(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142186
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】チューブ容器
(51)【国際特許分類】
B65D 35/02 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
B65D35/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042255
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 果穂
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 実
(72)【発明者】
【氏名】浦川 直也
【テーマコード(参考)】
3E065
【Fターム(参考)】
3E065AA02
3E065BA05
3E065BA16
3E065BA18
3E065BA25
3E065BA34
3E065BB03
3E065CA01
3E065CA09
3E065DA04
3E065DB05
3E065DC01
3E065DD05
3E065DE02
3E065DE05
3E065DE20
3E065FA11
3E065GA10
3E065HA01
3E065HA10
(57)【要約】
【課題】チューブ容器の内容物が低残量の場合でも内容物を絞り出しやすく、かつ、低残量の場合に絞り出しを行っても、胴部にしわが付きにくく美粧性が保たれるチューブ容器を提供する。
【解決手段】紙を含む外層シートと、最内面となるシーラント層を有する内層シートとを含むシートで形成され、一方端が閉塞されたチューブ形状を有する胴部と、胴部の他方端に取り付けられた注出口部とを備え、胴部は、一方端を閉塞する第1シール部と、シートを丸めて対向する一対の端縁から所定範囲を重ねてシールした第2シール部と、注出口部にシールされた第3シール部とを有し、胴部における第1シール部、第2シール部及び第3シール部を除く部分が未接着または剥離可能であり、当該部分における外層シート及び内層シートの間に空気を導く通気部が設けられる、チューブ容器。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を含む外層シートと、最内面となるシーラント層を有する内層シートとを含むシートで形成され、一方端が閉塞されたチューブ形状を有する胴部と、
前記胴部の他方端に取り付けられた注出口部とを備え、
前記胴部は、前記一方端を閉塞する第1シール部と、前記シートを丸めて対向する一対の端縁から所定範囲を重ねてシールした第2シール部と、前記注出口部にシールされた第3シール部とを有し、
前記胴部における前記第1シール部、前記第2シール部及び前記第3シール部を除く部分の少なくとも一部が未接着または剥離可能であり、当該部分における前記外層シート及び前記内層シートの間に空気を導く通気部が設けられる、チューブ容器。
【請求項2】
前記通気部は、前記第1シール部、前記第2シール部及び前記第3シール部のいずれかの一部に設けられる、前記外層シートと前記内層シートとが未接着または剥離可能な部分である、請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項3】
前記通気部は、前記第1シール部に形成される、請求項2に記載のチューブ容器。
【請求項4】
前記通気部は、前記第2シール部に形成される、請求項2に記載のチューブ容器。
【請求項5】
前記通気部には逆止弁が設けられる、請求項1~4のいずれかに記載のチューブ容器。
【請求項6】
前記注出口部には、内容物の絞り出しに伴って前記注出口部の開口部を開放し、絞り出しをしていないときには前記開口部を閉鎖する弁体が設けられている、請求項1~5のいずれかに記載のチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や化粧品、食品等の包装材として、樹脂を主体とした材料からなるチューブ容器が広く用いられている。例えば、特許文献1には、内容物を抽出する注出ユニットと、注出ユニットに溶着され、内容物を収容する胴部とから構成されるチューブ容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境負荷の軽減や資源保護の観点から、包装容器に使用する樹脂量の低減が要望されている。そこで、特許文献1に記載されるような樹脂性のチューブ容器において、樹脂量を低減するために、例えば、胴部を構成するフィルムを薄膜化することが考えられる。ところが、胴部を構成するフィルムを単に薄膜化すると、胴部のコシが弱くなり、容器の自立性が低下する。そのため、容器の自立性に必要なコシを確保するため、胴部を構成する素材の一部に紙を用いることが検討されている。
【0005】
チューブ容器は、内容物が低残量となった場合は絞り出しにくく、絞り出すために胴部を強く握る必要がある。また、胴部に紙を用いることにより、内容物の絞り出しにより胴部に多数のしわが付き、外観が損なわれるという問題があった。
【0006】
それ故に、本発明は、チューブ容器の内容物が低残量の場合でも内容物を絞り出しやすく、かつ、低残量の場合に絞り出しを行っても、胴部にしわが付きにくく美粧性が保たれるチューブ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るチューブ容器は、紙を含む外層シートと、最内面となるシーラント層を有する内層シートとを含むシートで形成され、一方端が閉塞されたチューブ形状を有する胴部と、胴部の他方端に取り付けられた注出口部とを備え、胴部は、一方端を閉塞する第1シール部と、シートを丸めて対向する一対の端縁から所定範囲を重ねてシールした第2シール部と、注出口部にシールされた第3シール部とを有し、胴部における第1シール部、第2シール部及び第3シール部を除く部分が未接着または剥離可能であり、当該部分における外層シート及び内層シートの間に空気を導く通気部が設けられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、チューブ容器の内容物が低残量の場合でも内容物を絞り出しやすく、かつ、低残量の場合に絞り出しを行っても、胴部にしわが付きにくく美粧性が保たれるチューブ容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るチューブ容器の概略構成を示す正面図
【
図3】
図2に示したIII-IIIラインに沿う端面図
【
図4】チューブ容器の胴部を構成するシートの層構成の一例を示す断面図
【
図5】(a)チューブ容器の胴部を構成するシートの第1の例を示す平面図 (b)(a)のシートを用いて形成した胴部を示す図
【
図6】(a)チューブ容器の胴部を構成するシートの第2の例を示す平面図 (b)(a)のシートを用いて形成した胴部を示す図
【
図7】
図5または
図6のチューブ容器に設けられた通気部を説明する図
【
図8】(a)チューブ容器の胴部を構成するシートの第3の例を示す平面図 (b)(a)のシートを用いて形成した胴部を示す図
【
図9】
図8のチューブ容器に設けられた逆止弁を説明する図
【
図10】
図1のチューブ容器の内部構造を示す縦断面図
【
図11】
図10のチューブ容器の内容物が少なくなった状態を示す図
【
図12】実施形態に係るチューブ容器に設けられる弁体の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係るチューブ容器の概略構成を示す正面図であり、
図2は、
図1に示した注出口部の斜視図であり、
図3は、
図2に示したIII-IIIラインに沿う端面図である。
図2及び
図3は、注出口部に胴部をシールする前の状態を示している。
【0011】
チューブ容器100は、チューブ状の胴部1と、胴部1に取り付けられた注出口部2とを備える。
【0012】
胴部1は、内容物を収容するための部材であり、略平行な一対の端縁を有するシートを筒状に成形することにより形成されている。胴部1の一方の端部5a(
図1における下端)はシールされて閉塞されている。一方、胴部1の他方の端部5b(
図1における上端)の近傍部分は、折り畳まれた状態で、後述するフランジ部4の外面8にシールされている。胴部1とフランジ部4との溶着部には、胴部1を構成するシートが折り畳まれてなるプリーツ12が複数形成される。
【0013】
また、胴部1は、シートの端縁から所定範囲を重ねてシールされた貼り合わせ部7(背貼り部)を備える。貼り合わせ部7におけるシートの貼り合わせ方法としては、シートの内面どうしを合掌状に突き合わせて貼り合わせる合掌貼りや、シートの内面と外面とを貼り合わせる封筒貼り等の周知の方法を用いることができる。合掌貼りにより胴部1に形成された貼り合わせ部7は、胴部1の外面に沿うように折り曲げられて胴部1に貼り合わされていても良い。貼り合わせ部7の胴部1への貼合方法は特に限定されず、胴部1を構成するフィルムの表面全体または部分的に設けられるヒートシール性の樹脂を介して両者を溶着しても良いし、ホットメルト等の接着剤を介して両者を接着しても良い。端部5aのシールされている部分を第1シール部S1、貼り合わせ部7のシート41の端部どうしが貼り合わせられる部分を第2シール部S2、フランジ部4がシールされる部分を第3シール部S3とする。さらに、胴部1には後述する通気部20が設けられる。
【0014】
注出口部2は、胴部1に収容された内容物を外部に抽出するためのスパウトであり、筒状の注出筒部3とフランジ部4とを備える。フランジ部4は、注出筒部3の一方の端部6a(
図1における下端)に接続され、注出筒部3の外方に延伸する平板状の部分である。本実施形態では、フランジ部4は、注出筒部3の軸方向と直交する方向(
図1における左右方向)に延伸するように形成されている。本実施形態では、フランジ部4は、円環状に形成されているが、胴部1を接合することができる限り、フランジ部4の形状は限定されず、楕円形、長円形、トラック形、多角形等であっても良い。
【0015】
注出口部2は、熱可塑性樹脂により成型されてもよいし、熱可塑性樹脂と樹脂以外のフィラーを含む材料により成型されてもよい。注出口部2の材料に用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド及びシクロポリオレフィンのいずれか1種、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。フィラーとしては、タルク、カオリン、紙粉及びセルロース繊維のいずれか1種、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。注出口部2の材料として、熱可塑性樹脂と、樹脂以外のフィラーの混合物を用いることにより、成型性や胴部1のシート材との熱溶着性を維持しつつ、樹脂の使用量を低減することが可能となる。注出口部2の成型方法は特に限定されないが、射出成形、真空成形・熱板圧空成型等のサーモフォーミング、コンプレッション成型等の既存の成型方法を利用可能である。
【0016】
図2及び
図3に示すように、フランジ部4の外面8(注出筒部3の端部6b側の面)には、円環状の凸部9及び凹部10が設けられている。注出口部2のフランジ部4に胴部1を溶着する際、凸部9が最初に溶融し、溶融した樹脂が胴部1の内面とフランジ部4との間に広がる。また、溶融した樹脂の一部は凹部10に流れ込む。この結果、凸部9が溶融した樹脂を介して、胴部1の内面とフランジ部4の外面8とを面で溶着することができ、溶着強度を向上できる。
【0017】
チューブ容器100の製造時に胴部1及び注出口部2を溶着する方法としては、超音波溶着、高周波溶着、ヒートシール溶着、ホットエア溶着、胴部インサートのコンプレッション成型等を利用することができるが、紙の断熱性に左右されにくい点で超音波溶着を採
用することが好ましい。
【0018】
チューブ容器100は、
図1に示すように、注出口部2の注出筒部3に螺合により着脱可能なスクリューキャップ11を更に備えていても良い。チューブ容器100がスクリューキャップ11を備える場合、チューブ容器100の開封後に再封することが容易と
なる。
【0019】
また、チューブ容器100は、スクリューキャップ11に代えて、ヒンジキャップを備えていても良い。ヒンジキャップを設ける場合、
図1に示した注出筒部3に螺合によりヒンジキャップを注出口部2に取り付けても良い。あるいは、注出筒部3の外面にネジ山の代わりにリブを設け、リブを介した嵌合によりヒンジキャップを注出口部2に取り付けても良い。
【0020】
また、チューブ容器100は、スクリューキャップ11に代えて、注出筒部3と打栓により嵌合するキャップを備えてもよい。
【0021】
また、注出筒部3の端部6bには、チューブ容器100の未開封状態において注出筒部3を閉鎖するフィルムがシールされていても良い。
【0022】
更に、注出筒部3の内部は、チューブ容器100の未開封状態において容器内部を密閉状態に保つために、隔壁により閉鎖されていても良い。隔壁を設ける場合、注出筒部3の内周に沿って円形状のハーフカットを設けると共に、ハーフカットによって囲まれた部分に接続されるプルリングを設けることが好ましい。このように構成すれば、チューブ容器100の開封時には、使用者がプルリングを引っ張って隔壁のハーフカットの部分を破断させることにより、ハーフカットで囲まれた隔壁の一部を除去して、胴部1から注出筒部3へと内容物を注出するための開口部を形成することができる。
【0023】
図4は、チューブ容器の胴部を構成するシートの層構成の一例を示す断面図である。
【0024】
胴部1は、
図4に示すような外層シート41aと内層シート41bとを部分的に貼り合わせたシート41を用いて形成される。
【0025】
外層シート41aは、シート41において胴部1の外側に位置するシートであり、少なくとも紙層32を備える。紙層32の外面には、インキ層38及びオーバーコートニス層39が積層されてもよい。また、紙層32の内面には樹脂フィルム等の基材層40が積層されてもよい。内層シート41bは、シート41において胴部1の内側に位置するシートであり、基材フィルム層33、バリア層34及びシーラント層35をこの順に積層した多層シートである。このとき、シーラント層35がシート41の最内層となる。外層シート41aは紙が主体であるためコシが強く、内層シート41bはフィルムで構成されるため柔らかく可撓性を有する。
【0026】
以下に、外層シート41a及び内層シート41bにそれぞれ積層される各層の詳細について説明する。
【0027】
(紙層)
紙層32は、チューブ容器100に強度及びコシを付与する構造層である。紙層32を構成する用紙の種類は特に限定されないが、強度、屈曲耐性、印刷適性を備える点で、片艶クラフト紙または両艶クラフト紙を用いることが好ましい。また、紙層32を構成する用紙として、必要に応じて、耐水紙または耐油紙を使用しても良い。
【0028】
紙層32に用いる紙の坪量は、30~300g/m2であり、50~200g/m2であることが好ましい。紙層32に用いる紙の坪量が30g/m2未満である場合、外層シート41aのコシが不足し、絞り出し後に、絞り出し前の形状に戻りにくくなるため好ましくない。この点についての詳細は後述する。コシを補うためには、例えば、紙層32より内側に設けられる樹脂フィルムを厚くする必要があるが、樹脂比率の上昇に繋がり、環境負荷低減の面で望ましくない。また、紙層32に用いる紙の坪量が300g/m2を超える場合、紙のコシや断熱性により、製筒性(製袋性)、成型性及び溶着性が悪化する上、製造コストも増加するため好ましくない。また、紙層32に含まれるセルロース繊維の質量は、紙層32の全質量の50%以上であることが好ましい。
【0029】
(インキ層、オーバーコートニス層)
インキ層38は、各種表示を行うために印刷により施される層であり、オーバーコートニス層39は、耐摩性等を付与するための層である。インキ層38とオーバーコートニス層39の積層順序は
図4と逆であっても良いが、その場合、インキ層38を保護するための紙保護層を別途設けてもよい。
【0030】
(基材フィルム層)
基材フィルム層33は、内層シート41bに耐熱性と強靱性等の物理的強度とを付与する層である。基材フィルム層33は、バリア層34の基材となる層でもある。基材フィルム層33を構成するフィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性及び物理的強度の観点から、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の延伸フィルムを用いることが好ましい。
【0031】
(バリア層)
バリア層34は、酸素や水蒸気等を遮断して、内容物の保存性を向上させる機能層である。バリア層34は、例えば、シリカやアルミナ等の無機化合物の蒸着膜、アルミニウム等の金属蒸着膜、アルミニウム等の金属箔、板状鉱物及び/またはバリア性樹脂を含むバリアコート剤の塗膜の1種以上により構成することができる。バリアコート剤に用いるバリア性樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)等を使用することができ、バリアコート剤にはバリア性樹脂以外のバインダー樹脂が適宜配合される。バリア層34は、予め基材フィルム層33上に積層されてバリアフィルムを構成していても良いし、単層膜として設けられても良い。
【0032】
(シーラント層)
シーラント層35は、貼り合わせ部7及び注出口部2と胴部1との溶着のために設けられる層である。シーラント層35の材質は特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂であることが好ましい。シーラント層35は、軟化温度が基材フィルム層33の軟化温度より20℃以上低い樹脂を用いる。シーラント層35の軟化温度が、基材フィルム層33の軟化温度より20℃以上低くない場合、シール時に基材フィルム層33が軟化してピンホールが発生する可能性が高くなるため好ましくない。シーラント層35の軟化温度は、基材フィルム層33の軟化温度より40℃以上低いことが好ましい。
【0033】
シーラント層35に用いる熱可塑性樹脂は、後述する注出口部2の材料を構成する熱可塑性樹脂に対して接着性を有するものであれば良いが、注出口部2に用いる熱可塑性樹脂と同じ材質であることが好ましい。シーラント層35に用いる熱可塑性樹脂と注出口部2に用いる熱可塑性樹脂層とを同じにすることにより、胴部1と注出口部2とのシール強度を向上させることができる。
【0034】
胴部1を構成するシート41の厚み(外層シートと内層シートの総厚)は、特に限定されないが、30~300μmであることが好ましい。胴部1を構成するフィルムの厚みが、この範囲であれば、製袋機やピロー・スティック包装機等を用いて胴部1を容易に筒状に加工することができる。また、紙層32によって強度とコシが付与されるため、一般的なラミネートチューブ(厚み300~500μm)と比べて、薄くすることができ、樹脂使用量も低減できる。
【0035】
胴部1を構成するシート41の樹脂比率を低減するため、シート41の質量のうち、紙層32の占める割合が50%以上であることが好ましい。樹脂の使用量を低減する観点では紙層32の割合は高いほど好ましい。
【0036】
尚、胴部1を構成するシート41は、紙層32及びシーラント層35以外の1層以上を省略しても良い。
【0037】
外層シート41a及び内層シート41bは、外周縁に沿った帯状の領域において相互に接着され、当該帯状の領域の内側においては、外層シート41a及び内層シート41bは未接着または剥離可能である。以下、シート41の具体例を説明する。
【0038】
図5(a)は、チューブ容器の胴部を構成するシートの第1の例を示す平面図であり、
図5(b)は、
図6(a)のシートを用いて形成した胴部を示す図である。
【0039】
図5(a)に示す構成例において、外層シート41a及び内層シート41bは、シート41の外周縁の一部を除く部分に沿った帯状の領域T1において相互に接着されており、帯状の領域T1に囲まれた領域T2においては、完全接着されていない。第1の例において、シート41の外周縁のうち、チューブ容器100を構成したときに閉塞端となる部分の一部には、外層シート41a及び内層シート41bが完全接着されていない部分18が設けられている。ここで、「完全接着」は、外層シート41a及び内層シート41bが相互の界面で剥離不可となるように接着されていることをいい、「完全接着されていない」とは、外層シート41a及び41bが、未接着であること、相互の界面または剥離可能であることをいう。
【0040】
外層シート41a及び内層シート41bを剥離可能とする方法としては、例えば、剥離ニスをパターンコートして外層シート41aと内層シート41bとを貼り合わせる方法を利用できる。領域T2及び外周縁の完全接着されていない部分18を未接着ではなく剥離可能とした場合、シート41の作製時に領域T2内に空気が入りにくいため、胴部1の形成時に内層シート41bがヨレてしまうことを抑制できる。なお、領域T2及び外周縁の完全接着されていない部分18を剥離可能に構成した場合、胴部1の形成時やチューブ容器100の使用中に外層シート41aのコシによって自然に剥離させることができる。
【0041】
図5(a)に示すシート41を丸めて形成した胴部を用いると、
図5(b)に示すチューブ容器100が得られる。シート41に設けられた接着領域T1の一部または全部によって、胴部1の第1シール部S1、第2シール部S2、及び第3シール部S3が構成され、シート41に設けられた完全接着されていない部分18によって、第3シール部S3に通気部20が構成される。通気部20は、シート41の領域T2に、チューブ容器100の外部から空気を導くための部分である。
【0042】
図6(a)は、チューブ容器の胴部を構成するシートの第2の例を示す平面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のシートを用いて形成した胴部を示す図である。
【0043】
図6(a)に示す例において、
図5(a)の例と同様に、外層シート41a及び内層シート41bは、外周縁の一部を除く部分に沿った帯状の領域T1において相互に接着されており、帯状の領域T1に囲まれた領域T2においては、完全接着されていない。ただし、
図6(a)のシート41においては、シート41の外周縁のうち、チューブ容器100を構成したときに貼り合わせ部7となる部分の一部に、外層シート41a及び内層シート41bが完全接着されていない部分18が設けられている。
【0044】
図6(a)に示すシート41を丸めて形成した胴部を用いると、
図6(b)に示すチューブ容器100が得られる。
図6(b)のチューブ容器100においては、第2シール部S2に通気部20が設けられる。
【0045】
図7(a)及び(b)は、
図5または
図6のチューブ容器に設けられた通気部を説明する図である。
【0046】
外層シート41a及び内層シート41bの領域T2は、未接着または剥離可能であるため、外層シート41a及び内層シート41bの間には、空気を導入可能な空間が形成される。通気部20は、外層シート41a及び内層シート41bの間に形成された空間に空気を導くための部分である。通気部20は、
図7(a)に示すように、チューブ容器100から内容物の絞り出しが行われている状態では閉鎖されおり、外層シート41a及び内層シート41bの間に導入された空気が外部に流出するのを抑制できることが好ましい。そして、通気部20は、チューブ容器100の内容物の絞り出しが行われていない状態では、
図7(b)に示すように、開口されており、チューブ容器100外の空気を領域T2に導く。
【0047】
なお、通気部20の閉鎖及び開口は、通気部20に逆止弁のような機構を用いることで行ってもよいし、指で通気部20を押さえたり離したりして行ってもよい。指で行う場合、通気部20は、使用者が絞り出し時に指で閉鎖しやすい、例えば、貼り合わせ部7(第2シール部S2)の注出口部2近傍に設けられるのが好ましい。
【0048】
図8(a)は、チューブ容器の胴部を構成するシートの第3の例を示す平面図であり、
図8(b)は、
図8(a)のシートを用いて形成した胴部を示す図である。
【0049】
図8(a)に示す例において、外層シート41a及び内層シート41bは、シート41の外周縁全体に沿う帯状の領域T1において相互に接着されており、帯状の領域T1に囲まれた領域T2においては、完全接着されていない。外層シート41aの領域T2には、指で塞ぐことが可能な大きさの穴19が設けられている。
【0050】
図8(a)に示すシート41を丸めて形成した胴部を用いると、
図8(b)に示すチューブ容器100が得られる。
図8(b)のチューブ容器100においては、胴部の外面に通気部20が設けられる。
【0051】
図9(a)~(c)は、
図8のチューブ容器に設けられた逆止弁を説明する図である。より詳細には、
図9(a)は、通気部20近傍の平面図であり、
図9(b)及び(c)は、通気部20及び逆止弁21の断面図である。
【0052】
通気部20が外層シート41aの領域T2に設けられた穴19で構成される場合、通気部20が設けられる外層シート41aの内層シート41b側の面には、逆止弁21が設けられてもよい。逆止弁21は、例えば、樹脂で作製される略矩形形状の板材である。逆止弁21は、例えば、接着剤が一方端に塗布され、接着剤が未塗布の他方端側(解放端)で通気部20を覆うように、外層シート41aの内層シート41b側に取り付けられる。
【0053】
チューブ容器100の内容物の絞り出しが行われている状態では、外層シート41a及び内層シート41bの間の空間に導入された空気が加圧されることにより、逆止弁21の解放端側が外層シート41aに押し当てられる。これにより、通気部20は閉鎖され、領域T2に空気が存在する場合は外部に空気が流出するのを防ぐ(
図9(b))。そして、チューブ容器100の内容物の絞り出しが行われていない状態では、逆止弁21の解放端が外層シート41aから離れることにより通気部20が開口され、チューブ容器100外の空気を領域T2に導くことができる(
図9(c))。
【0054】
なお、逆止弁21を設ける代わりに、例えば、絞り出しの際に使用者が通気部20を指などで閉鎖してもよい。その場合、通気部20は、使用者が絞り出し時に指で閉鎖しやすい、例えば、貼り合わせ部7(第2シール部S2)の注出口部2近傍に設けられるのが好ましい。
【0055】
次に、チューブ容器100の使用方法について説明する。
図10は、
図1のチューブ容器100の内部構造を示す縦断面図であり、
図11は、
図10のチューブ容器の内容物の残量が少なくなった状態を示す図である。
【0056】
チューブ容器100の使用前(絞り出し前)は、
図10に示すように、チューブ容器100の胴部1を構成する外層シート41aと内層シート41bとは密着している。この状態から絞り出しを行うと、内容物の減少に伴い、外層シート41a及び内層シート41bは共に内容物を押し出す方向に変形する。絞り出しをやめると、内層シート41bは柔らかく可撓性を有するため変形した状態を維持するが、紙を主体とする外層シート41aはそのコシによって、絞り出し前の形状に戻る。このとき、外層シート41aと内層シート41bの間の空間には通気部20から空気が導入される。なお、外層シート41a及び内層シート41bの領域T2を剥離可能に構成した場合は、外層シート41aの形状復帰に伴って、
図11(a)、(b)に示すように、外層シート41aと内層シート41bとの間に剥離が生じる。内容物が減少した状態から再度絞り出しを行う場合に、上述のように通気部20を逆止弁または指で閉鎖する。この場合、外層シート41aと内層シート41bとの間の空気の圧力が絞り出しに伴って高くなるため、内層シート41bに対して
図11の矢印方向に圧力が掛かり、内層シート41b内の内容物の絞り出しを容易に行うことができる。なお、通気部20の閉鎖を指で行う構成のチューブ容器100においては、封鎖せずに絞り出しを行ってもよい。
【0057】
チューブ容器100の注出口部2には、使用中に内層シート41b内に注出口部2を通してエアバックが発生するのを抑制するための弁体22が設けられてもよい。
図12の(a)及び(b)は、実施形態に係るチューブ容器に設けられる弁体の一例を示す断面図である。
【0058】
図12(a)は、チューブ容器100の内容物の絞り出しが行われていない状態を示しており、
図12(b)は、チューブ容器100の内容物の絞り出しを行っている状態を示す。弁体22は、内容物の絞り出しに伴って、開口部23を開放し、絞り出しを行っていない状態においては、開口部23を閉鎖する。これにより、内層シート41b内へのエアバックが発生しにくく、また、内容物の鮮度保持性も高めることができる。なお、内容物の粘度が5~10Pa・sと高い場合においては、空気の入りにくいスリットバルブやクロススリットバルブなどを注出口部として用いてもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施形態においては、外層シート41aは紙層32を有しているためコシが強く、内層シート41bは可撓性を有する。そして、外層シート41aと内層シート41bとは、胴部1における第1シール部S1、第2シール部S2、第3シール部S3を除く部分、すなわち、外層シート41aと内層シート41bとの接着領域T1を除く部分において未接着または剥離可能であり、かつ、当該接着領域T1を除く部分における外層シート41aと内層シート41bとの間に空気を導く通気部20が設けられる。通気部20は、絞り出しを行っている間は閉鎖可能であり、それ以外の場合は開口される。これにより、残量の低下に伴って内層シート41bが圧縮され、外層シート41aと内層シート41bとの間に空気で満たされた空間が生じる。そのため、チューブ容器100の内容物が低残量の場合でも通気部20を閉鎖することによって内容物を絞り出しやすく、かつ、低残量の場合に絞り出しを行っても、胴部1にしわが付きにくく美粧性が保たれるチューブ容器100を提供することができる。
【0060】
また、注出口部2に、内容物の押し出しに伴って開口部23を開放し、押し出ししていないときに開口部23を閉鎖する弁体22を設けた場合、エアバックが生じにくくなるため絞り出しが容易にでき、また、内容物の鮮度保持性を高めることができる。
【実施例0061】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
【0062】
(実施例1)
坪量70g/m2の未晒クラフト紙(王子製紙株式会社製)上に、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、E5102)を、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートにより貼り合わせた。未晒クラフト紙上にインキ層及びオーバーコートニス層を積層し、外層シートを作製した。
【0063】
厚み12μmの透明バリアフィルム(凸版印刷株式会社製、商品名:GL-RD)と、厚み15μmの延伸ナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製、商品名:ONBC)と、厚み50μmの直鎖状低融点ポリエチレン(LLDPE、タマポリ化学株式会社製、商品名:SE625N)とをこの順に、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートにより貼り合わせ、内層シートを作製した。
【0064】
作製した外層シートと内層シートとを、接着領域T1(第1シール部、第2シール部、第3シール部)に接着剤のパターンコートを行うことで貼り合わせてシートを作製した。このとき、第1シール部の一部には接着剤を施さず、通気部とした。
【0065】
作製したシートを背貼り製袋機で加工し直径35mm×長さ180mmの合掌貼りパウチ(胴部)を作製した。
【0066】
注出口部を、ポリエチレン樹脂を用い、射出成型により成型した。成型した注出口部の内側にシリコン製のアンブレラバルブを取り付けた。
【0067】
作製した胴部及び注出口部を専用の加工装置を用いて熱溶着することにより、直径35mmのチューブ容器を作製した。
【0068】
(実施例2)
通気部を第2シール部に設けたことを除き、実施例1と同様にして直径35mmのチューブ容器を作製した。
【0069】
(実施例3)
坪量100g/m2の未晒耐油紙(王子製紙株式会社製)上に、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、E5102)を、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートにより貼り合わせたこと、作製した外層シートと内層シートとを、接着領域T1にヒートシールニスのパターンコートを行うことで貼り合わせてシート41を作製したこと、及び、通気部を第2シール部に設けたことを除き、実施例1と同様にして直径35mmのチューブ容器を作製した。
【0070】
(実施例4)
坪量120g/m2の未晒クラフト紙(王子製紙株式会社製)上に、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、E5102)を、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートにより貼り合わせたこと、第1シール部の一部に剥離ニスを施して通気部としたこと、及び、テープ材を用いて、作製したシートから胴部を作製したことを除き、実施例1と同様にして直径35mmのチューブ容器を作製した。なお、使用したテープ材は、2層の厚み50μmの直鎖状低融点ポリエチレン(LLDPE、タマポリ化学株式会社製、商品名:SE625N)の間に、厚み12μmの透明バリアフィルム(凸版印刷株式会社製、商品名:GL-RD)を2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートにより貼り合わせ、幅8mmにマイクロスリットして作製した。
【0071】
(実施例5)
坪量120g/m2の未晒クラフト紙(王子製紙株式会社製)上に、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、E5102)を、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートにより貼り合わせたこと、領域T2(第1シール部、第2シール部、第3シール部以外の部分)にシリコン系剥離ニスをパターンコートしてシートを作製したこと、及び、テープ材を用いて、作製したシートから胴部を作製したことを除き、実施例1と同様にして直径35mmのチューブ容器を作製した。なお、テープ材は、実施例4と同様のものを使用した。
【0072】
(比較例1)
坪量70g/m2の未晒クラフト紙(王子製紙株式会社製)上に、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、E5102)と、厚み12μmの透明バリアフィルム(凸版印刷株式会社製、商品名:GL-RD)と、厚み15μmの延伸ナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製、商品名:ONBC)と、厚み50μmの直鎖状低融点ポリエチレン(LLDPE、タマポリ化学株式会社製、商品名:SE625N)とをこの順に、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートにより貼り合わせたこと、アンブレラバルブを取り付けなかったこと、及び、通気部を設けなかったことを除き、実施例1と同様にして直径35mmのチューブ容器を作製した。
【0073】
実施例1~5及び比較例1で作成したチューブ容器に対して、残量評価、逆止効果評価、外観評価を行った。
【0074】
残量評価では、100gの粘体を封入したチューブ容器を用意し、10人のモニターにそれぞれ5本ずつ絞り出しを行ってもらい、粘体の残量の平均値を調べた。
【0075】
逆止効果評価では、実施例1~5のチューブ容器については、残量評価における粘体の絞り出し後のチューブ容器の内層シートが圧縮されているかについて、外層シートを剥がして確認した。比較例1については、胴部が圧縮されているかについて確認した。圧縮されていれば、逆止効果ありとみなして評価を「〇」、圧縮されていなければ、逆止効果なしとみなして評価を「×」とした。
【0076】
外観評価では、残量評価における粘体の絞り出し後のチューブ容器の外観を確認した。比較例1と比べて外観にしわの数が少ない場合は評価を「〇」、比較例1と比べて外観のしわの数が同じあるいは多い場合は評価を「×」とした。
【0077】
表1に各実施例及び各比較例に係るチューブ容器の構成、通気部の形成箇所とその形成方法、接着領域T1の接着方法、領域T2の接着方法、及び、残量評価、逆止効果評価、外観評価の結果を示す。なお、表1における胴部の構成欄に記載の数値は、紙の坪量(g/m2)または層の厚み(μm)を表す。
【0078】
【0079】
実施例1~5に係るチューブ容器は、外層シート及び内層シートとの間に未接着部分が設けられ、かつ、第1シール部または第2シール部に通気部が設けられていた。そのため、内容物の絞り出しが行いやすく、比較例1のチューブ容器よりも残量の平均重量が少なかった。
【0080】
実施例1~5に係るチューブ容器は、アンブレラバルブが設けられていた。そのため、使用後のチューブ容器の内層シートが圧縮されており、逆止効果が認められた。一方、アンブレラバルブが設けられていない比較例1のチューブ容器は、逆止効果が認められなかった。
【0081】
また、実施例1~5に係るチューブ容器は、外層シート及び内層シートとの間に未接着部分が設けられ、かつ、第1シール部または第2シール部に通気部が設けられていた。そのため、絞り出しの際に外層シートが押し潰されても、絞り出し後に外層シート及び内層シートとの間に空気が充填され、外層シートが絞り出し前の形状に復元された。そのため、実施例1~5に係るチューブ容器は、未接着部分及び通気部が設けられていない比較例1のチューブ容器に比べて胴部に発生するしわが少なく、美粧性が保たれていた。