(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142670
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20220922BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20220922BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
E02F9/00 C
B60R16/033 D
H02J7/00 302B
H02J7/00 302C
H02J7/00 303C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042950
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】矢野 学
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 明
(72)【発明者】
【氏名】杉山 春樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA04
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA08
5G503DA04
5G503FA06
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】車体の長期放置においても、低電圧の電池の電圧を一定に保つことができ、車体始動要求時に直ちに始動することができるとともに、車体停止中に動作が必要な電気機器の制約を低減することができる建設機械を提供すること。
【解決手段】第2の電源系19からの電力の供給により駆動することで作業を行う電気機器と、第1の電源系14からの電力の供給により油圧ショベル100を始動するスタータモータ11とを有し、車体コントローラ13は、油圧ショベル100が始動せずに停止している場合において、第1の電池12に蓄えられた電力が油圧ショベル100のエンジン2の始動に必要な電力に応じて予め定めた蓄電基準値を下回った場合には、第1の電池12への充電が必要であると判定し、DC-DCコンバータ24によって第2の電源系19の電力を変換して第1の電源系14の第1の電池12に充電する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源系と第2の電源系とを有し、前記第1の電源系からの電力の供給により始動するとともに、前記第2の電源系からの電力の供給により作業を行う建設機械において、
第1の電池と、
前記第1の電池が接続される前記第1の電源系に接続され、前記第1の電池から前記第1の電源系を介して供給される電力により動作する電気電子機器と、
前記第1の電池よりも定格電圧の高い第2の電池と、
前記第2の電池が接続される前記第2の電源系に接続され、前記第2の電池から前記第2の電源系を介して供給される電力により動作し、前記電気電子機器よりも高い電圧で駆動する電気機器と、
前記第1の電源系と前記第2の電源系との間で電圧変換を行い、前記第2の電源系から供給される電力の電圧変換を行って前記第1の電源系へ供給する電圧変換装置とを備え、
前記電気機器は、前記第2の電源系からの電力の供給により駆動し、前記電気電子機器は、前記第1の電源系からの電力の供給により前記建設機械を始動する機能を含み、
前記電気電子機器は、前記建設機械が始動せずに停止している場合において、前記第1の電池に蓄えられた電力が前記建設機械の始動に必要な電力に応じて予め定めた蓄電基準値を下回った場合には、前記第1の電池への充電が必要であると判定し、前記電圧変換装置によって前記第2の電源系の電力を変換して前記第1の電源系の前記第1の電池に充電することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記第1の電源系に接続された前記電気電子機器は、
前記建設機械の外部に情報を送信する通信機器を含み、
前記通信機器は、前記建設機械が始動せずに停止している場合で、かつ、予め定めた条件を満たす場合には、前記建設機械の状態の診断結果である診断情報を外部に送信することを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2記載の建設機械において、
前記第2の電池の充電状態を検出する電池状態検出装置を備え、
前記電池状態検出装置は、第2の電池の充電状態が予め定めた値以下である場合には、前記通信機器によって前記建設機械の始動を要求する情報を外部に送信することを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1記載の建設機械において、
前記第2の電池の充電状態を検出する電池状態検出装置を備え、
前記電池状態検出装置は、オペレータから前記建設機械の始動要求がない状態において、第2の電池の充電状態が予め定めた値以下である場合には、前記電圧変換装置による第2の電源系から前記第1の電源系への電力の変換を禁止することを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮や燃費の向上を目的として、油圧ショベルの電動化が進められている。このような油圧ショベルでは、例えば、油圧系の動力源などにおいて電動化された部分へ電力供給する高電圧の電池と、各種コントローラや油圧系のセンサなど、電動化以前から油圧ショベルに搭載されている電気機器へ電力供給する低電圧の電池との2系統の電池を有している。
【0003】
低電圧の電池に接続される電気機器には、車体始動時に電力供給が必要な機器も含まれている。長期間に渡る放置による自然放電や、エンジンの停止状態での前照灯の連続使用駆動などにより、車体の始動時に低電圧の電池の電圧が低下していると、電源電圧が不安定になって誤動作を引き起こしてしまう。したがって、低電圧の電池の電圧が低下している場合には、車体の始動を禁止する等の処置を講じる必要が生じてしまう。
【0004】
ハイブリッドシステムを有する自動車では、高電圧の電池でモータを駆動してエンジンを始動するため従来のスタータモータを持たず、低電圧の電池をエンジン始動に使わない構成が主流である。
【0005】
一方で、油圧ショベルではエンジンが大きいこと、メインポンプの引きずりトルクが大きいことから、必要な始動トルクが大きいため、低電圧系の電池から電力供給する従来のスタータモータで始動する構成が多い。
【0006】
したがって、ハイブリットシステムを有する自動車と比較し、油圧ショベルでは低電圧の電池の電圧を十分に保つ必要があり、電池の電圧が低下することに対する影響も大きい。
【0007】
自動車の低電圧の電池の電圧の低下に係る問題を解決する従来技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、高電圧バッテリを含む高電圧系の電気エネルギを利用する車両であって、車両の走行に関する制御を行なう制御装置と、低電圧バッテリを含む低電圧系の電気エネルギを、前記制御装置に供給する低電圧電源回路と、前記低電圧バッテリの電圧を検出するバッテリ電圧検出手段と、前記高電圧系の電気エネルギを低電圧に変換して該低電圧バッテリの充電を行なうコンバータ手段と、車両の始動要求があったとき、前記検出された低電圧バッテリの電圧が、予め定めた最低基準電圧よりも低い場合には、前記制御装置の動作の許可に先立って、前記コンバータ手段を用いることにより前記低電圧バッテリの電圧を前記最低基準電圧にまで回復させる回復手段とを備える車両に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
車体の長期間放置による低電圧の電池の電圧が低下することによる弊害としては、車体を始動するときの始動性への影響、及び、車体停止中に動作が必要となる機器類への影響が考えられる。
【0010】
上記従来技術においては、車体の始動要求があったときに、低電圧の電池が規定電圧以下と判定すると、高電圧側の電池からコンバータを介して低電圧の電池を規定以上の電圧まで充電している。
【0011】
したがって、前者の車体を始動するときの始動性への影響に対しては、車体の始動前に充電を行うことで対策が可能である。しかしながら、車体の始動要求が入ってから充電を開始するとエンジンが始動し車体が動作するまでに時間を要することになる。特に、油圧ショベルでは、低電圧の電池を用いてスタータによりエンジンを始動させるため十分な電力供給が必要であり、充電に要する時間も長くなる。
【0012】
また、後者の車体停止中に動作が必要となる機器類への影響に対しては、車体の停止中に車体内部機器の診断情報や位置情報を外部に送信することが油圧ショベルでは要求されおり、低圧側の電池の電圧が低下すると診断機能が正確に実施できなくなったり、診断や外部機器への送信時の消費電力の影響で始動時に必要な電力が確保できなくなったりすることから、診断や外部送信可能な期間を短くする必要が生じるなど、運用上大きな制約が生じてしまう。
【0013】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、車体の長期放置においても、低電圧の電池の電圧を一定に保つことができ、車体始動要求時に直ちに始動することができるとともに、車体停止中に動作が必要な電気機器の制約を低減することができる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、第1の電源系と第2の電源系とを有し、前記第1の電源系からの電力の供給により始動するとともに、前記第2の電源系からの電力の供給により作業を行う建設機械において、第1の電池と、前記第1の電池が接続される前記第1の電源系に接続され、前記第1の電池から前記第1の電源系を介して供給される電力により動作する電気電子機器と、前記第1の電池よりも定格電圧の高い第2の電池と、前記第2の電池が接続される前記第2の電源系に接続され、前記第2の電池から前記第2の電源系を介して供給される電力により動作し、前記電気電子機器よりも高い電圧で駆動する電気機器と、前記第1の電源系と前記第2の電源系との間で電圧変換を行い、前記第2の電源系から供給される電力の電圧変換を行って前記第1の電源系へ供給する電圧変換装置とを備え、前記電気機器は、前記第2の電源系からの電力の供給により駆動し、前記電気電子機器は、前記第1の電源系からの電力の供給により前記建設機械を始動する機能を含み、前記電気電子機器は、前記建設機械が始動せずに停止している場合において、前記第1の電池に蓄えられた電力が前記建設機械の始動に必要な電力に応じて予め定めた蓄電基準値を下回った場合には、前記第1の電池への充電が必要であると判定し、前記電圧変換装置によって前記第2の電源系の電力を変換して前記第1の電源系の前記第1の電池に充電するものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車体の長期放置においても、低電圧の電池の電圧を一定に保つことができ、車体始動要求時に直ちに始動することができるとともに、車体停止中に動作が必要な電気機器の制約を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】建設機械の一例として油圧ショベルを示す図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る電源回路システムおよび油圧回路システムの要部を抜き出して模式的に示す図である。
【
図3】電源回路システムの処理の内容を示すフローチャートである。
【
図4】第2の実施の形態に係る電源回路システムおよび油圧回路システムの要部を抜き出して模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、建設機械の一例として油圧ショベルを例示して説明するが、これに限られず、電動化が施されていれば他の建設機械においても本発明を適用することが可能である。
【0018】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を
図1~
図3を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る建設機械の一例として油圧ショベルを示す図である。また、
図2は、本実施の形態に係る電源回路システムおよび油圧回路システムの要部を抜き出して模式的に示す図である。
【0020】
図1において、油圧ショベル100は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム111、アーム112、バケット(作業具)113)を連結して構成された多関節型のフロント装置(フロント作業機)110と、車体を構成する上部旋回体120及び下部走行体130とを備えており、上部旋回体120は下部走行体130に対して旋回可能に設けられている。
【0021】
上部旋回体120は、基部となる旋回フレーム121上に各部材を配置して構成されており、上部旋回体120を構成する旋回フレーム121が下部走行体130に対して旋回可能となっている。
【0022】
フロント装置110のブーム111の基端は上部旋回体120の前部に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム112の一端はブーム111の基端とは異なる端部(先端)に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム112の他端にはバケット113が垂直方向に回動可能に支持されている。
【0023】
ブーム111、アーム112、バケット113、上部旋回体120、及び下部走行体130は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ6、アームシリンダ7、バケットシリンダ8、旋回モータ9、及び左右の走行モータ10(ただし、一方の走行モータのみ図示)によりそれぞれ駆動される。
【0024】
上部旋回体120を構成する旋回フレーム121上には、原動機であるエンジン2とともに、エンジン2の駆動を補助するアシストモータ3などの電気機器に電力を供給する電源回路システムのほかに、エンジン2及びアシストモータ3によって駆動されるメインポンプ4や、メインポンプ4から各油圧アクチュエータ6,7,8,9,10に供給される圧油の流量および方向を制御するコントロールバルブ5、パイロット圧を生成するパイロットポンプ30(
図2参照)などの油圧回路システムが搭載されている。
【0025】
上部旋回体120の前方には、オペレータが搭乗する運転室(キャブ)122が設けられている。運転室122には、油圧アクチュエータ6,7,8,9,10を操作するための操作信号を出力する複数の操作装置(図示せず)や、エンジン2の始動や停止(言い換えると、油圧ショベル100の始動や停止)の操作を行うための始動停止装置(図示せず)などが配置されている。始動停止装置は、例えば、キースイッチであり、オペレータがキースイッチを操作することによって、エンジン2への始動要求や停止要求がなされる。
【0026】
図2において、電源回路システムは、第1の電源系14と第2の電源系19とを有している。なお、第1の電源系14及び第2の電源系19に接続される電気機器(電気電子機器)を構成する複数の機器間では、CAN(Controller Area Network)などを介して情報の授受が可能であるが、このような通信網については図示を省略する。
【0027】
第1の電源系14には、蓄電装置である第1の電池12と、第1の電池12から第1の電源系14を介して供給される電力により動作する電気電子機器とが接続されている。
【0028】
第1の電源系14に接続される電気電子機器としては、油圧ショベル100における車体の状態の監視や制御、各機器との通信を行う車体コントローラ13、エンジン2の状態監視や制御を行うエンジンコントロールユニット22(ECU:Engine Control Unit)、エンジン2の始動を行うスタータモータ11、車体の状態などの情報を外部へ送信する通信装置17、前照灯や各種センサなどのように油圧ショベル100に取り付けられる複数の電気機器16などがある。なお、電気機器16には、オペレータが油圧ショベル100の始動要求や停止要求を行うキースイッチ等も含まれている。
【0029】
スタータモータ11は、オペレータからの始動要求に応じ、第1の電池12から第1の電源系14を介して供給される電力を用いてエンジン2の始動を行う。
【0030】
第2の電源系19には、第1の電池12よりも定格電圧の高い蓄電装置である第2の電池18と、第2の電池18から第2の電源系19を介して供給される電力により動作する電気機器とが接続されている。
【0031】
第2の電源系19に接続される電気機器としては、エンジン2とともにメインポンプ4を駆動するアシストモータ3、エンジン2から動力供給を受けて発電する発電機20、エンジン2のラジエータを冷却するエンジンファン21、パイロット圧を生成するパイロットポンプ30を駆動するパイロットポンプモータ23などがある。また、第2の電池18には、バッテリマネジメントユニット15(BMU:Buttery Management Unit)が設けられている。バッテリマネジメントユニット15は、第2の電池18の状態を制御する機能とともに、第2の電池18の状態を検出する電池状態検出装置としての機能を有している。
【0032】
アシストモータ3は、第2の電池18から第2の電源系19を介して供給される電力を用いてエンジン2の駆動を補助し、エンジン2とともにメインポンプ4を駆動する。
【0033】
第1の電源系14と第2の電源系19とは、互いに異なる定格電圧(直流電圧)で構成されている。したがって、第1の電源系14と第2の電源系19との間には、第1の電源系14と第2の電源系19との間で電圧変換を行い、第2の電源系19から供給される電力の電圧変換を行って第1の電源系14へ供給する電圧変換装置であるDC-DCコンバータ24が接続されている。すなわち、発電機20が発電した電力は、第2の電源系19を介して第2の電池18に充電可能であるとともに、DC-DCコンバータ24によって変換され、第1の電源系14を介して第1の電池12にも充電可能である。
【0034】
このように、油圧ショベル100は、エンジン2とアシストモータ3とによってメインポンプ4を駆動するハイブリッド式油圧ショベルであり、第1の電源系14からの電力の供給によりスタータモータ11を駆動することで始動するとともに、第2の電源系19からの電力の供給によりアシストモータ3を駆動することでメインポンプ4を駆動し、掘削動作、旋回動作、走行動作などを含む施工現場での作業動作を行う。
【0035】
図3は、電源回路システムの処理の内容を示すフローチャートである。
【0036】
図3において、オペレータによるキースイッチの操作によって停止要求がなされ、エンジン2の動作が停止されると(ステップS100)、車体コントローラ13は、オペレータからの始動要求が無い場合においても、第1の電池12からの電力供給を受けて動作し、第1の電源系14に接続されている電気電子機器を起動する必要があるか否かを判定する(ステップS110)。ステップS110では、例えば、エンジン2の前回の起動からの経過時間が経過した場合や、規定の時刻になった場合などのように一定の期間や条件を満たした場合に、機器を起動する必要があると判定する。起動要否の判定対象となる電気電子機器としては、例えば、通信装置17がある。通信装置17は、油圧ショベル100が停止している状態(すなわち、エンジン2が停止している状態)であっても、定期的に起動して車体の状態に係る情報を外部に送信する。なお、電気機器16にも定期的に起動を必要とするものが含まれている場合がある。
【0037】
ステップS110での判定結果がNOの場合には、判定結果がYESになるまで、ステップS110の判定を繰り返す。
【0038】
また、ステップS110での判定結果がYSEの場合には、車体コントローラ13は、ステップS110で起動が必要であると判定された電気電子機器を起動させるとともに、第1の電池12の電圧を計測し、第1の電池12の電圧が予め定めた電圧(最低基準電圧)よりも低いか否か、すなわち、第1の電池12の充電が必要であるか否かを判定する(ステップS120)。第1の電池12の充電の要否の判定に用いる最低基準電圧(蓄電基準電圧)としては種々のものが考えられるが、例えば、前記第1の電池12に蓄えられた電力でスタータモータ11を駆動してエンジン2(建設機械100)を例えば1回始動させるのに必要な電力に応じて最低基準電圧を設定し、最低基準電圧を下回った場合に第1の電池12の充電が必要であると判定することが考えられる。なお、車体コントローラ13が検出する電圧が起動した電気電子機器の電流消費により変動する場合は、電気電子機器の動作が安定するタイミングの電圧を測定する。
【0039】
ステップS120での判定結果がYESの場合には、車体コントローラ13は、DC-DCコンバータ24を起動するとともに、BMU15を制御することで第2の電池を起動してDC-DCコンバータ24への電力の供給を開始し、DC-DCコンバータ24で電圧変換された電力によって第1の電池12の充電を行う(ステップS130)。
【0040】
ステップS130の処理が終了した場合、又は、ステップS120での判定結果がNOの場合には、続いて、車体コントローラ13は、第1の電源系14に接続されている機器の故障診断情報や位置情報、劣化情報を取得し、通信装置17によって外部へ送信する(ステップS140)。通信装置17から送信された故障診断情報や位置情報などを車体(油圧ショベル100)の管理者が受信することで、車体を直接確認することなく遠隔にてメンテナンス計画を立案することが可能となる。
【0041】
続いて、車体コントローラ13は、第2の電池18の残容量を測定し、第2の電池18の容量が第1の電池12を充電するのに十分な量であるか否かを判定する(ステップS150)。
【0042】
第2の電源系19に接続されているアシストモータ3などの電気機器は、第1の電源系14に接続されている電気電子機器より必要とされる電力が大きいため、第2の電池18は第1の電池12より大きな容量を有しており、第2の電池18が満充電の場合には第1の電池12を複数回にわたって充電することが可能な容量(最大容量)を有している。しかしながら、比較的大容量の第2の電池18であっても第1の電池12を充電する度に電力を消費するため、継続的に第1の電池12の充電が可能か否かをステップS150の処理により判断する。
【0043】
ステップS150での判定結果がYESの場合には、ステップS110の処理に戻る。第2の電池18は、内部にBMU15を内蔵しており、電池内部の温度や電圧、容量などを計測し、電池を監視、制御、保護することが可能である。BMU15により第2の電池18の残量を測定し、第1の電池12を充電するのに十分な残量があると判断した場合(すなわち、ステップS150の判定結果がYESの場合)には、第1の電源系14に接続されている電気電子機器をシャットダウンする。
【0044】
ステップS150での判定結果がNOの場合には、DC-DCコンバータ24による電圧変換、すなわち、第2の電池18から第1の電池12への充電を禁止するとともに、第1の電池12および第2の電池18の充電が必要な旨の通知を、通信装置17を介して管理者に送信する(ステップS160)。
【0045】
続いて、オペレータの始動要求が入力されるまで(車体停止中)は、第1の電源系14に接続されている電気電子機器を最低限の動作のみ許容するような制限動作とする(ステップS170)。これは、第2の電池18から第1の電池12への充電が禁止された状態で電気電子機器によって第1の電池12の電力が消費されることにより、第1の電池12の電力がエンジン2を始動するのに十分な電力を下回ることを防止する処理である。
【0046】
以上のように構成した本実施の形態における作用効果を説明する。
【0047】
本実施の形態においては、第1の電源系14と第2の電源系19とを有し、第1の電源系14からの電力の供給により始動するとともに、第2の電源系19からの電力の供給により作業を行う建設機械(油圧ショベル100)において、第1の電池12と、第1の電池12が接続される第1の電源系14に接続され、第1の電池12から第1の電源系14を介して供給される電力により動作する電気電子機器(スタータモータ11、車体コントローラ13、電気機器16、通信装置17、ECU22)と、第1の電池12よりも定格電圧の高い第2の電池18と、第2の電池18が接続される第2の電源系19に接続され、第2の電池18から第2の電源系19を介して供給される電力により動作し、電気電子機器よりも高い電圧で駆動する電気機器(アシストモータ3、エンジンファン21、パイロットポンプモータ23)と、第1の電源系14と第2の電源系19との間で電圧変換を行い、第2の電源系19から供給される電力の電圧変換を行って第1の電源系14へ供給する電圧変換装置(DC-DCコンバータ24)とを備え、電気機器(車体コントローラ13)は、第2の電源系19からの電力の供給により駆動し、電気電子機器は、第1の電源系14からの電力の供給により建設機械(油圧ショベル100)を始動する機能(スタータモータ11)を含み、電気電子機器は、建設機械(油圧ショベル100)が始動せずに停止している場合において、第1の電池12に蓄えられた電力が建設機械(油圧ショベル100のエンジン2)の始動に必要な電力に応じて予め定めた蓄電基準値を下回った場合には、第1の電池12への充電が必要であると判定し、電圧変換装置(DC-DCコンバータ24)によって第2の電源系19の電力を変換して第1の電源系14の第1の電池12に充電するように構成したので、車体の長期放置においても、低電圧の電池の電圧を一定に保つことができ、車体始動要求時に直ちに始動することができるとともに、車体停止中に動作が必要な電気機器の制約を低減することができる。
【0048】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を
図4を参照しつつ説明する。
【0049】
第1の実施の形態では、エンジン及びアシストモータによりメインポンプを駆動したのに対して、本実施の形態においては、メインポンプ駆動用モータによってメインポンプを駆動する場合を示すものである。
【0050】
図4は、本実施の形態に係る電源回路システムおよび油圧回路システムの要部を抜き出して模式的に示す図である。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0051】
図4において、電源回路システムは、第1の電源系14と第2の電源系29とを有している。なお、第1の電源系14及び第2の電源系29に接続される電気機器(電気電子機器)を構成する複数の機器間では、CAN(Controller Area Network)などを介して情報の授受が可能であるが、このような通信網については図示を省略する。
【0052】
第1の電源系14には、蓄電装置である第1の電池12と、第1の電池12から第1の電源系14を介して供給される電力により動作する電気電子機器とが接続されている。
【0053】
第1の電源系14に接続される電気電子機器としては、油圧ショベル100における車体の状態の監視や制御、各機器との通信を行う車体コントローラ13、車体の状態などの情報を外部へ送信する通信装置17、前照灯や各種センサなどのように油圧ショベル100に取り付けられる複数の電気機器16、メインポンプ駆動用モータ25を駆動するインバータ26などがある。なお、電気機器16には、オペレータが油圧ショベル100の始動要求や停止要求を行うキーシリンダ等も含まれている。
【0054】
第2の電源系29には、第1の電池12よりも定格電圧の高い蓄電装置である第2の電池18と、第2の電池18から第2の電源系29を介して供給される電力により動作する電気機器と、第2の電源系29に外部電源から電力を供給するための車載充電器28や三相コネクタ27などが接続されている。
【0055】
第2の電源系29に接続される電気機器としては、第2の電池18から第2の電源系19を介して供給される電力を用いてメインポンプ4を駆動するメインポンプ駆動用モータ25などがある。また、第2の電池18には、バッテリマネジメントユニット15(BMU:Buttery Management Unit)が設けられている。バッテリマネジメントユニット15は、第2の電池18の状態を制御する機能とともに、第2の電池18の状態を検出する電池状態検出装置としての機能を有している。
【0056】
油圧ショベル100に外部の三相電源から供給される交流電力は、三相コネクタ27を介して車載充電器28に入力され、車載充電器28で直流電力に変換されて第2の電源系19に供給される。第2の電池18は、外部から車載充電器28を介して供給される電力により充電され、メインポンプ駆動用モータ25の駆動電力を供給する。
【0057】
第1の電源系14と第2の電源系29とは、互いに異なる定格電圧(直流電圧)で構成されている。したがって、第1の電源系14と第2の電源系29との間には、第1の電源系14と第2の電源系29との間で電圧変換を行い、第2の電源系29から供給される電力の電圧変換を行って第1の電源系14へ供給する電圧変換装置であるDC-DCコンバータ24が接続されている。すなわち、発電機20が発電した電力は、第2の電源系29を介して第2の電池18に充電可能であるとともに、DC-DCコンバータ24によって変換され、第1の電源系14を介して第1の電池12にも充電可能である。
【0058】
このように、油圧ショベル100は、メインポンプ駆動用モータ25によってメインポンプ4を駆動する電動油圧ショベルであり、第1の電源系14からの電力の供給によりインバータ26を駆動することで始動するとともに、第2の電源系29や外部電源からの電力の供給によりメインポンプ駆動用モータ25を駆動することでメインポンプ4を駆動し、掘削動作、旋回動作、走行動作などを含む施工現場での作業動作を行う。
【0059】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0060】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。
【0062】
例えば、第1及び第2の実施の形態においては、車体コントローラ13が
図3で説明した処理によって電源回路システムを制御する場合を例示して説明したが、これに限られず、通信装置17が車体コントローラ13と同様の処理を行うように構成してもよい。
【0063】
また、第1の実施の形態においては、第1の実施の形態の
図3のステップS110の処理においては、電気機器を起動する特定の条件を、前回の起動時間からの経過時間や規定の時刻としているが、これに限られず、第1の電源系14に接続されている電気電子機器の状態、電気機器の起動要求信号の受信、第1の電池12の電圧や電池残量、劣化状態などの条件に応じた判定としても良い。
【0064】
また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0065】
2…エンジン、3…アシストモータ、4…メインポンプ、5…コントロールバルブ、6…ブームシリンダ、7…アームシリンダ、8…バケットシリンダ、9…旋回モータ、10…走行モータ、11…スタータモータ、12…第1の電池、13…車体コントローラ、14…第1の電源系、15…バッテリマネジメントユニット、16…電気機器、17…通信装置、18…第2の電池、19…第2の電源系、20…発電機、21…エンジンファン、22…エンジンコントロールユニット、23…パイロットポンプモータ、24…DC-DCコンバータ、25…メインポンプ駆動用モータ、26…インバータ、27…三相コネクタ、28…車載充電器、30…パイロットポンプ、100…油圧ショベル、110…フロント装置(フロント作業機)、111…ブーム、112…アーム、113…バケット、120…上部旋回体、121…旋回フレーム、122…運転室(キャブ)、130…下部走行体
【手続補正書】
【提出日】2022-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源系と第2の電源系とを有し、前記第1の電源系からの電力の供給により始動するとともに、前記第2の電源系からの電力の供給により作業を行う建設機械において、
第1の電池と、
前記第1の電池が接続される前記第1の電源系に接続され、前記第1の電池から前記第1の電源系を介して供給される電力により動作する電気電子機器と、
前記第1の電池よりも定格電圧の高い第2の電池と、
前記第2の電池が接続される前記第2の電源系に接続され、前記第2の電池から前記第2の電源系を介して供給される電力により動作し、前記電気電子機器よりも高い電圧で駆動する電気機器と、
前記第1の電源系と前記第2の電源系との間で電圧変換を行い、前記第2の電源系から供給される電力の電圧変換を行って前記第1の電源系へ供給する電圧変換装置とを備え、
前記電気機器は、前記第2の電源系からの電力の供給により駆動し、前記電気電子機器は、外部からの始動要求により前記第1の電源系からの電力の供給により前記建設機械を始動する機能と、前記始動要求が無い場合でも前記第1の電源系からの電力の供給を受けて前記建設機械の状態監視を行う機能とを含む複数の機器からなり、
前記電気電子機器は、前記建設機械が始動せずに停止している場合において、
前記第1の電池に蓄えられた電力が前記建設機械の始動に必要な電力に応じて予め定めた蓄電基準値を下回った場合には、前記第1の電池への充電が必要であると判定し、前記電圧変換装置によって前記第2の電源系の電力を変換して前記第1の電源系の前記第1の電池に充電し、
前記第2の電池の残量が前記第1の電池への充電が可能か否かを判定して、前記第1の電池への充電ができないと判定された場合には、前記第1の電池の消費を抑えるように前記電気電子機器の動作を制限することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記第1の電源系に接続された前記電気電子機器は、
前記建設機械の外部に情報を送信する通信機器を含み、
前記通信機器は、前記建設機械が始動せずに停止している場合で、かつ、予め定めた条件を満たす場合には、前記建設機械の状態の診断結果である診断情報を外部に送信することを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2記載の建設機械において、
前記第2の電池の充電状態を検出する電池状態検出装置を備え、
前記電池状態検出装置は、第2の電池の充電状態が予め定めた値以下である場合には、前記通信機器によって前記第2の電池の充電が必要な旨の通知を外部に送信することを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1記載の建設機械において、
前記第2の電池の充電状態を検出する電池状態検出装置を備え、
前記電池状態検出装置は、オペレータから前記建設機械の始動要求がない状態において、第2の電池の充電状態が予め定めた値以下である場合には、前記電圧変換装置による第2の電源系から前記第1の電源系への電力の変換を禁止することを特徴とする建設機械。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、第1の電源系と第2の電源系とを有し、前記第1の電源系からの電力の供給により始動するとともに、前記第2の電源系からの電力の供給により作業を行う建設機械において、第1の電池と、前記第1の電池が接続される前記第1の電源系に接続され、前記第1の電池から前記第1の電源系を介して供給される電力により動作する電気電子機器と、前記第1の電池よりも定格電圧の高い第2の電池と、前記第2の電池が接続される前記第2の電源系に接続され、前記第2の電池から前記第2の電源系を介して供給される電力により動作し、前記電気電子機器よりも高い電圧で駆動する電気機器と、前記第1の電源系と前記第2の電源系との間で電圧変換を行い、前記第2の電源系から供給される電力の電圧変換を行って前記第1の電源系へ供給する電圧変換装置とを備え、前記電気機器は、前記第2の電源系からの電力の供給により駆動し、前記電気電子機器は、外部からの始動要求により前記第1の電源系からの電力の供給により前記建設機械を始動する機能と、前記始動要求が無い場合でも前記第1の電源系からの電力の供給を受けて前記建設機械の状態監視を行う機能とを含む複数の機器からなり、前記電気電子機器は、前記建設機械が始動せずに停止している場合において、前記第1の電池に蓄えられた電力が前記建設機械の始動に必要な電力に応じて予め定めた蓄電基準値を下回った場合には、前記第1の電池への充電が必要であると判定し、前記電圧変換装置によって前記第2の電源系の電力を変換して前記第1の電源系の前記第1の電池に充電し、前記第2の電池の残量が前記第1の電池への充電が可能か否かを判定して、前記第1の電池への充電ができないと判定された場合には、前記第1の電池の消費を抑えるように前記電気電子機器の動作を制限するものとする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
第2の電源系29に接続される電気機器としては、第2の電池18から第2の電源系29を介して供給される電力を用いてメインポンプ4を駆動するメインポンプ駆動用モータ25などがある。また、第2の電池18には、バッテリマネジメントユニット15(BMU:Buttery Management Unit)が設けられている。バッテリマネジメントユニット15は、第2の電池18の状態を制御する機能とともに、第2の電池18の状態を検出する電池状態検出装置としての機能を有している。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
油圧ショベル100に外部の三相電源から供給される交流電力は、三相コネクタ27を介して車載充電器28に入力され、車載充電器28で直流電力に変換されて第2の電源系29に供給される。第2の電池18は、外部から車載充電器28を介して供給される電力により充電され、メインポンプ駆動用モータ25の駆動電力を供給する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
第1の電源系14と第2の電源系29とは、互いに異なる定格電圧(直流電圧)で構成されている。したがって、第1の電源系14と第2の電源系29との間には、第1の電源系14と第2の電源系29との間で電圧変換を行い、第2の電源系29から供給される電力の電圧変換を行って第1の電源系14へ供給する電圧変換装置であるDC-DCコンバータ24が接続されている。すなわち、油圧ショベル100に外部の三相電源から供給された電力は、第2の電源系29を介して第2の電池18に充電可能であるとともに、DC-DCコンバータ24によって変換され、第1の電源系14を介して第1の電池12にも充電可能である。