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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142545
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】保護素子及びバッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/12 20060101AFI20220922BHJP
   H01H 37/76 20060101ALI20220922BHJP
   H01H 85/11 20060101ALI20220922BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220922BHJP
   H01M 10/44 20060101ALN20220922BHJP
【FI】
H01H85/12
H01H37/76 F
H01H85/11
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042754
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】小森 千智
【テーマコード(参考)】
5G502
5H030
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502AA02
5G502AA11
5G502AA20
5G502BB08
5G502BB17
5G502BC07
5G502BD02
5G502CC03
5G502CC32
5G502EE04
5G502EE06
5G502FF08
5H030AA09
5H030AS08
5H030AS12
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】ヒューズエレメントの破断を防止し、大電流化にも対応可能な保護素子及びこれを用いたバッテリパックを提供する。
【解決手段】外部回路と接続される第1の電極3及び第2の電極4を有するベース基板2と、ベース基板2に一方の面5aが支持され、第1の電極3及び第2の電極4と接続された可溶導体5と、発熱することにより可溶導体5を溶断する発熱体6が設けられた発熱体付き基板7を備え、可溶導体5は他方の面5bと発熱体付き基板7との接点が1箇所である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部回路と接続される第1の電極及び第2の電極を有するベース基板と、
上記ベース基板に一方の面が支持され、上記第1の電極及び第2の電極と接続された可溶導体と、
発熱することにより上記可溶導体を溶断する発熱体が設けられた発熱体付き基板を備え、
上記可溶導体は他方の面と上記発熱体付き基板との接点が1箇所である保護素子。
【請求項2】
上記発熱体は、上記発熱体付き基板の上記可溶導体と接する面と反対の面側に形成されている請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
上記発熱体は、上記発熱体付き基板の上記可溶導体と接する面側に形成されている請求項1に記載の保護素子。
【請求項4】
複数の上記可溶導体を有し、各上記可溶導体と上記発熱体付き基板との接点が1箇所である請求項1~3のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項5】
上記発熱体付き基板は、セラミック基板である請求項1~4のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項6】
上記ベース基板は、上記発熱体付き基板よりも、上記可溶導体に対する線膨張係数差が小さい請求項1~5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項7】
上記発熱体付き基板は複数の上記発熱体が形成されている請求項1~6のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項8】
1つ以上のバッテリセルと、
上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子と、
上記バッテリセルの電圧値を検出して上記保護素子への通電を制御する電流制御素子を備え、
上記保護素子は、
外部回路と接続される第1の電極及び第2の電極を有するベース基板と、
上記ベース基板に一方の面が支持され、上記第1の電極及び第2の電極と接続された可溶導体と、
発熱することにより上記可溶導体を溶断する発熱体が設けられた発熱体付き基板を備え、
上記可溶導体は他方の面と上記発熱体付き基板との接点が1箇所である
バッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電流経路を溶断することにより、電流経路上に接続された回路を保護する保護素子、及びこれを用いたバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
充電して繰り返し利用することのできる二次電池の多くは、バッテリパックに加工されてユーザに提供される。特に重量エネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池においては、ユーザ及び電子機器の安全を確保するために、一般的に、過充電保護、過放電保護等のいくつもの保護回路をバッテリパックに内蔵し、所定の場合にバッテリパックの出力を遮断する機能を有している。
【0003】
このようなリチウムイオン二次電池等向けの保護回路の保護素子として、保護素子内部に発熱体を有し、この発熱体の発熱によって電流経路上の可溶導体を溶断する構造が用いられている。
【0004】
リチウムイオン二次電池の用途は、近年拡大しており、より大電流の用途、例えば電動ドライバ等の電動工具や、ハイブリッドカー、電気自動車、電動アシスト自転車等の輸送機器への採用が開始されている。これらの用途において、特に起動時等には、数10A~100Aを超えるような大電流が流れる場合がある。このような大電流容量に対応した保護素子の実現が望まれている。また、様々なアプリケーションへの採用が広がるにつれて、小型化や低背化といったレイアウトへの制約が少ない部品の要求も高まっている。
【0005】
このような大電流に対応する保護素子を実現するために、断面積を増大させた可溶導体を用い、発熱体を形成した絶縁基板の表面にこの可溶導体を接続した保護素子が提案されている。
【0006】
図13は、従来の保護素子の一構成例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図であり、(B)はA-A’断面図である。図13に示す保護素子100は、絶縁基板101と、絶縁基板101の表面上に形成されるとともに絶縁基板101の裏面に形成された第1、第2の外部接続電極102a,103aを介して外部回路の電流経路上に接続される第1、第2の電極102、103と、絶縁基板101の表面に形成され通電すると発熱する発熱体104と、発熱体104を被覆する絶縁層105と、絶縁層105上に積層されるとともに発熱体104と接続された発熱体引出電極106と、第1の電極102、発熱体引出電極106、及び第2の電極103にわたって接続用ハンダを介して搭載されるヒューズエレメント107とを備える。
【0007】
発熱体104は、絶縁基板101の表面上に形成された発熱体給電電極108と接続されている。発熱体給電電極108は、絶縁基板101の裏面に形成された図示しない第3の外部接続電極とキャスタレーションを介して接続されている。発熱体104は、第3の外部接続電極を介して外部回路に設けられた外部電源と接続されている。そして、発熱体104は、図示しないスイッチ素子等により常時、電流及び発熱が制御されている。
【0008】
発熱体104は、ガラス層等からなる絶縁層105によって被覆されるとともに、絶縁層105上に形成された発熱体引出電極106と、絶縁層105を介して重畳されている。絶縁層105は、例えばガラスペーストを印刷、焼成することにより形成されている。また、発熱体引出電極106上には第1、第2の電極102,103間にわたって接続されたヒューズエレメント107が接続されている。
【0009】
ヒューズエレメント107は、絶縁層105を介して発熱体104に重畳されることにより発熱体104と熱的に接続され、発熱体104が通電によって発熱すると溶断される。
【0010】
ヒューズエレメント107は、Pbフリーハンダなどの低融点金属により形成され、あるいは低融点金属が高融点金属に被覆された積層構造を有する。そして、ヒューズエレメント107は、第1の電極102から発熱体引出電極106を経て第2の電極103にかけて接続されることにより、保護素子100が組み込まれた外部回路の電流経路の一部を構成する。そして、ヒューズエレメント107は、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、あるいは発熱体104の発熱により溶断し、第1、第2の電極102,103間を遮断する。
【0011】
そして、保護素子100は、外部回路の電流経路を遮断する必要が生じると、スイッチ素子により発熱体104へ通電される。これにより、発熱体104は高温に発熱し、外部回路の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント107を溶融させる。ヒューズエレメント107の溶融導体は、濡れ性の高い発熱体引出電極106及び第1、第2の電極102,103に引き寄せられる。これによりヒューズエレメント107の第1の電極102~発熱体引出電極106~第2の電極103の間が溶断され、外部回路の電流経路が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第6030431号公報
【特許文献2】特開2016-225090号公報
【特許文献3】特開2015-228302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ヒューズエレメント107を構成する低融点金属の融点は300℃程度であり、これを溶融する発熱体104には、1000℃程度まで発熱できる性能が求められている。また、発熱体104が設けられる絶縁基板101にも発熱体104の発熱に耐える熱的強度が求められており、セラミック基板等が用いられている。
【0014】
また、通電経路に配置されるため、導電体としてのヒューズエレメント107は、第1、第2の電極102、103の少なくとも2箇所で接続される必要が有る。
【0015】
なお、絶縁基板の発熱体を補助することを目的として、ヒューズエレメント上を覆うカバー部材に発熱体を内蔵させる構造や(特許文献1)、ヒューズエレメントを熱衝撃から保護することを目的として、導電性の弾性部材をヒューズエレメントと筐体側の構成部材との間に介在させ、応力を分散・緩和する構造(特許文献2)、外部電極端子を用意して、ヒューズエレメントが発熱体が設けられた絶縁基板の表面電極のみ支持される構成とすることで応力を分散する構造(特許文献3)も提案されている。
【0016】
先に挙げた特許文献1~3に記載された発明は非常に簡便な構造で、極めて安全性の高い保護素子の提供が可能となっているが、発熱体の発熱に耐える絶縁基板(主としてセラミック基板)上に低融点金属(主としてスズや鉛のはんだ合金)からなるヒューズエレメントを接続する構造である。これらセラミック基板とヒューズエレメントは、冷熱サイクルにさらされた場合において、線膨張係数の違いによって、機械的な応力が発生し、その応力によって、セラミック基板と比較して機械強度の低いヒューズエレメントが徐々に引き裂かれていくという不具合が生じ得る。
【0017】
特に大電流に対応するために低融点金属の断面積を拡大した場合には、線膨張による応力が大きくなるため、ヒューズエレメントの破断に至るまでの期間がより短くなる傾向にある。
【0018】
特許文献2~3に記載された発明は導電性の弾性部材や外部電極を用いる構成であるが、導電性部材を追加する事によって導体抵抗値が上昇するため大電流化に不向きであるといった課題や、外部電極の追加による大型化や製造工数の増加、コストアップ等の課題もある。
【0019】
そこで、本技術は、ヒューズエレメントの破断を防止し、大電流化にも対応可能な保護素子及びこれを用いたバッテリパックを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した課題を解決するために、本技術に係る保護素子は、外部回路と接続される第1の電極及び第2の電極を有するベース基板と、上記ベース基板に一方の面が支持され、上記第1の電極及び第2の電極と接続された可溶導体と、発熱することにより上記可溶導体を溶断する発熱体が設けられた発熱体付き基板を備え、上記可溶導体は他方の面と上記発熱体付き基板との接点が1箇所である。
【0021】
また、本技術に係るバッテリパックは、1つ以上のバッテリセルと、上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子と、上記バッテリセルの電圧値を検出して上記保護素子への通電を制御する電流制御素子を備え、上記保護素子は、外部回路と接続される第1の電極及び第2の電極を有するベース基板と、上記ベース基板に一方の面が支持され、上記第1の電極及び第2の電極と接続された可溶導体と、発熱することにより上記可溶導体を溶断する発熱体が設けられた発熱体付き基板を備え、上記可溶導体は他方の面と上記発熱体付き基板との接点が1箇所である。
【発明の効果】
【0022】
本技術によれば、可溶導体と発熱体付き基板との接点が1箇所であるため、高温環境と低温環境への曝露が繰り返された場合にも、可溶導体に内部応力による歪みや破断等の損傷が生じることがなく、外形や寸法の安定性を有する。これにより、本技術に係る保護素子及びバッテリパックは、可溶導体の抵抗値が安定し、高定格を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本技術が適用された保護素子を示す図であり、(A)は平面図、(B)はB-B’断面図、(C)はA-A’断面図である。
図2図2は、ベース基板2を示す平面図である。
図3図3は、可溶導体が溶融した状態を示す断面図である。
図4図4は、可溶導体を示す断面斜視図である。
図5図5は、保護素子の回路構成を示す図である。
図6図6は、保護素子の変形例を示す断面図である。
図7図7は、変形例に係る保護素子の回路構成を示す図である。
図8図8は、保護素子の変形例を示す断面図である。
図9図9は、保護素子の変形例を示す断面図である。
図10図10は、保護素子の変形例を示す断面図である。
図11図11は、保護素子の変形例を示す断面図である。
図12図12は、バッテリパックの構成例を示す回路図である。
図13図13は、従来の保護素子の一構成例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図であり、(B)はA-A’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本技術が適用された保護素子及びこれを用いたバッテリパックについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0025】
本技術が適用された保護素子1は、図1に示すように、外部回路と接続される第1の電極3及び第2の電極4を有するベース基板2と、ベース基板2に一方の面5aが支持され、第1の電極3及び第2の電極4と接続された可溶導体5と、発熱することにより可溶導体5を溶断する発熱体6が設けられた発熱体付き基板7を備える。
【0026】
そして、可溶導体5は他方の面5bと発熱体付き基板7との接点が1箇所である。ここで、後述するように、発熱体6が設けられる発熱体付き基板7は、発熱体6の発熱に耐える熱的強度が求められるため、セラミック基板等が用いられている。一方、可溶導体5は、発熱体6の発熱により溶融し得る低融点金属を主成分とする。そのため、可溶導体5と発熱体付き基板7には線膨張係数の違いがあり、ベース基板2に支持された可溶導体5と発熱体付き基板7との接点が複数存在すると、リフロー実装や実装された製品の使用環境等による高温環境と低温環境への曝露が繰り返された場合に、セラミック基板との線膨張係数の違いにより可溶導体5に内部応力が生じ、歪みや破断等の損傷が生じ得る。
【0027】
しかし、保護素子1は、可溶導体5と発熱体付き基板7との接点が1箇所であるため、高温環境と低温環境への曝露が繰り返された場合にも、可溶導体5に内部応力による歪みや破断等の損傷が生じることがなく、外形や寸法の安定性を有する。これにより、保護素子1は、可溶導体5の抵抗値が安定し、高定格を維持することができる。
【0028】
また、発熱体付き基板7との接点が複数存在する場合、大電流に対応するために可溶導体5の断面積を拡大すると、発熱体付き基板7との線膨張係数差に起因する応力が大きくなるため、破断に至るまでの期間がより短くなる傾向にある。しかし、保護素子1は、発熱体付き基板7との線膨張係数差に起因する内部応力の発生及び損傷が防止されているため、可溶導体5の断面積の拡大による大電流への対応も可能となる。
【0029】
なお、可溶導体5は、第1、第2の電極3,4等のベース基板2の構成要素と複数の接点を有するが、ベース基板2は発熱体6を備えず、耐熱性が低く、線膨張係数差の小さい材料を使用できるため、ベース基板2との間で線膨張係数の差に起因する内部応力による破断、変形等が生じることはほぼない。
【0030】
すなわち、保護素子1は、構造的に可溶導体5に対する熱衝撃の緩和が可能となる。以下、保護素子1の詳細な構成について説明する。
【0031】
[ベース基板]
ベース基板2は、たとえば、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等の絶縁性を有する部材によって形成される。
【0032】
図2に示すように、ベース基板2の相対向する両端部には、第1、第2の電極3,4が形成されている。第1、第2の電極3,4は、それぞれ、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。また、第1、第2の電極3,4の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、保護素子1は、第1、第2の電極3,4の酸化を防止し、導通抵抗の上昇に伴う定格の変動を防止することができる。また、保護素子1をリフロー実装する場合に、可溶導体5を接続する接続用ハンダが溶融することにより第1、第2の電極3,4を溶食(ハンダ食われ)するのを防ぐことができる。
【0033】
第1の電極3は、ベース基板2の表面2aより、ベース基板2を貫通する導電スルーホール10を介して裏面2bに形成された第1の外部接続電極11と連続されている。また、第2の電極4は、ベース基板2の表面2aより、導電スルーホール10を介して裏面2bに形成された第2の外部接続電極12と連続されている。保護素子1が外部回路基板に実装されると、第1、第2の外部接続電極11,12が、当該外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、可溶導体5が当該外部回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。なお、第1、第2の電極3,4と第1、第2の外部接続電極11,12の接続は、ベース基板2の側縁に形成したキャスタレーションを介して行ってもよい。
【0034】
第1、第2の電極3,4は、接続ハンダ等の導電接続材料9を介して可溶導体5が搭載されることにより、可溶導体5を介して電気的に接続されている。また、図3に示すように、第1、第2の電極3,4は、保護素子1に定格を超える大電流が流れ可溶導体5が自己発熱(ジュール熱)によって溶断し、あるいは発熱体6が通電に伴って発熱し可溶導体5が溶断することにより、接続遮断される。
【0035】
また、ベース基板2は、第1の電極3と第2の電極4との間に、可溶導体5の溶融導体5cを保持する保持部8が設けられている。保持部8は、溶融導体5cに対する濡れ性に優れる材料によって形成され、例えばAgやCu等の導電パターンによって形成することができる。また、保持部8は、第1、第2の電極3,4と同じ材料によって形成してもよく、これにより、同一の形成工程によって同時に形成することができる。保持部8は、導電接続材料9等の熱伝導性に優れる接続材料を介して可溶導体5が接続される。
【0036】
なお、導電接続材料9は、例えば、Sn-Ag、Sn-Ag-Cu、Sn-Bi、Sn-Bi-Sb等の錫ベースの合金、Pb-Sn、Pb-Au等の鉛ベースの合金、Pb-In、In-Sn等のインジウムベースの合金等、可溶導体5を構成する低融点金属以下の融点をもつ金属接合材であればよい。また、ベース基板2は、絶縁や可溶導体5の位置制御を目的として、ソルダーレジストを配してもよい。
【0037】
ベース基板2は、従来の保護素子における絶縁基板と異なり、発熱体6が設けられていない。このため、ベース基板2は高度な耐熱性は要求されず、耐熱性の低い基材を使用することも可能である。したがって、ベース基板2の基材として可溶導体5との線膨張係数差が小さいものを使用することができる。
【0038】
これにより、ベース基板2は、保護素子1が高温環境と低温環境に繰り返し晒された場合にも、可溶導体5との間で大きな内部応力が発生することを抑え、可溶導体5に内部応力による歪みや破断等の損傷が生じることを防止し、また外形や寸法の安定性を維持することができる。
【0039】
[可溶導体]
次いで、可溶導体5について説明する。可溶導体5は、第1及び第2の電極3,4間にわたって実装され、発熱体6の通電による発熱、又は定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、第1の電極3と第2の電極4との間の電流経路を遮断するものである。
【0040】
可溶導体5は、発熱体6の通電による発熱、又は過電流状態によって溶融する導電性をゆする低融点金属材料であればよく、例えば、SnAgCu系のPbフリーハンダや、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を用いることができる。
【0041】
また、可溶導体5は、高融点金属と、低融点金属とを含有する構造体であってもよい。例えば、図4に示すように、可溶導体5は、内層と外層とからなる積層構造体であり、内層として低融点金属層18、低融点金属層18に積層された外層として高融点金属層19を有する。可溶導体5は、第1、第2の電極3,4及び保持部8上に接続ハンダ等の導電接合材料9を介して接続される。
【0042】
低融点金属層18は、好ましくは、ハンダ又はSnを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である。低融点金属層18の融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層19は、低融点金属層18の表面に積層された金属層であり、例えば、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属であり、第1、第2の電極3,4及び保持部8と可溶導体5との接続や保護素子1の外部回路基板上への実装をリフローによって行う場合においても溶融しない高い融点を有する。
【0043】
このような可溶導体5は、低融点金属箔に、高融点金属層をメッキ技術を用いて成膜することによって形成することができ、あるいは、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いて形成することもできる。このとき、可溶導体5は、低融点金属層18の全面が高融点金属層19によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。なお、可溶導体5は、高融点金属層19を内層とし、低融点金属層18を外層として構成してもよく、また低融点金属層18と高融点金属層19とが交互に積層された3層以上の多層構造とする、外層の一部に開口部を設けて内層の一部を露出させるなど、様々な構成によって形成することができる。
【0044】
可溶導体5は、内層となる低融点金属層18に、外層として高融点金属層19を積層することによって、リフロー温度が低融点金属層18の溶融温度を超えた場合であっても、可溶導体5として形状を維持することができ、溶断するに至らない。したがって、第1、第2の電極3,4及び保持部8と可溶導体5との接続や保護素子1の外部回路基板上への実装を、リフローによって効率よく行うことができ、また、リフローによっても可溶導体5の変形に伴って局所的に抵抗値が高く又は低くなる等により所定の温度で溶断しない、あるいは所定の温度未満で溶断する等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0045】
また、可溶導体5は、所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、定格よりも高い値の電流が流れると、自己発熱によって溶融し、第1、第2の電極3,4間の電流経路を遮断する。また、発熱体6が通電され発熱することにより溶融し、第1、第2の電極3,4間の電流経路を遮断する。
【0046】
このとき、可溶導体5は、溶融した低融点金属層18が高融点金属層19を溶食(ハンダ食われ)することにより、高融点金属層19が溶融温度よりも低い温度で溶解する。したがって、可溶導体5は、低融点金属層18による高融点金属層19の浸食作用を利用して短時間で溶断することができる。また、可溶導体5の溶融導体5cは、保持部8及び第1、第2の電極3,4の物理的な引き込み作用により分断されることから、速やかに、かつ確実に、第1、第2の電極3,4間の電流経路を遮断することができる(図3)。
【0047】
また、可溶導体5は、低融点金属層18の体積を、高融点金属層19の体積よりも多く形成することが好ましい。可溶導体5は、過電流による自己発熱又は発熱体6の発熱によって加熱され、低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、可溶導体5は、低融点金属層18の体積を高融点金属層19の体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかに第1、第2の電極3,4間を遮断することができる。
【0048】
また、可溶導体5は、内層となる低融点金属層18に高融点金属層19が積層されて構成することにより、溶断温度を従来の高融点金属からなるチップヒューズ等よりも大幅に低減することができる。したがって、可溶導体5は、同一サイズのチップヒューズ等に比して、断面積を大きくでき電流定格を大幅に向上させることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも小型化、薄型化を図ることができ、速溶断性に優れる。
【0049】
また、可溶導体5は、保護素子1が組み込まれた電気系統に異常に高い電圧が瞬間的に印加されるサージへの耐性(耐パルス性)を向上することができる。すなわち、可溶導体5は、例えば100Aの電流が数msec流れたような場合にまで溶断してはならない。この点、極短時間に流れる大電流は導体の表層を流れることから(表皮効果)、可溶導体5は、外層として抵抗値の低いAgメッキ等の高融点金属層19が設けられているため、サージによって印加された電流を流しやすく、自己発熱による溶断を防止することができる。したがって、可溶導体5は、従来のハンダ合金からなるヒューズに比して、大幅にサージに対する耐性を向上させることができる。
【0050】
このような可溶導体5は、第1、第2の電極及び保持部8に支持される一方の面5aと反対側の他方の面5bが発熱体付き基板7と接する。そして、保護素子1は、可溶導体5の他方の面5bと発熱体付き基板7との接点が1箇所である。
【0051】
[発熱体付き基板]
発熱体付き基板7は、絶縁基板13と、絶縁基板13に形成され、発熱することにより可溶導体5を溶断する発熱体6を有する。
【0052】
[絶縁基板]
絶縁基板13は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有し、かつ発熱体6の発熱に対する耐性を備える基材によって形成される。なかでも、発熱体6の高温発熱に対する耐熱性に優れるセラミック基板が好適に用いられる。
【0053】
図1に示すように、絶縁基板13は、表面13aに発熱体6が形成され、裏面13bに可溶導体5の他方の面5bと接続される中間電極31が形成されている。中間電極31は、接続ハンダ等の導電接続材料9によって可溶導体5の他方の面5bと接続される。そして、中間電極31は、可溶導体5が溶融すると、ベース基板2に形成された保持部8とともに、溶融導体5cが凝集、保持される。
【0054】
[発熱体]
発熱体6は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体6は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板13上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。一例として、発熱体6は、酸化ルテニウム系ペーストと銀とガラスペーストの混合ペーストを所定の電圧に応じて調整し、絶縁基板13の表面13aの所定の位置に所定の面積で製膜し、その後、適正条件にて焼成処理を行うことにより形成することができる。また、発熱体6の形状は適宜設計できるが、図1に示すように、絶縁基板13の形状に応じて略矩形状とすることが発熱面積を最大化するうえで好ましい。
【0055】
また、絶縁基板13の発熱体6が形成された表面13aには、発熱体6への給電経路を構成する第1、第2の発熱体電極14,15が形成されている。第1の発熱体電極14は絶縁基板13の表面13aの一側縁に形成され、第2の発熱体電極15は一側縁と反対側の他側縁に形成されている。発熱体6は、一端が第1の発熱体電極14と重畳することにより接続され、他端が第2の発熱体電極15と重畳することにより接続されている。
【0056】
第1の発熱体電極14及び第2の発熱体電極15は、発熱体6への給電端子となる電極であり、第1の発熱体電極14はキャスタレーションを介して絶縁基板13の裏面13bに設けられた第1の発熱体給電電極33と接続され、第2の発熱体電極15はキャスタレーションを介して絶縁基板13の裏面13bに設けられた第2の発熱体給電電極34と接続されている。第1の発熱体給電電極33及び第2の発熱体給電電極34は、ベース基板2の表面2aに形成された第3の電極35及び第4の電極36と、導電接続材料9等により接続される。
【0057】
第3の電極35は、ベース基板2の表面2aより、ベース基板2を貫通する導電スルーホール10を介して裏面2bに形成された第3の外部接続電極37と連続されている。また、第4の電極36は、ベース基板2の表面2aより、導電スルーホール10を介して裏面2bに形成された第4の外部接続電極38と連続されている。保護素子1が外部回路基板に実装されると、第3、第4の外部接続電極37,38が、当該外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、発熱体6に電力を供給する給電経路の一部に組み込まれる。図5に示すように、発熱体6への給電経路は、可溶導体5の電流経路とは独立して形成されている。なお、第3、第4の電極35,36と第3、第4の外部接続電極37,38の接続は、ベース基板2の側縁に形成したキャスタレーションを介して行ってもよい。
【0058】
なお、保護素子1は、図6図7に示すように、発熱体6への給電経路を、可溶導体5の電流経路と連結させてもよい。この場合、第2の発熱体給電電極34が絶縁基板13の裏面13bに形成された中間電極31と接続され、また、第4の外部接続電極38は設けられない。これにより、発熱体6は、保護素子1が後述するバッテリパック20に組み込まれた場合(図12参照)、バッテリスタック25から給電されるとともに、可溶導体5の溶断によって給電経路が遮断されて発熱が停止する。なお、第2の発熱体電極15は、絶縁基板13に設けられた図示しない導電スルーホールを介して中間電極31と接続されるようにしてもよい。
【0059】
第1、第2の発熱体電極14,15、第1、第2の発熱体給電電極33,34、及び中間電極31は、AgやCu等の導電ペーストを印刷、焼成することによって形成することができる。また、絶縁基板13の表面13a又は裏面13bに形成される電極を同一の材料により構成することで、一度の印刷及び焼成工程で形成することができる。
【0060】
発熱体6は、ガラス層等からなる絶縁層32によって被覆されることにより保護及び絶縁が図られている。絶縁層32は、例えばガラス系のペーストを塗布、焼成することにより形成することができる。また、絶縁基板13は、絶縁を目的として、ソルダーレジストを配してもよい。
【0061】
発熱体付き基板7の裏面13bに形成された第1、第2の発熱体給電電極33,34は、ベース基板2の表面2aに形成された第3、第4の電極に、導電接続材料9を介して接続される。また、発熱体付き基板7の裏面13bに形成された中間電極31は、導電接続材料9を介して可溶導体5の他方の面5bに接続される。これにより、発熱体付き基板7がベース基板2と接続される。このとき、可溶導体5は、発熱体付き基板7との接点は1箇所であり、また、発熱体6は、発熱体付き基板7の可溶導体5と接する面と反対の面側に形成されている。
【0062】
なお、保護素子1は、内部が図示しないケースに覆われることにより保護されている。ケースは、例えば、各種エンジニアリングプラスチック、熱可塑性プラスチック、セラミックス、ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成することができる。
【0063】
このような保護素子1によれば、可溶導体5と発熱体付き基板7の接続箇所が1点とされるため、高温環境と低温環境への曝露が繰り返された場合にも、可溶導体5の内部応力による歪みや破断等の損傷を抑制することができる。また、発熱体付き基板7の絶縁基板13も、可溶導体5に対する線膨張係数差を考慮することなく耐熱性に優れるセラミック基板等を使用することが可能となり、素子構造として耐熱性の向上を図るとともに、所望の発熱体6の発熱温度の設計が可能となり、可溶導体5の断面積を増やし高定格化を図るとともに速溶断性にも優れる保護素子を提供することができる。
【0064】
さらに、可溶導体5を支持するベース基板2として、可溶導体5の線膨張係数差がより小さい基材を用いることが可能となる。素材間の線膨張係数の差が大きい程、発生する応力が大きくなるため、線膨張係数の差を減らすことが、熱衝撃に対する耐久性を高める事に繋がる。例えば、セラミック基材の線膨張係数が7.2(ppm/℃)であるのに対して、ガラスエポキシ基材の線膨張係数は14(ppm/℃)である。また、可溶導体5の材料となる錫の線膨張係数は26.9(ppm/℃)、鉛の線膨張係数は29.1(ppm/℃)である。
【0065】
セラミック基材と錫の線膨張係数差は約20、ガラスエポキシ基材と錫の線膨張係数差は約13であるため、ベース基板2をセラミック基板からガラスエポキシ基板へ変更することにより、線膨張係数差が40%程度減少する。よって、発生する応力も40%低減させる事ができる構造となる。したがって、ベース基板2として、発熱体付き基板7の絶縁基板13よりも、可溶導体5の線膨張係数に対する線膨張係数差が小さいものを使用することで、高温環境と低温環境への曝露が繰り返される冷熱サイクルに対する可溶導体5の耐熱性を向上させることができる。
【0066】
また、ベース基板2の導体抵抗についても、第1、第2の電極3,4に使用する材料の導体抵抗値はセラミック基板のそれと同等であるため、セラミック基板と同等以上の抵抗値を実現できる。
【0067】
また、ベース基板2としてガラスエポキシ基材を用いた場合にも、セラミック基板と同様に第1,第2の外部接続電極11,12を形成することで、表面実装可能な保護素子として構成することができ、且つ外部電極端子等を用いる必要もなく構造体としても小型にすることができる。
【0068】
[変形例1]
次いで、本技術が適用された保護素子の変形例について説明する。なお、以下の説明において上述した保護素子1と同じ構成については同一の符号を付してその詳細を省略する。本技術が適用された保護素子は、複数の可溶導体を設けてもよい。図8に示す保護素子40は、ベース基板2に、2つの可溶導体5A,5Bが設けられている。可溶導体5Aは、第1の電極3と保持部8との間に設けられ、可溶導体5Bは、第2の電極4と保持部8との間に設けられている。また、発熱体付き基板7の中間電極31は、ベース基板2に設けられた可溶導体5の数に応じた数の接点が形成され、図8に示す保護素子40では2つの接点において各可溶導体5A,5Bと接続されている。
【0069】
保護素子40においても、可溶導体は他方の面と発熱体付き基板との接点が1箇所である。すなわち、可溶導体5Aは中間電極31と1点において接し、可溶導体5Bも中間電極31と1点において接している。したがって、保護素子40は、高温環境と低温環境への曝露が繰り返された場合にも、絶縁基板13との線膨張係数の違いにより可溶導体5A,5Bに内部応力が生じ、歪みや破断等の損傷が生じることを防止することができる。
【0070】
なお、可溶導体5は3つ以上設けてもよい。また、可溶導体5は、ベース基板2の平面視において、第1、第2の電極3,4及び保持部8間にわたって並列して配置することにより複数設けてもよい。複数の可溶導体5の大きさ、構成、材質、抵抗値や熱伝導率等の物性は、それぞれ同じでもよく、異ならせてもよい。
【0071】
また、中間電極31を可溶導体5の数に応じて複数形成し、各中間電極31と各可溶導体5との接点が1箇所となるようにしてもよい。
【0072】
[変形例2]
また、本技術が適用された保護素子は複数の発熱体を設けてもよい。図9に示す保護素子50は、発熱体付き基板7に2つの発熱体6A,6Bが並列して設けられている。発熱体6A,6Bは、それぞれ一端が第1の発熱体電極14と重畳することにより接続され、他端が第2の発熱体電極15と重畳することにより接続されている。第1の発熱体電極14及び第2の発熱体電極15以降の発熱体6への給電経路の構成は上述した保護素子1と同様である。
【0073】
保護素子50においても、可溶導体は他方の面と発熱体付き基板との接点が1箇所である。すなわち、可溶導体5は中間電極31の1点で接している。したがって、保護素子50は、高温環境と低温環境への曝露が繰り返された場合にも、絶縁基板13との線膨張係数の違いにより可溶導体5に内部応力が生じ、歪みや破断等の損傷が生じることを防止することができる。
【0074】
[変形例3]
また、本技術が適用された保護素子は、発熱体を発熱体付き基板の可溶導体と接する面側に形成してもよい。図10に示す保護素子60は、発熱体付き基板7の絶縁基板13の裏面13bに発熱体6が設けられている。発熱体6は絶縁層32によって被覆されることにより保護及び絶縁が図られている。また、絶縁層32には、第2の発熱体電極と15と接続された中間電極31が重畳されている。
【0075】
中間電極31は、絶縁層32を介して発熱体6と重畳されている。また、中間電極31は、導電接続材料9を介して可溶導体5の他方の面5bに接続される。すなわち、保護素子60は、発熱体6が発熱体付き基板7の可溶導体5と接する面側に形成されている。
【0076】
また、第1、第2の発熱体電極14,15も、絶縁基板13の裏面13bに形成されているため、第1、第2の発熱体通電電極33,34を形成する必要もなく、ベース基板2に形成された第3、第4の電極35,36と接続される。中間電極31は、第2の発熱体電極15から絶縁層32上にかけて形成されている。
【0077】
保護素子60においても、可溶導体は他方の面と発熱体付き基板との接点が1箇所である。すなわち、可溶導体5は中間電極31の1点で接している。したがって、保護素子60は、高温環境と低温環境への曝露が繰り返された場合にも、絶縁基板13との線膨張係数の違いにより可溶導体5に内部応力が生じ、歪みや破断等の損傷が生じることを防止することができる。また、保護素子60は、発熱体6が絶縁層32及び中間電極31を介して可溶導体5と接することから、可溶導体5へ発熱体6の熱がより伝わりやすく、速溶断性に優れる。
【0078】
なお、保護素子40の変形例として、保護素子50と同様に発熱体付き基板7に複数の発熱体6を形成してもよい(図11参照)。また、保護素子60の変形例として、保護素子40と同様にベース基板2に複数の可溶導体5を形成してもよく、あるいは保護素子50と同様に発熱体付き基板7に複数の発熱体6を形成してもよい。
【0079】
[バッテリパック]
このような保護素子1,40,50,60は、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック20内の回路に組み込まれて用いられる。図12は、保護素子1を用いたバッテリパックの構成例を示す回路図である。図12に示すように、バッテリパック20は、例えば、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル21a~21dからなるバッテリスタック25を有する。
【0080】
バッテリパック20は、バッテリスタック25と、バッテリスタック25の充放電を制御する充放電制御回路26と、バッテリスタック25の異常時に充放電経路を遮断する本発明が適用された保護素子1と、各バッテリセル21a~21dの電圧を検出する検出回路27と、検出回路27の検出結果に応じて保護素子1の動作を制御するスイッチ素子となる電流制御素子28とを備える。
【0081】
バッテリスタック25は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル21a~21dが直列接続されたものであり、バッテリパック20の正極端子20a、負極端子20bを介して、着脱可能に充電装置22に接続され、充電装置22からの充電電圧が印加される。充電装置22により充電されたバッテリパック20は、正極端子20a、負極端子20bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0082】
充放電制御回路26は、バッテリスタック25と充電装置22との間の電流経路に直列接続された2つの電流制御素子23a、23bと、これらの電流制御素子23a、23bの動作を制御する制御部24とを備える。電流制御素子23a、23bは、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETという。)により構成され、制御部24によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック25の電流経路の充電方向及び/又は放電方向への導通と遮断とを制御する。制御部24は、充電装置22から電力供給を受けて動作し、検出回路27による検出結果に応じて、バッテリスタック25が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子23a、23bの動作を制御する。
【0083】
保護素子1は、例えば、バッテリスタック25と充放電制御回路26との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子28によって制御される。
【0084】
検出回路27は、各バッテリセル21a~21dと接続され、各バッテリセル21a~21dの電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路26の制御部24に供給する。また、検出回路27は、バッテリセル21a~21dのいずれか1つが過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子28を制御する制御信号を出力する。
【0085】
電流制御素子28は、たとえばFETにより構成され、検出回路27から出力される検出信号によって、バッテリセル21a~21dの電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子1を動作させて、バッテリスタック25の充放電電流経路を電流制御素子23a、23bのスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0086】
以上のような構成からなるバッテリパック20に用いられる、本発明が適用された保護素子1は、図7に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子1は、第1の外部接続電極11がバッテリスタック25側と接続され、第2の外部接続電極12が正極端子20a側と接続され、これにより可溶導体5がバッテリスタック25の充放電経路上に直列に接続される。また、保護素子1は、発熱体6が第1の発熱体電極14~第3の外部接続電極37を介して電流制御素子28と接続されるとともに、発熱体6がバッテリスタック25の開放端と接続される。このように、発熱体6は、一端を中間電極31を介して可溶導体5及びバッテリスタック25の一方の開放端と接続され、他端を第3の外部接続電極33を介して電流制御素子28及びバッテリスタック25の他方の開放端と接続される。これにより電流制御素子28によって通電が制御可能な発熱体6への給電経路が形成される。
【0087】
[保護素子の動作]
検出回路27がバッテリセル21a~21dのいずれかの異常電圧を検出すると、電流制御素子28へ遮断信号を出力する。すると、電流制御素子28は、発熱体6に通電するよう電流を制御する。保護素子1は、バッテリスタック25から、発熱体6に電流が流れ、これにより発熱体6が発熱を開始する。保護素子1は、発熱体6の発熱により可溶導体5が溶断し、バッテリスタック25の充放電経路を遮断する。また、保護素子1は、可溶導体5を高融点金属と低融点金属とを含有させて形成することにより、高融点金属の溶断前に低融点金属が溶融し、溶融した低融点金属による高融点金属の溶食作用を利用して短時間で可溶導体5を溶解させることができる。
【0088】
ここで、保護素子1は、ベース基板2に支持されている可溶導体5と発熱体付き基板7との接点が1個所である。したがって、熱的強度が求められる発熱体付き基板7の絶縁基板13としてセラミック基板等が用いられ、可溶導体5との線膨張係数差が大きくなったとしても、リフロー実装や製品の使用環境等により高温環境と低温環境に繰り返し晒された場合に、可溶導体5には内部応力による歪みや破断等の損傷が生じることがなく、外形や寸法の安定性を有する。これにより、可溶導体5は、変形による抵抗値の変動等に起因する溶断特性の変動が防止され、高定格を維持するとともに、発熱体6の発熱によって速やかに溶断することができる。
【0089】
保護素子1は、可溶導体5が溶断することにより、発熱体6への給電経路も遮断されるため、発熱体6の発熱が停止される。
【0090】
なお、保護素子1は、バッテリパック20に定格を超える過電流が通電された場合にも、可溶導体5が自己発熱により溶融し、バッテリパック20の充放電経路を遮断することができる。
【0091】
このように、保護素子1は、発熱体6の通電による発熱、あるいは過電流による可溶導体5の自己発熱によって可溶導体5が溶断する。このとき、保護素子1は、回路基板へのリフロー実装時や、保護素子1が実装された回路基板が更にリフロー加熱等の高温環境下に曝された場合にも、低融点金属が高融点金属によって被覆された構造を有することにより、可溶導体5の変形を抑制することができる。したがって、可溶導体5の変形による抵抗値の変動等に起因する溶断特性の変動が防止され、所定の過電流や発熱体6の発熱によって速やかに溶断することができる。
【0092】
本発明に係る保護素子1は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 保護素子、2 ベース基板、3 第1の電極、4 第2の電極、5 可溶導体、6 発熱体、7 発熱体付き基板、8 保持部、9 導電接続材料、11 第1の外部接続電極、12 第2の外部接続電極、13 絶縁基板、14 第1の発熱体電極、15 第2の発熱体電極、16 第1の引出電極、17 第2の引出電極、18 低融点金属層、19 高融点金属層、20 バッテリパック、21 バッテリセル、22 充電装置、23 電流制御素子、24 制御部、25 バッテリスタック、26 充放電制御回路、27 検出回路、28 電流制御素子、31 中間電極、32 絶縁層、33 第3の外部接続電極、34 第4の外部接続電極、40 保護素子、50 保護素子、60 保護素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13