(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142507
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】エア噴射ノズル
(51)【国際特許分類】
B05B 1/04 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
B05B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042701
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 敏治
【テーマコード(参考)】
4F033
【Fターム(参考)】
4F033BA02
4F033CA05
4F033DA01
4F033EA01
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】スリットから噴射されるエアの調整を容易に行うことができるエア噴射ノズルを提供する。
【解決手段】第1面31aを有する第1部材31と、第2面32aを有する第2部材32と、第1面31aと第2面32aとの間に着脱可能に挟まれるシート状のシム部材33と、第1部材31および第2部材32の少なくとも一方とシム部材33とにわたって配置されるエア流路34と、を備え、エア流路34は、第1面31aと第2面32aとの隙間に開口し、シム部材33の外縁部から内側に延びるスリット状のシム流路部35と、第1部材31および第2部材32の少なくとも一方の外面とシム流路部35とに開口する供給流路部36と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する第1部材と、
第2面を有する第2部材と、
前記第1面と前記第2面との間に着脱可能に挟まれるシート状のシム部材と、
前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方と前記シム部材とにわたって配置されるエア流路と、を備え、
前記エア流路は、
前記第1面と前記第2面との隙間に開口し、前記シム部材の外縁部から内側に延びるスリット状のシム流路部と、
前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方の外面と前記シム流路部とに開口する供給流路部と、を有する、
エア噴射ノズル。
【請求項2】
前記シム部材は、前記シム流路部が延びる所定方向のノズル先端側に開口するU字状をなす屈曲部を有する、
請求項1に記載のエア噴射ノズル。
【請求項3】
前記第2面は、前記第1面よりも前記シム流路部が延びる所定方向のノズル先端側に出っ張る部分を含む、
請求項1または2に記載のエア噴射ノズル。
【請求項4】
前記シム流路部は、前記第1面と直交する方向から見て、互いに間隔をあけて複数設けられる、
請求項1から3のいずれか1項に記載のエア噴射ノズル。
【請求項5】
前記シム流路部および前記供給流路部の組が、複数設けられる、
請求項4に記載のエア噴射ノズル。
【請求項6】
前記第1部材は、前記第1部材の外面のうち、前記第1面が向く方向とは反対方向を向く部分に配置される第1傾斜面を有し、
前記第2部材は、前記第2部材の外面のうち、前記第2面が向く方向とは反対方向を向く部分に配置される第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜面は、前記シム流路部が延びる所定方向のノズル先端側へ向かうに従い、前記シム部材の厚さ方向において前記第1面から前記第2面側に位置し、
前記第2傾斜面は、前記ノズル先端側へ向かうに従い、前記厚さ方向において前記第2面から前記第1面側に位置する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のエア噴射ノズル。
【請求項7】
前記供給流路部は、
前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方の外面に開口する配管接続流路部と、
前記配管接続流路部と前記シム流路部とに接続されるエアチャンバーと、を有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のエア噴射ノズル。
【請求項8】
前記エアチャンバーは、
前記第1部材に配置されて前記第1面に開口する第1チャンバーと、
前記第2部材に配置されて前記第2面に開口し、前記第1チャンバーと連通する第2チャンバーと、を有する、
請求項7に記載のエア噴射ノズル。
【請求項9】
前記シム流路部は、前記第1チャンバーと前記第2チャンバーとの接続部分に繋がる、
請求項8に記載のエア噴射ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エア噴射ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の気体吐出用ノズルが知られている。この気体吐出用ノズルは、カバーの下面と、本体の上面の傾斜面との間に、層流通過面側に開口を有するスリットが形成されている。高圧気体はスリットから吐出され、外気を取り込みながら、層流通過面に沿う層流を形成してスリットから離間していく。スリットから吐出された高圧気体は、外気を二次気体として誘引することで増量されて、吐出量よりも多量の気流を形成する。この気流により、例えばシート体等の軽量の被搬送物を層流通過面の表面から浮遊させて搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の気体吐出用ノズルでは、スリット形状を変更することが容易ではない。具体的には、例えば被搬送物の種類、大きさ、重さ等や、搬送以外の各種用途などに応じて、スリットから噴射されるエアの流量、流速、噴射範囲、噴射バランス等の各種調整を行うことが困難である。
【0005】
本発明は、スリットから噴射されるエアの調整を容易に行うことができるエア噴射ノズルを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエア噴射ノズルの一つの態様は、第1面を有する第1部材と、第2面を有する第2部材と、前記第1面と前記第2面との間に着脱可能に挟まれるシート状のシム部材と、前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方と前記シム部材とにわたって配置されるエア流路と、を備え、前記エア流路は、前記第1面と前記第2面との隙間に開口し、前記シム部材の外縁部から内側に延びるスリット状のシム流路部と、前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方の外面と前記シム流路部とに開口する供給流路部と、を有する。
【0007】
このエア噴射ノズルでは、エア流路に供給されたエアが、供給流路部からスリット状のシム流路部を通って、第1面と第2面との隙間からノズル外部に噴射される。このように噴射されたエア(以下、噴射エアと呼ぶ場合がある)は、シム流路部が延びる向きに沿って真っ直ぐな気流を形成する。この噴射エアは、いわゆるエアナイフ等と呼ばれる、厚さ寸法が薄く高速のエアカーテン状のエアである。噴射エアは、周囲の外気を二次エアとして誘引することで増量されて、ノズルからの吐出量よりも多量の気流を形成する。この噴射エアにより、例えば缶などの対象物の搬送をアシストしたり、製造工程で対象物に付着した液体を吹き飛ばして除去することなどが可能である。このエア噴射ノズルによれば、噴射エアによる所期する機能(作用)を安定して奏功しつつ、エアコンプレッサ等のエア供給源からのエア供給量を少なく抑えることができる。
【0008】
そして本発明によれば、第1面と第2面との間にシム部材が着脱可能に介装されている。このため、例えば、シム流路部の大きさや形状等が互いに異なるシム部材を複数種類用意し、適宜交換することで、シム流路部の形状を容易に変更できる。すなわち、シム部材の外縁部から内側に延びる凹部の形状等を種々に設定することにより、シム流路部から噴射されるエアの流量、流速、噴射範囲、噴射バランス等(以下、単に流量等と省略する場合がある)の各種調整を、簡単にかつ正確に行うことができる。
また、エア噴射ノズルを分解して組み立てることができるため、メンテナンス性がよい。
【0009】
以上より本発明によれば、エア噴射ノズルのシム流路部つまりスリットから噴射されるエアの調整を、容易に行うことができる。
【0010】
上記エア噴射ノズルにおいて、前記シム部材は、前記シム流路部が延びる所定方向のノズル先端側に開口するU字状をなす屈曲部を有することが好ましい。
【0011】
この場合、屈曲部の内側にシム流路部を形成することができ、シム部材の構造を簡素化できる。
【0012】
上記エア噴射ノズルにおいて、前記第2面は、前記第1面よりも前記シム流路部が延びる所定方向のノズル先端側に出っ張る部分を含むことが好ましい。
【0013】
この場合、シム流路部からノズル外部に噴射されるエアが、第2面のうち第1面よりも出っ張る部分にガイドされることにより、シム流路部が延びる向きに沿って安定して真っ直ぐな気流を形成する。
【0014】
上記エア噴射ノズルにおいて、前記シム流路部は、前記第1面と直交する方向から見て、互いに間隔をあけて複数設けられることが好ましい。
【0015】
この場合、例えば、複数のシム流路部から、対象物の重心の両側にそれぞれエアを噴射することにより、対象物の重量バランスが崩れることを抑えて、対象物の搬送姿勢などを良好に維持しやすい。
また、例えば、複数のシム流路部の大きさや形状等を相互に変えるなどにより、各シム流路部から噴射されるエアの流量等を調整できる。このため、エアを噴射する対象物や用途等に応じて、複数の噴射エアをそれぞれ好適に形成できる。
【0016】
上記エア噴射ノズルは、前記シム流路部および前記供給流路部の組が、複数設けられることが好ましい。
【0017】
この場合、シム流路部および供給流路部の組数に応じて、エアの流通系統を複数設けることができる。例えば、エアの流通系統ごとにエアの流量や圧力等を別々に設定することができるため、様々な対象物および用途等に本発明のエア噴射ノズルを適用することが可能になる。
【0018】
上記エア噴射ノズルにおいて、前記第1部材は、前記第1部材の外面のうち、前記第1面が向く方向とは反対方向を向く部分に配置される第1傾斜面を有し、前記第2部材は、前記第2部材の外面のうち、前記第2面が向く方向とは反対方向を向く部分に配置される第2傾斜面を有し、前記第1傾斜面は、前記シム流路部が延びる所定方向のノズル先端側へ向かうに従い、前記シム部材の厚さ方向において前記第1面から前記第2面側に位置し、前記第2傾斜面は、前記ノズル先端側へ向かうに従い、前記厚さ方向において前記第2面から前記第1面側に位置することが好ましい。
【0019】
この場合、シム流路部から噴射される高速のエアに誘引された周囲の外気(二次エア)が、第1傾斜面および第2傾斜面にガイドされて流れることで、乱流少なくスムーズに噴射エアと合流する。このため、シム流路部からノズル先端側へ向けた真っ直ぐで多量の気流をより安定して形成できる。
【0020】
なお本発明では、第1部材、第2部材およびシム部材を分解することが可能であるため、例えば、第1部材および第2部材のいずれかを交換することにより、第1傾斜面および第2傾斜面の少なくとも一方の傾斜角、傾斜長さ等を適宜調整することができる。したがって、噴射エアの流量等の調整をより容易にかつ高精度に行いやすい。
【0021】
上記エア噴射ノズルにおいて、前記供給流路部は、前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方の外面に開口する配管接続流路部と、前記配管接続流路部と前記シム流路部とに接続されるエアチャンバーと、を有することが好ましい。
【0022】
この場合、エア流路にエアチャンバーが設けられることにより、シム流路部から噴射されるエアの流量等を安定化させることができる。
【0023】
上記エア噴射ノズルにおいて、前記エアチャンバーは、前記第1部材に配置されて前記第1面に開口する第1チャンバーと、前記第2部材に配置されて前記第2面に開口し、前記第1チャンバーと連通する第2チャンバーと、を有することが好ましい。
【0024】
この場合、エアチャンバーの容積を大きく確保することができ、噴射エアの流量等をより安定化できる。
【0025】
上記エア噴射ノズルにおいて、前記シム流路部は、前記第1チャンバーと前記第2チャンバーとの接続部分に繋がることが好ましい。
【0026】
この場合、シム流路部が、シム部材の厚さ方向におけるエアチャンバーの端縁に接続されることが抑制される。すなわち、シム流路部に対して、第1チャンバーおよび第2チャンバーの両方から、つまりシム部材の厚さ方向の両側から、シム流路部内にエアが流入する。このため、エアチャンバーからシム流路部にエアが流入するときに乱流が生じにくくなり、シム流路部から噴射されるエアの流量等がより安定する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一つの態様のエア噴射ノズルによれば、スリットから噴射されるエアの調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本実施形態のエア噴射ノズル、ノズル支持部材およびエア配管部材を示す側面図である。
【
図4】
図4は、エア噴射ノズルを備える缶印刷装置を模式的に示す正面図である。
【
図5】
図5は、缶印刷装置の缶シュータ近傍を拡大して示す正面図である。
【
図7】
図7は、缶シュータの一部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施形態のエア噴射ノズル30について、図面を参照して説明する。本実施形態のエア噴射ノズル30は、例えば、製缶工場の各種製造工程に用いられる。
【0030】
図1~
図3に示すように、エア噴射ノズル30は、第1面31aを有する第1部材31と、第2面32aを有する第2部材32と、第1面31aと第2面32aとの間に着脱可能に挟まれるシート状のシム部材33と、第1部材31、第2部材32およびシム部材33を固定するネジ部材40と、第1部材31および第2部材32の少なくとも一方とシム部材33とにわたって配置されるエア流路34と、を備える。第1部材31、第2部材32およびシム部材33はそれぞれ、例えばステンレス鋼製等の金属製である。
エア流路34は、第1面31aと第2面32aとの間で所定方向に延びるシム流路部35と、シム流路部35にエアを供給する供給流路部36と、を有する。
【0031】
本実施形態では、シム部材33の厚さ方向を、単に厚さ方向と呼ぶ。
図2A~
図3等の各図に示すXYZ直交座標系(3次元直交座標系)において、厚さ方向は、Z軸方向に相当する。厚さ方向のうち第1面31aから第2面32a側(-Z側)、すなわち第1部材31から第2部材32へ向かう方向を、下側と呼ぶ。厚さ方向のうち第2面32aから第1面31a側(+Z側)、すなわち第2部材32から第1部材31へ向かう方向を、上側と呼ぶ。
【0032】
また、シム流路部35が延びる所定方向を、単に所定方向と呼ぶ。所定方向は、厚さ方向と直交する方向である。所定方向は、Y軸方向に相当する。所定方向のうち、シム流路部35からノズル外部にエアが噴射される方向(+Y側)をノズル先端側と呼び、これとは反対の方向(-Y側)をノズル後端側と呼ぶ。
【0033】
また、厚さ方向および所定方向のそれぞれと直交する方向を、左右方向と呼ぶ。左右方向は、X軸方向に相当する。左右方向のうち一方側(-X側)を左側と呼び、他方側(+X側)を右側と呼ぶ。
【0034】
なお本実施形態において、左側、右側、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係以外の配置関係等であってもよい。
【0035】
図2A~
図2Cに示すように、第1部材31および第2部材32はそれぞれ、略長方形板状または略直方体状であり、左右方向に延びる。第1部材31と第2部材32とは、互いの内面同士を対向させるように、すなわち第1面31aと第2面32aとを対向させるように、互いに隣接して配置される。
【0036】
図2A~
図3に示すように、第1部材31は、第1面31aと、第1溝31bと、第1傾斜面31cと、ネジ挿通孔31dと、を有する。
第1面31aは、第1部材31の下側を向く下面(内面)に配置される。第1面31aは、長方形状である。第1面31aは、厚さ方向と垂直な方向に拡がる平面状である。
【0037】
第1溝31bは、第1面31aから上側に窪み、左右方向に延びる溝状である。第1溝31bは、第1面31aのうちノズル後端側の部分に配置される。本実施形態では第1溝31bが、左右方向と垂直な断面において、下側に開口する半円形状である。
【0038】
第1溝31bは、第1部材31に複数設けられる。複数の第1溝31bは、左右方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では第1溝31bが、左右方向に並んで2つ設けられる。
【0039】
第1傾斜面31cは、第1部材31の外面のうち、第1面31aが向く方向とは反対方向を向く部分に配置される。具体的に、第1傾斜面31cは、第1部材31の外面のうち、上側を向く上面の一部に配置される。第1傾斜面31cは、第1部材31の上面のうちノズル先端側の端部に位置する。
【0040】
第1傾斜面31cは、ノズル先端側へ向かうに従い下側に位置する。本実施形態では第1傾斜面31cが、厚さ方向と垂直な図示しない仮想平面に対して傾斜する平面状であり、第1部材31の上面において左右方向(X軸方向)の全長にわたって延びる。
図2Cに示すように左右方向から見て、第1傾斜面31cが上記仮想平面に対して傾斜する傾斜角は、例えば10°以上40°以下であり、より好ましくは20°以上30°以下であり、図示の例では25°である。
図2Aに示すように厚さ方向から見て、第1傾斜面31cは、シム流路部35のうち少なくともノズル先端側の端部と重なって配置される。
【0041】
ネジ挿通孔31dは、第1部材31を厚さ方向に貫通する。ネジ挿通孔31dは、第1部材31に複数設けられる。複数のネジ挿通孔31dは、所定方向(Y軸方向)および左右方向(X軸方向)においてそれぞれ、互いに間隔をあけて配置される。
【0042】
図2A~
図2Cに示すように、第2部材32は、第2面32aと、第2溝32bと、配管接続孔32eと、第2傾斜面32cと、ネジ穴32dと、を有する。
【0043】
第2面32aは、第2部材32の上側を向く上面(内面)に配置される。第2面32aは、長方形状である。第2面32aは、厚さ方向と垂直な方向に拡がる平面状である。
図2Aに示すように厚さ方向から見て、第2面32aは、第1面31aよりも外側に出っ張る部分32aaを含む。すなわちこの部分32aaは、第1面31aよりもノズル先端側に突出する。部分32aaは、厚さ方向から見て、左右方向に延びる長方形状である。部分32aaは、第2部材32の上面つまり第2面32aにおいて左右方向の全長にわたって延びる。
【0044】
図2A~
図2Cに示すように、第2溝32bは、第2面32aから下側に窪み、左右方向に延びる溝状である。第2溝32bは、第2面32aのうちノズル後端側の部分に配置される。本実施形態では第2溝32bが、左右方向と垂直な断面において、上側に開口し厚さ方向に延びる長方形状である。
【0045】
第2溝32bは、第2部材32に複数設けられる。複数の第2溝32bは、左右方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では第2溝32bが、左右方向に並んで2つ設けられる。
図2Aに示すように厚さ方向から見て、各第2溝32bは、各第1溝31bと重なる。
【0046】
配管接続孔32eは、第2部材32の外面のうちノズル後端側を向く後面32fと、第2溝32bとに開口する。配管接続孔32eは、所定方向(Y軸方向)に延びる円孔状である。
図2A~
図2Cに示すように、配管接続孔32eは、第2部材32に複数設けられる。複数の配管接続孔32eは、左右方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では配管接続孔32eが、左右方向に並んで2つ設けられる。各配管接続孔32eは、各第2溝32bと個別に繋がる。
【0047】
図1に示すように、配管接続孔32eには、エア配管部材50が接続される。エア配管部材50の数は、配管接続孔32eの数と同じであり、本実施形態では複数(2つ)である。つまりエア配管部材50は、複数設けられる。複数のエア配管部材50は、互いにエア流通系統が異なる。各エア配管部材50には、図示しないエアコンプレッサ等のエア供給源から圧縮エアが供給される。
また本実施形態では、ノズル支持部材51が、第2部材32の後面32fにネジ止めにより固定される。これによりノズル支持部材51は、エア噴射ノズル30を支持する。特に図示しないが、ノズル支持部材51は、装置フレーム等に固定される。
【0048】
図2Cに示すように、第2傾斜面32cは、第2部材32の外面のうち、第2面32aが向く方向とは反対方向を向く部分に配置される。具体的に、第2傾斜面32cは、第2部材32の外面のうち、下側を向く下面の一部に配置される。第2傾斜面32cは、第2部材32の下面のうち少なくともノズル先端側の端部に位置する。図示の例では、第2傾斜面32cが、ノズル後端側の端部以外の部分に配置される。
図2Cに示すように、左右方向から見た側面視で、第2傾斜面32cの長さは、第1傾斜面31cの長さよりも長い。
【0049】
第2傾斜面32cは、ノズル先端側へ向かうに従い上側に位置する。本実施形態では第2傾斜面32cが、厚さ方向と垂直な図示しない仮想平面に対して傾斜する平面状であり、第2部材32の下面において左右方向(X軸方向)の全長にわたって延びる。
図2Cに示すように左右方向から見て、第2傾斜面32cが上記仮想平面に対して傾斜する傾斜角は、例えば10°以上40°以下であり、より好ましくは20°以上30°以下であり、図示の例では25°である。
図2Aに示すように、第2面32aと直交する方向つまり厚さ方向から見て、第2傾斜面32cは、シム流路部35のうち少なくともノズル先端側の端部と重なって配置される。
【0050】
図2Bおよび
図2Cに示すように、ネジ穴32dは、第2面32aに開口し、厚さ方向に延びる。ネジ穴32dは、第2部材32に複数設けられる。複数のネジ穴32dは、所定方向(Y軸方向)および左右方向(X軸方向)においてそれぞれ、互いに間隔をあけて配置される。厚さ方向から見て、各ネジ穴32dは、各ネジ挿通孔31dと重なる。
【0051】
図3に示すように、シム部材33は、略長方形板状である。シム部材33の所定方向(Y軸方向)および左右方向(X軸方向)の各寸法は、例えば、第1面31aの所定方向および左右方向の各寸法と同じである。シム部材33は、厚さ方向(Z軸方向)の寸法(以下、単に厚さ寸法と呼ぶ場合がある)が0.1mm以下であり、好ましくは0.05mm以下であり、より望ましくは0.03mm以下である。また、シム部材33の厚さ寸法は、例えば0.01mm以上であることが好ましい。
【0052】
シム部材33は、凹部33aと、貫通孔33bと、屈曲部33cと、を有する。
凹部33aは、シム部材33を厚さ方向に貫通する切り欠き状である。
図3に示すように厚さ方向から見て、凹部33aは、シム部材33の外周のうちノズル先端側(+Y側)の外縁部から内側に延びる。すなわち凹部33aは、シム部材33のノズル先端側の外縁部に開口し、この開口部分からノズル後端側(-Y側)に向けて延びる。凹部33aは、所定方向(Y軸方向)に延びる略長方形状である。つまり凹部33aは、左右方向(X軸方向)の寸法に比べて所定方向の寸法が大きい。凹部33aは、シム部材33のうちノズル後端側の端部以外の部分に配置される。
【0053】
厚さ方向から見て、凹部33aのうちノズル後端側の端部は、第1溝31bおよび第2溝32bと重なる。本実施形態では、凹部33aの左右方向の寸法が、第1溝31bの左右方向の寸法および第2溝32bの左右方向の寸法と同じである。
【0054】
凹部33aは、シム部材33に複数設けられる。複数の凹部33aは、左右方向(X軸方向)に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では凹部33aが、左右方向に並んで2つ設けられる。各凹部33aの左右方向の位置は、各第1溝31bの左右方向の位置、および、各第2溝32bの左右方向の位置と同じである。
【0055】
貫通孔33bは、シム部材33を厚さ方向に貫通する。貫通孔33bは、シム部材33に複数設けられる。複数の貫通孔33bは、所定方向(Y軸方向)および左右方向(X軸方向)においてそれぞれ、互いに間隔をあけて配置される。
【0056】
図3に示すように厚さ方向から見て、屈曲部33cは、ノズル先端側(+Y側)に開口するU字状またはコ字状をなす。屈曲部33cは、所定方向に沿って延び左右方向に互いに間隔をあけて配置される一対の延伸部と、左右方向に延び各延伸部のノズル後端側(-Y側)の端部同士を連結する連結部と、を有する。
本実施形態では、屈曲部33cが左右方向に並んで複数(2つ)設けられる。図示の例では、2つの屈曲部33cのうち、一方の屈曲部33cの一対の延伸部のうちの1つと、他方の屈曲部33cの一対の延伸部のうちの1つとが、シム部材33の左右方向の中央部において同一部分(共通部分)として形成される。
【0057】
図2A~
図2Cに示すように、ネジ部材40は、複数設けられる。複数のネジ部材40はそれぞれ、第1部材31のネジ挿通孔31dおよびシム部材33の貫通孔33bに挿入され、第2部材32のネジ穴32dに螺着される。これにより、第1部材31、第2部材32およびシム部材33が一体的に固定される。
【0058】
エア流路34には、図示しないエア供給源から供給された圧縮エアが流通する。本実施形態ではエア流路34が、第1部材31、第2部材32およびシム部材33に配置される。エア流路34は、シム流路部35と、供給流路部36と、を有する。
【0059】
図2Aおよび
図3に示すように、シム流路部35は、凹部33aのうち第1溝31bおよび第2溝32bよりもノズル先端側に位置する部分と、第1面31aと、第2面32aと、により画成されるエア流路34の一部である。すなわち、シム流路部35は、シム部材33のノズル先端側の外縁部から内側に延びるスリット状である。シム流路部35は、所定方向(Y軸方向)に延びる。シム流路部35は、所定方向の寸法および左右方向の寸法に比べて、厚さ寸法が小さい。
図3に示すように厚さ方向から見て、シム流路部35は、屈曲部33cの内側に配置される。
【0060】
シム流路部35は、第1面31aのノズル先端側の端部と、第2面32aのうち第1面31aの前記端部と対向する部分と、の隙間において、ノズル外部に開口する。つまりシム流路部35は、第1面31aと第2面32aとの隙間に開口する。
【0061】
図2Cに示すように、シム流路部35の開口部の厚さ寸法つまりスリット幅寸法Sは、0.1mm以下であり、好ましくは0.05mm以下であり、より望ましくは0.03mm以下である。また、スリット幅寸法Sは、例えば0.01mm以上であることが好ましい。本実施形態では、シム流路部35のスリット幅寸法Sが、シム部材33の厚さ寸法と同じである。また、シム流路部35の厚さ寸法は、シム流路部35における所定方向の全長にわたって一定である。
【0062】
図2Aおよび
図3に示すように、第1面31aと直交する方向から見て、シム流路部35は、互いに間隔をあけて複数設けられる。複数のシム流路部35は、左右方向(X軸方向)に並んで配置される。本実施形態では、互いに同一形状とされた2つのシム流路部35が設けられる。具体的に、2つのシム流路部35は、所定方向(Y軸方向)と垂直な断面形状つまりスリット断面(スリット開口)形状が互いに同じであり、かつ、所定方向の長さ寸法(スリット流路長)が互いに同じである。
【0063】
供給流路部36は、第1部材31および第2部材32の少なくとも一方の外面とシム流路部35とに開口する。本実施形態では供給流路部36が、第2部材32の外面のうち後面32fと、シム流路部35とに開口する。供給流路部36は、第1溝31bと、第2溝32bと、凹部33aのうち厚さ方向から見て第1溝31bおよび第2溝32bと重なる部分と、配管接続孔32eと、により画成されるエア流路34の上記一部とは別の一部である。
【0064】
図2Aおよび
図2Bに示すように、供給流路部36は、配管接続流路部37と、エアチャンバー38と、を有する。
配管接続流路部37は、配管接続孔32eにより画成されるエアの流路部分である。配管接続流路部37は、第1部材31および第2部材32の少なくとも一方の外面に開口する。本実施形態では配管接続流路部37が、第2部材32の外面のうち後面32fに開口する。配管接続流路部37は、所定方向(Y軸方向)に延びる。
【0065】
図2Bおよび
図2Cに示すように、エアチャンバー38は、配管接続流路部37とシム流路部35とに接続される。エアチャンバー38は、第1溝31bと、第2溝32bと、凹部33aのうち厚さ方向から見て第1溝31bおよび第2溝32bに重なる部分と、により画成されるエアの流路部分である。エアチャンバー38は、所定方向と垂直な方向に拡がる直方体状のエアの貯留室である。エア流路34を流れるエアは、エアチャンバー38に一時的に貯留された後、シム流路部35に流入する。
【0066】
エアチャンバー38は、第1チャンバー38aと、第2チャンバー38bと、を有する。
第1チャンバー38aは、第1溝31bにより画成されるエアの流路部分である。第1チャンバー38aは、第1部材31に配置されて第1面31aに開口する。第1チャンバー38aは、左右方向(X軸方向)に延びる。
【0067】
第2チャンバー38bは、第2溝32bにより画成されるエアの流路部分である。第2チャンバー38bは、第2部材32に配置されて第2面32aに開口し、第1チャンバー38aと連通する。第2チャンバー38bは、所定方向(Y軸方向)と垂直な方向に拡がる。
【0068】
第1チャンバー38aと第2チャンバー38bとは、凹部33aのうちシム流路部35よりもノズル後端側に位置する端部を介して接続される(
図3参照)。シム流路部35は、第1チャンバー38aと第2チャンバー38bとの接続部分つまり上記端部に繋がる。
【0069】
図2Aおよび
図2Bに示すように、供給流路部36は、複数設けられる。複数の供給流路部36は、左右方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では供給流路部36が、左右方向に並んで2つ設けられる。各供給流路部36は、各シム流路部35と個別に接続される。すなわち本実施形態では、シム流路部35および供給流路部36の組が、複数(2つ)設けられる。
【0070】
次に、エア噴射ノズル30を製缶工場の製造工程の一部に採用した例について、
図4~
図7を参照して説明する。本実施形態では、製缶工場における缶印刷装置Aに、エア噴射ノズル30が備えられる。
【0071】
図4に示すように、缶印刷装置Aは、有底筒状の缶20の胴部の外周面に、複数色(例えば8色)で構成されるデザインの印刷を施す。具体的に本実施形態の缶印刷装置Aは、オフセット印刷装置である。缶印刷装置Aは、インキ付着機構Bと、缶移動機構Cと、を備える。
【0072】
インキ付着機構Bは、各色のインキを供給する複数のインカーユニット1と、ブランケットホイール8と、を備える。
缶印刷装置Aに設けられるインカーユニット1の数は、缶20の胴部に印刷されるインキの色数(色の種類)と同じである。
ブランケットホイール8は、各インカーユニット1のシリンダ6の印刷版(図示省略)に接触してインキを写し取る複数のブランケット9を有する。複数のブランケット9は、ブランケットホイール8の外周に、ホイール周方向に互いに間隔をあけて配置される。ブランケットホイール8のホイール中心軸は、シリンダ6の中心軸と平行に延びる。
【0073】
缶移動機構Cは、缶20を缶印刷装置Aに取り入れる缶シュータ10と、缶シュータ10から供給された缶20を回転自在に保持するマンドレル11と、マンドレル11に装着された缶20を回転移動させつつ順次ブランケットホイール8へ接触させるマンドレルターレット12と、を備える。
マンドレルターレット12のターレット中心軸は、シリンダ6の中心軸およびブランケットホイール8のホイール中心軸と平行に延びる。マンドレルターレット12は、複数のマンドレル11をターレット周方向に回転させる。マンドレルターレット12は、マンドレル11が保持する缶20の缶胴をブランケット9に接触させることで、缶胴にインキを転写させる。
【0074】
この缶印刷装置Aにおいては、複数のインカーユニット1の各インキ源からそれぞれ異なる色のインキが、各ロール群を介して、各シリンダ6の外周面のスリーブ印刷版等の印刷版に付着させられる。各シリンダ6の印刷版に付着した各色のインキは、回転するブランケットホイール8上のブランケット9に画像パターンとして乗せられ、この画像パターンが、マンドレル11に保持された缶20の胴部に接触することで、缶20に所定デザインの印刷が施される。
缶印刷装置Aの缶印刷速度は、例えば1200cpmなどであり、非常に高速である。なお上記「cpm」とは、1分間あたりの処理缶数(印刷缶数)を表す単位である。
【0075】
図5に示すように、エア噴射ノズル30は、缶移動機構Cの缶シュータ10に設けられる。エア噴射ノズル30は、缶シュータ10からマンドレル11へと受け渡される缶20の移動(搬送)をアシストする。
【0076】
詳しくは、
図6に示すように、エア噴射ノズル30は、上述した左右方向(X軸方向)を缶20の缶軸Pと平行に延ばすように配置される。すなわち、第1面31aと第2面32aとの隙間に開口する、シム流路部35の開口部(スリット開口部)が延びる方向が、缶軸Pと略平行に配置される。また特に図示しないが、シム流路部35をノズル先端側に延ばした仮想の延長線が、缶20の外周面のうち缶軸Pから鉛直方向の下側にずれた位置を通る。このため、エア噴射ノズル30から噴射されたエアによって、缶20は缶シュータ10の内面から少なくとも一部が浮遊した状態とされて、摩擦抵抗少なくマンドレル11へと案内される。
【0077】
図7は、缶シュータ10の一部を示す側面図である。
図7に符号Gで示す一点鎖線は、缶20の缶軸Pと垂直な仮想の重量バランス面G、つまり重心を示している。缶20は、トップ20a側の部分に比べてボトム20b側の部分の重量が重いため、重量バランス面Gは、缶20の缶軸P方向の中心よりも、ボトム20b側に位置する。
【0078】
エア噴射ノズル30の複数(2つ)のシム流路部35は、缶20のうち缶軸P方向の中心を間に挟んだ両側の部分に、それぞれエアを噴射する。より詳しくは、複数のシム流路部35は、缶20のうち缶軸P方向において重量バランス面Gを間に挟んだ両側の部分に、それぞれエアを噴射する。なお、2つのシム流路部35のうち、左側(-X側)つまりトップ20a側に位置する一方のシム流路部35から噴射するエア流量に比べて、右側(+X側)つまりボトム20b側に位置する他方のシム流路部35から噴射するエア流量を多くしてもよい。本実施形態によれば、エア噴射ノズル30からエアを噴射したときに、缶20の重量バランスが崩されにくくなり、すなわち缶20の搬送姿勢を良好に維持したまま、缶20を安定して缶シュータ10からマンドレル11に移送することができる。
【0079】
なお特に図示しないが、例えば、2つのシム流路部35のうち一方と、重量バランス面Gとの間の缶軸P方向の距離と、2つのシム流路部35のうち他方と、重量バランス面Gとの間の缶軸P方向の距離とが、互いに同じであることとしてもよい。またこの場合、2つのシム流路部35から噴射するエア流量を、互いに同じとしてもよい。
【0080】
次に、エア噴射ノズル30を製缶工場の製造工程の別の一部に採用した例について、説明する。特に図示しないが、エア噴射ノズル30は、例えば缶20のDI(Drawing&Ironing)加工装置と、缶洗浄装置と、の間の搬送装置などに設けられる。
【0081】
この搬送装置では、缶20は、トップ20aが鉛直方向の下側を向き、ボトム20bが鉛直方向の上側を向いた倒立姿勢とされて、搬送される。缶洗浄装置に移送される前の缶20は、ボトム20bのドーム状の部分にソリュブル等の汚れた液体が溜まっている。この汚れた液体が缶洗浄装置に入ると、缶20の洗浄効率などに影響する。
【0082】
そこで、缶洗浄装置よりも前工程に位置するこの搬送装置において、搬送コンベアの鉛直方向の上側にエア噴射ノズル30を設け、エア噴射ノズル30から缶20のボトム20bのドーム状の部分にエアを噴射することにより、ボトム20bに溜った汚れた液体を吹き飛ばし除去することができる。
なお、エア噴射ノズル30を上述の用途などに使用する場合は、エア噴射ノズル30の左右方向(X軸方向)の寸法を、搬送コンベアのコンベア幅等に応じて、例えば700mm以上などと大きく確保することが好ましい。
【0083】
以上説明した本実施形態のエア噴射ノズル30では、エア流路34に供給されたエアが、供給流路部36からスリット状のシム流路部35を通って、第1面31aと第2面32aとの隙間からノズル外部に噴射される。このように噴射されたエアは、シム流路部35が延びる向きに沿って真っ直ぐな気流を形成する。この噴射エアは、いわゆるエアナイフ等と呼ばれる、厚さ寸法が薄く高速のエアカーテン状のエアである。噴射エアは、周囲の外気を二次エアとして誘引することで増量されて、ノズルからの吐出量よりも多量の気流を形成する。この噴射エアにより、例えば缶20などの対象物の搬送をアシストしたり、製造工程で対象物に付着した液体を吹き飛ばして除去することなどが可能である。このエア噴射ノズル30によれば、噴射エアによる所期する機能(作用)を安定して奏功しつつ、エアコンプレッサ等のエア供給源からのエア供給量を少なく抑えることができる。
【0084】
そして本実施形態によれば、第1面31aと第2面32aとの間にシム部材33が着脱可能に介装されている。このため、例えば、シム流路部35の大きさや形状等が互いに異なるシム部材33を複数種類用意し、適宜交換することで、シム流路部35の形状を容易に変更できる。すなわち、シム部材33の外縁部から内側に延びる凹部33aの形状等を種々に設定することにより、シム流路部35から噴射されるエアの流量、流速、噴射範囲、噴射バランス等(以下、単に流量等と省略する場合がある)の各種調整を、簡単にかつ正確に行うことができる。
また、エア噴射ノズル30を分解して組み立てることができるため、メンテナンス性がよい。
【0085】
以上より本実施形態によれば、エア噴射ノズル30のシム流路部35つまりスリットから噴射されるエアの調整を、容易に行うことができる。
【0086】
また本実施形態では、シム部材33が、ノズル先端側に開口するU字状(コ字状)の屈曲部33cを有する。
この場合、屈曲部33cの内側にシム流路部35を形成することができ、シム部材33の構造を簡素化できる。
【0087】
また本実施形態では、第2部材32の第2面32aが、第1部材31の第1面31aよりもノズル先端側に出っ張る部分32aaを含む。
この場合、シム流路部35からノズル外部に噴射されるエアが、第2面32aのうち第1面31aよりも出っ張る部分32aaにガイドされることにより、シム流路部35が延びる向きつまり所定方向(Y軸方向)に沿って、安定して真っ直ぐな気流を形成する。
【0088】
また本実施形態では、シム流路部35が、第1面31aと直交する方向つまり厚さ方向から見て、互いに間隔をあけて複数設けられる。
この場合、例えば、複数のシム流路部35から、対象物(本実施形態では缶20)の重心の両側にそれぞれエアを噴射することにより、対象物の重量バランスが崩れることを抑えて、対象物の搬送姿勢などを良好に維持しやすい。
また特に図示しないが、例えば、複数のシム流路部35の大きさや形状等を相互に変えるなどにより、各シム流路部35から噴射されるエアの流量等を調整できる。このため、エアを噴射する対象物や用途等に応じて、複数の噴射エアをそれぞれ好適に形成できる。
【0089】
また本実施形態では、シム流路部35および供給流路部36の組が、複数設けられる。
この場合、シム流路部35および供給流路部36の組数に応じて、エアの流通系統を複数設けることができる。例えば、エアの流通系統ごとにエアの流量や圧力等を別々に設定することができるため、様々な対象物および用途等に本実施形態のエア噴射ノズル30を適用することが可能になる。
【0090】
また本実施形態では、第1部材31の第1傾斜面31cが、ノズル先端側(+Y側)へ向かうに従い、シム部材33の厚さ方向において第1面31aから第2面32a側つまり下側(-Z側)に位置する。また、第2部材32の第2傾斜面32cが、ノズル先端側へ向かうに従い、シム部材33の厚さ方向において第2面32aから第1面31a側つまり上側(+Z側)に位置する。
この場合、シム流路部35から噴射される高速のエアに誘引された周囲の外気(二次エア)が、第1傾斜面31cおよび第2傾斜面32cにガイドされて流れることで、乱流少なくスムーズに噴射エアと合流する。このため、シム流路部35からノズル先端側へ向けた真っ直ぐで多量の気流をより安定して形成できる。
【0091】
なお本実施形態では、第1部材31、第2部材32およびシム部材33を分解することが可能であるため、例えば、第1部材31および第2部材32のいずれかを交換することにより、第1傾斜面31cおよび第2傾斜面32cの少なくとも一方の傾斜角、傾斜長さ等を適宜調整することができる。したがって、噴射エアの流量等の調整をより容易にかつ高精度に行いやすい。
【0092】
また本実施形態では、供給流路部36が、配管接続流路部37と、配管接続流路部37とシム流路部35とを繋ぐエアチャンバー38と、を有する。
この場合、エア流路34にエアチャンバー38が設けられることにより、シム流路部35から噴射されるエアの流量等を安定化させることができる。
【0093】
また本実施形態では、エアチャンバー38が、第1部材31に位置する第1チャンバー38aと、第2部材32に位置する第2チャンバー38bと、を有する。
この場合、エアチャンバー38の容積を大きく確保することができ、噴射エアの流量等をより安定化できる。
【0094】
また本実施形態では、シム流路部35が、第1チャンバー38aと第2チャンバー38bとの接続部分に繋がる。つまりシム流路部35が、エアチャンバー38のうち厚さ方向の両端縁間に位置する部分と接続される。
この場合、シム流路部35が、厚さ方向におけるエアチャンバー38の端縁に接続されることが抑制される。すなわち、シム流路部35に対して、第1チャンバー38aおよび第2チャンバー38bの両方から、つまりシム部材33の厚さ方向の両側から、シム流路部35内にエアが流入する。このため、エアチャンバー38からシム流路部35にエアが流入するときに乱流が生じにくくなり、シム流路部35から噴射されるエアの流量等がより安定する。
【0095】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0096】
前述の実施形態では、第1部材31、第2部材32およびシム部材33が、複数のネジ部材40により固定される例を挙げたが、これに限らない。第1部材31、第2部材32およびシム部材33は、シム部材33を取り外し可能に固定されていればよく、例えば、ピン部材や接着等により固定されてもよい。
【0097】
前述の実施形態では、第1部材31の第1傾斜面31cおよび第2部材32の第2傾斜面32cが、それぞれ平面状である例を挙げたが、これに限らない。第1傾斜面31cおよび第2傾斜面32cの少なくとも一方が、左右方向から見て(X軸方向)、凸曲線状や凹曲線状等であってもよい。すなわち、第1傾斜面31cおよび第2傾斜面32cの少なくとも一方が、凸曲面状や凹曲面状等であってもよい。ただし前述の実施形態のように平面状であると、ノズルの製造が容易であり、かつ噴射エアに二次エアを安定して合流させやすいことから、より好ましい。
【0098】
前述の実施形態では、第2部材32が配管接続孔32eを有する例を挙げたが、これに限らない。すなわち、第1部材31が配管接続孔を有していてもよいし、第1部材31および第2部材32の両方が配管接続孔を有していてもよい。
【0099】
前述の実施形態では、エア噴射ノズル30に互いにエア流通系統が異なる複数のエア配管部材50が設けられるとしたが、これに限らない。例えば、複数のエア配管部材50が、1つのエア流通系統から分岐されていてもよい。また、エア噴射ノズル30にエア配管部材50が1つのみ設けられ、このエア配管部材50から複数の供給流路部36に流路が分岐されていてもよい。
【0100】
前述の実施形態では、エア噴射ノズル30に、互いに同一形状とされた2つのシム流路部35が設けられる例を挙げたが、これに限らない。2つのシム流路部35は、互いに異なる形状とされていてもよい。また、3つ以上のシム流路部35が設けられていてもよい。
【0101】
前述の実施形態では、第2部材32の第2面32aが、第1部材31の第1面31aよりもノズル先端側に出っ張る部分32aaを含む例を挙げたが、これに限らない。第2部材32の第2面32aは、第1部材31の第1面31aからノズル先端側に出っ張らなくてもよい。また前述の実施形態と異なり、第1部材31の第1面31aが、第2部材32の第2面32aよりもノズル先端側に出っ張る部分を含んでいてもよい。
【0102】
前述の実施形態では、エア噴射ノズル30が、缶印刷装置A、または、DI加工装置と缶洗浄装置との間の搬送装置に設けられる例を挙げたが、これに限らない。エア噴射ノズル30は、製缶工場の上記以外の製造工程等に用いられてもよい。またエア噴射ノズル30は、製缶工場以外の各種工場においても、例えば搬送や洗浄の用途などに適宜利用可能である。
【0103】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のエア噴射ノズルによれば、スリットから噴射されるエアの調整を容易に行うことができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0105】
30…エア噴射ノズル、31…第1部材、31a…第1面、31c…第1傾斜面、32…第2部材、32a…第2面、32aa…第2面のうち第1面よりもノズル先端側に出っ張る部分、32c…第2傾斜面、33…シム部材、33c…屈曲部、34…エア流路、35…シム流路部、36…供給流路部、37…配管接続流路部、38…エアチャンバー、38a…第1チャンバー、38b…第2チャンバー