(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142217
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】易破壊性材料用樹脂組成物および易破壊性材料
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20220922BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20220922BHJP
C08L 61/10 20060101ALI20220922BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220922BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L69/00
C08L61/10
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042310
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】井川 亮一
(72)【発明者】
【氏名】梅垣 博史
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CC03W
4J002CG01X
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD160
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】80℃程度の温水に対する易破壊性に優れた材料を得ることができる易破壊性材料用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の易破壊性材料用樹脂組成物は、以下の試験条件で測定された曲げ強度から算出される曲げ強度保持率が93%以下である。
(試験条件)
前記易破壊性材料用樹脂組成物を175℃、硬化時間3分、注入圧力50MPaの条件で移送成形することで得られる80mm×10mm×厚み4mmの試験片に対して、80℃熱水に2週間の浸漬試験をおこなった場合において、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験前の前記試験片の曲げ強度aに対する、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験後の前記試験片の曲げ強度bの保持率([b/a]×100)を算出する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の試験条件で測定された曲げ強度から算出される曲げ強度保持率が93%以下である、易破壊性材料用樹脂組成物。
(試験条件)
前記易破壊性材料用樹脂組成物を175℃、硬化時間3分、注入圧力50MPaの条件で移送成形することで得られる80mm×10mm×厚み4mmの試験片に対して、80℃熱水に2週間の浸漬試験をおこなった場合において、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験前の前記試験片の曲げ強度aに対する、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験後の前記試験片の曲げ強度bの保持率([b/a]×100)を算出する。
【請求項2】
以下の試験条件で測定された圧縮強度から算出される圧縮強度保持率が92%以下である、請求項1に記載の易破壊性材料用樹脂組成物。
(試験条件)
JIS K 6911に準拠し、前記易破壊性材料用樹脂組成物を175℃、硬化時間3分、注入圧力50MPaの条件で移送成形することで得られる80mm×12.7mm×厚み12.7mmの硬化物を切断して25.4mm×12.7mm×厚み12.7mmの試験片を得る。得られた試験片に対して、80℃熱水に1週間の浸漬試験をおこなった場合において、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験前の前記試験片の圧縮強度cに対する、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験後の前記試験片の圧縮強度dの保持率([d/c]×100)を算出する。
【請求項3】
ポリアルキレンカーボネート樹脂を含む、請求項1または2に記載の易破壊性材料用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリアルキレンカーボネート樹脂の含有量は1~30質量%である、請求項1~3のいずれかに記載の易破壊性材料用樹脂組成物。
【請求項5】
さらにノボラック型フェノール樹脂を含む、請求項1~4のいずれかに記載の易破壊性材料用樹脂組成物。
【請求項6】
さらに硬化剤を含む、請求項1~5のいずれかに記載の易破壊性材料用樹脂組成物。
【請求項7】
さらに充填剤を含む、請求項1~6のいずれかに記載の易破壊性材料用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の樹脂組成物を加熱硬化してなる易破壊性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易破壊性材料用樹脂組成物および易破壊性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
易破壊性材料は、経時後や所定の条件後に材料が崩壊し易くなる材料であり、材料を回収して再利用するリサイクル分野やシェールオイル(またはシェールガス)分野等において利用されてきている。
特許文献1~3には、分解性樹脂等を含むシェールオイル用フラッププラグ用材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/072317号
【特許文献2】特開2015-172106号公報
【特許文献3】国際公開第2019/131952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~3に記載の従来の技術においては、80℃程度の温水に対する易破壊性に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の条件で測定された曲げ強度から算出される曲げ強度保持率が所定の範囲であることにより80℃程度の熱水に対する易破壊性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0006】
本発明によれば、
以下の試験条件で測定された曲げ強度から算出される曲げ強度保持率が93%以下である易破壊性材料用樹脂組成物が提供される。
(試験条件)
前記易破壊性材料用樹脂組成物を175℃、硬化時間3分、注入圧力50MPaの条件で移送成形することで得られる80mm×10mm×厚み4mmの試験片に対して、80℃熱水に2週間の浸漬試験をおこなった場合において、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験前の前記試験片の曲げ強度aに対する、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験後の前記試験片の曲げ強度bの保持率([b/a]×100)を算出する。
【0007】
本発明によれば、
前記樹脂組成物を加熱硬化してなる易破壊性材料が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、80℃程度の熱水に対する易破壊性に優れた材料を得ることができる易破壊性材料用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の易破壊性材料用樹脂組成物を実施の形態に基づいて説明する。また、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0010】
本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物は、以下の試験条件1で測定された曲げ強度から算出される曲げ強度保持率が93%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下である。
(試験条件1)
前記易破壊性材料用樹脂組成物を175℃、硬化時間3分、注入圧力50MPaの条件で移送成形することで得られる80mm×10mm×厚み4mmの試験片に対して、80℃熱水に2週間の浸漬試験をおこなった場合において、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験前の前記試験片の曲げ強度aに対する、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験後の前記試験片の曲げ強度bの保持率([b/a]×100)を算出する。
【0011】
本実施形態においては、曲げ強度保持率が上述の範囲であることにより、80℃程度の熱水に対する易破壊性に優れた材料を得ることができる。曲げ強度保持率と易破壊性との関係性は明らかでないものの、曲げ強度保持率が上記範囲にあると破壊靭性が低下することから、応力に対する耐性が低下し易破壊性に優れると考えられる。すなわち、曲げ強度保持率を指標とすることにより、80℃程度の熱水に対する易破壊性に優れた材料を提供することができる。
【0012】
さらに、本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物は、本発明の効果の観点から、以下の試験条件2で測定された圧縮強度から算出される圧縮強度保持率が92%以下、好ましくは91%以下、より好ましくは90%以下である。
(試験条件2)
JIS K 6911に準拠し、前記易破壊性材料用樹脂組成物を175℃、硬化時間3分、注入圧力50MPaの条件で移送成形することで得られる80mm×12.7mm×厚み12.7mmの硬化物を切断して25.4mm×12.7mm×厚み12.7mmの試験片を得る。得られた試験片に対して、80℃熱水に1週間の浸漬試験をおこなった場合において、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験前の前記試験片の圧縮強度cに対する、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験後の前記試験片の圧縮強度dの保持率([d/c]×100)を算出する。
【0013】
本実施形態においては、圧縮強度保持率が上述の範囲であることにより、80℃程度の熱水に対する易破壊性にさらに優れた材料を得ることができる。圧縮強度保持率が上記範囲にあると靭性が低下することから、応力に対する耐衝撃性が低下し易破壊性に優れると考えられる。すなわち、圧縮強度保持率を指標とすることにより、80℃程度の熱水に対する易破壊性により優れた材料を提供することができる。
【0014】
また、上記の試験条件1で作成された試験片を80℃の恒温槽に1週間保持した後、JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定された曲げ強度が、100MPa以上、好ましくは150MPa以上、好ましくは180MPa以上とすることができる。
このように、易破壊性材料用樹脂組成物の成形体は、80℃程度の環境下においても曲げ強度に優れることから、高温となる使用環境下において破壊されることがなく、リサイクル等の際に熱水に浸漬することで破壊され易くなることから、使用時においては製品信頼性に優れる一方でリサイクルも容易である。
【0015】
さらに、本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物は、以下の試験条件3で測定されたノッチ付きシャルピー衝撃強さの変化率が80%以上、好ましくは83%以上、より好ましくは85%以上である。
(試験条件3)
175℃、硬化時間3分、注入圧力50MPaの条件で移送成形して90mm×15mm×厚み15mmの試験片を得た。得られた試験片に対して、80℃熱水に1週間の浸漬試験をおこなった場合において、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験前の前記試験片のノッチ付きシャルピー衝撃強さeに対する、
JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験後の前記試験片のノッチ付きシャルピー衝撃強さfの保持率([f/e]×100)を算出する。
【0016】
本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物の成形体は、ノッチ付きシャルピー衝撃強さの変化率が上記範囲にあることから衝撃に対する耐性が高い。一方で、上記のように曲げ強度保持率や圧縮強度保持率が高いことから、熱水浸漬後においても成形体の運搬等における衝撃により破棄されることがなく、所定の方法において破壊されることからリサイクル材料として好適に用いることができる。
【0017】
本実施形態において、上記の曲げ強度保持率や圧縮強度保持率、さらにノッチ付きシャルピー衝撃強さの変化率は、例えば、易破壊性材料用樹脂組成物に含まれる各成分の種類や含有量、樹脂成形材料の粒度分布等をそれぞれ適切に調整することにより制御することが可能である。本実施形態においては、例えば、後述するポリアルキレンカーボネート樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、硬化剤、充填材等の種類や含有量を調整することが挙げられる。
以下、本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0018】
[ポリアルキレンカーボネート樹脂]
本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物は、ポリアルキレンカーボネート樹脂を含むことができる。
【0019】
ポリアルキレンカーボネート樹脂としては、ポリエチレンカーボネート樹脂、ポリプロピレンカーボネート樹脂、エチレンカーボネート単位とプロピレンカーボネート単位を含む共重合体が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。本発明の効果の観点から、これらの中でもポリエチレンカーボネート樹脂を好ましく用いることができる。
なお、ポリアルキレンカーボネート樹脂の重量平均分子量は、5,000~1,000,000が好ましく、10,000~800,000がより好ましく、50,000~500,000がさらに好ましい。
【0020】
本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物100質量%において、ポリアルキレンカーボネート樹脂の含有量は、本発明の効果の観点から、1~30質量%、好ましくは1~20質量%、より好ましくは2~15質量%、特に好ましくは2~8質量%とすることができる。
【0021】
[ノボラック型フェノール樹脂]
本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物は、ノボラック型フェノール樹脂を含むことができる。
【0022】
ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒下で反応させて得られるフェノール樹脂である。ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノールノボラック型樹脂、クレゾールノボラック型樹脂、レゾルシンノボラック型樹脂、キシレノールノボラック型樹脂、アルキルフェノールノボラック型樹脂、ナフトールノボラック型樹脂、ビスフェノールAノボラック型樹脂、フェノールアラルキルノボラック型樹脂、フェノールジフェニルアラルキルノボラック型樹脂、フェノールナフタレンノボラック型樹脂、フェノールジシクロペンタジエンノボラック型樹脂、及びカシューナッツ油、テルペン、トール油、ロジン、ゴム等より得られるノボラック型変性フェノール樹脂などが挙げられる。
【0023】
ノボラック型フェノール樹脂を合成するために用いられるフェノール類としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等のキシレノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール等のブチルフェノール、p-tert-アミルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-クミルフェノール等のアルキルフェノール、p-フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール、カルダノール等の1価フェノール置換体、1-ナフトール、2-ナフトール等の1価のフェノール類、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール類、フェノール系化合物を含有するカシューナッツ油等の油脂類が挙げられる。フェノール類は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
ノボラック型フェノール樹脂を合成するために用いられるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、パラキシレンジメチルエーテル等が挙げられる。アルデヒド類は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい
【0025】
上述のフェノール類とアルデヒド類とを反応させてノボラック型フェノール樹脂を合成する方法において、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/フェノール類)は、0.5~0.9であることが好ましく、0.55~0.87であることがより好ましい。モル比を上記範囲とすることにより、得られる反応生成物がゲル化することなく、所望の分子量を有するフェノール樹脂を得ることができる。
【0026】
ノボラック型フェノール樹脂の合成に用いられる酸触媒としては、例えば、シュウ酸などの有機酸、塩酸、硫酸、燐酸などの鉱物酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸、パラフェノールスルホン酸などが挙げられる。
【0027】
本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物100質量%において、ノボラック型フェノール樹脂の含有量は、本発明の効果の観点から、10~70質量%、好ましくは15~60質量%、より好ましくは20~50質量%とすることができる。
【0028】
[硬化剤]
本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物は、硬化剤を含むことができる。
硬化剤として、アミン系硬化剤を挙げることができる。
上記アミン系硬化剤としては限定されず、ノボラック型フェノール樹脂を硬化させるために用いられる従来公知のアミン系硬化剤を用いることができる。
【0029】
上記アミン系硬化剤としては、具体的には、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミンなどを用いることができる。アミン系硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミンを用いることが好ましい。
【0030】
本実施形態において、硬化剤の含有量は、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、例えば、5質量部~40質量部、好ましくは8質量部~35質量部、より好ましくは10質量部~30質量部とすることができる。上記数値範囲内とすることにより、良好な硬化性を得ることができる。
【0031】
[充填剤]
本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物は、充填材を含むことができる。
上記充填材としては、例えば、繊維基材、有機充填材、無機充填材等が挙げられる。
繊維基材は、その形状が繊維状である繊維状充填材である。有機充填材および無機充填材は、それぞれ、粒状充填材または板状充填材のいずれでもよい。板状充填材はその形状が板状である充填材である。粒状充填材は、不定形状を含む繊維状・板状以外の形状の充填材である。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
上記繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、金属繊維、ワラストナイト、アタパルジャイト、セピオライト、ロックウール、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウム繊維、炭酸カルシウムウィスカー、酸化チタンウィスカー、セラミック繊維などの繊維状無機充填材;アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維などの繊維状有機充填材;が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。なお、本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物は、充填剤としてガラス繊維を含むことが好ましい。
【0033】
また、上記板状充填材、粒状充填材としては、例えば、タルク、カオリンクレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム水和物、マイカ、ガラスフレーク、ガラス粉、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、上記繊維状充填材の粉砕物などが挙げられる。
【0034】
本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物100質量%において、充填材の含有量は、易破壊性材料の初期の機械的強度を維持する観点から、20~80質量%、好ましくは30~70質量%、より好ましくは35~65質量%とすることができる。
【0035】
[その他の成分]
本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物は上記成分以外の他の成分を含むことができる。他の成分としては、硬化助剤、ノボラック型フェノール樹脂以外の樹脂、離型剤、染料、難燃剤、カップリング剤等を挙げることができる。
【0036】
硬化助剤は、硬化剤と併用することにより、熱安定性や硬化性を高めることができる。
硬化助剤としては、特に限定されず、硬化を促進できるものを用いることが出来、例えば、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物、サリチル酸、安息香酸などの芳香属カルボン酸を例示することができる。上記硬化助剤はフェノール樹脂100質量部に対して、例えば、0.5質量部~20質量部の割合で適宜配合して用いられる。
【0037】
ノボラック型フェノール樹脂以外の樹脂としては、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。
【0038】
離型剤として、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、(酸化)ポリエチレンなどが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
離型剤は、フェノール樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部~5質量部の割合で適宜配合して用いられる。
染料として、例えば、ソルベントブラックなどが挙げられる。
【0039】
本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物の製造方法は、上述の各成分をニーダー、ロール等で予め溶融混練し、次いで他の原料と均一に混合した後、あるいは、配合する全原料をロール、コニーダ、二軸押出し機等の混練装置単独またはロールと他の混合装置との組み合わせで溶融混練した後、造粒または粉砕して得られる。なお、本実施形態の易破壊性材料用樹脂組成物の形状としては、特に限定されないが、例えば、粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状等が挙げられる。
【0040】
[易破壊性材料]
上述の易破壊性材料用樹脂組成物を硬化させることで、成形品(易破壊性材料)を製造することができる。例えば、上述の易破壊性材料用樹脂組成物を、トランスファー成形、コンプレッション成形、射出成形等の方法により、易破壊性材料(上述の易破壊性材料用樹脂組成物の硬化物を備える易破壊性材料)を製造することができる。
【0041】
本実施形態の易破壊性材料としては、シェールオイル(またはシェールガス)用フラッププラグ用材料や、リサイクル材料等として用いることができる。
【0042】
リサイクル材料としては、アスファルトの増量剤が挙げられ、易破壊性材料を骨材として使用し、リサイクル時に加温することにより容易に破壊されるのでリサイクルが容易である。また、リサイクル可能な箱等の容器や成形体が挙げられ、加温することにより容易に破壊されるので、さらに粉砕して含まれるガラス繊維等をリサイクルすることができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0044】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例においては以下の成分を用いた。
【0045】
・ポリエチレンカーボネート樹脂:(商品名:QPAC25、EMPOWER MATERIALS社製)
・ノボラック型フェノール樹脂:(商品名:PR-53194、住友ベークライト社製、重量平均分子量:700)
・硬化剤:ヘキサメチレンテトラミン(商品名:ヘキサミン、三菱ガス化学社製)
・充填材:ガラス繊維(商品名:CS3E479 、日東紡績社製)
・硬化助剤:酸化マグネシウム
・離型剤:ステアリン酸カルシウム
・染料:ソルベントブラック(商品名:SPRIT BLACK SZ、 オリヱント化学工業社製)
【0046】
[実施例1~2、比較例1]
表1に示される配合比率で各成分を配合して混合物とし、この混合物を、加熱ロールを用いて5分間混練した。5分間混練後、冷却した。その後、粉砕して、粉粒状の樹脂組成物を得た。
【0047】
<樹脂組成物から得られる試験片の評価>
得られた各樹脂組成物を用いて、下記のようにして、試験片の評価を行った。
(曲げ強度、曲げ強度保持率)
得られた樹脂組成物を175℃、硬化時間3分、注入圧力50MPaの条件で移送成形を行い、80mm×10mm×厚み4mmの試験片を得た。この試験片を80℃の熱水に1週間または2週間浸漬し、JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験前の前記試験片の曲げ強度aに対する、前記浸漬試験後の前記試験片の曲げ強度bの保持率([b/a]×100)を算出した。
また、試験片を80℃の恒温槽に1週間保持した後、JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で曲げ強度を測定した。
【0048】
(圧縮強度、圧縮強度保持率)
JIS K 6911に準拠し、得られた樹脂組成物を175℃、硬化時間3分、注入圧力50MPaの条件で移送成形して80mm×12.7mm×厚み12.7mmの硬化物を得た。当該硬化物を切断して25.4mm×12.7mm×厚み12.7mmの試験片を得た。得られた試験片に対して、80℃熱水に1週間浸漬し、JIS K 6911に準じて25℃雰囲気下で測定される、前記浸漬試験前の前記試験片の圧縮強度cに対する、前記浸漬試験後の前記試験片の圧縮強度dの保持率([d/c]×100)を算出した。
【0049】
(シャルピー衝撃値の測定)
得られた樹脂組成物を175℃、硬化時間3分、注入圧力50MPaの条件で移送成形して90mm×15mm×厚み15mmの試験片を得た。得られた試験片に対して、80℃熱水に1週間浸漬し、シャルピー衝撃値を測定するための試験片とした。この試験片において、JIS K6911に基づいて、ノッチ付きシャルピー衝撃強さを測定した。
【0050】