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特開2022-142634通話制御システムおよび通話制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142634
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】通話制御システムおよび通話制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04Q 3/58 20060101AFI20220922BHJP
   H04M 3/42 20060101ALI20220922BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H04Q3/58 106
H04M3/42 S
A61G12/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042883
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長友 崇浩
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩
【テーマコード(参考)】
4C341
5K049
5K201
【Fターム(参考)】
4C341LL10
5K049BB05
5K049BB16
5K049EE02
5K049FF01
5K049FF12
5K049KK02
5K049KK12
5K201AA05
5K201BA19
5K201BC29
5K201CB12
5K201EC03
5K201EC08
5K201ED05
5K201EF10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】介護や看護において利用者からのナースコールでスタッフに対して同時呼び出しがされた場合に、スタッフがその呼び出しの優先度に応じて、適切な対応を行う通話制御システム及び通話制御方法を提供する。
【解決手段】通話制御システムは、利用者から呼び出しを行なう呼出子機10と、IP-PBX100と、介護サービスまたは看護サービスを行なうスタッフの携帯する携帯端末30と、携帯端末30を呼び出して無線により通信する無線AP装置20と、を備える。IP-PBX100は、利用者の各々の介護情報または看護情報を保持し、介護情報または看護上から、各々の利用者に対する応答優先度を算出し、呼出子機10から携帯端末30の呼出があったときに、各々の利用者ごとの応答優先度を含む着信表示データを生成し、着信表示データを呼出した携帯端末30に送信する。携帯端末30は、各々の利用者ごとの応答優先度を含む着信表示画面を表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
介護施設または看護施設において、利用者の呼出に対して応答する通話制御システムであって、
利用者から呼び出しを行なう呼出子機と、IP-PBX(Internet Protocol - Private Branch eXchange)と、介護サービスまたは看護サービスを行なうスタッフの携帯する携帯端末と、前記携帯端末を呼び出して無線により通信する無線AP(Access Point)装置とを有し、
前記呼出子機と、前記IP-PBXと、前記無線AP装置とは、相互に接続され、
前記IP-PBXは、
前記利用者の各々の介護情報または看護情報を保持し、
前記介護情報または看護上から、各々の利用者に対する応答優先度を算出し、
前記呼出子機から前記携帯端末の呼出があったときに、
前記IP-PBXは、各々の利用者ごとの前記応答優先度を含む着信表示データを生成し、前記着信表示データを呼出した携帯端末に送信し、
前記携帯端末は、各々の利用者ごとの前記応答優先度を含む着信表示画面を表示することを特徴とする通話制御システム。
【請求項2】
複数の前記呼出子機から携帯端末の呼出が一定時期に同時になされたときに、前記携帯端末から応答指示がされるまでの間、前記携帯端末に、呼出を行なった全ての前記呼出子機の呼出に対応する着信表示が行なわれることを特徴とする請求項1記載の通話制御システム。
【請求項3】
前記呼出子機の呼出に対応する着信表示は、応答優先度が高いものから順にソートされて表示されることを特徴とする請求項2記載の通話制御システム。
【請求項4】
前記呼出子機から携帯端末の呼出は、各々の呼出子機の内線番号に対応する着信グループの内線が割当てられた複数の携帯端末に着信することを特徴とする請求項1記載の通話制御システム。
【請求項5】
前記呼出子機から呼び出された携帯端末の一つが応答指示をされたとき、他の携帯端末の着信画面を更新することを特徴とする請求項4記載の通話制御システム。
【請求項6】
前記IP-PBXは、各々の利用者ごとの呼出時間を含む着信表示データを生成し、前記着信表示データを呼出した携帯端末に送信し、
前記携帯端末は、各々の利用者ごとの前記呼出時間を含む着信表示画面を表示することを特徴とする請求項1記載の通話制御システム。
【請求項7】
前記IP-PBXは、さらに、
前記利用者から呼出の呼出履歴を保持し、
前記呼出履歴を参照して、前記応答優先度を算出することを特徴とする請求項1記載の通話制御システム。
【請求項8】
前記IP-PBXは、介護情報また看護情報より算出されるpre優先度が所定の閾値未満であり、かつ、所定時間内に所定の閾値を越える呼出頻度の呼出に対する応答優先度を、より低くすることを特徴とする請求項7記載の通話制御システム。
【請求項9】
介護施設または看護施設において、利用者の呼出に対して応答する通話制御システムの通話制御方法であって、
前記通話制御システムは、
利用者から呼び出しを行なう呼出子機と、IP-PBX(Internet Protocol -Private Branch eXchange)と、介護サービスまたは看護サービスを行なうスタッフの携帯する携帯端末と、前記携帯端末を呼び出して無線により通信する無線AP(Access Point)装置とを有し、
前記呼出子機と、前記IP-PBXと、前記無線AP装置とは、相互に接続され、
前記IP-PBXが、前記利用者の各々の介護情報または看護情報を保持するステップと、
前記IP-PBXが、前記介護情報または看護上から、各々の利用者に対する応答優先度を算出するステップと、
前記呼出子機から前記携帯端末の呼出があったときに、前記IP-PBXが、各々の利用者ごとの前記応答優先度を含む着信表示データを生成し、前記着信表示データを呼出した携帯端末に送信するステップと、
前記携帯端末が、各々の利用者ごとの前記応答優先度を含む着信表示画面を表示するステップとを有し、
前記呼出子機から携帯端末の呼出は、各々の呼出子機の内線番号に対応する着信グループの内線が割当てられた複数の携帯端末に着信し、
複数の前記呼出子機から携帯端末の呼出が一定時期に同時になされたときに、前記携帯端末から応答指示がされるまでの間、前記携帯端末に、呼出を行なった全ての前記呼出子機の呼出に対応する着信表示が行なわれることを特徴とする通話制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通話制御システムおよび通話制御方法に係り、特に、介護や看護において利用者からのナースコールでスタッフに対して同時呼び出しがされた場合に、スタッフがその呼び出しの優先度に応じて、適切な対応を行なうのに好適な通話制御システムおよび通話制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
介護施設や病院などの利用者の介護や看護を必要な施設においては、その施設内で、IP構内交換機(以下、「IP-PBX」(Internet Protocol - Private Branch eXchange)と記載)を設置し、利用者からのいわゆるナースコールが行なわれた場合に、そのIP-PBX経由で、介護や看護をするスタッフのスマートファンなどの携帯端末に着信させるシステムが広く普及している。
【0003】
IP-PBXを経由して、患者からナースコールを行い、スタッフにアラームを送信するシステムについては、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-77522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたナースコールシステムは、患者のベッドサイドからアラーム情報を発生させ、IP-PBXが発信履歴を取得し、それに基づいて、スタッフのIPフォンにプッシュ型のアラームメッセージを送信している。
【0006】
ところで、現状のIP-PBXでは、複数子機からの呼出しが同時にあった場合、通常、先に着信した呼出が優先されて、呼出先端末に表示されるため、表示された呼出に応答した後でなければ、次の呼出に対応できない。
【0007】
すなわち、特許文献1のように、ナースコールとIP-PBXが連携したシステムにおいて、緊急を要する利用者と緊急を要しない利用者から同時に呼出があり、緊急を要しない利用者が先着した場合、緊急を要する利用者の呼出には、スタッフは、即時対応できなくなってしまう。
【0008】
このように、従来技術においては、スタッフの携帯端末に、先に着信した呼出が表示され、他の呼出は表示されている呼出の対応後、順次表示され、応答可能となる。そして、応答すべき利用者の優先度は応答する人の経験に委ねられている。
【0009】
本発明の目的は、介護や看護において利用者からのナースコールでスタッフに対して同時呼び出しがされた場合に、スタッフがその呼び出しの優先度に応じて、適切な対応を行なうのに好適な通話制御システムおよび通話制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る通話制御システムは、好ましくは、介護施設または看護施設において、利用者の呼出に対して応答する通話制御システムであって、利用者から呼び出しを行なう呼出子機と、IP-PBX(Internet Protocol - Private Branch eXchange)と、介護サービスまたは看護サービスを行なうスタッフの携帯する携帯端末と、携帯端末を呼び出して無線により通信する無線AP(Access Point)装置とを有し、呼出子機と、IP-PBXと、無線AP装置とは、相互に接続され、IP-PBXは、利用者の各々の介護情報または看護情報を保持し、介護情報または看護上から、各々の利用者に対する応答優先度を算出し、呼出子機から携帯端末の呼出があったときに、IP-PBXは、各々の利用者ごとの応答優先度を含む着信表示データを生成し、着信表示データを呼出した携帯端末に送信し、携帯端末は、各々の利用者ごとの応答優先度を含む着信表示画面を表示するようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、介護や看護において利用者からのナースコールでスタッフに対して同時呼び出しがされた場合に、スタッフがその呼び出しの優先度に応じて、適切な対応を行なうのに好適な通話制御システムおよび通話制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る通話制御システムの全体構成図である。
図2】IP-PBXのハードウェア・ソフトウェア構成図である。
図3】通話制御テーブルの一例を示す図である。
図4】利用者情報テーブルの一例を示す図である。
図5】通話履歴の一例を示す図である。
図6】スマートフォンの着信画面の一例を示す図である。
図7A】着信処理を示すフローチャートである。
図7B】着信応答/切断を示すフローチャートである。
図8A】IP-PBXが通話制御をするときの着信キューの内容、スタッフに対するスマートフォンの表示、スタッフの応答の一例について説明する図である(その一)。
図8B】IP-PBXが通話制御をするときの着信キューの内容、スタッフに対するスマートフォンの表示、スタッフの応答の一例について説明する図である(その)。
図8C】IP-PBXが通話制御をするときの着信キューの内容、スタッフに対するスマートフォンの表示、スタッフの応答の一例について説明する図である(その三)。
図9】IP-PBXが行なう応答優先度処理を示すフローチャートである。
図10A】利用者からナースコールがあり、スタッフが応答するまでの一連の流れを説明する図である(その一)。
図10B】利用者からナースコールがあり、スタッフが応答するまでの一連の流れを説明する図である(その二)。
図10C】利用者からナースコールがあり、スタッフが応答するまでの一連の流れを説明する図である(その三)。
図10D】利用者からナースコールがあり、スタッフが応答するまでの一連の流れを説明する図である(その四)。
図10E】利用者からナースコールがあり、スタッフが応答するまでの一連の流れを説明する図である(その五)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る一実施形態を、図1ないし図10Eを用いて説明する。
【0014】
先ず、図1を用いて一実施形態に係る通話制御システムの構成と処理の概要について説明する。
本実施形態では、介護施設における通話制御システムを例に採り、説明するが、本発明は、利用者がナースコールを行い、患者を収容する病院など、スタッフ(介護士、看護士)がその介護や看護サービスを行なう例も同様に適用することができる。
【0015】
本実施形態の通話制御システムは、図1に示されるように、介護施設に設置されるナースコール呼出子機10、無線AP(Access Point)装置20、スマートフォン30、IP-PBX100、介護管理サーバ200からなる。
【0016】
ナースコール呼出子機10とIP-PBX100は、構内電話線5により接続されており、IP-PBX100と無線AP装置20は、LAN7(Local Area Network)により、接続され、利用者(介護サービスを受ける者)からナースコール呼出子機10による呼出しにより、介護施設のスタッフ(利用者に介護サービスを実施する担当者)の携帯するスマートフォン30を呼び出すことができる。無線AP装置20は、既存のWiFi規格(例えば、IEEE802.11a,b,g,n,acなど)の無線プロトコルにより、ナースコール呼出子機10からスマートフォン30を呼出し、スタッフがスマートフォン30を操作し、呼出しに応答することにより、呼出した利用者と通話が可能になる。
【0017】
IP-PBX100は、ナースコール呼出子機10からの呼出しを受付けて、回線交換を行い、IPプロトコルにより、スマートフォン30を呼出す機能を有する装置である。
【0018】
IP-PBX100は、通話制御部110、介護情報受信部120、応答優先度算出部130、着信画面データ加工部140の各機能部を有する。
【0019】
通話制御部110は、通話における発着信、交換を行なう機能部である。介護情報受信部120は、介護管理サーバ200から介護情報を受信する機能部である。応答優先度算出部130は、各利用者に対して定められる応答優先度(詳細は、後述)を算出する機能部である。着信画面データ加工部140は、ナースコール呼出子機10からスマートフォン30に着信したときの表示画面のデータを作成する機能部である。
【0020】
スマートフォン30は、スタッフがナースコール呼出子機10を受けるため所持する携帯端末であり、通常の通話機能の外、ナースコール呼出子機10の呼出し情報を表示する機能を有する。スタッフの所持する携帯端末は、例えば、ラップトップ型のPC(Personal Computer)やタブレットなど、通話機能と情報表示機能を実装できるものであればよい。
【0021】
介護管理サーバ200は、介護DB(Data Base)210を保持しており、利用者の介護情報を管理するためのサーバである。介護管理サーバ200は、通常のサーバ装置のような情報処理装置で実装することができる。介護管理サーバ200は、IP-PBX200とLAN7により、接続されており、タイムスケジュールが定められた介護情報送信プログラム(図示せず)により、定期的に理由者の介護情報をIP-PBX200に送信する。
【0022】
介護管理サーバ200は、介護情報管理部220、介護情報送信部230、介護情報入力部240の各機能部を有する。
【0023】
介護情報管理部220は、介護DB210の介護情報を管理する機能部である。介護情報送信部230は、介護情報をIP-PBX100に送信する機能部である。介護情報入力部240は、入出力装置、または、ネットワークにより、利用者の介護情報を、介護管理サーバ200に入力する機能部である。
なお、利用者の介護情報の具体例については、後に詳説する。
【0024】
次に、図2を用いてIP-PBXのハードウェア・ソフトウェア構成について説明する。
IP-PBX100は、図2に示されるように、CPU(Central Processing Unit)300、メインメモリ302、フラッシュメモリ304、内線I/F(InterFace)306、ネットワークI/F308、から構成されており、それらは、バスにより相互に接続されている。
【0025】
CPU300は、IP-PBX100全体の動作制御を司るプロセッサであり、メインメモリ302にロードされた制御プログラムとテーブルなどのデータを参照し、制御プログラム(図示せず)を実行することにより、IP-PBX100全体としての各種処理を実行する。また、後述するアプリケーションプログラムを実行することにより、本実施形態の通話制御処理の機能を提供する。
【0026】
メインメモリ302は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体素子から構成され、交換動作制御プログラムなどの各種制御プログラムやIP-PBX100の内線番号情報などの各種制御情報を記憶するために利用されるほか、交換動作を実行するときに一時的に利用される情報を記憶するCPU300のワークメモリとしても利用される。図には示さなかったが、制御プログラムやテーブルは、フラッシュメモリ304やHDD(Hard Disk Drive)(図示せず)などの補助記憶装置に記憶され、実行時にメインメモリ302にロードされる。
【0027】
ネットワークI/F308は、LAN7とのインタフェース回路であり、これを介して、無線AP装置20や各種ネットワーク機器が接続される。
【0028】
内線I/F120は、IP-PBX100の内線を収容して、接続された内線の応答信号や終話回線の状態を監視するハードウェア回路である。
【0029】
フラッシュメモリ304には、本実施形態の通話制御処理を実行するための通話制御プログラム311、介護情報受信プログラム312、応答優先度算出プログラム313、着信画面データ加工プログラム314がインストールされている。
【0030】
通話制御プログラム311、介護情報受信プログラム312、応答優先度算出プログラム313、着信画面データ加工プログラム314は、それぞれ通話制御部110、介護情報受信部120、応答優先度算出部130、着信画面データ加工部140の各機能を実現するためのプログラムである。
【0031】
また、フラッシュメモリ304には、通話制御テーブル400、利用者情報テーブル410、通話履歴420が格納されている。なお、各テーブルの詳細は、後述する。
【0032】
次に、図3ないし図5を用いて通話制御システムで用いられるデータ構造について説明する。
【0033】
通話制御テーブル400は、IP-PBX200の発信番号と着信番号を管理するためのテーブルであり、図3に示されるように、発信番号400a、着信番号400bの各フィールドを有する。
【0034】
発信番号400aは、ナースコール呼出子機10から発信される内線番号である。着信番号400bは、発信番号400aの記載された内線番号のナースコール呼出子機10から呼出されたときに着信するスタッフが携帯するスマートフォンの内線番号である。図3の例では、着信グループという概念を採用しており、一つの着信グループの中には、複数の内線番号が含まれており、IP-PBX200は、空きのあるいずれかの内線番号に着信させるものとしている。すなわち、一つの着信グループが割当てられた内線番号を携帯するスタッフのいずれかが、呼出した利用者の介護をする体制になっているものとしている。
【0035】
利用者情報テーブル410は、介護施設における利用者の情報を格納するためのテーブルであり、図4に示されるように、利用者ID410a、利用者名410b、内線番号410c、応答優先度410d、介護度410e、バイタル情報410f、自立度410g、排泄タイミング410h、傷病有無410iの各フィールドを有する。
【0036】
利用者ID410aには、介護施設の利用者を一意に特定できる識別子が格納される。利用者名410bには、利用者の氏名が格納される。内線番号410cには、その利用者が利用するナースコール呼出子機に割当てられた内線番号が格納される。応答優先度410dには、スタッフが利用者からの呼び出しに応じて、どの呼び出しに応答すべきかの指標を表す優先度が格納される。本実施形態では、1~5までの整数値で表すものとし、優先度が大きい値ほど優先すべきことを表しているものとする。以下の介護度410e、バイタル情報410f、自立度410g、排泄タイミング410h、傷病有無410iには、その利用者の介護記録情報が格納される。介護度410eには、その利用者に対して、身体的・精神的に見てどの程度の介護が必要かの指標(例えば、要支援1、2の段階、要介護1~5の段階など)が格納される。バイタル情報410fには、その利用者の健康測定情報(例えば、体温、血圧、パルスオキシメータ測定値)が所定のフォーマットで格納される。自立度410gには、その利用者が独力で日常生活を送る際の状態(例えば、全介助、一部介助、見守り、自立などと分類)を表す分類値が格納される。排泄タイミング410hには、その利用者の排泄タイミングとしてとられている時間が格納される。傷病有無410iには、その利用者に、傷病があるか否かのフラグが格納される。
【0037】
通話履歴420は、ナースコールの呼び出しに関する履歴を格納するテーブルであり、図5に示されるように、呼ID420a、発呼内線番号420b、呼出時刻420c、発話時刻420d、終話時刻420eの各フィールドを有する。
【0038】
呼ID420aには、ナースコール呼出子機10からの呼び出しを一意に識別する識別子が格納される。発呼内線番号420b、呼び出しを行なったナースコール呼出子機10の内線番号が格納される。呼出時刻420cには、ナースコール呼出子機10からの呼び出しの時刻が、yyyymmddhhmmssの形式で格納される。発話時刻420dは、ナースコール呼出子機10からの呼び出しにより、スマートフォン30に着信して、利用者とスタッフの通話が開始された時刻が、yyyymmddhhmmssの形式で格納される。終話時刻420eには、利用者とスタッフの通話が終了した時刻が、yyyymmddhhmmssの形式で格納される。
【0039】
次に、図6を用いてスマートフォンの着信画面について説明する。
IP-PBX100は、複数のナースコール呼出子機10からの呼出が同時期に起こった場合には、着信画面のデータを送信し、すべての呼出をスタッフのスマートフォン30に通知する。スマートフォン30は、図6に示されるような呼出表示画面500は、一つの呼び出しごとに作成される呼出表示単位510からなっている。
【0040】
呼出表示単位510には、利用者名表示511、応答優先度表示512、呼出時間表示513、応答ボタン520が表示される。
【0041】
利用者名表示511には、ナースコール呼出子機10から呼び出した利用者の氏名が表示される。応答優先度表示512には、呼び出した利用者に対して、IP-PBX100が算出した応答優先度が表示される。呼出時間表示513には、呼び出したときからの現在までの時間が表示される。応答ボタン513は、スタッフがその呼出表示単位510に対応する利用者からの呼出に応答するときにタップするためのボタンである。
【0042】
スタッフは、原則として、応答優先度表示512の示す優先度が高い呼び出しに応答するようにする。そのために、スマートフォン30の呼出表示画面500は、応答優先度が高い順番でソートされた呼出表示単位510を表示する。呼出表示中に新たな呼出が発生した際には、呼出表示画面500を更新し、新たな呼出に対応する呼出表示単位510を作成し、再ソートして、呼出表示画面500の表示を行う。
【0043】
このとき、応答優先度が低い呼出は、この原則に従えば、長時間待たされる可能性があるため、呼出時間表示513として、呼出が発生してから現在までの時間を表示し、一定時間経過した際には、呼出表示の点滅などで、スタッフに知らせることが望ましい。
【0044】
ナースコール呼出子機10からの呼び出しは、着信グループの内線番号が割当てられたスマートフォン30に通知されて、呼出表示画面500が表示されている。このとき、あるスタッフがその呼び出しに応答して通話したときには、そのスタッフのスマートフォン30には、通話画面(図示せず)が表示され、他のスタッフのスマートフォン30の呼出表示画面500が更新され、応答された呼び出しに対応する呼出表示単位510は、削除されて、応答していない呼出に対応する呼出表示画面500が残る。
【0045】
次に、図7A図7Bを用いてIP-PBXの通話制御処理について説明する。
IP-PBX100は、着信処理において、先ず、新規着信か否かを判定する(S100)。
新規着信のときには(S100:YES)、着信キューに登録する(S101)。着信キューは、着信した呼を応答待ちとして格納するデータ構造である。
【0046】
次に、着信グループ内の対象内線番号の内線が話中になっているか否かをチェックし(S102)、話中の着信呼には(S103:YES)、待ち合わせを行い(S106)、話中になっていないものがあるときには(S103:NO)、着信キュー内の着信呼をチェックし(S104)、着信グループ内の話中になっていない内線番号のスマートフォン30に、応答優先度を含む図6に示した着信画面のデータと共に着信指示を行なう(S105)。
【0047】
また、IP-PBX100は、着信応答/切断において、通話の切断か否かを判定する(S200)。
【0048】
切断ではないとき(応答のとき)には(S200:NO)、着信キューの応答した着信呼を削除する(S201)。
【0049】
次に、着信キューの他の着信呼をチェックし(S202)、他の着信呼があるときには(S203:YES)、他の着信呼に対して、図7Aに示した着信処理を行う(S204)。
【0050】
次に、図8Aないし図8Cを用いてIP-PBXが通話制御をするときの着信キューの内容、スタッフに対するスマートフォンの表示、スタッフの応答の一例について説明する。
【0051】
図8Aに示されるように、一定の時期に利用者A、利用者B、利用者Cからこの順にナースコールが行なわれたとする利用者A、利用者B、利用者Cの着信グループには、内線(1)~内線(3)を含んでおり、それらの内線は話中でないものとする。
【0052】
このとき、IP-PBXは、内線(1)~内線(3)のスマートフォン30に対して、応答優先度を表示して、着信を通知する。そして、内線(1)のスマートフォン30のスタッフが、利用者Bの応答優先度が一番高いので、利用者Bの呼に応答して、利用者Bから呼が通話中となる。
【0053】
次に、図8Bに示されるように、利用者Bからの着信呼は、削除され、内線(1)のスマートフォン30は、利用者Bとの通話中画面となり、その後、通話が終わり、切断される。内線(2)、内線(3)のスマートフォン30の表示画面は、利用者Bの着信呼が応答された時点で更新され、利用者A、利用者Cの着信呼が表示される画面となる。ここで、内線(2)のスマートフォン30のスタッフが、表示されている最も応答優先度が高い、利用者Aの着信呼に応答することになる。
【0054】
そして、図8Cに示されるように、利用者Aからの着信呼は、削除され、内線(2)のスマートフォン30は、利用者Aとの通話中画面となる。内線(1)(既に、利用者Bとの通話は切断されている)、内線(3)のスマートフォン30の表示画面は、利用者Aの着信呼が応答された時点で更新され、利用者Cの着信呼のみが表示される画面となる。
【0055】
次に、図9を用いてIP-PBXが行なう応答優先度処理について説明する。
介護管理サーバ200は、定期的に介護記録情報をIP-PBX200に送信し、IP-PBX200は、値の更新があるときには、利用者情報テーブル410の介護記録情報(介護度410e、バイタル情報410f、自立度410g、排泄タイミング410h、傷病有無410i)に値を格納する。介護管理サーバ200は、定期的に介護記録情報をIP-PBX200に送信してもよいし、介護記録情報の更新があったときに、IP-PBX200に通知するようにしてもよい。
【0056】
IP-PBX200は、介護記録情報の更新をチェックする(S300)。
そして、IP-PBX200は、介護記録情報の更新があったか否かを判定し(S301)、介護記録情報の更新があったときには(S301:YES)、利用者情報テーブル410の介護記録情報を取得する(S302)。
【0057】
次に、IP-PBX200は、通話履歴420より通話履歴情報を取得する(S303)。
次に、IP-PBX200は、通話履歴情報より、各利用者の呼出頻度を算出する(S303)。
次に、IP-PBX200は、介護記録情報より、各利用者のpre優先度を算出する(S303)。pre優先度は、例えば、以下の(式1)により算出される。
pre優先度=Min((a×介護度+b×バイタル情報+c×自立度+d×傷病有無+1)の四捨五入値),4)) …(式1)
ここで、a,b,c,dは、各項目のどれを優先するかによって定まる重みづけ係数である。なお、(式1)により、pre優先度は、1~4の整数値をとる。
【0058】
次に、各利用者の排泄タイミングであるか否かを判定し(S306)、排泄タイミングであるときには(S306:YES)、S310に行き、排泄タイミングでないときには(S306:NO)、S307に行く。
【0059】
次に、排泄タイミングがないときには、pre優先度=1であるか否かを判定し(S307)、pre優先度=1でないときには(S307:NO)、S310に行き、pre優先度=1であるときには(S306:YES)、S308に行く。
【0060】
次に、pre優先度=1であるときには、所定時間内にS303で算出した呼出頻度が所定の閾値を越えているか否か(例えば、過去3時間内に3回を越える、過去1日以内に7回を越えるなど)を判定し(S308)、所定時間内でS303で算出した呼出頻度が所定の閾値を越えているときには(S308:YES)、応答優先度=1とする(S309)。
【0061】
本実施形態の処理は、介護記録情報により定まるpre優先度が所定の閾値(図9の例では、2)未満であるときには、その利用者が、精神的・身体的に比較的健康であると判断する。S309の処理は、pre優先度が所定の閾値未満であり、一定時間において、呼出頻度が所定の閾値を越えているときには、精神的・身体的に比較的健康にもかかわらず、雑談をしたいなどの理由で頻繁に呼び出しているものと推測されるため、応答優先度を低く設定するものである。
【0062】
次に、排泄タイミングであるとき、pre優先度=1でないとき、所定時間内にS303で算出した呼出頻度が所定の閾値を越えていないときには、応答優先度=pre優先度+1とする(S310)。
いずれのときでも、応答優先度は、1~5の整数値となる。
【0063】
次に、IP-PBX200は、算出した各利用者の応答優先度を、利用者情報テーブル410に格納する(S311)。
【0064】
次に、図10Aないし図10Eを用いて利用者からナースコールがあり、スタッフが応答するまでの一連の流れを説明する。
【0065】
先ず、図10Aに示されるように、利用者A、B、Cが同時期に同時に呼び出しを行い、内線(1)、内線(2)、内線(3)のそれぞれのスタッフに着信表示がされる。
【0066】
ここで、図10Bに示されるように、内線(1)のスタッフが応答優先度が最も高い利用者Bの呼出を選択し、応答する。
【0067】
その結果、図10Cに示されるように、内線(1)のスタッフは、利用者Bと通話状態になり、内線(2)、内線(3)の携帯するスマートフォン30から、利用者Bの呼出の呼出表示単位510が削除される。
【0068】
次に、図10Dに示されるように、内線(2)のスタッフが、現在、応答優先度が最も高い利用者Aの呼出を選択し、応答する。
【0069】
その結果、図10Eに示されるように、内線(2)のスタッフは、利用者Aと通話状態になり、内線(3)の携帯するスマートフォン30から、利用者Bの呼出の呼出表示単位510が削除される。
【0070】
以上、本実施形態の通話制御システムによれば、複数のナースコールの呼出が同時期にあった場合でも、応答優先度とともに、対応すべき各スタッフのスマートフォンに全て表示されるので、緊急に対応すべき利用者に対し、迅速に対応可能となる。
【0071】
また、通知先スマートフォンのグループ内でスタッフの担当利用者が決まっており、それぞれの担当利用者から同時に呼出があった場合には、自分の担当利用者を優先して対応することができるようになる。
【0072】
応答優先度は、介護記録や呼出頻度から、システムが自動で決定するため、スタッフにとって、利用者の緊急度合いを把握しなくても優先すべき呼出を選択して応答することが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
5…構内電話線、7…LAN(Local Area Network)、10…ナースコール呼出子機、20…無線AP(Access Point)装置、30…スマートフォン、100…IP-PBX、110…通話制御部、120…介護情報受信部、130…応答優先度算出部、140…着信画面データ加工部、200…介護管理サーバ、210…介護DB(Data Base)、220…介護情報管理部、230…介護情報送信部、240…介護情報入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E