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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142556
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】柱梁の接続構造及びその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/21 20060101AFI20220922BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
E04B1/21 B
E04B1/58 508A
E04B1/58 505A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042765
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小山 直人
(72)【発明者】
【氏名】駄原 剛弘
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB12
2E125AC02
2E125AC07
2E125AG03
2E125AG28
2E125BA07
2E125BA41
2E125BB08
2E125BB21
2E125BE08
2E125BF06
2E125CA83
(57)【要約】
【課題】柱と梁を接続させて接続構造を構築するに際し、プレキャスト部材を用いた場合の現場での作業効率を向上させ、且つ、従来と同等の耐力を有するような接続構造を構築する。
【解決手段】柱梁の接続構造の構築方法であって、複数の前記梁部材において対向する一対の梁部材が、前記梁部材の端部側面から突出し互いに対向する方向に延伸する梁主筋が前記柱部材の上面に位置するように配置され、対向する一対の梁部材の一方の梁鉄筋と他方の梁鉄筋を鉄筋継手により連結した後、複数の鉄筋を組み合わせて籠状の形状を成した籠鉄筋を前記柱部材の上面に上方から降ろし、前記籠鉄筋を構成する鉄筋の一部を前記柱部材にその全長又は一部が埋設された柱主筋と鉄筋継手により連結し、前記籠鉄筋及び前記梁部材の端部側面から突出し互いに連結された梁主筋を、当該梁主筋が当該籠鉄筋に内包された状態で現場打ちコンクリートの打設により一体化させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製の柱部材と、その上面において互いに接続される複数の梁部材と、を接続させた柱梁の接続構造の構築方法であって、
複数の前記梁部材において対向する一対の梁部材が、前記梁部材の端部側面から突出し互いに対向する方向に延伸する梁主筋が前記柱部材の上面に位置するように配置され、
対向する一対の梁部材の一方の梁鉄筋と他方の梁鉄筋を鉄筋継手により連結した後、
複数の鉄筋を組み合わせて籠状の形状を成した籠鉄筋を前記柱部材の上面に上方から降ろし、前記籠鉄筋を構成する鉄筋の一部を前記柱部材にその全長又は一部が埋設された柱主筋と鉄筋継手により連結し、
前記籠鉄筋及び前記梁部材の端部側面から突出し互いに連結された梁主筋を、当該梁主筋が当該籠鉄筋に内包された状態で現場打ちコンクリートの打設により一体化させることを特徴とする、柱梁の接続構造の構築方法。
【請求項2】
前記柱主筋と前記籠鉄筋を構成する鉄筋の一部とを連結する鉄筋継手は、前記柱部材に埋設されたスリーブ継手であることを特徴とする、請求項1に記載の柱梁の接続構造の構築方法。
【請求項3】
前記柱主筋と前記籠鉄筋とを連結する鉄筋継手は、前記柱部材の上面から突出する前記柱主筋の上端部と、前記籠鉄筋を構成する鉄筋の一部と、を連結するスリーブ継手であることを特徴とする、請求項1に記載の柱梁の接続構造の構築方法。
【請求項4】
鉄筋コンクリート製の柱部材と、その上面において互いに接続される複数の梁部材と、を接続させた柱梁の接続構造であって、
前記柱部材の上面に位置する籠形状の籠鉄筋と、
前記梁部材の端部側面から突出し、前記籠鉄筋の内部に向けて延伸する梁主筋と、を備え、
前記柱部材にその全長又は一部が埋設された柱主筋と、前記籠鉄筋を構成する鉄筋の一部が鉄筋継手により連結され、
前記籠鉄筋及び前記梁主筋が現場打ちコンクリートの打設により内包された構成を有することを特徴とする、柱梁の接続構造。
【請求項5】
複数の前記梁部材は、前記柱部材の上面において互いに向き合う少なくとも一対の梁部材からなり、
互いに向き合う一対の前記梁部材の端部側面から突出する梁主筋同士は、前記籠鉄筋の内部において鉄筋継手により連結されていることを特徴とする、請求項4に記載の柱梁の接続構造。
【請求項6】
前記柱主筋と前記籠鉄筋を構成する鉄筋の一部とを連結する鉄筋継手は、前記柱部材に埋設されたスリーブ継手であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の柱梁の接続構造。
【請求項7】
前記柱主筋と前記籠鉄筋とを連結する鉄筋継手は、前記柱部材の上面から突出する前記柱主筋の上端部と、前記籠鉄筋を構成する鉄筋の一部と、を連結するスリーブ継手であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の柱梁の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁の接続構造及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造等の鉄筋を有するコンクリート複合構造物や建築物の建造においては、例えば最上層において柱と梁を接続させ接続構造を構築することが知られている。その際、柱部材と梁部材の接続部(接続構造)において、それぞれの部材内部から突出した鉄筋を接続構造内に定着させ接続させることで十分な耐力を得ている。例えば、梁部材の主筋と柱部材の主筋が折り曲げ定着されている交差部では複数の鉄筋を錯綜させてせん断耐力等を確保している。
【0003】
また、近年では、鉄筋コンクリート構造等の構築において、施工性や工期短縮化といった観点から、工場などで予め製作された部材を現場に搬入し、既設部材に組み付けるといったいわゆるプレキャストコンクリート部材(単にプレキャスト部材とも呼称される)を用い、現場打ちコンクリートと組み合わせる技術が一般的となっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、鉄筋コンクリート構造物の柱梁接合部において、柱主筋と梁主筋とを隅角部補強筋によって拘束した配筋構成とすることで施工が容易でありながらも十分な耐力を発現することが可能な接合構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-240329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1には、直線状の柱主筋と梁主筋や、く字状の隅角部補強筋を用いて配筋を行い、施工容易性と耐力の確保を行っている。しかしながら、特許文献1では、柱梁接合部において柱主筋、梁主筋、隅角部補強筋、U字補強筋といった種々の鉄筋を錯綜させた構成を採っているため、現場での作業が煩雑化する恐れがある。
【0007】
また、コンクリート複合構造物や建築物を構築する場合に、施工性向上や工期短縮化を図るためプレキャスト部材と現場打ちコンクリートを組み合わせることが知られているが、プレキャスト部材を用いて作業効率を向上させるに際し、プレキャスト部材を現場で構造物の上方から吊り下ろして作業を進める場合がある。そのような場合に、柱梁接合部のような多くの鉄筋が錯綜する箇所では、鉄筋同士の干渉を防止し、より作業性を向上させることが望まれている。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、柱と梁を接続させて接続構造を構築するに際し、プレキャスト部材を用いた場合の現場での作業効率を向上させ、且つ、従来と同等の耐力を有するような接続構造を構築することが可能な柱梁の接続構造及びその構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、鉄筋コンクリート製の柱部材と、その上面において互いに接続される複数の梁部材と、を接続させた柱梁の接続構造の構築方法であって、複数の前記梁部材において対向する一対の梁部材が、前記梁部材の端部側面から突出し互いに対向する方向に延伸する梁主筋が前記柱部材の上面に位置するように配置され、対向する一対の梁部材の一方の梁鉄筋と他方の梁鉄筋を鉄筋継手により連結した後、複数の鉄筋を組み合わせて籠状の形状を成した籠鉄筋を前記柱部材の上面に上方から降ろし、前記籠鉄筋を構成する鉄筋の一部を前記柱部材にその全長又は一部が埋設された柱主筋と鉄筋継手により連結し、前記籠鉄筋及び前記梁部材の端部側面から突出し互いに連結された梁主筋を、当該梁主筋が当該籠鉄筋に内包された状態で現場打ちコンクリートの打設により一体化させることを特徴とする、柱梁の接続構造の構築方法が提供される。
【0010】
前記柱主筋と前記籠鉄筋を構成する鉄筋の一部とを連結する鉄筋継手は、前記柱部材に埋設されたスリーブ継手であっても良い。
【0011】
前記柱主筋と前記籠鉄筋とを連結する鉄筋継手は、前記柱部材の上面から突出する前記柱主筋の上端部と、前記籠鉄筋を構成する鉄筋の一部と、を連結するスリーブ継手であっても良い。
【0012】
また、別の観点からの本発明によれば、鉄筋コンクリート製の柱部材と、その上面において互いに接続される複数の梁部材と、を接続させた柱梁の接続構造であって、前記柱部材の上面に位置する籠形状の籠鉄筋と、前記梁部材の端部側面から突出し、前記籠鉄筋の内部に向けて延伸する梁主筋と、を備え、前記柱部材にその全長又は一部が埋設された柱主筋と、前記籠鉄筋を構成する鉄筋の一部が鉄筋継手により連結され、前記籠鉄筋及び前記梁主筋が現場打ちコンクリートの打設により内包された構成を有することを特徴とする、柱梁の接続構造が提供される。
【0013】
複数の前記梁部材は、前記柱部材の上面において互いに向き合う少なくとも一対の梁部材からなり、互いに向き合う一対の前記梁部材の端部側面から突出する梁主筋同士は、前記籠鉄筋の内部において鉄筋継手により連結されても良い。
【0014】
前記柱主筋と前記籠鉄筋を構成する鉄筋の一部とを連結する鉄筋継手は、前記柱部材に埋設されたスリーブ継手であっても良い。
【0015】
前記柱主筋と前記籠鉄筋とを連結する鉄筋継手は、前記柱部材の上面から突出する前記柱主筋の上端部と、前記籠鉄筋を構成する鉄筋の一部と、を連結するスリーブ継手であっても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、柱と梁を接続させて接続構造を構築するに際し、プレキャスト部材を用いた場合の現場での作業効率を向上させ、且つ、従来と同等の耐力を有するような接続構造を構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】接続構造を含む構造体の概略説明図である。
図2】籠鉄筋の概略説明図である。
図3】接続構造の概略説明図である。
図4】接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図5】接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図6】接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図7】接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図8】本発明の第1変形例に係る接続構造の概略説明図である。
図9】第1変形例に係る接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図10】第1変形例に係る接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図11】第1変形例に係る接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図12】第1変形例に係る接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図13】本発明の第2変形例に係る接続構造の概略説明図である。
図14】第2変形例に係る接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図15】第2変形例に係る接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図16】第2変形例に係る接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図17】第2変形例に係る接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図18】本発明の第3変形例に係る接続構造の概略説明図である。
図19】第3変形例に係る接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図20】第3変形例に係る接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図21】第3変形例に係る接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
図22】第3変形例に係る接続構造の構築方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。また、本明細書では、説明のために鉄筋構造や配筋構成について、一部図示を省略する場合や、あるいは、通常は可視されない部材内部の鉄筋等を図示する場合がある。
【0019】
(本発明の実施の形態に係る柱梁の接続構造)
図1は、本発明の実施の形態に係る接続構造1を含む構造体10の概略説明図であり、構造体10の上面俯瞰図である。図1に示すように、構造体10は、複数配置(ここでは平面視で等間隔に3×3の9か所配置)された柱部材20と、それら柱部材20同士を連結させるように設けられる複数(ここでは12本)の梁部材30を備える。梁部材30の上面には、コンクリート打設時にせん断耐力を補強するための鉄筋群31が設けられている。
【0020】
また、図中の破線部に示すように、柱部材20同士を連結させるように梁部材30が設けられる場合に、柱部材20の上面では複数の梁部材30が接続され接続構造1を構成している。柱部材20の内部には図示しない鉄筋(後述する柱主筋22)が配筋され、この柱主筋22は柱部材20の上面から上方に向かって突出して設けられても良い。梁部材30の内部には図示しない鉄筋(後述する梁主筋32)が配筋され、この梁主筋32は梁部材30の端部側面から突出して設けられても良い。即ち、構造体10においては、柱部材20の上面において上方に突出する柱主筋22と、梁部材30の端部側面から接続構造1に向かって突出する梁主筋32が接続構造1に内包される。このような配筋構成の状態で現場打ちコンクリートが打設されることで接続構造1が構築される。
なお、接続構造1における鉄筋の詳細な構成については図3を参照して後述する。
【0021】
本実施の形態に係る接続構造1には、柱部材20の上面に籠鉄筋40が設けられている。図2は籠鉄筋40の概略説明図である。籠鉄筋40は、いわゆる籠形状を有しており、鉄筋を約90°折り曲げて略L字状に構成された複数のL字鉄筋42と、それら複数のL字鉄筋42を束ねるように周囲を囲む複数の帯筋44からなる。例えば、籠鉄筋40は平面視において略正方形形状を有する。この場合、L字鉄筋42は平面視において正方形形状の内側方向に向かって折れ曲がる複数の鉄筋群であり、例えば図示のように正方形形状の四辺から複数のL字鉄筋42が内側方向に向かって折れ曲がるように配置され、いわゆる籠形状を構成しても良い。そして、帯筋44は、正方形形状の四辺を囲むフープ状の鉄筋であり、高さ方向に複数設けられても良い。これらL字鉄筋42と帯筋44は溶接あるいは結束等の手段により一体化され、図示のような籠鉄筋40が構成される。この籠鉄筋40は予め工場等において一体化させて製造しても良い。なお、籠鉄筋40を製造するにあたり、L字鉄筋42や帯筋44の数、形状、配置構成等は任意であり、図示の形態に限定されるものではない。
【0022】
また、図3は、本実施の形態に係る接続構造1の概略説明図であり、接続構造1を拡大して図示した縦断面図である。図3に示すように、柱部材20には、鉛直方向(図中縦方向)に伸びる複数の柱主筋22と、柱主筋22に直交する柱配力筋24が設けられている。柱主筋22は、その上端が柱部材20の上面から上方に突出している。
【0023】
また、梁部材30には、水平方向(図中横方向)に伸びる複数の梁主筋32が設けられている。梁主筋32は、梁部材30の端部側面から籠鉄筋40の内部(接続構造1の中央)に向けて突出しており、互いに向き合う一対の梁部材30、30から突出する梁主筋32、32同士は、図示のように鉄筋継手35によって互いに連結される。
【0024】
また、接続構造1において、柱部材20の上方には籠鉄筋40が配置されている。籠鉄筋40のL字鉄筋42の下端部42aは、柱部材20の上面から上方に突出した柱主筋22の上端部22aは互いに突き合わされるように構成され、これらの端部同士は鉄筋継手45によって互いに連結される。例えば、鉄筋継手45がスリーブ式継手である場合には、スリーブ部材が予めL字鉄筋42の下端部42aに取り付けられているといった構成でも良い。
【0025】
なお、鉄筋継手35や鉄筋継手45の継手の構造は任意であり、例えばスリーブ式継手、カプラー式継手、ボルトナット式継手、といった種々の構造の継手であっても良い。
【0026】
(接続構造の構築方法)
図4図7は、本実施形態に係る接続構造1の構築方法を示す概略説明図である。先ず、図4に示すように、柱部材20がその上面から柱主筋22を突出させた状態で用意され、上端部22aに継手用のスリーブ50が配置される。柱主筋22の数や配置構成は任意であり、設計に応じて異なるが、ここでは平面視で略正方形形状の柱部材20の四辺に沿って所定の間隔で柱主筋22が設けられている。なお、柱部材20は、施工現場において現場打ちコンクリート部材として用意されても良く、予め工場等で製作されたプレキャスト部材でも良い。
【0027】
次いで、図5に示すように、柱部材20の周囲四方から4本(2対)の梁部材30が、1対ずつが互いに向かい合うように配置される。そして、互いに向き合う一対の梁部材30、30から突出する梁主筋32、32同士が鉄筋継手35によって互いに連結される。なお、梁部材30は予め工場等で製作されたプレキャスト部材であり、施工時に柱主筋22と梁主筋32が互いに干渉しないよう予め設計される。
【0028】
そして、図6に示すように、柱部材20の上方から籠鉄筋40を吊り下ろす。その際、籠鉄筋40のL字鉄筋42は、それぞれの下端部42aがそれぞれのスリーブ50内に収容されるように予め設計される。即ち、柱主筋22の上端部22aと、籠鉄筋40のL字鉄筋42の下端部42aと、は予め数や配置構成が対応付けられて設計される。
【0029】
そして、図7に示すように、柱部材20の上方から吊り下ろされた籠鉄筋40が降下させられる。これにより、L字鉄筋42の下端部42aがそれぞれのスリーブ50内に収容され、柱主筋22の上端部22aと、スリーブ50を用いた鉄筋継手45により連結される。即ち、柱部材20と籠鉄筋40が鉄筋継手45を介して連結される。このような状態で、梁主筋32や籠鉄筋40を内包するように図示しない現場打ちコンクリートが打設されることで一体化され、接続構造1が構築される。
【0030】
(作用効果)
本実施の形態に係る接続構造1及びその構築方法によれば、柱部材20の上方において互いに向かい合うように配置された梁部材30、30同士の連結を鉄筋継手35により行った後、一体物として予め製造された籠鉄筋40を上方から吊り下ろして鉄筋継手45により柱部材20と連結させるといった構成を採っている。これにより、プレキャスト部材である梁部材30を柱部材20の周囲に配置する場合に、必要以上に鉄筋を錯綜させる懸念が無く、鉄筋同士の干渉等の問題が生じないため、現場での作業効率や生産性の向上が図られる。
【0031】
また、梁部材30としてプレキャスト部材を用い、籠鉄筋40を予め工場等において一体化させて製造することで、現場での施工性の向上や工期短縮が図られる。加えて、籠鉄筋40の鉄筋構成は最終的に構築される接続構造1や構造体10の設計に応じて適宜設計されることから、従来と比べ同等以上の耐力を確保した鉄筋の構成にすることが可能である。即ち、施工性等の効率化と、耐力の確保の両立を容易な構成でもって実現させることが可能となる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。そこで、以下では本発明の変形例について説明する。なお、以下の変形例において、上記実施形態と同じ機能構成を有する構成要素については同一の符号を付して図示し、その説明は省略する。
【0033】
(本発明の第1変形例)
上記実施の形態では、柱部材20と籠鉄筋40とを、鉄筋継手45を介して連結させるに際し、鉄筋継手45が柱部材20の上面より上方に位置するような構成を図示説明したが、本発明の構成はこれに限定されるものではない。図8は本発明の第1変形例に係る接続構造1aの概略説明図であり、接続構造1aを拡大して図示した縦断面図である。また、図9図12は第1変形例に係る接続構造1aの構築方法を示す概略説明図である。
【0034】
図8に示すように、本変形例に係る接続構造1aにおいては、スリーブ継手60が柱部材20の上面から内部に向かって埋設された構成を有している。また、これに伴い、柱部材20に設けられる柱主筋22の上端は柱部材20の上面から突出する構成とはなっておらず、部材内部に埋設されている。また、上記実施の形態に比べ、籠鉄筋40のL字鉄筋42の長さが長く設計されている。
【0035】
本変形例に係る接続構造1aは、図9図12に示す通り、基本的には上記実施の形態で説明した構築方法によって構築される。但し、柱主筋22とL字鉄筋42との連結が柱部材20の内部に埋設されたスリーブ継手60によって行われる。このような構成により、柱部材20の上面近傍における鉄筋の錯綜を抑えることができ、更なる施工性の向上が図られる。
【0036】
(本発明の第2変形例)
また、図13は本発明の第2変形例に係る接続構造1bの概略説明図であり、(a)は接続構造1bを拡大して図示した縦断面図であり、(b)は(a)のA-A断面である。また、図14図17は第2変形例に係る接続構造1bの構築方法を示す概略説明図である。
【0037】
図13に示すように、本変形例に係る接続構造1bにおいては、柱部材20にその上面から深さL1の貫通孔70が所定の設計でもって形成されている。また、柱部材20に設けられる柱主筋22の上端は柱部材20の上面から突出する構成とはなっておらず、貫通孔70下方に埋設されている。また、貫通孔70の下端部近傍(即ち、柱主筋22の上端部近傍)には予めスリーブ継手75が埋設されている。また、上記実施の形態や第1変形例に比べ、籠鉄筋40のL字鉄筋42の長さが長く設計されており、L字鉄筋42の鉛直方向長さは貫通孔70の深さL1よりも長く設計されている。
【0038】
本変形例に係る接続構造1bは、図14図17に示す通り、基本的には上記実施の形態で説明した構築方法によって構築される。但し、柱主筋22とL字鉄筋42との連結は、籠鉄筋40を柱部材20の上方から吊り下ろして降下させる際に、L字鉄筋42を貫通孔70に所定深さまで挿入させた後、柱部材20の内部に埋設されたスリーブ継手75によって行われる。
【0039】
柱と梁を接続させた構造を有するコンクリート複合構造物や建築物の建造においては、耐震性や耐力向上のため、鉄筋同士の連結部分が柱と梁の接続箇所からなるべく離れた位置に設けられるのが望ましい場合がある。本変形例に係る構成では、スリーブ継手75を柱部材20の上面から深さL1だけ離間した位置に埋設している。即ち、L字鉄筋42と柱主筋22との連結部分が、柱と梁の接続箇所である柱部材20の上面近傍から距離L1以上離れた位置となる。これにより、上記実施の形態で説明した作用効果に加え、更なる接続構造1bの耐震性や耐力向上が図られ、接続構造1bを用いた構造体全体の耐震性や耐力向上が実現される。
【0040】
(本発明の第3変形例)
また、図18は本発明の第3変形例に係る接続構造1cの概略説明図であり、(a)は接続構造1cを拡大して図示した縦断面図であり、(b)は(a)のA-A断面である。また、図19図22は第2変形例に係る接続構造1bの構築方法を示す概略説明図である。
【0041】
図18に示すように、本変形例に係る接続構造1cにおいては、柱部材20にその上面から深さL2の孔部80が形成されている。孔部80は平面視で略正方形形状を有しており、その周囲は柱部材20の孔部80が形成されていない下方部分に比べ増肉されており、増肉部81が設けられている。増肉部81は接続構造1c構築時に、梁部材30を配置するために設けられる。
【0042】
また、柱部材20に設けられる柱主筋22の上端は柱部材20の上面から突出する構成とはなっておらず、孔部80の内部底面に埋設されている。孔部80の底面には予めスリーブ継手85が埋設されている。また、上記実施の形態や第1変形例に比べ、籠鉄筋40のL字鉄筋42の長さは長く設計されており、L字鉄筋42の鉛直方向長さは孔部80の深さL2よりも長く設計されている。
【0043】
本変形例に係る接続構造1cは、図19図22に示す通り、基本的には上記実施の形態で説明した構築方法によって構築される。但し、柱主筋22とL字鉄筋42との連結は、籠鉄筋40を柱部材20の上方から吊り下ろして降下させる際に、L字鉄筋42を孔部80の所定深さまで降下させた後、孔部80の内部底面に埋設されたスリーブ継手85によって行われる。本変形例に係る構成では、孔部80を用いた構成により、スリーブ継手85を柱部材20の上面から深さL2だけ離間した位置としている。即ち、L字鉄筋42と柱主筋22との連結部分が、柱と梁の接続箇所である柱部材20の上面近傍から距離L2以上離れた位置となる。これにより、上記実施の形態で説明した作用効果に加え、更なる接続構造1bの耐震性や耐力向上が図られ、接続構造1bを用いた構造体全体の耐震性や耐力向上が実現される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、柱梁の接続構造及びその構築方法に適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1…接続構造
1a~1c…(変形例に係る)接続構造
10…構造体
20…柱部材
22…柱主筋
24…柱配力筋
30…梁部材
31…鉄筋群
32…梁主筋
35…鉄筋継手
40…籠鉄筋
42…L字鉄筋
44…帯筋
45…鉄筋継手
50…スリーブ
60…スリーブ継手
70…貫通孔
75…スリーブ継手
80…孔部
81…土手部
85…スリーブ継手
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