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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142138
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】電池パック及びスペーサ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/342 20210101AFI20220922BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20220922BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220922BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220922BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20220922BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20220922BHJP
【FI】
H01M50/342 201
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6557
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042165
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】森高 壮登
(72)【発明者】
【氏名】村石 康輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆太郎
【テーマコード(参考)】
5H012
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012BB08
5H012DD05
5H012EE01
5H012FF01
5H012FF03
5H012FF08
5H012GG01
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE04
5H031KK08
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT02
5H040AY10
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】従来の電池パックは、車室内環境の維持と排煙能力の向上とを両立が難しい問題があった。
【解決手段】本発明の電池パックは、スペーサ41と電池セル30とが交互に積層される組電池と、スペーサ41と電池セル30との間に形成され、電池セルの表面から熱を吸収する冷却風の冷却風流路42と、冷却風流路42に冷却風を自動車の車室内から導く吸気経路と、冷却風流路42を通った冷却風を車室内に戻す排気経路と、電池セル30から放出される排煙を自動車の車外に導く排煙経路13と、を有し、冷却風流路42は、通常時は冷却風流路42を排気経路と連通させるとともに、排煙経路13とは非連通状態とし、排煙の圧力、電池セル30の内圧の高まり、又は、排煙の熱の高まりに起因して冷却風流路42と排煙経路13とを連通する連通弁を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載される電池パックであって、
スペーサと電池セルとが交互に積層される組電池と、
前記スペーサと前記電池セルとの間に形成され、前記電池セルの表面から熱を吸収する冷却風の冷却風流路と、
前記冷却風流路に前記冷却風を前記自動車の車室内から導く吸気経路と、
前記冷却風流路を通った前記冷却風を前記車室内に戻す排気経路と、
前記電池セルから放出される排煙を前記自動車の車外に導く排煙経路と、を有し、
前記冷却風流路は、
通常時は前記冷却風流路を前記排気経路と連通させるとともに、前記排煙経路とは非連通状態とし、前記排煙の圧力、前記電池セルの内圧の高まり、又は、前記排煙の熱の高まりに起因して前記冷却風流路と前記排煙経路とを連通する連通弁を有する電池パック。
【請求項2】
前記連通弁は、前記スペーサの一部に設けられる請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記連通弁は、前記スペーサの壁面に設けられ、前記排煙の圧力の高まり、又は、前記電池セルの内圧の高まりに応じて前記冷却風流路側または前記排煙経路側に倒れる可倒弁である請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記連通弁は、前記スペーサの壁面に設けられ、前記排煙の圧力の高まり、又は、前記電池セルの内圧の高まりに応じて壁面が破壊される排煙弁である請求項1に記載の電池パック。
【請求項5】
前記連通弁は、前記スペーサの壁面に設けられ、前記排煙の熱の高まりに応じて壁面が溶融する開放弁である請求項1に記載の電池パック。
【請求項6】
前記連通弁は、前記スペーサの主材よりも融点が低く設定される樹脂で形成される請求項5に記載の電池パック。
【請求項7】
組電池において、電池セルの間に挟まれるスペーサであって、
ベースプレートから突出するように形成され、前記電池セルの表面から熱を吸収する冷却風の冷却風流路となる空間の壁面を形成する複数のリブと、
通常時は前記冷却風の排気を前記組電池を包み込む電池パック外に導く排気経路と前記冷却風流路とを連通させるとともに、前記電池セルから発生する排煙を前記排気経路とは別に設けられる経路で外部に導く排煙経路と前記冷却風流路とを非連通状態とし、前記電池セルから放出される排煙の圧力、前記電池セルの内圧の高まり、又は、前記排煙の熱の高まりに起因して、前記排気経路と前記冷却風流路とを連通する連通弁と、を有するスペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気を動力源として利用する車両に搭載される電池パック及び電池パックに搭載される組電池に組み込まれるスペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
動力源に電気を利用する電気自動車には複数の電池セルを直列に接続した組電池が納められる電池パックが搭載される。この組電池に含まれる電池セルは、電池セル内での内部短絡や過充電等に起因して電池セル内でガスが発生する。このガスは、電池セルの内圧を高め、電池セルの内圧が規定以上となった場合に発生したガス(以下、排煙と称す)を放出する排煙弁が設けられる。そして、排煙弁により排出された排煙を、電池パックから自動車の外に排出する必要がある。そこで、電池セルから発生した排煙に関する技術の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の二次電池パックは、車室から、逆流防止装置、ダクト、セパレータ、電池セルの周囲、セパレータ、ダクト、動力ファンを経て、車外に至る流路が形成されており、車室内から引き込まれた冷却風がこの流路を流れる。そして、流路における、電池セルの周囲、セパレータの内部、動力ファンを経て、車外に至る部分は、排煙の排出に併用され、排煙は、動力ファンによって、速やかに車外に排出される。排煙時には、逆流防止装置は閉鎖され、取り入れ口からガスが車室内に流入することはない。流路を冷却風、ガスの両者に適用するので、流路は単純であり、二次電池パックの構成を単純化すことができる。また、逆流防止装置の存在によって、車室内への排煙の流入を完全に防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-258426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、排煙が発生していない状態でも電池セルの冷却風が車外に排出されるため、車両の空調モードが内気循環である際に車室内が車外に比べて気圧が低くなる負圧状態になる。車室内が負圧状態となると、車外から意図しない空気が車室内に侵入する。このような意図しない空気の流入は、異臭や微粒子の車室内環境の悪化に繋がる問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、車室内環境の維持と排煙能力の向上とを両立した電池パック及びスペーサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電池パックの一態様は、自動車に搭載される電池パックであって、スペーサと電池セルとが交互に積層される組電池と、前記スペーサと前記電池セルとの間に形成され、前記電池セルの表面から熱を吸収する冷却風の冷却風流路と、前記冷却風流路に前記冷却風を前記自動車の車室内から導く吸気経路と、前記冷却風流路を通った前記冷却風を前記車室内に戻す排気経路と、前記電池セルから放出される排煙を前記自動車の車外に導く排煙経路と、を有し、前記冷却風流路は、通常時は前記冷却風流路を前記排気経路と連通させるとともに、前記排煙経路とは非連通状態とし、前記排煙の圧力、前記電池セルの内圧の高まり、又は、前記排煙の熱の高まりに起因して前記冷却風流路と前記排煙経路とを連通する連通弁を有する。
【0008】
本発明のスペーサの一態様は、組電池において、電池セルの間に挟まれるスペーサであって、ベースプレートから突出するように形成され、前記電池セルの表面から熱を吸収する冷却風の冷却風流路となる空間の壁面を形成する複数のリブと、通常時は前記冷却風の排気を前記組電池を包み込む電池パック外に導く排気経路と前記冷却風流路とを連通させるとともに、前記電池セルから発生する排煙を前記排気経路とは別に設けられる経路で外部に導く排煙経路と前記冷却風流路とを非連通状態とし、前記電池セルから放出される排煙の圧力、前記電池セルの内圧の高まり、又は、前記排煙の熱の高まりに起因して、前記排気経路と前記冷却風流路とを連通する連通弁と、を有するスペーサ。
【0009】
本発明の電池パック及びスペーサは、排煙が発生した時のみ外部に通じる排煙路に冷却風を流し込む連通弁を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二次電池によれば、車室内環境の維持と排煙能力の向上とを両立した電池パック及びスペーサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかる電池パックの概略図である。
図2】実施の形態1にかかる電池パックの自動車への搭載態様を説明する図である。
図3】実施の形態1にかかる組電池の概略図である。
図4】実施の形態1にかかる電池セルとスペーサとを組み合わせた状態を説明する図である。
図5】実施の形態1にかかるスペーサの概略図である。
図6】通常状態における実施の形態1にかかる電池パックの冷却風流路及び排気経路を説明する図である。
図7】排煙発生時における実施の形態1にかかる電池パックの排気経路及び排煙経路を説明する図である。
図8】実施の形態1にかかる電池パックにおける排気による車室内の気圧の変化を説明する図である。
図9】実施の形態1にかかる電池パックの連通弁の動き説明する図である。
図10】実施の形態2にかかる電池パックの連通弁の動き説明する図である。
図11】実施の形態3にかかる電池パックの連通弁の動き説明する図である。
図12】実施の形態4にかかる電池パックの連通弁の動き説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
実施の形態1
図1に実施の形態1にかかる電池パック1の概略図を示す。図1に示すように、実施の形態1にかかる電池パック1は、複数の電池セルが積層されるように並べられ、かつ、複数の電池セルが直列接続された組電池11を有する。そして、電池パック1では、組電池11を電池パックケース10に収納する。また、図1に示す例では、組電池11は、電池セルとスペーサが交互に積層される形態で組み立てられるが、スペーサに設けられた突起部で囲まれる領域に吸気経路12及び排煙経路13を形成する。
【0014】
図1では、吸気経路12を電池セルの下側(例えば、電池セルの排煙弁のない側であって図面上の下側)に設け、排煙経路13を電池セルの上側(例えば、電池セルの排煙弁が形成される側であって図面上の上側)に設けた。図1では図示を省略したが、吸気経路12及び排煙経路13は、それぞれ、他の領域から独立した通気経路となるように、例えば、電池セル側に開口面を有するU字型の部材により形成される。なお、吸気経路12及び排煙経路13は、組電池11の上下左右のいずれの場所に形成することもできる。ここで、排煙経路13については、組電池11を構成する電池セルに設けられる排煙弁の位置に合わせて形成する位置を決定することが好ましい。
【0015】
続いて、図2に実施の形態1にかかる電池パック1の自動車への搭載態様を説明する図を示す。図2に示す電池パック1の配置例は、電池パック1の配置の一例であり、他の位置に電池パックを配置することも考えられるが、電池パック1は車室内の空気を用いて冷却することが多く行われている。図2に示す例では、電池パック1は、自動車の後部座席下に設けられる。そして、図2に示すように、電池パック1は、電池セルの冷却に用いる空気を車室内の空気を取り入れる吸気口21からブロワ22を用いて電池パック1内に導入する。また、図2では、図示を省略したが、実施の形態1にかかる電池パック1では、電池パック1に導入された冷却風は、車室内に拡散するように排気される。この冷却風を排気する排気経路は、電池パックケース10に出来る隙間、電池パックケース10に設けられる排気ダクト等様々な経路が考えられる。
【0016】
また、図2に示すように、実施の形態1にかかる電池パック1では、冷却風の排気経路とは別に排煙経路が形成され、この排煙経路として排煙ダクト23を設ける。実施の形態1にかかる電池パック1では、この排煙ダクト23により排煙を車外に排出する。
【0017】
上述したように、実施の形態1にかかる電池パック1は、自動車に搭載される電池パックである。そして、電池パック1は、スペーサと電池セルとが交互に積層される組電池11と、スペーサと前記電池セルとの間に形成され、電池セルの表面から熱を吸収する冷却風の冷却風流路と、冷却風流路に冷却風を自動車の車室内から導く吸気経路12と、冷却風流路42を通った冷却風を車室内に戻す排気経路(図1、2では不図示)と、電池セルから放出される排煙を自動車の車外に導く排煙経路13と、を有する。ここで、実施の形態1にかかる電池パック1では、冷却風流路を電池セルの間に挟まれるスペーサにより形成する。また、実施の形態1にかかる電池パック1では、スペーサにより形成される冷却風流路において、通常時は冷却風流路を排気経路と連通させるとともに、排煙経路13とは非連通状態とし、電池セルの内圧の高まりに起因して冷却風流路と排煙経路13とを連通する連通弁を設ける。そこで、以下では、スペーサと、スペーサに設けられる連通弁について詳細に説明する。
【0018】
そこで、図3に実施の形態1にかかる組電池11の概略図を示す。図3は、組電池11のうち、電池セルの排煙弁が設けられる付近の断面図である。また、図3は、組電池11の一部を示すものである。図3に示すように、組電池11は、図面横方向に電池セル30とスペーサ41とが交互に配置されるように積層される。つまり、スペーサ41は、電池セル30に挟まれるように組電池11に組み込まれる。そして、スペーサ41と電池セル30との間には、冷却風流路42が形成される。また、図3に示すように、電池セル30には、排煙弁31が設けられる。そして、排煙弁31が設けられる位置に合わせて、連通弁43が形成される。
【0019】
続いて、図4に実施の形態1にかかる電池セル30とスペーサ41とを組み合わせた状態を説明する図を示す。図4に示すように、スペーサ41は、電池セル30と対になるように組み合わされる。スペーサ41には、吸気経路12が設けられる空間を確保するために吸気側突起部44が形成される。また、スペーサ41には、排煙経路13が設けられる空間を確保するために排煙側突起部45が形成される。特に、図4では、電池セル30に設けられる排煙弁31を挟む位置に排煙側突起部45が形成される。これにより、電池パック1では、排煙弁31を覆うように排煙経路13を設けることができる。なお、吸気経路12や排煙経路13を吸気側突起部44や排煙側突起部45により設けたがこれに限られず、他の部材により設けるようにしても問題ない。
【0020】
続いて、図5に実施の形態1にかかるスペーサ41の概略図を示す。図5では、スペーサ41のうち冷却風の流路となる冷却風流路が形成される面を説明するものである。図5に示すように、スペーサ41にはリブ46が形成され、このリブ46により冷却風流路が形成される。図5に示す例では、図面下方向から吹き込まれる冷却風を図面左右方向に排出する冷却風流路がスペーサ41に形成される。そして、スペーサ41に形成される冷却風流路を形成する壁面(例えば、リブ46)のうち、排煙経路13に面する位置に連通弁43が設けられる。この連通弁43は、通常時は前記冷却風流路を前記排気経路と連通させるとともに、前記排煙経路とは非連通状態とする。連通弁43は、電池セルの内圧の高まりに起因して冷却風流路と排煙経路13とを連通する。この連通弁43の快弁原理及び詳細な構成については後述する。
【0021】
続いて、実施の形態1にかかる電池パック1の排気動作及び排煙動作について説明する。まず、図6に通常状態における実施の形態1にかかる電池パックの排気経路を説明する図を示す。図6に示す通常状態では、排出すべき排煙が発生していないため、排気動作のみが行われる。図6に示すように、通常動作では、ブロワ22が吸気口21から吸い込んだ風を冷却風として吸気経路12に流し込む。そして、吸気経路12に流入した冷却風は、電池セル30の間のスペーサ41に形成された冷却風流路42を介して電池セル30から熱を吸い取りながら排気として電池パックケース10内に拡散される。そして、電池パックケース10内に拡散された排気は、さらに、車室内に拡散される。電池パックケース10から車室内への排気の拡散は、電池パックケース10に排煙経路13とは別に設けられる排気ダクト、電池パックケース10の隙間、電池パックケース10に設けられる拡散孔等を通して行われる。
【0022】
次に、図7に排煙発生時における実施の形態1にかかる電池パック1の排気経路及び排煙経路を説明する図を示す。図7に示すように、排煙発生時においても電池セル30を冷却する冷却風の流れは図6で示した排気動作と同じ流れとなる。一方排煙発生時には、排煙が発生した電池セル30の周辺を中心に連通弁43が開き、冷却風流路42と排煙経路13とを連通させる。これにより、冷却風の一部が開いた連通弁43を通過して排煙経路13に流れ込む。そして、排煙経路13に流れ込んだ冷却風により排煙経路13の外側への流れが加速され、発生した排煙の排煙ダクト23への流れ込み及び車外への排出が加速される。
【0023】
上記したように、実施の形態1にかかる電池パック1では、排気は室内に戻し、排煙が発生した場合にのみ冷却風の一部を排煙とともに外部に放出する。また、排気に関しては、自動車の空調モードによらず室内に戻す。そこで、実施の形態1にかかる電池パック1を搭載する自動車における車室内の空気の流れを説明する。図8に実施の形態1にかかる電池パックにおける排気による車室内の気圧の変化を説明する図を示す。なお、図8では、比較例として、冷却風の排気経路とガスの排煙経路とが同一の経路となる電池パックを比較例として示した。
【0024】
図8に示すように、比較例にかかる電池パックでは、外気循環において、車室内に取り込んだ空気が電池パックの冷却で利用されたのちに電池パックを介して排気として車外に排出される。また、比較例にかかる電池パックでは、内気循環において、車室内の空気の一部が電池パックの冷却に利用されるため、車室内の気圧が低下し、車室内に外気が侵入する状態となってしまう。
【0025】
一方、実施の形態1にかかる電池パック1では、外気循環の時と内気循環の時のいずれの空調モードの時であっても、冷却風は車室内から取り入れられ、車室内に戻される。これは、連通弁43によって、冷却風の流路と排煙経路が分離されているためである。なお、実施の形態1にかかる電池パック1では、排煙が生じた際には冷却風流路と排煙経路が連通するが、排煙が発生する状態は自動車にとっての異常事態発生時であり、限定的であるため、排煙時の車室内の気圧低下は問題とはならない。
【0026】
続いて、連通弁43の詳細について説明する。そこで、図9に実施の形態1にかかる電池パックの連通弁の動き説明する図を示す。図9に示す実施の形態1にかかる連通弁43は、スペーサ41の壁面に設けられ、電池セル30の内圧の高まりに応じて排煙経路13側に倒れる可倒弁である。また、連通弁43を開弁させる内圧は、電池セル30で排煙発生前に生じる電池セル30の膨張により生じる。より具体的には、電池セル30に膨張が生じていない場合、連通弁43にはまっすぐに圧力がかかるため、連通弁43は開弁する方向に倒れない。一方、電池セル30に膨張が生じると、連通弁43の電池セル30側の端部を押し上げる方向に連通弁43の端部に内圧が加わる。そのため、電池セル30に膨張が生じると、連通弁43は、電池セル30から離れる方向に支持点を中心に倒れ、冷却風が冷却風流路から排煙経路13に向かって流れ込む。
【0027】
上記説明より、実施の形態1にかかる電池パック1では、排煙を排出する排煙経路を、冷却風を流す冷却風流路とは別に設け、冷却風の排気先を車室内とする。これにより、実施の形態1にかかる電池パック1では、自動車の空調モードによらず車室内の気圧低下を防止することができる。また、実施の形態1にかかる電池パック1では、排煙が生じた際には、排煙が生じる際に生じる電池セル30の変化に起因して開弁する連通弁43を開弁することにより、空気の流れが速い冷却風の一部を吸気経路12に流し込む。これにより、実施の形態1にかかる電池パック1は、排煙能力を高める。つまり、実施の形態1にかかる電池パック1を用いることで、車室内環境の維持と排煙能力の向上とを両立することができる。
【0028】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1の連通弁43の別の形態となる連通弁43aについて説明する。なお、連通弁43aを備えるスペーサ41を用いた電池パックでは、連通弁以外の構成は実施の形態1と同じものとする。
【0029】
図10に実施の形態2にかかる電池パックの連通弁の動き説明する図を示す。図10に示すように、実施の形態2にかかる連通弁43aは、スペーサ41の壁面に設けられ、排煙の圧力の高まりに応じて冷却風流路側に倒れる可倒弁である。この排煙の圧力の高まりは、電池セル30で排煙が発生した際に上昇する吸気経路12からの気圧の力である。より具体的には、電池セル30から排煙が放出されていない状態では、連通弁43aにはまっすぐに圧力がかかるため、連通弁43aは開弁する方向に倒れない。一方、電池セル30から排煙が放出された際には排煙経路13内の圧力が上昇するため、この圧力に押されるように連通弁43aは、冷却風流路側に倒れる。そして、連通弁43aが開弁することで、冷却風が冷却風流路から排煙経路13に向かって流れ込む。このように、連通弁を開弁に利用する力は、実施の形態1で説明した電池セル30の膨張だけではなく、排煙経路13の圧力を利用することもできる。
【0030】
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態1の連通弁43の別の形態となる連通弁43bについて説明する。なお、連通弁43bを備えるスペーサ41を用いた電池パックでは、連通弁以外の構成は実施の形態1と同じものとする。
【0031】
図11に実施の形態3にかかる電池パックの連通弁の動き説明する図を示す。図11に示すように、実施の形態3にかかる連通弁43bは、スペーサ41の壁面に設けられ、排煙の熱の高まりに応じて壁面が溶融する開放弁である。電池セル30から放出された排煙は、高温であるため、連通弁43bはこの排煙の熱で溶融する部材で形成される。連通弁43bの溶融温度は、スペーサ41を形成する樹脂の溶融温度より低温であることが好ましい。連通弁43bは、電池セル30から排煙が放出されていない状態では、冷却風及び排煙経路13内の温度が連通弁43bの溶融温度以下であるため開弁しない。一方、電池セル30から排煙が放出された際には排煙経路13内の温度が上昇するため、この排煙の温度の高まりにより連通弁43bは溶融する。そして、連通弁43aが開弁することで、冷却風が冷却風流路から排煙経路13に向かって流れ込む。このように、連通弁を開弁に利用する力は、実施の形態1で説明した電池セル30の膨張だけではなく、排煙経路13の熱の高まりを利用することもできる。
【0032】
実施の形態4
実施の形態4では、実施の形態1の連通弁43の別の形態となる連通弁43cについて説明する。なお、連通弁43cを備えるスペーサ41を用いた電池パックでは、連通弁以外の構成は実施の形態1と同じものとする。
【0033】
図12に実施の形態4にかかる電池パックの連通弁の動き説明する図を示す。図12に示すように、実施の形態4にかかる連通弁43cは、スペーサ41の壁面に設けられ、電池セルの内圧の高まりに応じて壁面が破壊される開放弁である。なお、図12では、電池セルの内圧の高まりに応じて壁面が破壊される開放弁を示したが、開放弁の破壊は、排煙の圧力の高まりに応じたものであっても良い。
【0034】
図12に示すように、連通弁43cは、連通弁43cがスペーサ41から突出する方向の中程に肉薄部を有する。そして、肉薄部は、電池セル30が膨張した際に圧縮力が加わる側に設けられる凹部の深さが、電池セル30が膨張した際に引張力が加わる側に設けられる凹部の深さよりも深く形成される。これにより、連通弁43cは、電池セル30の膨張により電池セル30の内圧が連通弁43cへ加わった際には、肉薄部が割けるように破壊される。
【0035】
より具体的には、連通弁43cを開弁させる電池セル30の内圧は、電池セル30で排煙発生前に生じる電池セル30の膨張により生じる。そして、電池セル30に膨張が生じていない場合、連通弁43cにはまっすぐに圧力がかかるため、連通弁43cは破壊されない。一方、電池セル30に膨張が生じると、連通弁43cの図面上側には圧縮力がかかり、連通弁43cの図面下側には引張力がかかる。そのため、連通弁43cは、圧縮力がかかる側にくの字型に曲がり最終的には肉薄部が破壊される。また、肉薄部での破壊が生じた連通弁43cは、電池セル30側の部分が脱落し、開弁される。この開弁が起こることで、冷却風が冷却風流路から排煙経路13に向かって流れ込む。このように、連通弁の開弁方法では、連通弁43cの破壊することでも行うことが出来る。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 電池パック
10 電池パックケース
11 組電池
12 吸気経路
13 排煙経路
21 吸気口
22 ブロワ
23 排煙ダクト
30 電池セル
31 排煙弁
41 スペーサ
42 冷却風流路
43 連通弁
44 吸気側突起部
45 排煙側突起部
46 リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12