(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142627
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/8239 20060101AFI20220922BHJP
H01L 45/00 20060101ALI20220922BHJP
H01L 49/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H01L27/105 449
H01L45/00 A
H01L49/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042876
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 健
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083FZ10
5F083GA09
5F083GA10
5F083GA25
5F083JA36
5F083JA37
5F083JA39
5F083JA40
5F083JA56
5F083JA60
5F083KA01
5F083KA05
5F083PR03
5F083PR21
5F083PR22
5F083PR40
(57)【要約】
【課題】リセット電流の抑制を図ることができる半導体記憶装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の半導体記憶装置は、第1の物質からなる電極を有する。通電による加熱により、高抵抗状態の抵抗率と低抵抗状態の抵抗率を切り替え可能な第2の物質からなる記憶物質と、前記電極と前記記憶物質を薄膜状に積層化した構造を有する。前記記憶物質よりも熱伝導率の低い物質からなる側壁を前記記憶物質の薄膜の側面に備える。前記第1の物質が、電子線回折で回折ピークを確認できないアモルファス構造を有する。熱伝導率が単相金属と比較して2桁低く、抵抗率が50mΩ・cm以下であり、正の温度依存性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の物質からなる電極と、
通電による加熱により、高抵抗状態の抵抗率と低抵抗状態の抵抗率を切り替え可能な第2の物質からなる記憶物質と、
前記電極と前記記憶物質を薄膜状に積層化した構造を有し、
前記記憶物質よりも溶融温度の高い物質からなる側壁層を前記記憶物質の薄膜の側面に備え、
前記第1の物質が、電子線回折で回折ピークを確認できないアモルファス構造を有し、
熱伝導率が単相金属と比較して2桁低く、抵抗率が50mΩ・cm以下であり、正の温度依存性を有する、
半導体記憶装置。
【請求項2】
前記第1の物質が、2つ以上の耐火金属M1を含む、請求項1に記載の半導体記憶装置。
ただし、耐火金属M1は、W、Mo、Ta、Nb、Rh、Niのうち、1種または2種以上を示す。
【請求項3】
前記第1の物質が、2つ以上の耐火金属M1を含み、かつ、1つ以上の半金属もしくは非金属である元素M2を含む、請求項1に記載の半導体記憶装置。
ただし、元素M2は、B、C、N、Al、Si、P、S、Ge、As、Seのうち、1種または2種以上を示す。
【請求項4】
前記第1の物質が、Feを含み、かつ、1つ以上の元素M3を含む、請求項1に記載の半導体記憶装置。
ただし、前記元素M3は、Tb、Gd、Co、B、Ni、Cr、Pのうち、1種または2種以上を示す。
【請求項5】
前記第1の物質が、ZrとCuを含み、かつ、1つ以上の元素M4を含む、請求項1に記載の半導体記憶装置。
ただし、前記元素M4は、Al、Ni、Ti、Nb、Beのうち、1種または2種以上を示す。
【請求項6】
前記第1の物質が、PdとNiを含み、かつ、PまたはPとCuを含む、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記積層化した構造は、前記記憶物質からなる相変化膜を有し、該相変化膜の厚さ方向両側にそれぞれ電極層を有する請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
前記積層化した構造は、前記記憶物質からなる相変化膜を有し、該相変化膜の厚さ方向両側にそれぞれバリア層と電極層を有する請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記積層化した構造は、前記記憶物質からなる相変化膜を有し、該相変化膜の厚さ方向両側にそれぞれ電極層を有し、更にセレクタ層を有する請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記積層化した構造は、前記記憶物質からなる相変化膜を有し、該相変化膜の厚さ方向両側にそれぞれバリア層と電極層を有し、更にセレクタ層を有する請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
前記積層化した構造は、前記記憶物質からなる相変化膜を有し、該相変化膜の厚さ方向両側に電極層を有し、更に他の電極層とセレクタ層を備えた請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項12】
前記積層化した構造は、前記記憶物質からなる相変化膜を有し、該相変化膜の厚さ方向両側にそれぞれバリア層と電極層を有し、更に他の電極層とセレクタ層を備えた請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項13】
第1方向に対向配置された第1対向電極及び第2対向電極と、
これら第1対向電極及び第2対向電極の間に設けられた前記記憶物質の薄膜からなる相変化膜と、
前記相変化膜の、前記第1方向と交差する第2方向の側面に設けられ、前記記憶層を構成する少なくとも1種の元素と、窒素、炭素、ホウ素及び酸素から選ばれた少なくとも1種の元素を含む側壁層と、
を備えた
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量データを記憶する半導体記憶装置として、メモリセルの抵抗値を変化させて情報を記憶する抵抗変化型の半導体記憶装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0043807号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0045388号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/0160331号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の半導体記憶装置では、情報を記録する記憶層に電極層を接続させて設け、電極層の通電加熱により記憶層の状態を変化させて情報の書き込みと消去を行う構造が採用されている。従って、半導体記憶装置の集積化を推進するためには、電極層の薄型化を推進する必要がある。また、記憶層に保持されている情報を消去する場合に記憶層の状態をリセットする場合の電流値はできる限り少ないことが望ましい。
実施形態が解決しようとする課題は、電極層の膜厚低減とリセット電流の低減を図ることのできる半導体記憶装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体記憶装置は、第1の物質からなる電極を有する。通電による加熱により、高抵抗状態の抵抗率と低抵抗状態の抵抗率を切り替え可能な第2の物質からなる記憶物質と、前記電極と前記記憶物質を薄膜状に積層化した構造を有する。前記記憶物質よりも溶融温度の高い物質からなる側壁層を備える。前記第1の物質が、電子線回折で回折ピークを確認できないアモルファス構造を有し、熱伝導率が単相金属と比較して2桁低く、抵抗率が50mΩ・cm以下であり、正の温度依存性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る半導体記憶装置のブロック図である。
【
図2】同半導体記憶装置のメモリセルアレイの構成を示す回路図である。
【
図3】同メモリセルアレイの構成を示す斜視図である。
【
図4】同メモリセルアレイに設けられるメモリマットの要部を示す部分断面図である。
【
図5】同メモリセルアレイに設けられる第2実施形態のメモリマットの要部を示す部分断面図である。
【
図6】同メモリセルアレイに設けられる第3実施形態のメモリマットの要部を示す部分断面図である。
【
図7】同メモリセルアレイに設けられる第4実施形態のメモリマットの要部を示す部分断面図である。
【
図8】同メモリセルアレイに設けられる第5実施形態のメモリマットの要部を示す部分断面図である。
【
図9】同メモリセルアレイに設けられる第6実施形態のメモリマットの要部を示す部分断面図である。
【
図10】同半導体記憶装置のメモリマットの一実施形態における製造方法を示す部分断面図である。
【
図11】同半導体記憶装置のメモリマットの一実施形態における製造方法を示す部分断面図である。
【
図12】同半導体記憶装置のメモリマットの一実施形態における製造方法を示す部分断面図である。
【
図13】同半導体記憶装置のメモリマットの一実施形態における製造方法を示す部分断面図である。
【
図14】同半導体記憶装置のメモリマットの一実施形態における製造方法を示す部分断面図である。
【
図15】同半導体記憶装置のメモリマットの一実施形態における製造方法を示す部分断面図である。
【
図16】同半導体記憶装置のメモリマットの一実施形態における製造方法を示す部分断面図である。
【
図17】メモリマットの相変化膜に適用される炭素とアモルファス合金について、熱伝導率の温度依存性を示すグラフである。
【
図18】同アモルファス合金に関し、温度毎のX線回折分析結果を示すグラフである。
【
図19】同半導体装置のメモリマットの一実施形態において電極を構成する炭素膜をアモルファス合金に置き換えた場合の効果について説明するための部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
「第1実施形態」
以下、第1実施形態の半導体記憶装置について図面を参照し説明する。
以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。本明細書で「接続」とは、物理的に接続される場合に限定されず、電気的に接続される場合も含む。本明細書で「隣り合う」とは、互いに隣接する場合に限定されず、対象となる2つの要素の間に別の要素が存在する場合を含む。本明細書で「xxがyy上に設けられる」とは、xxがyyに接する場合に限定されず、xxとyyとの間に別の部材が介在する場合も含む。本明細書で「平行」および「直交」とは、それぞれ「略平行」および「略直交」の場合も含む。
【0008】
また、先にX方向、Y方向、Z方向について定義する。X方向およびY方向は、後述する半導体基板SBの表面に沿う方向である。X方向は、後述するワード線WLが延びた方向である。Y方向は、X方向とは交差する(例えば直交する)方向である。Y方向は、後述するビット線BLが延びた方向である。Z方向(第1方向)は、X方向およびY方向と交差する(例えば直交する)方向であり、半導体基板SBの厚さ方向である。本明細書では、「+Z方向」を「上」、「-Z方向」を「下」と称する場合がある。+Z方向と-Z方向は180°異なる方向となる。ただしこれらの表現は、便宜上のものであり、重力方向を規定するものではない。また、X方向とY方向をまとめてXY方向(第2方向)と記載する場合がある。
【0009】
<1.半導体記憶装置の全体構成>
図1は、第1実施形態に係る半導体記憶装置の全体構成を示すブロック図である。
第1実施形態に係る半導体記憶装置1は、メモリセルアレイ11と、メモリセルアレイ11から所望のメモリセルMCを選択する行デコーダ12及び列デコーダ13を有する。また、半導体記憶装置1は、これらデコーダ12、13に行アドレス及び列アドレスを与える上位ブロックデコーダ14と、半導体記憶装置1の各部に電力を供給する電源15と、これらを制御する制御回路16を備える。
【0010】
メモリセルアレイ11は、それぞれ、1ビット又は複数ビットのデータを記憶するメモリセルMCを複数備える。メモリセルアレイ11は、行デコーダ12及び列デコーダ13によって選択された所望のビット線BL及びワード線WLに所定の電圧が印加されることにより、所望のメモリセルMCがアクセス(データの消去/書き込み/読み出し)可能に構成される。
【0011】
図2は、メモリセルアレイ11の一部の構成を示す等価回路図である。
メモリセルアレイ11は、複数のビット線BL、複数のワード線WL1、WL2、及び、これらビット線BL及びワード線WL1、WL2に接続された複数のメモリセルMC1、MC2を備える。
これらメモリセルMC1、MC2は、ワード線WL1,WL2を介して行デコーダ12に接続されると共に、ビット線BLを介して列デコーダ13に接続されている。メモリセルMC1、MC2は、それぞれ、例えば、1ビット分のデータを記憶する。また、共通のワード線WL1、WL2に接続された複数のメモリセルMC1、MC2は、例えば1ページ分のデータを記憶する。
【0012】
メモリセルMC1、MC2は、相変化膜PCMとセレクタSELの直列回路により構成されている。
相変化膜PCMは、電流パターン(加熱パターン)に応じて低抵抗の結晶状態と高抵抗のアモルファス状態の2種類の状態を取り得る膜であり、相変化膜として機能する。これら2種類の抵抗値の状態を“0”、“1”の情報に対応させることにより、相変化膜PCMをメモリセルとして機能させることができる。従って、相変化膜PCMは記憶層として機能する。また、メモリセルMC1、MC2にセレクタSELが設けられる場合、各セレクタSELは整流素子として機能する。従って、選択されたワード線WL1、WL2以外のワード線WL1,WL2には、ほぼ電流が流れない。
【0013】
なお、以下において、メモリセルアレイ11の第1層に対応する複数のビット線BL、複数のワード線WL1、及び、複数のメモリセルMC1を含む構成を、メモリマットMM0と呼称できる。同様に、メモリセルアレイ11の第2層に対応する複数のビット線BL、複数のワード線WL2、及び、複数のメモリセルMC2を含む構成を、メモリマットMM1と呼称できる。
【0014】
図3は、メモリセルアレイ11の一部の構成を示す概略的な斜視図である。
メモリセルアレイ11は、この例では、いわゆるクロスポイント型のメモリセルアレイである。即ち、半導体基板SBの上方には、半導体基板SBの上面と平行なY方向に所定間隔を空けて複数のワード線WL1が配置され、これらのワード線WL1が半導体基板SBの上面と平行で且つY方向と交差するX方向に平行に延びるように設けられている。また、これら複数のワード線WL1の上方には、X方向に所定間隔を空けて複数のビット線BLが配置され、これらの複数のビット線BLがY方向に平行に延びるように設けられている。
【0015】
更に、複数のビット線BLの上方には、Y方向に所定間隔を空けて複数のワード線WL2が配置され、これら複数のワード線WL2がX方向に平行に延びるように設けられている。また、複数のワード線WL1及び複数のビット線BLの交差部には、それぞれ、メモリセルMC1が設けられる。同様に、複数のビット線BL及び複数のワード線WL2の交差部には、それぞれ、メモリセルMC2が設けられる。なお、
図3に示す例では、メモリセルMC1、MC2がそれぞれ角柱状に描かれているが、メモリセルMC1、MC2は円柱状あるいはその他の形状であって良く、それらの形状は制限されない。
【0016】
図4は、メモリマットMM0の一部の構成を示す断面図である。
図4はY方向と直交する断面を例示している。
図4は隣り合う2つのメモリセルMC1とそれらの周囲部分の断面を示している。
メモリマットMM0は、半導体基板SB側に配置されたX方向に延びるワード線WL1と、このワード線WL1に対して半導体基板SBと反対側に対向配置されたY方向に延びるビット線BLを有する。また、これらワード線WL1とビット線BLの間に配置されたメモリセルMC1と、複数のメモリセルMC1のXY方向(第2方向)の側面間に設けられた絶縁層18とを備える。
【0017】
メモリセルMC1は、ワード線WL1側からビット線BL側に向かって、Z方向(第1方向)に順に積層された下部電極層20、セレクタSEL、中間電極層22、相変化膜(相変化膜、記憶層)PCM 、上部電極層26を備えている。下部電極層20とセレクタSELと中間電極層22と相変化膜PCM と上部電極層26を備えたメモリセルMC1のXY方向(第2方向)の側面(周面)には、これらの側面を覆う保護層(側壁層)27Aが形成されている。
【0018】
ワード線WL1、ビット線BLは、例えばタングステン(W)、チタン(Ti)、ポリSi等の導電材料により構成される。
図4の例では、ワード線WL1の上に下部電極層20が積層されている。
絶縁層18は、例えば酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(Si
3N
4)等の絶縁材料により構成される。
【0019】
セレクタSELは、例えば2端子間スイッチ素子であってもよい。2端子間に印加する電圧が閾値以下の場合、そのスイッチ素子は“高抵抗”状態、例えば電気的に非導通状態である。2端子間に印加する電圧が閾値以上の場合、スイッチ素子は“低抵抗”状態、例えば電気的に導通状態に変わる。スイッチ素子は、電圧がどちらの極性でもこの機能を有していてもよい。このスイッチ素子には、Te、SeおよびSからなる群より選択された少なくとも1種以上のカルコゲン元素を含む。または、上記カルコゲン元素を含む化合物であるカルコゲナイドを含んでいてもよい。このスイッチ素子は他にも、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、As、P、Sbからなる群より選択された少なくとも1種以上の元素を含んでもよい。
【0020】
第1実施形態において下部電極層20と中間電極層22と上部電極層26は、アモルファス構造を示すアモルファス合金(第1の物質)から形成されている。アモルファス合金として、常温から900℃程度までアモルファス構造を維持する合金が好ましい。また、アモルファス合金は、電子線回折で回折チャートを描いた場合、回折ピークを確認できないアモルファス構造を有する合金であり、例えば、熱伝導率が単相金属と比較して2桁低く、抵抗率が50mΩ・cm以下であり、正の温度依存性を有する。
【0021】
前記アモルファス合金(第1の物質)の一例として、2つ以上の耐火金属M1を含む合金を例示できる。ただし、耐火金属M1は、W、Mo、Ta、Nb、Rh、Niのうち、1種または2種以上を示す。
また、前記アモルファス合金の他の例として2つ以上の耐火金属M1を含み、かつ、1つ以上の半金属もしくは非金属である元素M2を含む合金を例示できる。ただし、元素M2は、B、C、N、Al、Si、P、S、Ge、As、Seのうち、1種または2種以上を示す。
より具体的に、例えば、Ta1W1Si1、Ta40W40Si20、Ta30W50Si20、Ta30W30Si40なる組成式で示されるアモルファス合金のいずれか1種または2種以上を適用できる。
例えば、耐火金属M1と元素M2からなる組成のアモファス合金において、共有結合時の原子半径が耐火金属M1の原子半径より12%以上小さい元素を元素M2として選択できる。
【0022】
前記アモルファス合金の一例として、Feを含み、かつ、1つ以上の元素M3を含む合金を例示できる。ただし、元素M3は、Tb、Gd、Co、B、Ni、Cr、Pのうち、1種または2種以上を示す。
より具体的に、例えば、Tb21Fe73Co6、Gd21Fe72Co7、Fe80B20、Fe32Ni36Cr14P12B6なる組成式で示されるアモルファス合金の1種または2種以上を適用できる。
【0023】
前記アモルファス合金の一例として、ZrとCuを含み、かつ、1つ以上の元素M4を含む合金を例示できる。ただし、元素M4は、Al、Ni、Ti、Nb、Beのうち、1種または2種以上を示す。
より具体的に、例えば、Zr47Cu31Al13Ni9、Zr56.2Ti13.8Nb5.5Cu6.9Ni5.6Be12.5(at%)、Zr55Cu30Al10Ni5、Zr41Ti14Cu12Ni10Be23なる組成式で示されるアモルファス合金の1種または2種以上を適用できる。
【0024】
前記アモルファス合金の一例として、PdとNiを含み、かつ、PまたはPとCuを含む合金を例示できる。
より具体的に、例えば、Pd40Ni40P20、Pd40Ni20Cu20P20、Pd40Ni10Cu30P20なる組成式で示されるアモルファス合金の1種または2種以上を適用できる。
【0025】
上述のアモルファス合金は、格子パターンを有しないことから、フォノン伝導が弱く、熱伝導率が低く(遮熱性が高く)、結晶構造が存在しないために、薄膜とした場合に薄膜の表層が原子レベルで滑らかな特徴を有する。一例として、Ta1W1Si1なる組成の膜厚200nmのアモルファス合金膜においてRMS(表面粗さ)=0.18nmであるのに対し、膜厚1.3μmの炭素膜において、RMS=9.43~10.36nmであり、膜厚500nmのTa膜はRMS=2.1nmである。このことから、上述のアモルファス合金で電極層を形成すると、電極層の表面を金属膜や炭素膜よりも滑らかに形成できる。このため、電極層とそれに接触する他の導電層との接触性を良好にできる。
【0026】
なお、Ta40W40Si20なる組成のアモルファス合金膜の表面粗さは0.3nm、Ta30W50Si20なる組成のアモルファス合金膜の表面粗さは0.5nm、Ta30W30Si40なる組成のアモルファス合金膜の表面粗さは0.25nmであることが知られている。よって、TaWSi系のいずれの組成のアモルファス合金膜であっても、表面が滑らかであることがわかる。
【0027】
電極層の表面粗さが大きい場合、他の導電層や他の薄膜と接触する界面に微細な凸部が複数存在することとなり、電気的接続部となる凸部への電界集中などが発生し、デバイスとしての動作が変わり、信頼性が低下するおそれがある。アモルファス合金の電極層であるならば、電気的接触面を上述のようにより滑らかにでき、実効表面積を縮小できることから、IRESET(リセット電流)の抑制に寄与する。
【0028】
相変化膜(抵抗変化膜、記憶層)PCMは、カルコゲンを含む。カルコゲンとは、周期表の第16族に属する元素である。相変化膜PCMは、このうち、酸素(O)を除く、たとえば、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)等を含む。また、相変化膜PCMは、カルコゲナイド膜でも良い。カルコゲナイドは、カルコゲンを含む化合物であり、例えば、GeSbTe、GeTe、SbTe、SiTe等である。即ち、相変化膜PCMは、ゲルマニウム、アンチモン及びテルルのうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含むものでも良い。
【0029】
保護層(側壁層)27Aは、例えば、相変化膜PCMと同等の材料に窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び酸素(O)から選ばれた少なくとも1種の元素を含んで構成されている。また、保護層27Aは、相変化膜PCMを構成する元素、例えば、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)から選ばれた少なくとも1種の元素と、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び酸素(O)から選ばれた少なくとも1種の元素を含む層として構成されていても良い。
【0030】
窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び酸素(O)等の元素は、保護層27Aの溶融温度を向上させる。従って、第1実施形態では、例えば、保護層27Aの溶融温度は、相変化膜PCMの溶融温度よりも高い。より具体的には、保護層27Aの溶融温度は、メモリセルMC1に対するアクセス時に、相変化膜PCMに加えられる熱よりも高く、例えば500℃よりも高い。よって、保護層27Aは、メモリセルMC1に対するアクセスによっては溶融せず、固化状態を維持している。また、保護層27Aは、高抵抗のアモルファス状態とされている。このため、保護層27Aの結晶化温度は、相変化膜PCMの溶融温度よりも高い。
【0031】
相変化膜PCMは、溶融温度以上の加熱と急速冷却によりアモルファス状態(リセット状態)となる。また、相変化膜PCMは、溶融温度よりも低く、且つ結晶化温度よりも高い温度で加熱し、緩やかに冷却することにより結晶化状態(セット状態)となる。このため、相変化膜PCMは、リセット・セットによって溶融・固化を繰り返す。
従って、相変化膜PCMは、通電による加熱により、高抵抗状態の抵抗率と低抵抗状態の抵抗率を切り替え可能な第2の物質からなる記憶物質からなると説明できる。
なお、保護層27が無い場合、相変化膜PCMの溶融・固化の繰り返しにより、相変化膜PCMと絶縁層18の界面でボイドが形成されたり、構成元素の偏析が起こったり、周辺部材料との反応・拡散などを引き起こすおそれがある。これらの現象は相変化メモリの劣化を引き起こすおそれがある。
【0032】
本実施形態の構造のように、相変化膜PCMと絶縁層18の界面に保護層27Aが形成されていると、この保護層27Aは相変化膜PCMの構成元素を含むので、相変化膜PCMと相性が良く、両者は安定的に結合する。また、保護層27Aは、N、C、B及びO等の元素の添加により溶融温度が引き上げられ、固化したアモルファス状態を保つので、絶縁層20との間でボイド形成、偏析、組成変化、反応・拡散等の現象を抑制することができる。
また、保護層27Aはアモルファス状態を保っているので、抵抗値が高く電流は殆ど流れない。このため、保護層27Aは、下部電極層20と上部電極層26との間に流れる電流値に影響を与えることはない。
【0033】
図5は、第2実施形態のメモリセルMC12を示す。このメモリセルMC12は、ワード線WL1側からビット線BL側に向かって、Z方向に順に積層された下部電極層20、セレクタSEL、中間電極層22、バリア層23、相変化膜(記憶層)PCM 、バリア層25、上部電極層26を備えている。
下部電極層20とセレクタSELと中間電極層22とバリア層23と相変化膜PCMとバリア層25と上部電極層26を備えたメモリセルMC12のXY方向(第2方向)の側面(周面)には、これらの側面を覆う保護層(側壁層)27Bが形成されている。また、
図5の構造においてワード線WL1の上に下部電極層20が積層されている。
【0034】
図5に示す第2実施形態のメモリセルMC12は、
図4に示した第1実施形態のメモリセルMC1の構造にバリア層23、25を付加した構造である。バリア層23は中間電極層22と相変化膜PCMを直接積層すると、元素の拡散などが生じて問題がある場合などのために設けられる。また、バリア層25は相変化膜PCMと上部電極層26を直接積層すると、元素の拡散などが生じて問題がある場合などのために設けられる。従って、上述のアモルファス合金からなる電極22、26と相変化膜PCMの構成材料との積層に問題を生じない材料どうしの組み合わせの場合は、
図4に示すメモリセルMC1のようにバリア層23、25を略してもよい。
【0035】
図6は、第3実施形態のメモリセルMC13を示す。このメモリセルMC13は、ワード線WL1側からビット線BL側に向かって、Z方向(第1方向)に順に積層された下部電極層20、セレクタSEL、中間電極層22、相変化膜(抵抗変化膜、記憶層)PCM 、上部電極層26を備えている。相変化膜PCMのXY方向(第2方向)の側面(周面)には、この側面(周面)を覆う保護層(側壁層)27Cが形成されている。
保護膜27Cは
図6に示すように相変化膜PCMのみの側面(周面)を覆うように形成されていても良い。
【0036】
図7は、第4実施形態のメモリセルMC14を示す。このメモリセルMC14は、ワード線WL1側からビット線BL側に向かって、Z方向(第1方向)に順に積層された下部電極層20、セレクタSEL、中間電極層22、相変化膜(抵抗変化膜、記憶層)PCM、上部電極層26を備えている。相変化膜PCMにおいてXY方向(第2方向)の側面(周面)と相変化膜PCMの-Z方向の底面には、側面(周面)と底面を覆う保護層(側壁層)27Dが形成されている。
保護膜27Dは
図7に示すように相変化膜PCMの側面と底面を覆うように形成されていても良い。
【0037】
図8は、第5実施形態のメモリセルMC15を示す。このメモリセルMC15は、ワード線WL1側からビット線BL側に向かって、Z方向(第1方向)に順に積層された下部電極層20、バリア層23、相変化膜(抵抗変化膜、記憶層)PCM 、バリア層25、上部電極層26を備えている。
下部電極層20とバリア層23と相変化膜PCMとバリア層25と上部電極層26を備えたメモリセルMC15のXY方向(第2方向)の側面(周面)には、これらの側面を覆う保護層(側壁層)27Eが形成されている。また、
図8の構造においてワード線WL1の上に形成されたバリア層27を介し下部電極層20が積層されている。
本実施形態の如くセレクタを略した構成を採用しても良い。
【0038】
図9は、第6実施形態のメモリセルMC16を示す。このメモリセルMC16は、ワード線WL1側からビット線BL側に向かって、Z方向(第1方向)に順に積層された下部電極層20、相変化膜(抵抗変化膜、記憶層)PCM 、上部電極層26を備えている。下部電極層20と相変化膜PCMと上部電極層26のXY方向(第2方向)の側面(周面)には、これらの側面を覆う保護層(側壁層)27Fが形成されている。
本実施形態の如くバリア層23、25を略した構成を採用しても良い。
なお、バリア層23、25は電極層20、26と相変化膜PCMの相互元素拡散などを防止するために設けられるが、上述のアモルファス合金からなる下部電極層20と上部電極26を設けた場合、相変化膜PCMとの間で元素の相互拡散の問題を生じないので、バリア層を省略することができる。
【0039】
次に、上述の実施形態のメモリセルの製造方法について説明する。
図10に示す通り、図示しない半導体基板の上方に、ワード線WLを構成する導電層200、下部電極層20を構成する導電層221、セレクタSELを構成する半導体層221、中間電極層22を構成する導電層231、相変化膜PCMを構成する相変化膜241及び上部電極層26を構成する導電層251を、例えばALD(Atomic Layer Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)等の成膜方法によって順次形成する。その後、導電層251の上に、リソグラフィによりハードマスク301を形成する。
【0040】
次に、
図11に示す通り、ハードマスク301を用い、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)等の異方性エッチングにより、導電層251から相変化膜PCM1までの積層構造体をY方向に分断する。
次に、
図12に示す通り、相変化膜PCM1のY方向側面に、N、C、B及びOの少なくとも1種の元素を、イオン注入、プラズマドープ、ガス注入後のアニール処理等の方法により注入し、保護層261を形成する。
【0041】
続いて、
図13に示すように、相変化膜PCM1の側面を含むように、積層構造体の上面を絶縁膜302で被覆する。絶縁膜302は、その後の異方性エッチングにおいて、相変化膜PCM1の側面がダメージを受けないように保護するための膜である。
【0042】
次に、
図14に示すように、ハードマスク301を用いたRIE等の異方性エッチングにより、導電層231、半導体層221、導電層211及び導電層200の積層構造体をY方向に分断する。
次に、
図15に示すように、エッチングにより分断された積層体間に絶縁層201を形成し、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等により、絶縁層201の上面及びハードマスク301を削り、導電層251の上面を露出させる。
【0043】
続いて、
図16に示すように、露出した導電層251の上に、ビット線BLを構成する導電層202を形成する。
X方向についても、同様の製造工程を繰り返すことにより、
図6に示すメモリセルMC13とほぼ同等構造を備えた半導体記憶装置が形成される。
【0044】
なお、保護層261は、イオン注入、プラズマドープ、ガス注入後のアニール処理等により形成する他に、相変化膜PCMの側面に、サイドウォール膜として形成しても良い。このサイドウォール膜は、例えばALD、CVD等によって、Te等のカルコゲン、Ge及びSbから選ばれた少なくとも1種の元素と、N,C,B及びOから選ばれた少なくとも1種の元素を含む。また、保護層261は、上記のサイドウォール膜の形成後の固相拡散により形成するようにしても良い。これらの方法を採用することで、
図4~
図6、
図8、
図9に示す保護膜27A、27B、27C、27E、27Fなどを備えたメモリセルを有する半導体記憶装置を製造できる。
【0045】
図17は、炭素膜とアモルファス合金膜について、熱伝導率の温度依存性を測定した結果を示すグラフである。
図17に示す炭素膜(C150C)と表記した測定結果は、基板上に150℃で成膜した炭素膜における熱伝導率の温度依存性を示し、BMGと表記した測定結果は、Ta
1W
1Si
1なる組成のアモルファス合金膜における熱伝導率の温度依存性を示す。
【0046】
図17に示すようにアモルファス合金膜は、常温~800℃までほぼ同一の熱伝導率を示す。これに対し、炭素膜は、400℃以下の温度領域ではアモルファス合金膜より熱伝導率が低いものの、温度上昇により熱伝導率が上昇し、400℃を超えて800℃までの高温領域では高温になるほど、アモルファス合金膜より熱伝導率が徐々に高くなる。
【0047】
炭素膜は400~800℃の高温域ではアモルファス合金膜よりも良く熱を通すが、400℃以下の低温域ではアモルファス合金よりも熱を通さない傾向があると分かる。
下部電極層20と中間電極層22と上部電極層26を炭素から構成する炭素電極層とする場合に対し、アモルファス合金からなる電極層とする場合の方がメモリセルを構成する電極として有利となる。その理由について以下に説明する。
【0048】
相変化膜PCMは、溶け始める温度が600℃程度とされており、溶融温度以上の加熱と、加熱温度からの急速冷却によりアモルファス状態(リセット状態)となる。相変化膜PCMは、溶融温度よりも低く、且つ結晶化温度よりも高い温度で加熱し、冷却することにより結晶化状態(セット状態)となる。このため、相変化膜PCMは、リセット・セットによって溶融・固化を繰り返す。従って、低温域に急速冷却する場合に炭素膜の電極層では熱伝導率が悪く冷却効率が悪い。しかし、アモルファス合金からなる電極層であれば、低温域での熱伝導率が高く、冷却効率が高いため、相変化膜PCMを急冷してリセットする場合に有利となる。逆に、600℃を超える高温領域において炭素膜よりアモルファス合金膜の方が保温性が良好となる。これらの理由により、アモルファス合金の電極層を用いた構造であれば、炭素からなる電極層を用いた構造よりIRESET(リセット電流)の低減に寄与する。
【0049】
図17に示す熱伝導率の600℃(Ta
40W
40Si
20の融点)における炭素膜とアモルファス合金膜との比較によれば、アモルファス合金膜の熱伝導率は炭素膜の1/10程度となる。このことから、炭素膜の電極層からアモルファス合金膜の電極層に変更することにより、保温性能を炭素膜と同程度に維持したまま膜厚を低減できることが分かる。
よって、アモルファス合金膜の電極層を用いることで、炭素膜の電極層を用いた構造と対比し、積層構造としてのアスペクト比を低減し、メモリセルとしての高集積化に寄与する構造にできる。
【0050】
なお、炭素膜からなる電極層をメモリセルに適用する場合、相変化膜PCMを構成する元素と炭素膜との間で元素拡散が起こりやすい。このため、炭素膜からなる電極層を採用した場合に炭素膜の電極層と相変化膜PCMとの界面にバリア層を配置する必要がある。
この点、上述のアモルファス合金からなる電極層を用いるならば、バリア層を略することができる。本願では、
図4、
図6、
図7、
図9に示す構成ではバリア層を略しているので、バリア層を略した分、製造工程を簡略化できる。例えば、
図4に示す構成はバリア層を設けた
図5に示す構成より製造工程を簡略化でき、
図9に示す構成はバリア層を設けた
図8に示す構成より製造工程を簡略化できる。
【0051】
バリア層を略することができる場合、バリア層を設ける構成よりも層構成を簡略化できるので、メモリセルを製造する場合の成膜工程を簡略化できる。
また、炭素膜からなる電極層を用いた場合、成膜プロセスにおいてダストを生じやすい問題がある。この点、上述のアモルファス合金であれば、成膜プロセスにおいてダストを発生させるおそれはない。
【0052】
図18は、Ta
1W
1Si
1なる組成のアモルファス合金に関し、成膜ままの状態と、800℃と、900℃と、1000℃と、1100℃におけるX線回折分析結果を示すグラフである。前記アモルファス合金は、900℃までアモルファス構造を維持することができる。このため、メモリセルに設ける相変化膜PCMの溶け始める温度が600℃程度とすると、アモルファス合金の電極層であるならば、アモルファス状態のまま問題なく対応できる温度範囲である。よって、メモリセル用の電極層を形成するための材料として上述のアモルファス合金は有効である。
【0053】
図19は、炭素膜の電極層を用い、バリア層を設けた構造のメモリセルと、アモルファス合金膜を用い、バリア層を略した構造のメモリセルを対比するための説明図である。
図19の左側に示すメモリセルMC20は、ワード線WL1側からビット線BL側に向かって、Z方向に順に積層された下部電極層30、セレクタ31、中間電極層32、バリア層33、相変化膜(記憶層)34 、バリア層35、上部電極層36を備える。
また、下部電極層30、セレクタ層31、中間電極層32、バリア層33、相変化膜34 、バリア層35、上部電極層36の側面は保護層37により覆われ、それらの外側に絶縁層38が設けられている。
【0054】
下部電極層30をCNから形成し、中間電極層32を炭素膜から形成し、バリア層33をWNから形成し、相変化膜34をゲルマニウム、アンチモン及びテルルを含む合金から形成し、バリア層35をWNから構成し、上部電極層36を炭素膜から形成できる。
メモリセルMC20において、実用的な半導体記憶素子を想定し、例えば、下部電極層30の膜厚10nm、セレクタ31の膜厚15nm、中間電極層32の膜厚15nm、バリア層33の膜厚3nm、相変化膜34 の膜厚37nm、バリア層35の膜厚3nm、上部電極層36の膜厚18nmに設定できる。メモリセルMC21において、ワード線WL1とビット線BLの間に介在されている膜の総厚は、101nmである。
【0055】
これに対し、
図19の右側に示すメモリセルMC21は、
図4に示す第1実施形態と同等構造のメモリセルであり、ワード線WL1側からビット線BL側に向かって、Z方向に順に積層された下部電極層40、セレクタ41、中間電極層42、相変化膜44 、上部電極層46を備えている。
下部電極層40を上述のアモルファス合金から形成し、中間電極層32を上述のアモルファス合金から形成し、相変化膜34をゲルマニウム、アンチモン及びテルルを含む合金から形成し、上部電極層36を上述のアモルファス合金から形成できる。
【0056】
また、下部電極層40、セレクタ41、中間電極層42、相変化膜44 、上部電極層46の側面は保護層47により覆われ、それらの外側に絶縁層48が設けられている。
メモリセルMC21において、実用的な半導体記憶素子を想定し、例えば、下部電極層40の膜厚16nm、セレクタ層41の膜厚15nm、中間電極層42の膜厚24nm、相変化膜44の膜厚37nm 、上部電極層36の膜厚29nmに設定できる。
メモリセルMC21においてワード線WL1とビット線BLの間に介在されている膜の総厚は、121nmとなる。
【0057】
前記TaWSi系のアモルファス合金からなる電極層である場合、熱伝導率:2.39W/mK、抵抗率:2×e-4 Ω/cm、炭素膜の膜厚20nmとして、熱伝率:7.25e7 W/K、抵抗率:1×e-7Ω以下となり、炭素膜の抵抗率より2桁小さい。
【0058】
仮に炭素膜からなる電極層と同程度の熱伝導を想定し、膜厚33nmと設定した場合、熱伝導は7.24e7W/Kとなり、抵抗は、7e-10となる。このため、
図19に示す対比から、炭素膜からなる電極を用いたメモリセル20から、アモルファス合金からなる電極層を用いたメモリセル21とする場合、セル全体の高さは20%程度向上するが、抵抗値を2桁以上低減できる。
このため、炭素膜を電極層として用いていた半導体記憶装置と比較し、アモルファス合金の電極層を備えた半導体記憶装置は、閾値電圧V
THを大幅に下げることが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1…半導体記憶装置、11…メモリセルアレイ、MC、MC1、MC2…メモリセル、BL…ビット線、WL、WL1、WL2…ワード線、PCM…相変化膜、SEL…セレクタ、18…絶縁層、20…下部電極層、SEL…セレクタ層、22…中間電極層、23、25…バリア層、26…上部電極層、27A、27B、27C、27D、27E、27F…保護層(側壁層)、MC12、MC13、MC14、MC15、MC16…メモリセル、40…下部電極層、41…セレクタ層、42…中間電極層、44…相変化膜、46…上部電極層。