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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142177
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/489 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
G01S7/489
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042237
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】上野 響一
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA20
5J084BA36
5J084BA50
5J084BA51
5J084BA52
5J084BB02
5J084BB25
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA14
5J084CA21
5J084EA12
5J084EA19
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で受光素子の増倍率を精度良く制御することが一例として挙げられる。
【解決手段】測定装置10は、光を発射し、対象30からの反射光を受光する装置である。測定装置10は、受光素子18、受光素子制御部182、および基準光源140を備える。受光素子18は反射光を受光する。受光素子制御部182は受光素子18の増倍率を制御する。基準光源140は、受光素子18に基準光を照射する。受光素子制御部182は、第1期間において受光素子18に流れる電流の検出結果と、第2期間において受光素子18に流れる電流の検出結果とに基づいて、受光素子18の増倍率を制御する。第1期間は基準光が受光素子18に照射されている期間であり、第2期間は基準光が受光素子18に照射されていない期間である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発射し、対象からの反射光を受光する測定装置であって、
前記反射光を受光する受光素子と、
前記受光素子の増倍率を制御する受光素子制御部と、
前記受光素子に基準光を照射する基準光源とを備え、
前記受光素子制御部は、前記基準光が前記受光素子に照射されている第1期間において前記受光素子に流れる電流の検出結果と、前記基準光が前記受光素子に照射されていない第2期間において前記受光素子に流れる電流の検出結果とに基づいて、前記受光素子の増倍率を制御する
測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置において、
前記受光素子制御部は、前記第1期間において前記受光素子に流れる電流と、前記第2期間において前記受光素子に流れる電流との差が予め定められた基準値より大きい場合、前記受光素子の増倍率を下げる
測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の測定装置において、
前記受光素子制御部は、前記第1期間において前記受光素子に流れる電流と、前記第2期間において前記受光素子に流れる電流との差が予め定められた基準値より小さい場合、前記受光素子の増倍率を上げる
測定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の測定装置において、
前記受光素子はアバランシェフォトダイオードである
測定装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の測定装置において、
前記第1期間および前記第2期間の少なくとも一方において前記受光素子に流れる電流は、前記受光素子のカソード側に設けられた電流モニタ回路を用いて検出され、
前記受光素子制御部は、前記電流モニタ回路による検出結果を用いて前記受光素子の増倍率を制御する
測定装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の測定装置において、
前記第1期間および前記第2期間の少なくとも一方において前記受光素子に流れる電流は、前記受光素子のアノード側に設けられたI-V変換回路を用いて検出され、
前記受光素子制御部は、前記I-V変換回路による検出結果を用いて前記受光素子の増倍率を制御する
測定装置。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の測定装置において、
前記第1期間において前記受光素子に流れる電流は、前記受光素子のカソード側に設けられた電流モニタ回路を用いて検出され、前記第2期間において前記受光素子に流れる電流は、前記受光素子のアノード側に設けられたI-V変換回路を用いて検出され、
前記受光素子制御部は、前記電流モニタ回路による検出結果および前記I-V変換回路による検出結果を用いて前記受光素子の増倍率を制御する
測定装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の測定装置において、
前記基準光源は直流光を前記受光素子に照射する
測定装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の測定装置において、
前記基準光源の光量を制御する基準光源制御部をさらに備える
測定装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の測定装置において、
当該測定装置は、
走査範囲内に複数の出射方向で前記光を出射してフレームを生成し、
繰り返し前記フレームを生成し、
前記基準光源は、前記フレームと前記フレームとの間の時間に前記基準光を前記受光素子に照射する
測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転等に用いることができる距離測定装置の開発が行われている。距離測定装置の一例としては、出射した光が物体に反射されて戻るまでの時間を測定して、周囲の物体との距離を測定するものが挙げられる。
【0003】
このような測定装置では、高感度の受光素子が用いられる。しかし、受光素子の感度は温度等により変化するため、高精度な距離測定を行うためには感度を一定にするよう制御する必要がある。
【0004】
特許文献1には、反射板で反射したレーザ光を受光したときのレーザ受光部の出力が目標値になるように、バイアス回路が受光素子に印加するバイアス電圧を変更することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、レーザ光を筐体のコーナー部に反射させ、受光素子で受光したその反射光の信号レベルを用いて受光素子への印加電圧を制御することが記載されている。
【0006】
特許文献3には、光電流モニタ回路を用いてフォトダイオードの光電流を検出することや、アバランシェフォトダイオードの増倍率制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-68066号公報
【特許文献2】特開2014-215157号公報
【特許文献3】特開平11-284445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や2の方法のように、光を反射板や筐体内で反射させて、反射光を受光素子に導くことは、実際には困難が多く、装置が複雑化する。さらに、反射光は受光素子で飽和させずに検出できる範囲の強度とする必要があり、低反射率の反射板等を用いても難しいことが多い。また、距離測定装置では外乱光の影響があるため特許文献3の方法では精度良く増倍率の制御が行えない。
【0009】
本発明が解決しようとする課題としては、簡便な構成で受光素子の増倍率を精度良く制御することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、
光を発射し、対象からの反射光を受光する測定装置であって、
前記反射光を受光する受光素子と、
前記受光素子の増倍率を制御する受光素子制御部と、
前記受光素子に基準光を照射する基準光源とを備え、
前記受光素子制御部は、前記基準光が前記受光素子に照射されている第1期間において前記受光素子に流れる電流の検出結果と、前記基準光が前記受光素子に照射されていない第2期間において前記受光素子に流れる電流の検出結果とに基づいて、前記受光素子の増倍率を制御する
測定装置である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る測定装置の構成を例示するブロック図である。
図2】第1期間と第2期間を説明するための図である。
図3】実施形態に係る測定装置の構成を例示する図である。
図4】実施形態に係る測定制御部、受光素子制御部、および基準光源制御部を実現する集積回路のハードウエア構成を例示する図である。
図5】実施形態に係る測定装置において受光素子に流れる電流を測定するための構成を例示する図である。
図6】基準光源制御部が基準光源を制御するための第1の構成例を示す図である。
図7】基準光源制御部が基準光源を制御するための第2の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
以下に示す説明において、測定制御部17、受光素子制御部182、および基準光源制御部142のそれぞれは、特に説明する場合を除き、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。測定制御部17、受光素子制御部182、および基準光源制御部142のそれぞれは、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされたプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶メディア、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置には様々な変形例がある。
【0014】
図1は、本実施形態に係る測定装置10の構成を例示するブロック図である。本図中、光の経路を破線矢印で示している。図2は、第1期間P1と第2期間P2を説明するための図である。本実施形態に係る測定装置10は、光を発射し、対象30からの反射光を受光する装置である。測定装置10は、受光素子18、受光素子制御部182、および基準光源140を備える。受光素子18は反射光を受光する。受光素子制御部182は受光素子18の増倍率を制御する。基準光源140は、受光素子18に基準光を照射する。受光素子制御部182は、第1期間P1において受光素子18に流れる電流の検出結果と、第2期間P2において受光素子18に流れる電流の検出結果とに基づいて、受光素子18の増倍率を制御する。第1期間P1は基準光が受光素子18に照射されている期間であり、第2期間P2は基準光が受光素子18に照射されていない期間である。以下に詳しく説明する。
【0015】
測定装置10において、受光素子18は高感度に光を検出する。一方、受光素子18の感度は温度等に依存して変化しうる。したがって、受光素子18の感度を一定に保つように、受光素子18の増倍率を制御する必要がある。受光素子18の増倍率を一定に保つ方法としては、受光素子18に流れる電流をモニタし、既知の光量の光が入射した際に流れる電流を所定の値(目標値)に保つよう、増倍率を制御する方法がある。
【0016】
ただし、測定装置10の受光素子18に対しては測定装置10の外部からの外部光が入射しうる。外部光はたとえば太陽光を含み、外部光の光量は未知である。受光素子18の増倍率の制御においてはこの外部光の取り扱いが問題となる。
【0017】
本実施形態に係る測定装置10では、第1期間P1で受光素子18に流れる電流i1と、第2期間P2で受光素子18に流れる電流i2とに基づいて、受光素子18の増倍率を制御する。なお、第1期間P1および第2期間P2はいずれも受光素子18がパルス光を受光しない期間である。第2期間P2では、外乱光が受光素子18に入射しており、その外乱光の光量に対応する電流が受光素子18に流れる。第1期間P1では、外乱光に加えて基準光源140の出力光が受光素子18に入射しており、外乱光の光量と基準光源140からの光の光量とをあわせた光量に対応する電流が受光素子18に流れる。したがって、電流i1から電流i2を引いて得られる電流Δiが基準光源140からの光の光量に対応する。基準光源140から受光素子18に入射する光の光量は、外乱光のない状態で予め測定し、把握しておく事ができる。そして、この基準光源140からの光の光量に対し、所望の感度において受光素子18に流れる電流値を目標値Itとする。
【0018】
本実施形態にかかる測定装置10では、電流i1から電流i2を引いて得られる電流Δiが目標値Itとなるように、増倍率を制御することで、外乱光の強さに関わらず受光素子18の感度を所望の状態に保つことができる。
【0019】
図3は、本実施形態に係る測定装置10の構成を例示する図である。本図中、光の経路を破線矢印で示している。本図を参照して測定装置10について詳しく説明する。本図の例において測定装置10は、集光レンズ13、発光素子14、孔付きミラー15、可動ミラー16、測定制御部17、駆動回路141、基準光源制御部142、駆動回路161、検出回路181、および電圧生成回路184をさらに備える。
【0020】
測定装置10は、たとえばパルス光の出射タイミングと反射光(反射したパルス光)の受光タイミングとの差に基づいて、測定装置10から走査範囲170内にある物体(対象30)までの距離を測定する装置である。パルス光はたとえば赤外光等の光である。また、パルス光はたとえばレーザパルスである。測定装置10に備えられた発光素子14から出力され、測定装置10の外部へ出射されたパルス光は物体で反射されて少なくとも一部が測定装置10に向かって戻る。そして、反射光が測定装置10に入射する。測定装置10に入射した反射光は受光素子18で受光され、強度が検出される。ここで、測定装置10では発光素子14からパルス光が出射されてから反射光が受光素子18で検出されるまでの時間が測定される。そして、測定制御部17は、測定された時間とパルス光の伝搬速さを用いて測定装置10と物体との距離を算出する。測定装置10はたとえばライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging, Laser Illuminated Detection and Ranging またはLiDAR:Light Detection and Ranging)装置である。
【0021】
発光素子14はパルス光を出射する。発光素子14は、たとえばレーザーダイオードである。駆動回路141は、測定制御部17からの制御信号に基づき駆動信号を生成して、発光素子14を発光させるための回路であり、たとえばスイッチング回路や容量素子を含んで構成される。
【0022】
受光素子18は測定装置10に入射したパルス光を受光する。受光素子18は、たとえばアバランシェフォトダイオード(APD)等のフォトダイオードである。検出回路181は、I-VコンバータやA/D変換回路を含み、受光素子18による光の検出強度を示す信号を出力する。
【0023】
受光素子18では、受光した光の大きさに応じた電流が流れる。受光量が一定である場合、受光素子18の増倍率が大きいほど、受光素子18には大きな電流が流れる。受光素子18の増倍率は、受光素子18のアノードとカソードとの間に印加する電圧値に応じて変化させることができる。電圧生成回路184は、受光素子18に印加する電圧を生成する回路である。電圧生成回路184は、受光素子制御部182からの制御信号に応じた大きさの電圧を生成して受光素子18に印加する。
【0024】
可動ミラー16は、たとえば一軸可動または二軸可動のMEMSミラーである。駆動回路161は測定制御部17からの制御信号に基づいて可動ミラー16を駆動するための駆動信号を生成する。駆動信号により可動ミラー16の反射面の向きを変えることにより、測定装置10から出射されるパルス光の出射方向を変化させることができる。可動ミラー16が二軸可動のMEMSミラーである場合、可動ミラー16を二軸駆動する事により、所定の範囲内をパルス光でラスタスキャンすることができる。
【0025】
測定制御部17は、複数のパルス光による測定結果を含む点群データを生成する。たとえば、走査範囲170内をラスタスキャンする場合、第1の方向171に光の出射方向を変化させる事によりライン状の走査を行う。そして、第2の方向172に光の出射方向を変化させながら複数のライン状走査を行う事により、走査範囲170内の複数の測定結果を含む点群データを生成する事ができる。本図の例において、第1の方向171と第2の方向172とは直交している。
【0026】
一度のラスタスキャンで生成される点群データの単位をフレームと呼ぶ。ひとつのフレームについて測定が終わると、光の出射方向は初期位置に戻り、次のフレームの測定が行われる。こうして、繰り返しフレームが生成される。点群データにおいては、パルス光で測定された距離と、そのパルス光の出射方向を示す情報とが関連付けられている。または、点群データは、パルス光の反射点を示す三次元座標を含んでもよい。測定制御部17は、算出された距離と、各パルス光を出射する時の可動ミラー16の角度を示す情報とを用いて点群データを生成する。生成された点群データは測定装置10の外部に出力されても良いし、測定制御部17からアクセス可能な記憶装置に保持されても良い。
【0027】
発光素子14から出力されたパルス光は孔付きミラー15の孔を通過し、可動ミラー16で反射された後に測定装置10から出射される。また、測定装置10に入射した反射光は可動ミラー16および孔付きミラー15で反射された後、集光レンズ13を介して受光素子18に入射する。なお、測定装置10は、コリメートレンズやミラー等をさらに含んでもよい。
【0028】
測定制御部17は、発光素子14、受光素子18および可動ミラー16を制御することができる。また、測定制御部17は、検出回路181から受光信号を受信し、上述したように測定装置10から走査範囲170内の物体までの距離を算出する。
【0029】
基準光源140はたとえば発光ダイオードである。基準光源140は、基準光源制御部142から出力される駆動信号に応じて直流光を出力し、受光素子18に照射する。基準光源140を駆動する駆動信号は、直流の電気信号である。後述するように、基準光源制御部142は基準光源140の出力光の光量を略一定に保つように基準光源140を制御する。基準光源140は発光素子14とは独立した光源であるため、距離測定に必要なパルス光の強度とは独立して発光強度や発光タイミングを制御できる。また、基準光源140から出力される光の少なくとも一部が受光素子18に入射すればよく、基準光源140の配置の自由度も高い。したがって、測定装置10の構造の複雑化も避けられる。
【0030】
図4は、本実施形態に係る測定制御部17、受光素子制御部182、および基準光源制御部142を実現する集積回路80のハードウエア構成を例示する図である。測定制御部17、受光素子制御部182、および基準光源制御部142は、集積回路80を用いて実装されている。集積回路80は、例えば SoC(System On Chip)である。ただし測定制御部17、受光素子制御部182、および基準光源制御部142は、さらに電子回路を用いて実装されてもよい。
【0031】
集積回路80は、バス802、プロセッサ804、メモリ806、ストレージデバイス808、入出力インタフェース810、及びネットワークインタフェース812を有する。バス802は、プロセッサ804、メモリ806、ストレージデバイス808、入出力インタフェース810、及びネットワークインタフェース812が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ804などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ804は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。メモリ806は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現されるメモリである。ストレージデバイス808は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどを用いて実現されるストレージデバイスである。
【0032】
入出力インタフェース810は、集積回路80を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。入出力インタフェース810には発光素子14の駆動回路141、受光素子18の検出回路181、可動ミラー16の駆動回路161、電圧生成回路184、基準光源140等が接続されている。
【0033】
ネットワークインタフェース812は、集積回路80を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えば CAN(Controller Area Network)通信網である。なお、ネットワークインタフェース812が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0034】
ストレージデバイス808は、測定制御部17、受光素子制御部182、および基準光源制御部142の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ804は、このプログラムモジュールをメモリ806に読み出して実行することで、測定制御部17、受光素子制御部182、および基準光源制御部142の機能を実現する。
【0035】
集積回路80のハードウエア構成は本図に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ806に格納されてもよい。この場合、集積回路80は、ストレージデバイス808を備えていなくてもよい。
【0036】
図5は、測定装置10において受光素子18に流れる電流を測定するための構成を例示する図である。本実施形態に係る測定装置10は、電流モニタ回路186をさらに備える。I-V変換回路188は、上述した検出回路181に含まれる。
【0037】
第1期間P1および第2期間P2の少なくとも一方において受光素子18に流れる電流iは、受光素子18のカソード側に設けられた電流モニタ回路186を用いて検出することができる。そして、受光素子制御部182は、電流モニタ回路186による検出結果を用いて受光素子18の増倍率を制御することができる。電流モニタ回路186は、受光素子18に流れる電流iを検出値として出力することができる。
【0038】
また、第1期間P1および第2期間P2の少なくとも一方において受光素子18に流れる電流iは、受光素子18のアノード側に設けられたI-V変換回路188を用いて検出することができる。そして、受光素子制御部182は、I-V変換回路188による検出結果を用いて受光素子18の増倍率を制御することができる。I-V変換回路188は、受光素子18からI-V変換回路188に流れ込んだ電流iに応じた検出信号Voutを出力する。このVoutとI-V変換回路188に用いられる抵抗の抵抗値Rとに基づいて、電流iを算出する事ができる。具体的には、電流iはi=Vout/Rで得られる。
【0039】
中でも、第1期間P1において受光素子18に流れる電流i1は、受光素子18のカソード側に設けられた電流モニタ回路186を用いて検出し、第2期間P2において受光素子18に流れる電流i2は、受光素子18のアノード側に設けられたI-V変換回路188を用いて検出することが好ましい。そして、受光素子制御部182は、電流モニタ回路186による検出結果およびI-V変換回路188による検出結果を用いて受光素子18の増倍率を制御することが好ましい。すなわち、受光素子制御部182は、電流モニタ回路186で測定された電流i1とI-V変換回路188で測定された電流i2とに基づいて、受光素子18の増倍率を制御することが好ましい。
【0040】
理由は以下のとおりである。I-V変換回路188は検出回路181に含まれ、パルス光の検出に用いられる。すなわち、Voutを用いてパルス光の検出が行われるため、抵抗値Rで定まるI-V変換回路188のゲインは、パルス光の検出に適した値となるよう、設定されている。一方、電流モニタ回路186の検出ゲインは、I-V変換回路188のゲインとは無関係に定めることができる。したがって、基準光源140からの光を高精度に検出するよう、電流モニタ回路186のゲインを定め、第1期間P1において受光素子18に流れる電流i1を検出することで、増倍率を高精度に制御することができる。一方、第2期間P2において受光素子18に流れる電流i2は外乱光のみによるものであり、電流i1に比べて比較的小さな電流である。したがって、電流i2は、電流i1を検出に最適化した電流モニタ回路186で測定するよりも、小さな電流検出に適したI-V変換回路188で測定した方が精度良く測定できる。したがって、電流モニタ回路186で測定された電流i1とI-V変換回路188で測定された電流i2とを用いることで、高精度な増倍率制御ができる。
【0041】
ただし、受光素子制御部182は、電流モニタ回路186で測定された電流i2とI-V変換回路188で測定された電流i1とに基づいて受光素子18の増倍率を制御してもよいし、電流モニタ回路186で測定された電流i1および電流i2に基づいて受光素子18の増倍率を制御してもよいし、I-V変換回路188で測定された電流i1および電流i2に基づいて受光素子18の増倍率を制御してもよい。受光素子制御部182がI-V変換回路188で測定された電流i1および電流i2に基づいて受光素子18の増倍率を制御する場合、測定装置10は電流モニタ回路186を備えなくても良い。図5では、電流モニタ回路186が受光素子18のカソード側に設けられている例を示しているが、電流モニタ回路186は受光素子18のアノード側に設けられてもよい。
【0042】
受光素子制御部182が受光素子18の増倍率を制御する方法について以下に詳しく説明する。上述したとおり、測定装置10は、走査範囲170内に複数の出射方向で光を出射してフレームを生成する。また、測定装置10は、繰り返しフレームを生成する。そして基準光源140は、フレームとフレームとの間の時間に基準光を受光素子18に照射する。すなわち第1期間P1はフレームとフレームの間の、距離測定が行われていない期間内に設けられる。そして、受光素子制御部182は、受光素子18に基準光が照射されている間の電流iを、電流i1として取得する。第1期間P1がフレームとその次のフレームの間に設けられる場合、第1期間P1において基準光源140は直流光、すなわち略一定の光量の基準光を10マイクロ秒以上連続して照射することが好ましい。すなわち、第1期間P1の長さは10マイクロ秒以上であることが好ましい。受光素子制御部182はたとえば第1期間P1内の電流値の平均を算出し、増倍率の制御に用いる。基準光として直流光を用いることで、パルス光を用いるよりも正確な光検出および電流測定が可能となり、増倍率制御の精度を向上させることができる。フレームとフレームとの間には、可動ミラー16の反射面をフレームの初期位置に戻すための時間など、距離測定を行わないが存在し、第1期間P1として十分な時間をとることができる。
【0043】
なお、可動ミラー16の揺動による出射方向の往復のうち、一方の方向のみ、すなわち往路のみまたは復路のみでパルス光による測定が行われることがある。この場合、第1期間P1は往路と復路のうち、パルス光による測定が行われない方の期間内に設けられても良い。すなわち第1期間P1は、ライン状の走査とライン状の走査との間に設けられても良い。第1期間P1は、ライン状の走査とその次のライン状の走査との間に設けられる場合、第1期間P1において基準光源140は直流光、すなわち略一定の光量の基準光を10マイクロ秒以上連続して照射することが好ましい。すなわち、第1期間P1の長さは10マイクロ秒以上であることが好ましい。
【0044】
一方、第2期間P2はフレームとフレームの間の距離測定が行われていない期間内に設けられてもよいし、パルス光とパルス光との間の距離測定が行われていない期間内に設けられても良い。ただし、第2期間P2はフレームとフレームの間に設けられることが好ましく、第2期間P2は第1期間P1に連続して設けられることが好ましい。第1期間P1と第2期間P2とが互いに近いことで、電流i1に含まれる外乱光由来の成分と、電流i2に含まれる外乱光由来の成分とをほぼ等しくすることができ、高精度な増倍率制御が実現される。受光素子制御部182は、第2期間P2内の電流値の平均を算出し、増倍率の制御に用いる。第2期間P2がフレームとその次のフレームとの間に設けられる場合、第2期間P2の長さは10マイクロ秒以上であることが好ましい。第2期間P2がパルス光とその次のパルス光との間に設けられる場合、第2期間P2の長さは100ナノ秒以上であることが好ましい。なお、第2期間P2がパルス光とパルス光との間の距離測定が行われていない期間内に設けられる場合、一つのフレームに対し複数の第2期間P2が設けられる。受光素子制御部182は、たとえば複数の第2期間P2で得られた電流値の平均値を算出し、増倍率の制御に用いることができる。
【0045】
受光素子制御部182は、第1期間P1において受光素子18に流れる電流i1と、第2期間P2において受光素子18に流れる電流i2との差Δiが予め定められた基準値(目標値It)より大きい場合、受光素子18の増倍率を下げる。また、受光素子制御部182は、第1期間P1において受光素子18に流れる電流i1と、第2期間P2において受光素子18に流れる電流i2との差Δiが予め定められた基準値(目標値It)より小さい場合、受光素子18の増倍率を上げる。具体的には受光素子制御部182はたとえば以下のような処理を行う。
【0046】
基準光源140はフレームの測定が終了すると、次のフレームの測定が開示される前に基準光を受光素子18に照射する。そして受光素子制御部182は電流i1の検出値を取得し、この検出値の平均値i1Aveを算出する。また、基準光の照射が終わると、続けて受光素子制御部182は電流i2の検出値を取得し、この検出値の平均値i2Aveを算出する。なお、第1期間P1と第2期間P2との順は特に制限されず、第1期間P1の後に続けて第2期間P2を設けても良いし、第2期間P2の後に続けて第1期間P1を設けても良い。次いで受光素子制御部182は、平均値i1Aveから平均値i2Aveを引いた値をΔiAveとして算出する。
【0047】
受光素子制御部182はΔiAveが目標値Itになるよう、受光素子18への印加電圧をフィードバック制御する。すなわち受光素子制御部182はΔiAveと目標値Itとの差を算出し、算出した差に予め定められたフィードバックゲインを乗じて制御信号を生成する。そして、生成した制御信号を電圧生成回路184に入力する。電圧生成回路184では入力された制御信号に応じた大きさの電圧が生成されて受光素子18に印加される。受光素子制御部182による電流i1および電流i2の検出値の取得、ΔiAveの算出および受光素子18の増倍率の制御(変更)は一フレームごとに繰り返されても良いし、予め定められた数のフレームごとに繰り返されても良い。なお、受光素子制御部182が行う制御は上述の方法に限定されない。
【0048】
図6は、基準光源制御部142が基準光源140を制御するための第1の構成例を示す図であり、図7は、基準光源制御部142が基準光源140を制御するための第2の構成例を示す図である。増倍率制御を精度良く行うためには、基準光の光量の変動を小さくする必要がある。基準光の光量は基準光源140の温度等に依存して変動しうるため、基準光源140の光量を一定に保つための制御を行うことが好ましい。本実施形態に係る測定装置10は、基準光源140の光量を制御する基準光源制御部142をさらに備える。基準光源制御部142は、基準光の光量を所定の大きさに保つよう、基準光源140を制御する。基準光源制御部142が行う制御について、以下に説明する。
【0049】
図6は、基準光源制御部142がフィードフォワード制御を行う例である。本例において、測定装置10は、温度センサ144および記憶部149をさらに備える。温度センサ144は、基準光源140の温度を測定する。基準光源制御部142は、温度センサ144から基準光源140の温度の測定結果を取得する。また、基準光源制御部142からアクセス可能な記憶部149には、予め温度と基準光源140の駆動信号レベルとを関連付けた温度制御情報が保持されている。温度制御情報は、たとえば温度と駆動信号レベルとを対応付けたテーブルまたは数式である。基準光源制御部142は記憶部149から温度制御情報を取得し、温度センサ144から取得した温度に対応する駆動信号レベルを導出する。そして、基準光源制御部142は導出した駆動信号レベルに基づいた駆動信号を生成して、基準光源140に対し出力する。基準光源140は、基準光源制御部142からの駆動信号により基準光を発する。このように基準光源140の温度に応じた制御を行うことで、基準光の光量を所定の大きさに保つことができる。
【0050】
図7は、基準光源制御部142がフィードバック制御を行う例である。本図中、光の経路を破線矢印で示している。本例において、測定装置10は、スプリッタ147、基準光源用受光素子146、および検出回路148をさらに備える。スプリッタ147に入射した光は、一部が直進してスプリッタ147の第1の面1471から出射し、残りの一部が90°向きを代えてスプリッタ147の第2の面1472から出射する。第1の面1471と第2の面1472とはスプリッタ147の互いに異なる面である。第1の面1471から出射した光は基準光として受光素子18に入射する。一方、第2の面1472から出射した光は基準光源用受光素子146で受光される。検出回路148は、基準光源用受光素子146の受光結果を示す受光信号を生成する回路であり、たとえばI-VコンバータやA/D変換回路を含む。基準光源制御部142は、基準光源用受光素子146における受光強度を示す信号を検出回路148から取得する。
【0051】
基準光源制御部142は基準光源用受光素子146における受光強度が予め定められた目標値Wtよりも大きい場合、基準光源140の発光強度を下げる。一方、基準光源制御部142は基準光源用受光素子146における受光強度が目標値Wtよりも小さい場合、基準光源140の発光強度を上げる。具体的には、基準光源制御部142は基準光源用受光素子146における受光強度と目標値Wtとの差を算出する。そして、算出された差に予め定められたフィードバックゲインを乗じて基準光源140の駆動信号レベルを導出する。導出された駆動信号レベルに応じた駆動信号を生成して基準光源140に入力する。
【0052】
スプリッタ147において第1の面1471から出射される光量と第2の面1472から出射される光量との比は予め定まっている。したがって、以上のような制御を行うことで、第2の面1472からの出射光強度の変動を抑え、ひいては基準光源140からの出射光強度および受光素子18に入射する基準光強度の変動を抑えることができる。
【0053】
以上、本実施形態によれば、受光素子制御部182は、第1期間P1において受光素子18に流れる電流の検出結果と、第2期間P2において受光素子18に流れる電流の検出結果とに基づいて、受光素子18の増倍率を制御する。したがって、外乱光があっても精度良く受光素子18の増倍率を制御できる。
【0054】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0055】
10 測定装置
14 発光素子
17 測定制御部
18 受光素子
30 対象
80 集積回路
140 基準光源
141 駆動回路
142 基準光源制御部
144 温度センサ
146 基準光源用受光素子
147 スプリッタ
148 検出回路
149 記憶部
161 駆動回路
181 検出回路
182 受光素子制御部
184 電圧生成回路
186 電流モニタ回路
188 I-V変換回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7