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特開2022-142599情報処理装置、情報処理方法及び情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142599
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/20 20090101AFI20220922BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20220922BHJP
   H04W 40/12 20090101ALI20220922BHJP
   G05D 1/10 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H04W40/20
H04W84/18
H04W40/12
G05D1/10
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042830
(22)【出願日】2021-03-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 亮
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 顕
(72)【発明者】
【氏名】前迫 敬介
(72)【発明者】
【氏名】太田 喜元
(72)【発明者】
【氏名】松浦 一樹
【テーマコード(参考)】
5H301
5K067
【Fターム(参考)】
5H301AA06
5H301BB10
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301DD05
5H301DD15
5H301GG09
5H301KK07
5H301LL11
5K067AA01
5K067AA23
5K067EE02
5K067EE16
5K067EE25
5K067JJ52
(57)【要約】
【課題】無線通信ネットワークの通信性能を向上させる。
【解決手段】本願に係る情報処理装置は、飛行体に関する飛行情報を取得する取得部と、複数の飛行体によって形成されるメッシュネットワークにおける通信経路を妨げる障害物に関する障害物情報を推定する推定部と、取得部によって取得された飛行情報と推定部によって推定された障害物情報とに基づいて、メッシュネットワークの迂回通信経路を決定する決定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体に関する飛行情報を取得する取得部と、
複数の前記飛行体によって形成されるメッシュネットワークにおける通信経路を妨げる障害物に関する障害物情報を推定する推定部と、
前記取得部によって取得された飛行情報と前記推定部によって推定された障害物情報とに基づいて、前記メッシュネットワークの迂回通信経路を決定する決定部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、
前記飛行情報として、前記飛行体の位置を示す飛行体位置座標を取得し、
前記推定部は、
前記障害物情報として、前記障害物の位置を示す障害物位置座標を推定し、
前記決定部は、
前記取得部によって取得された飛行体位置座標と前記推定部によって推定された障害物位置座標とに基づいて、前記迂回通信経路を決定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推定部は、
前記飛行体の周辺の地図情報に基づいて、前記障害物位置座標を推定する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記推定部は、
前記飛行体が備える撮像部によって撮影された画像に基づいて、移動する前記障害物である移動障害物の前記障害物位置座標を推定する、
請求項2または3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記推定部は、
異なる複数の時刻それぞれにおける前記画像に基づいて、前記移動障害物の移動速度および前記異なる複数の時刻それぞれにおける前記移動障害物の移動位置座標を推定し、推定した前記移動速度および前記移動位置座標に基づいて、前記移動障害物の前記障害物位置座標を推定する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記推定部は、
前記障害物情報として、前記障害物によって前記通信経路が妨げられる障害物影響時間を推定し、
前記決定部は、
前記推定部によって推定された障害物影響時間に基づいて、前記障害物影響時間に前記障害物を迂回する前記迂回通信経路を決定する、
請求項1~5のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記取得部は、
前記飛行情報として、前記飛行体の速度を示す飛行体速度および前記飛行体の位置を示す飛行体位置座標を取得し、
前記推定部は、
前記飛行体速度と前記障害物の速度を示す障害物速度との相対速度、および前記飛行体位置座標と前記障害物の位置を示す障害物位置座標との相対位置座標を推定し、前記相対速度と前記相対位置座標とに基づいて、前記障害物影響時間を推定する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記決定部は、
前記飛行体の間を結ぶ無線通信経路の重みに基づいて、前記迂回通信経路を決定する、
請求項1~7のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記決定部は、
前記重みの総和が最小となる前記無線通信経路の組み合わせに基づいて、前記迂回通信経路を決定する、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記決定部は、
前記無線通信経路の通信にかかる通信コストに基づいて決定される前記重みに基づいて、前記迂回通信経路を決定する、
請求項8または9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記決定部は、
前記通信コストとして、前記無線通信経路における無線電波受信品質、通信帯域、伝送遅延、無線フレームロス率のうち少なくともいずれか1つに基づいて決定される前記重みに基づいて、前記迂回通信経路を決定する、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記決定部は、
複数の前記飛行体の間に前記障害物が存在しない前記迂回通信経路を決定する、
請求項1~11のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項13】
コンピュータが実行する情報処理方法であって、
飛行体に関する飛行情報を取得する取得工程と、
複数の前記飛行体によって形成されるメッシュネットワークにおける通信経路を妨げる障害物に関する障害物情報を推定する推定工程と、
前記取得工程によって取得された飛行情報と前記推定工程によって推定された障害物情報とに基づいて、前記メッシュネットワークの迂回通信経路を決定する決定工程と、
を含む情報処理方法。
【請求項14】
メッシュネットワークを形成する複数の飛行体と、情報処理装置と、
を備える情報処理システムであって、
前記飛行体は、
前記飛行体に関する飛行情報を取得する取得部と、
前記メッシュネットワークにおける通信経路を妨げる障害物に関する障害物情報を推定する推定部と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記取得部によって取得された飛行情報と前記推定部によって推定された障害物情報とに基づいて、前記メッシュネットワークの迂回通信経路を決定する、
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信ネットワークの通信経路を決定するための様々な技術が知られている。例えば、ダイクストラ法を用いて、メッシュネットワークのノードを相互接続するための無線通信ルートを決定する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/180534号
【特許文献2】特表2020-536409号公報
【特許文献3】特開2016-82522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信ネットワークの通信性能を向上させる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る情報処理装置は、飛行体に関する飛行情報を取得する取得部と、複数の前記飛行体によって形成されるメッシュネットワークにおける通信経路を妨げる障害物に関する障害物情報を推定する推定部と、前記取得部によって取得された飛行情報と前記推定部によって推定された障害物情報とに基づいて、前記メッシュネットワークの迂回通信経路を決定する決定部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係る高周波帯メッシュ型無線ネットワークの一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る飛行体装置の構成例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る障害物情報の推定処理の一例を説明するための図である。
図6図6は、既存技術に係る通信経路の決定処理を説明するための図である。
図7図7は、実施形態に係る迂回通信経路の決定処理を説明するための図である。
図8図8は、実施形態に係る情報処理システムによる情報処理手順を示すシーケンス図である。
図9図9は、変形例に係る障害物情報の推定処理の一例を説明するための図である。
図10図10は、情報処理装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本願に係る情報処理装置、情報処理方法及び情報処理システムを実施するための形態(以下、「実施形態」と呼ぶ)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る情報処理装置、情報処理方法及び情報処理システムが限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0008】
(実施形態)
〔1.はじめに〕
図1は、実施形態に係る高周波帯メッシュ型無線ネットワークの一例を示す図である。高周波帯とは、具体的には、サブシックス(Sub6)と呼ばれる6GHz未満の帯域(例えば、3.6GHz~4.6GHz)やミリ波(27GHz~30GHz)などのいわゆる第5世代通信方式(5G)で用いられる電波の周波数帯域のことを指す。本願明細書では、高周波帯メッシュ型無線ネットワークのことを単に「メッシュネットワーク」と記載する場合がある。
【0009】
図1に示すメッシュネットワークMNは、地上のコアネットワークと上空の無線通信基地局を接続する地上GW(gateway)と、上空の無線通信基地局に相当する飛行体装置50-1~50-4と、地上に位置する利用者の端末装置(図1ではバスや船)によって形成される。図1に示すメッシュネットワークMNは、長距離無線通信を行う。なお、以下の説明において、飛行体装置50-1~50-4を互いに区別する必要の無い場合には、符号のうちハイフンから後ろを省略することにより、これらを飛行体装置50と総称する。
【0010】
図1に示す例では、地上GWと飛行体装置50-1が相互に無線通信する通信経路をフィーダーリンクと呼ぶ。また、飛行体装置50-1~50-4が相互に無線通信する通信経路をメッシュリンクと呼ぶ。また、飛行体装置50-1~50-4それぞれと地上に位置する利用者の端末装置とが相互に無線通信する通信経路をサービスリンクと呼ぶ。
【0011】
図1に示すような高周波帯メッシュ型無線ネットワークでは、無線通信に用いられる電波の周波数が高く(波長が短く)、電波の直進性が高いため、通信経路上にビルなどの障害物があると電波が届きにくい(つまり、通信が遮断されやすい)場合がある。
【0012】
これに対し、本願に係る情報処理装置(実施形態では飛行体装置50)は、飛行体に関する飛行情報を取得する。また、情報処理装置は、複数の飛行体によって形成されるメッシュネットワークにおける通信経路を妨げる障害物に関する障害物情報を推定する。そして、情報処理装置(実施形態では情報処理装置100)は、取得された飛行情報と推定された障害物情報とに基づいて、メッシュネットワークの迂回通信経路を決定する。なお、本願明細書において、「通信経路を妨げる障害物」とは、通信経路を実際に妨げる障害物であってもよいし、通信経路を妨げる可能性がある障害物であってもよい。
【0013】
これにより、本願に係る情報処理装置は、無線通信ネットワークの通信経路上の障害物およびその影響時間を予測して、事前に迂回通信経路を決定し、障害物の影響時間に迂回通信経路に通信経路を切り替えることで、障害物による通信の遮断を回避することができる。したがって、本願に係る情報処理装置は、無線通信ネットワーク(例えば、高周波帯メッシュ型無線ネットワーク)の通信性能を向上させることができる。
【0014】
〔2.情報処理システムの構成例〕
まず、図2を用いて、実施形態に係る情報処理システムの構成例について説明する。図2は、実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。情報処理システム1は、メッシュネットワークを形成する複数の飛行体装置50と、情報処理装置100と、を備える。飛行体装置50と情報処理装置100とは所定のネットワークNを介して、有線または無線により通信可能に接続される。なお、図2に示す情報処理システム1には、任意の数の飛行体装置50と任意の数の情報処理装置100とが含まれてもよい。また、以下では、飛行体装置50のことを単に「飛行体」と記載する場合がある。
【0015】
飛行体装置50は、図1に示すようなメッシュネットワークを形成する通信基地局として機能し、高高度(例えば、成層圏)を飛び続ける無人飛行機である。具体的には、例えば、飛行体装置50は、高高度基盤ステーション(HAPS:High Altitude Platform Station)やドローンなどの無人飛行機であってよい。飛行体装置50は、LTE(Long Term Evolution)方式の無線通信に対応した携帯電話基地局であるeNB(evolved Node B)や第5世代通信方式(5G)における無線基地局であるgNB(next Generation Node B)として機能してよい。また、飛行体装置50は、メッシュネットワークの通信データを転送処理するネットワーク処理装置を搭載してよい。
【0016】
情報処理装置100は、飛行体装置50の飛行情報(位置および速度)に基づいて、通信経路のネットワークトポロジーを作成し、通信経路を算出する情報処理装置である。情報処理装置100は、通信経路を算出すると、算出した通信経路に基づいて飛行する飛行命令を飛行体装置50に送信する。具体的には、情報処理装置100は、飛行情報と障害物情報とに基づいて、障害物の影響を低減し得るメッシュネットワークの通信経路(迂回通信経路ともいう。)を決定する。なお、情報処理装置100は、SDN(Software Defined Networking)コントローラの役割を果たす。なお、情報処理装置100は、例えば、障害物を物理的に迂回する飛行体50により構成される通信経路を迂回通信経路として決定してもよい。また、情報処理装置100は、例えば、障害物の影響がないか、実質的に影響のない通信状態である通信経路を迂回通信経路として決定してもよい。
【0017】
〔3.飛行体装置の構成例〕
次に、図3を用いて、実施形態に係る飛行体装置50の構成について説明する。図3は、実施形態に係る飛行体装置50の構成例を示す図である。図3に示すように、飛行体装置50は、ネットワーク装置20と、複数のアンテナ装置30-N(N=1、2、3、…)と、複数の無線通信装置40-N(N=1、2、3、…)と、撮像部51とを有する。飛行体装置50の各部は、バス52によって接続される。飛行体装置50は、利用者の端末装置、地上GW、または隣接する他の飛行体装置50それぞれと無線通信するために、複数のアンテナ装置30-N(N=1、2、3、…)と、複数の無線通信装置40-N(N=1、2、3、…)を備える。
【0018】
なお、以下の説明において、アンテナ装置30-N(N=1、2、3、…)を互いに区別する必要の無い場合には、符号のうちハイフンから後ろを省略することにより、これらをアンテナ装置30と総称する。また、無線通信装置40-N(N=1、2、3、…)を互いに区別する必要の無い場合には、符号のうちハイフンから後ろを省略することにより、これらを無線通信装置40と総称する。
【0019】
ネットワーク装置20は、情報を送受信する。例えば、ネットワーク装置20は、メッシュネットワークMNを介して、メッシュネットワークを形成する他のノードへの情報を送信し、他のノードからの情報を受信する。例えば、他のノードは、コアネットワークノードおよび他の飛行体装置50を含む。例えば、アンテナ装置30は、メッシュネットワークMNを介して、他のノードから受信したRF信号をデジタルベースバンド信号に変換して無線通信装置40に送信する。無線通信装置40は、アンテナ装置30から受信したデジタルベースバンド信号を復調して、IPパケットをネットワーク装置20に送信する。ネットワーク装置20は、無線通信装置40からIPパケットを受信する。このように、ネットワーク装置20は、他のノードからの情報(に基づくIPパケット)を受信する。
【0020】
また、ネットワーク装置20は、他のノードへの情報に基づくIPパケットを無線通信装置40に送信する。無線通信装置40は、ネットワーク装置20から受信したIPパケットをデジタルベースバンド信号に変換してアンテナ装置30に送信する。アンテナ装置30は、無線通信装置40から受信したデジタルベースバンド信号をRF信号に変換して、メッシュネットワークMNを介して、他のノードへ送信する。このように、ネットワーク装置20は、他のノードへの情報(に基づくIPパケット)を送信する。
【0021】
また、以下に述べるように、ネットワーク装置20は、所定のネットワークNを介して、メッシュネットワークにおける通信経路に関する情報を情報処理装置100と送受信する。図3に示すように、ネットワーク装置20は、通信部21と、記憶部22と、制御部23とを有する。
【0022】
(通信部21)
通信部21は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。また、通信部21は、ネットワークN(図2参照)と有線又は無線で接続される。
【0023】
(記憶部22)
記憶部22は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。図3に示すように、記憶部22は、通信経路管理表記憶部221を有する。
【0024】
(通信経路管理表記憶部221)
通信経路管理表記憶部221は、メッシュネットワークにおける通信経路に関する情報を記憶する。例えば、通信経路管理表記憶部221は、メッシュネットワークを形成する飛行体装置50それぞれの各時刻における位置を示す飛行体位置座標および速度を示す飛行体速度に関する情報を記憶する。また、通信経路管理表記憶部221は、飛行体装置50それぞれの各時刻における飛行方向を示す情報を記憶する。また、通信経路管理表記憶部221は、飛行体装置50が各時刻に通信する他の飛行体装置50や地上GW、地上コアネットワーク装置に関する情報を記憶する。
【0025】
(制御部23)
制御部23は、コントローラ(Controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等によって、ネットワーク装置20の内部の記憶装置に記憶されている各種プログラム(情報処理プログラムの一例に相当)がRAM等の記憶領域を作業領域として実行されることにより実現される。図3に示す例では、制御部23は、取得部231と、推定部232と、送信部233と、通信経路制御部234とを有する。
【0026】
(取得部231)
取得部231は、飛行体に関する飛行情報を取得する。具体的には、取得部231は、飛行情報の一例として、各時刻における飛行体の位置を示す飛行体位置座標および各時刻における飛行体の速度を示す飛行体速度を取得してよい。例えば、取得部231は、通信経路管理表記憶部221を参照して、各時刻における飛行体位置座標および飛行体速度を取得してよい。例えば、飛行体位置座標は、グローバル座標系における位置座標であってよい。また、飛行体速度は、グローバル座標系における速度であってよい。
【0027】
(推定部232)
推定部232は、複数の飛行体によって形成されるメッシュネットワークにおける通信経路を妨げる障害物に関する障害物情報を推定する。ここから、図5を用いて、実施形態に係る障害物情報の推定処理について説明する。図5は、実施形態に係る障害物情報の推定処理の一例を説明するための図である。
【0028】
図5に示す例では、飛行体装置50-1および飛行体装置50-2は、図1に例示するメッシュネットワークMNの一部を形成する。また、飛行体装置50-1と飛行体装置50-2との間の通信経路上に、移動する障害物(以下、移動障害物ともいう)が近づいており、通信が遮断される恐れがある状況である。このとき、推定部232は、既存の映像解析技術を用いて、移動障害物による通信障害の発生および影響時刻を推定することができる。なお、移動障害物は、移動し、通信を遮断する可能性のある障害物であれば特に限定されない。移動障害物は、例えば、鳥の群れやドローンなどであってよい。以下では、本発明の一実施形態について、鳥の群れを移動障害物の例として説明する。
【0029】
図5に示す例では、推定部232は、飛行体が備える撮像部51によって撮影された時間的に連続する連続画像を取得する。より具体的には、推定部232は、異なる複数の時刻に撮影された連続する画像を取得する。例えば、推定部232は、第1時刻に撮影された鳥の群れOB1-1を含む第1画像と第2時刻(例えば、第1時刻より数秒後の時刻)に撮影された鳥の群れOB1-2を含む第2画像を取得する。
【0030】
推定部232は、連続画像である第1画像と第2画像を取得すると、既存の映像解析技術を用いて、画像中の移動物体(移動障害物)を抽出する。例えば、推定部232は、背景差分方式を用いて、第1画像と第2画像の背景差分の差分処理に基づいて、第1画像と第2画像に含まれる移動物体(移動障害物)である鳥の群れを検出する。
【0031】
また、推定部232は、連続画像に含まれる移動物体(移動障害物)を検出すると、各画像に含まれる移動物体(移動障害物)の各撮影時刻におけるグローバル位置座標を推定する。例えば、推定部232は、各画像に含まれる個々の移動物体(移動障害物)の各撮影時刻におけるグローバル位置座標を推定する。続いて、推定部232は、各画像に含まれる移動物体(移動障害物)の重心位置を示すグローバル位置座標を推定する。ここで、重心位置とは、各画像に含まれる個々の移動物体(移動障害物)の位置座標の算術平均を指す。例えば、推定部232は、各撮影時刻における飛行体装置50の撮像部51(例えば、RGBカメラ)のグローバル位置座標、各画像に含まれる地上マーカーの画像中の位置座標とグローバル位置座標、および各画像に含まれる移動物体(移動障害物)の画像中の位置座標に基づいて、各画像に含まれる移動物体(移動障害物)の重心位置のグローバル位置座標を推定する。例えば、推定部232は、第1時刻における鳥の群れOB1-1の重心位置のグローバル位置座標を推定してよい。また、例えば、推定部232は、第2時刻における鳥の群れOB1-2の重心位置のグローバル位置座標を推定してよい。
【0032】
続いて、推定部232は、各連続画像に含まれる移動物体(移動障害物)の重心位置のグローバル位置座標を推定すると、移動物体(移動障害物)の移動量を算出する。例えば、推定部232は、第1時刻における移動障害物の重心位置のグローバル位置座標と第2時刻における移動障害物の重心位置のグローバル位置座標とに基づいて、移動物体(移動障害物)のグローバル座標系における移動量を算出する。具体的には、例えば、推定部232は、第1時刻における鳥の群れOB1-1の重心位置のグローバル位置座標と第2時刻における鳥の群れOB1-2の重心位置のグローバル位置座標とに基づいて、鳥の群れのグローバル座標系における移動量を算出してよい。
【0033】
続いて、推定部232は、移動物体(移動障害物)の移動量を算出すると、算出した移動量を移動物体(移動障害物)の移動時間で除することにより、移動物体(移動障害物)の移動速度を推定する。例えば、推定部232は、算出した鳥の群れの移動量を、第2時刻と第1時刻との時間差分で除することにより、鳥の群れの移動速度を推定する。
【0034】
続いて、推定部232は、移動物体(移動障害物)の移動速度を推定すると、飛行体の飛行体速度と移動障害物の移動速度との相対速度を算出する。図5に示す例では、簡単のため、飛行体装置50-1および飛行体装置50-2が鳥の群れに対して常に静止しているとする。このとき、推定部232は、例えば、飛行体装置50-1の飛行体速度と鳥の群れの移動速度と相対速度として、鳥の群れの移動速度を算出してよい。
【0035】
また、推定部232は、取得部231が取得した飛行体装置50-1の飛行体位置座標および飛行体装置50-2の飛行体位置座標に基づいて、飛行体装置50-1と飛行体装置50-2の間の通信経路上の各点における通信経路位置座標を算出する。
【0036】
また、推定部232は、第2時刻における鳥の群れOB1-2の重心位置のグローバル位置座標、および飛行体装置50-1の飛行体速度と鳥の群れの移動速度と相対速度に基づいて、各時刻における鳥の群れの重心位置のグローバル位置座標を算出する。
【0037】
続いて、推定部232は、算出した通信経路位置座標と各時刻における鳥の群れの重心位置のグローバル位置座標とに基づいて、通信経路位置座標と鳥の群れ(図5に示す鳥の群れOB1-3)の重心位置のグローバル位置座標とが交差する交差点の交差点位置座標を算出する。ここで、交差点位置座標は、メッシュネットワークMNを形成する飛行体装置50-1と飛行体装置50-2の間の通信経路を妨げる移動障害物の障害物位置座標に対応する。
【0038】
また、推定部232は、算出した通信経路位置座標と各時刻における鳥の群れの重心位置のグローバル位置座標とに基づいて、通信経路位置座標と鳥の群れの重心位置のグローバル位置座標とが交差する時間(交差時間ともいう。)を算出する。ここで、交差時間は、メッシュネットワークにおける通信経路を妨げる移動障害物によって飛行体装置50-1と飛行体装置50-2の間の通信経路が遮断される時間(障害物影響時間ともいう。)に相当する。なお、障害物影響時間については後述する。
【0039】
上述したように、推定部232は、複数の飛行体によって形成されるメッシュネットワークMNにおける通信経路を妨げる障害物に関する障害物情報の一例として、障害物の速度を示す障害物速度を推定する。例えば、推定部232は、飛行体装置50-1と飛行体装置50-2との間の通信経路を妨げる移動障害物である鳥の群れの移動速度を推定してよい。また、推定部232は、障害物情報の一例として、メッシュネットワークにおける通信経路を妨げる障害物の位置を示す障害物位置座標を算出する。例えば、推定部232は、交差点位置座標を算出してよい。また、推定部232は、飛行体の飛行体速度と障害物速度との相対速度を算出する。例えば、推定部232は、飛行体の飛行体速度と比較することにより、相対速度として鳥の群れの移動速度を算出してもよい。また、推定部232は、飛行体の飛行体位置座標と障害物位置座標との相対位置座標を算出する。例えば、推定部232は、飛行体の飛行体位置座標と比較することにより、相対位置座標として通信経路位置座標を算出してもよい。また、推定部232は、算出した相対速度と相対位置座標とに基づいて、障害物影響時間を推定する。例えば、推定部232は、鳥の群れの移動速度と通信経路位置座標とに基づいて、飛行体と鳥の群れとの交差時間を推定してよい。
【0040】
(送信部233)
送信部233は、推定部232が障害物情報を推定すると、推定部232が推定した障害物情報と取得部231が取得した飛行情報を情報処理装置100に送信する。例えば、送信部233は、推定部232が推定した障害物位置座標および障害物影響時間に関する障害物情報を情報処理装置100に送信する。また、送信部233は、取得部231が取得した各時刻における飛行体位置座標および飛行体速度に関する飛行情報を情報処理装置100に送信する。なお、情報処理装置100が飛行情報を保持している場合には、送信部233は、障害物情報のみを情報処理装置100に送信してよい。
【0041】
(通信経路制御部234)
通信経路制御部234は、経路切替え命令を情報処理装置100から受信する。通信経路制御部234は、経路切替え命令を受信すると、受信した経路切替え命令を通信経路管理表記憶部221に記憶された通信経路管理表に反映する。
【0042】
また、通信経路制御部234は、経路切替え命令を反映した通信経路表に基づいて、指定された時間に通信経路を迂回通信経路に切り替える。例えば、通信経路制御部234は、指定された時間の開始時刻になると、通常の通信経路から迂回通信経路に切り替える。また、通信経路制御部234は、指定された時間の終了時刻になると、迂回通信経路を元の通常の通信経路に切り替える。
【0043】
アンテナ装置30は、電波(RF(Radio Frequency)信号ともいう)を送受信する。具体的には、アンテナ装置30は、無線通信装置40により出力されるデジタル信号を電波として空間に放射する。例えば、アンテナ装置30は、無線通信装置40から受信したデジタルベースバンド信号をRF信号に変換して、メッシュネットワークMNを介して、他のノードへ送信する。また、アンテナ装置30は、空間の電波をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号を無線通信装置40へ出力する。例えば、アンテナ装置30は、メッシュネットワークMNを介して、他のノードから受信したRF信号をデジタルベースバンド信号に変換して無線通信装置40に送信する。なお、本実施形態のアンテナ装置30は、複数のアンテナ素子を有し、ビームを形成し得る。
【0044】
また、アンテナ装置30は、リモート無線装置(RRU:Remote Radio Unit)またはリモート無線ヘッド(RRH:Remote Radio Head)を備えてよい。例えば、RRUまたはRRHは、無線通信装置40が備えるベースバンドユニット(BBU:Base Band Unit)からの各プロトコル処理されたデジタルベースバンド信号をRF信号に変換し、電力増幅して利用者の端末装置、地上GW、または隣接する他の飛行体装置50に送信してよい。例えば、アンテナ装置30-N(N=1、2、3、…)それぞれが備えるRRUまたはRRHは、無線通信装置40-N(N=1、2、3、…)それぞれが備えるBBUから受信したデジタルベースバンド信号をRF信号に変換して、メッシュネットワークMNを介して、利用者の端末装置、地上GW、または隣接する他の飛行体装置50-1~50-4それぞれへ送信してよい。
【0045】
また、RRUまたはRRHは、利用者の端末装置、地上GW、または隣接する他の飛行体装置50から受信したRF信号をデジタルベースバンド信号に変換してBBUに送信してよい。例えば、アンテナ装置30-N(N=1、2、3、…)それぞれが備えるRRUまたはRRHは、利用者の端末装置、地上GW、または隣接する他の飛行体装置50-1~50-4それぞれから受信したRF信号をデジタルベースバンド信号に変換して無線通信装置40-N(N=1、2、3、…)それぞれが備えるBBUに送信してよい。また、BBUとRRU(またはRRH)は、標準仕様であるCPRI(Common Public Radio Interface)に準拠した光インターフェース(図示略)で接続されてよい。
【0046】
無線通信装置40は、デジタル信号を送受信する。例えば、無線通信装置40は、アンテナ装置30から受信したデジタルベースバンド信号を復調して、IPパケットをネットワーク装置20に送信する。また、無線通信装置40は、ネットワーク装置20から受信したIPパケットをデジタルベースバンド信号に変換してアンテナ装置30に送信する。例えば、無線通信装置40は、ベースバンドユニット(BBU)を備えてよい。例えば、BBUは、RRUまたはRRHから受信したデジタルベースバンド信号を復調して、IPパケットをネットワーク装置20に送信してよい。例えば、無線通信装置40-N(N=1、2、3、…)それぞれが備えるBBUは、アンテナ装置30-N(N=1、2、3、…)それぞれが備えるRRUまたはRRHから受信したデジタルベースバンド信号それぞれを復調して、IPパケットそれぞれをネットワーク装置20に送信してよい。また、BBUは、ネットワーク装置20から受信したIPパケットをデジタルベースバンド信号に変換してRRUまたはRRHに送信してよい。例えば、無線通信装置40-N(N=1、2、3、…)それぞれが備えるBBUは、ネットワーク装置20から受信したIPパケットそれぞれをデジタルベースバンド信号にそれぞれ変換してアンテナ装置30-N(N=1、2、3、…)それぞれが備えるRRUまたはRRHそれぞれに送信してよい。
【0047】
撮像部51は、飛行体装置50が飛行している最中に、飛行体装置50の周辺の画像を撮影する撮像装置(例えば、RGBカメラ)である。また、撮像部51は、飛行体装置50が飛行する前に、飛行体装置50が飛行する予定の飛行位置周辺の画像を撮影する。例えば、撮像部51は、飛行体装置50が飛行する前に、飛行体装置50が飛行する予定の地上を含む画像を撮影してよい。例えば、撮像部51は、飛行体装置50が飛行する予定の地上に設置された地上マーカーを含む画像を撮影してよい。
【0048】
〔4.情報処理装置の構成例〕
次に、図4を用いて、実施形態に係る情報処理装置100の構成について説明する。図4は、実施形態に係る情報処理装置100の構成例を示す図である。図4に示すように、情報処理装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。
【0049】
(通信部110)
通信部110は、例えば、NIC等によって実現される。また、通信部110は、ネットワークN(図示略)と有線又は無線で接続される。
【0050】
(記憶部120)
記憶部120は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。図4に示すように、記憶部120は、ネットワークトポロジー管理表記憶部121を有する。
【0051】
(ネットワークトポロジー管理表記憶部121)
ネットワークトポロジー管理表記憶部121は、メッシュネットワークを形成する複数の飛行体装置50同士の接続関係(通信経路)のトポロジーに関する情報を記憶する。
【0052】
(制御部130)
制御部130は、コントローラであり、例えば、CPU、MPU、ASICやFPGA等によって、情報処理装置100の内部の記憶装置に記憶されている各種プログラム(情報処理プログラムの一例に相当)がRAM等の記憶領域を作業領域として実行されることにより実現される。図4に示す例では、制御部130は、受信部131と、決定部132と、送信部133とを有する。
【0053】
(受信部131)
受信部131は、障害物情報と飛行情報を飛行体装置50から受信する。具体的には、受信部131は、飛行情報の一例として、飛行体位置座標および飛行体速度に関する情報を受信してよい。また、受信部131は、障害物情報の一例として、障害物位置座標および障害物影響時間に関する情報を受信してよい。ここで、障害物影響時間とは、障害物がメッシュネットワークの通信に影響を及ぼす時間のことを指す。例えば、障害物影響時間は、障害物がメッシュネットワークの通信に影響を及ぼし始める時刻から障害物の影響が消失するまでの時刻のことを指してよい。
【0054】
(決定部132)
ここから、図6を用いて、既存技術に係る通信経路の決定処理について説明する。図6は、既存技術に係る通信経路の決定処理を説明するための図である。図6に示す例では、通信経路上に障害物が存在せず、障害物の影響がない場合の通信経路の決定処理について説明する。例えば、決定部132は、既存のダイクストラ法を用いて、飛行体装置50間の最適な通信経路を算出してよい。なお、以下では、飛行体装置50の代わりに、飛行体装置50が備えるネットワーク装置20間の通信経路を算出するとして記載する。
【0055】
図6の上段は、ネットワーク装置20―1~20-4間のすべての無線通信経路とその重みを示す。ここで、各無線通信経路の重みは、各無線通信経路の通信にかかる通信コストに基づいて決定される。例えば、各無線通信経路の重みは、各無線通信経路における無線電波受信品質、通信帯域、伝送遅延、無線フレームロス率のうち少なくともいずれか1つに基づいて決定される。図6では、簡単のため、各無線通信経路の重みを「10」や「20」といった数字で表す。例えば、重みが「10」である無線通信経路は、重みが「20」である無線通信経路よりも通信コストが小さいことを示す。
【0056】
図6の上段に示すように、ネットワーク装置20―1とネットワーク装置20―2を結ぶ無線通信経路L12の重みは「10」で表される。また、ネットワーク装置20―1とネットワーク装置20―3を結ぶ無線通信経路L13の重みは「20」で表される。また、ネットワーク装置20―2とネットワーク装置20―3を結ぶ無線通信経路L23の重みは「20」で表される。また、ネットワーク装置20―2とネットワーク装置20―4を結ぶ無線通信経路L24の重みは「10」で表される。また、ネットワーク装置20―3とネットワーク装置20―4を結ぶ無線通信経路L34の重みは「20」で表される。
【0057】
図6の下段は、決定部132が決定した障害物の影響がない場合のメッシュネットワークにおける通信経路を示す。具体的には、決定部132は、図6の上段に示すネットワーク装置間を結ぶ無線通信経路の重みの総和が最小となる無線通信経路の組み合わせ(接続関係、トポロジー)を通信経路として決定する。例えば、図6の下段に示す例では、決定部132は、ネットワーク装置20―1とネットワーク装置20―2が相互に通信するために最短の無線通信経路L12を選択する。同様に、決定部132は、ネットワーク装置20―1とネットワーク装置20―3が相互に通信するために最短の無線通信経路L13を選択する。続いて、決定部132は、ネットワーク装置20―1とネットワーク装置20―4が相互に通信するための通信経路を選択する際に、無線通信経路L24の重み「10」と無線通信経路L34の重み「20」を比較して、重みがより小さい無線通信経路L24を選択する。このように、決定部132は、ネットワーク装置20―1~ネットワーク装置20―4が相互に通信可能であって、かつ、無線通信経路の重みの総和が最小となる無線通信経路の組み合わせをメッシュネットワークにおける通信経路として決定する。
【0058】
ここから、図7を用いて、実施形態に係る迂回通信経路の決定処理について説明する。図7は、実施形態に係る迂回通信経路の決定処理を説明するための図である。図7に示す例では、通信経路上に障害物が発生し、障害物の影響がある場合の通信経路の決定処理について説明する。
【0059】
図7の上段は、図6の上段と同じネットワーク装置20―1~20-4間のすべての無線通信経路とその重みを示す。図7の上段では、ネットワーク装置20―1とネットワーク装置20―2を結ぶ無線通信経路L12上に障害物が発生して、無線通信経路L12で通信遮断が起きている点が図6の上段と異なる。
【0060】
図7の下段は、決定部132が決定した障害物の影響がある場合のメッシュネットワークにおける通信経路を示す。具体的には、例えば、決定部132は、複数の飛行体の間に障害物が存在しない迂回通信経路を決定する。図7の下段に示す例では、決定部132は、障害物が存在する無線通信経路L12を除いた無線通信経路L13、L23、L24、L34の組み合わせの中から、障害物を迂回するメッシュネットワークの迂回通信経路を決定する。
【0061】
より具体的には、例えば、決定部132は、無線通信経路L13、L23、L24、L34の組み合わせの中から、無線通信経路の重みの総和が最小となる無線通信経路の組み合わせを選択してよい。図7の下段に示す例では、決定部132は、ネットワーク装置20―1とネットワーク装置20―2の間に障害物が存在するため、無線通信経路L12を選択しない。続いて、決定部132は、ネットワーク装置20―1とネットワーク装置20―3が相互に通信するために最短の無線通信経路L13を選択する。続いて、決定部132は、ネットワーク装置20―3とネットワーク装置20―2が相互に通信するために最短の無線通信経路L23を選択する。続いて、決定部132は、ネットワーク装置20―3とネットワーク装置20―4が相互に通信するための通信経路を選択する際に、無線通信経路L34の重み「20」と、無線通信経路L23の重み「20」と無線通信経路L24の重み「10」との和である「30」とを比較して、より重みが小さい無線通信経路L34を選択する。
【0062】
ここで、図7の下段に例示する無線通信経路L23と無線通信経路L34は、図6の下段に例示する障害物の影響がない場合には選択されなかったメッシュネットワークにおける通信経路である。このように、決定部132は、複数の飛行体の間に障害物が存在しない迂回通信経路として、無線通信経路L23と無線通信経路L34を選択する。
【0063】
また、上述したように、決定部132は、受信部131が受信した飛行体位置座標と障害物位置座標とに基づいて、迂回通信経路を決定する。例えば、決定部132は、ネットワーク装置20の位置座標、及びネットワーク装置20―1とネットワーク装置20―2との間の障害物の障害物位置座標に基づいて迂回通信経路を決定してよい。
【0064】
また、決定部132は、受信部131が受信した障害物影響時間に基づいて、障害物影響時間に障害物を迂回する迂回通信経路を決定する。例えば、決定部132は、受信部131が受信した障害物影響時間に迂回通信経路に通信経路を切り替える切替え命令情報を生成してよい。
【0065】
(送信部133)
送信部133は、決定部132が迂回通信経路を決定すると、決定部132が決定した迂回通信経路に基づいて通信経路を切り替える経路切替え命令を飛行体装置50に送信する。
【0066】
〔5.情報処理システムによる情報処理手順〕
次に、図8を用いて、実施形態に係る情報処理システムによる情報処理手順について説明する。図8は、実施形態に係る情報処理システムによる情報処理手順を例示するシーケンス図である。まず、飛行体装置50のネットワーク装置20の取得部231が、飛行体に関する飛行情報を取得する(ステップS1)。続いて、飛行体装置50のネットワーク装置20の推定部232は、複数の飛行体によって形成されるメッシュネットワークにおける通信経路を妨げる障害物に関する障害物情報を推定する(ステップS2)。例えば、推定部232は、障害物情報として、障害物位置情報および障害物影響時間を推定する。続いて、飛行体装置50のネットワーク装置20の送信部233は、推定部232が障害物情報を推定すると、推定部232が推定した障害物情報と取得部231が取得した飛行情報を情報処理装置100に送信する(ステップS3)。
【0067】
情報処理装置100の受信部131は、障害物情報と飛行情報を飛行体装置50から受信する。情報処理装置100の決定部132は、受信部131が障害物情報と飛行情報を受信すると、受信部131が受信した障害物情報と飛行情報とに基づいて、メッシュネットワークの迂回通信経路を決定する(ステップS4)。情報処理装置100の送信部133は、決定部132が迂回通信経路を決定すると、決定部132が決定した迂回通信経路に基づいて通信経路を切り替える経路切替え命令を飛行体装置50に送信する(ステップS5)。
【0068】
飛行体装置50のネットワーク装置20の通信経路制御部234は、経路切替え命令を情報処理装置100から受信する(ステップS6)。飛行体装置50のネットワーク装置20の通信経路制御部234は、経路切替え命令を受信すると、受信した経路切替え命令を通信経路管理表に反映する。また、飛行体装置50のネットワーク装置20の通信経路制御部234は、経路切替え命令を反映した通信経路表に基づいて、指定された時間に通信経路を迂回通信経路に切り替える(ステップS7)。
【0069】
〔6.変形例〕
上述した実施形態に係る情報処理システム1は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。そこで、以下では、情報処理システム1の他の実施形態について説明する。なお、実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
ここから、図9を用いて、変形例に係る障害物情報の推定処理について説明する。図9は、変形例に係る障害物情報の推定処理の一例を説明するための図である。
【0071】
図9に示す例では、飛行体装置50-1および飛行体装置50-2は、図1に例示するメッシュネットワークMNの一部を形成する。図9では、飛行体装置50-1と飛行体装置50-2との間の通信経路上に、地上に固定された障害物(固定障害物ともいう)が存在するため、通信が遮断される可能性がある状況が例示されている。このとき、推定部232は、飛行情報と地図データを利用して、固定障害物による通信障害の発生および影響時刻を推定する。なお、固定障害物は、地上に固定され、通信を遮断する可能性のあるものであれば特に限定されない。例えば、固定障害物は、鉄塔、ビル、橋梁などであってよい。以下では、本発明の変形例に係る一実施形態について、鉄塔を固定障害物の例として説明する。図9では、簡単のため、飛行体装置50-2は静止しているものとする。
【0072】
推定部232は、飛行情報を取得する。具体的には、推定部232は、通信経路管理表記憶部221を参照して、飛行体装置50-1の飛行速度および飛行方向を示す情報を取得する。また、推定部232は、通信経路管理表記憶部221を参照して、飛行体装置50-2の飛行体位置座標を取得する。
【0073】
また、取得部231は、飛行体の周辺の地図情報を取得する。例えば、取得部231は、外部の装置から飛行体の周辺の3次元地図情報を取得する。
【0074】
推定部232は、取得部231が取得した飛行体の周辺の3次元地図情報に基づいて、障害物位置座標を推定する。例えば、推定部232は、3次元地図情報に基づいて、鉄塔の大きさ、高度、および鉄塔の位置座標を取得してよい。続いて、推定部232は、飛行体装置50の飛行速度および飛行方向を示す情報と、鉄塔の大きさ、高度、および鉄塔の位置座標とに基づいて、固定障害物である鉄塔による通信経路への影響時間を算出する。例えば、推定部232は、飛行体装置50-1の飛行速度および飛行方向を示す情報に基づいて、飛行体装置50-2の飛行体位置座標と鉄塔の位置座標を結ぶ延長線上に飛行体装置50-1が位置する時刻を算出してよい。ここで、飛行体装置50-2の飛行体位置座標と鉄塔の位置座標を結ぶ延長線上に飛行体装置50-1が位置する時刻は、メッシュネットワークにおける通信経路を妨げる固定障害物によって飛行体装置50-1と飛行体装置50-2の間の通信経路が遮断される障害物影響時間に相当する。
【0075】
〔7.効果〕
上述したように、本発明の一実施形態に係る情報処理装置(実施形態では飛行体装置50と情報処理装置100)は、取得部(実施形態では取得部231)と、推定部(実施形態では推定部232)と、決定部(実施形態では決定部132)を備える。取得部は、飛行体(実施形態では飛行体装置50)に関する飛行情報を取得する。推定部は、複数の飛行体によって形成されるメッシュネットワークにおける通信経路を妨げる障害物に関する障害物情報を推定する。決定部は、取得部によって取得された飛行情報と推定部によって推定された障害物情報とに基づいて、メッシュネットワークの迂回通信経路を決定する。
【0076】
これにより、情報処理装置は、無線通信ネットワークの通信経路上の障害物およびその影響時間を予測して、事前に迂回通信経路を決定し、障害物の影響時間に迂回通信経路に通信経路を切り替えることができる。したがって、本発明の一実施形態によれば、障害物による通信の遮断を回避することができる。すなわち、本発明の一実施形態によれば、無線通信ネットワーク(例えば、高周波帯メッシュ型無線ネットワーク)の通信性能を向上させることができる。
【0077】
また、取得部は、飛行情報として、飛行体の位置を示す飛行体位置座標を取得する。推定部は、障害物情報として、障害物の位置を示す障害物位置座標を推定する。決定部は、取得部によって取得された飛行体位置座標と推定部によって推定された障害物位置座標とに基づいて、迂回通信経路を決定する。
【0078】
これにより、情報処理装置は、飛行体位置座標に基づいて算出される通信経路上に位置する障害物位置座標を算出することができる。したがって、本発明の一実施形態によれば、無線通信ネットワークの通信経路上の障害物およびその影響時間を適切に予測することができる。
【0079】
また、推定部は、飛行体の周辺の地図情報に基づいて、障害物位置座標を推定する。
【0080】
これにより、情報処理装置は、例えば、地上に固定された建物や鉄塔などの固定障害物の障害物位置座標を正確に推定することができる。したがって、本発明の一実施形態によれば、無線通信ネットワークの通信経路上の障害物およびその影響時間を適切に予測することができる。
【0081】
また、推定部は、飛行体が備える撮像部(実施形態では撮像部51)によって撮影された画像に基づいて、移動する障害物である移動障害物の障害物位置座標を推定する。例えば、推定部は、異なる複数の時刻それぞれにおける画像に基づいて、移動障害物の移動速度および異なる複数の時刻それぞれにおける移動障害物の移動位置座標を推定し、推定した移動速度および移動位置座標に基づいて、移動障害物の障害物位置座標を推定する。
【0082】
これにより、情報処理装置は、例えば、鳥の群れなどの移動障害物の障害物位置座標を正確に推定することができる。したがって、本発明の一実施形態によれば、無線通信ネットワークの通信経路上の障害物およびその影響時間を適切に予測することができる。
【0083】
また、推定部は、障害物情報として、障害物によって通信経路が妨げられる障害物影響時間を推定する。決定部は、推定部によって推定された障害物影響時間に基づいて、障害物影響時間に障害物を迂回する迂回通信経路を決定する。
【0084】
これにより、情報処理装置は、障害物によって通信経路が妨げられる障害物影響時間だけ、飛行体のネットワーク装置が通信経路を迂回通信経路に切り替えることを可能にする。したがって、本発明の一実施形態によれば、迂回通信経路への切り替えによる通信コストの増大を最小に抑えることができる。
【0085】
また、取得部は、飛行情報として、飛行体の速度を示す飛行体速度および飛行体の位置を示す飛行体位置座標を取得する。推定部は、飛行体速度と障害物の速度を示す障害物速度との相対速度、および飛行体位置座標と障害物の位置を示す障害物位置座標との相対位置座標を推定し、相対速度と相対位置座標とに基づいて、障害物影響時間を推定する。
【0086】
これにより、本発明の一実施形態によれば、飛行体の位置、飛行体の速度、障害物の位置および障害物の速度が時間に応じて変化する場合であっても、適切に障害物影響時間を推定することができる。
【0087】
また、決定部は、飛行体の間を結ぶ無線通信経路の重みに基づいて、迂回通信経路を決定する。例えば、決定部は、重みの総和が最小となる無線通信経路の組み合わせに基づいて、迂回通信経路を決定する。例えば、決定部は、無線通信経路の通信にかかる通信コストに基づいて決定される重みに基づいて、迂回通信経路を決定する。例えば、決定部は、通信コストとして、無線通信経路における無線電波受信品質、通信帯域、伝送遅延、無線フレームロス率のうち少なくともいずれか1つに基づいて決定される重みに基づいて、迂回通信経路を決定する。
【0088】
これにより、本発明の一実施形態によれば、迂回通信経路を決定する場合であっても、通信コストの増大を抑えることができる。
【0089】
また、決定部は、複数の飛行体の間に障害物が存在しない迂回通信経路を決定する。
【0090】
これにより、情報処理装置は、複数の飛行体の間に障害物が存在しない迂回通信経路を決定することができる。したがって、本発明の一実施形態によれば、障害物による通信の遮断を回避することができる。
【0091】
〔8.ハードウェア構成〕
また、上述してきた実施形態に係る情報処理装置100やネットワーク装置20は、例えば図10に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。図10は、情報処理装置100またはネットワーク装置20の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD1400、通信インターフェイス(I/F)1500、入出力インターフェイス(I/F)1600、及びメディアインターフェイス(I/F)1700を備える。
【0092】
CPU1100は、ROM1300またはHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0093】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インターフェイス1500は、所定の通信網を介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを所定の通信網を介して他の機器へ送信する。
【0094】
CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータを入出力インターフェイス1600を介して出力装置へ出力する。
【0095】
メディアインターフェイス1700は、記録媒体1800に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、かかるプログラムを、メディアインターフェイス1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0096】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る情報処理装置100またはネットワーク装置20として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部130または制御部23の機能を実現する。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムを記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から所定の通信網を介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0097】
以上、本願の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0098】
〔9.その他〕
また、上記実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0099】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0100】
例えば、上述した実施形態では、情報処理システム1が情報処理装置100を中心とした中央処理型(集中型ともいう)のコンピューティングシステムである例について説明したが、情報処理システムの構成はこれに限られない。例えば、情報処理システム1は、複数台の飛行体装置50で構成される分散型コンピューティングシステムであってよい。この場合、情報処理システム1は、複数台の飛行体装置50がネットワークを介して互いに接続される。また、この場合、情報処理システム1では、それぞれの飛行体装置50に図4で説明した情報処理装置100の機能が実装される。
【0101】
また、上述した情報処理装置100は、複数のサーバコンピュータで実現してもよく、また、機能によっては外部のプラットホーム等をAPI(Application Programming Interface)やネットワークコンピューティング等で呼び出して実現するなど、構成は柔軟に変更できる。
【0102】
また、上述してきた実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0103】
また、上述してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、決定部は、決定手段や決定回路に読み替えることができる。
【符号の説明】
【0104】
1 情報処理システム
50 飛行体装置
51 撮像部
20 ネットワーク装置
21 通信部
22 記憶部
221 通信経路管理表記憶部
23 制御部
231 取得部
232 推定部
233 送信部
234 通信経路制御部
100 情報処理装置
110 通信部
120 記憶部
121 ネットワークトポロジー管理表記憶部
130 制御部
131 受信部
132 決定部
133 送信部
図1
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