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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142685
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】切断作業用冶具
(51)【国際特許分類】
   B26B 29/06 20060101AFI20220922BHJP
   B26D 7/01 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B26B29/06
B26D7/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042973
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛
(72)【発明者】
【氏名】中園 竜之
【テーマコード(参考)】
3C021
3C061
【Fターム(参考)】
3C021BB02
3C061AA26
3C061EE24
(57)【要約】
【課題】面材を傷付けることなくシート状部材を精度よく切断することができる切断作業用冶具を提供する。
【解決手段】鋼製フレーム110と当該鋼製フレーム110に固定されたスタータ140との間に設けられた透湿防水シート130を、当該スタータ140に取り付けられる外壁面材120から貼り出した貼り出し位置(切断位置)で切断する作業に用いられ、貼り出し位置で前記透湿防水シート130を切断する方向に沿った外縁を有する切断補助部20と、切断補助部20に固定されると共に前記スタータ140に脱着可能に形成された取付部10と、を具備する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁下地と当該壁下地に固定された取付金具との間に設けられたシート状部材を、当該取付金具に取り付けられる面材から貼り出した切断位置で切断する作業に用いられ、
前記切断位置で前記シート状部材を切断する方向に沿った外縁を有する切断補助部と、
前記切断補助部に固定されると共に前記取付金具に脱着可能に形成された取付部と、
を具備する、
切断作業用冶具。
【請求項2】
前記取付部は、
前記取付金具に取り付けられた場合に、前記シート状部材を介して前記壁下地と当接するための第一当接部を有する、
請求項1に記載の切断作業用冶具。
【請求項3】
前記取付部は、
前記壁下地側に開口が形成された切欠きを有し、
前記切欠きに前記開口から前記取付金具を嵌め込むことにより脱着可能に形成される、
請求項1又は請求項2に記載の切断作業用冶具。
【請求項4】
前記切欠きは、
前記開口を構成する一側及び他側の壁部により形成され、前記取付金具を嵌め込んだ状態で前記取付金具に当接するための第二当接部を有する、
請求項3に記載の切断作業用冶具。
【請求項5】
前記切欠きは、
前記開口と対向するように設けられた壁部により形成され、前記取付金具を嵌め込んだ状態で前記取付金具に当接するための第三当接部を有する、
請求項3又は請求項4のいずれかに記載の切断作業用冶具。
【請求項6】
前記取付金具は、スタータである、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の切断作業用冶具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁下地に設けられたシート状部材を切断する作業に用いられる切断作業用冶具の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、取付金具を用いて壁下地に面材が取り付けられる技術は公知となっている。例えば特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、横胴縁(壁下地)に固定されたスタータ部材(取付金具)に、外壁面材の下端が差し込まれることにより外壁パネルが形成される技術が開示されている。
【0004】
このような外壁パネルにおいては、例えば防水シート(シート状部材)が、壁下地と取付金具との間に設けられる場合がある。また、このようにシート状部材を設ける場合、シート状部材を外壁面材よりも所定の長さだけ長くする(貼り出す)ことが求められる場合がある。
【0005】
ここで、シート状部材を外壁面材よりも所定の長さだけ貼り出した位置で切断する作業は、カッター等を用いた作業者の手作業で行われる。
【0006】
しかしながら、上述の如き手作業による作業者の切断作業では、精度の確保が容易ではなくシート状部材(前記所定の長さ)に寸法の不揃いが発生し易い。そこで、取付金具に取り付けられた外壁面材に、切断作業を補助するための冶具を配置することも考えられるが、当該冶具により外壁面材が傷付く可能性もあるため望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-2668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、面材を傷付けることなくシート状部材を精度よく切断することができる切断作業用冶具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、壁下地と当該壁下地に固定された取付金具との間に設けられたシート状部材を、当該取付金具に取り付けられる面材から貼り出した切断位置で切断する作業に用いられ、前記切断位置で前記シート状部材を切断する方向に沿った外縁を有する切断補助部と、前記切断補助部に固定されると共に前記取付金具に脱着可能に形成された取付部と、を具備するものである。
【0011】
請求項2においては、前記取付部は、前記取付金具に取り付けられた場合に、前記シート状部材を介して前記壁下地と当接するための第一当接部を有するものである。
【0012】
請求項3においては、前記取付部は、前記壁下地側に開口が形成された切欠きを有し、前記切欠きに前記開口から前記取付金具を嵌め込むことにより脱着可能に形成されるものである。
【0013】
請求項4においては、前記切欠きは、前記開口を構成する一側及び他側の壁部により形成され、前記取付金具を嵌め込んだ状態で前記取付金具に当接するための第二当接部を有するものである。
【0014】
請求項5においては、前記切欠きは、前記開口と対向するように設けられた壁部により形成され、前記取付金具を嵌め込んだ状態で前記取付金具に当接するための第三当接部を有するものである。
【0015】
請求項6においては、前記取付金具は、スタータである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、面材を傷付けることなくシート状部材を精度よく切断することができる。
【0018】
請求項2においては、シート状部材をより精度よく切断することができる。
【0019】
請求項3においては、作業性の向上を図ることができる。
【0020】
請求項4においては、シート状部材をより精度よく切断することができる。
【0021】
請求項5においては、シート状部材をより精度よく切断することができる。
【0022】
請求項6においては、スタータを用いてシート状部材をより精度よく切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る冶具を示した斜視図。
図2】組み立て時の外壁パネルを示した斜視図。
図3】同じく、外壁パネルの後端部を示した側面断面模式図。
図4】(a)外壁パネルに使用される第一スタータを示した側面図。(b)同じく、第二スタータを示した側面図。(c)同じく、第三スタータを示した側面図。
図5】冶具を示した背面図。
図6】(a)同じく、側面図。(b)第一スタータに取り付けた状態の冶具を示した側面図。
図7】第一スタータに取り付けた状態の冶具を示した斜視図。
図8】(a)冶具を用いた切断作業の一例を示した図。(b)図8(a)の続きを示した図。
図9】(a)図8(b)の続きを示した図。(b)図9(a)の続きを示した図。
図10】(a)第二スタータに取り付けた状態の冶具を示した側面図。(b)第三スタータに取り付けた状態の冶具を示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明においては、図中に示した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0025】
以下では、本発明の一実施形態に係る冶具1について説明する。
【0026】
図1に示す冶具1は、工場で建物の外壁パネル100を組み立てる際に、当該外壁パネル100に取り付けられ、当該外壁パネル100に設けられた透湿防水シート130の切断作業を補助するものである。本実施形態において、前記建物としては、工場や倉庫、物流施設、店舗等の、建築に使用される部材が標準化された建物を想定している。
【0027】
まず以下では、図2から図4を用いて、外壁パネル100の構成について説明する。
【0028】
図2及び図3は、組み立て時の外壁パネル100を示している。外壁パネル100は、建物の外壁部を成すものである。外壁パネル100は、建物の建設現場とは異なる場所(工場)で組み立てられる。外壁パネル100は、工場において、寝かされた姿勢(すなわち、建物での使用時とは異なる姿勢)で、所定の架台に載置される。具体的には、図2及び図3に示す外壁パネル100は、使用時における上端部を前方へ向け、下端部を後方へ向け、屋外側の面を上方へ向けた姿勢で載置される。図2から図4に示すように、外壁パネル100は、鋼製フレーム110、外壁面材120、透湿防水シート130及びスタータ140を具備する。
【0029】
鋼製フレーム110は、鋼製の壁下地である。鋼製フレーム110は、複数の枠材により、全体として枠状に形成される。鋼製フレーム110は、平面視で略矩形状の外形を有する。
【0030】
外壁面材120は、外壁パネル100のうち最も屋外側に設けられる部材である。外壁面材120は、略矩形の板状に形成される。外壁面材120は、後述するスタータ140やその他の金具(不図示)に取り付けられる。すなわち、外壁面材120は、スタータ140等を介して鋼製フレーム110に取り付けられる。外壁面材120は、鋼製フレーム110の上方に離間した状態で、当該鋼製フレーム110と互いに対向するように設けられる。図3に示すように、外壁面材120の後端部は、鋼製フレーム110の後端部と前後方向位置が同一となるように形成される。
【0031】
透湿防水シート130は、湿気(水蒸気)のみを通し、水を通さない性質を有するシート状部材である。透湿防水シート130は、鋼製フレーム110の全体を上方から覆うように設けられる。また、透湿防水シート130は、鋼製フレーム110と後述するスタータ140との間に設けられる。透湿防水シート130は、外壁パネル100の使用時(建物への設置時)に当該外壁パネル100に隣接する他の部材との隙間を考慮して、外壁面材120から貼り出すように(図3に示すように、外壁面材120の後端部から後方へ延出するように)設けられる。なお以下では、透湿防水シート130の後端部の位置を「貼り出し位置」と称する場合がある(図3参照)。
【0032】
なお、透湿防水シート130の貼り出し位置は、外壁面材120の後端部から長さL4(例えば40mm)だけ後方に位置する。すなわち、外壁面材120の後端部から貼り出し位置までの長さ(透湿防水シート130の貼り出し長さ)は、長さL4に形成される。
【0033】
スタータ140は、外壁面材120を鋼製フレーム110に取り付けるための取付金具である。スタータ140は、金属製の細長い平板状の板材を適宜屈曲させて形成される。スタータ140は、長手方向を左右方向へ向けて配置される。スタータ140は、鋼製フレーム110の後端部近傍に設けられる。具体的には、図3に示すように、スタータ140は、当該スタータ140の後端部から鋼製フレーム110の後端部までの長さが、長さL3(例えば15mm)となる位置に設けられる。スタータ140は、ネジ等の締結具を用いて、透湿防水シート130を介して(透湿防水シート130を鋼製フレーム110との間に挟んで)当該鋼製フレーム110の上面に固定される。
【0034】
なお、外壁パネル100においては、図4に示す3種類のスタータ140が、建物の仕様に応じて任意に使用される。以下の説明では、3種類のスタータ140を、「第一スタータ150」、「第二スタータ160」、「第三スタータ170」とそれぞれ称する。
【0035】
図4(a)に示す第一スタータ150は、第一固定部151、第一支持部152及び第一凸部153を具備する。第一固定部151は、鋼製フレーム110に固定される部分である。第一固定部151は、第一スタータ150の前部に位置する。第一固定部151は、上下方向に貫通する孔(不図示)を有し、当該孔に挿通されたネジ等の締結具により鋼製フレーム110に固定される。第一支持部152は、外壁面材120を支持する部分である。第一支持部152は、第一スタータ150の後部に位置する。第一凸部153は、第一支持部152により支持した外壁面材120と鋼製フレーム110との隙間を埋める部分である。第一凸部153は、外壁パネル100の使用時に、雨風等による水滴が地面側へと伝っていくことを抑制する。第一凸部153は、第一スタータ150の前後中央部(第一固定部151と第一支持部152との間)に位置する。
【0036】
なお、第一支持部152の高さは、高さH1(例えば25mm)であるとする。また、第一スタータ150の全長(前後方向に沿った最も長い部分の長さ)は、長さL1(例えば40mm)であるとする。また、第一凸部153の高さは、高さH1よりも低い高さH2(例えば15mm)であるとする。
【0037】
次に図4(b)を用いて、第二スタータ160の構成について説明する。第二スタータ160は、第一スタータ150と略同様の構成を有する。具体的には、第二スタータ160は、第一スタータ150の第一固定部151、第一支持部152及び第一凸部153と、それぞれ略同様の構成(機能)を有する第二固定部161、第二支持部162及び第二凸部163を具備する。
【0038】
なお、第二支持部162の高さは、高さH1であるとする。また、第二スタータ160の全長は、長さL1であるとする。また、第二凸部163の高さは、高さH2よりも低い高さH3(例えば8mm)であるとする。
【0039】
次に図4(c)を用いて、第三スタータ170の構成について説明する。第三スタータ170は、第一スタータ150と略同様の構成を有する。具体的には、第三スタータ170は、第一スタータ150の第一固定部151、第一支持部152及び第一凸部153と、それぞれ略同様の構成(機能)を有する第三固定部171、第三支持部172及び第三凸部173を具備する。
【0040】
なお、第三支持部172の高さは、高さH1であるとする。また、第三スタータ170の全長は、長さL1よりも短い長さL2(例えば30mm)であるとする。また、第三凸部173の高さは、高さH2であるとする。
【0041】
このように、3種類のスタータ140(第一スタータ150、第二スタータ160及び第三スタータ170)は、概ね同様の形状を有するものの、互いに全長(前後方向に沿った最も長い部分の長さ)や凸部の高さが異なっている。具体的には、3種類のスタータ140は、2種類の全長(長さL1及びL2)を有し、2種類の凸部の高さ(高さH2及びH3)を有する。なお、以下の説明において特に断りが無ければ、図2等に示す外壁パネル100に使用されているスタータ140は、第一スタータ150であるものとする。
【0042】
以下では、図1図5から図7を用いて、冶具1の構成について説明する。
【0043】
なお後述するように、冶具1は、外壁パネル100に外壁面材120が取り付けられる前に使用される。したがって、例えば図6(b)等のように、外壁パネル100に取り付けられた冶具1を示す図面においては、外壁面材120が図示されていない。
【0044】
冶具1は、上述の如く外壁パネル100に設けられる透湿防水シート130の切断作業を補助するものである。冶具1は、金属製の材料により形成される。冶具1の重量は、約2kgに形成される。冶具1は、取付部10、切断補助部20及び取手部30を具備する。
【0045】
取付部10は、冶具1の使用時に、第一スタータ150に取り付けられる部分である(図7参照)。取付部10は、側面視で略矩形状の板状の部材により形成される。取付部10は、互いに離間して左右一対設けられる。左側の取付部10は、冶具1の長手方向中央部よりも左方に設けられる。また、右側の取付部10は、冶具1の長手方向中央部よりも右方に設けられる。取付部10は、当接部11及び切欠き12を具備する。
【0046】
図6及び図7に示す当接部11は、取付部10が第一スタータ150に取り付けられた場合に、透湿防水シート130を介して鋼製フレーム110と当接する部分である。当接部11は、取付部10の下面により形成される。当接部11は、前後方向に沿った直線状に形成される。当接部11は、後述する切欠き12を介して、互いに離間するように前後一対設けられる。後側の当接部11の前後方向の長さは、長さL3(例えば15mm)に形成される。
【0047】
このように、後側の当接部11の前後方向の長さは、第一スタータ150の後端部から外壁面材120の後端部まで(図3(a)にAで示す部分)の長さと同一に形成される。こうして、取付部10が第一スタータ150に取り付けられた場合、取付部10の後端部は、外壁面材120の後端部と前後方向位置が同一となるように形成される。なお後述するように、冶具1は、外壁パネル100に外壁面材120が取り付けられる前に使用されるため、実際に冶具1と外壁パネル100とが同時に配置される場合はない。
【0048】
図1図6及び図7に示す切欠き12は、第一スタータ150を嵌め込むことで、取付部10(ひいては、冶具1)を第一スタータ150(ひいては、外壁パネル100)に取り付けるものである。切欠き12は、取付部10を左右方向に貫通すると共に下方へ開口するように形成される。すなわち、切欠き12は、取付部10の下端部に開口13を有する。図6(a)に示すように、切欠き12は、前壁部14、後壁部15及び上壁部16により形成される。
【0049】
前壁部14は、切欠き12の前端部を形成する部分である。前壁部14は、取付部10の下端部から上方へ向けて、直線状に延びるように形成される。前壁部14の高さは、高さH2よりも若干(クリアランス分だけ)高い高さH2a(例えば16mm)に形成される。
【0050】
後壁部15は、切欠き12の後端部を形成する部分である。後壁部15は、取付部10の下端部から上方へ向けて、直線状に延びるように形成される。後壁部15の高さは、高さH1に形成される。後壁部15は、前壁部14と互いに平行となり、前後方向に対向するように形成される。こうして、後壁部15の下端部は、前壁部14の下端部と共に、切欠き12の開口13を形成する。なお、開口13の前後方向の長さは、長さL1よりも若干(クリアランス分だけ)長い長さL1a(例えば41mm)に形成される。
【0051】
上壁部16は、切欠き12の上端部を形成する部分である。上壁部16は、切欠き12の開口13と上下方向に対向するように形成される。上壁部16は、前壁部14の上端部と後壁部15の上端部とを結ぶように形成される。上壁部16は、後端部近傍の部分(以下では「後側上壁部16b」と称する)の高さが、その他の部分(以下では「前側上壁部16a」と称する)の高さよりも高くなるような段差状に形成される。前側上壁部16aは、前壁部14の上端部から後方へ向けて、直線状に延びるように形成される。後側上壁部16bは、後壁部15の上端部から前方へ向けて、直線状に延びるように形成される。
【0052】
こうして、図6(b)に示すように、切欠き12は、第一スタータ150の全体を上方から収容可能に形成される。すなわち、取付部10は、切欠き12により第一スタータ150を嵌め込み可能(第一スタータ150に取り付け可能)に形成される。
【0053】
また、切欠き12の前壁部14、後壁部15及び上壁部16(より詳細には、前側上壁部16a)は、上述の如き大きさ(長さや高さ)を有するため、それぞれ第一スタータ150の第一固定部151の前端部、第一支持部152の後端部及び第一凸部153の上端部と当接される。こうして、切欠き12は、第一スタータ150の前後方向両側及び上側とそれぞれ当接されるため、冶具1が第一スタータ150に取り付けられた場合(すなわち、切欠き12に第一スタータ150が嵌め込まれた場合)、当該第一スタータ150に対する冶具1のがたつきを抑制することができる。
【0054】
また、図6(b)に示すように、冶具1が第一スタータ150に取り付けられた場合、取付部10の当接部11(すわわち、取付部10の下面)が透湿防水シート130を介して鋼製フレーム110と当接される。これにより、冶具1の第一スタータ150への取り付け状態を安定させることができ、当該第一スタータ150に対する冶具1のがたつきを効果的に抑制することができる。さらに、当接部11は、互いに離間するように前後一対設けられるため、第一スタータ150に対する冶具1のがたつきを効果的に抑制することができる。
【0055】
また、取付部10は、上述の如く左右一対設けられる。こうして、冶具1が第一スタータ150に取り付けられる場合に、左右方向に離間した2つの切欠き12に第一スタータ150が嵌め込まれるため、当該第一スタータ150に対する冶具1のがたつきを効果的に抑制することができる。
【0056】
切断補助部20は、透湿防水シート130の切断作業を補助する部分である。切断補助部20は、金属製の細長い平板状の部材を適宜屈曲させて形成される。切断補助部20は、側面視で略L字状に形成される。切断補助部20の長手方向(左右方向)の長さは、第一スタータ150の長手方向(左右方向)の長さよりも長くなるように形成される(図7参照)。切断補助部20は、固定部21及び補助部22を具備する。
【0057】
固定部21は、取付部10が固定される部分である。固定部21は、切断補助部20のうち前端部に位置する。固定部21は、細長い平板状に形成される。固定部21は、長手方向を左右方向へ向けて形成される。固定部21は、側面視で上方へ立ち上がるように形成される。固定部21の前面は、左右一対の取付部10の後面とそれぞれ当接され、溶接等により互いに固定される。
【0058】
補助部22は、透湿防水シート130の切断作業の際に、カッター等の工具の刃を沿わせる部分である。補助部22は、細長い平板状に形成される。補助部22は、長手方向を左右方向へ向けて形成される。補助部22は、側面視で固定部21の下端部から前方へ延びるように形成される。補助部22の前面は、取付部10の後面と当接される。すなわち、補助部22の前端部は、取付部10の後端部と前後方向位置が同一となるように形成される。補助部22の下端部は、取付部10の当接部11(下面)と面一となるように形成される。補助部22の後面は、左右方向に直線状に延びるように形成される。
【0059】
また、上述の如く、補助部22の前端部(前面)は、取付部10の後端部(後面)と前後方向位置が同一である。また、取付部10の後端部(後面)は、外壁面材120の後端部(後面)と前後方向位置が同一である。すなわち、補助部22の前端部(前面)は、外壁面材120の後端部(後面)と前後方向位置が同一となるように形成される。また、さらに、補助部22の前後方向の長さは、透湿防水シート130の貼り出し長さと同一(長さL4)に形成される。
【0060】
こうして、補助部22の後端部は、前後方向において、透湿防水シート130の貼り出し位置に位置することとなる。そして、補助部22の後面は、貼り出し位置において、左右方向(すなわち、透湿防水シート130を切断する方向)に直線状に延びるように形成される。このように、補助部22の後端部(後面)は、貼り出し位置において、透湿防水シート130を切断する方向(左右方向)に沿った外縁を形成している。
【0061】
取手部30は、冶具1を使用する作業者が把持する部分である。取手部30は、冶具1の長手方向中央部に設けられる。取手部30は、金属製の棒状部材を適宜屈曲させて形成される。取手部30は、図5に示すように、背面視で下方に開口するコの字状に形成される。取手部30は、固定部21の前面及び補助部22の上面と当接され、溶接等により互いに固定される。
【0062】
以下では、図8及び図9を用いて、上述の如く構成された冶具1の使用方法について説明する。
【0063】
透湿防水シート130の切断作業は、外壁パネル100に外壁面材120が取り付けられる前に行われる。すなわち、冶具1は、外壁パネル100に外壁面材120が取り付けられていない状態で使用される。なお以下の説明では、切断作業が行われる前、透湿防水シート130は、必要な貼り出し長さ(長さL4)以上の長さで、鋼製フレーム110の後端部から後方に貼り出しているものとする。
【0064】
図8(a)に示すように、まず作業者は、冶具1を第一スタータ150に上方から取り付ける。この際、作業者は、取手部30を把持して冶具1を移動させる。こうして、取付部10の切欠き12に第一スタータ150が嵌め込まれると、冶具1が外壁パネル100に取り付けられることとなる(図7参照)。この状態においては、上述の如く、切欠き12の前壁部14、後壁部15及び上壁部16(より詳細には、前側上壁部16a)がそれぞれ第一スタータ150と当接され、また取付部10の当接部11が透湿防水シート130を介して鋼製フレーム110と当接され、当該第一スタータ150(すなわち、鋼製フレーム110)に対する冶具1のがたつきが抑制される(図6(b)参照)。
【0065】
次に、図8(b)に示すように、作業者は、透湿防水シート130の後端部を掴んで上方へ引き上げる。こうして、透湿防水シート130において、鋼製フレーム110の後端部よりも後方に貼り出している部分のうち一部が、冶具1の切断補助部20(より詳細には、補助部22)の下面で張られた状態で当接される。ここで、上述の如く、補助部22の後端部は、透湿防水シート130の貼り出し位置に位置している。すなわち、透湿防水シート130において、鋼製フレーム110の後端部よりも後方に貼り出している部分のうち、補助部22の下面に当接された部分が必要な部分に相当し、補助部22よりも後方の部分は不要な部分に相当する。
【0066】
次に、図9(a)に示すように、作業者は、カッター等の工具の刃を補助部22の後面に沿わせて、透湿防水シートを切断する。このように、作業者は、例えばフリーハンドではなく工具の刃を補助部22の後面に沿わせることで、貼り出し位置において、透湿防水シート130を寸法の不揃いが発生しないよう、精度よく切断することができる。こうして、作業者は、透湿防水シート130の過不足の無い必要な貼り出し長さを、容易に得ることができる。
【0067】
また、冶具1の重量は、上述の如く約2kgである。これにより、冶具1は、作業者が一人で持ち上げ、第一スタータ150へ取り付けることができる。また、冶具1は、作業者が一人で持ち上げることができるものの、一旦取り付けてしまうと容易に位置ずれし難くすることができる。こうして、冶具1は、適度な重量を有するため、作業者が工具の刃を補助部22の後面に沿わせる場合に、位置ずれし難く、寸法の不揃いを発生し難くすることができる。
【0068】
次に、図9(b)に示すように、作業者は、冶具1を第一スタータ150から取り外す。すなわち、作業者は、取手部30を把持し、冶具1を上方へ持ち上げる。これにより、冶具1を、容易に第一スタータ150から取り外すことができる。こうして、冶具1が第一スタータ150から取り外されると、透湿防水シート130の切断作業が終了する。
【0069】
そして、切断作業が終了すると、次に外壁パネル100に外壁面材120が取り付けられる。このように、切断作業が終了した後に外壁面材120が取り付けられるため、切断作業の際に、例えば工具が当たる等して外壁面材120が傷付くのを防止することができる。
【0070】
なお上述の如く、本実施形態に係る外壁パネル100においては、3種類のスタータ140が、建物の仕様に応じて任意に使用される。以下では、外壁パネル100に第一スタータ150ではなく、第二スタータ160が使用された場合において、当該第二スタータ160に取り付けた状態の冶具1について説明する。
【0071】
図10(a)に示すように、冶具1は、切欠き12により第二スタータ160の全体を上方から収容可能に形成される。すなわち、取付部10は、切欠き12により第二スタータ160を嵌め込み可能(第二スタータ160に取り付け可能)に形成される。また、切欠き12の前壁部14及び後壁部15は、上述の如き大きさ(長さや高さ)を有するため、それぞれ第二スタータ160の第二固定部161の前端部及び第二支持部162の後端部と当接される。こうして、切欠き12は、第二スタータ160の前後方向両側とそれぞれ当接される。すなわち、冶具1が第二スタータ160に取り付けられた場合、(第一スタータ150の場合とは異なり、第二凸部163とは当接しないものの)2箇所で当接されるため、当該第二スタータ160に対する冶具1のがたつきを効果的に抑制することができる。
【0072】
次に、外壁パネル100に第一スタータ150ではなく、第三スタータ170が使用された場合において、当該第三スタータ170に取り付けた状態の冶具1について説明する。
【0073】
図10(b)に示すように、冶具1は、切欠き12により第三スタータ170の全体を上方から収容可能に形成される。すなわち、取付部10は、切欠き12により第三スタータ170を嵌め込み可能(第三スタータ170に取り付け可能)に形成される。また、切欠き12の後壁部15及び上壁部16(より詳細には、前側上壁部16a)は、上述の如き大きさ(長さや高さ)を有するため、それぞれ第三スタータ170の第三支持部172の後端部及び第三凸部173の上端部と当接される。こうして、冶具1が第三スタータ170に取り付けられた場合、(第一スタータ150の場合とは異なり、第一固定部151の前端部とは当接しないものの)2箇所で当接されるため、当該第三スタータ170に対する冶具1のがたつきを効果的に抑制することができる。
【0074】
このように、冶具1は、切欠き12の形状を対応させることにより、互いに異なる全長(長さL1及びL2)や凸部の高さ(高さH2及びH3)を有する3種類のスタータ140に対して使用することができる。これにより、スタータ140の種類ごとに切欠きの形状の異なる冶具1を容易する必要がないため、作業効率の向上を図ることができる。
【0075】
以上の如く、本実施形態に係る冶具1は、
鋼製フレーム110(壁下地)と当該鋼製フレーム110(壁下地)に固定されたスタータ140(取付金具)との間に設けられた透湿防水シート130(シート状部材)を、当該スタータ140(取付金具)に取り付けられる外壁面材120(面材)から貼り出した貼り出し位置(切断位置)で切断する作業に用いられ、
前記貼り出し位置(切断位置)で前記透湿防水シート130(シート状部材)を切断する方向に沿った外縁を有する切断補助部20と、
前記切断補助部20に固定されると共に前記スタータ140(取付金具)に脱着可能に形成された取付部10と、
を具備するものである。
このように構成することにより、外壁面材120を傷付けることなく透湿防水シート130(シート状部材)を精度よく切断することができる。
【0076】
また、前記取付部10は、
前記スタータ140(取付金具)に取り付けられた場合に、前記透湿防水シート130(シート状部材)を介して前記鋼製フレーム110(壁下地)と当接するための当接部11(第一当接部)を有するものである。
このように構成することにより、透湿防水シート130(シート状部材)をより精度よく切断することができる。
【0077】
また、前記取付部10は、
前記鋼製フレーム110(壁下地)側に開口13が形成された切欠き12を有し、
前記切欠き12に前記開口13から前記スタータ140(取付金具)を嵌め込むことにより脱着可能に形成されるものである。
このように構成することにより、作業者が容易に冶具1の脱着を行うことができるため、作業性の向上を図ることができる。
【0078】
また、前記切欠き12は、
前記開口13を構成する一側及び他側の壁部により形成され、前記スタータ140(取付金具)を嵌め込んだ状態で前記スタータ140(取付金具)に当接するための前壁部14及び後壁部15(第二当接部)を有するものである。
このように構成することにより、透湿防水シート130(シート状部材)をより精度よく切断することができる。
【0079】
また、前記切欠き12は、
前記開口13と対向するように設けられた壁部により形成され、前記スタータ140(取付金具)を嵌め込んだ状態で前記スタータ140(取付金具)に当接するための上壁部16(第三当接部)を有するものである。
このように構成することにより、透湿防水シート130(シート状部材)をより精度よく切断することができる。
【0080】
また、前記スタータ140(取付金具)は、スタータである。
このように構成することにより、冶具1をスタータ140に取り付けることによって、透湿防水シート130(シート状部材)をより精度よく切断することができる。
【0081】
また、本実施形態において、冶具1は、スタータ140(取付金具)に当接するための前壁部14及び後壁部15(第二当接部)と、スタータ140(取付金具)に当接するための上壁部16(第三当接部)と、を有する。すなわち、冶具1は、前後方向両側又は一方側から、また上方からという複数の方向から(すなわち、複数の部分で)スタータ140と当接することができる。こうして、複数の部分(当接部)のうち、(より多くの部分が望ましいものの)少なくとも1以上の部分をスタータ140と当接させることにより、ある程度の冶具1の位置ずれを防止することができるため、冶具1を複数種類のスタータ140に対して使用することができる。こうして、作業性の向上を図ることができる。
【0082】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0083】
例えば、本実施形態に係る建物として、建築に使用される部材が標準化された建物を想定しているとしたが、これに限定するものではない。一般的な、マンションや戸建住宅等に採用することもできる。
【0084】
また、外壁パネル100の壁下地は、鋼製フレーム110であるものとしたが、これに限定するものではなく、木製フレーム等、種々の材料を採用することができる。また、外壁パネル100において、シート状部材を透湿防水シート130として説明を行ったが、シート状部材が有する性質は、透湿防水シート130のもの(湿気(水蒸気)のみを通し、水を通さない性質)に限定するものではない。
【0085】
また、冶具1やスタータ140のサイズや形状は、本実施形態のものに限定するものではない。例えば冶具1は、切欠き12の形状も変更することができる。また、冶具1において、取付部10は2つ設けられるとしたが、3つ以上であっても、1つであってもよい。また、取付部10は溶接等により切断補助部20に固定されるものとしたが、取り外し可能に取り付けらてもよい。これによれば、取付部10は同じものを用いて、外壁パネル100の幅に応じて異なる長さの切断補助部20を使用することができるため、作業性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 冶具
10 取付部
20 切断補助部
110 鋼製フレーム
120 外壁面材
130 透湿防水シート
140 スタータ
図1
図2
図3
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図5
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図8
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