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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142219
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】米飯用品質改良剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20220922BHJP
   A23L 29/25 20160101ALI20220922BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20220922BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20220922BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20220922BHJP
【FI】
A23L7/10 B
A23L29/25
A23L29/269
A23L29/231
A23L29/30
A23L7/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042313
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 竜統
(72)【発明者】
【氏名】島津 理江子
(72)【発明者】
【氏名】服部 桂祐
(72)【発明者】
【氏名】末田 依里桂
【テーマコード(参考)】
4B023
4B041
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE11
4B023LE19
4B023LG01
4B023LK08
4B023LP08
4B041LC03
4B041LD01
4B041LH04
4B041LH05
4B041LH09
4B041LH13
4B041LK23
4B041LP01
(57)【要約】
【課題】低温保存下で米飯の食感を保持することができる米飯用品質改良剤を提供する。
【解決手段】本発明は、(a)アラビアガム、(b)キサンタンガム又はペクチン及び(c)DE値20~40の澱粉分解物を含有することを特徴とする、液状の米飯用品質改良剤である。本発明の米飯用品質改良剤は、米飯の炊飯時に添加して使用することができる。本発明の米飯用品質改良剤を添加することにより得られる米飯は、炊飯直後のみならずチルド米飯として低温化で保存した場合でも良好な食感が保持される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(c)を含有することを特徴とする、液状の米飯用品質改良剤:
(a)アラビアガム、
(b)キサンタンガム又はペクチン、
(c)DE値20~40の澱粉分解物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯用品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、チルドや冷凍の状態で流通し、スーパーマーケットやコンビニエンスストアー等で取扱われる米飯(チルド米飯・冷凍米飯)の需要が増加している。しかし、一般に米飯は炊飯後に低温で保存すると時間の経過とともに硬くなり食感の劣化が進行する。そこで、アラビアガムやペクチン等の増粘安定剤、乳酸やクエン酸等の有機酸及びこれらの塩、プロテアーゼ等の酵素等を有効成分として用いた米飯用品質改良剤が数多く提案されている。
【0003】
例えば、米飯固形分100重量部に対してペクチンを0.12~3.00重量部含有し、水分含有率が64~68重量%である米飯食品(特許文献1)、(a)プロテアーゼ、(b)ペクチン及び/又はタマリンドシードガム、及び(c)グリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とするチルド又は冷凍米飯用品質改良剤(特許文献2)、(a)プロテアーゼ及び(b)ペクチン又はタマリンドシードガムを含有することを特徴とするチルド又は冷凍米飯用改良剤(特許文献3)、クエン酸等の不揮発性有機酸、ペクチン等の冷水可溶性高分子多糖類、還元水あめ及び/又はデキストリンを含有することを特徴とする米飯類の食味改良剤(特許文献4)等が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記技術は、チルド状態で保存される米飯の食感(例えば、粒感、しっとり感、やわらかさ)の保持においては必ずしも十分でないのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-252773号公報
【特許文献2】特開2012-034611号公報
【特許文献3】特開2008-245582号公報
【特許文献4】特開2004-159629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低温保存下で米飯の食感を保持することができる米飯用品質改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、特定の二種類の増粘多糖類と特定のDE値を有する澱粉分解物とを配合した液状の製剤により、上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記(a)~(c)を含有することを特徴とする、液状の米飯用品質改良剤:
(a)アラビアガム、
(b)キサンタンガム又はペクチン、
(c)DE値20~40の澱粉分解物、からなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の米飯用品質改良剤を添加することにより得られる米飯は、低温保存後の食感が優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の米飯用品質改良剤は、(a)成分としてアラビアガムと、(b)成分としてキサンタンガム又はペクチンと、(c)成分としてDE値20~40の澱粉分解物を含有する。
【0011】
本発明の米飯用品質改良剤の(a)成分であるアラビアガムは、マメ科アラビアゴムノキ(Acacia Senegal Willdenow)又は他同属植物の分泌物を乾燥して得られたもの又はこれを脱塩して得られたものであり、多糖類を主成分とするものである。アラビアガムは、市販されているものを使用することができる。
【0012】
本発明の米飯用品質改良剤の(b)成分であるキサンタンガムは、キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)が菌体外に生産する多糖類であり、D-マンノース、D-グルコース、D-グルクロン酸で構成されるものである。キサンタンガムは、市販されているものを使用することができる。
【0013】
本発明の米飯用品質改良剤の(b)成分であるペクチンは、柑橘類やリンゴ等から得られたメチル化ポリガラクチュロン酸等の多糖類を成分とするものであり、例えば、高メトキシルペクチン(HM)、低メトキシルペクチン(LM)等が挙げられ、好ましくは高メトキシルペクチンである。ペクチンは、市販されているものを使用することができる。
【0014】
本発明の米飯用品質改良剤の(c)成分である澱粉分解物は、澱粉を水とともに加熱した糊液を酸又は酵素で加水分解することにより得られる各種中間体であって、DE(Dextrose Equivalent)値が20~40、好ましくは27~38のものである。
【0015】
DE値とは、一般には澱粉の分解程度を示す指標であり、澱粉を加水分解したときに生成するデキストリン及びブドウ糖や麦芽糖等の還元糖の割合を示すものである。DE値は、ウィルシュテッター・シューデル法により還元糖をブドウ糖として測定し、その還元糖の固形分100に対する比として求められる。このDE値が大きい程、還元糖の含有量が多くデキストリンが少なく、逆にDE値が小さい程、還元糖の含有量が少なくデキストリンが多いことを意味する。即ち、DE値は、次式で表される。
DE値=直接還元糖(ブドウ糖として表示)/固形分×100
【0016】
本発明の米飯用品質改良剤の形態は、上記(a)~(c)成分を含有する常温(0~30℃)で液状の製剤であることが好ましい。そのような形態の米飯用品質改良剤の製造方法は特に限定されず、自体公知の方法を用いることができるが、例えば以下の工程(1)及び(2)により製造することができる。
工程(1):水に(a)~(c)成分を加え、常温(15℃以上25℃未満)で、又は25~90℃、好ましくは約50~80℃に加熱しながら撹拌し、溶解液を得る。
工程(2):(1)で得た溶解液を必要であれば40℃以下に冷却し、常温で液状の米飯用品質改良剤を得る。
【0017】
上記工程(1)における撹拌には、例えばプロペラ攪拌機、TKミキサー(プライミクス社製)又はクリアミックス(エムテクニック社製)等の撹拌機を用いることができる。撹拌にTKミキサーを用いる場合、回転数は3000~10000rpmが好ましく、攪拌時間は工程(1)では約1~60分間が好ましい。
【0018】
本発明の米飯用品質改良剤100質量%中には、(a)成分が3.0~10.0質量%、好ましくは4.0~8.0質量%、(b)成分が0.05~1.0質量%、好ましくは0.1~0.7質量%、(c)成分が20~70質量%、好ましくは25~60質量、残余が水となるように調整するのが好ましい。
【0019】
本発明の米飯用品質改良剤には、上記(a)~(c)成分の他に、液状の製剤の調製や米飯の品質改良に用いられる成分等を添加することができる。そのような成分としては、例えばブドウ糖、果糖等の単糖類、ショ糖、乳糖、麦芽糖等のオリゴ糖類、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース等のマルトオリゴ糖類、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元水飴、グリセリン等の糖アルコール類、エタノール、プロピレングリコール等のアルコール類、醸造酢、酢酸、酢酸塩等が挙げられる。
【0020】
本発明の米飯用品質改良剤は、米飯の炊飯時に添加して使用することができる。具体的には、例えば生米又はその洗米と本発明の米飯用品質改良剤を炊飯器に入れ、そこへ水を加えて炊飯する方法、炊飯器に生米又はその洗米を入れ、そこへ予め本発明の米飯用品質改良剤を水に分散させたものを加えて炊飯する方法等が挙げられる。炊飯に用いられる水の量に特に制限はなく、例えば生米質量の1.5~1.7倍の加水量で炊飯することができる。
【0021】
本発明において米飯用改良剤の添加量に特に制限はないが、生米100質量%に対し通常0.5~10.0質量%、好ましくは1.0~5.0質量%である。
【0022】
本発明で用いることのできる炊飯器の種類としては特に制限はなく、例えば電気炊飯器やガス炊飯器や電磁加熱型炊飯器、蒸気式炊飯器、圧力釜炊飯等それらのバッチ式又は連続式炊飯器、炊飯設備が挙げられる。
【0023】
本発明に係る米飯としては、精白米を炊飯して得られる米飯の他に、例えば玄米ご飯、赤飯、おこわ、炊き込み御飯、ピラフ、チャーハン、ドライカレー、すし、おにぎり等が挙げられる。
【0024】
上記米飯は、常法により米飯をチルド温度帯(例えば、1~15℃)下で保存することによりチルド米飯として製造することができ、また常法により米飯を-5℃以下で凍結・保存することにより冷凍米飯として製造することができる。
【0025】
上記チルド米飯及び冷凍米飯は、例えばチルドすしの場合はそのまま食することができるが、通常は常法により調理して食することができる。その調理方法に特に制限はないが、例えば自然解凍等の常温に戻す方法や、電子レンジで加熱調理する方法等が挙げられる。
【0026】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0027】
[米飯用品質改良剤の作製]
(1)原材料
1)アラビアガム(商品名:アラビックコールSS;三栄薬品貿易社製)
2)キサンタンガム(商品名:GRINDSTEDキサンタンクリアー80;ダニスコジャパン社製)
3)HMペクチン(商品名:UNIPECTINE AYD 5110SB;ユニテックフーズ社製)
4)グァーガム(商品名:SUPERGEL CSA 200/50;パキスタン ガム アンド ケミカル社)
5)グルコマンナン(商品名:レオレックスOne;清水化学社製)
6)澱粉分解物A(商品名:マルデックPH400P;DE値:33;昭和産業社製)
7)澱粉分解物B(商品名:SPD;DE値:30;昭和産業社製)
8)澱粉分解物C(商品名:パインデックス#3;DE値:25;松谷化学社製)
9)澱粉分解物D(商品名:TK-16;DE値:18;松谷化学社製)
10)澱粉分解物E(商品名:パインデックス#2;DE値:11;松谷化学社製)
11)澱粉分解物F(商品名:パインデックス#100;DE値:4;松谷化学社製)
12)酢酸ナトリウム(商品名:無水酢酸ソーダ;大東化学社製)
13)氷酢酸(商品名:80%純良酢酸;ダイセル社製)
14)水
【0028】
(2)米飯用品質改良剤の配合
上記原材料を用いて作製した米飯用品質改良剤1~19の配合組成を表1及び2に示した。この内、米飯用品質改良剤1~11は本発明に係る実施例であり、米飯用品質改良剤12~19はそれらに対する比較例である。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
(3)米飯用品質改良剤の製造方法
表1及び2の配合割合に基づいて水に各原材料を加え、TKミキサー(型式:TK HOMOMIXER MARK II、プライミクス社製)を用いて該混合物を約70℃で5,000rpmにて5分間攪拌・溶解し、溶解液を得た。該溶解液を室温で40℃以下に冷却し、常温で液状の米飯用品質改良剤1~19を得た。また、各改良剤の作製量は500gとした。
【0032】
[試験例]
(1)米飯の作製
生米(商品名:無洗米コシヒカリ;千田みずほ社製)300gに水450gを加えて、室温で30分間静置した後、これに米飯用品質改良剤1~19各3gを加え、電気炊飯器(型式:JAI-R551:タイガー魔法瓶社製)で炊飯した。次に、炊き上がった米飯を包装容器(蓋のサイズ:110mm×130mm×18mm;蓋の材質:厚さ0.15mmのポリスチレン製シート;本体のサイズ:110mm×130mm×15mm;本体の材質:厚さ0.35mmのポリスチレン及びポリプロピレン製シート)に100gずつ詰めて粗熱を取った。
【0033】
(2)作製直後の米飯の評価試験
(1)の方法で米飯を作製した直後に、官能試験を行った。官能試験では、下記表3に示す評価基準に従い10名のパネラーで評価を行ない、評点の平均点を求め、以下の基準にしたがって記号化した。結果を表5に示す。
◎:平均値3.5以上
○:平均値2.5以上3.5未満
△:平均値1.5以上2.5未満
×:平均値1.5未満
【0034】
【表3】
【0035】
(3)チルド米飯の評価試験
(1)の方法で作製した米飯を包装容器に詰めた状態で約5℃の冷蔵庫(型式:503D;日立冷熱社製)内で48時間保存した後、電子レンジ(型式:NE-SS30;ナショナル社製)にて700Wで40秒加熱し、官能評価を行った。官能試験では、下記表4に示す評価基準に従い10名のパネラーで評価を行ない、評点の平均点を求め、以下の基準にしたがって記号化した。結果を表5に示す。
◎:平均値3.5以上
○:平均値2.5以上3.5未満
△:平均値1.5以上2.5未満
×:平均値1.5未満
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
表5の結果から、本発明の米飯用品質改良剤1~11を添加した米飯は、炊飯直後のみならずチルド米飯として低温下で保存した場合でも良好な食感が保持されていた。これに対し、比較例の米飯用品質改良剤12~19を添加した米飯は、いずれかの評価項目において「△」以下の評価であり、本発明の米飯用品質改良剤を添加した米飯に比べて劣っていた。