(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142212
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】セラミック電子部品、実装基板およびセラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220922BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20220922BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 201G
H01G4/30 201M
H01G4/30 201N
H01G4/30 513
H01G4/30 311E
H01G4/30 517
H01G2/06 500
H01G4/224 100
H01G4/30 516
H01G4/30 515
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042305
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】須賀 康友
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AD02
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E001AG00
5E001AH07
5E001AJ03
5E001AJ04
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC32
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082HH43
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
5E082PP04
(57)【要約】
【課題】セラミック電子部品と樹脂との密着性を向上させる。
【解決手段】一態様に係るセラミック電子部品によれば、誘電体と内部電極が設けられた素体と、前記素体上の複数の面に形成され前記内部電極と接続し金属を含む下地層と、前記素体の実装面側の前記下地層上に形成されためっき層とを備える外部電極と、前記素体の実装面側と反対側の面に形成され、表面粗さがRa≧0.20μmである酸化物層とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体と内部電極が設けられた素体と、
前記素体上の複数の面に形成され前記内部電極と接続し金属を含む下地層と、前記素体の下面側の前記下地層上に形成されためっき層とを備える外部電極と、
前記素体の下面側と反対側の上面側に形成され、表面粗さがRa≧0.20μmである酸化物層とを備えることを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項2】
前記下地層は、前記素体の下面側から側面を介して上面側にかけて形成され、
前記酸化物層は、前記素体の上面および前記下地層の上面を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記酸化物層は、前記素体の上面および前記下地層の上面から側面にかけて連続的に形成され、
前記めっき層は、前記下地層の側面側で前記酸化物層と接するように、前記下地層の下面側から側面側にかけて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記酸化物層は、前記下地層の上面側から側面側かけて連続的に形成されるとともに、前記上面および前記側面にそれぞれ接しかつ互いに対向する前面側および後面側にかけて連続的に形成され、
前記めっき層は、前記下地層の側面側、前面側および後面側で前記酸化物層と接するように、前記下地層の下面側から側面側、前面側および後面側にかけて連続的に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記めっき層は、前記酸化物層の上面になく、前記下地層の側面上において前記酸化物層の一部を覆っていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記下地層の側面上における前記酸化物層の端部の位置は、前記酸化物層の上面から10μm以上かつ前記外部電極の下面から酸化物層の上面までの厚みの1/2以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記外部電極の下面から酸化物層の上面までの厚みは、150μm以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記酸化物層の厚みは、1μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記酸化物層は、前記誘電体と同一の主成分であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
前記酸化物層の材料は、酸化物セラミックであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記酸化物層は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウム、酸化チタン、酸化シリコンおよび酸化アルミニウムのうち少なくとも1つから選択されることを特徴とする1から10のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項12】
前記下地層は、前記金属が混在された共材を備えることを特徴とする1から11のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項13】
前記共材は、酸化物セラミックであることを特徴とする請求項12に記載のセラミック電子部品。
【請求項14】
前記素体は、第1内部電極層と第2内部電極層が、前記誘電体を介して交互に積層された積層体を備え、
前記外部電極は、前記積層体の互いに対向する側面に設けられた第1外部電極および第2外部電極とを備え、
前記第1内部電極層は、前記第1外部電極に接続され、
前記第2内部電極層は、前記第2外部電極に接続されていることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載のセラミック電子部品がはんだ層を介して実装された実装基板であって、
前記はんだ層は、前記酸化物層の上面よりも低い位置に保たれた状態で前記外部電極の側面へ濡れ上がっていることを特徴とする実装基板。
【請求項16】
前記実装基板上で前記セラミック電子部品を封止する樹脂を備え、前記樹脂と前記酸化物層との間に水分が侵入可能な隙間がないことを特徴とする請求項15に記載の実装基板。
【請求項17】
前記実装基板上に形成されたはんだボールを備え、
前記セラミック電子部品は、前記はんだボールの形成面側に実装されることを特徴とする請求項16に記載の実装基板。
【請求項18】
前記はんだ層を介して実装されたセラミック電子部品は、前記はんだボールを介して互いに接続された第1実装基板と第2実装基板との間の隙間に収容されることを特徴とする請求項17に記載の実装基板。
【請求項19】
誘電体と内部電極が設けられた素体を形成する工程と、
外部電極の下地材料を前記素体の実装面側から側面にかけて塗布する工程と、
前記素体の実装面側と反対側の面を覆うように前記素体上および前記下地材料上に酸化物材料を塗布する工程と、
前記下地材料および酸化物材料を焼成し、前記素体の実装面側から側面にかけて前記外部電極の下地層を形成するとともに、前記素体上および前記下地層上に表面粗さがRa≧0.20μmである酸化物層を形成する工程と、
前記外部電極の実装面側および側面側の前記下地層上にめっき層を形成する工程とを備えることを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
【請求項20】
前記酸化物層は、前記外部電極の下地層の上面側から側面側にかけて形成され、
前記素体の実装面側から前記外部電極の側面へはんだが濡れ上がったときに、前記酸化物層の上面よりも低い位置に保たれるように、前記酸化物層の厚みおよび前記側面側の位置が設定されることを特徴とする請求項19に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品、実装基板およびセラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実装基板上に実装されるセラミック電子部品の信頼性を向上させるため、セラミック電子部品を樹脂封止することがある。このとき、セラミック電子部品と樹脂との密着性が確保できないと、セラミック電子部品と樹脂との間に隙間が発生し、水分が侵入しやすくなる。このため、樹脂封止されたセラミック電子部品の信頼性が低下し、セラミック電子部品の特性が低下したり、セラミック電子部品が故障したりすることがある。
【0003】
特許文献1には、積層セラミック電子部品の素子本体の上面の一部に上側端子電極が端側電極部に連続して形成され、素子本体の下面には、端子電極が形成されていない構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された構成では、素子本体の下面に端子電極が形成されないようにするため、素子本体と剥離可能なダミーブロックが素子本体の下面に押し当てられた状態で端子電極が形成される。このとき、ダミーブロックが素子本体の下面に押し当てられることで、素子本体の下面が平坦化され、素子本体の下面と樹脂との密着性の確保が困難になることがあった。
そこで、本発明は、樹脂との密着性を向上させることが可能なセラミック電子部品、実装基板およびセラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、誘電体と内部電極が設けられた素体と、前記素体上の複数の面に形成され前記内部電極と接続し金属を含む下地層と、前記素体の下面側の前記下地層上に形成されためっき層とを備える外部電極と、前記素体の下面側と反対側の上面側に形成され、表面粗さがRa≧0.20μmである酸化物層とを備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、前記下地層は、前記素体の下面側から側面を介して上面側にかけて形成され、前記酸化物層は、前記素体の上面および前記下地層の上面を覆うように形成されている。
【0008】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、前記酸化物層は、前記素体の上面および前記下地層の上面から側面にかけて連続的に形成され、前記めっき層は、前記下地層の側面側で前記酸化物層と接するように、前記下地層の下面側から側面側にかけて形成されている。
【0009】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、前記酸化物層は、前記下地層の上面側から側面側かけて連続的に形成されるとともに、前記上面および前記側面にそれぞれ接しかつ互いに対向する前面側および後面側にかけて連続的に形成され、前記めっき層は、前記下地層の側面側、前面側および後面側で前記酸化物層と接するように、前記下地層の下面側から側面側、前面側および後面側にかけて連続的に形成されている。
【0010】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、前記めっき層は、前記酸化物層の上面になく、前記下地層の側面上において前記酸化物層の一部を覆っている。
【0011】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、前記下地層の側面上における前記酸化物層の端部の位置は、前記酸化物層の上面から10μm以上かつ前記外部電極の下面から酸化物層の上面までの厚みの1/2以下の範囲内にある。
【0012】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、前記外部電極の下面から酸化物層の上面までの厚みは、150μm以下である。
【0013】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、前記酸化物層の厚みは、1μm以上5μm以下である。
【0014】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、前記酸化物層は、前記誘電体と同一の主成分である。
【0015】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、前記酸化物層の材料は、酸化物セラミックである。
【0016】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、前記酸化物層は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよび酸化チタンのうち少なくとも1つから選択される。
【0017】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、前記下地層は、前記金属が混在された共材を備える。
【0018】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、前記共材は、酸化物セラミックである。
【0019】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品によれば、前記素体は、第1内部電極層と第2内部電極層が、前記誘電体を介して交互に積層された積層体を備え、前記外部電極は、前記積層体の互いに対向する側面に設けられた第1外部電極および第2外部電極とを備え、前記第1内部電極層は、前記第1外部電極に接続され、前記第2内部電極層は、前記第2外部電極に接続されている。
【0020】
また、本発明の一態様に係る実装基板によれば、上述したいずれか1つの態様のセラミック電子部品がはんだ層を介して実装された実装基板であって、前記はんだ層は、前記酸化物層の上面よりも低い位置に保たれた状態で前記外部電極の側面へ濡れ上がっている。
【0021】
また、本発明の一態様に係る実装基板によれば、前記実装基板上で前記セラミック電子部品を封止する樹脂を備え、前記樹脂と前記酸化物層との間に水分が侵入可能な隙間がない。
【0022】
また、本発明の一態様に係る実装基板によれば、前記実装基板上に形成されたはんだボールを備え、前記セラミック電子部品は、前記はんだボールの形成面側に実装される。
【0023】
また、本発明の一態様に係る実装基板によれば、前記はんだ層を介して実装されたセラミック電子部品は、前記はんだボールを介して互いに接続された第1実装基板と第2実装基板との間の隙間に収容される。
【0024】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品の製造方法によれば、誘電体と内部電極が設けられた素体を形成する工程と、外部電極の下地材料を前記素体の実装面側から側面にかけて塗布する工程と、前記素体の実装面側と反対側の面を覆うように前記素体上および前記下地材料上に酸化物材料を塗布する工程と、前記下地材料および酸化物材料を焼成し、前記素体の実装面側から側面にかけて前記外部電極の下地層を形成するとともに、前記素体上および前記下地層上に表面粗さがRa≧0.20μmである酸化物層を形成する工程と、前記外部電極の実装面側および側面側の前記下地層上にめっき層を形成する工程とを備える。
【0025】
また、本発明の一態様に係るセラミック電子部品の製造方法によれば、前記酸化物層は、前記外部電極の下地層の上面側から側面側にかけて形成され、前記素体の実装面側から前記外部電極の側面へはんだが濡れ上がったときに、前記酸化物層の上面よりも低い位置に保たれるように、前記酸化物層の厚みおよび前記側面側の位置が設定される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、セラミック電子部品と樹脂との密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの構成例を示す斜視図である。
【
図2A】
図1の積層セラミックコンデンサを長さ方向に切断した断面図である。
【
図2B】
図1の積層セラミックコンデンサを外部電極の位置で幅方向に切断した断面図である。
【
図2C】
図1の積層セラミックコンデンサを素体の位置で幅方向に切断した断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4A】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図4B】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図4C】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図4D】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図4E】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図4F】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図4G】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図4H】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図4I】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図4J】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサが実装された実装基板の構成例を示す断面図である。
【
図6A】
図5の積層セラミックコンデンサのチップ厚と実装後高さの関係を示す断面図である。
【
図6B】比較例に係る積層セラミックコンデンサの実装後高さをチップ厚と実装後高さの関係を示す断面図である。
【
図7A】第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサを長さ方向に切断した断面図である。
【
図7B】第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサを外部電極の位置で幅方向に切断した断面図である。
【
図7C】第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサを素体の位置で幅方向に切断した断面図である。
【
図8】第4実施形態に係るセラミック電子部品の構成例を示す斜視図である。
【
図9】
図6Aの積層セラミックコンデンサの実装後高さを
図6Bの積層セラミックコンデンサの実装後高さと比較して示す図である。
【
図10】
図6Aの積層セラミックコンデンサの酸化物の厚み、回り込み量および実装後高さの関係を示す図である。
【
図11】
図6Aの積層セラミックコンデンサの樹脂封止後の耐湿性を
図6Bの積層セラミックコンデンサの樹脂封止後の耐湿性と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。また、以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの構成例を示す斜視図、
図2Aは、
図1の積層セラミックコンデンサを長さ方向に切断した断面図、
図2Bは、
図1の積層セラミックコンデンサを外部電極の位置で幅方向に切断した断面図、
図2Cは、
図1の積層セラミックコンデンサを素体の位置で幅方向に切断した断面図である。なお、
図2Aは、
図1のA1-A1線に沿って切断した断面図、
図2Bは、
図1のB1-B1線に沿って切断した断面図、
図2Cは、
図1のC1-C1線に沿って切断した断面図である。また、本実施形態では、セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサを例にとった。
【0030】
図1および
図2Aから
図2Cにおいて、積層セラミックコンデンサ1Aは、素体2、外部電極6A、6Bおよび酸化物層8を備える。素体2は、積層体2A、下カバー層5Aおよび上カバー層5Bを備える。積層体2Aは、内部電極層3A、3Bおよび誘電体層4を備える。
【0031】
積層体2Aの下層には下カバー層5Aが設けられ、積層体2Aの上層には上カバー層5Bが設けられている。内部電極層3A、3Bは、誘電体層4を介して交互に積層されている。なお、
図1および
図2Aから
図2Cでは、内部電極層3A、3Bが合計で6層分だけ積層された例を示したが、内部電極層3A、3Bの積層数は、特に限定されない。このとき、素体2および積層体2Aの形状は、略直方体形状とすることができる。素体2は、素体2の稜線に沿って面取りされていてもよい。なお、以下の説明では、素体2の側面が互いに対向する方向を長さ方向DL、素体2の前後面が互いに対向する方向を幅方向DW、素体2の上下面が互いに対向する方向を積層方向(高さ方向)DSと言うことがある。
【0032】
外部電極6A、6Bは、長さ方向DLに互いに分離された状態で互いに対向するように素体2に形成される。このとき、外部電極6A、6Bは、素体2の下面側から側面側を介し、下面側と反対側の上面側に連続的に形成される。また、各外部電極6A、6Bは、素体2の下面側から側面側にかけて連続的に形成されるとともに、素体2の下面および側面にそれぞれ接しかつ互いに対向する前面側および後面側にかけて連続的に形成される。なお、素体2の実装面側には、各外部電極6A、6Bの下面が位置する。
【0033】
長さ方向DLにおいて、内部電極層3A、3Bは、積層体2A内で交互に異なる位置に配置されている。このとき、内部電極層3Aは、内部電極層3Bに対して素体2の一方の側面側に配置し、内部電極層3Bは、内部電極層3Aに対して素体2の他方の側面側に配置することができる。そして、内部電極層3Aの端部は、素体2の長さ方向DLの一方の側面側で誘電体層4の端部に引き出され、外部電極6Aに接続される。内部電極層3Bの端部は、素体2の長さ方向DLの他方の側面側で誘電体層4の端部に引き出され、外部電極6Bに接続される。
一方、素体2の幅方向DWにおいて、内部電極層3A、3Bの端部は、誘電体層4にて覆われている。幅方向DWでは、内部電極層3A、3Bの端部の位置は揃っていてもよい。
【0034】
なお、内部電極層3A、3Bおよび誘電体層4の積層方向DSの厚みはそれぞれ、0.05μm~5μmの範囲内とすることができ、例えば、0.3μmである。内部電極層3A、3Bの材料は、例えば、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Ag(銀)、Au(金)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ta(タンタル)およびW(タングステン)などの金属から選択することができ、これらの金属を含む合金であってもよい。
【0035】
誘電体層4の材料は、例えば、ペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とすることができる。なお、主成分は、50at%以上の割合で含まれていればよい。誘電体層4のセラミック材料は、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよび酸化チタンなどから選択することができる。
【0036】
下カバー層5Aおよび上カバー層5Bの材料は、例えば、セラミック材料を主成分とすることができる。このとき、下カバー層5Aおよび上カバー層5Bのセラミック材料の主成分は、誘電体層4のセラミック材料の主成分と同一であってもよい。
【0037】
各外部電極6A、6Bは、素体2上に形成された下地層7と、下地層7上に形成されためっき層9を備える。下地層7は、素体2の下面側から側面を介して上面側にかけて連続的に形成されている。さらに、下地層7は、素体2の下面側から前面側および後面側にかけて連続的に形成されてもよい。めっき層9は、下地層7の下面側から側面側の一部を覆うように連続的に形成されている。さらに、めっき層9は、下地層7の下面側から前面側の一部および後面側の一部を覆うように連続的に形成されてもよい。このとき、下地層7は、その下面側から側面側の下部、前面側の下部および後面側の下部にかけて、めっき層9で覆われる。また、下地層7は、その上面側から側面側の上部、前面側の上部および後面側の上部にかけて、めっき層9から露出される。なお、各外部電極6A、6Bの実装面側の厚みは、例えば、10~40μmである。
【0038】
下地層7の導電性材料として用いられる金属は、例えば、Cu、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)、Al(アルミニウム)、Ni、Pt、Pd、Ag、AuおよびSn(錫)から選択される少なくとも1つを含む金属または合金を主成分とすることができる。下地層7は、金属が混在された共材を含んでもよい。共材は、下地層7中に島状に混在することで素体2と下地層7との間の熱膨張率の差を低減し、下地層7にかかる応力を緩和することができる。共材は、例えば、誘電体層4の主成分であるセラミック成分である。下地層7は、ガラス成分を含んでいてもよい。ガラス成分は、下地層7に混在することで下地層7を緻密化することができる。このガラス成分は、例えば、Ba(バリウム)、Sr(ストロンチウム)、Ca(カルシウム)、Zn、Al、Si(ケイ素)またはB(ホウ素)などの酸化物である。
【0039】
下地層7は、素体2に含まれる金属成分を含んでいてもよい。この金属成分は、例えば、Mg(Ni、Cr、Sr、Al、Na、Feが微量含まれていてもよい)である。このとき、下地層7は、下地層7の導電性材料として用いられる金属と素体2に含まれる金属と酸素との化合物として、例えば、Mg、NiおよびOを含む化合物を含むことができる。
【0040】
めっき層9の材料は、例えば、Cu、Ni、Al、Zn、Snなどの金属またはこれらの2以上の合金を主成分とする。めっき層9は、単一金属成分のめっき層でもよく、互いに異なる金属成分の複数のめっき層でもよい。めっき層9は、例えば、下地層7上に形成されたCuめっき層と、Cuめっき層上に形成されたNiめっき層と、Niめっき層上に形成されたSnめっき層の3層構造とすることができる。Cuめっき層は、下地層7へのめっき層9の密着性を向上させることができる。Niめっき層は、はんだ付け時の各外部電極6A、6Bの耐熱性を向上させることができる。Snめっき層は、めっき層9に対するはんだの濡れ性を向上させることができる。めっき層9は、下地層7上の一部に形成されて内部電極層3A、3Bと導通する。また、めっき層9は、はんだを介して実装基板の端子と導通する。
【0041】
素体2の実装面側と反対側(素体2の上面側)の面には、酸化物層8が形成されている。このとき、酸化物層8の表面粗さは、Ra≧0.20μmとすることができる。酸化物層8の表面粗さは、素体2の表面粗さおよび下地層7の表面粗さより大きいことが好ましい。あるいは、素体2の表面および下地層7の表面に樹脂が接着したときのそれぞれの接触面積よりも、酸化物層8の表面に当該樹脂が接着したときの接触面積の方が大きくなるように、酸化物層8の表面粗さを設定するようにしてもよい。あるいは、素体2の表面および下地層7の表面に樹脂が接着したときのそれぞれの接着強度よりも、酸化物層8の表面に当該樹脂が接着したときの接着強度の方が大きくなるように、酸化物層8の表面粗さを設定するようにしてもよい。
【0042】
酸化物層8は、素体2の上面および下地層7の上面を覆うように連続的に形成されている。また、酸化物層8は、素体2の上面および下地層7の上面から側面にかけて連続的に形成される。このとき、めっき層9は、下地層7の側面側で酸化物層8と接するように、下地層7の下面側から側面側にかけて形成される。ここで、下地層7の側面上における酸化物層8の端部の位置は、酸化物層8の上面から10μm以上かつ、積層セラミックコンデンサ1Aの高さ(外部電極6A、6Bの下面から酸化物層8の上面までの厚み)の1/2以下の範囲内とすることができる。また、下地層7の側面上における酸化物層8の端部の位置において、下地層7の側面側の酸化物層8の一部は、めっき層9で覆われている。このとき、下地層7上の酸化物層8の先端部は、下地層7とめっき層9との間に楔状に食い込んでいてもよい。
【0043】
酸化物層8は、下地層7の側面側だけでなく、下地層7の上面側から前面側および後面側にかけて連続的に形成されてもよい。このとき、めっき層9は、下地層7上で酸化物層8と接するように、下地層7の下面側から側面側、前面側および後面側にかけて連続的に形成される。
【0044】
酸化物層8は、誘電体層4と同一の主成分であってもよい。例えば、酸化物層8の材料は、酸化物セラミックであってもよい。酸化物層8の厚みは、1μm以上5μm以下であるのが好ましい。
【0045】
なお、積層セラミックコンデンサ1Aの外形サイズは、一例として、長さ>幅>高さであってもよく、または長さ>幅=高さであってもよい。このとき、積層セラミックコンデンサ1Aの低背化を図るため、積層セラミックコンデンサ1Aの高さは、150μm以下であることが好ましい。積層セラミックコンデンサ1Aの高さは、外部電極6A、6Bの下面から酸化物層8の上面までの積層セラミックコンデンサ1Aの厚みに等しい。
【0046】
ここで、表面粗さがRa≧0.20μmの酸化物層8を素体2の上面側に形成することにより、積層セラミックコンデンサ1Aを樹脂封止したときの酸化物層8と樹脂との密着性を向上させることができる。このため、積層セラミックコンデンサ1Aと樹脂との間に水分が侵入可能な隙間ができるのを防止することができ、樹脂封止された積層セラミックコンデンサ1Aの信頼性を向上させることができる。
【0047】
また、積層セラミックコンデンサ1Aの高さを150μm以下とすることにより、積層セラミックコンデンサ1Aの高さを、はんだボールの径よりも小さくすることができる。このため、実装基板のはんだボールの形成面側に積層セラミックコンデンサ1Aを実装しつつ、そのはんだボールを介してマザーボート上に実装基板を搭載することができる。この結果、実装基板上に配置される半導体チップの裏面側に積層セラミックコンデンサ1Aを配置することができ、半導体チップに近接させて積層セラミックコンデンサ1Aを実装することが可能となることから、半導体チップに加わるノイズを効果的に除去することが可能となる。
【0048】
また、下地層7の上面から側面の上部にかけて酸化物層8を形成することにより、下地層7の上面および側面の上部にめっき層9が形成されるのを防止することができる。このため、積層セラミックコンデンサ1Aの実装時に、はんだがめっき層9を介して積層セラミックコンデンサ1Aの上面に這い上がるのを防止することが可能となり、積層セラミックコンデンサ1Aの実装時の高さの増大を防止することが可能となる。
【0049】
また、酸化物層8の厚みを1μm以上5μm以下とすることにより、積層セラミックコンデンサ1Aの高さの増大を抑制しつつ、酸化物層8の連続性を確保することが可能となる。このため、積層セラミックコンデンサ1Aの実装時に、はんだが酸化物層8の上面を超えて這い上がるのを防止することが可能となり、積層セラミックコンデンサ1Aの実装時の高さの増大を抑制することが可能となる。
【0050】
また、下地層7の側面上における酸化物層8の端部の位置を、積層セラミックコンデンサの高さの1/2以下の範囲内に設定することにより、積層セラミックコンデンサ1Aの実装時に、はんだ層で覆われない領域を制限することが可能となり、実装基板への外部電極6A、6Bの固着強度を向上させることが可能となる。
【0051】
また、下地層7の側面上における酸化物層8の端部の位置を、酸化物層8の上面から10μm以上離れた位置に設定することにより、積層セラミックコンデンサ1Aの実装時に、はんだが外部電極6A、6Bの側面に這い上がった場合においても、酸化物層8の上面を超えて突出するのを防止することが可能となり、積層セラミックコンデンサ1Aの実装時の高さの増大を抑制することが可能となる。
【0052】
また、酸化物層8は、誘電体層4と同一の主成分とすることにより、素体2、下地層7および酸化物層8が焼結にて作製される場合においても、酸化物層8にかかる応力を緩和することができ、素体2および下地層7に対する酸化物層8の密着性を向上させることができる。
【0053】
図3は、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャート、
図4Aから
図4Jは、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。なお、
図4Cから
図4Jでは、誘電体層4を介して内部電極層3A、3Bが交互に3層分だけ積層される場合を例にとった。
【0054】
図3のS1において、分散剤および成形助剤としての有機バインダおよび有機溶剤を誘電体材料粉末に加え、粉砕・混合して泥状のスラリを生成する。誘電体材料粉末は、例えば、セラミック粉末を含む。誘電体材料粉末は、添加物を含んでいてもよい。添加物は、例えば、Mg、Mn、V、Cr、Y、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Co、Ni、Li、B、Na、KまたはSiの酸化物もしくはガラスである。有機バインダは、例えば、ポリビニルブチラール樹脂またはポリビニルアセタール樹脂である。有機溶剤、例えば、エタノールまたはトルエンである。
【0055】
次に、
図3のS2および
図4Aに示すように、セラミック粉末を含むスラリをキャリアフィルム上にシート状に塗布して乾燥させたグリーンシート24を作製する。キャリアフィルムは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムである。スラリの塗布には、ドクターブレード法、ダイコータ法またはグラビアコータ法などを用いることができる。
【0056】
次に、
図3のS3および
図4Bに示すように、複数枚のグリーンシートのうち内部電極層3A、3Bを形成する層のグリーンシート24に内部電極用導電ペーストを所定のパターンとなるように塗布し、内部電極パターン23を形成する。このとき、1枚のグリーンシート24には、グリーンシート24の長手方向に分離された複数の内部電極パターン23を形成することができる。内部電極用導電ペーストは、内部電極層3A、3Bの材料として用いられる金属の粉末を含む。例えば、内部電極層3A、3Bの材料として用いられる金属がNiの場合、内部電極用導電ペーストは、Niの粉末を含む。また、内部電極用導電ペーストは、バインダと、溶剤と、必要に応じて助剤とを含む。内部電極用導電ペーストは、共材として、誘電体層4の主成分であるセラミック材料を含んでいてもよい。内部電極用導電ペーストの塗布には、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができる。
【0057】
次に、
図3のS4および
図4Cに示すように、内部電極パターン23が形成されたグリーンシート24と、内部電極パターンが形成されていない外層用のグリーンシートを所定の順序で複数枚数だけ積み重ねた積層ブロックを作製する。このとき、積層方向に隣接するグリーンシート24の内部電極パターン23A、23Bが、グリーンシート24の長手方向に交互にずらされるように積み重ねる。また、内部電極パターン23Aのみが積層方向に積み重ねられる部分と、内部電極パターン23A、23Bが積層方向に交互に積み重ねられる部分と、内部電極パターン23Bのみが積層方向に積み重ねられる部分とができるようにする。
【0058】
次に、
図3のS5および
図4Dに示すように、
図3のS4の成型工程で得られた積層ブロックをプレスし、グリーンシート24を圧着する。積層ブロックをプレスする方法として、例えば、積層ブロックを樹脂フィルムで挟み、静水圧プレスする方法などを用いることができる。
【0059】
次に、
図3のS6および
図4Eに示すように、プレスされた積層ブロックを切断し、直方体形状の素体に個片化する。積層ブロックの切断は、内部電極パターン23Aのみが積層方向に積み重ねられる部分と、内部電極パターン23Bのみが積層方向に積み重ねられる部分で行う。積層ブロックの切断には、例えば、ブレードダイシングなどの方法を用いることができる。
【0060】
このとき、
図4Fに示すように、個片化された素体2には、誘電体層4を介して交互に積層された内部電極層3A、3Bが形成される。内部電極層3Aは、素体2の一方の側面で誘電体層4の表面から引き出され、内部電極層3Bは、素体2の他方の側面で誘電体層4の表面から引き出される。
【0061】
次に、
図3のS7に示すように、
図3のS6で個片化された素体2に含まれるバインダを除去する。バインダの除去では、例えば、約350℃のN
2雰囲気中で素体2を加熱する。
【0062】
次に、
図3のS8および
図4Gに示すように、
図3のS7でバインダが除去された素体2の両側面と、各側面の周面の4つの面(上面、下面、前面および後面)に下地層用導電ペースト7´を塗布して乾燥させる。下地層用導電ペースト7´の塗布には、例えば、ディップ法を用いることができる。下地層用導電ペースト7´は、下地層7の導電性材料として用いられる金属の粉末またはフィラーを含む。例えば、下地層7の導電性材料として用いられる金属がNiの場合、下地層用導電ペースト7´は、Niの粉末またはフィラーを含む。また、下地層用導電ペースト7´は、共材として、例えば、誘電体層4の主成分であるセラミック成分を含む。例えば、下地層用導電ペースト7´には、共材として、チタン酸バリウムを主成分とする酸化物セラミックの粒子(D50粒子径で0.8μm~4μm)が混入される。また、下地層用導電ペースト7´は、バインダと、溶剤とを含む。
【0063】
次に、
図3のS9および
図4Hに示すように、下地層用導電ペースト7´の上面と素体2の上面が覆われるように酸化物ペースト8´を塗布して乾燥させる。このとき、下地層用導電ペースト7´の上面から側面、前面および後面にかけて酸化物ペースト8´を連続的に塗布するとともに、素体2の上面から前面および後面にかけて酸化物ペースト8´を連続的に塗布する。酸化物ペースト8´は、酸化物層8に用いられる酸化物の粉末またはフィラーを含む。例えば、酸化物ペースト8´は、誘電体層4の主成分であるセラミック成分を含む。例えば、酸化物ペースト8´には、チタン酸バリウムを主成分とする酸化物セラミックの粒子が混入される。酸化物ペースト8´に含まれる酸化物は、チタン酸バリウム以外にも、酸化シリコンまたは酸化アルミニウムなどの酸化物を主成分としてもよい。また、酸化物ペースト8´は、バインダと、溶剤とを含む。
【0064】
酸化物ペースト8´の塗布には、例えば、ディップ法を用いることができる。このとき、酸化物層8の上面から下地層7の側面への酸化物層8の回り込み量が、酸化物層8の上面から10μm以上かつ積層セラミックコンデンサ1Aの高さの1/2以下の範囲内になるように、酸化物ペースト8´を塗布するときの素体2の浸漬深さを調整する。
【0065】
また、酸化物ペースト8´の焼成後の酸化物層8の表面粗さがRa≧0.20μm、酸化物層8の厚みが1μm以上5μm以下になるように、酸化物ペースト8´に含まれる酸化物の含有量を調整する。なお、酸化物ペースト8´の焼成後の酸化物層8の表面粗さを調整するために、酸化物ペースト8´に含まれる酸化物の含有量だけでなく、酸化物ペースト8´に含まれる酸化物の粒径または形状を調整してもよい。また、酸化物ペースト8´の焼成後の酸化物層8の表面粗さを調整するために、酸化物ペースト8´の乾燥速度、乾燥温度および乾燥時間などを調整してもよい。
【0066】
次に、
図3のS9および
図4Hで酸化物ペースト8´が塗布された素体2および下地層用導電ペースト7´を焼成し、
図3のS10および
図4Iに示すように、内部電極層3A、3Bと誘電体層4を一体化するとともに、素体2に一体化された下地層7と、素体2および下地層7に一体化された酸化物層8を形成する。素体2、下地層用導電ペースト7´および酸化物ペースト8´の焼成は、例えば、焼成炉にて1000~1400℃で10分~2時間だけ行う。内部電極層3A、3BにNiまたはCuなどの卑金属を使用している場合は、内部電極層3A、3Bの酸化を防止するため、焼成炉内を還元雰囲気にして焼成することができる。なお、酸化物層8の表面粗さおよび厚みを調整するために、酸化物ペースト8´の焼成後に酸化物層8の表面を研磨してもよい。
【0067】
次に、
図3のS11および
図4Jに示すように、酸化物層8から露出されている下地層7上にめっき層9を形成する。めっき層9の形成では、例えば、Cuめっき、NiめっきおよびSnめっきを順次行うことができる。このとき、下地層7および酸化物層8が形成された素体2を、めっき液とともにバレルに収容し、バレルを回転させつつ通電することにより、めっき層9を形成することができる。このとき、下地層7の上面には酸化物層8があるので、めっき層9は形成されない。
【0068】
ここで、ディップ法にて酸化物ペースト8´を素体2および下地層7に塗布することにより、工程数の増大を抑制しつつ、上述した成膜条件を満たすように、酸化物層8の厚み、回り込み量および表面粗さRaを設定することができる。
【0069】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサが実装された実装基板の構成例を示す断面図である。
図5において、実装基板41の裏面側には、ランド電極42A、42B、44A、44Bが形成されている。積層セラミックコンデンサ1Aは、各外部電極6A、6Bのめっき層9にそれぞれ付着されたはんだ層43A、43Bを介してランド電極42A、42Bに接続される。このとき、各はんだ層43A、43Bは、酸化物層8の上面よりも低い位置に保たれた状態で各外部電極6A、6Bの側面へ濡れ上がる。実装基板41の裏面側のランド電極44A、44B上には、はんだボール47A、47Bが形成される。
【0070】
一方、実装基板41の表面側には、不図示の半導体チップが実装される。この半導体チップは、マイクロプロセッサであってもよいし、半導体メモリであってもよいし、FPGA(Field-Programmable Gate Array)であってもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit))であってもよい。
【0071】
実装基板45の裏面側には、ランド電極46A、46Bが形成されている。実装基板41、45は、はんだボール47A、47Bを介して互いに接続される。実装基板45は、実装基板41が実装されるマザーボードとして用いることができる。
【0072】
実装基板41、45の間は、はんだボール47A、47Bを介して一定の間隔に維持される。このとき、実装基板41、45の間には、積層セラミックコンデンサ1Aを封止する樹脂48が設けられる。この樹脂48は、例えば、エポキシ樹脂である。この樹脂48は、はんだボール47A、47Bを介して実装基板41、45が互いに接続された後、実装基板41、45の間に注入し、硬化させてもよい。このとき、樹脂48は、積層セラミックコンデンサ1A、はんだ層43A、43Bおよびはんだボール47A、47Bを覆い、酸化物層8に密着する。
【0073】
ここで、酸化物層8の表面粗さをRa≧0.20μmとすることにより、酸化物層8と樹脂48との密着性を向上させることができる。このため、積層セラミックコンデンサ1Aと樹脂48との間に水分が侵入可能な隙間ができるのを防止することができ、樹脂48で封止された積層セラミックコンデンサ1Aの信頼性を向上させることができる。
【0074】
また、実装基板41の裏面側に積層セラミックコンデンサ1Aを実装することにより、実装基板41の表面側に実装される半導体チップの裏面側に積層セラミックコンデンサ1Aを配置することができる。このため、実装基板41の表面側に実装される半導体チップに近接させて積層セラミックコンデンサ1Aを実装することが可能となり、半導体チップに加わるノイズを効果的に除去することが可能となる。
【0075】
また、積層セラミックコンデンサ1Aの高さを150μm以下とすることにより、はんだボール47A、47Bを介して互いに接続された実装基板41、45間の隙間に積層セラミックコンデンサ1Aを収容することができ、実装基板41の表面側に配置される半導体チップの裏面側に積層セラミックコンデンサ1Aを配置することができる。
【0076】
また、下地層7の上面から側面の上部にかけて酸化物層8を形成することにより、下地層7の上面および側面の上部にめっき層9が形成されるのを防止することができる。このため、はんだ層43A、43Bがめっき層9を介して積層セラミックコンデンサ1Aの上面に這い上がるのを防止することが可能となり、はんだボール47A、47Bを介して互いに接続された実装基板41、45間の隙間に積層セラミックコンデンサ1Aを実装することが可能となる。
【0077】
また、酸化物層8の厚みを1μm以上5μm以下とすることにより、はんだ層43A、43Bが酸化物層8の上面を超えて這い上がるのを防止することが可能となる。このため、積層セラミックコンデンサ1Aの実装時の高さの増大を抑制することが可能となり、はんだボール47A、47Bを介して互いに接続された実装基板41、45間の隙間に積層セラミックコンデンサ1Aを実装することが可能となる。
【0078】
また、下地層7の側面上における酸化物層8の端部の位置を、積層セラミックコンデンサ1Aの高さの1/2以下の範囲内に設定することにより、外部電極6A、6Bの側面側において、はんだ層43A、43Bで覆われない領域を制限することが可能となり、実装基板41への外部電極6A、6Bの固着強度を向上させることが可能となる。
【0079】
また、下地層7の側面上における酸化物層8の端部の位置を、酸化物層8の上面から10μm以上離れた位置に設定することにより、はんだ層43A、43Bが外部電極6A、6Bの側面に這い上がった場合においても、酸化物層8の上面を超えて突出するのを防止することが可能となり、はんだボール47A、47Bを介して互いに接続された実装基板41、45間の隙間に積層セラミックコンデンサ1Aを実装することが可能となる。
【0080】
図6Aは、
図5の積層セラミックコンデンサのチップ厚と実装後高さの関係を示す断面図、
図6Bは、比較例に係る積層セラミックコンデンサの実装後高さをチップ厚と実装後高さの関係を示す断面図である。
【0081】
図6Aにおいて、実装基板31の裏面側には、ランド電極32A、32Bが形成されている。積層セラミックコンデンサ1Aは、各外部電極6A、6Bのめっき層9にそれぞれ付着されたはんだ層33A、33Bを介してランド電極32A、32Bに接続される。ここで、積層セラミックコンデンサ1Aの実装後高さHA1は、ランド電極32Aの表面から酸化物層8の上面までの垂直方向の距離である。積層セラミックコンデンサ1Aの厚みHA2は、外部電極6Aの下面から酸化物層8の上面までの垂直方向の距離である。
【0082】
一方、
図6Bにおいて、積層セラミックコンデンサ1Bは、素体2および外部電極36A、36Bを備える。各外部電極36A、36Bは、素体2上に形成された下地層37と、下地層37上に形成されためっき層39を備える。この外部電極36A、36Bが
図6Aの外部電極6A、6Bと異なる点は、外部電極6A、6Bでは、下地層7が素体2上にも形成されているが、外部電極36A、36Bでは、下地層37が素体2上に形成されてない点である。また、下地層37は、素体2の側面全体を覆うように形成される。このとき、めっき層39は、下地層37の下面側から側面全体に渡って連続的に形成される。
【0083】
積層セラミックコンデンサ1Bは、各外部電極36A、36Bのめっき層39にそれぞれ付着されたはんだ層33A、33Bを介してランド電極32A、32Bに接続される。このとき、めっき層39は、下地層37側面全体に形成されているため、はんだ層33A、33Bは、下地層37側面全体に濡れ上がり、積層セラミックコンデンサ1Bの上面を超えて突出する。このため、積層セラミックコンデンサ1Bの実装後高さHB1は、ランド電極32Aの表面からはんだ層33A、33Bの最上部までの垂直方向の距離となる。一方、積層セラミックコンデンサ1Bでは、素体2上および各外部電極36A、36B上に酸化物層8がない。このため、積層セラミックコンデンサ1Bの厚みHB2は、外部電極36Aの下面から素体2の上面までの垂直方向の距離となる。
【0084】
図5の実装基板41上に
図6Bの積層セラミックコンデンサ1Bを実装した場合、樹脂48は、積層セラミックコンデンサ1Bの各外部電極36A、36Bの上面および素体2の上面に密着する。このとき、積層セラミックコンデンサ1Bと樹脂48との間に水分が侵入可能な隙間ができる恐れがあり、樹脂48で封止された積層セラミックコンデンサ1Bの信頼性の低下を招く。また、はんだ層33A、33Bは、積層セラミックコンデンサ1Bの上面を超えて突出するため、HB1>HA1となり、はんだボール47A、47Bを介して互いに接続された実装基板41、45間の隙間に積層セラミックコンデンサ1Bを実装できなくなる恐れがある。
【0085】
(第3実施形態)
図7Aは、第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサを長さ方向に切断した断面図、
図7Bは、第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサを外部電極の位置で幅方向に切断した断面図、
図7Cは、第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサを素体の位置で幅方向に切断した断面図である。
【0086】
図7Aから
図7Cにおいて、積層セラミックコンデンサ1Cは、素体2、外部電極56A、56Bおよび酸化物層58を備える。各外部電極56A、56Bは、素体2上に形成された下地層57と、下地層57上に形成されためっき層59を備える。
【0087】
この外部電極56A、56Bが
図2Aの外部電極6A、6Bと異なる点は、外部電極6A、6Bでは、下地層7が素体2上にも形成されているが、外部電極56A、56Bでは、下地層57が素体2上に形成されてない点である。このとき、酸化物層58は、素体2の上面全体に形成される。
下地層57、めっき層59および酸化物層58について、これ以外の点は、
図2Aの下地層7、めっき層9および酸化物層8と同様に構成することができる。
【0088】
ここで、各外部電極56A、56Bの上面側の下地層57を素体2上に形成しないようにすることで、各外部電極56A、56Bの上面側の下地層57の厚み分だけ積層セラミックコンデンサ1Cの高さを低減することができ、積層セラミックコンデンサ1Cの低背化を図ることができる。
【0089】
(第4実施形態)
図8は、第4実施形態に係るセラミック電子部品の構成例を示す斜視図である。なお、
図8では、セラミック電子部品としてチップインダクタを例にとった。
図8において、チップインダクタ61は、素体62、外部電極66A、66Bおよび酸化物層68を備える。素体62は、コイルパターン63、内部電極層63A、63Bおよび磁性体材料64を備える。磁性体材料64は、内部電極層63A、63Bを絶縁する誘電体としても用いられる。素体62の形状は、略直方体形状とすることができる。外部電極66A、66Bは、互いに分離された状態で素体62の互いに対向する側面に位置する。各外部電極66A、66Bは、素体62の各側面から前後面および上下面にかけて形成されている。
【0090】
コイルパターン63および内部電極層63A、63Bは、磁性体材料64にて覆われている。ただし、内部電極層63Aの端部は、素体62の一方の側面側で磁性体材料64から引き出され、外部電極66Aに接続される。内部電極層63Bの端部は、素体62の他方の側面側で磁性体材料64から引き出され、外部電極66Bに接続される。
【0091】
コイルパターン63および内部電極層63A、63Bの材料は、例えば、Cu、Ni、Ti、Ag、Au、Pt、Pd、TaおよびWなどの金属から選択することができ、これらの金属を含む合金であってもよい。磁性体材料64は、例えば、フェライトである。
【0092】
各外部電極66A、66Bは、下地層67とめっき層69を備える。下地層67は、素体62の下面側(実装面側)、上面側、側面側、前面側および後面側に連続的に形成される。めっき層69は、下地層67の下面側、側面側の下部、前面側の下部および後面側の下部に連続的に形成される。下地層67は、金属が混在された共材を含んでもよい。共材は、例えば、磁性体材料64の主成分であるフェライト成分である。
【0093】
素体62の実装面側と反対側(素体62の上面側)の面には、酸化物層68が形成されている。このとき、酸化物層68の表面粗さは、Ra≧0.20μmとすることができる。酸化物層68は、素体62の上面および下地層67の上面から側面、前面および後面にかけて連続的に形成される。このとき、めっき層69は、下地層67の側面側で酸化物層68と接するように、下地層67の下面側から側面側にかけて形成される。ここで、下地層67の側面上における酸化物層68の端部の位置は、酸化物層68の上面から10μm以上かつチップインダクタ61の高さ(外部電極66A、66Bの下面から酸化物層68の上面までの厚み)の1/2以下の範囲内とすることができる。
【0094】
酸化物層68は、磁性体材料64と同一の組成であってもよい。例えば、酸化物層68の材料は、フェライトである。酸化物層68の材料は、酸化鉄または酸化クロムであってもよい。酸化物層68の厚みは、1μm以上5μm以下であるのが好ましい。
【0095】
なお、チップインダクタ61の外形サイズは、一例として、長さ>幅>高さであってもよく、または長さ>幅=高さであってもよい。このとき、チップインダクタ61の低背化を図るため、チップインダクタ61の高さは、150μm以下であることが好ましい。
【0096】
ここで、表面粗さがRa≧0.20μmの酸化物層68を素体62の上面側に形成することにより、チップインダクタ61を樹脂封止したときの酸化物層68と樹脂との密着性を向上させることができる。このため、チップインダクタ61と樹脂との間に水分が侵入可能な隙間ができるのを防止することができ、樹脂封止されたチップインダクタ61の信頼性を向上させることができる。
【0097】
(実施例)
以下、
図6Aの積層セラミックコンデンサ1Aの実施例について説明する。この実施例では、JIS規格の042形状の積層セラミックコンデンサ1Aを作製した場合を示す。
高誘電体材料(例えば、チタン酸バリウム)を用いて1umのグリーンシートを作製した。次に、このグリーンシートに印刷法などで内部電極パターンを形成し、内部電極パターンが形成されたグリーンシートとカバーシートを所定の枚数だけ積層して積層ブロックを得た。このときのグリーンシート厚と積層枚数は、下地層7の厚み、めっき層9の厚みおよび焼成時の収縮を考慮して、積層セラミックコンデンサ1Aの厚みが70umとなるように設計した。この積層ブロックを所定の位置で切断することで素体を作製し、ディップ法にて素体2の長さ方向の両端に下地層用導電ペーストを塗布した。素体2の長さ方向の両端は、素体2の側面を含み、その周回面(素体2の側面に対して垂直方向に連続する4つの面)を含んでもよい。
【0098】
次に、下地層用導電ペーストが塗布された素体2の高さ方向の片面側(素体2の上面側)に、チタン酸バリウム、バインダおよび溶剤を含む酸化物ペーストをディップ法にて塗布した。この際、素体2の端面側の下地層用導電ペースト上への酸化物ペーストの回り込み量が、積層セラミックコンデンサ1Aの上面より30umとなるように、素体のディップ時の浸漬深さを調整した。本実施例では、酸化物ペーストの回り込み量を30umとしたが、10~35um(積層セラミックコンデンサ1Aの厚み=70umの1/2)の範囲内であればよい。また、酸化物ペーストは、焼成後に酸化物層8の厚みが5um以下かつ表面粗さRaが0.20um以上となるよう、チタン酸バリウムの含有量が20~70%となるように調整した。
【0099】
下地層用導電ペーストおよび酸化物ペーストが塗布された素体2を1000~1400℃で焼成して焼結体を作製し、この焼結体を電気メッキすることにより、積層セラミックコンデンサ1Aを作製した。その後、半田ペーストを介して積層セラミックコンデンサ1Aを実装基板31上に実装した。
【0100】
積層セラミックコンデンサ1Aが実装された実装基板31について、実装後高さを計測した。また、実装基板31上に実装された積層セラミックコンデンサ1Aを樹脂封止し、耐湿性を確認した。比較例として、
図6Bの積層セラミックコンデンサ1Bを用いた。ここで、積層セラミックコンデンサ1A、1Bの外形サイズは、長さ400μm、幅200μm、外部電極高さ70μmとし、内部電極層3A、3Bの積層数は12とした。
【0101】
図9は、
図6Aの積層セラミックコンデンサ(実施例)の実装後高さを
図6Bの積層セラミックコンデンサ(比較例)の実装後高さと比較して示す図である。なお、積層セラミックコンデンサ1Aにおいて、酸化物層8の厚みは5μm、下地層7の側面への酸化物層8の回り込み量は15μmとした。実施例および比較例について、サンプル数は77個とした。
【0102】
図9において、
図6Bの積層セラミックコンデンサ1Bでは、実装後高さHB1は、80~90μmの範囲にあり、実装後高さHB1の平均値は、87μmだった。一方、
図6Aの積層セラミックコンデンサ1Aでは、実装後高さHA1は、70~80μmの範囲にあり、実装後高さHA1の平均値は、77μmだった。以上の結果より、積層セラミックコンデンサ1Bの実装後高さHB1に比べて、積層セラミックコンデンサ1Aの実装後高さHA1を低くすることができる。
【0103】
図10は、
図6Aの積層セラミックコンデンサの酸化物の厚み、回り込み量および実装後高さの関係を示す図である。なお、実施例1~12は、
図6Aの積層セラミックコンデンサ1Aにおいて、積層セラミックコンデンサ1Aの厚み、酸化物層8の厚みおよび回り込み量を変化させた時の実装後高さを計測した。積層セラミックコンデンサ1Aの外部電極高さは、酸化物層8の厚みを除いた積層セラミックコンデンサ1Aの高さである。比較例1は、
図6Bの積層セラミックコンデンサ1Bの実装後高さを計測した。比較例1では、酸化物層8の厚みは0である。
【0104】
図10において、チップ厚は、(外部電極高さ)+(酸化物層8の厚み)である。また、実装後高さは、(チップ厚さ)+(ランド電極の上面から外部電極の下面までのはんだ層の厚み)+(外部電極の上面からのはんだ層の突出量)である。
【0105】
積層セラミックコンデンサ1Aにおいて、酸化物層8の回り込み量が15μmの場合、酸化物層8の厚みが0.5μm以上であれば、外部電極6A、6Bの上面からのはんだ層33A、33Bの突出は発生しない。ただし、酸化物層8の厚みが0.5μmの場合、酸化物層8が不連続となり、封止樹脂との密着性が低下する。このため、酸化物層8の厚みは、1μm以上であることが好ましい。一方、酸化物層8の厚みを大きくすると、積層セラミックコンデンサ1Aの実装後高さが増大する。このため、積層セラミックコンデンサ1Aの実装後高さの増大を抑制するには、酸化物層8の厚みは薄い方が望ましく、酸化物層8の厚みは、5μm以下であることが好ましい。
【0106】
また、酸化物層8の厚みを5μmとした場合、酸化物層8の回り込み量が10μm以上では、積層セラミックコンデンサ1Aの上面からのはんだ層33A、33Bの突出は発生しない。このため、酸化物層8の回り込み量は10μm以上が好ましい。ただし、酸化物層8の回り込み量が増大すると、各外部電極6A、6Bの側面上でのはんだ層33A、33Bの濡れ上がりが減少し、実装基板31への外部電極6A、6Bの固着強度が低下する。このため、酸化物層8の回り込み量は、積層セラミックコンデンサ1Aの高さの1/2以下の範囲内に設定することが好ましい。
【0107】
図11は、
図6Aの積層セラミックコンデンサの樹脂封止後の耐湿性を
図6Bの積層セラミックコンデンサの樹脂封止後の耐湿性と比較して示す図である。耐湿試験は、比較例A(Ra=0.13μm)、比較例B(Ra=0.17μm)、実施例C(Ra=0.21μm)および実施例D(Ra=0.31μm)の4種類のサンプルについて実施した。各比較例A、Bおよび各実施例C、Dにおいて、酸化物層8の厚みは5μm、下地層7の側面への酸化物層8の回り込み量は15μmとした。サンプル数はそれぞれ77個とした。耐湿試験では、85℃、85%の環境下でDC10Vを外部電極間に印加し、100hr経過した後にIR(Insulation Resistance)を測定して、IRが100MΩ以下のサンプルを故障と判定した。
【0108】
図11において、酸化物層8の表面粗さがRa<0.20μmの場合、故障が発生したサンプルが見られた。酸化物層8の表面粗さがRa≧0.20μmの場合、故障が発生したサンプルはなかった。このため、酸化物層8の表面粗さをRa≧0.20μmとすることにより、積層セラミックコンデンサの耐湿性を向上できることが確認できた。
【符号の説明】
【0109】
1A 積層セラミックコンデンサ
2 素体
2A 積層体
3A、3B 内部電極層
4 誘電体層
5A、5B カバー層
6A、6B 外部電極
7 下地層
8 酸化物層
9 めっき層