(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142434
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】真空バルブ
(51)【国際特許分類】
H01H 33/662 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
H01H33/662 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042596
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 禎弥
【テーマコード(参考)】
5G026
【Fターム(参考)】
5G026EA04
5G026EB05
(57)【要約】
【課題】絶縁筒とフランジとの接合部分における残留応力を抑制する真空バルブを提供する。
【解決手段】端部を有する絶縁筒と前記端部に固定される筒部と、前記筒部の前記端部と反対側に設けられる蓋部とを有するフランジと、前記筒部の内面又は外面の少なくとも一方に設けられる金属製の補強部と、を備え、前記補強部の熱膨張率と前記絶縁筒の熱膨張率との差は、前記フランジの熱膨張率と前記絶縁筒の熱膨張率との差より小さい真空バルブ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部を有する絶縁筒と、
前記端部に固定される筒部と、前記筒部の前記端部と反対側に設けられる蓋部と、を有するフランジと、
前記筒部の内面又は外面の少なくとも一方に設けられる金属により形成される補強部と、
を備え、
前記補強部の熱膨張率と前記絶縁筒の熱膨張率との差は、前記フランジの熱膨張率と前記絶縁筒の熱膨張率との差より小さい、
真空バルブ。
【請求項2】
前記補強部は、前記筒部の周方向に沿って設けられるリング状である、
請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項3】
前記補強部は、前記筒部及び前記蓋部に設けられる、
請求項1に記載の真空バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
遮断器又は電磁接触器には、真空容器内に接点が接離可能に取り付けられ、経路の開閉を行う真空バルブが使用される。
【0003】
特許文献1には、アルミナセラミック等の絶縁物を材質とする円筒状の絶縁筒に、ステンレス鋼等の金属を材質とする固定側フランジと可動側フランジが取り付けられた真空バルブが開示されている。
【0004】
特許文献2には、真空絶縁容器の開口部に可動側封着金具が封着され、外周をエポキシ樹脂でモールドしたエポキシ樹脂絶縁真空バルブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-095905号公報
【特許文献2】特開2017-021939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
真空バルブを製造する際に、アルミナセラミック等の絶縁筒に、金属製のフランジを真空ろう付け等で接合する。絶縁筒に、フランジを真空ろう付け等で接合するときに、絶縁筒とフランジの熱膨張差により残留応力が発生する場合がある。
【0007】
本開示は、絶縁筒とフランジとの接合部分における残留応力を抑制する真空バルブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一の態様によれば、端部を有する絶縁筒と、前記端部に固定される筒部と、前記筒部の前記端部と反対側に設けられる蓋部と、を有するフランジと、前記筒部の内面又は外面の少なくとも一方に設けられる金属により形成される補強部と、を備え、前記補強部の熱膨張率と前記絶縁筒の熱膨張率との差は、前記フランジの熱膨張率と前記絶縁筒の熱膨張率との差より小さい真空バルブを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の真空バルブによれば、絶縁筒とフランジとの接合部分における残留応力を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る真空バルブの断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る真空バルブの部分断面図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る真空バルブの断面図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る真空バルブの部分断面図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る真空バルブの断面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る真空バルブの部分断面図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態に係る真空バルブの断面図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態に係る真空バルブの部分断面図である。
【
図9】
図9は、第5実施形態に係る真空バルブの断面図である。
【
図10】
図10は、第5実施形態に係る真空バルブの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の又は対応する機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
また、理解を容易にするため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られない。例えば、角部の形状は、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0013】
≪第1実施形態≫
<真空バルブ1>
図1は、第1実施形態に係る真空バルブ1の断面図である。
図2は、第1実施形態に係る真空バルブ1の部分断面図である。具体的には、
図2は、
図1のAにおける部分断面図である。なお、本開示では、固定側フランジと可動側フランジとでは、補強部については同様の形状であることから、固定側フランジ側を拡大して説明する。
【0014】
第1実施形態に係る真空バルブ1は、真空絶縁容器2と、固定側フランジ3と、可動側フランジ4と、を備える。真空絶縁容器2は、第1端部2a及び第2端部2bを有する筒状の形状を有する。
【0015】
固定側フランジ3は、筒部3aと、蓋部3bと、を備える。固定側フランジ3の筒部3aは、真空絶縁容器2の第1端部2aに取り付けられる。固定側フランジ3の蓋部3bは、筒部3aの真空絶縁容器2の第1端部2aと反対側に設けられる。
【0016】
可動側フランジ4は、筒部4aと、蓋部4bと、を備える。可動側フランジ4の筒部4aは、真空絶縁容器2の第2端部2bに取り付けられる。可動側フランジ4の蓋部4bは、筒部4aの真空絶縁容器2の第2端部2bと反対側に設けられる。
【0017】
また、真空バルブ1は、固定側通電軸5と、可動側通電軸7と、を備える。固定側通電軸5は、固定側フランジ3を貫通して固定される。可動側通電軸7は、可動側フランジ4に形成された軸穴4hを移動自在に貫通する。
【0018】
固定側通電軸5は、真空絶縁容器2の内部の固定側通電軸5の端部に、固定側接点6を有する。可動側通電軸7は、真空絶縁容器2の内部の可動側通電軸7の端部に、可動側接点8を有する。
【0019】
真空バルブ1は、真空絶縁容器2の内の可動側通電軸7側に、筒状のベローズ9を有する。ベローズ9の一方の端は、可動側通電軸7のベローズ抑え10に固定される。ベローズ9の他方の端は、可動側フランジ4の軸穴4hの周縁に固定されている。ベローズ9が装着されることで、真空絶縁容器2の内部の密閉性が確保される。
【0020】
可動側通電軸7には、真空バルブ1の開閉動作を行うバルブ操作部(不図示)が連結される。
【0021】
第1実施形態に係る真空バルブ1は、固定側フランジ3の筒部3aの内側に補強部31を備える。補強部31は、固定側フランジ3の筒部3aの内側に沿って全周に設けられる。補強部31は、筒部3aの周方向に沿って設けられるリング状の形状を有する。補強部31は、固定側フランジ3の筒部3aの内側にろう付け等により固定される。
【0022】
また、第1実施形態に係る真空バルブ1は、可動側フランジ4の筒部4aの内側に補強部41を備える。補強部41は、可動側フランジ4の筒部4aの内側に沿って全周に設けられる。補強部41は、筒部4aの周方向に沿って設けられるリング状の形状を有する。補強部41は、可動側フランジ4の筒部4aの内側にろう付け等により固定される。
【0023】
比較のために、参考例の真空バルブ1zを示す。
図11は、参考例の真空バルブ1zの断面図である。
図12は、参考例に係る真空バルブ1zの部分断面図である。具体的には、
図12は、
図11のZにおける部分断面図である。
【0024】
固定側フランジ3及び可動側フランジ4は、金属、例えば、ステンレス鋼又は銅により形成される。真空絶縁容器2は、絶縁体、例えば、アルミナセラミックにより形成される。固定側フランジ3を真空絶縁容器2に接合する際には、第1端部2aをメタライズして、第1端部2aに固定側フランジ3の筒部3aをろう付けする。同様に、可動側フランジ4を真空絶縁容器2に接合する際には、第2端部2bをメタライズして、第2端部2bに可動側フランジ4の筒部4aをろう付けする。
【0025】
真空絶縁容器2と、固定側フランジ3及び可動側フランジ4のそれぞれとは、熱膨張率が異なる。したがって、ろう付けの際に真空絶縁容器2と、固定側フランジ3及び可動側フランジ4を加熱すると、真空絶縁容器2と、固定側フランジ3及び可動側フランジ4のそれぞれとの間に位置ずれが発生し、接合作業が困難になる。
【0026】
また、固定側フランジ3及び可動側フランジ4のそれぞれを真空絶縁容器2にろう付けして接合後冷却すると、接合部分に残留応力が発生する。固定側フランジ3及び可動側フランジ4のそれぞれと、真空絶縁容器2との間の接合部分に残留応力があると、真空絶縁容器2の破損が発生し、真空絶縁容器2の破損によるリークが発生する可能性がある。
【0027】
第1実施形態に係る真空バルブ1は、固定側フランジ3の筒部3aの内側に補強部31と、可動側フランジ4の筒部4aの内側に補強部41と、を備える。補強部31及び補強部41のそれぞれは、熱膨張率が低い金属、例えば、Fe-42Ni材が用いられる。すなわち、補強部31及び補強部41の熱膨張率と真空絶縁容器2の熱膨張率との差は、それぞれ固定側フランジ3及び可動側フランジ4と真空絶縁容器2の熱膨張率との差より小さい。
【0028】
補強部31及び補強部41の熱膨張率は、真空絶縁容器2の熱膨張率にできるだけ近いことが望ましい。
【0029】
固定側フランジ3の筒部3aの内側に補強部31を備えることにより、固定側フランジ3を真空絶縁容器2に接合する際に、固定側フランジ3が熱で変形することを抑えることができる。また、可動側フランジ4の筒部4aの内側に補強部41を備えることにより、可動側フランジ4を真空絶縁容器2に接合する際に、可動側フランジ4が熱で変形することを抑えることができる。
【0030】
第1実施形態に係る真空バルブ1により、固定側フランジ3及び可動側フランジ4のそれぞれについて、ろう付けの際に径方向の熱による熱膨張を抑制し、接合部の残留応力を緩和できる。更に、ろう付けの際の熱膨張を抑えることにより、固定側フランジ3及び可動側フランジ4に安価な材料を適用できる。
【0031】
なお、真空絶縁容器2は絶縁筒の一例である。固定側フランジ3はフランジの一例、筒部3aは筒部の一例、蓋部3bは蓋部の一例、補強部31は補強部の一例、である。可動側フランジ4はフランジの一例、筒部4aは筒部の一例、蓋部4bは蓋部の一例、補強部41は補強部の一例である。
【0032】
なお、補強部31及び補強部41は、ろう付け等により固定されるとしたが、固定手段はこれに限らず、例えば、溶接や接着によって固定されてもよい。
【0033】
≪第2実施形態≫
<真空バルブ101>
図3は、第2実施形態に係る真空バルブ101の断面図である。
図4は、第2実施形態に係る真空バルブ101の部分断面図である。具体的には、
図4は、
図3のBにおける部分断面図である。以下、第1実施形態に係る真空バルブ1と異なる点について説明する。
【0034】
第1実施形態に係る真空バルブ1の補強部31及び補強部41は、それぞれ固定側フランジ3の筒部3aの内面及び可動側フランジ4の筒部4aの内面に設けられていたが、補強部の場所は、筒部3a及び筒部4aの内面に限らない。第2実施形態に係る真空バルブ101は、補強部131及び補強部141を蓋部の内面にも設ける。
【0035】
補強部131は、固定側フランジ103の筒部103a及び蓋部103bの内面に設けられる。また、補強部141は、可動側フランジ104の筒部104a及び蓋部104bの内面に設けられる。
【0036】
第2実施形態に係る真空バルブ101は、第1実施形態に係る真空バルブの効果に加えて、補強部131及び補強部141をそれぞれ蓋部の内面に設けることにより、フランジを強度的に補強して蓋部(蓋部103b及び蓋部104b)の厚さを薄くできる。
【0037】
≪第3実施形態≫
<真空バルブ201>
図5は、第3実施形態に係る真空バルブ201の断面図である。
図6は、第3実施形態に係る真空バルブ201の部分断面図である。具体的には、
図6は、
図5のCにおける部分断面図である。以下、第1実施形態の真空バルブ1と異なる点について説明する。
【0038】
第1実施形態に係る真空バルブ1の補強部31及び補強部41は、それぞれ固定側フランジ3の筒部3aの内面の全周及び可動側フランジ4の筒部4aの内面の全周に設けられていたが、補強部の場所は、筒部3a及び筒部4aの内面の全周に限らない。第3実施形態に係る真空バルブ201は、補強部231及び補強部241を筒部の内面に分割して設ける。
【0039】
補強部231は、固定側フランジ3の筒部3aの内面に分割して設けられる。例えば、補強部231は、固定側フランジ3の筒部3aの内面を三分割して設けられる。また、補強部241は、可動側フランジ4の筒部4aの内面に分割して設けられる。補強部241は、可動側フランジ4の筒部4aの内面を三分割して設けられる。
【0040】
≪第4実施形態≫
<真空バルブ301>
図7は、第4実施形態に係る真空バルブ301の断面図である。
図8は、第4実施形態に係る真空バルブ301の部分断面図である。具体的には、
図8は、
図7のDにおける部分断面図である。以下、第1実施形態に係る真空バルブ1と異なる点について説明する。
【0041】
第1実施形態に係る真空バルブ1の補強部31及び補強部41は、それぞれ固定側フランジ3の筒部3aの内面及び可動側フランジ4の筒部4aの内面に設けられていたが、補強部の場所は、筒部3a及び筒部4aの内面に限らない。第4実施形態に係る真空バルブ301は、補強部331及び補強部341を筒部の外面に設ける。
【0042】
第4実施形態に係る真空バルブ301は、固定側フランジ3の筒部3aの外側に補強部331を備える。補強部331は、固定側フランジ3の筒部3aの外側に沿って全周に設けられる。補強部331は、筒部3aの周方向に沿って設けられるリング状の形状を有する。また、第3実施形態に係る真空バルブ301は、可動側フランジ4の筒部4aの外側に補強部341を備える。補強部341は、可動側フランジ4の筒部4aの外側に沿って全周に設けられる。補強部341は、筒部4aの周方向に沿って設けられるリング状の形状を有する。
【0043】
≪第5実施形態≫
<真空バルブ401>
図9は、第5実施形態に係る真空バルブ401の断面図である。
図10は、第5実施形態に係る真空バルブ401の部分断面図である。具体的には、
図10は、
図9のEにおける部分断面図である。以下、第4実施形態に係る真空バルブ301と異なる点について説明する。
【0044】
第4実施形態に係る真空バルブ301の補強部331及び補強部341は、それぞれ固定側フランジ3の筒部3aの外面及び可動側フランジ4の筒部4aの外面に設けられていたが、補強部の場所は、筒部3a及び筒部4aの外面に限らない。第5実施形態に係る真空バルブ401は、補強部431及び補強部441を蓋部の外面にも設ける。
【0045】
補強部431は、固定側フランジ103の筒部103a及び蓋部103bの外面に設けられる。また、補強部441は、可動側フランジ104の筒部104a及び蓋部104bの外面に設けられる。
【0046】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1、101、201、301、401 真空バルブ
2 真空絶縁容器
2a 第1端部
2b 第2端部
3、103 固定側フランジ
3a、103a 筒部
3b、103b 蓋部
4、104 可動側フランジ
4a、104a 筒部
4b、104b 蓋部
31、131、231、331、431 補強部
41、141、241、341、441 補強部