(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142085
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】粉粒体処理装置および粉粒体処理方法
(51)【国際特許分類】
F26B 11/10 20060101AFI20220922BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
F26B11/10
F26B25/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042092
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000129183
【氏名又は名称】株式会社カワタ
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 健二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲柳▼ 秀樹
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA04
3L113AB02
3L113AC08
3L113AC25
3L113BA02
3L113CA08
3L113CA09
3L113CB05
3L113CB17
3L113DA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】乾燥処理により粉粒体から発生する蒸気が、容器本体または蓋部に結露することを抑制できる粉粒体処理装置および粉粒体処理方法を提供する。
【解決手段】この粉粒体処理装置1は、容器10、撹拌部材20、駆動部30、温調部40、および制御部80を備える。容器10は、有底筒状の容器本体11と、容器本体11の上部の開口を覆う蓋部12と、を有する。撹拌部材20は、容器本体11内に位置する。駆動部30は、撹拌部材20を回転させる。温調部40は、容器本体11および蓋部12を温調する。制御部80は、温調部40を動作させる。温調部40により、容器本体11および蓋部12が、容器10内の乾燥処理時における露点よりも高い温度に維持される。このため、粉粒体9から発生する蒸気が容器本体11または蓋部12に結露することを抑制できる。したがって、結露により生じる液体により、粉粒体9の品質が低下することを抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を乾燥させる粉粒体処理装置であって、
有底筒状の容器本体と、前記容器本体の上部の開口を覆う蓋部と、を有する容器と、
前記容器本体内に位置する攪拌部材と、
前記攪拌部材を回転させる駆動部と、
前記容器本体および前記蓋部を温調する温調部と、
前記温調部を動作させることにより、前記容器本体および前記蓋部を、前記容器内の乾燥処理時における露点よりも高い温度に維持する制御部と、
を備えた、粉粒体処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粉粒体処理装置であって、
前記制御部は、前記温調部を動作させることにより、前記容器本体および前記蓋部を、前記容器内の乾燥処理時における最大露点よりも高い温度に維持する、粉粒体処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の粉粒体処理装置であって、
前記容器本体および前記蓋部は中空の流路を有し、
前記温調部は、前記流路に温調された流体を供給する、粉粒体処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の粉粒体処理装置であって、
前記容器内へ気体を導入する気体導入部と、
前記容器内から気体を排出する気体排出部と、
をさらに備える、粉粒体処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の粉粒体処理装置であって、
前記気体排出部は、
前記容器内から気体を吸引する気流発生部
を有する、粉粒体処理装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の粉粒体処理装置であって、
前記気体導入部は、
前記容器内へ導入される気体を加熱する加熱部
を有する、粉粒体処理装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載の粉粒体処理装置であって、
前記気体導入部は、
前記容器内へ導入される気体中の蒸気量を低下させる脱湿部
を有する、粉粒体処理装置。
【請求項8】
請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載の粉粒体処理装置であって、
前記気体導入部は、
前記蓋部に取り付けられたノズル
を有し、
前記ノズルから前記容器内に、気体が導入される、粉粒体処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の粉粒体処理装置であって、
前記気体排出部は、前記蓋部に形成された気体排出口を有し、
前記ノズルは、気体導入口を有し、
前記気体導入口は、前記蓋部の下面から間隔をあけて下方に位置する、粉粒体処理装置。
【請求項10】
請求項4から請求項9までのいずれか1項に記載の粉粒体処理装置であって、
前記気体排出部は、
前記容器内から排出される気体を冷却する冷却部
を有する、粉粒体処理装置。
【請求項11】
請求項4から請求項10までのいずれか1項に記載の粉粒体処理装置であって、
前記気体排出部は、
前記容器内から排出される気体中の粉塵を捕集する集塵部
を有する、粉粒体処理装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の粉粒体処理装置であって、
前記駆動部は、
前記容器本体の底板部を貫通して延び、その上端が前記攪拌部材に接続されるシャフト
を有し、
前記底板部と前記シャフトとの間から、前記容器内へ向けて気体を導入するエアシール機構をさらに備える、粉粒体処理装置。
【請求項13】
粉粒体を乾燥させる粉粒体処理方法であって、
a)有底筒状の容器本体と、前記容器本体の上部の開口を覆う蓋部と、を有する容器内に、粉粒体を投入する工程と、
b)前記工程a)の後に、前記容器内の粉粒体を攪拌しつつ加熱する工程と、
c)前記工程b)の後に、前記容器から前記粉粒体を排出する工程と、
を有し、
前記工程b)において、前記容器本体および前記蓋部を、前記容器内の露点よりも高い温度に維持する、粉粒体処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体を乾燥させる粉粒体処理装置および粉粒体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体または粒体からなる材料(以下「粉粒体」と称する)を攪拌・混合させるミキサーが知られている。また、ミキサーにおいて、粉粒体に含まれる水分量を適正な範囲に調整したり、粉粒体と液体とを混合して複合化させたりするために、容器内の材料を撹拌しつつ加熱する場合がある。例えば、特許文献1には、容器内に貯留されたスラリーを、攪拌するとともに、減圧および加熱により乾燥させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、容器内において粉粒体を乾燥させる時には、容器内に、粉粒体から生じた蒸気が充満する。このため、容器の内面や、容器の上部を覆う蓋部の下面の温度が、露点よりも低い場合、それらの面に気体中の蒸気が結露するおそれがある。その場合、結露により生じた液滴により、容器の内面または蓋部の下面に、粉粒体が付着しやすくなる。また、液滴または上記の付着物が、再び粉粒体に混入すると、乾燥処理後の粉粒体の品質を低下させる場合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、乾燥処理により粉粒体から発生する蒸気が、容器本体または蓋部に結露することを抑制できる粉粒体処理装置および粉粒体処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、粉粒体を乾燥させる粉粒体処理装置であって、有底筒状の容器本体と、前記容器本体の上部の開口を覆う蓋部と、を有する容器と、前記容器本体内に位置する攪拌部材と、前記攪拌部材を回転させる駆動部と、前記容器本体および前記蓋部を温調する温調部と、前記温調部を動作させることにより、前記容器本体および前記蓋部を、前記容器内の乾燥処理時における露点よりも高い温度に維持する制御部と、を備える。
【0007】
本願の第2発明は、第1発明の粉粒体処理装置であって、前記制御部は、前記温調部を動作させることにより、前記容器本体および前記蓋部を、前記容器内の乾燥処理時における最大露点よりも高い温度に維持する。
【0008】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の粉粒体処理装置であって、前記容器本体および前記蓋部は中空の流路を有し、前記温調部は、前記流路に温調された流体を供給する。
【0009】
本願の第4発明は、第1発明から第3発明のいずれか1発明の粉粒体処理装置であって、前記容器内へ気体を導入する気体導入部と、前記容器内から気体を排出する気体排出部と、をさらに備える。
【0010】
本願の第5発明は、第4発明の粉粒体処理装置であって、前記気体排出部は、前記容器内から気体を吸引する気流発生部を有する。
【0011】
本願の第6発明は、第4発明または第5発明の粉粒体処理装置であって、前記気体導入部は、前記容器内へ導入される気体を加熱する加熱部を有する。
【0012】
本願の第7発明は、第4発明から第6発明までのいずれか1発明の粉粒体処理装置であって、前記気体導入部は、前記容器内へ導入される気体中の蒸気量を低下させる脱湿部を有する。
【0013】
本願の第8発明は、第4発明から第6発明までのいずれか1発明の粉粒体処理装置であって、前記気体導入部は、前記蓋部に取り付けられたノズルを有し、前記ノズルから前記容器内に、気体が導入される。
【0014】
本願の第9発明は、第8発明の粉粒体処理装置であって、前記気体排出部は、前記蓋部に形成された気体排出口を有し、前記ノズルは、気体導入口を有し、前記気体導入口は、前記蓋部の下面から間隔をあけて下方に位置する。
【0015】
本願の第10発明は、第4発明から第9発明までのいずれか1発明の粉粒体処理装置であって、前記気体排出部は、前記容器内から排出される気体を冷却する冷却部を有する。
【0016】
本願の第11発明は、第4発明から第10発明までのいずれか1発明の粉粒体処理装置であって、前記気体排出部は、前記容器内から排出される気体中の粉塵を捕集する集塵部を有する。
【0017】
本願の第12発明は、第1発明から第11発明までのいずれか1発明の粉粒体処理装置であって、前記駆動部は、前記容器本体の底板部を貫通して延び、その上端が前記攪拌部材に接続されるシャフトを有し、前記底板部と前記シャフトとの間から、前記容器内へ向けて気体を導入するエアシール機構をさらに備える。
【0018】
本願の第13発明は、粉粒体を乾燥させる粉粒体処理方法であって、a)有底筒状の容器本体と、前記容器本体の上部の開口を覆う蓋部と、を有する容器内に、粉粒体を投入する工程と、b)前記工程a)の後に、前記容器内の粉粒体を攪拌しつつ加熱する工程と、c)前記工程b)の後に、前記容器から前記粉粒体を排出する工程と、を有し、前記工程b)において、前記容器本体および前記蓋部を、前記容器内の露点よりも高い温度に維持する。
【発明の効果】
【0019】
本願の第1発明~第13発明によれば、粉粒体から発生する蒸気が容器本体または蓋部に結露することを抑制できる。したがって、結露により生じる液体により、容器本体の内面または蓋部の下面に粉粒体が付着しやすくなることを、抑制できる。また、結露により生じる液体により、粉粒体の品質が低下することを抑制できる。
【0020】
特に、本願の第3発明によれば、容器本体および蓋部を、安定的かつ均一に温調できる。
【0021】
特に、本願の第4発明によれば、乾燥処理時における容器内の蒸気の割合を低減できる。これにより、乾燥処理時における容器内の露点を低減できる。その結果、粉粒体から発生した蒸気が容器本体または蓋部に結露することを、より抑制できる。
【0022】
特に、本願の第5発明によれば、容器内が大気圧よりも負圧となる。これにより、容器内が大気圧よりも正圧となる場合と比べて、蒸気の結露を抑制できる。
【0023】
特に、本願の第6発明によれば、気体導入部から導入される気体により、容器内の温度が低下することを抑制できる。
【0024】
特に、本願の第7発明によれば、乾燥処理時における容器内の蒸気量を、より低減できる。
【0025】
特に、本願の第9発明によれば、気体導入口と気体排出口が離れた位置に存在する。これにより、気体導入口から導入された気体が気体排出口へ短絡的に流れることを抑制し、容器内の気体を効率よく置換できる。
【0026】
特に、本願の第10発明によれば、容器から排出された気体に含まれる蒸気を、液化させて回収できる。
【0027】
特に、本願の第11発明によれば、容器から排出された気体に含まれる粉粒体等の粉塵を回収できる。
【0028】
特に、本願の第12発明によれば、容器内の粉粒体が、底板部とシャフトとの間から外部へ漏れ出すことを抑制できる。また、エアシール機構により容器内へ導入される気体により、容器内の蒸気量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図3】乾燥処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】第1変形例に係る粉粒体処理装置の構成を示した図である。
【
図5】第2変形例に係る粉粒体処理装置の構成を示した図である。
【
図6】第3変形例に係る粉粒体処理装置の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<1.粉粒体処理装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る粉粒体処理装置1の構成を示した図である。この粉粒体処理装置1は、粉粒体9を攪拌しつつ乾燥させる装置である。粉粒体処理装置1は、粉粒体9を容器10内で混合しながら加熱する。これにより、粉粒体9から水分を蒸発させて、粉粒体9に含まれる水分量を低下させる。処理対象となる粉粒体9は、例えば、プラスチック、セラミック、金属、ガラス、トナー、顔料、化粧品、木粉、食品、医薬品などであるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の粉粒体処理装置1は、容器10、攪拌部材20、駆動部30、温調部40、気体排出部50、気体導入部60、粉粒体排出部70、および制御部80を備えている。
【0032】
図2は、容器10の縦断面図である。
図1および
図2に示すように、容器10は、有底筒状の容器本体11と、板状の蓋部12とを有する。容器本体11は、円板状の底板部111と、円筒状の側壁部112とを有する。側壁部112は、底板部111の外周部から、上方へ向けて延びる。容器本体11の内部には、粉粒体9を貯留するための空間が存在する。蓋部12は、容器本体11の上部の開口を覆う。蓋部12の下面には、側壁部112の上端面に接触するOリング等のシール部材が設けられていてもよい。
【0033】
容器本体11は、中空の第1流路131と、第1流入口132と、第1流出口133とを有する。蓋部12は、中空の第2流路134と、第2流入口135と、第2流出口136とを有する。
図1および
図2では、第1流路131および第2流路134が、ハッチングで示されている。第1流路131および第2流路134は、後述する温調部40から供給される流体を流すための空間である。
【0034】
具体的には、容器本体11の底板部111および側壁部112は、それぞれ、内壁11aと外壁11bとを有する二重構造となっている。そして、それらの内壁11aと外壁11bとの間に形成される空間が、第1流路131となっている。第1流入口132は、第1流路131の下端付近に位置する。第1流出口133は、第1流路131の上端付近に位置する。第1流入口132と第1流出口133とは、第1流路131を介して連通する。本実施形態では、底板部111に形成される第1流路131と、側壁部112に形成される第1流路131とが、繋がっている。ただし、底板部111と側壁部112とに、第1流路131が別々に設けられていてもよい。
【0035】
また、蓋部12は、下層板12aと上層板12bとを有する二重構造となっている。そして、これらの下層板12aと上層板12bとの間に形成される扁平な空間が、第2流路134となっている。第2流入口135と第2流出口136とは、第2流路134を介して連通する。第1流路131と第2流路134とは、互いに分離した空間である。
【0036】
攪拌部材20は、容器10内に貯留された粉粒体9を攪拌するための部材である。攪拌部材20は、容器本体11内の底部付近に位置する。攪拌部材20は、複数の羽根21を有する。複数の羽根21は、後述するシャフト33の周囲に設けられている。本実施形態では、形状の異なる2つの攪拌部材20が、上下方向に積層された状態で配置されている。ただし、攪拌部材20の数は、1つであってもよく、あるいは3つ以上であってもよい。
【0037】
駆動部30は、攪拌部材20を回転させるための機構である。
図1に示すように、駆動部30は、駆動源となるモータ部31(モータおよび減速機)と、動力伝達機構32と、シャフト33とを有する。シャフト33は、容器本体11の底板部111を貫通して上下方向に延びる。シャフト33の上端は、攪拌部材20の中央に接続される。動力伝達機構32は、モータ部31から出力される駆動力をシャフト33へ伝達する。動力伝達機構32には、例えば、一対のプーリと、それらのプーリに掛け渡された環状のタイミングベルトとを有する機構が使用される。ただし、動力伝達機構32は、他の機構であってもよい。また、モータ部31の出力軸が、動力伝達機構32を介することなく、直接シャフト33に接続されていてもよい。
【0038】
シャフト33は、底板部111との間に介在するベアリング(図示省略)により、回転可能に支持される。また、
図1に示すように、粉粒体処理装置1は、底板部111とシャフト33との間に気体を導入するエアシール機構34を備える。エアシール機構34は、コンプレッサにより加圧された気体を、底板部111とシャフト33との間の空間を介して、容器10内へ導入する。これにより、容器10内の粉粒体9が、底板部111とシャフト33との間から外部へ漏れ出すことが抑制される。
【0039】
温調部40は、容器本体11および蓋部12を温調するための部位である。
図1中に概念的に示したように、温調部40は、熱媒体となる流体を加熱するヒータ41と、加熱された流体を送り出すポンプ42とを有する。熱媒体となる流体には、例えば水が使用される。ただし、水に代えて、オイルまたは気体を、熱媒体として使用してもよい。温調部40は、第1給液配管43を介して、第1流入口132と接続されている。また、温調部40は、第1排液配管44を介して、第1流出口133と接続されている。また、温調部40は、第2給液配管45を介して、第2流入口135と接続されている。また、温調部40は、第2排液配管46を介して、第2流出口136と接続されている。
【0040】
温調部40は、ポンプ42を動作させることにより、加熱された流体を、第1給液配管43および第2給液配管45へ送り出す。第1給液配管43へ送り出された流体は、第1流入口132を通って、第1流路131へ供給される。容器10内において粉粒体9の乾燥処理を行うときには、第1流路131の全体が、加熱された流体で満たされる。これにより、容器本体11の温度が、後述する露点よりも高い所定の温度に維持される。また、第1流出口133から排出される流体は、第1排液配管44を通って、温調部40へ戻る。
【0041】
また、第2給液配管45へ送り出された流体は、第2流入口135を通って、第2流路134へ供給される。容器10内において粉粒体9の乾燥処理を行うときには、第2流路134の全体が、加熱された流体で満たされる。これにより、蓋部12の温度が、後述する露点よりも高い所定の温度に維持される。また、第2流出口136から排出される流体は、第2排液配管46を通って、温調部40へ戻る。
【0042】
このように、温調部40は、容器本体11および蓋部12に設けられた中空の流路131,134に、加熱された流体を満たす。これにより、容器本体11および蓋部12を、安定的かつ均一に温調できる。
【0043】
気体排出部50は、容器10内から蒸気を含む気体を排出するための部位である。
図1に示すように、気体排出部50は、気体排出口51、排気配管52、冷却部53、集塵部54、および気流発生部55を有する。気体排出口51は、容器10の蓋部12の中央に形成されている。排気配管52の上流側の端部は、気体排出口51に接続されている。排気配管52の下流側の端部は、気流発生部55に接続されている。気流発生部55は、例えばブロワである。気流発生部55は、排気配管52内に、気体排出口51から気流発生部55へ向かう気流を発生させる。これにより、容器10内の気体が、気体排出口51を通って排気配管52へ吸引される。そして、吸引された気体が、容器10の外部へ排出される。
【0044】
なお、気体排出部50は上記以外の構造であってもよい。例えば、気体排出口51は、蓋部12の中央から外れた位置に設けられていてもよい。また、気体排出口51や排気配管52が、容器10内に入り込んだ構造であってもよい。
【0045】
冷却部53および集塵部54は、排気配管52の経路上に設けられている。冷却部53は、容器10内から排出される気体を冷却する。これにより、容器10内から排出される気体中の蒸気を、液化させて回収する。集塵部54は、容器10内から排出される気体中の粉塵を捕集する。これにより、粉粒体等の粉塵が容器10の外部に飛散することが抑制される。集塵部54には、例えば、サイクロン式の集塵装置またはバグフィルタ等が用いられる。さらに、スクラバのような湿式集塵を併用してもよい。
【0046】
気体導入部60は、容器10内の空間へ気体を導入するための部位である。気体導入部60は、ノズル61、給気配管62、加熱部63、およびフィルタ64を有する。ノズル61は、蓋部12に取り付けられている。ノズル61の下端部には、気体導入口611が形成されている。給気配管62の下流側の端部は、ノズル61に接続されている。給気配管62の上流側の端部は、フィルタ64に接続されている。加熱部63は、給気配管62の経路上に設けられている。
【0047】
上述した気流発生部55を動作させると、容器10内から気体が吸い出されることにより、容器10の内部空間の圧力が、大気圧よりも低い負圧となる。このため、容器10の外部の気体が、フィルタ64を通って給気配管62へ吸引される。そして、給気配管62へ吸引された気体が、ノズル61を通って容器10内へ導入される。
【0048】
気体導入口611は、蓋部12の下面から間隔をあけて下方に位置する。したがって、気体導入口611と気体排出口51とは、上下方向において離れた位置に存在する。このようにすれば、気体導入口611から導入される気体が気体排出口51へ短絡的に流れることを抑制できる。したがって、容器10内の気体を、効率よく置換できる。
【0049】
また、攪拌部材20により粉粒体9を攪拌すると、粉粒体9にかかる遠心力によって、
図2中の二点鎖線のように、容器本体11内の外周部付近における粉粒体9の高さが、特に高くなる。しかしながら、本実施形態のノズル61は、下端部が、下向きではなく、容器本体11の中心軸を中心とする回転方向に向けて屈曲している。そして、当該屈曲した部分の先端に、気体導入口611が形成されている。このようにすれば、
図2中の二点鎖線のように、撹拌混合時に容器本体11内の外周部付近に粉粒体9が偏った場合でも、気体導入口611が粉粒体9に塞がれることを抑制できる。
【0050】
なお、ノズル61の下端部は、容器本体11の半径方向内側へ向けて屈曲していてもよい。また、気体導入部60は、給気配管62の下流側の端部に、複数のノズル61を有していてもよい。そして、当該複数のノズル61が、容器10に取り付けられていてもよい。
【0051】
加熱部63は、給気配管62を流れる気体を加熱するヒータである。乾燥処理中の容器10内の温度は、外気温よりも高い。このため、容器10の外部に存在する気体を、そのまま容器10内へ導入すると、容器10内の温度が低下してしまう。しかしながら、本実施形態の粉粒体処理装置1は、加熱部63により加熱された気体を、容器10内に導入する。これにより、容器10内の温度が低下することを抑制できる。
【0052】
粉粒体排出部70は、乾燥処理後の粉粒体9を排出するための機構である。粉粒体排出部70は、排出口71、排出路72、および排出弁73を有する。排出口71は、側壁部112の下端付近に設けられた開口である。排出口71は、攪拌部材20の半径方向外側に位置する。排出路72は、排出口71から斜め下向きに延びる。排出弁73は、排出口71を、閉鎖状態と開放状態との間で切り替える。容器10内で粉粒体9を乾燥させるときには、排出弁73は、排出口71を閉鎖する。また、乾燥処理が終了すると、排出弁73は、排出口71を開放する。これにより、容器10内に貯留された粉粒体9が、排出口71を通って排出路72へ排出される。
【0053】
制御部80は、粉粒体処理装置1の各部を動作制御するためのユニットである。制御部80は、例えば、電気回路基板により構成される。ただし、制御部80は、コンピュータにより構成されていてもよい。
図1中に破線矢印で示したように、制御部80は、モータ部31、温調部40、および排出弁73と、それぞれ電気的に接続されている。また、制御部80は、記憶部81を有する。記憶部81には、乾燥時間等の乾燥処理に関する諸条件を記憶させることができる。制御部80は、記憶部81に記憶された諸条件に基づいて、モータ部31、温調部40、および排出弁73を動作させる。これにより、粉粒体処理装置1における粉粒体9の乾燥処理が進行する。
【0054】
<2.乾燥処理の流れ>
続いて、上記の粉粒体処理装置1における乾燥処理の手順について説明する。
図3は、乾燥処理の流れを示すフローチャートである。
【0055】
粉粒体9の乾燥処理を行うときには、まず、容器本体11の内面および蓋部12の下面の温度の下限値を設定する(ステップS1)。具体的には、ユーザが、制御部80に接続された操作盤を操作することにより、上記下限値を入力する。制御部80は、入力された下限値を、乾燥処理を実行するための諸条件の1つとして、記憶部81に記憶させる。この温度の下限値は、後述するステップS4の乾燥処理が実行された場合の容器10内における露点の予測値よりも高い温度とされる。
【0056】
なお、上記の下限値を制御部80に記憶させる以外に、流体の温度と、容器本体11の内面および蓋部12の下面の温度との関係を、予備試験等により把握しておき、容器本体11の内面および蓋部12の下面の温度が下限値よりも高くなるような流体の設定温度を、制御部80に記憶させてもよい。
【0057】
次に、容器本体11および蓋部12の温調を開始する(ステップS2)。ここでは、制御部80は、記憶部81に記憶された上記下限値に基づいて、温調部40を動作させる。温調部40は、流体の温度を、設定された下限値よりも十分に高い設定温度まで加熱する。流体の設定温度は、例えば、100~180℃とされる。また、温調部40は、容器本体11の第1流路131および蓋部12の第2流路134へ、加熱された流体を供給する。これにより、容器本体11の内面および蓋部12の下面の温度が上昇する。容器本体11の内面および蓋部12の下面の温度は、上述した下限値よりも高く、かつ、流体の設定温度よりも低い温度(例えば、80~160℃)に維持される。
【0058】
続いて、容器本体11内に粉粒体9を投入する(ステップS3)。このステップS3では、まず、蓋部12を、容器本体11の上部から他の位置へ移動させる。これにより、容器本体11の上部の開口を開放する。そして、容器本体11の上部の開口を介して容器本体11内へ、粉粒体9を流し込む。粉粒体9の投入が完了すると、蓋部12は、再び容器本体11の上部に配置される。これにより、容器本体11の上部の開口が閉鎖される。その結果、容器本体11と蓋部12とで構成される容器10の内部に、粉粒体9が貯留された状態となる。
【0059】
なお、粉粒体9の投入方法は、上記の例には限定されない。例えば、蓋部12の一部に投入口が設けられ、その上流側に設けられた弁の開閉により、粉粒体9を投入・停止を切り替えるものであってもよい。また、粉粒体9は、手動で投入されてもよい。
【0060】
次に、粉粒体9の乾燥処理を実行する(ステップS4)。具体的には、制御部80が、温調部40による容器本体11および蓋部12の温調を継続しつつ、モータ部31を動作させることにより、攪拌部材20を回転させる。これにより、容器10内の粉粒体9が、攪拌され、かつ、羽根21による剪断熱と容器本体11および蓋部12からの輻射熱および伝達熱とで加熱される。そうすると、粉粒体9から水分が蒸発して、粉粒体9に含まれる水分量が低下する。すなわち、粉粒体9が乾燥する。
【0061】
また、ステップS4では、気流発生部55も動作させる。これにより、容器10内の気体を気体排出部50へ排出するとともに、気体導入部60から容器10内に気体を導入する。これにより、粉粒体9から生じた蒸気を含む湿度の高い気体が、気体導入部60から導入される湿度の低い気体に置換される。その結果、粉粒体9の乾燥を効率よく進行させることができる。
【0062】
このステップS4では、容器本体11の内面および蓋部12の下面の温度が、温調部40から供給される流体によって、露点よりも高い温度に維持される。このため、蒸気を含む気体が、容器本体11の内面または蓋部12の下面に接触しても、結露が生じにくい。したがって、結露により生じる液体が粉粒体9に混入するなどして、乾燥後の粉粒体9の品質が低下することを抑制できる。
【0063】
なお、ステップS4の乾燥処理の過程で、容器10内の気体に含まれる蒸気の量は、乾燥の進行に応じて変化するため、容器10内の露点も変化する。具体的には、ステップS4の乾燥処理の初期には、粉粒体9からの水分の蒸発量が多く、乾燥が進むと蒸発量が少なくなる。この蒸発量がピークのときに、容器10内の露点も最大となる。制御部80は、温調部40を動作させることにより、容器本体11の内面および蓋部12の下面を、ステップS4の乾燥処理時における最大露点よりも高い温度に維持することが望ましい。
【0064】
特に、本実施形態の粉粒体処理装置1は、気体排出部50および気体導入部60により形成される気流によって、粉粒体9から生じる蒸気を、容器10の外へ排出させる。このようにすれば、乾燥処理時における容器10内の気体に含まれる蒸気の割合を、常に低い状態に保つことができる。したがって、乾燥処理時における容器10内の露点も、低い状態に保つことができる。つまり、絶対湿度(水蒸気重量kg/全気体重量kg)を低くすることができる。その結果、容器本体11の内面または蓋部12の下面に、蒸気が結露することを、より抑制できる。
【0065】
また、本実施形態の構造では、エアシール機構34により容器10内へ導入される気体により、容器10内の気体に含まれる蒸気の量がより低減される。したがって、ベアリングへの粉粒体9の侵入を防ぎつつ、乾燥処理時における容器10内の露点を、より低い状態に保つことができる。その結果、容器本体11の内面または蓋部12の下面に、蒸気が結露することを、より抑制できる。
【0066】
また、本実施形態の粉粒体処理装置1では、気体排出部50による気体の吸引によって、容器10の内部空間に、大気圧よりも低い負圧を生じさせる。このため、容器10の内部空間の圧力が、大気圧よりも高い正圧となる場合よりも、容器10内の露点を下げることができる。したがって、容器本体11の内面または蓋部12の下面に、蒸気が結露することを、より抑制できる。
【0067】
ステップS4の乾燥処理が終了すると、制御部80は、排出弁73を動作させて、排出口71を開放する。これにより、容器10内の乾燥済みの粉粒体9が、排出口71を通って排出路72へ排出される(ステップS5)。
【0068】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。以下では、種々の変形例について、上記の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0069】
<3-1.第1変形例>
図4は、第1変形例に係る粉粒体処理装置1の構成を示した図である。
図4の例では、気体導入部60が、脱湿部65を有する。脱湿部65は、給気配管62の経路上の加熱部63よりも上流側に設けられる。脱湿部65は、冷却装置や、気体中の水分を吸着する吸着器により構成される。このため、脱湿部65を通過することにより、気体に含まれる蒸気の量が低下する。そして、より湿度の低い気体を、容器10内へ導入することができる。このようにすれば、乾燥処理時における容器10内の気体中に存在する蒸気量を、より低減できる。したがって、容器本体11の内面または蓋部12の下面に、蒸気が結露することを、より抑制できる。
【0070】
<3-2.第2変形例>
図5は、第2変形例に係る粉粒体処理装置1の構成を示した図である。
図5の粉粒体処理装置1は、排気配管52に露点計47を備える。露点計47は、容器10内の気体に含まれる蒸気の量を計測し、その蒸気の量に応じた露点の値を、制御部80へ出力する。これにより、容器内12内の露点が、容器本体11の内面および蓋部12の下面の温度より低い状態になっているかを、確認することができる。
【0071】
さらに、制御部80は、露点計47から出力される露点の値に基づいて、温調部40を制御することもできる。具体的には、容器本体11の内面および蓋部12の下面の温度が、露点計47から出力される露点よりも高くなるように、熱媒体である流体の温度を調節する。このようにすれば、容器本体11の内面および蓋部12の下面の温度を、露点の実測値よりも高い温度に維持できる。したがって、容器本体11の内面または蓋部12の下面に、蒸気が結露することを、より抑制できる。
【0072】
<3-3.第3変形例>
図6は、第3変形例に係る粉粒体処理装置1の構成を示した図である。
図6の粉粒体処理装置1は、不活性ガス供給部66を備える。乾燥処理時には、不活性ガス供給部66から供給される不活性ガスが、給気配管62およびノズル61を通って、容器10内へ導入される。不活性ガスは、例えば、窒素、二酸化炭素、またはアルゴンである。このように、高温の容器10内に不活性ガスを導入すれば、酸素を含む空気を導入する場合と比べて、粉粒体9の酸化を抑制できる。したがって、乾燥処理後の粉粒体9の品質を、より向上させることができる。また、低湿度の不活性ガスを用いることで、粉粒体9の乾燥を促進させることができる。さらに、高温の容器10内において、粉粒体9が爆発するおそれを低減することもできる。
【0073】
<3-4.他の変形例>
上記の実施形態では、容器10内において、粉粒体9のみを乾燥させていた。しかしながら、容器10内に粉粒体9と液体とを投入し、粉粒体9と液体の混合物を撹拌しつつ乾燥させてもよい。また、粉粒体9に添加剤を混合してもよい。その場合、蓋部12に添加剤を滴下するための添加口を設けてもよい。
【0074】
また、制御部80は、乾燥処理中に、モータ部31の回転数を制御することにより、攪拌部材20の回転速度を変化させてもよい。例えば、容器10内の気体に含まれる蒸気量が多くなる時間帯においては、攪拌部材20の回転速度を低下させて、粉粒体9からの水分の蒸発量を抑えるようにしてもよい。また、乾燥が遅い場合には、撹拌部材20の回転速度を上げることで、粉粒体9からの水分の蒸発量を増加させるようにしてもよい。
【0075】
また、制御部80は、乾燥処理中に、気体排出部50の気流発生部55の出力を変化させてもよい。例えば、容器10内の気体に含まれる蒸気量が多くなる時間帯においては、気流発生部55の出力を高くして、容器10内からの蒸気の排出を特に促進させ、容器10内の湿度を下げるようにしてもよい。
【0076】
上記の実施形態の温調部40は、加熱した熱媒体である流体を、第1流路131および第2流路134へ供給することにより、容器本体11および蓋部12を温調するものであった。しかしながら、温調部40は、他の方式により、容器本体11および蓋部12を温調するものであってもよい。例えば、温調部40は、容器本体11および蓋部12に取り付けられた電熱式のヒータであってもよい。
【0077】
また、粉粒体処理装置の細部の構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に設計変更されてもよい。また、上記の実施形態または変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 粉粒体処理装置
9 粉粒体
10 容器
11 容器本体
12 蓋部
20 攪拌部材
21 羽根
30 駆動部
31 モータ部
32 動力伝達機構
33 シャフト
34 エアシール機構
40 温調部
41 ヒータ
42 ポンプ
43 第1給液配管
44 第1排液配管
45 第2給液配管
46 第2排液配管
47 露点計
50 気体排出部
51 気体排出口
52 排気配管
53 冷却部
54 集塵部
55 気流発生部
60 気体導入部
61 ノズル
62 給気配管
63 加熱部
64 フィルタ
65 脱湿部
66 不活性ガス供給部
70 粉粒体排出部
71 排出口
72 排出路
73 排出弁
80 制御部
81 記憶部
111 底板部
112 側壁部
131 第1流路
132 第1流入口
133 第1流出口
134 第2流路
135 第2流入口
136 第2流出口
611 気体導入口