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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014235
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】段差乗り越え装置
(51)【国際特許分類】
   B62B 9/02 20060101AFI20220112BHJP
   B62B 5/02 20060101ALI20220112BHJP
   B60B 33/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B62B9/02
B62B5/02 Z
B60B33/00 X
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116462
(22)【出願日】2020-07-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】520196416
【氏名又は名称】小山 勇人
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】特許業務法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】小山 勇人
【テーマコード(参考)】
3D050
3D051
【Fターム(参考)】
3D050AA04
3D050GG06
3D050KK06
3D051AA02
3D051AA24
3D051DD09
(57)【要約】

【課題】手押し車に取り付けが可能であり、手押し車の操作者が任意に前輪を持ち上げることが可能な段差乗り越え装置を提供すること。
【解決手段】 ベビーカー2に固定可能なギヤボックス26と、ギヤボックス26に上下方向に移動可能に設けられ、下方に移動した際に地面に接触可能な第2ラックギヤ34と、ワイヤ24の上端が固定され、ベビーカー2に固定可能なレバー51と、ギヤボックス26に設けられ、ワイヤ24の下端が連結され、レバー51の操作によりワイヤ24が上方へ引き上げられる運動を第2ラックギヤ34が下方へ移動する運動に変換する変換機構と、を備え、第2ラックギヤ34が地面を押す力の反作用によってギヤボックス26が地面に対して上昇することにより、前輪15を地面から上昇させる段差乗り越え装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および後輪を有する手押し車に固定可能な固定部と、
前記固定部に上下方向に移動可能に設けられ、下方に移動した際に地面に接触可能な移動部と、
ワイヤの上端が固定され、前記手押し車に固定可能な操作部と、
前記固定部に設けられ、前記ワイヤの下端が連結され、前記操作部の操作により前記ワイヤが上方へ引き上げられる運動を前記移動部が下方へ移動する運動に変換する変換機構と、を備え、
前記移動部が地面を押す力の反作用によって前記固定部が地面に対して上昇することにより、前記前輪を地面から上昇させることを特徴とする段差乗り越え装置。
【請求項2】
前記変換機構は、前記ワイヤの下端に連結され、上下方向に移動可能な第1のラックギヤと、
前記固定部に固定された軸部材に回転可能に設けられ、前記第1のラックギヤと噛み合うピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤに関して前記第1のラックギヤと対向し、前記ピニオンギヤと噛み合う第2のラックギヤとを含むことを特徴とする請求項1に記載の段差乗り越え装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記第2のラックギヤであることを特徴とする請求項2に記載の段差乗り越え装置。
【請求項4】
前記変換機構は、前記固定部に回動可能に設けられた回動部材であり、
前記回動部材は、前後方向の一方側端部近傍に回動中心を有し、前記回動中心よりも一方側の部分が前記ワイヤの下端に連結され、前後方向の他方側端部が上下方向に移動するように回動可能であることを特徴とする請求項1に記載の段差乗り越え装置。
【請求項5】
前記移動部は、前記回動部材の前記他方側端部であることを特徴とする請求項4に記載の段差乗り越え装置。
【請求項6】
前記移動部を上方に付勢する弾性部材を備えたことを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の段差乗り越え装置。
【請求項7】
前記移動部の下端に補助輪を備えたことを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の段差乗り越え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、べビーカー等の手押し車の段差乗り越え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばベビーカーを押して歩行中にベビーカーが路面の段差や障害物(以下、段差等という)を乗り越える必要があるとき、ベビーカーを押している人は、ベビーカーのハンドルを両手で下方に押し下げ、後輪を支点としてベビーカーを後方に傾けることによりベビーカーの前輪を持ち上げる。そして後輪のみが接地した状態のままベビーカーを前進させることにより前輪が段差等に乗り上がり、これに続いて後輪が段差等に乗り上がる。一般的に、ベビーカーを押している人がこのような作業を行うことにより、ベビーカーは段差等を乗り越えることができる。従来、このような段差等を容易に乗り越えるための段差乗り越え機構を備えたベビーカーが提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1の段差乗り越え機構は、ベビーカーの前輪の車輪ホルダに、前輪よりも前方側に配置され、圧縮コイルばねによって弾性的に支持された補助輪を備えている。特許文献1のベビーカーは、前輪よりも先に補助輪が段差の立ち上がり壁面に接触すると、圧縮コイルばねがその衝撃を吸収するとともに補助輪が先に段差に乗り上がり、補助輪に続いて前輪が段差に乗り上がるため、前輪が段差に乗り上がり易い構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-071327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1の段差乗り越え機構は、当該段差乗り越え機構が組み込まれたベビーカーを購入等する必要があり、ベビーカー購入等の際のベビーカーの選択の自由度が狭くなってしまう。また、補助輪が段差の立ち上がり壁面等に接触しない場合、例えば電車に乗る際にベビーカーが駅のホームと電車との隙間を越える必要がある場合には、ベビーカーを押す人が従来と同様にハンドルを押し下げて前輪を持ち上げる必要がある。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、ベビーカー等の手押し車に取り付けが可能であり、手押し車の操作者が任意に前輪を持ち上げることが可能な段差乗り越え装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る段差乗り越え装置は、
前輪および後輪を有する手押し車に固定可能な固定部と、
前記固定部に上下方向に移動可能に設けられ、下方に移動した際に地面に接触可能な移動部と、
ワイヤの上端が固定され、前記手押し車に固定可能な操作部と、
前記固定部に設けられ、前記ワイヤの下端が連結され、前記操作部の操作により前記ワイヤが上方へ引き上げられる運動を前記移動部が下方へ移動する運動に変換する変換機構と、を備え、
前記移動部が地面を押す力の反作用によって前記固定部が地面に対して上昇することにより、前記前輪を地面から上昇させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベビーカー等の手押し車に取り付けが可能であり、手押し車の操作者が任意に前輪を持ち上げることが可能な段差乗り越え装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は手押し車の一例であるベビーカーを模式的に示す外観図であり、図1(a)は前方から見た状態を示し、図1(b)は側方から見た状態を示している。
図2図2は第1実施形態に係る段差乗り越え装置のリフト機構部の構造を示す模式図である。
図3図3は操作部の構造を示す平面図である。
図4図4は第1実施形態の段差乗り越え装置の状態を示す模式図であり、図4(a)は非作動状態を示し、図4(b)は作動状態を示している。
図5図5は第2実施形態に係る段差乗り越え装置のリフト機構部の構造を示す模式図である。
図6図6は第2実施形態の段差乗り越え装置の状態を示す模式図であり、図6(a)は非作動状態を示し、図6(b)は作動状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る段差乗り越え装置を、図面を参照しつつ説明する。
以下に説明する第1および第2実施形態は、本発明を手押し車の一例であるベビーカーに適用した例である。本発明の段差乗り越え装置は、簡易且つ軽量な構造を有し、既存の様々なタイプの手押し車に取り付けて用いることができる。ここで本明細書における「手押し車」とは、前輪および後輪を有し、歩行者がハンドルを後ろから手で押して移動させることができるタイプの車を含む。したがって手押し車は、ベビーカー、手押し台車、車いす、シルバーカー、保育園等で園児の移動等に用いる所謂「お散歩カー」等を含む概念である。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る段差乗り越え装置1が取り付けられた手押し車の一例であるベビーカー2を模式的に示す外観図であり、図1(a)は前方から見た状態を示し、図1(b)は側方から見た状態を示している。また図1(a)、図1(b)は、ベビーカー2の使用状態を示している。
【0012】
ベビーカー2の基本的な構成は公知のものであり、左右一対の前脚3と、左右一対の後脚5と、水平バー状のハンドル7とが形成されたフレーム構造の車体に、乳幼児が乗せられるシート9と、フロントガード11と、ステップ13とが組付けられている。一対の前脚3の下端にはそれぞれ前輪15が取り付けられ、一対の後脚5の下端にはそれぞれ後輪17が取り付けられている。また、ベビーカー2は公知の折り畳み機構を備え、持ち運び或いは保管の際は、図1各図に示す使用状態からコンパクトに折り畳むことができる。
【0013】
図2は、本実施形態に係る段差乗り越え装置1のリフト機構部20の構造を示す模式図である。
図3は、操作部22の構造を示す平面図である。
本実施形態に係る段差乗り越え装置1は、ベビーカー2の前輪15を持ち上げるためのリフト機構部20と、操作部22と、リフト機構部20と操作部22とを連結する可撓性のワイヤ24とを備えている。リフト機構部20は、ギヤボックス26と、ギヤボックス26に収容された後述するギヤ機構とからなる。ギヤボックス26は、ベビーカー2の前輪15の近傍、例えば図1(a)、図1(b)の18で示す部分のように、一対の前脚3の何れか一方の前輪15の近傍部に固定される。操作部22はハンドル7に固定される。ワイヤ24はガイドチューブ28に挿通され、操作部22とギヤボックス26との間の車体に沿って配置される。
【0014】
ギヤボックス26は所定の強度を有する樹脂部材によって略直方体状に形成されている。ギヤボックス26は、4つの側面が地面に対して垂直となるように車体に固定されている。図2に示すように、ギヤボックス26には、1つのピニオンギヤ30と、ピニオンギヤ30に関して対向して配置され、それぞれピニオンギヤ30と噛み合う第1ラックギヤ32および第2ラックギヤ34とからなるギヤ機構が収容されている。ピニオンギヤ30、第1ラックギヤ32、および第2ラックギヤ34は所定の強度を有する樹脂部材によって構成されている。
【0015】
ギヤボックス26の1つの側面35の中央部には、側面35に対して垂直に固定された軸部材36が固定されている。ピニオンギヤ30は、軸部材36を中心として回転可能に取り付けられている。なお軸部材36は、ギヤボックス26の対向する2つの側面に挟持される構成としても良い。
【0016】
第1ラックギヤ32は上下方向に延在し、上下方向に移動可能に配置されている。第1ラックギヤ32の上側部分は、ギヤボックス26の上面を上下方向に貫通する貫通孔37を貫通してギヤボックス26の上方に突出している。第1ラックギヤ32の下端には、下方に向けて延在するガイドシャフト38が第1ラックギヤ32と一体に設けられている。ガイドシャフト38は、ギヤボックス26の下面を上下方向に貫通する貫通孔39を貫通してギヤボックス26の下方に突出している。このように、ギヤボックス26の上面の貫通孔37と下面の貫通孔39は、第1ラックギヤ32の上下方向への移動のためのガイドを構成している。
【0017】
ギヤボックス26の上面には、貫通孔37を覆い、上方に向けて延在する筒状のラック収容部40が固定されている。ギヤボックス26の上面の貫通孔37よりも上方に突出している第1ラックギヤ32の上側部分は、ラック収容部40に収容されている。ラック収容部40の天井部41の上面には、ワイヤ24が挿通されたガイドチューブ28の下端が固定されている。ワイヤ24はラック収容部40の天井部41を貫通して配置され、ワイヤ24の下端は第1ラックギヤ32の上端に固定されている。ワイヤ24の上端は後述する操作部22のレバー51に固定されている。
【0018】
第1ラックギヤ32の上端とラック収容部40の天井部41との間には、第1ラックギヤ32の上端とラック収容部40の天井部41の下面とに接触して圧縮コイルばね42が介装されている。圧縮コイルばね42は第1ラックギヤ32が上昇すると圧縮し、弾性復帰する弾性力によって第1ラックギヤ32を下方に向けて付勢する。
【0019】
第2ラックギヤ34は上下方向に延在し、上下方向に移動可能に配置されている。第2ラックギヤ34の下側部分は、ギヤボックス26の下面を上下方向に貫通する貫通孔43を貫通してギヤボックス26の下方に突出している。第2ラックギヤ34の上端には、上方に向けて延在するガイドシャフト44が第2ラックギヤ34と一体に設けられている。ガイドシャフト44は、ギヤボックス26の上面を上下方向に貫通する貫通孔45を貫通してギヤボックス26の上方に突出している。このように、ギヤボックス26の下面の貫通孔43と上面の貫通孔45は、第2ラックギヤ34の上下方向への移動のためのガイドを構成している。
【0020】
第2ラックギヤ34の下端部には、第2ラックギヤ34を水平方向に貫通する貫通孔46が設けられている。貫通孔46には補助輪47が回転可能に支持されている。具体的には、貫通孔46には軸部材48が回転可能に挿通され、軸部材48の両端にはそれぞれ車輪49が取り付けられている。補助輪47はベビーカー2の前進方向および後進方向の何れの方向にも回転可能である。補助輪47は、第2ラックギヤ34が下方に移動すると接地するようになっている。なお、第2ラックギヤ34の下端部に、補助輪47として自在に向きが変わるキャスターを取り付けても良い。
【0021】
ギヤボックス26は、図2に示すように、第1ラックギヤ32および第2ラックギヤ34が上下方向に延在する向きでベビーカー2に固定される。本実施形態においては、ギヤボックス26は、上述したように、一対の前脚3の何れか一方の前輪15の近傍(図1の18の部分)に固定される。なお、ギヤボックス26は、左右の前脚3の間に配置されるように、前記一方の前脚3の内側に固定することが好ましい。或いは、ステップ13の下方に一対の前脚3を水平方向に連結するフレーム19がある場合は、当該フレーム19に固定しても良い。
【0022】
前脚3へのギヤボックス26の固定は、例えば、公知のU字ボルト、コ字ボルト、またはサドルバンドを用いることができる。具体的には、ギヤボックス26の側面35とベビーカー2の前脚3とを接触させた状態で、前脚3側から複数のU字ボルト等をギヤボックスの側面35にボルト止めまたはねじ止めする。この場合、ギヤボックス26の側面35にU字ボルト等を貫通させるための穴、或いはサドルバンドをねじ止めするための穴を設ける必要があるが、ギヤボックス26は樹脂部材で構成されているので電動或いは手動の工具で比較的容易に穴を設けることができる。或いは、ギヤボックス26の複数の側面に、予めねじ止め用の複数の穴を設けておいても良い。なお、ギヤボックス26の車体への固定方法は限定されない。
【0023】
図3は、操作部22の構造を示す平面図である。
図3に示すように、本実施形態に係る段差乗り越え装置1の操作部22は、一般的な自転車のブレーキレバーと同様の構成を有している。すなわち、ハンドル7に固定されたブラケット50と、ブラケット50に回動可能に支持され、ハンドル7と略並行に配置された棒状のレバー51とを備えている。ブラケット50は、ハンドル7を挟持する公知の挟持構造部55によりハンドル7に固定されている。レバー51は、ブラケット50のレバー支持軸52を中心に、図3の矢印で示すように、先端部がハンドル7から離れる方向とハンドル7に近づく方向とに所定角度範囲で回動可能に支持されている。すなわちレバー51は、操作者がハンドル7を握った状態で指でレバー51をハンドル7側に引き寄せずにレバー51がハンドル7から離れている位置(図3の実線で示す位置)と、この状態から指でレバー51をハンドル7側に引き寄せた位置(図3の破線で示す位置)との間で回動可能となっている。なお、ブラケット50には、レバー51がハンドル7から離れている位置(図3の実線で示す位置)においてレバー51の回動を規制するストッパ53が設けられている。このように、操作部22は一般的な自転車のブレーキレバーと同様の構成となっているので、市販の自転車用ブレーキレバーを用いて実施形態に係る段差乗り越え装置1の操作部22を構成することもできる。
【0024】
ブラケット50のストッパ53にはガイドチューブ28の上端が固定され、レバー51のブラケット50側端部には、ワイヤ24の上端が固定されている。したがってレバー51の先端部がハンドル7に近づく方向にレバー51を回動させると、ワイヤ24は上方に引っ張られる。
【0025】
ワイヤ24が挿通されたガイドチューブ28は、公知の面ファスナー、ナイロン製の結束バンド等を用いて車体に固定することができる。なお、車体へのガイドチューブ28の固定方法は限定されない。
【0026】
本実施形態の段差乗り越え装置1は、操作部22のレバー51がハンドル7から最も離れた状態、すなわち操作者が指でレバー51をハンドル7側に引き寄せていない状態において、ラック収容部40の圧縮コイルばね42は少し圧縮された状態で配置されている。この圧縮コイルばね42によって第1ラックギヤ32は下方に付勢され、移動可能範囲の最も下方の位置に保持されている。また、第1ラックギヤ32が下方に向けて付勢されていることによりワイヤ24が下方に引っ張られ、これによりレバー51は先端部がハンドル7から離れる方向に付勢されている。また、この状態において、補助輪47は地面に接触していない。
【0027】
次に本実施形態の段差乗り越え装置1の作動について説明する。
図4は本実施形態の段差乗り越え装置1の状態を示す模式図であり、図4(a)は非作動状態を示し、図4(b)は作動状態を示している。
ベビーカーの通常の使用状態においては、操作者はレバー51は握らずにハンドル7のみを握ってベビーカー2を押す。このとき操作部のレバー51は、圧縮コイルばね42およびワイヤ24によってハンドル7から最も離れた位置に保持されており、段差乗り越え装置1の状態は、図4(a)に示す非作動状態である。この状態において補助輪47は接地しておらず、地面から少し離れた位置に保持されている。本実施形態の段差乗り越え装置1は、操作者が指でレバー51をハンドル7側に引き寄せることにより作動する。
【0028】
ベビーカー2が段差等を乗り越える際、操作者が指でレバー51をハンドル7側に引き寄せてハンドル7とともにレバー51を握ると、レバー51はブラケット50のレバー支持軸52を中心に先端部がハンドル7に近づく方向に回動し、レバー7の回動に従って、図4(b)の矢印Aで示すように、ワイヤ24が上方に引っ張られる。ワイヤ24が上方に引っ張られると、ワイヤ24の張力によって第1ラックギヤ32が図4(b)の矢印Bに示すように圧縮コイルばね42を圧縮しつつ上方に移動し、第1ラックギヤ32と噛み合っているピニオンギヤ30が図4(b)の矢印Cの方向に回転する。ピニオンギヤ30がこのように回転すると、ピニオンギヤ30と噛み合っている第2ラックギヤ34が図4(b)の矢印Dに示すように下方に移動し、第2ラックギヤ34の下端部の補助輪47が接地する。このように、第1ラックギヤ32とピニオンギヤ30と第2ラックギヤ34とは、ワイヤ24が上方へ向かう運動を、第2ラックギヤ34が下方へ向かう運動に変換している。
【0029】
この状態から操作者が握っているレバー51をハンドル側にさらに引き寄せると、ワイヤ24がさらに上昇して第2ラックギヤ34はさらに下方に移動しようとする。しかし補助輪47が接地しているため第2ラックギヤ34はそれ以上下方には移動せず、第2ラックギヤ34および補助輪47が地面を押す。すると、第2ラックギヤ34および補助輪47が地面を押す下向きの力の反作用力が、ピニオンギヤ30を介してピニオンギヤ30の回転軸である軸部材36に伝達され、ピニオンギヤ30は第2ラックギヤ34と噛み合いつつ地面に対して上方に移動する。これに伴いピニオンギヤ30の回転軸である軸部材36が固定されているギヤボックス26が図4(b)の矢印Eに示すように上昇し、同時にギヤボックス26が固定されているベビーカーの前脚3が上昇する。
【0030】
このように、第2ラックギヤ34および補助輪47が地面を押す下向きの力の反作用力がピニオンギヤ30およびピニオンギヤ30の軸部材36を介して車体に固定されたギヤボックス26に伝達されることにより、ギヤボックス26およびベビーカー2の前脚3が上昇する。こうしてベビーカー2は、補助輪47が接地した状態で前輪15が持ち上がる。すなわち操作者は、レバー51をハンドル7に引き寄せるように握ることにより、ベビーカー2の前輪15を持ち上げることができる。
【0031】
ここで、本実施形態の段差乗り越え装置1は、ベビーカー2の前輪15を最大で地面から10センチメートル程度上昇させることができる。言い換えると、本実施形態の段差乗り越え装置1は、ベビーカー2の前輪が10センチメートル程度上昇するように、第1ラックギヤ32、第2ラックギヤ34、圧縮コイルバネ42、およびワイヤ24の各長さが設定されている。或いは、ベビーカー2の前輪15が10センチメートル程度上昇するように、ピニオンギヤ30に対する第1ラックギヤ32および第2ラックギヤ34の噛み合い位置を調節している。或いは、第2ラックギヤ34が最も下方に位置している状態でベビーカー2の前輪15が10センチメートル程度上昇するような高さ位置に、ギヤボックス26を固定している。なお前輪15が高く上昇しすぎると、ベビーカー2が後方に転倒しやすくなるので好ましくない。また、前輪15があまり上昇しないと、段差等を乗り越えにくくなるので好ましくない。
【0032】
ベビーカー2の前輪15が持ち上がったら、操作者はベビーカー2をそのまま前進させ、これにより前輪15が段差等に乗り上がる。この時、補助輪47が接地しているので、操作者はベビーカー2を容易に前進させることができる。また、段差等の高さが高く、これを乗り越えるためにさらにベビーカー2の前輪15を高く持ち上げる必要がある場合でも、ベビーカー2はすでに後輪17を支点として後方に所定角度傾いているので、操作者は小さな力でハンドル7を下方に押し下げるだけでベビーカー2をさらに後方に傾け、前輪15をさらに高く持ち上げることができる。このように本実施形態の段差乗り越え装置1によれば、ベビーカー2の前輪15を持ち上げる際、操作者が前輪15を持ち上げるために必要な作業を従来よりも軽減することができる。
【0033】
ベビーカー2の前輪15が段差等に乗り上がったら、操作者はレバー51から指を離す。すると、ベビーカー2は補助輪47が接地した状態のまま自重によって降下し、同時にギヤボックス26も降下する。ベビーカー2の前輪15が接地すると、圧縮コイルばね42の弾性復帰力により、第1ラックギヤ32が下方に付勢され、第1ラックギヤ32は下降する。これに伴いピニオンギヤ30を介して第2ラックギヤ34が上昇し、補助輪47が地面から離れて上昇する。また、操作部のレバー51はハンドル7から最も離れた状態に保持される。その後操作者は、後輪17を段差等に乗り上げさせる。こうしてベビーカー2は段差を容易に乗り越えることができる。
【0034】
このように本実施形態の段差乗り越え装置1は、既存のベビーカーに取り付けることができるので汎用性が高く、ベビーカー購入等の際のベビーカーの選択の自由度を狭くしてしまうことがない。また、操作者が任意に前輪15を持ち上げることができるので、段差等を乗り越えるだけでなく、例えば駅のホームと電車との隙間も容易に越えることができる。なお、本実施形態の段差乗り越え装置1は、既存のベビーカーに後付けすることもできるが、ベビーカーに最初から備えても良い。
【0035】
なお、本実施形態の段差乗り越え装置1は、全体の重量が2キログラム以下であることが望ましい。このような重量とすることにより、重量増によるベビーカー2の操作性の低下を抑制している。また、本実施形態の段差乗り越え装置1は、5キログラム程度の重量を垂直方向に上昇させることができる性能と、このような重量を上昇させてもガタつかない強度を有している。このような性能および強度を確保するために、例えば第1ラックギヤ32と第2ラックギヤ34とピニオンギヤ30を金属で構成しても良いし、さらにギヤボックス26を金属製としても良い。
【0036】
また、本実施形態の段差乗り越え装置1は、部品点数も少なく簡易且つ軽量な構成であり、低コストで実現できる。また、本実施形態の段差乗り越え装置1の操作方法は、一般的な自転車のブレーキレバーの操作方法と同様の操作方法を採用しているため、複雑な操作は必要とせず、瞬時に確実に操作することができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態に係る段差乗り越え装置ついて説明する。
第2実施形態に係る段差乗り越え装置は、第1実施形態とはリフト機構部の構成が異なっている。他の構成すなわち操作部22およびワイヤ24は第1実施形態と同様である。第2実施形態は、第1実施形態における図1および図3を援用し、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同一の符号を用いて、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0038】
図5は、第2実施形態に係る段差乗り越え装置101のリフト機構部120の構造を示す模式図である。なお、説明の便宜上、図5において紙面に向かって右方側をベビーカー2の前方側とし、左方側をベビーカー2の後方側とし、紙面の手前側と奥側とを結ぶ方向をベビーカー2の幅方向とする。
【0039】
本実施形態に係る段差乗り越え装置101のリフト機構部120は、ベビーカー2の車体に固定される固定部61と、固定部61に回動可能に取り付けられた回動部63とを備えた回転機構である。固定部61と回動部63とは、所定の強度を有する樹脂部材で構成されている。固定部61は前後方向および幅方向に所定の寸法を有し、ベビーカー2の前輪15の近傍部に固定される。例えば図1のベビーカー2において、ステップ13の下方で一対の前脚3を連結する幅方向に延在するフレーム19に固定することができる。固定部61は、操作部22のブラケット50(図3参照)と同様の挟持構造部55を有し、該挟持構造部55によりベビーカー2のフレーム19に固定される。なお、固定部61の車体への固定方法は限定されない。
【0040】
固定部61の中央部には、下方に向けて突出し、前後方向に所定の幅を有する突出部65が形成されている。突出部65は下方側部分が前方に向けて湾曲し、幅方向から見て、前方側が開放している略C字形状或いは円弧状に形成されている。突出部65の後方側の湾曲部には、ワイヤ24をガイドするためのプーリ67が回転可能に支持されている。
【0041】
突出部65の下端部には、回動部63の回動中心となる軸部材69が固定されている。軸部材69は幅方向一方側(図5において手前側)に突出して設けられ、幅方向一方側端部には回動部63の幅方向への抜けを防止するフランジ71が形成されている。
【0042】
回動部63は、図5に示すように、前後方向に延在する部材であり、幅方向から見て、下方側が開放している略C字形状或いは円弧状に形成された部材である。回動部63は、後方側端部近傍において突出部65の軸部材69に回動可能に支持されている。したがって回動部63は、軸部材69を中心にして回動すると、前方側端部が上下方向に移動する。回動部63の前方側端部には、第1実施形態と同様の補助輪73が回動可能に支持されている。補助輪73は、回動部63の前方側端部が下方に移動すると接地するようになっている。なお、回動部63の前方側端部に、補助輪73として自在に向きが変わるキャスターを取り付けても良い。
【0043】
円弧状の回動部63の後方側端部、すなわち軸部材69よりも後方側の回動部63の部分には、ワイヤ24の下方端が固定されている。ワイヤ24は、回動部63の後方側端部の上側面から下側面まで貫通して配置され、回動部63の下側面に設けられた止め部75に固定されている。止め部75は、突出部65に設けられたプーリ67よりも下方且つ前方に位置している。したがってワイヤ24は、図5において後方の上方側から前方の下方側を結ぶ斜め方向に、回動部63の後方側端部を貫通している。ワイヤ24は、回動部63の後方側端部からプーリ67までは上述したように斜め方向に配置され、プーリ67を介して上方に向きを変更され、固定部61の後方側部分を上下方向に貫通して配置されている。固定部61の上面には、ガイドチューブ28の下端が固定されている。ワイヤ24の上端は、第1実施形態と同様に、操作部22のレバー51(図3参照)に固定されている。
【0044】
突出部65の軸部材69には、トーションばね77が介装されている。突出部65の幅方向一方側(図5において手前側)の面にはばね止め79が設けられている。また回動部63の後方側端部、すなわち軸部材69よりも後方側の回動部63の部分にも、ばね止め81が設けられている。トーションばね77は、巻き込む方向に荷重を掛けた状態で、一方のアーム83が突出部65側のばね止め79に係止され、他方のアーム85が回動部63側のばね止め81に係止されている。このように介装されたトーションばね77は、弾性復帰する弾性力によって、回動部63側のばね止め81を介して回動部63の後方側端部を下方に向けて付勢している。言い換えると、トーションばね77は、図5において回動部63が軸部材69を中心にして反時計方向に回動する方向に、回動部63を付勢している。この状態においてワイヤ24は下方に引っ張られ、これにより操作部22のレバー51は先端部がハンドル7から離れる方向に付勢されている。また、この状態において、補助輪73は地面に接触していない。
【0045】
次に本実施形態の段差乗り越え装置101の作動について説明する。
図6は本実施形態の段差乗り越え装置101の状態を示す模式図であり、図6(a)は非作動状態を示し、図6(b)は作動状態を示している。
【0046】
ベビーカー2の通常の使用状態においては、操作部22のレバー51は、トーションばね77およびワイヤ24によってハンドル7から最も離れた位置に保持されており、段差乗り越え装置101の状態は、図6(a)に示す非作動状態である。図6(a)に示すように、この状態において、回動部63の前方側端部の補助輪73は接地しておらず、補助輪73は回動部63の回動中心である軸部材69と略水平となる高さ位置に配置されている。また、補助輪73は、地面から補助輪73の中心までの高さHが、回動部63の回動中心から補助輪73の中心までの距離Lよりも小さくなる位置に配置されている。
【0047】
ベビーカー2が段差等を乗り越える際、操作者が指でレバー51をハンドル7側に引き寄せてハンドル7とともにレバー51を握ると、レバー51の回動に従って、図6(a)の矢印Aで示すように、ワイヤ24が上方に引っ張られる。ワイヤ24が上方に引っ張られると、ワイヤ24の張力によって回動部63の後方側端部が上方に引っ張られ、これにより回動部63は、トーションばね77(図5参照)に巻き込む方向の荷重を掛けつつ、図6(b)の矢印Bで示すように軸部材69を中心にして時計方向に回動する。回動部63が時計方向に回動すると、回動部63の前方側端部が図6(b)の矢印Cで示すように下方に移動し、補助輪73が接地する。このように、固定部63の軸部材69に支持された回動部63は、ワイヤ24が上方へ向かう運動を、回動部63の前方側端部が下方へ向かう運動に変換している。
【0048】
この状態から操作者が握っているレバー51をハンドル7側にさらに引き寄せると、ワイヤ24がさらに上昇して回動部63はさらに回動しようとし、回動部63の前方側端部はさらに下方に移動しようとする。しかし補助輪73が接地しているため、回動部63は軸部材69を中心にしてそれ以上回動せず、したがって回動部63の前方側端部はそれ以上下方には移動せずに、回動部63の前方側端部および補助輪73が地面を押す。すると回動部63の前方側端部および補助輪73が地面を押す下向きの力の反作用力(図6(b)の矢印D)により、回動部63は前方側端部すなわち補助輪73を中心にして時計方向に回動する。補助輪73を中心とする回動部63のこの時計方向の回動により、回動部63の後方側端部は時計方向に移動しつつ地面に対して上方に移動する。これに伴い回動部63の回転軸である軸部材69が固定されている固定部61が図6(b)の矢印Eに示すように上昇し、同時に固定部61が固定されているベビーカー2のフレーム19が上昇する。このように回動部63の前方側端部および補助輪73が地面を押す下向きの力の反作用力が回動部63の回転軸である軸部材69を介して車体に固定された固定部61に伝達されることにより、固定部61およびベビーカー2のフレーム19が上昇する。こうしてベビーカー2は、補助輪73が接地した状態で前輪15が持ち上がる。
【0049】
本実施形態の段差乗り越え装置101も、第1実施形態と同様に、ベビーカー1の前輪15を最大で地面から10センチメートル程度上昇させることができる。すなわち、本実施形態の段差乗り越え装置101は、ベビーカー2の前輪15が10センチメートル程度上昇するように、回動部63の回動中心から補助輪73の中心までの距離L、およびベビーカー2への固定部61の取り付け位置が設定されている。
【0050】
ベビーカー2の前輪15が段差等に乗り上がった後、操作者がレバー51から指を離すと、ベビーカー2は補助輪73が接地した状態のまま自重によって降下し、同時に固定部61も降下する。ベビーカー2の前輪15が接地すると、トーションばね77の弾性復帰力により、回動部63が軸部材69を中心に反時計方向に回動する。これにより補助輪73が地面から離れて上昇する。また、操作部22のレバー51はハンドル7から最も離れた状態に保持される。この後の段差等を乗り越えるためのベビーカー2の操作は、第1実施形態と同様である。
【0051】
このように本実施形態の段差乗り越え装置101も第1実施形態と同様に、操作者が簡単な操作で任意に前輪15を持ち上げることができ、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0052】
なお、本実施形態の段差乗り越え装置101は、図5において紙面に向かって右方側をベビーカー2の前方側とし、左方側をベビーカー2の後方側として説明したが、図5において紙面に向かって左方側をベビーカー2の前方側とし、右方側をベビーカー2の後方側となるようにベビーカー2に取り付けることもできる。また、本実施形態の段差乗り越え装置101は、既存のベビーカーに後付けすることもできるが、ベビーカーに最初から備えても良い。
【0053】
以上説明した本願発明の段差乗り越え装置は、ベビーカーだけでなく既存の様々なタイプの手押し車に取り付けることが可能であり、高い汎用性を有している。また、操作者が簡単な操作で任意に前輪を持ち上げることができるので、段差等を乗り越えるだけでなく、例えば駅のホームと電車との隙間や、路面の凹部等も容易に越えることができ、手押し車の操作性を向上させることができる。なお、本願発明の段差乗り越え装置は、既存の手押し車に後付けすることもできるが、手押し車に最初から備えても良い。
【符号の説明】
【0054】
1、101 段差乗り越え装置
2 ベビーカー
3 前脚
5 後脚
7 ハンドル
15 前輪
17 後輪
20、120 リフト機構部
22 操作部
24 ワイヤ
26 ギヤボックス
30 ピニオンギヤ
32 第1ラックギヤ
34 第2ラックギヤ
36 軸部材
42 圧縮コイルばね
47、73 補助輪
51 レバー
61 固定部
63 回動部
65 突出部
69 軸部材
77 トーションばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2020-10-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および後輪を有する手押し車の前記前輪近傍に固定可能な固定部と
ワイヤの上端が固定され、前記手押し車に固定可能な操作部と、を備え、
前記固定部には、上下方向に延在し、前記ワイヤの下端に連結され、上下方向に直線状に移動可能な第1のラックギヤと、前記固定部に固定された軸部材に回転可能に設けられ、前記第1のラックギヤと噛み合うピニオンギヤと、前記ピニオンギヤに関して前記第1のラックギヤと対向し、前記ピニオンギヤと噛み合い、上下方向に直線状に移動可能な第2のラックギヤと、前記第1のラックギヤを下方位置に付勢している弾性部材と、が設けられ、
前記第2のラックギヤの下端には補助輪が回転自在に設けてあり、通常時は前記第2のラックギヤは上昇位置にあって前記補助輪を地面と非接触位置におき、
前記操作部の操作により前記ワイヤが上方へ引き上げられると、前記第2のラックギヤは下方に移動して前記補助輪が地面に接触し、前記第2のラックギヤが前記補助輪を介して地面を押す力の反作用によって前記固定部が地面に対して上昇することにより、前記前輪を地面から上昇させることを特徴とする段差乗り越え装置。
【請求項2】
前輪および後輪を有する手押し車の前記前輪の近傍に固定可能な固定部と
ワイヤの上端が固定され、前記手押し車に固定可能な操作部と、を備え、
前記固定部には、前後方向に延在し、前後方向の一方側端部近傍に車輪軸方向に回動中心を有し、前記回動中心よりも一方側に伸びる一方側部分と、前記回動中心よりも他方側に伸び前記一方側部分よりも長尺の他方側部分とを有し、前記一方側部分が前記ワイヤの下端に連結され、前記一方側部分と前記他方側部分と一体で前記他方側部分の端部が上下方向に移動するように回動可能な回動部材と、
前記一方側部分を下方位置に付勢している弾性部材と、
前記固定部を前記手押し車に取り付けると共に、前記ワイヤをガイドするためのガイド部を一体に形成した取り付け部と、が設けられ、
前記他方側部分の端部には補助輪が回転自在に設けてあり、通常時は前記他方側部分の端部は上昇位置にあって前記補助輪を地面と非接触位置におき、
前記操作部の操作により前記ワイヤが上方へ引き上げられると、前記回動部材は前記他方側部分の端部が下方に移動するように回動して前記補助輪が地面に接触し、前記他方側部分の端部が前記補助輪を介して地面を押す力の反作用によって前記固定部が地面に対して上昇することにより、前記前輪を地面から上昇させることを特徴とする段差乗り越え装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る段差乗り越え装置は、
前輪および後輪を有する手押し車の前記前輪近傍に固定可能な固定部と
ワイヤの上端が固定され、前記手押し車に固定可能な操作部と、を備え、
前記固定部には、上下方向に延在し、前記ワイヤの下端に連結され、上下方向に直線状に移動可能な第1のラックギヤと、前記固定部に固定された軸部材に回転可能に設けられ、前記第1のラックギヤと噛み合うピニオンギヤと、前記ピニオンギヤに関して前記第1のラックギヤと対向し、前記ピニオンギヤと噛み合い、上下方向に直線状に移動可能な第2のラックギヤと、前記第1のラックギヤを下方位置に付勢している弾性部材と、が設けられ、
前記第2のラックギヤの下端には補助輪が回転自在に設けてあり、通常時は前記第2のラックギヤは上昇位置にあって前記補助輪を地面と非接触位置におき、
前記操作部の操作により前記ワイヤが上方へ引き上げられると、前記第2のラックギヤは下方に移動して前記補助輪が地面に接触し、前記第2のラックギヤが前記補助輪を介して地面を押す力の反作用によって前記固定部が地面に対して上昇することにより、前記前輪を地面から上昇させることを特徴とする。
また、本発明に係る段差乗り越え装置は、
前輪および後輪を有する手押し車の前記前輪の近傍に固定可能な固定部と、
ワイヤの上端が固定され、前記手押し車に固定可能な操作部と、を備え、
前記固定部には、前後方向に延在し、前後方向の一方側端部近傍に車輪軸方向に回動中心を有し、前記回動中心よりも一方側に伸びる一方側部分と、前記回動中心よりも他方側に伸び前記一方側部分よりも長尺の他方側部分とを有し、前記一方側部分が前記ワイヤの下端に連結され、前記一方側部分と前記他方側部分と一体で前記他方側部分の端部が上下方向に移動するように回動可能な回動部材と、
前記一方側部分を下方位置に付勢している弾性部材と、
前記固定部を前記手押し車に取り付けると共に、前記ワイヤをガイドするためのガイド部を一体に形成した取り付け部と、が設けられ、
前記他方側部分の端部には補助輪が回転自在に設けてあり、通常時は前記他方側部分の端部は上昇位置にあって前記補助輪を地面と非接触位置におき、
前記操作部の操作により前記ワイヤが上方へ引き上げられると、前記回動部材は前記他方側部分の端部が下方に移動するように回動して前記補助輪が地面に接触し、前記他方側部分の端部が前記補助輪を介して地面を押す力の反作用によって前記固定部が地面に対して上昇することにより、前記前輪を地面から上昇させることを特徴とする。