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特開2022-142421静電チャック装置およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142421
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】静電チャック装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220922BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042575
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】安藤 大悟
(72)【発明者】
【氏名】津田 統
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131CA09
5F131CA15
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB14
5F131EB15
5F131EB54
5F131EB78
5F131EB79
(57)【要約】      (修正有)
【課題】プラズマ耐性に優れ、かつ機械的強度が高い静電チャック装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】静電チャック装置において、吸着面に複数の凸部14を有し、凸部14がセラミック粒子21と、金属酸化物22と、を含有する。セラミック粒子21間の少なくとも一部が、金属酸化物22を介して結着している。セラミック粒子21が、アルミナ、マグネシア、イットリア、ジルコニア、シリカおよび酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着面に複数の凸部を有する静電チャック装置であって、
前記凸部がセラミック粒子と、金属酸化物と、を含有し、
前記セラミック粒子間の少なくとも一部が前記金属酸化物を介して結着している、静電チャック装置。
【請求項2】
前記セラミック粒子が、アルミナ、マグネシア、イットリア、ジルコニア、シリカおよび酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項3】
前記セラミック粒子の平均一次粒子径が0.1μm以下50μm以下である、請求項1または2に記載の静電チャック装置。
【請求項4】
前記金属酸化物が、有機金属化合物の熱処理によって有機成分が分解除去されると共に、前記有機金属化合物を構成する金属が酸化されることによって得られた金属酸化物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項5】
前記有機金属化合物を構成する金属が、イットリウム、マグネシウムである、請求項4に記載の静電チャック装置。
【請求項6】
被塗布物に、セラミック粒子および金属レジネートを含有する塗料を塗工して塗工膜を形成する工程と、
前記塗工膜を加熱して、前記被塗布物上に凸部を形成する工程と、を有する、静電チャック装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハを使用して半導体集積回路を製造する場合や、ガラス基板、フィルム等の絶縁性基板を使用した液晶パネルを製造する場合には、半導体ウエハ、ガラス基板、絶縁性基板等の基材を所定部位に吸着保持する必要がある。そのため、それらの基材を吸着保持するために、機械的方法によるメカニカルチャックや、真空チャック等が用いられていた。しかしながら、これらの保持方法は、基材(被吸着体)を均一に保持することが困難である、真空中で使用することができない、基材表面の温度が上昇し過ぎる等の課題があった。そこで、近年、被吸着体の保持には、これらの問題を解決することができる静電チャック装置が用いられている。
【0003】
静電チャック装置は、内部電極となる導電性支持部材と、それを被覆する誘電性材料からなる誘電層と、を主要部として備える。この主要部により、被吸着体を吸着させることができる。静電チャック装置内の内部電極に電圧を印加して、被吸着体と導電性支持部材(内部電極)との間に電位差を生じさせると、誘電層に静電気的な吸着力が発生する。これにより、被吸着体は、導電性支持部材に対しほぼ平坦に支持される。また、静電チャック装置の吸着面に、複数の凹凸部を形成し、この複数の凸部の上面により形成される面に被吸着体を吸着することで、溶射により誘電層の吸着面に微細な凹凸を形成する際に、被吸着体にパーティクルが付着することを抑制している。
【0004】
従来、吸着面となるセラミックス誘電体層の表面を部分的に薄く削り取り、多数の凸凹を形成するディンプル加工を施すことが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、表面の幅8mmの外周部と規則正しく配列された複数個の直径4mmの円形部分をマスキングし、残りの部分をブラスト処理することにより、深さ20μmを削り取って段差を設けて、吸着面に、セラミックスの溶射時にパーティクルが付着することを抑制している。
【0005】
シリコンウエハの裏面のパーティクルは、シリコンウエハと静電チャック装置との接触部の接触面積が広いほど多くなる。そのため、シリコンウエハと静電チャック装置の接触面積を小さくするために、静電チャック装置の吸着面に複数の凹凸部を形成することが知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、吸着面に所定のパターンでマスキングした後、ブラスト加工を行い、複数の凹凸部を形成している。
【0006】
被処理部材(被吸着体)の表面を、所定のパターン形状の開口部を有するマスキング材でマスキングした後、そのマスキング材を介して、溶射材を溶射して、溶射膜をパターニングすることも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-264223号公報
【特許文献2】特開2007-201068号公報
【特許文献3】特開2017-177029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~特許文献3に記載されているように、溶射により、静電チャック装置の吸着面に、微細な凹凸を有する溶射膜を形成した場合、次のような課題があった。
溶射に使用できるセラミック粒子は、平均一次粒子径が数十μm以上の比較的大きなものに限られる。このため、溶射によって形成された凹凸は空隙が多くなり、プラズマ耐性が悪く、機械的強度も低いため、ドットが欠ける、表面が粗くシリコンウエハが傷付くといった課題があった。
溶射によって凹凸を形成する場合、セラミック粒子を何重にも重ねる必要があるため、時間が掛かるという課題があった。1回の溶射で作成できる膜厚は2μm~3μmであるため、高さ30μmの凸部を形成するためには、20回ほど溶射する必要があり、作業効率が悪かった。なお、溶射膜は、形成後に表面を研磨するため、目的とする厚さよりも厚く形成する必要がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、プラズマ耐性に優れ、かつ機械的強度が高い静電チャック装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]吸着面に複数の凸部を有する静電チャック装置であって、前記凸部がセラミック粒子と、金属酸化物と、を含有し、前記セラミック粒子間の少なくとも一部が前記金属酸化物を介して結着している、静電チャック装置。
[2]前記セラミック粒子が、アルミナ、マグネシア、イットリア、ジルコニア、シリカおよび酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載の静電チャック装置。
[3]前記セラミック粒子の平均一次粒子径が0.1μm以上50μm以下である、[1]または[2]に記載の静電チャック装置。
[4]前記金属酸化物が、有機金属化合物の熱処理によって有機成分が分解除去されると共に、前記有機金属化合物を構成する金属が酸化されることによって得られた金属酸化物である、[1]~[3]のいずれかに記載の静電チャック装置。
[5]前記有機金属化合物を構成する金属が、イットリウム、マグネシウムである、[4]に記載の静電チャック装置。
[6]被塗布物に、セラミック粒子および金属レジネートを含有する塗料を塗工して塗工膜を形成する工程と、前記塗工膜を加熱して、前記被塗布物上に凸部を形成する工程と、を有する、静電チャック装置の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プラズマ耐性に優れ、かつ機械的強度が高い静電チャック装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る静電チャック装置を示す概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る静電チャック装置を構成する凸部を示す概略断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る静電チャック装置を示す概略断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る静電チャック装置を示す概略断面図である。
図5】凸部形成用マスクシートを示す概略平面図である。
図6】実施例1の静電チャック装置における凸部の走査型電子顕微鏡像である。
図7】実施例1の静電チャック装置における凸部の走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る静電チャック装置の実施の形態について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、便宜上、特徴となる部分を拡大して示しており、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更できる。
【0014】
[静電チャック装置]
本発明の一実施形態に係る静電チャック装置は、吸着面に複数の凸部を有する静電チャック装置であって、凸部がセラミック粒子と、金属酸化物と、を含有し、セラミック粒子間の少なくとも一部が金属酸化物を介して結着している。
【0015】
図1および図2を参照しながら、本発明の一実施形態に係る静電チャック装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る静電チャック装置を示す概略断面図である。図2は、本実施形態に係る静電チャック装置を構成する凸部を示す概略断面図である。
図1に示す本実施形態の静電チャック装置10は、基台11と、電極12と、セラミック層13と、凸部14と、を備える。電極12は、基台11の一方の面(上面)11aに形成されている。セラミック層13は、基台11の一方の面11a上において、電極12を覆うように、すなわち、電極12の一方の面(上面)12aおよび側面12bを覆うように形成されている。凸部14は、セラミック層13の一方の面(上面)13aに形成されている。凸部14の一方の面(上面、表面)14aが静電チャック装置10の吸着面である。
【0016】
<基台>
基台11としては、特に限定されないが、例えば、セラミックス基台、炭化ケイ素基台、アルミニウムやステンレス等からなる金属基台等が挙げられる。
【0017】
<電極>
電極12としては、電圧を印加した際に静電吸着力を発現できる導電性物質からなるものであれば特に限定されない。電極12としては、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、白金、クロム、ニッケル、タングステン等の金属からなる薄膜、および前記金属の群から選択される少なくとも2種の金属からなる薄膜が好適に用いられる。このような金属の薄膜としては、例えば、蒸着、メッキ、スパッタリング等により成膜されたものや、導電性ペーストを塗布乾燥して成膜されたものが挙げられる。電極12の具体例としては、例えば、銅箔等の金属箔が挙げられる。
【0018】
電極12は、単一層からなる単極であってもよいし、2箇所以上に分割された双極であってもよい。電極12の電極パターンや形状は、特に限定されない。電極12の配置は、適宜設計することができる。
【0019】
電極12の厚さは、特に限定されない。電極12の厚さは、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上20μm以下であることがより好ましい。電極12の厚さが前記下限値以上であると、電極12を覆うようにセラミック層13を形成する際に、電極12の一方の面(上面)12aに凹凸が生じ難い。電極12の厚さが前記上限値以下であると、電極12と、他の層との接合強度が十分に得られる。
【0020】
<セラミック層>
セラミック層13は、セラミック焼結体やセラミック溶射体から構成される。
セラミック焼結体およびセラミック溶射体を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化インジウム、石英ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラス、窒化ジルコニウム、酸化チタン等が挙げられる。これらの材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
セラミック焼結体およびセラミック溶射体を構成する材料の平均一次粒子径は、1μm以上25μm以下であることが好ましい。前記の材料の平均一次粒子径が前記範囲内であると、セラミック焼結体およびセラミック溶射体の空隙を減少させ、セラミック焼結体およびセラミック溶射体の耐電圧を向上させることができる。
【0022】
セラミック焼結体およびセラミック溶射体を構成する材料の平均一次粒子径の測定は、レーザー回折・散乱法等で行うことができる。
【0023】
セラミック層13の厚さは、5μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。セラミック層13の厚さが5μm未満であると、十分なプラズマ耐性が得られない。セラミック層13の厚さが200μmを超えると、熱伝導や耐電圧が下がる。
【0024】
<凸部>
図2に示す凸部14は、複数のセラミック粒子21と複数の金属酸化物22とを含むセラミック組成物から構成される。本実施形態の静電チャック装置10では、セラミック粒子21間の少なくとも一部が金属酸化物22を介して結着している。すなわち、図2に示すように、凸部14に含まれる1つのセラミック粒子21(21A)が、金属酸化物22を介して他のセラミック粒子21(21B)と結着している。また、凸部14に含まれる1つのセラミック粒子21(21C)が、金属酸化物22(22A)を介して他のセラミック粒子21(21D)と結着するとともに、金属酸化物22(22B)を介して他のセラミック粒子21(21E)と結着している。同様に、1つのセラミック粒子21は、3つ以上の金属酸化物22と接し、それぞれの金属酸化物22を介して、3つの以上の他のセラミック粒子21と結合していてもよい。
【0025】
凸部14の高さ(セラミック層13の一方の面13aを基準とする高さ)は、10μm以上80μm以下であることが好ましく、25μm以上50μm以下であることがより好ましい。凸部14の高さの厚さが前記下限値以上であると、十分な耐プラズマ性および耐電圧性を示す。凸部14の高さが前記上限値以下であると、十分な吸着力が発生する。
【0026】
凸部14の表面(上面)14aの算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上0.5μm以下であることが好ましい。凸部14の表面14aの算術平均粗さ(Ra)が前記範囲内であると、被吸着体を良好に吸着することができる。凸部14の表面14aの算術平均粗さ(Ra)が大きくなると、被吸着体と凸部14との接触面積が小さくなるため、吸着力も小さくなる。
【0027】
凸部14の表面14aの算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601-1994に規定される方法に準拠して測定することができる。
【0028】
凸部14におけるセラミック粒子21と金属酸化物22との含有量の比率は、質量で、セラミック粒子21:金属酸化物22が80:20~98:2であることが好ましく、90:10~96:4であることがより好ましい。セラミック粒子21と金属酸化物22との含有量の比率が前記範囲内であると、セラミック粒子21間を金属酸化物22で良好に結着することができる。
【0029】
<セラミック粒子>
セラミック粒子21としては、特に限定されない。
セラミック粒子21の形状としては、例えば、球状、真球状、無定形、針状、繊維状、板状等が挙げられる。これらの形状のセラミック粒子21は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
セラミック粒子21の材質としては、例えば、酸化物系セラミックス、非酸化物系セラミックス、およびこれらの複合セラミックス等を主体として構成されるセラミック粒子等が挙げられる。
【0031】
酸化物系セラミックスとしては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム、Al)、ジルコニア(酸化ジルコニウム、ZrO)、イットリア(酸化イットリウム、Y)、タルク(含水珪酸マグネシウム、MgSi10(OH)10)、ヘマタイト(酸化鉄(III)、Fe)、クロミア(酸化クロム(III)、Cr)、チタニア(酸化チタン(IV)、TiO)、マグネシア(酸化マグネシウム、MgO)、シリカ(二酸化ケイ素、SiO)、カルシア(酸化カルシウム、CaO)、セリア(酸化セリウム(IV)、CeO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、ステアタイト(メタ珪酸マグネシウム、MgO・SiO)、コーディエライト(2MgO・2Al・5SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、フェライト(MnFe)、スピネル(MgAl)、ジルコン(ZrSiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、フォルステライト(MgSiO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)等が挙げられる。
酸化物系セラミックスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
非酸化物系セラミックスとしては、例えば、窒化物セラミックス、炭化物系セラミックス、硼化物系セラミックス、珪化物系セラミックス、リン酸化合物等が挙げられる。
窒化物セラミックスとしては、例えば、窒化ホウ素(BN)、窒化チタン(TiN)、窒化ケイ素(Si)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化炭素(CN)、サイアロン(Si-AlN-Al固溶体)等が挙げられる。
炭化物系セラミックスとしては、例えば、タングステンカーバイド(WC)、クロムカーバイド(CrC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化モリブデン(MoC)、炭化タンタル(TaC)、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ハフニウム(HfC)、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(BC)等が挙げられる。
硼化物系セラミックスとしては、例えば、ホウ化モリブデン(MoB)、ホウ化クロム(CrB)、ホウ化ハフニウム(HfB)、ホウ化ジルコニウム(ZrB)、ホウ化タンタル(TaB)、ホウ化チタン(TiB)等が挙げられる。
珪化物系セラミックスとしては、例えば、酸化ジルコニウムシリケート、酸化ハフニウムシリケート、酸化チタンシリケート、酸化ランタンシリケート、酸化イットリウムシリケート、酸化チタンシリケート、酸化タンタルシリケート、酸窒化タンタルシリケート等が挙げられる。
リン酸化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等が挙げられる。
非酸化物系セラミックスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
セラミック粒子21は、アルミナ、マグネシア、イットリア、ジルコニア、シリカおよび酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。セラミック粒子21が前記の群から選択される少なくとも1種の化合物であると、プラズマ耐性が向上する。
【0034】
セラミック粒子21の平均一次粒子径は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.1μm以上10μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上1μm以下であることがさらに好ましい。セラミック粒子21の平均一次粒子径が前記範囲内であると、凸部14の空隙が減少し、凸部14の耐電圧が向上する。
【0035】
セラミック粒子21の平均一次粒子径の測定は、レーザー回折・散乱法で行うことができる。
【0036】
凸部14におけるセラミック粒子21の含有量は、凸部14の全質量100質量%中、80質量%以上98質量%以下であることが好ましく、90質量%以上96質量%以下であることがより好ましい。セラミック粒子21の含有量が前記下限値未満であると、粘度が低くなりすぎてマスク印刷によるドット形成は難しくなりやすい。セラミック粒子21の含有量が前記上限値を超えると、セラミック粒子21間を結着しにくく、欠けが発生しやすい。
【0037】
<金属酸化物>
金属酸化物22は、有機金属化合物(Metal Orgnic Compound)の熱処理によって有機成分が分解除去されると共に、有機金属化合物を構成する金属が酸化されることによって得られた金属酸化物である。
金属酸化物22としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉛、ビスマス、ケイ素、クロム、コバルト、ニッケル、鉄、ホウ素、アンチモン、カドミウム、バナジウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、ジルコニウム、バリウム、ストロンチウム、イットリウム、ランタン等の酸化物が挙げられる。
金属酸化物22の具体例としては、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛等が挙げられる。
金属酸化物22は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
金属酸化物22は、イットリウムの酸化物、マグネシウムの酸化物であることが好ましい。すなわち、金属酸化物22は、イットリア(酸化イットリウム、Y)、マグネシア(酸化マグネシウム、MgO)であることが好ましい。金属酸化物22がイットリア(酸化イットリウム、Y)、マグネシア(酸化マグネシウム、MgO)であると、よりプラズマ耐性が向上する。
【0039】
凸部14における金属酸化物22の含有量は、凸部14の全質量100質量%中、2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、4質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。金属酸化物22の含有量が前記下限値未満であると、セラミック粒子21間の結着ができずに、凸部の強度が確保できにくくなる。金属酸化物22の含有量が前記上限値を超えると、ドットの形成は困難になりやすい。
【0040】
凸部14は、セラミック粒子21と金属酸化物22以外の成分を含んでいてもよい。セラミック粒子21と金属酸化物22以外の成分としては、例えば、樹脂等が挙げられる。樹脂を含むことで凸部強度が向上したり、耐電圧が向上したりする。
【0041】
本実施形態の静電チャック装置10によれば、プラズマ耐性に優れ、かつ機械的強度が高い静電チャック装置を提供することができる。
【0042】
[静電チャック装置の製造方法]
本実施形態の静電チャック装置の製造方法は、被塗布物に、セラミック粒子および金属レジネートを含有する塗料を塗工して塗工膜を形成する工程(以下、「塗工工程」と言う。)と、塗工膜を加熱して、被塗布物上に凸部を形成する工程(以下、「加熱工程」と言う。)と、を有する。
【0043】
以下、図1を参照して、本実施形態の静電チャック装置の製造方法を説明する。
【0044】
「塗料を調製する工程(塗料調製工程)」
本実施形態の静電チャック装置の製造方法は、セラミック粒子および金属レジネートを含有する塗料を調製する塗料調製工程を有していてもよい。
セラミック粒子としては、上記のものが用いられる。
【0045】
塗料におけるセラミック粒子の含有量は、塗料の全質量100質量%中、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、40質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。セラミック粒子の含有量が前記下限値未満であると、凸部強度が低くなり、凸部の欠けが発生し、パーティクル発生の原因となりやすい。セラミック粒子の含有量が前記上限値を超えると、塗料の粘度が高くなり、塗工が困難になりやすい。
【0046】
塗料における金属レジネートの含有量は、塗料の全質量100質量%中、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。金属レジネートの含有量が前記下限値未満であると、塗料の粘度が高くなり、塗工が困難になる。金属レジネートの含有量が前記上限値を超えると、凸部中にバルクが生じ、強度が下がる。これによって凸部の欠けが生じやすくなり、パーティクル発生の原因となる。
【0047】
塗料におけるセラミック粒子と金属レジネートの含有量の比率は、質量比で、セラミック粒子:金属レジネートが2:8~8:2であることが好ましく、4:6~6:4であることがより好ましい。セラミック粒子と金属レジネートの含有量の比率が前記範囲内であると、セラミック粒子間を金属酸化物で結着することができる。
【0048】
<金属レジネート>
金属レジネートは、有機金属化合物を含む液状物またはペースト状物である。金属レジネートは、熱処理することにより有機成分が酸化分解して除去されると共に、有機金属化合物を構成する金属が酸化されることによって、高純度の金属酸化物を生成するものである。得られた金属酸化物は、極めて薄い金属膜を形成している。金属レジネートを用いることにより、例えば、厚さが0.1μm以上0.6μm以下程度の金属膜が得られる。この金属膜が、セラミック粒子間の少なくとも一部を結着してセラミック膜を形成する。
【0049】
金属レジネートは、下記の金属成分のハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩または酸化物等と、カルボン酸、アビエチン酸の多核脂肪酸またはアビエチン酸を主成分とするガムロジン等とを反応させて合成したものである。カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、環式脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が用いられる。
【0050】
金属成分としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉛、ビスマス、ケイ素、クロム、コバルト、ニッケル、鉄、ホウ素、アンチモン、カドミウム、バナジウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、ジルコニウム、バリウム、ストロンチウム、イットリウム、ランタン等が挙げられる。
金属成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
<溶媒>
上記の塗料には、溶媒を混合することが好ましい。溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、炭化水素類、エーテル類等が挙げられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
エーテル類としては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0052】
<他の成分>
上記の塗料には、セラミック粒子、金属レジネート、溶媒以外の成分を含んでいてもよい。セラミック粒子、金属レジネート、溶媒以外の成分としては、例えば、分散剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0053】
塗料の調製方法としては、例えば、セラミック粒子、金属レジネートおよび溶媒を攪拌、混合する方法が挙げられる。混合方法としては、例えば、自転公転式攪拌機、ホモジナイザー、高圧ジェットミル、超音波等の攪拌機を用いた混合方法が用いられる。
【0054】
「電極を形成する工程(電極形成工程)」
本実施形態の静電チャック装置の製造方法は、基台11の一方の面(上面)11aに、電極12を形成する電極形成工程を有していてもよい。
電極形成工程では、基台11の一方の面11aに、銅等の金属を蒸着して、金属の薄膜(金属薄膜)を形成する。その後、エッチングを行って、金属の薄膜を所定の形状にパターニングして、電極12を形成する。
【0055】
「セラミック層を形成する工程(セラミック層形成工程)」
本実施形態の静電チャック装置の製造方法は、基台11の一方の面(上面)11a上において、電極12を覆うようにセラミック層13を形成するセラミック層形成工程を有していてもよい。
【0056】
セラミック層13がセラミック焼結体である場合、まず、基台11の一方の面(上面)11a上において、電極12を覆うように接着剤を塗工して接着層(図示略)を形成する。
次いで、接着層を介して、基台11の一方の面(上面)11a上において、電極12を覆うようにセラミック焼結体を積層する。
【0057】
セラミック層13がセラミック溶射体である場合、基台11の一方の面(上面)11a上において、電極12を覆うように、上記の材料を溶射してセラミック溶射体を形成する。溶射によりセラミック溶射体を形成する方法としては、プラズマ溶射法等が用いられる。
【0058】
「塗工工程」
塗工工程では、被塗布物であるセラミック層13の一方の面(上面)13aに、上記の塗料を塗工して塗工膜を形成する。詳細には、セラミック層13の一方の面(上面)13aに所定の凸部14の形状を有するマスキングシートを配置した状態で上記の塗料を塗工して塗工膜を形成する。
【0059】
被塗布物に対する塗料の塗工方法としては、例えば、スプレー、グラビアコーター、ロールコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター等の塗工装置を用いた塗工方法や、ディップ塗工、またオフセット印刷、スクリーン印刷等の印刷方法等が用いられる。
【0060】
塗工膜の厚さは、1μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。塗工膜の厚さが前記下限値以上であると、加熱工程を経て得られるセラミック膜が十分な耐プラズマ性および耐電圧性を示す。塗工膜の厚さが前記上限値以下であると、加熱工程を経て得られるセラミック膜が十分な吸着力を発生する。
【0061】
「加熱工程」
加熱工程では、塗工工程でセラミック層13に形成した塗工膜を加熱する。これにより、セラミック層13の一方の面(上面)13aに、上述のセラミック粒子と金属酸化物とを含有する凸部14が形成される。
【0062】
塗工膜の加熱方式としては、熱方式、プラズマ加熱、赤外線方式、ランプ方式等が挙げられる。これらの加熱方法に紫外線照射を加えることで、より低温で有機分を除去し、金属酸化膜をえることができる。
【0063】
塗工膜の加熱温度および加熱時間は、例えば、次のようにする。塗工膜を100℃以上150℃以下で1分間以上10分間以下加熱して乾燥し、塗工膜に含まれる溶媒を除去する。その後、塗工膜を500℃以上700℃以下で30分間以上2時間以下加熱することによって、セラミック膜を得る。紫外線照射によりレジネート中の有機物を分解しやすい状態にしておくことで、より低温(400℃以下)で加熱処理することもできる。
【0064】
なお、本実施形態では、セラミック層13の一方の面(上面)13a全面に、上記の塗料を塗工して塗工膜を形成した後、その塗工膜を加熱して得たセラミック膜を形成した後、凸部14の形状に合わせてマスキングし、マスキングされていない部分をブラスト処理することにより、凸部14を形成してもよい。
【0065】
また、本実施形態の静電チャック装置の製造方法では、加熱工程を経て得られた凸部の表面(セラミック層と接していない面)を研磨する研磨工程を有していてもよい。
研磨工程により、凸部14の表面14aを、上記の算術平均粗さ(Ra)の範囲内となるように研磨することにより、セラミック膜の吸着力を向上することができる。
【0066】
本実施形態のセラミック膜の製造方法によれば、プラズマ耐性に優れ、かつ機械的強度が高い静電チャック装置を提供することができる。
【0067】
<他の実施形態>
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
【0068】
例えば、図3に示すような第1の変形例に係る静電チャック装置100、図4に示すような第2の変形例に係る静電チャック装置200を採用してもよい。なお、変形例に係る静電チャック装置100,200では、前記実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0069】
[第1の変形例]
図3に示す第1の変形例に係る静電チャック装置100は、基台11と、電極12と、セラミック層13と、凸部14と、第1の接着層110と、絶縁性有機フィルム120と、第2の接着層130と、を備える。絶縁性有機フィルム120は、第1の接着層110を介して、基台11の一方の面(上面)11aに貼着されている。電極12は、絶縁性有機フィルム120の一方の面(上面)120aに形成されている。セラミック層13は、絶縁性有機フィルム120の一方の面(上面)120a上において、電極12を覆うように、すなわち、電極12の一方の面(上面)12aおよび側面12bを覆うように形成された第2の接着層130を介して、電極12上に形成されている。凸部14は、セラミック層13の一方の面(上面)13aに形成されている。
【0070】
<接着層>
第1の接着層110および第2の接着層130を構成する接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレン系ブロック共重合体、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、アミン化合物、ビスマレイミド化合物等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を主成分とする接着剤が挙げられる。
【0071】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジグリシジルジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジグリシジルビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能基または多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。また、エポキシ樹脂を主成分とする場合、接着剤には、必要に応じて、イミダゾール類、第3アミン類、フェノール類、ジシアンジアミド類、芳香族ジアミン類、有機過酸化物等のエポキシ樹脂用の硬化剤や硬化促進剤を配合することもできる。
【0072】
フェノール樹脂としては、例えば、アルキルフェノール樹脂、p-フェニルフェノール樹脂、ビスフェノールA型フェノール樹脂等のノボラックフェノール樹脂、レゾールフェノール樹脂、ポリフェニルパラフェノール樹脂等が挙げられる。
【0073】
スチレン系ブロック共重合体としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)等が挙げられる。
【0074】
第1の接着層110の厚さは、特に限定されない。第1の接着層110の厚さは、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることがより好ましい。第1の接着層110の厚さが前記下限値未満であると、耐電圧が低下しやすい。第1の接着層110の厚さが前記上限値を超えると、熱伝導が悪くなりやすい。
【0075】
第2の接着層130の厚さは、特に限定されない。第2の接着層130の厚さは、5μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。第1の接着層110の厚さが前記下限値未満であると、耐電圧が低下しやすい。第2の接着層130の厚さが前記上限値を超えると、熱伝導が悪くなりやすい。
【0076】
<絶縁性有機フィルム>
絶縁性有機フィルム120を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン等のポリオレフィン類、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、トリアセチルセルロース、シリコーンゴム、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらの中でも、絶縁性に優れることから、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ポリイミド、シリコーンゴム、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリテトラフルオロエチレンが好ましく、ポリイミドがより好ましい。ポリイミドフィルムとして、例えば、東レ・デュポン社製のカプトン(商品名)、宇部興産社製のユーピレックス(商品名)等が用いられる。
【0077】
絶縁性有機フィルム120の厚さは、特に限定されない。絶縁性有機フィルム120の厚さは、10μm以上100μm以下であることが好ましく、25μm以上50μm以下であることがより好ましい。絶縁性有機フィルム120の厚さが前記下限値以上であると、絶縁性を確保することができる。絶縁性有機フィルム120の厚さが前記上限値以下であると、電極12による十分な吸着力が発生する。
【0078】
第1の変形例の静電チャック装置100によれば、プラズマ耐性に優れ、かつ機械的強度が高い静電チャック装置を提供することができる。
【0079】
[第1の変形例の静電チャック装置の製造方法]
第1の変形例の静電チャック装置の製造方法は、基台の一方の面(上面)に、接着層を介して絶縁性有機フィルムを積層する工程(以下、「絶縁性有機フィルム積層工程」と言う。)と、絶縁性有機フィルムの一方の面(上面)に電極を形成する工程(電極形成工程)と、電極の一方の面(上面)に、接着層を介してセラミックス層を形成する工程(セラミック層形成工程)と、セラミックス層の一方の面(上面)に、上記の塗料を塗工して塗工膜を形成する工程(塗工工程)と、塗工膜を加熱する工程(加熱工程)と、を有する。
以下、図3を参照して、第1の変形例の静電チャック装置の製造方法を説明する。
【0080】
「塗料調製工程」
本実施形態の静電チャック装置の製造方法は、上述の実施形態の静電チャック装置の製造方法と同様に、セラミック粒子および金属レジネートを含有する塗料を調製する塗料調製工程を有していてもよい。
塗料としては、上述の実施形態の静電チャック装置の製造方法と同様のものが用いられる。
【0081】
「絶縁性有機フィルム積層工程」
絶縁性有機フィルム積層工程では、まず、基台11の一方の面(上面)11aに、上記の接着剤を塗工して第1の接着層110を形成する。
【0082】
基台11の一方の面(上面)11aに対する接着剤の塗工方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター等の塗工装置を用いた塗工方法や、オフセット印刷、スクリーン印刷等の印刷方法等が用いられる。
【0083】
次いで、第1の接着層110を介して、基台11の一方の面(上面)11aに絶縁性有機フィルム120を積層する。
その後、基台11、第1の接着層110および絶縁性有機フィルム120を含む積層体を所定の温度で所定の時間加熱するか、室温で所定の時間放置することにより、第1の接着層110を硬化させる。
【0084】
「電極形成工程」
電極形成工程では、基台11の一方の面(上面)11aに積層した絶縁性有機フィルム120の一方の面(上面)120aに、上述の実施形態の静電チャック装置の製造方法と同様にして、金属の薄膜(金属薄膜)を形成する。その後、エッチングを行って、金属の薄膜を所定の形状にパターニングして、電極12を形成する。
【0085】
「セラミック層形成工程」
セラミック層形成工程では、まず、絶縁性有機フィルム120の一方の面(上面)120a上において、電極12を覆うように、すなわち、電極12の一方の面(上面)12aおよび側面12bを覆うように、上記の接着剤を塗工して第2の接着層130を形成する。
【0086】
絶縁性有機フィルム120の一方の面(上面)120aおよび電極12に対する接着剤の塗工方法としては、上述の第1の接着層110の形成と同様の方法が用いられる。
【0087】
次いで、第2の接着層130を介して、絶縁性有機フィルム120の一方の面(上面)120aにセラミック層13を積層する。
その後、基台11、第1の接着層110、絶縁性有機フィルム120、電極12、第2の接着層130およびセラミック層13を含む積層体を所定の温度で所定の時間加熱するか、室温で所定の時間放置することにより、第2の接着層130を硬化させる。
【0088】
「塗工工程」
塗工工程では、上述の実施形態の静電チャック装置の製造方法と同様にして、セラミック層13の一方の面(上面)13aに、上記の塗料を塗工して塗工膜を形成する。
【0089】
「加熱工程」
加熱工程では、上述の実施形態の静電チャック装置の製造方法と同様にして、塗工工程でセラミック層13の一方の面(上面)13aに形成した塗工膜を加熱することによって、凸部14を得る。
【0090】
また、本実施形態の静電チャック装置の製造方法では、上述の実施形態のセラミック膜の製造方法と同様に、凸部14の表面14aを研磨する研磨工程を有していてもよい。
【0091】
第1の変形例の静電チャック装置の製造方法によれば、プラズマ耐性に優れ、かつ機械的強度が高い静電チャック装置を提供することができる。
【0092】
[第2の変形例]
図4に示す第2の変形例に係る静電チャック装置200は、基台11と、電極12と、セラミック層(第2のセラミック層)13と、凸部14と、接着層210と、第1のセラミック層220と、を備える。第1のセラミック層220は、接着層210を介して、基台11の一方の面(上面)11aに貼着されている。電極12は、第1のセラミック層220の一方の面(上面)220aに形成されている。第2のセラミック層13は、第1のセラミック層220の一方の面(上面)220a上において、電極12を覆うように、すなわち、電極12の一方の面(上面)12aおよび側面12bを覆うように形成されている。凸部14は、第2のセラミック層13の一方の面(上面)13aに形成されている。
【0093】
<接着層>
接着層210を構成する接着剤としては、上述の第1の変形例の静電チャック装置100における第1の接着層110および第2の接着層130を構成する接着剤と同様のものが用いられる。
【0094】
<第1のセラミック層>
第1のセラミック層220は、セラミック層13と同様にセラミック焼結体やセラミック溶射体から構成される。
【0095】
第2の変形例の静電チャック装置200によれば、プラズマ耐性に優れ、かつ機械的強度が高い静電チャック装置を提供することができる。
【0096】
[第2の変形例の静電チャック装置の製造方法]
第2の変形例の静電チャック装置の製造方法は、基台の一方の面(上面)に、接着層を介して第1のセラミック層を形成する工程(以下、「第1のセラミック層形成工程」と言う。)と、第1のセラミック層の一方の面(上面)に電極を形成する工程(電極形成工程)と、電極の一方の面(上面)にセラミック層(第2のセラミック層)を形成する工程(以下、「第2のセラミック層形成工程」と言う。)と、第2のセラミック層の一方の面(上面)上において、塗料を塗工して塗工膜を形成する工程(塗工工程)と、塗工膜を加熱する工程(加熱工程)と、を有する。
以下、図4を参照して、第1の変形例の静電チャック装置の製造方法を説明する。
【0097】
「塗料調製工程」
本実施形態の静電チャック装置の製造方法は、上述の実施形態の静電チャック装置の製造方法と同様に、セラミック粒子および金属レジネートを含有する塗料を調製する塗料調製工程を有していてもよい。
塗料としては、上述の実施形態の静電チャック装置の製造方法と同様のものが用いられる。
【0098】
「第1のセラミック層形成工程」
第1のセラミック層形成工程では、まず、基台11の一方の面(上面)11aに、第2の接着層130の形成方法と同様にして、上述の第1の接着層110および上記の接着剤を塗工して接着層210を形成する。
【0099】
次いで、接着層210を介して、基台11の一方の面(上面)11aに第1のセラミック層220を積層する。
その後、基台11、接着層210および第1のセラミック層220を含む積層体を所定の温度で所定の時間加熱するか、室温で所定の時間放置することにより、接着層210を硬化させる。
【0100】
「電極形成工程」
電極形成工程では、基台11の一方の面(上面)11aに積層した第1のセラミック層220の一方の面(上面)220aに、上述の実施形態の静電チャック装置の製造方法と同様にして、金属の薄膜(金属薄膜)を形成する。その後、エッチングを行って、金属の薄膜を所定の形状にパターニングして、電極12を形成する。
【0101】
「第2のセラミック層形成工程」
第2のセラミック層形成工程では、第1のセラミック層220の一方の面(上面)220a上において、電極12を覆うように、すなわち、電極12の一方の面(上面)12aおよび側面12bを覆うように形成される。
【0102】
「塗工工程」
塗工工程では、上述の実施形態の静電チャック装置の製造方法と同様にして、第2のセラミック層13の一方の面(上面)13a上に、上記の塗料を塗工して塗工膜を形成する。
【0103】
「加熱工程」
加熱工程では、上述の実施形態の静電チャック装置の製造方法と同様にして、塗工工程で第2のセラミック層13の一方の面(上面)13aに形成した塗工膜を加熱することによって、凸部14を得る。
【0104】
また、本実施形態の静電チャック装置の製造方法では、上述の実施形態のセラミック膜の製造方法と同様に、凸部14の表面14aを研磨する研磨工程を有していてもよい。
【0105】
第2の変形例の静電チャック装置の製造方法によれば、プラズマ耐性に優れ、かつ機械的強度が高い静電チャック装置を提供することができる。
【実施例0106】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0107】
[実施例1]
「凸部形成用の塗料の調製」
平均一次粒子径が0.3μmの球形アルミナ粒子(デンカ社製、Al)6質量部に、ラウリン酸イットリウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を4質量部添加して、自転公転式攪拌機(写真化学社製、商品名:カクハンター)で混合し、凸部形成用の塗料を得た。
【0108】
「静電チャック装置の作製」
図3に示す第1の変形例と同様の構成を有する静電チャック装置を作製した。
厚さ12μmのポリイミド樹脂シートの一方の面にメッキを施し、厚さ9μmの銅箔を形成した。その銅箔表面にフォトレジストを塗布した後、パターン露光後に現像処理を行い、エッチングにより不要な銅箔を除去した。
その後、ポリイミド樹脂シート上の銅箔を洗浄することにより、フォトレジストを除去し、電極を形成し、ポリイミド樹脂シートと銅箔から構成される積層体を得た。なお、この電極は、幅5mmの導電性部分と幅5mmの絶縁性部分とが交互に配置された櫛形形状を2つ有する、櫛形形状電極である。
上記の積層体における電極が形成された面とは反対側の面に、接着層(厚さ20μm)として乾燥および加熱により半硬化させた絶縁性接着剤シートを積層した。絶縁性接着剤シートとしては、ビスマレイミド樹脂27質量部、ジアミノシロキサン3質量部、レゾールフェノール樹脂20質量部、ビフェニルエポキシ樹脂10質量部、およびエチルアクリレート-ブチルアクリレート-アクリロニトリル共重合体240質量部を、適量のテトラヒドロフランに混合溶解したものをシート状に成形したものを用いた。
その後、絶縁性接着剤シートをアルミニウムからなる基台の一方の面に貼着し、熱処理により接着させた。
次に、上記の積層体における電極が形成された面に、上記と同様の半硬化させた絶縁性接着剤シートを積層し、さらにその絶縁性接着剤シートの表面にセラミック焼結体(厚さ100μm)を接合し、熱処理により接着させた。
次に、図5に示すような多数の貫通孔310を有するマスクシート(耐熱性を有する不織布)300をセラミック焼結体表面に重ねた後、上記の凸部形成用塗料をマスクシートに塗工し、大気中で乾燥して溶媒を除去した。その後、恒温槽内にて500℃で2時間加熱処理を行い、マスクシートを剥がし、#200のナノダイヤポリイミド研磨シートで凸部の表面を研磨し、凸部を複数有する静電チャック装置を得た。該静電チャック装置におけるナノダイヤポリイミド研磨シートで凸部の表面を研磨した後の凸部は、欠けなどの発生はなく、セラミック粒子間が金属酸化物を介して強固に結着していることを確認できた。
【0109】
[実施例2]
凸部形成用の塗料として、平均一次粒子径が0.3μmの球形アルミナ粒子(デンカ社製、Al)4質量部に、ラウリン酸イットリウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を6質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の静電チャック装置を作製した。該静電チャック装置におけるナノダイヤポリイミド研磨シートで凸部の表面を研磨した後の凸部は、欠けなどの発生はなく、セラミック粒子間が金属酸化物を介して強固に結着していることを確認できた。
【0110】
[実施例3]
凸部形成用の塗料として、平均一次粒子径が0.3μmの球形アルミナ粒子(デンカ社製、Al)2質量部に、ラウリン酸イットリウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を8質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の静電チャック装置を作製した。該静電チャック装置におけるナノダイヤポリイミド研磨シートで凸部の表面を研磨した後の凸部は、欠けなどの発生はなく、セラミック粒子間が金属酸化物を介して強固に結着していることを確認できた。
【0111】
[実施例4]
凸部形成用の塗料として、平均一次粒子径が0.3μmの球形アルミナ粒子(デンカ社製、Al)8質量部に、ラウリン酸イットリウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を2質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の静電チャック装置を作製した。該静電チャック装置におけるナノダイヤポリイミド研磨シートで凸部の表面を研磨した後の凸部は、欠けなどの発生はなく、セラミック粒子間が金属酸化物を介して強固に結着していることを確認できた。
【0112】
[実施例5]
凸部形成用の塗料として、平均一次粒子径が0.1μmの球形アルミナ粒子(デンカ社製、Al)6質量部に、ラウリン酸イットリウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を4質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の静電チャック装置を作製した。該静電チャック装置におけるナノダイヤポリイミド研磨シートで凸部の表面を研磨した後の凸部は、欠けなどの発生はなく、セラミック粒子間が金属酸化物を介して強固に結着していることを確認できた。
【0113】
[実施例6]
凸部形成用の塗料として、平均一次粒子径が50μmの球形アルミナ粒子(デンカ社製、Al)6質量部に、ラウリン酸イットリウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を4質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例6の静電チャック装置を作製した。該静電チャック装置におけるナノダイヤポリイミド研磨シートで凸部の表面を研磨した後の凸部は、欠けなどの発生はなく、セラミック粒子間が金属酸化物を介して強固に結着していることを確認できた。
【0114】
[比較例1]
凸部形成用の塗料として、平均一次粒子径が0.3μmの球形アルミナ粒子(デンカ社製、Al)6質量部の代わりに、平均一次粒子径が0.05μmの球形アルミナ粒子(デンカ社製、Al)6質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の静電チャック装置を作製した。
【0115】
[比較例2]
凸部形成用の塗料として、平均一次粒子径が0.3μmの球形アルミナ粒子(デンカ社製、Al)6質量部の代わりに、平均一次粒子径が100μmの球形アルミナ粒子(デンカ社製、Al)6質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の静電チャック装置を作製した。
【0116】
[比較例3]
凸部形成用の塗料として、平均一次粒子径が0.3μmの球形アルミナ粒子(デンカ社製、Al)1質量部に、ラウリン酸イットリウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を9質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして静電チャック装置を作製しようとした。しかしながら、凸部の形状を正常に形成できなかった。
【0117】
[比較例4]
凸部形成用の塗料として、平均一次粒子径が0.3μmの球形アルミナ粒子(デンカ社製、Al)9質量部に、ラウリン酸イットリウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を1質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして静電チャック装置を作製した。しかしながら、作製された静電チャック装置の凸部は、アルミナ粒子間の結着が弱く、手で擦ると凸部の一部が剥がれるという問題を有していた。
【0118】
[実施例7]
凸部形成用の塗料として、ラウリン酸イットリウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を4質量部の代わりに、ステアリン酸マグネシウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を4質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の静電チャック装置を作製した。該静電チャック装置におけるナノダイヤポリイミド研磨シートで凸部の表面を研磨した後の凸部は、欠けなどの発生はなく、セラミック粒子間が金属酸化物を介して強固に結着していることを確認できた。
【0119】
[実施例8]
凸部形成用の塗料として、ラウリン酸イットリウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を4質量部の代わりに、ステアリン酸ニッケルのトルエン溶液(固形分10質量%)を4質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例8の静電チャック装置を作製した。該静電チャック装置におけるナノダイヤポリイミド研磨シートで凸部の表面を研磨した後の凸部は、欠けなどの発生はなく、セラミック粒子間が金属酸化物を介して強固に結着していることを確認できた。
【0120】
[実施例9]
凸部形成用の塗料として、平均一次粒子径が0.3μmの球形マグネシア粒子(デンカ社製、MgO)6質量部に、ラウリン酸イットリウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を4質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例9の静電チャック装置を作製した。該静電チャック装置におけるナノダイヤポリイミド研磨シートで凸部の表面を研磨した後の凸部は、欠けなどの発生はなく、セラミック粒子間が金属酸化物を介して強固に結着していることを確認できた。
【0121】
[実施例10]
凸部形成用の塗料として、平均一次粒子径が0.3μmの球形マグネシア粒子(デンカ社製、MgO)4質量部に、ラウリン酸イットリウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を6質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例10の静電チャック装置を作製した。該静電チャック装置におけるナノダイヤポリイミド研磨シートで凸部の表面を研磨した後の凸部は、欠けなどの発生はなく、セラミック粒子間が金属酸化物を介して強固に結着していることを確認できた。
【0122】
[比較例5]
凸部形成用の塗料として、平均一次粒子径が100μmの球形マグネシア粒子(デンカ社製、MgO)6質量部に、ラウリン酸イットリウムのトルエン溶液(固形分10質量%)を4質量部添加したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例5の静電チャック装置を作製した。
【0123】
[セラミック膜の確認]
実施例1~実施例10における各静電チャック装置の表面に形成されたセラミック膜を、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で撮像し、各粒子の状態を確認した。その結果、実施例1~実施例10における各静電チャック装置の表面に形成されたセラミック膜は、セラミック粒子間の少なくとも一部が金属酸化物を介して結着していることが確認された。
実施例1におけるセラミック膜の走査型電子顕微鏡像を図6および図7に示した。図6および図7に示したように、セラミック粒子間の少なくとも一部が金属酸化物を介して結着している。
【0124】
[評価]
実施例1~実施例10および比較例1~比較例5にて得られた静電チャック装置を用いて、耐電圧性の試験を行った。結果を表1~表3に示す。
【0125】
「耐電圧性」
静電チャック装置の吸着面(セラミック膜面)に銅箔を載置し、この銅箔と基台をアースした。
次に、櫛形形状電極の両端に設けられた端子間に電圧を印加し、次いで、印加する電圧差(端子間の電圧差)を徐々に上げていき、絶縁破壊を起こした時点での印加電圧差を記録した。
絶縁破壊時の印加電圧差から、下記の電気特性の判定基準により耐電圧性を評価した。
印加電圧差が20kV以上である場合「○」、印加電圧差が10kV以上20kV未満である場合「△」、印加電圧差が10kV未満である場合「×」と評価した。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
表1~表3に示すように、実施例1~実施例10の静電チャック装置は、十分な耐電圧性を有していた。
一方、比較例1~比較例5は、十分な耐電圧性を有していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の静電チャック装置は、吸着面に複数の凸部を有する静電チャック装置であって、凸部がセラミック粒子と、金属酸化物と、を含有し、セラミック粒子間の少なくとも一部が金属酸化物を介して結着している。セラミック粒子間の隙間を埋めることができるため、耐電圧が高く、機械的強度も高い。
また、凸部を塗工により作製するため、溶射に比べて、工期を短縮できる、セラミック粒子径を任意に決定できるといった利点がある。
【符号の説明】
【0131】
10 静電チャック装置
11 基台
12 電極
13 セラミック層
14 凸部
21 セラミック粒子
22 金属酸化物
100,200 静電チャック装置
110 第1の接着層
120 絶縁性有機フィルム
130 第2の接着層
210 接着層
220 第1のセラミック層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7