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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142200
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】診療用放射線安全管理システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 15/00 20180101AFI20220922BHJP
   G16H 10/60 20180101ALI20220922BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220922BHJP
   G01T 1/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
G16H15/00
G16H10/60
A61B5/00 A
G01T1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042285
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】518149844
【氏名又は名称】株式会社RYUKYU ISG
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石垣 陸太
(72)【発明者】
【氏名】夜久 英樹
【テーマコード(参考)】
2G188
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188AA03
2G188AA25
2G188BB02
2G188BB19
2G188JJ05
4C117XB08
4C117XE44
4C117XH16
4C117XK34
4C117XL01
4C117XQ12
4C117XR07
5L099AA15
5L099AA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】放射線を患者に照射する診療行為の実績に基づいて、その後の診療を行う上で有用な情報を得る診療用放射線安全管理システムを提供する。
【解決手段】多数の放射線照射装置が医療機関端末と内部ネットワークを介して接続されている医療機関の診療用放射線安全管理システムにおいて、医療機関端末とインターネットを介して相互に通信可能な外部機関端末21は、記憶部22と、前記患者情報及び前記診療情報に含まれる項目のいずれかを統計項目として入力を受け付ける統計項目入力受付部231と、統計項目入力受付部に入力された統計項目により記憶部に保存された情報を統計処理する統計処理部232と、統計処理部による統計処理の結果を出力する統計処理結果出力部233と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部と、
複数の患者について、各患者の識別情報及び患者の属性情報を含む患者情報と、該患者に対して行われた診療行為の種別、日時、及び放射線の被ばく線量を含む診療情報の入力を受け付けて前記記憶部に保存する診療情報入力受付部と、
前記患者情報及び前記診療情報に含まれる項目のいずれかを統計項目として入力を受け付ける統計項目入力受付部と、
前記統計項目入力受付部に入力された統計項目により前記記憶部に保存された情報を統計処理する統計処理部と、
前記統計処理部による統計処理の結果を出力する統計処理結果出力部と
を備えることを特徴とする診療用放射線安全管理システム。
【請求項2】
前記診療情報入力受付部が、さらに、診療従事者を特定する情報の入力を受け付け、
前記統計項目入力受付部が、さらに前記診療従事者を特定する情報を統計項目として指定する入力を受け付ける
ことを特徴とする請求項1に記載の診療用放射線安全管理システム。
【請求項3】
さらに、
前記統計処理部に、予め決められた期間毎に、予め決められた統計項目による統計処理を実行させ、該統計処理の結果を報告書として作成する報告書作成部
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の診療用放射線安全管理システム。
【請求項4】
医療機関に配置される医療機関端末と、
ネットワークを介して前記医療機関端末に接続された外部端末
を備え、
前記医療機関端末が、前記診療情報入力受付部及び前記統計処理結果出力部を備え、
前記外部端末が、前記記憶部及び前記統計処理部を備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の診療用放射線安全管理システム。
【請求項5】
前記医療機関端末が、さらに、一時記憶部を備え、
前記記憶部が、前記外部端末、又はネットワークを介して該外部端末に接続された前記医療機関端末以外の装置に設けられ、
前記診療情報入力受付部が、前記患者情報及び前記診療情報を前記一時記憶部に保存しておき、予め決められた時点で、該一時記憶部に保存されている患者情報及び診療情報を前記記憶部に転送する
ことを特徴とする請求項4に記載の診療用放射線安全管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診療用放射線安全管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療機関では、がん等の疾病を発見したり治療したりするなどの目的でX線等の放射線を患者に照射する診療行為が広く行われている。放射線の照射は疾病の発見や治療に有効である一方、患者への放射線の照射量が適正量を大きく上回ると健康被害をもたらす。患者に対する放射線の照射量が過大になることを防止するために、患者に対する放射線の照射を記録することが定められている。こうした定めに基づき、放射線を照射する診療行為を行う際には放射線照射の実績が記録される(例えば特許文献1)。
【0003】
放射線照射の実績を記録する際には、患者の氏名、年齢、性別、体重といった患者の属性情報と、当該患者に放射線照射を行った診療行為の種別及び照射日時並びに照射時間を都度、記録する。そして、患者ごとに所定期間(例えば一年間)の放射線照射の実績をまとめた報告書を作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-213905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2018年7月に医療法が改正(2020年4月施行)され、診療用放射線に関わる装置を備えている全ての医療機関は、患者ごとの放射線の照射実績をまとめた報告書を作成するだけでなく、放射線診療を受ける者が放射線の照射により被ばくした量を管理及び記録しておき、診療用放射線の安全利用のための方策を講じることが義務付けられた。
【0006】
医療機関では報告書に列挙された放射線の照射実績を確認し、各装置を用いた診療行為における放射線の照射量を確認することはできるものの、報告書を閲覧するのみでは今後の診療を行う上で改善すべき点などの有用な情報を抽出することが困難であるという問題があった。例えば、放射線を照射する際には患者の年齢や体格に応じた量の放射線を照射する必要があるが、実際の診療における放射線の照射量の調整は医者の判断に委ねられており、実際に行われた診療行為において照射された放射線の量が適切であったか否かなど、その後の診療を行う上で有用な情報を把握することが容易でないといった問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、放射線を患者に照射する診療行為の実績に基づいて、その後の診療を行う上で有用な情報を得ることができる診療用放射線安全管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る診療用放射線安全管理システムは、
記憶部と、
複数の患者について、各患者の識別情報及び患者の属性情報を含む患者情報と、該患者に対して行われた診療行為の種別、日時、及び放射線の被ばく線量を含む診療情報の入力を受け付けて前記記憶部に保存する診療情報入力受付部と、
前記患者情報及び前記診療情報に含まれる項目のいずれかを統計項目として入力を受け付ける統計項目入力受付部と、
前記統計項目入力受付部に入力された統計項目により前記記憶部に保存された情報を統計処理する統計処理部と、
前記統計処理部による統計処理の結果を出力する統計処理結果出力部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
上記患者には、疾病の治療のために放射線の照射を受ける者だけでなく、健康診断等において疾病を発見するために放射線の照射を受ける者も含まれうる。
上記患者の識別情報は、典型的には患者の氏名であるが、これに限らず各患者に付与される識別番号であってもよい。患者の属性情報には、例えば患者の性別、年齢、身長、体重が含まれる。また、診療行為の種別には、例えばコンピュータ断層撮影装置(CT)、デジタルX線撮影装置(DR)、コンピュータ・ラジオグラフィ(CR)、血管造影X線診断装置(XA)などの装置の種類(モダリティ)と、放射線の照射部位(頭部、胸部等)と、患者の姿勢(臥位、立位等)とを組み合わせたものが含まれる。
【0010】
本発明に係る診療用放射線安全管理システムでは、まず、診療情報入力受付部が、各種の装置を用いて行われた診療行為の実績として、患者の識別情報及び患者の属性に関する患者情報と、各患者に対して行われた診療行為の種別、日時、及び該診療行為による放射線の被ばく線量に関する診療情報の入力を受け付け、それを記憶部に保存する。放射線の照射を伴う診療行為は各患者に対して複数回行われることが一般的であり、診療行為の度にこうした診療情報を入力する。その後、使用者が統計項目を指定する入力を行うと、記憶部に保存されている情報がその統計項目により統計処理され、その結果が出力される。使用者は、所望の統計項目を入力するのみで該統計項目による統計処理結果を確認することができ、それによってその後の診療を行う上で有用な情報を得ることができる。
【0011】
例えば、統計項目として患者の体重を選択すると、各患者の体重と被ばく線量の関係を示す統計結果が出力される。この場合には、使用者が患者の体重と被ばく線量の相関を確認し、各患者に照射した放射線量が適切であったかを容易に確認することができる。また、統計項目は複数入力してもよく、例えば、患者の体重と診療行為の種別の2つを選択すると、診療行為別に、患者の体重と被ばく線量の関係を示す統計結果が出力される。この場合には、診療行為毎に、各患者に照射した放射線量が適切であったかを容易に確認することができる。
【0012】
また、本発明に係る診療用放射線安全管理システムは、
前記診療情報入力受付部が、さらに、診療従事者を特定する情報の入力を受け付け、
前記統計項目入力受付部が、さらに前記診療従事者を特定する情報を統計項目として指定する入力を受け付ける
ことが好ましい。
【0013】
上記態様の診療用放射線安全管理システムでは、患者だけでなく、診療従事者の放射線の被ばく線量を管理したり、診療従事者による診療行為の適否を確認したりすることができる。
【0014】
本発明に係る診療用放射線安全管理システムでは、さらに、
前記統計処理部に、予め決められた期間毎に、予め決められた統計項目による統計処理を実行させ、該統計処理の結果を報告書として作成する報告書作成部
を備えた構成を採ることができる。
【0015】
上記態様の診療用放射線安全管理システムでは、法令等に基づいて定期的に提出することが義務付けられた統計項目を予め設定しておくことにより、簡便に実績報告書を作成することができる。
【0016】
なお、本発明に係る診療用放射線安全管理システムは、
医療機関に配置される医療機関端末と、
ネットワークを介して前記医療機関端末に接続される外部端末
を備え、
前記医療機関端末が、前記診療情報入力受付部及び前記統計処理結果出力部を備え、
前記外部端末が、前記記憶部及び前記統計処理部を備える
ように構成することができる。
【0017】
上記態様の診療用放射線安全管理システムでは、診療情報を保存したり、診療情報を統計したりする処理を、上記外部端末を有する外部機関に医療機関が委託することが可能になる。なお、統計項目入力受付部等については、医療機関端末及び/又は外部端末に設ければよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る診療用放射線安全管理システムを用いることにより、放射線を患者に照射する診療の実績に基づいて、その後の診療を行う上で有用な情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る診療用放射線安全管理システムの一実施例の全体の構成図。
図2】本実施例の診療用放射線安全管理システムにおける、医療機関内の構成を説明する図。
図3】本実施例の診療用放射線安全管理システムにおける、医療機関端末の要部構成図。
図4】本実施例の診療用放射線安全管理システムにおける、外部機関端末の要部構成図。
図5】本実施例の診療用放射線安全管理システムにおいて法令に基づく内容で各報告書を自動作成する画面表示の一例。
図6】本実施例の診療用放射線安全管理システムにおいて患者の体型に関する統計処理を行う際に表示される画面の一例。
図7】本実施例の診療用放射線安全管理システムにおいて線量指標(患者が受けた推定被ばく量のこと)の増減に関する統計処理を行う際に表示される画面の一例。
図8】本実施例の診療用放射線安全管理システムにおいて患者の属性と放射線照射量の関係に関する統計処理を行う際に表示される画面の一例。
図9】本実施例の診療用放射線安全管理システムにおいて診療従事者の検査数に関する統計処理を行う際に表示される画面の一例。
図10】本実施例の診療用放射線安全管理システムにおいて検査分布に関する統計処理を行う際に表示される画面の一例。
図11】本実施例の診療用放射線安全管理システムにおいて検査時間に関する統計処理を行う際に表示される画面の一例。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る診療用放射線安全管理システムの一実施例について、以下、図面を参照して説明する。
【0021】
本実施例の診療用放射線安全管理システム100(以下、単に「システム」ともいう。)は、医療機関1、1a、1b(以下、複数の医療機関を代表して「医療機関1」とも記載する。)と外部機関2により用いられる。医療機関1には、病院のほか、診療所、福祉施設等、放射線を照射する診療装置を保有する様々な機関が含まれうる。図1には3つの医療機関を図示しているが、医療機関1の数は1つ又は2つであってもよく、あるいは4つ以上であってもよい。各医療機関1には、少なくとも1台の医療機関端末11が配置されている。外部機関2は診療用放射線安全管理システム100を運用・管理する機関である。各医療機関1と外部機関2の間では、システム100の利用に関して予め取り決めが交わされている。医療機関1に設けられる医療機関端末11(後記。図3参照)と外部機関2に設けられる外部機関端末21(後記。図5参照)、及びクラウドサーバ3はインターネットを介して相互に通信可能に構成されている。
【0022】
医療機関1の内部に配置される機器の構成例を図2に示す。医療機関1には、例えば、図2に示すように、コンピュータ断層撮影装置(CT)10a、デジタルX線撮影装置(DR)10b、コンピュータ・ラジオグラフィ(CR)10c、血管造影X線診断装置(XA)10dなどの多数の放射線照射装置(以下、これらをまとめて「放射線照射装置10」ともいう。)が配置されている。また、図2では各装置を1台ずつ図示しているが、同種の装置が複数台配置されている場合もある。これらの放射線照射装置10は、患者に放射線を照射する本体と、各本体の動作を制御する制御部を含んでおり、各放射線照射装置10の制御部は、内部ネットワーク(イントラネット)を介して医療機関端末11に接続されている。
【0023】
図3に示すように、医療機関端末11は、記憶部12を備えている。記憶部12には、患者情報記憶部121、診療従事者情報記憶部122、及び診療情報記憶部123が設けられている。
【0024】
患者情報記憶部121には、患者の識別情報と属性情報が保存される。患者の識別情報には、氏名、識別番号が含まれる。また、患者の属性情報には、性別、年齢、身長、体重、既往歴、アレルギー情報、及び腎機能情報が含まれる。なお、ここでいう患者とは、疾病の治療のために放射線の照射を受ける者だけでなく、健康診断等において疾病を発見するために放射線の照射を受けた者も含まれうる。
【0025】
診療従事者情報記憶部122には、診療従事者の識別情報と属性情報が保存される。診療従事者の識別情報には、氏名、識別番号が含まれる。診療従事者の属性情報には、性別、年齢、身長、体重、職務(医師、技師、看護師等)が含まれる。
【0026】
診療情報記憶部123には、当該医療機関1が備える放射線照射装置10を用いた診療行為、及び患者に造影剤を注入する診療行為の実績が一時的に保存される。具体的には、複数の患者について、各患者の識別情報及び属性情報を含む患者情報と、診療行為の種別、日時、当該診療行為の実施者(診療従事者)、及び放射線の被ばく線量を含む診療情報を対応付けたものが保存される。診療行為の種別とは、例えば、放射線照射装置の種類(モダリティ)、放射線の照射部位(頭部、胸部等)、及び患者の姿勢(臥位、立位等)の組み合わせを含んだ情報である。
【0027】
医療機関1では、放射線を照射する際に患者への造影剤の注入も行う。患者の中には特定の種類の造影剤に対してアレルギー反応や腎機能の低下等の副反応を起こす者が含まれうる。そのため、過去に造影剤を注入した際の副反応の有無等の情報を記録しておくことが重要である。本実施例のシステム100では、各患者への造影剤の投与に関する情報も、診療情報の一部として診療情報記憶部123に保存される。具体的には、患者に造影剤を注入する際に用いられる造影剤注入装置の種類、造影剤の種類と注入量、当該患者への造影剤の注入部位、注入日時、造影剤の注入時の副反応やトラブル(注入漏れなど)の有無に関する情報が含まれる。医療機関1が、本実施例のシステム100とは別に造影剤情報管理装置を備えている場合には、診療情報入力受付部131(後記)が当該装置から自動的に上記情報を収集するように構成することができる。あるいは、造影剤を注入する診療行為を行う毎に、医師等が上記項目を含む所定のフォーマットに必要な情報を入力するようにしてもよい。
【0028】
また、医療機関端末11は、機能ブロックとして、診療情報入力受付部131とリクエスト送信部132を備えている。医療機関端末11の実体は一般的なパーソナルコンピュータであり、予めインストールされた医療機関端末用ソフトウェアをプロセッサで実行することにより、上記機能ブロックが具現化される。また、医療機関端末11には、マウスやキーボード等の入力部18と液晶ディスプレイなどの表示部19が接続されている。あるいは、医療機関端末11としてタブレット端末を用い、そのタッチパネルディスプレイを入力部18及び表示部19として用いることもできる。
【0029】
診療情報入力受付部131は、放射線照射装置10や造影剤情報管理装置から順次、送信される診療情報を受け入れて診療情報記憶部123に保存する。また、予め決められた日時になると、診療情報記憶部123に保存されている情報をクラウドサーバ3に送信する。予め決められた日時とは、医療情報の送信によって一時的に医療機関のネットワークへの負荷がかかっても問題がない日時であり、例えば毎日深夜0時とすることができる。この日時や送信頻度は、当該医療機関において行われる診療行為の頻度や、ネットワークの通信速度などを考慮して適宜に決めればよい。
【0030】
上記予め決められた日時に医療機関端末用プログラムが動作していない(ソフトウェアが停止状態にある)場合であっても、医療機関端末11に予めインストールされている起動監視ソフトウェアによって医療機関端末用プログラムが起動され診療情報がクラウドサーバ3に送信される。あるいは、上記予め決められた日時を過ぎても医療機関端末11から診療情報がクラウドサーバ3に送信されない場合に、該クラウドサーバ3から所定の信号を外部機関端末21に送信し、その信号を受けた外部機関端末21が医療機関端末11及び医療機関端末用プログラムを遠隔起動させるように構成することもできる。
【0031】
リクエスト送信部132は、医療機関1の担当者により入力された、外部機関2に対する種々の要望を外部機関端末21に送信する。
【0032】
外部機関端末21の構成を図4に示す。外部機関端末21は、記憶部22を備えている。記憶部22には、医療機関情報記憶部221、統計項目情報記憶部222、及び報告書情報記憶部223が設けられている。
【0033】
医療機関情報記憶部221には、外部機関2との間であらかじめ契約を交わした医療機関1の情報が保存されている。医療機関1の情報には、例えば、医療機関の名称、住所、担当者の連絡先とメールアドレスが含まれる。
【0034】
統計項目情報記憶部222には、医療機関1の名称、医療機関1に配置されている放射線照射装置10の種類及び機種、各医療機関1に登録されている患者の患者情報及び診療情報の各項目、それらの各項目について行うべき統計処理の内容、並びに統計処理結果における基準に関する情報が保存されている。
【0035】
報告書情報記憶部223には、医療機関1ごとに、報告書のフォーマット、報告書の作成頻度の情報と、過去に作成した報告書の情報が保存されている。
【0036】
外部機関端末21は、さらに、機能ブロックとして、統計項目入力受付部231、統計処理部232、統計処理結果出力部233、報告書作成部234、及びリクエスト受付部235を備えている。外部機関端末21の実体は一般的なパーソナルコンピュータであり、予めインストールされた外部機関端末用ソフトウェアをプロセッサで実行することにより、上記機能ブロックが具現化される。また、外部機関端末21には、マウスやキーボード等の入力部28と液晶ディスプレイなどの表示部29が接続されている。あるいは、外部機関端末21としてタブレット端末を用い、そのタッチパネルディスプレイを入力部28及び表示部29として用いることもできる。
【0037】
統計項目入力受付部231は、診療情報を統計処理する際に、統計処理の対象となる項目の入力を受け付ける。統計処理部232は、統計項目入力受付部231が受け付けた項目について、統計項目情報記憶部222に保存された内容に従って診療情報を統計処理する。統計処理結果出力部233は、統計処理部232により行われた統計処理結果を表示部29の画面に出力する。
【0038】
報告書作成部234は、報告書情報記憶部223に保存されている、医療機関1毎に予め決められたフォーマット及び頻度で報告書を作成する。
【0039】
リクエスト受付部235は、医療機関端末11から送信されるリクエストを受信する。
【0040】
次に、本実施例の診療用放射線管理システム100の動作を説明する。
【0041】
医療機関1では、医師や技師といった診療従事者が、放射線照射装置10の制御部に、診療を行う診療従事者の識別情報、放射線を照射する患者の識別情報、放射線の照射部位、放射線照射時の患者の姿勢、及び放射線の照射時間(又は照射量)を含む所定の項目を入力する。これらの入力項目に基づいて診療行為を行うと、放射線照射装置10から自動的に、放射線照射を伴う診療情報の実績データが、当該診療が行われた日時の情報とともに医療機関端末11に送信される。こうした情報のフォーマットには、例えばDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)と呼ばれる国際規格が用いられる。診療情報を自動送信する機能を持たない旧型の放射線照射装置10については、診療従事者が上記項目の入力欄が設けられた表形式の所定のフォーマットにそれぞれ必要な情報を入力して医療機関端末11に送信する。
【0042】
医療機関端末11では受信した診療情報を順次、診療情報記憶部123に保存する。そして、予め決められた日時(例えば毎日0時)になると、診療情報入力受付部131は、その時点で診療情報記憶部123に蓄積されている情報に、医療機関の識別情報を付してクラウドサーバ3に送信する。クラウドサーバ3では受信したデータ順次、記憶部に格納される。
【0043】
外部機関端末21では、担当者がクラウドサーバ3にアクセスして各医療機関1の診療情報を確認することができる。なお、各担当者がそれぞれ異なる医療機関の診療情報の処理を担当する場合には、担当者の識別情報を用いて外部機関端末21及びクラウドサーバ3にログインさせ、当該担当者が担当する医療機関1の診療情報のみを扱うことができるように構成する。
【0044】
外部機関端末21では、報告書作成部234が、報告書情報記憶部223に保存された報告書のフォーマットを用いて、医療機関1ごとに予め決められた頻度で診療行為の実績をまとめた報告書を作成する。報告書のフォーマットは、典型的には所定の省庁への提出が義務付けられている報告書に対応したフォーマットである。また、予め決められた頻度も、典型的には所定の省庁に報告書を提出することが求められる頻度(例えば年1回)である。
【0045】
また、外部機関端末21では、上記報告書のフォーマット及び作成頻度とは関係なく、担当者が任意のタイミングで診療情報を統計処理して所望の情報を抽出することができる。以下、図面を参照していくつかの統計処理の例を説明する。
【0046】
担当者が統計処理の開始を指示すると、統計項目入力受付部231は、統計処理を行う対象の医療機関1を担当者に選択させる。図5はこのときに表示される画面の一例であり、領域51内に医療機関1の名称を入力することにより統計を行う対象の医療機関1を選択することができる。ここでは、特定の医療機関1を選択せず、全ての医療機関1を対象とすることもできる。担当者が医療機関1を選択すると、対象の医療機関1について過去に作成された報告書の一覧が表示される。なお、図5は報告書未作成の時点で表示される画面例である。また、この画面に表示されている項目52のいずれかを選択すると、当該項目についての統計処理を行ったり、必要な情報を確認したりすることができる。
【0047】
図6は患者の体型について統計処理を行った結果の例である。具体的には領域61において選択されたモダリティ(ここではコンピュータ・ラジオグラフィ:CR)を用いた診療行為を行った患者のうち、成人について、縦軸を身長、横軸を体重とするグラフ62を表示したものである。グラフ62の各プロットは各患者を示す。統計項目情報記憶部222には、体型の項目について、全プロットの回帰直線を求める統計処理が対応付けられており、統計処理部232がこの統計を行った結果の回帰直線63がグラフ62に重畳表示される。さらに、グラフ62上の特定の領域64をマウス等を用いた操作で選択すると、当該領域64に含まれる各プロットに対応する患者に対して行われたCRの詳細がリスト65に表示される。CRでは通常、患者の身長及び/又は体重に応じた量の放射線を照射する。例えば、患者の体型に関する統計処理の結果から、平均的な体型、痩せ型、肥満型などに体型を分類し、放射線の照射量の決定時に各体型の患者に対して増減すべき放射線量(あるいは増減割合)を検討することができる。
【0048】
図7は指定した2つの期間(期間1と期間2)の間での検査回数の増減について統計処理を行った結果の例である。この項目については、期間1(2020年6月1日~7月20日)と期間2(2020年7月21日~9月9日)に行われた各検査の実施回数を集計し、その増減を判定するという統計処理が行われる。この結果を確認することにより、各検査の実施回数がそれぞれ増加傾向にある、あるいは減少傾向にある、等の状況を確認し、装置の新規購入の要否や検査の効率化の必要性等を検討することができる。
【0049】
図8は領域指定という項目について統計処理を行った結果の例である。領域指定の項目では、領域81においてモダリティ及び検査内容を、領域82において対象期間及び対象とする患者の範囲及び統計における横軸の項目を、それぞれ担当者に選択させて、患者の被ばく線量と患者の体型の相関をグラフ83で表示し、回帰直線84を求めるという統計処理を行う。図8の例では患者の体型と被ばく線量の相関を示している。タブ85を切り替えることにより、被ばく線量の単位をDose Area Product Total (Gym2). Dose (RP) Total (Gy). Fluoro Dose Area Product Total (Gym2)にそれぞれ変更することが可能である。また、グラフ83において領域86を選択することにより、当該領域86内に含まれる患者に対する診療行為の詳細をリスト87で確認することができる。この統計処理では、例えばグラフにおける外れ値を選択することにより、他に比べて被ばく線量が多かった診療行為の詳細を確認し、特定の診療従事者により実施される医療行為において被ばく線量が多い場合に、その理由を確認したり、放射線の照射量を低減するようにアドバイスしたりすることができる。
【0050】
図9は、従事者別の統計処理を行った結果の例である。従事者別の項目では、領域91においてモダリティ、装置番号、診療従事者(図9では担当技師名)、及び対象期間をそれぞれ担当者に選択させて、対象期間における検査件数を求め、グラフ92として表示する。この統計結果から、例えば特定の期間に検査件数が集中しているか否かを確認し、検査受付の改善の要否を判断することができる。
【0051】
図10は検査分布、図11は検査時間に関する統計処理を行った結果の例である。図10に示す検査分布の統計結果からは、検査が集中している曜日や時間がないかを確認することができる。また図11に示す検査時間の統計結果からは、特定の検査において検査時間が長くなっていないかを確認して、検査の効率化に資する改善の要否を検討することができる。
【0052】
統計処理部232により行われた上記の各統計処理の結果を担当者が確認し、今後の改善に役立つ情報が得られた場合には、その結果を報告書として出力することができる。担当者が報告書の出力を指示すると、報告書作成部234は、担当者が指定した統計項目の統計処理結果を所定のフォーマットにまとめ、それを電子ファイルとして出力する。担当者は、出力された統計処理結果の電子ファイルに、今後、改善が必要であると思われる点などについてのコメントを付す等した上で、医療機関1に送信する。医療機関1では、その内容を確認し、今後の医療行為等における改善を検討することができる。
【0053】
また、医療機関1では、担当者が医療機関端末11から外部機関2の担当者に対して様々なリクエストを行うことができる。リクエストの内容には、例えば、医療機関端末11の操作や外部機関2から送付された統計処理結果の内容についての問い合わせ(いわゆるヘルプ)、報告書のフォーマットや作成頻度の変更、新規の統計処理の依頼が含まれる。医療機関端末11の表示部19には「リクエスト」ボタンが常時表示されており、医療機関の担当者がこれを押すと、「ヘルプ」、「報告書変更」、「新規統計処理」といった項目のボタンが表示される。
【0054】
例えば、「ヘルプ」ボタンが押されると、問い合わせの内容を入力するフリー入力欄が表示される。これに問い合わせたい内容を記載して送信ボタンを押すと、リクエスト送信部132がその内容を、医療機関1の識別情報とともに外部機関端末21に送信する。外部機関端末21では、リクエストを受信すると、リクエスト受付部235が医療機関1の識別情報(医療機関名、電話番号、及びメールアドレス)とリクエストの内容を表示部29の画面に表示する。担当者は、リクエストの内容を確認し、緊急性が高い場合には医療機関1の識別情報として表示されている電話番号をクリックする等して医療機関1に電話して直接相談を受ける。一方、緊急性が低い場合や、書類の送付の依頼等である場合には医療機関1の識別情報として表示されているメールアドレスをクリックする等してメールソフトを立ち上げ、回答を記載したり書類を添付したりして医療機関1に送信する。
【0055】
「報告書変更」ボタンが押されると、現在、当該医療機関に設定されている報告書のフォーマットと作成頻度の情報が表示される。医療機関1の担当者がこれらのうちの必要な箇所に修正を加えて送信ボタンを押すと、リクエスト送信部132がその内容を医療機関1の識別情報とともに外部機関端末21に送信する。外部機関端末21では、リクエストを受信すると、リクエスト受付部235が医療機関1の識別情報(医療機関名、電話番号、及びメールアドレス)とリクエストの内容を表示部29の画面に表示する。担当者は、報告書のフォーマットや作成頻度の変更情報を確認し、それらに問題がないと判断すると、報告書情報記憶部223に保存されている、当該医療機関1の報告書作成に関する情報を更新する。
【0056】
「新規統計処理」ボタンが押されると、リクエスト送信部132は外部機関端末21に対してインターネット通話を要求する。外部機関2の担当者がこの通話を受け付けると、インターネット通話が開始される。インターネット通話では、例えば外部機関端末21における統計処理の内容を示す画面(図5図11参照)を医療機関端末11と共有しつつ、新たな統計項目を設定したり、既存の統計項目に関する統計処理の内容を変更したりすることを相談することができる。新たな統計項目を追加することが決まると、外部機関2の担当者は、その統計項目と、該統計項目について行うべき統計処理の内容に関する情報を、統計項目情報記憶部に追加(あるいは既存の内容を変更)し、統計項目情報記憶部222に保存する。

上記実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。
【0057】
上記実施例では、医療機関端末11、外部機関端末21、及びクラウドサーバ3によりシステム100を構成したが、医療機関端末11と外部機関端末21のみで構成し、医療機関端末11から送信される医療情報のデータを外部機関端末21の記憶部22に保存するように構成してもよい。あるいは、医療機関端末11のみで上記実施例と同様の機能を備えた診療用放射線安全管理システムを構成することもできる。
【0058】
さらに、医療機関端末11を含まずに診療放射線安全管理システムを構成することもできる。例えば、医療機関1に配置されている放射線照射装置10から直接、クラウドサーバ3又は外部機関端末21に診療情報を送信する構成を採ることができる。診療情報を自動送信する機能を持たない旧型の放射線照射装置10については、診療従事者が上記項目の入力欄が設けられた表形式の所定のフォーマットにそれぞれ必要な情報を入力してクラウドサーバ3又は外部機関端末21に診療情報を送信する構成を採ることができる。
【0059】
また、上記実施例において説明及び/又は図示した統計項目は一例であって、適宜に追加、変更することができる。例えば、患者の被ばく線量だけでなく、診療従事者の被ばく線量も併せて管理し、統計データを出力するように構成することができる。
【0060】
その他、患者の個人情報を保護するために、患者情報を匿名化する処理を施した上で患者情報と診療情報をクラウドサーバ3又は外部機関端末21に送信する構成を追加することができる。外部機関端末21では統計処理を行うことができればよく、患者の氏名等の情報を必要としないため、これらを匿名化しても上記実施例と同様の処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0061】
1…医療機関
10…放射線照射装置
11…医療機関端末
12…記憶部
121…患者情報記憶部
122…診療従事者情報記憶部
123…診療情報記憶部
131…診療情報入力受付部
132…リクエスト送信部
18…入力部
19…表示部
2…外部機関
21…外部機関端末
22…記憶部
221…医療機関情報記憶部
222…統計項目情報記憶部
223…報告書情報記憶部
231…統計項目入力受付部
232…統計処理部
233…統計処理結果出力部
234…報告書作成部
235…リクエスト受付部
28…入力部
29…表示部
図1
図2
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図5
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図10
図11