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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142128
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】食品包装用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042151
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】396000422
【氏名又は名称】リスパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】浅野 悦男
(72)【発明者】
【氏名】福田 学
(72)【発明者】
【氏名】岩田 高彰
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013AA10
3E013AB01
3E013AE01
3E013AE06
3E013BA02
3E013BB04
3E013BB06
3E013BB08
3E013BF02
3E013BF29
3E013BF33
3E013CB01
3E013CC04
(57)【要約】
【課題】電子レンジに対応した食品包装用容器に関して、加熱時に水蒸気を容器外に排出できるようにするとともに、異物の混入を防止する。
【解決手段】電子レンジに対応した食品包装用容器10は、食品を収容する容器と、容器に取り付けられている発熱体40とを備えている。容器は、容器本体20および蓋体30によって構成されている。発熱体40は、電子レンジのマイクロ波が照射されることによって発熱する。発熱体40が発熱すると、発熱体40が取り付けられている箇所が融解されて容器の内外を通じる通気孔が形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジに対応した食品包装用容器であって、
食品を収容する容器と、
前記容器に取り付けられていて電子レンジのマイクロ波が照射されることによって発熱する発熱体によって構成される発熱部と、を備え、
前記発熱部が取り付けられている箇所を発熱箇所として、前記発熱部が発熱すると前記発熱箇所が融解されて前記容器の内外を通じる通気孔が形成される
食品包装用容器。
【請求項2】
前記発熱部は、前記容器の表面に設けられている
請求項1に記載の食品包装用容器。
【請求項3】
前記発熱部は、前記容器に埋め込まれている
請求項1に記載の食品包装用容器。
【請求項4】
前記容器は、食品が載置される合成樹脂製の容器本体と、前記容器本体に取り付けられて食品の収容空間を閉塞する合成樹脂製の蓋体と、を備え、
前記容器本体および前記蓋体のうち少なくとも一方に前記発熱部が取り付けられている
請求項1~3のいずれか一項に記載の食品包装用容器。
【請求項5】
前記発熱部は、一つの前記発熱体によって構成されており、
前記発熱箇所は、前記発熱体が取り付けられている箇所であり、
前記発熱箇所における前記容器本体または前記蓋体の厚さは、100μm以上350μm以下であり、
前記発熱箇所の面積は、10mm以上である
請求項4に記載の食品包装用容器。
【請求項6】
前記発熱部は、規定の領域内に隣り合って配置されている二つ以上の前記発熱体によって構成されており、
前記発熱箇所は、前記領域内において前記発熱体が取り付けられているすべての箇所であり、
前記発熱箇所における前記容器本体または前記蓋体の厚さは、100μm以上350μm以下であり、
前記領域内における前記発熱箇所の面積を合計した値が10mm以上である
請求項4に記載の食品包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジに対応した食品包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装用容器に収容された食品を電子レンジによって加熱すると、食品から水蒸気が発生する。食品包装容器内に水蒸気が充満すると容器内の圧力が高まる。容器内の圧力が高くなることを防止すべく水蒸気を容器外に排出する構成を備えた容器として、たとえば特許文献1に開示されているように、蒸気排出用の孔が蓋に形成された容器が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されている食品包装用容器では、蒸気排出用の孔は、容器の輸送時および陳列時に異物が容器内部に混入することを防止するために、小さくされたり幅が狭くされたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-172273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水蒸気を排出するための孔を小さくしたり狭くしたりしても、容器に孔が空いている以上、孔から異物が混入するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための食品包装用容器は、電子レンジに対応した食品包装用容器であって、食品を収容する容器と、前記容器に取り付けられていて電子レンジのマイクロ波が照射されることによって発熱する発熱体によって構成される発熱部と、を備え、前記発熱部が取り付けられている箇所を発熱箇所として、前記発熱部が発熱すると前記発熱箇所が融解されて前記容器の内外を通じる通気孔が形成されることをその要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、電子レンジによって食品包装用容器に収容された食品を加熱すると、食品にマイクロ波が照射されるとともに発熱部にマイクロ波が照射される。これによって発熱部が発熱する。発熱部が発熱すると発熱箇所が融解されて通気孔が形成される。この通気孔を介して、電子レンジによる加熱の際に発生する水蒸気を容器外に排出することができる。
【0008】
また、通気孔が形成される加熱前の状態の容器を形状的に気密性の高いものにすることができる。このため、食品包装用容器の輸送時および陳列時には食品が容器の外部に漏出することを防止できる。さらに、容器の内部に埃および虫等の異物が混入することを防止することもできる。このため、食品包装用容器を利用する消費者は、電子レンジによって加熱調理された食品を安心して食することができる。
【0009】
上記食品包装用容器の一例では、前記発熱部は、前記容器の表面に設けられている。
上記食品包装用容器の一例では、前記発熱部は、前記容器に埋め込まれている。
上記食品包装用容器の一例では、前記容器は、食品が載置される合成樹脂製の容器本体と、前記容器本体に取り付けられて食品の収容空間を閉塞する合成樹脂製の蓋体と、を備え、前記容器本体および前記蓋体のうち少なくとも一方に前記発熱部が取り付けられている。
【0010】
上記食品包装用容器の一例では、前記発熱部は、一つの発熱体によって構成されており、前記発熱箇所は、前記発熱体が取り付けられている箇所であり、前記発熱箇所における前記容器本体または前記蓋体の厚さは、100μm以上350μm以下であり、前記発熱箇所の面積は、10mm以上である。
【0011】
上記食品包装用容器の一例では、前記発熱部は、規定の領域内に隣り合って配置されている二つ以上の発熱体によって構成されており、前記発熱箇所は、前記領域内において前記発熱体が取り付けられているすべての箇所であり、前記発熱箇所における前記容器本体または前記蓋体の厚さは、100μm以上350μm以下であり、前記領域内における前記発熱箇所の面積を合計した値が10mm以上である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の食品包装用容器について容器本体および蓋体を示す斜視図。
図2】第1実施形態にかかる食品包装用容器の断面図。
図3】第1実施形態にかかる食品包装用容器における蓋体の正面図。
図4】第1実施形態にかかる食品包装用容器の作用を説明する図。
図5】食品包装用容器の変更例を示す正面図。
図6】食品包装用容器の他の変更例を示す模式図。
図7】第2実施形態の食品包装用容器について容器本体および蓋体を示す断面図。
図8】第2実施形態の食品包装用容器における容器本体と蓋体とが接する部分を拡大した断面図。
図9】第2実施形態にかかる食品包装用容器の作用を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態の食品包装用容器10について、図1図4を参照して説明する。
図1に示すように、食品包装用容器10は、食品を収容することができる容器11と、容器11の表面に設けられている発熱部としての発熱体40と、によって構成されている。容器11は、容器本体20と蓋体30とによって構成されている。容器本体20は、箱状であり、食品を載置することができる。食品包装用容器10は、容器本体20の外縁を覆うように蓋体30を嵌め合わせる、いわゆる外嵌合の容器である。食品包装用容器10は、電子レンジに対応した耐熱性を有する容器である。
【0014】
図1および図2を用いて、容器本体20について説明する。容器本体20は、容器の底を形成する底壁21Aを備えている。容器本体20の一例では、底壁21Aは長方形である。底壁21Aの形状は、たとえば、正方形、円形または楕円形等でもよい。容器本体20は、底壁21Aの縁から上方に延びている側壁21Bを備えている。容器本体20は、底壁21Aと側壁21Bとに囲まれた部分が、食品を収容する収容空間となる。
【0015】
図2に示すように、側壁21Bのうち底壁21Aとは反対側の端部は、容器本体20の外に向かって湾曲した周縁部22を備えている。周縁部22は、容器本体20に蓋体30が取り付けられている状態で蓋体30に接する本体側封止面23を備えている。
【0016】
図1図3を用いて、蓋体30について説明する。蓋体30は、容器本体20に蓋をするための中央部31を備えている。蓋体30は、中央部31の周縁に封止部32を備えている。封止部32は、容器本体20における周縁部22を覆うように嵌め合わせることができる。図2に示すように、封止部32は、容器本体20に蓋体30が取り付けられている状態で周縁部22における本体側封止面23に接する蓋側封止面33を備えている。本体側封止面23と蓋側封止面33とが接することによって、収容空間を閉塞することができる。
【0017】
容器本体20および蓋体30は、耐熱性を有する合成樹脂製のシートを材料として成形されている。合成樹脂製のシートの一例は、二軸延伸ポリスチレンシートである。シートの材料としては、たとえば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンおよびポリエチレン等を採用することができる。容器本体20および蓋体30の材料とするシートは、一枚のシートに他のシートまたはフィルムを積層したものでもよい。
【0018】
容器本体20および蓋体30は、合成樹脂製のシートを熱成形することによって成形できる。熱成形としては、たとえば、熱盤成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形、プラグ成形、またはプレス成形等を採用することができる。
【0019】
図1図3に示すように、蓋体30は、発熱体40を備えている。発熱体40は、蓋体30の表面に取り付けられている。蓋体30および発熱体40は、通気孔V1を形成するための排出構造50を構成している。通気孔V1は、食品包装用容器10に収容された食品を加熱した場合に発生する水蒸気を排出することのできる通路となる。
【0020】
発熱体40は、マイクロ波が照射されることによって発熱する物質を含んでいる。発熱体40は、人に直接接触しても、食品衛生上、人の健康を損なうおそれがない物質によって構成されている。発熱体40の一例は、カーボンブラックを含んでいる。カーボンブラックに替えて、発熱体40としては、アルミニウム、ニッケルおよびクロム等の金属を成分とする合金、または導電性を示す金属酸化物を採用することもできる。その他、発熱体40としては、黒鉛、酸化亜鉛および酸化スズを採用してもよい。発熱体40としては、導電性高分子を採用することもできる。導電性高分子としては、たとえば、ポリアニリン、ポリチオフェンおよびポリアセチレンを挙げることができる。
【0021】
発熱体40は、マイクロ波が照射されることによって発熱するという特性を損なわない範囲であれば添加物を含有していてもよい。たとえば、色材、顔料および分散剤等を含有する発熱体は、デザイン性、用途および色相等の要求に応えることができる。
【0022】
図1および図3に示すように、蓋体30は、二つの発熱体40を備えている。各発熱体40が発熱部を構成している。すなわち、蓋体30は、二つの発熱部を備えている。発熱体40は、蓋体30の中央部31に取り付けられている。二つの発熱体40は、間隔を空けて並んでいる。図3には、発熱部としての発熱体40が取り付けられている部分を発熱箇所31Hとして破線で示している。発熱箇所31Hおよび発熱体40は、円形である。なお、図1図3では、発熱体40を模式的に示している。図示した発熱体40は、実際の発熱体40を示すものではない。図2には、発熱箇所31Hにおける蓋体30の厚さを厚さT1と表示している。厚さT1は、100μm以上350μm以下であるとよい。また、一つの発熱体40の表面積は、10mm以上であるとよい。発熱体40の厚さは、0.5μm~10μmであり、好ましくは1μm~5μmである。発熱箇所31Hの面積は、発熱体40の表面積と等しい。
【0023】
発熱体40を備える蓋体30を製造する方法の一例を説明する。たとえば、カーボンブラックとビニル樹脂とを混合したインキを用いる。まず、インキを合成樹脂製のシートに塗工する。インキを塗工する工程では、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、ホットスタンプ方式等の印刷方式を採用することができる。なお、ここでは、インキの乾燥に伴う表面積および厚さの変化を考慮して、乾燥後の表面積および厚さが発熱体40の表面積および厚さの範囲を満たすようにインキを塗工する。次に、インキを乾燥させてシートの表面に発熱体40を形成する。当該シートを熱成形によって蓋体30に加工することで、発熱箇所31Hに発熱体40を取り付けた蓋体30を製造することができる。これに限らず、合成樹脂製のシートを成形して蓋体30を製造してから、蓋体30の表面にカーボンブラックとビニル樹脂とを混合したインキを塗工することもできる。
【0024】
本実施形態の作用について説明する。
図2および図4を用いて、食品包装用容器10に収容された食品を電子レンジによって加熱する際の作用について説明する。食品包装用容器10に収容された食品を電子レンジによって加熱すると、食品にマイクロ波が照射されるとともに発熱体40にマイクロ波が照射される。発熱体40は、マイクロ波が照射されることによって発熱する。発熱体40が発熱して温度が上昇すると、発熱箇所31Hが融解される。発熱箇所31Hが融解されることで、図4に示すように、蓋体30に通気孔V1が形成される。通気孔V1は、蓋体30に空いた口である。通気孔V1は、容器11の内部および外部と繋がっている。すなわち、蓋体30に通気孔V1が形成されると、容器11の内外が通気孔V1を介して通じる。このため、収容空間が外部に開放される。
【0025】
本実施形態の効果について説明する。
(1-1)食品包装用容器10に収容された食品を電子レンジによって加熱すると、蓋体30に通気孔V1が形成される。これによって、容器本体20に食品が収容されている食品包装用容器10を加熱した場合に、通気孔V1を介して、電子レンジによる加熱の際に発生する水蒸気を容器11の外に排出することができる。
【0026】
(1-2)通気孔V1が形成される加熱前の状態の食品包装用容器10では、収容空間を閉塞することができる。このため、食品包装用容器10の輸送時および陳列時には収容空間を閉塞しておくことができる。これによって、食品包装用容器10の輸送時および陳列時には食品が容器11の外部に漏出することを防止できる。食品包装用容器10の内部に埃および虫等の異物が混入することを防止することもできる。
【0027】
(1-3)蓋体30に通気孔V1が形成されるため、容器内の圧力が上昇することを防止できる。これによって、電子レンジによる加熱中に容器本体20から蓋体30が外れることを防止できる。仮に、電子レンジから容器を取り出す際に蓋体が外れている状態であると、容器本体と蓋体との隙間から漏れ出す水蒸気に手が曝されるおそれがある。蓋体30が外れることを防止できる食品包装用容器10によれば、手が水蒸気に曝されることを防止できる。
【0028】
食品包装用容器10に収容する食品によっては、電子レンジによる加熱によって、内容物の調理を行う場合がある。この場合には、加熱時間が長くなりやすい。加熱時間が長いほど、食品包装用容器10内の圧力が高くなりやすい。すなわち、蓋体30が外れやすくなる。食品包装用容器10によれば、加熱時間が長くなったとしても蓋体30が容器本体20から外れることを防止できる。
【0029】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記第1実施形態では、蓋体30の表面に発熱体40を取り付けた。発熱部としての発熱体40は、蓋体に埋め込んでもよい。たとえば、複数のシートを積層して蓋体を形成する場合に、内側のシートに発熱体40を取り付けておくことによって、発熱体40を埋め込んだ蓋体を形成することができる。
【0030】
埋め込まれている発熱体の一例では、シートのうち一方の面に発熱体が露出している。また、埋め込まれている発熱体の両面がシートによって覆われていてもよい。発熱体が埋め込まれている場合には、発熱体が埋め込まれている部分の面積が10mm以上であるとよい。
【0031】
・上記第1実施形態では、蓋体30は二つの発熱体40を備えている。発熱部としての発熱体の数は、二つに限定されるものではない。発熱体の数は、一つでもよいし、三つ以上でもよい。複数の発熱体は、規則的に配列されていてもよいし、不規則に配置されていてもよい。
【0032】
たとえば、図5に示す蓋体130には、三つの発熱体140が取り付けられている。すなわち、蓋体130は、三つの発熱部を備えている。図5は、食品包装用容器110を構成する蓋体130を示す。食品包装用容器110における容器本体は、第1実施形態における容器本体20と共通である。図5に示すように、蓋体130の中央部131には、三つの発熱体140が取り付けられている。図5には、発熱体140が取り付けられている部分を発熱箇所131Hとして破線で示している。発熱箇所131Hおよび発熱体140は、四角形である。
【0033】
・上記第1実施形態では、発熱箇所31Hおよび発熱体40は、円形である。発熱体の形状は、円形に限られるものではない。たとえば、図5に示す発熱体140のように、発熱体は四角形でもよい。発熱体の形状としては、星形等の図形を採用することもできる。
【0034】
通気孔V1が溝状となるように細長い発熱体を配置してもよい。細長い発熱体は、円形の輪郭を形取るような環状にしてもよい。この場合には、少なくとも一部分において環が途切れており、発熱体の端と端との間に間隔があることが好ましい。同様に、発熱体は、四角形、星形等の図形における輪郭を形取っていてもよい。その他、発熱体の形状としては、通気孔V1としてスリットが形成されるようにU字形、V字形等を採用することもできる。
【0035】
・上記第1実施形態では、一つの発熱部を一つの発熱体40によって構成する例を示した。この例では、一つの発熱体40の表面積を10mm以上としているため、一つの発熱箇所31Hの面積が10mm以上である。これに限らず、一つの発熱部は、二つ以上の発熱体からなる発熱体群によって構成してもよい。発熱体群とは、規定の領域内に隣り合って配置されている二つ以上の発熱体のことをいう。発熱体群は、二つ以上の発熱体の集合である。発熱体群によって構成する発熱部についての発熱箇所は、規定の領域内において発熱体が取り付けられているすべての箇所である。規定の領域の範囲は、25mm以内であることが好ましい。各発熱体の形状および大きさのうち一つ以上の特徴は、それぞれ異なっていてもよいし、同じものが並んでいてもよい。
【0036】
発熱体群によって発熱部を構成する場合には、規定の領域内に配置されているすべての発熱体の表面積の合計が10mm以上であればよい。すなわち、規定の領域内に配置されているすべての発熱体についての発熱箇所の面積の合計が10mm以上であればよい。なお、蓋体には複数の発熱体群を配置することもできる。この場合には、各発熱体群について、規定の領域内における発熱箇所の面積の合計が10mm以上であるとよい。
【0037】
発熱部を構成する発熱体群について、さらに説明する。たとえば、二つ以上の発熱体が間隔を空けて並んで配置されているものが発熱体群となる。また、たとえば、二つ以上の発熱体が集まっており目視では一つの塊に見えるようなものも発熱体群となる。より詳細に説明すると、発熱体群に関して、「隣り合って配置されている」とは、以下の[1]、[2]および[3]の要素が含まれている。一例として、規定の領域内に配置されている二つの円形の発熱体を挙げて説明する。[1]二つの発熱体は、僅かな間隔を空けて配置されている。[2]二つの発熱体は、互いに接するように配置されている。[3]二つの発熱体は、一部が重なって配置されている。言い換えれば、二つの発熱体の一部分が重なって配置された結果として一つの塊が構成されている。たとえば、第1の発熱体を形成するためのインキと第2の発熱体を形成するためのインキとが重なるように塗工されると[3]の状態になる。[3]の場合での領域内における発熱体の表面積は、一部分が重なっている分だけ、[1]または[2]のように発熱体を配置する場合での円形の発熱体における表面積の合計よりも小さくなる。上記[1]~[3]の要素は、規定の領域内において二つ以上が組み合わされていてもよい。
【0038】
発熱部としての発熱体群が発熱する場合について説明する。発熱体群が発熱して発熱箇所が融解されると、領域内において複数の通気孔が隣り合って形成されることがある。または、複数の発熱体が隣り合って配置されていた箇所に一つの通気孔が形成されることもある。
【0039】
図6には、規定の領域D内に隣り合って配置されている二つ以上の発熱体340によって構成される発熱部の一例を模式的に示す。図6は、発熱部として、七つの発熱体340からなる発熱体群341を示す。図6に示す例では、発熱体群341における第1集合部341Aが上記[1]に対応する。発熱体群341における第2集合部341Bが上記[2]に対応する。発熱体群341における第3集合部341Cが上記[3]に対応する。
【0040】
・発熱部としての発熱体40を取り付ける位置は、変更することができる。
・上記第1実施形態では、塗工したインキを乾燥させて発熱体40を形成した。発熱部としての発熱体40を取り付ける方法は、これに限らない。たとえば、予め板状に成形した発熱体を合成樹脂製のシートに貼りつけてもよい。予め成形した発熱体を蓋体に貼りつけてもよい。
【0041】
・上記第1実施形態では、容器本体20と、容器本体20とは独立した蓋体30とによって容器11が構成されている。これに替えて、容器本体の一部と蓋体の一部とが繋がっていてもよい。
【0042】
(第2実施形態)
第2実施形態の食品包装用容器210について、図7図9を参照して説明する。
図7に示すように、食品包装用容器210は、食品を収容することができる容器211を備えている。容器211は、容器本体220と蓋体230とによって構成されている。食品包装用容器210は、容器本体220内に蓋体230を嵌め合わせる、いわゆる内嵌合の容器である。さらに食品包装用容器210は、図7および図8に示すように、発熱部としての発熱体240を有する排出構造250を容器本体220および発熱体240によって構成している点で、第1実施形態の食品包装用容器10と異なる。
【0043】
容器本体220について説明する。容器本体220では、底壁221Aと側壁221Bとに囲まれた部分が収容空間となる。容器本体220は、側壁221Bのうち底壁221Aとは反対側の端部から外側に広がる周縁部222を備えている。周縁部222は、容器本体220に蓋体230が取り付けられている状態で蓋体230に接する本体側封止面223を備えている。本体側封止面223は、容器本体220の全周に亘って帯状に設けられている。容器本体220は、周縁部222よりもさらに外側に広がるフランジ224を備えている。
【0044】
蓋体230について説明する。蓋体230は、容器本体220に蓋をするための中央部231を備えている。蓋体230は、中央部231の周縁に屈曲部232を備えている。屈曲部232は、蓋体230の全周に亘って環状に形成されている。屈曲部232は、容器本体220に向かって突出している。屈曲部232は、容器本体220における周縁部222に嵌め合わせることができる。屈曲部232は、蓋側封止面233を備えている。蓋側封止面233は、容器本体220に蓋体230が取り付けられている状態では周縁部222における本体側封止面223に接する。本体側封止面223と蓋側封止面233とが接することによって、収容空間を閉塞することができる。蓋体230は、屈曲部232よりもさらに外側に広がる被覆部234を備えている。被覆部234は、容器本体220に蓋体230が取り付けられている状態でフランジ224を覆うことができる。
【0045】
容器本体220および蓋体230は、第1実施形態の食品包装用容器10と同様に、耐熱性を有する合成樹脂製のシートを材料として成形できる。容器本体220および蓋体230は、第1実施形態の食品包装用容器10と同様に、合成樹脂製のシートを熱成形することによって成形できる。
【0046】
図8に示すように、容器本体220は、発熱体240を備えている。発熱体240は、マイクロ波が照射されることによって発熱する物質を含んでいる。発熱体240は、発熱体40と共通の材料によって成形することができる。発熱体240は、本体側封止面223の一部に埋め込まれている。発熱体240が埋め込まれている部分が発熱箇所223Hである。容器本体220は、複数の発熱体240を備えていてもよい。発熱体240は、本体側封止面223上に間隔を空けて並んでいてもよい。
【0047】
発熱体240が埋め込まれている部分から容器本体220の外面までの長さが、発熱箇所223Hにおける容器本体220の厚さT2である。厚さT2は、100μm以上350μm以下であるとよい。容器本体220内に露出している発熱体240の表面積は、10mm以上であるとよい。
【0048】
容器本体220は、発熱体240の端を基端として蓋体230から離れる方向に延びる溝229を備えている。溝229は、側壁221Bに形成されている。溝229は、容器本体220に蓋体230が取り付けられている状態では、収容空間に位置する。
【0049】
本実施形態の作用について説明する。
食品包装用容器210に収容された食品を電子レンジによって加熱すると、食品にマイクロ波が照射されるとともに発熱体240にマイクロ波が照射される。発熱体240は、マイクロ波が照射されることによって発熱する。発熱体240が発熱して温度が上昇すると、発熱箇所223Hが融解される。発熱箇所223Hが融解されることで、図9に示すように、容器本体220に通気孔V2が形成される。通気孔V2が形成された部分では、蓋側封止面233が本体側封止面223に接触しなくなる。さらに、通気孔V2には、発熱体240の端に位置していた溝229が繋がる。通気孔V2は、容器211の外部と繋がっているため、溝229と通気孔V2とを介して、容器211の内外が通じる。このため、収容空間が外部に開放される。
【0050】
本実施形態の効果について説明する。
(2-1)上記第1実施形態における(1-1)~(1-3)と同様の効果を奏することができる。
【0051】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記第2実施形態では、発熱体240は、容器本体220に埋め込まれている。発熱体240は、容器本体220の表面に取り付けてもよい。発熱体240を取り付ける位置は、容器本体220の内面でもよいし外面でもよい。発熱体240の発熱によって容器本体220を融解することによって形成される通気孔V2が溝229と繋がるように、発熱体240および溝229を配置するとよい。
【0052】
・通気孔V2が形成されることによって容器本体220と蓋体230との間に隙間が形成されるのであれば、溝229を省略してもよい。
・容器本体220に発熱体240を取り付けることに加えて、第1実施形態と同様に蓋体230に発熱体を取り付けてもよい。
【0053】
・上記第2実施形態は、発熱部としての発熱体を容器本体に取り付ける一例である。発熱部を容器本体に取り付ける構成は、第2実施形態の構成に限定されるものではない。食品包装用容器に収容された食品を電子レンジによって加熱することによって、容器本体に通気孔を形成することができればよい。
【実施例0054】
食品包装用容器について、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、食品包装用容器は、実施例欄に記載の構成に限定されるものではない。
表1は、各実施例および各比較例の構成を示す。
【0055】
【表1】
なお、各実施例および各比較例における食品包装用容器は、内嵌合の容器である。食品包装用容器における容器の外観は、矩形である。以下、各実施例および各比較例について説明する。
【0056】
(実施例1)
カーボンブラックとビニル樹脂とを混合してカーボンブラックを含有するインキを調整した。カーボンブラックは、ケッチェンブラックEC(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製)を用いた。ビニル樹脂は、ビニライトVAGH(ユニオンカーバイド社製)を用いた。実施例1で用いたインキは、カーボンブラックとビニル樹脂との質量比率が4/1である。すなわち、カーボンブラックの濃度が80%であるインキを用いた。インキをグラビア印刷方法で二軸延伸ポリスチレンシートに塗工した。インキは、円形に塗工した。インキの塗工面積は、25mmである。インキを乾燥させることによってカーボンブラックを含む発熱体を形成した。乾燥後の発熱体の厚さは、5μmである。二軸延伸ポリスチレンシートの厚さ、すなわち発熱箇所の厚さは、150μmである。
【0057】
発熱体を取り付けた二軸延伸ポリスチレンシートを熱成形によって加工して、蓋体を成形した。蓋体の大きさは、長辺150mm、短辺131mm、深さ23mmである。なお、各蓋体が一つの発熱体を備えるようにインキを塗工した。
【0058】
二軸延伸ポリスチレンシートを熱成形によって加工して、容器本体を成形した。容器本体の大きさは、長辺150mm、短辺131mm、深さ36mmである。
容器本体に蓋体を取り付けて容器の嵌合強度を測定した。ばねばかりを用いて測定した押し込み強度の値を容器の嵌合強度とした。容器の嵌合強度は、約800gであった。
【0059】
(実施例2)
実施例2は、発熱箇所の厚さが200μmである点で実施例1と異なる。他の構成は、実施例1と共通である。
【0060】
(実施例3)
実施例3は、インキにおけるカーボンブラックとビニル樹脂との質量比率が2/3である点で実施例1と異なる。すなわち、カーボンブラックの濃度が40%であるインキを用いた。他の構成は、実施例1と共通である。
【0061】
(実施例4)
実施例4は、カーボンブラックの濃度が40%であるインキを用いた点で実施例2と異なる。他の構成は、実施例2と共通である。
【0062】
(実施例5)
実施例5は、インキの塗工面積が100mmである点で実施例3と異なる。他の構成は、実施例3と共通である。
【0063】
(実施例6)
実施例6は、発熱箇所の厚さが200μmである点で実施例5と異なる。他の構成は、実施例5と共通である。
【0064】
(実施例7)
実施例7は、カーボンブラックに替えてアルミ粒子が発熱体に含まれる点で実施例1と異なる。発熱体を形成するインキとしては、アルミ粒子を含有するインキ(DICグラフィックス(株)社製、「ファインラップDH17シルバー」)を用いた。インキにおけるアルミ粒子の濃度は、40%である。他の構成は、実施例1と共通である。
【0065】
(実施例8)
実施例8は、発熱箇所の厚さが200μmである点で実施例7と異なる。他の構成は、実施例7と共通である。
【0066】
(比較例1)
比較例1は、インキの塗工面積が9mmである点で実施例1と異なる。他の構成は、実施例1と共通である。
【0067】
(比較例2)
比較例2は、インキの塗工面積が9mmである点で実施例3と異なる。他の構成は、実施例3と共通である。
【0068】
(比較例3)
比較例3は、インキの塗工面積が9mmである点で実施例7と異なる。他の構成は、実施例7と共通である。
【0069】
〈加熱試験〉
実施例1~8および比較例1~3の各食品包装用容器について、約100mlの水道水を容器本体に入れて、容器本体に蓋体を取り付けた。出力を500Wに設定した電子レンジを用いて、各食品包装用容器の加熱を行った。加熱時間が、75秒、90秒、105秒、120秒、150秒の時点で、通気孔が形成されているか否かを目視にて確認した。通気孔の形成を確認できた場合には、その時点で加熱を打ち切った。通気孔が形成されたか否かにかかわらず、加熱時間が150秒に達した時点で加熱を終了した。加熱の終了後、容器本体から蓋体が外れているか否かを目視にて確認した。電子レンジとしては、NE-1900S(松下電器産業(株)社製)を用いた。
【0070】
〈評価〉
加熱試験の結果を表1に示す。表1に示す評価の詳細は、次の通りである。
○:通気孔が形成された。
×:通気孔が形成されなかった。
有:蓋体が容器本体から外れた。
無:蓋体が容器本体から外れなかった。
【0071】
表1に示すように、実施例1~8では、加熱によって通気孔を形成することができた。実施例1では、75秒の加熱によって通気孔が形成された。実施例2では、75秒の加熱では通気孔が形成されなかった。実施例2では、90秒の加熱によって通気孔が形成された。実施例3では、90秒の加熱では通気孔が形成されなかった。実施例3では、105秒の加熱によって通気孔が形成された。実施例4では、105秒の加熱では通気孔が形成されなかった。実施例4では、120秒の加熱によって通気孔が形成された。
【0072】
実施例5では、75秒の加熱によって通気孔が形成された。実施例6では、75秒の加熱では通気孔が形成されなかった。実施例6では、90秒の加熱によって通気孔が形成された。実施例7では、75秒の加熱によって通気孔が形成された。実施例8では、75秒の加熱では通気孔が形成されなかった。実施例8では、90秒の加熱によって通気孔が形成された。
【0073】
実施例1~8では、通気孔が形成されたことによって通気孔から水蒸気が排出され、容器内の圧力の上昇が防止された。この結果として、加熱を終了するまで蓋体が容器本体から外れることがなかった。
【0074】
比較例1では、150秒の加熱を行っても通気孔が形成されなかった。比較例2でも、150秒の加熱を行っても通気孔が形成されなかった。比較例3でも、150秒の加熱を行っても通気孔が形成されなかった。比較例1~3では、通気孔が形成されなかったため、容器内の圧力が上昇した。このため、蓋体が容器本体から外れた。
【0075】
実施例3、4のように、実施例1、2と比較して発熱体におけるカーボンブラックの濃度が低くなると、通気孔が形成されるまでの加熱時間が長くなった。
実施例5、6のように塗工面積を大きくすると、発熱量が大きくなり、通気孔が形成されるまでの加熱時間が短くなった。
【0076】
比較例1~3のように塗工面積が10mm未満であると、発熱量が足りず、通気孔が形成されなかった。
【符号の説明】
【0077】
10…食品包装用容器
11…容器
20…容器本体
30…蓋体
31H…発熱箇所
40…発熱体
210…食品包装用容器
211…容器
220…容器本体
223H…発熱箇所
229…溝
230…蓋体
240…発熱体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9