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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142229
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20220922BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20220922BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
E02F9/26 A
H04N7/18 J
G07C5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042329
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大岩 真隆
【テーマコード(参考)】
2D015
3E138
5C054
【Fターム(参考)】
2D015HA03
3E138AA06
3E138AA07
3E138MA02
3E138MA03
3E138MB08
3E138MC05
3E138MC06
3E138MD03
3E138ME02
3E138MF05
5C054CA04
5C054CC02
5C054DA07
5C054FC12
5C054GB02
5C054GD06
5C054HA30
(57)【要約】
【課題】事故発生時の映像を確実且つ効率的に記録することが可能なドライブレコーダを備えた作業機械を提供する。
【解決手段】ドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、作業機械100の周囲の映像を取得するカメラ22と、カメラ22により取得された映像を記憶すると共に、記憶された映像のうち、所定の抽出期間にカメラ22により取得された映像を抽出する制御装置20と、制御装置20により抽出された映像を記録する記録装置23とを備える。制御装置20は、作業機械100の周囲に存在する物体の位置と、作業機械100の操作レバーの操作状態とに基づいて、抽出期間を特定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライブレコーダを備えた作業機械であって、
前記作業機械の周囲の映像を取得するカメラと、
前記カメラにより取得された前記映像を記憶すると共に、記憶された前記映像のうち、所定の抽出期間において前記カメラにより取得された前記映像を抽出する制御装置と、
前記制御装置により抽出された前記映像を記録する記録装置と
を備え、
前記制御装置は、前記作業機械の周囲に存在する物体の位置と前記作業機械の操作レバーの操作状態とに基づいて、前記抽出期間を特定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記制御装置は、前記操作レバーの操作が検知され、且つ、前記作業機械の周囲に設定された危険範囲に存在する前記物体が検知された期間に基づいて、前記抽出期間を特定し、
前記危険範囲は、前記作業機械の制動操作が行われてから前記作業機械の動作が停止するまでの前記作業機械の動作範囲に基づいて設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記操作レバーの操作が検知され、且つ、前記危険範囲に前記物体が検知された時点を第1時点とし、前記第1時点の後、前記操作レバーの操作が検知されなくなった時点、又は、前記危険範囲に前記物体が検知されなくなった時点を第2時点とすると、
前記第1時点から第1所定時間遡った時点から、前記第2時点から第2所定時間経過した時点までの期間を前記抽出期間として特定する
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記抽出期間中に、前記操作レバーの操作の検知が途切れた場合、前記操作の検知が途切れていた時間が前記第2所定時間未満であれば、前記操作の検知が途切れていないとみなし、
前記抽出期間中に、前記危険範囲における前記物体の検知が途切れた場合、前記物体の検知が途切れていた時間が前記第2所定時間未満であれば、前記物体の検知が途切れていないとみなして、
前記抽出期間において前記カメラにより取得された映像を抽出する
ことを特徴とする請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記作業機械は、走行体を有し、
前記危険範囲は、前記走行体の走行を停止するための制動操作が行われてから走行が停止するまでの前記走行体の走行距離に基づいて設定される
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【請求項6】
前記作業機械は、前記物体を検知する物体検知装置を備え、
前記危険範囲は、前記走行体の走行方向において前記物体に最も接近する前記作業機械の部位と、前記物体検知装置との距離に基づいて設定される
ことを特徴とする請求項5に記載の作業機械。
【請求項7】
前記作業機械は、旋回体を有し、
前記危険範囲は、前記旋回体の旋回を停止するための制動操作が行われてから前記旋回が停止するまでの前記旋回体の旋回角度と、前記旋回体の最大旋回半径とに基づいて設定される
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【請求項8】
前記作業機械の前記動作範囲は、前記作業機械の動作状態に応じて変動し、
前記危険範囲は、前記動作範囲の変動に基づいて設定変更される
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブレコーダを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の分野においては、自動車の周囲の映像をドライブレコーダによって記録し、事故の発生原因や責任の所在の分析に利用することがある。自動車に搭載されたドライブレコーダは、事故発生時や急ブレーキ時の異常な加速度が検出されると、検出時の映像を記録し、記録容量が上限に達すると、古い映像から順に削除していく形式が一般的である。建設現場等において作業する作業機械においても、上記と同様にドライブレコーダに記録された映像を、事故の発生原因の分析等に利用するニーズがある。
【0003】
油圧ショベル等の作業機械では、掘削等の作業を正常に行っている状況であっても比較的大きな加速度が発生する。自動車用のドライブレコーダを作業機械に搭載しても、事故発生時の加速度と正常時の加速度とを区別して、事故発生時の映像だけを記録することは難しい。監視カメラのように映像を常時記録する形式のドライブレコーダを作業機械に搭載することが考えられる。
【0004】
特許文献1には、下部走行体、上部旋回体又は作業機が動作したときに、その動作に対応したカメラを複数のカメラから選択し、その動作中の映像を記録する作業機械が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-53537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、下部走行体、上部旋回体及び作業機は、同時並行的に動作して作業を行うことが多いので、特許文献1に記載の作業機械では、依然として膨大な映像を記録することとなる。これにより、特許文献1に記載の作業機械は、膨大な映像の中から事故発生時の映像だけを探索する必要があると共に、膨大な記録容量を確保する必要がある。更に、記録容量によっては、事故発生時の映像が削除されている可能性もある。
【0007】
上記事情に鑑みて、本発明は、事故発生時の映像を確実且つ効率的に記録することが可能なドライブレコーダを備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の作業機械は、ドライブレコーダを備えた作業機械であって、前記作業機械の周囲の映像を取得するカメラと、前記カメラにより取得された前記映像を記憶すると共に、記憶された前記映像のうち、所定の抽出期間において前記カメラにより取得された前記映像を抽出する制御装置と、前記制御装置により抽出された前記映像を記録する記録装置とを備え、前記制御装置は、前記作業機械の周囲に存在する物体の位置と前記作業機械の操作レバーの操作状態とに基づいて、前記抽出期間を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、事故発生時の映像を確実且つ効率的に記録することが可能な作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の作業機械の構成を示す図。
図2】作業機械に搭載されたドライブレコーダの構成を示す図。
図3】作業機械の走行時の危険範囲を説明するための図。
図4】旋回体の状態が図3とは異なる場合における作業機械の走行時の危険範囲を説明するための図。
図5】作業機械の旋回時の危険範囲を説明するための図。
図6】ドライブレコーダの制御装置によって行われる処理の流れを示すフローチャート。
図7】ドライブレコーダが映像の抽出及び記録を行うタイミングの一例を示すタイムチャート。
図8】ドライブレコーダが映像の抽出及び記録を行うタイミングの他の例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態において同一の符号を付された構成は、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0012】
本実施形態の作業機械100は、ドライブレコーダ200を備えた作業機械である。ドライブレコーダ200は、カメラ22により取得され、制御装置20に記憶された映像のうち、所定の抽出期間において取得された映像を抽出し、記録装置23に記録する。この抽出期間は、作業機械の周囲に存在する物体の位置と作業機械100の操作レバーの操作状態とに基づいて特定された期間である。
【0013】
図1は、本実施形態の作業機械100の構成を示す図である。
【0014】
本実施形態では、作業機械100として、掘削物の掘削作業及び掘削物の積み込み作業を行う油圧ショベルを例に挙げて説明する。作業機械100は、油圧ショベル以外の作業機械であってもよい。
【0015】
作業機械100は、クローラ式の走行装置により構成された走行体1と、走行体1の上部に旋回機構2を介して旋回可能に設けられた旋回体3と、旋回体3の前部に設けられたフロント作業機とを備える。フロント作業機は、旋回体3の前部に上下方向に回動可能に連結されたブーム4と、ブーム4の先端部に上下方向又は前後方向に回動可能に連結されたアーム5、アーム5の先端部に上下方向又は前後方向に回動可能に連結されたバケット6とを含む。ブーム4、アーム5及びバケット6は、それぞれ、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9によって油圧駆動される。
【0016】
旋回体3の前部には、作業機械100の操作者が搭乗する運転室10が設けられる。運転室10の後方には、エンジン等の動力源が配置される機関室11が設けられる。運転室10の内部には、走行体1、旋回体3及びフロント作業機を操作するための操作レバーと、操作レバーの操作を制限するゲートロックレバーとが設けられる。操作レバーは、走行体1の走行を操作するペダル付きの走行操作レバーと、旋回体3及びフロント作業機の旋回並びに回動を操作するフロント操作レバーとを含む。操作レバーは、制御装置20に接続され、操作レバーの操作状態を示すレバー操作信号を制御装置20へ送信する。レバー操作信号は、操作レバーが操作されるとONを示し、操作が停止するとOFFを示すパルス信号であってもよい。ゲートロックレバーは、ONであれば操作レバーの操作を無効にし、OFFであれば操作レバーの操作を有効にする。ゲートロックレバーは、制御装置20に接続され、ゲートロックレバーの操作状態を示すゲートロック信号を制御装置20へ送信する。ゲートロック信号は、ゲートロックレバーのON又はOFFの状態を示すパルス信号であってもよい。
【0017】
図2は、作業機械100に搭載されたドライブレコーダ200の構成を示す図である。
【0018】
ドライブレコーダ200は、作業機械100の周囲に存在する物体を検知する物体検知装置21と、作業機械100の周囲の映像を取得するカメラ22と、運転室10の内部の映像を取得する室内カメラ25とを備える。更に、ドライブレコーダ200は、カメラ22により取得された映像の一部を記録する記録装置23と、作業機械100の外部との通信を行う通信装置24と、ドライブレコーダ200の各構成要素を統括的に制御する制御装置20とを備える。
【0019】
物体検知装置21は、赤外線センサ、超音波センサ、レーダー、LiDAR(Light Detection and Ranging)又はカメラ等によって構成される。物体検知装置21は、作業機械100の周囲全体に亘って物体を検知できるように、旋回体3の周縁部に1又は複数個配置される。物体検知装置21は、検知された物体までの距離及び当該物体が検知された方向を測定することによって、検知された物体の位置を測定することができる。測定される物体の位置は、作業機械100に対する物体の相対位置である。物体検知装置21は、制御装置20に接続され、検知された物体の位置に関する情報を、制御装置20へ送信する。
【0020】
カメラ22は、作業機械100の周囲全体の映像を取得できるように、旋回体3の周縁部に1又は複数個配置される。カメラ22は、制御装置20に接続され、取得された映像を制御装置20へ送信する。カメラ22は、作業機械100の周囲の映像を常時取得し、その映像をリアルタイムに制御装置20へ送信することができる。
【0021】
記録装置23は、運転室10の内部に配置される。記録装置23は、制御装置20に接続され、制御装置20から送信されたカメラ22の映像を記録する。記録装置23は、通信装置24に接続され、制御装置20からの指令に基づいて、記録された映像を通信装置24に送信する。記録装置23は、制御装置20から送信されたカメラ22の映像の他、室内カメラ25の映像も記録することができる。
【0022】
通信装置24は、無線通信アンテナ及び通信モジュールにより構成される。記録装置23は、運転室10の内部に配置される。通信装置24は、制御装置20及び記録装置23に接続され、制御装置20からの指令に基づいて、記録装置23から送信された映像を、外部のサーバ250に送信する。
【0023】
制御装置20は、CPU、ROM及びRAM等によって構成される。制御装置20は、運転室10の内部に配置される。制御装置20は、カメラ22の映像を受信すると、受信した映像を一時的に記憶すると共に、容量が上限に達すると、古い映像から順に削除していく。
【0024】
制御装置20は、記憶された映像のうち、所定の抽出期間においてカメラ22により取得された映像を抽出する。具体的には、制御装置20は、作業機械100の周囲に存在する物体の位置と、作業機械100の操作レバーの操作状態とに基づいて、抽出期間を特定する。制御装置20は、記憶された映像のうち、特定された抽出期間においてカメラ22により取得された映像を抽出し、記録装置23に記録させる。制御装置20は、物体検知装置21から送信される物体の位置に関する情報に基づいて、作業機械100の周囲に存在する物体の位置を把握することができる。制御装置20は、操作レバーから送信されるレバー操作信号に基づいて、操作レバーの操作状態を把握することができる。
【0025】
詳細には、制御装置20は、操作レバーの操作が検知され、且つ、作業機械100の周囲に設定された危険範囲に存在する物体が検知された期間に基づいて、抽出期間を特定する。作業機械100の周囲に設定された危険範囲に存在する物体が検知されたことは、物体検知装置21により検知された物体が危険範囲に位置することを意味する。危険範囲とは、作業機械100が危険範囲に存在する物体との接触を回避することが困難な範囲である。危険範囲は、作業機械100の操作者によって制動操作が行われてから作業機械100の動作が実際に停止するまでの作業機械100の動作範囲に基づいて設定される。危険範囲に存在する物体は、作業機械100と接触する可能性が高い。危険範囲については、図3図5を用いて後述する。映像の抽出については、図6図8を用いて後述する。
【0026】
また、制御装置20は、記録装置23に記録された映像を、通信装置24によってサーバ250へ送信させる。サーバ250は、通信装置24から送信された映像を保存する。サーバ250は、複数の作業機械100から送信された映像を保存して、事故発生時の映像を集約したデータベースを作成することが可能である。
【0027】
図3は、作業機械100の走行時の危険範囲を説明するための図である。図3では、作業機械100が後進走行し、走行方向の先に作業員O1が存在する状況を想定している。図3では、作業機械100の操作者が作業員O1に気づいて走行体1の走行を停止するための制動操作を行う状況を想定している。なお、図3において、符号21aは、物体検知装置21の検知範囲を示し、符号22aは、カメラ22の撮影範囲を示す。
【0028】
ここで、物体検知装置21と作業員O1との距離をLc[m]とする。走行体1の走行を停止するための制動操作が行われてから走行が停止するまでの走行体1の走行距離をLs[m]とする。走行体1の走行速度をVs[km/h]とする。操作者の反応時間をTr[sec]とする。作業機械100の応答遅延時間をTs[sec]とする。走行体1のスリップ距離をLe[m]とする。
【0029】
制動操作が行われてから走行停止までの走行体1の走行距離Lsは、数式1によって表すことができる。
【数1】
【0030】
図3に示す状況では、作業員O1との距離Lcが、制動操作から走行停止までの走行距離Ls以下の場合(Lc≦Ls)、操作者が作業員O1に気づいて制動操作を行っても、作業員O1との接触を回避することが困難である。そこで、制御装置20は、作業員O1との距離Lcが、制動操作から走行停止までの走行距離Ls以下となる範囲(Lc≦Ls)を、危険範囲に設定する。
【0031】
例えば、走行体1の走行速度Vsを高速モードの速度である5.5[km/h]=1.528[m/sec]、操作者の反応時間Trを1.0[sec]、作業機械100の応答遅延時間Tsを0.5[sec]、走行体1のスリップ距離Leを0.2[m]とする。制動操作から走行停止までの走行距離Lsは、Ls=1.528×(1.0+0.5)+0.2=2.49[m]となる。このとき、制御装置20は、例えば、物体検知装置21から半径2.49[m]以内の範囲を、危険範囲に設定することができる。このように、図3に示す状況では、危険範囲は、走行体1の走行を停止するための制動操作が行われてから走行が停止するまでの走行体1の走行距離Lsに基づいて設定される。
【0032】
図4は、旋回体3の状態が図3とは異なる場合における作業機械100の走行時の危険範囲を説明するための図である。
【0033】
図4では、旋回体3を90[deg]右旋回させた状態にて作業機械100が後進走行し、走行方向の先に作業員O1が存在する状況を示している。図4では、作業機械100の操作者が作業員O1に気づいて走行体1の走行を停止するための制動操作を行う状況を想定している。図4では、走行体1の走行方向が旋回体3の向きに対して90[deg]旋回しているので、作業機械100と作業員O1との正味の距離は、距離Lc-距離Lbとなる。距離Lb[m]は、走行体1の走行方向において作業員O1に最も接近する作業機械100の部位と、物体検知装置21との距離である。図4では、距離Lbは、走行体1の後端部と物体検知装置21との距離である。本実施形態では、距離Lbを作業機械100のはみ出し距離とも称する。距離Lcは、図3と同様に、物体検知装置21と作業員O1との距離である。
【0034】
図4に示す状況では、作業員O1との正味の距離(Lc-Lb)が、制動操作から走行停止までの走行距離Ls以下の場合((Lc-Lb)≦Ls)、操作者が作業員O1に気づいて制動操作を行っても、作業員O1との接触を回避することが困難である。そこで、制御装置20は、作業員O1との距離Lcが、制動操作から走行停止までの走行距離Lsと、作業機械100のはみ出し距離Lbとの合計以下となる範囲(Lc≦(Ls+Lb))を、危険範囲に設定する。
【0035】
例えば、走行体1の走行速度Vsを低速モードの速度である3.5[km/h]=0.972[m/sec]、操作者の反応時間Trを1.0[sec]、作業機械100の応答遅延時間Tsを0.5[sec]、走行体1のスリップ距離Leを0.2[m]、作業機械100のはみ出し距離Lbを0.2[m]とする。制動操作から走行停止までの走行距離Lsは、Ls=0.972×(1.0+0.5)+0.2=1.66[m]となる。制動操作から走行停止までの走行距離Lsと、作業機械100のはみ出し距離Lbとの合計は、1.66+0.2=1.86[m]となる。このとき、制御装置20は、例えば、物体検知装置21から半径1.86[m]以内の範囲を、危険範囲に設定することができる。このように、図4に示す状況では、危険範囲は、走行体1の走行を停止するための制動操作が行われてから走行が停止するまでの走行体1の走行距離Lsに基づいて設定される。加えて、危険範囲は、走行体1の走行方向において作業員O1に最も接近する作業機械100の部位と物体検知装置21との距離Lbに基づいて設定される。
【0036】
図5は、作業機械100の旋回時の危険範囲を説明するための図である。図5は、作業機械100を上方から視た図である。図5では、旋回体3を左旋回し、作業機械100の右方に作業員O1が存在する状況を想定している。図5では、作業機械100の操作者が作業員O1に気づいて旋回体3の旋回を停止するための制動操作を行う状況を想定している。
【0037】
ここで、旋回体3の最大旋回半径をRmax[m]とする。後端旋回半径をRr[m]とする。旋回体3の旋回方向において作業員O1に接近する旋回体3の後端位置をPrとする。旋回体3の後端位置Prにおける前後方向に沿った成分をLr[m]とする。旋回体3の後端位置Prにおける左右方向に沿った成分をBr[m]とする。旋回中心Oと作業員O1との距離をRo[m]とする。作業員O1の位置をPo1とする。作業員O1の位置Po1における前後方向に沿った成分をLo1[m]とする。作業員O1の位置Po1における左右方向に沿った成分をBo1[m]とする。
【0038】
旋回中心Oと作業員O1との距離Roは、数式2によって表すことができる。
【数2】
【0039】
旋回体3の旋回方向において作業員O1に最も接近する作業機械100の部位の位置をPsとする。本実施形態では、旋回体3の旋回方向において作業員O1に最も接近する作業機械100の部位を、作業機械100の最近接部位とも称する。作業機械100の最接近部位の位置Psにおける前後方向に沿った成分をLs[m]とする。作業機械100の最接近部位の位置Psにおける左右方向に沿った成分をBs[m]とする。作業機械100の最接近部位が作業員O1に接触するために要する旋回体3の旋回角度を、θt[rad]とする。
【0040】
作業機械100の最接近部位が作業員O1に接触するために要する旋回体3の旋回角度θtは、作業員O1の位置Po1と旋回中心Oとを結ぶ線分と、作業機械100の最接近部位の位置Psと旋回中心Oとを結ぶ線分とが成す角度と考えることができる。角度θtは、数式3によって表すことができる。
【数3】
【0041】
また、旋回体3の旋回速度をNs[rad/sec]とする。操作者の反応時間をTr[sec]とする。作業機械100の応答遅延時間をTs[sec]とする。旋回体3の旋回流れ角度をθr[rad]とする。旋回体3のスリップ角度をθe[rad]とする。旋回体3の旋回バックラッシュ角度をθb[rad]とする。旋回体3の旋回を停止するための制動操作が行われてから旋回が停止するまでの旋回体3の旋回角度をθs[rad]とする。
【0042】
制動操作が行われてから旋回停止までの旋回体3の旋回角度θsは、数式4によって表すことができる。
【数4】
【0043】
図5に示す状況では、作業員O1と旋回中心Oとの距離Roが、最大旋回半径Rmax以下の場合(Ro≦Rmax)、作業機械100が作業員O1と接触する可能性が生じる。加えて、作業員O1との接触に要する旋回角度θtが、制動操作から旋回停止までの旋回角度θs以下の場合(θt≦θs)、操作者が作業員O1に気づいて制動操作を行っても、作業員O1との接触を回避することが困難である。そこで、制御装置20は、作業員O1と旋回中心Oとの距離Roが最大旋回半径Rmax以下であり、且つ、作業員O1との接触に要する旋回角度θtが、制動操作から旋回停止までの旋回角度θs以下の範囲(Ro≦Rmax且つθt≦θs)を、危険範囲に設定する。
【0044】
例えば、旋回体3の旋回速度Nsを0.3π[rad/sec]、操作者の反応時間Trを1.0[sec]、作業機械100の応答遅延時間Tsを0.1[sec]、旋回体3の旋回流れ角度θrを0.1π[rad]、旋回体3のスリップ角度θeを0.01π[rad]、旋回体3の旋回バックラッシュ角度θbを0.01π[rad]とする。制動操作から旋回停止までの旋回角度θsは、θs=0.3π×(1.0+0.1)+0.1π+0.01π+0.01π=0.45π[rad]=81[deg]となる。このとき、作業員O1と旋回中心Oとの距離Roが最大旋回半径Rmax以下であれば、制御装置20は、例えば、作業機械100の最接近部位から旋回方向にθt=81deg旋回した半径Roの範囲を、危険範囲に設定することができる。このように、図5に示す状況では、危険範囲は、旋回体3の旋回を停止するための制動操作が行われてから旋回が停止するまでの旋回体3の旋回角度θsに基づいて設定される。加えて、危険範囲は、旋回体3の最大旋回半径Rmaxに基づいて設定される。
【0045】
図6は、ドライブレコーダ200の制御装置20によって行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【0046】
操作者によって作業機械100のキースイッチがONにされると、作業機械100の車体電源がONになり、ドライブレコーダ200が起動する。ドライブレコーダ200が起動すると、制御装置20は、ステップS601~ステップS616に示す処理を、所定周期にて繰り返し行う。
【0047】
ステップS601において、制御装置20は、作業機械100の周囲の映像を常時取得する処理をカメラ22に開始させる。制御装置20は、カメラ22により常時取得された映像の記憶を開始する。
【0048】
ステップS602において、制御装置20は、フラグレジスタ等に記憶されるフラグをリセットするべくOFFにする。このフラグは、「ON」、「OFF」、「待機」の3つのステータスを示すことができる。フラグがONの場合、制御装置20に記憶された映像のうちから一部の映像を抽出して記録装置23に記録させる状況であることを示す。フラグがOFFの場合、制御装置20に記憶された映像のうちから一部を抽出して記録装置23に記録させない状況であることを示す。フラグが待機の場合、制御装置20に記憶された映像のうちから一部を抽出して記録装置23に記録させるか否かの判定を保留する状況であることを示す。
【0049】
ステップS603において、制御装置20は、ゲートロックレバーの操作状態を示すゲートロック信号に基づいて、ゲートロックレバーがOFFであるか否か判定する。制御装置20は、ゲートロックレバーがOFFでない場合、ステップS611へ移行する。制御装置20は、ゲートロックレバーがOFFである場合、ステップS604へ移行する。
【0050】
ステップS604において、制御装置20は、操作レバーの操作状態を示すレバー操作信号がONであるか否かを判定する。レバー操作信号がONである場合、操作レバーの操作が検知されたことを示す。レバー操作信号がOFFである場合、操作レバーの操作が検知されていないことを示す。制御装置20は、レバー操作信号がONでない場合、ステップS611へ移行する。制御装置20は、レバー操作信号がONである場合、ステップS605へ移行する。
【0051】
ステップS605において、制御装置20は、危険範囲に存在する物体が物体検知装置21により検知されたか否かを判定する。制御装置20は、危険範囲に存在する物体が検知された場合、ステップS606へ移行する。制御装置20は、危険範囲に存在する物体が検知されなかった場合、ステップS611へ移行する。
【0052】
ステップS606において、制御装置20は、フラグがOFFであるか否かを判定する。ステップS606においてフラグがOFFである場合は、操作レバーの操作が検知され、且つ、危険範囲に存在する物体が検知された状況が、フラグをOFFにしてから初めて到来したことを意味している。制御装置20は、フラグがOFFである場合、ステップS608へ移行する。制御装置20は、フラグがOFFでない場合、ステップS607へ移行する。
【0053】
ステップS607において、制御装置20は、フラグは待機であるか否かを判定する。操作レバーの操作が検知され、且つ、危険範囲に存在する物体が検知された状況が一時的に途切れた場合、制御装置20は、直ちにフラグをOFFにするのではく、フラグを待機にする(ステップS612)。ステップS607においてフラグが待機である場合は、操作レバーの操作が検知され、且つ、危険範囲に存在する物体が検知された状況が再度到来したことを意味している。ステップS607においてフラグが待機でない場合は、フラグがONであることを意味しており、操作レバーの操作が検知され、且つ、危険範囲に存在する物体が検知された状況が継続していることを意味している。制御装置20は、フラグが待機である場合、ステップS609へ移行する。制御装置20は、フラグが待機でない場合、ステップS610へ移行する。
【0054】
ステップS608において、制御装置20は、操作レバーの操作が検知され、且つ、危険範囲に存在する物体が検知された時点を、第1時点として特定する。そして、制御装置20は、第1時点から第1所定時間遡った時点までの映像を特定する。特定された映像は、ステップS610において抽出され、記録装置23に記録される。第1所定時間は、予め定められた任意の時間である。本実施形態では、第1所定時間は、例えば30秒と予め定められているものとする。すなわち、図6の例では、制御装置20は、操作レバーの操作が検知され、且つ、危険範囲に存在する物体が検知された時点以前の30秒間の映像を特定する。
【0055】
ステップS609において、制御装置20は、フラグをONにする。その後、制御装置20は、ステップS610へ移行する。
【0056】
ステップS610において、制御装置20は、記憶された映像のうちから現時点の映像を抽出して記録装置23に記録させる記録処理を行う。なお、制御装置20は、ステップS608において特定された映像を記録装置23に記録させていない場合には、ステップS608において特定された映像を、制御装置20に記憶された映像のうちから抽出して記録装置23に記録させる。その後、制御装置20は、ステップS603へ移行する。
【0057】
ステップS611において、制御装置20は、フラグがONであるか否かを判定する。
ステップS611においてフラグがONである場合、操作レバーの操作が検知されなくなった状況、又は、危険範囲に存在する物体が検知されなくなった状況が、フラグをONにしてから初めて到来したことを意味している。制御装置20は、フラグがONでない場合、ステップS613へ移行する。制御装置20は、フラグがONである場合、ステップS612へ移行する。
【0058】
ステップS612において、制御装置20は、フラグを待機にする。制御装置20は、操作レバーの操作が検知されなくなった時点、又は、危険範囲に存在する物体が検知されなくなった時点を、第2時点として特定する。制御装置20は、第2時点からの経過時間をカウントする。その後、制御装置20は、ステップS610へ移行する。
【0059】
ステップS613において、制御装置20は、フラグが待機であるか否かを判定する。ステップS613においてフラグが待機である場合、操作レバーの操作が検知されなくなった状況、又は、危険範囲に存在する物体が検知されなくなった状況が第2所定時間継続していないことを意味している。第2所定時間は、予め定められた任意の時間である。本実施形態では、第2所定時間は、例えば30秒と予め定められているものとする。ステップS613においてフラグが待機でない場合、フラグがOFFであることを意味しており、操作レバーの操作が検知されなくなった状況、又は、危険範囲に存在する物体が検知されなくなった状況が第2所定時間以上継続していることを意味している。すなわち、ステップS613においてフラグが待機でない場合、制御装置20に記憶された映像のうちから一部を抽出して記録装置23に記録させない状況であることを意味している。制御装置20は、フラグが待機である場合、ステップS614へ移行する。制御装置20は、フラグが待機でない場合、ステップS603へ移行する。
【0060】
ステップS614において、制御装置20は、フラグが待機である状態が第2所定時間継続したか否かを判定する。すなわち、図6の例では、制御装置20は、フラグが待機である状態が30秒継続したか否かを判定する。ステップS614においてフラグが待機である状態が第2所定時間継続した場合、第2時点から第2所定時間経過した時点が到来したことを意味している。制御装置20は、フラグが待機である状態が第2所定時間継続していない場合、ステップS610へ移行し、記録処理を継続する。制御装置20は、フラグが待機である状態が第2所定時間継続した場合、ステップS615へ移行する。
【0061】
ステップS615において、制御装置20は、記録処理を終了し、記録装置23に記録された映像をサーバ250に保存させる保存処理を行う。すなわち、制御装置20は、第2時点から第2所定時間経過した時点が到来すると、記録処理を終了する。これにより、記録装置23に記録される映像は、第1時点から第1所定時間遡った時点から、第2時点から第2所定時間経過した時点までの期間においてカメラ22により取得された映像となる。本実施形態では、第1時点から第1所定時間遡った時点から、第2時点から第2所定時間経過した時点までの期間を、抽出期間とも称する。抽出期間は、抽出対象の映像がカメラ22により取得された期間である。制御装置20は、第1時点及び第2時点を特定することによって、抽出期間を特定することができる。制御装置20は、記憶された映像のうちから、当該抽出期間においてカメラ22より取得された映像を抽出し、記録装置23に記録させる。そして、制御装置20は、記録装置23に記録された映像をサーバ250に保存させる。
【0062】
ステップS616において、制御装置20は、フラグをOFFにする。その後、制御装置20は、ステップS603へ移行する。
【0063】
図7は、ドライブレコーダ200が映像の抽出及び記録を行うタイミングの一例を示すタイムチャートである。
【0064】
操作者によって作業機械100のキースイッチがONにされると(時刻t1)、作業機械100の車体電源がONになり、ドライブレコーダ200が起動する。ドライブレコーダ200が起動すると、カメラ22は、作業機械100の周囲の映像を常時取得する処理を開始する。制御装置20は、カメラ22により常時取得された映像の記憶を開始する。作業機械100のエンジンが始動し(時刻t2)、操作者によってゲートロックレバーがOFFにされると(時刻t3)、作業機械100は、操作レバーの操作が有効な状態になる。
【0065】
その後、レバー操作信号がONになり、操作レバーの操作が検知されると共に、危険範囲に存在する物体が物体検知装置21により検知されたとする(時刻t4)。この場合、制御装置20は、フラグをONにし、時刻t4を第1時点として特定し、時刻t4から第1所定時間(30秒)遡った時点までの映像を抽出し、記録装置23に記録させる。制御装置20は、時刻t4から時刻t5までの間、カメラ22により取得され制御装置20に記憶された映像をそのまま抽出し、記録装置23に記録させる。
【0066】
その後、レバー操作信号がONのままであり、物体検知装置21により物体が検知されなくなったとする(時刻t5)。すなわち、危険範囲に存在する物体が検知されなくなったとする。この場合、制御装置20は、フラグを待機し、時刻t5を第2時点として特定し、時刻t5からの経過時間をカウントする。加えて、制御装置20は、時刻t5から第2所定時間(30秒)が経過した時点までの間、カメラ22より取得され制御装置20に記憶された映像をそのまま抽出し、記録装置23に記録させる。制御装置20は、時刻t5から第1所定時間(30秒)が経過すると、映像の抽出及び記録装置23への記録を終了し、フラグをOFFにする。
【0067】
すなわち、制御装置20は、操作レバーの操作が検知され、且つ、危険範囲に存在する物体が検知された時刻t4を第1時点として特定し、危険範囲に存在する物体が検知されなくなった時刻t5を第2時点として特定する。制御装置20は、第1時点である時刻t4から第1所定時間遡った時点から、第2時点である時刻t5から第2所定時間経過した時点までの期間を、抽出期間として特定する。制御装置20は、特定された抽出期間においてカメラ22により取得された映像を抽出し、記録装置23へ記録させる。
【0068】
その後、レバー操作信号がONのままであり、物体検知装置21により物体が検知されるものの、当該物体が危険範囲に存在しない場合には(時刻t6)、制御装置20は、フラグはOFFのままとし、映像の抽出及び記録装置23への記録を行わない。また、危険範囲に存在する物体が検知されているが、レバー操作信号がOFFになった場合には(時刻t10)、制御装置20は、フラグをONから待機にし、時刻t10から第2所定時間経過後まで映像を抽出して、記録装置23に記録させる。第2所定時間経過後、制御装置20は、危険範囲に存在する物体が検知されていても、フラグをOFFにし、映像の抽出及び記録装置23への記録を終了する(時刻t11)。
【0069】
その後、作業が終了すると、操作者によって、ゲートロックレバーがONにされ(時刻t12)、作業機械100のエンジンが停止され(時刻t13)、作業機械100のキースイッチがOFFにされる(時刻t14)。作業機械100の車体電源は、作業機械100のキースイッチがOFFにされた時点(時刻t14)から遅延してOFFになる(時刻t15)。作業機械100の車体電源がOFFになると、ドライブレコーダ200の電源もOFFになり、カメラ22が映像を常時取得する処理も終了する(時刻t15)。
【0070】
図8は、ドライブレコーダ200が映像の抽出及び記録を行うタイミングの他の例を示すタイムチャートである。
【0071】
ドライブレコーダ200は、図7と同様に、作業機械100のキースイッチ及び車体電源がONになると起動し、カメラ22によって作業機械100の周囲の映像を常時取得する処理を開始する(時刻t21)。制御装置20は、カメラ22により常時取得された映像の記憶を開始する。そして、作業機械100のエンジンが始動し(時刻t22)、操作者によってゲートロックレバーがOFFにされると(時刻t23)、作業機械100は、操作レバーの操作が有効な状態になる。
【0072】
その後、レバー操作信号がONになり、操作レバーの操作が検知されると共に(時刻t24)、危険範囲に存在する物体が物体検知装置21により検知されたとする(時刻t25)。この場合、制御装置20は、図7と同様に、時刻t25を第1時点として特定し、時刻t25から第1所定時間(30秒)遡った時点(時刻t24)までの映像を抽出し、記録装置23に記録させる。制御装置20は、時刻t25から時刻t26までの間、カメラ22により取得され制御装置20に記憶された映像をそのまま抽出し、記録装置23に記録させる。
【0073】
その後、危険範囲に存在する物体が検知されたままであるが、レバー操作信号がOFFになり、操作レバーの操作が検知されなくなったとする(時刻t26)。この場合、制御装置20は、フラグを待機にし、時刻t26を第2時点とし、時刻t26からの経過時間をカウントする。時刻t26から第2所定時間経過する前に、レバー操作信号が再びONになり、操作レバーの操作が再び検知されたとする(時刻t27)。制御装置20は、時刻t26から時刻t27までの経過時間が、第2所定時間未満であれば、フラグをONにし、時刻t26を第2時点でないとして、映像の抽出及び記録装置23への記録を継続する。
【0074】
その後、レバー操作信号がONのままであり、物体検知装置21により物体が検知されなくなったとする(時刻t28)。すなわち、危険範囲に存在する物体が検知されなくなったとする。この場合、制御装置20は、フラグを待機にし、時刻t28を第2時点として特定し、時刻t28からの経過時間をカウントする。制御装置20は、時刻t28から第2所定時間(30秒)が経過すると、映像の抽出及び記録装置23への記録を終了し、フラグをOFFにする(時刻t29)。
【0075】
すなわち、制御装置20は、第1時点である時刻t25から第1所定時間遡った時点である時刻t24から、第2時点である時刻t28から第2所定時間経過した時点である時刻t29までの期間を、抽出期間として特定する。制御装置20は、特定された抽出期間においてカメラ22により取得された映像を抽出し、記録装置23へ記録させる。この抽出期間中、制御装置20は、操作レバーの操作の検知が途切れた場合(時刻t26)、当該検知が途切れている時間(時刻t26から時刻t27)が第2所定時間未満であれば、操作レバーの操作の検知が途切れていないとみなし、この抽出期間に取得された映像の抽出及び記録装置23への記録を継続する。
【0076】
その後、レバー操作信号がONになり(時刻t30)、危険範囲に存在する物体が検知された場合(時刻t31)、制御装置20は、フラグをONにし、映像の抽出及び記録装置23への記録を行う。その後、レバー操作信号はONのままであるが、危険範囲に存在する物体が検知されなくなったとする(時刻t32)。この場合、制御装置20は、フラグを待機にし、時刻t32を第2時点とし、時刻t32からの経過時間をカウントする。時刻t32から第2所定時間経過する前に、危険範囲に存在する物体が再び検知されたとする(時刻t33)。制御装置20は、時刻t32から時刻t33までの経過時間が、第2所定時間未満であれば、フラグをONにし、時刻t32を第2時点でないとして、映像の抽出及び記録装置23への記録を継続する。
【0077】
その後、レバー操作信号がONのままであり、物体検知装置21により物体が検知されなくなったとする(時刻t34)。すなわち、危険範囲に存在する物体が検知されなくなったとする。この場合、制御装置20は、フラグを待機にし、時刻t34を第2時点として特定し、時刻t34からの経過時間をカウントする。制御装置20は、時刻t34から第2所定時間(30秒)が経過すると、映像の抽出及び記録装置23への記録を終了し、フラグをOFFにする(時刻t35)。
【0078】
すなわち、制御装置20は、第1時点である時刻t31から第1所定時間遡った時点である時刻t30から、第2時点である時刻t34から第2所定時間経過した時点である時刻t35までの期間を、抽出期間として特定する。制御装置20は、特定された抽出期間においてカメラ22により取得された映像を抽出し、記録装置23へ記録させる。この抽出期間中、制御装置20は、危険範囲に存在する物体の検知が途切れた場合(時刻t32)、当該検知が途切れた時間(時刻t32から時刻t33)が第2所定時間未満であれば、危険範囲に存在する物体の検知が途切れていないとみなし、この抽出期間に取得された映像の抽出及び記録装置23への記録を継続する。
【0079】
その後、作業が終了すると、操作者によって、ゲートロックレバーがONにされ(時刻t36)、作業機械100のエンジンが停止され(時刻t37)、作業機械100のキースイッチがOFFにされる(時刻t38)。作業機械100の車体電源は、作業機械100のキースイッチがOFFにされた時点(時刻t38)から遅延してOFFになる(時刻t39)。作業機械100の車体電源がOFFになると、ドライブレコーダ200の電源もOFFになり、カメラ22が映像を常時取得する処理も終了する(時刻t39)。
【0080】
以上のように、本実施形態の作業機械100は、ドライブレコーダ200を備えた作業機械である。本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、作業機械100の周囲の映像を取得するカメラ22を備える。本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、カメラ22により取得された映像を記憶すると共に、記憶された映像のうち、所定の抽出期間においてカメラ22により取得された映像を抽出する制御装置20を備える。本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、制御装置20により抽出された映像を記録する記録装置23を備える。制御装置20は、作業機械100の周囲に存在する物体の位置と、作業機械100の操作レバーの操作状態とに基づいて、抽出期間を特定する。
【0081】
これにより、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、正常時と事故発生時とを明確に区別して、事故発生時の映像だけを記録することができる。本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、必要な映像だけを記録することができ、膨大な映像の中から事故発生時の映像だけを探索する必要がない。本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、従来よりも記録容量を確保し易くなり、事故発生時の映像が削除され難くなる。よって、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、事故発生時の映像を確実且つ効率的に記録することができる。
【0082】
作業機械のドライブレコーダとしては、電波を発信するタグを現場作業員に携帯させて、作業機械がその電波を検知した場合にカメラによって映像を取得し、記録装置に記録することも考えられる。電波の通信距離は、一般的にアンテナを中心として、どの方向にも同一である。作業機械は、旋回体に対してフロント作業機のリーチが長いので、フロント作業機をカバーする電波受信範囲のアンテナを用意する必要がある。この場合、作業機械は、旋回体の周囲の安全な位置に存在する作業員を不必要に検知してしまうので、事故発生時の映像を確実且つ効率的に記録することは難しい。
【0083】
これに対して、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、制御装置20が、操作レバーの操作が検知され、且つ、作業機械100の周囲に設定された危険範囲に存在する物体が検知された期間に基づいて、抽出期間を特定する。制御装置20は、特定された抽出期間においてカメラ22により取得された映像を、記憶された映像のうちから抽出する。危険範囲は、作業機械100の制動操作が行われてから作業機械100の動作が停止するまでの作業機械100の動作範囲に基づいて設定される。
【0084】
これにより、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、操作レバーの操作が検知され、且つ、作業機械100と接触する可能性が高い危険範囲に物体が存在する場合に限って、映像を抽出し記録する。例えば、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、旋回体3の周囲の安全な位置に存在する作業員を不必要に検知することもないので、事故発生時の映像を更に確実且つ効率的に記録することができる。
【0085】
更に、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、制御装置20が、操作レバーの操作が検知され、且つ、危険範囲に物体が検知された時点を第1時点とする。制御装置20は、第1時点の後、操作レバーの操作が検知されなくなった時点、又は、危険範囲に物体が検知されなくなった時点を第2時点とする。制御装置20は、第1時点から第1所定時間遡った時点から、第2時点から第2所定時間経過した時点までの期間を抽出期間として特定する。制御装置20は、特定された抽出期間においてカメラ22により取得された映像を、記憶された映像のうちから抽出し、記録装置23へ記録させる。
【0086】
これにより、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、事故発生時前後に時間的余裕を持たせて映像を抽出し、記録することができるので、事故発生時の映像を確実に抽出し、記録することができる。よって、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、事故発生時の映像を更に確実且つ効率的に記録することができる。
【0087】
更に、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100では、制御装置20が、抽出期間中に、操作レバーの操作の検知が途切れた場合、操作の検知が途切れていた時間が、第2所定時間未満であれば、操作の検知が途切れていないとみなす。また、制御装置20は、抽出期間中に、危険範囲における物体の検知が途切れた場合、物体の検知が途切れていた時間が、第2所定時間未満であれば、物体の検知が途切れていないとみなす。そして、制御装置20は、抽出期間においてカメラ22により取得された映像を、記憶された映像のうちから抽出し、記録装置23に記録させる。
【0088】
これにより、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、操作レバーの操作が一時的に検知されなくなったり、危険範囲に存在する物体が一時的に検知されなくなったりする場合であっても、映像を連続して抽出し、記録することができる。本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、事故発生時の映像を確実に記録することができると共に、記録された映像が細切れにならず事故発生時の状況を効率的に確認することができる。よって、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、事故発生時の映像を更に確実且つ効率的に記録することができる。
【0089】
更に、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、危険範囲が、走行体1の走行を停止するための制動操作が行われてから走行が停止するまでの走行体1の走行距離Lsに基づいて設定される。
【0090】
これにより、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、作業機械100の走行時に走行方向の先に物体が存在する状況において、事故発生時の映像を確実且つ効率的に記録することができる。
【0091】
更に、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、危険範囲が、走行体1の走行方向において物体に最も接近する作業機械100の部位と、物体検知装置21との距離Lbに基づいて設定される。
【0092】
これにより、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、作業機械100の走行時に走行方向において物体に最も接近する作業機械100の部位が、物体検知装置21でない状況において、事故発生時の映像を確実且つ効率的に記録することができる。
【0093】
更に、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、危険範囲が、旋回体3の旋回を停止するための制動操作が行われてから旋回が停止するまでの旋回体3の旋回角度θsと、旋回体3の最大旋回半径Rmaxとに基づいて設定される。
【0094】
これにより、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、作業機械100の旋回時に旋回方向の先に物体が存在する状況において、事故発生時の映像を確実且つ効率的に記録することができる。
【0095】
なお、上記の実施形態において、危険範囲は、制動操作が行われてから作業機械100の動作が停止するまでの作業機械100の動作範囲に基づいて設定される。制動操作が行われてから動作停止までの作業機械100の動作範囲は、作業機械100の動作状態に応じて変動する。本実施形態の危険範囲は、制動操作が行われてから動作停止までの作業機械100の動作範囲の変動に基づいて設定変更されてもよい。
【0096】
具体的には、危険範囲は、制動操作から走行停止までの走行距離Lsや制動操作から旋回停止までの旋回角度θsに基づいて設定される。制動操作から走行停止までの走行距離Lsや制動操作から旋回停止までの旋回角度θsは、作業機械100の動作状態に応じて変動する。例えば、制動操作から走行停止までの走行距離Lsは、走行体1の走行速度Vsに応じて変動する。作業機械100は、走行体1の走行速度Vsに応じて、制動操作から走行停止までの走行距離Lsを算出し、作業機械100の走行時の危険範囲を設定変更することができる。
【0097】
また、例えば、制動操作から旋回停止までの旋回角度θsは、旋回体3の旋回速度Nsや旋回体3の旋回流れ角度θrに応じて変動する。旋回流れ角度θrは、旋回体3の慣性モーメントの影響を受ける。旋回体3の慣性モーメントは、旋回速度Ns並びにフロント作業機の姿勢及び荷重によって変動する。作業機械100は、荷重センサや圧力センサを用いてフロント作業機の荷重を計測したり、慣性計測装置(IMU)やロータリエンコーダ等のセンサを用いてフロント作業機の姿勢や旋回速度Nsを計測したりすることができる。作業機械100は、これらのセンサにより計測された、旋回速度Ns並びにフロント作業機の姿勢及び荷重に基づいて、旋回体3の慣性モーメントを算出し、旋回流れ角度θrを算出することができる。作業機械100は、旋回体3の旋回速度Nsや旋回体3の旋回流れ角度θrに応じて、制動操作から旋回停止までの旋回角度θsを算出し、作業機械100の旋回時の危険範囲を設定変更することができる。
【0098】
このように、本実施形態の危険範囲は、制動操作が行われてから動作停止までの作業機械100の動作範囲の変動に基づいて設定変更される。制動操作が行われてから動作停止までの作業機械100の動作範囲の変動は、作業機械100の動作状態に依存する。すなわち、本実施形態では、ドライブレコーダ200における映像の抽出期間を左右する危険範囲が、作業機械100の動作状態に応じて自動的に変更可能である。これにより、本実施形態のドライブレコーダ200を備えた作業機械100は、作業機械100の動作状態に即して映像の抽出期間を適切に変更することができるので、事故発生時の映像を更に確実且つ効率的に記録することができる。
【0099】
上記の実施形態において、作業機械100は、作業機械100の周囲に存在する物体を、赤外線センサ等により構成された物体検知装置21によって検知していたが、カメラ22により取得された映像を用いた画像認識によって検知してもよい。
【0100】
上記の実施形態において、作業機械100は、走行体1が、クローラ式の走行装置により構成されていたが、ホイール式の走行装置により構成されていてもよい。作業機械100は、フロント作業機のアーム5に取り付けられるアタッチメントが、バケット6であったが、バケット6以外のアタッチメントであってもよい。作業機械100は、操作レバー等の操作装置から出力される操作信号が、油圧パイロット方式によって生成される機種であってもよいし、電気パイロット方式によって生成される機種であってもよい。
【0101】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0102】
1・・・走行体
3・・・旋回体
20・・・制御装置
21・・・物体検知装置
22・・・カメラ
23・・・記録装置
100・・・作業機械
200・・・ドライブレコーダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8