(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142237
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】受光素子及び測定装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
G01S7/481 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042343
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 宙
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA05
5J084BA36
5J084BA38
5J084BB02
5J084BB04
5J084CA03
5J084CA31
5J084CA49
5J084DA01
5J084DA08
5J084EA07
5J084EA31
(57)【要約】
【課題】歪んだ集光スポットを受光可能な受光素子を提供すること。
【解決手段】本開示に係る受光素子は、第1受光窓に照射された光を検出する第1受光部と、第2受光窓に照射された光を検出する第2受光部とを備え、前記第2受光窓は、前記第1受光窓の周囲に設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1受光窓に照射された光を検出する第1受光部と、
第2受光窓に照射された光を検出する第2受光部と
を備え、
前記第2受光窓は、前記第1受光窓の周囲に設けられていることを特徴とする受光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の受光素子であって、
前記第2受光部は、前記第1受光部よりも感度が高いことを特徴とする受光素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の受光素子であって、
前記第1受光窓は、前記第2受光窓よりも大きいことを特徴とする受光素子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の受光素子であって、
前記第2受光部を複数備え、
複数の前記第2受光窓が前記第1受光窓の周囲に設けられていることを特徴とする受光素子。
【請求項5】
請求項4に記載の受光素子であって、
複数の前記第2受光窓が前記第1受光窓を挟むように配置されていることを特徴とする受光素子。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の受光素子であって、
矩形状の受光面の対角線上に前記第1受光窓及び複数の前記第2受光窓が配置されていることを特徴とする受光素子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の受光素子であって、
前記第1受光部の電流に前記第2受光部の電流を加えた電流を出力する信号線を有することを特徴とする受光素子。
【請求項8】
対象物に光を照射する発光素子と、
光学系と、
前記光学系を介して前記対象物からの反射光を受光する受光素子と、
を備え、
前記受光素子は、
第1受光窓に照射された光を検出する第1受光部と、
第2受光窓に照射された光を検出する第2受光部と
を備え、
前記第2受光窓は、前記第1受光窓の周囲に設けられていることを特徴とする測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の測定装置であって、
第1受光素子及び第2受光素子を含む複数の前記受光素子を備えており、
前記光学系の光軸に対する前記第1受光素子の位置と、前記光軸に対する前記第2受光素子の位置とが異なっており、
前記第1受光素子の第1受光窓と前記第2受光窓の並ぶ方向と、前記第2受光素子の第1受光窓と前記第2受光窓の並ぶ方向とが異なることを特徴とする測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LiDAR(Light Detection and Ranging)などの距離測定システムでは、パルス状のレーザー光を投光してから反射光を受光するまでの時間を計測することによって、対象物までの距離を測定するTOF方式(Time of flight)が知られている。また、LiDARなどの距離測定システムでは、レーザー光を走査させて広い範囲で計測することも行われている。例えば特許文献1には、レーザー光を2次元走査させる距離測定システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LiDARなどの距離測定システムを車両に搭載する場合には、距離測定システムを構成する発光素子、受光素子及び光学系などを狭い空間に配置する必要がある。また、1つの光学系に対して複数の受光素子を配置する場合には、光学系の光軸に対して受光素子をずらして配置する必要がある。この結果、受光素子の受光面上において反射光の集光スポットの歪みが大きくなり、受光素子が反射光を正常に受光できないおそれがある。特に、近距離から遠距離までの幅広い範囲で測距可能に距離測定システムを構成しようとすると、少なくともいずれかの測定条件下で受光素子の受光面上における集光スポットの歪みが大きくなり、受光素子が反射光を正常に受光できないおそれがある(若しくは、全ての測定条件下で受光素子の受光窓に集光スポットが照射されるように光学系を構成しようとすると、光学系が大型化してしまい、距離測定システムの車載が困難になる)。
【0005】
本発明は、歪んだ集光スポットを受光可能な受光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一つは、第1受光窓に照射された光を検出する第1受光部と、第2受光窓に照射された光を検出する第2受光部とを備え、前記第2受光窓は、前記第1受光窓の周囲に設けられていることを特徴とする受光素子である。
【0007】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、歪んだ集光スポットを受光素子が受光可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、X方向から見た実装基板5の説明図である。
【
図3】
図3Aは、2次元走査の説明図である。
図3Bは、或るフレームにおける2次元走査の説明図である。
図3Cは、複数チャンネルによる2次元走査の説明図である。
【
図4】
図4Aは、比較例の受光素子20を上から見た図である。
図4Bは、受光素子の受光部の一例の断面図である。
【
図5】
図5Aは、受光用光学系32による集光の様子の説明図である。
図5Bは、受光用光学系32の光軸上の受光素子20における受光窓22と集光スポットの説明図である。
図5Cは、受光用光学系32の光軸から外れた位置の受光素子20における受光窓22と集光スポットの説明図である。
【
図6】
図6Aは、本実施形態の受光素子の一例の説明図である。
図6Bは、本実施形態の受光素子20における受光窓22(第1受光窓22A及び第2受光窓22B)と集光スポットの説明図である。
【
図8】
図8Aは、本実施形態の受光素子を用いた光検出装置の一例の説明図である。
図8Bは、光検出装置の別の一例の説明図である。
【
図9】
図9は、変形例の受光素子を用いた光検出装置の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、同一の又は類似する構成について共通の符号を付して重複した説明を省略することがある。
【0011】
<測定装置について>
図1は、測定装置の一例の説明図である。
【0012】
以下の説明では、
図1に示すように各方向を定めている。受光用光学系32(若しくは投光用光学系31)の光軸(レンズの回転対称軸)に沿った方向をZ方向とする。なお、測定装置1の測定対象となる対象物90は、測定装置1に対してZ方向に離れていることになる。また、Z方向に垂直な方向であって、投光用光学系31と受光用光学系32の並ぶ方向をX方向とする。また、Z方向及びX方向に垂直な方向をY方向とする。
【0013】
測定装置1は、対象物90の表面を測定するための装置である。具体的には、測定装置1は、発光素子10からレーザー光(
図1のTx)を射出し、対象物90の表面で反射した反射光(
図1のRx)を受光素子20によって検出し、検出結果に基づいて、対象物90までの距離を算出する装置である。測定装置1は、発光素子10と、受光素子20と、光学系30と、コントローラー40とを備える。また、測定装置1は、複数の発光素子10と複数の受光素子20を有する実装基板5と、駆動装置45を備えている。
【0014】
発光素子10は、電気信号を光信号に変換する素子である。例えば、発光素子10は、LDチップ(LD:Laser Diode)であり、レーザー光を射出する。本実施形態では、発光素子10は、対象物90の表面に向かってパルス光(
図1のTx)を射出する。本実施形態の発光素子10は、端面発光半導体レーザーで構成されており、実装基板5に表面実装されており、基板面に平行にレーザー光を射出する。なお、発光素子10は、端面発光半導体レーザーに限られるものではなく、実装基板5への実装方法もこれに限られるものではない。
【0015】
受光素子20は、光信号を電気信号に変換する素子である。例えば、受光素子20は、PDチップ(Photodiode)である。受光素子20の詳しい構成については後述する。受光素子20は、受光面に反射光が入射されるように、実装基板5の基板面に対して受光面を立てた状態で実装されている。なお、受光素子20の実装方法はこれに限られるものではない。
【0016】
光学系30は、発光素子10から出力される光を対象物90に向かって照射するとともに、対象物90からの反射光を受光素子20に受光させるための光学系である。発光素子10と受光素子20は、光学系30に対して共役の位置に配置されている。本実施形態の光学系30は、投光用光学系31と、受光用光学系32とを有する。
【0017】
投光用光学系31は、発光素子10から出力される光を対象物90に向かって照射するための光学系である。投光用光学系31の焦点面内に発光素子10が配置されている。投光用光学系31は、発光素子10から射出されたレーザー光をコリメート光として対象物90に照射する。発光素子10と投光用光学系31との位置関係に応じた所定の方向(所定の角度)にコリメート光が照射されることになる。発光素子10は投光用光学系31を介して対象物90に光を照射することになる。投光用光学系31は、複数枚(例えば5~7枚)のレンズで構成されたレンズ群によってそれぞれ構成されている(
図1では、投光用光学系31のレンズ群が簡易的に示されている)。
【0018】
受光用光学系32は、対象物90からの反射光を受光素子20に受光させるための光学系である。受光用光学系32の焦点面内に受光素子20の受光面が配置されている。受光用光学系32は、対象物90の反射光を所定の受光素子20の受光面に集光する。受光素子20は受光用光学系32を介して対象物90からの反射光を受光することになる。受光用光学系32も、投光用光学系31と同様に、複数枚(例えば5~7枚)のレンズで構成されたレンズ群によってそれぞれ構成されている(
図1では、受光用光学系32のレンズ群が簡易的に示されている)。
【0019】
投光用光学系31と受光用光学系32は、一体的に構成されており、互いの位置関係が固定されている。具体的には、投光用光学系31を構成する投光用鏡筒と、受光用光学系32を構成する受光用鏡筒とが共通の光学用フレーム33に固定されている。
【0020】
コントローラー40は、測定装置1の制御を司る制御部である。コントローラー40は、発光素子10からのレーザー光の射出を制御する。また、コントローラー40は、受光素子20の出力信号に基づいて、対象物90までの距離を算出する。具体的には、コントローラー40は、発光素子10からパルス状のレーザー光を投光してから、受光素子20が反射光を受光するまでの時間を計測することによって、対象物90までの距離を測定する。すなわち、コントローラー40は、発光素子10及び受光素子20を制御することによって、TOF方式(Time of flight)により対象物90までの距離を測定する(対象物90の表面のZ座標を測定する)。また、所定の方向にレーザー光が照射され、所定の方向の反射光を受光することを利用して、コントローラー40は、XY方向に走査しながら対象物90の表面のZ座標を測定することによって、対象物90の表面のX,Y,Z座標を測定可能である。
【0021】
コントローラー40は、演算装置41と、記憶装置42とを有する。演算装置41は、例えばCPU、GPUなどの演算処理装置である。記憶装置42は、主記憶装置と補助記憶装置とにより構成され、プログラムやデータを記憶する装置である。記憶装置42に記憶されているプログラムを演算装置41が実行することにより、演算装置41は、発光素子10からのレーザー光の射出を制御するとともに、受光素子20の出力信号に基づいて、対象物90までの距離を算出することになる。また、演算装置41は、受光素子20の出力信号に基づいて、対象物90の表面のX,Y,Z座標を算出することになる。演算装置41は、取得した座標データを記憶装置42に記憶しても良いし、外部の記憶装置に記憶しても良い。対象物90の表面上の多数の点のX,Y,Z座標のデータは、対象物90の表面の3次元画像(点群:点クラウド)を示すデータとなる。演算装置41は、記憶装置42に記憶されているプログラムを演算装置41が実行することにより、記憶装置42に記憶された3次元画像に基づいて、対象物90の解析を行っても良い。
【0022】
実装基板5は、複数の発光素子10と、複数の受光素子20とを実装した基板である。或る受光素子20は特定の発光素子10に対応付けられており、或る受光素子20の検出位置は、特定の発光素子10の発光位置と共役である。本実施形態では、発光素子10と受光素子20との対が複数あり、複数のチャンネルで対象物90の表面を測定可能である。なお、発光素子10は、実装基板5の基板面に平行にレーザー光を射出し、受光素子20は、実装基板5の基板面にほぼ平行な方向から入射する光(反射光)を受光する。
【0023】
図1に示すように、実装基板5は、5個の発光素子10と、5個の受光素子20とを有する。但し、発光素子10や受光素子20の数は、これに限られるものではない。実装基板5には、複数の発光素子10がX方向の異なる位置に配置されている。また、実装基板5には、複数の受光素子20がX方向の異なる位置に配置されている。
【0024】
図1に示すように、実装基板5には、発光側湾曲部6と、受光側湾曲部7とが設けられている。
発光側湾曲部6は、円弧状の縁を有する部位である。発光側湾曲部6は、投光用光学系31の像面湾曲に沿うように複数の発光素子10を配置するための部位である。発光側湾曲部6の円弧状の縁に沿って複数の発光素子10が配置されている。これにより、それぞれの発光素子10は、投光用光学系31に対して、適切な位置及び角度に配置され、投光用光学系31の像面湾曲の影響を軽減できる。
受光側湾曲部7は、円弧状の縁を有する部位であり、発光側湾曲部6とはX方向の異なる位置に設けられている。受光側湾曲部7は、受光用光学系32の像面湾曲に沿うように複数の受光素子20を配置するための部位である。受光側湾曲部7の円弧状の縁に沿って、複数の受光素子20が配置されている。これにより、それぞれの受光素子20は、受光用光学系32に対して、適切な位置及び角度に配置され、受光用光学系32の像面湾曲の影響を軽減できる。
但し、実装基板5に発光側湾曲部6や受光側湾曲部7が設けられていなくても良い。この場合、実装基板5のZ方向に垂直な縁に沿って、複数の発光素子10や複数の受光素子20が配列されることになる。
【0025】
図2は、X方向から見た実装基板5の説明図である。ここでは説明のため、実装基板5の発光側湾曲部6や受光側湾曲部7を省略し、実装基板5のX方向に平行な縁に沿って発光素子10及び受光素子20が配置されているものとする。なお、ここでは説明のため、実装基板5の傾きが強調されて図示されている。
【0026】
図2に示すように、測定装置1は、複数枚の実装基板5(ここでは3枚の実装基板5)を有している。複数枚の実装基板5は、Y方向の異なる位置に配置されている。各実装基板5には、
図1に示すように、X方向の異なる位置に複数(ここでは5個)の発光素子10及び複数の受光素子20が配置されている。このため、X方向及びY方向に複数(ここでは15個)の発光素子10を配列させた発光素子アレイが構成されるとともに、X方向及びY方向に複数の受光素子20を配列させた受光素子アレイが構成される。ここでは、5×3の15チャンネル(X方向に5チャンネル、Y方向に3チャンネル)で対象物90の表面を測定することになる。
【0027】
複数枚の実装基板5は、Z方向に対して異なる角度で配置されている。具体的には、
図2に示すように、各実装基板5の発光素子10が投光用光学系31を向くように、また、各実装基板5の受光素子20の受光面が受光用光学系32を向くように、それぞれの実装基板5が、Z方向に対して異なる角度で配置されている。これにより、発光素子10及び受光素子20が光学系30に対してそれぞれ適切な位置及び角度に配置されるため、光学系30の像面湾曲の影響を軽減できる。各実装基板5の発光素子10は、その実装基板5の基板面に平行にレーザー光を射出するように配置されている。また、各実装基板5の受光素子20は、その実装基板5の基板面にほぼ平行な方向から入射する光(反射光)を受光するように配置されている。複数(ここでは5個)の発光素子10及び複数(ここでは5個)の受光素子20が同じ基板に実装されているため、また、投光用光学系31と受光用光学系32がそれぞれ別に設けられているため、実装基板5をZ方向(光学系30の光軸の方向)に対して傾けても、それぞれの発光素子10と受光素子20とを光学系30に対して共役の位置関係に維持することができる。なお、本実施形態のように実装基板5に発光側湾曲部6及び受光側湾曲部7が設けられていれば、実装基板5を傾けても、投光用光学系31の像面湾曲に沿うように複数の発行素子を配置させ易く、また、受光用光学系32の像面湾曲に沿うように複数の受光素子20を配置させ易い。
【0028】
なお、複数の実装基板5をZ方向に平行に配置し、互いに平行に配置しても良い。但し、仮に各実装基板5を互いに平行に配置した場合には、実装基板5ごとに、発光素子10及び受光素子20が光学系30に対して適切な位置及び角度になるように、実装基板5に対する発光素子10及び受光素子20の位置及び角度を異ならせる必要がある。これに対し、本実施形態では、実装基板5の傾きを異ならせるため、いずれの実装基板5においても、発光素子10が実装基板5に平行にレーザー光を射出し、受光素子20が実装基板5にほぼ平行な方向から入射する光(反射光)を受光するように構成することができる。このため、本実施形態では、複数の発光素子10及び複数の受光素子20を、X方向及びY方向の異なる位置に、簡易な構成で、光学系30に対して適切な位置及び角度に配置できる。
【0029】
複数(ここでは3枚)の実装基板5は、一体的に固定されており、互いの位置関係が固定されている。具体的には、複数の実装基板5は、共通の基板用フレーム8に固定されている。但し、複数の発光素子10及び複数の受光素子20の位置関係を固定できれば、他の方法で複数の発光素子10及び複数の受光素子20の位置関係を固定しても良い。また、測定装置1が複数の実装基板5を備えていなくても良い。
【0030】
駆動装置45(
図1参照)は、光学系30と実装基板5(発光素子10及び受光素子20)とをXY方向に相対移動させる装置である。駆動装置45が光学系30と実装基板5とをXY方向に相対移動させることによって、光学系30に対する発光素子10の位置関係を変化させ、レーザー光の照射される角度を変化させ、これにより、レーザー光を走査させることができる。
【0031】
駆動装置45は、光学系30と実装基板5の少なくとも一方(光学系30と実装基板5の一方、又は光学系30と実装基板5の両方)を移動させることになる。なお、駆動装置45は、光学系30を実装基板5に対してXY方向に移動させても良いし、実装基板5に対して光学系30をXY方向に移動させても良いし、光学系30をX方向(又はY方向)に移動させつつ実装基板5をY方向(又はX方向)に移動させても良い。本実施形態では、光学用フレーム33と基板用フレーム8の少なくとも一方がX方向及びY方向にそれぞれ所定の共振周波数で筐体3に支持されており、駆動装置45は、光学系30と実装基板5の少なくとも一方をX方向及びY方向にそれぞれの共振周波数で振動させている。駆動装置45は、例えばボイスコイルモータで構成されるが、これに限られるものではない(例えば圧電素子によって構成されても良い)。
【0032】
図3Aは、2次元走査の説明図である。本実施形態では、光学系30と実装基板5の少なくとも一方をX方向及びY方向にそれぞれの共振周波数で振動させることによって、光学系30と実装基板5(発光素子10又は受光素子20)が
図3Aに示すようにリサージュ曲線に沿ってXY方向に相対的に変位する。リサージュ曲線は、X=Asin(at+δ),Y=Bsin(bt)のグラフとなる。ここで、a及びbは、それぞれX方向及びY方向の周波数であり、tは時間であり、δは位相差である。既に説明した通り、光学用フレーム33と基板用フレーム8の少なくとも一方がX方向及びY方向にそれぞれ所定の共振周波数で支持されているため、a及びbは既知の値となる。また、駆動装置45が所定の振幅で光学用フレーム33又は基板用フレーム8を共振させることによってA,Bは既知の値となり、駆動装置45によるX方向及びY方向の駆動タイミングに基づいてδは既知の値となる。このため、コントローラー40は、時間tに基づいて、光学系30二対する発光素子10(若しくは受光素子20)のXY方向の位置を算出可能である。つまり、コントローラー40は、時間tに基づいて、レーザー光が照射される方向を算出可能である。なお、コントローラー40は、時間tに基づいて、レーザー光が照射される方向を算出する代わりに、不図示の位置検出器によって光学用フレーム33と基板用フレーム8とのXY方向の相対位置を検出し、この検出結果に基づいてレーザー光が照射される方向を算出しても良い。
【0033】
図3Bは、或るフレームにおける2次元走査の説明図である。コントローラー40は、所定時間毎に、1枚のフレーム(対象物90の1枚の3次元画像)を取得する。1枚のフレーム(1枚の3次元画像)の測定ごとに、リサージュ曲線上の複数の点において対象物90の表面のX,Y,Z座標を測定することになる。これにより、解像度を高めて座標を測定可能である。なお、フレーム毎に同じリサージュ曲線が反復されても良い。この場合、各フレームにおいて、同じ位置で対象物90の表面の測定が可能になる。一方、フレーム毎にリサージュ曲線がシフトしても良い。この場合、次のフレームにおいて、前のフレームで測定した点群の間を補間するように、対象物90の表面の測定が可能になる。
【0034】
図3Cは、複数チャンネルによる2次元走査の説明図である。図示するように、本実施形態では、チャンネル毎に異なる範囲で2次元走査が行われる。これにより、X方向及びY方向の広い範囲において、対象物90の表面の測定が可能になり、広いFOV(field of view)を実現できる。
【0035】
なお、2次元走査がリサージュ曲線に沿って行われなくても良い。例えば、X方向(又はY方向)のライン走査をY方向(又はX方向)にずらして複数回行うことによって、2次元走査が行われても良い。また、2次元走査ではなく、1次元走査が行われるだけでも良い。また、走査が行われなくても良い。走査を行わない場合には、測定装置1は駆動装置45を備えていなくても良い。但し、走査を行わない場合には、本実施形態と比べて、点群の解像度が低下する。
【0036】
<受光素子について>
まず比較例の受光素子について説明した後、本実施形態の受光素子について説明する。
【0037】
図4Aは、比較例の受光素子20を上から見た図である。
図4Bは、受光素子の受光部の一例の断面図である。
【0038】
受光素子20は、光を受光する受光窓22を有する。受光窓22は、受光素子20の受光面に設けられた受光領域である。例えば受光素子20がアバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photodiode)の場合、受光素子20の受光部21は、基板上にバッファ層、光吸収層、中間層、倍増層、窓層を有しており、更に受光領域と受光領域の外周部のガードリングとを有しており、基板表面及び裏面にそれぞれ電極23及び電極24を有している(後述の第1受光部21A及び第2受光部21Bも同様である)。また、受光素子20の受光面には保護層も形成される。ここでは、受光窓22は、環状の電極23(受光面側の電極;基板表面側の電極)の内側の領域に相当する。受光窓22の直径のことを受光径と呼ぶことがある。受光素子20の大きさが数ミリ角(例えば5mm角)であるのに対し、受光径は例えば500μmである。但し、受光素子20や受光径の大きさは、これに限られるものではない。
【0039】
図4Aに示すように、比較例の受光素子20は、受光素子20を構成するチップの中央に受光窓22が1つ設けられている。比較例の受光素子20の受光窓22は、チップの中央に設けられた1つのみである。
【0040】
図5Aは、受光用光学系32による集光の様子の説明図である。
図5Bは、受光用光学系32の光軸上の受光素子20における受光窓22と集光スポットの説明図である。
図5Cは、受光用光学系32の光軸から外れた位置の受光素子20における受光窓22と集光スポットの説明図である。
【0041】
1つの受光用光学系32に対して複数の受光素子20が配置されるため、
図5Aに示すように、受光用光学系32に対して、光軸上に配置される受光素子20とは別に、光軸から外れた位置に配置される受光素子20が存在する。
図5Aでは、受光用光学系32の光軸から外れた受光素子20が1つだけ描かれているが、受光用光学系32の光軸から外れた受光素子20は複数存在しており、更に、受光用光学系32の光軸に対する外れ方も互いに異なっている(後述;
図12参照)。
【0042】
図5Bに示すように、光軸上に配置された受光素子20では、受光用光学系32によって集光された反射光の集光スポットは、ほぼ円形状になっており、受光窓22の内部に位置している。一方、
図5Cに示すように、光軸から外れた位置に配置された受光素子20では、受光用光学系32によって集光された反射光の集光スポットは、楕円状に歪んでいる。集光スポットの歪み方は、楕円に限られるものではなく、受光用光学系32の構成や光の角度などの影響によって異なる。例えば、集光スポットは、円形スポットから尾を引く形状(彗星形状)や、帯状や弓なり状などの様々な形状に歪むことがある。前述の受光側湾曲部7に受光素子20が設けられた場合であっても、光軸から外れた位置に配置された受光素子20では、集光スポットの歪みを完全に除去することはできず、集光スポットは歪んでしまう。
【0043】
図4Aに示す比較例のように受光素子20の受光窓22が1つの場合、
図5Cに示すように集光スポットの歪みが大きくなると、集光スポットの一部が受光窓22から外れるおそれがある。そして、
図5Cに示すように、集光スポットの一部が受光窓22から外れると、受光素子20が受光する光エネルギーが低下し、この結果、受光素子20が反射光を正常に検出できないおそれがある。
【0044】
図6Aは、本実施形態の受光素子の一例の説明図である。
図6Bは、本実施形態の受光素子20における受光窓22(第1受光窓22A及び第2受光窓22B)と集光スポットの説明図である。
【0045】
図6Aに示すように、本実施形態の受光素子20の受光面には、第1受光窓22Aと、第2受光窓22Bとが設けられている。第1受光窓22Aと第2受光窓22Bには、それぞれ、受光部21(
図4B参照)が設けられている。以下の説明では、第1受光窓22Aを有する受光部21のことを「第1受光部」と呼び、第2受光窓22Bを有する受光部21のことを「第2受光部」と呼ぶ。本実施形態の受光素子20は、第1受光窓22Aに照射された光を検出する第1受光部21Aと、第2受光窓22Bに照射された光を検出する第2受光部21Bとを有する。なお、第1受光窓22A及び第2受光窓22Bのことをそれぞれ「メイン受光窓」及び「サブ受光窓」と呼び、第1受光部21A及び第2受光部21Bのことをそれぞれ「メイン受光部」及び「サブ受光部」と呼んでも良い。
【0046】
既に説明した通り、光軸から外れた位置に配置された受光素子20では、受光用光学系32によって集光された反射光の集光スポットが歪むことがある。本実施形態の受光素子20によれば、
図6Bに示すように、仮に集光スポットの一部が第1受光窓22Aから外れても、集光スポットが第2受光窓22Bに照射されることによって、第2受光部21Bによって反射光を検出することが可能になる。
【0047】
図7A及び
図7Bは、受光素子20の出力信号の説明図である。それぞれの図の上側のグラフは、第1受光部21Aから出力される電流を示しており、下側のグラフは、第2受光部21Bから出力される電流を示している。なお、受光素子20から出力される電流は、プラス側の電流になる場合もあるし、マイナス側の電流になる場合もある(後述)。以下の説明では、第1受光部21Aから出力された信号のことを第1信号と呼び、第2受光部21Bから出力された信号のことを第2信号と呼ぶことがある。第1受光部21Aは、第1受光窓22Aに照射された光に応じた電流(第1信号)を出力することになる。また、第2受光部21Bは、第2受光窓22Bに照射された光に応じた電流(第2信号)を出力することになる。
【0048】
図7Aは、集光スポットが第1受光窓22Aの内部に位置する場合の第1信号及び第2信号の説明図である。
既に説明した通り、本実施形態では、発光素子10はパルス光(
図1のTx)を射出するため、パルス状の反射光(
図1のRx)の集光スポットが受光素子20に照射される。集光スポットが第1受光窓22Aの内部に位置する場合には、第1受光窓22Aに十分な光量の反射光が照射されるため、第1受光部21Aは、
図7Aの上側のグラフに示すように、比較的大きなパルス状の電流(第1信号)を出力する。この場合には、コントローラー40は、第1信号に基づいて、パルス状の反射光を受光した時間tを求めることができる。つまり、コントローラー40は、発光素子10からパルス状のレーザー光を投光してから、受光素子20が反射光を受光するまでの時間を計測することができ、対象物90までの距離を測定することができる。
【0049】
図7Bは、集光スポットの一部が第1受光窓22Aから外れた場合の第1信号及び第2信号の説明図である。
集光スポットの一部が第1受光窓22Aから外れると(
図6B参照)、
図7Aの上側のグラフに示すように、第1信号のパルス状の電流は小さくなる。一方、パルス状の反射光の集光スポットが第2受光窓22Bに照射されると、第2信号は、パルス状の信号となる。第1受光窓22Aと第2受光窓22Bには同時にパルス状の集光スポットが照射されるため、第2信号のパルスのタイミングは、パルス状の反射光を受光したタイミングを示している。このため、コントローラー40は、第2信号に基づいて、パルス状の反射光を受光した時間tを求めることが可能である。つまり、仮に第1信号の電流が弱いために第1信号に基づいて時間tを求めることができなくても、コントローラー40は、第2信号に基づいて、発光素子10からパルス状のレーザー光を投光してから、受光素子20が反射光を受光するまでの時間を計測することができ、対象物90までの距離を測定することができる。
【0050】
ところで、受光用光学系32は、主に受光素子20の第1受光窓22Aに光が集光するように(
図5B参照)、設計されている。このため、主な測定条件下では、第1受光窓22Aに照射される光量は、比較的多くなる。これに対し、第2受光窓22Bは、歪んだ集光スポットの一部の光を検出することが目的であるため、第2受光窓22Bに照射される光量は、比較的少なくなる。そこで、本実施形態では、第2受光窓22Bを有する第2受光部21Bは、第1受光窓22Aを有する第1受光部21Aよりも、感度が高くなるように構成されている。つまり、第2受光部21Bは、受光量に対して高い電流(
図7B下側参照)を出力可能に構成されている。これにより、本実施形態では、第2受光部21Bによって反射光を検出し易くなる。
【0051】
なお、対象物90との距離に応じて反射光の強度が異なるため、第1受光部21Aは、異なる強度の光量に応じた検出信号を出力できるように、ダイナミックレンジが広くなるように構成されている。一般的に、ダイナミックレンジが広くなると、弱い受光量で強い電流を出力し難くなるため、感度が低くなる。一方、第2受光部21Bは、歪んだ集光スポットの一部の光を検出できれば良いため、ダイナミックレンジは広くなくても良い。このため、第2受光部21Bを第1受光部21Aよりも感度が高くなるように構成することが許容されている。
また、一般的に、ダイナミックレンジを比較的広く構成する場合には、受光窓が比較的大きく構成され、感度を比較的高く構成する場合には、受光窓が比較的小さく構成される。このような理由から、広いダイナミックレンジと高い感度を両立させて受光素子20を構成することは一般的には困難である。但し、本実施形態では、第1受光部21Aと第2受光部21Bとを分けて構成しているため、第1受光部21Aはダイナミックレンジを広く構成し、第2受光部21Bは感度を高く構成することが可能である。このような理由から、本実施形態では、第1受光部21Aは第2受光窓22Bよりも大きく構成されている。これにより、第1受光部21Aの出力する第1信号のダイナミックレンジを広くしつつ、第2受光部21Bの出力する第2信号の電流を高めることができる。なお、受光窓22の大きさは、受光窓22が円形の場合には直径(受光径)によって定められ、受光窓22が非円形の場合には受光窓22の面積によって定められる。
【0052】
本実施形態では、第2受光窓22Bが複数(
図6Aでは2つ)設けられている。これにより、集光スポットが条件に応じて異なる方向に歪んでも(集光スポットが第1受光窓22Aから異なる方向に外れても)、第2受光窓22Bによって反射光を検出し易くなる。なお、本実施形態では、第2受光窓22Bが2つであるが、第2受光窓22Bの数は2つに限られるものではない(後述)。
【0053】
図8Aは、本実施形態の受光素子を用いた光検出装置の一例の説明図である。例えば、前述の実装基板5には、
図8Aに示す光検出装置50を構成するための回路が設けられている。
【0054】
光検出装置50は、上記の受光素子20と、変換部51とを有する。変換部51は、受光素子20から出力される信号を電流から電圧に変換する回路である。光検出装置50は、受光素子20毎に変換部51を有している。
図8Aに示す変換部51は、第1変換部51Aと、第2変換部51Bとを有する。第1変換部51Aは、第1受光部21Aから出力される第1信号を電流から電圧に変換する回路である。第2変換部51Bは、第2受光部21Bから出力される第2信号を電流から電圧に変換する回路である。第1変換部51A及び第2変換部51Bは、トランスインピーダンス・アンプ(TIA)で構成される。
【0055】
光検出装置50は、アナログ-デジタル変換回路52(ADC)を有している。ここでは、第1変換部51A及び第2変換部51Bのそれぞれにアナログ-デジタル変換回路52(ADC)が設けられている。それぞれのアナログ-デジタル変換回路52は、第1変換部51A又は第2変換部51Bから出力される電圧(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、コントローラー40(演算装置41)に信号を出力する。コントローラー40(演算装置41)は、第1信号及び第2信号の少なくとも一方の電圧値と閾値とを比較することによって、パルス状の反射光を受光した時間tを求め(
図7A及び
図7B参照)、発光素子10からパルス状のレーザー光を投光してから、受光素子20が反射光を受光するまでの時間を算出し、対象物90までの距離を算出することになる。
【0056】
図8Bは、光検出装置の別の一例の説明図である。ここでは、変換部50は、第1変換部51A及び第2変換部51Bから出力される電圧を電圧加算部53で加算する。アナログ-デジタル変換回路52は、電圧加算部53から出力される電圧(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、コントローラー40(演算装置41)に信号を出力する。コントローラー40は、第1信号及び第2信号の電圧を加算した値と閾値とを比較することによって、パルス状の反射光を受光した時間tを求めることになる。このようにしても、第1信号と第2信号に基づいて、パルス状の反射光を受光した時間tを求めることが可能である。
【0057】
図9Aは、変形例の受光素子を用いた光検出装置の一例の説明図である。
【0058】
変形例の受光素子20は、第1受光部21Aの電流I1に第2受光部21Bの電流I2を加えた電流Iを出力する。
図9Aには、プラス側の電流が出力される場合の電流の向きが矢印で示されているが、後述するように、マイナス側の電流(図中の矢印とは逆側の向きの電流)が出力される場合もある。
既に説明したように、集光スポットの一部が第1受光窓22Aから外れると(
図6B参照)、
図7Aの上側のグラフに示すように、第1信号のパルス状の電流I1は小さくなる。但し、パルス状の反射光の集光スポットが第2受光窓22Bに照射されると、
図7Bの下側のグラフに示すように、第2信号としてパルス状の電流I2が生成される。第1信号のパルスと及び第2信号のパルスは同じタイミングになるため、集光スポットの一部が第1受光窓22Aから外れても、受光素子20は、信号線25から比較的大きいパルス状の電流Iを出力できる。
【0059】
図9B及び
図9Cは、変形例の受光素子と変換部51(トランスインピーダンス・アンプ)との接続の説明図である。
【0060】
図9Bには、変形例の受光素子の一例が示されている。ここでは、第1受光部21Aのアノードと、第2受光部21Bのアノードとが信号線25を介して変換部51(トランスインピーダンス・アンプ)に接続されている。この構成の場合、第1受光部21Aのプラス側の電流I1に第2受光部21Bのプラス側の電流I2を加えた電流Iが信号線25に流れることになる。この場合、受光素子20からプラス側の電流Iが出力されることになる。
【0061】
図9Cには、変形例の受光素子の別の一例が示されている。ここでは、第1受光部21Aのカソードと、第2受光部21Bのカソードとが信号線25を介して変換部51に接続されている。この構成の場合、第1受光部21Aのマイナス側の電流I1に第2受光部21Bのマイナス側の電流I2を加えた電流Iが信号線25に流れることになる。つまり、この場合、受光素子20からマイナス側の電流Iが出力されることになる(受光素子20は変換部51から電流Iを吸い込むことになる)。
【0062】
図9A~
図9Cに示す変形例の受光素子20を用いることによって、受光素子20から信号を出力する信号線を減らすことができる。また、変形例の受光素子20を用いることによって、光検出装置50のトランスインピーダンス・アンプ(TIA)やアナログ-デジタル変換回路52(ADC)の数を減らすことができる。
【0063】
図10A~
図10Fは、第1受光窓22A及び第2受光窓22Bの例の説明図である。
図10A~
図10Fに示す受光素子20は、第1受光窓22Aと、2つの第2受光窓22Bとを有する。受光素子20の受光面の中央に第1受光窓22Aが配置されており、その第1受光窓22Aの周囲に2つの第2受光窓22Bが配置されている。なお、「第1受光窓22Aの周囲」とは、第1受光窓22Aの外周よりも外側であり、且つ、その第1受光窓22Aが設けられたチップの外縁よりも内側の範囲を意味する。
図10A~
図10Fでは、2つの第2受光窓22Bが第1受光窓22Aを挟むように配置されている。第1受光窓22Aを挟むように複数の第2受光窓22Bを配置することによって、ある測定条件下では集光スポットが第1受光窓22Aに対して所定方向(例えば+Y方向)に外れるように歪み、別の測定条件下では集光スポットが第1受光窓22Aに対して逆方向(例えば-Y方向)に外れるように歪むような場合でも、第2受光窓22Bによって反射光を検出し易くなる。若しくは、第1受光窓22Aを挟むように複数の第2受光窓22Bを配置することによって、集光スポットが帯状に歪むことによって集光スポットが第1受光窓22Aを跨がるように大きく歪むような場合でも、第2受光窓22Bによって反射光を検出し易くなる。
【0064】
なお、
図10A~
図10C(若しくは
図10D~
図10F)に示すように、2つの第2受光窓22Bが第1受光窓22Aを挟む方向は、X方向でも良いし、Y方向でも良いし、X方向及びY方向と交差する方向でも良い。また、
図10Cに示すように、矩形の受光面の対角線上に第1受光窓22A及び2つの第2受光窓22Bを配置すると、受光面の狭いスペース上に第1受光窓22A及び2つの第2受光窓22Bを配置させ易くなる(この結果、受光素子20のチップの小型化を図ることも可能である)。なお、2つの第2受光窓22Bが第1受光窓22Aを挟むように配置されていなくても良い。例えば、2つの第2受光窓22Bの両方が、第1受光窓22Aに対して+Y方向に配置されていても良い。
【0065】
既に説明したように、第1受光部21Aのダイナミックレンジを広くし、第2受光部21Bの感度を高くするためには、
図10A~
図10Cに示すように、第1受光窓22Aが第2受光窓22Bよりも大きいことが望ましい。但し、ダイナミックレンジや感度に問題が無ければ、
図10D~
図10Fに示すように、第1受光窓22Aが第2受光窓22Bよりも小さくても良い。なお、第2受光窓22Bが第1受光窓22Aよりも大きければ、集光スポットが大きく歪んで第1受光窓22Aから外れたときに、第2受光窓22Bで反射光を受光し易くなる。
【0066】
図11A~
図11Dは、第1受光窓22A及び第2受光窓22Bの別の例の説明図である。
図11A~
図11Dに示す受光素子20においても、2つの第2受光窓22Bが第1受光窓22Aを挟むように配置されているため、第2受光窓22Bによって反射光を検出し易くなる。なお、
図11A~
図11Dに示すように、4つの第2受光窓22Bは、第1受光窓22Aの周囲に均等に配置されることが望ましい。また、
図11B及び
図11Dに示すように、矩形の受光面の対角線上に第1受光窓22A及び2つの第2受光窓22Bを配置すると、受光面の狭いスペース上に第1受光窓22A及び2つの受光窓を配置させ易くなる(この結果、受光素子20のチップの小型化を図ることも可能である)。また、第1受光部21Aのダイナミックレンジを広くし、第2受光部21Bの感度を高くするためには、
図11A及び
図11Bに示すように、第1受光窓22Aを第2受光窓22Bよりも大きくすることが望ましい。但し、ダイナミックレンジや感度に問題が無ければ、
図11C及び
図11Dに示すように、第1受光窓22Aが第2受光窓22Bよりも小さくても良い。なお、第2受光窓22Bの数は、2又は4に限られるものではなく、他の数でも良い。
【0067】
図12は、受光素子アレイの一例の説明図である。
既に説明した通り、測定装置1は、X方向及びY方向に2次元配列させた複数の受光素子20を有する。受光用光学系32(図中の点線)に対して複数の受光素子20を配置する場合、受光用光学系32の光軸(点線の円の中心)に対して受光素子20をずらして配置する必要がある。この結果、或る受光素子20(第1受光素子)の光軸に対する位置と、別の受光素子20(第2受光素子)の光軸に対する位置が異なる。集光スポットの歪み方は、受光用光学系32に対する受光素子20の位置に応じて異なるため、2次元配列させた複数の受光素子20のそれぞれに入射する集光スポットは異なる形状になる。
【0068】
そこで、図に示すように、本実施形態では、集光スポットの歪み方に応じて、それぞれの受光素子20の第1受光窓22Aと第2受光窓22Bの並ぶ方向を異ならせている。この結果、本実施形態では、或る受光素子20(第1受光素子)では、第1受光窓22Aと第2受光窓22Bの並ぶ方向が例えばX方向であるのに対し、別の受光素子20(第2受光素子)では、第1受光窓22Aと第2受光窓22Bの並ぶ方向がY方向(若しくは、X方向及びY方向に交差する方向)となる。本実施形態によれば、第2受光部21Bが反射光を検出し易くなる。
【0069】
なお、受光素子アレイの全ての受光素子20の第1受光窓22Aと第2受光窓22Bの並ぶ方向が同じでも良い。また、受光素子アレイの全ての受光素子が本実施形態の第1受光窓22A及び第2受光窓22Bを有する受光素子でなくても良く、一部の受光素子が
図4Aに示す受光素子であっても良い。
【0070】
上記の通り、本実施形態の受光素子20は、第1受光窓22Aに照射された光を検出する第1受光部21Aと、第2受光窓22Bに照射された光を検出する第2受光部21Bとを備え、第2受光窓22Bは、第1受光窓22Aの周囲に設けられている(
図6A参照)。これにより、仮に集光スポットの一部が第1受光窓22Aから外れても、集光スポットが第2受光窓22Bに照射されることによって、第2受光部21Bによって反射光を検出することが可能になる(
図6B参照)。
【0071】
また、本実施形態では、第2受光部21Bは、第1受光部21Aよりも感度が高いことが望ましい。これにより、第2受光部21Bによって反射光を検出し易くなる。
【0072】
また、本実施形態では、第1受光窓22Aは、第2受光窓22Bよりも大きいことが望ましい。これにより、第1受光部21Aのダイナミックレンジを広くしつつ、第2受光部21Bの感度を高くすることの両立が可能になる。
【0073】
また、本実施形態では、複数の第2受光窓22Bが第1受光窓22Aの周囲に設けられていることが望ましい(
図10、
図11参照)。これにより、第2受光窓22Bによって反射光を検出し易くなる。但し、第2受光窓22Bの数が1つでも良い。
【0074】
また、本実施形態では、複数の第2受光窓22Bが第1受光窓22Aを挟むように配置されていることが望ましい。これにより、第2受光窓22Bによって反射光を検出し易くなる。但し、2つの第2受光窓22Bが第1受光窓22Aを挟むように配置されていなくても良い。
【0075】
また、本実施形態では、矩形状の受光面の対角線上に第1受光窓22A及び複数の第2受光窓22Bが配置されている(
図10、
図11参照)。これにより、受光面の狭いスペース上に第1受光窓22A及び2つの第2受光窓22Bを配置させ易くなる。
【0076】
また、本実施形態の受光素子20は、第1受光部21Aの電流に第2受光部21Bの電流を加えた電流を出力する信号線25を有することが望ましい(
図9参照)。これにより、受光素子20から信号を出力する信号線を減らすことができる。
【0077】
また、上記の通り、本実施形態の測定装置1は、対象物90に光を照射する発光素子10と、光学系30と、対象物90からの反射光を受光する受光素子20と、を備えている。そして、測定装置1に用いられる受光素子20は、第1受光窓22Aに照射された光を検出する第1受光部21Aと、第2受光窓22Bに照射された光を検出する第2受光部21Bとを備え、第2受光窓22Bは、第1受光窓22Aの周囲に設けられている(
図6A参照)。これにより、仮に集光スポットの一部が第1受光窓22Aから外れても、集光スポットが第2受光窓22Bに照射されることによって、第2受光部21Bによって反射光を検出することが可能になる(
図6B参照)。
【0078】
また、本実施形態では、測定装置1は、複数の受光素子を備えており、受光用光学系32の光軸に対する或る受光素子(第1受光素子)の位置と、受光用光学系32の光軸に対する別の第2受光素子(第2受光素子)の位置とが異なっており、或る受光素子(第1受光素子)の第1受光窓22Aと第2受光窓22Bの並ぶ方向と、別の受光素子(第2受光素子)の第1受光窓22Aと第2受光窓22Bの並ぶ方向とが異なっていることが望ましい。これにより、それぞれの第2受光部21Bが反射光を検出し易くなる。
【0079】
以上、本発明の実施形態につき詳述したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施形態の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 測定装置、3 筐体、5 実装基板、
6 発光側湾曲部、7 受光側湾曲部、
8 基板用フレーム、10 発光素子、20 受光素子、
21 受光部、21A 第1受光部、21B 第2受光部、
22 受光窓、22A 第1受光窓、22B 第2受光窓、
23 電極、24 電極、25 信号線、
30 光学系、31 投光用光学系、
32 受光用光学系、33 光学用フレーム、
40 コントローラー、41 演算装置、42 記憶装置、
50 光検出装置、51 変換部、
51A 第1変換部、51B 第2変換部、
52 アナログ-デジタル変換回路、53 電圧加算部、
90 対象物