(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142235
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】洗浄装置及び洗浄装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20220922BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20220922BHJP
B08B 5/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
G01N35/02 E
B08B3/02 D
B08B5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042338
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】岩間 茂彦
(72)【発明者】
【氏名】糸長 誠
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敦
【テーマコード(参考)】
2G058
3B116
3B201
【Fターム(参考)】
2G058AA05
2G058CA01
2G058CC01
2G058FB02
2G058FB12
2G058FB27
3B116AA26
3B116AB44
3B116BB22
3B116BB33
3B116BB44
3B116BB72
3B116BB77
3B116BC05
3B116CD43
3B201AA26
3B201AB44
3B201BB22
3B201BB33
3B201BB44
3B201BB72
3B201BB77
3B201CB11
3B201CD43
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、吐出ノズルの吐出口からの洗浄液の滴下を防止することができる洗浄装置を提供する。
【解決手段】昇降装置4によって、吐出ノズル19がウェル33に洗浄液を吐出する第1の位置に吐出ヘッド9を位置させているときの吐出ヘッド9の内容積を第1の内容積とする。昇降装置4が、第1の位置よりも下方の位置であって、吸引ヘッド8がウェル33に吐出された洗浄液を吸引する第2の位置に吐出ヘッド9を位置させているときの吐出ヘッド9の内容積を第1の内容積よりも小さい第2の内容積とする。吸引ヘッド8による洗浄液の吸引完了後に、ヘッド容積可変機構90は吐出ヘッド9の内容積を第2の内容積から第1の内容積に戻す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロプレートに形成されたウェルに洗浄液を吐出する吐出ノズルを有する吐出ヘッドと、
前記ウェル内の洗浄液を吸引する吸引ノズルを有する吸引ヘッドと、
前記吐出ヘッドに洗浄液を供給する洗浄液供給装置と、
前記吸引ヘッドを介して洗浄液を吸引する吸引装置と、
前記吐出ヘッド及び前記吸引ヘッドを昇降させる昇降装置と、
前記吐出ヘッドに設けられ、前記吐出ヘッドの内容積を可変させるヘッド容積可変機構と、
を備え、
前記ヘッド容積可変機構は、
前記昇降装置によって、前記吐出ノズルが前記ウェルに洗浄液を吐出する第1の位置に前記吐出ヘッドを位置させているときの前記吐出ヘッドの内容積を第1の内容積とし、
前記昇降装置が、前記第1の位置よりも下方の位置であって、前記吸引ヘッドが前記ウェルに吐出された洗浄液を吸引する第2の位置に前記吐出ヘッドを位置させているときの前記吐出ヘッドの内容積を前記第1の内容積よりも小さい第2の内容積とし、
前記吸引ヘッドによる洗浄液の吸引完了後に、前記吐出ヘッドの内容積を前記第2の内容積から前記第1の内容積に戻す
洗浄装置。
【請求項2】
前記ヘッド容積可変機構は蛇腹機構であり、
前記蛇腹機構が開状態の場合、前記吐出ヘッドの内容積は前記第1の内容積となり、前記蛇腹機構が閉状態の場合、前記吐出ヘッドの内容積は前記第2の内容積となる
請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記吐出ヘッドの位置が前記第2の位置から前記第1の位置に移動するとともに、前記蛇腹機構が前記閉状態から前記開状態に可変する
請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
マイクロプレートに形成されたウェルに洗浄液を吐出する吐出ノズルを有する吐出ヘッドを高さ方向の第1の位置に位置させ、
前記第1の位置に前記吐出ヘッドを位置させているとき、前記吐出ヘッドに設けられているヘッド容積可変機構によって前記吐出ヘッドの内容積を第1の内容積とした状態で、洗浄液供給装置によって前記吐出ヘッドに洗浄液を供給することにより、前記吐出ノズルによって前記ウェルに洗浄液を吐出し、
前記第1の位置よりも下方の位置である第2の位置に前記吐出ヘッドを位置させ、
前記第2の位置に前記吐出ヘッドを位置させているとき、前記ヘッド容積可変機構によって前記吐出ヘッドの内容積を前記第1の内容積よりも小さい第2の内容積とした状態で、吸引装置によって吸引ヘッドを介して前記ウェルに吐出された洗浄液を吸引し、
前記吸引ヘッドによる洗浄液の吸引完了後に前記吐出ヘッドを前記第2の位置よりも上方に移動させるとき、前記ヘッド容積可変機構によって前記吐出ヘッドの内容積を前記第2の内容積から前記第1の内容積に戻す
洗浄装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプレートを洗浄する洗浄装置及び洗浄装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプレートは、抗原・抗体反応を用いて試料に含まれている特定の物質を検出または定量する分析に用いられている。マイクロプレートは、試料を保持するためのウェルを備える。上記の分析において、例えば未反応の試料を除去するためにウェルを洗浄する必要がある。特許文献1にはマイクロプレートを洗浄する洗浄装置が記載されている。特許文献1に記載の洗浄装置は、吐出ノズルによってウェル内に洗浄液を吐出し、ウェル内の洗浄液を吸引ノズルによって吸引することによりウェルを洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-28206号公報
【特許文献2】特開2020-20668号公報
【特許文献3】特開2000-28623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載されているマイクロプレートは、試料分析用ディスクにウェルを有するカートリッジを装着することによって構成されている。分析装置は、試料を付着させた試料分析用ディスクを所定時間の乾燥の後に分析することがある。ウェル内に洗浄液が残留し、試料分析用ディスクが十分に乾燥していないと、良好な分析精度を確保することができないことがある。
【0005】
特許文献1に記載されているような吐出ノズルと吸引ノズルとを備える洗浄装置においては、吸引ノズルで洗浄液を吸引した後に吐出ノズル及び吸引ノズルの各ヘッドを上昇させると、吐出ノズルから洗浄液が滴下する液垂れが発生しやすい。
【0006】
特許文献3には、分注装置における液体の分注のためのノズルを超音波振動子によって振動させたり、ノズルを昇降させるパルスモータによって振動させたりして、液滴を振るい落とすことが記載されている。パルスモータでノズルを振動させるには、パルスモータにパルス信号を供給して固有の振動を発生させるという煩雑な構成が必要となるので好ましくない。
【0007】
本発明は、簡易な構成で、吐出ノズルの吐出口からの洗浄液の滴下を防止することができる洗浄装置及び洗浄装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、マイクロプレートに形成されたウェルに洗浄液を吐出する吐出ノズルを有する吐出ヘッドと、前記ウェル内の洗浄液を吸引する吸引ノズルを有する吸引ヘッドと、前記吐出ヘッドに洗浄液を供給する洗浄液供給装置と、前記吸引ヘッドを介して洗浄液を吸引する吸引装置と、前記吐出ヘッド及び前記吸引ヘッドを昇降させる昇降装置と、前記吐出ヘッドに設けられ、前記吐出ヘッドの内容積を可変させるヘッド容積可変機構とを備える洗浄装置を提供する。
【0009】
上記の洗浄装置において、前記ヘッド容積可変機構は、前記昇降装置によって、前記吐出ノズルが前記ウェルに洗浄液を吐出する第1の位置に前記吐出ヘッドを位置させているときの前記吐出ヘッドの内容積を第1の内容積とし、前記昇降装置が、前記第1の位置よりも下方の位置であって、前記吸引ヘッドが前記ウェルに吐出された洗浄液を吸引する第2の位置に前記吐出ヘッドを位置させているときの前記吐出ヘッドの内容積を前記第1の内容積よりも小さい第2の内容積とし、前記吸引ヘッドによる洗浄液の吸引完了後に、前記吐出ヘッドの内容積を前記第2の内容積から前記第1の内容積に戻す。
【0010】
本発明は、マイクロプレートに形成されたウェルに洗浄液を吐出する吐出ノズルを有する吐出ヘッドを高さ方向の第1の位置に位置させ、前記第1の位置に前記吐出ヘッドを位置させているとき、前記吐出ヘッドに設けられているヘッド容積可変機構によって前記吐出ヘッドの内容積を第1の内容積とした状態で、洗浄液供給装置によって前記吐出ヘッドに洗浄液を供給することにより、前記吐出ノズルによって前記ウェルに洗浄液を吐出し、前記第1の位置よりも下方の位置である第2の位置に前記吐出ヘッドを位置させ、前記第2の位置に前記吐出ヘッドを位置させているとき、前記ヘッド容積可変機構によって前記吐出ヘッドの内容積を前記第1の内容積よりも小さい第2の内容積とした状態で、吸引装置によって吸引ヘッドを介して前記ウェルに吐出された洗浄液を吸引し、前記吸引ヘッドによる洗浄液の吸引完了後に前記吐出ヘッドを前記第2の位置よりも上方に移動させるとき、前記ヘッド容積可変機構によって前記吐出ヘッドの内容積を前記第2の内容積から前記第1の内容積に戻す洗浄装置の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗浄装置及び洗浄装置の制御方法によれば、簡易な構成で、吐出ノズルの吐出口からの洗浄液の滴下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の洗浄装置を概念的に示す構成図である。
【
図2】第1実施形態の洗浄装置の吐出ヘッドに設けられているヘッド容積可変機構を示す外観斜視図である。
【
図3A】ヘッド容積可変機構における可動板が吐出ヘッドの側板から突出している状態を示す断面図である。
【
図3B】ヘッド容積可変機構における可動板が吐出ヘッドの側板に近接した状態を示す断面図である。
【
図4A】第1実施形態の洗浄装置において吐出ノズルより各ウェルに洗浄液を吐出する工程を示す図である。
【
図4B】第1実施形態の洗浄装置において吸引ノズルによって各ウェル内の洗浄液を吸引する工程を示す図である。
【
図4C】第1実施形態の洗浄装置において各ウェル内の洗浄液の吸引完了後に洗浄ヘッドを上昇させた状態を示す図である。
【
図5】第1実施形態の洗浄装置の動作及び第1実施形態の洗浄装置の制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態の洗浄装置を概念的に示す構成図である。
【
図7A】第2実施形態の洗浄装置において吐出ノズルより各ウェルに洗浄液を吐出する工程を示す図である。
【
図7B】第2実施形態の洗浄装置において吸引ノズルによって各ウェル内の洗浄液を吸引する工程を示す図である。
【
図8】第2実施形態の洗浄装置の動作及び第2実施形態の洗浄装置の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、各実施形態の洗浄装置及び洗浄装置の制御方法について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の洗浄装置100を概念的に示している。
図1において、プレート保持部1は洗浄の対象であるマイクロプレート3を保持している。マイクロプレート3は、一例として、試料分析用ディスク31上に複数のウェル33が形成されているカートリッジ32を装着した構成を有する。試料分析用ディスク31とカートリッジ32との互いの位置がずれないように、図示していない一対の金属板で両者が挟まれていてもよい。
【0015】
マイクロプレート3は1つまたはそれ以上のウェル33を備える構成であればよく、
図1に示す構成に限定されない。複数のウェル33は格子状に配列されていてもよく、同心円状に配列されていてもよい。
【0016】
マイクロプレート3の上方には、昇降装置4によって昇降自在の洗浄ヘッド5が設けられている。洗浄ヘッド5は、吸引ヘッド8と吐出ヘッド9とを備える。吸引ヘッド8及び吐出ヘッド9は例えば合成樹脂によって所定の内容積を有する箱状に形成されている。吸引ヘッド8には、各ウェル33の位置に対応する位置に、ウェル33の個数に対応する本数の吸引ノズル18が取り付けられている。吐出ヘッド9には、各ウェル33の位置に対応する位置に、ウェル33の個数に対応する本数の吐出ノズル19が取り付けられている。
【0017】
吸引ノズル18及び吐出ノズル19は例えば金属によって円筒状に形成されている。吸引ノズル18及び吐出ノズル19は所定の間隔を有して互いに平行となるように、それぞれ吸引ノズル18及び吐出ノズル19に取り付けられていればよい。
【0018】
吐出ヘッド9の昇降装置4と対向する面には、吐出ヘッド9の内容積を可変させるヘッド容積可変機構90が設けられている。ヘッド容積可変機構90の詳細な構成及びその作用については後に詳述する。
【0019】
図1に示すように、吸引ノズル18の先端部である吸引口は、吐出ノズル19の先端部である吐出口よりもわずかに下方に位置している。
【0020】
昇降装置4は、ラック41、ラック41と噛み合うピニオンギア42、ピニオンギア42を回転させるモータ43を備える。洗浄ヘッド5は、ラック41に連結されている。制御部10に設けられているヘッド昇降制御部14がモータ43を回転させることによって、洗浄ヘッド5は、
図1に示す最上位置と後述する
図4Bに示す最下位置との間で上下方向に移動する。洗浄ヘッド5を昇降させる昇降装置4の内部構成は
図1に示す構成に限定されない。
【0021】
吐出ヘッド9には、洗浄液供給ホース22Hを介して洗浄液供給装置22が接続されている。洗浄液供給装置22は、洗浄液タンク、液体用ダイアフラムポンプ等の分注ポンプ、及び電磁バルブを備える。洗浄液タンク、分注ポンプ、電磁バルブ、及び吐出ヘッド9は、それぞれが洗浄液を供給するホースによって、洗浄液タンク、分注ポンプ、電磁バルブ、吐出ヘッド9の順で結合されている。
【0022】
制御部10に設けられている吐出制御部12が洗浄液供給装置22を制御することにより、洗浄液は洗浄液供給ホース22Hを介して吐出ヘッド9へと供給される。吐出ヘッド9は洗浄液によって充填され、各吐出ノズル19は吐出口から洗浄液を各ウェル33へと吐出する。
【0023】
洗浄液供給装置22は洗浄液の出力段に例えば電磁バルブを内蔵しており、洗浄液を吐出するとき以外では電磁バルブを閉じることによって、吐出ヘッド9に充填された洗浄液が洗浄液供給装置22へと逆流しないように構成されている。
【0024】
吸引ヘッド8には、洗浄液吸引ホース21Hを介して吸引装置21が接続されている。制御部10に設けられている吸引制御部11が吸引装置21を制御することにより、吸引装置21は各ウェル33に吐出された洗浄液を各吸引ノズル18によって吸引する。吸引装置21は真空ダイアフラムポンプ等の吸引ポンプを備えて構成することができる。
【0025】
制御部10はマイクロコンピュータまたはマイクロプロセッサで構成することができる。吸引制御部11、吐出制御部12、及びヘッド昇降制御部14は、制御部10がソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行することによって実現される機能的な構成であってもよい。
【0026】
以上のように構成される洗浄装置100は、プレート保持部1に保持されているマイクロプレート3の各ウェル33に洗浄液を吐出し、各ウェル33内の洗浄液を吸引する。洗浄装置100は、必要に応じて洗浄液の吐出及び吸引を複数回繰り返すことによってマイクロプレート3の各ウェル33を洗浄する。
【0027】
図2、
図3A及び
図3Bを用いて、ヘッド容積可変機構90の詳細な構成及びその作用を説明する。
図3A及び
図3Bに示すように、吐出ヘッド9の昇降装置4と対向する側板9aには開口が形成されている。側板9aは、吐出ヘッド9の面の一例である。
【0028】
図2、
図3A及び
図3Bに示すように、ヘッド容積可変機構90は蛇腹機構を有する。具体的には、可動板91、可動板91の上端部と開口の上端部とを連結する蛇腹状の上方連結部92、可動板91の側部と開口の左右端部を連結する蛇腹状の側方連結部93を有する。上方連結部92及び側方連結部93は、可動板91と側板9aの開口の周囲とを連結する連結部である。ヘッド容積可変機構90は、洗浄液が漏れないよう、開口の周囲で側板9aに密着するように接合されており、開口を塞いでいる。
【0029】
可動板91は、
図3A及び
図3Bに示す下端部の軸94を中心として所定の角度の範囲で円弧の軌跡を描くように回転自在とされている。上方連結部92及び側方連結部93は、可動板91の回転に応じて伸縮する。
【0030】
図3Aは、可動板91に外部から力を加えていない状態を示している。可動板91に外部から力を加えなければ、上方連結部92が伸びようとすることにより、ヘッド容積可変機構90は可動板91が側板9aから突出した状態となる。このような状態を、蛇腹機構が開状態であるとする。
図3Bは、可動板91に外部から側板9aに向かう力を加えた状態を示している。可動板91に外部から側板9aに向かう力が加わると、ヘッド容積可変機構90は可動板91が側板9aに近接した状態となる。このような状態を、蛇腹機構が閉状態であるとする。
【0031】
図3Aの状態における吐出ヘッド9の第1の内容積は、
図3Bの状態における吐出ヘッド9の第2の内容積よりもわずかに大きい。
【0032】
図1に示すように、昇降装置4の洗浄ヘッド5と対向する側面の下端部には、突出部4aが設けられている。ヘッド昇降制御部14は、モータ43の回転を制御することにより、洗浄ヘッド5を、各ウェル33に洗浄液を吐出する工程と各ウェル33から洗浄液を吸引する工程とに応じた上下方向(高さ方向)の適宜の位置に位置させるよう制御する。
【0033】
図4Aは、吐出ノズル19より各ウェル33に洗浄液を吐出する工程における洗浄ヘッド5の第1の位置を示している。吐出ノズル19の吐出口はウェル33の上端部よりもわずかに下方に位置している。この状態で、吹き出し内の部分拡大図に示すように、洗浄液CLが吐出ノズル19からウェル33へと吐出される。吐出制御部12は、吸引ノズル18の先端部に到達しない程度の液量だけ、ウェル33内に洗浄液CLを吐出するよう制御する。
【0034】
このとき、ヘッド容積可変機構90の可動板91は突出部4aに接触しておらず、ヘッド容積可変機構90は
図3Aに示す状態となっている。
【0035】
ウェル33内の洗浄液CLを吸引するために吸引ノズル18が吸引を開始し、昇降装置4が洗浄ヘッド5を下降させると、可動板91が突出部4aに接触して、突出部4aが可動板91を押し込む。突出部4aは可動板91に接触する接触部として機能する。洗浄液供給装置22の電磁バルブが閉じているので、吐出ヘッド9の内部に充填されている洗浄液は、可動板91の押込み量に応じた量だけ吐出ノズル19から押し出されて、ウェル33内に滴下する。
【0036】
図4Bに示すように、吸引装置21が吸引ノズル18によって洗浄液CLを吸引しながら、昇降装置4は洗浄ヘッド5を下降させる。吸引装置21が吸引ヘッド8を介してウェル33に吐出された洗浄液CLを吸引するとき、洗浄ヘッド5は第2の位置に位置している。洗浄ヘッド5は洗浄液CLを吸引しながら下降するので、第2の位置は上下方向の1つの位置ではなく、所定の範囲を含む位置である。
【0037】
図4Bは、吸引ノズル18の吸引口が最下位置に到達して洗浄液CLの吸引を完了する直前の状態を示している。可動板91は、吸引ヘッド8がウェル33内の洗浄液CLの吸引を開始してから吸引を完了するまで突出部4aによって押し込まれた状態(蛇腹機構が閉状態)にある。よって、ヘッド容積可変機構90は
図3Bに示す状態となっている。吐出ヘッド9の内容積は、第1の内容積よりも小さい第2の内容積となっている。吸引ノズル18の吸引口が最下位置に到達した後、吸引装置21はウェル33内の洗浄液CLの吸引を完了する。
【0038】
図4Bの吹き出し内の部分拡大図に示すように、吐出ノズル19の先端部には、表面張力によって吐出口から突出するように液滴が残留していることがある。
【0039】
昇降装置4が洗浄ヘッド5を上昇させて、突出部4aによる可動板91の押し込みが開放されると、ヘッド容積可変機構90が
図3Aに示す状態(蛇腹機構が開状態)に戻る。即ち、可動板91が側板9aから突出した状態に戻り、吐出ヘッド9の内容積が第1の内容積へと拡大して元に状態に復帰する。よって、
図4Cの吹き出し内の部分拡大図に示すように、吐出ノズル19の吐出口から突出するよう残留していた液滴は吐出ノズル19内に引き込まれ、吐出口の液面は凹状となる。
【0040】
昇降装置4は、吐出ノズル19の吐出口の液面が凹状となった状態で洗浄ヘッド5を
図4Cに示す最上位置まで上昇させる。洗浄ヘッド5が上昇を開始すると吐出ノズル19の吐出口に残留していた液滴は即座に吐出ノズル19内に引き込まれ、引き込まれた状態を維持しながら洗浄ヘッド5が最上位置まで上昇する。よって、ウェル33内の洗浄液CLの吸引完了後に、吐出ノズル19から液滴が落下することを防止することができる。
【0041】
図5に示すフローチャートを用いて、洗浄装置100の一連の動作、及び洗浄装置100の制御方法を説明する。
図5において、制御部10がマイクロプレート3を洗浄する処理を開始すると、ヘッド昇降制御部14は、ステップS11にて、
図1に示す初期位置にある洗浄ヘッド5を
図4Aに示す吐出位置の高さである第1の位置まで移動(下降)させる。吐出制御部12は、ステップS12にて、洗浄液供給装置22を始動させ、吐出ヘッド9の内部を洗浄液CLで充填させて吐出ノズル19より洗浄液CLの吐出を開始させる。
【0042】
所定時間または所定液量の洗浄液CLを吐出させると、吐出制御部12は、ステップS13にて、洗浄液供給装置22の動作を停止させ、吐出ノズル19からの洗浄液CLの吐出を終了させる。このとき、吐出ノズル19の先端部には、表面張力によって液滴が残留していることがある。
【0043】
吸引制御部11は、ステップS14にて、吸引装置21を始動させ、ウェル33内の洗浄液CLの吸引ヘッド8を介しての吸引を開始させる。このとき、ウェル33に吐出されている洗浄液CLは、液面が吸引ノズル18と接する高さまで吸引される。
【0044】
ヘッド昇降制御部14は、ステップS15にて、洗浄ヘッド5を第2の位置に位置させて
図4Bに示す最下位置まで徐々に下降させる。吸引ノズル18が徐々に下降しながら、ウェル33内の洗浄液CLが吸引される。このとき、可動板91は突出部4aに接触し、洗浄ヘッド5が下降するのと連動して徐々に押し込まれる。洗浄ヘッド5が最下位置に到達すると、ヘッド容積可変機構90は
図3Bに示す状態となる。上記のように可動板91の押込み量に応じた量だけ洗浄液CLが吐出ノズル19から押し出されてウェル33内に滴下した洗浄液CLは、吸引ノズル18によって吸引される。
【0045】
吸引装置21が所定時間または所定液量の洗浄液CLを吸引すると、洗浄液CLの吸引が完了する。吸引制御部11は、ステップS16にて、吸引装置21の動作を停止させて洗浄液CLの吸引を終了させる。
【0046】
続けて、制御部10は、ステップS17にて、所定回数の洗浄が実施されたか否かを判定する。所定回数の洗浄が実施されていなければ(NO)、制御部10は、処理をステップS11に戻し、ステップS11~S17の処理を繰り返す。上記のように、昇降装置4が洗浄ヘッド5を吐出位置の高さまで戻すとき、吐出ノズル19の吐出口から突出するよう残留していた液滴は吐出ノズル19内に引き込まれ、液滴がウェル33内に落下することはない。
【0047】
ステップS17にて所定回数の洗浄が実施されていれば(YES)、ヘッド昇降制御部14は、ステップS18にて、洗浄ヘッド5を
図4Cに示す初期位置まで移動(上昇)させて、制御部10は洗浄の処理を終了させる。
【0048】
以上説明したように、第1実施形態の洗浄装置100及び第1実施形態の洗浄装置の制御方法によれば、吐出ヘッド9にヘッド容積可変機構90に設けるという簡易かつ安価な構成で、吐出ノズルの吐出口からの洗浄液の滴下を防止することができる。ヘッド容積可変機構90は、突出部4aが可動板91を押し込むか否かによって吐出ヘッド9の内容積を可変させるという簡易かつ安価な構成である。
【0049】
第1実施形態の洗浄装置100及び第1実施形態の洗浄装置の制御方法によれば、マイクロプレート3の洗浄後に試料分析用ディスク31を分析装置によって分析するときに良好な分析精度を確保することができる。特に、試料分析用ディスク31を乾燥させた後に分析するときに、良好な分析精度を確保することができる。マイクロプレート3は、乾燥させることなく試料を分析するマイクロプレートであってもよいことは勿論である。
【0050】
図1に示す構成例では、ヘッド容積可変機構90を吐出ヘッド9の昇降装置4と対向する面に設けているが、ヘッド容積可変機構90を吐出ヘッド9の他の面として底板に設けて、底板より突出する可動板91がプレート保持部1またはマイクロプレート3で押し込まれる構成としてもよい。
図5に示すように、洗浄装置100は、洗浄液供給装置22の動作停止後に吸引装置21が始動するように構成されているが、吸引装置21は、洗浄液供給装置22が動作しているか否かにかかわらず、常時動作してもよい。
【0051】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の洗浄装置200を概念的に示している。
図6において、
図1に示す洗浄装置100と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略することがある。洗浄装置200における吐出ヘッド9には、ヘッド容積可変機構90は設けられていない。
【0052】
図6において、吸引装置21は真空ダイアフラムポンプ等の吸引ポンプ211を備える。吸引ポンプ211は、回転または往復動等の機械運動により振動を発生させる。そこで、吸引ポンプ211は、振動吸収体212を介して吸引装置21の底面に設置されている。振動吸収体212は例えばゴムによって形成されており、吸引ポンプ211で発生する振動を吸収し、吸引装置21の全体が振動するのを抑制する。
【0053】
吸引ポンプ211は、内蔵する偏芯軸の回転またはダイアフラムの往復によって排気運動を行って、洗浄液吸引ホース21H、吸引ヘッド8、及び吸引ノズル18よりなる流路内を真空状態にする。流路内を真空状態とすることにより、ウェル33内の洗浄液が吸引ノズル18によって吸引される。なお、第1実施形態の洗浄装置100における吸引装置21による洗浄液の吸引の原理も同様である。
【0054】
吸引ポンプ211と振動吸収体212との間には、振動伝達体213が設けられている。振動伝達体213は例えば金属板によって形成され、吸引装置21の外部へと突出している。振動伝達体213は吸引ポンプ211及び振動吸収体212のみと接触しており、吸引装置21の筐体には接触していない。吸引ポンプ211で発生する振動は振動伝達体213に伝達する。よって、吸引ポンプ211が動作しているとき、振動伝達体213は振動する。
【0055】
図7Aは、吐出ノズル19より各ウェル33に洗浄液を吐出する工程における洗浄ヘッド5の第1の位置を示している。
図7Aに示す洗浄ヘッド5の第1の位置は、
図4Aに示す洗浄ヘッド5の第1の位置と同じである。洗浄液供給装置22は、吐出制御部12におる制御に基づき、吐出ノズル19から各ウェル33内に洗浄液CLを吐出する。このとき、吸引装置21の外部へと突出している振動伝達体213は洗浄ヘッド5にも吐出ヘッド9にも接触していない。よって、吸引ポンプ211で発生する振動は吐出ヘッド9には伝達しない。
【0056】
ウェル33内の洗浄液CLを吸引するために吸引ノズル18が吸引を開始し、昇降装置4が洗浄ヘッド5を第2の位置へと下降させると、
図7Bに示すように、吸引装置21が吸引ノズル18によって洗浄液CLを吸引しながら徐々に下降する。
図7Bは、吸引ノズル18の吸引口が最下位置に到達して洗浄液CLの吸引を完了する直前の状態を示している。昇降装置4が洗浄ヘッド5を
図7Aに示す状態から第2の位置へと下降させると、振動伝達体213は吐出ヘッド9の側面に接触する。振動伝達体213は、洗浄液CLの吸引の開始から吸収の完了まで吐出ヘッド9に接触している。
【0057】
図7Aにおいてウェル33内への洗浄液CLの吐出を終了した時点で、吐出ノズル19の先端部には、表面張力によって吐出口から突出するように液滴が残留していることがある。吸引ノズル18によって洗浄液CLの吸引している際、吸引ポンプ211で発生する振動は振動伝達体213を介して吐出ヘッド9に接触しているから、吐出ノズル19の吐出口に残留している液滴は振動によって振るい落とされる。ウェル33内に振るい落とされた液滴は、吸引ノズル18によって吸引される。
【0058】
吸引装置21がウェル33内の洗浄液CLの吸引を完了すると、昇降装置4は洗浄ヘッド5を上昇させる。これにより、洗浄ヘッド5を第2の位置から第1の位置まで上昇させることで、振動伝達体213は吐出ヘッド9に接触している状態から、洗浄ヘッド5にも吐出ヘッド9にも接触していない状態となる。
【0059】
図8に示すフローチャートを用いて、洗浄装置200の一連の動作、及び洗浄装置200の制御方法を説明する。
図8において、制御部10がマイクロプレート3を洗浄する処理を開始すると、ヘッド昇降制御部14は、ステップS21にて、
図6に示す初期位置にある洗浄ヘッド5を
図7Aに示す吐出位置の高さである第1の位置まで移動(下降)させる。吐出制御部12は、ステップS22にて、洗浄液供給装置22を始動させ、吐出ヘッド9の内部を洗浄液CLで充填させて吐出ノズル19より洗浄液CLの吐出を開始させる。
【0060】
所定時間または所定液量の洗浄液CLを吐出させると、吐出制御部12は、ステップS23にて、洗浄液供給装置22の動作を停止させ、吐出ノズル19からの洗浄液CLの吐出を終了させる。このとき、吐出ノズル19の先端部には、表面張力によって液滴が残留していることがある。
【0061】
吸引制御部11は、ステップS24にて、吸引装置21を始動させ、ウェル33内の洗浄液CLの吸引ヘッド8を介しての吸引を開始させる。このとき、ウェル33に吐出されている洗浄液CLは、液面が吸引ノズル18と接する高さまで吸引される。
【0062】
ヘッド昇降制御部14は、ステップS25にて、洗浄ヘッド5を第2の位置に位置させて
図7Bに示す最下位置まで徐々に下降させる。吸引ノズル18が徐々に下降しながら、ウェル33内の洗浄液CLが吸引される。このとき、振動伝達体213は吐出ヘッド9に接触しているから、吸引ポンプ211で発生する振動によって吐出ノズル19が振動し、吐出口に残留している液滴が振るい落とされる。ウェル33内に振るい落とされた液滴は、吸引ノズル18によって吸引される。
【0063】
吸引装置21が所定時間または所定液量の洗浄液CLを吸引すると、洗浄液CLの吸引が完了する。吸引制御部11は、ステップS26にて、吸引装置21の動作を停止させて洗浄液CLの吸引を終了させる。
【0064】
続けて、制御部10は、ステップS27にて、所定回数の洗浄が実施されたか否かを判定する。所定回数の洗浄が実施されていなければ(NO)、制御部10は、処理をステップS21に戻し、ステップS21~S27の処理を繰り返す。上記のように、昇降装置4が洗浄ヘッド5を吐出位置の高さまで戻すとき、吐出ノズル19の吐出口から突出するよう残留していた液滴は振るい落とされているので、液滴がウェル33内に落下することはない。
【0065】
ステップS27にて所定回数の洗浄が実施されていれば(YES)、ヘッド昇降制御部14は、ステップS28にて、洗浄ヘッド5を
図6に示す初期位置まで移動(上昇)させて、制御部10は洗浄の処理を終了させる。
【0066】
以上説明したように、第2実施形態の洗浄装置200及び第2実施形態の洗浄装置の制御方法によれば、洗浄装置200が備える吸引ポンプ211で発生する振動を利用する構成である。よって、超音波振動子等の洗浄装置に本来必要ではない別部品または固有の振動を発生させるための煩雑な構成を追加する必要はない。第2実施形態の洗浄装置200によれば、簡易かつ安価な構成で、吐出ノズルの吐出口からの洗浄液の滴下を防止することができる。
【0067】
第2実施形態の洗浄装置200及び第2実施形態の洗浄装置の制御方法によれば、マイクロプレート3の洗浄後に試料分析用ディスク31を分析装置によって分析するときに良好な分析精度を確保することができる。特に、試料分析用ディスク31を乾燥させた後に分析するときに、良好な分析精度を確保することができる。マイクロプレート3は、乾燥させることなく試料を分析するマイクロプレートであってもよいことは勿論である。
【0068】
図6に示す構成例では、振動伝達体213を吐出ヘッド9に接触させるように構成しているが、洗浄ヘッド5に接触させるように構成してもよい。この場合、吸引ポンプ211で発生する振動は洗浄ヘッド5を介して吐出ヘッド9に伝達し、吐出ノズル19を振動させる。
図8に示すように、洗浄装置200は、洗浄液供給装置22の動作停止後に吸引装置21が始動するように構成されているが、吸引装置21は、洗浄液供給装置22が動作しているか否かにかかわらず、常時動作してもよい。
【0069】
本発明は、以上説明した第1または第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 プレート保持部
3 マイクロプレート
4 昇降装置
4a 突出部(接触部)
5 洗浄ヘッド
8 吸引ヘッド
9 吐出ヘッド
10 制御部
18 吸引ノズル
19 吐出ノズル
21 吸引装置
22 洗浄液供給装置
33 ウェル
90 ヘッド容積可変機構
91 可動板
92 上方連結部
93 側方連結部
94 軸
211 吸引ポンプ
212 振動吸収体
213 振動伝達体