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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142521
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220922BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H02J7/00 N
H02J7/00 P
B60R16/04 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042721
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】三宅 弘志
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 昭哉
(72)【発明者】
【氏名】鳥取 紀太
(72)【発明者】
【氏名】後野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 圭司
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503DA04
5G503EA05
5G503EA06
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】作業中において、バッテリ状態を適切に把握し、適正にバッテリ充電やバッテリ交換などの対策を講じることができる作業車を提供する。
【解決手段】作業車は、バッテリ6と、バッテリ6から電力が供給される動作装置W1とを備える。さらに、動作装置W1の動作を管理する動作装置管理部74と、運転部に設けられた報知デバイス8aと、バッテリ6の電圧降下量を検出する電圧降下量検出部72と、動作装置W1の動作時の電圧降下量が許容値を超えた場合に、報知デバイス8aを通じて、電圧降下情報を報知する電圧降下管理部73とが備えられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、前記バッテリから電力が供給される動作装置とを備えた作業車であって、
運転部に設けられた報知デバイスと、
前記バッテリの電圧降下量を検出する電圧降下量検出部と、
前記動作装置の動作時の前記電圧降下量が許容値を超えた場合に、前記報知デバイスを通じて、電圧降下情報を報知する電圧降下管理部と、
を備える作業車。
【請求項2】
前記電圧降下量検出部は、前記バッテリから給電される電子制御ユニットに設けられており、前記バッテリの給電線に接続された電圧検出器の検出信号に基づいて、前記電圧降下量を検出する請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記報知デバイスは、1つの電圧降下警告灯であり、
電圧降下情報は、前記電圧降下警告灯の点滅によって報知される請求項1または2に記載の作業車。
【請求項4】
前記運転部に設けられたメータパネルに、バッテリ警告灯が備えられ、
前記バッテリ警告灯が前記電圧降下警告灯として用いられる請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
前記電圧降下管理部は、前記電圧降下量が一定時間連続して前記許容値を超えた場合に、前記電圧降下情報を報知する請求項1から4のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項6】
前記電圧降下情報の報知は、前記電圧降下量が前記許容値よりも小さい値である解除値まで回復した場合に解除される請求項1から5のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項7】
前記動作装置は前記バッテリから供給される電力により動作する請求項1から6のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項8】
前記動作装置の動作を管理する動作装置管理部が備えられている請求項1から7のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項9】
前記バッテリと接続されている外部給電口が備えられている請求項1から8のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項10】
前記動作装置には前記バッテリから供給される電力により動作するモータが備えられている請求項1から9のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項11】
前記動作装置は、前記作業車が走行停止時及び低速走行時に動作可能である請求項1から10のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項12】
前記バッテリ及び前記動作装置に電力を配線を介して供給し、電流保護のための保護部材を電力の供給経路上に有するオルタネータを備え、
前記配線及び前記保護部材の異常時に前記報知デバイスである電圧降下警告灯による警告が行われる請求項1から11のいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリと、このバッテリから供給される電力によって動作する動作装置とを備え、バッテリの状態を運転者に報知することができる作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、農作業を行うための作業機を装着したトラクタが開示されている。このトラクタは、運転者の操作に基づき作動する出力機器と、この出力機器の電源となるバッテリの容量を計測するバッテリ監視部と、バッテリ容量の情報を送信する制御部とを有する。バッテリ容量の情報に基づきバッテリ容量が一定以下になったと判定されると、表示部での表示を通じて、バッテリ容量が一定以下になったことが、運転者に知らされる。
【0003】
特許文献2には、電気負荷によってバッテリの電圧が瞬時に下がった時の電圧とバッテリの平均電圧との差電圧に基づいてバッテリの疲労状態を判断し、運転者に知らせる自動車用の装置が開示されている。通常はバッテリの平均電圧の相対値がLEDによって表示され、0.1秒以内に0.5ボルト以上の差電圧が発生したとき、その差電圧の相対値がLEDによって表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-153962号公報
【特許文献2】特開2022-283936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によるトラクタでは、バッテリ容量が一定以下になったことが運転者に知らされるので、充電等の対応が可能となる。しかしながら、作業の途中で、バッテリ充電やバッテリ交換を行うと、作業が大幅に遅れることになる。このため、バッテリ容量が一定以下になる前に、作業機の使用形態を変更するなどして、バッテリ充電やバッテリ交換などの対策が適正な時期や適正な場所で可能となるように、バッテリを常に監視するような制御が要望されている。
【0006】
特許文献2による装置では、バッテリの平均電圧と電気負荷によってバッテリの電圧が瞬時に下がった時の電圧と差電圧が運転者に知らされる。しかしながら、バッテリ電圧の低下をLEDの発光で知らせるだけでは、運転者は、バッテリ電圧低下の要因を把握することは困難である。
【0007】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、作業中において、バッテリ状態を適切に把握し、適正にバッテリ充電やバッテリ交換などの対策を講じることができる作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の作業車は、バッテリと、前記バッテリから電力が供給される動作装置とを備え、さらに、運転部に設けられた報知デバイスと、前記バッテリの電圧降下量を検出する電圧降下量検出部と、前記動作装置の動作時の前記電圧降下量が許容値を超えた場合に、前記報知デバイスを通じて、電圧降下情報を報知する電圧降下管理部とを備える。
【0009】
この構成では、電力消費の大きな動作装置が運転者による操作によって動作した際のバッテリの電圧降下量が監視され、その電圧降下量が許容値を超えた場合には、電圧降下情報として報知デバイスを通じて、運転者に報知される。これにより、運転者は、動作装置をどのように操作すると、許容値を超えるバッテリの電圧降下が生じるのかを把握することができる。そのような電圧降下が生じた場合、対応する操作をできるだけ回避しながら作業走行を続けることができ、さらに適正な時期または適正な場所でバッテリ充電やバッテリ交換などの対策を講じることができる。なお、動作装置には、直接作業車の車体に連結機構を介して装着される装置や、バッテリから給電されるその他の装置などが含まれる。
【0010】
作業車は、水田や泥地などの電気系統にとって劣悪な環境条件下で走行することが少なくない。正確な測定を維持するために、電圧降下量検出部は水や泥などから防護される必要があるが、電圧降下量検出部のために特別な防護構造を採用することは、コスト的に問題がある。この問題を解決するためには、作業車の電子制御ユニットは水や泥などから防護されるように防護対策が講じられているので、この電子制御ユニットに電圧降下量検出部を組み込むことが好適である。また、多くの電子制御ユニットには精度の高い電圧を作り出す電源回路が組み込まれているので、この電源回路の電圧を電圧降下量検出部に利用することも好適である。このことから、好適な実施形態の1つでは、前記電圧降下量検出部は、前記バッテリから給電される電子制御ユニットに設けられており、前記バッテリの給電線に接続された電圧検出器の検出信号に基づいて、前記電圧降下量を検出する。
【0011】
許容値を超えるバッテリの電圧降下が生じたことを、作業走行中の運転者に確実に知らせるために視覚的な刺激を利用すると、騒音等に邪魔されないので、好都合である。このことから、好適な実施形態の1つでは、前記報知デバイスは、1つの電圧降下警告灯であり、電圧降下情報は、前記電圧降下警告灯の点滅によって報知される。
【0012】
作業走行中の運転者は、種々の走行情報や作業情報が表示されるメータパネルを注視する。このことから、電圧降下警告灯はメータパネル内やメータパネル周辺に配置されることが好ましい。さらには、メータパネル内に配置されている種々の警告灯、特にバッテリ警告灯を電圧降下警告灯として流用すると、スペース的にかつコスト的に利点がある。バッテリ警告灯は、よく知られているように、オルタネータの故障や配線不良など、バッテリにとって不都合な場合に点灯するものである。このバッテリ警告灯を点灯させるのではなく、点滅させることで、バッテリの電圧降下を報知するような形態は、運転者にとっても好都合である。このことから、好適な実施形態の1つでは、前記運転部に設けられたメータパネルに、バッテリ警告灯が備えられ、前記バッテリ警告灯が前記電圧降下警告灯として用いられる。
【0013】
動作装置の動作時における電圧降下は経時的に変動するので、瞬間的に許容値を超えるバッテリの電圧降下が生じるケースがある。このような瞬間的な電圧降下は、バッテリに大きな影響を与えないので、運転者に報知する必要はない。また、許容値を超えるバッテリの電圧降下とその回復が繰り返すケースもある。この場合は、一瞬回復してもまた低下するので、直ちに報知を停止しない方がよい。前者のケースに対処するためには、前記電圧降下管理部は、前記電圧降下量が一定時間連続して前記許容値を超えた場合に、前記電圧降下情報を報知することが好適である。また後者のケースに対処するためには、前記電圧降下情報の報知は、前記電圧降下量が前記許容値よりも小さい値である解除値まで回復した場合に解除されることが、つまり、その電圧降下の検出とその回復の検出に制御的なヒステリシスを設けることが好適である。
【0014】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記動作装置は前記バッテリから供給される電力により動作する。その動作エネルギをバッテリから供給される電力に依存する動作装置は、その動作時の電力消費が大きいので、動作装置の動作時における電圧降下のチェックは重要である。また、エンジンからの回転動力によって動作するような動作装置においても、バッテリから供給される電力を必要とする部品が付属している場合、そのような動作装置の動作時における電圧降下のチェックは必要である。
【0015】
動作装置の動作時の電圧降下をきめ細かくチェックするためには、動作装置の動作をきめ細かく管理する動作装置管理が必要となる。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記動作装置の動作を管理する動作装置管理部が備えられている。
【0016】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記バッテリと接続されている外部給電口が備えられている。外部給電口が備えられた作業車では、上記の動作装置(インプルメントなど)以外の種々の電装機器を外部機器として外部給電口に接続することで、種々の作業が実施可能となる。そのような場合でも、外部給電口に接続された電装機器の動作時の電圧降下のチェックは可能である。
【0017】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記動作装置には前記バッテリから供給される電力により動作するモータが備えられている。このような構成において、動作装置(インプルメントなど)に備えられたモータの動作状態に応じて生じる電圧降下のチェックが可能なので、バッテリにダメージを与えることを抑制しながら、モータを動作させることができる。
【0018】
消費電力の大きな動作装置を備えている作業車では、エンジンの回転動力でバッテリを充電させる機能が備えられている。しかしながら、エンジン回転数が定格回転数を下回る低速回転、アイドリング回転、さらにはエンジン回転停止の場合、バッテリ充電が不十分となるか、あるいは不可能となる。しかしながら、作業車が走行停止時(エンジン回転停止時を含む)及び低速走行時(アイドリング回転時を含む)に動作装置が動作可能であるような実施形態でも、つまり、作業車の通常作業以外の作業として、エンジン回転数を落として動作装置を動作させることができる実施形態においても、本願発明では、そのような動作装置の動作時の電圧降下のチェックによって、バッテリにダメージを与えることを抑制しながら、動作装置を動作させることができる。
【0019】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記バッテリ及び前記動作装置に電力を配線を介して供給し、電流保護のための保護部材を電力の供給経路上に有するオルタネータを備え、前記配線及び前記保護部材の異常時に前記報知デバイスである電圧降下警告灯による警告が行われる。この構成では、オルタネータ自体の故障を検知するだけではなく、従来の作業車では、検知することができなかった、保護部材であるヒューズの溶断や配線の切断なども、本願発明による電圧降下のチェックを通じて、推定することが可能となる。つまり、オルタネータ関連の故障を事前に(疑似的に)把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】作業車の一例であるトラクタの側面図である。
図2】トラクタの平面図である。
図3】バッテリとバッテリ関連機器の配置を模式的に示す平面図である。
図4】バッテリの電圧降下の報知に関する機能を示す機能ブロック図である。
図5】メータパネルの正面図である。
図6】動作装置や外部機器の動作時におけるバッテリの許容値を超える電圧降下を報知する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る作業車は、バッテリ電圧降下を運転者に報知するように構成される。以下、本実施形態の作業車について、トラクタを例として説明する
【0022】
図1はトラクタの側面図であり、図2はトラクタの平面図である。なお、以下の説明では、トラクタに関し、図1及び図2に示される矢印Fの方向を「前方向」、矢印Bの方向を「後方向」、矢印Uの方向を「上方向」、矢印Dの方向を「下方向」、矢印Lの方向を「左方向」、矢印Rの方向を「右方向」とする。
【0023】
トラクタは、車体1に左右の前車輪2と左右の後車輪3とを備え、車体1の前部のエンジンボンネット4の内部にエンジンEを備え、車体1の後部位置に運転部9が配置されている。このトラクタは、車体1の後方に、例えば、ロータリなどの各種のインプルメントやモータを備えるような電動インプルメント、給水装置や肥料供給装置などの給電が必要な動作装置W1(図1及び図2では仮想線で示されている)が装備可能である。動作装置W1に代えて、あるいは動作装置W1と共に外部機器W2が装備されてもよい。
【0024】
トラクタは、エンジンEの駆動力を変速するトランスミッション5が車体1の前後中央部から車体1の後部に亘る領域に配置される。また、トランスミッション5の後端には、エンジン動力が必要な動作装置W1にエンジン動力を伝達するための外部動力取出軸34(PTO軸)が後方に突出する形態で備えられている。
【0025】
運転部9には、例えば、上面にレバーガイド10を有する左右の後輪フェンダー10aの中間位置に、運転者が着座する運転座席11が備えられ、運転座席11の前方に、車体1を操舵するステアリングホイール12が備えられる。運転部9にはフロア13が設けられ、フロア13には主変速ペダル19が備えられる。運転座席11の左側の後輪フェンダー10aの上面のレバーガイド10には、レバーガイド10から上方に突出する主変速レバー21と副変速レバー23とが横並びで配置されている。
【0026】
運転座席11の右側の後輪フェンダー10aの上面のレバーガイド10には、動作装置W1の駆動速度を変更する速度変更レバー24がレバーガイド10から上方に突出して配置されている。フロア13には、前方向を見て横並びの状態で(車体1の幅方向に沿って)、車体1を停止させることが可能な2つのブレーキペダル20が設けられる。この2つのブレーキペダル20は、左右夫々が独立してあり、左側のブレーキペダル20を踏み込むことで左側の後車輪3にブレーキをかけることができ、右側のブレーキペダル20を踏み込むことでトラクタの右側の後車輪3にブレーキをかけることができるように構成されている。
【0027】
さらに、運転座席11の周辺には、動作装置W1や外部機器W2の操作を行うための速度変更レバー24以外の動作装置操作器である動作装置操作器群25が備えられている。動作装置操作器群25は、車体1に設けられるだけでなく、リモコン装置として構成されてもよい。動作装置操作器群25は、単一レバーや単一スイッチなどの単一の操作器も含まれる。
【0028】
次に、図3を用いて、このトラクタの給電システムを説明する。車体1の前領域で、エンジンEの前方にバッテリ6が配置されている。エンジンEの前部には、スタータSMやオルタネータAが設けられている。運転座席11の前方に、メータパネル8が配置され、運転座席11の下方に電子制御ユニット7が配置されている。さらに、車体1の後部には、給電ソケットである外部給電口61が設けられている。外部給電口61が所定電圧(例えば100V)の電流を流すように構成されている場合、この外部給電口61に汎用的な電気機器を接続し、外部機器W2として利用することができる。なお、このトラクタに専用的に用いられる動作装置W1に給電が必要な場合、専用コネクタを用いて、バッテリ6に接続された配線である給電線60と接続される。バッテリ6、エンジンE、スタータSM、オルタネータA、メータパネル8、電子制御ユニット7、外部給電口61、さらに図示されていない他の電気機器も給電線60と接続されている。図3では、給電線60が、車体1の右側方をほぼ直線状に延びている。このように、給電線60が、車体1の右側方または左側方のいずれか一方を直線状に延びていることは、給電線60の敷設や保守点検の観点から利点がある。
【0029】
バッテリ6は、オルタネータAによって発電された電力によって充電される。エンジンE、スタータSM、オルタネータA、メータパネル8、電子制御ユニット7、外部給電口61に接続された外部機器W2、給電線60に接続された動作装置W1は、オルタネータAによって発電された電力の供給を受ける。オルタネータAが停止の場合、またはオルタネータAによる発電量が需要量を下回る場合には、バッテリ6から電力の供給を受ける。
【0030】
図4には、バッテリ6の状態を検知して報知する電子制御ユニット7の機能ブロックが示されている。この実施形態では、電子制御ユニット7は、電圧検出器71、電圧降下量検出部72、電圧降下管理部73、動作装置管理部74、表示制御部75を備えている。
【0031】
動作装置管理部74は、トラクタに装備されている動作装置W1や外部給電口61に接続されている外部機器W2の動作状態を管理する。この実施形態では、外部機器W2は、動作装置W1と同等品として取り扱われる。このため、動作装置管理部74には、動作装置W1及び外部機器W2を操作する動作装置操作器群25や専用リモコンの操作信号が入力される。電圧降下管理部73は、入力された動作信号に基づき、動作装置W1や外部機器W2が動作していることを示す動作フラグを「ON」とする。
【0032】
電圧検出器71は給電線60に接続された電気回路であり、給電線60の電圧変動を検出する。電圧検出器71によって検出された電圧変動検出信号は電圧降下量検出部72に送られる。電圧降下量検出部72は、電圧検出器71から送られた電圧変動検出信号に基づいて、バッテリ6の電圧降下量を検出(算出)する。
【0033】
電圧降下管理部73は、動作装置W1や外部機器W2の動作時において、つまり動作装置管理部74から動作フラグ「ON」が与えられている間において、電圧降下量検出部72によって検出された電圧降下量が許容値を超えた場合に、電圧降下の状態を示す電圧降下情報を作成する。電圧降下情報に電圧降下警告指令が含まれている場合、この電圧降下警告指令は表示制御部75に与えられる。表示制御部75は、受けとった電圧降下警告指令に基づいて、報知デバイスの一つの形態であるメータパネル8を制御して、電圧降下警告を報知する。
【0034】
電圧降下管理部73は、電圧降下警告指令の発令モードとして第1モードと第2モードのいずれか、あるいはその両方を有する。第1モードでは、電圧降下管理部73は、電圧降下量が一瞬でも許容値を超えると、電圧降下警告指令を表示制御部75に与える。第2モードでは、電圧降下管理部73は、電圧降下量が一瞬だけ許容値を超えただけでは、電圧降下警告指令を表示制御部75に与えず、電圧降下量が一定時間連続して前記許容値を超えた場合に、電圧降下警告指令を表示制御部75に与える。また、この電圧降下警告の報知解除は、電圧降下量が許容値よりも小さい値である解除値まで回復した場合に行われる。つまり、電圧降下警告の報知とその解除は、制御的ヒステリシスをもって行われる。もちろん、この制御的ヒステリシスは、必須ではなく、ヒステリシスなしで電圧降下警告の報知解除が行われてもよい。
【0035】
図5に、メータパネル8の一例が示されている。メータパネル8は、運転部9の前方に設けられたフロントパネルに組み込まれている。このメータパネル8は、一般的な仕様を有しており、エンジン回転計80、エンジン油圧警告灯81、バッテリ警告灯82、燃料残量計83などが配置されている。メータパネル8の表示は、表示制御部75によって制御される。
【0036】
この実施形態では、バッテリ警告灯82は、バッテリ6の電圧降下量が許容値を超えたことを報知する電圧降下警告灯8aとしても用いられる。表示制御部75は電圧降下管理部73から電圧降下警告指令を受けると、表示制御部75は、バッテリ警告灯82、つまり電圧降下警告灯8aを点滅させる。つまり、バッテリ警告灯82は、バッテリ6の充電不良の発生の時は点灯し(図5の(a)参照)、バッテリ6の許容値を超える電圧降下の時は点滅する(図5の(b)参照)。
【0037】
図6に、動作装置W1や外部機器W2の動作時におけるバッテリ6の許容値を超える電圧降下を報知する処理の一例を示すフローチャートが示されている。トラクタが駆動すると、電圧降下警告処理と動作装置管理処理がスタートする。
【0038】
動作装置管理処理では、動作装置管理部74が、動作装置W1(または外部機器W2)の動作または非動作をチェックする(#101)。動作中であれば(#101動作分岐)、動作フラグに「ON」がセットされ(#102)、非動作であれば(#101非動作分岐)、動作フラグに「OFF」がセットされる(#103)。動作フラグの内容は、電圧降下警告処理で参照される。
【0039】
電圧降下警告処理では、初期処理として、警告フラグに「OFF」がセットされる(#01)。本処理に入ると、電圧検出器71によってバッテリ6の電圧変動が検出される(#02)。さらに、電圧検出器71の検出値に基づいて、電圧降下量検出部72は、バッテリ6の電圧降下量を算出する(#03)。次いで、動作フラグの内容がチェックされる(#04)。
【0040】
ステップ#04のチェックで、動作フラグの内容が「ON」であれば(#04ON分岐)、さらに、電圧降下量が許容値を超えているかどうかチェックされる(#05)。電圧降下量が許容値を超えていれば(#05Yes分岐)、電圧降下管理部73によって警告フラグに「ON」がセットされるとともに(#06)、電圧降下情報として電圧降下警告指令が作成され、表示制御部75に発令される(#07)。電圧降下警告指令を受けた表示制御部75は、電圧降下警告灯8aとして機能するバッテリ警告灯82を点滅させる(#08)。そして、ステップ#02に戻る。
【0041】
ステップ#05のチェックで、電圧降下量が許容値を超えていなければ(#05No分岐)、さらに、電圧降下量が解除値(許容値よりも小さい値である)を超えているかどうかチェックされる(#11)。電圧降下量が解除値を超えていれば(#11Yes分岐)、ステップ#02に戻る。つまり、現状において電圧降下警告が行われていない場合では、電圧降下量が解除値を超えていても許容値を超えていないので、そのままステップ#02に戻って、その後の様子をみる。また、現状において電圧降下警告が行われている場合では、電圧降下量が許容値を下回って、許容値と解除値との間のレベルまでは電圧降下が回復してきているが、まだ電圧降下警告を解除するほどは回復していないとみなされ、バッテリ警告灯82の点滅は続行され、さらにその後の様子をみるため、ステップ#02に戻る。
【0042】
ステップ#04のチェックで、動作フラグの内容が「OFF」であれば(#04OFF分岐)、あるいは、ステップ#11のチェックで、電圧降下量が解除値以下であれば(#11No分岐)、ステップ#21に進む。ステップ#21では、警告フラグの内容が「ON」であるか、「OFF」であるかチェックされる。このステップ#21のチェックは、現在、電圧降下警告中であるかどうかのチェックである。警告フラグの内容が「ON」であれば(#21ON分岐)、警告フラグに「OFF」がセットされ(#22)、電圧降下情報としての警告指令が解除される(#23)。警告指令の解除を受けた表示制御部75は、バッテリ警告灯82の点滅を停止させ、消灯させる(#24)。そして、ステップ#02に戻る。
【0043】
ステップ#21のチェックで、警告フラグの内容が「OFF」であれば(#21OFF分岐)、ステップ#02に戻る。
【0044】
なお、このフローチャートでは、ステップ#05のチェックで、電圧降下量が許容値を超えていれば、電圧降下管理部73は、直ちに電圧降下警告処理(#06、#07、#08)を行っているが、このステップ#05において、タイマー処理を行って、電圧降下量が一定時間連続して許容値を超えた場合に初めて、電圧降下警告処理が行われるように構成されてもよい。
【0045】
上述した本願発明による電圧降下の検出と報知は、特に、エンジン回転数が低く抑えられていることから、オルタネータAの発電量が低下している場合やバッテリ6の容量が小さい場合に、動作装置W1や外部機器W2の動作と過放電によるバッテリ6のダメージとを考慮できるので、利点がある。例えば、深夜での除雪作業の場合、騒音防止のため、エンジン回転数が低く抑えられながら作業がおこなわれるので、本願発明は効果的である。また、除雪に限らず、気温の低い状況での作業において、低温によるバッテリ6の出力特性の低下が起こりやすくなるため、本願発明は効果的である。また、キャンプ地などにおいて、エンジンEを停止した状態で、外部給電口61に、ランプなどのキャンプ用電気機器を接続する際にも、本願発明は効果的である。
【0046】
〔その他の実施形態〕
(1)図4で示された機能ブロック図における各機能部の区分けは、説明を分かりやすくするための一例であり、種々の機能部を統合したり、単一の機能部を複数に分割したりすることは自由である。例えば、電圧検出器71と電圧降下量検出部72とは一体構成してもよいし、さらに別な機能部を付加してもよい。また、電圧検出器71に代えて、電流を検出して、結果的にバッテリ電圧降下を算出するような機能部で置き換えてもよい。
【0047】
(2)図2図3で示された電装部品の配置は一例であり、例えば、オルタネータAはエンジンEの後部に配置してもよい。電子制御ユニット7も、フロントパネルの内部や運転座席11の後部に配置してもよい。また、給電線60を、車体1に搭載される各部品のレイアウトに合わせて配線してもよい。
【0048】
(3)上記実施形態では、バッテリ電圧降下を報知する報知デバイスとして、バッテリ警告灯82と兼用されている電圧降下警告灯8aが用いられているが、独立した警告灯が用いられてもよい。また、電圧降下警告灯8aとともに、あるいは電圧降下警告灯8aに代えて、音声で電圧降下情報を報知するスピーカやブザー、メッセージ表示で電圧降下情報を報知するディスプレイなどが報知デバイスとして用いられてもよい。
【0049】
(4)上記実施形態では、動作装置W1や外部機器W2の動作時においてバッテリ6の電圧降下量が許容値を超えた場合に、電圧降下情報が報知されたが、動作装置W1や外部機器W2の非動作時においても、電圧降下情報が報知されてもよい。その場合、動作装置W1の動作時と非動作時とにおいて、報知の形態が識別可能であることが好ましい。また、図6に示したように#04として動作フラグがフローにあるが、このチェックを行わなくてもよい。つまり、電圧変動の検出と電圧降下量の算出からフローを動作させるようにしてもよい。
【0050】
(5)図2を用いて上記実施形態で説明された、運転部9の周辺及び運転座席11の周辺におけるパネルやレバーやペダルなどの構成部材の配置は、一例であり、本願発明は、そのような構成部材やその配置に限定されるわけではない。
【0051】
(6)上記実施形態では、作業車としてトラクタを例に挙げて説明したが、作業機はトラクタ以外の作業車、すなわち田植機、コンバイン、建設機械、芝刈機、土木作業や森林作業や除雪作業等を行う作業車などであっても良い。
【0052】
(7)上記実施形態では、図4図6で示されたように、動作装置管理部74を備えたものや、動作装置管理処理を行うもの、図6の#04として動作フラグをフローに備えるものを示したが、動作装置管理部74や動作装置管理処理を備えなくてもよい。つまり、動作装置W1の状態を検出することによらず、電圧変動の検出や電圧降下量の算出が行え、その検出や算出により電圧降下の警告が行えるものであればよい。
【0053】
(8)上記実施形態では、外部給電口61に汎用的な電気機器を接続し、外部機器W2として利用することができると説明したが、例えば、ランプやエアコン、デフォッガなどを追加で接続してもよい。
【0054】
(9)また、オルタネータAに関連する部品として、異常電流からオルタネータAを保護する電流保護のためのヒューズ機能を備える保護部材を電力の供給経路上に備えていてもよい。当該保護部材は異常電流が入力された際に保護部材自体が溶断されることでオルタネータAを保護するものである。この保護部材の溶断やオルタネータAに連結される配線の断線などの故障については、その故障検知機能を備えていない場合において作業者はバッテリ6があがる(バッテリ6の容量がなくなる)まで気が付くことができない可能性が高い。しかし、本願発明により、電圧降下である状況をバッテリあがりが起こる前段階で作業者が知ることができ、バッテリ上がりによる作業者の不利益を回避することが可能となるため、本願発明は効果的である。バッテリ上がりによる作業者の不利益は種々存在する。例えば、夜間での作業中での急なエンジン停止による作業の続行が不可能となることや、バッテリ上がりによるバッテリ性能の劣化の促進によりバッテリ交換コストの増大、予定していた作業が行えないことによる作業遅れ、再始動のための準備や手間、などがある。
【0055】
(10)また、動作装置W1、外部機器W2として車体1の後方に例えばロータリなどの各種のインプルメント、モータを備えるような電動インプルメント、給水装置、肥料供給装置などの給電が必要なものを示したが、これに限定されない。さらに、動作装置W1や外部機器W2は、作業車の低速走行時や走行停止時においても使用する状況が想定されるため、低速走行時や停車時においてはエンジンEの回転数が低下し、それによりオルタネータAの出力も低下する。このような状況においても本願発明は効果的である。
【0056】
(11)つまり本願発明は、低温時によるバッテリ出力特性の低下、エンジンEの低回転時によるオルタネータAの出力の低下、各種インプルメントによる消費電力の増加、電装品の使用による消費電力の増加、などの組み合わせにより、バッテリ電圧の低下が起きた際に効果的である。さらに、上述したように、オルタネータAやオルタネータAに関連する部品の異常発生時においても、バッテリ上がりが起こる前段階にて異常が発生していることを作業者に知らせることができる。
【0057】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、バッテリを搭載した作業車に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 :車体
2 :前車輪
3 :後車輪
4 :エンジンボンネット
5 :トランスミッション
6 :バッテリ
7 :電子制御ユニット
8 :メータパネル
8a :電圧降下警告灯(報知デバイス)
9 :運転部
25 :動作装置操作器群
34 :外部動力取出軸
60 :給電線
61 :外部給電口
71 :電圧検出器
72 :電圧降下量検出部
73 :電圧降下管理部
74 :動作装置管理部
75 :表示制御部
80 :エンジン回転計
81 :エンジン油圧警告灯
82 :バッテリ警告灯
83 :燃料残量計
A :オルタネータ
E :エンジン
SM :スタータ
W1 :動作装置
W2 :外部機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6