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特開2022-142249熱可塑性樹脂組成物およびその成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142249
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20220922BHJP
   C08K 13/04 20060101ALI20220922BHJP
   C08K 7/14 20060101ALN20220922BHJP
   C08K 3/22 20060101ALN20220922BHJP
   C08K 3/105 20180101ALN20220922BHJP
   C08K 3/16 20060101ALN20220922BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K13/04
C08K7/14
C08K3/22
C08K3/105
C08K3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042358
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 俊介
(72)【発明者】
【氏名】森 勇気
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL031
4J002DD059
4J002DD078
4J002DD088
4J002DD089
4J002DE147
4J002DG048
4J002DH048
4J002DK008
4J002DL006
4J002EG048
4J002EG058
4J002EG078
4J002EG098
4J002FA046
4J002FD016
4J002GC00
4J002GL00
4J002GM05
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機械強度、耐加水分解性および耐熱老化性に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分および1,10-デカンジアミンを主成分とするジアミン成分からなる半芳香族ポリアミド(A成分)100重量部に対し、(B)ガラス繊維(B成分)10~150重量部、(C)ハイドロタルサイト(C成分)0.1~1.0重量部、(D)銅化合物(D成分)0.01~0.1重量部および(E)ハロゲン化アルカリ金属物(E成分)0.1~2重量部を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分および1,10-デカンジアミンを主成分とするジアミン成分からなる半芳香族ポリアミド(A成分)100重量部に対し、(B)ガラス繊維(B成分)10~150重量部、(C)ハイドロタルサイト(C成分)0.1~1.0重量部、(D)銅化合物(D成分)0.01~0.1重量部および(E)ハロゲン化アルカリ金属物(E成分)0.1~2重量部を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
D成分がヨウ化銅であり、E成分がヨウ化カリウムであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分および1,10-デカンジアミンを主成分とするジアミン成分からなる半芳香族ポリアミド、ガラス繊維、ハイドロタルサイト、銅化合物およびハロゲン化アルカリ金属物よりなる樹脂組成物およびそれからなる成形品に関する。更に詳しくは、機械強度、耐加水分解性および耐熱老化性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド6(以下、PA6と略称する)およびポリアミド66(以下、PA66と略称する)に代表されるポリアミド樹脂は、その優れた諸特性を活かし、数々の機械部品、電気・電子部品、自動車部品として採用されている。一方、上記ポリアミドは高温空気中に長期に保管すると酸化劣化され、分子量の低下や諸物性の低下を引き起こす熱劣化の問題が指摘されている。特に近年の表面実装技術(SMT)の進歩に伴うリフローハンダ耐熱性を必要とする電気・電子分野や、年々耐熱性への要求が高まる自動車のエンジンルーム部品などにおいては、従来のポリアミドの使用が困難となってきており、耐熱性、耐熱老化性、機械強度に優れるポリアミドの開発が望まれている。さらに、ロングライフクーラントの用いられるラジエータータンク、リザーバータンクまたはヒータコアのような冷却系部品用途においては、ポリアミドの耐加水分解性をさらに向上させることが望まれている。PA6およびPA66などの従来のポリアミドの前記課題を解決するために、剛直な環構造を主鎖に有する高融点ポリアミドの開発が進められてきた。例えば芳香環構造を有するポリアミドとして、テレフタル酸と1,6-ヘキサンジアミンからなるポリアミド(以下、PA6Tと略称する)を主成分とする半芳香族ポリアミドが種々提案されている。PA6Tは、融点が370℃付近にあって分解温度を超えるので、溶融重合、溶融成形が困難であるため、アジピン酸、イソフタル酸などのジカルボン酸成分またはPA6などの脂肪族ポリアミドを共重合することにより、280~320℃程度の実使用可能な温度領域にまで低融点化した組成で用いられる。このように第3成分を共重合することはポリマーの低融点化には有効だが、結晶化速度、到達結晶化度の低下を伴い、その結果、高温下での剛性、耐薬品性、加熱に伴う寸法安定性などの諸物性が低下するほか、成形サイクルの延長に伴う生産性の低下という問題がある。また、耐加水分解性および耐熱老化性に関して、芳香族基の導入により従来のPA6やPA66に比べ改善されてはいるが、実用レベルには依然として達していない。
【0003】
特許文献1、2には、それぞれ、ポリアミド9T、ポリアミド10Tおよびガラス繊維等の繊維状強化材からなる樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は長鎖脂肪族基の導入により従来のPA6Tと比べて吸水率が低く、耐加水分解性が改善されているが、いまだ十分ではなかった。また、機械強度も改善の余地があった。特許文献3には、特定のポリアミド、銅化合物およびハロゲン化アルカリ金属化合物を含有するポリアミド組成物が開示されている。これらは耐熱老化性に優れるが、機械強度は不十分であり、また耐加水分解性については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-228769号公報
【特許文献2】特開平6-239990号公報
【特許文献3】特開2015-61892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本発明の目的は、機械強度、耐加水分解性および耐熱老化性に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分および1,10-デカンジアミンを主成分とするジアミン成分からなる半芳香族ポリアミド、ガラス繊維、ハイドロタルサイト、銅化合物およびハロゲン化アルカリ金属物を含有する樹脂組成物が、機械強度、耐加水分解性および耐熱老化性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明によれば、上記課題は、(A)テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分および1,10-デカンジアミンを主成分とするジアミン成分からなる半芳香族ポリアミド(A成分)100重量部に対し、(B)ガラス繊維(B成分)10~150重量部、(C)ハイドロタルサイト(C成分)0.1~1.0重量部、(D)銅化合物(D成分)0.01~0.1重量部および(E)ハロゲン化アルカリ金属物(E成分)0.1~2重量部を含む樹脂組成物にて達成される。
【0008】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0009】
(A成分:半芳香族ポリアミド)
本発明のA成分は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とを構成成分として含有し、ジカルボン酸成分はテレフタル酸を主成分とし、ジアミン成分は1,10-デカンジアミンを主成分とするものである。テレフタル酸の含有量は、耐熱性の観点から、ジカルボン酸成分中、80モル%以上であることが好ましく、100モル%であることがより好ましい。1,10-デカンジアミンの含有量は、機械的特性の向上の観点から、ジアミン成分中、80モル%以上であることが好ましく、100モル%であることがより好ましい。
【0010】
本発明において、A成分の具体例として、PA10Tが挙げられる。
【0011】
A成分のジカルボン酸成分は、テレフタル酸以外のジカルボン酸を含有してもよい。テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸およびシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。テレフタル酸以外のジカルボン酸は、原料モノマーの総モル数に対し、20モル%以下とすることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0012】
A成分のジアミン成分は、1,10-デカンジアミン成分以外の他のジアミンを含有してもよい。他のジアミンとしては、例えば、1,2-エタンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,15-ペンタデカンジアミン等の脂肪族ジアミン成分、シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミンおよびキシリレンジアミン、ベンゼンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。1,10-デカンジアミン成分以外の他のジアミンは、原料モノマーの総モル数に対し、20モル%以下とすることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0013】
本発明におけるA成分は、300℃より高い融点を有することが好ましく、それにより
耐熱性をより向上させることができる場合がある。融点を複数有する場合や、2種以上の半芳香族ポリアミドを用いる場合には、300℃以下の融点を有してもよい。
【0014】
ここで、本発明におけるA成分の融点とは、半芳香族ポリアミドのペレットを約10mg採取して、示差走査熱量計を用いて、窒素雰囲気下で、溶融状態から20℃/分の降温速度で20℃まで降温して5分間保持した後、20℃/分の昇温速度で昇温した際に現れる吸熱ピークの温度を指す。但し、吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、最も温度の高いピークを融点とする。
【0015】
A成分は、従来から知られている加熱重合法や溶液重合法の方法を用いて製造することができる。工業的に有利である点から、加熱重合法が好ましく用いられる。加熱重合法としては、ジカルボン酸成分と、ジアミン成分とから反応生成物を得る工程(i)と、得られた反応生成物を重合する工程(ii)とからなる方法が挙げられる。
【0016】
工程(i)としては、例えば、ジカルボン酸粉末とモノカルボン酸とを混合し、予めジアミンの融点以上、かつジカルボン酸の融点以下の温度に加熱し、この温度のジカルボン酸粉末とモノカルボン酸とに、ジカルボン酸の粉末の状態を保つように、実質的に水を含有させずに、ジアミンを添加する方法が挙げられる。あるいは、別の方法としては、溶融状態のジアミンと固体のジカルボン酸とからなる懸濁液を攪拌混合し、混合液を得た後、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で、ジカルボン酸とジアミンとモノカルボン酸の反応による塩の生成反応と、生成した塩の重合による低重合物の生成反応とをおこない、塩および低重合物の混合物を得る方法が挙げられる。この場合、反応をさせながら破砕をおこなってもよいし、反応後に一旦取り出してから破砕をおこなってもよい。工程(i)としては、反応生成物の形状の制御が容易な前者の方が好ましい。
【0017】
工程(ii)としては、例えば、工程(i)で得られた反応生成物を、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で固相重合し、所定の分子量まで高分子量化させ、半芳香族ポリアミドを得る方法が挙げられる。固相重合は、重合温度180~270℃、反応時間0.5~10時間で、窒素等の不活性ガス気流中でおこなうことが好ましい。
【0018】
工程(i)および工程(ii)の反応装置としては、特に限定されず、公知の装置を用いればよい。工程(i)と工程(ii)を同じ装置で実施してもよいし、異なる装置で実施してもよい。
【0019】
A成分の製造において、重合の効率を高めるため重合触媒を用いてもよい。重合触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられる。重合触媒の添加量は、通常、半芳香族ポリアミドを構成する全モノマーに対して、2モル%以下で用いることが好ましい。
【0020】
(B成分:ガラス繊維)
本発明でB成分として用いられるガラス繊維としては、丸型断面を有するガラス繊維、繊維長断面の長径の平均値が5~20μm、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.5~8である扁平断面ガラス繊維、ガラスミルドファイバーが好適に例示される。
【0021】
上記のガラス繊維のガラス組成は、Aガラス、CガラスおよびEガラス等に代表される各種のガラス組成が適用され、特に限定されない。かかるガラス繊維は、必要に応じてTiO、SO、およびP等の成分を含有するものであってもよい。これらの中でもEガラス(無アルカリガラス)がより好ましい。かかるガラス繊維は、周知の表面処理剤、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤またはアルミネートカップリング剤等で表面処理が施されたものが機械的強度の向上の点から好ましい。シランカッ
プリング剤としては、例えば、ビニルシラン系、アクリルシラン系、エポキシシラン系、アミノシラン系が挙げられ、半芳香族ポリアミドとの密着性が高いことから、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。
【0022】
B成分の含有量は、A成分100重量部に対し、10~150重量部であり、好ましくは30~140重量部、より好ましくは40~120重量部である。B成分の含有量が10重量部未満では引張り強度の向上が不十分となる。一方、150重量部を超える場合には、押出加工性が低下する。
【0023】
(C成分:ハイドロタルサイト)
本発明のC成分として使用されるハイドロタルサイト類化合物は一般式(1)または(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0024】
[M2+ 1-x3+ (OH)x+[An- x/n・mHO]x-・・・(1)
2+ 1-x3+ 1+x/2・・・(2)
(式中、M2+は2価の金属イオン、M3+は3価の金属イオン、An-はn価のアニオンを示す。x、m、nは下記式で示される数を示す。0≦x≦0.33、0≦m≦5、0<n≦4)
【0025】
2+としてはMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等があげられ、M3+としてはAl3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、In3+等があげられ、An-としてはOH、F,Cl、Br、NO 、CO 2-、SO 2-、Fe(CN) 2-、CHCOO、シュウ酸イオン、サリチル酸イオンなどがあげられる。M2+、M3+およびAn-はそれぞれ1種類または2種類以上から構成されてよい。また、(2)式で表されるものは(1)式で表されるハイドロタルサイト類化合物を焼成することで得られる。
【0026】
C成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.1~1.0重量部であり、好ましくは0.1~0.8重量部、より好ましくは0.1~0.7重量部である。含有量が0.1重量部未満では十分な機械強度および耐加水分解性の向上が得られず、一方、1.0重量部を超えると押出加工性が低下する。
【0027】
(D成分:銅化合物)
本発明でD成分として用いられる銅化合物としては、例えば、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅などのハロゲン化銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、硫酸銅、リン酸銅、ホウ酸銅、硝酸銅、ステアリン酸銅、キレート剤に配位した銅錯塩などが挙げられる。中でもハロゲン化銅が好ましく、ヨウ化第一銅がより好ましい。銅化合物は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0028】
D成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.01~0.1重量部であり、好ましくは0.02~0.1重量部、より好ましくは0.02~0.09重量部である。D成分の含有量が0.01重量部未満では耐熱老化性が不十分となる。一方、0.1重量部を超える場合には、押出加工性が低下する。
【0029】
(E成分:ハロゲン化アルカリ金属化合物)
本発明でE成分として用いられるハロゲン化アルカリ金属化合物としては、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられ、中でも、ヨウ化カリウムが好ましい。ハロゲン化アルカリ金
属化合物は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0030】
E成分の含有量は、A成分100重量部に対して、0.1~2重量部であり、好ましくは0.2~1.8重量部、より好ましくは0.5~1.5重量部である。E成分の含有量が0.1重量部未満では耐熱老化性が不十分となる。一方、2重量部を超える場合には、耐加水分解性が低下する。
【0031】
(その他の添加剤について)
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらにほかの添加剤等を配合することができる。以下これら添加剤について具体的に説明する。
【0032】
(I)熱安定剤
本発明の樹脂組成物は公知の各種安定剤を配合することができる。安定剤としては、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
【0033】
(i)リン系安定剤
本発明の樹脂組成物は、加水分解性を促進させない程度において、リン系安定剤が配合されることが好ましい。かかるリン系安定剤は製造時または成形加工時の熱安定性を向上させ、機械的特性、色相、および成形安定性を向上させる。リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0034】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられ、テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。上記リン系安定剤の中でもトリメチルホスフェートに代表されるアルキルホスフェート化合物が配合されることが好ましい。またかかるアルキルホスフェート化合物と、ホスファイト化合物および/またはホスホナイト化合物との併用も好ましい態様である。
【0035】
(ii)ヒンダードフェノール系安定剤
本発明の樹脂組成物には、ヒンダードフェノール系安定剤を配合することができる。かかる配合は例えば成形加工時の色相悪化や長期間の使用における色相の悪化などを抑制する効果が発揮される。ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。リン系安定剤およびヒンダードフェノール系安定剤の配合量は、それぞれA成分100重量部に対し、好ましくは0.0001~1重量部、より好ましくは0.001~0.5重量部、さらに好ましくは0.005~0.3重量部である。
【0036】
(iii)前記以外の熱安定剤
本発明の樹脂組成物には、前記リン系安定剤およびヒンダードフェノール系安定剤以外の他の熱安定剤を配合することもできる。かかる他の熱安定剤としては、例えば3-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物に代表されるラクトン系安定剤が好適に例示される。かかる安定剤の詳細は特開平7-233160号公報に記載されている。かかる化合物はIrganox HP-136(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販され、該化合物を利用できる。更に該化合物と各種のホスファイト化合物およびヒンダードフェノール化合物を混合した安定剤が市販されている。例えば前記社製のIrganoxHP-2921が好適に例示される。ラクトン系安定剤の配合量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.0005~0.05重量部、より好ましくは0.001~0.03重量部である。またその他の安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール-3-ステアリルチオプロピオネートなどのイオウ含有安定剤が例示される。かかるイオウ含有安定剤の配合量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.001~0.1重量部、より好ましくは0.01~0.08重量部である。
【0037】
(II)脂肪族ポリアミド
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲において公知の主鎖中に芳香族成分を含まないポリアミドを配合することができる。かかる脂肪族ポリアミドは成形品の機械強度と外観を向上させる。脂肪族ポリアミドとしては、ポリε-カプラミド(PA6
)、ポリテトラメチレンアジパミド(PA46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(PA66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(PA610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(PA612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(PA116)、ポリウンデカナミド(PA11)、ポリドデカナミド(PA12)およびこれらのうち少なくとも2種類の異なったポリアミド成分を含むポリアミド共重合体、あるいは、これらの混合物などがあげられる。中でも構成単位の炭素数が6以下であるポリアミドが好ましく、PA6、PA66が、経済性の観点から好ましい。
【0038】
脂肪族ポリアミドの相対粘度は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、成形加工が容易な熱可塑性樹脂組成物を得るには、脂肪族ポリアミドは、相対粘度が1.9~4.0であることが好ましく、2.0~3.5であることがより好ましい。脂肪族ポリアミドの相対粘度が1.9未満であると、成形品によっては靱性が不足し、機械的特性の低下を招く場合がある。また、脂肪族ポリアミドの相対粘度が4.0を超えると、熱可塑性樹脂組成物は、成形加工が困難となり、得られる成形品は、外観が劣る場合がある。
【0039】
(樹脂組成物の製造)
本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば各成分、並びに任意に他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式ニ軸押出機が好ましい。他に、各成分、並びに任意に他の成分を予備混合することなく、それぞれ独立に二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法も取ることもできる。
【0040】
(成形品について)
上記の如く得られた本発明の樹脂組成物は通常前記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。更にペレットを経由することなく、押出機で溶融混練された樹脂を直接シート、フィルム、異型押出成形品および射出成形品にすることも可能である。
【0041】
かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また本発明の樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シートを成形することも可能である。
【0042】
本発明の樹脂組成物が利用される成形品としては、例えば、パソコン(ノートブック、ウルトラブック)、タブレット、携帯電話用ハウジング、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの電気、電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどの内部部材やそのケース、機構部品、パネルなどの建材用途、モーター部品、オルタネーターターミナル、オルタネー
ターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、サスペンション部品、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係、排気系または吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、各種アーム、各種フレーム、各種ヒンジ、各種軸受、燃料ポンプ、ガソリンタンク、CNGタンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クラン クシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、ハンドル、ドアビーム、プロテクター、シャーシ、フレーム、アームレスト、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、ラジエターサポート、スペアタイヤカバー、シートシェル、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ホイール、フェンダー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラーおよび各種モジュールなどの自動車、二輪車関連部品、部材および外板やランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、風車の羽根、ハイブリッド自動車や電気自動車用のインバータハウジング等の電子機器筐体などにおいて幅広く有用である。
【発明の効果】
【0043】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械強度、耐加水分解性および耐熱老化性に優れる。これらの特性は、従来の技術にないものであるため、本発明の奏する工業的効果は極めて大である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明者が現在最良と考える発明の形態は、上記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【実施例0045】
以下に実施例をあげて本発明を更に説明する。なお、評価は下記の方法によって実施した。
【0046】
(熱可塑性樹脂組成物の評価)
(i)引張り強度:下記の方法で得られた引張り試験片(ISO527に準拠した引張り試験片:厚み4mm)を用い、ISO527(測定条件23℃)に準拠して引張り強度の測定を実施した(引張り速度:5mm/min、試験温度;23℃)。
(ii)耐加水分解性:下記の方法で得られた引張り試験片(ISO527に準拠した引張り試験片:厚み4mm)を、超加速寿命試験装置((株)平山製作所製 PC-305III/V)に入れ、温度120℃、湿度100%RH、処理時間100時間にて処理を行った。得られた試験片の引張り強度をISO527(測定条件23℃)に準拠して測定した。測定した湿熱処理前の引張り強度および湿熱処理後の引張り強度より下記式を用いて、湿熱処理後の保持率を算出し、保持率が65%以上を「〇」、保持率が65%未満を「×」とした。
湿熱処理後の保持率(%)=[(湿熱処理後の引張り強度)/(湿熱処理前の引張り強度)]×100
(iii)耐熱老化性:下記の方法で得られた引張り試験片(ISO527に準拠した引張り試験片:厚み4mm)を130℃乾熱環境下に1000時間静置した。得られた試験片の引張り強度をISO527(測定条件23℃)に準拠して測定した。測定した乾熱処理前の引張り強度および乾熱処理後の引張り強度より下記式を用いて、乾熱処理後の保持率を算出し、保持率が90%以上を「〇」、保持率が90%未満を「×」とした。
乾熱処理後の保持率(%)=[(乾熱処理後の引張り強度)/(乾熱処理前の引張り強度)]×100
(iv)押出加工性:押出時の安定性に関して以下の基準で評価を実施した。
押出時のストランドが安定している。:〇
押出時のストランドがやや不安定であるが、ペレット化は可能である。:△
押出時のストランドがかなり不安定であり、ペレット化は困難である。:×
【0047】
[実施例1~10、比較例1~9]
表1および表2に示す組成で、B成分を除く成分からなる混合物を押出機の第1供給口から供給した。かかる混合物はV型ブレンダーで混合して得た。B成分は、第2供給口からサイドフィーダーを用いて供給した。押出は径30mmφのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所TEX30α-38.5BW-3V)を使用し、スクリュー回転数200r.p.m.、吐出量25kg/h、ベントの真空度3kPaで溶融混練しペレットを得た。なお、押出温度については、第1供給口からダイス部分まで330℃で実施した。得られたペレットの一部は、130℃で9時間熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機を用いて、シリンダー温度330℃、金型温度130℃にて引張り試験片(ISO527に準拠した引張り試験片:厚み4mm)を成形した。
【0048】
なお、表1および表2中の記号表記の各成分は下記の通りである。
(A成分)
A-1:半芳香族ポリアミド:PA10T(ユニチカ(株)製:ゼコットXN501)
(B成分)
B-1:ガラス繊維:チョップドガラス繊維(日東紡績(株)製:CS 3J-459(製品名)、カット長3mm)
(C成分)
C-1:ハイドロタルサイト(協和化学(株)製:DHT-4A-2(製品名))
(D成分)
D-1:銅化合物:ヨウ化銅(I)(富士フイルム和光純薬(株)製)
(E成分)
E-1:ハロゲン化アルカリ金属化合物:ヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)
E-2:ハロゲン化アルカリ金属化合物:臭化カリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)
(その他の成分)
安定剤:リン系安定剤:テトラキス(2,4-ジt-ブチルフェニル)-4,4-ビフェニリレンジフォスファイト(クラリアントジャパン(株)製:ホスタノックスP-EPQ(製品名))
脂肪族PA:PA6(宇部興産(株)製:1011FB(製品名))
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
上記表1および表2から本発明の配合により、機械強度、耐加水分解性および耐熱老化性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られていることが分かる。