(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142215
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ、実装基板および積層セラミックコンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
H01G4/30 513
H01G4/30 201C
H01G4/30 201F
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042308
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】小和瀬 裕介
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC02
5E001AC03
5E001AH03
5E082AB03
5E082BC39
5E082EE05
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG26
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】積層セラミックコンデンサの低背化を図りつつ、内部電極の積層数を増大させる。
【解決手段】一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、誘電体層を介して内部電極層が積層された積層体を有し、前記積層体の積層の高さが前記内部電極層の幅より大きい素体と、前記素体の面上に形成され、前記内部電極層に交互に接続される一対の外部電極とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層を介して内部電極層が積層された積層体を有し、前記積層体の積層の高さが前記内部電極層の幅より大きい素体と、
前記素体の面上に形成され、前記内部電極層に交互に接続される一対の外部電極とを備えることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記内部電極層の長さは前記内部電極層の幅より大きいことを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記内部電極層の長さは前記内部電極層の幅の2倍より大きいことを特徴とする請求項2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記内部電極層の長さは前記積層体の積層の高さより大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記内部電極層の幅方向の端部の厚みは、前記内部電極層の幅方向の中央部の厚みの85%以上115%以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記内部電極層の厚みの平均値は1μm以下、前記内部電極層の厚みは0.05μm以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記内部電極層の厚みの平均値は0.5μm以下、前記内部電極層の厚みは0.05μm以上であることを特徴とする請求項6に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
前記内部電極層の幅は30μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項9】
前記内部電極層の幅は30μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項10】
前記内部電極層は、堆積膜であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項11】
前記誘電体層は、セラミック成分を含む塗布膜の焼成体であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項12】
前記内部電極層は、前記素体の対向する一対の端面に交互に引き出され、前記一対の外部電極は、前記一対の端面と前記一対の端面に垂直な4つの面にそれぞれ連続して形成されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項13】
前記内部電極層は、前記素体の対向する一対の端面に引き出され、前記一対の外部電極は、前記一対の端面と前記一対の端面に垂直な3つの面にそれぞれ連続して形成されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項14】
前記一対の外部電極は、前記内部電極層の幅方向に対向する前記素体の一対の面のうち一方に面に形成され、他方の面に形成されないことを特徴とする請求項13に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項15】
前記内部電極層は、前記内部電極層の幅方向に対向する前記素体の一対の面のうち一方に面にのみ引き出され、前記一対の外部電極は、前記内部電極層が引き出された面に離間して形成されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項16】
前記内部電極層の引き出し位置は、前記内部電極層の長さ方向に交互に離間した位置に設定されることを特徴とする請求項15に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサがはんだ層を介して実装された実装基板であって、
前記積層セラミックコンデンサの内部電極層は、前記実装基板の水平方向に積層されていることを特徴とする実装基板。
【請求項18】
誘電体層を介して内部電極層が積層され、前記内部電極層の積層体の高さが前記内部電極層の幅より大きい素体を形成する工程と、
前記内部電極層が引き出された前記素体の端面に外部電極を形成する工程とを備えることを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項19】
前記内部電極層は、セラミック成分を含まない堆積膜で構成されることを特徴とする請求項18に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ、実装基板および積層セラミックコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化および高機能化に伴って、実装基板に実装される電子部品の実装密度が増大している。このとき、IC(Integrated Circuit)チップなどの実装面側の実装面積を減少させるため、積層セラミックコンデンサを低背化し、ICチップの実装面側の反対面側に実装する方法(LSC(land-side capacitor))が提案されている。
【0003】
積層セラミックコンデンサを低背化するために、素体を薄くすると、内部電極の積層数が限られるため、高容量化には限界がある。特許文献1、2には、実装基板の水平方向に内部電極が積層された積層セラミックコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6816817号公報
【特許文献2】特開2015-201612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実装基板の水平方向に内部電極が積層された構成では、積層セラミックコンデンサを低背化すると、内部電極の幅が小さくなり、容量の低下を招く。
そこで、本発明は、低背化を図りつつ、内部電極の積層数を増大させることが可能な積層セラミックコンデンサ、実装基板および積層セラミックコンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、誘電体層を介して内部電極層が積層された積層体を有し、前記積層体の積層の高さが前記内部電極層の幅より大きい素体と、前記素体の面上に形成され、前記内部電極層に交互に接続される一対の外部電極とを備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記内部電極層の長さは前記内部電極層の幅より大きい。
【0008】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記内部電極層の長さは前記内部電極層の幅の2倍より大きい。
【0009】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記内部電極層の長さは前記積層体の積層の高さより大きい。
【0010】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記内部電極層の幅方向の端部の厚みは、前記内部電極層の幅方向の中央部の厚みの85%以上115%以下の範囲内にある。
【0011】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記内部電極層の厚みの平均値は1μm以下、前記内部電極層の厚みは0.05μm以上である。
【0012】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記内部電極層の厚みの平均値は0.5μm以下、前記内部電極層の厚みは0.05μm以上である。
【0013】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記内部電極層の幅は30μm以上500μm以下である。
【0014】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記内部電極層の幅は30μm以上200μm以下である。
【0015】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記内部電極層は、堆積膜である。
【0016】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記誘電体層は、セラミック成分を含む塗布膜の焼成体である。
【0017】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記内部電極層は、前記素体の対向する一対の端面に交互に引き出され、前記一対の外部電極は、前記一対の端面と前記一対の端面に垂直な4つの面にそれぞれ連続して形成される。
【0018】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記内部電極層は、前記素体の対向する一対の端面に引き出され、前記一対の外部電極は、前記一対の端面と前記一対の端面に垂直な3つの面にそれぞれ連続して形成される。
【0019】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記一対の外部電極は、前記内部電極層の幅方向に対向する前記素体の一対の面のうち一方に面に形成され、他方の面に形成されない。
【0020】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記内部電極層は、前記内部電極層の幅方向に対向する前記素体の一対の面のうち一方に面にのみ引き出され、前記一対の外部電極は、前記内部電極層が引き出された面に離間して形成される。
【0021】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサによれば、前記内部電極層の引き出し位置は、前記内部電極層の長さ方向に交互に離間した位置に設定される。
【0022】
また、本発明の一態様に係る実装基板によれば、上述したいずれかの積層セラミックコンデンサがはんだ層を介して実装された実装基板であって、前記積層セラミックコンデンサの内部電極層は、前記実装基板の水平方向に積層されている。
【0023】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサの製造方法によれば、誘電体層を介して内部電極層が積層され、前記内部電極層の積層体の高さが前記内部電極層の幅より大きい素体を形成する工程と、前記内部電極層が引き出された前記素体の端面に外部電極を形成する工程とを備える。
【0024】
また、本発明の一態様に係る積層セラミックコンデンサの製造方法によれば、前記内部電極層は、セラミック成分を含まない堆積膜で構成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、積層セラミックコンデンサの低背化を図りつつ、内部電極の積層数を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの構成例を示す斜視図である。
【
図2A】
図1の積層セラミックコンデンサを第1内部電極の位置で長さ方向に切断した断面図である。
【
図2B】
図1の積層セラミックコンデンサを第2内部電極の位置で長さ方向に切断した断面図である。
【
図2C】
図1の積層セラミックコンデンサを素体の位置で幅方向に切断した断面図である。
【
図2D】
図1の積層セラミックコンデンサにおいて内部電極が幅方向にドーム状である場合の素体の位置で幅方向に切断した断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4A】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す斜視図である。
【
図4B】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す斜視図である。
【
図4C】比較例に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す斜視図である。
【
図5A】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図5B】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図5C】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図5D】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図5E】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図5F】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図5G】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図5H】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサの構成例を示す斜視図である。
【
図7】第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサの構成例を示す斜視図である。
【
図8A】第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサを第1内部電極の位置で長さ方向に切断した断面図である。
【
図8B】第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサを第2内部電極の位置で長さ方向に切断した断面図である。
【
図8C】第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサを素体の位置で幅方向に切断した断面図である。
【
図9】第5実施形態に係る積層セラミックコンデンサが実装された実装基板の構成例を示す断面図である。
【
図10】実施例に係る積層セラミックコンデンサの高さおよび容量を比較例と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。また、以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの構成例を示す斜視図、
図2Aは、
図1の積層セラミックコンデンサを第1内部電極の位置で長さ方向に切断した断面図、
図2Bは、
図1の積層セラミックコンデンサを第2内部電極の位置で長さ方向に切断した断面図、
図2Cは、
図1の積層セラミックコンデンサを素体の位置で幅方向に切断した断面図、
図2Dは、
図1の積層セラミックコンデンサにおいて内部電極が幅方向にドーム状である場合の素体の位置で幅方向に切断した断面図である。なお、
図2Aは、
図1のA1-A1線に沿って切断した断面図、
図2Bは、
図1のB1-B1線に沿って切断した断面図、
図2Cは、
図1のC1-C1線に沿って切断した断面図である。
【0029】
図1および
図2Aから
図2Cにおいて、積層セラミックコンデンサ1Aは、素体2および外部電極6A、6Bを備える。素体2は、積層体2Aおよびカバー層5A、5Bを備える。積層体2Aは、内部電極層3A、3Bおよび誘電体層4を備える。カバー層5A、5Bは、積層体2Aを積層方向に挟むように位置する。
【0030】
内部電極層3A、3Bは、誘電体層4を介して交互に素体2の対向する端面MA、MBに引き出されて積層されている。
図1および
図2Aから
図2Cでは、内部電極層3A、3Bが合計で11層分だけ積層された例を示したが、内部電極層3A、3Bの積層数は、特に限定されない。
【0031】
なお、以下の説明では、素体2の端面MA、MBの法線方向を長さ方向DL、素体2の端面MA、MBの法線方向に垂直かつ内部電極層3A、3Bに垂直な方向(内部電極層3A、3Bの積層方向)を幅方向DW、素体2の端面MA、MBの法線方向に垂直かつ内部電極層3A、3Bに水平な方向(内部電極層3A、3Bの幅方向)を高さ方向(または素体2の厚み方向)DHと言うことがある。このとき、内部電極層3A、3Bは、誘電体層4を介して幅方向DWに積層される。また、素体2の端面MA、MBは、長さ方向DLに対向する。また、カバー層5A、5Bは、素体2の幅方向DWに対向する。素体2は、素体2の稜線に沿って面取りされてもよい。
【0032】
なお、積層セラミックコンデンサ1Aは実装基板上に実装され、その実装基板上に実装される半導体チップに加わるノイズの除去などに使用される。このとき、積層セラミックコンデンサ1Aの実装面の垂直方向に対向する1対の面を上面および下面と言うことがある。また、積層セラミックコンデンサ1Aの実装面の水平方向に対向する面のうち、内部電極層3A、3Bが引き出されていない面を1対の側面と言うことがある。
【0033】
外部電極6A、6Bは、素体2の長さ方向DLに互いに分離された状態で互いに対向するように素体2に形成される。このとき、各外部電極6A、6Bは、素体2の各端面MA、MBから、端面MA、MBに垂直な4つの面にかけて連続的に形成することができる。
【0034】
内部電極層3A、3Bは、誘電体層4を介して素体2の幅方向DWに交互に積層されている。このとき、各内部電極層3A、3Bは、素体2の高さ方向DHに直立した状態で素体2内に位置することができる。また、長さ方向DLにおいて、内部電極層3A、3Bは、積層体2A内で異なる位置に交互に配置されている。例えば、内部電極層3Aは、内部電極層3Bに対して素体2の一方の端面MA側に配置し、内部電極層3Bは、内部電極層3Aに対して素体2の他方の端面MB側に配置することができる。そして、内部電極層3Aの端部は、素体2の長さ方向DLの一方の端面MA側で誘電体層4の端部に引き出され、外部電極6Aに接続される。内部電極層3Bの端部は、素体2の長さ方向DLの他方の端面MB側で誘電体層4の端部に引き出され、外部電極6Bに接続される。
一方、素体2の高さ方向DHにおいて、内部電極層3A、3Bの端部は、誘電体層4にて覆われている。素体2の高さ方向DHでは、内部電極層3A、3Bの端部の位置は揃っていてもよい。
【0035】
ここで、積層体2Aの積層の高さTAは、各内部電極層3A、3Bの幅WAより大きい。なお、積層体2Aの積層方向は、素体2の幅方向DWである。各内部電極層3A、3Bの幅方向は、素体2の高さ方向DHである。このとき、積層体2Aの積層の高さTAを増大させることにより、素体2の高さを増大させることなく、内部電極層3A、3Bの積層数を増大させることができる。このため、積層セラミックコンデンサ1Aの低背化を図りつつ、容量を増大させることができる。
【0036】
また、各内部電極層3A、3Bの長さLAは、各内部電極層3A、3Bの幅WAより大きくすることができる。このとき、各内部電極層3A、3Bの長さLAは、各内部電極層3A、3Bの幅WAの2倍より大きいのが好ましい。なお、各内部電極層3A、3Bの長さ方向は、素体2の長さ方向DLである。これにより、素体2の高さを増大させることなく、積層セラミックコンデンサ1Aの容量を増大させることが可能となるとともに、低背化を図ることができる。
【0037】
また、各内部電極層3A、3Bの長さLAは、積層体2Aの積層の高さTAより大きくすることができる。これにより、素体2の高さを増大させることなく、積層セラミックコンデンサ1Aの容量を増大させることが可能となるとともに、低背化を図ることができる。
【0038】
なお、各内部電極層3A、3Bの幅WAは、30μm以上500μm以下であるのが好ましく、さらに好ましくは30μm以上200μm以下であるのがよい。各内部電極層3A、3Bの長さLAは1000μm以上であるのが好ましい。内部電極層3A、3Bの積層数は450以上であるのが好ましい。
【0039】
また、各内部電極層3A、3Bの幅方向の端部の厚みは、各内部電極層3A、3Bの幅方向の中央部の厚みの85%以上115%以下の範囲内にあるのが好ましい。ここで、各内部電極層3A、3Bは、スパッタ膜または蒸着膜などの堆積膜で構成することができる。このとき、各内部電極層3A、3Bには、セラミック成分を含まないようにすることができる。
【0040】
ここで、
図2Dに示すように、金属の粉末を含む塗布膜の焼成で各内部電極層3A´、3B´を形成するものとする。この場合、
図2Cの素体2の代わりに
図2Dの素体2´が形成される。素体2´は、積層体2Aの代わりに積層体2A´を備える。積層体2A´では、誘電体層4を介して内部電極層3A´、3B´が交互に積層される。ここで、塗布膜の焼成で各内部電極層3A´、3B´を形成した場合、各内部電極層3A´、3B´の幅WAが小さくなると、各内部電極層3A´、3B´が幅方向にドーム状になる。このとき、内部電極層3A´、3B´間の絶縁性が低下しないようにするため、積層体2A´では、積層体2Aに比べて単位長さ当たりの内部電極層3A´、3B´の積層数が減少するとともに、内部電極層3A´、3B´の幅方向の端部で電極間距離が増大することから、容量の低下を招く。
【0041】
これに対して、
図2Cの積層体2Aでは、各内部電極層3A、3Bの幅方向の端部の厚みは、各内部電極層3A、3Bの幅方向の中央部の厚みの85%以上115%以下の範囲内にある。このため、
図2Cの積層体2Aでは、
図2Dの積層体2A´に比べて単位長さ当たりの内部電極層3A、3Bの積層数を増大させることが可能となるとともに、内部電極層3A、3Bの幅方向の端部で電極間距離の増大を抑制することができ、容量の低下を抑制することができる。
【0042】
なお、各内部電極層3A、3Bの厚みの平均値は1μm以下、各内部電極層3A、3Bの厚みは0.05μm以上であるであるのが好ましく、さらに好ましくは各内部電極層3A、3Bの厚みの平均値は0.5μm以下、各内部電極層3A、3Bの厚みは0.05μm以上であるのがよい。
【0043】
内部電極層3A、3Bの主成分は、例えば、Cu(銅)、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)、Al(アルミニウム)、Sn(スズ)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Ag(銀)、Au(金)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ta(タンタル)およびW(タングステン)などの金属から選択することができ、これらの金属を含む合金であってもよい。
【0044】
誘電体層4の厚みは0.05μm~5μmの範囲内とすることができる。誘電体層4の材料は、例えば、ペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とすることができる。なお、主成分は、50at%以上の割合で含まれていればよい。誘電体層4のセラミック材料は、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよび酸化チタンなどから選択することができる。
【0045】
カバー層5A、5Bの材料は、例えば、セラミック材料を主成分とすることができる。このとき、カバー層5A、5Bのセラミック材料の主成分は、誘電体層4のセラミック材料の主成分と同一であってもよい。
【0046】
各外部電極6A、6Bの主成分は、Cu、Fe、Zn、Al、Ni、Pt、Pd、Ag、AuおよびSnから選択される少なくとも1つを含む金属または合金である。
各外部電極6A、6Bは導電層として、素体2上に形成された下地層7と、下地層7上に積層されためっき層9を備えてもよい。下地層7は、長さ方向DLに互いに分離された状態で互いに対向するように素体2に形成される。このとき、下地層7は、素体2の各端面MA、MBから、端面MA、MBに垂直な4つの面にかけて連続的に形成することができる。
【0047】
下地層7の導電性材料として用いられる金属は、例えば、Cu、Fe、Zn、Al、Ni、Pt、Pd、Ag、AuおよびSnから選択される少なくとも1つを含む金属または合金を主成分とすることができる。下地層7は、金属が混在された共材を含んでもよい。共材は、下地層7中に島状に混在することで素体2と下地層7との間の熱膨張率の差を低減し、下地層7にかかる応力を緩和することができる。共材は、例えば、誘電体層4の主成分であるセラミック成分である。下地層7は、ガラス成分を含んでいてもよい。ガラス成分は、下地層7に混在することで下地層7を緻密化することができる。このガラス成分は、例えば、Ba(バリウム)、Sr(ストロンチウム)、Ca(カルシウム)、Zn、Al、Si(ケイ素)またはB(ホウ素)などの酸化物である。
【0048】
ここで、下地層7は、導電性金属ペーストの焼結体で構成するのが好ましい。これにより、素体2と下地層7との密着性を確保しつつ、下地層7の厚膜化を図ることが可能となり、各外部電極6A、6Bの強度を確保しつつ、内部電極層3A、3Bとの導通性を確保することができる。
【0049】
めっき層9は、下地層7を覆うように外部電極6A、6Bごとに連続的に形成される。めっき層9は、下地層7を介して内部電極層3A、3Bと導通する。また、めっき層9は、はんだを介して実装基板の端子と導通する。
【0050】
めっき層9の材料は、例えば、Cu、Fe、Zn、Al、Ni、Pt、Pd、Ag、AuおよびSnから選択される少なくとも1つを含む金属または合金である。めっき層9は、単一金属成分のめっき層でもよく、互いに異なる金属成分の複数のめっき層でもよい。めっき層9は、例えば、下地層7上に形成されたCuめっき層9Aと、Cuめっき層9A上に形成されたNiめっき層9Bと、Niめっき層9B上に形成されたSnめっき層9Cの3層構造とすることができる。Cuめっき層9Aは、下地層7へのめっき層9の密着性を向上させることができる。Niめっき層9Bは、はんだ付け時の各外部電極6A、6Bの耐熱性を向上させることができる。Snめっき層9Cは、めっき層9に対するはんだの濡れ性を向上させることができる。
【0051】
図3は、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を示すフローチャート、
図4Aおよび
図4Bは、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す斜視図、
図4Cは、比較例に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示す斜視図、
図5Aから
図5Hは、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を示す断面図である。なお、
図5Cから
図5Hでは、誘電体層4を介して内部電極層3A、3Bが交互に5層分だけ積層される場合を例にとった。
【0052】
図3のS1において、分散剤および成形助剤としての有機バインダおよび有機溶剤を誘電体材料粉末に加え、粉砕・混合してスラリを生成する。誘電体材料粉末は、例えば、セラミック粉末を含む。誘電体材料粉末は、添加物を含んでいてもよい。添加物は、例えば、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Y(イットリウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(カドミウム)、Tb(テウビウム)、Dy(ジスプロシウム、Ho(ホロミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Co(コバルト)、Ni、Li(リチウム)、B、Na(ナトリウム)、K(カリウム)またはSiの酸化物もしくはガラスである。有機バインダは、例えば、ポリビニルブチラール樹脂またはポリビニルアセタール樹脂である。有機溶剤は、例えば、エタノールまたはトルエンである。
【0053】
次に、
図3のS2、
図4Aおよび
図5Aに示すように、セラミック粉末を含むスラリをキャリアフィルム上にシート状に塗布して乾燥させたグリーンシート24を作製する。キャリアフィルムは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムである。スラリの塗布には、ドクターブレード法、ダイコータ法またはグラビアコータ法などを用いることができる。
【0054】
次に、
図3のS3、
図4Bおよび
図5Bに示すように、複数枚のグリーンシートのうち内部電極層3A、3Bを形成する層のグリーンシート24上に内部電極パターン23を形成する。内部電極パターン23の形成では、スパッタまたは蒸着などの成膜方法を用いることができる。このとき、内部電極パターン23に対応した開口部を有するメタルマスクを介してスパッタまたは蒸着を実施することにより、長手方向および幅方向に分離された複数の内部電極パターン23をグリーンシート24上に形成することができる。
【0055】
このとき、積層セラミックコンデンサ1Aの低背化を図るために、内部電極パターン23の幅WAは短く設定される。例えば、内部電極パターン23の幅WAは、30μm以上200μm以下に設定される。
ここで、スパッタまたは蒸着などの成膜方法で内部電極パターン23を形成することにより、内部電極パターン23の幅WAを短くした場合においても、各内部電極層3A、3Bの幅方向の端部の厚みは、各内部電極層3A、3Bの幅方向の中央部の厚みの85%以上115%以下の範囲内に設定することができる。
【0056】
一方、
図4Cに示すように、
図2Dの内部電極層3A´、3B´を形成する層のグリーンシート24に内部電極用導電ペーストを所定のパターンとなるように塗布し、内部電極パターン23´を形成する方法がある。このとき、1枚のグリーンシート24には、グリーンシート24の長手方向および幅方向に分離された複数の内部電極パターン23´を形成することができる。内部電極用導電ペーストは、内部電極層3A´、3B´の材料として用いられる金属の粉末を含む。また、内部電極用導電ペーストは、バインダと、溶剤と、必要に応じて助剤とを含む。内部電極用導電ペーストは、共材として、誘電体層4の主成分であるセラミック材料を含む場合もある。内部電極用導電ペーストの塗布には、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法またはグラビア印刷法などが用いられる。
【0057】
ここで、内部電極用導電ペーストの塗布により、内部電極パターン23´を形成する方法では、内部電極パターン23´の幅WAが小さくなると、各内部電極層3A´、3B´が幅方向にドーム状になる。このため、内部電極層3A´、3B´が積層された積層体2A´では、内部電極層3A、3Bが積層された積層体2Aに比べて単位長さ当たりの内部電極層3A´、3B´の積層数が減少するとともに、内部電極層3A´、3B´の幅方向の端部で電極間距離が増大することから、容量の低下を招く。
【0058】
次に、
図3のS4および
図5Cに示すように、
図5Bの内部電極パターン23が形成されたグリーンシート24と、内部電極パターン23が形成されていない外層用のグリーンシート25A、25Bを所定の順序で複数枚数だけ積み重ねた積層ブロックを作製する。このとき、積層方向に隣接するグリーンシート24の内部電極パターン23A、23Bが、グリーンシート24の長手方向に交互にずらされるように積み重ねる。また、内部電極パターン23Aのみが積層方向に積み重ねられる部分と、内部電極パターン23A、23Bが積層方向に交互に積み重ねられる部分と、内部電極パターン23Bのみが積層方向に積み重ねられる部分とができるようにする。
【0059】
次に、
図3のS5および
図5Dに示すように、
図5のS4の成型工程で得られた積層ブロックをプレスし、グリーンシート24、25A、25Bを圧着する。積層ブロックをプレスする方法として、例えば、積層ブロックを静水圧プレスする方法などを用いることができる。
【0060】
次に、
図3のS6および
図5Eに示すように、
図5のS5の圧着工程でプレスされた積層ブロックを切断し、直方体形状の素体2に個片化する。積層ブロックの切断は、内部電極パターン23Aのみが積層方向に積み重ねられる部分と、内部電極パターン23Bのみが積層方向に積み重ねられる部分で行う。積層ブロックの切断には、例えば、ブレードダイシングなどの方法を用いることができる。
【0061】
このとき、
図5Fに示すように、個片化された素体2には、誘電体層4を介して交互に積層された内部電極層3A、3Bが形成されるとともに、積層体2Aの積層方向の最下層および最上層にカバー層5A、5Bが形成される。内部電極層3Aは、素体2の一方の端面MAで誘電体層4の表面から引き出され、内部電極層3Bは、素体2の他方の端面MBで誘電体層4の表面から引き出される。
【0062】
次に、
図3のS7に示すように、
図3のS6で個片化された素体2に含まれるバインダを除去する。バインダの除去では、例えば、約350℃のN
2雰囲気中で素体2を加熱する。
【0063】
次に、
図3のS8および
図5Gに示すように、
図3のS7でバインダが除去された素体2の両端面MA、MBと、各端面MA、MBの周面の4つの面(上面、下面、一対の側面)に、下地層7を形成するための下地層用導電ペーストを塗布して乾燥させる。下地層用導電ペーストの塗布には、例えば、ディッピング法を用いることができる。下地層用導電ペーストは、下地層7の導電性材料として用いられる金属の粉末またはフィラーを含む。例えば、下地層7の導電性材料として用いられる金属がNiの場合、下地層用導電ペーストは、Niの粉末またはフィラーを含む。また、下地層用導電ペースト7は、共材として、例えば、誘電体層4の主成分であるセラミック成分を含む。例えば、下地層用導電ペーストには、共材として、チタン酸バリウムを主成分とする酸化物セラミックの粒子(例えば、D50粒子径で0.01μm~4μm)が混入される。また、下地層用導電ペーストは、バインダと、溶剤とを含む。
【0064】
次に、
図5のS9および
図5Gに示すように、
図3のS8で下地層用導電ペーストが塗布された素体2を焼成し、内部電極層3A、3Bと誘電体層4を一体化するとともに、素体2に一体化された下地層7を形成する。素体2および下地層用導電ペーストの焼成は、例えば、焼成炉にて1000~1400℃で10分~2時間だけ行う。内部電極層3A、3BにNiまたはCuなどの卑金属を使用している場合は、内部電極層3A、3Bの酸化を防止するため、焼成炉内を還元雰囲気にして焼成することができる。なお、下地層7の形成では、N
2ガス雰囲気中で600℃~1000℃の温度で再酸化処理を行ってもよい。
【0065】
次に、
図5のS10および
図5Hに示すように、Cuめっき層9A、Niめっき層9BおよびSnめっき層9Cを下地層7上に順次形成する。ここで、下地層7が形成された素体2を、めっき液とともにバレルに収容し、バレルを回転させつつ通電することにより、めっき層9を形成することができる。
【0066】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサの構成例を示す斜視図である。
図6において、積層セラミックコンデンサ1Xは、素体2および外部電極6AX、6BXを備える。積層セラミックコンデンサ1Xは、
図1の積層セラミックコンデンサ1Aと外部電極6AX、6BXが異なる点以外は
図1の積層セラミックコンデンサ1Aと同様に構成することができる。
【0067】
外部電極6AX、6BXは、長さ方向DLに互いに分離された状態で互いに対向するように素体2に形成される。このとき、各外部電極6AX、6BXは、素体2の各端面MA、MBから、端面MA、MBに垂直な3つの面にかけて連続的に形成することができる。すなわち、外部電極6AX、6BXは、素体2の各端面MA、MBから、素体2Xの下面側および一対の側面にかけて連続的に形成される。このとき、各外部電極6AX、6BXは、素体2の上面側には形成されない。なお、外部電極6AX、6BXの上端は、素体2の側面側では、素体2の上面よりも低い位置に形成してもよい。
【0068】
各外部電極6AX、6BXは、素体2上に形成された下地層7Xと、下地層7X上に積層されためっき層9Xを備える。下地層7Xは、長さ方向DLに互いに分離された状態で互いに対向するように素体2に形成される。このとき、下地層7Xは、素体2の各端面MA、MBから、端面MA、MBに垂直な3つの面にかけて連続的に形成され、それぞれ内部電極層3A、3Bに接続される。すなわち、下地層7Xは、素体2の各端面MA、MBから、素体2の下面側および一対の側面にかけて連続的に形成される。このとき、下地層7Xは、素体2の上面側には形成されない。なお、下地層7Xの上端は、素体2の側面側では、素体2の上面よりも低い位置に形成してもよい。ただし、下地層7Xの上端は、素体2Xの側面側において、内部電極層3A、3Bの位置よりも高い位置に形成される。
【0069】
めっき層9Xは、下地層7Xを覆うように外部電極6AX、6BXごとに連続的に形成される。めっき層9Xは、下地層7Xを介して内部電極層3A、3Bと導通する。めっき層9Xは、例えば、下地層7X上に形成されたCuめっき層9AXと、Cuめっき層9AX上に形成されたNiめっき層9BXと、Niめっき層9BX上に形成されたSnめっき層9CXの3層構造とすることができる。
【0070】
ここで、積層セラミックコンデンサ1Xは、
図1の外部電極6A、6Bの代わりに外部電極6AX、6BXを備えることにより、積層セラミックコンデンサ1に比べて低背化を図ることができる。
【0071】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサの構成例を示す斜視図である。なお、
図7では、積層セラミックコンデンサの幅方向DWの端部を内部電極層の位置で切断して示した。
図7において、積層セラミックコンデンサ1Yは、素体2Yおよび外部電極6AY、6BYを備える。素体2Yは、積層体2AYを備える。積層体2AYは、内部電極層3AY、3BYおよび誘電体層4Yを備える。
【0072】
内部電極層3AY、3BYは、誘電体層4Yを介し素体2Yの幅方向DWに交互に積層されている。このとき、各内部電極層3AY、3BYは、素体2の高さ方向DHに直立した状態で素体2Y内に位置することができる。また、素体2Yの長さ方向DLにおいて、内部電極層3AY、3BYは、積層体2A内で同一の位置に交互に配置されている。このとき、素体2Yからの内部電極層3AY、3BYの引き出し位置は、内部電極層3AY、3BYの幅方向に対向する素体2Yの一対の端面のうち一方に端面MYにのみに設定される。
【0073】
内部電極層3AY、3BYを素体2Yから引き出すために、素体2Yの端面MY側にリード電極RA、RBを設けることができる。このとき、リード電極RAは、内部電極層3AYの長さ方向の一端側に接続し、リード電極RBは、内部電極層3BYの長さ方向の他端側に接続されている。そして、リード電極RA、RBは、内部電極層3AY、3BYごとに素体2Yの長さ方向DLの異なる位置に配置され、素体2Yの端面MY側に引き出される。このとき、内部電極層3AYのそれぞれのリード電極RAは、素体2Yの幅方向DWの位置を一致させ、内部電極層3BYのそれぞれのリード電極RBは、素体2Yの幅方向DWの位置を一致させることができる。
【0074】
ここで、積層体2AYの積層の高さTYは、各内部電極層3AY、3BYの幅WYより大きい。なお、積層体2AYの積層方向は、素体2Yの幅方向DWである。各内部電極層3AY、3BYの幅方向は、素体2Yの高さ方向DHである。また、各内部電極層3AY、3BYの長さLYは、各内部電極層3AY、3BYの幅WYより大きくすることができる。なお、各内部電極層3AY、3BYの長さ方向は、素体2Yの長さ方向DLである。また、各内部電極層3AY、3BYの長さLYは、積層体2Aの積層の高さTYより大きくすることができる。なお、内部電極層3AY、3BYおよび誘電体層4Yの材料および厚みは、
図1の内部電極層3A、3Bおよび誘電体層4の材料および厚みと同様に設定することができる。
【0075】
外部電極6AY、6BYは、素体2Yの長さ方向DLに互いに分離された状態で素体2Yの端面MY側に並列に形成される。各外部電極6AY、6BYは、素体2Yの端面MY側に形成された下地層7Yと、下地層7Y上に積層されためっき層9Yを備える。下地層7Yは、素体2Yの長さ方向DLに互いに分離された状態で素体2Yの端面MY側に並列に形成され、それぞれリード電極RA、RBに接続される。
【0076】
めっき層9Yは、下地層7Yを覆うように外部電極6AY、6BYごとに連続的に形成される。めっき層9Yは、下地層7Yを介して内部電極層3AY、3BYと導通する。めっき層9Yは、例えば、下地層7Y上に形成されたCuめっき層9AYと、Cuめっき層9AY上に形成されたNiめっき層9BYと、Niめっき層9BY上に形成されたSnめっき層9CYの3層構造とすることができる。
【0077】
ここで、積層セラミックコンデンサ1Yは、
図1の外部電極6A、6Bの代わりに外部電極6AY、6BYを備えることにより、積層セラミックコンデンサ1に比べて低背化を図ることができる。
【0078】
(第4実施形態)
図8Aは、第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサを第1内部電極の位置で長さ方向に切断した断面図、
図8Bは、第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサを第2内部電極の位置で長さ方向に切断した断面図、
図8Cは、第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサを素体の位置で幅方向に切断した断面図である。
【0079】
図8Aから
図8Cにおいて、積層セラミックコンデンサ1Cは、
図2Aから
図2Cの積層セラミックコンデンサ1Aの素体2の代わりに素体2Cを備える。素体2Cは、積層体2AC、カバー層5A、5Bおよびサイドマージン層8A、8Bを備える。積層体2ACは、内部電極層3A、3Bおよび誘電体層4を備える。
【0080】
カバー層5A、5Bは、積層体2ACを積層方向に挟むように位置する。サイドマージン層8A、8Bは、内部電極層3A、3Bの幅方向に積層体2ACを挟むように位置する。サイドマージン層8A、8Bは、内部電極層3A、3Bの幅方向の端部に接触することができる。なお、積層体2ACを積層方向は、素体2Cの幅方向DW、内部電極層3A、3Bの幅方向は、素体2Cの高さ方向DHである。
【0081】
積層体2ACでは、内部電極層3A、3Bは、内部電極層3A、3Bの幅方向において誘電体層4から露出する。積層体2ACは、内部電極層3A、3Bの幅方向において内部電極層3A、3Bが誘電体層4から露出する点以外は、
図2Aから
図2Cの積層体2Aと同様に構成することができる。ただし、積層セラミックコンデンサ1Cでは、内部電極層3A、3Bは、内部電極用導電ペーストの塗布膜の焼成で形成してもよい。この場合、
図4Cの内部電極パターン23´の形成工程において、内部電極パターン23´をその幅方向に素体2Cごとに分離させる必要はない。このため、内部電極パターン23´の幅WAを増大させることができ、内部電極パターン23´がその幅方向にドーム状となるのを抑制することができる。このため、内部電極用導電ペーストの塗布膜の焼成で内部電極層3A、3Bを形成した場合においても、各内部電極層3A、3Bの幅方向の端部の厚みを、各内部電極層3A、3Bの幅方向の中央部の厚みの85%以上115%以下の範囲内に設定することができる。
【0082】
なお、
図5Eの工程で積層ブロックを切断するときに、積層ブロックの幅方向の切断位置は、積層セラミックコンデンサ1Aでは、内部電極用導電ペーストが塗布されてない位置に設定されるが、積層セラミックコンデンサ1Cでは、内部電極用導電ペーストが塗布されている位置に設定される。このため、内部電極層3A、3Bの幅方向において内部電極層3A、3Bが誘電体層4から露出する。そして、積層ブロックの切断後に内部電極層3A、3Bの幅方向に積層体2ACを挟むようにサイドマージン層8A、8Bを形成する。そして、サイドマージン層8A、8Bが形成された素体2Cに対し、
図5Gと同様の工程で下地層7を形成し、さらに
図5Hと同様の工程で下地層7上にめっき層9を形成する。
【0083】
(第5実施形態)
図9は、第5実施形態に係る積層セラミックコンデンサが実装された実装基板の構成例を示す断面図である。
図9において、実装基板41の裏面側には、ランド電極42A、42B、44A、44Bが形成されている。積層セラミックコンデンサ1Aは、各外部電極6A、6Bのめっき層9にそれぞれ付着されたはんだ層43A、43Bを介してランド電極42A、42Bに接続される。このとき、積層セラミックコンデンサ1Aは、各内部電極層3A、3Bの幅方向が素体2の高さ方向DHに一致するように実装基板41上に実装される。実装基板41の裏面側のランド電極44A、44B上には、はんだボール47A、47Bが形成される。
【0084】
一方、実装基板41の表面側には、不図示の半導体チップが実装される。この半導体チップは、マイクロプロセッサであってもよいし、半導体メモリであってもよいし、FPGA(Field-Programmable Gate Array)であってもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit))であってもよい。
【0085】
実装基板45の裏面側には、ランド電極46A、46Bが形成されている。実装基板41、45は、はんだボール47A、47Bを介して互いに接続される。実装基板45は、実装基板41が実装されるマザーボードとして用いることができる。
【0086】
実装基板41、45の間は、はんだボール47A、47Bを介して一定の間隔に維持される。このとき、実装基板41、45の間には、積層セラミックコンデンサ1Aを封止する樹脂48が設けられる。この樹脂48は、例えば、エポキシ樹脂である。この樹脂48は、はんだボール47A、47Bを介して実装基板41、45が互いに接続された後、実装基板41、45の間に注入し、硬化させてもよい。
【0087】
ここで、実装基板41の裏面側に積層セラミックコンデンサ1Aを実装することにより、実装基板41の表面側に実装される半導体チップの裏面側に積層セラミックコンデンサ1Aを配置することができる。このため、実装基板41の表面側に実装される半導体チップに近接させて積層セラミックコンデンサ1Aを実装することが可能となり、半導体チップに加わるノイズを効果的に除去することが可能となる。
【0088】
また、積層体2Aの積層の高さTAを各内部電極層3A、3Bの幅WAより大きくし、各内部電極層3A、3Bの幅方向が素体2の高さ方向DHに一致するように積層セラミックコンデンサ1Aを実装基板41上に実装することにより、積層セラミックコンデンサ1Aの容量の低下を抑制しつつ積層セラミックコンデンサ1Aの実装時の高さを低くすることができる。このため、はんだボール47A、47Bを介して互いに接続された実装基板41、45間の隙間に積層セラミックコンデンサ1Aを収容することができ、実装基板41の表面側に配置される半導体チップの裏面側に積層セラミックコンデンサ1Aを配置することが可能となるとともに、半導体チップに加わるノイズを効果的に除去することが可能となる。
【0089】
(実施例)
図10は、実施例に係る積層セラミックコンデンサの高さおよび容量を比較例と比較して示す図である。なお、
図10では、
図1の積層セラミックコンデンサ1Aの外形サイズが1005である場合を想定したが、外形サイズが0603または0402などでも同様の結果となる。また、実施例1~3は、積層セラミックコンデンサ1Aに
図2Dの素体2´を用いた場合、実施例4~6は、積層セラミックコンデンサ1Aに
図2Cの素体2を用いた場合を示す。比較例は、各内部電極層3A、3Bが実装基板に対して平行に積層されている場合(通常工法)を例にとった。
【0090】
図10において、通常工法(比較例1~3)では、低背化するために内部電極層3A、3Bの積層数を減らすと、容量密度が大きく低下する。一方、実施例1~3では、各内部電極層3A´、3B´が幅方向にドーム状になり、各内部電極層3A´、3B´の中央部と端部の厚みの差が大きくなることから、容量密度の低下を招く。実施例4~6では、低背化するために各内部電極層3A´、3B´の積層数を減らす必要がなく、各内部電極層3A´、3B´の中央部と端部の厚みの差が小さくなることから、容量密度を維持することができた。また、実施例4~6では、内部電極層3A、3Bが実装面に対して直立しているため、積層セラミックコンデンサ1Aの実装時の負荷に対する抗折強度も高くすることができる。
【符号の説明】
【0091】
1A 積層セラミックコンデンサ
2 素体
2A 積層体
3A、3B 内部電極層
4 誘電体層
5A、5B カバー層
6A、6B 外部電極
7 下地層
9 めっき層