(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142120
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】回転機のメンテナンス装置及びメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
H01R 39/56 20060101AFI20220922BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20220922BHJP
H02K 13/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H01R39/56
H02K15/02 P
H02K13/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042140
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】土谷 摂
(72)【発明者】
【氏名】藤井 克彦
(72)【発明者】
【氏名】正岡 英樹
(72)【発明者】
【氏名】和田 真由
【テーマコード(参考)】
5H613
5H615
【Fターム(参考)】
5H613AA06
5H613BB05
5H613BB15
5H613BB23
5H613GA04
5H613KK18
5H613PP01
5H613PP05
5H613PP10
5H613QQ01
5H613RR01
5H615AA05
5H615BB01
5H615BB02
5H615BB14
5H615PP26
5H615SS08
(57)【要約】
【課題】研磨砥石の長寿命化を図ることで回転機製品のメンテナンスコストを低減し、回転機製品の環境価値を高める。
【解決手段】
回転機内のロッドで前記回転機のシャフトに固定されたスリップリングに砥石を当接させた状態で前記シャフトを回転させる回転機のメンテナンス装置であって、砥石と、前記砥石が嵌合支持される砥石ストッパと、砥石ストッパを前記ロッドに締結固定しつつ、前記砥石ストッパを所定量押し付ける砥石ホルダと、を備え、前記砥石ストッパは、前記シャフトの内外径方向及び両周方向に対して前記砥石を篏合支持し、かつ前記シャフトの軸方向に前記砥石を取り出し可能とされていることを特徴とする回転機のメンテナンス装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機内のロッドで前記回転機のシャフトに固定されたスリップリングに砥石を当接させた状態で前記シャフトを回転させる回転機のメンテナンス装置であって、
砥石と、前記砥石が嵌合支持される砥石ストッパと、砥石ストッパを前記ロッドに締結固定しつつ、前記砥石ストッパを所定量押し付ける砥石ホルダと、を備え、
前記砥石ストッパは、前記シャフトの内外径方向及び両周方向に対して前記砥石を篏合支持し、かつ前記シャフトの軸方向に前記砥石を取り出し可能とされていることを特徴とする回転機のメンテナンス装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記砥石は、前記砥石ストッパに対して嵌合支持する側面と、研磨に用いる複数の側面とを別に備えていることを特徴とする回転機のメンテナンス装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記砥石は、前記研磨に用いる複数の側面は互いに対向する面であることを特徴とする回転機のメンテナンス装置。
【請求項4】
請求項1において、
研磨面として用いられる側面は、前記砥石ストッパに嵌合支持される側面より幅が広いことを特徴とする回転機のメンテナンス装置。
【請求項5】
砥石ホルダを回転機のロッドに固定し、前記砥石ホルダに支持された砥石ストッパと、前記砥石ストッパに支持された砥石を備えたメンテナンス装置を用い、前記回転機のスリップリングに対して前記砥石を当接して前記スリップリングを研磨する回転機のメンテナンス方法において、
前記砥石を側方回転または反転させて向きを変えて前記砥石ストッパに嵌合支持させ直すことで、1つの砥石の複数の研磨面を研磨に利用することを特徴とする回転機のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機運転中にスリップリングの摺動面を研磨する回転機のメンテナンス装置及びそのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スリップリングを備えた回転機において、スリップリングには、電動機や発電機の運転中に、振動、衝撃、電流容量の不足、周囲温度、そのほかの理由により、その表面(摺動面)に、異物の付着や、くすみ、焼け付き、梨地等の微小な面荒れが発生する。
【0003】
特許文献1には、ブラシホルダ内のブラシの1個を取り外して、ブラシと同じ寸法の研磨砥石をはめ込んでブラシ押さえ金具で加圧しながら、または砥石上部を専用ホルダで押さえながら電動機を回転させることにより研磨することが開示されている。
【0004】
さらに、特許文献1には、ブラシホルダとは別の研磨装置(メンテナンス装置)を、接続ボルトでブラシホルダに接続する構成及び研磨代調整機構の高さ設定により、研磨砥石裏面から押す板バネをロックする研磨代調整技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の研磨砥石は研磨面が1つで、所定量の研磨代になった場合、廃棄・リサイクル処分となる。
【0007】
しかし、近年、サステナブルな環境価値の高い社会を実現する動きが活発化し、廃棄物削減の観点から研磨砥石の長寿命化が必要となってきた。
【0008】
このことから本発明の目的とするところは、メンテナンス装置における研磨砥石の長寿命化を図ることで回転機製品のメンテナンスコストを低減し、回転機製品の環境価値を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は上記目的を達成する手段を複数含むものであり、例を示すと次のとおりである。
【0010】
(1)回転機内のロッドで前記回転機のシャフトに固定されたスリップリングに砥石を当接させた状態で前記シャフトを回転させる回転機のメンテナンス装置であって、
砥石と、前記砥石が嵌合支持される砥石ストッパと、砥石ストッパを前記ロッドに締結固定しつつ、前記砥石ストッパを所定量押し付ける砥石ホルダと、を備え、
前記砥石ストッパは、前記シャフトの内外径方向及び両周方向に対して前記砥石を篏合支持し、かつ前記シャフトの軸方向に前記砥石を取り出し可能とされていることを特徴とする回転機のメンテナンス装置。
【0011】
(2)砥石ホルダを回転機のロッドに固定し、前記砥石ホルダに支持された砥石ストッパと、前記砥石ストッパに支持された砥石を備えたメンテナンス装置を用い、前記回転機のスリップリングに対して前記砥石を当接して前記スリップリングを研磨する回転機のメンテナンス方法において、前記砥石を側方回転または反転させて向きを変えて前記砥石ストッパに嵌合支持させ直すことで、1つの砥石の複数の研磨面を研磨に利用することを特徴とする回転機のメンテナンス方法。」としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、メンテナンス装置における研磨砥石の長寿命化を図ることで回転機製品のメンテナンスコストを低減し、回転機製品の環境価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】発電機のスリップリングの研磨状態を示す概略断面例を示す図。
【
図2】発電機の軸方向から見たメンテナンス装置の設置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。実施例1では、スリップリングを備えた回転機である発電機を例にして、回転機のメンテナンス装置について説明し、実施例2ではメンテナンス方法について説明する。
【実施例0015】
図1は、発電機のスリップリングの研磨状態を示す概略断面図である。
図1に示す如く、本実施例の発電機は、本体フレーム1の中に、エンジン(図示せず)で回転されるシャフト10、シャフト10に固定された回転子2、この回転子2の径方向に所定間隙を持って対向配置された固定子3、シャフト10に固定された4本のスリップリング4を備えている。
【0016】
スリップリング4は回転子2に給電する給電装置の部品であり、回転子2のコイルに配線が接続されている。スリップリング4は、シャフト10がエンジンに直結されているため、エンジンのアイドリング回転を利用し、研磨することができる。その際、安全のため、人が接触しないメンテナンス装置として研磨装置11を用いる。
【0017】
図1の発電機は、本体フレーム1の一部に点検カバー12が設けられており、点検を行うときにはここを開放して、内部機構の点検を実施する。例えば、通常運転時には本体フレーム1から軸方向に延伸する2本のロッド5にブラシホルダを設置するが、
図1のスリップリングの研磨時にはブラシホルダに代えてロッド5に研磨装置11を設置する。そして、研磨装置11に保持された砥石7を押さえ金具で加圧しながらスリップリング4表面に当接させ、エンジンをアイドリング回転させることによりスリップリング4を回転させ、その表面を研磨する。
【0018】
図2は、発電機の軸方向から見た研磨装置の設置例を示している。本実施例の研磨装置11は、砥石ホルダ6、砥石7、砥石ストッパ(下部砥石ストッパ8a、上部砥石ストッパ8b)を備えている。
【0019】
[砥石ホルダ6]
砥石ホルダ6は砥石7、砥石ストッパをスリップリング4の法線方向に移動可能に支持し、スリップリング4に対して砥石7を押し付けるように、砥石7、ストッパ8に圧力を付与する。具体的には、砥石ストッパを介してスリップリング4に対して砥石7を圧接する圧力を付与する砥石ストッパ押さえ金具13と、ロッド5に挿入した状態で締結固定する2つの締結金具14と、を備えている。
【0020】
[砥石7]
図3の左図は、砥石7の平面図(シャフト10の軸方向から見た図)、右図は、側面図(シャフト10の径方向から見た図)を示している。
図3に示すように、砥石7は、
図3の平面図で六角形となる六角柱であり、六角形の上下の2面(7a,7b)が研磨面、六角形の左右の4側面(7c)が支持面として機能するように、砥石ストッパ8の嵌合孔に嵌合支持されている。
【0021】
[砥石ストッパ8]
砥石ストッパ8は磁石ホルダ6と連携して砥石の研磨量を機械的に制御する。本実施例のスリップリング4の研磨はエンジンのアイドリングを利用するため、シャフト10の回転を研磨用に制御できないが、砥石7の研磨量を機械的に制御する砥石ストッパ8を用いることで、過度な研磨を防止している。この砥石ストッパは、下部砥石ストッパ8aと、上部砥石ストッパ8bを備えている。
【0022】
下部砥石ストッパ8aは、スリップリング4に対向する面から砥石7が露出及び突出し、砥石7が
図2中正面方向(シャフト10の軸方向)から嵌合可能な嵌合孔を備えている。この嵌合孔は、
図2中上下左右(シャフト10の径方向及び周方向)への砥石7の位置ズレ(移動)を防げるようになっている。
【0023】
上部砥石ストッパ8bは、下部砥石ストッパ8aの上部において、
図2中上下方向(シャフト10の径方向)から嵌合支持可能に構成されている。
【0024】
図4の左図は、砥石ストッパ8の平面図(シャフト10の軸方向から見た図)、右図に側面図(シャフト10の径方向から見た図)を示している。
図4左図のように、直方体の下部砥石ストッパ8aの下側に砥石7を篏合固定可能にする嵌合孔がある。具体的には、砥石7の下面7bがd3の高さだけ露出するように、嵌合孔の上の高さより嵌合孔の下の高さを小さくする(d1>d2)。つまり、砥石7の下面よりも嵌合孔の下面が高くなるように薄くなっている。
【0025】
スリップリング4は
図2中、右または左方向に回転するため、摩擦力で砥石7は回転方向に押されることになる。また、砥石ストッパ押さえ金具13による押圧やその反力もかかる。しかし、砥石7の側面7cが下部砥石ストッパ8aの嵌合孔の側面に当接するため、これらの力による平面図の上下左右の位置ズレ(移動)が制限される。そして、スリップリング4の回転停止後は、
図2及び
図4左平面図中の左右方向に篏合支持されている砥石7を
図4左平面図中の前後方向に簡単に取り出すことができる。したがって、必ずしも接着剤が不要となり、砥石7の交換の際に、接着剤の塗布、剥離工程が不要となる。
【0026】
以上のように、本実施例の砥石7は、上下面と側面のなす角、側面同士のなす角及び側面がが研磨に用いられず、砥石7の下部砥石ストッパ8aの嵌合孔に対する嵌合支持の状態が研磨による摩耗の影響を受けないので、上下面の2面を研磨面として利用可能となる。
[砥石変形例]
図5は砥石の平面形状を示す図である。
図1から
図4の平面図例では、対向する上下1対の側面の幅が広い六角形とした例を示したが、
図5(a)から(c)のように、四角形の4つの角を四角に凹ました十字状、同様にRに凹凸させた形状、同様にテーパにした形状でもよい。これらの例でも、嵌合支持する側面と研磨に用いる側面とを分けて、砥石7の研磨面数を複数確保している点に特徴がある。嵌合支持する側面と研磨に用いる側面とを分けているので、ある研磨面を使用した後に向きを変えて砥石7を再嵌合しても、嵌合支持に影響がでない。なお、
図5の砥石7を用いる場合、下部磁石ストッパ8aの嵌合孔がこれに対応した構造となることは言うまでもない。
[砥石及び嵌合孔の類型]
図1から
図5の例では、上下に線対称または180度回転対称な形状としたが、90度回転対称な形状としてもよい。具体的には。
図1から
図5の平面形状のように、上下の側面距離を上下方向に離して正六角形や正八角形のように、線対称、90度回転対称または180度回転対称となるN角形(N≧5)にしたり、多角形の角を凹凸またはテーパ状に変形させた形状とするなど、嵌合支持する側面以外に研磨に用いない側面を複数確保できれば他の形状でもよい。
処理ステップS4では、エンジンを回転させて研磨状態に入り、処理ステップS5では、砥石交換の必要性を判断する。砥石交換の必要性が生じていない場合には、処理ステップS6に移行して研磨継続の可否を判断する。
なお処理ステップS6の判断により、研磨継続不要となった場合には、処理ステップS3,S2,S1の処理を逆にたどり通常運転に復旧する。これらの復旧手順が処理ステップS10,S11,S12である。