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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142188
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】電動枝切り鋏
(51)【国際特許分類】
   A01G 3/02 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
A01G3/02 502C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042259
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】511052794
【氏名又は名称】株式会社サカソウインベント
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 篤
(57)【要約】
【課題】切断刃を動作させる度に保持部が毎回動作してしまうことを抑制できるようにする。
【解決手段】被切断物を切断する切断刃10と、切断刃10に隣接して配置される保持部20とを有し、切断刃10に連動して保持部20を揺動させることにより、切断刃10によって切断される被切断物を保持部20で保持することが可能な電動枝切り鋏1は、切断刃10及び保持部20のそれぞれを駆動する駆動源と、駆動源による駆動力で切断刃10及び保持部20の双方を動作させることにより保持部20を切断刃10に連動させる第1モードと、駆動源による駆動力で切断刃10のみを動作させることにより保持部20を切断刃10に連動させない第2モードと、に切り替え可能な切替部37と、を備える構成である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断物を切断する切断刃と、前記切断刃に隣接して配置される保持部とを有し、前記切断刃に連動して前記保持部を揺動させることにより、前記切断刃によって切断される前記被切断物を前記保持部で保持することが可能な電動枝切り鋏であって、
前記切断刃及び前記保持部のそれぞれを駆動する駆動源と、
前記駆動源による駆動力で前記切断刃及び前記保持部の双方を動作させることにより前記保持部を前記切断刃に連動させる第1モードと、前記駆動源による駆動力で前記切断刃のみを動作させることにより前記保持部を前記切断刃に連動させない第2モードと、に切り替え可能な切替部と、
を備えることを特徴とする電動枝切り鋏。
【請求項2】
先端に前記切断刃及び前記保持部が設けられ、内部に前記駆動源が収容されると共に、中央に前記切断刃を動作させるための操作レバーが設けられたケーシングを更に備え、
前記ケーシングは、後端側に、前記駆動源に電力を供給するバッテリーを着脱可能な装着部を有し、
前記装着部には、前記バッテリーから電力供給を受けるための電源接続部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の電動枝切り鋏。
【請求項3】
前記装着部は、前記バッテリーに代えて延長ポールを装着することが可能であり、
前記装着部に前記延長ポールが装着されたとき、前記電源接続部は、前記延長ポールに設けられた電源供給部に接続され、前記延長ポールを介して電力供給を受けることを特徴とする請求項2に記載の電動枝切り鋏。
【請求項4】
前記装着部には、前記延長ポールに設けられたレバー部に接続されるレバー接続部が設けられ、
前記装着部に前記延長ポールが装着されたとき、前記レバー接続部に接続されるレバー部の操作に基づいて前記切断刃を動作させることを特徴とする請求項3に記載の電動枝切り鋏。
【請求項5】
被切断物を切断する切断刃と、前記切断刃に隣接して配置される保持部とを有し、前記切断刃に連動して前記保持部を揺動させることにより、前記切断刃によって切断される前記被切断物を前記保持部で保持することが可能な電動枝切り鋏であって、
前記切断刃及び前記保持部のそれぞれを駆動する駆動源と、
先端に前記切断刃及び前記保持部が設けられ、内部に前記駆動源が収容されると共に、中央に前記切断刃を動作させるための操作レバーが設けられたケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、後端側に、前記駆動源に電力を供給するバッテリーを着脱可能な装着部を有し、
前記装着部には、前記バッテリーから電力供給を受けるための電源接続部が設けられることを特徴とする電動枝切り鋏。
【請求項6】
前記装着部は、前記バッテリーに代えて延長ポールを装着することが可能であり、
前記装着部に前記延長ポールが装着されたとき、前記電源接続部は、前記延長ポールに設けられた電源供給部に接続され、前記延長ポールを介して電力供給を受けることを特徴とする請求項5に記載の電動枝切り鋏。
【請求項7】
前記装着部には、前記延長ポールに設けられたレバー部に接続されるレバー接続部が設けられ、
前記装着部に前記延長ポールが装着されたとき、前記レバー接続部に接続されるレバー部の操作に基づいて前記切断刃を動作させることを特徴とする請求項6に記載の電動枝切り鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の枝や茎などの被切断物を切断する際に被切断物を保持した状態で切断する電動枝切り鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動枝切り鋏として、植物の枝や茎などの被切断物を切断する際に被切断物を保持した状態で切断できるものが公知である(例えば特許文献1)。この種の電動枝切り鋏は、被切断物を切断する切断刃と、その切断刃に隣接して配置される保持部とを有し、切断刃に連動して保持部を揺動させることにより、切断刃によって切断される被切断物を保持部で保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-118325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電動枝切り鋏には、次のような課題がある。
【0005】
第1に、従来の電動枝切り鋏は、切断刃を動作させると、それに連動して保持部が毎回動作するため、例えば園芸用途で生花を摘む際には保持部が茎を強く保持してしまい、茎を損傷させてしまうという課題がある。また、電動枝切り鋏に内蔵されたモーターのトルクが切断刃と保持部の双方に分散されてしまうため、被切断物の直径が大きくなると正常に切断することができないことがある。更には、切断刃が動作する度に毎回保持部を動作させてしまうと、保持部を動作させるために電力を消耗することから、例えばバッテリー内蔵タイプのものであれば、1回の充電で切断できる回数が一定の回数に制限されてしまうという課題もある。
【0006】
第2に、従来の電動枝切り鋏は、持ち運び可能な本体ケーシングに設けられている操作レバーを操作することにより切断刃を動作させ、被切断物を切断することができる。しかし、このような構成では、作業者の手元にある被切断物を切断することは可能であるが、作業者の手の届かない場所にある被切断物を切断することができないという課題がある。
【0007】
そこで本発明は、切断刃を動作させる度に保持部が毎回動作してしまうことを抑制できるようにして上述した第1の課題を解決するようにした電動枝切り鋏を提供することを第1の目的とし、また、作業者の手の届かない場所にある被切断物を簡単に切断できるようにして上述した第2の課題を解決するようにした電動枝切り鋏を提供することを第2の目的とする。
【0008】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、被切断物を切断する切断刃と、前記切断刃に隣接して配置される保持部とを有し、前記切断刃に連動して前記保持部を揺動させることにより、前記切断刃によって切断される前記被切断物を前記保持部で保持することが可能な電動枝切り鋏であって、前記切断刃及び前記保持部のそれぞれを駆動する駆動源と、前記駆動源による駆動力で前記切断刃及び前記保持部の双方を動作させることにより前記保持部を前記切断刃に連動させる第1モードと、前記駆動源による駆動力で前記切断刃のみを動作させることにより前記保持部を前記切断刃に連動させない第2モードと、に切り替え可能な切替部と、を備えることを特徴とする構成である。
【0009】
第2に、本発明は、上記第1の構成を有する電動枝切り鋏において、先端に前記切断刃及び前記保持部が設けられ、内部に前記駆動源が収容されると共に、中央に前記切断刃を動作させるための操作レバーが設けられたケーシングを更に備え、前記ケーシングは、後端側に、前記駆動源に電力を供給するバッテリーを着脱可能な装着部を有し、前記装着部には、前記バッテリーから電力供給を受けるための電源接続部が設けられることを特徴とする構成である。
【0010】
第3に、本発明は、上記第2の構成を有する電動枝切り鋏において、前記装着部は、前記バッテリーに代えて延長ポールを装着することが可能であり、前記装着部に前記延長ポールが装着されたとき、前記電源接続部は、前記延長ポールに設けられた電源供給部に接続され、前記延長ポールを介して電力供給を受けることを特徴とする構成である。
【0011】
第4に、本発明は、上記第3の構成を有する電動枝切り鋏において、前記装着部には、前記延長ポールに設けられたレバー部に接続されるレバー接続部が設けられ、前記装着部に前記延長ポールが装着されたとき、前記レバー接続部に接続されるレバー部の操作に基づいて前記切断刃を動作させることを特徴とする構成である。
【0012】
第5に、本発明は、被切断物を切断する切断刃と、前記切断刃に隣接して配置される保持部とを有し、前記切断刃に連動して前記保持部を揺動させることにより、前記切断刃によって切断される前記被切断物を前記保持部で保持することが可能な電動枝切り鋏であって、前記切断刃及び前記保持部のそれぞれを駆動する駆動源と、先端に前記切断刃及び前記保持部が設けられ、内部に前記駆動源が収容されると共に、中央に前記切断刃を動作させるための操作レバーが設けられたケーシングと、を備え、前記ケーシングは、後端側に、前記駆動源に電力を供給するバッテリーを着脱可能な装着部を有し、前記装着部には、前記バッテリーから電力供給を受けるための電源接続部が設けられることを特徴とする構成である。
【0013】
第6に、本発明は、上記第5の構成を有する電動枝切り鋏において、前記装着部は、前記バッテリーに代えて延長ポールを装着することが可能であり、前記装着部に前記延長ポールが装着されたとき、前記電源接続部は、前記延長ポールに設けられた電源供給部に接続され、前記延長ポールを介して電力供給を受けることを特徴とする構成である。
【0014】
第7に、本発明は、上記第6の構成を有する電動枝切り鋏において、前記装着部には、前記延長ポールに設けられたレバー部に接続されるレバー接続部が設けられ、前記装着部に前記延長ポールが装着されたとき、前記レバー接続部に接続されるレバー部の操作に基づいて前記切断刃を動作させることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電動枝切り鋏によれば、切替部によって切断刃及び保持部の双方を動作させる第1モードと、切断刃のみを動作させる第2モードとのいずれかのモードに切り替え可能である。そのため、第2モードに設定することで保持部が切断刃の動作に毎回連動してしまうことを抑制することができる。また、本発明の電動枝切り鋏によれば、延長ポールを装着することにより、作業者の手の届かない場所にある被切断物を簡単に切断することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である電動枝切り鋏を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態である電動枝切り鋏を示す右側面図である。
図3】本発明の一実施形態である電動枝切り鋏を示す左側面図である。
図4】バッテリーの着脱態様の例を示す図である。
図5】電動枝切り鋏の動作を制御する制御機構の一例を示すブロック図である。
図6】第1モードにおける電動枝切り鋏の動作を示す図である。
図7】第2モードにおける電動枝切り鋏の動作を示す図である。
図8】電動枝切り鋏の装着部に装着される延長ポールの一例を示す図である。
図9】電動枝切り鋏の装着部に延長ポールが装着された例を示す図である。
図10】延長ポールが装着された状態で電動枝切り鋏の動作を制御する制御機構の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0018】
図1図2及び図3は、本発明の一実施形態である電動枝切り鋏1を示す図であり、図1は電動枝切り鋏1の斜視図を、図2は電動枝切り鋏1の右側面図を、図3は電動枝切り鋏1の左側面図である。この電動枝切り鋏1は、植物の枝や茎などの被切断物を切断するための電動式の鋏であって、被切断物を保持した状態で被切断物を切断することが可能な鋏である。被切断物を保持した状態で切断することにより、例えば果樹から果実を収穫する際に切断した果実を落下させることなく収穫することができる。
【0019】
電動枝切り鋏1は、被切断物を切断する切断刃10と、その切断刃10に隣接して配置される保持部20とを有し、切断刃10に連動して保持部20を揺動させることにより、切断刃10によって切断される被切断物を保持部20で保持することが可能である。この電動枝切り鋏1は、モーター等の駆動源が内蔵されたケーシング30を有している。切断刃10及び保持部20は、そのケーシング30の先端部31に設けられる。
【0020】
切断刃10は、可動刃11と固定刃12とを有している。固定刃12はケーシング30の先端部31に所定の姿勢で固定されている。可動刃11は、ケーシング30の先端部31に設けられた揺動軸31aを中心に揺動可能である。可動刃11は、固定刃12から所定間隔離れた位置を待機位置(初期位置)としており、被切断物を切断する切断動作を行っていないときには待機位置に保持される。これに対し、被切断物を切断する切断動作が行われるとき、可動刃11は、揺動軸31aを中心に揺動し、固定刃12に向かって移動する。そして可動刃11と固定刃12との間に被切断物を挟み込んで切断する。
【0021】
保持部20は、可動部21と固定部22とを有している。固定部22は、固定刃12に隣接した位置でケーシング30の先端部31に所定の姿勢で固定されている。可動部21は、可動刃11と同じ揺動軸31aを中心に揺動可能である。可動部21は、可動刃11と同様に固定部22から所定間隔離れた位置を待機位置(初期位置)としており、通常はその待機位置に保持される。また、可動部21は、被切断物を切断する切断動作が行われるとき、可動刃11と共に揺動軸31aを中心に揺動し、固定部22に向かって移動することが可能である。そして可動部21は固定部22との間に被切断物を挟み込んで保持する。尚、可動部21と固定部22とは、互いに対向する面に被切断物を保持するための凹凸歯を有している。
【0022】
例えば、切断刃10及び保持部20のそれぞれは、ケーシング30に内蔵されているモーター等の駆動源が駆動されることによって動作する。本実施形態では、切断刃10の駆動源と保持部20の駆動源とが共通の駆動源である場合を例示する。しかし、これに限られるものではなく、切断刃10の駆動源と保持部20の駆動源はそれぞれ別に設けられるものであっても構わない。
【0023】
ケーシング30の中央部32には、電動枝切り鋏1を把持するための把持部34が設けられる。また、ケーシング30は、把持部34の近傍に、操作レバー35と安全レバー36とを有している。操作レバー35は、被切断物を切断する際に操作されるレバーである。また、安全レバー36は、操作レバー35に対する単独操作を規制するためのレバーであり、誤って操作レバー35が単独操作された場合に切断刃10を動作させないようにするレバーである。そのため、安全レバー36が操作されていない状態で操作レバー35が操作された場合であっても、切断刃10が動作しないため、安全性が確保されている。これに対し、安全レバー36が操作されている状態で操作レバー35が操作されると、切断刃10が動作し、被切断物を切断することができる。例えば、作業者は、把持部34を把持し、中指や薬指等で安全レバー36を操作しつつ、人差し指等で操作レバー35を同時に操作することが可能である。更に、ケーシング30の中央部32には、電源スイッチ38が設けられる。
【0024】
また、ケーシング30の後端部33には、モーター等の駆動源に対して電力を供給するバッテリー40を着脱可能な装着部39が設けられる。例えば、図4に示すように、バッテリー40は、ケーシング30の後端側に設けられた装着部39に着脱可能であり、図示を省略する充電器によって充電することができる。また、バッテリー40は、接続端子である電源供給部41を有し、ケーシング30の装着部39に装着されると、その電源供給部41が装着部39の内側に設けられた電源接続部に接続される。そのため、電動枝切り鋏1は、装着部39にバッテリー40が装着されることにより、電源供給部41を介してバッテリー40から電力供給を受けることができる。電動枝切り鋏1に対してバッテリー40を着脱可能とすることにより、電動枝切り鋏1をコードレスで使用することが可能であると共に、使用中にバッテリー40の残量が尽きてしまった場合には別のバッテリー40に交換することで使用を継続することが可能となる。そのため、利便性の高い電動枝切り鋏1が実現される。
【0025】
また、電動枝切り鋏1は、ケーシング30の中央部32に設けられた把持部34よりも先端側の内部にモーター等の駆動源を内蔵している。一方、上述したバッテリー40は、電動枝切り鋏1の把持部34よりも後端側の装着部39に装着される。そのため、装着部39にバッテリー40が装着されると、電動枝切り鋏1の重心位置が中央部32の把持部34の近傍に位置することになる。これにより、作業者が把持部34を把持して使用する際には先端側と後端側の重量バランスが略均等な状態となるため、作業者にとって持ちやすく、且つ、作業しやすい重量配分が実現される。
【0026】
また例えば、図2に示すように、ケーシング30の一方の側面には、切替部37が設けられる。切替部37は、電動枝切り鋏1の動作モードを第1モードと第2モードとのいずれかに切り替えるためのものである。例えば、本実施形態の切替部37は、スライド式のスイッチによって構成される。ただし、切替部37は、スライド式のスイッチに限られるものではなく、第1モードと第2モードのいずれか一方を択一的に切替設定可能な操作部材であれば良い。
【0027】
第1モードは、モーター等の駆動源による駆動力で切断刃10及び保持部20の双方を動作させることにより、保持部20を切断刃10に連動させて動作させるモードである。つまり、第1モードは、切断刃10が被切断物を切断する際に、保持部20が被切断物を保持する動作を行うモードである。これに対し、第2モードは、モーター等の駆動源による駆動力で切断刃10のみを動作させることにより、保持部20を切断刃10に連動させることなく待機位置で待機させるモードである。つまり、第2モードは、切断刃10が被切断物を切断する際に、保持部20が被切断物を保持する動作を行わないモードである。
【0028】
切替部37は、上記のような第1モードと第2モードとのいずれかのモードを選択的に切り替えて設定することができる。例えば、果物などの果実を収穫する際には切替部37を第1モードに設定することにより、保持部20が切断刃10に連動して動作するため、果実を落下させることなく、保持部20で保持した状態で切断刃10が枝等を切断することができる。また例えば、園芸用途で生花を摘む際には切替部37を第2モードに設定することにより、保持部20が切断刃10に連動して動作しなくなるため、保持部20が茎を強く保持して茎を損傷させてしまうことを未然に防ぐことができる。このように本実施形態の電動枝切り鋏1は、用途に応じて切替部37を第1モードと第2モードとのいずれか一方に設定することが可能である。
【0029】
図5は、電動枝切り鋏1の動作を制御する制御機構の一例を示すブロック図である。図5に示すように、電動枝切り鋏1は、ケーシング30の内部に、駆動源であるモーター50と、電動枝切り鋏1の動作を制御する制御部51と、保持部20を切断刃10に連動させて動作させるか否かを切り替えるクラッチ機構52とを有している。装着部39は、その内側に、バッテリー40の電源供給部41に接続される電源接続部39aと、後述する延長ポールが装着された場合に延長ポールに設けられたレバー部に接続されるレバー接続部39bとを有している。上述したように装着部39にバッテリー40が装着されると、電源接続部39aにはバッテリー40の電源供給部41が接続される。そしてバッテリー40は、電源スイッチ38を介してモーター50と制御部51に対して電力を供給する。例えば、電源スイッチ38がオン状態である場合、安全レバー36と操作レバー35とが同時に操作されると、切断刃10が動作する。これに対し、電源スイッチ38がオフ状態である場合、安全レバー36と操作レバー35とが同時に操作されても切断刃10は動作しない。
【0030】
制御部51は、操作レバー35及び安全レバー36の操作状態に応じてモーター50を駆動する制御部である。この制御部51は、操作レバー35と安全レバー36が同時に操作された場合にモーター50を駆動し、切断刃10を動作させることによって被切断物を切断する動作を行わせる。ただし、制御部51は、安全レバー36が操作されていない状態で操作レバー35のみが操作された場合であっても、モーター50を駆動しない。
【0031】
また、制御部51は、切替部37の状態に応じてクラッチ機構52を制御する。クラッチ機構52は、モーター50の回転力を保持部20の可動部21に伝達する第1の状態と、モーター50の回転力を保持部20の可動部21に伝達しない第2の状態とを切り替える機構である。例えば、制御部51は、切替部37が第1モードであるとき、クラッチ機構52を第1の状態に制御し、切断刃10に連動して保持部20が動作するように制御する。そのため、切替部37が第1モードに設定されている状態で操作レバー35と安全レバー36とが同時に操作されると、制御部51による制御によって保持部20が切断刃10に連動して動作し、被切断物を保持する。これにより、切断刃10によって切断される被切断物を落下させることなく、保持部20が保持することができるようになる。
【0032】
一方、切替部37が第2モードであるとき、制御部51は、クラッチ機構52を第2の状態に制御し、保持部20が切断刃10に連動した動作を行わないように制御する。そのため、切替部37が第2モードに設定されている状態で操作レバー35と安全レバー36とが同時に操作されると、制御部51による制御によって保持部20は待機位置で待機した状態を継続する。したがって、切替部37が第2モードであるとき、切断刃10によって切断された被切断物は、保持部20に保持されず、落下する。
【0033】
図6は、第1モードにおける電動枝切り鋏1の動作を示す図である。切替部37が第1モードであるとき、図6(a)に示すように被切断物9を切断刃10の可動刃11と固定刃12との間に差し込んだ状態で操作レバー35と安全レバー36とが同時に操作されると、図6(b)に示すように切断刃10の可動刃11と保持部20の可動部21とが略同時に揺動する。そして保持部20は、可動部21と固定部22との互いに対向する面に形成された凹凸歯が被切断物9の外周面に食い込んで被切断物9を保持した状態になると揺動動作が停止する。一方、切断刃10は、可動刃11の動作を継続させ、可動刃11と固定刃12との間に被切断物9を挟み込んで切断する。図6(c)に示すように、切断刃10が被切断物9を切断すると、切断された被切断物9aは、保持部20の可動部21と固定部22によって保持された状態となる。そのため、切断された被切断物9aを落下させることなく回収することができる。その後、例えば操作レバー35の操作状態が解除されると、切断刃10と保持部20が待機位置に戻る。
【0034】
次に図7は、第2モードにおける電動枝切り鋏1の動作を示す図である。切替部37が第2モードであるとき、図7(a)に示すように被切断物9を切断刃10の可動刃11と固定刃12との間に差し込んだ状態で操作レバー35と安全レバー36とが同時に操作されると、図7(b)に示すように切断刃10の可動刃11だけが揺動する。このとき、保持部20の可動部21は動作せず、待機位置に留まる。そして切断刃10は、可動刃11と固定刃12との間に被切断物9を挟み込んで切断する。図7(c)に示すように、切断刃10が被切断物9を切断すると、切断された被切断物9aは、電動枝切り鋏1から落下する。その後、例えば操作レバー35の操作状態が解除されると、切断刃10が待機位置に戻る。
【0035】
このように本実施形態の電動枝切り鋏1は、切替部37を第1モードと第2モードとで切り替えることにより、保持部20を切断刃10に連動させて被切断物を保持した状態で切断したり、或いは、保持部20を切断刃10に連動させることなく被切断物を切断したりすることができる。そのため、例えば果実を傷つけることなく回収したい場合には、切替部37を第1モードに設定して被切断物を切断すれば良く、また例えば園芸用途で生花等を摘む際に茎等を損傷させたくない場合には、切替部37を第2モードに設定して被切断物を切断すれば良い。つまり、本実施形態の電動枝切り鋏1は切替部37の設定を切り替えることによって用途に応じた切断動作を行うことが可能であり、従来のように生花の茎を損傷させてしまうといった課題を解決することができる。
【0036】
また、本実施形態の電動枝切り鋏1は、第2モードに設定して切断動作を行うことにより、モーター50のトルクが切断刃10と保持部20の双方に分散されてしまうことを防止することができる。つまり、第2モードに設定した場合には、モーター50のトルクを切断刃10の動作に有効活用することができるため、直径の大きな被切断物であっても切断することができるようになる。これにより、第1モードでは切断できない被切断物であっても、第2モードでは切断できることがあり、利便性が向上する。
【0037】
更には、第2モードに設定すると、保持部20を動作させるための電力を消耗しないため、第1モードよりも第2モードの方が1回の充電で切断できる回数を多くすることができる。それ故、保持部20で被切断物を保持する必要がない場合には、第2モードに設定した状態で切断を行うことにより、多数回の切断を行うことが可能となり、この点においても利便性が向上する。
【0038】
次に、電動枝切り鋏1の装着部39に対して延長ポールを装着する例について説明する。図8は、電動枝切り鋏1の装着部39に装着される延長ポール60の一例を示す図である。また図9は、電動枝切り鋏1の装着部39に延長ポール60が装着された例を示す図である。図8に示すように、延長ポール60は、例えば中空の軽量パイプ部材によって形成されるポール部61と、ポール部61の一端側に設けられる接続部63と、ポール部61の他端側に設けられる把持部64とを備えている。例えば、ポール部61は2つのパイプ部材を継ぎ合わせて形成され、その中央部に伸縮可能な伸縮部62を有している。そのため、ポール部61は、伸縮部62を伸長させたり、収縮させたりすることにより、全体の長さを調整することが可能である。
【0039】
接続部63は、電動枝切り鋏1の装着部39に装着して接続するためのものである。この接続部63は、バッテリー40が取り外された、電動枝切り鋏1の装着部39に装着される。この接続部63の先端には、図8の拡大図Aに示すように、装着部39の電源接続部39aに接続される電源供給部68と、装着部39のレバー接続部39bに接続される接続部69とが設けられる。接続部63が電動枝切り鋏1の装着部39に装着されることに伴い、電源供給部68と接続部69はそれぞれ装着部39の電源接続部39aとレバー接続部39bに接続された状態となる。
【0040】
また、接続部63の基端部には、接続部63を回動させるための回動軸Xが設けられており、接続部63とポール部61とが成す角度を調整することができる。また、回動軸Xは、角度調整された状態で接続部63とポール部61との相対姿勢を保持することができるようになっている。
【0041】
把持部64は、作業者が延長ポール60を把持するためのものである。把持部64には、電動枝切り鋏1に設けられている操作レバー35と同様のレバー部66が設けられる。また、把持部64の後端側には、バッテリー40を装着するための装着部65が設けられる。電動枝切り鋏1の装着部39に延長ポール60が装着される場合、バッテリー40は、把持部64の装着部65に装着される。把持部64と接続部63との間のポール部61には、バッテリー40と電源供給部68とを接続するケーブルと、レバー部66と接続部69とを接続するケーブルとが内蔵されている。
【0042】
延長ポール60が電動枝切り鋏1に装着されると、図9に示すように、切断刃10と把持部64との距離を長くすることができる。特にポール部61には伸縮部62が設けられているため、切断刃10と把持部64との距離を適宜調整することができる。そのため、電動枝切り鋏1に延長ポール60を装着することで、電動枝切り鋏1は、高枝切り鋏として利用可能であり、作業者の手の届かない場所にある被切断物を簡単に切断することができるようになる。つまり、本実施形態の電動枝切り鋏1は、作業者の手元にある被切断物を切断する際には通常の電動鋏として利用でき、作業者の手元から離れた位置にある被切断物を切断する際には高枝切り用の電動鋏として利用できる利便性の高いものとなっている。
【0043】
図10は、延長ポール60が装着された状態で電動枝切り鋏1の動作を制御する制御機構の一例を示すブロック図である。図10に示すように、延長ポール60に装着されるバッテリー40は、延長ポール60内部のケーブル71を介して電源供給部68に接続され、その電源供給部68を介して電動枝切り鋏1に電力を供給する。そのため、電動枝切り鋏1は、装着部39に延長ポール60が装着されると、電源接続部39aに接続される電源供給部68を介して延長ポール60から電力供給を受けることができる。
【0044】
また、延長ポール60の把持部64に設けられたレバー部66は、延長ポール60内部のケーブル72を介して接続部69に接続され、更にその接続部69を介して電動枝切り鋏1の制御部51に接続される。そのため、制御部51は、装着部39に延長ポール60が装着されると、レバー接続部39bに接続されるレバー部66の操作に基づいて切断刃10を動作させることができるようになる。
【0045】
装着部39に延長ポール60が装着されている状態で制御部51がレバー部66の操作を検知すると、切替部37の設定に応じてモーター50及びクラッチ機構52を制御することにより、切断刃10を動作させる。切替部37が第1モードに設定されている場合、制御部51は、クラッチ機構52を第1の状態に制御する。また、切替部37が第2モードに設定されている場合、制御部51は、クラッチ機構52を第2の状態に制御する。そしてレバー部66が操作されたことを検知すると、制御部51は、モーター50を駆動し、切断刃10を動作させる。このとき、切替部37が第1モードであれば、切断刃10に連動して保持部20が揺動し、被切断物9を保持した状態で被切断物9を切断する動作が行われる。また、切替部37が第2モードであれば、保持部20が動作しないため、被切断物9を保持しない状態で被切断物9を切断する動作が行われる。
【0046】
尚、図示を省略しているが、延長ポール60の把持部64には、ケーシング30の把持部34と同様に、レバー部66の近傍位置に安全レバーを配置し、安全レバーとレバー部66とが同時に操作された場合に切断刃10を動作させるようにしても構わない。
【0047】
このように本実施形態の電動枝切り鋏1は、バッテリー40を装着するための装着部39に延長ポール60を装着することが可能であり、装着部39に延長ポール60が装着されると、装着部39の電源接続部39aが延長ポール60に設けられた電源供給部68に接続され、延長ポール60を介して電力供給を受けることが可能である。そのため、電動枝切り鋏1に延長ポール60を装着して高枝切り鋏として使用する際にも、延長ポール60から供給される電力によって電動枝切り鋏1を正常に動作させることができる。また、延長ポール60の先端に位置する電動枝切り鋏1は、バッテリー40を搭載していないため、延長ポール60の先端部分が軽量化されている。そのため、電動枝切り鋏1を高枝切り鋏として使用する際に先端部分の電動枝切り鋏1を簡単に持ち上げることが可能であり、優れた操作性を発揮する。つまり、本実施形態の電動枝切り鋏1は、延長ポール60を装着していない状態のときに作業者の手元にある被切断物を簡単に切断することが可能であると共に、延長ポール60を装着した状態のときに作業者の手の届かない場所にある被切断物を簡単に切断することも可能である。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態で説明したものに限られるものではない。すなわち、本発明には、上記実施形態で説明したもの以外にも種々の変形例が適用可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態の電動枝切り鋏1は、動作モードを第1モードと第2モードとに切り替え可能とすることで切断刃10を動作する際に保持部20を連動させるか否かを選択可能とする構成と、装着部39に対し、バッテリー40に代えて延長ポール60を装着することで作業者の手の届かない場所にある被切断物を簡単に切断できるようにする構成との双方を備えた例を説明した。しかし、本発明の電動枝切り鋏1は、上記2つの構成を備えたものに限られず、いずれか一方の構成のみを備えた構成としても構わない。
【0050】
また、上記実施形態では、電動枝切り鋏1に延長ポール60が装着された場合に延長ポール60の把持部64に設けられたレバー部66が操作されたときに切断刃10が動作することを説明した。このとき、電動枝切り鋏1のケーシング30に設けられた操作レバー35に対する操作が行われた場合であっても切断刃10を動作させないような構成を採用しても構わない。例えば、電動枝切り鋏1に延長ポール60が装着されることに伴い、操作レバー35に対する操作を無効する機能を制御部51に搭載することで、そのような構成を実現することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、制御部51が切替部37の設定状態に応じてクラッチ機構52を制御することにより、保持部20を切断刃10に連動させるか否かを切り替える場合を例示した。しかし、保持部20を切断刃10に連動させるか否かを切り替えるための具体的な構成は、これに限られるものではなく、他の機械的機構又は電気的制御を採用することによって保持部20を切断刃10に連動させるか否かを切り替えるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0052】
1…電動枝切り鋏、10…切断刃、20…保持部、30…ケーシング、35…操作レバー、37…切替部、39…装着部、39a…電源接続部、39b…レバー接続部、40…バッテリー、50…駆動源(モーター)、60…延長ポール、66…レバー部、68…電源供給部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10