(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142189
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】流体機器および流体機器の接触検出方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20220922BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20220922BHJP
【FI】
A61B5/022 100C
G01F1/00 Q
A61B5/022 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042265
(22)【出願日】2021-03-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/フィジカル空間デジタルデータ処理基盤/サブテーマIIISociety5.0実現のための社会実装技術/CPS構築のためのセンサリッチ柔軟エンドエフェクタシステム開発と実用化、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】川村 貞夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 正男
【テーマコード(参考)】
2F030
4C017
【Fターム(参考)】
2F030CC11
4C017AA08
4C017AC01
4C017BC11
(57)【要約】
【課題】中空体の表面に接触センサを設けることなく、中空体の外表面における接触を検出できる流体機器を提供する。
【解決手段】流体機器1は、内側に流体が収容されており、外表面が接触により変形可能に構成された、アクチュエータ10と、先端部2aがアクチュエータ10の内側に流体連通した配管2と、配管2の途中に設けられており、配管2内を流動する流体の流れを計測する、流量センサ3と、流量センサ3による計測結果に基づいて、接触を検出する、接触検出部25とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に流体が収容されており、外表面が接触により変形可能に構成された、中空体と、
先端部が前記中空体の内側に流体連通した配管と、
前記配管の途中に設けられており、該配管内を流動する流体の流れを計測する、流量センサと、
前記流量センサによる計測結果に基づいて、前記接触を検出する、接触検出部と
を備えた、流体機器。
【請求項2】
前記接触検出部は、前記流量センサにより計測される流量の微分値が、所定の閾値を超える場合に、前記接触を検出する、
請求項1に記載の流体機器。
【請求項3】
前記配管の基端部に接続されており、前記中空体の内側に前記配管を介して前記流体を供給する、ポンプと、
前記配管の途中に設けられており、前記流量センサに対して前記中空体とは反対側に位置しており、前記配管内に画定される流路を開閉可能に構成された、バルブと
をさらに備え、
前記中空体は、内側に供給される前記流体によって動作可能に構成されている、
請求項1または2に記載の流体機器。
【請求項4】
前記配管の内側には、前記流量センサに対して前記中空体とは反対側において、前記流量センサへの連通部を除いて閉空間に構成された、第1空間が画定されており、
前記中空体の内側には、前記配管への連通部を除いて閉空間に構成された、第2空間が画定されている、
請求項1~3のいずれか1つに記載の流体機器。
【請求項5】
前記中空体が、カフ式血圧計において被験者の被血圧測定部に巻回されるカフを構成している、
請求項1~4のいずれか1つに記載の流体機器。
【請求項6】
前記接触における接触力を推定する、接触力推定部をさらに備えており、
前記接触力推定部は、前記流量センサにより計測される信号波形に基づいて接触力推定関数から前記接触力を推定し、
前記接触力推定関数は、前記流体の前記信号波形を変数として前記接触力を算出する、
請求項1~5のいずれか1つに記載の流体機器。
【請求項7】
前記中空体の内側または前記配管内における前記流体の圧力を計測する圧力センサをさらに備え、
前記接触力推定関数は、前記変数として、前記圧力センサにより計測された前記流体の圧力をさらに含んでおり、
前記接触力推定部は、前記流体の前記信号波形および前記圧力に基づいて、前記接触力推定関数から、前記接触力を推定する、
請求項6に記載の流体機器。
【請求項8】
前記流量センサにより計測される信号波形に基づいて、前記接触における接触速度を推定する、接触速度推定部をさらに備えている、
請求項1~7のいずれか1つに記載の流体機器。
【請求項9】
前記流量センサは、複数設けられている、
請求項1~8のいずれか1つに記載の流体機器。
【請求項10】
前記中空体には、互いに異なる複数の位置に複数の配管がそれぞれ接続されており、
前記流量センサは、前記複数の配管それぞれに設けられており、
前記接触における接触位置を推定する、接触位置推定部をさらに備えており、
前記接触位置推定部は、複数の前記流量センサにより計測される複数の信号波形それぞれにおける、前記接触が検出されたときのピークの時間差に基づいて、前記接触位置を推定する、
請求項9に記載の流体機器。
【請求項11】
前記中空体には、互いに異なる少なくとも3箇所に、少なくとも3本の配管がそれぞれ接続されており、
前記流量センサは、前記少なくとも3本の配管それぞれに設けられている、
請求項10に記載の流体機器。
【請求項12】
前記複数の配管は、前記中空体に接続された端部とは反対側の端部が互いに連結されていている、
請求項10または11に記載の流体機器。
【請求項13】
前記接触における接触形状を推定する、接触形状推定部をさらに備えており、
前記接触形状推定部は、前記流量センサにより計測される信号波形に基づいて前記接触形状を推定する、
請求項1~12のいずれか1つに記載の流体機器。
【請求項14】
内側に流体が収容されており外表面が接触により変形可能に構成された中空体に流体連通した配管において、前記流体が流動したときの流量を計測し、
計測された前記流体の流量に基づいて、前記中空体の接触を検出する、流体機器の接触検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機器および流体機器の接触検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体機器として、柔軟指などの、空気圧によって力を発生させるアクチュエータが知られている(例えば特許文献1参照)。柔軟指は、弾性材料により内側に流体を収容する中空体を形成して、中空体の内圧を変化させることにより中空体の形状を変化させて物品を把持するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、流体機器は、中空体の内圧を調整することによりその動作が制御されているが、より高機能な作業の実現には、中空体の外表面における接触を精度よく検出することが望まれている。中空体の外表面に接触センサを実装することも考えられるが、この場合、流体機器のコスト増大およびシステムの複雑化等の問題が生じる。
【0005】
特に、物品を把持する柔軟指に接触センサを実装した場合、接触センサおよび接触センサに接続された配線の耐久性の確保が容易でない。さらに、食品などの把持対象物への適合性に課題がある。さらにまた、水中で使用する場合に、接触センサの耐水性確保に課題がある。すなわち、従来の流体機器は、接触センサを設けることなく、接触を検知する観点で改良する余地がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、流体機器において、中空体の表面に接触センサを設けることなく、中空体の外表面における接触を検出できる流体機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面は、
内側に流体が収容されており、外表面が接触により変形可能に構成された、中空体と、
先端部が前記中空体の内側に流体連通した配管と、
前記配管の途中に設けられており、該配管内を流動する流体の流れを計測する、流量センサと、
前記流量センサによる計測結果に基づいて、前記接触を検出する、接触検出部と
を備えた、流体機器を提供する。
【0008】
中空体の外表面が接触により変形したとき、内側の流体が変形した分だけ配管に押し出されて流動が生じる一方で、流体の圧力はほとんど変化しない。この現象は、接触による中空体の変形が小さいほどより顕著である。その結果、中空体の接触時においては、流体の流動を流量センサにより精度よく検出しやすい一方で、圧力の変動を検出しにくい。したがって、本発明によれば、接触センサを設けることなく、流量センサの計測結果に基づいて中空体における接触を検出できる。
【0009】
前記接触検出部は、前記流量センサにより計測される流量の微分値が、所定の閾値を超える場合に、前記接触を検出してもよい。
【0010】
本構成によれば、流量の微分値を所定の閾値と比較することによって、接触による流体の流動を精度よく検出しやすい。
【0011】
前記配管の基端部に接続されており、前記中空体の内側に前記配管を介して前記流体を供給する、ポンプと、
前記配管の途中に設けられており、前記流量センサに対して前記中空体とは反対側に位置しており、前記配管内に画定される流路を開閉可能に構成された、バルブと
をさらに備え、
前記中空体は、内側に供給される前記流体によって動作可能に構成されていてもよい。
【0012】
本構成によれば、中空体に、ポンプからバルブを介して流体が供給される流体機器において、本発明が好適に実施される。
【0013】
前記配管の内側には、前記流量センサに対して前記中空体とは反対側において、前記流量センサへの連通部を除いて閉空間に構成された、第1空間が画定されており、
前記中空体の内側には、前記配管への連通部を除いて閉空間に構成された、第2空間が画定されていてもよい。
【0014】
本構成によれば、第2空間が閉空間に構成されている場合でも、流体の圧縮性、及び/又は第1空間および第2空間の変形に起因して生じる第1空間から第2空間への流体の流動を検出できる。
【0015】
前記中空体が、カフ式血圧計において被験者の被血圧測定部に巻回されるカフを構成してもよい。
【0016】
本構成によれば、カフ式血圧計において、本発明が好適に実施される。特に、オシロメトリック法によりカフ内における空気の圧力の変動に基づいて血圧を測定する場合に比して、カフ内の空気の流動を精度よく検出しやすいので、例えば脈拍が弱い虚脈である被験者の場合でも、血圧を安定して計測しやすい。
【0017】
前記接触における接触力を推定する、接触力推定部をさらに備えており、
前記接触力推定部は、前記流量センサにより計測される信号波形に基づいて接触力推定関数から前記接触力を推定し、
前記接触力推定関数は、前記流体の前記信号波形を変数として前記接触力を算出してもよい。
【0018】
本構成によれば、流量センサにより計測される信号波形に基づいて、中空体における接触力を推定できる。
【0019】
前記中空体の内側または前記配管内における前記流体の圧力を計測する圧力センサをさらに備え、
前記接触力推定関数は、前記変数として、前記圧力センサにより計測された前記流体の圧力をさらに含んでおり、
前記接触力推定部は、前記流体の前記信号波形および前記圧力に基づいて、前記接触力推定関数から、前記接触力を推定してもよい。
【0020】
本構成によれば、流量センサにより計測される信号波形に加えて、圧力センサにより計測される流体の圧力に基づいて、中空体の外表面における接触力をより精度よく推定できる。特に、接触力の推定に流体の圧力を使用することによって、接触後に平衡状態となり流動が無くなった場合でも、流体の圧力に基づいて接触力を推定できる。
【0021】
前記流量センサにより計測される信号波形に基づいて、前記接触における接触速度を推定する、接触速度推定部をさらに備えてもよい。
【0022】
本構成によれば、流量センサにより計測される信号波形に基づいて、接触速度を推定できる。例えば、信号波形の1つのピークにおける面積を時間で除することによって接触速度を推定してもよく、また上記1つのピークの立ち上がり部分の傾きによって接触速度を推定してもよく、さらにまた上記1つのピークの立ち上がり高さによって接触速度を推定してもよい。なお、流量センサにより計測される信号波形に加えて、作動流体の圧力を利用してもよい。
【0023】
前記流量センサは、複数設けられていてもよい。
【0024】
本構成によれば、複数の流量センサによる複数の計測結果に基づいて、中空体における接触をより精度よく検出しやすい。
【0025】
前記中空体には、互いに異なる複数の位置に複数の配管がそれぞれ接続されており、
前記流量センサは、前記複数の配管それぞれに設けられており、
前記接触における接触位置を推定する、接触位置推定部をさらに備えており、
前記接触位置推定部は、複数の前記流量センサにより計測される複数の信号波形それぞれにおける、前記接触が検出されたときのピークの時間差に基づいて、前記接触位置を推定してもよい。
【0026】
本構成によれば、中空体における接触位置を精度よく推定できる。具体的には、接触位置から複数の流量センサそれぞれまでの距離の差がそれぞれの信号波形におけるピークの時間差に対応するので、予め求めた中空体および配管における接触による流動の伝わる速さに基づいて、ピークの時間差から上記距離の差を推定できる。よって、複数の流量センサの位置と上記距離の差とに基づいて、中空体における接触位置を精度よく推定できる。
【0027】
前記中空体には、互いに異なる少なくとも3箇所に、少なくとも3本の配管がそれぞれ接続されており、
前記流量センサは、前記少なくとも3本の配管それぞれに設けられていてもよい。
【0028】
本構成によれば、接触位置から少なくとも3つ流量センサまでの、3つの距離の差を推定できる。よって、3つの距離の差に基づいて、接触位置を2次元的または3次元的に推定できる。
【0029】
前記複数の配管は、前記中空体に接続された端部とは反対側の端部が互いに連結されていてもよい。
【0030】
本構成によれば、複数の流量センサが、中空体に対して環状に接続された配管に設けられることになる。その結果、中空体への接触時において、流体の流動は、配管において一方向に流れるので、中空体から一方の流量センサに流体が流動する一方で、他方の流量センサから中空体へ流動することになる。すなわち、複数の流量センサにおいて、中空体に対する流体の流動方向が逆になる。これによって、流体の流動をより精度よく検出しやすく、接触位置をより精度よく推定できる。
【0031】
前記接触における接触形状を推定する、接触形状推定部をさらに備えており、
前記接触形状推定部は、前記流量センサにより計測される信号波形に基づいて前記接触形状を推定してもよい。
【0032】
本構成によれば、流量センサにより計測される信号波形に基づいて中空体に対する接触形状を推定できる。すなわち、接触に対応する信号波形のうち、最初のピークが接触により中空体から押し出された流体の体積に相当するので、当該最初のピークの面積を求めることによって接触形状を推定できる。
【0033】
本発明の第2の側面は、
内側に流体が収容されており外表面が接触により変形可能に構成された中空体に流体連通した配管において、前記流体が流動したときの流量を計測し、
計測された前記流体の流量に基づいて、前記中空体の接触を検出する、流体機器の接触検出方法を提供する。
【0034】
本流体機器の接触検出方法によれば、上記流体機器における効果が同様に発揮される。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、流体機器において、中空体の表面に接触センサを設けることなく、中空体の外表面における接触を精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る空圧機器を概略的に示す図。
【
図2】流量センサにより検出された流体の流量の変動を示すグラフ。
【
図4】第1実施形態の変形例に係る血圧計を概略的に示す図。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る空圧機器を概略的に示す図。
【
図6】流量センサにより検出された流体の流量の変動を示すグラフ。
【
図7】接触位置とピークの時間差との関係を示すグラフ。
【
図8】第2実施形態の変形例に係る空圧機器を概略的に示す図。
【
図9】
図8の流体機器に係る流体の流量の変動を示すグラフ。
【
図10】第2実施形態のさらなる変形例に係る空圧機器を概略的に示す図。
【
図11】
図10の流体機器に係る流体の流量の変動を示すグラフ。
【
図12】第2実施形態のさらなる他の変形例に係る空圧機器を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0038】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る流体機器1の構成を概略的に示している。
図1に示されるように、流体機器1は、アクチュエータ10と、先端部2aがアクチュエータ10の内側に流体連通した配管2と、配管2の途中に設けられた流量センサ3と、流体機器1の作動を制御する制御装置20とを有している。
【0039】
配管2の基端部2bには、配管2内に作動流体を供給するポンプ4が接続されている。配管2の流量センサ3とポンプ4との間には、バルブ5が設けられている。配管2のアクチュエータ10と流量センサ3との間には、圧力センサ6が設けられている。
【0040】
アクチュエータ10は、弾性材料からなる中空体であって、内側に作動流体が収容(充填)されており、外表面が接触により変形可能(凹み変形)であって、該接触が解消されると弾性力によって元の形状に復元するように構成されている。本実施形態では、アクチュエータ10は、配管2が接続されたベース11と、ベース11から下方に延びる一対の把持指12とを有している。把持指12は、互いに対向する対向面12aとは反対側に位置する背面12bがアコーディオン状に形成されている。
【0041】
配管2は、内側に作動流体が流れる流路が形成されている。ポンプ4は、制御装置20によって電子制御されて作動流体を配管2内に供給する。バルブ5は、制御装置20によって電子制御式されて配管2内に画定される流路を開閉可能に構成されている。バルブ5が開いた状態で、ポンプ4が配管2を介してアクチュエータ10の内側に作動流体を供給すると、アクチュエータ10は、内側の作動流体の圧力に応じて変形する。
【0042】
流量センサ3は、流量センサ3を通過する作動流体の流量(例えば、分子数、重量、体積)を計測する。圧力センサ6は、配管2内の作動流体の圧力を計測する。本実施形態では、流量センサ3は計測した作動流体の流量を電圧値として制御装置20に出力し、同様に圧力センサ6は計測した作動流体の圧力を電圧値として制御装置20に出力する。
【0043】
本実施形態では、アクチュエータ10は、作動流体の圧力が低い状態(例えば、該気圧と等しい)では、一対の把持指12は背面12b側に湾曲して互いに離間している。この状態から、アクチュエータ10の内側にポンプ4によって作動流体を供給することにより作動流体の圧力が増大するにつれて、二点鎖線で示すように、一対の把持指12は、背面12b側が伸長して対向面12a側に湾曲して互いに近接する方向に変形する。これによって、一対の把持指12の間において物品を把持可能に構成されている。すなわち、アクチュエータ10は、内側に供給される作動流体によって動作可能に構成されている。本実施形態では、作動流体として、空気を使用しているが、このほか水または生理食塩水等の任意の流体を使用してもよい。
【0044】
制御装置20は、ハードディスク等の記憶部21、演算処理部(CPU)22、メモリ、および入出力装置を備えた周知のコンピュータと、コンピュータに実装されたソフトウエアとにより構成されている。演算処理部22は、ポンプ制御部23と、バルブ制御部24と、接触検出部25と、接触力推定部26と、接触速度推定部27と、接触形状推定部28とを有している。
【0045】
記憶部21には、流体機器1の作動に必要な情報が予め記憶されており、例えば、接触検出用閾値Aと、接触力推定関数f(t)と、接触速度推定関数g(t)と、接触形状推定関数h(t)とが記憶されている。ポンプ制御部23およびバルブ制御部24は、ポンプ4の作動およびバルブ5の開閉をそれぞれ電子制御する。
【0046】
接触検出部25は、流量センサ3による計測結果に基づいて、アクチュエータ10の外表面への物品の接触を検出する。具体的には、接触によってアクチュエータ10の外表面が凹むように変形したときに、アクチュエータ10内の作動流体が配管2側へ押し出されて、配管2内に作動流体の流動が生じ、接触検出部25は該流動を流量センサ3によって検出することにより接触を検出する。
【0047】
より具体的には、接触検出部25は、流量センサ3により計測される作動流体の流量を示す信号の時間ごとの推移を示す流量波形W(t)の微分値を計算し、該微分値が記憶部21から読み出した閾値Aを超える場合に接触を検出する。tは時間を意味している。閾値Aを低く設定した場合には接触の検出感度を高めることができ、閾値Aを高く設定した場合には接触の検出感度が過度に高くなることを防止できる。すなわち、閾値Aの設定により接触の検出感度を適宜に設定できる。
【0048】
接触力推定部26は、流量センサ3による計測結果に基づいて、アクチュエータ10に対する物品の接触力(外力)を推定する。具体的には、接触力推定部26は、流量センサ3により計測される流量波形W(t)に基づいて、記憶部21から読み出した接触力推定関数f(t)から接触力を推定する。
【0049】
接触力推定関数f(t)は、実測された流量波形W(t)と接触力との関係に基づいて、例えば、テーブルルックアップ法、解析的な手法、ニューラルネットワーク法により予め設定されており、信号波形W(t)を変数として接触力を推定する関数である。例えば、接触力推定関数f(t)は、実測された流量波形W(t)のうち最初のピークに着目して、このピークの高さ、面積及び/又は傾き等と、実測された接触力との関係から決定される。
【0050】
接触速度推定部27は、流量センサ3による計測結果に基づいて、アクチュエータ10に対する物品の接触速度を推定する。具体的には、接触速度推定部27は、流量センサ3により計測される流量波形W(t)に基づいて、記憶部21から読み出した接触速度推定関数g(t)から接触速度を推定する。
【0051】
接触速度推定関数g(t)は、実測された流量波形W(t)と接触速度との関係に基づいて、例えばテーブルルックアップ法、解析的な手法、ニューラルネットワーク法により予め設定されており、流量波形W(t)を変数として接触速度を推定する関数である。例えば、接触速度推定関数g(t)は、流量波形W(t)の1つのピークにおける面積を当該ピークが生じる時間で除することによって接触速度を推定してもよく、また上記1つのピークの立ち上がり部分の傾きによって接触速度を推定してもよく、さらにまた上記1つのピークの立ち上がり高さによって接触速度を推定してもよい。
【0052】
接触形状推定部28は、流量センサ3による計測結果に基づいて、アクチュエータ10に接触する物品の接触形状を推定する。具体的には、接触形状推定部28は、流量センサ3により計測される流量波形W(t)に基づいて、記憶部21から読み出した接触形状推定関数h(t)から接触形状を推定する。
【0053】
接触形状推定関数h(t)は、実測された流量波形W(t)と接触形状との関係に基づいて、例えばテーブルルックアップ法、解析的な手法、ニューラルネットワーク法により予め設定されており、流量波形W(t)を変数として接触形状を推定する関数である。例えば、接触形状推定関数h(t)は、接触に対応する流量波形W(t)のうち、最初のピークが接触によりアクチュエータ10から配管2内に押し出された作動流体の体積に相当するので、当該最初のピークの面積を求め該面積に基づいて接触形状を推定してもよい。
【0054】
なお、必要に応じて、接触力推定関数f(t)、接触速度推定関数g(t)および接触形状推定関数h(t)の変数として、作動流体の圧力波形P(t)を加えてもよい。圧力波形P(t)は、圧力センサ6により計測される作動流体の圧力を示す信号の時間ごとの推移を示す信号波形である。この場合、これらの関数f(t)、g(t)、h(t)は、実測された流量波形W(t)と圧力波形P(t)と接触力との関係に基づいて、例えばテーブルルックアップ法、解析的な手法、ニューラルネットワーク法により予め設定されており、流量波形W(t)および圧力波形P(t)を変数として接触力、接触速度、接触形状をそれぞれ推定してもよい。
【0055】
次に、
図2を参照して、アクチュエータ10の内圧が、大気圧である場合、大気圧より高く加圧されている場合、および大気圧より低く減圧されている場合、のそれぞれにおける接触の検知、接触力の推定、接触速度の推定および接触形状の推定について説明する。なお、
図2に示される状態では、アクチュエータ10は、内圧が一定値に維持されており、一対の把持指12は内圧に応じた形状で停止している。
【0056】
また、
図2の各グラフにおいて、作動流体の、流量波形W(t)と圧力波形P(t)とが示されている。流量波形W(t)は、作動流体の流動が生じていないときに基準値W0(V)であり、本実施形態では作動流体がアクチュエータ10側から配管2側へ流動するときに基準値W0より低くなり、配管2側からアクチュエータ10側へ流動するときに基準値W0より高くなる。
図2において、圧力波形P(t)は、値が小さいほど圧力が高いことを意味している。
【0057】
図2(a),(b)は、ポンプ4が作動しておらず、配管2およびアクチュエータ10の内圧が大気圧である場合における信号波形W(t)を示している。
図2(a)はバルブ5が開いておりアクチュエータ10の内側が周囲の大気圧に連通している状態における信号波形W(t)が示されており、
図2(b)はバルブ5が閉じておりアクチュエータ10の内側が周囲の大気圧から切り離された状態における信号波形W(t)が示されている。
【0058】
図2(a),(b)のいずれにおいても、信号波形W(t)には、第1変動Z1、第2変動Z2、第3変動Z3および第4変動Z4が順に認められる。第1変動Z1は、アクチュエータ10の外表面に接触したときに流量センサ3を通過する作動流体の流動が示されている。すなわち、まず接触によりアクチュエータ10から配管2へ押し出された作動流体の流動が最初の下方に凸となるピークとして示されており、次いで反動(例えば過度に押し出された作動流体が戻る等)として逆向きの作動流体の流動が上方に凸となるピークとして示されている。
【0059】
第1変動Z1以降、接触状態がしばらく維持された後に接触を解消させると、第2変動Z2が生じている。第2変動Z2では、接触の離脱に伴い、アクチュエータ10の変形(凹み)の解消に伴って、アクチュエータ10の内側への作動流体の流動が生じる。このとき、第2変動Z2における流動は、第1変動Z1における流動よりも長く生じている。これは、第1変動Z1では接触状態が維持されているためアクチュエータ10の外表面が一定形状に維持されている一方で、第2変動Z2では接触状態が解消されたためアクチュエータ10の外表面が自らの弾性力によって復元するときに振動するためと推定される。
【0060】
次いで、第3変動Z3では接触状態が示されており、第4変動Z4では接触の解消状態が示されている。
【0061】
図2(c),(d)は、ポンプ4が作動しており、配管2およびアクチュエータ10の内圧が大気圧よりも加圧された状態における信号波形W(t)を示している。
図2(c)はバルブ5が閉じておりアクチュエータ10の内側がポンプ4側から切り離された状態における信号波形W(t)が示されており、
図2(d)はバルブ5が開いておりアクチュエータ10の内側がポンプ4に連通している状態における信号波形W(t)が示されている。
【0062】
また、
図2(e),(f)は、ポンプ4に換えて不図示の負圧源が配管2の基端部2bに接続されており、配管2およびアクチュエータ10の内圧が大気圧よりも減圧された状態における信号波形W(t)を示している。
図2(e)はバルブ5が閉じておりアクチュエータ10の内側が負圧源側から切り離された状態における信号波形W(t)が示されており、
図2(f)はバルブ5が開いておりアクチュエータ10の内側が負圧源に連通している状態における信号波形W(t)が示されている。
【0063】
図2(c)~(f)においてもぞれぞれ、
図2(a),(b)と同様に、接触、接触解消、接触、接触解消をそれぞれ順に示す、第1~第4変動Z1~Z4がそれぞれ認められる。
【0064】
接触検出部25は、流量波形W(t)に基づいて、アクチュエータ10の外表面における接触を検出する。具体的には、接触検出部25は、流量波形W(t)の微分値が所定の閾値Aを超過している場合、すなわち作動流体の変動が大きい場合に、接触を検知する。なお、作動流体の流動を検出方法として、流量波形W(t)の微分値に限定されず、例えば単位時間あたりの流量波形(t)の変化量(傾き)を求めて、該変化量に対応する閾値によって接触を検出するようにしてもよく、任意の方法を採用できる。
【0065】
また、接触力推定部26は、流量波形W(t)に基づいて、接触力推定関数f(t)からアクチュエータ10の外表面における接触力を推定する。接触速度推定部27は、流量波形W(t)に基づいて、接触速度推定関数g(t)からアクチュエータ10の外表面における接触速度を推定する。接触形状推定部28は、流量波形W(t)に基づいて、接触形状推定関数h(t)からアクチュエータ10の外表面における接触形状を推定する。
【0066】
このとき、圧力波形P(t)を参照すると、流量波形W(t)の第1~第4変動Z1~Z4に対応するときに、極僅かな振幅が認められるが、該変動を信号のノイズと区別して接触を検知することは難しい。特に、より微小な接触を精度よく検出することは難しい。
【0067】
しかしながら、例えば、接触が維持されて定常となった状態では作動流体の流動がなく流量センサ3の出力は基準値W0で一定となるが、圧力波形P(t)を利用することによって、接触力推定部26による接触力の推定の精度を高めることができる。すなわち、アクチュエータ10が、十分に硬いものに接触したときのように、ある程度変形した状態において内圧が増大する一方でそれ以上変形しない場合においても、圧力波形P(t)を利用することにより接触力の増大を精度よく推定できる。
【0068】
また、
図2の各グラフにおいて、バルブ5が開いている状態と、バルブ5が閉じている状態とを比較すると、バルブ5が開いているほうが、より作動流体の変動が大きくなっている。これは、アクチュエータ10から押し出された作動流体が移動できる空間が大きいほうが、より作動流体が流動しやすいためであると考えられる。
【0069】
このため、バルブ5を設けるなど流量センサ3のアクチュエータ10とは反対側を閉空間とする場合には、該閉空間の容積を十分に確保することが、作動流体の流動性を確保する上で好ましい。
【0070】
第2空間V2が閉空間に構成されている場合でも、流体の圧縮性、及び/又は第1空間V1および第2空間V2の変形に起因して生じる第1空間V1から第2空間V2への流体の流動を検出できる。
【0071】
なお、極端に言えば、第1空間V1および第2空間V2のどちらか一方の容積が零でなければ原理的には流体の流動を検出することができ、流量センサーによる検出の感度(SN比)が十分あれば、第1空間V1および第2空間V2の容積に限定されない。
【0072】
図3は、アクチュエータ10を作動させているときに、一対の把持指12の外表面に接触が生じたときの、流量波形W(t)および圧力波形P(t)が示されている。
図3(a)はアクチュエータ10の内圧を次第に増大させて一対の把持指12を閉じるときの動作を示しており、
図3(b)はアクチュエータ10の内圧を次第に減圧させて一対の把持指12を開くときの動作を示している。
【0073】
図3(a)に示されるように、一対の把持指12を閉じているとき、すなわちポンプ4から流量センサ3を通してアクチュエータ10内へ作動流体を供給しており、流量センサ3の出力が基準値W0を超えている場合でも、接触時には流量波形W(t)に振幅が認められる。
【0074】
一方で、
図3(b)に示されるように、一対の把持指12を開いているとき、すなわちアクチュエータ10から配管2側へ作動流体を放出しており、流量センサ3の出力が基準値W0を下回っている場合でも、接触時には流量波形W(t)に振幅が認められる。これらの振幅に基づいて、接触検出部25によって、接触が精度よく検出される。
【0075】
上記実施形態では、1つの流量センサ3を用いた場合を例にとって説明したが、
図1において二点鎖線で示すように、さらなる流量センサ3’を設けてもよい。具体的には、流量センサ3と、さらなる流量センサ3’とを並列となるように、配管2に設けてもよい。この場合、さらなる流量センサ3’における作動流体の検出方向を、流量センサ3に対して反対方向としてもよい。この場合、
図3において二点鎖線で示すように、流量センサ3による流量波形W(t)と、さらなる流量センサ3’による流量波形W’(t)とが、互いに反対方向にピークを有するので、作動流体の流動を検出しやすい。
【0076】
また、上記実施形態では、流体機器としてアクチュエータ10を例にとって説明したが、このほか
図4に示されるように、カフ式血圧計80のカフ81に本発明を適用してもよい。すなわち、流体機器1におけるアクチュエータ10を、被験者の腕等の被血圧測定部に巻回されるカフ81(中空体)置き換えてもよい。これによって、血圧測定時において、カフ81の内圧の変化に従って生じ得るカフ81内の作動流体による振動(流動)を、流量センサ3によって精度よく検出できる。
【0077】
特に、オシロメトリック法によりカフ81内における空気の圧力の変動に基づいて血圧を測定する場合に比して、カフ81内の空気の流動を精度よく検出しやすいので、例えば脈拍が弱い虚脈である被験者の場合でも、血圧を安定して計測しやすい。よって、血圧計において本発明を好適に実施できる。
【0078】
[第2実施形態]
次に、
図5~7を参照して第2実施形態に係る流体機器30について説明する。
図5は、流体機器30の構成を概略的に示している。
図5に示されるように、流体機器30は、第1端部31aから第2端部31bまで延びる長尺状の中空体31と、第1端部31aに先端部32aが接続された第1配管32と、第2端部31bに先端部33aが接続された第2配管33と、第1配管32の途中に設けられた第1流量センサ34と、第2配管33の途中に設けられた第2流量センサ35と、流体機器30の作動を制御する制御装置40とを有している。第1配管32の基端部32bおよび第2配管33の基端部33bは、大気に開口されている。
【0079】
中空体31は、弾性材料から形成されており、外表面に物品等が接触すると凹み、接触状態が解除されると、弾性力によって元の形状に復元する。
【0080】
第1流量センサ34および第2流量センサ35は、第1実施形態の流量センサ3と同じであり、第1配管32および第2配管33内を流動する流体の流量を計測して、流量を電圧値として制御装置40に出力する。本実施形態では、第1流量センサ34および第2流量センサ35はそれぞれ、中空体31から第1配管32および第2配管33に流体が押し出されたときに、基準値W0よりも低い電圧値を出力するような向きで配置されている。
【0081】
制御装置40は、ハードディスク等の記憶部41、演算処理部(CPU)42、メモリ、および入出力装置を備えた周知のコンピュータと、コンピュータに実装されたソフトウエアとにより構成されている。演算処理部42は、接触検出部45と、接触力推定部46と、接触速度推定部47と、接触形状推定部48と、接触位置推定部49とを有している。接触検出部45、接触力推定部46、接触速度推定部47および接触形状推定部48については、第1実施形態の制御装置20における接触検出部25、接触力推定部26、接触速度推定部27および接触形状推定部28と同じであり、説明を省略する。
【0082】
すなわち、制御装置40は、第1実施形態の制御装置20に対して、ポンプ制御部23およびバルブ制御部24を有しておらず、接触位置推定部49を追加的に備えている点で異なっている。
【0083】
記憶部41には、流体機器30の作動に必要な情報が予め記憶されており、制御装置20と同様に、例えば、接触検出用閾値Aと、接触力推定関数f(t)と、接触速度推定関数g(t)と、接触形状推定関数h(t)とが記憶されている。また、記憶部41には、接触位置推定関数x(t)がさらに記憶されている。
【0084】
接触位置推定部49は、第1流量センサ34および第2流量センサ35により計測される2つの流量波形W1(t)およびW2(t)それぞれにおける、接触が検出されたときの最初のピークの時間差に基づいて、接触位置を推定する。
【0085】
具体的には、中空体31における接触位置から、第1流量センサ34および第2流量センサ35それぞれまでの経路の長さが異なり得るため、第1流量センサ34および第2流量センサ35に、接触による流動が伝わる時間が異なり得、この時間差を利用して接触位置推定部49は接触位置推定関数x(t)から接触位置を推定する。
【0086】
例えば、
図5に示されるように、中空体31の外表面のうち長手方向において第1端部31aに近接した接触位置Y1に接触した場合、接触位置Y1から第1端部31aおよび第2端部31bの両側に向けて流体が押し出されて、第1流量センサ34および第2流量センサ35を通して中空体31から大気に流体が押し出される。
【0087】
このとき、
図6(a)に示されるように、第1流量センサ34および第2流量センサ35のうち、接触位置Y1により近い第1流量センサ34による流量波形W
1(t)のピークは、接触位置Y1からより離れた第2流量センサ35による流量波形W
2(t)のピークよりも早く生じる。この時間差Δt1に基づいて、接触位置推定部49は、接触位置推定関数x(t)から接触位置Y(t)を推定する。
【0088】
図7は、ピークの時間差を横軸にとり、中空体31の長手方向における中央位置から接触位置までの長さを縦軸にとったグラフである。
図7に示されるように、ピークの時間差と、接触位置の中央位置からの長さとは、比例の関係にある。
【0089】
例えば、
図7のグラフにおけるプロットMは、中央位置から
図5において右側へ100cmの位置においてピークの時間差が10mm秒であったことを示している。この場合、接触位置から第1流量センサ34までの経路の長さは、該接触位置から第2流量センサ35までの経路の長さよりも200cm長くなる。よって、200cmの経路差によって10mm秒のピークが生じることを考慮すると、200m/秒の速度で接触位置から流動が伝わっていることが判り、概ね音速(340m/秒)に近い結果となっている。
【0090】
接触位置推定関数x(t)は、第1流量センサ34および第2流量センサ35のうちピークが早く生じた側に、上記流動が伝わる速度を利用してピークの時間差から中心位置から接触位置までの距離を推定している。
【0091】
したがって、接触位置推定部49は、中空体31のうち位置Y1に接触した場合には、時間差Δt1に基づいて、記憶部41から読み出した接触位置推定関数x(t)から中央位置からの距離L1を推定する。次いで、接触位置推定部49は、第1流量センサ34において早くピークが生じていることから中央位置から第1流量センサ34側に距離L1だけ離れた位置に接触位置Y1が位置すると推定することができる。
【0092】
一方、中空体31の外表面のうち長手方向における中央位置である接触位置Y2に接触した場合、
図6(b)に示されるように、第1流量波形W
1(t)および第2流量波形W
2(t)のピークの時間差Δt2は概ねゼロである。この場合、接触位置推定部49は、時間差Δt2に基づいて、接触位置推定関数から中央位置からの距離がゼロであると推定する。よって、接触位置推定部49は、接触位置Y2が中空体31の長手方向の中央であると推定することができる。
【0093】
さらにまた、中空体31の外表面のうち長手方向における第2端部31bに近接した接触位置Y3に接触した場合、
図6(c)に示されるように、第2流量波形W2(t)のピークのほうが、第1流量波形W1(t)よりも早く生じ、第1流量波形W
1(t)および第2流量波形W
2(t)のピークの時間差がΔt3となっている。
【0094】
したがって、接触位置推定部49は、時間差Δt3に基づいて、接触位置推定関数x(t)から中央位置からの距離L3を推定する。次いで、接触位置推定部49は、第2流量センサ35において早くピークが生じていることから中央位置から第2流量センサ35側に距離L3だけ離れた位置に接触位置Y3が位置すると推定することができる。
【0095】
流体機器30では、2つの流量センサ34,35により計測された2つの流量波形W1(t)、W2(t)に基づいて、接触による流動が精度よく検出されるので、接触検出部45によって接触をより精度よく検出できると共に、接触力推定部46による接触力の推定、接触速度推定部47による接触速度の推定、接触形状推定部48による接触形状の推定の精度が向上する。
【0096】
上記実施形態では、ポンプ4およびバルブ5を設けない場合を例にとって説明したが、第1実施形態のように、第1配管32および第2配管33にポンプ4およびバルブ5を設けてもよい。
【0097】
図8は、第2実施形態の変形例に係る流体機器50を概略的に示している。流体機器50は、流体機器30に比して、第1配管32および第2配管33の基端部32b、33bに閉鎖空間として構成された流体袋51,52が接続されており大気解放されていない点で異なっている。この場合でも、流体機器30と同様に、接触位置Y1~Y3のそれぞについて、
図9に示されるピークの時間差Δt1~Δt3に基づいて、それぞれの接触位置Y1~Y3を推定することができる。
【0098】
また、
図10は、第2実施形態のさらなる変形例に係る流体機器60を概略的に示している。流体機器60は、流体機器30に比して、第1配管32および第2配管33の基端部32b、33bが互いに第3配管61で流体連通するように連結されており、中空体31を含めて流路が環状に構成されている点で異なっている。この場合でも、流体機器30、50と同様に、接触位置Y1~Y3のそれぞについて、
図11に示されるピークの時間差Δt1~Δt3に基づいて、それぞれの接触位置Y1~Y3を推定することができる。
【0099】
なお、この場合には、第1流量センサ34および第2流量センサ35における流動は、接触位置が長手方向の中央である場合を除いて、互いに反対方向に生じる。すなわち、第1端部31aに近接した接触位置Y1の場合、第1流量センサ34には中空体31から第1配管32に向かう流動が生じるのに対し、第2流量センサ35には第2配管33から中空体31に向かう流動が生じている。しかしながら、この場合でも、流動が伝わる経路の長さの差に応じてピークの時間差が生じるので、接触位置推定部49は、該ピークの時間差に基づいて、接触位置を推定できる。
【0100】
図12は、第2実施形態のさらなる他の変形例に係る流体機器70を概略的に示している。流体機器70は、流体機器30に対して、第3配管76および第3流量センサ77を備えており、さらに長尺状の中空体31に換えて幅広の中空体71備えている点で異なっている。
【0101】
すなわち、中空体71には、互いに異なる少なくとも3箇所に、少なくとも3本の配管32,33,76がそれぞれ接続されており、3つの流量センサ34,35,77により計測される流量波形W1(t)、W2(t)、W3(t)に基づいて、接触による流動を精度よく検出できる。よって、接触検出部45による接触をより精度よく検出できると共に、接触力推定部46による接触力の推定、接触速度推定部47による接触速度の推定、接触形状推定部48による接触形状の推定の精度がさらに向上する。
【0102】
また、3つの流量センサ34,35,77を使用することにより、ピークの時間差と中央位置からの距離が2組以上算出されるので、2次元的な接触位置を推定できる。さらにまた、3つの流量センサ34,35,77が3次元的に配置されている場合には、ピークの時間差と中央位置からの距離が3組算出されるので、接触位置の3次元的な接触位置を推定できる。なお、配管および流量センサは3つに限らず複数設けてもよく、4つ以上設けてもよい。
【0103】
本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1,30,50,60,70,80 流体機器
2 配管
3 流量センサ
4 ポンプ
5 バルブ
6 圧力センサ
10 アクチュエータ
25 接触検出部
26 接触力推定部
27 接触速度推定部
28 接触形状推定部
31 中空体
34 第1流量センサ
35 第2流量センサ
49 接触位置推定部
W(t) 流量波形
P(t) 圧力波形
f(t) 接触力推定関数
g(t) 接触速度推定関数
h(t) 接触形状推定関数
x(t) 接触位置推定関数