(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142183
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】X線回折測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/20008 20180101AFI20220922BHJP
【FI】
G01N23/20008
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042251
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】中井 裕之
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA18
2G001CA01
2G001SA29
(57)【要約】
【課題】X線回折測定装置10の大型化を抑制する。
【解決手段】X線回折測定装置10は、管球20から測定対象物に向けてX線を出射するX線回折測定装置10であって、測定対象物にて回折したX線を検出する検出センサ40と、管球20の温度を冷却するための循環液流路34と、一方面において検出センサ40の温度調節を行うペルチェ素子22と、ペルチェ素子22の反対面及び循環液流路34に接触し、熱伝導性を有する熱伝導部材38と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管球から測定対象物に向けてX線を出射するX線回折測定装置であって、
前記測定対象物にて回折したX線を検出する検出センサと、
前記管球を冷却するための循環液流路と、
一方面において前記検出センサの温度調節を行うペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子の反対面及び前記循環液流路に接触し、熱伝導性を有する熱伝導部材と、
を備えるX線回折測定装置。
【請求項2】
前記ペルチェ素子の一方面に接触し、前記検出センサに当該一方面における当該ペルチェ素子の吸熱又は発熱を前記検出センサに伝熱する温度調節板と、
を備える請求項1に記載のX線回折測定装置。
【請求項3】
前記熱伝導部材に取り付けられ、外気放熱を行う放熱部材と、
を備える請求項2に記載のX線回折測定装置。
【請求項4】
前記熱伝導部材は、前記放熱部材よりも熱伝導率が高い素材によって構成される、
請求項3に記載のX線回折測定装置。
【請求項5】
前記熱伝導部材は、銅によって構成され、
前記放熱部材は、アルミニウムによって構成されるヒートシンクである、
請求項4に記載のX線回折測定装置。
【請求項6】
前記ペルチェ素子は、前記X線回折測定装置の長手方向における側面にそれぞれ設けられ、
前記温度調節板は、前記検出センサ側である底面と、前記ペルチェ素子それぞれの一方面と接触する側面とを有する、
請求項2乃至5の何れか1項に記載のX線回折測定装置。
【請求項7】
前記温度調節板と接触し、前記ペルチェ素子による温度調節を補助するフィルムヒーター、
を備える請求項2乃至6の何れか1項に記載のX線回折測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線回折測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、X線出射器から測定対象物に対してX線を照射し、当該測定対象物で回折したX線を受光した検出センサの受光信号に基づき、当該測定対象物の残留応力等を測定するX線回折測定装置が知られている。
【0003】
これに関し、特許文献1には、X線センサ部(冷却対象)を冷却するために用いられるペルチェ素子および水冷ユニットにおいて、消費電力を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、水冷ユニットを用いてX線センサ部を冷却するため、X線回折測定装置が大型になり、測定対象物の大きさが制限されるといった問題が生じていた。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、X線回折測定装置の大型化を抑制することができるX線回折測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様に係るX線回折測定装置は、管球から測定対象物に向けてX線を出射するX線回折測定装置であって、前記測定対象物にて回折したX線を検出する検出センサと、前記管球の温度を冷却するための循環液流路と、一方面において前記検出センサの温度調節を行うペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の反対面及び前記循環液流路に接触し、熱伝導性を有する熱伝導部材と、を備える。
なお、上記「前記ペルチェ素子の反対面及び前記循環液流路に接触」とは、ペルチェ素子の反対面及び循環液流路と熱伝導部材とが直接的に接触していなくても、ペルチェ素子の反対面及び循環液流路と熱伝導部材とが熱的に接触している場合を含んでもよい。
【0008】
また、本発明の第二態様では、前記ペルチェ素子の一方面に接触し、前記検出センサに当該一方面における当該ペルチェ素子の吸熱又は発熱を前記検出センサに伝熱する温度調節板と、を備える。
【0009】
また、本発明の第三態様では、前記熱伝導部材に取り付けられ、外気放熱を行う放熱部材と、を備える。
【0010】
また、本発明の第四態様では、前記熱伝導部材は、前記放熱部材よりも熱伝導率が高い素材によって構成される。
【0011】
また、本発明の第五態様では、前記熱伝導部材は、銅によって構成され、前記放熱部材は、アルミニウムによって構成されるヒートシンクである。
【0012】
また、本発明の第六態様では、前記ペルチェ素子は、前記X線回折測定装置の長手方向における側面にそれぞれ設けられ、前記温度調節板は、前記検出センサ側である底面と、前記ペルチェ素子それぞれの一方面と接触する側面とを有する。
【0013】
また、本発明の第七態様では、前記温度調節板と接触し、前記ペルチェ素子による温度調節を補助するフィルムヒーター、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、X線回折測定装置の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】X線回折測定システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】第一実施形態に係るX線回折測定装置の一部構成の一例を示す図である。
【
図3】第一実施形態に係るX線回折測定装置の分解図である。
【
図4】第一実施形態に係るX線回折測定装置の断面図である。
【
図5】第二実施形態に係るX線回折測定装置の一部構成の一例を示す図である。
【
図6】第二実施形態に係るX線回折測定装置の分解図である。
【
図7】第二実施形態に係るX線回折測定装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の複数の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0017】
---第一実施形態---
まず、第一実施形態について説明する。
【0018】
<全体構成>
図1は、X線回折測定システム1の全体構成の一例を示す図である。
図1に示すように、X線回折測定システム1は、例えば、X線回折測定装置10と、扉ボックスBと、貯留タンク12と、コンピュータ14と、を備える。なお、
図1では、X線回折測定装置10の図示は簡略化している。
【0019】
X線回折測定装置10は、後述する管球20から、歯車やシャフト等の測定対象物に向けてX線を出射し、当該測定対象物から回折したX線の回折強度を測定する機能を有する。
【0020】
扉ボックスBは、X線回折測定装置10を取り囲んでいる。扉ボックスBは、扉を有し、ユーザがその扉を開けることで測定対象物をX線回折測定装置10にセットできる。
【0021】
貯留タンク12は、冷却水を貯留可能に構成されている。なお、この貯留タンク12は、複数存在してもよい。
【0022】
コンピュータ14は、X線回折測定装置10に接続され、当該X線回折測定装置10を制御する機能を有する。また、コンピュータ14は、X線回折測定装置10から回折強度の測定結果(電気信号)を受信し、当該測定結果に基づき、測定対象物の構造や特性の分析・測定を行う。第一実施形態では、測定結果に基づき、測定対象物の残留応力を分析・測定する。
【0023】
<X線回折測定装置10の構成>
図2は、第一実施形態に係るX線回折測定装置10の一部構成の一例を示す図である。また、
図3は、第一実施形態に係るX線回折測定装置10の分解図である。また、
図4は、第一実施形態に係るX線回折測定装置10の断面図である。
図2乃至
図4に示すように、第一実施形態に係るX線回折測定装置10は、例えば、管球20と、ペルチェ素子22と、基板取付プレート23と、温度調節板24と、コリメータ26と、センサ基板28と、熱伝導シート30と、熱伝導板32と、循環液流路34と、放熱部材36と、熱伝導部材38と、検出センサ40と、を備える。また、X線回折測定装置10は、一方向が垂直な方向よりも長い略直方体である。
【0024】
管球20は、X線を生成し、生成したX線を測定対象物に向けて出射するX線出射器としての機能を有する。
【0025】
ペルチェ素子22は、検出センサ40(センサ基板28)の温度を設定範囲内に調節するための温度調節器としての機能を有する。この設定範囲内の温度とは、検出センサ40の抵抗が変化し、暗電流など回折X線の検出感度に影響が出ない(測定誤差が少ない)動作環境温度である。ペルチェ素子22は、熱伝導部材38と温度調節板24とに挟まれ、熱伝導部材38と温度調節板24に接触している。
例えば、ペルチェ素子22は、一方面において検出センサ40の温度調節を行う。第一実施形態では、ペルチェ素子22は、一方面(下面)が温度調節板24と接触しており、温度調節板24、熱伝導シート30、及び熱伝導板32を介して検出センサ40(センサ基板28)と熱結合し、当該一方面における吸熱又は発熱によって検出センサ40(センサ基板28)の温度調節を行うことができる。
また、ペルチェ素子22は、反対面が熱伝導部材38を介して放熱部材36及び循環液流路34と熱結合している。第一実施形態では、ペルチェ素子22は、反対面(上面)が熱伝導部材38と接触しており、当該反対面が発熱する場合でも、熱伝導部材38を介して放熱部材36及び循環液流路34によって当該反対面を効率的に冷却することができる。なお、ペルチェ素子22は、反対面(上面)が放熱部材36や循環液流路34に接触していてもよい。
【0026】
例えば、ペルチェ素子22は、検出センサ40(センサ基板28)の温度が設定範囲よりも高い場合、コンピュータ14から一方向(例えば、正極から負極)への電流が流されることによって、温度調節板24側である一方面(下面)が吸熱(降温)し、熱伝導部材38側である反対面(上面)が発熱(昇温)する。一方、ペルチェ素子22は、検出センサ40の温度が設定範囲よりも低い場合、コンピュータ14から逆方向(例えば、負極から正極)への電流が流されることによって、温度調節板24側である一方面(下面)が発熱し、熱伝導部材38側である反対面(上面)が吸熱する。なお、この検出センサ40(センサ基板28)の温度は、例えば、温度調節板24と熱伝導シート30との間に取り付けられた不図示の温度センサによって計測される。なお、検出センサ40は、センサ基板28に取り付けられてもよい。
【0027】
基板取付プレート23は、熱伝導部材38に対して、センサ基板28及び熱伝導シート30が取り付けられるプレートである。この基板取付プレート23は、隣接する温度調節板24からの熱伝導率が低い素材によって構成される。この素材としては、例えば、フッ素樹脂が挙げられる。
【0028】
温度調節板24は、ペルチェ素子22の一方面における吸熱又は発熱を熱伝導シート30や熱伝導板32を介して検出センサ40(センサ基板28)に伝熱する機能を有する。第一実施形態では、温度調節板24は、ペルチェ素子22の一方面(下面)と接触し、当該一方面における当該ペルチェ素子22の吸熱又は発熱を熱伝導シート30や熱伝導板32を介して検出センサ40に伝熱する。ここで、温度調節板24は、ペルチェ素子22による吸熱又は発熱を検出センサ40に効率的に伝熱する(伝熱ロスを防ぐ)ため、小さいサイズであることが好ましい。例えば、温度調節板24は、ペルチェ素子22と同等のサイズか、ペルチェ素子22よりも一回り大きいサイズであることが好ましい。この温度調節板24は、熱伝導性を有する素材によって構成される。この素材としては、例えば、銅やアルミニウム等の熱伝導率が高い素材が挙げられる。
【0029】
コリメータ26は、管球20からセンサ基板28側に延伸し、管球20によるX線の出射範囲を調整する機能を有する。このコリメータ26の先端は、センサ基板28から下側に突出している。
【0030】
センサ基板28は、X線回折測定装置10の下面において、測定対象物にて回折したX線を検出する検出センサ40を2つ備えている。この検出センサ40は、測定対象物にて回折したX線を検出するセンサ部と、検出したX線を電気信号に変換する回路部とが一体化されているものが好ましい。この検出センサ40としては、例えば、SOI(Silicon onInsulator)センサが挙げられる。
また、センサ基板28は、検出センサ40が変換した電気信号をコンピュータ14に送信するためのコネクタ等を備えている。
【0031】
熱伝導シート30は、温度調節板24とセンサ基板28との間に挟まれており、電気的絶縁性及び熱伝導性を有するクッション部材である。この熱伝導シート30は、例えば、シリコンシートによって構成されている。熱伝導シート30には、熱伝導板32を温度調節板24と接触させるための貫通穴が設けられている。
なお、第一実施形態では、ペルチェ素子22、温度調節板24、センサ基板28、及び熱伝導シート30には、コリメータ26が突出する貫通穴が設けられている。
【0032】
熱伝導板32は、センサ基板28の上面に2つ設けられ、温度調節板24と接触し、センサ基板28の下面に設けられている2つの検出センサ40に、ペルチェ素子22の一方面(下面)における吸熱又は発熱を伝熱するための機能を有する。この熱伝導板32は、例えば、熱伝導シート30よりも熱伝導率の高い素材によって構成される。この素材としては、例えば、銅やアルミニウムが挙げられる。
【0033】
循環液流路34は、接触している管球20の温度を一定温度(例えば外気温と同じ)に冷却するための機能を有する。例えば、循環液流路34は、貯留タンク12に接続されており、不図示のポンプにより貯留タンク12から吸い上げられた水(例えば冷水や常温水)が循環している。
第一実施形態では、循環液流路34は、管球20だけでなく、熱伝導部材38と接触している。これにより、循環液流路34は、ペルチェ素子22の反対面が発熱している場合、管球20とともに、ペルチェ素子22の反対面を冷却することができる。なお、循環液流路34は、放熱部材36に接触していてもよい。
【0034】
放熱部材36は、熱伝導部材38の外側に取り付けられ、熱伝導部材38の熱を外気放熱する機能を有する。第一実施形態では、放熱部材36は、熱伝導部材38と接触しており、熱伝導部材38を介して、ペルチェ素子22の反対面(上面)が発熱している場合、当該反対面における発熱を外気放熱する。また、放熱部材36は、熱伝導部材38を介して、循環液流路34によって冷却される。なお、放熱部材36は、熱伝導部材38の熱を外気吸熱することもできる。
また、第一実施形態では、放熱部材36は、X線回折測定装置10の長手方向における各側面と、X線回折測定装置10の上面に1つずつ設けられている。また、放熱部材36は、熱伝導性を有する素材によって構成されている。この素材としては、例えば、アルミニウム等の熱伝導率が高い素材が挙げられる。放熱部材36としては、例えば、アルミニウムによって構成されているヒートシンクが挙げられる。このヒートシンクには、例えば、外気に触れる部分に複数のフィンが設けられている。
【0035】
熱伝導部材38は、熱伝導性を有する素材によって構成され、ペルチェ素子22の反対面の熱を、放熱部材36や循環液流路34に伝熱する機能を有する。第一実施形態では、熱伝導部材38は、少なくともペルチェ素子22の反対面(上面)と、循環液流路34と、放熱部材36とに接触し、ペルチェ素子22の反対面が発熱する場合、当該反対面を放熱部材36と循環液流路34によって冷却(放熱)する機能を有する。また、第一実施形態では、熱伝導部材38は、内側が管球20及び循環液流路34と接触する形状であって、外側がペルチェ素子22の反対面(上面)及び放熱部材36と接触する平面形状となっている。また、例えば、熱伝導部材38は、放熱部材36よりも熱伝導率が高い素材によって構成されている。この素材としては、例えば、銅が挙げられる。
なお、熱伝導部材38は、放熱部材36と同一の素材によって、放熱部材36と一体に成形されていてもよい。
【0036】
---第二実施形態---
次に、第二実施形態について説明する。
【0037】
第二実施形態では、複数のペルチェ素子22が設けられる点や、温度調節板24や熱伝導部材38の形状が変更されている点、フィルムヒーター50やヒーターカバー52が設けられている点で第一実施形態と異なる。なお、以下で説明しない第二実施形態に係るX線回折測定装置10の構成及び機能は、第一実施形態に係るX線回折測定装置10の構成及び機能と同様である。
【0038】
図5は、第二実施形態に係るX線回折測定装置10の一部構成の一例を示す図である。また、
図6は、第二実施形態に係るX線回折測定装置10の分解図である。また、
図7は、第二実施形態に係るX線回折測定装置10の断面図である。
図5乃至
図7に示すように、第二実施形態に係るX線回折測定装置10は、例えば、管球20と、ペルチェ素子22と、基板取付プレート23と、温度調節板24と、コリメータ26と、センサ基板28と、熱伝導シート30と、熱伝導板32と、循環液流路34と、放熱部材36と、熱伝導部材38と、検出センサ40と、フィルムヒーター50と、ヒーターカバー52と、を備える。
【0039】
第二実施形態では、ペルチェ素子22は、X線回折測定装置10の長手方向における側面にそれぞれ設けられている。これらのペルチェ素子22は、それぞれ熱伝導部材38と温度調節板24との間に挟まれ、熱伝導部材38と温度調節板24と接触するように設けられている。
また、第二実施形態では、各ペルチェ素子22は、例えば検出センサ40の温度が設定範囲よりも高い場合、コンピュータ14から一方向への電流が流されることによって、温度調節板24側である一方面(内側面)が吸熱し、熱伝導部材38側である反対面(外側面)が発熱する。一方、各ペルチェ素子22は、例えば検出センサ40の温度が設定範囲よりも低い場合、コンピュータ14から逆方向への電流が流されることによって、温度調節板24側である一方面(内側面)が発熱し、熱伝導部材38側である反対面(外側面)が吸熱する。
【0040】
また、第二実施形態では、温度調節板24は、各ペルチェ素子22における一方面(内側面)の吸熱又は発熱を、熱伝導シート30や熱伝導板32を介して検出センサ40(センサ基板28)に伝熱する機能を有する。また、第二実施形態では、温度調節板24は、検出センサ40側である底面に載置されたフィルムヒーター50による発熱を、熱伝導シート30や熱伝導板32を介して検出センサ40(センサ基板28)に伝熱する機能を有する。このため、第二実施形態では、温度調節板24は、検出センサ40側である底面と、ペルチェ素子22それぞれの一方面(内側面)と接触する側面とを有する、コの字型の形状である。
【0041】
また、第二実施形態では、熱伝導部材38は、放熱部材36と、各ペルチェ素子22の反対面(外側面)と、循環液流路34とに接触し、各ペルチェ素子22の反対面が発熱する場合、当該反対面を放熱部材36と循環液流路34によって冷却(放熱)する。また、第二実施形態では、熱伝導部材38は、内側が各ペルチェ素子22の反対面や循環液流路34と接触する形状であって、外側が放熱部材36と接触する平面形状となっている。
【0042】
フィルムヒーター50は、ペルチェ素子22による温度調節(一方面における吸熱又は発熱)を補助するための機能を有する。第二実施形態では、フィルムヒーター50は、温度調節板24の底面上に載置され、ヒーターカバー52と温度調節板24との間に挟まれ、ヒーターカバー52と温度調節板24に接触している。これにより、フィルムヒーター50は、温度調節板24や熱伝導シート30、熱伝導板32を介して検出センサ40の温度を設定範囲内に調整する。例えば、フィルムヒーター50は、検出センサ40の温度が設定範囲よりも低い場合、コンピュータ14から電流が流されることによって発熱する。
ここで、第二実施形態では、複数のペルチェ素子22が設けられていることにより、検出センサ40の温度調節制御が複雑化するため、フィルムヒーター50は、例えば各ペルチェ素子22による発熱又は吸熱が停止した後、検出センサ40の温度を微調整するために用いられることが好ましい。
なお、フィルムヒーター50は、ペルチェ素子22と比較して発熱量が少ないため、センサ基板28と同等の面積を有することが好ましい。
【0043】
ヒーターカバー52は、フィルムヒーター50の管球20側(上面)における発熱を温度調節板24に伝熱させる機能を有する。例えば、ヒーターカバー52は、熱伝導率が高い素材(例えば銅やアルミニウム)によって構成されている。
なお、第二実施形態では、温度調節板24、センサ基板28、熱伝導シート30、フィルムヒーター50、及びヒーターカバー52には、コリメータ26が突出する貫通穴が設けられている。
【0044】
このように、第二実施形態におけるX線回折測定装置10では、複数のペルチェ素子とフィルムヒーター50を使用するため、例えば、冬場などの気温が低い時期において、検出センサ40の温度を設定範囲内まで早く昇温することができる。
【0045】
<効果>
以上、本発明の実施形態では、管球20から測定対象物に向けてX線を出射するX線回折測定装置10であって、測定対象物にて回折したX線を検出する検出センサ40と、管球20の温度を冷却するための循環液流路34と、一方面において検出センサ40の温度調節を行うペルチェ素子22と、ペルチェ素子22の反対面及び循環液流路34とに接触し、熱伝導性を有する熱伝導部材38と、を備える。
【0046】
この構成によれば、検出センサ40の温度調節を行うための水路装置(例えば冷却水管)を設ける必要がなく、小型のペルチェ素子22によって検出センサ40の温度調節を行うことができる。また、熱伝導性を有する熱伝導部材38がペルチェ素子22の反対面及び循環液流路34と接触しているため、例えばペルチェ素子22の反対面が発熱する場合でも、管球20を冷却する既存の循環液流路34によって、熱伝導部材38を介して、ペルチェ素子22の反対面を効率的に冷却することができる。これにより、ペルチェ素子22の反対面におけるオーバーヒートを防ぎつつ、X線回折測定装置10の大型化を抑制することができる。また、検出センサ40の温度調節を行うための水路装置が存在しないため、水路装置の振動によって測定精度が悪化することや、電力消費が増大することを抑制することができる。
【0047】
また、本発明の実施形態では、ペルチェ素子22の一方面に接触し、検出センサ40に当該一方面における当該ペルチェ素子22の吸熱又は発熱を検出センサ40に伝熱する温度調節板24と、を備える。
【0048】
この構成によれば、温度調節板24によって、ペルチェ素子22の吸熱又は発熱を効率的に検出センサ40に伝熱することができ、検出センサ40の温度調節を行うための水路装置を設けることなく、X線回折測定装置10の大型化を抑制することができる。
【0049】
また、本発明の実施形態では、熱伝導部材38に取り付けられ、外気放熱を行う放熱部材36と、を備える。
【0050】
この構成によれば、熱伝導性を有する熱伝導部材38に取り付けられた放熱部材36によって、例えばペルチェ素子22の反対面における発熱を効率的に外気放熱することができ、ペルチェ素子22の反対面がオーバーヒートすることによる変形等を防止することができる。
【0051】
また、本発明の実施形態では、熱伝導部材38は、放熱部材36よりも熱伝導率が高い素材によって構成される。
【0052】
この構成によれば、熱伝導部材38の熱伝導率が放熱部材36よりも高いため、ペルチェ素子22の反対面における発熱を効率的に放熱することができる。
【0053】
また、本発明の実施形態では、熱伝導部材38は、銅によって構成され、放熱部材36は、アルミニウムによって構成されるヒートシンクである。
【0054】
この構成によれば、安価かつ効率的に、ペルチェ素子22の反対面における発熱をヒートシンクによって放熱することができる。
【0055】
また、本発明の実施形態では、ペルチェ素子22は、X線回折測定装置10の長手方向における側面にそれぞれ設けられ、温度調節板24は、検出センサ40側である底面と、ペルチェ素子22それぞれの一方面と接触する側面とを有する。
【0056】
この構成によれば、側面に設けられた各ペルチェ素子22における吸熱又は発熱を、温度調節板24によって効率的に検出センサ40に伝熱することができる。
【0057】
また、本発明の実施形態では、温度調節板24と接触し、ペルチェ素子22による温度調節を補助するフィルムヒーター50と、を備える。
【0058】
この構成によれば、ペルチェ素子22が複数設けられることにより、検出センサ40の温度調節が複雑化する場合でも、フィルムヒーター50によって検出センサ40の温度を微調整することができる。
【0059】
<変形例>
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記の実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0060】
例えば、第一実施形態では、熱伝導シート30の厚みについては言及していないが、伝熱効果を高めるため、薄くすることが好ましい。例えば、熱伝導シート30は、センサ基板28より薄い方が好ましい。
【0061】
また、第二実施形態では、フィルムヒーター50は、温度調節板24の底面上に載置される場合を説明したが、熱伝導シート30の上面に載置され、温度調節板24と熱伝導シート30との間に挟まれて設けられていてもよい。
また、フィルムヒーター50は、X線回折測定装置10の長手方向における側面にそれぞれ設けられていてもよい。この場合、ペルチェ素子22は、フィルムヒーター50と接触する側面を有する温度調節板24の底面上に設けられることが好ましい。
【0062】
<付記項>
[付記項1]
管球から測定対象物に向けてX線を出射するX線回折測定装置であって、
前記測定対象物にて回折したX線を検出する検出センサと、
一方面において前記検出センサの温度調節を行うペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子の反対面に接触し、熱伝導性を有する熱伝導部材と、
前記熱伝導部材に取り付けられ、外気放熱を行う放熱部材と、
を備える、
X線回折測定装置。
[付記項2]
前記管球の温度を冷却するための循環液流路と、
を備え、
前記熱伝導部材は、前記循環液流路と接触している、
付記項1に記載のX線回折測定装置。
【符号の説明】
【0063】
10…X線回折測定装置、20…管球、22…ペルチェ素子、24…温度調節板、34…循環液流路、36…放熱部材、38…熱伝導部材、40…検出センサ、50…フィルムヒーター