IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -全固体電池材料製造用の離型フィルム 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142259
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】全固体電池材料製造用の離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20220922BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220922BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220922BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20220922BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220922BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0562
H01M4/139
C08J7/04 Z CFD
B32B27/00 L
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042375
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西本 晃
(72)【発明者】
【氏名】吉野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩二
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB13
4F006AB39
4F006AB42
4F006BA11
4F006CA08
4F006EA03
4F006EA05
4F100AK23C
4F100AK41B
4F100AK42B
4F100AK52A
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA22C
4F100CC01A
4F100CC02A
4F100CC03A
4F100EH171
4F100EH17B
4F100EH462
4F100EH46A
4F100EH46C
4F100EJ381
4F100EJ38B
4F100EJ542
4F100EJ862
4F100GB41
4F100JA06B
4F100JG03C
4F100JL14A
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM11
5H029BJ12
5H029HJ04
5H029HJ10
5H050AA19
5H050BA15
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050FA02
5H050HA04
5H050HA10
(57)【要約】
【課題】全固体電池の材料である固体電解質層、正極活物質層、負極活物質層、集電体層、絶縁層を製造するために用いる離型フィルムとして、環境負荷を小さく、かつ剥離性に優れた離型フィルムを提供しようとするものである。
【解決手段】ポリエステルフィルムを基材とし、少なくとも片面に、離型層を設けてなる離型フィルムであって、該基材フィルムの固有粘度が0.50~0.90dl/gであり、厚みが10μm以上188μm以下であり、かつ離型層の厚みが0.001μm以上1.5μm以下であることを特徴とする全固体電池材料製造用の離型フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムを基材とし、少なくとも片面に、離型層を設けてなる離型フィルムであって、該基材フィルムの固有粘度が0.50~0.90dl/gであり、厚みが10μm以上188μm以下であり、かつ離型層の厚みが0.001μm以上1.5μm以下であることを特徴とする全固体電池材料製造用の離型フィルム。
【請求項2】
該基材フィルムの厚みが12μm以上100μm以下であり、固有粘度が0.52~0.62dl/gであり、かつ離型層の厚みが0.002μm以上1.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
【請求項3】
該基材フィルムの厚みが15μm以上50μm以下であり、かつ離型層の厚みが0.003μm以上0.60μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
【請求項4】
該基材フィルムの厚みが19μm以上40μm以下であり、かつ離型層の厚みが0.004μm以上0.50μm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
【請求項5】
該離型フィルムの、ヘキサンによるシリコーン抽出量が3mg/m以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
【請求項6】
該離型フィルムの、ヘキサンによるシリコーン抽出量が2mg/m以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
【請求項7】
該離型フィルムの、ヘキサンによるシリコーン抽出量が1mg/m以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
【請求項8】
該離型フィルムの、少なくとも片面に帯電防止層が設けられていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
【請求項9】
該基材フィルムの少なくとも片面に、帯電防止層、離型層がこの順に積層されている請求項8に記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
【請求項10】
帯電防止層の厚みが0.001μm以上1.0μm以下であることを特徴とする請求項8または9に記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
【請求項11】
帯電防止層の厚みが0.002μm以上0.50μm以下であることを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
【請求項12】
全固体電池用の固体電解質層、正極活物質層、負極活物質層、集電体層、絶縁層からなる群から選択される少なくとも1つの全固体電池用部材を製造するための、請求項1~11のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルムを用いることをふくむ、全固体電池用の固体電解質層の製造方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルムを用いることをふくむ、全固体電池用の正極活物質層の製造方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルムを用いることをふくむ、全固体電池用の負極活物質層の製造方法。
【請求項16】
請求項1~12のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルムを用いることをふくむ、全固体電池用の集電体層の製造方法。
【請求項17】
請求項1~12のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルムを用いることをふくむ、全固体電池用の絶縁層の製造方法。
【請求項18】
少なくとも請求項13~17に記載の製造方法を含む、全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池材料製造用の離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、パソコン等の情報関連機器や通信機器等の普及、また新たにIoT(Internet of Things、モノのインターネット)機器やウェアラブル機器の急速な拡大、進展に伴い、電源として利用される充放電可能な電池についての開発が進められている。また、自動車業界においても、電気自動車やハイブリッド自動車に用いられる、高出力かつ高容量の電池の開発が重要視されている。これまで、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の各種電池が検討されてきたが、近年はこれら電池の中でも、エネルギー密度と出力が高いことから、リチウムイオン電池が特に注目されている。
【0003】
一般的なリチウムイオン電池は、正極活物質を含む正極活物質層と正極活物質層から集電を行う正極集電体層を組み合わせた正極、負極活物質を含む負極活物質層と負極活物質層から集電を行う負極集電体層を組み合わせた負極、リチウムイオンを輸送する役割を担う電解質層、および正極と負極間を隔離して両極間の短絡を防ぐ一方、多孔構造中に電解液を包含してリチウムイオン輸送の通路を形成するセパレータ層から構成される。
【0004】
リチウムイオン二次電池の電解液は、通常電解質塩と有機溶媒から構成されている。有機溶媒には電解質を高濃度で溶解するため、高誘電率であること、またリチウムイオンを速やかに移動させるために低粘度であることが求められ、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートやこれらおよび他の有機溶媒の混合溶媒が用いられる。この有機溶媒は可燃性であるため、電池の過充電やリチウムデンドライトの形成による短絡を原因とした発火や、液漏れが発生した際の引火等、安全性への対策が不可欠である。
【0005】
この安全性対策の一つとして、電解質に有機溶媒ではなく、硫化物系や酸化物系の固体電解質を用いる、全固体リチウム二次電池等、全固体電池の研究が現在盛んに進められている。
【0006】
全固体電池は、例えば材料である固体電解質層、正極活物質層、負極活物質層、集電体層、絶縁層の各層を、各構成成分の粉体にバインダー、溶媒等を混合した混合スラリーを、離型処理したPET等のキャリアフィルム上に塗布や印刷等により薄板状に成形し、乾燥後にフィルムを剥離することにより得た後、これらをプレスすることにより得られる。 この時、集電体層に銅やアルミ箔を用いることもあり、さらに一部の層を直接銅箔やアルミ箔上に形成する方法もある。
【0007】
また、全固体電池は、例えば、LTCC(Low Temperature Co-Fired Ceramics)、HTCC(High Temperature Co-Fired Ceramics)等の積層セラミックス技術に用いられる、グリーンシート工法により作成することもできる。グリーンシートとは、特定の組成のセラミックの粉体に、バインダー、溶媒等を混合して均質なスラリーを生成し、このスラリーを塗布や印刷後に乾燥した、焼成する前のシートである。このグリーンシートを作成するための方法として、キャリアフィルムとしてPET等の離型フィルム上にスラリーを塗布、乾燥後フィルムを剥離する方法が記載されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0008】
具体的には、特許文献1には、少なくとも熱処理後にリチウムイオン伝導性を呈する無機化合物粉末及び有機バインダを含むグリーンシートを焼成してイオン伝導性固体電解質を製造する方法において、前記無機化合物粉末及び有機バインダを混合してスラリーを作製するスラリー製造工程と、 前記スラリーをキャリアフィルムへ塗布して塗膜を作製する塗膜工程と、 塗膜を乾燥させる乾燥工程と、 前記塗膜を前記キャリアフィルムから剥離してグリーンシートを作製する剥離工程と、前記グリーンシートを積層して積層体を作製する積層工程とを含み、 前記剥離工程直後の前記塗膜の含水率が、0.1~5%であることを特徴とするイオン伝導性固体電解質を製造する方法が記載されているが、本文献の課題を解決する手段および実施例の固体電解質用グリーンシートの作成において、スラリーをドクターブレードにより離型処理を施したPETフィルム上に成型する旨の記載がある。
【0009】
また、特許文献2には、電極活物質層と固体電解質層とを含む全固体電池の製造方法であって、 少なくとも固体電解質とバインダーとを溶媒に分散させた固体電解質スラリーを、塗布及び乾燥して固体電解質シートを作製する工程、並びに、少なくとも電極活物質とバインダーとを溶媒に分散させた活物質スラリーを、塗布及び乾燥して電極活物質シートを作製する工程のうち少なくとも一方の工程を含み、 前記固体電解質スラリー及び前記活物質スラリーの少なくとも一方が、前記溶媒として、第一の溶媒と、該第一の溶媒よりも沸点の高い第二の溶媒と、を含むことを特徴とする全固体電池の製造方法が記載されているが、本文献の背景技術、発明を実施するための形態、実施例に、離型処理を施したPETフィルムを使用する旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010-108882号公報
【特許文献2】特開2012-243472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これら従来技術は、文献中に記載の通り、離型処理を施したPETフィルムと乾燥後のグリーンシートとの剥離に際するグリーンシートの欠陥や破れの抑制に着目しており、そのために文献1では乾燥後のグリーンシートの含水率やグリーンシートが置かれる環境を制御し、文献2ではスラリーの溶媒組成を制御しているにもかかわらず、もう一つの重要な要因であるキャリアフィルムの剥離特性には着目されてこなかった。
【0012】
さらに、近年、SDGs(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)のターゲット12.5(2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。)に示されているように、生産活動における環境負荷の低減は喫緊の課題であるが、背景技術ではキャリアフィルムとしての離型フィルムの使用量低減についても着目されてこなかった。
【0013】
本発明は、全固体電池の材料である固体電解質層、正極活物質層、負極活物質層、集電体層、絶縁層を製造するために用いる離型フィルムとして、ポリエステルフィルムの固有粘度、基材厚みおよび離型層の厚みの抑制による環境負荷の低減と、離型フィルム上に形成した各層シートの離型性を両立した離型フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記構成を有する離型フィルムの製造方法により前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. ポリエステルフィルムを基材とし、少なくとも片面に、離型層を設けてなる離型フィルムであって、該基材フィルムの固有粘度が0.50~0.90dl/gであり、厚みが10μm以上188μm以下であり、かつ離型層の厚みが0.001μm以上1.5μm以下であることを特徴とする全固体電池材料製造用の離型フィルム。
2. 該基材フィルムの厚みが12μm以上100μm以下であり、固有粘度が0.52~0.62dl/gであり、かつ離型層の厚みが0.002μm以上1.0μm以下であることを特徴とする第1に記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
3. 該基材フィルムの厚みが15μm以上50μm以下であり、かつ離型層の厚みが0.003μm以上0.60μm以下であることを特徴とする第1または第2に記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
4. 該基材フィルムの厚みが19μm以上40μm以下であり、かつ離型層の厚みが0.004μm以上0.50μm以下であることを特徴とする第1~第3のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
5. 該離型フィルムの、ヘキサンによるシリコーン抽出量が3mg/m以下であることを特徴とする第1~第4のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
6. 該離型フィルムの、ヘキサンによるシリコーン抽出量が2mg/m以下であることを特徴とする第1~第5のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
7. 該離型フィルムの、ヘキサンによるシリコーン抽出量が1mg/m以下であることを特徴とする第1~第6のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
8. 該離型フィルムの、少なくとも片面に帯電防止層が設けられていることを特徴とする第1~第7のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
9. 該基材フィルムの少なくとも片面に、帯電防止層、離型層がその順に積層されている第8に記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
10. 帯電防止層の厚みが0.001μm以上1.0μm以下であることを特徴とする第8または第9に記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
11. 帯電防止層の厚みが0.002μm以上0.50μm以下であることを特徴とする第8~第10のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルム。
12. 第1~第11のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルムを用いて製造された、全固体電池用の固体電解質層。
13. 第1~第11のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルムを用いて製造された、全固体電池用の正極活物質層。
14. 第1~第11のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルムを用いて製造された、全固体電池用の負極活物質層。
15. 第1~第11のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルムを用いて製造された、全固体電池用の集電体層。
16. 第1~第11のいずれかに記載の全固体電池材料製造用の離型フィルムを用いて製造された、全固体電池用の絶縁層。
17. 少なくとも第12~第16に記載のいずれかの材料を用いて製造された全固体電池。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポリエステルフィルムの基材厚みおよび離型層の厚み双方の抑制による環境負荷の低減と、離型フィルム上に形成した各層シートの離型性を両立した、全固体電池の固体電解質層、正極活物質層、負極活物質層、集電体層、絶縁層およびこれらいずれかの材料を用いて製造された全固体電池を作成可能な離型フィルムを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】全固体電池の一形態例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、少なくともポリエステルフィルムを基材とし、少なくとも片面に、離型層を設けてなる離型フィルムであって、該基材フィルムの固有粘度が0.50~0.90dl/gであり、厚みが10μm以上188μm以下であり、かつ離型層の厚みが0.001μm以上1.5μm以下であることを特徴とする全固体電池材料製造用の離型フィルムを見出した。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
(ポリエステルフィルム)
本発明において、基材として用いるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、特に限定されず、離型フィルム用基材として通常一般に使用されているポリエステルをフィルム成形したものを使用することが出来るが、好ましくは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分からなる結晶性の線状飽和ポリエステルであるのが良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体がさらに好適であり、とりわけポリエチレンテレフタレートから形成されたポリエステルフィルムが特に好適である。ポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、他のジカルボン酸成分、ジオール成分が少量共重合されていてもよいが、コストの点から、テレフタル酸とエチレングリコールのみから製造されたものが好ましい。また、本発明のフィルムの効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化剤などを添加してもよい。ポリエステルフィルムは双方向の弾性率の高さ等の理由から二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。
【0019】
(ポリエステルフィルムの固有粘度)
上記ポリエステルフィルムの固有粘度は、環境負荷の低減に関わる本発明の重要な要件である。0.50~0.90dl/gであることが必要であり、0.52~0.62dl/gがより好ましい。固有粘度が0.50dl/g以上の場合、延伸工程における破断を抑制できる。一方、0.90dl/g以下であることで、溶融工程の背圧が高くなることを抑制でき、求める生産量での押し出しを可能にし、更に、せん断発熱により熱劣化が促進することを抑制できる。。
【0020】
本発明におけるポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されず、従来一般に用いられている方法を用いることが出来る。例えば、前記ポリエステルを押出機にて溶融して、フィルム状に押出し、回転冷却ドラムにて冷却することにより未延伸フィルムを得て、該未延伸フィルムを二軸延伸することにより得ることが出来る。二軸延伸フィルムは、縦方向あるいは横方向の一軸延伸フィルムを横方向または縦方向に逐次二軸延伸する方法、或いは未延伸フィルムを縦方向と横方向に同時二軸延伸する方法で得ることが出来る。
【0021】
本発明において、ポリエステルフィルム延伸時の延伸温度はポリエステルの二次転移点(Tg)以上とすることが好ましい。縦、横おのおのの方向に1~8倍、特に2~6倍の延伸をすることが好ましい。
【0022】
(ポリエステルフィルムの厚み)
上記ポリエステルフィルムの厚みは、環境負荷の低減に関わる本発明の重要な要件である。具体的な厚みは、10μm以上188μm以下であることが必要であり、12μm以上100μm以下であることが好ましく、15μm以上50μm以下がより好ましく、19μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。フィルムの厚みが10μm以上であれば、基材フィルム生産時や離型層の加工工程の際に、熱により変形することを抑制できる。一方、フィルムの厚みが188μm以下であると、環境負荷を低減でき、離型フィルム全体の剛性が大きくなることを防ぐことができ、特に薄い各層シートと離型フィルムを剥離する際、ポリエステルフィルムが適切に変形でき、各層シートに変形が集中することを抑制でき、各層シートに破れ、割れ、亀裂が発生するおそれを回避できる。
【0023】
上記ポリエステルフィルム基材は、単層であっても2層以上の多層であっても構わない。多層構造の一例として、離型フィルム上に形成した各層シートの積層面側に実質的に粒子を含まない表面層Aを有するものがあげられる。このような構成からなる積層ポリエステルフィルムの場合は、実質的に粒子を含有しない表面層Aの反対面には、粒子などを含有することができる表面層Bを有することが好ましい。積層構成としては、離型層を塗布する側の層を表面層A、その反対面の層を表面層B、これら以外の芯層を層Cとすると、厚み方向の層構成は離型層/A/B、あるいは離型層/A/C/B等の積層構造が挙げられる。当然ながら層Cは複数の層構成であっても構わない。また、表面層Bには粒子を含まないこともできる。その場合、フィルムをロール状に巻き取るための滑り性を付与するため、表面層B上には粒子とバインダーを含んだコート層を設けることが好ましい。
【0024】
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、単層構造の場合、あるいは多層構造の一例として、離型フィルム上に形成した各層シートの積層面側に実質的に粒子を含まない表面層Aを有するものについての、離型層を塗布する面の反対面を形成する表面層Bは、フィルムの滑り性や空気の抜けやすさの観点から、特に平均粒径が0.01~10μmの粒子を0.005~5重量%の割合で含有させることが好ましい。粒子としては、シリカ及び/又は炭酸カルシウム以外に不活性な無機粒子及び/又は耐熱性有機粒子などを用いることができる。透明性やコストの観点からシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることがより好ましいが、他に使用できる無機粒子としては、アルミナ-シリカ複合酸化物粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などが挙げられる。また、耐熱性有機粒子としては、架橋ポリアクリル系粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン系粒子などが挙げられる。またシリカ粒子を用いる場合、多孔質のコロイダルシリカが好ましく、炭酸カルシウム粒子を用いる場合は、ポリアクリル酸系の高分子化合物で表面処理を施した軽質炭酸カルシウムが、粒子の脱落防止の観点から好ましい。上記各層には素材の異なる粒子を2種類以上含有させてもよい。また、同種の粒子で平均粒径の異なるものを含有させてもよい。
【0025】
表面層Bに粒子を含まない場合は、表面層B上に粒子を含んだコート層で易滑性を持たせることが好ましい。本コート層は、特に限定されないが、ポリエステルフィルムの製膜中に塗工するインラインコートで設けることが好ましい。
【0026】
また、経済性の観点から、ポリエステルフィルム基材が単層の場合や、離型フィルム上に形成した各層シートの積層面側に実質的に粒子を含まない表面層Aを有するものについての、表面層A以外の層(表面層Bもしくは前述の中間層C)には、50~90質量%のフィルム屑やペットボトルの再生原料を使用することができる。
【0027】
(離型層)
本発明の離型フィルムは、上記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を形成したものである。離型層は片面のみに設けてもよいし、両面に設けてもよく、片面のみに設けた場合は、その反対面に、必要に応じて易滑層などの層を設けてもよい。
【0028】
(離型剤成分)
本発明における離型層には、シリコーン系離型剤、アルキド系離型剤、オレフィン樹脂系離型剤、フッ素系離型剤、アルキル系離型剤や、これら同士を組み合わせたもの、架橋剤で硬化したもの、紫外線/電子線硬化樹脂や紫外線/電子線で重合するモノマー成分を紫外線/電子線で硬化、重合したもの、さらに他の樹脂を組み合わせたもの、バインダー樹脂を併用するものなど、あらゆる組み合わせが選定可能である。また、本発明の効果を損なわない範囲で、前記樹脂や化合物以外にも、密着向上剤、帯電防止剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線防止剤など他の成分を添加することができる。さらに、架橋剤や硬化樹脂等、離型層の形成に反応を介するものに対しては、反応を助けるための触媒ももちろん使用することができる。
【0029】
本発明における離型層には、粒子などを含有することもできるが、全固体電池材料のピンホール、表面の凹凸抑制の観点から、粒子の粒径は1μm以下であることが好ましい。
【0030】
(シリコーン系離型剤)
本発明において離型層に用いるシリコーン系離型剤としては、分子内にシリコーン構造を有する化合物であり、本発明の効果を得られる範囲であれば特に制限はなく、例えばポリジメチルシロキサン(略称、PDMS)を代表とするポリオルガノシロキサン、一部を例えばエーテル化合物等や官能基で変性した変性ポリオルガノシロキサン、さらに変性ポリオルガノシロキサンの中でも、反応性の官能基を持ち、紫外線や電子線、熱での反応や、架橋剤の併用により硬化する構造を持つものなどを好適に使用することができる。
【0031】
(アルキド系離型剤)
本発明において離型層に用いるアルキド系離型剤としては、多価アルコールと多塩基酸が縮合した化合物であり、本発明の効果を得られる範囲であれば特に制限はなく、例えば多価アルコールと多塩基酸のみからなるもの、一部をミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの脂肪酸で変性したものなどを好適に使用することができる。これらの樹脂は単独で、また複数の組み合わせで用いることができ、さらにこれらの樹脂を架橋させる、あるいはバインダー樹脂として用いるために、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂、エポキシ樹脂等を組み合わせることも可能である。
【0032】
(オレフィン樹脂系離型剤)
本発明において離型層に用いるオレフィン樹脂系離型剤としては、基材となるポリエステルフィルムの表面にオレフィン樹脂の溶液を塗布、乾燥することで製造できる。使用する
オレフィン樹脂系離型剤としては、例えばエチレン・プロピレン共重合体や、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体などの、主鎖にオレフィン構造を持ちながらトルエン、メチルイソブチルケトンなどの低沸点、汎用溶媒に溶解するもの、水に溶解するもの、水分散するものを単独、また複数の組み合わせで好適に使用することができる。
【0033】
(フッ素系離型剤)
本発明において離型層に用いるフッ素系離型剤としては、分子内にフッ素を有する化合物であり、本発明の効果を得られる範囲であれば特に制限はなく、一般に離型剤に利用されているフッ素化合物を用いることができる。このようなフッ素化合物としては、例えばフッ素含有ビニル重合性単量体からなる重合体(オリゴマーを含む)またはその共重合体、フッ素含有ビニル重合性単量体とフッ素原子を含有しないビニル重合性単量体との共重合体、または、これらの混合物であって、フッ素原子を5~80モル%有する樹脂が挙げられる。またこれらの離型剤で、反応性官能基を持ち、紫外線や電子線、熱での反応や、架橋剤の併用により硬化する構造を持つものなども好適に使用することができる。
【0034】
(離型層の形成方法)
本発明において、離型層を形成する手段については特に限定されず、例えば離型剤、溶媒を含む塗布液を、基材フィルムの表面に塗布法により設け、溶媒を乾燥除去する方法、硬化系の成分を用いる際に、溶媒の乾燥除去に付与した熱で同時に硬化する方法、溶媒を乾燥除去後、さらに加熱することで硬化する方法、溶媒を乾燥除去後、紫外線や電子線などの照射により硬化する方法、液状の樹脂を用いて塗布液に溶媒を使用せず、塗布後の溶媒乾燥除去なしに、熱の付与や紫外線や電子線などの照射により硬化する方法等、あらゆる方法を選定できる。塗布法についても、公知の任意の方法、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、マイヤーバーなどのバーコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法等を用いることができる。
【0035】
(離型層の厚み)
本発明において離型層の厚みは、離型フィルム上に形成した各層シートと離型フィルムの離型性と、環境負荷の低減とを両立するための重要な要件である。具体的には、0.001μm以上1.5μm以下であることが必要であり、0.002μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.003μm以上0.60μm以下であることがより好ましく、0.004μm以上0.50μm以下であることがさらに好ましい。離型層の厚みが0.001μm以上であると必要な剥離性能を得ることができ、1.5μmを以下であると、不要な離型層成分の使用を低減できることに加え、適度の乾燥、硬化時間で加工でき、生産性を向上させ、更に、環境負荷の増大を抑制できる。
【0036】
(離型層からのシリコーン移行抑制)
全固体電池の製造方法として、離型フィルム上に形成した各層を剥離し、熱圧着して積層した後、そのまま用いる方法と、加熱によりバインダーを除去(脱脂)し、さらに積層体を焼成後に用いる方法がある。この際、離型剤自体や離型層、帯電防止層等の添加剤としてシリコーン化合物を用いている場合、シリコーン化合物が各層に移行する可能性がある。移行に関して、本発明の効果が阻害されない場合や、脱脂、焼成を行う際にシリコーンが酸化あるいは熱分解され、本発明の効果を阻害しなくなる場合は問題がないが、特に各層を積層後、脱脂や焼結を行わずにそのまま用いる場合には、離型フィルムから各層に転写したシリコーン化合物が各層の接合やリチウムイオンの移動に悪影響を与えることがある。これを防止するためには、離型剤、添加剤として使用するシリコーン化合物の量を抑制する方法や、使用したシリコーン化合物を架橋等で反応、固定化して移行を抑制する方法がある。シリコーン移行が問題となる場合、該離型フィルムの、ヘキサンによるシリコーン抽出量が3mg/m以下であることが望ましく、2mg/m以下であることがより望ましく、1mg/m以下であることがさらに望ましい。
【0037】
本発明における離型層の基材フィルムとの密着性を向上させるため、離型層を設ける前に、ポリエステルフィルム表面、あるいは、ポリエステルフィルム表面にあらかじめ帯電防止層を形成し、その上に離型層を形成する場合には、形成後の帯電防止層に対してアンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の前処理をすることも好ましい。
【0038】
(帯電防止層)
本発明の離型フィルムには、ポリエステルを用いた離型フィルムを使用する際に問題となる、剥離帯電による、一度剥離した成形物の再付着や静電気による重剥離化を防ぐために、離型剤に帯電防止剤を加える方法の他に、帯電防止層を別に設けることができる。特に、離型フィルム上に形成した各層シートの成形時に有機溶媒を用いるものは、剥離帯電が少ないことが望ましい。
【0039】
離型フィルムの剥離帯電を防止する方法としては、離型層形成面と反対側の面に帯電防止層を設ける方法、また基材であるポリエステルフィルムの少なくとも片面に、帯電防止層、離型層をその順に積層する方法があり、いずれの方法も選定可能である。
【0040】
(帯電防止層成分)
本発明において帯電防止層に使用する帯電防止剤は特に限定されず、界面活性剤などが使用できる。界面活性剤としては、例えば、官能基がアルキルサルフェート型、アルキルホスフェート型であるようなアニオン系帯電防止剤、第4級アンモニウム塩型、第4アンモニウム樹脂型、イミダゾリン型であるようなカチオン系帯電防止剤、ソルビタン型、エーテル型であるようなノニオン系帯電防止剤、ベタイン型であるような両性帯電防止剤が挙げられる。また、ポリアニリンやチオフェン系高分子等のような導電性高分子帯電防止剤も使用できる。本発明の帯電防止層には、バインダー成分を含んでも構わない。バインダー成分を含むことで、帯電防止層のポリエステルフィルムとの密着性を向上させることができる。バインダー樹脂としては、特に限定されないが、既知の樹脂を使用することができ、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリビニルホルマール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエーテル系樹脂、酸化ケイ素膜等の溶媒または水可溶性、分散性の樹脂が挙げられる。
【0041】
本発明において帯電防止層は帯電防止剤とバインダー樹脂の他に、本発明の作用を阻害しない範囲で他の成分を含有しても良い。
【0042】
本発明において、帯電防止層を形成する手段については特に限定されず、例えば帯電防止剤、バインダー樹脂、溶媒を含む塗布液を、基材フィルムの表面に塗布法により設け、溶媒を乾燥除去する方法、硬化系の成分を用いる際に、溶媒の乾燥除去に付与した熱で同時に硬化する方法、溶媒を乾燥除去後、さらに加熱することで硬化する方法、溶媒を乾燥除去後、紫外線や電子線などの照射により硬化する方法等、あらゆる方法を選定できる。塗布法についても、公知の任意の方法、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、マイヤーバーなどのバーコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法等を用いることができる。
【0043】
本発明における帯電防止層の基材フィルムとの密着性を向上させるため、各塗布層を設ける前に、ポリエステルフィルム表面に、アンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の前処理をすることも好ましい。
【0044】
(帯電防止層の厚み)
本発明において、帯電防止層の厚みは特に限定されず、帯電防止性能と環境負荷の低減の目的に応じて設定できるが、具体的には、0.001μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.002μm以上0.50μm以下であることがより好ましい。帯電防止層の厚みが0.001μm以上であると必要な帯電防止性能を得ることができ、1.0μm以下であると、不要な帯電防止層成分を使用することを抑制できることに加え、乾燥や硬化に要する時間を短くでき、生産性の向上、環境負荷が増大することを抑制できる。
【0045】
(全固体電池の構造例)
本発明の離型フィルムを用いて作成した材料によりなる全固体電池の断面図例を図1に示す。図1において、全固体電池9は、正極1と負極2との間に固体電解質層3が挟まれ、さらにこの構造が絶縁層8で挟まれた形態となっている。ここで、正極1は、正極活物質層4と、正極活物質層4から集電を行う正極集電体層6から構成されている。負極2は、負極活物質層5と、負極活物質層5から集電を行う負極集電体層7から構成されている。
なお、全固体電池の構造は図1に制限されるものではなく、例えば絶縁層を設けない構造や、絶縁層を設けず、正極集電層の隣に再度負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層、正極集電層を繰り返し積み重ねる構造など、全固体電池として用いられるあらゆる構造を選択することができる。
【0046】
各層の製造方法として、少なくとも機能を発現させるための粒子、及びバインダーを溶媒に分散させたスラリーを各層ごとにそれぞれ作成後、本発明の離型フィルム上に塗工し、乾燥してシートを形成後、剥離し、熱圧着して積層体を形成後、そのまま用いる方法や、熱圧着後にシートを裁断し、個片化した積層体を加熱してバインダーを加熱除去(脱脂)し、さらに高温で加熱して焼成、緻密化することで各層を形成する、いわゆるグリーンシート工法等、種々の方法があるが、あらゆる方法を用いることが可能であり、例示した方法に制限されるものではない。
【0047】
(固体電解質シート作製工程、電極活物質シート作製工程)
固体電解質シートおよび電極活物質シートは、上記の固体電解質層、正極活物質層、負極活物質層となる部材であり、上記に記載の通り、少なくとも固体電解質、電極活物質の粒子とバインダーとを溶媒に分散させた活物質スラリーを本発明の離型フィルム上に塗布し、乾燥して作成することができる。
【0048】
(集電体シート作製工程)
集電体シートは、上記の正極集電体層、負極集電体層となる部材である。この材質は、アルミ箔、銅箔等の金属を用いることもあるが、固体電解質シート、電極活物質シートと同様の工程で、スラリーを用いて作成することもある。スラリーを用いて作成する場合、少なくとも導電性の粒子、また必要に応じて固体電解質の粒子を用い、これらをバインダーと溶媒に分散させた集電体スラリーを本発明の離型フィルム上に塗布し、乾燥して作成することができる。
【0049】
(絶縁シート作製工程)
絶縁シートは、上記の絶縁層となる部材である。この材質は、例えばポリプロピレンのフィルム等を用いることもあるが、固体電解質シート、電極活物質シートと同様の工程で、スラリーを用いて作成することもある。スラリーを用いて作成する場合、少なくとも絶縁性の粒子を用い、これらをバインダーと溶媒に分散させた集電体スラリーを本発明の離型フィルム上に塗布し、乾燥して作成することができる。
【0050】
(固体電解質粒子成分)
固体電解質には、材質として酸化物系固体電解質や硫化物系固体電解質、形態として非晶質体、結晶体、ガラスセラミックス、また伝導するイオンとしてリチウムイオン、ナトリウムイオン等、種々の組み合わせがあるが、本発明の離型フィルムとはいかなる組み合わせでも使用可能である。
【0051】
例えば、酸化物系固体電解質としては、ペロブスカイト型、NASICON型、LISICON型、ガーネット型等の材料があり、一例として、正極、負極に対して優れた化学的安定性を有し、吸水性が小さくハンドリングが容易なLi1.5Al0.5Ge1.5(PO(LAGP)や、LiLaZr12(LLZ)がよく知られているが、これらに限定されるものではなく、全固体電池の固体電解質として使用できるものであればいかなるものでも使用可能である。
【0052】
また、硫化物系固体電解質としては、結晶性のチオシリコン型、LGPS型、アルジロダイト型、Li2S-P12に代表されるガラス等の材料があり、高いイオン伝導率(12mScm-1)を持つLi10GeP12(LGPS)や、近年見出された、さらに高いイオン伝導性を持つLi9.54Si1.741.4411.7Cl0.3(25mScm-1)等がよく知られているが、これらに限定されるものではなく、全固体電池の固体電解質として使用できるものであればいかなるものでも使用可能である。
【0053】
(正極活物質粒子成分)
正極活物質成分としては、例えば、層状化合物であるLiCoO、LiNiO、スピネル化合物であるLiMn4、オリビン化合物であるLiFePO、LiCoPO、LiNiPO、またLi(PO、LiTi12などがよく知られているが、これらに限定されるものではなく、全固体電池の正極活物質として使用できるものであればいかなるものでも使用可能である。
【0054】
(負極活物質粒子成分)
負極活物質成分としては、例えば、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボンなどの炭素材料やSi、Sn等の金属、TiO、Li(PO、LiTi12などがよく知られているが、これらに限定されるものではなく、全固体電池の負極活物質として使用できるものであればいかなるものでも使用可能である。また、正極活物質と負極活物質として同じ活物質を使用することも問題なく可能である。
【0055】
(集電体層粒子成分)
スラリーを用いて集電体層を作成する場合、その材料は導電性を持った粒子である必要がある。よって、集電体層成分として、例えば炭素粉末や金属粉などがあるが、これらに限定されるものではなく、全固体電池の集電体層として使用できるものであればいかなるものでも使用可能である。
【0056】
(絶縁層粒子成分)
スラリーを用いて絶縁層を作成する場合、その材料は電気絶縁性を持った粒子である必要がある。よって、絶縁層成分として、例えばLiGe(POやZnO-Bなどがあるが、これらに限定されるものではなく、全固体電池の絶縁層として使用できるものであればいかなるものでも使用可能である。
【0057】
(スラリー中の各粒子の粒径)
上記各層を作成するためのスラリーに含まれる各粒子の粒径は、それぞれの層に必要な機能を発現できるものであれば特に制限はないが、スラリー塗工時のスジ上の欠点や、粒子がかきとられることによる分布の不均一性を抑制するために、5μm以下であることが好ましい。
【0058】
(バインダー成分)
上記各層を作成するためのスラリーに用いられるバインダーとしては、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン等があるが、各シートのバインダーとして使用でき、またグリーンシート工法を用いる場合は合わせて脱脂が可能なものであればいかなるものでも使用可能である。
【0059】
(溶媒)
溶媒は、スラリーにおける各成分の分散性やスラリーの塗布性、乾燥性等に問題がなければ、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0060】
溶媒の沸点は、スラリーの塗布性が確保できれば特に限定されないが、通常、大気圧下で70℃以上であることが好ましい。一方、スラリーの乾燥によるシートの成形性の観点からは、130℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。
【0061】
溶媒として、具体的には、エタノール、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、水等がある。なお、各スラリーは、上記の溶媒以外の溶媒、例えばより沸点の高い1-ブタノール、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等を含んでいてもよく、3種以上の溶媒を混合してもかまわない。さらに、溶媒を混合して用いる際には、一部溶媒は単独でバインダー成分を溶解しないものでもよく、混合溶媒中にバインダーが溶解していれば問題ない。
【0062】
(スラリー中各成分の混合比)
スラリー中の粒子、バインダー、溶媒の混合比は各層に求められる性能に基づき適宜設定できる。また、スラリー中にはこれらの成分以外にも、粒子を均一に分散するための分散剤や、乾燥したシートに可撓性を持たせるための可塑剤などのその他成分を含んでいてもよい。その他成分の混合比に関しても、粒子、バインダー、溶媒と同じく、適宜設定することが可能である。
【0063】
(スラリーの塗工乾燥条件)
作成したスラリーは、本発明の離型フィルム上に、種々の方法で塗工乾燥される。例えば、塗工法としてドクターブレード法、ロールコート法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷、インクジェット法などがあるが、特に限定されず、適宜選択することができる。乾燥に関しても、塗工したスラリーから溶媒を除去し、各層のシートが得られる方法および条件であれば問題ない。また、乾燥後のシートに残留する溶媒に関しても、必ずしも完全に除去する必要はなく、シートと本発明の離型フィルムが容易に剥離でき、かつ剥離後のシートを熱圧着や脱脂、焼成等を行う後工程で問題なく使用できる量であれば残存していてもかまわない。また、乾燥後のシート厚みは、求められる性能に基づき個々に設定でき、各シートから作成した全固体電池中における、固体電解質層、正極、負極活物質層、集電体層、絶縁層の厚みがそれぞれ異なっていてもかまわない。
【0064】
(積層体形成工程)
離型フィルム上に塗工乾燥された各層のシートを積層体とする工程としては、複数のシートを離型フィルムから剥離した後に一括して重ね合わせ、熱圧着する工程や、各シートを
1層ずつ離型フィルムごと熱圧着した後、離型フィルムを剥離する工程等があるが、いずれの工程を使用することも可能であり、また、これらの工程を組み合わせて実施することも問題なく可能である。熱圧着の条件としては、バインダーの軟化点以上の温度にシートを加熱し、圧着できればいかなる条件も使用可能である。圧着する方法についても、例えばロールを用いた連続プレス、シートを枚葉状に切り出しての平板プレス、水圧を用いた等方圧プレス等があるが、これらに制限されずいかなる方法も使用可能である。
【0065】
(グリーンシート工法)
次に、積層体形成工程で得られた積層体を脱脂、焼成することにより全固体電池を得る、グリーンシート工法を用いる場合について説明する。なお、これらの工程については、必ずしも脱脂工程、焼成工程を双方共実施する必要はなく、脱脂工程のみ実施した積層体を用いる場合や、焼成工程が脱脂工程を兼ね、1工程で実施する場合についても問題なく選定できる。
【0066】
(脱脂工程)
離型フィルム上に塗工乾燥された各層のシートを全固体電池として用いる際、そのまま用いることができる場合もあるが、バインダー樹脂は通常イオン伝導性、導電性を持たないため、電池としての性能が充分に発現しない場合がある。この時、積層体を加熱することで、各層に含まれるバインダーを分解除去するための脱脂工程が必要となる。脱脂工程の温度、雰囲気、時間は、作成した全固体電池の性能が発現すればいかなる条件も選定できるが、一例としては窒素雰囲気下、410℃でバインダー樹脂を熱分解して除去した後、空気雰囲気下、540℃で樹脂の炭化物を除去する等の条件がある。
【0067】
(焼成工程)
離型フィルム上に塗工乾燥された各層のシートを脱脂後、また脱脂工程を兼ねるためにそのまま高温で加熱(焼成)することで、隣接した粒子間を密着させ、各層を緻密化する。特に固体電解質の粒子として酸化物系の化合物を選定した場合、一般的にこれらの粒子は非常に硬いため、積層体を作成したのみでは粒子間を接合することができず、接合のためには本工程を実施して粒子間を焼結することで粒子間の抵抗を下げることが必要となる場合がある。焼成工程の温度、時間は、作成した全固体電池の性能が発現すればいかなる条件も選定できるが、各成分の酸化を抑制するために通常、不活性雰囲気化で行う。不活性雰囲気を形成するための気体としては、窒素、アルゴン等があるが、これらの気体は適宜選定可能である。焼成工程条件の一例としては、窒素中、750℃で行う等がある。
【0068】
一態様において、本発明は、全固体電池用の固体電解質層、正極活物質層、負極活物質層、集電体層、絶縁層からなる群から選択される少なくとも1つの全固体電池用部材を製造するための、全固体電池材料製造用の離型フィルムを提供できる。
【0069】
別の態様において、本発明は、本発明に係る全固体電池材料製造用の離型フィルムを用いて製造される、全固体電池用の固体電解質層、正極活物質層、負極活物質層、集電体層、絶縁層からなる群から選択される少なくとも1つの全固体電池用部材を提供できる。
【0070】
別の態様において、本発明は、本発明に係る全固体電池材料製造用の離型フィルムを用いることを含む、全固体電池用の固体電解質層の製造方法、全固体電池用の正極活物質層の製造方法、
全固体電池用の負極活物質層の製造方法、全固体電池用の集電体層の製造方法又は全固体電池用の絶縁層の製造方法からなる群から選択される、全固体電池用部材の製造方法を提供する。
別の態様において、本発明は、本発明に係る離型フィルムと、全固体電池用の固体電解質層、正極活物質層、負極活物質層、集電体層、絶縁層からなる群から選択される少なくとも1つの全固体電池用部材とを含む、積層体を提供する。このような積層体は、本発明に係る離型フィルムを有するので、全固体電池用の固体電解質層、正極活物質層、負極活物質層、集電体層、絶縁層からなる群から選択される少なくとも1つの全固体電池用部材を破損させることなく剥離できる。更に、本発明によれば、ポリエステルフィルムの基材厚みおよび離型層の厚み双方の抑制による環境負荷の低減と、離型フィルム上に形成した各層シートの離型性を両立できる。
別の態様において、本発明は、本発明に係る全固体電池材料製造用の離型フィルムを用いる全固体電池の製造方法を提供する。
【実施例0071】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、本発明で用いた特性値は以下の方法を用いて評価した。
【0072】
(ポリエステルの固有粘度)
試料を粉砕して乾燥した後、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタンの6/4(重量比)混合溶媒に溶解した。この溶液に遠心分離処理を施して無機粒子や不要物を取り除いた後に、ウベローデ粘度計を用いて温度30℃にて測定した。また、計算に使用した重量は、試料の重量から、ポリエステル以外の成分の重量を差し引いた値を用いた。
【0073】
(離型層、帯電防止層の厚み)
切り出した離型フィルムを樹脂包埋し、ウルトラミクロトームを用いて超薄切片化した後、日本電子製透過電子顕微鏡JEM2100を用いて、直接倍率20,000倍で観察を行い、離型層、帯電防止層の厚みを測定した。なお、離型層、帯電防止層が非常に薄いものに関しては、観察で得られた画像を拡大して算出した。
【0074】
(離型フィルムのヘキサンによるシリコーン抽出量)
離型フィルムを300mm×300mm(面積:0.09m)に切り出し、10mlのヘキサンを用いて10分間、室温での表面抽出を行った。その後、抽出液を40℃で窒素吹付けにより濃縮し、濃縮後の溶液をIR測定して、溶媒との差スペクトルを用いて抽出成分を定量した。
測定機台:FT-IR装置 BioRad FTS-60A/896(Bio-Rad社製)
測定セル:窓材KCl、セル厚0.203mm
分解能:4cm-1、積算回数:128回
【0075】
(各層シートの剥離性)
各層シート付きの離型フィルムを幅30mmにカットし、除電機(キーエンス社製、SJ-F020)を用いて除電した後に剥離速度600mm/minでT型剥離試験を行った。
得られた各層シート、離型フィルムを目視で確認し、下記の基準で評価した。
◎:各層シートに破れ、割れ、亀裂がなく、離型フィルム上に各層成分の剥離残りがなく、
剥離が特に良好である。
〇:各層シートに破れ、割れ、亀裂がなく、離型フィルム上に各層成分の剥離残りがなく、
剥離に特に問題はない。
△:各層シートの破れ、割れ、亀裂、離型フィルム上の各層成分剥離残りのいずれか1つ以上がわずかに発生する。
×:各層シートの破れ、割れ、亀裂、離型フィルム上の各層成分剥離残りのいずれか1つ以上が明らかに発生する。
【0076】
(離型フィルムから各層へのシリコーン移行)
各層シートの剥離性を評価した後、離型フィルム上に各層成分の剥離残りがない水準に対して、各層シートの離型フィルムと接していた面に寺西化学工業株式会社製、マジックインキ極太(赤色)で長さ50mmの線を引き、インキのハジキ度合いを下記の基準で評価した。
〇:シート上の赤インキにハジキが認められない。
△:シート上の赤インキにわずかにハジキが認められる。
×:シート上の赤インキに明らかなハジキが認められる。
【0077】
(摩擦帯電性)
20℃×40%RHの雰囲気下で、ロール状のフィルムを2m/minの速度で引き出した後、フィルムの離型層面上に、静電気式複写機用トナー(リコーPPCトナー:タイプ3300)を均一にふりかけ、トナーの分散性を目視で観察した。摩擦帯電した箇所は、トナーが多く付着するため、分散性で判断できる。トナー量が均一に付着した状態を摩擦帯電していないと判断し良好(○)、トナーが多く付着した場合は不良(×)とした。
【0078】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(I))の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口及び生成物取出口を有する3
段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用いた。TPA(テレフタル酸)を2
トン/時とし、EG(エチレングリコール)をTPA1モルに対して2モルとし、三酸化
アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリ
ーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4
時間、255℃で反応させた。次いで、第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に
系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステ
ル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対して8質量%供給し、さらに、生成PE
Tに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウム四水塩を含むEG溶液と、
生成PETに対してP原子が40ppmのとなる量のTMPA(リン酸トリメチル)を含
むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1時間、260℃で反応させた。次いで、第
2エステル化反応缶の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に
供給し、高圧分散機(日本精機社製)を用いて39MPa(400kg/cm2)の圧力
で平均処理回数5パスの分散処理をした平均粒径が0.9μmの多孔質コロイダルシリカ
0.2質量%と、ポリアクリル酸のアンモニウム塩を炭酸カルシウムあたり1質量%付着
させた平均粒径が0.6μmの合成炭酸カルシウム0.4質量%とを、それぞれ10%の
EGスラリーとして添加しながら、常圧にて平均滞留時間0.5時間、260℃で反応さ
せた。第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応
装置に連続的に供給して重縮合を行い、95%カット径が20μmのステンレススチール
繊維を焼結したフィルターで濾過を行ってから水中に押出し、冷却後にチップ状にカット
して、固有粘度0.60dl/gのPETチップを得た(以後、PET(I)と略す)。PET(I)中の滑材含有量は0.6質量%であった。
【0079】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(II))の調製)
上記PETチップの製造において、連続重縮合反応装置での反応時間を短く調整すること
の他は同じ条件で重合を行い、固有粘度0.41dl/gのPETチップを得た(以後、
PET(II)と略す)。
【0080】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(III))の調製)
PET(I)を、回転型真空重合装置を用い、0.5Torrの減圧下、220℃で固相
重合を行い、固有粘度0.88dl/gのPETチップを得た(以後、PET(III)と略す)。
【0081】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(IV))の調製)
PET(I)を、回転型真空重合装置を用い、0.3Torrの減圧下、220℃でPE
T(III)に対してさらに長時間の固相重合を行い、固有粘度1.12dl/gのPET
チップを得た(以後、PET(IV)と略す)。
【0082】
(固体電解質スラリーの調製)
固体電解質であるLAGPの粉末、バインダー樹脂としてのビニルブチラール樹脂、分散
溶媒としての無水エタノールを、60:12:28の重量比率で秤量し、バインダー樹脂
を溶媒に溶解した後、溶液とLAGPの粉末を、あらかじめ分散用のメディアを入れたボ
ールミルのポット内に封入した。このポットを48時間回転することでLAGP粉末の分
散を行った後、脱泡処理を行って固体電解質スラリーを得た。
【0083】
(正極活物質スラリーの調製)
正極活物質であるLiNiPOの粉末、固体電解質であるLAGPの粉末、導電助剤としての炭素粉末を45:45:10の比率で混合し、正極活物質混合粉末とした。次に正極活物質混合粉末、ビニルブチラール樹脂、無水エタノールを60:11:29の重量比率で秤量後、上記した固体電解質スラリーと同様にして正極活物質スラリーを得た。
【0084】
(負極活物質スラリーの調製)
負極活物質としてのグラファイト粉末、固体電解質であるLAGPの粉末を30:70の重量比率で秤量し、負極活物質混合粉末とした。次に負極活物質混合粉末、ビニルブチラール樹脂、無水エタノールを60:11:29の重量比率で秤量後、上記した固体電解質スラリーと同様にして負極活物質スラリーを得た。
【0085】
(集電体スラリーの調製)
本実施例、比較例において正極、負極集電体層は同じ組成とした。
導電助剤としての炭素粉末、固体電解質であるLAGPの粉末を12:88の比率で混合
し、集電体混合粉末とした。次に集電体混合粉末、ビニルブチラール樹脂、無水エタノールを60:10:30の重量比率で秤量後、上記した固体電解質スラリーと同様にして集電体スラリーを得た。
【0086】
(絶縁スラリーの調製)
絶縁体としてのZnO-B粉末、ビニルブチラール樹脂、無水エタノールを60:11:29の重量比率で秤量後、上記した固体電解質スラリーと同様にして絶縁スラリーを得た。
【0087】
(固体電解質シートの作成)
ドクターブレードにより離型フィルム上に固体電解質スラリーを塗工し、40℃で一次乾
燥を行った後、80℃で2次乾燥を行い、厚みが10μmの固体電解質シートを作成した。
【0088】
(正極活物質シートの作成)
スラリーとして正極活物質スラリーを用いる以外は固体電解質シートの作成と同様にして、離型フィルム上に厚みが40μmの正極活物質シートを作成した。
【0089】
(負極活物質シートの作成)
スラリーとして負極活物質スラリーを用いる以外は固体電解質シートの作成と同様にして、離型フィルム上に厚みが30μmの負極活物質シートを作成した。
【0090】
(集電体シートの作成)
スラリーとして集電体スラリーを用いる以外は固体電解質シートの作成と同様にして、離型フィルム上に厚みが20μmの集電体シートを作成した。
【0091】
(絶縁シートの作成)
スラリーとして絶縁スラリーを用いる以外は固体電解質シートの作成と同様にして、離型フィルム上に厚みが100μmの絶縁シートを作成した。
【0092】
(実施例1)
(基材フィルム(A)の製造)
PET(I)を135℃、1Torrで6時間減圧乾燥した後、押出機に供給し、285℃で融解した。このポリマーを、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに接触させ冷却固化し、未延伸フィルムを作った。
この未延伸フィルムを長手方向に85℃で3.4倍に延伸した。この一軸延伸フィルムを
テンターを用いて幅方向に95℃で4.4倍に延伸し、220℃にて5秒間熱処理するこ
とで、厚み38μmで、固有粘度0.58dl/gの基材フィルム(A)を得た。なお、
本フィルムの製造は72時間の連続で行ったが、延伸工程での破断は発生せず、生産性は
良好であり、かつフィルムの目視品位は良好であった。その他詳細を表1、2に示す。
【0093】
(離型層(a)の形成)
UV硬化型シリコーン樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社製、商品名UV9300、固形分濃度100質量%)100質量部と硬化触媒ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート1.1質量部を、トルエン/メチルエチルケトン/ヘプタン(=3:5:2)溶液で希釈し、固形分2質量%のシリコーン樹脂塗布液を作成した。このシリコーン樹脂塗布液を、マイヤーバーを用い、基材フィルム(A)上に塗布した後、112℃で30秒乾燥し、次いで紫外線照射装置で350mJ/cmの照射を行うことにより離型フィルムを得た。なお、離型層の厚みは、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥、紫外線照射後に0.005μmとなるよう調整した。
【0094】
(離型フィルムの評価)
本フィルムを各評価試験に供し、表1、表2に示す結果を得た。本フィルムは前述の通り
基材フィルムの生産性が良好であり、また離型層が薄いことで環境負荷が小さく、かつ各
層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量が少なく、その結果として各層シー
トへのシリコーン移行が小さいものであった。
【0095】
(比較例1)
(基材フィルム(B)の製造)
ポリエチレンテレフタレートペレットにPET(II)を用いる以外は、実施例1と同様に基材フィルム(B)の製造を行い、厚み38μmで、固有粘度0.40dl/gのフィルムを得た。フィルムの目視品位は良好であったが、72時間の製造中に、フィルム破断が多発し、生産性が実施例1に比較して顕著に低下したため、環境負荷が非常に大きいと判断して検討を中止した。
【0096】
(実施例2)
(基材フィルム(C)の製造)
ポリエチレンテレフタレートペレットにPET(III)を用いる以外は、実施例1と同様に基材フィルム(C)の製造を行い、厚み38μmで、固有粘度0.83dl/gのフィルムを得た。72時間の生産中に、フィルム破断の発生はなく、生産性は実施例1同様に良好であり、かつフィルムの目視品位は良好であった。
【0097】
(離型層の形成)
基材フィルム(C)に対して実施例1と同様にして、離型層の形成を行った。この時、得られた離型フィルムの離型層の厚みは0.005μmであった。
【0098】
(フィルムの評価)
本フィルムを各評価試験に供し、表1、表2に示す結果を得た。本フィルムは実施例1同様、環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さいものであった。
【0099】
(比較例2)
(基材フィルム(D)の製造)
ポリエチレンテレフタレートペレットにPET(IV)を用いる以外は、実施例1と同様に基材フィルム(D)の製造を試みたが、押出機での融解とシート状での押出しの際に、機台の背圧が高くなり同条件での押出しは不可能であった。改善のために条件の検討を試み、機台の温度を310℃に上げた所、厚み38μmで、固有粘度0.92dl/gのフィルムを得ることができた。得られたフィルムは熱劣化により黄変し、異物が混入していた。また、製造を試みた所、フィルム破断が多発し、生産性が実施例1に比較して顕著に低下したため、環境負荷が非常に大きいと判断して検討を中止した。
【0100】
(比較例3)
(基材フィルム(E)の製造)
ポリエチレンテレフタレートペレットにPET(IV)を用いて、時間当たりの押出量を半
分にし、長手方向、幅方向の延伸工程でのフィルム速度を半分にする以外は、実施例1と
同様に基材フィルム(D)の製造を試みたところ、厚み38μmで、固有粘度0.95d
l/gのフィルムを得ることができた。しかし、得られたフィルムは、実施例1に比較し
て、押出機での長時間滞留によると思われる黄変と異物混入が発生していた。生産性の判
定についても、押出量設定により、得られるフィルム量がまず半分になることに加え、7
2時間の製造中に、フィルム破断が9回発生し、生産性は実施例1に比較して顕著に低下
したため、環境負荷が非常に大きいと判断して検討を中止した。
【0101】
(実施例3)
基材フィルムの厚みを50μmに調整した他は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成し、また作成した離型フィルムの評価を行った。結果を表1、表2に示す。本フィルムは実施例1同様、環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さいものであった。
【0102】
(実施例4)
基材フィルムの厚みを188μmに調整した他は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成し、また作成した離型フィルムの評価を行った。結果を表1、表2に示す。本フィルムは実施例1同様、環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さいものであった。
【0103】
(比較例4)
基材フィルムの厚みを8μmに調整した他は、実施例1と同様にして離型フィルムを作
成した。本フィルムは基材フィルム生産時や離型層の加工工程においてシワが発生し、離型フィルムとしての活用が不可能であったため検討を中止した。
【0104】
(比較例5)
基材フィルムの厚みを250μmに調整した他は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成し、また作成した離型フィルムの評価を行った。結果を表1、表2に示す。本フィルムはシリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行は小さいものであったが、厚みが非常に厚く、環境負荷が大きいものであるにも関わらず、各層シートとの剥離性評価において、離型フィルムが固すぎて変形せず、各層シート側に変形が集中したことで、シートに割れ、亀裂が発生する、性能に劣るものであった。
【0105】
(実施例5、6)
離型層の厚みを、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥、紫外線照射後に0.050、0.10μmとなるように調整した他は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成し、また作成した離型フィルムの評価を行った。結果を表1、表2に示す。本フィルムは実施例1同様、環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さいものであった。
【0106】
(比較例6)
離型フィルムとして基材フィルム(A)をそのまま用い、離型層を形成せずに各評価試験
に供した。離型層を形成していないため、環境負荷は小さく、かつシリコーンの抽出量はないものであったが、各層シートの剥離性が不良であり、どのシートの剥離試験の際にも
各層シートの破れや離型フィルム上の各層成分剥離残りが発生した。
【0107】
(比較例7)
離型層の厚みを、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥、紫外線照射後に1.8μmとなるように調整した他は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成したが、112℃、30秒の乾燥では溶媒の残存が大きく、評価が実施できる離型フィルムが得られなかった。
【0108】
(比較例8)
乾燥時間を120秒とした他は、比較例7と同様にして離型フィルムを作成した所、乾燥後のフィルムに溶媒の残存は認められなかったが、乾燥時間が長くなることにより環境負荷はかなり大きなものとなった。フィルムの評価結果を表1、表2に示すが、離型層の厚みが厚いことで使用する材料が多くなり、環境負荷が大きく増大するにもかかわらず、紫外線照射におけるシリコーン樹脂の硬化不足によると思われるシリコーン抽出量の増大が発生しており、得られた全固体電池用の各層シートの品質も実施例1で得られたシートに対して劣るものであった。
【0109】
(実施例7)
(離型層(b)の形成)
UV硬化型シリコーン樹脂(荒川化学工業社製、商品名シリコリースUVPOLY21
5、固形分100%)100質量部と硬化触媒(荒川化学工業社製、商品名シリコリース
UV CATA211、固形分濃度:18.5質量%)5質量部を、トルエン/MEK=1/1の混合溶剤で希釈して、固形分濃度1.0質量%の離型層塗布液を作成した。
このシリコーン樹脂塗布液を、マイヤーバーを用い、基材フィルム(A)上に塗布した後、93℃で30秒乾燥し、次いで紫外線照射装置で110mJ/cmの照射を行うことにより離型フィルムを得た。なお、離型層の厚みは、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥、紫外線照射後に0.005μmとなるよう調整した。
【0110】
(離型フィルムの評価)
本フィルムを各評価試験に供し、表1、表2に示す結果を得た。本フィルムは環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さいものであった。
【0111】
(実施例8、9)
離型層の厚みを、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥後に0.050、0.10μmとなるように調整した他は、実施例7と同様にして離型フィルムを作成し、また作成した離型フィルムの評価を行った。結果を表1、表2に示す。本フィルムは実施例7同様、環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さいものであった。
【0112】
(実施例10)
(離型層(c)の形成)
熱硬化型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製、商品名LTC310)100質量部と硬化触媒(東レダウ・コーニング社製 SRX212)2.2質量部をトルエン/メチルエチルケトン=5/5溶液で希釈し、固形分2質量%のシリコーン樹脂塗布液を作成した。このシリコーン樹脂塗布液を、マイヤーバーを用い、基材フィルム(A)上に塗布した後、122℃で30秒乾燥することにより離型フィルムを得た。なお、離型層の厚みは、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥後に0.005μmとなるよう調整した。
【0113】
(離型フィルムの評価)
本フィルムを各評価試験に供し、表1、表2に示す結果を得た。本フィルムは環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さいものであった。
【0114】
(実施例11、12)
離型層の厚みを、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥後に0.050、0.10μmとなるように調整した他は、実施例10と同様にして離型フィルムを作成し、また作成した離型フィルムの評価を行った。結果を表1、表2に示す。本フィルムは実施例10同様、環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さいものであった。
【0115】
(比較例9)
離型層の厚みを、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥、紫外線照射後に1.7μmとなるように調整した他は、実施例7と同様にして離型フィルムを作成したが、93℃、30秒の乾燥では溶媒の残存が大きく、評価が実施できる離型フィルムが得られなかった。
【0116】
(比較例10)
乾燥時間を120秒とした他は、比較例9と同様にして離型フィルムを作成した所、乾燥後のフィルムに溶媒の残存は認められなかったが、乾燥時間が長くなることにより環境負荷はかなり大きなものとなった。フィルムの評価結果を表1、表2に示すが、離型層の厚みが厚いことで使用する材料が多くなり、環境負荷が大きく増大するにもかかわらず、与えた熱量がほぼ溶媒の乾燥に使われ、フィルム温度が上がらずに熱付加反応が進行していなかったことによると思われるシリコーン抽出量の増大が発生しており、得られた全固体電池用の各層シートの品質も実施例7で得られたシートに対して劣るものであった。
【0117】
(比較例11)
離型層の厚みを、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥、紫外線照射後に1.9μmとなるように調整した他は、実施例10と同様にして離型フィルムを作成したが、122℃、30秒の乾燥では溶媒の残存が大きく、評価が実施できる離型フィルムが得られなかった。
【0118】
(比較例12)
乾燥時間を120秒とした他は、比較例11と同様にして離型フィルムを作成した所、乾燥後のフィルムに溶媒の残存は認められなかったが、乾燥時間が長くなることにより環境負荷はかなり大きなものとなった。フィルムの評価結果を表1、表2に示すが、離型層の厚みが厚いことで使用する材料が多くなり、環境負荷が大きく増大するにもかかわらず、与えた熱量がほぼ溶媒の乾燥に使われ、フィルム温度が上がらずに熱付加反応が進行していなかったことによると思われるシリコーン抽出量の増大が発生しており、得られた全固体電池用の各層シートの品質も実施例10で得られたシートに対して劣るものであった。
【0119】
(実施例13)
(離型層(d)の形成)
熱UV硬化型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製、商品名LTC851)100質量部、硬化触媒(東レ・ダウコーニング社製、商品名BY24-835)3.3質量部をトルエン/メチルエチルケトン/ヘプタン(=3:5:2)溶液で希釈し、固形分2.2質量%のシリコーン樹脂塗布液を作成した。このシリコーン樹脂塗布液を、マイヤーバーを用い、基材フィルム(A)上に塗布した後、122℃で30秒乾燥し、次いで紫外線照射装置で120mJ/cmの照射を行うことにより離型フィルムを得た。なお、離型層の厚みは、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥、紫外線照射後に0.005μmとなるよう調整した。
【0120】
(離型フィルムの評価)
本フィルムを各評価試験に供し、表1、表2に示す結果を得た。本フィルムは環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さいものであった。
【0121】
(実施例14、15)
離型層の厚みを、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥、紫外線照射後に0.050、0.10μmとなるように調整した他は、実施例13と同様にして離型フィルムを作成し、また作成した離型フィルムの評価を行った。結果を表1、表2に示す。本フィルムは実施例13同様、環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さいものであった。
【0122】
(比較例13)
離型層の厚みを、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥、紫外線照射後に2.0μmとなるように調整した他は、実施例13と同様にして離型フィルムを作成したが、122℃、30秒の乾燥では溶媒の残存が大きく、評価が実施できる離型フィルムが得られなかった。
【0123】
(比較例14)
乾燥時間を120秒とした他は、比較例13と同様にして離型フィルムを作成した所、乾燥後のフィルムに溶媒の残存は認められなかったが、乾燥時間が長くなることにより環境負荷はかなり大きなものとなった。フィルムの評価結果を表1、表2に示すが、離型層の厚みが厚いことで使用する材料が多くなり、環境負荷が大きく増大するにもかかわらず、与えた熱量がほぼ溶媒の乾燥に使われ、フィルム温度が上がらずに熱付加反応が進行していなかったこと、および紫外線照射におけるシリコーン樹脂の硬化不足によると思われるシリコーン抽出量の増大が発生しており、得られた全固体電池用の各層シートの品質も実施例13で得られたシートに対して劣るものであった。
【0124】
(実施例16)
(離型層(e)の形成)
ポリプロピレンワックス(ハイテックE433N、東邦化学工業製)0.7重量部、アニオン型高分子帯電防止剤(数平均分子量:120000、ゴーセファイマー、日本合成化学製)0.3重量部、メタノール50重量部、水49重量部を混合して塗布液を作成した。この塗布液を、マイヤーバーを用い、基材フィルム(A)上に塗布した後、140℃で30秒乾燥することにより離型フィルムを得た。なお、離型層の厚みは、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥後に0.005μmとなるよう調整した。
【0125】
(離型フィルムの評価)
本フィルムを各評価試験に供し、表1、表2に示す結果を得た。本フィルムは環境負荷が小さく、各層シートの剥離性に問題がなく、離型層のシリコーンを用いていないため、シリコーンの移行がないものであった。さらに、この離型層の構成成分には帯電防止剤が含まれているため、摩擦帯電性の試験を行った所、結果は良好であった。
【0126】
(実施例17、18)
離型層の厚みを、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥後に0.020、0.030μmとなるように調整した他は、実施例16と同様にして離型フィルムを作成し、また作成した離型フィルムの評価を行った。結果を表1、表2に示す。本フィルムは実施例16同様、環境負荷が小さく、各層シートの剥離性に問題がなく、離型層のシリコーンを用いていないため、シリコーンの移行がなく、摩擦帯電性試験の結果が良好なものであった。
【0127】
(比較例15)
離型層の厚みを、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥後に1.6μmとなるように調整することで離型フィルムを作成したが、140℃、30秒の乾燥では溶媒の残存が大きく、評価が実施できる離型フィルムが得られなかった。
【0128】
(実施例19)
(離型層同一面帯電防止層形成基材フィルム(F)の形成)
カチオン系帯電防止剤として第4級アンモニウム塩(綜研化学社製、PQ-10、溶液濃度50%)0.6重量部、ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、商品名 エスレックBL-1)0.3重量部、エタノール99.1重量部を混合して帯電防止層用塗布液を作成した。この帯電防止層用塗布液を、マイヤーバーを用い、基材フィルム(A)上に塗布した後、92℃で30秒乾燥することにより、離型層同一面帯電防止層形成基材フィルム(F)を得た。なお、帯電防止層の厚みは、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥後に0.030μmとなるよう調整した。
【0129】
(離型層(f)の形成)
熱硬化型シリコーン樹脂(商品名KS772:信越化学工業社製)2重量部、触媒(商品名CAT・PL-4:信越化学工業社製)0.055重量部、トルエン70重量部、メチルエチルケトン30重量部を混合して塗布液を調製し、シリコーン樹脂塗布液を作成した。このシリコーン樹脂塗布液を、マイヤーバーを用い、基材フィルム(F)の帯電防止層形成面に塗布した後、162℃で30秒乾燥することにより離型フィルムを得た。なお、離型層の厚みは、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥、紫外線照射後に0.005μmとなるよう調整した。
【0130】
(離型フィルムの評価)
本フィルムを各評価試験に供し、表1、表2に示す結果を得た。本フィルムは環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さいものであった。さらに、摩擦帯電性の試験を行った所、結果は良好であった。
【0131】
(実施例20、21)
離型層の厚みを、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥、紫外線照射後に0.050、0.10μmとなるように調整した他は、実施例19と同様にして離型フィルムを作成し、また作成した離型フィルムの評価を行った。結果を表1、表2に示す。本フィルムは実施例19同様、環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さく、摩擦帯電性試験の結果が良好なものであった。
【0132】
(実施例22)
(離型層反対面帯電防止層形成基材フィルム(G)の形成)
カチオン型高分子帯電防止剤(数平均分子量;5000、ケミスタット6300H、三洋化成工業製)0.3重量部、ポリエチレンワックス(ハイテックE6000、東邦化学工業製)0.13重量部、メタノール50重量部、水49.57重量部を混合して帯電防止層用塗布液を作成した。この帯電防止層用塗布液を、マイヤーバーを用い、基材フィルム(A)上に塗布した後、142℃で30秒乾燥することにより、離型層同一面帯電防止層形成基材フィルム(G)を得た。なお、帯電防止層の厚みは、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥後に0.030μmとなるよう調整した。
【0133】
(離型層の形成)
基材フィルムとして(G)を用い、離型層を帯電防止層と反対側の面に設けること以外は、実施例19と同様にして離型フィルムを作成し、また作成した離型フィルムの評価を行った。結果を表1、表2に示す。本フィルムは実施例19同様、環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さく、摩擦帯電性試験の結果が良好なものであった。
【0134】
(実施例23、24)
離型層の厚みを、バーに巻かれているワイヤーの径を選ぶことで乾燥、紫外線照射後に0.050、0.10μmとなるように調整した他は、実施例22と同様にして離型フィルムを作成し、また作成した離型フィルムの評価を行った。結果を表1、表2に示す。本フィルムは実施例22同様、環境負荷が小さく、各層シートの剥離性が良好であり、シリコーンの抽出量および、各層シートへのシリコーン移行が小さく、摩擦帯電性試験の結果が良好なものであった。
【0135】
【表1A】
【0136】
【表1B】
【0137】
【表2A】
【0138】
【表2B】
【産業上の利用可能性】
【0139】
全固体電池の材料である固体電解質層、正極活物質層、負極活物質層、集電体層、絶縁層を製造するために用いる離型フィルムとして、環境負荷を小さく、かつ剥離性に優れた離型フィルムを提供しようとするものである。
【符号の説明】
【0140】
1…正極
2…負極
3…固体電解質層
4…正極活物質層
5…負極活物質層
6…正極集電体層
7…負極集電体層
8…絶縁層
9…全固体電池
図1