位機構14を動作させる。例えば、第1センサ22の検出軸Aを検出された死角に向けられるように、センサユニット12の位置および向きの少なくとも一方を変化させる。
【0045】
車両50の進行方向である前方に死角が存在する場合、第1センサ22の検出軸Aは、車両50の前方に向けられる。車両50の前方に車両が存在する場合、前方車両の左右輪の間の領域を第1センサ22が検出できるようにセンサユニット12の位置および向きの少なくとも一方を変化させる。前方車両の左右輪の間の領域を検出することで、前方車両の最低地上高よりも下の領域を通じて、前方車両よりも前に存在する歩行者などを検出できる。前方車両が車両50に対して左方向または右方向にずれて存在する場合、検出範囲制御部40は、センサユニット12の位置を車両50の中央から左方向または右方向にずらしてもよい。これにより、前方車両の左右輪の間の領域を第1センサ22が検出できるようにしてもよい。車両50の左前方や右前方に死角が存在する場合、第1センサ22の検出軸Aは、車両50の左前方や右前方に向けられる。つまり、第1センサ22の検出軸Aは、y方向に対して斜めとなる。
【0046】
検出範囲制御部40は、検出情報取得部34が取得する検出情報に基づいて、センサユニット12の位置および向きの少なくとも一方を変化させてもよい。例えば、第1センサ22がカメラである場合、第1センサ22が撮像した画像に基づいて、センサユニット12の位置および向きの少なくとも一方を変化させてもよい。例えば、第1センサ22が撮像した画像に歩行者の足などが含まれる場合、歩行者の足がより適切に撮像できるようにセンサユニット12の位置および向きの少なくとも一方を変化させてもよい。例えば、第1センサ22が撮像した画像からセンサユニット12に向かう飛び石などの物体が直近に検出された場合、センサユニット12の位置および向きの少なくとも一方を変化させることにより、検出された物体がセンサユニット12にぶつからないように緊急の回避動作を行ってもよい。
【0047】
検出範囲制御部40は、センサユニット12が何らかの物体に接触することを回避するために、センサユニット12の位置を変化させてもよい。検出範囲制御部40は、第1センサ22が検出した物体がセンサユニット12に衝突することが予測される場合、センサユニット12の位置を左右方向または前後方向に変化させることで、センサユニット12への物体の衝突を回避してもよい。
【0048】
図5は、車両用検出装置10の動作例を模式的に示す図である。
図5は、走行中の車両50の左前方に駐停車車両60があり、駐停車車両60の前方に死角42が存在する状況を示す。死角42は、車両50の運転者58から見たときに駐停車車両60の陰になって直接視認できない。このような死角42には、歩行者70が存在することがあり、歩行者70が死角42から車両50の走行経路に飛び出してくる可能性がある。車両用検出装置10は、このような死角42に存在する歩行者70を検出する。
【0049】
死角検出部36は、第2センサ54などの車載装置56から取得する車両情報に基づいて、駐停車車両60を検出し、駐停車車両60の陰となる死角42を検出する。検出範囲制御部40は、センサ変位機構14を動作させることにより、センサユニット12の位置および向きの少なくとも一方を変化させ、第1センサ22の検出軸Aが死角42に向かうようにする。第1センサ22は、例えば、駐停車車両60の最低地上高よりも下方の領域であって、駐停車車両60の左輪62と右輪64の間にある領域を通じて、死角42に存在する歩行者70を検出する。検出範囲制御部40は、第2センサ54などの車載装置56から取得した車両情報に含まれる通学路などの道路標識や横断歩道などの情報に基づいて、児童などの歩行者の飛び出しの可能性が高い場所に第1センサ22の検出軸Aが向けられるように、センサユニット12の位置および向きを制御してもよい。
【0050】
第1センサ22の検出結果は、例えば、車両50に搭載される機器に送信され、車両50に搭載される機器で利用される。第1センサ22の検出結果は、ドライブレコーダなどに送信され、ドライブレコーダによって記録されてもよい。第1センサ22の検出結果は、車両50に搭載されるディスプレイに表示されてもよい。第1センサ22の検出結果は、車両50の運転支援装置に送信されてもよい。運転支援装置は、第1センサ22の検出結果に基づいて車両50の運転者58に警告してもよい。運転支援装置は、第1センサ22の検出結果に基づいて、車両50の挙動を制御してもよい。
【0051】
図6は、実施の形態に係る検出方法の一例を示すフローチャートである。まず、車載装置56から車両情報を取得する(S10)。取得した車両情報に基づいて死角が検出される場合(S12のY)、センサユニット12を非保護状態にし(S16)、センサユニット12の位置および向きを調整し(S18)、センサユニット12から検出情報を取得する(S20)。S12にて死角が検出されない場合(S12のN)であって、取得した車両情報に基づいてセンサユニット12の保護が必要と判定される場合(S14のY)、センサユニット12を保護状態にする(S22)。S14にてセンサユニット12の保護が不要と判定される場合(S14のN)、S16~S20の処理を実行する。S10~S20の処理は、車両50の使用中に繰り返し実行される。なお、S18とS20の処理順序を入れ替えてもよく、取得した最新の検出情報に基づいてセンサユニット12の位置および向きが調整されてもよい。
【0052】
本実施の形態によれば、車両50の下部に設けたセンサユニット12によって、車両50の周辺に存在する周辺車両の最低地上高よりも下方の領域を通じて、周辺車両によって死角となる領域に存在する障害物を検出できる。これにより、死角に存在する衝突可能性のある障害物を早めに検出することができ、車両50の運転をより適切に支援できる。
【0053】
本実施の形態によれば、センサユニット12にカバーを設け、保護状態と非保護状態を切り替えることで、車両50の下部にセンサユニット12を設ける場合であっても、第1センサ22の汚れや破損を抑制できる。例えば、車両50の周辺に死角が検出される場合や車両50の走行速度が所定値以上である場合にセンサユニット12を非保護状態とすることで、車両の周辺に存在する障害物を早めに検出できる。一方、車両50の周辺に死角が検出されない場合や車両50の走行速度が所定値未満である場合にセンサユニット12を保護状態とすることで、第1センサ22の汚れや破損を抑制できる。
【0054】
本実施の形態によれば、車両50の下部に設けたセンサユニット12の汚れや破損のリスクを好適に抑制でき、センサユニット12を従来よりも低い位置、つまり、路面に近い位置に設置することも可能となる。車両50の、より低い位置に設置したセンサユニット12は、車両50が走行する路面が平地であるといった条件が揃えば、車両50の前方を走行する車両よりも先の車両(つまり、先先行車両)よりもさらに先の障害物の存在を最低地上高よりも下方の領域を通じて早期に検出可能となる。その結果、車両50の運転をより適切に支援できる。センサユニット12の検出結果はこれ単体に限られず、他の各種センサと適宜組み合わせて運転支援等に利用可能である。検出された障害物の情報は、ドライバの回避行動を促す警告装置や、制動灯の早期点灯におる停止可能性の予告、ブレーキの自動制御や自動運転車両などの衝突回避判断のための情報源などとして、広く利用可能である。
【0055】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各表示例に示す構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0056】
上述の実施の形態では、センサユニット12をフロントバンパー52の下部に設け、センサユニット12が車両の前方を検出する場合を例として説明したが、上述の実施の形態は、駐車時など車両が後方に走行する場合にも適用可能である。例えば、センサユニット12を後方に向けて回動させることにより、センサユニット12が車両の後方を検出するように動作してもよい。また、センサユニット12を前後2箇所に設けてもよいし、センサユニット12を車両50の後方に移動させる機構を設けてもよい。また、第2センサ54として、車両50の後方や側方を撮像するためのバックカメラやサイドカメラなどを組み合わせて用いてもよい。
【0057】
別の実施の形態において、車両用検出装置10は、センサ変位機構14および検出範囲制御部40を備えなくてもよい。別の実施の形態において、車両用検出装置10は、死角検出部36を備えなくてもよい。
【0058】
上述の実施の形態は、検出方法として提供されてもよい。本実施の形態のある態様は、車両に関する車両情報を取得するステップと、取得した車両情報に基づいて、車両の下部に設けられるセンサを被覆可能なカバーを変位させ、センサがカバーにより被覆される保護状態と、センサがカバーから露出する非保護状態とを切り替えるステップと、を備えることを特徴とする検出方法であってもよい。
【0059】
上述の実施の形態は、プログラムとして提供されてもよい。本実施の形態のある態様は、車両に関する車両情報を取得する機能と、取得した車両情報に基づいて、車両の下部に設けられるセンサを被覆可能なカバーを変位させ、センサがカバーにより被覆される保護状態と、センサがカバーから露出する非保護状態とを切り替える機能とをコンピュータに実現させることを特徴とするプログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…車両用検出装置、12…センサユニット、14…センサ変位機構、16…制御装置、22…第1センサ、24…第1カバー、26…第2カバー、28…カバー変位機構、32…車両情報取得部、34…検出情報取得部、36…死角検出部、38…保護状態切替部、40…検出範囲制御部、50…車両、54…第2センサ、56…車載装置。