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  • 特開-伸縮装置の交換方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142330
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】伸縮装置の交換方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20220922BHJP
   E01D 19/06 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042471
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】仲田 宇史
(72)【発明者】
【氏名】村上 隆弘
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059AA17
2D059GG39
2D059GG45
(57)【要約】      (修正有)
【課題】効率よく伸縮装置の交換できる方法を提供する。
【解決手段】構造物に設置された既設伸縮装置10、及び、前記既設伸縮装置周辺の鉄筋コンクリートを除去する除去工程と、前記除去工程により生成された前記鉄筋コンクリートの除去面に、コンクリートブロックを設置する設置工程と、前記コンクリートブロックに、前記既設伸縮装置と異なる伸縮装置である新設伸縮装置を設置する工程と、を含む、伸縮装置の交換方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に設置された既設伸縮装置、及び、前記既設伸縮装置周辺の鉄筋コンクリートを除去する除去工程と、
前記除去工程により生成された前記鉄筋コンクリートの除去面に、コンクリートブロックを設置する設置工程と、
前記コンクリートブロックに、前記既設伸縮装置と異なる伸縮装置である新設伸縮装置を設置する工程と、
を含む、伸縮装置の交換方法。
【請求項2】
前記除去工程は、前記既設伸縮装置を、前記既設伸縮装置周辺の鉄筋コンクリートと一体に除去する工程を含む、請求項1に記載の交換方法。
【請求項3】
前記除去面に第1のアンカーを打つ工程をさらに含み、
前記設置工程において、前記コンクリートブロックは前記第1のアンカーに固定される、請求項1または2に記載の交換方法。
【請求項4】
前記除去面に対し、第2のアンカーをさらに打つ工程と、
前記第2のアンカーと前記コンクリートブロックとをコンクリートを介して固定する工程と、
をさらに含む、請求項3に記載の交換方法。
【請求項5】
前記コンクリートは超高強度繊維補強コンクリートである、請求項4に記載の交換方法。
【請求項6】
前記新設伸縮装置は前記既設伸縮装置に比較して小型の伸縮装置である、請求項1から5のいずれか1項に記載の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮装置の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、橋梁の床版から既設の伸縮装置を取り外し、新たな伸縮装置に交換する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-183404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術による工法では、既設の伸縮装置を取り除いた後、床版及び新設の伸縮装置周辺に配筋を行い、さらにコンクリートの現場打設を実施することによって、新設の伸縮装置を床版に固定する。このような作業を行う場合、現場での配筋及びコンクリート打設に伴う作業及び人員が必要となり、工期が長引く要因及び作業コスト増大の要因となっていた。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、効率よく伸縮装置を交換できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は一態様として、構造物に設置された既設伸縮装置、及び、前記既設伸縮装置周辺の鉄筋コンクリートを除去する除去工程と、前記除去工程により生成された前記鉄筋コンクリートの除去面に、コンクリートブロックを設置する設置工程と、前記コンクリートブロックに、前記既設伸縮装置と異なる伸縮装置である新設伸縮装置を設置する工程と、を含む、伸縮装置の交換方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、効率よく伸縮装置を交換できる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における、床版の(a)上面図、及び(b)上面図におけるb枠部分の拡大図である。
図2】(a)床版の断面図、(b)既設の伸縮装置の側面図、及び(c)新設の伸縮装置の側面図である。
図3】実施形態における交換工事の工程を示すフローである。
図4】床版の斜視図であり、アンカーを設置した状態を示す。
図5】床版の断面図であり、アンカーを設置した状態を示す。
図6】床版の斜視図であり、ブロックを載置している状況を示す。
図7】ブロックが載置された床版の斜視図である。
図8】ブロックが載置された床版の上面図である。
図9】モルタル充填及びコンクリート打設後における、床版の断面図である。
図10】床版の断面図であり、新設伸縮装置設置のためのアンカーが打たれた状態を示す。
図11】床版の断面図であり、新設伸縮装置が設置された状態を示す。
図12】変形例による既設の伸縮装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の伸縮装置の交換方法に関し、図1において橋梁の床版1、2に固定された、伸縮装置10を交換する実施形態を用いることにより、以下に説明する。
【0010】
<概要>
床版1及び床版2は、図1に示すように、いずれも略水平方向に延びる鉄筋コンクリート造の床版である。床版1及び床版2は、橋軸方向において互いに離れており、伸縮装置10を介して接続される。
【0011】
伸縮装置10は、床版1及び床版2の全幅に亘って設置された鋼製のフィンガージョイントである。伸縮装置10は、床版1及び床版2の端部を接続するとともに、構造の伸縮によって発生した床版1、2の伸縮を吸収する機能を有する。伸縮装置10は、床版1に固定された装置11と、床版2に固定された装置12とを備える。
【0012】
装置11及び装置12は、ほぼ同じ形状、構成を有する。装置11及び装置12は、それぞれ、略矩形状の本体部100、本体部100から橋軸方向に延びる複数の突出部101、及び、本体部100から突出し、床版1、2に対する定着を取るためのアンカー102を有する。
【0013】
本体部100は、鋼材を溶接することで形成された部材であり、上下に延びるウェブと、ウェブの上下部に固定された水平のフランジと、フランジ及びウェブを補強するプレートとを、主に有する。
【0014】
複数の突出部101は、本体部100の上部から水平に突出して形成される。装置11及び装置12の突出部101は、図1(b)に示すように、橋軸方向に間隔を空けて、千鳥に配置される。これによって、装置11及び装置12は、橋軸方向に間隔を空けて対向する。装置11及び装置12は、床版1及び床版2それぞれの橋軸方向への伸縮を許容しつつ、床版1及び床版2を接続することができる。突出部101の上面は、床版1及び床版2の上面とほぼ面一に連続しており、上方における車両や歩行者の円滑な通行を可能としている。
【0015】
アンカー102は、本体部100から延びる複数の棒状の鋼材である。複数のアンカー102には、本体部100のウェブから水平方向に延びる部材、及び、本体部100の上部フランジか斜めに延びる部材が含まれる。
【0016】
<伸縮装置の交換工事>
伸縮装置10を新たな伸縮装置20に交換する工事の工程について、図3のフローを中心に以下に説明する。なお、装置11、12がほぼ同構成であるため、床版1、2のいずれにおいても同じ工程で工事が行われる。煩雑な説明を避けて理解を容易にするため、図4以降では、装置11と床版1を主に表示して工程等の説明に用いることとする。そのため、装置12、床版2などが、図中において一点鎖線などで簡略に表示されたり、表示が省略されたりする場合がある。
【0017】
新設される伸縮装置20は、伸縮装置10よりも部材高の小さな鋼製あるいはゴム製のジョイントである。図2(c)及び図11に示すように、伸縮装置20は、床版1に固定される装置21と、床版2に固定される装置22を有する。装置21、22の形状、構成は、ほぼ同じである。
【0018】
装置21、22のそれぞれは、本体部200と、本体部200から水平かつ橋軸方向に延びる複数の突出部201と、本体部200から突出し、床版1、2への定着を取るアンカー202と、を有する。本体部200、突出部201、及びアンカー202のそれぞれは、伸縮装置10の本体部100、突出部101、及びアンカー102と同様の機能を有する。
【0019】
装置21、22は、上下方向長さが装置11、12の上下方向長さよりも短く、したがって、装置11、12よりも小型のものとなっている。
【0020】
交換工事は、全体としてS1からS11までの工程(図3)によって構成される。
【0021】
作業者は、まず工程S1において床版1、2の切断作業を行う。具体的に、作業者は、ワイヤーソーまたはカッターを使用し、伸縮装置10の周囲を切断線D-D(図2(a))に沿って、内部の配筋(図中点線で示す)ごと切断する。これにより装置11及び装置12は、その周囲の鉄筋コンクリートと一体に、ブロックの一部として切り出される。
【0022】
工程S1の切断作業により、床版1、2にはそれぞれ、略水平に形成された切断面C1、及び、略鉛直に形成された切断面C2が形成される(図4)。
【0023】
次に工程S3において、切断面C1、C2にアンカー30を打つ作業が実施される。アンカー30は、切断面C1、C2のそれぞれに対して垂直に打たれて固定される(図4図5)。実施形態においては、図4に示すように、切断面C1において2列、切断面C2に1列のアンカー30が、一定のピッチで固定される。アンカー30の数量、種類及びサイズは、実際の床版1、2や切断面C1、C2の大きさに合わせ、適宜選択される。例えば、アンカー30として、異形鉄筋、頭付きアンカーボルトなどが採用しうる。
【0024】
工程S5では、プレキャストコンクリート(PC)造のブロック40が切断面C1に載置される。ブロック40は、図6に示すように直方体形状に形成される。ブロック40中央部においては、上下に延びる円形の貫通孔40Aが、一定間隔で複数個所形成される。またブロック40は、側面部から水平に突出した、複数本の鉄筋41を有する。鉄筋41は、上下の2列にわたって設けられる。鉄筋41はいずれも、ブロック40の側面部のうち、床版1、2と対向する側面部から突出する。
【0025】
ブロック40は、切断面C1の上方から降下させることにより載置される(図6図7)。この際、切断面C1に設置されたアンカー30は、貫通孔40Aの中央に位置する。また、切断面C2に設置されたアンカー30は、上面視において鉄筋41と対向し、千鳥に配置される(図8)。
【0026】
ブロック40の載置後、貫通孔40Aの内部、及び、ブロック40と切断面C1との間に無収縮モルタルMが充填される(工程S7、図9)。これにより、ブロック40がアンカー30及び床版1、2に固定される。
【0027】
次に作業者は、ブロック40と切断面C2との間にコンクリートの打設を行う(工程S9、図9)。コンクリートを打設し、硬化させることによって、アンカー30及び鉄筋41がコンクリートを介して固定される。したがって、ブロック40が床版1、2に固定された状態となる。
【0028】
打設するコンクリートの種類は適宜選択し得るものであるが、超高強度繊維補強コンクリート(UFC)とすることが望ましい。UFCを用いることによって、鉄筋及びアンカーの定着長さを、普通コンクリートなど他種のコンクリートを用いた場合よりも短くすることができるためである。すなわち、鉄筋41、及び、切断面C2に設置されたアンカー30をいずれも短くすることが可能となり、工事の施工範囲を小さくすることができる。
【0029】
施工範囲を小さくすることによって、工事の中断及び復旧、また、交通の開放が容易となる。例えば工期が複数日にまたがる場合などにおいて、工事休止中の交通を可能とする場合がある。この場合、施工範囲に仮舗装を実施し、または施工範囲を敷鉄板で覆うことによって、工事休止中における車両等の通行を可能とすることが一般的である。施工範囲が小さければ、仮舗装または鉄板敷設を行う範囲も小さくすることができ、工事休止のための準備、工事復旧にかかる作業も少なくすることができる。そのため、工期の短縮やコストの削減が可能となる。
【0030】
コンクリート硬化後、作業者は、伸縮装置20の設置作業を実施する(工程S11)。まず作業者は、ブロック40の上面にアンカー50を新たに設置し(図10)、配筋を行った上で、装置21、22を設置する(図11)。その後、装置21、22とブロック40との間にコンクリートを打設する(図11、後打コンクリート)。これにより、装置21が床版1に固定され、装置22が床版2に固定される。
【0031】
<効果>
本実施形態では、構造物に設置された伸縮装置10の交換工事の工程が開示される。工事工程には、伸縮装置10周辺の鉄筋コンクリートを除去する除去工程(S1)と、除去工程により生成された鉄筋コンクリートの切断面C1、C2(本発明の除去面に相当)に、コンクリートブロック40を設置する設置工程(S7、S9)と、ブロック40に、伸縮装置10と異なる伸縮装置20を設置する工程(S11)と、が含まれる。
【0032】
従来ではコンクリートを現場打設して伸縮装置を固定していたが、上記構成では、ブロック40を用いて工事を実施する。そのため、床版1、2上にコンクリートを打設する必要が無く、打設量を低減できる。本構成では、コンクリートの硬化を待ったり養生を行ったりする必要が無く、従来に比較して、工期の短縮またはコストの削減が可能となる。また、容易に伸縮装置20を設置できる。
【0033】
本実施形態において、除去工程(S1)では、伸縮装置10を、伸縮装置10周辺の鉄筋コンクリートと一体に切断して除去する。
【0034】
上記構成では、例えば、ワイヤーソーを用いて伸縮装置10の周りが一体に切断され、床版1、2から除去される。従来ではウォータージェットなどを用いてコンクリートを斫り、床版から伸縮装置を除去していたが、作業の工数も多く、多くの時間が費やされていた。本構成では、容易に伸縮装置10の除去が可能となり、工期の短縮、またはコストの削減が可能となる。
【0035】
本実施形態では、切断面C1にアンカー30を打つ工程(S3)をさらに含み、ブロック40はアンカー30に固定される。
【0036】
この構成では、アンカー30を用いて床版1、2とブロック40との固定を行うため、現場で配筋を行う必要が無い。そのため、簡単な作業でブロック40の固定を実行でき、工期の短縮、またはコストの削減が可能となる。
【0037】
本実施形態では、切断面C2に対してアンカー30をさらに打つ(S3)。また、アンカー30とブロック40とをコンクリートを介して固定する(S9)。
【0038】
この構成では、アンカー30を用いて床版1、2とブロック40との固定が行われるため、現場で配筋を行う必要が無い。そのため、簡単な作業でブロック40の固定を実行でき、工期の短縮、またはコストの削減が可能となる。
【0039】
本実施形態では、切断面C2とブロック40との間に打設するコンクリートは超高強度繊維補強コンクリート(UFC)である。
【0040】
UFCを用いることによって、鉄筋41の定着長さ、及び、切断面C2に設置されたアンカー30を短くすることが可能となり、工事の施工範囲を小さくすることができる。上述のように、施工範囲を小さくすることによって、工事休止のための準備、工事復旧にかかる作業も少なくすることができ、工期の短縮またはコストの削減が可能となる。
【0041】
また、施工範囲を小さくすることによって、床版1、2の切断範囲(図2のD-D線)を小さくすることが可能となる。切断面C1が小さくなるため、切断作業の短縮が可能となる。また、アンカー30の本数、ブロック40の容積を小さくすることが可能となる。いずれも、工期の短縮またはコストの削減につながる。
【0042】
伸縮装置20は既設の伸縮装置10に比較して小型の伸縮装置であるため、設置作業が容易であり、工期の短縮やコストの削減が可能となる。
【0043】
<変形例>
上記実施形態において、装置11及び装置12はほぼ同じ形状を備えるものであったが、本発明はそのような構成に限定されず、対向する装置の構造は必ずしも一致する必要はない。装置12の変形例として鋼橋に設置された装置112を図12に示すが、設置される構造によって装置の形状は適宜変更しうる。
【0044】
詳細に述べると、装置112は、本体部300、突出部301、及びアンカー302を有しているが、鋼桁への設置に適合するように、本体部300の下部フランジは本体部100よりも大きく、ボルトとの接合箇所が2か所設けられるなど、装置11とは異なる構造、形状を持つ。
【0045】
このように装置112の構造は、実施形態に示した装置12の構造とは異なるが、装置11に対向して設置されることにより、伸縮装置として機能する。この場合においても装置11の交換工事は、実施形態と同様に施工可能である。
【符号の説明】
【0046】
既設の伸縮装置10
新設の伸縮装置20
アンカー30
ブロック40
アンカー50
床版1、2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12