(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142096
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】管ユニットと浄化杭の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/28 20060101AFI20220922BHJP
E02D 3/08 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
E02D5/28
E02D3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042105
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高畑 陽
【テーマコード(参考)】
2D041
2D043
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA35
2D041BA52
2D041CB06
2D041DB02
2D041FA11
2D043EA10
(57)【要約】
【課題】小型重機でも施工が可能であり、良好な施工性の下で施工でき、浄化性能に優れている、浄化杭を施工する際に適用される管ユニットと、この管ユニットを適用する浄化杭の施工方法を提供する。
【解決手段】地盤に挿入されて、内部に供給された固形浄化材81を地盤に残置して浄化杭80を施工する際に適用される、管ユニット50,50Aであり、無孔管20と、無孔管20の挿入方向にある一端21が遊嵌されている、先端部材10と、無孔管20の挿入反対方向にある他端22に螺合されている、蓋部材40と、無孔管20の内部に内挿され、無孔管20の内部にある固形浄化材81と蓋部材40との間に介在して、固形浄化材81を直接的もしくは間接的に押圧する弾性部材30とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に挿入されて、内部に供給された固形浄化材を地盤に残置して浄化杭を施工する際に適用される、管ユニットであって、
無孔管と、
前記無孔管の挿入方向にある一端が遊嵌されている、先端部材と、
前記無孔管の挿入反対方向にある他端に螺合されている、蓋部材と、
前記無孔管の内部に内挿され、該無孔管の内部にある前記固形浄化材と前記蓋部材との間に介在して、該固形浄化材を直接的もしくは間接的に押圧する弾性部材と、を有することを特徴とする、管ユニット。
【請求項2】
前記弾性部材は、バネと、該バネの両端にある円板と、を有することを特徴とする、請求項1に記載の管ユニット。
【請求項3】
前記挿入反対方向にある前記円板には、弾性部材を回収する際に適用される回収部材の端部の雄ネジが螺合する雌ネジが設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の管ユニット。
【請求項4】
前記地盤が表層の不飽和層と、該不飽和層の下方にある帯水層とを有する場合に、
前記無孔管の内部において、前記固形浄化材と前記弾性部材との間に、表層管もしくは粒状の重し材が内挿され、前記弾性部材が該表層管を介して間接的に該固形浄化材を押圧することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の管ユニット。
【請求項5】
前記先端部材は、
地盤への挿入方向に縮径し、挿入反対方向の上端面が最大径となっている、先端コーンと、
前記上端面から立設して、該上端面よりも小径の円柱体とを有し、
前記円柱体に前記無孔管の先端が遊嵌され、
前記弾性部材が、前記無孔管の内部において前記固形浄化材を直接的もしくは間接的に押圧している状態において、該弾性部材は前記円柱体の高さよりも大きな縮み量で縮んでいることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の管ユニット。
【請求項6】
前記円柱体に前記無孔管の先端が遊嵌されている状態において、該円柱体と該無孔管の間にグリースが介在していることを特徴とする、請求項5に記載の管ユニット。
【請求項7】
無孔管と、
前記無孔管の挿入方向にある一端が遊嵌されている、先端部材と、
前記無孔管の挿入反対方向にある他端に螺合されている、蓋部材と、
前記無孔管の内部に内挿され、該無孔管の内部にある固形浄化材と前記蓋部材との間に介在して、該固形浄化材を直接的もしくは間接的に押圧する弾性部材と、を有する、管ユニットを地面から帯水層に挿入して、地盤に前記固形浄化材からなる浄化杭を施工する、浄化杭の施工方法であって、
前記先端部材に前記無孔管の一端を遊嵌し、該無孔管を順次継ぎ足しながら、該先端部材を前記帯水層よりも以深の所定深度まで挿入する、A工程と、
前記無孔管の内部に、前記帯水層の上面もしくは上面近傍まで前記固形浄化材を供給する、B工程と、
前記固形浄化材の上方に前記弾性部材を配設し、杭打ち機の備える先端治具に取り付けられている前記蓋部材を介して、前記弾性部材を下方へ押圧した状態で、該蓋部材を前記無孔管の他端に螺合する、C工程と、
前記杭打ち機にて前記無孔管を引き抜き、前記先端部材と前記固形浄化材を地盤に残置して前記浄化杭を施工する、D工程と、を有することを特徴とする、浄化杭の施工方法。
【請求項8】
前記先端部材は、
地盤への挿入方向に縮径し、挿入反対方向の上端面が最大径となっている、先端コーンと、
前記上端面から立設して、該上端面よりも小径の円柱体とを有し、
前記円柱体に前記無孔管の先端が遊嵌され、
前記C工程では、前記弾性部材が、前記無孔管の内部において前記固形浄化材を直接的もしくは間接的に押圧している状態において、該弾性部材を前記円柱体の高さよりも大きな縮み量で縮ませていることを特徴とする、請求項7に記載の浄化杭の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管ユニットと浄化杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有害物質で汚染された地下水の長期的な拡散防止を図る方法として、揚水処理による方法があり、より確実で施工後はメンテナンスフリーで汚染地下水の拡散を防止可能な透過性浄化壁もある。
透過性浄化壁は、汚染地下水が通過する際に分解作用や吸着作用がある反応材(鉄粉や活性炭などの浄化材)を含む浄化杭を、汚染地下水の拡散を防止したい敷地境界等に沿って設置するものである。具体的な施工方法は、地盤改良の分野において、軟弱地盤に透水性の高い砂杭を設置するサンドコンパクションパイル工法などで適用される全旋回オールケーシングによる施工が可能な大型重機(大型クレーン、もしくはBG機(油圧式多機能大口径削孔機))により1m前後の径のケーシングパイプを打ち込み、その中の土壌を全て掘削後に反応材と母材(砕石等)を混合した資材で置換する方法である。
この浄化方法では、浄化杭を設置した中を地下水が通過しなければ浄化効果が得られないことから、大孔径の浄化杭を近接もしくはラッピングさせながら透過性浄化壁を施工する必要がある。また、地下水の拡散防止を図りたい敷地境界の近くまで土地利用されている場合も多く、このような場合には、大型重機で施工するために敷地外の土地を占有して工事を行う必要があるため、敷地外の土地を占有することが難しい場所においては、透過性浄化壁を施工することができないといった課題がある。
【0003】
物理化学的な反応を有する浄化材を用いずに、地盤中の有用微生物を用いて有害化学物質の長期的な拡散を防止する技術として、バイオバリアがある。この技術は、溶存性の有機物を少しずつ長期的に放出することができる固形の徐放性有機物(ポリ乳酸などの生分解性プラスチックやステアリン酸などの高級脂肪酸などの高分子化合物)を、揮発性有機塩素化合物や硝酸性窒素で汚染された地下水が存在する帯水層に設置することにより、長期的に帯水層(地下水)中に存在する嫌気性の浄化菌が活性化するゾーンを形成することによって、汚染物質の拡散を防止する。粒状の徐放性有機物(以下、固形浄化材)を帯水層に設置できれば、透過性浄化壁と同様に、長期的にメンテナンスフリーで汚染地下水の拡散を防止することが可能になる。
従来、硝酸性窒素で汚染された地下水を浄化するべく、透過性浄化壁の設置方法と同様に大型重機を用いて固形浄化材を帯水層に設置する施工が行われているが、透過性浄化壁と同様に、狭隘な土地の場合には施工が不可能であり、施工費が高くなるといった同様の課題がある。
【0004】
そこで、大型重機を使用しない方法として、特許文献1には、固形の徐放性有機物を微粉化して水と混合し、スラリー状にした懸濁液を井戸等の注入管から帯水層に供給する汚染地下水の浄化方法が提案されている。この浄化方法によれば、小型重機を用いて注入管を設置し、そこから浄化材を注入することにより施工が可能になる。しかしながら、固形浄化材を微粉化する必要があるために浄化材の製作コストが高くなることに加えて、固形浄化材の粒径が小さくなることにより、地盤内での浄化材の寿命も短くなり、長期的に浄化効果を維持することが難しくなるといった懸念がある。
バイオバリアは、固形浄化材からゆっくりと溶出した溶存性の有機物が地下水を介して帯水層中に広がることから、透過性浄化壁の施工のように浄化材をラッピングさせる必要が無く、一定間隔で浄化材を設置できれば、敷地境界に沿って嫌気的な地下水環境の範囲(嫌気性の浄化細菌による浄化ゾーン)を長期的に形成することが可能になる。従って、バイオバリアでは、浄化杭は必ずしも大孔径である必要はなく、嫌気環境を形成できる一定のピッチで(間隔を置いて)小孔径の浄化杭を設置できればよい。
【0005】
一方、空気や液体を供給して浄化を図る有孔管材が、特許文献2に提案されている。具体的には、管体の外周に、管体の長尺方向が長さ方向となる細長い矩形状の複数のスリットが形成され、内外が連通される有孔管材であり、スリットは幅が0.2mm乃至0.6mmに形成されるとともに、複数のスリットの総開口面積が管体の内空断面積の3倍以下に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-143918号公報
【特許文献2】特開2012-193534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の有孔管材は、地盤内において残置されることを前提としたものであり、有孔管材の備えるスリットを介して地下水を取り込むことは可能であるが、スリットに目詰まりが生じる可能性が高く、浄化性能が低下する恐れがある。そのため、仮に有孔管材の内部に固形浄化材を充填したとしても、固形浄化材が地盤に造成された裸孔に直接充填されることにより形成される浄化杭(有孔管材に包囲されていない浄化杭)と比べて、浄化性能が劣ることに疑いの余地はない。
【0008】
そこで、裸孔に浄化材を直接充填して浄化杭を施工する方法を考察すると、この施工方法は、掘削した裸孔内に浄化材を直接充填することから、施工が容易であり、浄化杭の設置に要する時間も短くなるものの、浄化杭の設置対象となる地盤が砂層地盤などの場合には、裸孔が崩れ易く、裸孔内の所定深度に所定量の固形浄化材を充填することが難しくなるといった固有の課題を有している。さらに、通常使用される固形浄化材は水よりも比重が軽く、裸孔内に地下水が存在すると浄化材を地下水位より下方に設置することが難しくなるといった課題も有している。
そこで、他の方法として、地盤内に井戸を設置し、井戸の内部に浄化材を充填する方法が考えられる。この方法では、固形浄化材の周囲の井戸により、周辺の土砂が流入し難い空間を井戸により確保できるものの、井戸の施工に時間を要し、例えば10m程度の井戸を1本施工するのに1日程度を要する。また、井戸の掘削径(通常φ100mm程度)に対して、施工後の井戸管の有効内径は50mm程度になるため、時間をかけても地盤内に設置できる浄化杭の体積は小さくなり、作業効率が悪いといった固有の課題がある。
【0009】
以上のことから、コストが一般に安価な粒状の浄化材を、長期的に効果が持続でき、設置後に透水性を損なわない(微粉の固形浄化材や飴状の材料と比較して透水性が下がらない)態様で地盤内に設置でき、狭隘な場所でも小型重機を用いて効率良く(設置時間が短く、設置コストが安く、作業が容易である)施工することのできる、浄化杭の施工方法が望まれている。
【0010】
本発明は、小型重機でも施工が可能であり、良好な施工性の下で施工でき、浄化性能に優れている、浄化杭を施工する際に適用される管ユニットと、この管ユニットを適用する浄化杭の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による管ユニットの一態様は、
地盤に挿入されて、内部に供給された固形浄化材を地盤に残置して浄化杭を施工する際に適用される、管ユニットであって、
無孔管と、
前記無孔管の挿入方向にある一端が遊嵌されている、先端部材と、
前記無孔管の挿入反対方向にある他端に螺合されている、蓋部材と、
前記無孔管の内部に内挿され、該無孔管の内部にある前記固形浄化材と前記蓋部材との間に介在して、該固形浄化材を直接的もしくは間接的に押圧する弾性部材と、を有することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、無孔管と、無孔管の挿入方向の一端に遊嵌されている先端部材と、無孔管の挿入反対方向の他端に螺合される蓋部材と、無孔管の内部において固形浄化材と蓋部材との間に介在して固形浄化材を直接的もしくは間接的に押圧する弾性部材とを有することにより、小型重機を用いて、狭隘な敷地境界等においても先端部材と無孔管を所定深度まで挿入し、無孔管の内部に固形浄化材を充填することによって浄化杭を施工でき、安価な固形浄化材を地盤の帯水層に可及的短時間に設置することが可能になる。
ここで、「固形浄化材と蓋部材との間に介在して、固形浄化材を直接的もしくは間接的に押圧する弾性部材」とは、例えば、不飽和層が地表にある場合は、この層厚に対応した長さの表層管(内挿管)や粒状の重し材(玉砂利や珪砂等)にて固形浄化材を押圧することにすると、弾性部材は間接的に固形浄化材を押圧することになり、一方で、不飽和層が地表になく、表層管が不要の場合は、弾性部材が固形浄化材を直接的に押圧することを意味している。
【0013】
また、所定深度までの長さを備える管ユニットを地盤内に設置するに当たり、少なくとも、所定長さの無孔管同士が継ぎ足されながら、先端部材が地盤の帯水層よりも以深の所定深度まで挿入されるのがよい。ここで、管ユニットを構成する先端部材と無孔管の地盤への挿入方法としては、静的圧入(フィード)や、振動貫入(バイブロ)などが挙げられる。
【0014】
また、本発明による管ユニットの他の態様において、
前記弾性部材は、バネと、該バネの両端にある円板と、を有することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、バネと、バネの両端にある円板とを有する弾性部材を適用することにより、弾性部材を安全かつ容易に使用できる。例えば、バネの両端に対して、鋼製の円板を溶接等により接続できる。
【0016】
また、本発明による管ユニットの他の態様において、
前記挿入反対方向にある前記円板には、弾性部材を回収する際に適用される回収部材の端部の雄ネジが螺合する雌ネジが設けられていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、弾性部材を形成する挿入反対方向にある円板に雌ネジが設けられ、弾性部材を回収する際に適用される回収部材の端部の雄ネジが雌ネジに螺合されることにより、無孔管の内部から弾性部材を容易に回収することができる。
【0018】
また、本発明による管ユニットの他の態様は、
前記地盤が表層の不飽和層と、該不飽和層の下方にある帯水層とを有する場合に、
前記無孔管の内部において、前記固形浄化材と前記弾性部材との間に、表層管もしくは粒状の重し材が内挿され、前記弾性部材が該表層管を介して間接的に該固形浄化材を押圧することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、対象地盤の表層に不飽和層が存在する場合に、不飽和層の層厚に相当する長さを備えた弾性部材と表層管もしくは粒状の重し材(弾性部材と表層管もしくは粒状の重し材の長さの合計が不飽和層の層厚相当である)を有し、表層管の上に弾性部材を配設して下向きに押圧することにより、粒状の固形材料を無孔管の内部において所定深度まで充填した後、先端部材をその打設が終了した所定深度に位置させた状態で離脱させることが可能になる。
【0020】
また、本発明による管ユニットの他の態様において、
前記先端部材は、
地盤への挿入方向に縮径し、挿入反対方向の上端面が最大径となっている、先端コーンと、
前記上端面から立設して、該上端面よりも小径の円柱体とを有し、
前記円柱体に前記無孔管の先端が遊嵌され、
前記弾性部材が、前記無孔管の内部において前記固形浄化材を直接的もしくは間接的に押圧している状態において、該弾性部材は前記円柱体の高さよりも大きな縮み量で縮んでいることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、先端部材が先端コーンと先端コーンの上端面よりも小径の円柱体とを備え、円柱体に無孔管の先端が遊嵌されることにより、先端部材からの無孔管の取り外し性が良好になる。すなわち、無孔管の内部に固形浄化材が充填された後、無孔管が地上に引き抜かれて浄化杭が施工されることから、無孔管は仮設部材であり、従って、先端部材からの取り外し性が良好であることが好ましい。
また、弾性部材が無孔管の内部において固形浄化材を押圧している状態において、弾性部材が円柱体の高さよりも大きな縮み量で縮んでいることにより、浄化杭を造成した後、先端部材をその打設が終了した所定深度に位置させた状態で、無孔管を先端部材から離脱させて引き抜くことができる。
ここで、円柱体に無孔管の先端が遊嵌された際に、上端面の外郭は無孔管よりも側方に張り出す張り出し部を有し、この張り出し部がフリクションカットを形成していることが好ましい。このようにフリクションカットを有していることにより、地盤内への無孔管の挿入に際して無孔管の挿入性が良好になり、無孔管の挿入時において、無孔管と円柱体との遊嵌箇所の隙間を介して土砂や地下水が外管の内部に浸入することを抑制できる。
【0022】
また、本発明による管ユニットの他の態様において、
前記円柱体に前記無孔管の先端が遊嵌されている状態において、該円柱体と該無孔管の間にグリースが介在していることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、相互に遊嵌されている先端部材の円柱体と無孔管の間の界面にグリースが介在していることにより、無孔管と円柱体との遊嵌箇所の隙間を介して土砂や地下水が無孔管の内部に浸入することを抑制できる。
【0024】
また、本発明による浄化杭の施工方法の一態様は、
無孔管と、
前記無孔管の挿入方向にある一端が遊嵌されている、先端部材と、
前記無孔管の挿入反対方向にある他端に螺合されている、蓋部材と、
前記無孔管の内部に内挿され、該無孔管の内部にある固形浄化材と前記蓋部材との間に介在して、該固形浄化材を直接的もしくは間接的に押圧する弾性部材と、を有する、管ユニットを地面から帯水層に挿入して、地盤に前記固形浄化材からなる浄化杭を施工する、浄化杭の施工方法であって、
前記先端部材に前記無孔管の一端を遊嵌し、該無孔管を順次継ぎ足しながら、該先端部材を前記帯水層よりも以深の所定深度まで挿入する、A工程と、
前記無孔管の内部に、前記帯水層の上面もしくは上面近傍まで前記固形浄化材を供給する、B工程と、
前記固形浄化材の上方に前記弾性部材を配設し、杭打ち機の備える先端治具に取り付けられている前記蓋部材を介して、前記弾性部材を下方へ押圧した状態で、該蓋部材を前記無孔管の他端に螺合する、C工程と、
前記杭打ち機にて前記無孔管を引き抜き、前記先端部材と前記固形浄化材を地盤に残置して前記浄化杭を施工する、D工程と、を有することを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、A工程において、先端部材に無孔管を遊嵌し、所定長さの無孔管を順次継ぎ足しながら先端部材を帯水層よりも以深の所定深度まで挿入した後、B工程において、無孔管の内部において帯水層の上面もしくは上面近傍まで固形浄化材を供給し、C工程において、固形浄化材の上方に弾性部材と蓋部材を配設し、弾性部材を下方へ押圧した状態で蓋部材を無孔管に固定し、D工程において、無孔管を引き抜いて浄化杭を施工することにより、小型重機を用いて、狭隘な敷地境界等においても浄化杭を施工でき、浄化性能に優れた浄化杭を地盤の帯水層に可及的短時間に設置することができる。
【0026】
また、本発明による浄化杭の施工方法の他の態様において、
前記先端部材は、
地盤への挿入方向に縮径し、挿入反対方向の上端面が最大径となっている、先端コーンと、
前記上端面から立設して、該上端面よりも小径の円柱体とを有し、
前記円柱体に前記無孔管の先端が遊嵌され、
前記C工程では、前記弾性部材が、前記無孔管の内部において前記固形浄化材を直接的もしくは間接的に押圧している状態において、該弾性部材を前記円柱体の高さよりも大きな縮み量で縮ませていることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、弾性部材が無孔管の内部において固形浄化材を押圧している状態において、弾性部材が円柱体の高さよりも大きな縮み量で縮んでいることにより、浄化杭を造成した後、先端部材をその打設が終了した所定深度に位置させた状態で、無孔管を先端部材から離脱させて引き抜くことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の管ユニットと浄化杭の施工方法によれば、小型重機でも施工が可能であり、良好な施工性の下で、浄化性能に優れている浄化杭を施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態に係る管ユニットの一例を構成する先端部材と無孔管の組み付け形態を示す縦断面図である。
【
図2】実施形態に係る管ユニットの一例の縦断面図である。
【
図3】実施形態に係る管ユニットにおいて、弾性部材により固形浄化材を押圧し、蓋部材が無孔管に取り付けられている状態を示す縦断面図である。
【
図4】実施形態に係る管ユニットの他の例の縦断面図である。
【
図5】(a)から(c)の順に、実施形態に係る浄化杭の施工方法の一例の工程図である。
【
図6】
図5に続いて、(a)から(c)の順に、実施形態に係る浄化杭の施工方法の一例の工程図である。
【
図7】
図6に続いて、(a)、(b)の順に、実施形態に係る浄化杭の施工方法の一例の工程図である。
【
図8】実証実験における実地盤の土質柱状図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施形態に係る管ユニットと浄化杭の施工方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0031】
[実施形態に係る管ユニット]
はじめに、
図1乃至
図4を参照して、実施形態に係る管ユニットの一例及び他の例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る管ユニットの一例を構成する先端部材と無孔管の組み付け形態を示す縦断面図である。また、
図2は、実施形態に係る管ユニットの一例の縦断面図であり、
図3は、実施形態に係る管ユニットにおいて、弾性部材により固形浄化材を押圧し、蓋部材が無孔管に取り付けられている状態を示す縦断面図である。さらに、
図4は、実施形態に係る管ユニットの他の例の縦断面図である。
【0032】
管ユニット50(
図2参照)は、対象地盤に対して浄化杭を施工する過程で地盤内に形成される。
図2に示すように、管ユニット50は、無孔管20と、無孔管20の地盤内における挿入方向であるX1方向にある一端21が遊嵌されている、先端部材10と、無孔管20の挿入反対方向であるX2方向にある他端22に螺合される、蓋部材40と、無孔管20の内部に内挿されて無孔管20の内部に充填されている固形浄化材81と蓋部材40との間に介在する弾性部材30とを有する。弾性部材30は、浄化杭の施工過程で固形浄化材81を下方へ押圧する部材である。
【0033】
以下で詳説するように、実施形態に係る浄化杭の施工方法では、
図1に示すように先端部材10と無孔管20が組み付けられ、対象地盤における所定深度まで先端部材10と無孔管20が挿入される。
【0034】
無孔管20は、例えば所定長さの鋼管により形成され、複数の鋼管が機械式継手やネジ継手等によって継ぎ足されることにより、所定深度までの長さを有する無孔管20が形成される。例えば、無孔管20は、STPG(圧力配管用炭素鋼鋼管)40A等の鋼管により形成され、鋼管の一端に雄ネジ(図示せず)を備え、鋼管の他端に雌ネジ(図示せず)を備えており、一方の鋼管の雌ネジに対して他方の鋼管の雄ネジを螺合することにより、鋼管同士が接続される。また、例えば対象地盤のN値が20以下の場合は、STPG50Aを適用することもできる。尚、以下で説明するように、無孔管20は、地盤の帯水層に浄化杭を施工するための仮設部材であり、無孔管20の内部のうち、帯水層に対応する範囲に固形浄化材81が充填された後、無孔管20が地上に引き抜かれて固形浄化材81により形成される浄化杭が帯水層に露出することにより、浄化杭が形成されることになる。
【0035】
図1に示すように、先端部材10は、地盤への挿入方向であるX1方向に縮径して、挿入反対方向の上端面11aが最大径となっている、先端コーン11と、先端コーン11の上端面11aから立設して、上端面11aよりも小径の円柱体12とを有する。図示例は、先端コーン11と円柱体12が一体で製作されている形態であるが、各部材が別体で製作され、ネジ式もしくは溶接等により組み付けられる形態であってもよい。
【0036】
先端部材10は、固形浄化材81とともに地盤内に残置される部材であること、鋼管により形成される無孔管20の先端に遊嵌されて地盤内に貫入される部材であることから、剛性が高い鋼製の素材(S45C等)が好ましく、環境影響の少ない素材である、ステンレス(SUS)や硬質樹脂材等の素材がより好ましい。
【0037】
円柱体12の外径は無孔管20の内径と同一もしくは略同一(無孔管20の内径よりも0.4mm乃至1mm程度小さくて僅かなクリアランスを形成している)であり、円柱体12の外周面12aに無孔管20の先端21の内周面23が遊嵌される。円柱体12と無孔管20の間に僅かなクリアランスがあると、円柱体12から無孔管20を引き抜く際の引き抜き性が良好になる。
【0038】
ここで、先端部材10の先端コーン11の上端面11aに対して無孔管20の先端21の端部が当接され、無孔管20を地盤内へ挿入する際には、無孔管20の先端21に先端部材10を遊嵌し、無孔管20をバイブロドリル等の杭打ち機にて地盤内へ押し込む。また、上記するように、仮設部材である無孔管20は浄化杭の施工後に引き抜かれることから、先端部材10から無孔管20を効率的に分離して引き抜く上でも、双方が遊嵌されている必要がある。
【0039】
図1に示すように、無孔管20の先端21が遊嵌される先端部材10の円柱体12の長さ(高さ)t2は、先端部材10と無孔管20の地盤内への挿入時に、先端部材10が無孔管20の先端21から外れないこと、双方の遊嵌箇所の隙間から土砂や地下水が浸入しないこと(もしくは浸入し難いこと)の双方の観点から設定されるのがよく、一方で、先端部材10からの無孔管20の先端21の取り外し性も合わせ勘案すると、長さt2は可及的に短いことが好ましい。これらのことから、長さt2は、例えば60mm乃至100mm程度に設定できる。
【0040】
また、
図1に示すように、円柱体12の外周面12aと無孔管20の先端21の内周面23の間の界面にグリース15が介在(充填もしくは塗布)しており、このグリース15により、界面から土砂や地下水が無孔管20の内側に浸入することを抑制できる。
【0041】
ここで、適用するグリース15には、ちょう度(グリースの硬さを示す数値)が1号乃至3号の範囲のもので、例えば2号のものが好適であり、可及的に生分解性の高いグリースが望ましい。尚、ちょう度1号は、混和ちょう度範囲(1/10mm)が310乃至340の軟状態であり、ちょう度2号は、混和ちょう度範囲が265乃至295の中間状態であり、ちょう度3号は、混和ちょう度範囲が220乃至250のやや硬状態である。
【0042】
図1において、円柱体12に無孔管20の先端21が遊嵌された際に、先端コーン11の上端面11aの外郭は無孔管20よりも側方に幅t1だけ張り出す張り出し部11bを有しており、この張り出し部11bがフリクションカットを形成している。ここで、フリクションカットの幅t1は、3mm程度かそれ未満に設定できる。
【0043】
このように、先端コーン11の上端面11aの外郭がフリクションカット11bを形成していることにより、地盤内への無孔管20の挿入に際して無孔管20の挿入性が良好になり、無孔管20の挿入時において、無孔管20と円柱体12との遊嵌箇所の隙間を介して土砂や地下水が無孔管20の内部に浸入することを抑制できる。
【0044】
図2に示すように、弾性部材30は、バネ31と、バネ31の両端にある円板32,333とを有する。バネ31には、コイルバネや皿バネ等の圧縮バネが適用される。
【0045】
上方の円板32には雌ネジ32aが設けられており、浄化杭を施工した後、弾性部材30を地上へ回収する際に適用される回収部材(図示せず)の端部の雄ネジが雌ネジ32aに螺合するようになっている。
【0046】
弾性部材30の長さt3は任意に設定してよいが、
図1に示す先端部材10の円柱体12の長さt2以上に縮むことのできる長さを要する。また、図示例は1本の弾性部材30を示しているが、その設置高さと全長が調整できるように、比較的短めの弾性部材30(例えば、20cm乃至30cm程度)を複数個用意しておくのが好ましい。さらに、弾性部材のバネ強度は、先端部材10に十分な反力を与えることができ、かつ、バイブロドリル等の杭打ち機(
図5等参照)によるフィード力(押力)より数値が小さい(バネを縮めることが可能)範囲に設定されるのがよい。例えば、円板32,33の直径とバネ31の外径を35mm程度、バネ31の長さを20cm程度で弾性部材30の全長を21cm程度に設定できる。また、バネ31のその他の仕様としては、バネ定数が38N/mm程度、たわみが64mm程度のものが挙げられる。
【0047】
固形浄化材81を弾性部材30にて押圧することにより、以下の効果が奏される。すなわち、鋼管等により形成される無孔管20の内部に固形浄化材81を充填した後、無孔管20は杭打ち機にて引き上げて回収されることになるが、先端部材10と無孔管20との装着抵抗や無孔管20内に充填された固形浄化材81と無孔管20の内面との摩擦抵抗により、先端部材10が無孔管20から外れずに無孔管20とともに持ち上がってしまう(すなわち、固形浄化材81も所定の深度から上がる)恐れがある。先端部材10をその打設が終了した所定深度に位置させたままで無孔管20を先端部材10から離脱させて引き抜くには、
図3に示すように、先端部材10の円柱体12の上端面11aに対して無孔管20の管内から下向き(X1方向)の反力Pを付与することが肝要である。
【0048】
そこで、管ユニット50では、杭打ち機にて無孔管20を引き上げる際に、下向きに反力Pを常に維持できるように、無孔管20の内部に弾性部材30を配設し、固形浄化材81を押圧させることにしている。
【0049】
より詳細には、
図3に示すように、弾性部材30の上方に配設されている蓋部材40を杭打ち機が下方のX3方向へ押し込むことによって、弾性部材30に押圧力Pを作用させ、押圧力Pによってバネ31を圧縮させ、弾性部材30の長さがt3からt4に短くなることにより、押圧力Pを下方の固形浄化材81を介して円柱体12の上端面12bに作用させる。
【0050】
ここで、蓋部材40は、押し込み材41と、その上端にある蓋材42とを有し、蓋材42はその周面にネジ溝を備えた雄ネジ43を形成している。ここで、図示例は、押し込み材41と蓋材42が一体に製作されている形態を示しているが、双方が別体に製作され、例えば、押し込み材41の端部の雄ネジが蓋材42の雌ネジに螺合される形態であってもよい。
【0051】
一方、無孔管20のうち、挿入反対方向であるX2方向の他端22の内周面には、ネジ溝を備えた雌ネジ24が形成されている。
【0052】
弾性部材30を下方へ押圧する際に杭打ち機にて押し込まれた、蓋部材40の蓋材42の側面の雄ネジ43は、無孔管20の他端22の雌ネジ24に螺合され、弾性部材30を押圧した状態で蓋部材40が無孔管20に固定される。
【0053】
図3に示す弾性部材30が無孔管20の内部において固形浄化材81を押圧している状態において、弾性部材30(のバネ31)は、円柱体12の高さt2よりも大きな縮み量で縮んでいる。すなわち、バネ31の縮み量:Δt=t3-t4>t2の関係式を満たすように、バネ31のバネ定数や長さ等が設定されている。
【0054】
このように、弾性部材30が無孔管20の内部において固形浄化材81を押圧している状態において、弾性部材30が円柱体12の高さt2よりも大きな縮み量で縮んでいることにより、浄化杭を造成した後、先端部材10をその打設が終了した所定深度に位置させた状態で、無孔管20を先端部材10から離脱させて引き抜くことが可能になる。
【0055】
ここで、浄化杭を形成する固形浄化材81は、用途に合う粒状の固形材料を選択するのがよく、バイオバリアでは有機物をゆっくりと放出する徐放性の高分子化合物(生分解性プラスチックや高級脂肪酸)が用いられる。また、汚染物質の吸着をも期待したい場合は、活性炭等も用いられる。
【0056】
図4には、実施形態に係る管ユニットの他の例を示している。この管ユニット50Aは、無孔管20の内部において、固形浄化材81と弾性部材30との間に表層管60(もしくは内挿管)が内挿されている点において、管ユニット50と相違する。尚、図示を省略するが、表層管60に代わり、玉砂利や珪砂等の粒状の重し材が充填される形態であってもよく、この珪砂には、以下の
図7(a)等を参照して説明する珪砂85が適用できる。
【0057】
対象地盤が表層の不飽和層の下方に帯水層を有する場合は、不飽和層に浄化杭を施工する必要がないことから、不飽和層の層厚に相当する長さを備えた弾性部材30と表層管60を固形浄化材81の上方に配設し、弾性部材30が表層管60を介して間接的に固形浄化材81を押圧する構成とする。
【0058】
表層管60も鋼管により形成され、例えば、STPG25Aを適用できる。ここで、図示例は、1本の表層管60を示しているが、例えば1m以下で長さが異なる複数種の表層管を用意しておき、固形浄化材81に接する箇所以外の端部にネジ溝を設けておき、異種の表層管をネジ接続することによって表層管の全長を所望に調整できるようにしておいてもよい。
【0059】
表層管60の下端面、すなわち、粒状の固形浄化材81と接触する面は、粒状の固形浄化材81が表層管60の内部に入らないように、固形浄化材81の寸法よりも小さなメッシュ径のメッシュ孔62を備えた下蓋61が、表層管60の下端に接続されている。また、その他、鋼製のパンチングメタル等を表層管に接続(溶接等)してもよい。尚、表層管60に代わって玉砂利や珪砂等の粒状の重し材を充填する場合は、重し材が固形浄化材81の中に入らないように固形浄化材81よりも大きな粒径の重し材を適用することを基本とする。また、重し材の形状としては、無孔管20の内径との間の抵抗を小さくするために球状の材料が好ましく、角張った砕石等は使用しない。また、その他、比重の大きな鉄球を用いてもよい。
【0060】
尚、管ユニット50Aでは、弾性部材30を設置する総延長が1m程度になるように表層管60の長さ(高さ)を調整しておき、例えば複数の弾性部材30を無孔管20の内部に挿入し、弾性部材30の上端が無孔管20の上端から5cm乃至15cm程度突出するように設定しておくことにより、杭打ち機による施工性が良好になる。
【0061】
[実施形態に係る浄化杭の施工方法]
次に、
図5乃至
図7を参照して、実施形態に係る浄化杭の施工方法の一例について説明する。ここで、
図5(a)~(c)、
図6(a)~(c)、及び
図7(a)、(b)は順に、実施形態に係る浄化杭の施工方法の一例の工程図である。
【0062】
図示例の対象地盤は、表層から順に、不飽和層G1、帯水層G2、及び不透水層(シルト・粘土)G3を有し、帯水層G2が浄化対象層となる。
【0063】
浄化杭の施工方法では、まず、
図5(a)に示すように、所定長さ(例えば1m)の鋼管により形成される無孔管20の先端に先端部材10を遊嵌し、複数の無孔管20を順次継ぎ足しながら先端部材10と無孔管20を地盤内にY2方向に挿入(貫入)していく(A工程)。
【0064】
ここで、
図1を参照して説明したように、先端部材10の円柱体12と無孔管20の先端21の内周面23の間にグリース15を介在させておき、円柱体12と無孔管20の内周面23の界面を介して、土砂や地下水が無孔管20の内部に浸入することを防止しておくのが好ましい。無孔管20の内部の地下水の存在状況を地下水位計により確認し、無孔管20の内部に地下水が存在する場合には採水器を用いて可能な限り地下水を取り除き、その後は可及的速やかに固形浄化材81を投入する。
【0065】
先端部材10と無孔管20を地盤内へ挿入する図示例の杭施工機100は、フィード(圧入)とバイブロ(上下振動)により、鋼管により形成される無孔管20を地盤に打設できる、クローラータイプで小型重機のバイブロドリルである。
【0066】
バイブロドリル100は、リーダ102と、リーダ102に沿ってY1方向に昇降するバイブロ104と、バイブロ104の先端に設けられているスピンドル106(先端治具の一例)を備えており、スピンドル106に取り付けられている第一チャック108を介して無孔管20の上端が固定される。
【0067】
先端部材10と無孔管20の打設において、比較的柔らかい地盤ではバイブロドリル100によるフィードにより、また、固い地盤ではバイブロドリル100によるバイブロにより、先端部材10と無孔管20を所定深度まで打設する。この所定深度は、先端部材10の円柱体12が帯水層G2と不透水層G3の境界近傍に位置する深度である。
図5(a)に示すように、円柱体12が帯水層G2と不透水層G3の境界近傍に位置する深度に到達した段階で、先端部材10と無孔管20の地盤内への挿入が完了する。
【0068】
次に、
図5(b)に示すように、地上から突出した無孔管20の上端に漏斗28を設置し、無孔管20の内部へ固形浄化材81をY3方向に投入し、帯水層G2の層厚に対応する範囲に固形浄化材81を充填する(B工程)。
【0069】
次に、
図5(c)に示すように、無孔管20の内部に、不飽和層G1の所定深度(例えば、無孔管20の上端から1m程度下方の深度)までの長さを有する表層管60を挿入した後、無孔管20の上端に漏斗28を設置し、漏斗28を介して水道水等の水70を無孔管20の内部にY4方向に注入する。ここで、注入される水70は、地下水位と同程度か地下水位より高い位置まで注入することにより、先端部材10の円柱体12と無孔管20の先端21の内周面23の界面を介して、土砂や地下水等が無孔管20の内部へ浸入することを防止できる。尚、既述するように、不飽和層G1の所定深度までの長さを有する表層管60を挿入する代わりに、粒状の重し材を充填してもよい。
【0070】
次に、
図6(a)に示すように、無孔管20の内部の表層管60の上方に弾性部材30を挿入する。そして、バイブロドリル100のスピンドル106には、
図5(a)に示す第一チャック108に代えて別途の第二チャック110(先端治具の一例)を取り付け、第二チャック110に蓋部材40を固定する。第二チャック110と蓋部材40の固定は、一方にある雌ネジに対して他方にある雄ネジをネジ接続する等により行うことができる。
【0071】
弾性部材30の上端面は無孔管20の上端面より10cm程度下方に位置するようにして、弾性部材30の高さを調整したり、弾性部材30の数を調整したりする。
【0072】
図6(a)では、先端部材10と、無孔管20と、表層管60と、弾性部材30と、蓋部材40が相互に配設されて、管ユニット50Aを形成している。尚、不飽和層G1が存在しない地盤においては、表層管60が不要になることから、
図6(a)の段階で、表層管60を具備しない管ユニット50が形成されることになる。
【0073】
図6(a)に示すように、バイブロドリル100のスピンドル106に第二チャック110を取り付け、第二チャック110に蓋部材40を取り付けた後、
図6(b)に示すように、蓋部材40をフィードでY5方向に押し込みながら、弾性部材30を収縮させ、弾性部材30の下方にある表層管60を介し、固形浄化材81を介して先端部材10の円柱体12を押圧力Pにて押圧する。そして、弾性部材30(のバネ31)が円柱体12の高さよりも大きな縮み量で縮んでいる状態となった段階で、蓋部材40を無孔管20の上端に固定(螺合)する(以上、C工程)。
【0074】
次に、
図6(c)に示すように、無孔管20の位置を変えずにバイブロ操作を行い、その後に、バイブロを継続しながら、少なくとも先端部材10の円柱体12より長い距離についてはバイブロ操作でゆっくりと無孔管20をY6方向に引き上げる。
【0075】
次に、無孔管20の内部から弾性部材30を取り出し、無孔管20内にある表層管60の深度を確認し、設置深度が変わっていなければ、先端部材10から無孔管20が外れていると判断して、無孔管20から表層管60も取り出す。
【0076】
次に、
図7(a)に示すように、無孔管20の上端に漏斗28を設置し、漏斗28を介して珪砂85をY7方向に投入し、無孔管20の内部における不飽和層G1に対応する範囲に珪砂85を充填する。ここで、珪砂85の他に、川砂利や山砂等が適用されてもよい。尚、既述するように、表層管60を挿入する代わりに、珪砂85等からなる粒状の重し材を充填する場合は、不飽和層G1において既に珪砂85等が充填されていることから、
図7(a)に示すような不飽和層G1に対する珪砂85の充填は不要になる。
【0077】
次に、
図7(b)に示すように、無孔管20にバイブロをかけながら、充填した固形浄化材81や珪砂85が共上がりしない速度でY8方向に引き抜くことにより、帯水層G2に浄化杭80が施工される(以上、D工程)。尚、図示を省略するが、無孔管20を引き抜いた後、地上の養生(舗装等)を行う。
【0078】
図示例の浄化杭の施工方法によれば、A工程において、先端部材10に無孔管20を遊嵌し、所定長さの無孔管20を順次継ぎ足しながら先端部材10を帯水層G2よりも以深の所定深度まで挿入した後、B工程において、無孔管20の内部において帯水層G2の上面もしくは上面近傍まで固形浄化材81を供給し、C工程において、固形浄化材81の上方に表層管60と弾性部材30と蓋部材40を配設し、弾性部材30を下方へ押圧した状態で蓋部材40を無孔管20に固定し、D工程において、無孔管20を引き抜いて浄化杭80を施工することにより、小型重機を用いて、狭隘な敷地境界等においても浄化杭80を施工でき、浄化性能に優れた浄化杭80を地盤の帯水層G2に可及的短時間に設置することが可能になる。
【0079】
[実証実験]
次に、本発明者等により実施された実証実験について説明する。この実証実験は、2種類の粒状の固形材料(固形浄化材:平均粒径約4mmの生分解性プラスチックと、平均粒径が約1mmの高級脂肪酸)による浄化杭を施工する実験である。
【0080】
図8に、実験対象である実地盤の土質柱状図を、地下水位、地盤強度(N値)とともに示す。本サイトでは、埋土(地表から1mまで)に大きな礫等が存在していたため、ケーシング削孔を行って約10cmの縦穴を造成後、外管である鋼管を打設した。また、表面に舗装が施されている場合は、コアカッター等により舗装を除去することとした。2種類の固形浄化材の施工結果を以下の表1に示す。
【0081】
【0082】
表1より、2種類の固形浄化材を所定の深度に設置できることが実証されている。また、設置に要する時間は、2種類の固形浄化材ともに、作業の休止時間を除いて約60分と極めて短時間で施工を行えることが実証されている。
【0083】
このように、実施形態に係る浄化杭の施工方法によれば、以下の効果が奏される。
【0084】
まず、従来の施工方法のように井戸管(例えばVP50の塩ビ管)に浄化材を設置するよりも、5乃至10倍の速さで浄化杭を施工することが可能になる。また、1本当たりに設置できる粒状の固形浄化材の量は、井戸管の設置と同等になる(1日当たりでは、5乃至10倍量の材料を設置できる)。
【0085】
また、管ユニットのうち、先端部材以外の構成部材は繰り返し使用が可能になる。また、削孔作業と粒状の固形浄化材充填作業はいずれも容易であり、熟練度を必要としない。
【0086】
また、作業に伴い、排水(汚染地下水)や掘削土(汚染土壌)はほとんど発生しない。そして、小型重機での施工が可能であり、騒音や振動も比較的小さいことから、都市部などの狭隘な場所での施工に好適である。
【0087】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0088】
10:先端部材
11:先端コーン
11a:上端面
11b:張り出し部(フリクションカット)
12:円柱体
15:グリース
20:無孔管
21:一端
22:他端
23:内周面
24:雌ネジ
28:漏斗
30:弾性部材
31:バネ
32,33:円板
32a:雌ネジ
40:蓋部材
41:押し込み材
42:蓋材
43:雄ネジ
50,50A:管ユニット
60:表層管
61:下蓋
62:メッシュ孔
70:水
80:浄化杭
81:固形浄化材
85:珪砂
100:バイブロドリル(杭施工機)
102:リーダ
104:バイブロ
106:スピンドル(先端治具の一例)
108:第一チャック
110:第二チャック(先端治具の一例)
G1:不飽和層
G2:帯水層
G3:不透水層
P:押圧力(反力)