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特開2022-142586ブレーキ用のマスタシリンダおよびそれを備える鞍乗型車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142586
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】ブレーキ用のマスタシリンダおよびそれを備える鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 11/26 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
B60T11/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042809
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】春田 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一希
(72)【発明者】
【氏名】小林 範久
【テーマコード(参考)】
3D047
【Fターム(参考)】
3D047AA01
3D047BB03
3D047CC08
3D047CC22
3D047KK01
(57)【要約】
【課題】リザーバタンクの下部領域に存在する気泡の量を低減することが可能なブレーキ用のマスタシリンダおよびそれを備える鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】ブレーキ用のマスタシリンダは、作動油を貯留する液圧室を有するシリンダ本体部と、液圧室に補充されるべき作動油を貯留する貯留室を有するリザーバタンクとを備える。リザーバタンクの内部にはセパレータ52が設けられる。セパレータ52は、貯留室の空間を上部領域と下部領域とに区画する。また、セパレータ52は、上部領域と下部領域との間で作動油の流通が可能でかつ上部領域に作動油の液面が形成されるように設けられる。さらに、セパレータ52は、下部領域に下面S2を有する。下面S2のうち外周端部を含む環状部分62の少なくとも一部は、外方かつ上方に傾斜するように形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を貯留する液圧室を有するシリンダ本体部と、
前記液圧室に補充されるべき作動油を貯留する貯留室を有するリザーバタンクと、
前記リザーバタンクの前記貯留室内部の空間を上部領域と下部領域とに区画するとともに、前記上部領域と前記下部領域との間で作動油の流通が可能でかつ前記上部領域に作動油の液面が形成されるように前記リザーバタンク内に設けられたセパレータとを備え、
前記セパレータは、前記下部領域に下面を有し、
前記セパレータの前記下面のうち外周端部を含む環状部分の少なくとも一部は、傾斜部として外方かつ上方に傾斜するように形成された、ブレーキ用のマスタシリンダ。
【請求項2】
前記リザーバタンクは、前記貯留室内部の空間を取り囲みかつ前記下部領域から前記上部領域へ向かう第1の方向に直線状に延びる内周面を有し、
前記セパレータは、前記リザーバタンクの前記内周面に沿って前記下部領域の上端から前記上部領域の下端まで直線状に延びる外周面を有し、
前記リザーバタンクの前記内周面と前記セパレータの前記外周面との間に、前記上部領域と前記下部領域との間での作動油の流通を可能にしかつ気泡の流通を抑制する油流通路が形成された、請求項1記載のブレーキ用のマスタシリンダ。
【請求項3】
前記第1の方向において、前記セパレータの前記外周面の長さは、前記セパレータの前記下面の前記傾斜部の長さよりも大きい、請求項2記載のブレーキ用のマスタシリンダ。
【請求項4】
前記セパレータの前記下面の前記環状部分は、前記外周面の下端部まで全周に渡って外方かつ上方に傾斜するように形成された、請求項2または3記載のブレーキ用のマスタシリンダ。
【請求項5】
前記第1の方向における前記セパレータの前記外周面の最小長さは、前記第1の方向と直交する第2の方向における前記セパレータの最大寸法の1/3以上である、請求項2~4のいずれか一項に記載のブレーキ用のマスタシリンダ。
【請求項6】
前記油流通路は、前記セパレータの前記外周面において前記第1の方向に延びる溝部を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載のブレーキ用のマスタシリンダ。
【請求項7】
前記セパレータは中実材により形成された、請求項1~6のいずれか一項に記載のブレーキ用のマスタシリンダ。
【請求項8】
車両本体部と、
前記車両本体部に回転可能に設けられた車輪と、
前記車輪に制動力を与えるキャリパに接続される請求項1~7のいずれか一項に記載のブレーキ用のマスタシリンダとを備える鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ用のマスタシリンダおよびそれを備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車において、車輪に制動力を与えるキャリパに作動油の液圧を与えるためにマスタシリンダが用いられる。例えば、特許文献1に記載されたブレーキ用マスタシリンダは、ブレーキ用作動油の圧力を発生するマスターシリンダ本体部と、作動油補給用のサブタンク(リザーバタンク)とを備える。
【0003】
マスターシリンダ本体部のシリンダ室には、運転者のブレーキペダルの操作に応じて往復動するピストンが設けられている。サブタンクには、作動油を貯留する円筒形状の作動油貯留室が形成されている。マスターシリンダ本体部とサブタンクとは、隔壁を挟んで一体的に形成されている。隔壁には、マスターシリンダ本体部のシリンダ室内の空間とサブタンクの作動油貯留室内の空間とを連通させる2つのポートが形成されている。
【0004】
サブタンクの作動油貯留室内には、ダイアフラムが設けられている。ダイヤフラムの下端は、上記の2つのポートよりも上方に位置する。シリンダ室内でピストンが往復動すると、シリンダ室と作動油貯留室との間で2つのポートを通して作動油が流通する。
【0005】
シリンダ室には気泡を進入させてはならない。そこで、特許文献1に記載された上記のサブタンクにおいては、ダイヤフラムの下端にオイルセパレータが一体成形されている。オイルセパレータは、略円板形状を有する。また、オイルセパレータの外周面には、周方向に等間隔で半円状の小孔通路が形成されている。
【0006】
そのサブタンクにおいては、作動油の液面がオイルセパレータよりも上方に位置するように、作動油が作動油貯留室内に貯留される。それにより、車両走行時に伝達される振動により作動油の液面に気泡が発生する場合でも、発生した気泡がオイルセパレータよりも下方の領域に進入することが低減される。したがって、作動油の液面で発生した気泡が、作動油貯留室から2つのポートを通してシリンダ室内に進入することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-255409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シリンダ室内への気泡の進入を防止することの信頼性を高めるためには、サブタンクにおけるオイルセパレータよりも下方の領域(リザーバタンクの下部領域)に存在する気泡の量を低減することが望ましい。
【0009】
本発明の目的は、リザーバタンクの下部領域に存在する気泡の量を低減することが可能なブレーキ用のマスタシリンダおよびそれを備える鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)第1の発明に係るブレーキ用のマスタシリンダは、作動油を貯留する液圧室を有するシリンダ本体部と、液圧室に補充されるべき作動油を貯留する貯留室を有するリザーバタンクと、リザーバタンクの貯留室の空間を上部領域と下部領域とに区画するとともに、上部領域と下部領域との間で作動油の流通が可能でかつ上部領域に作動油の液面が形成されるようにリザーバタンク内に設けられたセパレータとを備え、セパレータは、下部領域に下面を有し、セパレータの下面のうち外周端部を含む環状部分の少なくとも一部は、傾斜部として外方かつ上方に傾斜するように形成されている。
【0011】
そのブレーキ用のマスタシリンダにおいては、リザーバタンク内の貯留室の空間を上部領域と下部領域とに区画するように、セパレータが設けられる。セパレータの下面の傾斜部は、外方かつ上方に傾斜するように形成されている。それにより、貯留室の空間の上部領域で発生した気泡が下部領域に進入する場合でも、下部領域に進入した気泡がセパレータの下面の傾斜部に沿って上部領域へ円滑に導かれる。その結果、リザーバタンクの下部領域に存在する気泡の量を低減することが可能になる。
【0012】
(2)リザーバタンクは、貯留室の空間を取り囲みかつ下部領域から上部領域へ向かう第1の方向に直線状に延びる内周面を有し、セパレータは、リザーバタンクの内周面に沿って下部領域の上端から上部領域の下端まで直線状に延びる外周面を有し、リザーバタンクの内周面とセパレータの外周面との間に、上部領域と下部領域との間での作動油の流通を可能にしかつ気泡の流通を低減する油流通路が形成されてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、簡単な構成で、上部領域で発生した気泡が下部領域に進入することを低減することができる。
【0014】
(3)第1の方向において、セパレータの外周面の長さは、セパレータの下面の傾斜部の長さよりも大きくてもよい。
【0015】
この場合、第1の方向において、セパレータの外周面の長さがセパレータの下面の傾斜部の長さ以下である場合に比べて、油流通路の長さを大きくすることができる。それにより、簡単な構成で、上部領域で発生した気泡が下部領域に進入することをより抑制することができる。
【0016】
(4)セパレータの下面の環状部分は、外周面の下端部まで全周に渡って外方かつ上方に傾斜するように形成されてもよい。
【0017】
この場合、セパレータの下面の環状部分が全周に渡って傾斜しているので、下部領域に進入した気泡は外周面の下端部まで環状部分に沿って円滑に流れ、上部領域へ円滑に導かれる。したがって、下部領域に気泡が残留することがより抑制されるので、リザーバタンクの下部領域に存在する気泡の量をより低減することが可能になる。
【0018】
(5)第1の方向におけるセパレータの外周面の最小長さは、第1の方向と直交する第2の方向におけるセパレータの最大寸法の1/3以上であってもよい。
【0019】
この場合、第1の方向におけるセパレータの外周面の最小長さが第1の方向と直交する第2の方向におけるセパレータの最大寸法の1/3よりも小さい場合に比べて、油流通路の長さを大きくすることができる。それにより、簡単な構成で、上部領域で発生した気泡が下部領域に進入することをさらに抑制することができる。
【0020】
(6)油流通路は、セパレータの外周面において第1の方向に延びる溝部を含んでもよい。
【0021】
この場合、上部領域と下部領域との間で作動油が流通しない場合でも、下部領域に進入した気泡はセパレータの外周面の溝部内の空間を通して上部領域へ円滑に導かれる。それにより、下部領域に長時間に渡って気泡が残留することが防止されるので、リザーバタンクの下部領域に存在する気泡の量をさらに低減することが可能になる。
【0022】
(7)セパレータは中実材により形成されてもよい。この場合、セパレータが中空材により形成される場合に比べて、セパレータの剛性を高めることができる。したがって、上部領域と下部領域との間で作動油が流通する場合に、その流通に伴ってセパレータが変形することが防止される。その結果、セパレータの変形に起因して上部領域から下部領域に多量の気泡が進入することが抑制される。
【0023】
(8)第2の発明に係る鞍乗型車両は、車両本体部と、車両本体部に回転可能に設けられた車輪と、車輪に制動力を与えるキャリパに接続される上記のブレーキ用のマスタシリンダとを備える。
【0024】
その鞍乗型車両は、上記のブレーキ用のマスタシリンダを備える。それにより、当該鞍乗型車両の振動の状態によらずリザーバタンクの下部領域に存在する気泡の量を低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、振動の状態によらずリザーバタンクの下部領域に存在する気泡の量を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施の形態に係る自動二輪車の右側面図である。
図2図1のマスタシリンダおよびその周辺部材の右側面図である。
図3図1の自動二輪車を右斜め後方から見たときのマスタシリンダおよびその周辺部材の外観斜視図である。
図4図3のマスタシリンダの一部拡大右側面図である。
図5】ダイヤフラムおよびセパレータの一体成形品の側面図である。
図6】ダイヤフラムおよびセパレータの一体成形品の外観斜視図である。
図7図4のマスタシリンダのQ-Q線断面図である。
図8】セパレータの下面を仮想中心軸の方向に見た下面図である。
図9】本発明の一実施の形態に係るマスタシリンダの効果を説明するための図である。
図10】第1の変形例に係るセパレータの下面の側面図である。
図11】第2の変形例に係るセパレータの下面の側面図である。
図12】第3の変形例に係るセパレータの下面の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施の形態に係るブレーキ用のマスタシリンダおよびそれを備える鞍乗型車両について図面を参照しつつ説明する。鞍乗型車両の一例として自動二輪車を説明する。
【0028】
[1]自動二輪車の概略構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る自動二輪車の右側面図である。図1では、自動二輪車100が路面に対して垂直に起立した状態が示される。図1の自動二輪車100は、金属製の車体フレーム1を備える。車体フレーム1は、ヘッドパイプHPおよび複数のフレーム部材を含む。ヘッドパイプHPは車両前部に位置し、複数のフレーム部材はヘッドパイプHPから車両後方に向かって延びるように設けられている。
【0029】
ヘッドパイプHPには、フロントフォーク2が左右方向に揺動可能に設けられている。フロントフォーク2の下端に前輪3が回転可能に支持されている。フロントフォーク2の上端には、ハンドル4が設けられている。
【0030】
車体フレーム1は、エンジン5、燃料タンク8およびシート9を支持する。この状態で、エンジン5は、ヘッドパイプHPよりも下方に位置する。また、燃料タンク8は、エンジン5の上方かつヘッドパイプHPの後方に位置する。さらに、シート9は、燃料タンク8の後方に位置する。
【0031】
自動二輪車100の前後方向における略中央部においては、車体フレーム1の下部から後方に延びるように、リアアーム6が設けられている。リアアーム6は、図示しないピボット軸を用いて車体フレーム1に支持されている。リアアーム6の後端に後輪7およびディスクロータ71が回転可能に支持されている。後輪7は、駆動輪としてエンジン5から発生される動力により回転する。ディスクロータ71は、後輪7に対して一体的に設けられ、後輪7の回転時に後輪7とともに回転する。
【0032】
リアアーム6には、さらにブレーキキャリパ72が取り付けられている。ブレーキキャリパ72は、ディスクロータ71を押圧可能に構成された図示しないブレーキパッドを含む。ブレーキキャリパ72には、後述するマスタシリンダ30から延びるブレーキホース80の一端が接続されている。
【0033】
また、自動二輪車100の前後方向における略中央部には、車体フレーム1の下端部の近傍部分に、左右一対のフットレスト10、ブレーキリンク機構20およびマスタシリンダ30が設けられている。図1では、左右一対のフットレスト10のうち運転者の右足用のフットレスト10のみが示される。運転者の左足用のフットレストは、車両の中心を通って車両前後方向に延びる鉛直面を基準として図1のフットレスト10と対称な位置に設けられている。
【0034】
ブレーキリンク機構20は、自動二輪車100の右側部に設けられ、ブレーキペダル21およびペダルレバー22を含む。ペダルレバー22は、右のフットレスト10の近傍を通って車両前後方向に延びている。両端部(前端部および後端部)を除くペダルレバー22の一部は、車体フレーム1から右方に向かって水平に延びる図示しない支持軸に回転可能に支持されている。ブレーキペダル21は、右のフットレスト10に対して車両前方に位置するように、ペダルレバー22の前端部に取り付けられている。自動二輪車100の運転者は、右のフットレスト10に右足を乗せた状態で、ブレーキペダル21を踏み込むこと(以下、後輪ブレーキ操作と呼ぶ。)が可能である。
【0035】
マスタシリンダ30は、車体フレーム1に固定されている。この状態で、マスタシリンダ30は、自動二輪車100の右側部においてペダルレバー22の後端部の上方に位置する。また、マスタシリンダ30には、ブレーキホース80の他端が接続されている。マスタシリンダ30の詳細について説明する。
【0036】
[2]マスタシリンダ30の詳細
図2図1のマスタシリンダ30およびその周辺部材の右側面図であり、図3図1の自動二輪車100を右斜め後方から見たときのマスタシリンダ30およびその周辺部材の外観斜視図である。図2では、マスタシリンダ30の周辺部材として、車体フレーム1、リアアーム6、ペダルレバー22およびブレーキホース80の一部が示される。また、図3では、マスタシリンダ30の周辺部材として、ペダルレバー22およびブレーキホース80の一部が示される。
【0037】
図2に示すように、マスタシリンダ30は、シリンダ本体部40およびリザーバタンク50を備える。シリンダ本体部40およびリザーバタンク50は、それぞれ略円筒形状を有し、互いに隣り合うように一体的に形成されている。マスタシリンダ30の上下方向において、シリンダ本体部40は、リザーバタンク50の外周面の略中央部からリザーバタンク50の下端部よりも斜め下方に延びるように形成されている。
【0038】
シリンダ本体部40の外周部には、リザーバタンク50と逆の方向に突出するように、2つの取付部41,42が設けられている。取付部41,42はねじを用いて車体フレーム1に取り付けられる。それにより、マスタシリンダ30が車体フレーム1に固定される。
【0039】
シリンダ本体部40の内部には、液圧室40Cが形成されている。液圧室40Cは、シリンダ本体部40が延びる方向に延びている。液圧室40Cの内部には、ピストン43およびリターンスプリング44が収容されている。ピストン43は、液圧室40Cの内部で往復移動可能に設けられる。また、リターンスプリング44は、所定の弾性力でピストンを下方に向けて付勢する。液圧室40Cの内部空間においては、ピストン43の上方にブレーキキャリパ72を駆動するための作動油(ブレーキ液)が貯留される。
【0040】
シリンダ本体部40の下端部には、プッシュロッド29が挿入されている。プッシュロッド29の上端部は、液圧室40C内部のピストン43に接続されている。プッシュロッド29の下端部は、ペダルレバー22に接続されている。
【0041】
運転者が後輪ブレーキ操作を行うと、ペダルレバー22が図示しない支持軸を中心として回転し、図2に矢印a1で示すように、ペダルレバー22の後端部が上昇する。この場合、図2に矢印a2で示すように、プッシュロッド29がシリンダ本体部40の内部に押し込まれ、ピストン43が上昇する。それにより、液圧室40C内部の作動油が加圧される。後輪ブレーキ操作により発生した作動油の圧力(作動油圧)は、マスタシリンダ30からブレーキホース80を通してブレーキキャリパ72に与えられる。ブレーキキャリパ72においては、与えられた作動油圧に応じた押圧力でブレーキパッドがディスクロータ71を押圧する。それにより、後輪7に制動力が与えられる。
【0042】
後輪ブレーキ操作の終了時には、運転者によるブレーキペダル21の踏み込みが解除される。この場合、液圧室40Cにおいては、リターンスプリング44の弾性力によりピストン43が下降し、図2に矢印a3で示すように、プッシュロッド29がシリンダ本体部40の外部に繰り出される。それにより、図2に矢印a4で示すように、ペダルレバー22の後端部が下降する。
【0043】
リザーバタンク50の内部には、作動油を貯留する貯留室50Cが形成されている。リザーバタンク50は、貯留室50Cの内部空間を取り囲みかつリザーバタンク50の上端部近傍からリザーバタンク50の下部に向かって直線状に延びる円筒状の内周面50iを有する。以下の説明では、リザーバタンク50の中心軸(貯留室50Cの中心軸)上で下から上に向く方向をリザーバ方向と呼ぶ。マスタシリンダ30は、車両の直進走行時にリザーバ方向が路面に対して略垂直となるように、車体フレーム1に固定されている。また、リザーバタンク50は、貯留室50C内部の作動油を液圧室40C内部に補充することおよび液圧室40C内部の作動油を回収することが可能に構成されている。
【0044】
図3に示すように、リザーバタンク50の外周面の一部には、マスタシリンダ30の外部から貯留室50C内部の作動油の量を確認するための窓部59が設けられている。窓部59は、ガラス等の透明部材で構成される。
【0045】
図4は、図3のマスタシリンダ30の一部拡大右側面図である。図4では、マスタシリンダ30のうちリザーバタンク50の部分が縦断面図で示される。また、リザーバ方向が矢印DRで示される。さらに、図4および後述する図9では、作動油がドットパターンで示される。
【0046】
図4に示すように、リザーバタンク50の下部には、貯留室50Cの底部から下方に延びるように液流通孔57が形成されている。また、リザーバタンク50の下部には、液流通孔57の内部空間とシリンダ本体部40の液圧室40Cの内部空間とを連通させる2つのポート58a,58bが形成されている。これにより、シリンダ本体部40内のピストン43の動作時には、液圧室40Cと貯留室50Cとの間で、液流通孔57およびポート58a,58bを通して作動油が流通する。
【0047】
貯留室50Cの内部には、リザーバタンク50の上端部から貯留室50Cの略中央部まで延びるようにダイヤフラム51が設けられている。ダイヤフラム51の下端部には、セパレータ52が設けられている。本実施の形態では、ダイヤフラム51およびセパレータ52は、共通の材料により一体成形された単一部材で構成される。ダイヤフラム51およびセパレータ52の材料としては、例えばゴムが用いられる。
【0048】
セパレータ52は、貯留室50C内部の空間を上部領域URと下部領域LRとに区画する。また、セパレータ52は、液面が上部領域URに位置するように貯留室50Cに作動油が貯留された状態で、上部領域URと下部領域LRとの間で作動油の流通が可能となるように構成される。
【0049】
車両走行時に車体フレーム1からマスタシリンダ30に伝達される振動の状態によっては、リザーバタンク50内の作動油の液面が大きく変動することにより、作動油中に気泡が発生する場合がある。背景技術において説明したように、シリンダ本体部40の液圧室40Cには気泡を進入させてはならない。シリンダ本体部40の液圧室40Cへの気泡の進入を防止することの信頼性を高めるためには、リザーバタンク50の下部領域LRに存在する気泡の量を低減することが望ましい。そこで、本実施の形態に係るマスタシリンダ30においては、下部領域LRに存在する気泡の量を低減することが可能となるように、セパレータ52の構造に工夫が施されている。以下、セパレータ52の構造について説明する。
【0050】
[3]セパレータ52の構造
図5は、ダイヤフラム51およびセパレータ52の一体成形品の側面図である。図6は、ダイヤフラム51およびセパレータ52の一体成形品の外観斜視図である。図5および図6の一体成形品においては、当該一体成形品がリザーバタンク50内に設けられた場合に、リザーバタンク50の中心軸に一致するかまたはほぼ一致することになる仮想中心軸vaが定義されている。
【0051】
図5および図6に示すように、ダイヤフラム51は、第1の伸縮部51bおよび第2の伸縮部51cを有する。第1の伸縮部51bおよび第2の伸縮部51cは、この順で上から下に連続的に並んでいる。第1の伸縮部51bは、仮想中心軸vaを取り囲んで蛇腹状に延びる筒形状を有し、仮想中心軸vaの方向に伸張可能かつ収縮可能に形成されている。第1の伸縮部51bの内部空間は、上方に開放されている。第1の伸縮部51bの上端部には、取付部51aが設けられている。取付部51aは、第1の伸縮部51bの上端部から仮想中心軸vaに直交する面内で放射状に広がるように、鍔状に形成されている。取付部51aは、マスタシリンダ30の組み立て時に、リザーバタンク50内で貯留室50Cの上端部に固定される。
【0052】
第2の伸縮部51cは、図6に示すように、複数(本例では2つ)の筒状部cyが束ねられた構成を有する。各筒状部cyは、仮想中心軸vaの方向に直線状に延び、仮想中心軸vaに直交する方向に伸張可能かつ収縮可能に形成されている。また、各筒状部cyの上端部において、当該筒状部cyの内部空間は第1の伸縮部51bの内部空間を通して上方に開放されている。一方、各筒状部cyの下端部において、当該筒状部cyの内部空間は、セパレータ52により閉塞されている。
【0053】
上記の構成を有するダイヤフラム51は、リザーバタンク50に貯留される作動油の量が変動する際に、貯留室50C内部の圧力が大気圧で維持されるように変形する。
【0054】
セパレータ52は、内部に実質的な空隙を含まない中実材(本例ではゴム製の中実材)で形成されている(図4参照)。また、セパレータ52は、図5および図6に示すように、仮想中心軸vaに関して略回転対称な外形を有する。具体的には、本実施の形態に係るセパレータ52は、上面S1、下面S2および外周面S3を有する。上面S1は、セパレータ52がリザーバタンク50に設けられた状態で上部領域URに向く面であり、ダイヤフラム51との連結部分を除いて平坦に形成されている。下面S2は、セパレータ52がリザーバタンク50に設けられた状態で下部領域LRに向く面である。下面S2の詳細は後述する。
【0055】
外周面S3は、セパレータ52がリザーバタンク50に設けられた状態でリザーバタンク50の内周面50iに対向する面である。換言すれば、外周面S3は、リザーバタンク50の内周面50iに沿って下部領域LRの上端から上部領域URの下端部まで直線状に延びる面である。外周面S3の一部には、仮想中心軸vaに平行に延びるように溝部63が形成されている。
【0056】
図7は、図4のマスタシリンダ30のQ-Q線断面図である。図7のマスタシリンダ30の断面は、リザーバ方向DR(図4)に直交する。図7に示すように、本実施の形態に係るセパレータ52は、リザーバタンク50に取り付けられた状態で、リザーバ方向DRに直交する断面が略円形状を有する。外周面S3の外径は、リザーバタンク50の内周面50iの内径よりも一定長さ小さくなるように設定されている。それにより、セパレータ52の外周面S3とリザーバタンク50の内周面50iとの間には、全周に渡って隙間gが形成される。この隙間gは、上部領域URと下部領域LRとの間で作動油の流通を可能にする。
【0057】
また、上記のように、セパレータ52の外周面S3の一部には、溝部63が形成されている。外周面S3と内周面50iとの間の隙間gのうち、溝部63と内周面50iとの間に位置する隙間部分は、他の隙間部分に比べて大きい。そのため、溝部63と内周面50iとの間に位置する隙間部分においては、他の隙間部分に比べて上部領域URと下部領域LRとの間で作動油がより円滑に流通する。
【0058】
セパレータ52の下面S2の形状について、詳細を説明する。図8は、セパレータ52の下面S2を仮想中心軸vaの方向に見た下面図である。本実施の形態に係るセパレータ52の下面S2は、図8に示すように、内側部分61および環状部分62を有する。内側部分61は、仮想中心軸vaの方向に見て仮想中心軸vaを中心とする円形状を有する。また、内側部分61は、図5に示すように、仮想中心軸vaに直交する方向に見て中央部が下端部となる円弧形状を有する。
【0059】
一方、環状部分62は、図8に示すように、仮想中心軸vaの方向に見て内側部分61を取り囲みかつ下面S2の外周端部を含む略円環形状を有する。また、環状部分62は、図5に示すように、仮想中心軸vaに直交する方向に見て、内側部分61の両端部(外周端部)の各々から外周面S3の下端部まで外方かつ上方に傾斜している。
【0060】
[4]効果
(1)図9は、本発明の一実施の形態に係るマスタシリンダ30の効果を説明するための図である。本実施の形態に係るマスタシリンダ30においては、リザーバタンク50の貯留室50Cの内部空間がセパレータ52により上部領域URと下部領域LRとに区画される。この状態で、リザーバタンク50に貯留される作動油の液面は、上部領域URに位置する。
【0061】
振動により作動油の液面が大きく変動すると、図9の上段に示すように、上部領域URで発生した気泡がセパレータ52の外周面S3とリザーバタンク50の内周面50iとの間の隙間gを通して下部領域LRに進入する場合がある。
【0062】
そこで、本実施の形態に係るセパレータ52においては、下面S2の環状部分62が、外方かつ上方に傾斜するように形成されている。それにより、下部領域LRに気泡が進入する場合でも、進入した気泡は、図9の中段に示すように、セパレータ52の環状部分62に沿って外周面S3と内周面50iとの間の隙間gへ円滑に導かれる。さらに、隙間gに導かれた気泡は、隙間gを通して上部領域URへ円滑に導かれる。したがって、下部領域LRに進入する気泡が、長時間に渡って下部領域LR内に残留することが防止される。それにより、車両走行時に発生する振動の状態によらず、リザーバタンク50の下部領域LRに存在する気泡の量を低減することが可能になる。したがって、シリンダ本体部40の液圧室40Cへの気泡の進入を防止することの信頼性が向上する。
【0063】
(2)リザーバタンク50の貯留室50Cの内部において、セパレータ52の外周面S3と内周面50iとの間の隙間gは、上部領域URと下部領域LRとの間の作動油の流通を可能にする油流通路として機能する。この隙間gは、さらに上部領域URで発生した気泡が下部領域LRに進入することを低減する。したがって、外周面S3の外径および内周面50iの内径は、上部領域URと下部領域LRとの間の作動油の流通を許容しつつ気泡の流通がより低減されるように定められることが望ましい。
【0064】
(3)図5に示すように、仮想中心軸vaの方向において、セパレータ52の外周面S3の長さD1は、セパレータ52の下面S2の環状部分62の長さD2よりも大きい。この場合、仮想中心軸vaの方向において、外周面S3の長さD1が環状部分62の長さD2以下である場合に比べて、油流通路として機能する隙間gの長さを大きくすることができる。それにより、簡単な構成で、上部領域URで発生した気泡が下部領域LRに進入することをより抑制することができる。
【0065】
(4)仮想中心軸vaの方向におけるセパレータ52の外周面S3の長さD1は、外周面S3の直径に対して1/3以上の寸法を有することが望ましい。また、長さD1は、外周面S3の直径に対して1/3以上の寸法を有するのであれば、より大きい寸法を有することが望ましい。この場合、セパレータ52の外周面S3の長さD1が外周面S3の直径に対して1/3よりも小さい寸法を有する場合に比べて、油流通路(本例では隙間g)の長さを大きくすることができる。それにより、簡単な構成で、上部領域URで発生した気泡が下部領域LRに進入することをさらに抑制することができる。
【0066】
なお、仮想中心軸vaの方向におけるセパレータ52の外周面S3の長さD1は、例えば3mmよりも大きいことが望ましい。この場合、セパレータ52において高い剛性が確保される。したがって、セパレータ52の変形により、上部領域URから下部領域LRに多量の気泡が進入することが抑制される。
【0067】
(5)上記のセパレータ52においては、外周面S3の一部に溝部63が形成されている。この構成によれば、下部領域LRに気泡が進入した後、上部領域URと下部領域LRとの間で作動油が流通しない場合でも、下部領域LRに進入した気泡は溝部63と内周面50iとの間の隙間部分を通して上部領域URへ円滑に導かれる。それにより、下部領域LRに長時間に渡って気泡が残留することが防止されるので、リザーバタンク50の下部領域LRに存在する気泡の量をさらに低減することが可能になる。
【0068】
(6)セパレータ52は中実材により形成されている。この場合、セパレータ52が中空材により形成される場合に比べて、セパレータ52の剛性を高めることができる。したがって、上部領域URと下部領域LRとの間で作動油が流通する場合に、その流通に伴ってセパレータ52が変形することが防止される。その結果、セパレータ52の変形に起因して上部領域URから下部領域LRに多量の気泡が進入することが抑制される。
【0069】
(7)上記のセパレータ52においては、下面S2の内側部分61は、中央部が下端部となるように下方に膨らんだ形状を有する。このような構成によれば、内側部分61においても、気泡が中央部から環状部分62に円滑に導かれる。また、セパレータ52を射出成型により形成する場合でも、下面S2の内側部分61に、ひけに起因する窪みが生じにくい。それにより、リザーバタンク50において下部領域LRに進入する気泡が内側部分61上に残留しない。
【0070】
[5]セパレータ52の下面S2の変形例
セパレータ52の下面S2は、図5の例に限らず、以下の構成を有してもよい。図10は、第1の変形例に係るセパレータ52の下面S2の側面図である。第1の変形例では、下面S2全体が逆円錐形状を有する。本例においても、環状部分62は、仮想中心軸vaに直交する方向に見て、内側部分61の両端部(外周端部)の各々から外周面S3の下端部まで外方かつ上方に傾斜している。それにより、図5の例と同様の効果を得ることができる。
【0071】
図11は、第2の変形例に係るセパレータ52の下面S2の側面図である。第2の変形例では、下面S2全体が球面の一部を形成している。本例においても、環状部分62は、仮想中心軸vaに直交する方向に見て、内側部分61の両端部(外周端部)の各々から外周面S3の下端部まで外方かつ上方に傾斜している。それにより、図5の例と同様の効果を得ることができる。なお、本変形例に示されるように、下面S2の環状部分62は、側面視で湾曲していてもよい。
【0072】
図12は、第3の変形例に係るセパレータ52の下面S2の側面図である。第3の変形例では、下面S2のうち内側部分61が平坦な面形状を有する。本例においても、環状部分62は、仮想中心軸vaに直交する方向に見て、内側部分61の両端部(外周端部)の各々から外周面S3の下端部まで外方かつ上方に傾斜している。それにより、図5の例と同様の効果を得ることができる。
【0073】
なお、セパレータ52の下面S2においては、内側部分61に段差が形成されてもよい。また、セパレータ52の下面S2においては、環状部分62の全体のうち一部分のみが内側部分61の外周端部から外周面S3の下端部まで外方かつ上方に傾斜してもよい。
【0074】
[6]他の実施の形態
(1)上記実施の形態に係るセパレータ52は、中実材に代えて中空材により形成されてもよい。この場合、セパレータ52の軽量化が可能になる。
【0075】
(2)上記実施の形態に係るセパレータ52においては、外周面S3に溝部63が形成されるが、本発明はこれに限定されない。外周面S3には、溝部63が形成されなくてもよい。この場合、セパレータ52の作製が容易になる。
【0076】
(3)上記実施の形態に係るセパレータ52とダイヤフラム51とは、共通の材料により一体成形された単一部材で構成されるが、本発明はこれに限定されない。セパレータ52とダイヤフラム51とは、個別に作製されてもよい。この場合、セパレータ52とダイヤフラム51とは、互いに接合された状態でリザーバタンク50に設けられてもよいし、互いに分離された状態でリザーバタンク50に設けられてもよい。
【0077】
(4)上記実施の形態に係る自動二輪車100においては、マスタシリンダ30は、車両の直進走行時にリザーバ方向が路面に対して略垂直となるように、車体フレーム1に固定されるが、本発明はこれに限定されない。マスタシリンダ30は、車両の直進走行時にリザーバ方向が路面に対して所定角度傾斜するように、車体フレーム1に固定されてもよい。この場合、セパレータ52に形成される溝部63は、外周面S3のうちより上方に位置する部分に形成されることが望ましい。溝部63が外周面S3のうちより上方に位置する部分に形成されることにより、下部領域LRに進入した気泡が、溝部63と内周面50iとの間の隙間部分に円滑に導かれる。
【0078】
(5)上記実施の形態に係るセパレータ52は、仮想中心軸vaの方向に見て略円形状の外形を有するが、本発明はこれに限定されない。また、仮想中心軸vaの方向におけるセパレータ52の外周面S3の長さD1は、セパレータ52の全周に渡って一定であるが、本発明はこれに限定されない。
【0079】
セパレータ52は、仮想中心軸vaの方向に見て略楕円形状の外形を有してもよいし、仮想中心軸vaの方向に見て略多角形状の外形を有してもよい。また、仮想中心軸vaの方向におけるセパレータ52の外周面S3の長さD1は、セパレータ52の周方向の複数の部分で互いに異なってもよい。
【0080】
これらの場合、仮想中心軸vaの方向におけるセパレータ52の外周面S3の最小長さD1は、仮想中心軸vaに直交する方向におけるセパレータ52の最大寸法に対して1/3以上の寸法を有することが望ましい。それにより、簡単な構成で、上部領域URで発生した気泡が下部領域LRに進入することを低減することができる。
【0081】
なお、セパレータ52が、仮想中心軸vaの方向に見て略矩形状の外形を有する場合、仮想中心軸vaに直交する方向におけるセパレータ52の最大寸法は、矩形状の外形における2つの対角線のうち一方の対角線の長さとなる。
【0082】
(6)上記実施の形態は本発明を自動二輪車のブレーキ用のマスタシリンダに適用した例であるが、これに限らず、自動四輪車、自動三輪車もしくはATV(All Terrain Vehicle;不整地走行車両)等の他の鞍乗型車両のブレーキ用のマスタシリンダに本発明を適用してもよい。
【0083】
[7]実施の形態の各部と請求項の各構成要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各構成要素との対応の例について説明する。上記の実施の形態においては、液圧室40Cが液圧室の例であり、シリンダ本体部40がシリンダ本体部の例であり、貯留室50Cが貯留室の例であり、リザーバタンク50がリザーバタンクの例であり、上部領域URが上部領域の例であり、下部領域LRが下部領域の例である。
【0084】
また、セパレータ52がセパレータの例であり、セパレータ52の下面S2が下面の例であり、下面S2の環状部分62が環状部分の例であり、下面S2の環状部分62のうち外方かつ上方に傾斜している部分が傾斜部の例であり、マスタシリンダ30がマスタシリンダの例である。
【0085】
また、リザーバタンク50の内周面50iが内周面の例であり、セパレータ52の外周面S3が外周面の例であり、セパレータ52の外周面S3とリザーバタンク50の内周面50iとの間の隙間gが油流通路の例であり、セパレータ52の溝部63が溝部の例であり、車体フレーム1、エンジン5、リアアーム6、燃料タンク8およびシート9等を含む構成が車両本体部の例であり、後輪7が車輪の例であり、ブレーキキャリパ72がキャリパの例であり、自動二輪車100が鞍乗型車両の例である。
【0086】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。
【0087】
[8]参考形態
上記のマスタシリンダ30においては、仮想中心軸vaの方向におけるセパレータ52の外周面S3の長さD1が大きくなるにつれて上部領域URから下部領域LRに進入する気泡の量を少なくすることができる。そのため、セパレータ52の外周面S3の長さD1が、上部領域URから下部領域LRに気泡がほとんど進入しない程度の大きさに設定される場合には、セパレータ52の下面S2に傾斜する環状部分62(本発明の傾斜部)が設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…車体フレーム,2…フロントフォーク,3…前輪,4…ハンドル,5…エンジン,6…リアアーム,7…後輪,8…燃料タンク,9…シート,10…フットレスト,20…ブレーキリンク機構,21…ブレーキペダル,22…ペダルレバー,29…プッシュロッド,30…マスタシリンダ,40…シリンダ本体部,40C…液圧室,41…取付部,43…ピストン,44…リターンスプリング,50…リザーバタンク,50C…貯留室,50i…内周面,51…ダイヤフラム,51a…取付部,51b…第1の伸縮部,51c…第2の伸縮部,52…セパレータ,57…液流通孔,58a,58b…ポート,61…内側部分,62…環状部分,63…溝部,71…ディスクロータ,72…ブレーキキャリパ,80…ブレーキホース,100…自動二輪車,cy…筒状部,DR…リザーバ方向,g…隙間,HP…ヘッドパイプ,LR…下部領域,S1…上面,S2…下面,S3…外周面,UR…上部領域,va…仮想中心軸
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