IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2022-142078周波数割り当て方法、無線通信システムおよび周波数割り当てプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142078
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】周波数割り当て方法、無線通信システムおよび周波数割り当てプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/382 20150101AFI20220922BHJP
   H04W 16/14 20090101ALI20220922BHJP
   H04W 72/08 20090101ALI20220922BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20220922BHJP
【FI】
H04B17/382
H04W16/14
H04W72/08
H04W72/04 132
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042078
(22)【出願日】2021-03-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度 総務省「異システム間の周波数共用技術の高度化に関する研究開発」委託研究 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】チャルーンスック ブンパシット
(72)【発明者】
【氏名】安達 宏一
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067BB27
5K067CC02
5K067DD34
5K067EE02
5K067EE10
5K067JJ11
(57)【要約】
【課題】より効率的な無線通信を実現する。
【解決手段】周波数割り当て方法は、一次利用者が複数の周波数を利用する領域における無線情報の分布を表す電波環境マップ情報を用意することと、領域における二次利用者による一次利用者と同じ周波数の共用の可否を、複数の周波数割り当て時間のそれぞれにおいて判定することと、それぞれの周波数割り当て時間において、共用可能な周波数を二次利用者に割り当てることとを含む。判定することは、それぞれの周波数割り当て時間に含まれる最初の観測点における無線情報を取得することと、最初の観測点より後の観測点における無線情報を、電波環境マップ情報に基づいて推定することと、最初の観測点における無線情報と、後の観測点における無線情報とを、所定の閾値と比較して、それぞれの周波数割り当て時間における共用の可否を判定することとを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次利用者が複数の周波数を利用する領域における無線情報の分布を表す電波環境マップ情報を用意することと、
前記領域における二次利用者による前記一次利用者と同じ周波数の共用の可否を、複数の周波数割り当て時間のそれぞれにおいて判定することと、
前記それぞれの周波数割り当て時間において、共用可能な周波数を前記二次利用者に割り当てることと
を含み、
前記判定することは、
前記それぞれの周波数割り当て時間に含まれる複数の観測点のうちの最初の観測点における前記無線情報を取得することと、
前記複数の観測点のうちの前記最初の観測点より後の観測点における前記無線情報を、前記電波環境マップ情報に基づいて推定することと、
前記最初の観測点における前記無線情報と、前記後の観測点における前記無線情報とを、所定の閾値と比較して、前記それぞれの周波数割り当て時間における前記共用の可否を判定することと
を含む
周波数割り当て方法。
【請求項2】
請求項1に記載の周波数割り当て方法において、
前記領域は、複数のメッシュに分割されており、
前記複数のメッシュに複数のセンサがそれぞれ配置されており、
前記無線情報は、
前記複数のセンサのそれぞれが受信する前記複数の周波数の信号の強度を表す受信信号強度
を含み、
前記電波環境マップ情報を用意することは、
前記共用の可否を判定する前記それぞれの周波数割り当て時間より前に取得された前記無線情報に基づいて前記無線情報の分布を算出すること
を含む
周波数割り当て方法。
【請求項3】
請求項2に記載の周波数割り当て方法において、
前記それぞれの周波数割り当て時間は複数のスロットに分割されており、
前記複数のスロットのそれぞれは前記複数の観測点の少なくとも1つを含み、
前記判定することは、
前記複数の観測点のそれぞれにおける前記無線情報に基づいて、前記それぞれのスロットにおいて前記二次利用者が前記一次利用者に干渉を与える確率を表す干渉確率を算出することと、
前記それぞれのスロットにおける前記干渉確率に基づいて、前記それぞれの周波数割り当て時間における前記共用の可否を判定することと
を含む
周波数割り当て方法。
【請求項4】
請求項3に記載の周波数割り当て方法において、
前記複数のメッシュのそれぞれは複数のグリッドに分割されており、
前記それぞれのメッシュの
前記干渉確率を算出することは、
前記複数のグリッドのそれぞれにおけるフェージング変動およびシャドウィング誤差を推定することと、
前記フェージング変動と、前記シャドウィング誤差とに基づいて前記干渉確率を算出することと
を含む
周波数割り当て方法。
【請求項5】
請求項4に記載の周波数割り当て方法において、
前記割り当てることは、
前記割り当て可能な周波数のうち、割り当てることによって前記二次利用者が周波数を切り替える回数が所定の閾値に達しない周波数を割り当てること
を含む
周波数割り当て方法。
【請求項6】
一次利用者が複数の周波数を利用する領域における無線情報の分布を表す電波環境マップ情報を格納するスペクトラムデータベースと、
前記領域における二次利用者による前記一次利用者と同じ周波数の共用の可否を、複数の周波数割り当て時間のそれぞれにおいて判定し、前記それぞれの周波数割り当て時間において、共用可能な周波数を前記二次利用者に割り当てる演算装置と
を備え、
前記演算装置は、
前記それぞれの周波数割り当て時間に含まれる複数の観測点のうちの最初の観測点における前記無線情報を取得し、
前記複数の観測点のうちの前記最初の観測点より後の観測点における前記無線情報を、前記電波環境マップ情報に基づいて推定し、
前記最初の観測点における前記無線情報と、前記後の観測点における前記無線情報とを、所定の閾値と比較して、前記それぞれの周波数割り当て時間における前記共用の可否を判定する
無線通信システム。
【請求項7】
演算装置が実行することによって所定の処理を実現するための周波数割り当てプログラムであって、
前記処理は、
一次利用者が複数の周波数を利用する領域における無線情報の分布を表す電波環境マップ情報を用意することと、
前記領域における二次利用者による前記一次利用者と同じ周波数の共用の可否を、複数の周波数割り当て時間のそれぞれにおいて判定することと、
前記それぞれの周波数割り当て時間において、共用可能な周波数を前記二次利用者に割り当てることと
を含み、
前記判定することは、
前記それぞれの周波数割り当て時間に含まれる複数の観測点のうちの最初の観測点における前記無線情報を取得することと、
前記複数の観測点のうちの前記最初の観測点より後の観測点における前記無線情報を、前記電波環境マップ情報に基づいて推定することと、
前記最初の観測点における前記無線情報と、前記後の観測点における前記無線情報とを、所定の閾値と比較して、前記それぞれの周波数割り当て時間における前記共用の可否を判定することと
を含む
周波数割り当てプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は周波数割り当て方法と、この方法を用いる無線通信システムと、この方法で用いられる周波数割り当てプログラムとに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1(総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 データ通信課(Ministry of Internal Affairs and Communications in Japan)、「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果(2019年5月分)(Results of Counting Traffic on The Internet in Japan, May 2019)」、online、2019年9月12日発表、2021年2月24日検索、インターネット<http://www.soumu.go.jp/main_content/000644015.pdf>)が示すように、無線通信を行う端末の増加に伴い、周波数資源が枯渇する問題が指摘されている。
【0003】
この問題への対策として、周波数共用技術が知られている。周波数共用技術は、異システム間で複数の利用者が同じ周波数帯の供用を可能とする。周波数共有技術では、同じ周波数帯を共用する利用者を、第1システムの一次利用者と、第1システムから独立している第2システムの二次利用者とに区別する。一次利用者は、共用される周波数帯を優先的に利用できるように、その通信が空間的及び時間的に保護される。一次利用者には共用周波数帯を優先的に利用できる空間的な保護エリアが設置され、二次利用者はこの保護エリアの外で同じ共用周波数帯を利用できる。ただし、一次利用者が無線通信を行わない時間帯においては、二次利用者も保護エリア内で共用周波数帯を利用できる。
【0004】
言い換えれば、保護エリア内で一次利用者が共用周波数帯を利用して無線通信を開始するとき、この保護エリア内で共用周波数帯を利用して無線通信を行っていた二次利用者は、この共用周波数帯の利用を一時的に遮断される。二次利用者は、共用周波数帯とは別の周波数帯を用いることで保護エリア内での無線通信を継続してもよい。反対に、一次利用者が共用周波数帯を利用した無線通信を終了したとき、二次利用者は保護エリア内で共用周波数の利用を開始することができる。このとき、二次利用者は、それまで別の周波数帯を用いて行っていた無線通信を、共用周波数帯に切り替えて継続することもできる。ただし、二次利用者が利用する周波数帯の切り替えが発生すればするほど、二次利用者による無線通信の品質は劣化する。
【0005】
上記に関連して、非特許文献2(K. Sato, M. Kitamura, K. Inage, and T. Fujii、「Measurement-based Spectrum Database for Flexible Spectrum Management」、IEICE Trans. Commun.、vol. E98-B、no. 10、pp. 2004-2013、2015年10月発行)には、スペクトラムデータベースに係る記載がある。スペクトラムデータベースは、周波数共用技術における有効なソリューションの1つとして利用され得る。このソリューションにおいて、受信信号強度などに代表される無線情報の実測値などの情報が収集されてスペクトラムデータベースに蓄積される。蓄積された情報に基づいて、電波環境マップ情報が構築される。電波環境マップ情報は、信号強度などの分布を地図上に表すデータである。
【0006】
また、非特許文献3(M. Musashi, K. Adachi、「Spectrum Database Aided Prior Vacant Frequency Band Detection for Spectrum Sharing」、2020 International Conference on Artificial Intelligence in Information and Communication (ICAIIC)、pp. 262-266、Fukuoka、2020年2月発行)には、スペクトラムデータベースを用いて周波数を割り当てる手法に係る記載がある。この手法では、スペクトラムデータベースに蓄積された電波環境マップ情報に基づいて、時間を分割した単位時間ごとに、単位時間に含まれる複数の観測点の全てにおいて一次利用者と二次利用者の間で干渉が発生しないと推測される周波数を、事前に探知する。この探知の結果に基づいて、単位時間ごとに周波数の割り当てを行う。
【0007】
しかしながら、上記の技術には、以下の問題がある。すなわち、干渉の発生を判定する基準である干渉閾値を電波環境マップ情報が超える観測点が1つでもあれば、その観測点を含む単位時間における周波数共用を行わないので、単位時間において周波数共用が可能となる確率が低い。また、干渉が発生する原因となるフェージング変動とシャドウィング誤差を考慮していないので、周波数の共用を実行している単位時間の間に干渉が発生する可能性が高い。
【0008】
上記に関連して、非特許文献4(P. Dent, G.E. Bottomley, and T. Croft、「Jakes Fading Model Revisited」、Electronics Letters、vol.29、Issue 13、pp. 1162-1163、1993年6月24日)には、レイリー分布に従うJakesフェージングモデルに関する記載が開示されている。
【0009】
また、非特許文献5(H. Claussen、「Efficient Modelling of Channel Maps with Correlated Shadow Fading in Mobile Radio Systems」、2005 IEEE 16th International Symposium on Personal、Indoor and Mobile Radio Communications、pp512-516、Berlin、2005年9月)には、空間相関を持つシャドウィングに関する記載が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 データ通信課(Ministry of Internal Affairs and Communications in Japan)、「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果(2019年5月分)(Results of Counting Traffic on The Internet in Japan, May 2019)」、online、2019年9月12日発表、2021年2月24日検索、インターネット<http://www.soumu.go.jp/main_content/000644015.pdf>
【非特許文献2】K. Sato, M. Kitamura, K. Inage, and T. Fujii、「Measurement-based Spectrum Database for Flexible Spectrum Management」、IEICE Trans Commun.、vol. E98-B、no. 10、pp. 2004-2013、2015年10月発行
【非特許文献3】M. Musashi, K. Adachi、「Spectrum Database Aided Prior Vacant Frequency Band Detection for Spectrum Sharing」、2020 International Conference on Artificial Intelligence in Information and Communication (ICAIIC)、pp. 262-266、Fukuoka、2020年2月発行
【非特許文献4】P. Dent, G.E. Bottomley, and T. Croft、「Jakes Fading Model Revisited」、Electronics Letters、vol.29、Issue 13、pp. 1162-1163、1993年6月24日
【非特許文献5】H. Claussen、「Efficient Modelling of Channel Maps with Correlated Shadow Fading in Mobile Radio Systems」、2005 IEEE 16th International Symposium on Personal、Indoor and Mobile Radio Communications、pp512-516、Berlin、2005年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高い信頼性の無線通信を実現するための周波数割り当て方法、無線通信システムおよび周波数割り当てプログラムを提供する。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0013】
一実施の形態によれば、周波数割り当て方法は、一次利用者(PU)が複数の周波数(f)を利用する領域(9)における無線情報の分布を表す電波環境マップ情報を用意すること(S2)と、領域(9)における二次利用者(SU)による一次利用者(PU)と同じ周波数(f)の共用の可否を、複数の周波数割り当て時間のそれぞれにおいて判定すること(S4、S5)と、それぞれの周波数割り当て時間において、共用可能な周波数(f)を二次利用者(SF)に割り当てること(S6)とを含む。判定すること(S5)は、それぞれの周波数割り当て時間に含まれる複数の観測点のうちの最初の観測点における無線情報を取得することと、複数の観測点のうちの最初の観測点より後の観測点における無線情報を、電波環境マップ情報に基づいて推定することと、最初の観測点における無線情報と、後の観測点における無線情報とを、所定の閾値と比較して、それぞれの周波数割り当て時間における共用の可否を判定すること(S51、S54)とを含む。
【0014】
一実施の形態によれば、無線通信システム(1)は、スペクトラムデータベース(3)と、演算装置(21)とを備える。スペクトラムデータベース(3)は、一次利用者(PU)が複数の周波数(f)を利用する領域(9)における無線情報の分布を表す電波環境マップ情報を格納する。演算装置(21)は、領域(9)における二次利用者(SU)による一次利用者(PU)と同じ周波数(f)の共用の可否を、複数の周波数割り当て時間のそれぞれにおいて判定し、それぞれの周波数割り当て時間において、共用可能な周波数(f)を二次利用者(SU)に割り当てる。演算装置(21)は、それぞれの周波数割り当て時間に含まれる複数の観測点のうちの最初の観測点における無線情報を取得し、複数の観測点のうちの最初の観測点より後の観測点における無線情報を、電波環境マップ情報に基づいて推定し、最初の観測点における無線情報と、後の観測点における無線情報とを、所定の閾値と比較して、それぞれの周波数割り当て時間における共用の可否を判定する。
【0015】
一実施の形態によれば、周波数割り当てプログラム(221)は、演算装置(21)が実行することによって所定の処理を実現するための周波数割り当てプログラム(221)である。この処理は、一次利用者(PU)が複数の周波数(f)を利用する領域(9)における無線情報の分布を表す電波環境マップ情報を用意すること(S2)と、領域(9)における二次利用者(SU)による一次利用者(PU)と同じ周波数(f)の共用の可否を、複数の周波数割り当て時間のそれぞれにおいて判定すること(S4、S5)と、それぞれの周波数割り当て時間において、共用可能な周波数(f)を二次利用者(SF)に割り当てること(S6)とを含む。判定すること(S5)は、それぞれの周波数割り当て時間に含まれる複数の観測点のうちの最初の観測点における無線情報を取得することと、複数の観測点のうちの最初の観測点より後の観測点における無線情報を、電波環境マップ情報に基づいて推定することと、最初の観測点における無線情報と、後の観測点における無線情報とを、所定の閾値と比較して、それぞれの周波数割り当て時間における共用の可否を判定すること(S51、S54)とを含む。
【発明の効果】
【0016】
一実施の形態によれば、高い信頼性の無線通信を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Aは、一実施の形態による無線通信システムの一構成例を示す図である。
図1B図1Bは、一実施の形態によるメッシュの一構成例を示す図である。
図2図2は、一実施の形態によるサーバの一構成例を示すブロック回路図である。
図3図3は、一実施の形態による周波数割り当て方法の一構成例を示すフローチャートである。
図4図4は、一実施の形態による無線通信システムの一動作例を説明するための図である。
図5A図5Aは、一実施の形態による周波数割り当て方法の一構成例を示すフローチャートの前半部分である。
図5B図5Bは、一実施の形態による周波数割り当て方法の一構成例を示すフローチャートの後半部分である。
図6図6は、一実施の形態による周波数割り当て時間の一構成例を示す図である。
図7図7は、一実施の形態による干渉閾値を説明するための図である。
図8図8は、一実施の形態によるフェージング電力とそのCDFとの一関係例を示すグラフである。
図9図9は、一実施の形態によるシャドウィング誤差電力の分布とCDFとの一関係例を説明するためのグラフである。
図10図10は、一実施の形態帯による周波数を割り当てる方法について説明するための図である。
図11図11は、一実施の形態帯による周波数を割り当てる方法について説明するための図である。
図12図12は、一実施の形態帯による周波数を割り当てる方法について説明するための図である。
図13図13は、一実施の形態帯による周波数を割り当てる方法について説明するための図である。
図14A図14Aは、一実施の形態におけるシミュレーション諸元の一例を示す表である。
図14B図14Bは、一実施の形態におけるシミュレーション諸元の一例を示す表である。
図14C図14Cは、一実施の形態におけるシミュレーション諸元の一例を示す表である。
図15図15は、一実施の形態におけるシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図16図16は、一実施の形態におけるシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図17図17は、一実施の形態におけるシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明による周波数割り当て方法、無線通信システムおよび周波数割り当てプログラムを実施するための形態を以下に説明する。
【0019】
(実施の形態)
一実施の形態では、上述した非特許文献2(K. Sato, M. Kitamura, K. Inage, and T. Fujii、「Measurement-based Spectrum Database for Flexible Spectrum Management」、IEICE Trans Commun.、vol. E98-B、no. 10、pp. 2004-2013、2015年10月発行)によるスペクトラムデータベースを用いた非特許文献3(M. Musashi, K. Adachi、「Spectrum Database Aided Prior Vacant Frequency Band Detection for Spectrum Sharing」、2020 International Conference on Artificial Intelligence in Information and Communication (ICAIIC)、pp. 262-266、Fukuoka、2020年2月発行)による周波数割り当ての手法を改良して、高い信頼性の無線通信を実現する。具体的には、二次利用者から一次利用者への与干渉を低減し、二次利用者が周波数を切り替える回数を抑制することによって、周波数帯を共用する確率を向上させる。以降、周波数帯を単に周波数と記載する場合がある。
【0020】
図1Aに示すように、一実施形態による無線通信システム1は、少なくとも、サーバ2と、スペクトラムデータベース3とを備える。図1Aの例では、スペクトラムデータベース3がサーバ2に含まれているが、一実施の形態はこの例に限定されず、スペクトラムデータベース3はサーバ2の外部に設けられていてもよい。
【0021】
スペクトラムデータベース3は、領域9に配置された複数のセンサ4のそれぞれから収集された無線情報に基づいて生成された電波環境マップ情報を格納する。スペクトラムデータベース3は、無線情報をさらに格納してもよい。無線情報は、例えば、複数のセンサ4が受信した信号の強度を表す受信信号強度情報を含む。この信号の周波数は、一次利用者が利用する周波数である。一次利用者が複数の周波数を利用する場合は、無線情報は、これら複数の周波数のそれぞれを有する複数の信号の受信信号強度情報を含む。
【0022】
領域9は、複数のメッシュ90に分割されている。図1Aの例では、それぞれのメッシュ90にセンサ4が1つずつ配置されている。図1Aの例では、それぞれのメッシュ90は一辺がxmeshの正方形であるが、一実施の形態はこの例に限定されない。
【0023】
図1Bに示すように、それぞれのメッシュ90は、複数のグリッド900に分割されている。図1Bの例では、それぞれのメッシュ90に含まれる複数のグリッド900の1つに1つのセンサ4が配置されている。一実施の形態において、それぞれのメッシュ90における、センサ4が配置されているグリッド900の位置は、同じである。図1Bの例では、それぞれのグリッド900は一辺がxgridの正方形であるが、一実施の形態はこの例に限定されない。
【0024】
図2に示すように、サーバ2はコンピュータを含んでいてもよい。すなわち、サーバ2は、バス20と、演算装置21と、記憶装置22と、インタフェース23と、通信装置24とを備える。演算装置21、記憶装置22、インタフェース23および通信装置24は、バス20に、互いに通信可能に接続されている。
【0025】
記憶装置22は、周波数割り当てプログラム221と、スペクトラムデータベース3とを格納している。周波数割り当てプログラム221は、インタフェース23または通信装置24を介して外部から受信されて記憶装置22に格納されてもよいし、記録媒体220から読み出されて記憶装置22に格納されてもよい。
【0026】
演算装置21は、周波数割り当てプログラム221を実行することによって、一実施の形態による周波数割り当て方法の処理を実現する。
【0027】
図3のフローチャートを参照して、一実施の形態による周波数割り当て方法の一構成例について説明する。一実施の形態による周波数割り当て方法では、一次利用者PU、PU、PUが複数の周波数f、f、fを利用する領域9において、二次利用者SUが同じ周波数f、f、fのいずれかを共用できるとき、共用可能な周波数を二次利用者SUに割り当てる。
【0028】
なお、一実施の形態において、一次利用者PU、PU、PUの総数N(PU)は3であるが、一実施の形態はこの例に限定されない。一次利用者PU、…、PUN(PU)を区別しないとき、これらを一次利用者PUと総称する。一次利用者PUが利用する周波数f、f、fの総数は、一次利用者PUの総数N(PU)と同じであってもよい。周波数f、…、fN(PU)を区別しないとき、これらを周波数fと総称する。言い換えれば、1からN(PU)までの整数iにおいて、一次利用者PUは周波数fを利用してもよい。二次利用者SUの総数N(SU)は1であるが、一実施の形態はこの例に限定されない。二次利用者SU、…、SUN(SU)を区別しないとき、これらを二次利用者SUと総称する。
【0029】
図4に示すように、一次利用者PU、PU、PUは領域9に配置されており、図示しない装置との間で無線通信を行う。また、二次利用者SUは、領域9の内側の移動経路8A、8Bを移動しながら、図示しない別の装置との間で無線通信を行う。二次利用者SUが無線通信および/または移動を開始する前に、周波数割り当て方法が開始されてもよい。
【0030】
周波数割り当て方法が開始されると、ステップS1が実行される。ステップS1において、スペクトラムデータベース3がセンサ4から無線情報を収集する。スペクトラムデータベース3は、サーバ2の演算装置21の制御下で無線情報を収集してもよい。無線情報は、サーバ2の通信装置24を介してセンサ4からスペクトラムデータベース3に収集されてもよい。一実施の形態において、無線情報は、周波数fのそれぞれについてセンサ4が受信した信号の強度を表す受信信号強度情報を含む。
【0031】
受信信号強度情報が表す受信信号強度は、以下の(1)式のように定義される。
REM,i=P+G+G+P+PSH …(1)
上記の(1)式において、「PREM,i」は、i番目の一次利用者PUから送信された送信信号をセンサ4が受信した受信信号の受信電力であり、その単位はdBmである。「P」は、送信信号の送信電力でありその単位はdBmである。「G」は、送信機のアンテナ利得である。「G」は、受信機のアンテナ利得である。「P」は、送信機と受信機の間のパスロスであり、その単位はdBmである。「PSH」は、シャドウィング電力であり、その単位はdBmである。
【0032】
一実施の形態では、非特許文献5(H. Claussen、「Efficient Modelling of Channel Maps with Correlated Shadow Fading in Mobile Radio Systems」、2005 IEEE 16th International Symposium on Personal、Indoor and Mobile Radio Communications、pp512-516、Berlin、2005年9月)に開示されている空間相関を持つシャドウィングを考慮する。ここで、各グリッド900におけるシャドウィングの値は、そのグリッド900の近傍に配置されている8個のグリッド900との相関による計算から得られる。各メッシュ90に含まれるグリッド900から、シャドウィングの最大値と最小値の差を取り、全てのメッシュ90における差を用いて分布を算出する。
【0033】
ステップS1の後に、ステップS2が実行される。ステップS2において、サーバ2の演算装置21が無線情報に基づいて干渉分布のモデル化を行う。このモデル化は、事前に計算機シミュレーションにより作成してもよいし、伝搬環境推定式などから作成してもよい。モデル化された干渉分布は、領域9におけるそれぞれの周波数fにおける無線情報の分布を表す電波環境マップ情報を含む。一例として、センサ4の位置で得られた無線情報から、センサ4の間の任意の位置における無線情報を推定することによって、電波環境マップ情報が得られる。
【0034】
なお、ステップS1とステップS2の処理は、二次利用者SUが移動を開始する前に実行されてもよい。
【0035】
ステップS2の後に、ステップS3が実行される。ステップS3において、サーバ2の演算装置21が、二次利用者SU1の移動経路8A、8Bを推定する。一実施の形態において、演算装置21は、二次利用者SUの移動経路8A、8Bを把握している。一例として、二次利用者SUは、サーバ2に接続されたカーナビゲーションシステムによって設定された移動経路8A、8Bに沿って移動する。演算装置21は、二次利用者SUの所定の時刻における位置を推定することもできる。
【0036】
ステップS3の後に、ステップS4が実行される。ステップS4において、サーバ2の演算装置21は、センサ4から現時刻の無線情報を取得する。この時刻は、その時注目している周波数割り当て時間の開始時刻である。取得された無線情報は、スペクトラムデータベース3に格納されてもよい。
【0037】
ここで取得される現時刻の無線情報に含まれる受信信号強度情報が表す受信信号強度は、以下の(2)式のように定義される。
r,i,j=P+G+G+P+PSH+P …(2)
上記の(2)式において、「Pr,i,j」は、j番目の二次利用者SUが送信した送信信号をi番目の一次利用者PUが受信した受信信号の受信電力であり、その単位はdBmである。「P」は、フェージング電力であり、その単位はdBmである。「G」、「G」、「P」および「PSH」は、上記の(1)式で説明したとおりである。
【0038】
一実施の形態では、非特許文献4(P. Dent, G.E. Bottomley, and T. Croft、「Jakes Fading Model Revisited」、Electronics Letters、vol.29、Issue 13、pp. 1162-1163、1993年6月24日)に開示されている、レイリー分布に従うJakesフェージングモデルを考慮する。ここで、無線信号のランダムな到来方向と位相を用いて、フェージングの変動分布を算出する。
【0039】
ステップS4の後に、ステップS5が実行される。ステップS5において、サーバ2の演算装置21は、周波数割り当て時間ごとに、二次利用者SUによる、一次利用者PU、PU、PUと同じ周波数の共用の可否を判定する。
【0040】
図5A図5Bのフローチャートを参照して、一実施の形態によるステップS5の一構成例について説明する。
【0041】
図3のステップS5が開始すると、図5AのステップS51が実行される。ステップS51において、サーバ2の演算装置21は、現在注目している周波数割り当て時間の最初のスロットの最初の観測点の無線情報が閾値より小さいかどうかを判定する。図6に示すように、それぞれの周波数割り当て時間は、Nslot個のスロットに分割されている。それぞれの周波数割り当て時間の長さはTallocであり、それぞれのスロットの長さはTslotであり、TallocはTslotとNslotとを掛け算した積に等しい。さらに、それぞれのスロットには、図示しない複数の観測点が時間軸上に配置されている。任意の連続する2つの観測点の間の時間間隔は同じであることが好ましい。
【0042】
一例として、シミュレーション諸元として後に示すように、それぞれの周波数割り当て時間の長さTallocは5分であり、それぞれの周波数割り当て時間のスロット数Nslotは5であり、それぞれのスロットの長さTslotは1分である。また、それぞれのスロットに含まれる観測点の数Nalgは60であり、任意の隣接する2つの観測点の間の時間は1秒である。
【0043】
サーバ2の演算装置21は、ステップS4において、現在注目している周波数割り当て時間が開始するときの無線情報を取得している。言い換えれば、現在注目している周波数割り当て時間の最初のスロットの最初の観測点における無線情報はステップS4で取得されている。演算装置21は、この無線情報が閾値より小さいかどうかを判定することによって、この時刻において周波数共用が可能かどうかを判定する。
【0044】
具体的には、現在注目している周波数割り当て時間の最初のスロットの最初の観測点の無線情報に含まれる受信信号強度が所定の干渉閾値以上である場合(No)は、二次利用者SUから一次利用者PU、PU、PUへの与干渉は十分に大きく、したがってこの観測点における周波数共用は不可と判定され、処理は図5BのステップS52へ進む。反対に、受信信号強度が干渉閾値より小さい場合(Yes)は、この観測点における周波数共用は可能と判定され、処理は図5AのステップS53へ進む。
【0045】
なお、二次利用者SUが複数である場合は、二次利用者SUから一次利用者PUへの与干渉は、それぞれの二次利用者SUから一次利用者PUへの与干渉を合成した合成与干渉であり、以下の「数1」式のように定義される。
【数1】
上記の「数1」式において、「I」は二次利用者SUから一次利用者PUへの合成与干渉であり、「N(SU)」は二次利用者SUの総数であり、「P」はi番目の二次利用者SUから一次利用者PUへの与干渉である。
【0046】
図7図8図9を参照して干渉閾値について説明する。一実施の形態では、注目している時刻における二次利用者SUの位置の無線情報を電波環境マップ情報からREM(Radio Environment Map:電波環境マップ)情報電力として読み出すことができる。図7に示すように、干渉閾値からこのREM情報電力を引き算した差分が、周波数共用が可能となる場合の、フェージング変動ΔPFAとシャドウィング誤差ΔPSHとの合計における許容範囲である。
【0047】
図8は、一実施の形態によるフェージング電力とそのCDF(Cumulative Distribution Function:累積分布関数)との一関係例を示すグラフである。一実施の形態において、この関係は既知である。フェージング電力のCDFを所定の確率に固定することによって、対応するフェージング変動ΔPFAが得られる。干渉閾値からフェージング変動ΔPFAを引き算することによって、周波数共用が可能となる場合のシャドウィング誤差ΔPSHの許容範囲が得られる。なお、シャドウィングの誤差幅を可能な限り大きく観測するため、フェージング電力のCDFは、事前にモデル化したフェージングの変動分布(CDF)に基づき最大変動電力より小さい電力となる確率の範囲に基づいて決定する。例えば、最大変動電力より数dB小さい電力となる確率範囲に設定することで、シャドウィング誤差による影響をより考慮するようになる。
【0048】
図9は、一実施の形態によるシャドウィング誤差電力の分布とそのCDFとの一関係例を説明するためのグラフである。一実施の形態において、この関係は既知である。シャドウィング誤差ΔPSHの許容範囲に基づいて、シャドウィング誤差電力の累積分布関数CDFSHが得られる。
【0049】
したがって、実際のシャドウィング電力PSHがシャドウィング誤差ΔPSHより大きいとき、二次利用者SUから一次利用者PUへの干渉が発生する。このことは、以下の(3)式のように示される。
p(PSH>ΔPSH)=1-CDFSH …(3)
上記の(3)式において、「p(x)」は事象「x」の確率を表し、「PSH」は実際のシャドウィング電力を表し、「ΔPSH」はシャドウィング誤差を表し、「CDFSH」はシャドウィング誤差電力の累積分布関数を表す。言い換えれば、ΔPSHが小さければ小さいほど干渉が発生する確率は高く、反対にΔPSHが大きければ大きいほど干渉が発生する確率は低い。
【0050】
図5BのステップS52において、サーバ2の演算装置21は、現在注目している観測点を含むスロットにおいて周波数共用は不可と記憶装置22に記録する。このとき、あるスロットに含まれる観測点の少なくとも1つにおいて周波数共用が不可であれば、そのスロットの全体において周波数共用は不可と判定されることに注目されたい。ステップS52の次に、処理はステップS58へ進む。
【0051】
図5AのステップS53において、サーバ2の演算装置21は、現在注目している観測点の次の観測点に注目する。この観測点は、現在注目している周波数割り当て時間の最初のスロットの2番目の観測点である。
【0052】
ステップS53の後に、図5BのステップS54が実行される。ステップS54において、サーバ2の演算装置21は、現在注目している観測点の無線情報が閾値より小さいかどうかを判定する。この判定は、図5AのステップS51の判定と同様に行われるが、以下の点が異なる。すなわち、ステップS51では判定を行う時点(厳密には直前)に取得した無線情報と干渉閾値とを比較したが、ステップS54では過去に取得した無線情報と干渉閾値とを比較する。言い換えれば、ステップS54で行われる判定で注目している観測点は、判定が行われる周波数割り当て時間の最初の観測点の時刻から見て未来の観測点である。具体的には、スペクトラムデータベース3に格納されている電波環境マップ情報に含まれる無線情報と干渉閾値とを比較する。無線情報が干渉閾値以上である場合(No)には、処理はステップS52に進む。反対に、無線情報が閾値より小さい場合(Yes)には、処理はステップS55に進む。
【0053】
ステップS55において、サーバ2の演算装置21は、現在注目している観測点が、現在注目しているスロットの最後の観測点であるかどうかを判定する。最後の観測点ではない場合(No)には、処理はステップS56へ進む。最後の観測点である場合(Yes)には、処理はステップS57へ進む。
【0054】
ステップS56において、サーバ2の演算装置21は、現在注目している観測点の次の観測点に注目する。ステップS56の後に、処理はステップS54に戻る。処理がステップS54、S55、S56を繰り返し、現在注目しているスロットに含まれる観測点の中で1つでも無線情報が閾値以上である場合(No)には、処理はステップS54からステップS52へ進み、現在注目しているスロットの全体において周波数共用が不可と判定される。反対に、現在注目しているスロットに含まれる観測点の全てにおいて無線情報が閾値より小さい場合には、処理はステップS56からステップS57へ進む。
【0055】
ステップS57において、サーバ2の演算装置21は、干渉確率を算出し、注目しているスロットは周波数共用可能であると記憶装置22に記録する。干渉確率の算出は、上記の(3)式のように行われる。
【0056】
ステップS58において、サーバ2の演算装置21は、現在注目しているスロットが、現在注目している周波数割り当て時間の最後のスロットであるかどうかを判定する。最後のスロットではない場合(No)には、処理はステップS59へ進む。反対に、最後のスロットである場合(Yes)には、図3のステップS5は終了し、処理は図3のステップS6へ進む。
【0057】
ステップS59において、サーバ2の演算装置21は、現在注目しているスロットの次のスロットに注目し、さらにその最初の観測点に注目する。ステップS59の後に、処理はステップS54に戻る。処理がステップS54、S55、S57、S58、S59を繰り返すことで、現在注目している周波数割り当て時間に含まれる全てのスロットについて、周波数の共用の可否を判定することができる。その後、処理は図3のステップS6へ進む。
【0058】
ステップS5で周波数の共用の可否を判定するとき、注目している周波数割り当て時間に含まれる観測点のうち、最初の観測点と、その後の観測点とでは、判定の内容が異なることに注目されたい。すなわち、最初の観測点においては、上記の(3)式で定義された受信信号強度を含む無線情報と干渉閾値とを比較して判定を行う。その一方で、その後の観測点においては、上記の(2)式で定義された受信信号強度を含む無線情報を用いて算出された電波環境マップ情報と干渉閾値とを比較して判定を行う。
【0059】
図3のステップS6において、サーバ2の演算装置21は、周波数の割り当てを行う。周波数の割り当ては、周波数割り当て時間ごとに、その周波数割り当て時間に含まれるスロットの周波数共用の可否の判定に基づいて行われる。
【0060】
具体的には、一次利用者PU~PUN(PU)が利用する周波数f~fN(PU)のうち、現在注目している周波数割り当て時間に含まれるいずれかのスロットで共用が可能と判定された周波数が、その周波数割り当て時間において二次利用者SUが共用するように割り当てられる。ここで、共用が可能と判定された周波数が複数ある場合には、周波数切り替え回数と、干渉確率とを考慮していずれかの周波数を選択して割り当てることについて、図10図11図12図13を参照して説明する。
【0061】
共用が可能と判定された周波数の中から割り当てる周波数を、周波数切り替え回数を考慮して選択することについて説明する。ある周波数割り当て時間において共用可能な周波数を割り当てられた二次利用者SUは、この周波数割り当て時間に含まれるスロットのうちの、共用が可能であるスロットにおいては周波数を共用し、共用が不可であるスロットにおいては周波数を共用しない。このとき、連続する2つのスロットの一方で共用が可能であり、他方で共用が不可である場合には、これら2つのスロットの間で周波数の使用と不使用の切り替えが発生する。このような切り替えが発生する回数を周波数切り替え回数と呼ぶ。このような切り替えが発生すると、二次利用者SUの無線通信の効率が下がるので、周波数切り替え回数がより少ない周波数を選択することが好ましい。一例として、1つの周波数割り当て時間における周波数切り替え回数を0または1に抑える場合について説明する。言い換えれば、周波数切り替え回数が閾値より小さい周波数を選択し、この閾値が2である場合について説明する。
【0062】
図10は、注目している周波数割り当て時間が5つのスロットに分割されており、その直前の周波数割り当て時間の最後のスロットでは周波数f、f、fのいずれもが共用されていなかった例を示している。
【0063】
図10の例では、周波数fを共用することが、第1、第2、第3のスロットでは可能であり、第4、第5のスロットでは不可である。ここで、第1、第2のスロットでは干渉確率が比較的低く、第3のスロットでは干渉確率が比較的高い。この場合、周波数割り当て時間に周波数fを割り当てると、第1のスロットの開始時に共用しない状態から共用する状態への切り替えが発生し、さらに、第4スロットの開始時に共用する状態から共用しない状態への切り替えが発生し、他のスロットの開始時には切り替えが発生しない。したがって、周波数fを共用する場合の周波数切り替え回数は2である。
【0064】
同様に、図10の例では、周波数fを共用することが、第1、第2のスロットでは不可であり、第3、第4、第5のスロットでは可能である。ここで、第3、第4、第5のスロットでは干渉確率が比較的低い。この場合、周波数割り当て時間に周波数fを割り当てると、第3スロットの開始時に共用しない状態から共用する状態への切り替えが発生し、他のスロットの開始時には切り替えが発生しない。したがって、周波数fを共用する場合の周波数切り替え回数は1である。
【0065】
同様に、図10の例では、周波数fを共用することが、第1、第5のスロットでは不可であり、第2、第3、第4のスロットでは可能である。ここで、第2、第3、第4のスロットでは干渉確率が比較的低い。この場合、周波数割り当て時間に周波数fを割り当てると、第2のスロットの開始時に共用しない状態から共用する状態への切り替えが発生し、さらに、第5スロットの開始時に共用する状態から共用しない状態への切り替えが発生し、他のスロットの開始時には切り替えが発生しない。したがって、周波数fを共用する場合の周波数切り替え回数は2である。
【0066】
割り当てる周波数を選択するときに周波数切り替え回数を考慮する場合、図10の例では、周波数切り替え回数が閾値より少ない周波数fが割り当てられる。
【0067】
図11は、注目している周波数割り当て時間が5つのスロットに分割されており、その直前の周波数割り当て時間の最後のスロットでは周波数fが共用されていた例を示している。
【0068】
図11の例では、周波数fを共用することが、第1、第2、第3のスロットでは可能であり、第4、第5のスロットでは不可である。ここで、第1、第2のスロットでは干渉確率が比較的低く、第3のスロットでは干渉確率が比較的高い。この場合、周波数割り当て時間に周波数fを割り当てると、第4スロットの開始時に共用する状態から共用しない状態への切り替えが発生し、他のスロットの開始時には切り替えが発生しない。したがって、周波数fを共用する場合の周波数切り替え回数は1である。
【0069】
図11の例では、周波数fを共用することが、第1、第2のスロットでは不可であり、第3、第4、第5のスロットでは可能である。ここで、第3、第4、第5のスロットでは干渉確率が比較的低い。この場合、周波数割り当て時間に周波数fを割り当てると、第1のスロットの開始時に周波数fを共用する状態から共用しない状態への切り替えが発生し、第3スロットの開始時に共用しない状態から共用する状態への切り替えが発生し、他のスロットの開始時には切り替えが発生しない。したがって、周波数fを共用する場合の周波数切り替え回数は2である。
【0070】
図11の例では、周波数fを共用することが、第1、第5のスロットでは不可であり、第2、第3、第4のスロットでは可能である。ここで、第2、第3、第4のスロットでは干渉確率が比較的低い。この場合、周波数割り当て時間に周波数fを割り当てると、第1のスロットの開始時に周波数fを共用する状態から共用しない状態への切り替えが発生し、第2のスロットの開始時に共用しない状態から共用する状態への切り替えが発生し、さらに、第5スロットの開始時に共用する状態から共用しない状態への切り替えが発生し、他のスロットの開始時には切り替えが発生しない。したがって、周波数fを共用する場合の周波数切り替え回数は3である。
【0071】
割り当てる周波数を選択するときに周波数切り替え回数を考慮する場合、図11の例では、周波数切り替え回数が閾値より少ない周波数fが割り当てられる。
【0072】
共用が可能と判定された周波数の中から割り当てる周波数を、周波数切り替え回数に加えて干渉確率も考慮して選択することについて説明する。一例として、このような場合、まず、周波数切り替え回数が閾値以上の周波数を除外し、残った周波数の中から、干渉確率が比較的高いスロットの数がより少ない周波数を選択して周波数割り当て時間に割り当てる。
【0073】
図12は、注目している周波数割り当て時間が5つのスロットに分割されており、その直前の周波数割り当て時間の最後のスロットでは周波数fが共用されていた例を示している。
【0074】
図12の例では、周波数fを共用することが全てのスロットで可能である。ここで、第1、第3、第4、第5のスロットでは干渉確率が比較的低く、第2のスロットでは干渉確率が比較的高い。周波数切り替え回数は、第1のスロットの開始時の1回である。
【0075】
図12の例では、周波数fを共用することが全てのスロットで可能である。ここで、第1、第2、第5のスロットでは干渉確率が比較的低く、第3、第4のスロットでは干渉確率が比較的高い。周波数切り替え回数はゼロ回である。
【0076】
図12の例では、周波数fを共用することが、第1、第5のスロットでは不可であり、第2、第3、第4のスロットでは可能である。ここで、第2、第3、第4のスロットでは干渉確率が比較的低い。周波数切り替え回数は、第1、第2、第5のスロットの開始時の3回である。
【0077】
割り当てる周波数を選択するときに、周波数切り替え回数と干渉確率とを考慮する場合、図12の例では、まず、周波数f、f、fのうち、周波数切り替え回数が閾値より少ない周波数f、fが候補に残る。次に、周波数f、fのうち、干渉確率が比較的高いスロットの数がより少ない周波数fが選択されて、注目している周波数割り当て時間に割り当てられる。
【0078】
図13は、注目している周波数割り当て時間が5つのスロットに分割されており、その直前の周波数割り当て時間の最後のスロットでは周波数fが共用されていた例を示している。
【0079】
図13の例では、周波数fを共用することが全てのスロットで可能である。ここで、第1、第4、第5のスロットでは干渉確率が比較的低く、第2、第3のスロットでは干渉確率が比較的高い。周波数切り替え回数は、第1のスロットの開始時の1回である。
【0080】
図13の例では、周波数fを共用することが、第1、第2、第3のスロットでは可能であり、第4、第5のスロットでは不可である。ここで、第1、第2のスロットでは干渉確率が比較的低く、第3のスロットでは干渉確率が比較的高い。周波数切り替え回数は、第4のスロットの開始時の1回である。
【0081】
図13の例では、周波数fを共用することが、第1、第5のスロットでは不可であり、第2、第3、第4のスロットでは可能である。ここで、第2、第3、第4のスロットでは干渉確率が比較的低い。周波数切り替え回数は、第1、第2、第5のスロットの開始時の3回である。
【0082】
割り当てる周波数を選択するときに、周波数切り替え回数と干渉確率とを考慮する場合、図12の例では、まず、周波数f、f、fのうち、周波数切り替え回数が閾値より少ない周波数f、fが候補に残る。次に、周波数f、fのうち、干渉確率が比較的高いスロットの数がより少ない周波数fが選択されて、注目している周波数割り当て時間に割り当てられる。
【0083】
発明者らは、上記に説明した一実施の形態としての提案手法による周波数割り当て方法、無線通信システム1および周波数割り当てプログラム221の有用性を、コンピュータシミュレーションによって確認した。一実施の形態に対する比較対象としての関連技術では、注目している周波数割り当て時間の開始時刻における判定のみを用いてその周波数割り当て時間に割り当てる周波数を決定する。このコンピュータシミュレーションで用いられる諸元は、図14A図14B図14Cのとおりである。
【0084】
このコンピュータシミュレーションにおける評価指標は、共用確率、干渉確率および周波数切り替え回数である。
【0085】
評価指標としての干渉確率は、一次利用者PUが無線通信を行っている間に二次利用者SUが一次利用者PUと同じ周波数で無線通信を行った際に無線情報が干渉閾値を超過する確率である。したがって、干渉確率はより低いことが好ましい。図15は、シミュレーション結果の一例として、一実施の形態としての提案手法による干渉確率を表すグラフG11と、比較対象としての関連技術による干渉確率を表すグラフG12とを示している。図15から読み取れるように、提案手法では関連技術に対して干渉確率を相対的に82.2%抑制できている。この要因として、一実施の形態によれば、干渉が発生する原因となるフェージング変動ΔPFAとシャドウィング誤差ΔPSHを考慮して周波数の割り当てを行えることが挙げられる。
【0086】
評価指標としての共用確率は、二次利用者SUが一次利用者PUと同じ周波数で無線通信を行う確率である。したがって、共用確率は高い方が好ましい。図16は、シミュレーション結果の一例として、一実施の形態としての提案手法による共用確率を表すグラフG21と、比較対象としての関連技術による共用確率を表すグラフG22とを示している。図16から読み取れるように、提案手法では関連技術に対して共用確率が相対的に28.3%減少しているが、干渉確率の大幅な抑制を実現しながら70%を超える高水準の共用確率を確保できている。
【0087】
評価指標としての周波数切り替え回数は、二次利用者SUが利用する周波数を切り替える回数の平均値である。したがって、周波数切り替え回数はより少なくことが好ましい。図17は、シミュレーション結果の一例として、一実施の形態としての提案手法による周波数切り替え回数を表すグラフG31と、比較対象としての関連技術による周波数切り替え回数を表すグラフG32とを示している。図17から読み取れるように、提案手法では関連技術に対して周波数切り替え回数が相対的に16.2%増大しているが、平均6回未満という十分に低い値に抑制できている。
【0088】
上記に説明したように、一実施形態による周波数割り当て方法、無線通信システム1および周波数割り当てプログラム221によれば、一次利用者PUと同じ周波数fを二次利用者SUが共用するときに、周波数切り替え回数を抑制し、高い共用確率を達成しつつ、干渉確率を低減できる。その結果、同じ周波数を複数の利用者が使用でき、かつ、通信品質の劣化を抑制することができるので、信頼性がより高い無線通信が実現される。
【0089】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【0090】
上記の実施の形態では、スペクトラムデータベース3がサーバ2に含まれている例について説明したが、一実施の形態はこの例に限定されない。一変形例において、スペクトラムデータベース3はサーバ2の外部に存在してもよい。この変形例において、スペクトラムデータベース3はサーバ2のインタフェース23または通信装置24に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 無線通信システム
2 サーバ
20 バス
21 演算装置
22 記憶装置
220 記録媒体
221 周波数割り当てプログラム
23 インタフェース
24 通信装置
3 スペクトラムデータベース
4 センサ
8A、8B 移動経路
9 領域
90 メッシュ
900 グリッド
CDF(ΔPFA) フェージング電力の累積分布関数
CDFSH シャドウィング誤差電力の累積分布関数
ΔPFA フェージング電力
ΔPSH シャドウィング誤差電力
、f、f 周波数
G11、G12、G21、G22、G31、G32 グラフ
alg 観測点の数
slot スロット数
a,th 周波数割り当て閾値
i,th 干渉閾値
PU、PU、PU 一次利用者
SU、SU 二次利用者
alloc 周波数割り当て時間
grid グリッドサイズ
mesh メッシュサイズ
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17