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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142439
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】画像データ処理装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/205 20060101AFI20220922BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220922BHJP
   H04N 1/405 20060101ALI20220922BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B41J2/205
B41J2/01 201
H04N1/405 510
G06T1/00 500A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042601
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】稲川 博敬
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
5B057
5C077
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB07
2C056EC72
2C056EC79
2C056ED05
2C057AF21
2C057CA05
5B057AA11
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB07
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE13
5B057CH18
5C077LL19
5C077NN08
5C077NN19
5C077PP33
5C077PQ08
5C077RR09
5C077TT05
(57)【要約】
【課題】画像中のシャドー部分における画像の再現性の良さと、ハイライト部分における画質の良さとの両立を図る。
【解決手段】第1の画像処理部94は、閾値マトリクスMの値が小さな順にマトリクスM上の全画素が埋まるまで1つの出力画素値を配置する操作を、出力画素値を1段階ずつ上げて繰り返し実行して出力濃度を上げていく画像処理を行う。第2の画像処理部95は、閾値マトリクスMの1要素に対して出力画素値を最大出力値になるまで1段階ずつ大きくしていく操作を、閾値マトリクスMの値が小さな画素の順に繰り返し実行して出力濃度を上げていく画像処理を行う。注目画素がハイライト側の領域と判断部96が判断した入力画像データiは、制御部97が第1の画像処理部94にハーフトーン処理を実施させ、注目画素がシャドー側の領域と判断部96が判断した入力画像データiは、制御部97が第2の画像処理部95にハーフトーン処理を実施させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データに対し閾値マトリクスを用いてハーフトーン処理を行う画像データ処理装置であって、
前記閾値マトリクスの値が小さな順にマトリクス上の全画素が埋まるまで1つの出力画素値を配置する操作を、出力画素値を1段階ずつ上げて繰り返し実行して出力濃度を上げていく画像処理を行う第1の画像処理部と、
前記閾値マトリクスの1要素に対して出力画素値を最大出力値になるまで1段階ずつ大きくしていく操作を、前記閾値マトリクスの値が小さな画素の順に繰り返し実行して出力濃度を上げていく画像処理を行う第2の画像処理部と、
入力画像データの注目画素の画素値と所定の閾値の比較結果に基づき、前記注目画素がハイライト側の領域もしくはシャドー側の領域か判断する判断部と、
前記注目画素が前記ハイライト側の領域である前記入力画像データは前記第1の画像処理部にハーフトーン処理を実施させ、前記注目画素が前記シャドー側の領域である前記入力画像データは前記第2の画像処理部にハーフトーン処理を実施させる制御部と、
を備える画像データ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続調画像を白黒二値の画像データで表わすハーフトーン処理の方法としてディザ法が知られている。特許文献1には、ディザ法により二値化した画像データについて、画像中の濃度が低いハイライト部分における再現性の向上とモアレ縞の発生防止とを図る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-257893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
元々、ディザ法には、二値化後の画像データにおける白点が、ドットゲインにより潰れて設定した大きさよりも小さくなり、画像中の濃度が高いシャドー部分における階調の再現性が低くなるという課題がある。
【0005】
また、特許文献1の技術では、画像中の濃度が低いハイライト部分における画質の低下を避けるために、マトリクス内の特定の部分(特定のパス、特定の画素等)を集中的に成長させる閾値配列のディザマトリクスをハイライト部分の二値化に用いる。このため、特許文献1の技術では、画像中のハイライト部分において、ドットゲインにより階調の再現性が低下してしまう。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、画像中のシャドー部分における画像の再現性の良さと、ハイライト部分における画質の良さとの両立を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様による画像データ処理装置は、
入力画像データに対し閾値マトリクスを用いてハーフトーン処理を行う画像データ処理装置であって、
前記閾値マトリクスの値が小さな順にマトリクス上の全画素が埋まるまで1つの出力画素値を配置する操作を、出力画素値を1段階ずつ上げて繰り返し実行して出力濃度を上げていく画像処理を行う第1の画像処理部と、
前記閾値マトリクスの1要素に対して出力画素値を最大出力値になるまで1段階ずつ大きくしていく操作を、前記閾値マトリクスの値が小さな画素の順に繰り返し実行して出力濃度を上げていく画像処理を行う第2の画像処理部と、
入力画像データの注目画素の画素値と所定の閾値の比較結果に基づき、前記注目画素がハイライト側の領域もしくはシャドー側の領域か判断する判断部と、
前記注目画素が前記ハイライト側の領域である前記入力画像データは前記第1の画像処理部にハーフトーン処理を実施させ、前記注目画素が前記シャドー側の領域である前記入力画像データは前記第2の画像処理部にハーフトーン処理を実施させる制御部と、
を備える画像データ処理装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像中のシャドー部分における画像の再現性の良さと、ハイライト部分における画質の良さとの両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る画像データ処理装置を搭載した画像形成装置の概略構成を模式的に示す説明図である。
図2図2は、図1の制御ユニットが行う画像データ処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、図1の制御ユニットが行う画像データのハーフトーン処理で用いる閾値マトリクスの一例を示す説明図である。
図4図4(a)は、図1の第1の画像処理部が行うハーフトーン処理による出力画素値の説明図、図4(b)は図1の第2の画像処理部が行うハーフトーン処理による出力画素値の説明図、図4(c)は図1の制御部が入力画素データに対して実施させるハーフトーン処理による出力画素値の説明図である。
図5図5(a)は、図1の第1の画像処理部によるハーフトーン処理後の入力画素データの印刷画像の説明図、図5(b)は、図1の第2の画像処理部によるハーフトーン処理後の入力画素データの印刷画像の説明図、図5(c)は、図1の制御部が実施させたハーフトーン処理後の入力画素データの印刷画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
以下の実施形態では、インクジェット記録方式の画像形成装置において入力画像データをハーフトーン処理する際に、本発明を適用する場合について説明する。
【0013】
図1に示す画像形成装置1は、スキャナ部101と、プリンタ部102と、各種表示入力用の操作部103と、全体制御用の制御ユニット10とを備えている。
【0014】
スキャナ部101は、例えば、原稿トレーに載せた原稿をオートフィーダによって1枚ずつ取り込み、例えば、CIS(Contact Image Sensor)等の原稿読取部により原稿上の原稿画像を読み取って画像信号を出力することができる。
【0015】
プリンタ部102は、スキャナ部101から出力された画像信号に基づいて制御ユニット10が自ら生成した印刷ジョブ、あるいは、クライアント端末14から入力された印刷ジョブにより、不図示の用紙(所定の媒体)に画像を形成(印刷)することができる。
【0016】
プリンタ部102は、本実施形態では、インクジェット方式のプリンタエンジンを有している。プリンタ部102は、C(シアン)用,K(ブラック)用,M(マゼンタ)用,Y(イエロー)用の各色のインクを印刷剤として用いる各色別のインクジェットヘッドを有している。各色のインクジェットヘッドは、印刷画像に応じたパターンでインク液滴を吐出する複数のノズルを有している。
【0017】
プリンタ部102は、各色のインクジェットヘッドのノズルが吐出する各色のインク液滴により、所定の印刷解像度の印刷画像を用紙上に形成することができる。
【0018】
プリンタ部102は、フルカラー印刷対応のプリンタエンジンに限らず、単色又は多色での印刷に対応したものであってもよい。また、プリンタ部102は、電子写真方式等、インクジェット方式以外の方式によるプリンタエンジンとしてもよい。
【0019】
操作部103は、タッチパネル付きのディスプレイと複数のキーボタンとを有している。ユーザは、ディスプレイに表示されたタッチキーにタッチしたり、キーボタンを押圧操作することによって、各種の入力を行うことができる。
【0020】
制御ユニット10(画像データ処理装置)は、CPU90を備える。このCPU90は、ROM91に格納されているプログラム及び設定情報に基づいて、操作部103のディスプレイから入力設定される内容に応じたスキャナ部101やプリンタ部102の動作を制御する。
【0021】
CPU90には、外部インタフェース部11を介して、クライアント端末14が接続されている。
【0022】
クライアント端末14は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成することができる。クライアント端末14は、印刷ジョブを生成し、制御ユニット10に出力する。この印刷ジョブは、例えば、クライアント端末14が、外部記憶装置に格納されたプリンタドライバプログラムを実行して仮想的なプリンタドライバとして機能することにより、制御ユニット10に出力することができる。
【0023】
制御ユニット10は、原稿画像の印刷ジョブをクライアント端末14から受け取り、受け取った印刷ジョブによる原稿画像の画像データを印刷用階調データに変換し、これに基づいて、原稿画像の用紙に対する印刷をプリンタ部102において実行させることができる。
【0024】
制御ユニット10には、CPU90のワーキングエリアとして機能するRAM92と、各種ファームウェアやデータの格納に用いられるフラッシュメモリ93とが設けられている。CPU90は、ROM91に格納されたプログラムを実行することで、CPU90の内部に、第1の画像処理部94、第2の画像処理部95、判断部96及び制御部97を仮想的に構築することができる。
【0025】
第1の画像処理部94は、第1の濃度設定論理を用いて、印刷用階調データをハーフトーン処理する。第2の画像処理部95は、第2の濃度設定論理を用いて、印刷用階調データをハーフトーン処理する。第1及び第2の濃度設定論理については後述する。
【0026】
判断部96は、印刷用階調データの注目画素の濃度階調値(画素値)を所定の閾値である処理切替閾値と比較して、注目画素の画素値を、濃度が低いハイライト側の領域の分と、濃度が高いシャドー側の領域の分とに仕分ける。
【0027】
制御部97は、判断部96による仕分の結果に応じて、注目画素のハイライト側の領域の分について、第1の画像処理部94の濃度設定論理によるハーフトーン処理を実施させ、シャドー側の領域の分について、第2の画像処理部95の濃度設定論理によるハーフトーン処理を実施させる。
【0028】
以下、図2のフローチャートを参照して、第1の画像処理部94、第2の画像処理部95、判断部96及び制御部97を含む制御ユニット10が実行する処理の内容を、処理の手順と共に説明する。
【0029】
図2のステップS1において、制御ユニット10は、クライアント端末14又は制御ユニット10自身から入力された印刷ジョブの印刷用階調データ(入力画像データ)iと、閾値マトリクスMとを読み込む(ロードする)。
【0030】
閾値マトリクスMは、例えば、入力画像データi中のn×mの画素領域の各画素に対応するn×mの区画を有している。図3では、例えば、3×3の9区画を有する閾値マトリクスMを示している。閾値マトリクスMの各区画には、入力画像データiの対応する画素にドットを配置するか否かを決めるための閾値がそれぞれ設定されている。各区画の閾値は、任意の方法で設定した値とすることができる。
【0031】
ステップS3において、制御ユニット10は、注目画素の画素値を取得する。ステップS3では、注目画素を、例えば、入力画像データiの閾値マトリクスMを用いてハーフトーン処理する画素領域中の各画素とすることができる。ステップS3では、ハーフトーン処理する画素領域中の最初の画素(例えば、画像領域の左上角の画素)をハーフトーン処理するものとして、注目画素の位置を(x=0,y=0)とする。
【0032】
注目画素の位置は、入力画像データiの閾値マトリクスMを用いてハーフトーン処理する画素を画素領域内で移動させる度に、後述するステップS13において移動される。
【0033】
ステップS5において、制御ユニット10は、注目画素の画素値i(x,y)を、処理切替閾値(i_th)未満のハイライト側の領域の分と、処理切替閾値(i_th)以上のシャドー側の領域の分とに仕分ける。
【0034】
制御ユニット10は、ステップS7において、注目画素の画素値i(x,y)のうち処理切替閾値(i_th)未満の、ハイライト側の領域に仕分けられた分について(ステップS5でYES)、第1の画像処理部94の第1の濃度設定論理を用いたハーフトーン処理を実施する。具体的には、第1の画像処理部94が、注目画素の画素値i(x,y)のうち、ハイライト側の領域に仕分けられた分に対し、第1の濃度設定論理によって濃度階調値(ドロップ)を配分する。
【0035】
したがって、ステップS7では、制御ユニット10は、注目画素の画素値i(x,y)のうちハイライト側の領域に仕分けられた分について、第1の画像処理部94が行うハーフトーン処理により、論理1のディザ処理で注目画素のドロップ数(drop(x,y))を計算する。
【0036】
制御ユニット10は、ステップS9において、注目画素の画素値i(x,y)のうち処理切替閾値(i_th)未満でない(処理切替閾値(i_th以上の)、シャドー側の領域に仕分けられた分について(ステップS5でNO)、第2の画像処理部95の第2の濃度設定論理を用いたハーフトーン処理を実施する。具体的には、第2の画像処理部95が、注目画素の画素値i(x,y)のうち、シャドー側の領域に仕分けられた分に対し、第2の濃度設定論理によって濃度階調値(ドロップ)を配分する。
【0037】
したがって、ステップS9では、制御ユニット10は、注目画素の画素値i(x,y)のうちシャドー側の領域に仕分けられた分について、第2の画像処理部95が行うハーフトーン処理により、論理2のディザ処理で注目画素のドロップ数(drop(x,y))を計算する。
【0038】
なお、注目画素の画素値i(x,y)が処理切替閾値(i_th)未満の値である場合に、制御ユニット10は、注目画素の画素値i(x,y)について、第1の画像処理部94が行うハーフトーン処理のみによって、論理1のディザ処理で注目画素のドロップ数(drop(x,y))を計算する。
【0039】
制御ユニット10は、ステップS11において、ステップS7及びステップS9で行ったハーフトーン処理が、ハーフトーン処理する画素領域の最後の画素(画素領域の右下角の画素)に対して行ったものか否かを確認する。
【0040】
画素領域の最後の画素に対するハーフトーン処理でない場合は(ステップS11でNO)、ステップS13において、制御ユニット10は、注目画素を画素領域中の次の画素に移動させた後、ステップS5にリターンする。移動後の注目画素は、例えば、移動前の注目画素の右隣の領域とすることができる。現在の注目画素がハーフトーン処理する画素領域の右端の画素領域である場合は、現在の注目画素の1つ下の列における一番左側の画素を、次の注目画素とすることができる。
【0041】
画素領域の最後の画素に対するハーフトーン処理である場合は(ステップS11でYES)、ステップS15において、制御ユニット10は、ハーフトーン処理した画素領域の各画素のドロップ数を、出力多値画像データdropとして出力した後、一連の処理を終了する。
【0042】
以上に示した図2のフローチャートの手順は、ハーフトーン処理する画素領域が入力画像データiの全体に亘って移動するまで繰り返し行われる。入力画像データiの全体に亘って画素領域が移動するまで繰り返す図2のフローチャートの手順は、印刷色毎にそれぞれ行われる。単色印刷でなく多色印刷(カラー印刷を含む)の場合は、印刷色分の手順が繰り返される。
【0043】
図4(a)は、第1の画像処理部94が単独で、ハーフトーン処理する画素領域の各画素を第1の濃度設定論理を用いてハーフトーン処理した場合の、出力多値画像データdropの内容を示す説明図である。
【0044】
図4(b)は、第2の画像処理部95が単独で、ハーフトーン処理する画素領域の各画素を第2の濃度設定論理を用いてハーフトーン処理した場合の、出力多値画像データdropの内容を示す説明図である。
【0045】
図4(a),(b)では、ハーフトーン処理後の出力多値画像データdropを、入力画像データiのハーフトーン処理する画素領域の各画素毎に示している。ハーフトーン処理する画素領域は、3×3画素の閾値マトリクスをハーフトーン処理に用いる場合を想定して、閾値マトリクスと同じ3×3画素としている。
【0046】
図4(a),(b)の一番左は、ハーフトーン処理した画素領域の各画素の合計ドロップ数0で、各画素に割り当てられたドロップ数がそれぞれ0となった場合を示している。図4(a),(b)の一番右は、ハーフトーン処理した画素領域の各画素の合計ドロップ数が18で、各画素に割り当てられたドロップ数がそれぞれ2ドロップとなった場合を示している。図4(a),(b)の一番左と一番右とを除く他の部分は、ハーフトーン処理した画素領域の各画素の合計ドロップ数が1~17の場合に各画素にそれぞれ割り当てられるドロップ数を示している。
【0047】
第1の画像処理部94及び第2の画像処理部95がそれぞれ単独で入力画像データiのハーフトーン処理を行うと、ハーフトーン処理する画像領域の画像濃度が濃くなるにつれて、画像領域の各画素に割り当てられるドロップ数が図4(a),(b)のように変化する。
【0048】
第1の画像処理部94及び第2の画像処理部95は、1画素あたり3値(0:白、1:薄、2:濃)の階調表現が可能な画像形成装置1において、図3に示す閾値マトリクスMが与えられた場合に、閾値マトリクスMの各区画の閾値と対応する画素の画素値(濃度階調値)との比較に基づいて、ドットを配置する画素をそれぞれ決定する。
【0049】
図4(a)に示すように、第1の画像処理部94は、閾値マトリクスMの値が小さな順に閾値マトリクスM上の全画素が埋まるまで1つの出力画素値を配置する操作を、出力画素値を1段階ずつ上げて繰り返し実行して出力濃度を上げていく画像処理を行う。
【0050】
即ち、第1の画像処理部94は、入力画像データiに対して行うハーフトーン処理において、ハーフトーン処理後の画素領域の濃度が1段階上がる毎に、ハーフトーン処理後の画素領域の各画素に薄い階調のドットを配置していき、薄い階調のドットで各画素がベタ埋めされたら、各画素に濃い階調のドットを同様の順番で配置していく。
【0051】
第1の画像処理部94が、第1の濃度設定論理を用いて、注目画素の8ビットの画素値i(x,y)をハーフトーン処理する場合、注目画素のドロップ数(drop(x,y))は、例えば、次の式(1)で計算することができる。
【0052】
【数1】
【0053】
なお、式(1)において、Int[X]は、値Xの小数点以下切り捨て計算記号、M(x,y)は各画素に対応する閾値マトリクスMの各区画の閾値である。dropmax は、ハーフトーン処理後の出力最大階調値(最大ドロップ数)、M(xm,ym)は、入力画像データiの入力画素値(補正対象値)に対する閾値マトリクスの剰余演算値である。
【0054】
例えば、閾値マトリクスがK×L画素である場合、剰余演算は、入力画像データiの座標(x,y)の画素値に対して、閾値マトリクスの(xmodK,ymodL)で与えられる座標の閾値を対応させて行うことができる。本実施形態では、3×3画素の閾値マトリクスMを用いるので、入力画像データiの座標(x,y)の画素値に対する剰余(xm,ym)は、(xmod3,ymod3)となる。
【0055】
図4(b)に示すように、第2の画像処理部95は、閾値マトリクスMの1要素に対して出力画素値を最大出力値になるまで1段階ずつ大きくしていく操作を、閾値マトリクスMの値が小さな画素の順に繰り返し実行して出力濃度を上げていく画像処理を行う。
【0056】
即ち、第2の画像処理部95は、入力画像データiに対して行うハーフトーン処理において、ベタ埋まり度合いに関係なく、薄い階調のドットを配置した画素があれば濃い階調のドットに変更していくことで、積極的に濃い階調のドットを使用するように配置していく。
【0057】
第2の画像処理部95が、第2の濃度設定論理を用いて、注目画素の8ビットの画素値i(x,y)をハーフトーン処理する場合、注目画素のドロップ数(drop(x,y))は、例えば、次の式(2)で計算することができる。
【0058】
【数2】
【0059】
図4(a)に示す第1の画像処理部94でハーフトーン処理した入力画像データiの印刷結果を図5(a)に示す。また、図4(b)に示す第2の画像処理部95でハーフトーン処理した入力画像データiの印刷結果を図5(b)に示す。
【0060】
図5(a)に示すように、第1の画像処理部94によるハーフトーン処理では、入力画像データiの印刷結果において、濃度が高いシャドー側の階調変化が、ドットゲインによって潰れてわかりにくく、シャドー側の階調再現性が低いことが分かる。図5(b)に示すように、第2の画像処理部95によるハーフトーン処理では、入力画像データiの印刷結果において、シャドー側の階調変化の再現性は高いが、中間濃度やハイライト部では粒状感が顕著に発生しており、中間濃度やハイライト部での質感の表現能力が低いことが分かる。
【0061】
そこで、本実施形態では、判断部96が、注目画素の画素値i(x,y)を処理切替閾値(i_th)と比較する。そして、判断部96が、i(x,y)<(i_th)ならば、注目画素がハイライト領域に属すると判断し、i(x,y)≧(i_th)ならば、注目画素がシャドー領域に属すると判断する。
【0062】
処理切替閾値(i_th)の値は、例えば、閾値マトリクスMの各区画の閾値を図3に示す値とする場合、85とすることができる。処理切替閾値(i_th)の値は、例えば、入力画像データiの印刷色、印刷ジョブにおける印刷設定の内容等に応じて、それぞれに適した個別の値に設定することができる。
【0063】
制御部97は、注目画素のハイライト領域に属する画素値を、第1の画像処理部94でハーフトーン処理させ、注目画素のシャドー領域に属する画素値を、第2の画像処理部95でハーフトーン処理させる。
【0064】
つまり、制御部97は、閾値マトリクスM中の処理切替閾値(i_th)未満の要素では、薄い階調でベタ埋めしていくようにドットを配置し、処理切替閾値(i_th)以上の要素では積極的に濃い階調を使用するようにドットを配置する。
【0065】
即ち、制御部97は、注目画素の処理切替閾値(i_th)よりも低いハイライト領域に属する画素値には、ハーフトーン処理後の画素領域の濃度が1段階上がる毎に、ベタ埋まり度合いに関係なく、ハーフトーン処理後の画素領域の各画素に薄い階調のドットを配置していくことで、積極的に薄い階調のドットを使用するように配置していく。また、制御部97は、注目画素の処理切替閾値(i_th)以上のシャドー領域に属する画素値には、積極的に濃い階調を使用するようにドットを配置する。
【0066】
これにより、注目画素のハイライト領域に属する1~84の画素値のハーフトーン処理では、図4(c)に示すように、第1濃度設定論理により、図4(a)に示す第1の画像処理部と同じパターンで、ハーフトーン処理後の画素領域の各画素に薄い階調のドットが配置されていく。また、図4(c)に示すように、注目画素のシャドー領域に属する85~255の画素値のハーフトーン処理では、第2濃度設定論理により、図4(b)に示す第2の画像処理部と同じパターンで、ハーフトーン処理後の画素領域の各画素に、ベタ埋まり度合いに関係なく、薄い階調のドットを配置した画素があれば濃い階調のドットに変更されていく。
【0067】
制御部97が、第1の画像処理部94による第1の濃度設定論理と第2の画像処理部95による第2の濃度設定論理とを使い分けて、注目画素の8ビットの画素値i(x,y)をハーフトーン処理する場合、注目画素のドロップ数(drop(x,y))は、例えば、注目画素の画素値i(x,y)が処理切替閾値(i_th)よりも低い場合、処理切替閾値(i_th)以上で最大値(255)よりも低い場合、最大値(255)である場合に分けて、次の式(3)で計算することができる。
【0068】
【数3】
【0069】
式(3)中のM′(x,y)は、閾値マトリクスMの各区画の閾値をi_thの値に応じてスケーリングしなおした閾値マトリクスM′の各区画の閾値である。入力画像データiのハーフトーン処理する画素領域の各画素(x,y)に対応する閾値マトリクスM′の各区画の閾値M′(x,y)は、例えば、次の式(4)で表される値とすることができる。
【0070】
【数4】
【0071】
図4(c)に示す第1の画像処理部94と第2の画像処理部95を使い分けてハーフトーン処理した入力画像データiの印刷結果を図5(c)に示す。
【0072】
図5(c)に示すように、第1の画像処理部94と第2の画像処理部95を使い分けると、入力画像データiの印刷結果において、濃度が高いシャドー側の階調変化が、ドットゲインによって潰れておらず、シャドー側の階調再現性が高いことが分かる。また、中間濃度やハイライト部での粒状感の発生が少なく、中間濃度やハイライト部での質感の表現能力も有していることが分かる。
【0073】
このため、画像形成装置1に搭載した制御ユニット10(画像データ処理装置)において、印刷ジョブの入力画像データiをハーフトーン処理する際に、本実施形態で説明した手順の処理を行うことで、入力画像データiの画像中のシャドー部分における画像の再現性の良さと、ハイライト部分における画質の良さとの両立を図ることができる。
【0074】
なお、本発明は上記の実施形態のままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0075】
[付記]
以上に説明した実施形態によって、以下に示す態様の発明が開示される。
【0076】
即ち、一つの態様の発明として、
入力画像データに対し閾値マトリクスを用いてハーフトーン処理を行う画像データ処理装置であって、
前記閾値マトリクスの値が小さな順にマトリクス上の全画素が埋まるまで1つの出力画素値を配置する操作を、出力画素値を1段階ずつ上げて繰り返し実行して出力濃度を上げていく画像処理を行う第1の画像処理部と、
前記閾値マトリクスの1要素に対して出力画素値を最大出力値になるまで1段階ずつ大きくしていく操作を、前記閾値マトリクスの値が小さな画素の順に繰り返し実行して出力濃度を上げていく画像処理を行う第2の画像処理部と、
入力画像データの注目画素の画素値と所定の閾値の比較結果に基づき、前記注目画素がハイライト側の領域もしくはシャドー側の領域か判断する判断部と、
前記注目画素が前記ハイライト側の領域である前記入力画像データは前記第1の画像処理部にハーフトーン処理を実施させ、前記注目画素が前記シャドー側の領域である前記入力画像データは前記第2の画像処理部にハーフトーン処理を実施させる制御部と、
を備える画像データ処理装置が開示される。
【0077】
そして、上記態様による発明によれば、画像中のシャドー部分における画像の再現性の良さと、ハイライト部分における画質の良さとの両立を図ることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 画像形成装置
10 制御ユニット(画像データ処理装置)
11 外部インタフェース部
14 クライアント端末
90 CPU
91 ROM
92 RAM
93 フラッシュメモリ
94 第1の画像処理部
95 第2の画像処理部
96 判断部
97 制御部
101 スキャナ部
102 プリンタ部
103 操作部
M 閾値マトリクス
図1
図2
図3
図4
図5