(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014209
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】肉様食品用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20220112BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20220112BHJP
【FI】
A23D9/00 518
A23L13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116425
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】591040144
【氏名又は名称】太陽油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】依田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】岸 瑶介
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 孝徳
【テーマコード(参考)】
4B026
4B042
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG02
4B026DG03
4B026DG04
4B026DG05
4B026DG06
4B026DH01
4B026DH03
4B026DH05
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP04
4B042AC01
4B042AD20
4B042AD36
4B042AH11
4B042AK02
4B042AK06
4B042AK10
4B042AK11
4B042AK12
4B042AK13
4B042AP02
4B042AP03
4B042AP04
4B042AP14
4B042AP18
4B042AP21
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】本発明は、肉様食品に使用した際の取扱い性に優れ、かつ、植物性蛋白質素材特有の臭いを抑制することが可能な肉様食品用油脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】固体脂含量が、15℃で2~34%、25℃で2~33%、30℃で0.5~31%である肉様食品用油脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体脂含量が、15℃で2~34%、25℃で2~33%、30℃で0.5~31%である肉様食品用油脂組成物。
【請求項2】
固体脂含量が、10℃で2~50%である請求項1に記載の肉様食品用油脂組成物。
【請求項3】
固体脂含量が、30℃で11%以上である請求項1又は2に記載の肉様食品用油脂組成物。
【請求項4】
飽和脂肪酸の含有量が、10~45質量%である、請求項1~3のいずれかに記載の肉様食品用油脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の肉様食品用油脂組成物と、1種又は2種以上の植物性蛋白質素材とを含む肉様食品。
【請求項6】
前記植物性蛋白質素材が、大豆蛋白質、えんどう豆蛋白質、ひよこ豆蛋白質、レンズマメ蛋白質、いんげん豆蛋白質、そら豆蛋白質からなる群から選択される1種又は2種以上を含む材料である、請求項5に記載の肉様食品。
【請求項7】
前記植物性蛋白質素材が、大豆蛋白質を含む、請求項5に記載の肉様食品。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の肉様食品用油脂組成物と、1種又は2種以上の植物性蛋白質素材とを混ぜ合わせて混合種を調製する工程と、前記混合種を所定の形状に成形して成形物とする工程と、前記成形物を加熱処理する工程とを含むことを特徴とする肉様食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉様食品用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向や環境保護といった観点から、食肉の一部あるいは全部を植物性蛋白質素材に代替した食品(以下、「肉様食品」ということがある。)の需要が高まっている。これらの食品は、低コレステロールかつ高蛋白質であることから注目されており、既にハンバーグやソーセージ等が流通している。
植物性蛋白質素材や肉様食品は、原料とする大豆等に由来する特有の臭いがあり、また、一般的に食用とされてきた畜肉加工食品と比較して成形性に劣るため、油脂組成物を添加することでこれらの特性を改善することが試みられている。
【0003】
特許文献1には、加工食品の成形性やジューシー感を改善するために、特定の組成の油脂組成物を使用することが記載されている。植物性蛋白質素材を使用した加工食品についてもジューシー感を改善するために、特定の組成の油脂組成物を使用することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、膨化蛋白素材の口どけや大豆臭さを改善するために、植物性蛋白質素材に一定量の油脂を添加することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/004058号
【特許文献2】国際公開第2020/071310号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1の油脂組成物は、肉様食品に使用した際の取扱い性(分散性や成形性等)が十分でなかった。また、原料の大豆等に由来する特有の臭いについての改善効果は確認されていない。
また、特許文献2では製法や油分、無脂固形分の調整によって課題の解決を試みているが、最適な油脂配合についての記載はなく、文献内で使用されているパーム分別軟質油では風味の改善効果がまだ満足のいくものではなかった。
【0007】
本発明は、肉様食品に使用した際の取扱い性に優れ、かつ、植物性蛋白質素材特有の臭いを抑制することが可能な肉様食品用油脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の肉様食品用油脂組成物等を提供できる。
1.固体脂含量が、15℃で2~34%、25℃で2~33%、30℃で0.5~31%である肉様食品用油脂組成物。
2.固体脂含量が、10℃で2~50%である1に記載の肉様食品用油脂組成物。
3.固体脂含量が、30℃で11%以上である1又は2に記載の肉様食品用油脂組成物。
4.飽和脂肪酸の含有量が、10~45質量%である、1~3のいずれかに記載の肉様食品用油脂組成物。
5.1~4のいずれかに記載の肉様食品用油脂組成物と、1種又は2種以上の植物性蛋白質素材とを含む肉様食品。
6.前記植物性蛋白質素材が、大豆蛋白質、えんどう豆蛋白質、ひよこ豆蛋白質、レンズマメ蛋白質、いんげん豆蛋白質、そら豆蛋白質からなる群から選択される1種又は2種以上を含む材料である、5に記載の肉様食品。
7.前記植物性蛋白質素材が、大豆蛋白質を含む、5に記載の肉様食品。
8.1~4のいずれかに記載の肉様食品用油脂組成物と、1種又は2種以上の植物性蛋白質素材とを混ぜ合わせて混合種を調製する工程と、前記混合種を所定の形状に成形して成形物とする工程と、前記成形物を加熱処理する工程とを含むことを特徴とする肉様食品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、肉様食品に使用した際の取扱い性に優れ、かつ、植物性蛋白質素材特有の臭いを抑制することが可能な肉様食品用油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
[油脂組成物]
本発明の油脂組成物は、固体脂含量が、15℃で2~34%、25℃で2~33%、30℃で0.5~31%である肉様食品用油脂組成物である。
これにより、肉様食品に使用した際の取扱い性に優れ、かつ、植物性蛋白質素材特有の臭いを抑制することが可能な肉様食品用油脂組成物を提供することができる。
【0012】
取扱い性とは、肉様食品を調製する際の油脂組成物の分散性と、肉様食品について加熱する前の成形性及び加熱時の保形性とを意味する。
【0013】
[固体脂含量(SFC)]
本発明の油脂組成物は、15℃における固体脂含量(以下、「SFC」ともいう。)が2~34%である。15℃におけるSFCは、10~34%であることが好ましく、20~34%であることがより好ましい。
15℃におけるSFCが上記範囲内であると、肉様食品に使用した際の取扱い性に優れる油脂組成物を得ることができる。15℃におけるSFCが上記範囲を超える場合は分散性が悪くなり、上記範囲を下回る場合は、結果的に25℃、30℃のSFCが低下するため、大豆臭さを抑制する効果が低くなる。
【0014】
本発明の油脂組成物は、25℃におけるSFCが2~33%である。25℃におけるSFCは、8~33%であることが好ましく、16~32%であることがより好ましい。
また、本発明の油脂組成物は、30℃におけるSFCが0.5~31%である。30℃におけるSFCは、5~30%であることが好ましく、11~29%であることがより好ましい。
25℃及び30℃におけるSFCが、それぞれ、上記範囲内であると、肉様食品に使用した際に植物性蛋白質素材特有の臭いを抑制することが可能となる。一方、25℃および30℃におけるSFCが上記範囲を超えると、分散性が悪くなり、パサつきが強くなる。
【0015】
本発明の油脂組成物は、10℃におけるSFCが、好ましくは、2~45%であり、より好ましくは、11~45%であり、特に好ましくは、21~45%である。
【0016】
SFC(単位:%)は、基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.2.9-2013 固体脂含量(NMR法)」に基づいて、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、肉様食品用油脂組成物は、(A)液体油(以下、「(A)成分」ともいう。)、(B)極度硬化油(以下、「(B)成分」ともいう。)を含み、さらに(C)その他の油脂(以下、「(C)成分」ともいう。)を含んでもよい。
【0018】
肉様食品用油脂組成物における(A)成分の含有量は、油脂組成物が上述のSFCの範囲内にあれば特に限定はされず、油脂組成物全体に対して、例えば、20%以上、25%以上、又は30%以上であり得、また、80%以下、75%以下、又は70%以下であり得る。
【0019】
肉様食品用油脂組成物における(B)成分の含有量は、油脂組成物が上述のSFCの範囲内にあれば特に限定はされず、油脂組成物全体に対して、例えば、0%以上、1%以上、2%以上、又は10%以上であり得、また、40%以下、35%以下、又は30%以下であり得る。
【0020】
肉様食品用油脂組成物における(C)成分の含有量は、油脂組成物が上述のSFCの範囲内にあれば特に限定はされず、油脂組成物全体に対して、例えば、0%以上、5%以上、又は10%以上であり得、また、70%以下、65%以下、又は60%以下であり得る。
【0021】
(A)液体油
液体油は、常温(例えば、15℃)でSFC(固体脂含量)が0%である限り特に限定されず、例えば、大豆油、ハイオレイックナタネ油、ナタネ油、ハイエルシンナタネ油、ハイオレイックヒマワリ油、ヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、サフラワー油、コーン油、綿実油、オリーブ油、亜麻仁油、ごま油、えごま油、グレープシードオイル、チアシードオイル、米油、パンプキンシードオイル、アボカドオイル、落花生油、マカダミアナッツ油、ヘンプ油、アルガンオイル、アーモンド油、くるみ油、及びパームダブルオレイン(又は融点18℃未満のパーム分別低融点部)、並びにこれらのうち2種以上の混合油が挙げられる。
【0022】
(B)極度硬化油
「極度硬化油」とは、通常の食用油脂を極度硬化処理したものである。「極度硬化」とは、水素添加によって不飽和脂肪酸を完全に飽和脂肪酸とすることである。水素添加の方法は当業者に公知の方法により適宜行うことができる。例えば「食用油製造の実際」(宮川高明著、幸書房、昭和63年7月5日 初版第1刷発行)に記載の方法に従い、行うことができる。
【0023】
極度硬化油の原料油脂としては、通常、食用油脂として使用されるものが挙げられる。原料油脂は、好ましくは、パーム油、パーム分別油、パーム核油、ヤシ油、ナタネ油、ハイエルシンナタネ油、大豆油、コーン油、綿実油、米油、サフラワー油及びオリーブ油からなる群より選択される1種又は2種以上の油脂であり、より好ましくは、ナタネ油、ハイエルシンナタネ油、大豆油、又はパーム系油脂であり、さらに好ましくは、ハイエルシンナタネ油、又はパーム油である。
また、極度硬化油の融点は50℃以上であることが好ましい。
【0024】
(C)その他の油脂
その他の油脂としては、(A)成分あるいは(B)成分のいずれにも該当しない油脂であり、常温(例えば、15℃)で固体状又は半固体状である油脂が挙げられる。
【0025】
その他の油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、及び、これらの分別油(例えば、パーム分別低融点部(ただしパームダブルオレインは含まない)等)や硬化油等(以下、「(C1)」ともいう。)が挙げられる。また、(C1)を含む原料油脂にエステル交換を施したエステル交換油脂(以下、「(C2)」ともいう。)等も挙げられる。(C2)の原料油脂は、(C1)単独でもよいし、(C1)と(C1)以外の油脂とからなる混合油脂でもよい。(C2)の原料油脂において、(C1)以外の油脂の例としては、(A)液体油及び(B)極度硬化油から選択される1種又は2種以上が挙げられる。(C2)のエステル交換油脂は、選択的エステル交換油脂及びランダムエステル交換油脂のいずれであってもよいが、好ましくは、ランダムエステル交換油脂であり、より好ましくは、パーム分別低融点部のエステル交換油脂である。
その他の油脂としては、(C1)及び(C2)のうち1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0026】
パーム分別低融点部は、上昇融点が25℃未満のパーム分別油を意味し、例えば、パーム油を分別して得られる低融点画分(パームオレイン)、パームオレインを分別して得られる低融点画分(パームダブルオレイン)、及びこれらの混合油を包含する。パーム分別低融点部のヨウ素価は、通常、50を超える(例えば、55以上の)範囲から選択される。
パーム油の分別方法としては、溶剤分別法、ウインタリング法、乳化分別法、自然分別法等が一般的であるが、これらに限定されない。また、分別回数は、1回又は2回が一般的であるが、3回以上であってもよい。
【0027】
なお、上昇融点は、基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.2.4.2-1996 融点(上昇融点)」に記載の方法に基づいて測定される。ヨウ素価は、基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「3.3.3-1996 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」に記載の方法に基づいて測定される。
【0028】
油脂組成物のSFCは、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の混合割合を変更することにより、適宜調整することができる。例えば、コーン油等の(A)成分の割合を増加させることで、低温~常温域(15℃以下)のSFCを低下させることができ、極度硬化ハイエルシンナタネ油等の(B)成分の割合を増加させることで、高温域(25℃、30℃)のSFCを上昇させることができる。また、(A)成分及び(B)成分に対して(C)成分を任意の割合で添加することにより、各温度におけるSFCを微調整(例えば、15℃で2~34%、25℃で2~33%、30℃で0.5~31%の範囲に調整)することができる。
【0029】
[脂肪酸構成]
本発明の油脂組成物は、飽和脂肪酸の含有量が、好ましくは、10~45質量%であり、より好ましくは、20~40質量%である。
飽和脂肪酸の含有量を上記範囲とすることで、取扱い性の高さと植物性蛋白質素材特有の臭いを抑制する効果を両立することができる。
【0030】
本発明の油脂組成物における脂肪酸組成は、常法に従って求めることができる。具体的には、基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」に基づいて測定することができる。
【0031】
本発明の油脂組成物は、本発明の効果を抑制しない範囲で、適宜、乳化剤、pH調整剤、塩類、蛋白質、アミノ酸、酵素、糖質、食物繊維、調味料、香料、香辛料、色素、酸化防止剤、水等の成分を1種又は2種以上含有してもよい。
【0032】
本発明の油脂組成物は、加水分解反応の防止、保存性等の観点から、乳化物でないことが好ましい。
【0033】
本発明の油脂組成物は、原料由来の臭いに対するマスキング効果を得るうえで、室温(15~30℃)で液体状ではないことが好ましい。ここで、液体状とは、例えば、SFCが0%である状態を意味する。
また、流動性を高めることで、肉様食品への油脂組成物の分散性をよくする観点及び混合種の粘性を高め、加熱前の肉様食品の成形性を高める観点から、室温(15~30℃)でペースト状であることが好ましい。
【0034】
[肉様食品]
本発明の肉様食品は、上記説明した本発明の肉様食品用油脂組成物と、植物性蛋白質素材とを含む肉様食品である。植物性蛋白質素材としては、小麦や豆(例えば、大豆、レンズマメ、ひよこ豆、えんどう豆)等の穀物、野菜、イモ類等から選択される1種又は2種以上の組み合わせが挙げられるが、植物性蛋白質を含む材料であれば特に制限されない。植物性蛋白質素材は、好ましくは、乾燥質量換算で植物性蛋白質を40質量%以上含む。
【0035】
例えば、大豆由来の蛋白質を使用する場合、大豆又は脱脂大豆に濃縮・抽出・成型等の加工が施され、蛋白質濃度が高まったものであればよく、市販品でも、新たに調製したものでもよい。大豆由来の蛋白質は、好ましくは、あらかじめミンチ状に加工された大豆由来蛋白質である。
【0036】
本発明の肉様食品において、油脂組成物の配合量は、1~25質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。油脂組成物の配合量を上記範囲内とすることで、肉様食品の取扱い性を改善し、かつ、植物性蛋白質素材特有の臭いを抑制することができる。
【0037】
本発明の肉様食品は、本発明の効果を抑制しない範囲で、目的とする食品を構成するための他の食品材料を含むことができる。他の食品材料は、例えば、卵白、野菜、調味料、穀粉類、澱粉類、食物繊維、増粘多糖類、糖類、塩類、香辛料、着色料、保存料等である。
【0038】
本発明の肉様食品は、好ましくは、実質的に畜肉(例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉、羊肉)を含まない。ここで、「実質的に畜肉を含まない」とは、肉様食品において、畜肉の量が好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であることを意味し、畜肉を含まないことが最も好ましい。
【0039】
本発明の肉様食品は、植物性蛋白質により構成される以下のような食品である。例えば、ハンバーグ、ソーセージ、肉団子、プレスハム、チョップドハム、サラミ、ナゲット、メンチカツ、ロールキャベツ、ミートローフ、テリーヌ、つくね、中華まん、餃子、春巻き、シュウマイ、及び成形肉等が挙げられる。
【0040】
[肉様食品の製造方法]
本発明の肉様食品の製造方法は、上記のような肉様食品を製造する際に、本発明の油脂組成物と、1種又は2種以上の植物性蛋白質素材とを混ぜ合わせることを特徴とする。この油脂組成物と、1種又は2種以上の植物性蛋白質素材とを含む混合種を形成する工程と、混合種を所定の形状に成形して成形物とする工程と、成形物を加熱処理する工程とを含む工程を経ることで肉様食品を得ることができる。
【実施例0041】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0042】
実施例及び比較例として、種々の油脂組成物を用いて肉様食品を調製し、評価した。用いた各原料は以下の通りである。
【0043】
(油脂組成物)
後述の[油脂組成物の製造]で得られた油脂組成物1~15
(植物性蛋白質素材)
ダイズラボ 大豆のお肉 ブロックタイプ(マルコメ株式会社製、乾燥品)
(パン粉)
フライスターセブン(フライスター株式会社製)
(コーンスターチ)
Home made CAKE コーンスターチ(共立食品株式会社製)
(ハンバーグ用調味料)
SPICE&HERBシーズニング ハンバーグ(エスビー食品株式会社)
(その他)
たまねぎと卵は市販のものを使用した。
【0044】
[油脂の調製]
油脂は、以下のように調製したものを用いた。
【0045】
・(A)成分
(ハイオレイックナタネ油)
ハイオレイックナタネ油を脱色、脱臭することにより得た。
(ナタネ油)
ナタネ油を脱色、脱臭することにより得た。
(コーン油)
コーン油を脱色、脱臭することにより得た。
(大豆油)
大豆油を脱色、脱臭することにより得た。
・(B)成分
(極度硬化パーム油)
パーム油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点58℃)。
(極度硬化ハイエルシンナタネ油)
ハイエルシンナタネ油(エルシン酸含量約46質量%)の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点60℃)。
(極度硬化パーム核油)
パーム核油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点40℃)。
・(C)成分
(ランダムエステル交換油脂)
パーム油分別低融点部(パームオレイン(ヨウ素価56):パームダブルオレイン(ヨウ素価64)=1:1)に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒とし、90℃で30分間、ランダムエステル交換反応を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点36℃)。
(パーム油)
パーム油を、脱色、脱臭することにより得た(融点37℃)。
(パーム核油)
パーム核油を、脱色、脱臭することにより得た(融点28℃)。
(パームオレイン)
パーム油を自然分別法により高融点部と低融点部に分別して得られた低融点部を脱色、脱臭することにより得た(ヨウ素価56)。
【0046】
[油脂組成物の製造]
上記工程により調製した油脂を約60℃に加温して完全溶解し、表1に示した組成で配合し、急冷捏和してショートニング状にしたものを油脂組成物とした(油脂組成物1~8、10~15)。油脂組成物9については、液状のものをそのまま使用した。
【0047】
[飽和脂肪酸の含有量の測定]
油脂組成物(1~15)について、基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」基づいて、脂肪酸組成を測定し、飽和脂肪酸の含有量を計算した。結果を表1に示す。
【0048】
【0049】
[固体脂含量(SFC)の測定]
原料として用いた油脂組成物の固体脂含量(SFC)を以下の条件で測定した。具体的には、油脂組成物を60℃で30分保持し、完全に融解した後、0℃で30分保持して固化させた。その後、25℃で30分保持し、テンパリングを行った後、0℃に30分保持した。その後、各測定温度(10℃~15℃、25℃~30℃の温度範囲で5℃刻み)でそれぞれ30分保持した後、SFC測定装置(SFC-3000、アステック株式会社製)によりSFC(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0050】
【0051】
実施例1~8、比較例1~7
[肉様食品の調製]
以下の手順のとおり、肉様食品としての大豆ハンバーグを調製した。
【0052】
[原料の下準備]
必要量の植物性蛋白質素材(乾燥品)を沸騰したお湯で5分間茹でた。茹でた植物性蛋白質素材をザルにとり、水気を切ってから20分放冷した。温度が下がった植物性蛋白質素材をフードプロセッサーで3秒間粉砕し、得られたものを原料(大豆肉)として用いた。
たまねぎ(生)をフードプロセッサーで5秒間粉砕し、プロセッサーの容器内面についたたまねぎを容器内に落としてから、再度5秒間粉砕した。得られたものを原料として用いた。
卵は、卵白と卵黄に分け、卵白を原料として用いた。
油脂組成物11、13及び15は、フードプロセッサーで20秒間粉砕し、最大長2.8mm以上4.0mm以下の小片とし、得られたものを原料として用いた。最大長はふるい試験により測定した。
[調理]
表3に示した配合量のとおりに、各原料をステンレスボウルに量りとった。表3の配合量は、各原料の合計質量に対する質量%である。ハンドミキサー(強度:5段階中2)で1分間混合した後、ボウル壁面についた原料をボウル内に落とす、という操作を繰り返し、合計3分間混合した。混合種を団子状に丸めて100g量りとり、両手で10回空気抜きをしてからセルクル(直径8.5cm、厚さ1.7cm)に押し込み、成形物を得た。
電子レンジで、500Wにて片面2分間ずつ、両面(合計4分間)を加熱した後、室温で20分間放冷した。ホットプレートの弱火(温度設定:7段階中3、260W)で片面2分間ずつ、合計4分間焼き、室温で20分間放冷した。食品用ラップフィルムに包んで冷凍庫に入れ、一晩以上経過してから、自然解凍後、切り分けて皿に盛った。電子レンジで500Wにて1分間加熱した後、室温で20分以上放冷した。
【0053】
【0054】
[取扱い性の評価]
油脂組成物の取扱い性として、実施例1~8及び比較例1~7の肉様食品(大豆ハンバーグ)を調製する際の、油脂組成物の分散性と、肉様食品について加熱前の成形性、加熱時の保形性とを以下の評価基準で評価した。結果を表4に示す。
(分散性の評価)
◎:油脂が非常に混ざりやすい
○:油脂が混ざりやすい
△:油脂がやや混ざりにくい
×:油脂が混ざりにくい
(加熱前の成形性の評価)
◎:非常に成形しやすい
○:成形しやすい
△:やや成形しづらい
×:成形しづらい
(加熱時の保形性の評価)
◎:非常にくずれにくい
○:くずれにくい
△:ややくずれやすい
×:くずれやすい
【0055】
[官能評価]
実施例1~8及び比較例1~7において調製した肉様食品(大豆ハンバーグ)を喫食し、食感(パサつき)及び大豆臭さ(風味)について、評価パネル5人それぞれにより、以下の評価基準で評価した。評価の前には、評価パネル5人の間で、食感及び大豆臭さがどの程度変化したら加点又は減点するのかを共通にした。食感及び大豆臭さのそれぞれについて、5人の平均点を算出した。結果を表4に示す。
(食感の評価)
5点:食感がほとんど、あるいはまったくパサつかない
4点:食感があまりパサつかない
3点:食感が少しパサつく
2点:食感がパサつく
1点:食感がかなりパサつく
(大豆臭さの評価)
5点:大豆の臭みをほとんど、あるいはまったく感じない
4点:大豆の臭みをあまり感じない
3点:大豆の臭みを少し感じる
2点:大豆の臭みを感じる
1点:大豆の臭みをかなり感じる
【0056】
【0057】
15℃のSFCは分散性や加熱前の成形性に影響を与えていると考えられ、15℃のSFCが34%を超える比較例2、3及び5~7においては分散性が悪く、このうち15℃のSFCが70%を超える比較例3、7においては加熱前の成形性も悪かったのに対し、15℃のSFCが34%以下である実施例1~8については共に良好な結果であった。
25℃、30℃のSFCは大豆臭さに影響を与えていると考えられる。25℃、30℃のSFCがそれぞれ2%、0.5%を下回る比較例1及び4においては、大豆臭さが強く感じられ、風味の点数が低い結果であった。一方、25℃、30℃のSFCがそれぞれ2%、0.5%以上である実施例1~8は、良好な結果であった。特に、大豆臭さを抑える効果は25℃、30℃のSFCがそれぞれ15%以上、11%以上である実施例1、4~6、8ではより顕著であった。
25℃、30℃のSFCがそれぞれ33%、31%を超える比較例3、6及び7ではパサつきが強く感じられた。また、詳細なメカニズムは不明であるが、15℃、25℃、30℃のSFCが、それぞれ2%、2%、0.5%未満である比較例1においても、パサつきが強く感じられた。一方、いずれのSFCも所定範囲内である実施例1~8は、パサつきについて良好な結果であった。
本発明によれば、肉様食品に使用した際の取扱い性に優れ、かつ、植物性蛋白質素材特有の臭いを抑制することが可能な肉様食品用油脂組成物を提供できる。本発明の油脂組成物を使用した肉様食品は、取扱い性に優れ、かつ、植物性蛋白質素材特有の臭いを抑制することが可能であり、産業上の利用可能性が高い。