(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142715
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/22 20060101AFI20220922BHJP
B29C 45/64 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B29C33/22
B29C45/64
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164268
(22)【出願日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2021042838
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】塚本 淳
(72)【発明者】
【氏名】福本 健二
(72)【発明者】
【氏名】神野 鎮緒
(72)【発明者】
【氏名】田島 久良
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕記
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202CA11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CL01
4F202CL12
4F202CL16
4F202CL42
4F202CL44
4F202CL48
(57)【要約】
【課題】 装置の構造が比較的簡単なものとなるか、またはより安定的に第2の係合部材に力を加えてタイバの軸方向に変位させることの可能な成形装置を提供する。
【解決手段】 成形装置1は、固定盤312、可動盤314のいずれかに連設され係合溝321を備えたタイバ319と、タイバ319の係合溝321に対して係合・離脱される第1の係合部材324と、タイバ319の係合溝321に対して係合・離脱されるとともにタイバ319の軸方向Lにも変位可能な第2の係合部材327と、前記第2の係合部材327に対して第1の係合部材324とは反対側に配置され、タイバ319が挿通される貫通孔510と第2の係合部材327を押圧する押圧面511を備えた力伝達部材507と、前記力伝達部材507を介して前記第2の係合部材327を前記第1の係合部材324に対してタイバ319の軸方向に変位可能な駆動機構502等を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型が取り付けられる固定盤に対して可動金型が取り付けられる可動盤を型開閉方向に移動させる型開閉機構と、前記固定金型と可動金型を型締する型締機構を備えた成形装置において、
前記固定盤、前記可動盤のいずれかに連設され係合溝を備えたタイバと、
前記タイバの係合溝に対して係合・離脱される第1の係合部材と、
前記タイバの係合溝に対して係合・離脱されるとともにタイバの軸方向にも変位可能な第2の係合部材と、
前記第2の係合部材に対して第1の係合部材とは反対側に配置され、タイバが挿通される貫通孔と第2の係合部材を押圧する押圧面を備えた力伝達部材と、
前記力伝達部材を介して前記第2の係合部材を前記第1の係合部材に対してタイバの軸方向に変位可能な駆動機構と、を備える、成形装置。
【請求項2】
固定金型が取り付けられる固定盤に対して可動金型が取り付けられる可動盤を型開閉方向に移動させる型開閉機構と、前記固定金型と可動金型を型締する型締機構を備えた成形装置において、
前記固定盤、前記可動盤のいずれかに連設され係合溝を備えたタイバと、
前記タイバの係合溝に対して係合・離脱される第1の係合部材と、
前記タイバの係合溝に対して係合・離脱されるとともにタイバの軸方向にも変位可能な第2の係合部材と、
タイバの軸方向に直交する断面の内周形状が円または円弧の部分を含む力伝達部材を備え前記第2の係合部材に力を伝達して該第2の係合部材を前記第1の係合部材に対してタイバの軸方向に変位可能な駆動機構と、を備える、成形装置。
【請求項3】
前記駆動機構のアクチュエータは油圧シリンダであり、力伝達部材は円筒形状である、請求項2に記載の成形装置。
【請求項4】
固定金型が取り付けられる固定盤に対して可動金型が取り付けられる可動盤を型開閉方向に移動させる型開閉機構と、前記固定金型と可動金型を型締する型締機構を備えた成形装置において、
前記固定盤、前記可動盤のいずれかに連設され係合溝を備えたタイバと、
前記タイバの係合溝に対して係合・離脱される第1の係合部材と、
前記タイバの係合溝に対して係合・離脱されるとともにタイバの軸方向にも変位可能な第2の係合部材と、
前記第2の係合部材に直接固着されていない力伝達部材を備え前記第2の係合部材を押圧した際に該第2の係合部材を前記第1の係合部材に対してタイバの軸方向に変位可能な駆動機構と、を備える、成形装置。
【請求項5】
前記駆動機構は前記固定盤または前記可動盤に固定的に取り付けられ、前記タイバの係合溝に対して係合・離脱方向には移動されない、請求項3または請求項4に記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定金型が取り付けられる固定盤に対して可動金型が取り付けられる可動盤を型開閉方向に移動させる型開閉機構と、前記固定金型と可動金型を型締する型締機構を備えた成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固定金型が取り付けられる固定盤に対して可動金型が取り付けられる可動盤を型開閉方向に移動させる型開閉機構と、前記固定金型と可動金型を型締する型締機構を備えた成形装置については、タイバの係合溝に対して係合・離脱される係合部材が設けられ、係合部材がタイバの係合溝に係合された状態で型締機構により型締またはプレスが行われる。しかしながら係合溝と係合部材の間には僅かな隙間(バックラッシ)が存在することから、前記バックラッシが圧縮成形やコアバック成形などの分野では成形品の精度に影響を与える場合がある。前記バックラッシを除去、或いは固定化して無効にするものとして特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1は、[請求項1]にも記載されるように、タイバーのねじ若しくはリング溝と係脱する型締用半割ナットを備えた型締装置において、型締用半割ナットに対して、タイバー軸方向には拘束されて、半割ナット開閉方向に相対動作が可能なもう一対の追加半割部材を追加し、前記型締用半割ナットが閉止して、ねじ若しくはリング溝を介してタイバーに噛合った時に、前記追加半割部材も閉止して前記タイバーを把持し、噛合部のガタ(バックラッシ)を除去、或いは固定化して無効にする手段を備えている。
【0004】
そして特許文献1の[
図5]等には、半割ナットに対して追加半割部材を可動盤の側の垂直プレートに設けたアクチュエータにより移動させる方式が記載されている。また特許文献の[
図6]等には、半割ナットに対して追加半割部材を可動盤とは反対側の垂直プレートに設けたアクチュエータにより移動させる方式が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の型締装置において追加半割部材を移動させるアクチュエータは、通常の油圧シリンダのロッドや電動モータにより作動されるねじ軸機構などの比較的断面積の小さい円筒状の軸部材で追加半割部材を移動させるものであり、追加半割部材全体に安定的に力を加えることが難しいものであった。または特許文献1の当該部分の構造は比較的複雑なものであった。
【0007】
本発明は、前記の問題を解決して装置の構造を比較的簡単なものとするか、またはより安定的に第2の係合部材に力を加えて第2の係合部材を第1の係合部材に対してタイバの軸方向に変位させることが可能な成形装置を提供することを目的とするものである。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態に係る成形装置は、固定金型が取り付けられる固定盤に対して可動金型が取り付けられる可動盤を型開閉方向に移動させる型開閉機構と、前記固定金型と可動金型を型締する型締機構を備えた成形装置において、
前記固定盤、前記可動盤のいずれかに連設され係合溝を備えたタイバと、前記タイバの係合溝に対して係合・離脱される第1の係合部材と、前記タイバの係合溝に対して係合・離脱されるとともにタイバの軸方向にも変位可能な第2の係合部材と、前記第2の係合部材に対して第1の係合部材とは反対側に配置され、タイバが挿通される貫通孔と第2の係合部材を押圧する押圧面を備えた力伝達部材と、前記力伝達部材を介して前記第2の係合部材を前記第1の係合部材に対してタイバの軸方向に変位可能な駆動機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の成形装置によれば、装置の構造が比較的簡単なものとなるか、またはより安定的に第2の係合部材に力を加えてタイバの軸方向に変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態の射出成形装置の側面図である。
【
図2】第1の実施形態の要部拡大図であり、係合機構を係合前の状態を示す説明図である。
【
図3】第1の実施形態の要部拡大図であり、コアバック制御時の状態を示す説明図である。
【
図5】第1の実施形態の前半部分の作動を示す説明図である。
【
図6】第1の実施形態の後半部分の作動を示す説明図である。
【
図8】第3の実施形態の要部拡大図であり、
図4と同様に
図1のAの方向から見た図である。
【
図9】第3の実施形態の要部拡大図であり、
図8のJ-J矢視図である。
【
図10】第3の実施形態の要部拡大図であり、
図8のK-K矢視図である。
【
図11】第3の実施形態の前半部分の作動を示す説明図である。
【
図12】第3の実施形態の後半部分の作動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
<射出成形装置>
【0012】
本発明の1実施形態の射出成形装置1について
図1を参照して説明する。
図1は射出成形装置の側面図である。成形装置の一種である射出成形装置1は、基台2上に型締装置3と射出装置4を備えている。型締装置3は、固定金型311が取り付けられる固定盤312に対して可動金型313が取り付けられる可動盤314を移動させる2基の型開閉機構315と固定金型311と可動金型313の型締を行う4基の型締機構316の型締シリンダ317を備えたものである(ただし
図1では手前側の型開閉機構315と型締機構316のみ記載)。また射出装置4は加熱シリンダ4a内部に図示しないスクリュ等を備え、発泡成形等の成形を可能とするものである。
【0013】
基台2上に固定される固定盤312の反金型取付面312a側の中央部には前記射出装置4のノズル4bを挿入するためのすり鉢部312bが設けられ、すり鉢部312bの中央には固定金型311に前記ノズル4bが接続される孔が設けられている。また固定盤312内部の四隅近傍には型締機構316の型締シリンダ317がそれぞれ設けられている。型締シリンダ317はピストン318の前進側のロッドが本発明の軸部材に相当するタイバ319を構成している。従って本発明では、固定盤312に軸部材のタイバ319が連接されている。なお第1の実施形態では型開側をタイバ319の前進側、型閉側をタイバ319の後退側と称する。型締シリンダ317は、ピストン318の前進側に型締側油室317aを備え、ピストン318の後退側に強力型開側油室317bを備えた復動シリンダである。また型締シリンダ317はバルブ、センサ、ポンプ、タンク等を備えた油圧装置320に接続されている。
【0014】
前記各タイバ319の外周の先端側近傍位置には、係合溝321が型開閉方向の所定の長さにわたって複数同じピッチの溝が形成されている。係合溝321は、
図2ないし
図4にも記載されるようにタイバ319の軸方向Lに対して直角方向に設けられた型締側当接面321aとタイバ319の軸方向Lに対して傾斜方向に設けられた強力型開側当接面321bとその間の軸方向Lと平行な底面321cを有する。ただし係合溝321の強力型開側当接面321bは軸方向Lに対して直角方向の面であってもよい。また係合溝321は連続するねじ溝であってもよい。そして各タイバ319は、可動盤314の四隅近傍に設けられた挿通孔322にそれぞれ挿通されている。なお型締装置3は基台2上の可動盤314の反金型取付面314a側に、前記可動盤314とは一定間隔を隔てて各タイバ319を保持するためのタイバホルダを設けてもよい。
【0015】
可動盤314における反金型取付面314aにおける四隅近傍の挿通孔322の両側には、係合機構323が各タイバ319に対応してそれぞれ配設されている。係合機構323はハーフナットとも呼ばれるものであり、本発明では第1の係合部材324と第2の係合部材327が備えられている。
【0016】
また基台2上には、固定金型311が取り付けられる固定盤312に対して可動金型313が取り付けられる可動盤314を近接・離間移動させる型開閉機構315が2基配設されている。型開閉機構315はサーボ機構を用いたものであり、第1の実施形態ではサーボモータ338とボールねじ機構339を用いられている。より具体的には基台2の上面のブラケットにサーボモータ338が固定され、サーボモータ338は位置検出機構であるロータリエンコーダ338aを備えている。またロータリエンコーダ338aを含むサーボモータ338はサーボアンプ342と制御装置343に接続されている。また制御装置343は前記油圧装置320とも接続されている。
【0017】
ボールねじ機構339のボールねじ340は基台2上のブラケットにボールねじ340の軸方向が型開閉方向に一致するように一端の側と他端の側がそれぞれベアリングを介して回転自在に取り付けられている。そしてサーボモータ338の駆動軸が、前記ボールねじ340に直接接続されるか、またはベルトを介して接続されており、ボールねじ340はサーボモータ338の駆動により回転自在となっている。また可動盤314の側面下部または下面にはブラケットを介してボールねじナット341がそれぞれ固定されており、前記ボールねじ340は前記ボールねじナット341にそれぞれ挿通されている。これらの機構により2基の型開閉機構315のサーボモータ338の駆動により可動盤314が型開閉方向にそれぞれ移動可能となっている。また可動盤314の位置はロータリエンコーダ338aにより検出され、可動盤314はサーボアンプ342等によりクローズドループ制御による速度制御(位置制御を含む)が行われる。なお型開閉機構315のサーボ機構は、サーボバルブを使用してクローズドループ制御可能な2本の油圧シリンダからなる機構等でもよい。
【0018】
また固定盤312に対する可動盤314の位置または固定金型311に対する可動金型313の位置は、前記ロータリエンコーダ338a以外のリニアスケールなどの位置検出機構により測定されるものでもよい。なお第1の実施機構のように基台2上に2基の型開閉機構315を配設することは重量物であるサーボモータ338やボールねじ機構339の配置や配線の点、またはそれに伴うコストの点で一定の合理性がある。ただし型開閉機構315は2基に限定されず、1基や他の複数基でもよい。
【0019】
型締装置3は、型締シリンダ317とは別にタイバ319を一定距離移動させるタイバ移動機構345をタイバ319の本数に対応して4基備えている(ただし
図1では2基のみが記載されている)。各型締シリンダ317のピストン318の後退側にはロッド349が固定され、前記ロッド349の先端には直角方向に結合板347がジョイント等を介してかまたは直接取り付けされている。また固定盤312の反金型取付面312aには複数のガイド棒348が前記ロッド349と平行方向に取り付けられ、前記ガイド棒348は結合板347に設けられた挿通孔に挿通されている。更に前記反金型取付面312aの前記ロッド349の両側にはタイバ移動シリンダ346が前記ロッド349と平行にそれぞれ取り付けられている。そして前記タイバ移動シリンダ346の反金型取付面側のロッド346aはそれぞれ結合板347に取り付けられ、前記ロッド349とロッド346aは一体に連結されている。
【0020】
タイバ移動シリンダ346は両ロッドタイプの油圧シリンダであり、金型取付面312c側にも図示しないロッドを備え、両方の油室の増圧面の面積は同じ面積となっている。前記タイバ移動シリンダ346は油圧装置320に接続され、クローズドループ制御により流量制御可能なバルブ344を介して作動油が供給され制御されるようになっている。流量制御可能なバルブ344は、サーボバルブであってもよく、他の可変流量制御バルブであってもよい。タイバ移動機構345は、これら機構を備え、タイバ移動シリンダ346の作動により結合板347がガイド棒348にガイドされて前進および後退方向に移動され、同時に結合板347に接続されるロッド349、ピストン318、タイバ319も前進および後退方向に移動される。また固定盤312と結合板347の間には、リニアスケール等の位置センサ350が取り付けられ、固定盤312に対するタイバ319の位置は位置センサにより測定可能となっている。なおタイバ移動機構345に油圧機構を採用する場合は、タイバ移動シリンダの数は限定されず、固定盤312内に油圧シリンダを設けてもよい。またタイバ移動機構345はクローズドループ制御により制御(位置制御または速度制御)されるものであれば、電動機構を採用してもよい。その場合サーボモータとボールねじ機構を用いたものでもよく、更にはトグル機構やクサビ機構を併用したものでもよい。
<係合機構>
【0021】
次に
図2ないし
図4を参照して係合機構323について説明する。
図2は、第1の実施形態の要部拡大図であり、係合機構を係合前の状態を示す説明図である。
図3は、第1の実施形態の要部拡大図であり、コバック制御時の状態を示す説明図である。
図4は、
図1のAの方向から見た要部拡大図である。
【0022】
可動盤314の前記挿通孔322の両側には係合機構323のケースを構成する保持部材351,352が固定されている。そして保持部材351,352の内側の可動盤314に相対的に近い側のガイド部351a,352aに挟まれる形で第1の係合部材324が設けられている。第1の係合部材324は、一対の324a,324bからなる。前記保持部材351,352の上端同士を接続する形で結合部353が設けられ、前記結合部に353には係合機構323を開閉方向に駆動する駆動機構のアクチュエータである油圧シリンダ325が取り付けられ、そのロッド325aが第1の係合部材324aの後部に固定されている。即ち本発明の駆動機構は固定盤312または可動盤314に固定的に取り付けられている。
【0023】
また同様に保持部材351,352の下端同士を接続する形で結合部354が設けられ、前記結合部に354には係合機構323を開閉方向に駆動するアクチュエータである油圧シリンダ325が取り付けられ、そのロッド325aが第1の係合部材324bの後部に固定されている。前記構造により油圧シリンダ325,325の作動によりで一対の係合部材324a,324bはタイバ319の係合溝321に対して進退可能となっている。なお係合機構323を開閉方向に駆動するアクチュエータは、サーボモータ等の電動モータを用いたものでもよい。また係合機構323の開閉方向に駆動するアクチュエータは、複数の係合機構323を一つの油圧シリンダや電動モータ等のアクチュエータにより作動させるものでもよく限定されない。複数の係合機構323を一つの油圧シリンダや電動モータ等のアクチュエータにより作動させる場合、水平方向に隣り合う係合機構323を一つのアクチュエータで作動させてもよく、垂直方向に隣り合う係合機構323を一つのアクチュエータで作動させてもよい。
【0024】
係合機構323の第1の係合部材324の第1の係合部材324aと第1の係合部材324bはブロック状のナット部材から構成されており、タイバ319と対向する内周部にそれぞれ複数の係合歯326が形成されている。前記第1の係合部材324a,324bの係合歯326の形状は、タイバ319の型締側当接面321aと強力型開側当接面321bに対応してタイバ319の軸方向Lに対して直角方向に設けられた型締側当接面326aと軸方向に傾斜方向に設けられた強力型開側当接面326bを備えている。また第1の係合部材324aの内周部の両側の下面部分は平面部となっており、第1の係合部材324aと第1の係合部材324bが閉鎖された際に、第1の係合部材324bの平面部と当接または僅かな距離を隔てて対向される部分となっている。そして第1の係合部材324a,324bは、駆動機構の油圧シリンダ325の作動による前進時に可動盤314をタイバ319の係合溝321に対して係合歯326が係合可能となっている。なお第1の係合部材324a,324bの係合歯326の形状は、タイバ319の係合溝321の形状に対応した形状であればよく、強力型開側当接面326bは垂直面でもよい。また係合機構323のタイバ319に対する開閉方向は、
図1のように上下方向に一対の第1の係合部材324a,324bが移動するものの他、水平方向等に開閉移動するものでもよい。
【0025】
更に
図2、
図3に示されるように、保持部材351,352の内側の可動盤314から相対的に遠い側の摺動面に挟まれる形で本発明の係合機構323である第2の係合部材327がそれぞれ配設されている。第2の係合部材327の第2の係合部材327aと第2の係合部材327bは、ブロック状のナット部材から構成され、タイバ319の係合溝321と対向する側に第1の係合部材324a,324bと同様の係合歯328を備えている。即ち第2の係合部材327a,327bの係合歯328は、タイバ319の軸方向Lに対して直角方向に設けられた型締側当接面328aと軸方向に傾斜方向に設けられた強力型開側当接面328bを備えている。また第2の係合部材327aの内周部の両側の下面部分は平面部327a3となっており、第2の係合部材327aと第2の係合部材327bが閉鎖された際に、第2の係合部材327bの平面部と当接される部分となっている。なお
図2、
図3では係合機構323の第1の係合部材324や第2の係合部材327の係合歯の数は判りやすく説明するために実際よりも少ない数が記載されている。しかしながら第1の係合部材324の係合歯326の数よりも第2の係合部材327の係合歯328の数を少なく設けることが殆どである。
【0026】
第1の係合部材324と、第2の係合部材327の関係については、上下の係合部材同士はそれぞれ同じ形状であるので片方の係合部材324a,327a同士の関係について説明する。第2の係合部材327の第2の係合部材327aは、第1の係合部材324の第1の係合部材324aに対して、タイバ319の軸方向Lに変位可能となっている。より具体的には第1の係合部材324aの側面324a1には円柱状の連結ガイド棒329がタイバ319の軸方向Lに向けて固定され、連結ガイド棒329の先端は他方の第2の係合部材327aの側面327a1からタイバ319の軸方向Lに向けて形成されたガイド孔330に挿入されている。また第1の係合部材324aと第2の係合部材327aの間の連結ガイド棒329の外周にはバネ331が取り付けられ、バネ331の端面はそれぞれ第1の係合部材324aの側面324a1と第2の係合部材327aの側面327a1に当接されている。なおこれら係合部材324a,327a同士の間に連結ガイド棒329とバネ331のセットの数は限定されないが複数本設けることが望ましい。また連結ガイド棒329とバネ331は別の位置に設けてもよい。また第2の係合部材327aに連結ガイド棒を取り付け、第1の係合部材324aにガイド孔を設けてもよい。
【0027】
これらの機構により係合機構323のアクチュエータである油圧シリンダ325のロッド325aを前進方向に作動させると第1の係合部材324aと、第2の係合部材327aが同時にタイバ319の係合溝321に向けて前進移動される。また反対に油圧シリンダ325のロッド325aを退縮方向に作動させると第1の係合部材324aと、第2の係合部材327aが同時にタイバ319の係合溝321から離脱方向に後退移動される。なお第1の係合部材324aと第2の係合部材327aは連結ガイド棒329により連結せずに、第2の係合部材327についてもタイバ319の係合溝321に向けて前後進移動させる専用の駆動機構を設けてもよい。その場合の駆動機構の種類や数は限定されない。
【0028】
更に可動盤314と一体の保持部材351,352の先端側(可動盤314から相対的に遠い側)には、第2の係合部材327を第1の係合部材324に対してタイバ319の軸方向Lに変位可能な駆動機構のアクチュエータが取り付けられるブロック332が固定されている。従ってブロック332自体は、可動盤314に対してタイバ319の軸方向Lにも軸方向Lと直角方向にも移動しない。前記ブロック332内のタイバ319が挿通される側には前記アクチュエータに相当する油圧シリンダ333が設けられている。油圧シリンダ333は、復動タイプのシリンダであり、そのロッドである力伝達部材334のタイバ319の軸方向Lと直交する断面Mの断面形状は、
図4に示されるように所定幅を備えたリング状となっている。また油圧シリンダ333の前進側油室333aおよび後退側油室333bを形成するピストン335の増圧面の形状も同じく
図4に示されるように所定幅を備えたリング状となっている。また力伝達部材334は油圧シリンダ333のピストン335を挟んで両側に延びており、前方側も後方側も同じ断面形状をしている。そして力伝達部材334の外周部356とブロック332の内孔との間にはリング状のシール部材が嵌められ、前進側油室333aおよび後退側油室333bの作動油が漏れないようにシールされている。この構造により油圧シリンダ333は構造が単純化でき、作動油の漏れも起きにくい構造となっている。
【0029】
図4に示されるように円筒形状のシリンダロッドである力伝達部材334の内周面336は、タイバ319が挿通される孔となっている。そして前記内周面336の直径はタイバ319の外周の直径よりも僅かに大きくなっており、タイバ319の係合溝321の凸部頂面321dの外周と前記力伝達部材334の内周面336は僅かな間隔を隔てて対向している。本実施形態の力伝達部材334のタイバ319の軸方向Lに直交する断面Mの内周形状は、円形となっている。従って前記内周面336の形状は、タイバ319の外周形状に対して少なくとも略相似形の部分を備えていると言える。上記構造の前記駆動機構の油圧シリンダ333は、タイバ319の係合溝321に対して係合・離脱方向には移動されない。
【0030】
ただし力伝達部材334の内周面336のタイバ319の軸方向Lと直交する方向の断面Mの断面形状は完全に真円ではなくてもよく、断面形状が楕円やスプライン溝が形成された円形のものなどでもよい。またアクチュエータの力伝達部材334の断面形状は、リングの一部に切れ目があるものであり内周部の断面形状が円弧状のものでもよい。または二つの油圧シリンダ333が略半円状または扇状で所定幅を備えた断面形状であって内周部に円弧面を備えた2つの力伝達部材(シリンダロッドに相当する部分)を備えており、それぞれの力伝達部材が別々の第2の係合部材327a,327bを押圧して力を伝達するものでもよい。力伝達部材334の内周面336の断面形状が円弧の場合、複数の曲率の円弧であってもよく、また過半の部分において円弧の形状であれば一部に円弧の形状ではない直線等の部分を備えていてもよい。またはこの部分用いられるアクチュエータは、請求項3に対応する場合は、一般的な円形のロッドを備えた単動や複動の油圧シリンダであってもよく、サーボモータ等の電動モータや電動シリンダを備えたものでもよい。電動モータや電動シリンダをアクチュエータとして使用する場合の駆動機構の力伝達部材の形状は円筒形状であってもよく、力伝達部材のタイバ319の軸方向Lに直交する断面Mの内周形状が円または円弧の部分を含むものでもよい。
【0031】
前記油圧シリンダ333の円筒形状の力伝達部材334の先端面は、第2の係合部材327a,327bの反可動盤側の側面327a2と平行な平面からなる当接面337となっている。そして前記当接面337は、前記第2の係合部材327aの反可動盤側の側面327a2とは結合されておらず、力伝達部材334が後退した際には両者の間に隙間が形成されるようになっている。そのため油圧シリンダ333および力伝達部材334はタイバ319の軸方向Lと直交する方向には移動しないが、第2の係合部材327a,327bのみが第1の係合部材324a,324bと共にタイバの319係合溝321に向けて進退移動可能となっている。そして力伝達部材334は、第2の係合部材327a,327bに直接固着されておらず、第2の係合部材327a,327bの側面327a2,327b2を力伝達部材334が押圧した際に第2の係合部材327a,327bを第1の係合部材324a,324bに対してタイバの軸方向に移動できる。また力伝達部材334が第2の係合部材327a、327bを押圧していない場合は、第2の係合部材327a,327bはバネ331の弾発力により元の位置に復帰する。前記において力伝達部材334は、第2の係合部材327a,327bに直接固着されていない状態とは、力伝達部材334の当接面337が常時第2の係合部材327a、327bと当接され摺動可能なものでもよい。またタイバ319の軸方向Lと直角方向には移動しない力伝達部材334に対して、第2の係合部材327a、327bがタイバの係合溝に対して係合・離脱されるように移動可能なものであれば、力伝達部材334と第2の係合部材327a、327bは係合関係にあるものでもよい。
【0032】
<型締装置の制御方法と発泡成形品の成形方法>
次に第1の実施形態の射出成形装置1の型締装置3の制御方法と発泡成形品の成形方法について
図2、
図3、
図5、および
図6を参照して説明する。なお
図5および
図6では説明を判りやすくするために、第1の係合部材324を構成する第1の係合部材324a,324b、第2の係合部材327を構成する第2の係合部材327a,327bともに実際には係合歯326、係合歯328の数は複数存在するが、それぞれ1個だけを記載している。第1の実施形態では、型締装置3に取り付けられる成形金型355はインロー金型とも呼ばれるものであり、キャビ型である固定金型311に対してコア型である可動金型313の型開閉方向の位置が変化してもキャビティCが容積変更された状態で保持されるものである。なお成形金型355は別の方式のコアバック成形が可能な金型でもよい。
【0033】
型締装置3の固定盤312と可動盤314に前記のようなコアバック制御が可能な成形金型355が取り付けられると次に成形金型355の型厚が測定される。そして成形金型355の型厚を参酌して可動盤314を型閉した際の係合機構323の位置に対して、タイバ319の係合溝321の位置が係合可能な位置となるように、タイバ移動機構345を作動させて型締機構316の型締シリンダ317のピストン318とタイバ319の位置が移動調整される。
【0034】
また射出装置4においては供給された発泡成形用の樹脂材料が加熱シリンダ4a内で可塑化され、準備される。本発明における発泡成形は、発泡剤を添加する化学発泡成形であってもよく、ガスを注入する物理発泡成形であってもよい。なお物理発泡成形には超臨界発泡成形も含まれる。
【0035】
<型締装置の作動>
型締装置の作動に関し、
図5は、第1の実施形態を前半部分の作動を示す説明図である。また
図6は、第1の実施形態を後半部分の作動を示す説明図である。型締装置3の作動は制御装置343からサーボアンプ342や油圧装置320等に指令信号が送られ開始される。まず可動盤314が後退した型開き状態から型開閉機構315のサーボモータ338の作動によりボールねじ340が回転され、ボールねじ340に挿通されるボールねじナット341が型開閉方向に移動されることにより、型開位置に停止していた可動盤314および可動金型313は、固定盤312および固定金型311に向けて移動される。その間の第1の係合部材324のナット部材と第2の係合部材327のナット部材の関係は、
図5(a)に示されるように、駆動機構である油圧シリンダ333の力伝達部材334は後退した位置にあり、先端の当接面337と第2の係合部材327aの反可動盤側の側面327a2は離隔した状態にある。ただし第2の係合部材327aを変位させる駆動機構のアクチュエータが単動シリンダの場合は力伝達部材334の当接面337と第2の係合部材327aの側面327a2は当接した状態が保たれる。この状態では第1の係合部材324aに対する第2の係合部材327aの位置関係は、バネ331が伸長して両者は最も離隔した状態にある。
【0036】
次に型開閉機構315の作動により固定金型311に対して可動金型313が型当接されると固定金型311と可動金型313の間には成形を行うためのキャビティCが形成される(型閉工程)。型当接がなされると型開閉機構315のサーボモータ338はサーボロックされて可動盤314は位置保持される。そして係合機構323の第1の係合部材324a,324bは、
図5(a)のナット挿入前の位置から前進して油圧シリンダ325の前進作動により第1の係合部材324の係合歯326がタイバ319の係合溝321と係合され、可動盤314がタイバ319に対して係合された状態となる。この際に
図5(b)に示されるように、第1の係合部材324a,324bの係合歯326の型締側当接面326aとタイバ319の係合溝321の型締側当接面321aの間と、前記係合歯326の強力型開側当接面326bと前記係合溝321の強力型開側当接面321bとの間にはそれぞれ僅かな間隙F,Gが形成される。
【0037】
また第1の係合部材324と第2の係合部材327は連結ガイド棒329により連結されているため、油圧シリンダ325の前進方向に作動されることにより第1の係合部材324の前進ともに第2の係合部材327も前進する。そして第2の係合部材327の係合歯328もタイバ319の係合溝321と係合され、可動盤314がタイバ319に対して係合された状態となる。この際に
図5(b)に示されるように、第2の係合部材327a,327bの係合歯326の型締側当接面328aとタイバ319の係合溝321の型締側当接面321aの間と、前記係合歯328の強力型開側当接面328bと前記係合溝321の強力型開側当接面321bとの間にもそれぞれ僅かな間隙H,Iが形成される。
(係合機構による係合工程)。
【0038】
次に型締機構316である型締シリンダ317の型締側油室317aに作動油が供給されてタイバ319が
図5(c)の矢印Bの方向に向けてけん引されて型締増圧されると、
図5(c)に示されるように、係合機構323の第1の係合部材324a,324bの型締側当接面326aとタイバ319の型締側当接面321aの間の間隙Fが解消され、前記型締側当接面326aと前記型締側当接面321aが当接される。一方第1の係合部材324aの係合歯326の強力型開側当接面326bとタイバ319の係合溝321の強力型開側当接面321bの間隙はF+Gに拡大される。この際に第1の係合部材324の側と同様に、第2の係合部材327の係合歯328の型締側当接面328aとタイバ319の係合溝321の型締側当接面321aの間と、前記係合歯328の強力型開側当接面328bと前記係合溝321の強力型開側当接面321bとの間隙もまたH+Iに拡大される。なお第2の係合部材327の係合歯328の型締側当接面328aの面積の合計面積は、第1の係合部材324の型締側当接面326aの面積の合計面積と比較して小さいことから、型締力の過半の部分は第1の係合部材324の型締側当接面326aを介して可動盤314に伝達されるように設計されていることが望ましい。そして更に型締シリンダ317が増圧されることにより固定金型311と可動金型313が型締される。
(型締増圧工程)。
【0039】
所定の型締力となったことが確認されると次に型締工程に移行し、射出装置4から発泡成形用の溶融樹脂がキャビティCに向けて射出される(型締工程)。なお型締工程の際、型開閉機構315のサーボモータ338は無負荷な状態となっている。そして射出後に所定時間が経過すると型締シリンダ317の型締側油室317aはドレンに接続され型締側油室317a内の作動油の圧力が0に落とされる。
(圧抜工程)。
【0040】
本実施形態では型締工程開始から圧抜工程完了までの間に
図6(d)に示されるように、係合部材327の移動用のアクチュエータである油圧シリンダ333の前進側油室333aに作動油を供給して力伝達部材334を前進させナット部材である第2の係合部材327a,327bの側面327a2,327b2に当接させた後、更に前進させる。そして油圧シリンダ333の前進力を力伝達部材334を介して第2の係合部材327a,327bに伝達し、第2の係合部材327a,327bを第1の係合部材324a,324bに向けて移動させる。この際に第2の係合部材327a,327bと第1の係合部材324a,324bはそれぞれ連結ガイド棒329がガイド孔330に挿通される形で接続されているので、第1の係合部材324a,324bに対して第2の係合部材327a,327bは、タイバ319の軸方向Lに沿って移動される。同時に第1の係合部材324a,324bと第2の係合部材327a,327bの間の距離が縮小されたことによりバネ331が収縮される。
【0041】
また前記第2の係合部材327a,327bのみの移動により、第2の係合部材327a,327bの係合歯328の強力型開側当接面328bとタイバ319の強力型開側当接面321bが当接されるとともに押圧される。前記強力型開側当接面328bが強力型開側当接面321bに押圧されることにより、タイバ319の型締側当接面321aが第1の係合部材324の係合歯326の型締側当接面326aに向けて押圧され、係合機構323とタイバ319の係合溝321の間のバックラッシは解消される。そして可動盤314とタイバ319は、ガタのない固定的な状態で連結される。なお4軸あるタイバ319に対して第2の係合部材327の移動は同時に作動が行われ、4軸のタイバ319と可動盤314がバックラッシの無い状態で係合および固定されることは言うまでもない。
【0042】
圧抜工程が終了すると次に
図6(e)に示されるように、コアバック制御工程に移行する。コアバック制御工程については複数の制御方法が考えられる。第1のコアバック制御方法は、4基のタイバ移動機構345のみを作動させてタイバ319を目標位置に向けて型開方向(
図6(e)の矢印Dの方向)へ移動させることにより、タイバ319とバックラッシが無い状態で実質的に一体となった可動盤314および可動金型313を目標位置に移動させるものである。タイバ移動機構345のタイバ移動シリンダ346によるタイバ319の移動制御は、位置センサ350によりタイバ319の位置を検出し、サーボバルブ等のバルブ344をクローズドループ制御することにより行われる。第1のコアバック制御方法では2基の型開閉機構315のサーボモータ338はフリーの状態でコアバック制御が行われる。この方式は固定金型311に対する可動金型313の平行度を保ちながら移動させる点において有利である。
【0043】
第2のコアバック制御方法は、2基の型開閉機構315のサーボモータ338のみを作動させて、タイバ319とバックラッシが無い状態で実質的に一体となった可動盤314および可動金型313を目標位置に移動させるものである。第2のコアバック制御方式は、比較的強力で位置制御能力も高い2基の型開閉機構315のサーボモータ338を用いてコアバック制御を行うことができる。しかしながら型開閉機構315のサーボモータ338の数が4基ではない場合、固定金型311に対する可動金型313の平行度において第1の制御方式よりも劣る場合もある。
【0044】
第3のコアバック制御方法は、4基のタイバ移動機構345と、2基の型開閉機構315のサーボモータ338を作動させて可動盤314と一体となったタイバ319も同時に移動させるものである。第3のコアバック制御方式は、比較的強力で位置制御能力も高い2基の型開閉機構315のサーボモータ338を用いつつ4基のタイバ移動機構345も用いて固定金型311に対する可動金型313の平行度を制御することができる。第3のコアバック制御方式においては、一部のコアバック区間は、4基のタイバ移動機構345のみ、または型開閉機構315のサーボモータ338のみにより制御されるものであってもよい。
(コアバック工程)
【0045】
そしていずれのコアバック制御方法であっても、圧抜工程が終了した時点でタイバ319と可動盤314は一体に固定されバックラッシの影響を受けない状態となっているから、速やかに精度の高いコアバック成形(本実施形態では発泡成形)が実現できる。そしてコアバック制御工程が終了すると次に冷却工程に移行する。冷却工程では基本的には可動盤314を目標位置に保持するとともにタイバ319も目標位置に保持して所定時間が経過させる。ただしキャビティC内の樹脂は冷却収縮されるものでは、型締シリンダ317の型締側油室317aやタイバ移動シリンダ346の後退側油室に作動油を供給してタイバ319を後退側に移動させるか、または型開閉機構315のサーボモータ338も型閉側に移動させて可動盤314および可動金型313を型閉方向に押圧ようにしてもよい。
(冷却工程)
【0046】
そして冷却工程が終了すると
図6(f)に示されるように第2の係合部材327の変位させる駆動機構のアクチュエータである油圧シリンダ333の後退側油室333bに作動油を供給して力伝達部材334を後退させる。このことにより第1の係合部材324a,324bと第2の係合部材327a,327bの間のバネ331が伸長し、第2の係合部材327a,327bは、第1の係合部材324a,324bに対してタイバ319の軸方向Lに沿って離隔する方向に移動される。
【0047】
次に型締シリンダ317の強力型開側油室317bに作動油を供給して強力型開を行う。このことによりタイバ319は型開方向(
図6(f)の矢印Eの方向)に移動され、タイバ319の係合溝321の強力型開側当接面321bと係合機構323の第1の係合部材324の強力型開側当接面326bが当接する。そして更に前記強力型開側油室317bに作動油が供給されることにより、タイバ319が係合機構323および可動盤314を矢印Eの方向に押して強力型開が行われ、固定金型311と可動金型313との間も所定間隔だけ型開される。この際に第2の係合部材327の強力型開側当接面328bは、タイバ319の強力型開側当接面321bと当接された状態を保っているが、強力型開時のタイバ319から可動盤314に伝達される型開力のうち過半の力は、第1の係合部材324を介して可動盤314に伝達される。なお強力型開工程は必須ものではなく、離型力がそれほど必要でない場合などでは冷却工程の後に係合機構323を離脱させた後、そのまま型開閉機構315のサーボモータ338を作動させて可動盤314を型開き作動させてもよい。
(強力型開工程)
【0048】
次に固定金型311と可動金型313の間の距離が所定間隔まで開くと、係合機構323を開閉作動させる駆動機構のアクチュエータである油圧シリンダ325が後退方向に作動され、連結されている第1の係合部材324aと第2の係合部材327a、第1の係合部材324bと第2の係合部材327bはそれぞれタイバ319の係合溝321から離脱される。この際も力伝達部材334と第2の係合部材327a,327bの側面327a2,327b2は共に直接にボルト等により固着されていないので、油圧シリンダ333の力伝達部材334の位置とは関係なく、第2の係合部材327a,327bを係合溝321から離脱方向に開くことができる。その後、型開閉機構315のサーボモータ338を作動させて可動盤314および可動金型313を型開完了位置まで移動させる。そして図示しないエジェクタ機構の作動により成形された発泡成形品を可動金型313のキャビティ面から突出し、図示しない取出機で取り出す。これらの際のタイバ319と第1の係合部材324および第2の係合部材327の位置関係は、
図5(a)の状態であり、その状態で次の成形サイクルに移行する。
【0049】
第2の実施形態の要部拡大図である。第2の実施形態の射出成形装置について第1の実施形態と同一部分には同一符号を付した
図7を参照して説明する。第2の実施形態において可動盤314の背面には係合機構401が取り付けられている。係合機構401のうちの第1の係合部材402を構成するナット部材である第1の係合部材402a,402bは、保持部材を含むケース403内で、駆動機構のアクチュエータ404によりタイバ319の係合溝321に対して近接および離隔方向にのみ移動可能となっている。また前記ケース403には、第1の係合部材402と共に前記アクチュエータ404によりタイバ319の係合溝321に対して近接および離隔方向に移動される第2の係合部材405が設けられている。
【0050】
第2の係合部材405を構成するナット部材である第2の係合部材405a,405bは、第1の係合部材402に対してタイバ319の軸方向Lに変位可能となっている。具体的には第2の係合部材405の内部には第2の係合部材405a,405bを第1の係合部材402a,402bに対して変位させる駆動機構のアクチュエータである油圧シリンダ406がそれぞれ設けられている。前記油圧シリンダ406は、断面形状が略半円形状か円弧形状であって所定厚みの力伝達部材407が備えられ、その外周側には作動油の油室408が備えられている。なお力伝達部材407は、通常の油圧シリンダではロッドに相当する部分である。
【0051】
なお力伝達部材407のタイバの軸方向に直交する断面Mの断面形状は、内周部408aの形状がタイバ319の係合溝321の外周形状と相似形であることが望ましい(この際第1の係合部材402の係合歯の先端とタイバ319係合溝321の底面321cが当接する場合は同一形状を含む)。そして力伝達部材407が略半円形状や円弧形状の場合の中心角(略半円や円弧の中心点から両端の放射線の内側の角度)は、80°ないし170°が望ましい。前記80°よりも前記角度が小さいと力伝達部材407で押圧した際に安定的に押す効果が得られにくく、170°よりも大きいと壁面が薄くなりすぎ強度に影響が出る。アクチュエータ404の力伝達部材407を前記構造とすることにより、1個ないし3個のロッドにより第2の係合部材を押す場合よりも、力伝達部材407の当接面の面積が確保され第2の係合部材を安定的に押圧することができる。
【0052】
なお油圧シリンダは単動シリンダであっても複動シリンダであってもよい。単動シリンダの場合は、第1の係合部材402の側面402b1と第2の係合部材405の第1の係合部材側の側面405b1の間に原位置復帰用のバネ409が設けられるか、または油室内に原位置復帰用のバネが設けられる。またはバネは第1の実施形態の可動盤314と一体のブロック332のように、第2の係合部材405よりも相対的に離隔した位置にあるブロックを設け、第2の係合部材405を可動盤314に向けて付勢するものでもよい。また油圧シリンダ406が複動シリンダの場合は第1の係合部材402の中に前進用油室、ピストン、後退用油室が設けられる。そして複動シリンダのロッドの先端は第2の係合部材405に係合してもよい。また駆動機構のアクチュエータは電動モータであってもよい。
【0053】
一方、可動盤314に固定されたケース403の保持部材の間には第2の係合部材405が、第1の係合部材402と共にタイバ319の係合溝321に対して近接および離隔方向に移動可能に設けられている。第2の係合部材405は前記のように油圧シリンダ406の作動により第1の係合部材402に対してタイバ319の軸方向Lに近接および離隔方向に移動可能である。ただし第2の係合部材405専用のアクチュエータを備えたものでもよい。その場合は油圧シリンダ406の力伝達部材407の先端の当接面は、第2の係合部材405の側面405a1に直接固着されておらず、当接のみされるようにしてもよい。
【0054】
前記機構により第2の係合部材405のナット部材は、第1の係合部材402のナット部材に対してタイバ319の軸方向Lに向けて変位可能であり、なおかつタイバ319の係合溝321に対して近接および離間可能となっている。なお油圧シリンダ406は、第1の係合部材402a,402bの側に組み込まれ、第2の係合部材405に向けて力伝達部材が設けられたものでもよい。第1の係合部材402にアクチュエータを組み込む場合、力伝達部材の先端は第2の係合部材405の側面に当接のみされる構造であっても係合される構造であってもよい。駆動機構のアクチュエータが複動シリンダや電動モータの場合であって、力伝達部材の先端が他方の係合部材に係合される場合、アクチュエータにより力伝達部材を介して他方の係合部材を一方の係合部材に引き寄せる方向に力を伝達して、係合機構のバックラッシを除去するものでもよい。
【0055】
また図示はしないが可動盤314と第1の係合部材324の間に第2の係合部材327を設けるようにしてもよい。この場合は、圧抜が終了した状態から本発明のアクチュエータを作動させて第2の係合部材327のみを型閉方向に移動させる。このことにより第2の係合部材327の強力型開側当接面328bとタイバ319の係合溝321の強力型開側当接面321bが当接および押圧されてバックラッシを除去することができる。
【0056】
次に第3の実施形態について
図8ないし
図12を参照して説明する。第3の実施形態の射出成形装置1の型締装置3および射出装置4の大部分は
図1に示される第1の実施形態と同様であるので同一符号を用いて記載し、相違点を中心に説明する。
図8に示されるように、第3の実施形態の係合機構501を内部に収納するケースを構成する保持部材351,352には、第2の係合部材を前記第1の係合部材に対してタイバの軸方向に変位可能な駆動機構502の油圧シリンダ503,504,505,506のシリンダ筒503a,504a,505a,506aが各保持部材に2本ずつ設けられている。そして前記シリンダ筒503a等の内部にはピストン503b,504b,505b,506bが設けられている。
【0057】
本実施形態では保持部材351の内部に駆動機構502の前記シリンダ筒503a等が設けられているが市販の油圧シリンダを使用してもよい。なお駆動機構502の油圧シリンダの数は限定されず、駆動機構502は、
図4に示されるようなドーナツ状の油圧シリンダを用いたものでもよい。第3の実施形態の油圧シリンダは複動シリンダであるが、ピストンの一方にしか作動油を供給する油室が無く、バネにより復帰する単動シリンダを用いてもよい。また駆動機構502は、サーボモータやボールねじなどの電動の駆動機構を用いたものでもよい。また
図8に示されるように保持部材351,352には次に記載する力伝達部材507の移動をガイドするためのガイド棒508,509が油圧シリンダ503等と平行に設けられている。ガイド棒508,509はここでは2本が記載されているが、本数は限定されず、実際にはもっと多くのガイド棒が用いられる場合が多い。
【0058】
第3の実施形態の係合機構501の第1の係合部材324や第2の係合部材327の構造やその開閉用の駆動機構のアクチュエータは、第1の実施形態と同じであるので説明を省略する。
図9は、
図8のJ-J矢視図であるが、前記第2の係合部材327に対して第1の係合部材324とは反対側(
図9においては左側であって反可動盤側)には、力伝達部材507が設けられている。力伝達部材507は、一塊の方体、多面体、円筒体等のブロック体であり、タイバ軸方向の中心にタイバが挿通される円筒状の貫通孔510が形成されている。また力伝達部材507は、第2の係合部材327の側には押圧面511が形成されている。第3の実施形態の力伝達部材507の押圧面511は、タイバ軸方向に直交する平面からなるが、第2の係合部材327の被押圧面である側面327a2に一定面積以上が当接する形状であれば別の形状でもよい。また第3の実施形態では力伝達部材507は、1個のブロック体であるが、複数個のブロック体からなるものを除外するものではない。
【0059】
図10は、
図8のK-K矢視図であり、保持部材351の部分での断面である。ただし理解しやすいようにこの断面では現れないタイバ319や第1の係合部材324や第2の係合部材327も破線で記載している。力伝達部材507には、前記ガイド棒508,509が挿入されるためのガイド孔512,513がタイバ軸方向に形成されている。また前記可動盤314側の保持部材351,352等の部材に取り付けられた駆動機構502の油圧シリンダ503等のロッド403c,504c,505c,506cは力伝達部材507の押圧面511の側の外周側に取り付けられている。押圧面511と油圧シリンダ503等のロッドが取り付けられる部分は同一面であってもよく
図8、高さが異なる面であってもよい。前記構造により、ブロック体である力伝達部材507は複数の駆動機構502により安定して第2の係合部材327を第1の係合部材324に向けて押圧することができる。また特許文献1のように駆動機構のロッドが直接係合部材327に直接取り付けられていないので、ロッドに対して係合部材を位置変更可能に取り付けたりする必要もなく、構造も複雑化しないという利点も有する。
【0060】
<第3の実施形態による型締装置の制御方法と発泡成形品の成形方法>
次に第3の実施形態の射出成形装置1の発泡成形品の成形方法について主に
図11、
図12を参照して説明する。第3の実施形態の発泡成形品の成形方法(コアバック制御方法)についても、第1の係合部材324、第2の係合部材327、タイバ319の作動の関係は、第1の実施形態の
図5,
図6の作動を示す説明図と共通している。
図11の中段の(b)に示されるように、ナット挿入により第1の係合部材324の一対の第1の係合部材324a,324b、第2の係合部材327の一対の第2の係合部材327a,327bがそれぞれタイバ319の溝321に係合されると次に
図11の下段の(c)に示されるように、型締増圧が行われる。
【0061】
次に
図12の上段の(d)に示されるように、型締完了されると、第2の係合部材327の係合部材327a,327bが第1の係合部材324の係合部材324a,324bに向けて移動される。この際、駆動機構502の油圧シリンダ503等の前方のロッド側油室503d等に作動油が供給され、ロッド503c等の後退駆動とともに力伝達部材507の押圧面511が第2の係合部材327の係合部材327a,327bの被押圧面である側面327a2を押圧する。このことにより第2の係合部材324の係合部材324a、324bの係合歯328がタイバ319の溝321内でバックラッシ分だけ型閉方向に移動し、係合歯328の強力型開側当接面328bがタイバ319の強力型開側当接面321bと当接する。第1の係合部材324の係合部材324a,324bはタイバ319の軸方向には移動不能な構造であるので、駆動機構の油圧シリンダ503等の力により、第1の係合部材324の係合部材324a,324bの係合歯326の型締側当接面326aと第2の係合部材327の係合部材327a,327bの係合歯328の強力型開側当接面328bの間にタイバ319の2つの溝部321の間に形成される凸部321eの部分が挟まれ、バックラッシが除去され固定された状態となる。そして型締増圧中に図示しない金型のキャビティ内に射出装置4から発泡材を含む溶融樹脂の射出が行われる。なおこの第2の係合部材327の一対の第2の係合部材327a、327bの移動は、型締工程開始から圧抜工程完了までの間に行われればよい。
【0062】
この状態で
図11の中段の(e)に示されるコアバック制御をおこなう。コアバック制御では、タイバ移動シリンダ346を作動させ、タイバ319を型開き方向に移動させてコアバック制御を行う。または型開閉機構315のサーボモータ338を駆動させる。そして可動盤314と可動金型313を型開き方向に移動させることにより固定金型311と可動金型313の間のキャビティCの容積を拡大することができる。
【0063】
コアバック制御が終了すると、次に
図11の下段の(f)に示される強力型開制御に移行する。強力型開制御の際は、駆動機構502の油圧シリンダ503等のシリンダ側油室503e等に作動油を供給し、ロッド503c等を前進させるともに力伝達部材507を型開方向(
図12において左方向)に移動させる。そして型締シリンダ317の強力型開側油室317bに作動油を供給してタイバ319を型開方向に移動させる。このことによりタイバ319からの主要な力は第1の係合部材324の係合部材324a,324bの側に加えられ、可動盤314と可動金型313を型開方向に移動させて成形品の離型を行うことができる。
【0064】
<他の実施形態>
上記の実施形態においては、固定盤312に型締シリンダ317が設けられ、固定盤312に連接されたタイバ319に対して、可動盤314に係合機構323である第1の係合部材324と第2の係合部材327が設けられている。しかし可動盤に型締シリンダが設けられ、可動盤に連接されたタイバに対して、固定盤に係合機構の第1の係合部材と第2の係合部材が設けられたものでもよい。この場合、可動盤は可動金型を取り付ける第1可動盤と型締シリンダを取り付ける第2可動盤の2枚の盤からなり、第2の可動盤に係合機構である第1の係合部材と第2の係合部材も固定盤に設けられたものでもよい。更には可動盤にナットにより連接されたタイバに対して、固定盤に型締シリンダが設けられ、係合機構である第1の係合部材と第2の係合部材も固定盤に設けられたものでもよい。
【0065】
4本のタイバ319に対して第2の係合部材327により係合を行う場合、殆どの場合、全てのタイバ319に対応して第2の係合部材327を設ける。しかしながら全てのタイバ319に対して第2の係合部材327を設けない場合も考えられる。例えば可動盤314の下方に接続される型開閉機構315により可動盤314を移動させる場合、可動盤314の上部の前進が遅れることがあり、その場合は上部のタイバ319に対応する部分にのみ第2の係合部材を設けるなどしてもよい。また係合機構323は、第1の係合部材324と第2の係合部材327のみならず、第3の係合部材などを備えるものでもよい。
【0066】
本発明の成形装置が射出成形機の型締装置である場合、成形方法の応用例については、発泡成形を含むコアバック制御のみならず、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガス抜き成形など比較的、低型締力で可動盤を移動させる成形方法全般に適用できる。射出成形装置の型締装置である場合、これに限定されるものではないが、一例として型締力10,000kN以上の大型の型締装置により一層好適に用いられる。
【0067】
また成形装置の応用例については、プレス成形装置、中空成形装置、真空成形装置、積層成形装置、転写成形装置など平板を含む金型間で成形品が成形されるもの全般に適用できる。またいずれに成形装置であっても可動金型の型開閉方向は限定されず、水平方向または垂直方向、或いは他の方向に型開閉されるものであってもよい。
【0068】
なお本発明については、一々列挙はしないが、上記したものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0069】
1 射出成形装置
2 基台
3 型締装置
4 射出装置
311 固定金型
312 固定盤
313 可動金型
314 可動盤
315 型開閉機構
319 タイバ(軸部材)
321 係合溝
323 係合機構
324,324a,324b 第1の係合部材
325,333 油圧シリンダ(アクチュエータ)
326,328 係合歯
327,327a,327b 第2の係合部材
L タイバの軸方向
M タイバの軸方向に直交する断面